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特開2023-179139窒化物半導体装置および半導体パッケージ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179139
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】窒化物半導体装置および半導体パッケージ
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/338 20060101AFI20231212BHJP
   H01L 21/337 20060101ALI20231212BHJP
   H01L 29/41 20060101ALI20231212BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20231212BHJP
   H01L 29/417 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
H01L29/80 F
H01L29/80 H
H01L29/80 C
H01L29/80 W
H01L29/44 Y
H01L21/28 301B
H01L29/50 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092248
(22)【出願日】2022-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】大嶽 浩隆
【テーマコード(参考)】
4M104
5F102
【Fターム(参考)】
4M104AA04
4M104AA07
4M104BB02
4M104BB04
4M104BB14
4M104BB30
4M104CC01
4M104CC03
4M104DD37
4M104DD63
4M104EE06
4M104EE12
4M104EE16
4M104EE17
4M104FF11
4M104FF18
4M104GG11
5F102GB01
5F102GC01
5F102GC05
5F102GD04
5F102GJ02
5F102GJ03
5F102GJ04
5F102GJ10
5F102GK04
5F102GK08
5F102GL04
5F102GL07
5F102GQ01
5F102GR12
5F102GS08
5F102GV06
5F102GV07
5F102GV08
5F102HC01
5F102HC11
(57)【要約】
【課題】ゲート電極とドレイン電極との間の領域における電位の変動を抑制する。
【解決手段】窒化物半導体装置10は、電子走行層16と、電子走行層16上に形成された電子供給層18と、電子供給層18上に形成され、アクセプタ型不純物を含む窒化物半導体によって構成されたゲート層22と、ゲート層22上に形成されたゲート電極24と、電子供給層18、ゲート層22、およびゲート電極24を覆うとともに、第1開口26Aおよび第2開口26Bを有するパッシベーション層26と、第1開口26Aを介して電子供給層18に接しているソース電極28と、第2開口26Bを介して電子供給層18に接しているドレイン電極30と、電子供給層18の上方に形成されるとともに、パッシベーション層26に直接覆われた補助電極40とを備えている。補助電極40は、平面視でゲート電極24とドレイン電極30との間に位置している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化物半導体によって構成された電子走行層と、
前記電子走行層上に形成され、前記電子走行層よりも大きなバンドギャップを有する窒化物半導体によって構成された電子供給層と、
前記電子供給層上に形成され、アクセプタ型不純物を含む窒化物半導体によって構成されたゲート層と、
前記ゲート層上に形成されたゲート電極と、
前記電子供給層、前記ゲート層、および前記ゲート電極を覆うパッシベーション層であって、第1方向に離隔された第1開口および第2開口を有し、前記ゲート層は前記第1開口と前記第2開口との間に位置している、パッシベーション層と、
前記第1開口を介して前記電子供給層に接しているソース電極と、
前記第2開口を介して前記電子供給層に接しているドレイン電極と、
前記電子供給層の上方に形成されるとともに、前記パッシベーション層に直接覆われた補助電極と
を備え、前記補助電極は、平面視で前記ゲート電極と前記ドレイン電極との間に位置している、窒化物半導体装置。
【請求項2】
前記ゲート層は、
前記ゲート電極が形成されるゲートリッジ部と、
前記ゲートリッジ部から前記第1開口に向かって延びる、前記ゲートリッジ部よりも薄いソース側延在部と、
前記ゲートリッジ部から前記第2開口に向かって延びる、前記ゲートリッジ部よりも薄いドレイン側延在部と
を含む、請求項1に記載の窒化物半導体装置。
【請求項3】
前記補助電極は、前記パッシベーション層に接する上面と、前記ドレイン側延在部に接する底面とを含む、請求項2に記載の窒化物半導体装置。
【請求項4】
前記ドレイン側延在部は、前記第1方向において、前記ソース側延在部よりも大きい寸法を有している、請求項2に記載の窒化物半導体装置。
【請求項5】
前記補助電極は、前記パッシベーション層に接する上面と、前記電子供給層に接する底面とを含む、請求項1に記載の窒化物半導体装置。
【請求項6】
前記窒化物半導体装置は、前記補助電極が前記ソース電極に対して正にバイアスされる動作モードを有している、請求項1~5のうちのいずれか一項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項7】
前記補助電極は、前記ソース電極に電気的に接続されている、請求項1~5のうちのいずれか一項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項8】
前記パッシベーション層上に形成されるとともに、平面視で前記ゲート層と前記ドレイン電極との間の領域に少なくとも部分的に延在するフィールドプレート電極をさらに備え、前記フィールドプレート電極は、前記ソース電極に電気的に接続されている、請求項1~5のうちのいずれか一項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項9】
前記パッシベーション層は、第3開口を有する第1層と、前記第1層上に形成された第2層とを含み、
前記補助電極は、前記第1層の前記第3開口に埋設された基部と、前記第2層に直接覆われた上部とを含む、請求項8に記載の窒化物半導体装置。
【請求項10】
前記フィールドプレート電極は、前記ソース電極と連続している、請求項9に記載の窒化物半導体装置。
【請求項11】
前記補助電極は、前記パッシベーション層の前記第2層によって、前記フィールドプレート電極から離隔されている、請求項10に記載の窒化物半導体装置。
【請求項12】
前記第2層は、前記第1層よりも厚い、請求項11に記載の窒化物半導体装置。
【請求項13】
前記フィールドプレート電極は、前記第1開口と前記第2開口との間の前記パッシベーション層上において、前記ソース電極から前記第1方向に離隔されている、請求項8に記載の窒化物半導体装置。
【請求項14】
前記フィールドプレート電極は、平面視で前記補助電極とずれて配置されている、請求項13に記載の窒化物半導体装置。
【請求項15】
前記補助電極に電気的に接続されるとともに、前記窒化物半導体装置の非アクティブ領域に形成された接続部をさらに備える、請求項1~5のうちのいずれか一項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項16】
前記ドレイン電極は、前記窒化物半導体装置のアクティブ領域に形成されており、
前記非アクティブ領域は、前記アクティブ領域と、平面視で前記第1方向と直交する第2方向に隣り合っている、請求項15に記載の窒化物半導体装置。
【請求項17】
前記ゲート電極に電気的に接続されたゲート端子と、
前記ソース電極に電気的に接続されたソース端子と、
前記ドレイン電極に電気的に接続されたドレイン端子と、
前記補助電極に電気的に接続された制御端子と
をさらに備える、請求項1~5のうちのいずれか一項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項18】
前記電子走行層がGaNであり、
前記電子供給層がAlGa1-xNであり、0<x<0.3であり、
前記ゲート層がMgおよびZnのうちの少なくとも一方を不純物として含むGaNである、
請求項1~5のうちのいずれか一項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項19】
前記ドレイン側延在部の前記第1方向の寸法は、1μm以上であり、
前記補助電極の前記第1方向の寸法は、0.4μm以上である、
請求項2に記載の窒化物半導体装置。
【請求項20】
請求項17に記載の窒化物半導体装置と、
前記窒化物半導体装置に接続された駆動回路と、
複数の外部端子と
を備え、前記制御端子は、前記駆動回路に接続されているが、前記複数の外部端子のいずれにも直接接続されていない、半導体パッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、窒化物半導体装置および半導体パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、窒化物半導体を用いた高電子移動度トランジスタ(High Electron Mobility Transistor,HEMT)の製品化が進んでいる。HEMTをパワーデバイスに適用する場合、フェールセーフの観点から、ゼロバイアス時にソース-ドレイン間の電流経路(チャネル)を遮断するノーマリーオフ動作が求められる。
