(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179128
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】電力出力回路および非接触給電システム
(51)【国際特許分類】
H02J 50/12 20160101AFI20231212BHJP
H02J 50/40 20160101ALI20231212BHJP
【FI】
H02J50/12
H02J50/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092228
(22)【出願日】2022-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 将也
(72)【発明者】
【氏名】中屋敷 侑生
(72)【発明者】
【氏名】柴沼 満
(72)【発明者】
【氏名】山口 宜久
(57)【要約】
【課題】複数のフィルタ間での出力電流の不均衡を抑制する。
【解決手段】電力が入力される電力配線WP1,WP2に設けられ、互いに並べて接続された複数の回路ブロック30を備え、複数の回路ブロックのそれぞれは、最後段に少なくともフィルタ16を有し、複数のフィルタは、それぞれ、リアクトルL1と、出力ノードNoutとは異なるノードでリアクトルと接続されるコンデンサC1とを有し、複数のフィルタがそれぞれ有するリアクトルとコンデンサとのいずれか一方は、出力ノードと接続するように電力配線に直列に接続され、1つのフィルタにおけるリアクトルとコンデンサとの接続ラインは、残りの他のフィルタにおけるリアクトルとコンデンサとの接続ラインに接続されている、電力出力回路OC1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力が入力される電力配線(WP1~WP5,WPr1,WPr2)に設けられ、互いに並べて接続された複数の回路ブロック(30,230~930)を備え、
前記複数の回路ブロックのそれぞれは、最後段に少なくともフィルタ(16,90,216~916)を有し、
前記複数のフィルタは、それぞれ、リアクトル(L1)と、出力ノード(Nout)とは異なるノードで前記リアクトルと接続されるコンデンサ(C1)とを有し、
前記複数のフィルタがそれぞれ有する前記リアクトルと前記コンデンサとのいずれか一方は、前記出力ノードと接続するように前記電力配線に直列に接続され、
1つの前記フィルタにおける前記リアクトルと前記コンデンサとの接続ラインは、残りの他の前記フィルタにおける前記リアクトルと前記コンデンサとの接続ラインに接続されている、電力出力回路(OC1~OC9,OCR4)。
【請求項2】
請求項1に記載の電力出力回路を備える非接触給電システム(1,501~901)であって、
前記電力出力回路は、高周波電力を出力する回路であり、
前記フィルタは、前記電力の高調波成分を減衰するためのフィルタであり、
送電コイルを有する送電装置(10,510~910)と、
前記送電コイルから電磁誘導を用いて給電される受電コイルを有する受電装置(80,580)と、を備え、
前記電力出力回路は、前記送電コイルの前段と、前記受電コイルの後段との少なくともいずれか一方に設けられている、非接触給電システム。
【請求項3】
請求項2に記載の非接触給電システムであって、
前記送電装置は、さらに、前記送電コイルと共に送電共振回路を形成する送電共振コンデンサ(Cs)を有し、
前記受電装置は、さらに、前記受電コイルと共に受電共振回路を形成する受電共振コンデンサ(Cr)を有する、非接触給電システム。
【請求項4】
請求項1に記載の電力出力回路であって、
前記フィルタは、バンドパスフィルタである、電力出力回路。
【請求項5】
請求項1に記載の電力出力回路であって、
前記フィルタは、バンドパスフィルタと、バンドエリミネーションフィルタとの結合フィルタである、電力出力回路。
【請求項6】
請求項1に記載の電力出力回路であって、
前記フィルタは、4次フィルタである、電力出力回路。
【請求項7】
請求項1に記載の電力出力回路であって、
前記フィルタは、5次フィルタである、電力出力回路。
【請求項8】
請求項1に記載の電力出力回路であって、
前記電力配線は、第1電力配線(WP1)と、第2電力配線(WP2)とを有し、
前記リアクトルと前記コンデンサとを含む第1接続体は、前記第1電力配線に設けられ、
前記フィルタは、前記第2電力配線に前記第1接続体と同等の第2接続体を有するバランス型のフィルタであり、
1つの前記フィルタにおける前記第2電力配線に設けられた前記第2接続体の前記リアクトルと前記コンデンサとの接続ラインは、残りの他の前記フィルタにおける前記第2電力配線に設けられた前記第2接続体の前記リアクトルと前記コンデンサとの接続ラインに接続されている、電力出力回路。
【請求項9】
請求項3に記載の非接触給電システムであって、
前記送電装置は、さらに、交流電力を直流電力に変換して出力するAC/DCコンバータ(12)を有し、
前記電力出力回路は、前記AC/DCコンバータの後段であって、前記送電コイルの前段に設けられ、
前記複数の回路ブロックのそれぞれは、
前記直流電力を前記高周波電力に変換し、前記フィルタに前記高周波電力を出力するインバータ(14)を有し、
前記複数の回路ブロックのそれぞれは、ユニット化されている、非接触給電システム。
【請求項10】
請求項3に記載の非接触給電システムであって、
前記電力出力回路は、前記送電コイルの前段に設けられ、
前記複数の回路ブロックのそれぞれは、
交流電力を直流電力に変換して出力するAC/DCコンバータ(12)と、
前記直流電力を前記高周波電力に変換し、前記フィルタに前記高周波電力を出力するインバータ(14)と、を有し、
前記複数の回路ブロックのそれぞれは、ユニット化されている、非接触給電システム。
【請求項11】
請求項9または10に記載の非接触給電システムであって、
