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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179145
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】燃料電池スタック
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/2465 20160101AFI20231212BHJP
   H01M 8/248 20160101ALI20231212BHJP
【FI】
H01M8/2465
H01M8/248
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092257
(22)【出願日】2022-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】川本 祐大
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA25
5H126AA28
(57)【要約】
【課題】取付部材を備えていながらも積層方向における体格の増大を抑制できる燃料電池スタックを提供すること。
【解決手段】燃料電池スタック20は、スタック本体30と、取付部材90と、を備えている。スタック本体30は、複数の燃料電池セル51を積層することにより構成された積層体50と、全ての燃料電池セル51が積層される方向である積層方向Aにおいて積層体50を挟み込む第1エンドプレート81及び第2エンドプレート82と、を含む。取付部材90は、第1エンドプレート81に固定されるとともにスタックマウントプレート100にスタック本体30を取り付ける。取付部材90は、第1エンドプレート81のうち第2エンドプレート82に対向する第1対向面81cと、第2エンドプレート82のうち第1エンドプレート81に対向する第2対向面82cとの間に設けられている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の燃料電池セルを積層することにより構成された積層体と、全ての前記燃料電池セルが積層される方向である積層方向において前記積層体を挟み込む第1エンドプレート及び第2エンドプレートと、を含むスタック本体と、
前記第1エンドプレートに固定されるとともに取付対象に前記スタック本体を取り付けるためのブロック状の取付部材と、を備える燃料電池スタックであって、
前記取付部材は、前記第1エンドプレートのうち前記第2エンドプレートに対向する第1対向面と、前記第2エンドプレートのうち前記第1エンドプレートに対向する第2対向面との間に設けられていることを特徴とする燃料電池スタック。
【請求項2】
前記燃料電池スタックを搭載対象の搭載用フレームに載置するためのスタックマウントプレートであって、前記第1エンドプレート及び前記第2エンドプレートの下方に配置される前記スタックマウントプレートと、前記第1エンドプレートとに前記取付部材が固定されている、請求項1に記載の燃料電池スタック。
【請求項3】
前記第1エンドプレート及び前記取付部材を貫通するボルトと、
前記ボルトに螺合されるとともに前記第1エンドプレート及び前記取付部材を前記ボルトとともに挟み込むナットと、を更に備え、
前記取付部材には、前記ボルトが貫通する第1貫通孔が形成されており、
前記第1エンドプレートには、前記ボルトが貫通する第2貫通孔が形成されている、請求項1又は請求項2に記載の燃料電池スタック。
【請求項4】
前記積層方向において前記第1エンドプレート及び前記第2エンドプレートを固定するためのスタック締結ボルトを更に備え、
前記取付部材には、逃げ溝が形成されており、
前記スタック締結ボルトは、前記逃げ溝の内部を通過している、請求項1又は請求項2に記載の燃料電池スタック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池スタックに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、燃料電池スタックが記載されている。