【0003】
特許文献1に記載された窒化物半導体装置では、第1窒化物半導体層(電子走行層)上にバンドギャップ(Al組成)の異なる第2窒化物半導体層(電子供給層)が形成されることによって、ヘテロ接合が形成されている。これにより、第1窒化物半導体層と第2窒化物半導体層との界面付近の第1窒化物半導体層内に二次元電子ガスが形成される。ゲート電極の下方においては、アクセプタ型不純物がドーピングされた窒化ガリウム層(p型GaN層)に含まれるイオン化アクセプタによって、第1窒化物半導体層および第2窒化物半導体層のエネルギーレベルが引き上げられる。この結果、ヘテロ接合界面における伝導帯のエネルギーレベルはフェルミ準位よりも高くなる。これにより、ゲート電極にバイアスを印加していないときには、二次元電子ガスによるチャネルがゲート電極の直下で遮断されるため、ノーマリーオフ型のHEMTが実現されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-73506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
HEMTにおいて、p型GaN層上に形成されたゲート電極と、電子供給層に接するドレイン電極との間の領域で電位に変動が生じると、HEMTの特性(例えば、オン抵抗、電圧ストレス耐性など)に悪影響を与える可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様による窒化物半導体装置は、窒化物半導体によって構成された電子走行層と、前記電子走行層上に形成され、前記電子走行層よりも大きなバンドギャップを有する窒化物半導体によって構成された電子供給層と、前記電子供給層上に形成され、アクセプタ型不純物を含む窒化物半導体によって構成されたゲート層と、前記ゲート層上に形成されたゲート電極と、前記電子供給層、前記ゲート層、および前記ゲート電極を覆うパッシベーション層であって、第1方向に離隔された第1開口および第2開口を有し、前記ゲート層は前記第1開口と前記第2開口との間に位置している、パッシベーション層と、前記第1開口を介して前記電子供給層に接しているソース電極と、前記第2開口を介して前記電子供給層に接しているドレイン電極と、前記電子供給層の上方に形成されるとともに、前記パッシベーション層に直接覆われた補助電極とを備えている。前記補助電極は、平面視で前記ゲート電極と前記ドレイン電極との間に位置している。
【発明の効果】
【0007】
本開示の窒化物半導体装置によれば、ゲート電極とドレイン電極との間の領域における電位の変動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態に係る例示的な窒化物半導体装置の概略断面図である。
図2図2は、図1に示す窒化物半導体装置の概略平面図である。
図3図3は、図2の一部拡大図である。
図4図4は、図1に示す窒化物半導体装置の例示的な製造工程を示す概略断面図である。
図5図5は、図4に示す工程に続く製造工程を示す概略断面図である。
図6図6は、図5に示す工程に続く製造工程を示す概略断面図である。
図7図7は、図6に示す工程に続く製造工程を示す概略断面図である。
図8図8は、図7に示す工程に続く製造工程を示す概略断面図である。
図9図9は、図8に示す工程に続く製造工程を示す概略断面図である。
図10図10は、図9に示す工程に続く製造工程を示す概略断面図である。
図11図11は、図10に示す工程に続く製造工程を示す概略断面図である。
図12図12は、図11に示す工程に続く製造工程を示す概略断面図である。
図13図13は、図12に示す工程に続く製造工程を示す概略断面図である。
図14図14は、図13に示す工程に続く製造工程を示す概略断面図である。
図15図15は、図1に示す窒化物半導体装置の回路表現である。
図16図16は、窒化物半導体装置を用いた半導体パッケージの回路図である。
図17図17は、フィールドプレート電極の変更例を示すための例示的な窒化物半導体装置の概略断面図である。
図18図18は、第2実施形態に係る例示的な窒化物半導体装置の概略断面図である。
図19図19は、ゲート層の変更例を示すための例示的な窒化物半導体装置の概略断面図である。
図20図20は、ゲート層の変更例を示すための例示的な窒化物半導体装置の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本開示の窒化物半導体装置のいくつかの実施形態を説明する。なお、説明を簡単かつ明確にするために、図面に示される構成要素は必ずしも一定の縮尺で描かれていない。また、理解を容易にするために、断面図では、ハッチング線が省略されている場合がある。添付の図面は、本開示の実施形態を例示するに過ぎず、本開示を制限するものとみなされるべきではない。
【0010】
以下の詳細な記載は、本開示の例示的な実施形態を具体化する装置、システム、および方法を含む。この詳細な記載は本来説明のためのものに過ぎず、本開示の実施形態またはこのような実施形態の適用および使用を限定することを意図しない。
【0011】
[第1実施形態]
図1は、一実施形態に係る例示的な窒化物半導体装置10の概略断面図である。窒化物半導体装置10は、半導体基板12と、半導体基板12上に形成されたバッファ層14とを含んでいてよい。図1に示される互いに直交するXYZ軸のZ軸方向は、半導体基板12の面と直交する方向である。なお、本明細書において使用される「平面視」という用語は、明示的に別段の記載がない限り、Z軸方向に沿って上方から窒化物半導体装置10を視ることをいう。窒化物半導体装置10は、電子走行層16と、電子走行層16上に形成された電子供給層18とをさらに含む。
【0012】
半導体基板12は、シリコン(Si)、シリコンカーバイド(SiC)、GaN、サファイア、または他の基板材料によって形成することができる。一例では、半導体基板12は、Si基板であってよい。半導体基板12の厚さは、例えば200μm以上1500μm以下とすることができる。
【0013】
バッファ層14は、1つまたは複数の窒化物半導体層を含んでいてよい。電子走行層16は、バッファ層14上に形成され得る。バッファ層14は、例えば半導体基板12と電子走行層16との間の熱膨張係数の不整合に起因する半導体基板12の反りや、窒化物半導体装置10におけるクラックの発生を抑制することができる任意の材料によって構成されていてよい。例えば、バッファ層14は、窒化アルミニウム(AlN)層、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)層、および異なるアルミニウム(Al)組成を有するグレーテッドAlGaN層のうちの少なくとも1つを含むことができる。例えば、バッファ層14は、単一のAlN層、単一のAlGaN層、AlGaN/GaN超格子構造を有する層、AlN/AlGaN超格子構造を有する層、またはAlN/GaN超格子構造を有する層によって構成されていてもよい。
【0014】
一例において、バッファ層14は、半導体基板12上に形成されたAlN層である第1バッファ層と、AlN層上に形成されたAlGaN層である第2バッファ層を含むことができる。第1バッファ層は、例えば、200nmの厚さを有するAlN層であってよく、一方、第2バッファ層は、例えば、300nmの厚さを有するグレーテッドAlGaN層を複数回積層することによって形成されていてもよい。なお、バッファ層14におけるリーク電流を抑制するために、バッファ層14の一部に不純物を導入してバッファ層14を半絶縁性にしてもよい。その場合、不純物は、例えば炭素(C)または鉄(Fe)であり、不純物の濃度は、例えば4×1016cm-3以上とすることができる。
【0015】
電子走行層16は、窒化物半導体によって構成されている。電子走行層16は、例えば、GaN層であってよい。電子走行層16の厚さは、例えば、0.5μm以上2μm以下とすることができる。なお、電子走行層16におけるリーク電流を抑制するために、電子走行層16の一部に不純物を導入することによって、電子走行層16の表層領域以外を半絶縁性にしてもよい。この場合、不純物は、例えばCであってよい。電子走行層16中の不純物濃度は、例えば4×1016cm-3以上とすることができる。すなわち、電子走行層16は、不純物濃度の異なる複数のGaN層、一例では、CドープGaN層と、ノンドープGaN層とを含むことができる。この場合、CドープGaN層は、バッファ層14上に形成されていてよい。CドープGaN層は、0.3μm以上2μm以下の厚さを有することができる。CドープGaN層中のC濃度は、5×1017cm-3以上9×1019cm-3以下とすることができる。ノンドープGaN層は、CドープGaN層上に形成され、0.05μm以上0.4μm以下の厚さを有することができる。ノンドープGaN層は、電子供給層18と接している。一例では、電子走行層16は、厚さ0.4μmのCドープGaN層と、厚さ0.4μmのノンドープGaN層とを含んでいてよい。また、CドープGaN層中のC濃度は約2×1019cm-3であってよい。
【0016】
電子供給層18は、電子走行層16よりも大きなバンドギャップを有する窒化物半導体によって構成されている。電子供給層18は、例えばAlGaN層であってよい。Al組成が大きいほどバンドギャップが大きくなるため、AlGaN層である電子供給層18は、GaN層である電子走行層16よりも大きなバンドギャップを有している。一例では、電子供給層18は、AlGa1-xNによって構成され、xは0.1<x<0.4であり、より好ましくは、0.1<x<0.3である。電子供給層18は、5nm以上20nm以下の厚さを有していてよい。一例では、電子供給層18は、8nm以上の厚さを有していてよい。