前記送電装置は、さらに、
前記複数のフィルタのそれぞれの出力電流を検出する複数の電流センサ(46)と、
前記複数の電流センサが検出した前記複数の出力電流を用いて、1つの前記フィルタの前記出力電流と、残りの他の前記フィルタの前記出力電流との差が小さくなるように、前記インバータを制御するためのPWM信号のデューティを制御する制御部(42)と、を有する、非接触給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力出力回路および非接触給電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電力伝送路には、目的の周波数成分を得るためなどにフィルタ回路が用いられる。例えば、特許文献1では、非接触給電に用いられる送電装置に、高調波ノイズを抑制するためのフィルタ回路が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、既に設置されている電力伝送路の負荷への供給電力を後から増大させるためなどに、既に設置されているフィルタ回路を含む電力伝送路に、フィルタ回路を含む新たな電力伝送路を並列に追加することが考えられる。この場合、フィルタ回路に用いられるリアクトルやコンデンサなどの電子素子について、インダクタンスやキャパシタンスなどの素子特性にバラツキが生じた場合に、各フィルタ回路の出力電流が、複数のフィルタ回路間で不均衡となり、電力損失が増加するおそれがある。このような課題は、電力源を含む電力伝送路が並列接続される場合だけでなく、フィルタ回路のみが並列に接続される場合にも生じ得る。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
本開示の一形態によれば、電力出力回路が提供される。この電力出力回路は、電力が入力される電力配線に設けられ、互いに並べて接続された複数の回路ブロックを備え、前記複数の回路ブロックのそれぞれは、最後段に少なくともフィルタを有し、前記複数のフィルタは、それぞれ、リアクトルと、出力ノードとは異なるノードで前記リアクトルと接続されるコンデンサとを有し、前記複数のフィルタがそれぞれ有する前記リアクトルと前記コンデンサとのいずれか一方は、前記出力ノードと接続するように前記電力配線に直列に接続され、1つの前記フィルタにおける前記リアクトルと前記コンデンサとの接続ラインは、残りの他の前記フィルタにおける前記リアクトルと前記コンデンサとの接続ラインに接続されている。
【0007】
この形態の電力出力回路によれば、複数のフィルタの各接続ライン間は接続されているため、各フィルタの出力電流の電流値や過渡特性のバラツキを抑制することができる。よって、リアクトルやコンデンサの素子特性に起因した電流不均衡によるリアクトルやコンデンサの電力損失の増加を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図4】第4実施形態に係る非接触給電システムの回路図。
【
図5】第5実施形態に係る非接触給電システムの回路図。
【
図6】第6実施形態に係る非接触給電システムの回路図。
【
図7】第7実施形態に係る非接触給電システムの回路図。
【
図8】第8実施形態に係る非接触給電システムの回路図。
【
図9】第9実施形態に係る非接触給電システムの回路図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A.第1実施形態:
図1に示すように、電力出力回路OC1は、交流電源22と、交流電源22から電力が供給される負荷70との間に介在する。具体的には、電力出力回路OC1は、交流電源22から出力される交流電力が入力される電力配線としての第1電力配線WP1および第2電力配線WP2に設けられ、互いに並べて接続された2つの回路ブロック30を有する。具体的には、2つの回路ブロック30は互いに並列に接続されている。本実施形態では、各回路ブロック30は、フィルタ16を有する。
【0010】
本実施形態では、フィルタ16は、第1リアクトルL1と第1コンデンサC1とが直列接続されて構成されたバンドパスフィルタである。フィルタ16は、ノイズ成分の通過を抑制し、目的の周波数帯の信号を通過させる。
【0011】
第1リアクトルL1と第1コンデンサC1とは、第1電力配線WP1に直列に接続されている。具体的には、第1コンデンサC1の一端子は、電力出力回路OC1の出力ノードNoutに接続されており、他端子は、出力ノードNoutとは異なるノードで第1リアクトルL1の一端子と接続されている。第1リアクトルL1の他端子は、交流電源22の一端子と接続されている。1つのフィルタ16における第1リアクトルL1と第1コンデンサC1との接続ラインは、残りの他のフィルタ16における第1リアクトルL1と第1コンデンサC1との接続ラインに接続されている。すなわち、2つのフィルタ16の各々の、第1リアクトルL1と第2コンデンサC2との接続ライン間は、配線W1で接続されている。これにより、接続ライン間の電位差を解消できるため、第1リアクトルL1のインダクタンスや第1コンデンサC1のキャパシタンスにバラツキがある場合であっても、各フィルタ16の出力ノードNfの電流である出力電流の電流値や過渡特性のバラツキを抑制することができる。よって、第1リアクトルL1や第1コンデンサC1の素子特性、具体的には、インダクタンスやキャパシタンスのバラツキに起因した電流不均衡による第1リアクトルL1や第1コンデンサC1の損失増加を抑制することができる。
【0012】
なお、発明者らは、第1リアクトルL1と第2コンデンサC2との接続ライン間を接続することにより、各フィルタ16の出力電流の2つのフィルタ16間での不均衡が抑制されることをシミュレーションにて確認している。また、発明者らは、第1リアクトルL1と第2コンデンサC2との接続ライン間を接続した場合にも、周波数と減衰量との関係を示す特性をシミュレーションにて確認し、フィルタ性能の低下はないことを確認している。よって、第1リアクトルL1と第2コンデンサC2との接続ライン間を接続することにより、フィルタ性能を低下させずに、フィルタ間の出力電流の電流不均衡を抑制することができる。