上記の燃料電池スタックは、積層体と、一対のエンドプレートと、取付部材としてのマウントブラケットと、を備えている。積層体は、複数の燃料電池セルを備えている。複数の燃料電池セルは、積層されている。一対のエンドプレートは、全ての燃料電池セルの積層方向において積層体を挟んでいる。マウントブラケットは、各エンドプレートにおける積層体とは反対側の外面にねじ止めされている。マウントブラケットは、取付対象である車両の搭載部位に固定されている。よって、燃料電池スタックが車両の搭載部位に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-100755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の燃料電池スタックは、取付部材によって積層方向への体格が大きくなっている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する燃料電池スタックは、複数の燃料電池セルを積層することにより構成された積層体と、全ての前記燃料電池セルが積層される方向である積層方向において前記積層体を挟み込む第1エンドプレート及び第2エンドプレートと、を含むスタック本体と、前記第1エンドプレートに固定されるとともに取付対象に前記スタック本体を取り付けるためのブロック状の取付部材と、を備える燃料電池スタックであって、前記取付部材は、前記第1エンドプレートのうち前記第2エンドプレートに対向する第1対向面と、前記第2エンドプレートのうち前記第1エンドプレートに対向する第2対向面との間に設けられている。
【0006】
上記構成によれば、取付部材が第1エンドプレートの第1対向面と第2エンドプレートの第2対向面との間に設けられている。このため、取付部材を備えながらも積層方向における燃料電池スタックの体格の増大を抑制できる。
【0007】
上記の燃料電池スタックにおいて、前記燃料電池スタックを搭載対象の搭載用フレームに載置するためのスタックマウントプレートであって、前記第1エンドプレート及び前記第2エンドプレートの下方に配置される前記スタックマウントプレートと、前記第1エンドプレートとに前記取付部材が固定されているとよい。
【0008】
上記構成によれば、燃料電池スタックを搭載対象に搭載するためにスタックマウントプレートが採用される構成において、取付部材が第1エンドプレートとスタックマウントプレートとに固定されている。スタックマウントプレートに対する燃料電池スタックの姿勢は、取付部材により保持されている。このため、スタックマウントプレートが搭載用フレームに載置されたとき、搭載用フレームに対する燃料電池スタックの姿勢は、取付部材により保持されている。よって、燃料電池スタックを安定的に搭載対象に搭載できる。
【0009】
上記の燃料電池スタックにおいて、前記第1エンドプレート及び前記取付部材を貫通するボルトと、前記ボルトに螺合されるとともに前記第1エンドプレート及び前記取付部材を前記ボルトとともに挟み込むナットと、を更に備え、前記取付部材には、前記ボルトが貫通する第1貫通孔が形成されており、前記第1エンドプレートには、前記ボルトが貫通する第2貫通孔が形成されているとよい。
【0010】
上記構成によれば、第1貫通孔及び第2貫通孔をボルトが貫通するため、ボルトは、第1貫通孔の内部及び第2貫通孔の内部で移動が可能となる。このため、取付部材の搭載対象側に対する取付位置の調整と、取付部材の第1エンドプレートに対する取付位置の調整とが完了した段階でナットをボルトに螺合することで、取付部材を第1エンドプレートに固定できる。よって、ボルト及びナットにより取付部材の取付位置の調整を好適に実施できる。
【0011】
また、取付部材が第1エンドプレートの第1対向面と第2エンドプレートの第2対向面との間に設けられている。このため、燃料電池スタックを搭載対象に搭載したとき、取付部材が燃料電池スタックの重心に近くなる。取付部材がエンドプレートにおける積層体とは反対側の外面にねじ止めされている場合と比較して、取付部材を第1エンドプレートに固定するボルトに作用する応力が少なくなる。よって、ボルトの変形も抑制できる。
【0012】
上記の燃料電池スタックにおいて、前記積層方向において前記第1エンドプレート及び前記第2エンドプレートを固定するためのスタック締結ボルトを更に備え、前記取付部材には、逃げ溝が形成されており、前記スタック締結ボルトは、前記逃げ溝の内部を通過しているとよい。
【0013】
上記構成によれば、スタック締結ボルトにより燃料電池スタックの積層方向の締結力を向上させることができる。そして、取付部材の逃げ溝によりスタック締結ボルトの設置を取付部材が妨げることがない。よって、取付部材による燃料電池スタックの体格の増大を抑制しつつ、燃料電池スタックの積層構造の安定化も実現できる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、取付部材を備えていながらも積層方向における燃料電池スタックの体格の増大を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】燃料電池スタックの斜視図である。