【0017】
電子走行層16と電子供給層18とは、互いに異なる格子定数を有する窒化物半導体によって構成されている。したがって、電子走行層16を構成する窒化物半導体(例えば、GaN)と電子供給層18を構成する窒化物半導体(例えば、AlGaN)とは、格子不整合系のヘテロ接合を形成する。電子走行層16および電子供給層18の自発分極と、ヘテロ接合界面付近の結晶歪みに起因するピエゾ分極とによって、ヘテロ接合界面付近における電子走行層16の伝導帯のエネルギーレベルはフェルミ準位よりも低くなる。これにより、電子走行層16と電子供給層18とのヘテロ接合界面に近い位置(例えば、界面から数nm程度の範囲内)において電子走行層16内には二次元電子ガス(2DEG)20が広がっている。なお、電子供給層18のAl組成および厚さのうちの少なくとも一方を増加させることにより、電子走行層16に生成される2DEG20のシートキャリア密度を増加させることができる。
【0018】
窒化物半導体装置10は、電子供給層18上に形成されたゲート層22と、ゲート層22上に形成されたゲート電極24とをさらに含む。ゲート層22は、電子供給層18の一部の上に形成されていてよい。
【0019】
ゲート層22は、アクセプタ型不純物を含む窒化物半導体によって構成されている。本実施形態では、ゲート層22は、アクセプタ型不純物がドーピングされた窒化ガリウム層(p型GaN層)であってよい。アクセプタ型不純物は、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、および炭素(C)のうちの少なくとも1つを含むことができる。ゲート層22中のアクセプタ型不純物の最大濃度は、7×1018cm-3以上1×1020cm-3以下とすることができる。一例では、ゲート層22は、MgおよびZnのうちの少なくとも一方を不純物として含むGaNであってよい。ゲート層22のさらなる詳細については後述する。
【0020】
ゲート電極24は、1つまたは複数の金属層によって構成されていてよい。一例では、ゲート電極24は、窒化チタン(TiN)層によって構成されていてよい。別の例では、ゲート電極24は、Tiからなる第1金属層と、第1金属層上に設けられたTiNからなる第2金属層とによって構成されていてもよい。ゲート電極24は、ゲート層22とショットキー接合を形成することができる。ゲート電極24は、平面視でゲート層22よりも小さい領域に形成され得る。ゲート電極24の厚さは、例えば、50nm以上200nm以下であってよい。
【0021】
窒化物半導体装置10は、電子供給層18、ゲート層22、およびゲート電極24を覆うパッシベーション層26をさらに含む。パッシベーション層26は、X軸方向に離隔された第1開口26Aおよび第2開口26Bを有している。なお、本明細書では、X軸方向を第1方向、Y軸方向を第2方向とも呼ぶ。したがって、第2方向は、平面視で第1方向と直交している。ゲート層22は、第1開口26Aと第2開口26Bとの間に位置している。より詳細には、ゲート層22は、第1開口26Aと第2開口26Bとの間であって、第2開口26Bよりも第1開口26Aに近い位置にあってよい。パッシベーション層26は、例えば、窒化シリコン(SiN)、二酸化シリコン(SiO)、酸窒化シリコン(SiON)、アルミナ(Al)、AlN、および酸窒化アルミニウム(AlON)のうちの少なくとも1つによって形成されていてよい。パッシベーション層26の厚さは、例えば、80nm以上150nm以下であってよい。
【0022】
窒化物半導体装置10は、第1開口26Aを介して電子供給層18に接しているソース電極28と、第2開口26Bを介して電子供給層18に接しているドレイン電極30とをさらに含む。ソース電極28およびドレイン電極30は、1つまたは複数の金属層(例えば、Ti層、TiN層、Al層、AlSiCu層、およびAlCu層などの任意の組み合わせ)によって構成することができる。
【0023】
ソース電極28の少なくとも一部は、第1開口26A内に充填されているので、第1開口26Aを介して電子供給層18直下の2DEG20とオーミック接触することができる。同様に、ドレイン電極30の少なくとも一部は、第2開口26B内に充填されているので、第2開口26Bを介して電子供給層18直下の2DEG20とオーミック接触することができる。
【0024】
(ゲート層の詳細)
ゲート層22は、ゲート電極24が形成される上面22Aと、電子供給層18に接する底面22Bとを含んでいてよい。図1に示す例では、ゲート層22は、上面22Aを含むゲートリッジ部32と、ゲートリッジ部32よりも薄いソース側延在部34およびドレイン側延在部36とを含んでいてよい。ソース側延在部34およびドレイン側延在部36は、平面視でゲートリッジ部32から外側に延びている。
【0025】
ソース側延在部34は、平面視でゲートリッジ部32から第1開口26Aに向けて延びている。ソース側延在部34は、第1開口26Aまでは達していない。ソース側延在部34は、パッシベーション層26によってソース電極28から離隔されている。
【0026】
ドレイン側延在部36は、平面視でゲートリッジ部32から第2開口26Bに向けて延びている。ドレイン側延在部36は、第2開口26Bまでは達していない。ドレイン側延在部36は、パッシベーション層26によってドレイン電極30から離隔されている。
【0027】
ゲートリッジ部32は、ソース側延在部34とドレイン側延在部36との間にあり、ソース側延在部34およびドレイン側延在部36と一体に形成されている。ソース側延在部34およびドレイン側延在部36の存在により、ゲート層22の底面22Bは、上面22Aよりも大きな面積を有している。図1に示す例では、ドレイン側延在部36は、ソース側延在部34よりも、平面視でゲートリッジ部32の外側に向けて長く延びている。すなわち、ドレイン側延在部36は、ソース側延在部34よりも大きいX軸方向の寸法を有している。別の例では、ソース側延在部34とドレイン側延在部36とは、X軸方向において同じ寸法を有していてもよい。ソース側延在部34は、X軸方向において、例えば0.2μm以上0.3μm以下の寸法を有し得る。一方、ドレイン側延在部36は、X軸方向において、例えば0.5μm以上1.5μm以下の寸法を有し得る。一例では、ドレイン側延在部36のX軸方向の寸法は、1μm以上であってよい。
【0028】
ゲートリッジ部32は、ゲート層22の比較的厚い部分に相当する。ゲートリッジ部32は、例えば、80nm以上150nm以下の厚さを有していてよい。ゲートリッジ部32の厚さは、ゲート閾値電圧を含むパラメータを考慮して定めることができる。一例では、ゲートリッジ部32は、110nmよりも大きい厚さを有していてよい。
【0029】
ソース側延在部34およびドレイン側延在部36の各々は、ゲートリッジ部32の厚さよりも小さい厚さを有している。一例では、ソース側延在部34およびドレイン側延在部36の各々は、ゲートリッジ部32の厚さの半分以下の厚さを有していてよい。
【0030】
ソース側延在部34およびドレイン側延在部36の各々は、略一定の厚さを有する平坦部分を含んでいてよい。ソース側延在部34およびドレイン側延在部36の各々は、図1に示すように、ゲートリッジ部32から遠ざかるほど漸減する厚さを有する傾斜部分をさらに含んでいてもよい。傾斜部分は、ゲートリッジ部32と平坦部分との間に形成される。ソース側延在部34およびドレイン側延在部36の平坦部分は、一例では、5nm以上25nm以下の厚さを有していてもよい。なお、本明細書において「略一定の厚さ」とは、厚さが製造上のばらつき(例えば、20%)の範囲内にあることを指す。
【0031】
(フィールドプレート電極)
窒化物半導体装置10は、パッシベーション層26上に形成されたフィールドプレート電極38をさらに含んでいてよい。フィールドプレート電極38は、平面視でゲート層22とドレイン電極30との間の領域に少なくとも部分的に延在している。フィールドプレート電極38は、ドレイン電極30から離隔されている。したがって、フィールドプレート電極38は、平面視でドレイン電極30(第2開口26B)とゲート層22との間に位置する端部38Aを含んでいてよい。
【0032】
フィールドプレート電極38は、ソース電極28に電気的に接続されている。図1の例においては、フィールドプレート電極38は、ソース電極28と連続していてよい。この場合、フィールドプレート電極38は、ソース電極28と一体的に形成されている。一体的に形成された電極のうち、ソース電極28は、少なくともパッシベーション層26の第1開口26Aに埋設された部分を含んでいてよく、フィールドプレート電極38は、残りの部分を含んでいてよい。
【0033】
フィールドプレート電極38は、ゲート電極24にゲート電圧が印加されていないゼロバイアスの状態でドレイン電極30にドレイン電圧が印加された場合に、ゲート電極24の端部近傍の電界集中を緩和する役割を果たすことができる。
【0034】
(補助電極の詳細)
窒化物半導体装置10は、平面視でX軸方向においてゲート層22とドレイン電極30との間に位置している補助電極40をさらに含む。補助電極40は、電子供給層18の上方に形成されるとともに、パッシベーション層26に直接覆われている。補助電極40は、パッシベーション層26に接する上面40Aを含んでいてよい。図1の例では、補助電極40は、ゲート層22のドレイン側延在部36上に形成されている。すなわち、補助電極40は、ドレイン側延在部36に接する底面40Bを含んでいる。窒化物半導体装置10は、補助電極40がソース電極28に対して正にバイアスされる動作モードを有していてよい。一例では、窒化物半導体装置10は、ソース電極28が接地され、かつ補助電極40が電圧V(>0)を印加される動作モードを有していてよい。