【0013】
以上説明した第1実施形態によれば、電力出力回路OC1は、2つのフィルタ16を有し、各フィルタ16の第1リアクトルL1と第2コンデンサC2との接続ライン間は、配線W1で接続されている。これにより、第1リアクトルL1や第1コンデンサC1の素子特性にバラツキがある場合であっても、各フィルタ16の出力電流の電流値や過渡特性のバラツキを抑制することができる。よって、第1リアクトルL1や第1コンデンサC1の素子特性のバラツキに起因した電流不均衡による第1リアクトルL1や第1コンデンサC1の損失増加を抑制することができる。
【0014】
B.第2実施形態:
図2に示すように、本実施形態に係る電力出力回路OC2が有する回路ブロック230は、フィルタ216に加え、インバータ14を備える点が第1実施形態と異なる。また、第1実施形態に係るフィルタ16は、バンドパスフィルタであるのに対して、本実施形態に係るフィルタ216は、バンドパスフィルタとバンドエリミネーションフィルタとの結合フィルタである。第1実施形態と同じ構成には同一の符号を付し、詳細な説明は適宜省略する。
【0015】
本実施形態に係る電力出力回路OC2は、直流電源24から出力される交流電力が入力される第1電力配線WP1および第2電力配線WP2に設けられ、互いに並列に接続された2つの回路ブロック230を有する。本実施形態では、回路ブロック230は、インバータ14と、フィルタ216とを有する。フィルタ216は回路ブロック230の最後段に配置されている。ここで、後段とは、交流電源22などの電源を上流、電力が供給される負荷70などの負荷を下流とする電力の流れ方向における下流側を意味する。後述する前段も同様である。すなわち、前段とは、電力の流れ方向における上流側を意味する。
【0016】
インバータ14は、直流電源24から出力される直流電力を交流電力に変換する。フィルタ216は、入力される交流電力のノイズ成分の通過を抑制し、目的の周波数帯の信号を通過させる。フィルタ216は、バンドパスフィルタである第1フィルタ部F1と、バンドエリミネーションフィルタである第2フィルタ部F2と、バンドパスフィルタである第3フィルタ部F3とがこの順に接続されて構成されている。第1フィルタ部F1は、第1リアクトルL1と第1コンデンサC1とが直列接続された接続体が第1電力配線WP1に直列に挿入されて構成されている。第2フィルタ部F2は、第2リアクトルL2と第2コンデンサC2とが互いに並列に接続された接続体が直流電源24に並列に接続されて構成されている。第3フィルタ部F3は、第3リアクトルL3と第3コンデンサC3とが直列接続された接続体が第1電力配線WP1に直列に挿入されて構成されている。
【0017】
本実施形態においても、2つのフィルタ216の各々の内部の接続ラインが配線W1で接続されている。具体的には、第3リアクトルL3と、出力ノードNoutに接続されている第3コンデンサC3との接続ライン間が、配線W1にて接続されている。これにより、第1実施形態と同様の効果を奏すると共に、電力出力回路OC2が有する2つのインバータ14の出力電流の電流値や過渡特性に差が生じた場合にも、各フィルタ216の出力電流の電流値や過渡特性のバラツキを抑制することができる。
【0018】
以上説明した第2実施形態によれば、上記実施形態と同様の効果を奏し、さらに、電力出力回路OC2が有する2つのインバータ14の出力電流に差が生じた場合にも、各フィルタ216の出力電流の電流値や過渡特性のバラツキを抑制することができる。
【0019】
C.第3実施形態:
図3に示すように、本実施形態に係る電力出力回路OC3が有する回路ブロック330は、フィルタ316およびインバータ14に加え、AC/DCコンバータ12を有する点が第2実施形態と異なる。また、本実施形態に係るフィルタ316は、4次フィルタとして構成されている点が、上記各実施形態とは異なる。上記各実施形態と同じ構成には同一の符号を付し、詳細な説明は適宜省略する。
【0020】
本実施形態に係る電力出力回路OC3は、交流電源22から出力される交流電力が入力される第1電力配線WP1および第2電力配線WP2に設けられ、互いに並列に接続された2つの回路ブロック330を有する。本実施形態では、回路ブロック330は、AC/DCコンバータ12と、インバータ14と、フィルタ316とを有する。フィルタ316は回路ブロック330の最後段に配置されている。
【0021】
AC/DCコンバータ12は、交流電源22から出力される交流電力を目的の電圧値の直流電圧に変換してインバータ14へ供給する。フィルタ316は、4次フィルタとして構成されている。具体的には、第1リアクトルL1と第2リアクトルL2とが直列接続された接続体が第1電力配線WP1に直列に挿入されている。第1リアクトルL1と第2リアクトルL2との間に、第1コンデンサC1が交流電源22と並列に挿入されている。第2リアクトルL2の後に、第2コンデンサC2が交流電源22と並列に挿入されている。
【0022】
本実施形態においても、2つのフィルタ316の各々の内部の接続ラインが配線W1で接続されている。具体的には、第1コンデンサC1と、出力ノードNoutに接続されている第2リアクトルL2との接続ライン間が、配線W1にて接続されている。これにより、上記各実施形態と同様の効果を奏すると共に、電力出力回路OC2が有する2つのAC/DCコンバータ12の出力電流の電流値に差が生じた場合にも、各フィルタ316の出力電流の電流値や過渡特性のバラツキを抑制することができる。
【0023】
以上説明した第3実施形態によれば、上記実施形態と同様の効果を奏し、さらに、電力出力回路OC2が有する2つのAC/DCコンバータ12の出力電流に差が生じた場合にも、各フィルタ316の出力電流の電流値や過渡特性のバラツキを抑制することができる。