図2】燃料電池スタックの側面図である。
図3】第1エンドプレート、取付部材、及びスタックマウントプレートの位置関係を示した斜視図である。
図4】取付部材の斜視図である。
図5】取付部材と第1エンドプレートとの固定構造を示す断面図である。
図6】取付部材と第1エンドプレートとの固定構造の変更例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、燃料電池スタックを具体化した実施形態を図1及び図2にしたがって説明する。
<燃料電池スタックの構成>
燃料電池スタック20は、スタック本体30と、複数のスタック締結ボルト40と、を備えている。スタック本体30は、積層体50と、第1集電板61と、第2集電板62と、スタックマニホールド70と、第1エンドプレート81と、第2エンドプレート82と、を備えている。スタック本体30は、積層体50と、第1エンドプレート81及び第2エンドプレート82と、を含む。
【0017】
積層体50は、複数の燃料電池セル51を有している。燃料電池セル51は、矩形板状である。燃料電池セル51をその厚さ方向で見たとき、燃料電池セル51は、互いに平行に延びる一対の第1縁部51aと、互いに平行に延びる一対の第2縁部51bと、を有している。積層体50は、複数の燃料電池セル51をその厚さ方向に積層することにより構成されている。積層体50は、矩形ブロック状である。全ての燃料電池セル51が積層される方向を積層方向Aとする。積層体50は、第1面S1と、第2面S2と、第3面S3と、第4面S4と、第5面S5と、第6面S6と、を有している。
【0018】
第1面S1は、積層体50における積層方向Aの面である。第1面S1は、燃料電池セル51の厚さ方向の1つの面である。第2面S2は、積層体50における積層方向Aの面である。第2面S2は、燃料電池セル51の厚さ方向の1つの面である。第1面S1及び第2面S2は、積層体50において積層方向Aで互いに反対側に位置している。
【0019】
第3面S3は、全ての燃料電池セル51における一対の第1縁部51aの一方が積層方向Aに積層されることにより形成されている。第4面S4は、全ての燃料電池セル51のおける一対の第1縁部51aの他方が積層方向Aに積層されることにより形成されている。第3面S3及び第4面S4は、積層体50における積層方向Aに直交する方向の面である。第3面S3及び第4面S4は、積層体50において互いに反対側に位置している。積層体50において、第3面S3及び第4面S4が配置される方向を第1直交方向Bとする。
【0020】
第5面S5は、全ての燃料電池セル51における一対の第2縁部51bの一方が積層方向Aに積層されることにより形成されている。第6面S6は、全ての燃料電池セル51における一対の第2縁部51bの他方が積層方向Aに積層されることにより形成されている。第5面S5及び第6面S6は、積層体50における積層方向Aに直交する方向の面である。第5面S5及び第6面S6は、積層体50において互いに反対側に位置している。積層体50において、第5面S5及び第6面S6が対向する方向を第2直交方向Cとする。第2直交方向は、本実施例では、鉛直方向である。
【0021】
第1集電板61は、積層体50の第1面S1に積層されている。第2集電板62は、積層体50の第2面S2に積層されている。第1集電板61及び第2集電板62は、積層体50により発電された電力を集電する。
【0022】
スタックマニホールド70は、図示しない絶縁板を介して第1集電板61に積層されている。第1エンドプレート81は、スタックマニホールド70における積層体50とは反対側に積層されている。第2エンドプレート82は、図示しない絶縁板を介して第2集電板62に積層されている。第1エンドプレート81及び第2エンドプレート82は、積層方向Aにおいてスタック本体30の最も外側に位置している。第1エンドプレート81及び第2エンドプレート82は、積層方向Aにおいて積層体50を挟み込んでいる。なお、第1集電板61、第2集電板62、及び図示しない絶縁板は、燃料電池セル51と同じ大きさである。
【0023】
<スタックマニホールド、第1エンドプレート、第2エンドプレート、スタック締結ボルト>
スタックマニホールド70は、積層体50に水素を供給、及び積層体50からオフガスを排出する吸排気経路を構成する部材である。スタックマニホールド70は、吸気経路71と、排気経路72と、を有している。