【0035】
補助電極40は、1つまたは複数の金属層(例えば、Ti層、TiN層、Al層、AlSiCu層、およびAlCu層などの任意の組み合わせ)によって構成することができる。
【0036】
パッシベーション層26は、第3開口42Aを有する第1層42と、第1層42上に形成された第2層44とを含んでいてよい。補助電極40は、第1層42の第3開口42Aに埋設された基部46と、第2層44に直接覆われた上部48とを含む。上部48は、平面視で第3開口42Aよりも広い領域に形成されている。一例では、補助電極40(例えば基部46)のX軸方向の寸法は、0.4μm以上であってよい。
【0037】
図1の例では、補助電極40は、パッシベーション層26によってフィールドプレート電極38と電気的に絶縁されている。より詳細には、補助電極40は、パッシベーション層26の第2層44によってフィールドプレート電極38から離隔されている。
【0038】
パッシベーション層26の第2層44は、第1層42よりも厚くてよい。一例では、パッシベーション層26が約100nmの厚さを有する場合、第1層42は約20nmの厚さを有し、かつ第2層44は約80nmの厚さを有していてよい。
【0039】
(電極接続端子)
窒化物半導体装置10は、ゲート端子50と、ソース端子52と、ドレイン端子54と、制御端子56とをさらに含むことができる。各端子50,52,54,56は、金属パッド、または金属パッドに接続された内部端子として形成されていてよい。ゲート端子50は、ゲート電極24に電気的に接続されている。ソース端子52は、ソース電極28に電気的に接続されている。ソース端子52は、フィールドプレート電極38にも電気的に接続されている。ドレイン端子54は、ドレイン電極30に電気的に接続されている。制御端子56は、補助電極40に電気的に接続されている。
【0040】
(窒化物半導体装置のレイアウト)
図2は、図1に示す窒化物半導体装置10の概略平面図である。図2では、図1の構成要素と同様な構成要素には同一の符号が付されている。なお、図示を簡略化して理解を容易にするために、図2ではゲート電極24の図示は省略されている。また、ソース電極28、フィールドプレート電極38、およびパッシベーション層26は、下方の層が視認できるように透明であるものとして示されている。パッシベーション層26については、第1開口26Aおよび第2開口26Bが破線で描かれている。ゲート層22のうち、ゲートリッジ部32は実線で描かれているが、ソース側延在部34およびドレイン側延在部36は破線で描かれている。
【0041】
図2に示されるように、窒化物半導体装置10は、トランジスタ動作に寄与するアクティブ領域58と、トランジスタ動作に寄与しない非アクティブ領域60とを含む。図2の例では、アクティブ領域58と非アクティブ領域60とはY軸方向に交互に配置されている。ドレイン電極30は、アクティブ領域58に形成されている。アクティブ領域58は、Y軸方向において、ドレイン電極30と略同じ範囲に広がっていてよい。非アクティブ領域60は、Y軸方向において、ドレイン電極30が存在しない範囲に広がっていてよい。したがって、非アクティブ領域60は、アクティブ領域58とY軸方向に隣り合っている。
【0042】
窒化物半導体装置10は、アクティブ領域58において、ソース電極28、ゲート電極24(図2では図示略)が配置されたゲート層22、およびドレイン電極30が一方向(図2ではX軸方向)に隣り合って配置されることによりHEMTとして動作することができる。図2は、1つのアクティブ領域58において、第2開口26Bを中心としてX軸方向に対称に配置された2つの第1開口26Aを示している。補助電極40は、アクティブ領域58において、ドレイン側延在部36上に配置されている。
【0043】
窒化物半導体装置10は、非アクティブ領域60に形成された接続部62をさらに含んでいてよい。接続部62は、補助電極40に電気的に接続されている。図2に示すように、Y軸方向に延びる補助電極40が、X軸方向に延びる接続部62に連結されていてよい。接続部62は、補助電極40と同様、パッシベーション層26に覆われている。
【0044】
図3は、図2の一部拡大図である。図3に示すように、窒化物半導体装置10は、ゲート配線64、ゲート配線64のためのビア66、制御配線68、および制御配線68のためのビア70をさらに含んでいてよい。
【0045】
図3の例では、ゲート配線64は、X軸方向に延びている。ビア66は、ゲート配線64をゲート電極24に接続するように構成されている。ゲート配線用ビア66は、平面視でゲート配線64とゲート電極24とが重なる領域内に配置することができる。図3の例では、ビア66は、ドレイン電極30からY軸方向に離隔されている。ビア66は、パッシベーション層26(図1参照)と、パッシベーション層26上に形成された層間絶縁層(図示略)とを貫通するようにZ軸方向に延びていてよい。ゲート配線64は、ゲート端子50(図1参照)に電気的に接続されている。
【0046】
制御配線68は、ゲート配線64と略平行に延びていてよい。ビア70は、制御配線68を接続部62に接続するように構成されている。したがって、補助電極40は、接続部62およびビア70を介して制御配線68に接続されている。ビア70は、平面視で制御配線68と接続部62とが重なる領域内に配置することができる。図3の例では、ビア70は、ドレイン電極30からY軸方向に離隔されている。ビア70は、パッシベーション層26(図1参照)と、パッシベーション層26上に形成された層間絶縁層(図示略)とを貫通するようにZ軸方向に延びていてよい。制御配線68は、制御端子56(図1参照)に電気的に接続されている。
【0047】
接続部62のY軸方向の寸法D2は、補助電極40のX軸方向の寸法D1よりも大きい。接続部62のY軸方向の寸法D2を、ビア70の寸法よりも大きくすることで、補助電極40のX軸方向の寸法D1を増加させることなく、制御配線68との接続を提供することができる。
【0048】
(窒化物半導体装置の製造方法)
次に、図1に示す窒化物半導体装置10の製造方法の一例を説明する。図4図14は、窒化物半導体装置10の例示的な製造工程を示す概略断面図である。なお、理解を容易にするために、図4図14では、図1の構成要素と同様な構成要素には同一の符号が付されている。
【0049】
図4に示すように、窒化物半導体装置10の製造方法は、例えばSi基板である半導体基板12上に、バッファ層14、電子走行層16、電子供給層18、窒化ガリウム(GaN)層72、金属層74を順に形成することを含んでいる。バッファ層14、電子走行層16、電子供給層18、およびGaN層72は、有機金属気相成長(Metal Organic Chemical Vapor Deposition,MOCVD)法を用いてエピタキシャル成長させることができる。金属層74は、一例では、スパッタ法を用いて形成することができる。
【0050】
詳細な図示は省略するが、一例では、バッファ層14は多層バッファ層であってよい。多層バッファ層は、半導体基板12上に形成されたAlN層(第1バッファ層)と、AlN層上に形成されたグレーテッドAlGaN層(第2バッファ層)とを含み得る。グレーテッドAlGaN層は、例えば、AlN層に近い側から順にAl組成を75%、50%、25%とした3つのAlGaN層を積層することによって形成することができる。
【0051】
バッファ層14上に形成される電子走行層16は、GaN層であってよい。電子走行層16上に形成される電子供給層18は、AlGaN層であってよい。したがって、電子供給層18は、電子走行層16よりも大きなバンドギャップを有する窒化物半導体によって構成されている。
【0052】
電子供給層18上に形成されるGaN層72は、アクセプタ型不純物としてマグネシウムを含んでいてよい。電子供給層18上にGaN層72を成長させる間にマグネシウムをドーピングすることによって、アクセプタ型不純物を含むGaN層72を形成することができる。GaN層72にドーピングされるマグネシウムの量は、例えば、成長チャンバ内に導入されるドーピングガス(例えば、ビスシクロペンタジエニルマグネシウム(CpMg))の流量、成長温度などを制御することにより調整することができる。一例では、GaN層72は、1×1018cm-3以上1×1020cm-3未満の濃度のマグネシウムを不純物として含んでいてよい。
【0053】
金属層74は、例えばスパッタ法によってGaN層72上に形成することができる。金属層74は、一例では、TiN層であってよい。
図5は、図4に示す工程に続く製造工程を示す概略断面図である。図5に示すように、窒化物半導体装置10の製造方法は、金属層74(図4参照)をリソグラフィおよびエッチングによって選択的に除去して、ゲート電極24を形成することをさらに含む。この工程では、金属層74のうち、ゲート電極24とされるべき部分上にマスク76が形成される。マスク76は、例えば金属層74上に設けたフォトレジストを露光することにより形成することができる。別の例では、マスク76はハードマスクであってもよい。次いで、このマスク76を用いて金属層74をエッチングすることにより、マスク76に覆われていない領域の金属層74が除去される。この結果、マスク76に覆われた領域の金属層74が残り、ゲート電極24を形成することができる。マスク76は、エッチング後に除去される。
【0054】