【0024】
D.第4実施形態:
図4に示すように、本実施形態では、電力出力回路OC4と、電力出力回路としての受電側電力出力回路OCR4とが非接触給電システム1に組み込まれている。
図4に示すように、非接触給電システム1は、送電装置10と、受電装置80とを備える。送電装置10は、受電装置80に非接触で電力を供給する。
【0025】
電力出力回路OC4は、互いに並列接続された2つの回路ブロック430を有する。各回路ブロック430は、フィルタ416を有する。本実施形態に係るフィルタ416は、上記各実施形態とは異なり、5次フィルタとして構成されている。上記各実施形態と同じ構成には同一の符号を付し、詳細な説明は適宜省略する。
【0026】
フィルタ416は、交流電源22により入力される高周波の交流電力である高周波電力のノイズ成分である高調波成分を減衰し、目的の周波数帯の電力を通過させて、送電コイルLsに供給する。なお、本実施形態において、高周波とは、1kHz以上の周波数の電力をいう。フィルタ416は、第1リアクトルL1と、第2リアクトルL2と、第3リアクトルL3とが直列接続された接続体が第1電力配線WP1に挿入されている。そして、第1リアクトルL1と第2リアクトルL2との間に交流電源22と並列に第1コンデンサC1が接続され、第2リアクトルL2と第3リアクトルL3との間に交流電源22と並列に第2コンデンサC2が接続されている。回路ブロック430の後段に、送電コイルLsが接続されている。
【0027】
受電装置80は、受電コイルLrと、受電側電力出力回路OCR4と、整流回路86と、バッテリ88とを有する。受電コイルLrが送電コイルLsと磁気結合可能な位置に配置されると、送電コイルLsが発生させる磁束による電磁誘導により、受電コイルLrに起電力が生じる。受電コイルLrに発生した起電力は、電力配線としての第1電力配線WPr1と第2電力配線WPr2に入力される。
【0028】
受電側電力出力回路OCR4は、第1電力配線WPr1および第2電力配線WPr2に配置されている。受電側電力出力回路OCR4は、互いに並列接続された2つの回路ブロック84を有する。各回路ブロック84は、フィルタ90を有する。本実施形態では、フィルタ90は、第4リアクトルL4、第5リアクトルL5、第6リアクトルL6、第3コンデンサC3、および第4コンデンサC4を有する第5次フィルタとして構成されている。フィルタ90は、受電コイルLrから入力される交流電力の高調波成分を減衰する。
【0029】
整流回路86は、入力される交流電力を直流電力に変換し、バッテリ88に供給する。受電装置80に給電する場合、送電コイルLsおよび受電装置80を負荷とみなすことができる。
【0030】
本実施形態においても、2つのフィルタ416の各々の内部の接続ラインが配線W1および配線W2にて接続されている。具体的には、第2コンデンサC2と、出力ノードNoutと接続されている第3リアクトルL3との接続ライン間が、配線W2にて接続されている。第2リアクトルL2と、第1コンデンサC1との接続ライン間が、配線W1にて接続されている。これにより、各リアクトルのインダクタンスや各コンデンサのキャパシタンスにバラツキがある場合であっても、各フィルタ416の出力電流の電流値や過渡特性のバラツキを抑制することができる。
【0031】
同様に、受電装置80が備える2つのフィルタ90の各々の内部の接続ラインが配線W3および配線W4にて接続されている。具体的には、第4コンデンサC4と、受電側電力出力回路OCR4の出力ノードNroutと接続されている第6リアクトルL6との接続ライン間が、配線W4にて接続されている。また、第3コンデンサC3と、第5リアクトルL5との接続ライン間が、配線W3にて接続されている。これにより、電力出力回路OC4と同様に、各リアクトルのインダクタンスや各コンデンサのキャパシタンスにバラツキがある場合であっても、各フィルタ90の出力電流の電流値や過渡特性のバラツキを抑制することができる。
【0032】
以上説明した第4実施形態によれば、上記実施形態と同様の効果を奏する。さらに、送電装置10に電力出力回路OC4が備えられることにより、第1電力配線WP1および第2電力配線WP2により伝送される電力の高調波ノイズを減衰させることができる。また、受電装置80に受電側電力出力回路OCR4が備えられることにより、第1電力配線WPr1および第2電力配線WPr2により伝送される電力の高調波ノイズを減衰させることができる。よって、高調波ノイズの放射が適切に減衰された非接触給電システム1を提供することができる。
【0033】
E.第5実施形態:
図5に示すように、本実施形態は、非接触給電システム501に電力出力回路OC5と、受電側電力出力回路OCR4とが組み込まれている点が、第4実施形態と同じである。そして、本実施形態に係る回路ブロック530はインバータ14を有する点と、送電共振回路18を有する点と、フィルタ516の回路構成とが、第4実施形態と異なる。また、本実施形態に係る受電装置580は、受電共振回路82を有する点が、第4実施形態と異なる。上記各実施形態と同じ構成には同一の符号を付し、詳細な説明は適宜省略する。
【0034】
本実施形態に係る回路ブロック530は、第2実施形態と同様に、インバータ14を備えている。フィルタ516は、バンドパスフィルタとバンドエリミネーションフィルタとの結合フィルタである。具体的には、バンドパスフィルタである第1フィルタ部F1と、バンドエリミネーションフィルタである第2フィルタ部F2とがこの順に接続されて構成されている。
【0035】
送電共振回路18は、送電共振コンデンサCsと、送電コイルLsとが直列接続された共振回路である。送電共振回路18は、インバータ14から出力される交流電力の基本周波数にて共振状態となる。本実施形態において、基本周波数は、85kHzである。
【0036】