【0024】
吸気経路71は、第1エンドプレート81をその厚さ方向に貫通している。吸気経路71は、第1エンドプレート81における積層体50とは反対側の外面に露出した供給口H1を有している。供給口H1は、積層体50への水素の供給口である。なお、吸気経路71は、図示しない絶縁板や第1集電板61を貫通して積層体50に至るまで延びている。
【0025】
排気経路72は、第1エンドプレート81をその厚さ方向に貫通している。排気経路72は、第1エンドプレート81における積層体50とは反対側の外面に露出した排出口H2を有している。排出口H2は、積層体50から排出されるオフガスの排出口である。なお、排気経路72は、図示しない絶縁板や第1集電板61を貫通して積層体50に至るまで延びている。
【0026】
スタックマニホールド70は、長四角板状である。スタックマニホールド70は、一対の長側面70aと、一対の短側面70bと、を有している。一対の長側面70aは、第1直交方向Bに延びている。一対の短側面70bは、第2直交方向Cに延びている。
【0027】
第1エンドプレート81は、長四角板状である。第1エンドプレート81は、一対の長側面81aと、一対の短側面81bと、を有している。一対の長側面81aは、第1直交方向Bに延びている。一対の短側面81bは、第2直交方向Cに延びている。
【0028】
第1エンドプレート81の短側面81bの第2直交方向Cにおける長さは、スタックマニホールド70の短側面70bの第2直交方向Cにおける長さよりも長い。第1エンドプレート81の長側面81aは、積層方向Aにおいてスタックマニホールド70の長側面70aと重なっていない。
【0029】
第1エンドプレート81の短側面81bの第2直交方向Cにおける長さは、積層体50の第2直交方向Cにおける長さよりも長い。第1エンドプレート81の一対の長側面81aは、第2直交方向Cにおいて積層体50の第5面S5面及び第6面S6よりも外側に位置している。よって、第1エンドプレート81の一対の長側面81aは、積層方向Aにおいて積層体50及びスタックマニホールド70に遮られていない。
【0030】
第2エンドプレート82は、積層方向Aから見て外郭が積層体50より大きい長四角板状である。第2エンドプレート82は、一対の長側面82aと、一対の短側面82bと、を有している。一対の長側面82aは、第1直交方向Bに延びている。一対の短側面82bは、第2直交方向Cに延びている。第2エンドプレート82の短側面82bの第2直交方向Cにおける長さは、積層体50の第2直交方向Cにおける長さよりも長い。第2エンドプレート82の短側面82bの第2直交方向Cにおける長さは、第1エンドプレート81の短側面81bの第2直交方向Cにおける長さよりも長い。一方の長側面81aの第2直交方向Cにおける先端面と、一方の長側面82aの第2直交方向Cにおける先端面とは、第2直交方向Cにおいて同じ位置である。他方の長側面82aの第2直交方向Cにおける先端面は、他方の長側面81aの第2直交方向Cにおける先端面よりも第2直交方向Cの外側(鉛直方向下側)に突出している。第2エンドプレート82の一対の長側面82aは、第2直交方向Cにおいて積層体50の第5面S5及び第6面S6よりも外側に位置している。よって、第2エンドプレート82の一対の長側面82aは、積層方向Aにおいて積層体50に遮られていない。
【0031】
第1エンドプレート81は、第1対向面81cを有している。第1対向面81cは、第1エンドプレート81のうち第2エンドプレート82に対して積層方向Aに対向する面である。第1対向面81cは、第1エンドプレート81の一対の長側面81aに沿って形成されている。第2エンドプレート82は、第2対向面82cを有している。第2対向面82cは、第2エンドプレート82のうち第1エンドプレート81に対して積層方向Aに対向する面である。第2対向面82cは、第2エンドプレート82の一対の長側面82aに沿って形成されている。第1対向面81cと第2対向面82cとは積層方向Aにおいて対向している。
【0032】
スタック締結ボルト40は、本実施形態において8つ採用されている。4つのスタック締結ボルト40を第1スタック締結ボルト41とし、残りのスタック締結ボルト40を第2スタック締結ボルト42とする。第1スタック締結ボルト41は、第1エンドプレート81の一方の長側面81aに沿う部分から第2エンドプレート82の一方の長側面82aに沿う部分にまで延びている。第1スタック締結ボルト41は、第1直交方向Bに間隔をおいて配置されている。第1スタック締結ボルト41は、第1エンドプレート81の一方の長側面81aに沿う部分を貫通している。第1スタック締結ボルト41の頭部40aは、第1エンドプレート81における積層体50とは反対側の外面に位置している。第1スタック締結ボルト41の先端部40bは、第2エンドプレート82の一方の長側面82aに沿う部分に螺合されている。