図6は、図5に示す工程に続く製造工程を示す概略断面図である。図6に示すように、窒化物半導体装置10の製造方法は、GaN層72をリソグラフィおよびエッチングによって選択的に除去して、ゲートリッジ部32を形成することをさらに含む。この工程では、ゲート電極24の上面および側面を覆うマスク78が形成され、マスク78を利用してGaN層72がパターニングされる。この結果、マスク78の下に位置するGaN層72はエッチング後も残り、図1に示すゲートリッジ部32が形成される。マスク78に覆われていないGaN層72の厚さはエッチングにより減少する。このとき、GaN層72は、ゲートリッジ部32に隣接する領域では、ゲートリッジ部32から遠ざかるほど漸減する厚さを有するが、ゲートリッジ部32から所定の距離を越えて離れた領域においては略一定の厚さを有するようにエッチングされてよい。
【0055】
図6に示すエッチングプロセスは、上述のような所望の形状を得るための複数のエッチングステップを含んでいてもよく、あるいは、マスク78で覆われた構造の近傍においてエッチング速度が遅くなるように選択された条件による単一のエッチングステップを含んでいてもよい。マスク78は、レジストマスクであってもよいし、ハードマスクであってもよい。例えば、マスク78は、コンフォーマルに成膜可能なSiN膜によって形成されたハードマスクであってもよい。マスク78は、エッチング後に除去される。
【0056】
図7は、図6に示す工程に続く製造工程を示す概略断面図である。図7に示すように、窒化物半導体装置10の製造方法は、GaN層72(図6参照)をリソグラフィおよびエッチングによって選択的に除去して、ソース側延在部34およびドレイン側延在部36を形成することをさらに含む。この工程では、ゲート電極24と、ゲートリッジ部32と、ソース側延在部34およびドレイン側延在部36に相当するGaN層72の部分とを覆うマスク80が形成され、次いでマスク80を利用してGaN層72がパターニングされる。この結果、ゲートリッジ部32、ソース側延在部34、およびドレイン側延在部36を含むゲート層22が、電子供給層18上に形成される。マスク80は、エッチング後に除去される。
【0057】
図8は、図7に示す工程に続く製造工程を示す概略断面図である。図8に示すように、窒化物半導体装置10の製造方法は、電子供給層18、ゲート層22、およびゲート電極24の露出した表面全体を覆うようにパッシベーション層26(図1参照)の第1層42を形成することをさらに含む。一例では、第1層42は、減圧CVD(Low-Pressure Chemical Vapor Deposition,LPCVD)法により形成されたSiN層であってよい。
【0058】
図9は、図8に示す工程に続く製造工程を示す概略断面図である。図9に示すように、窒化物半導体装置10の製造方法は、第1層42をリソグラフィおよびエッチングによって選択的に除去して、第3開口42Aを形成することをさらに含む。この工程では、第3開口42Aが形成される領域を除き、第1層42を覆うマスク82が形成され、次いでマスク82を利用して第1層42がパターニングされる。この結果、ドレイン側延在部36を露出させる第3開口42Aが形成される。マスク82は、エッチング後に除去される。
【0059】
図10は、図9に示す工程に続く製造工程を示す概略断面図である。図10に示すように、窒化物半導体装置10の製造方法は、第1層42を覆う金属層84を形成することをさらに含む。金属層84は、第3開口42Aを充填し、第3開口42Aを介してドレイン側延在部36と接するように形成される。一例では、金属層84は、Ti層、TiN層、Al層、AlSiCu層、およびAlCu層のうちの少なくとも1つを含んでいてよい。
【0060】
図11は、図10に示す工程に続く製造工程を示す概略断面図である。図11に示すように、窒化物半導体装置10の製造方法は、金属層84(図10参照)をリソグラフィおよびエッチングによって選択的に除去して、補助電極40を形成することをさらに含む。この工程では、補助電極40となる金属層84の部分上にマスク86が形成され、次いでマスク86を利用して金属層84がパターニングされる。マスク86は、平面視で第3開口42Aと重なる領域に形成される。マスク86の面積は、第3開口42Aとの位置合わせのマージンを考慮して、第3開口42Aよりも大きくてよい。この結果、補助電極40は、第1層42の第3開口42Aに埋設された基部46と、平面視で第3開口42Aよりも広い領域に形成された上部48とを含む。マスク86は、エッチング後に除去される。
【0061】
図12は、図11に示す工程に続く製造工程を示す概略断面図である。図12に示すように、窒化物半導体装置10の製造方法は、パッシベーション層26の第1層42上に第2層44を形成することをさらに含む。一例では、第2層44は、LPCVD法により形成されたSiN層であってよい。
【0062】
パッシベーション層26の第2層44は、第1層42よりも厚く形成されていてよい。一例では、パッシベーション層26が約100nmの厚さを有する場合、第1層42は約20nmの厚さを有し、かつ第2層44は約80nmの厚さを有していてよい。
【0063】
図13は、図12に示す工程に続く製造工程を示す概略断面図である。図13に示すように、窒化物半導体装置10の製造方法は、第1層42および第2層44を含むパッシベーション層26をリソグラフィおよびエッチングによって選択的に除去して、第1開口26Aおよび第2開口26Bを形成することをさらに含む。この工程では、第1開口26Aおよび第2開口26Bが形成される領域を除き、パッシベーション層26を覆うマスク88が形成され、次いでマスク88を利用して第1層42および第2層44を含むパッシベーション層26がパターニングされる。この結果、第1層42および第2層44を貫通して電子供給層18を露出させる第1開口26Aおよび第2開口26Bが形成される。第1開口26Aおよび第2開口26Bは、ゲート層22が第1開口26Aと第2開口26Bとの間に位置するように形成される。ゲート層22は、第2開口26Bよりも第1開口26Aの近くに位置していてよい。マスク88は、エッチング後に除去される。
【0064】
図14は、図13に示す工程に続く製造工程を示す概略断面図である。図14に示すように、窒化物半導体装置10の製造方法は、パッシベーション層26を覆う金属層89を形成することをさらに含む。金属層89は、第1開口26Aおよび第2開口26Bを充填し、第1開口26Aおよび第2開口26Bを介して電子供給層18と接するように形成される。一例では、金属層89は、Ti層、TiN層、Al層、AlSiCu層、およびAlCu層のうちの少なくとも1つを含んでいてよい。
【0065】
次いで、金属層89をリソグラフィおよびエッチングによって選択的に除去することにより、図1に示すソース電極28、ドレイン電極30、およびフィールドプレート電極38を形成することができる。これにより、図1に示す窒化物半導体装置10を得ることができる。
【0066】
(窒化物半導体装置を用いたハーフブリッジモジュール)
図15は、図1に示す窒化物半導体装置10の回路表現を示す。図1を参照して上述したように、窒化物半導体装置10は、ゲート端子50と、ソース端子52と、ドレイン端子54と、制御端子56とを有していてよい。図16は、窒化物半導体装置10を用いた半導体パッケージ90の回路図である。半導体パッケージ90は、2つの窒化物半導体装置10が直列に接続されたハーフブリッジモジュールである。半導体パッケージ90は、窒化物半導体装置10と、窒化物半導体装置10に接続された駆動回路92と、複数の外部端子94A,94B,94C,94D,94Eとを含んでいる。
【0067】
外部端子94A,94Bは、駆動回路92に接続されるとともに、信号S1,S2を駆動回路92に入力するように構成されている。外部端子94C,94Dは、電源端子に相当する。一例では外部端子94Cは電圧Vinを印加され、外部端子94Dは接地されていてよい。外部端子94Cと外部端子94Dとの間には、2つの窒化物半導体装置10が直列に接続されている。ここで、2つの窒化物半導体装置10を区別するために、外部端子94Cに接続された窒化物半導体装置10をハイサイドスイッチTr1と呼び、外部端子94Dに接続された窒化物半導体装置10をローサイドスイッチTr2と呼ぶ。ハイサイドスイッチTr1のゲート端子50および制御端子56は、駆動回路92に接続されている。ローサイドスイッチTr2のゲート端子50および制御端子56は、駆動回路92に接続されている。ハイサイドスイッチTr1のドレイン端子54は、外部端子94Cに接続されている。ローサイドスイッチTr2のソース端子52は、外部端子94Dに接続されている。外部端子94Eは、ハイサイドスイッチTr1のソース端子52およびローサイドスイッチTr2のドレイン端子54に接続されるとともに、電圧Voutを出力するように構成されている。
【0068】
このように、窒化物半導体装置10(Tr1,Tr2)の制御端子56は、駆動回路92に接続されているが、複数の外部端子94A,94B,94C,94D,94Eのいずれにも直接接続されていない。したがって、窒化物半導体装置10が、補助電極40と、補助電極40に電気的に接続された制御端子56とを含んでいる場合であっても、外部端子の数を増加させる必要はない。
【0069】
(作用)
以下、本実施形態の窒化物半導体装置10の作用について説明する。窒化物半導体装置10のゲート電極24に閾値電圧を超える電圧が印加されている場合、電子走行層16に2DEG20によるチャネルが形成されてソース-ドレイン間が導通する。一方、ゼロバイアス時には、電子走行層16中、ゲート層22の下に位置する領域の少なくとも一部で2DEG20が形成されない(図1参照)。これは、ゲート層22がアクセプタ型不純物を含んでいるために、電子走行層16および電子供給層18のエネルギーレベルが引き上げられ、その結果、2DEG20が空乏化されるためである。これにより、窒化物半導体装置10のノーマリーオフ動作が実現される。