受電共振回路82は、受電コイルLrと、受電共振コンデンサCrとが直列接続された共振回路である。送電コイルLsと受電コイルLrとが磁気的に結合している場合において、送電共振回路18の共振周波数と、受電共振回路82の共振周波数とは、略同一になるように設定されている。これにより、送電コイルLsと、受電コイルLrとの磁界共振によって、送電装置510から受電装置580への非接触給電を行うことができる。
【0037】
本実施形態では、受電装置580は図示しない車両に搭載されている。バッテリ88は、車両の駆動源である駆動モータを駆動するための直流電力を出力する2次電池である。送電装置10が備える送電共振回路18は、車両が走行する道路に設置されている。
【0038】
本実施形態においても、2つのフィルタ516の各々の内部の接続ラインが配線W1で接続されている。具体的には、第1リアクトルL1と、出力ノードNoutに接続されている第1コンデンサC1との接続ライン間が、配線W1にて接続されている。これにより、上記各実施形態と同様の効果を奏する。
【0039】
本実施形態では、各回路ブロック530はユニット化されている。具体的には、回路ブロック530は、インバータ14およびフィルタ516を構成する電子素子が基板に固定されており、基板には外部接続端子T1~T5が設けられている。外部接続端子T1および外部接続端子T3は第1電力配線WP1に設けられている。外部接続端子T2および外部接続端子T4は第2電力配線WP2に設けられている。外部接続端子T1および外部接続端子T2は、回路ブロック530の入力側の端子であり、外部接続端子T3および外部接続端子T4は、回路ブロック530の出力側の端子である。外部接続端子T5は、配線W1に設けられている。
【0040】
送電装置510が道路に設置される場合には、直流電源24と、ユニット化された回路ブロック530と、送電共振回路18とがそれぞれ配置される。直流電源24と回路ブロック530との間と、回路ブロック530と送電共振回路18との間とが、それぞれ電力配線で接続される。なお、回路ブロック530は、図示しない筐体内に配置され、外部接続端子T1~T5が筐体から露出するように構成されてもよい。
【0041】
本実施形態では、直流電源24が十分な電力供給能力を有することを前提として、回路ブロック530がインバータ14を有していることにより、送電装置510の電力の供給能力を柔軟に変更することができる。具体的には、送電装置510が送電共振回路18に供給する電力を増やしたい場合には、既に設置されている回路ブロック530に新たな回路ブロック530を並列で追加することにより、供給能力を増やすことができる。逆に送電装置510が供給する電力を減らした場合には、既に設置されている複数の回路ブロック530の一部を取り除くことにより供給能力を減らすことができる。本実施形態では、回路ブロック530がユニット化されているため、予め設けられた外部接続端子T1~T5を用いて、回路ブロック530の入力用の電力配線および出力用の電力配線を容易に接続または解除することができる。また、回路ブロック530がユニット化されているため、回路ブロック530が有するインバータ14およびフィルタ516の回路定数を最適化することができる。
【0042】
なお、回路ブロック530がユニット化されている利点は、送電装置510の設置する場合に限られない。本実施形態では、受電装置580が車両に搭載される場合を例示したが、受電装置580が搭載される対象は車両に限られず、例えば、AGV(無人搬送車)などのその他の移動体でもよい。そして、非接触給電システム501にて非接触給電される電力の大きさは、受電装置580が搭載される対象により様々である。非接触給電される種々の電力の大きさの各々に個別に適合させて回路ブロック530を製造する場合、多様な回路ブロック530を取り揃える必要が生じる。この点、本実施形態によれば、回路ブロック530の個数を増減させることで、多様な回路ブロック530を取り揃えることなく、非接触給電される種々の電力の大きさに対応することができる。
【0043】
以上説明した第5実施形態によれば、上記実施形態と同様の効果を奏する。さらに、送電装置510は送電共振コンデンサCsを備え、受電装置580は受電共振コンデンサCrを備えることにより、磁界共鳴により非接触給電を行うことができる。また、回路ブロック530はインバータ14を有し、回路ブロック530がユニット化されていることにより、直流電源24が十分な電力供給能力を有することを前提として、送電装置510の電力の供給能力を柔軟に変更することができる。
【0044】
F.第6実施形態:
図6に示すように、本実施形態に係る非接触給電システム601が有する送電装置610はAC/DCコンバータ12を有する点と、フィルタ616の回路構成と、送電共振回路618の回路構成とが第5実施形態とは異なる。また、本実施形態に係る受電共振回路682は、回路構成が、第5実施形態とは異なる。上記各実施形態と同じ構成には同一の符号を付し、詳細な説明は適宜省略する。
【0045】
本実施形態に係る回路ブロック630は、第3実施形態と同様に、AC/DCコンバータ12を備えている。フィルタ616は、バランス型のバンドパスフィルタである。具体的には、第1リアクトルL1と第1コンデンサC1とが直列に接続された第1接続体が第1電力配線WP1に設けられ、この第1接続体と同様の接続体である第2リアクトルL2と第2コンデンサC2とが直列に接続された第2接続体が第2電力配線WP2に設けられている。バランス型とすることにより、コモンモードノイズを低減することができる。
【0046】
