(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179147
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】間接作業補助装置
(51)【国際特許分類】
H02G 1/02 20060101AFI20231212BHJP
B66F 9/06 20060101ALI20231212BHJP
B66F 11/04 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
H02G1/02
B66F9/06 W
B66F11/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092259
(22)【出願日】2022-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000163419
【氏名又は名称】株式会社きんでん
(71)【出願人】
【識別番号】591083772
【氏名又は名称】株式会社永木精機
(74)【代理人】
【識別番号】100118924
【弁理士】
【氏名又は名称】廣幸 正樹
(72)【発明者】
【氏名】萬代 丈次
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー アントワン レオ
【テーマコード(参考)】
3F333
5G352
【Fターム(参考)】
3F333AA09
3F333AC13
3F333AE38
3F333AE40
5G352AE05
5G352AJ01
5G352AJ11
(57)【要約】
【課題】駆動力を用いることなく、正確な水平移動及び垂直移動を同時に行うことができる間接作業補助装置を提供する。
【解決手段】間接作業補助装置1は、本体2の手摺取付部4によってバケットの手摺Bに取り付けられる。遠隔操作棒を把持する把持部16を有する操作棒固定部14は本体2に対して水平方向へ移動可能であると共に、昇降可能に構成されている。昇降方向を示す基準線L2は、バケットの手摺Bの鉛直方向の基準線L1に対して、上方がバケットの内側へ傾斜している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高所作業車のバケットの手摺に取り付けられ、遠隔操作棒を位置調節可能に支持する間接作業補助装置であって、
前記遠隔操作棒を固定する操作棒固定部と、
前記バケットの内側への水平移動を伴いながら上昇するように前記操作棒固定部を昇降自在に支持する昇降ガイド部と、
前記昇降ガイド部を前記手摺に沿った水平方向へ移動自在に支持する水平ガイド部を有し、前記手摺の上端に掛けるように配置されると共に前記手摺の鉛直部分を挟み込むようにして取り付ける手摺取付部を有する本体と
を備えたことを特徴とする間接作業補助装置。
【請求項2】
前記昇降ガイド部は、前記操作棒固定部を上方へ付勢する付勢手段と、
前記操作棒固定部を任意の昇降位置でロックできるロック手段と
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の間接作業補助装置。
【請求項3】
前記昇降ガイド部は、
当該昇降ガイド部内に固定端を有すると共に自由端が前記操作棒固定部側に連結された巻き掛け部材と、
前記巻き掛け部材が巻き掛けられ、前記自由端が前記操作棒固定部を引き上げるように前記付勢手段によって付勢された動滑車と
を備えたことを特徴とする請求項2に記載の間接作業補助装置。
【請求項4】
前記昇降ガイド部は、
当該昇降ガイド部内に第2固定端を有すると共に第2自由端が前記操作棒固定部側に連結された第2巻き掛け部材と、
前記自由端が回転軸に連結され、前記自由端を介して伝達される前記付勢手段の付勢により前記第2自由端が前記操作棒固定部を引き上げるように前記第2巻き掛け部材が巻き掛けられた第2動滑車と
を備えたことを特徴とする請求項3に記載の間接作業補助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高所作業車を用いた間接作業による架空線工事を補助するための間接作業補助装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電線の架設や修復などの架空線工事では、通電状態の活線作業が行われることが多くなっている。このため、間接作業を安全に行うための工具が考えられている。
【0003】
例えば、電線を切断する場合、金属製の掴線器を有する総重量数kgの張線装置が用いられる。このような場合、作業者は、遠隔操作棒に取り付けられた先端工具を用いて張線装置を遠隔操作により設置し、電線の取り回しを行わなければならない。高所作業車を用いたバケット上の作業であれば、二人程度の作業が一般的であり、作業を分担したとしても、それぞれの負担は大きい。
【0004】
各作業員の負担を軽減し、安全に作業を行うために、遠隔操作棒を支持する工具や装置が考えられている。
図9は従来の活線作業用工具の固定装置100である。固定装置100はバケットの手摺Bに取り付けることができ、遠隔操作棒Sを固定することができる。クランプ101はボールジョイント102を介して設けられているので、固定された遠隔操作棒Sの向きを自由に変えることができる。尚、このような装置は、特許文献1に開示されている。