【0070】
窒化物半導体装置10において、ソース電極28を基準としてドレイン電極30に正の電圧が印加される際、ゲート電極24とドレイン電極30との間の領域(本実施形態では、ドレイン側延在部36の近傍)において電子トラップが起こり得る。例えば、電子は、窒化物半導体装置10の製造中のプロセスダメージ(例えばエッチングダメージ)により形成された(例えば電子供給層18の)欠陥サイトにトラップされ得る。また、ドレイン電極30に正の電圧が印加される際、ゲート電極24とドレイン電極30との間にも電位差が生じるため、ゲート層22中のホールがゲート電極24から引き抜かれ得る。このような電子トラップおよびホール引き抜きは、特にゲート電極24とドレイン電極30との間の領域における電位の変動を引き起こし、その結果、ゲートバイアスを実質的に減少させる。これは、例えば2DEG20の減少によるオン抵抗の上昇を引き起こし得る。
【0071】
この点、本実施形態の窒化物半導体装置10は、電子供給層18の上方に形成されるとともに、パッシベーション層26に直接覆われた補助電極40を含み、補助電極40は、平面視でゲート電極24とドレイン電極30との間に位置している。補助電極40をゲート電極24とドレイン電極30との間に設けることにより、ゲート電極24とドレイン電極30との間の領域における電位の変動を抑制することができる。
【0072】
本実施形態のように、補助電極40がソース電極28に対して正にバイアスされる動作モードを窒化物半導体装置10が有している例では、ゲート電極24に正バイアス(例えば、Vgs=5V)が印加されているときに補助電極40からホールを注入することにより、ゲート電極24とドレイン電極30との間の領域における電位の変動を抑制することができる。例えば、補助電極40からホールを注入することにより、2DEG20の減少を修正して窒化物半導体装置10の特性の変動(例えばオン抵抗の上昇)を抑制することができる。
【0073】
本実施形態の窒化物半導体装置10は、以下の利点を有する。
(1-1)窒化物半導体装置10は、電子供給層18の上方に形成されるとともに、パッシベーション層26に直接覆われた補助電極40を含み、補助電極40は、平面視でゲート電極24とドレイン電極30との間に位置している。ゲート電極24とドレイン電極30との間に補助電極40を設けることにより、ゲート電極24とドレイン電極30との間の領域における電位の変動を抑制することができる。
【0074】
(1-2)ゲート層22は、ゲート電極24が形成されるゲートリッジ部32と、ゲートリッジ部32から第1開口26Aに向かって延びる、ゲートリッジ部32よりも薄いソース側延在部34と、ゲートリッジ部32から第2開口26Bに向かって延びる、ゲートリッジ部32よりも薄いドレイン側延在部36とを含んでいてよい。ゲート層22がソース側延在部34およびドレイン側延在部36を含むことにより、ゲート層22内の局所的な電界集中を抑制することができる。この結果、ゲートリーク電流の発生が抑制されるので、ゲート耐圧を向上させることができる。
【0075】
(1-3)補助電極40は、パッシベーション層26に接する上面40Aと、ドレイン側延在部36に接する底面40Bとを含んでいてよい。補助電極40の底面40Bがゲート層22のドレイン側延在部36に接しているため、特にドレイン側延在部36の近傍における電位の変動を抑制することができる。
【0076】
(1-4)ドレイン側延在部36は、第1方向(図1に示すX軸方向)において、ソース側延在部34よりも大きい寸法を有していてよい。これにより、比較的大きな電界が印加され得るゲート電極24とドレイン電極30との間の領域におけるゲートリーク電流の発生を抑制することができる。
【0077】
(1-5)窒化物半導体装置10は、補助電極40がソース電極28に対して正にバイアスされる動作モードを有していてよい。正にバイアスされた補助電極40からホールを注入することにより、ゲート電極24とドレイン電極30との間の領域における電位の変動を抑制することができる。
【0078】
(1-6)窒化物半導体装置10は、パッシベーション層26上に形成されるとともに、平面視でゲート層22とドレイン電極30との間の領域に少なくとも部分的に延在するフィールドプレート電極38をさらに備えていてよい。フィールドプレート電極38は、ソース電極28に電気的に接続されている。これにより、ゲート電極24にゲート電圧が印加されていないゼロバイアスの状態でドレイン電極30にドレイン電圧が印加された場合に、ゲート電極24の端部近傍の電界集中を緩和することができる。
【0079】
(1-7)パッシベーション層26は、第3開口42Aを有する第1層42と、第1層42上に形成された第2層44とを含み、補助電極40は、第1層42の第3開口42Aに埋設された基部46と、第2層44に直接覆われた上部48とを含んでいてよい。補助電極40は、パッシベーション層26の第2層44によって、フィールドプレート電極38から離隔されており、第2層44は、第1層42よりも厚くてよい。これにより、補助電極40とフィールドプレート電極38との間の寄生容量を低減することができる。
【0080】
(1-8)窒化物半導体装置10は、補助電極40に電気的に接続されるとともに、窒化物半導体装置10の非アクティブ領域60に形成された接続部62をさらに含んでいてよい。これにより、補助電極40を接続するためのアクティブ領域58の面積増加を抑制することができる。
【0081】
(1-9)ゲート層22は、第2開口26Bよりも第1開口26Aの近くに配置されている。これにより、ゲート電極24とドレイン電極30との距離を相対的に大きくすることができるため、比較的大きな電圧がかかりやすいゲート・ドレイン間の絶縁破壊を抑制することができる。
【0082】
[フィールドプレート電極の変更例]
図17は、フィールドプレート電極の変更例を示すための例示的な窒化物半導体装置100の概略断面図である。図17において、図1に示す窒化物半導体装置10と同様の構成要素には同じ符号が付されている。また、窒化物半導体装置10と同様な構成要素については詳細な説明を省略する。
【0083】
図17に示すように、窒化物半導体装置100は、フィールドプレート電極102を含む。フィールドプレート電極102は、第1開口26Aと第2開口26Bとの間のパッシベーション層26上において、ソース電極28からX軸方向に離隔されている。これは、図1に示すフィールドプレート電極38が、第1開口26Aと第2開口26Bとの間のパッシベーション層26上においてソース電極28と連続しているのとは対照的である。フィールドプレート電極102は、ソース電極28と離隔されているが、ソース電極28に電気的に接続されている。
【0084】
フィールドプレート電極102は、フィールドプレート電極38と同様、平面視でゲート層22とドレイン電極30との間の領域に少なくとも部分的に延在している。また、フィールドプレート電極102は、平面視で補助電極40とドレイン電極30との間に位置している。すなわち、フィールドプレート電極102は、平面視で補助電極40とずれて配置されている。補助電極40の上面40Aは、フィールドプレート電極102と対向していないので、窒化物半導体装置100では、補助電極40とフィールドプレート電極102との間の寄生容量の増加を抑制することができる。加えて、窒化物半導体装置100は、窒化物半導体装置10について上記した利点(1-1)~(1-6)、(1-8)、および(1-9)と同様の利点を有している。
【0085】
[第2実施形態]
図18は、第2実施形態に係る例示的な窒化物半導体装置200の概略断面図である。図18において、図1に示す窒化物半導体装置10と同様の構成要素には同じ符号が付されている。また、窒化物半導体装置10と同様な構成要素については詳細な説明を省略する。
【0086】
図18に示すように、第2実施形態に係る窒化物半導体装置200は、窒化物半導体装置10と同様の構造を有している。窒化物半導体装置200では、窒化物半導体装置10とは異なり、補助電極40がソース電極28に電気的に接続されている。したがって、窒化物半導体装置200は、図1に示す制御端子56のような制御端子を含んでいなくてよい。第2実施形態においては、補助電極40は、第2のフィールドプレート電極として機能することができる。すなわち、窒化物半導体装置200は、フィールドプレート電極38に加えて、第2のフィールドプレート電極として機能することができる補助電極40を含んでいる。
【0087】
なお、窒化物半導体装置200において、フィールドプレート電極38の代わりに図17に示すフィールドプレート電極102を用いてもよい。この場合、第1開口26Aと第2開口26Bとの間の領域において相互に離隔されたソース電極28、フィールドプレート電極102、および補助電極40が、相互に電気的に接続されている。
【0088】
(作用)
以下、本実施形態の窒化物半導体装置200の作用について説明する。窒化物半導体装置200のゲート電極24に閾値電圧を超える電圧が印加されている場合、電子走行層16に2DEG20によるチャネルが形成されてソース-ドレイン間が導通する。一方、ゼロバイアス時には、電子走行層16中、ゲート層22の下に位置する領域の少なくとも一部で2DEG20が形成されない(図18参照)。これは、ゲート層22がアクセプタ型不純物を含んでいるために、電子走行層16および電子供給層18のエネルギーレベルが引き上げられ、その結果、2DEG20が空乏化されるためである。これにより、窒化物半導体装置200のノーマリーオフ動作が実現される。