本実施形態においても、2つのフィルタ616の各々の内部の接続ラインが配線W1および配線W2で接続されている。具体的には、第1リアクトルL1と、出力ノードNoutに接続されている第1コンデンサC1との接続ライン間が配線W1にて接続されている。さらに、本実施形態では、1つのフィルタ616における第2電力配線WP2に設けられた第2接続体の第2リアクトルL2と第1コンデンサC1との接続ラインは、残りの他のフィルタ616における第2電力配線WP2に設けられた第2接続体の第2リアクトルL2と第2コンデンサC2との接続ラインに接続されている。具体的には、第2リアクトルL2と第2コンデンサC2との接続ライン間が配線W2にて接続されている。配線W1と配線W2とは近接して配置されており、本実施形態では、配線W1と配線W2とが、ねじり合わされている。これにより、配線W1と配線W2とがペアとなるため、配線インダクタンスを低減でき、接続ライン間の電位差をより解消できる。よって、各フィルタ616の出力電流の電流値や過渡特性のバラツキを抑制することができる。また、各ラインがバランス構成となるため、コモンモードノイズをさらに低減することができる。
【0047】
本実施形態に係る送電共振回路618は、送電共振コンデンサCsと、送電コイルLsとが並列接続された共振回路である点が第5実施形態とは異なる。また、本実施形態に係る受電共振回路682は、受電共振コンデンサCrと、受電コイルLrとが並列接続された共振回路である点が第5実施形態とは異なる。構成が異なるものの、非接触給電システム1は、送電共振回路618と受電共振回路682とを有することにより、第5実施形態と同様に、送電コイルLsと、受電コイルLrとの磁界共振によって、非接触給電を行うことができる。
【0048】
本実施形態においても、回路ブロック630はユニット化されている。なお、本実施形態では、第5実施形態とは異なり、電力出力回路OC6は、配線W1に加え、配線W2を有するため、外部接続端子T1~T5に加え、配線W2に設けられた外部接続端子T6を有する。回路ブロック630がユニット化されていることにより、送電装置610の電力の供給能力を柔軟に変更することができる。また、回路ブロック630がユニット化されているため、回路ブロック630が有するAC/DCコンバータ12、インバータ14、およびフィルタ516の回路定数を最適化することができる。
【0049】
本実施形態では、交流電源22が十分な供給能力を有していることを前提として、回路ブロック630がAC/DCコンバータ12とインバータ14を有していることにより、第5実施形態と同様に、送電装置610の電力の供給能力を柔軟に変更することができる。つまり、送電装置610が供給する電力を増やしたい場合には、新たな回路ブロック630を増設し、送電装置610が供給する電力を減らした場合には、回路ブロック630を取り除くことにより供給能力を増減することができる。
【0050】
以上説明した第6実施形態によれば、上記実施形態と同様の効果を奏する。さらに、回路ブロック630はAC/DCコンバータ12を有し、回路ブロック630がユニット化されていることにより、交流電源22が十分な供給能力を有していることを前提として、送電装置610の電力の供給能力を柔軟に変更することができる。
【0051】
G.第7実施形態:
図7に示すように、本実施形態に係る非接触給電システム701は、回路ブロック730の数と、送電共振回路18の数と、フィルタ716の構成とが、第6実施形態とは異なる。上記各実施形態と同じ構成には同一の符号を付し、詳細な説明は適宜省略する。
【0052】
本実施形態では、送電装置710は、3つの回路ブロック730を備える。フィルタ716は、バランス型のフィルタである。具体的には、互いに直列に接続された第1リアクトルL1および第2リアクトルL2と、第1リアクトルL1と第2リアクトルL2との間に交流電源22と並列に接続された第1コンデンサC1とを含む第1接続体が第1電力配線WP1に設けられている。この第1接続体と同等の接続体である、互いに直列に接続された第3リアクトルL3および第4リアクトルL4と、第3リアクトルL3および第4リアクトルL4との間に並列に接続された第1コンデンサC1とを含む第2接続体が第2電力配線WP2に設けられている。第4リアクトルL4の後に、交流電源22と並列に第2コンデンサC2が接続されている。バランス型とすることにより、コモンモードノイズを低減することができる。
【0053】
第6実施形態と同様に、3つのフィルタ616の各々の内部の接続ラインが配線W1および配線W2で接続されている。具体的には、3つのフィルタ616のそれぞれの第1リアクトルL1と、出力ノードNoutに接続されている第2リアクトルL2との接続ライン間が配線W1にて接続されている。3つのフィルタ616のそれぞれの第3リアクトルL3と第4リアクトルL4との接続ライン間が配線W2にて接続されている。配線W1と配線W2とは近接して配置されている。これにより、各フィルタ716の出力電流の電流値や過渡特性のバラツキを抑制することができると共に、配線W1と配線W2とがペアとなるため、コモンモードノイズをさらに低減することができる。
【0054】
本実施形態では、送電装置710は、4つの送電共振回路18を有する。4つの送電共振回路18は、互いに並列に接続されている。本実施形態では、同一の交流電源22から電力が供給される複数の送電共振回路18を用いて、複数の受電装置580に非接触給電が行われる場合を例示している。複数の受電装置580に非接触給電を行う場合、電力出力回路OC7の出力電力の大きさは、一台の受電装置580に非接触給電を行う場合よりも大きくなる。このような場合、上記したように、回路ブロック730を増設することにより、送電装置710の出力電力の大きさを調整することができる。以上説明した第7実施形態によれば、上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0055】
H.第8実施形態:
図8に示すように、本実施形態に係る非接触給電システム801の送電装置810は、3相インバータ814を有する点が、第5実施形態とは異なる。上記各実施形態と同じ構成には同一の符号を付し、詳細な説明は適宜省略する。
【0056】
本実施形態に係る電力出力回路OC8が有する回路ブロック830は、3相インバータ814を有する。3相インバータ814は、直流電源24から入力される直流電力を3相の交流電力に変換し、電力配線としての第3電力配線WP3、第4電力配線WP4、および第5電力配線WP5に出力する。