【0005】
一方、駆動力を用いた位置決め機構を備える装置も考えられている。
図10は従来の作業用工具のヘルパー200である。
図9の固定装置100と同様にバケットの手摺Bに取り付けられ、水平方向駆動部201及び垂直方向駆動部202を備えている。水平方向駆動部201の駆動力によって移動部204が水平方向に移動可能であり、垂直方向駆動部202の駆動力によって支持柱205が上下に伸縮操作される。水平方向駆動部201及び垂直方向駆動部202の操作はフットスイッチ203によって行われる。尚、このような装置は、特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000-324635号公報
【特許文献2】特開2017-112813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、
図9のような固定装置100では、ボールジョイント102を中心に遠隔操作棒Sを回転させることができるに過ぎず、高さ方向や水平方向への調節を行うためには、バケットごと移動させる必要がある。ところが、反動による末端の動きを抑えてバケットを細かく移動させるのは容易ではなく、安全に操作を行うには熟練を要する。
【0008】
また、
図10のようなヘルパー200では駆動機構の重量分だけバケットの積載許容上限が縮小し、作業スペースも圧迫される。そして、垂直移動及び水平移動のための駆動操作と伸縮機構及び回転機構との位置調節が同時に行えないので、作業員の感覚に応じた軽快な操作は行えない。
【0009】
そこで、本発明では、駆動力を用いることなく、正確な水平移動及び垂直移動を同時に
行うことができる間接作業補助装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の間接作業補助装置は、高所作業車のバケットの手摺に取り付けられ、遠隔操作棒を位置調節可能に支持する間接作業補助装置であって、前記遠隔操作棒を固定する操作棒固定部と、前記バケットの内側への水平移動を伴いながら上昇するように前記操作棒固定部を昇降自在に支持する昇降ガイド部と、前記昇降ガイド部を前記手摺に沿った水平方向へ移動自在に支持する水平ガイド部を有し、前記手摺の上端に掛けるように配置されると共に前記手摺の鉛直部分を挟み込むようにして取り付ける手摺取付部を有する本体とを備えたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の間接作業補助装置は、上記構成に加えて、前記昇降ガイド部は、前記操作棒固定部を上方へ付勢する付勢手段と、前記操作棒固定部を任意の昇降位置でロックできるロック手段とを備えたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の間接作業補助装置は、上記構成に加えて、前記昇降ガイド部は、当該昇降ガイド部内に固定端を有すると共に自由端が前記操作棒固定部側に連結された巻き掛け部材と、前記巻き掛け部材が巻き掛けられ、前記自由端が前記操作棒固定部を引き上げるように前記付勢手段によって付勢された動滑車とを備えたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の間接作業補助装置は、上記構成に加えて、前記昇降ガイド部は、当該昇降ガイド部内に第2固定端を有すると共に第2自由端が前記操作棒固定部側に連結された第2巻き掛け部材と、前記自由端が回転軸に連結され、前記自由端を介して伝達される前記付勢手段の付勢により前記第2自由端が前記操作棒固定部を引き上げるように前記第2巻き掛け部材が巻き掛けられた第2動滑車とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明の間接作業補助装置によれば、操作棒固定部は昇降ガイド部に対して昇降自在に支持されており、また、昇降ガイド部は水平ガイド部に対して水平方向へ移動自在に支持されている。これにより、昇降動作及び水平移動動作を同時に行うことができる。さらに、昇降ガイド部は、鉛直方向ではなく、上昇の際にバケットの内側へ向かう水平移動を伴うように昇降ガイドするので、昇降時及び水平移動時の何れにおいても、バケットの手摺の鉛直部分の面内方向への力が生じない。すなわち、バケットの手摺の鉛直部分に対して面外方向の力が生じることにより、手摺取付部とバケットとの間の挟持圧力を増大させるので、バケットに対する取付状態が安定する。
【0015】
また、本発明によれば、上記効果に加えて、昇降ガイド部は、付勢手段によって操作棒固定部を上方へ引き上げるように付勢するので、遠隔操作棒等の荷重を軽減することができる。また、ロック手段によって操作棒固定部の昇降位置を任意にロックできるので、上下及び水平方向の複合動作から水平方向の単独動作への切り替えが容易であり、水平方向の微調整を正確に行うことが可能となる。
【0016】
また、本発明によれば、上記効果に加えて、昇降ガイド部は、固定端を自身の昇降ガイド部内に設け、自由端に生じる力が操作棒固定部側に伝達されるように巻き掛け部材が巻き掛けられた動滑車を備えている。また、付勢手段は、操作棒固定部を引き上げる向きに動滑車を付勢する。これにより、動滑車の2倍の移動量で操作棒固定部を引き上げることができる。
【0017】