【0033】
第2スタック締結ボルト42は、第1エンドプレート81の他方の長側面81aに沿う部分から第2エンドプレート82の他方の長側面82aに沿う部分まで延びている。第2スタック締結ボルト42は、第1直交方向Bに間隔をおいて配置されている。第2スタック締結ボルト42は、第1エンドプレート81の他方の長側面81aに沿う部分を貫通している。第2スタック締結ボルト42の頭部40aは、第1エンドプレート81における積層体50とは反対側の外面に位置している。第2スタック締結ボルト42の先端部40bは、第2エンドプレート82の他方の長側面82aに沿う部分に螺合されている。
【0034】
8つのスタック締結ボルト40は、積層方向Aにおいて第1エンドプレート81及び第2エンドプレート82を固定している。8つのスタック締結ボルト40を第2エンドプレート82に向けて螺進させると、第1エンドプレート81と第2エンドプレート82とが積層方向Aに近づくように締結力が作用する。よって、積層体50、第1集電板61、第2集電板62、スタックマニホールド70、及び図示しない絶縁板が第1エンドプレート81及び第2エンドプレート82により積層方向Aに締め付けられる。
【0035】
<取付部材>
図2に示すように、燃料電池スタック20は、取付部材90を備えている。取付部材90は、第1エンドプレート81の他方の長側面81a側の第1対向面81cに接触している。取付部材90は、積層方向Aにおいて第1対向面81cと第2対向面82cとの間に設けられている。取付部材90は、第2直交方向Cにおいて第1エンドプレート81の他方の長側面81aよりも外側(鉛直方向下側)に突出している。取付部材90の一部分は、第2直交方向Cにおいてスタックマニホールド70に対向している。取付部材90のその他の一部分は、第2直交方向Cにおいて積層体50の第6面S6に対向している。取付部材90の積層体50とは反対側に位置する先端面と、他方の長側面82aの第2直交方向Cにおける先端面とは、第2直交方向Cにおいて同じ位置である。
【0036】
図3及び図4に示すように、取付部材90は、長尺ブロック状である。取付部材90は、第1エンドプレート81の他方の長側面81aに沿って第1直交方向Bに延びている。取付部材90の第1直交方向Bにおける長さは、第2スタック締結ボルト42のうち第1直交方向Bの最も外側に位置する2つのスタック締結ボルト40間の長さよりも短い。取付部材90は、第2スタック締結ボルト42のうち第1直交方向Bの最も外側に位置する2つのスタック締結ボルト40間に配置されている。
【0037】
取付部材90には、2つの逃げ溝90aが形成されている。2つの逃げ溝90aは、取付部材90のうちスタックマニホールド70に対向する面から凹む。2つの逃げ溝90aは、取付部材90を積層方向Aに貫通している。第2スタック締結ボルト42のうち第1直交方向Bの内側に位置する2つのスタック締結ボルト40の各々は、逃げ溝90aの内部を通過している。なお、説明の便宜上、図3は積層体50や第2エンドプレート82等の構成を省略して記載している。
【0038】
図4に示すように、取付部材90には、2つの第1貫通孔90bが形成されている。2つの第1貫通孔90bは、取付部材90を積層方向Aに貫通している。2つの第1貫通孔90bは、第1直交方向Bにおいて2つの逃げ溝90aを挟む位置に設けられている。
【0039】
<取付部材の固定構造>
図5に示すように、燃料電池スタック20は、ボルト91と、ナット92と、を備えている。ボルト91は、第1エンドプレート81の他方の長側面81aに沿う部分を貫通している。第1エンドプレート81には、ボルト91が貫通する第2貫通孔81dが形成されている。第1貫通孔90bの孔径及び第2貫通孔81dの孔径は、ボルト91のネジ溝が形成された軸部の直径よりも大きい。このため、第1貫通孔90bを区画する面とボルト91のネジ溝との間、及び第2貫通孔81dを区画する面とボルト91のネジ溝との間の各々には、隙間が形成される。
【0040】
ボルト91は、第1貫通孔90bを貫通している。ボルト91は、取付部材90を貫通している。ボルト91の頭部91aは、第1エンドプレート81における積層体50とは反対側の外面に接触している。ボルト91の先端部91bは、取付部材90を貫通している。ナット92は、ボルト91の先端部91bに螺合されている。ナット92は、取付部材90における第1エンドプレート81とは反対側に位置する面に設けられている。