【0089】
窒化物半導体装置200において、ソース電極28を基準としてドレイン電極30に正の電圧が印加される際、ゲート電極24とドレイン電極30との間の領域(本実施形態では、ドレイン側延在部36の近傍)において電子トラップが起こり得る。例えば、電子は、窒化物半導体装置200の製造中のプロセスダメージ(例えばエッチングダメージ)により形成された(例えば電子供給層18の)欠陥サイトにトラップされ得る。また、ドレイン電極30に正の電圧が印加される際、ゲート電極24とドレイン電極30との間にも電位差が生じるため、ゲート層22中のホールがゲート電極24から引き抜かれ得る。このような電子トラップおよびホール引き抜きは、特にゲート電極24とドレイン電極30との間の領域における電位の変動を引き起こし、その結果、ゲートバイアスを実質的に減少させる。これは、例えば2DEG20の減少によるオン抵抗の上昇を引き起こし得る。
【0090】
この点、本実施形態の窒化物半導体装置200は、電子供給層18の上方に形成されるとともに、パッシベーション層26に直接覆われた補助電極40を含み、補助電極40は、平面視でゲート電極24とドレイン電極30との間に位置している。ゲート電極24とドレイン電極30との間に補助電極40を設けることにより、ゲート電極24とドレイン電極30との間の領域における電位の変動を抑制することができる。
【0091】
本実施形態のように、補助電極40がソース電極28に電気的に接続されている例では、トラップされていた電子が補助電極40からソース電極28に抜けていくため、ゲート電極24とドレイン電極30との間の領域における電位の変動を抑制することができる。
【0092】
また、補助電極40がソース電極28に電気的に接続されていることにより、補助電極40は、第2のフィールドプレート電極として機能するため、ゲート電極24の端部近傍の電界集中を緩和することができる。補助電極40は、フィールドプレート電極38よりも2DEG20の近くに位置しているため、ゲート電極24とドレイン電極30との間の領域における電位の変動をより効果的に低減することができる。
【0093】
本実施形態の窒化物半導体装置200は、以下の利点を有する。
(2-1)補助電極40は、ソース電極28に電気的に接続されている。これにより、トラップされていた電子が、補助電極40からソース電極28に抜けるようにすることができるとともに、ゲート電極24の端部近傍の電界集中を緩和することができる。この結果、ゲート電極24とドレイン電極30との間の領域における電位の変動を抑制することができる。
【0094】
加えて、窒化物半導体装置200は、窒化物半導体装置10について上記した利点(1-1)~(1-4)、(1-6)、(1-8)、(1-9)と同様の利点を有している。
[ゲート層の変更例]
図19は、ゲート層の変更例を示すための例示的な窒化物半導体装置300の概略断面図である。図19において、図1に示す窒化物半導体装置10と同様の構成要素には同じ符号が付されている。また、窒化物半導体装置10と同様な構成要素については詳細な説明を省略する。
【0095】
図19に示すように、窒化物半導体装置300は、ゲート層302を含む。ゲート層302は、図1に示すソース側延在部34およびドレイン側延在部36のような延在部を含んでいない。ゲート層302は、図1に示すゲートリッジ部32に相当する。ゲート層302は、ゲート電極24が形成される上面302Aと、電子供給層18に接する底面302Bを含んでいてよい。
【0096】
窒化物半導体装置300において、補助電極40は、電子供給層18上に形成されている。すなわち、補助電極40は、パッシベーション層26に接する上面40Aと、電子供給層18に接する底面40Bとを含んでいてよい。
【0097】
窒化物半導体装置300では、補助電極40が電子供給層18と接しているため、2DEG20と補助電極40との間の距離を小さくすることができる。また、補助電極40が電子供給層18と接しているため、電子供給層18における電子トラップを効率的に修正することができる。加えて、窒化物半導体装置300は、窒化物半導体装置10について上記した利点(1-1)、(1-6)~(1-9)と同様の利点を有している。
【0098】
窒化物半導体装置300は、第1実施形態のように、補助電極40がソース電極28に対して正にバイアスされる動作モードを有していてよい。その場合、窒化物半導体装置300は、窒化物半導体装置10について上記した利点(1-5)と同様の利点を有している。
【0099】
あるいは、窒化物半導体装置300において、補助電極40は、第2実施形態のように、ソース電極28に電気的に接続されていてもよい。その場合、窒化物半導体装置300は、窒化物半導体装置200について上記した利点(2-1)と同様の利点を有している。
【0100】
図20は、ゲート層の変更例を示すための例示的な窒化物半導体装置400の概略断面図である。図20において、図17に示す窒化物半導体装置100と同様の構成要素には同じ符号が付されている。また、窒化物半導体装置100と同様な構成要素については詳細な説明を省略する。
【0101】
図20に示すように、窒化物半導体装置400は、ゲート層402を含む。ゲート層402は、図17に示すソース側延在部34およびドレイン側延在部36のような延在部を含んでいない。ゲート層402は、図17に示すゲートリッジ部32に相当する。ゲート層402は、ゲート電極24が形成される上面402Aと、電子供給層18に接する底面402Bを含んでいてよい。
【0102】
窒化物半導体装置400において、補助電極40は、電子供給層18上に形成されている。すなわち、補助電極40は、パッシベーション層26に接する上面40Aと、電子供給層18に接する底面40Bとを含んでいてよい。
【0103】
窒化物半導体装置400では、補助電極40が電子供給層18と接しているため、2DEG20と補助電極40との間の距離を小さくすることができる。また、補助電極40が電子供給層18と接しているため、電子供給層18における電子トラップを効率的に修正することができる。加えて、窒化物半導体装置400は、窒化物半導体装置10について上記した利点(1-1)、(1-6)、(1-8)、および(1-9)と同様の利点を有している。
【0104】
窒化物半導体装置400は、第1実施形態のように、補助電極40がソース電極28に対して正にバイアスされる動作モードを有していてよい。その場合、窒化物半導体装置400は、窒化物半導体装置10について上記した利点(1-5)と同様の利点を有している。また、補助電極40の上面40Aがフィールドプレート電極102と対向していないため、補助電極40とフィールドプレート電極102との間の寄生容量の増加を抑制することができる。
【0105】
あるいは、窒化物半導体装置400において、補助電極40は、第2実施形態のように、ソース電極28に電気的に接続されていてもよい。その場合、窒化物半導体装置400は、窒化物半導体装置200について上記した利点(2-1)と同様の利点を有している。
【0106】
[他の変更例]
上記実施形態および変更例の各々は、以下のように変更して実施することができる。
図16に示す半導体パッケージ90は、窒化物半導体装置10の代わりに、窒化物半導体装置100,200,300,400のいずれかを含んでいてよい。
【0107】
・補助電極40の上面40Aは平坦であってもよいし、凹部を含んでいてもよい。
・パッシベーション層26の第1層42および第2層44は、同じ材料によって形成されていてもよいし、互いに異なる材料によって形成されていてもよい。例えば、第1層42がSiNによって形成され、第2層44がSiOによって形成されていてもよい。
【0108】
図1の例において、補助電極40の底面40Bの全てがドレイン側延在部36と接していなくてもよい。例えば、補助電極40の底面40Bが、ドレイン側延在部36および電子供給層18と接していてもよい。すなわち、底面40Bの一部がドレイン側延在部36と接しており、底面40Bの残りの部分が電子供給層18と接していてもよい。
【0109】
本明細書に記載の様々な例のうちの1つまたは複数を、技術的に矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
本明細書において、「AおよびBのうちの少なくとも1つ」とは、「Aのみ、または、Bのみ、または、AおよびBの両方」を意味するものとして理解されるべきである。
【0110】
本開示で使用される「~上に」という用語は、文脈によって明らかにそうでないことが示されない限り、「~上に」と「~の上方に」の意味を含む。したがって、「第1層が第2層上に形成される」という表現は、或る実施形態では第1層が第2層に接触して第2層上に直接配置され得るが、他の実施形態では第1層が第2層に接触することなく第2層の上方に配置され得ることが意図される。すなわち、「~上に」という用語は、第1層と第2層との間に他の層が形成される構造を排除しない。例えば、電子供給層18が電子走行層16上に形成されている構造は、2DEG20を安定して形成するために電子供給層18と電子走行層16との間に中間層が位置している構造を含んでいてもよい。
【0111】
本開示で使用される「垂直」、「水平」、「上方」、「下方」、「上」、「下」、「前方」、「後方」、「縦」、「横」、「左」、「右」、「前」、「後」などの方向を示す用語は、説明および図示された装置の特定の向きに依存する。本開示においては、様々な代替的な向きを想定することができ、したがって、これらの方向を示す用語は、狭義に解釈されるべきではない。