【0057】
2つの回路ブロック830は、互いに並べて接続されている。ここで、並べて接続するとは、上記各実施形態のように、並列に接続される場合に加え、本実施形態のように、各回路ブロック830の同じ相の交流電力が出力される出力ノードNf間が接続され、各回路ブロック830から出力される交流電力が合流するように、複数の回路ブロック830が接続される場合も含まれる。
【0058】
第3電力配線WP3、第4電力配線WP4、および第5電力配線WP5には、フィルタ816が配置されている。具体的には、第3電力配線WP3、第4電力配線WP4、および第5電力配線WP5のそれぞれには、第1リアクトルL1と第1コンデンサC1とが直列に接続された接続体が挿入されている。第3電力配線WP3、第4電力配線WP4、および第5電力配線WP5のいずれか2本の電力配線により送電共振回路18に電力が供給される。
【0059】
本実施形態においても、2つのフィルタ816の各々の内部の接続ライン間が配線W1、配線W2および配線W3で接続されている。具体的には、第3電力配線WP3に設けられた第1リアクトルL1と、出力ノードNoutに接続されている第1コンデンサC1との接続ライン間が配線W1にて接続されている。第4電力配線WP4に設けられた第1リアクトルL1と、第1コンデンサC1との接続ライン間が配線W2にて接続されている。第5電力配線WP5に設けられた第1リアクトルL1と、第1コンデンサC1との接続ライン間が配線W3にて接続されている。これにより、各フィルタ816の出力電流の電流値や過渡特性のバラツキを抑制することができる。以上説明した第8実施形態によれば、上記各実施形態と同様の効果を奏する。
【0060】
I.第9実施形態:
図9に示すように、本実施形態に係る非接触給電システム901が有する送電装置910は、さらに、制御部としての制御回路42と、電流検出回路44と、電流センサ46とを有する点と、フィルタ916の回路構成とが第6実施形態とは異なる。制御回路42と、電流検出回路44とは、電子回路により実現される。上記各実施形態と同じ構成には同一の符号を付し、詳細な説明は適宜省略する。
【0061】
本実施形態に係る電力出力回路OC9が有する回路ブロック930が有するフィルタ916は、バランス型のフィルタである。具体的には、互いに直列に接続された第1リアクトルL1、第2リアクトルL2、および第3リアクトルL3と、第1リアクトルL1と第2リアクトルL2との間に交流電源22に並列に接続された第1コンデンサC1と、第2リアクトルL2と第3リアクトルL3との間に交流電源22に並列に接続された第2コンデンサC2とを含む第1接続体が第1電力配線WP1に設けられている。そして、この第1接続体と同様の接続体である、互いに直列に接続された第4リアクトルL4、第5リアクトルL5、および第6リアクトルL6と、第4リアクトルL4と第5リアクトルL5との間に交流電源22に並列に接続された第1コンデンサC1と、第5リアクトルL5と第6リアクトルL6との間に交流電源22に並列に接続された第2コンデンサC2とを含む第2接続体が第2電力配線WP2に設けられている。バランス型とすることにより、コモンモードノイズを低減することができる。
【0062】
第6実施形態と同様に、2つのフィルタ916の各々の内部の接続ラインが配線W1、配線W2、配線W3、および配線W4で接続されている。具体的には、第2コンデンサC2と、出力ノードNoutに接続されている第3リアクトルL3との接続ライン間が配線W1にて接続されている。第6リアクトルL6と第2コンデンサC2との接続ライン間が配線W2にて接続されている。第1コンデンサC1と、第2リアクトルL2との接続ライン間が配線W3にて接続されている。第5リアクトルL5と第1コンデンサC1との接続ライン間が配線W4にて接続されている。配線W1と配線W2とは近接して配置されている。配線W3と配線W4とは近接して配置されている。これにより、各フィルタ916の出力電流の電流値や過渡特性のバラツキを抑制することができると共に、コモンモードノイズをさらに低減することができる。
【0063】
電流センサ46は、2つのフィルタ916のそれぞれの出力ノードNfに配置されている。電流センサ46は、2つのフィルタ916のそれぞれの出力電流を検出し、電流値の大きさを示す信号を2つの電流検出回路44の各々に入力する。制御回路42は、1つのフィルタ916の出力電流と、残りの他のフィルタ916の出力電流との差が小さくなるように、インバータ14を制御するためのPWM信号のデューティを制御する。具体的には、電流検出回路44は、2つの電流センサ46から入力される電流値の大きさを示す信号を比較して、2つのフィルタ916の各々の出力電流の電流値の差である電流差を示す信号を制御回路42に入力する。制御回路42は、電流検出回路44から入力される信号を用いて、電流差が小さくなるように、インバータ14への入力信号を調整する。具体的には、インバータ14を構成するトランジスタへの入力信号であるPWM信号のデューティを変更する。例えば、一方のフィルタ916の出力電流が大きい場合、一方のフィルタ916に電力を入力するインバータ14へのPWM信号のデューティを小さくする。これにより、各フィルタ916の出力電流の電流値のバラツキをさらに抑制することができる。
【0064】
以上説明した第9実施形態によれば、上記各実施形態と同様の効果を奏すると共に、電流センサ46、電流検出回路44、および制御回路42を有するため、各フィルタ916の出力電流の電流値のバラツキをさらに抑制することができる。
【0065】
J.他の実施形態:
(J1)上記第4実施形態では、受電装置80が備えるフィルタ90は、送電装置10が備えるフィルタ416と同じ5次フィルタであるが、受電装置80と送電装置10とで、フィルタの構成は異なっていてもよい。フィルタの構成に拘わらず、送電装置10と受電装置80とにフィルタが備えられることにより、ノイズ成分を適切に減衰させることができる。