【0041】
ボルト91の先端部91bに取り付けたナット92を、取付部材90における第1エンドプレート81とは反対側に位置する面に向かうように回転させ続ける。すると、ナット92はいずれ先端部91bに対して回転が規制される位置まで到達する。このとき、ナット92とボルト91の頭部91aとの間に第1エンドプレート81及び取付部材90が挟み込まれる。よって、ナット92は、第1エンドプレート81及び取付部材90をボルト91とともに挟み込む。よって、取付部材90は、ボルト91及びナット92により第1エンドプレート81に固定されている。
【0042】
図2に示すように、取付部材90は、ゴムマウント95を介して取付対象としてのスタックマウントプレート100に取り付けられている。ゴムマウント95は、スタックマウントプレート100の厚さ方向に位置する平面に載置されている。取付部材90とスタックマウントプレート100とは、第1固定ボルト96により固定されている。第1固定ボルト96は、スタックマウントプレート100及びゴムマウント95を貫通して取付部材90に螺合されている。取付部材90は、スタックマウントプレート100と第1エンドプレート81とに固定されている。取付部材90は、スタックマウントプレート100にスタック本体30を取り付けるための部材である。
【0043】
第2エンドプレート82の他方の長側面82aに沿う部分は、ゴムマウント95を介してスタックマウントプレート100に取り付けられている。ゴムマウント95は、スタックマウントプレート100の厚さ方向に位置する平面に載置されている。第2エンドプレート82とスタックマウントプレート100とは、第2固定ボルト97により固定されている。第2固定ボルト97は、スタックマウントプレート100及びゴムマウント95を貫通して第2エンドプレート82に螺合されている。
【0044】
スタックマウントプレート100は、燃料電池スタック20を搭載対象としての、燃料電池車両における搭載用フレーム101に載置するためのプレートである。搭載対象としての燃料電池車両は、フォークリフトやトーイングトラクタ等の産業車両を含む。搭載用フレーム101は、車体の一部である。燃料電池スタック20を燃料電池車両に搭載するとき、スタックマウントプレート100は、搭載用フレーム101に載置される。このため、燃料電池スタック20は、第2直交方向Cを鉛直方向に一致させ、且つスタックマウントプレート100を鉛直方向の下方に配置した状態で燃料電池車両に搭載される。よって、スタックマウントプレート100は、第1エンドプレート81及び第2エンドプレート82下方に配置される。
【0045】
仮に第1エンドプレート81の他方の長側面81aに沿う部分をスタックマウントプレート100にゴムマウント95を介して取り付けた場合を想定する。この場合、第2エンドプレート82の短側面82bの第2直交方向Cにおける長さが、第1エンドプレート81の短側面81bの第2直交方向Cにおける長さよりも長いため、第2直交方向Cが鉛直方向と一致しなくなる。よって、スタックマウントプレート100に対するスタック本体30の姿勢が安定しない。その点、取付部材90が採用されることにより、取付部材90の積層体50とは反対側に位置する先端面と、他方の長側面82aに沿う部分の第2直交方向Cにおける先端面とが第2直交方向Cにおいて同じ位置にできる。取付部材90は、第2直交方向Cにおける長さの異なる第1エンドプレート81及び第2エンドプレート82が採用された場合にスタックマウントプレート100に対するスタック本体30の姿勢を安定させる部材である。
【0046】
<第1貫通孔の孔径及び第2貫通孔の孔径>
図5に示すように、第1貫通孔90bの孔径は、第2貫通孔81dの孔径よりも大きい。第1エンドプレート81と第2エンドプレート82がスタック締結ボルト40により固定され、第1貫通孔90b及び第2貫通孔81dをボルト91が貫通しており、且つナット92が取付部材90に接触していない状態を想定する。
【0047】
第1貫通孔90bの孔径は、ボルト91のネジ溝との間に隙間を形成できる大きさに設定されている。隙間の大きさは、上記状態において、第2貫通孔81dの孔径のずれ、第2貫通孔81dの位置ずれ、及び第2貫通孔81d内でのボルト91のガタツキが発生しても、取付部材90がゴムマウント95に接触するように第2直交方向Cに位置調整できる大きさである。なお、第2貫通孔81dの孔径のずれ、及び第2貫通孔81dの位置ずれは、第2貫通孔81dを第1エンドプレート81に形成するときの製造誤差により生じる。