【0112】
例えば、本開示で使用されるZ軸方向は必ずしも鉛直方向である必要はなく、鉛直方向に完全に一致している必要もない。したがって、本開示による種々の構造(例えば、図1に示される構造)は、本明細書で説明されるZ軸方向の「上」および「下」が鉛直方向の「上」および「下」であることに限定されない。例えば、X軸方向が鉛直方向であってもよく、またはY軸方向が鉛直方向であってもよい。
【0113】
[付記]
本開示から把握できる技術的思想を以下に記載する。なお、限定する意図ではなく理解の補助のために、付記に記載される構成要素には、実施形態中の対応する構成要素の参照符号が付されている。参照符号は、理解の補助のために例として示すものであり、各付記に記載された構成要素は、参照符号で示される構成要素に限定されるべきではない。
【0114】
(付記1)
窒化物半導体によって構成された電子走行層(16)と、
前記電子走行層(16)上に形成され、前記電子走行層(16)よりも大きなバンドギャップを有する窒化物半導体によって構成された電子供給層(18)と、
前記電子供給層(18)上に形成され、アクセプタ型不純物を含む窒化物半導体によって構成されたゲート層(22)と、
前記ゲート層(22)上に形成されたゲート電極(24)と、
前記電子供給層(18)、前記ゲート層(22)、および前記ゲート電極(24)を覆うパッシベーション層(26)であって、第1方向に離隔された第1開口(26A)および第2開口(26B)を有し、前記ゲート層(22)は前記第1開口(26A)と前記第2開口(26B)との間に位置している、パッシベーション層(26)と、
前記第1開口(26A)を介して前記電子供給層(18)に接しているソース電極(28)と、
前記第2開口(26B)を介して前記電子供給層(18)に接しているドレイン電極(30)と、
前記電子供給層(18)の上方に形成されるとともに、前記パッシベーション層(26)に直接覆われた補助電極(40)と
を備え、前記補助電極(40)は、平面視で前記ゲート電極(24)と前記ドレイン電極(30)との間に位置している、窒化物半導体装置。
【0115】
(付記2)
前記ゲート層(22)は、
前記ゲート電極(24)が形成されるゲートリッジ部(32)と、
前記ゲートリッジ部(32)から前記第1開口(26A)に向かって延びる、前記ゲートリッジ部(32)よりも薄いソース側延在部(34)と、
前記ゲートリッジ部(32)から前記第2開口(26B)に向かって延びる、前記ゲートリッジ部(32)よりも薄いドレイン側延在部(36)と
を含む、付記1に記載の窒化物半導体装置。
【0116】
(付記3)
前記補助電極(40)は、前記パッシベーション層(26)に接する上面(40A)と、前記ドレイン側延在部(36)に接する底面(40B)とを含む、付記2に記載の窒化物半導体装置。
【0117】
(付記4)
前記ドレイン側延在部(36)は、前記第1方向において、前記ソース側延在部(34)よりも大きい寸法を有している、付記2または3に記載の窒化物半導体装置。
【0118】
(付記5)
前記補助電極(40)は、前記パッシベーション層(26)に接する上面(40A)と、前記電子供給層(18)に接する底面(40B)とを含む、付記1に記載の窒化物半導体装置。
【0119】
(付記6)
前記窒化物半導体装置は、前記補助電極(40)が前記ソース電極(28)に対して正にバイアスされる動作モードを有している、付記1~5のうちのいずれか1つに記載の窒化物半導体装置。
【0120】
(付記7)
前記補助電極(40)は、前記ソース電極(28)に電気的に接続されている、付記1~5のうちのいずれか1つに記載の窒化物半導体装置。
【0121】
(付記8)
前記パッシベーション層(26)上に形成されるとともに、平面視で前記ゲート層(22)と前記ドレイン電極(30)との間の領域に少なくとも部分的に延在するフィールドプレート電極(38;102)をさらに備え、前記フィールドプレート電極(38;102)は、前記ソース電極(28)に電気的に接続されている、付記1~7のうちのいずれか1つに記載の窒化物半導体装置。
【0122】
(付記9)
前記パッシベーション層(26)は、第3開口(42A)を有する第1層(42)と、前記第1層(42)上に形成された第2層(44)とを含み、
前記補助電極(40)は、前記第1層(42)の前記第3開口(42A)に埋設された基部(46)と、前記第2層(44)に直接覆われた上部(48)とを含む、付記8に記載の窒化物半導体装置。
【0123】
(付記10)
前記フィールドプレート電極(38)は、前記ソース電極(28)と連続している、付記9に記載の窒化物半導体装置。
【0124】
(付記11)
前記補助電極(40)は、前記パッシベーション層(26)の前記第2層(44)によって、前記フィールドプレート電極(38)から離隔されている、付記10に記載の窒化物半導体装置。
【0125】
(付記12)
前記第2層(44)は、前記第1層(42)よりも厚い、付記9~11のうちのいずれか1つに記載の窒化物半導体装置。
【0126】
(付記13)
前記フィールドプレート電極(102)は、前記第1開口(26A)と前記第2開口(26B)との間の前記パッシベーション層(26)上において、前記ソース電極(28)から前記第1方向に離隔されている、付記8に記載の窒化物半導体装置。
【0127】
(付記14)
前記フィールドプレート電極(102)は、平面視で前記補助電極(40)とずれて配置されている、付記13に記載の窒化物半導体装置。
【0128】
(付記15)
前記補助電極(40)に電気的に接続されるとともに、前記窒化物半導体装置の非アクティブ領域(60)に形成された接続部(62)をさらに備える、付記1~14のうちのいずれか1つに記載の窒化物半導体装置。
【0129】
(付記16)
前記ドレイン電極(30)は、前記窒化物半導体装置のアクティブ領域(58)に形成されており、
前記非アクティブ領域(60)は、前記アクティブ領域(58)と、平面視で前記第1方向と直交する第2方向に隣り合っている、付記15に記載の窒化物半導体装置。
【0130】
(付記17)
前記ゲート電極(24)に電気的に接続されたゲート端子(50)と、
前記ソース電極(28)に電気的に接続されたソース端子(52)と、
前記ドレイン電極(30)に電気的に接続されたドレイン端子(54)と、
前記補助電極(40)に電気的に接続された制御端子(56)と
をさらに備える、付記1~16のうちのいずれか1つに記載の窒化物半導体装置。
【0131】
(付記18)
前記電子走行層(16)がGaNであり、
前記電子供給層(18)がAlGa1-xNであり、0<x<0.3であり、
前記ゲート層(22)がMgおよびZnのうちの少なくとも一方を不純物として含むGaNである、
付記1~17のうちのいずれか1つに記載の窒化物半導体装置。
【0132】
(付記19)
前記ドレイン側延在部(36)の前記第1方向の寸法は、1μm以上であり、
前記補助電極(40)の前記第1方向の寸法は、0.4μm以上である、
付記2に記載の窒化物半導体装置。
【0133】
(付記20)
付記17に記載の窒化物半導体装置(10)と、
前記窒化物半導体装置に接続された駆動回路(92)と、
複数の外部端子(94A,94B,94C,94D,94E)と
を備え、前記制御端子(56)は、前記駆動回路(92)に接続されているが、前記複数の外部端子(94A,94B,94C,94D,94E)のいずれにも直接接続されていない、半導体パッケージ(90)。
【0134】
(付記21)
前記ゲート層(22)は、前記第2開口(26B)よりも前記第1開口(26A)の近くに配置されている、付記1~19のうちのいずれか1つに記載の窒化物半導体装置。
【0135】
(付記22)
前記補助電極(40)の前記上部(48)は、平面視で前記第3開口(42A)よりも広い領域に形成されている、付記9に記載の窒化物半導体装置。
【0136】
(付記23)
前記接続部(62)の前記第2方向の寸法(D2)は、前記補助電極(40)の前記第1方向の寸法(D1)よりも大きい、付記16に記載の窒化物半導体装置。
【0137】
以上の説明は単に例示である。本開示の技術を説明する目的のために列挙された構成要素および方法(製造プロセス)以外に、より多くの考えられる組み合わせおよび置換が可能であることを当業者は認識し得る。本開示は、特許請求の範囲を含む本開示の範囲内に含まれるすべての代替、変形、および変更を包含することが意図される。
【符号の説明】
【0138】
10,100,200,300,400…窒化物半導体装置
12…半導体基板
14…バッファ層
16…電子走行層
18…電子供給層
20…二次元電子ガス
22,302,402…ゲート層
22A…上面
22B…底面
24…ゲート電極
26…パッシベーション層
26A…第1開口
26B…第2開口
28…ソース電極
30…ドレイン電極
32…ゲートリッジ部
34…ソース側延在部
36…ドレイン側延在部
38,102…フィールドプレート電極
38A…端部
40…補助電極
40A…上面
40B…底面
42…第1層
42A…第3開口
44…第2層
46…基部
48…上部
50…ゲート端子
52…ソース端子
54…ドレイン端子
56…制御端子
58…アクティブ領域
60…非アクティブ領域
62…接続部
64…ゲート配線
66…ビア
68…制御配線
70…ビア
72…窒化ガリウム層
74,84,89…金属層
76,78,80,82,86,88…マスク
90…半導体パッケージ
92…駆動回路
94A,94B,94C,94D,94E…外部端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図20