【0066】
(J2)上記第1実施形態では、交流電源22と負荷70との間に、第1リアクトルL1と第1コンデンサC1とがこの順に直列接続されている。第1リアクトルL1と第1コンデンサC1との接続順は、逆でもよい。一端子が出力ノードNoutに接続され、第1電力配線WP1に直列に接続されている電子素子が、リアクトルかコンデンサかに拘わらず、リアクトルとコンデンサとの接続ライン間が接続されていることにより、フィルタの出力電流の不均衡を抑制することができる。
【0067】
(J3)上記第4実施形態では、送電装置10の送電コイルLsの前段にフィルタ416が設けられ、受電装置80の受電コイルLrの後段にフィルタ90が設けられている。この形態とは別に、送電コイルLsの前段と、受電コイルLrの後段との何れか一方にのみフィルタを備える形態でもよい。
【0068】
本開示は、上述の実施形態や変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0069】
本開示の特徴を以下の通り示す。
(形態1)
電力が入力される電力配線(WP1~WP5,WPr1,WPr2)に設けられ、互いに並べて接続された複数の回路ブロック(30,230~930)を備え、
前記複数の回路ブロックのそれぞれは、最後段に少なくともフィルタ(16,90,216~916)を有し、
前記複数のフィルタは、それぞれ、リアクトル(L1)と、出力ノード(Nout)とは異なるノードで前記リアクトルと接続されるコンデンサ(C1)とを有し、
前記複数のフィルタがそれぞれ有する前記リアクトルと前記コンデンサとのいずれか一方は、前記出力ノードと接続するように前記電力配線に直列に接続され、
1つの前記フィルタにおける前記リアクトルと前記コンデンサとの接続ラインは、残りの他の前記フィルタにおける前記リアクトルと前記コンデンサとの接続ラインに接続されている、電力出力回路(OC1~OC9,OCR4)。
(形態2)
形態1に記載の電力出力回路を備える非接触給電システム(1,501~901)であって、
前記電力出力回路は、高周波電力を出力する回路であり、
前記フィルタは、前記電力の高調波成分を減衰するためのフィルタであり、
送電コイルを有する送電装置(10,510~910)と、
前記送電コイルから電磁誘導を用いて給電される受電コイルを有する受電装置(80,580)と、を備え、
前記電力出力回路は、前記送電コイルの前段と、前記受電コイルの後段との少なくともいずれか一方に設けられている、非接触給電システム。
(形態3)
形態2に記載の非接触給電システムであって、
前記送電装置は、さらに、前記送電コイルと共に送電共振回路を形成する送電共振コンデンサ(Cs)を有し、
前記受電装置は、さらに、前記受電コイルと共に受電共振回路を形成する受電共振コンデンサ(Cr)を有する、非接触給電システム。
(形態4)
形態1に記載の電力出力回路であって、
前記フィルタは、バンドパスフィルタである、電力出力回路。
(形態5)
形態1に記載の電力出力回路であって、
前記フィルタは、バンドパスフィルタと、バンドエリミネーションフィルタとの結合フィルタである、電力出力回路。
(形態6)
形態1に記載の電力出力回路であって、
前記フィルタは、4次フィルタである、電力出力回路。
(形態7)
形態1に記載の電力出力回路であって、
前記フィルタは、5次フィルタである、電力出力回路。
(形態8)
形態1に記載の電力出力回路であって、
前記電力配線は、第1電力配線(WP1)と、第2電力配線(WP2)とを有し、
前記リアクトルと前記コンデンサとを含む第1接続体は、前記第1電力配線に設けられ、
前記フィルタは、前記第2電力配線に前記第1接続体と同等の第2接続体を有するバランス型のフィルタであり、
1つの前記フィルタにおける前記第2電力配線に設けられた前記第2接続体の前記リアクトルと前記コンデンサとの接続ラインは、残りの他の前記フィルタにおける前記第2電力配線に設けられた前記第2接続体の前記リアクトルと前記コンデンサとの接続ラインに接続されている、電力出力回路。
(形態9)
形態2または3に記載の非接触給電システムであって、
前記送電装置は、さらに、交流電力を直流電力に変換して出力するAC/DCコンバータ(12)を有し、
前記電力出力回路は、前記AC/DCコンバータの後段であって、前記送電コイルの前段に設けられ、
前記複数の回路ブロックのそれぞれは、
前記直流電力を前記高周波電力に変換し、前記フィルタに前記高周波電力を出力するインバータ(14)を有し、
前記複数の回路ブロックのそれぞれは、ユニット化されている、非接触給電システム。
(形態10)
形態2または3に記載の非接触給電システムであって、
前記電力出力回路は、前記送電コイルの前段に設けられ、
前記複数の回路ブロックのそれぞれは、
交流電力を直流電力に変換して出力するAC/DCコンバータ(12)と、
前記直流電力を前記高周波電力に変換し、前記フィルタに前記高周波電力を出力するインバータ(14)と、を有し、
前記複数の回路ブロックのそれぞれは、ユニット化されている、非接触給電システム。
(形態11)
形態9または10に記載の非接触給電システムであって、
前記送電装置は、さらに、
前記複数のフィルタのそれぞれの出力電流を検出する複数の電流センサ(46)と、
前記複数の電流センサが検出した前記複数の出力電流を用いて、1つの前記フィルタの前記出力電流と、残りの他の前記フィルタの前記出力電流との差が小さくなるように、前記インバータを制御するためのPWM信号のデューティを制御する制御部(42)と、を有する、非接触給電システム。
【符号の説明】
【0070】
30,230~930…回路ブロック、16,90,216~916…フィルタ、C1…第1コンデンサ、L1…第1リアクトル、Nout…出力ノード、OC1~OC9,OCR4…電力出力回路、WP1~WP5,WPr1,WPr2…第1電力配線~第5電力配線