【0048】
第1貫通孔90bの孔径は、上記状態において、第2エンドプレート82がゴムマウント95に押し付けられる力と、取付部材90がゴムマウント95に押し付けられる力とが均一になるように、第2直交方向Cに位置調整できる大きさである。
【0049】
[本実施形態の作用及び効果]
本実施形態の作用及び効果を説明する。
(1)本実施形態によれば、取付部材90が第1エンドプレート81の第1対向面81cと第2エンドプレート82の第2対向面82cとの間に設けられている。このため、取付部材90を備えながらも積層方向Aにおける燃料電池スタック20の体格の増大を抑制できる。
【0050】
(2)燃料電池スタック20を燃料電池車両に搭載するためにスタックマウントプレート100が採用される構成において、取付部材90が第1エンドプレート81とスタックマウントプレート100とに固定されている。スタックマウントプレート100に対する燃料電池スタック20の姿勢は、取付部材90により保持されている。このため、スタックマウントプレート100が搭載用フレーム101に載置されたとき、搭載用フレーム101に対する燃料電池スタック20の姿勢は、取付部材90により保持されている。よって、燃料電池スタック20を安定的に燃料電池車両に搭載できる。
【0051】
(3)本実施形態では、第1貫通孔90bの孔径及び第2貫通孔81dの孔径がボルト91の直径よりも大きい。第1貫通孔90b及び第2貫通孔81dをボルト91が貫通するため、ボルト91は、第1貫通孔90bの内部及び第2貫通孔81dの内部で移動が可能となる。このため、取付部材90の燃料電池車両側に対する取付位置の調整と、取付部材90の第1エンドプレート81に対する取付位置の調整とが完了した段階でナット92をボルト91に螺合することで、取付部材90を第1エンドプレート81に固定できる。よって、ボルト91及びナット92により取付部材90の取付位置の調整を好適に実施できる。
【0052】
また、取付部材90が第1エンドプレート81の第1対向面81cと第2エンドプレート82の第2対向面82cとの間に設けられている。このため、燃料電池スタック20を燃料電池車両に搭載したとき、取付部材90が燃料電池スタック20の重心に近くなる。取付部材90が第1エンドプレート81における積層体50とは反対側の外面にねじ止めされている場合と比較して、取付部材90を第1エンドプレート81に固定するボルト91に作用する応力が少なくなる。よって、ボルト91の変形も抑制できる。
【0053】
(4)スタック締結ボルト40により燃料電池スタック20の積層方向Aの締結力を向上させることができる。そして、取付部材90の逃げ溝90aによりスタック締結ボルト40の設置を取付部材90が妨げることがない。よって、取付部材90による燃料電池スタック20の体格の増大を抑制しつつ、燃料電池スタック20の積層構造の安定化も実現できる。
【0054】
(5)第1貫通孔90bの孔径が第2貫通孔81dの孔径よりも大きく、且つ第1貫通孔90bの孔径が本実施形態のように設定される。このため、第1エンドプレート81と第2エンドプレート82との第2直交方向Cにおける長さが異なっていても、取付部材90の第2直交方向における位置調整ができる。よって、燃料電池スタック20をスタックマウントプレート100に適切に取り付けることができる。取付部材90の位置を調整する上で、位置の基準となる第2エンドプレート82側の第2貫通孔81dの孔径を第1貫通孔90bより大きくするのに比べ、取付部材90側の第1貫通孔90bの孔径を第2貫通孔81dよりも大きくすることで、位置調整を容易に行うことができる。
【0055】
[変更例]
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0056】
○ 取付部材90の第1直交方向Bにおける長さは、第2スタック締結ボルト42のうち第1直交方向Bの最も外側に位置する2つのスタック締結ボルト40間の長さよりも長くてもよい。この場合、取付部材90には、第2スタック締結ボルト42のうち第1直交方向Bの最も外側に位置する2つのスタック締結ボルト40が通過するための逃げ溝90aを追加するとよい。
【0057】
○ スタック締結ボルト40の数は適宜変更してもよい。そして、取付部材90の逃げ溝90aの数もスタック締結ボルト40の数に応じて適宜変更してもよい。
○ 逃げ溝90aは、取付部材90を積層方向Aに貫通する貫通孔に代替してもよい。そして、当該貫通孔の内部をスタック締結ボルト40が通過してればよい。
【0058】
○ ボルト91の頭部91aは、取付部材90における第1エンドプレート81とは反対側に位置する面に位置していてもよい。ナット92は、第1エンドプレート81における積層体50とは反対側の外面に設けられていてもよい。すなわち、ボルト91の頭部91aとナット92の位置は逆にしてもよい。
【0059】
図6に示すように、取付部材90の第1貫通孔90bをネジ孔90cに変更し、且つナット92を省略してもよい。ネジ孔90cは、取付部材90を貫通していない。ネジ孔90cの内側には、ネジ溝が形成されている。ネジ孔90cには、ボルト91の先端部91bが螺合されている。
【0060】
○ 燃料電池スタック20をスタックマウントプレート100に取り付けるとき、スタックマウントプレート100におけるゴムマウント95が載置される面は、平面でなくてもよい。例えば、スタックマウントプレート100におけるゴムマウント95が載置される面は、多少凹凸が存在していてもよい。
【0061】
○ 取付部材90は、スタックマウントプレート100に固定されていたが、例えば搭載用フレーム101に固定されていてもよい。すなわち、搭載用フレーム101を取付対象としてもよい。
【0062】
○ 取付部材90を2つ採用してもよい。1つの取付部材90は、本実施形態と同様に第1エンドプレート81に固定されており、残りの取付部材90は、第2エンドプレート82に固定されていてもよい。残りの取付部材90は、本実施形態と同様にボルト91及びナット92により第2エンドプレート82に固定されていてもよい。この場合、第2エンドプレート82には、ボルト91が貫通する第2貫通孔81dが形成されるとよい。本実施形態と本変更例によれば、第1エンドプレート81には、第2貫通孔81dが形成されていればよい。また、本実施形態と本変更例によれば、ボルト91は第1エンドプレート81及び取付部材90を貫通すればよい。
【0063】
残りの取付部材90は、ゴムマウント95を介してスタックマウントプレート100に取り付けられるとよい。残りの取付部材90とスタックマウントプレート100とは、第3固定ボルトにより固定されるとよい。第3固定ボルトは、スタックマウントプレート100及びゴムマウント95を貫通して残りの取付部材90に螺合されるとよい。残りの取付部材90は、スタックマウントプレート100と第2エンドプレート82とに固定されていればよい。本実施形態と本変更例によれば、取付部材90は、少なくとも第1エンドプレート81に固定されるとともにスタックマウントプレート100に取り付けられていればよい。
【0064】
○ 第1集電板61、第2集電板62、及び図示しない絶縁板は、燃料電池セル51と同じ大きさでなくてもよい。第1集電板61、第2集電板62、及び図示しない絶縁板は、第1エンドプレート81に第1対向面81c、第2エンドプレート82に第2対向面82cを形成しつつ、スタック締結ボルト40に干渉しなければ、適宜大きさを変更してもよい。
【0065】
○ 第2エンドプレート82の短側面82bの第2直交方向Cにおける長さは、第1エンドプレート81の短側面81bの第2直交方向Cにおける長さと同じであってもよい。そして、他方の長側面82aの第2直交方向Cにおける先端面と、他方の長側面81aの第2直交方向Cにおける先端面とは、第2直交方向Cにおいて同じ位置であってもよい。
【0066】
○ 取付部材90の積層体50とは反対側に位置する先端面と、他方の長側面82aの第2直交方向Cにおける先端面とは、第2直交方向Cにおいて位置が異なっていてもよい。
【0067】
○ 取付部材90は、長尺ブロック状でなくてもよい。取付部材90は、第1エンドプレート81とスタックマウントプレート100に固定できるブロック状であれば形状は適宜変更してもよい。
【0068】
○ 燃料電池スタック20が搭載される搭載対象は燃料電池車両に限らず、例えば定置型燃料電池であってもよい。すなわち、燃料電池スタック20の搭載先は特に限定されない。
【符号の説明】
【0069】
20…燃料電池スタック、30…スタック本体、40…スタック締結ボルト、50…積層体、51…燃料電池セル、81…第1エンドプレート、81c…第1対向面、81d…第2貫通孔、82…第2エンドプレート、82c…第2対向面、90…取付部材、90a…逃げ溝、90b…第1貫通孔、91…ボルト、92…ナット、100…取付対象としてのスタックマウントプレート、101…搭載用フレーム、A…積層方向。
図1
図2
図3
図4
図5
図6