また、本発明によれば、上記効果に加えて、昇降ガイド部は、第2巻き掛け部材の第2固定端を自身の昇降ガイド部内に設け、第2自由端に生じる力が操作棒固定部側に伝達さ
れるように構成された第2動滑車を備えている。また、第2動滑車の回転軸に動滑車の自由端が連結されている。このように、動滑車及び第2動滑車で複合滑車が構成されているので、自由端によって間接的に、動滑車の4倍の移動量で操作棒固定部が引き上げられる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図3】間接作業補助装置の内部構造を示す斜視図である。
【
図4】昇降部及び昇降ガイド部を一部破断させた斜視図である。
【
図6】昇降部及び昇降ガイド部の動作を示す模式図である。
【
図7】昇降部及び昇降ガイド部の第1変形例を示す模式図である。
【
図8】昇降部及び昇降ガイド部の第2変形例を示す模式図である。
【
図9】従来の活線作業用工具の固定装置を示す図である。
【
図10】従来の作業用工具のヘルパーを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態に係る間接作業補助装置について図を用いて説明する。尚、同一構造については同一符号を付して説明することとする。
【0020】
図1は本発明の間接作業補助装置1の正面図である。この間接作業補助装置1は、上方に遠隔操作棒を固定する構造を有しており、高所作業車のバケットの手摺に取り付けて使用される。間接作業補助装置1を用いると、架空線工事の間接作業において、バケットを基準とした位置決めが容易になる。これにより、作業負担が軽減されると共に作業時間を短縮することが可能となる。
【0021】
図1には示していないが、正面視の間接作業補助装置1に対して、バケットの手摺の延びる方向は左右方向の配置となる。
【0022】
図1に示す操作棒固定部14が、遠隔操作棒と一体となって動く部分である。具体的には、操作棒固定部14は、把持部16、回転部18、前後スライド部22及び昇降部20を有している。
【0023】
把持部16は、遠隔操作棒を固定するために備えられており、ここではクランプ型の構成が一例として示されている。回転部18は、把持部16と一体となって遠隔操作棒を回転させることができる。本実施の形態に係る構成では、回転部18としてボールジョイントの構成が用いられている。前後スライド部22は、間接作業補助装置1の取付位置を基準にして、バケットの外側を前方とし、バケット内側を後方とする前後方向へ、回転部18より上方の構成をスライド可能に支持する構成である。そして、昇降部20は、カバー20dに覆われた内側に設けられている昇降ガイド部8に対して昇降可能に構成されている。
図1では、昇降ガイド部8の位置を点線で表している。
【0024】
操作棒固定部14には、ブレーキワイヤー12a、ブレーキ解除レバー12bを有する昇降ブレーキ12が取り付けられている。ブレーキ解除レバー12bを操作しない状態では、昇降ブレーキ12は操作棒固定部14を昇降ガイド部8に対して相対的に昇降動作しないようにロックするように働いている。そして、ブレーキ解除レバー12bにより解除動作を行った場合にだけ操作棒固定部14の昇降運動が可能となる。
【0025】
本体2は、昇降ガイド部8を水平方向へ移動自在にガイドする水平ガイド部6を有して
いる。すなわち、昇降ガイド部8及び操作棒固定部14が一体となって、水平ガイド部6に対して水平方向へ相対移動自在に構成されている。水平ガイド部6は、上側に水平ガイドレール6aを、下側に水平ガイドレール6bを有しており、これら2本の水平ガイドレール6a、6bと昇降ガイド部8とが直接連結されている。
【0026】
本体2は、2つの取付クランプ4aを用いてバケットの手摺に固定される。また、本体2には、吊金具24が設けられている。この吊金具24を利用してバケットの手摺までクレーン等を利用して運搬することが可能である。吊金具24は、本体2との間に可動機構を介していないので、安定して運搬することができる。
【0027】
図2は、
図1の間接作業補助装置1の側面図である。ここでは、バケットの手摺Bの一部を断面図で表している。
【0028】
本体2は、手摺Bに対して上から掛けることができるように、逆∪字型に形成された手摺取付部4を有している。上述の取付クランプ4aは、バケットの手摺Bの内側面を押圧できるように手摺取付部4に対して配置されている。手摺取付部4は、手摺Bの上端で外側に突出した縁部B1の断面形状に合わせて外側に向けて凹状になるように切り欠き加工されている。取付クランプ4aが内側に設けられているので、取り付け時には、手摺Bの縁部B1が上述の切り欠きの凹状部分に嵌まり込む。よって、手摺取付部4の脱落を防止して設置状態が安定する。
【0029】
前後スライド部22によって、回転部18より上の構成を一体的に前後動可能であることは上述の通りである。この前後スライド部22は、昇降部20から本体2側に延びている。これにより、後方へスライドさせると、把持部16に把持させた遠隔操作棒の操作をバケットの手摺Bの上方に近い位置で行うことができる。
【0030】
図2では、
図1と同様に、昇降ガイド部8が昇降部20のカバー20dの内側に隠れているため、昇降ガイド部8の位置のみが点線で表されている。この昇降ガイド部8のガイドによって昇降部20の昇降動作する方向が基準線L2で表され、
図2中の昇降部20に重ねて描かれている。一方、バケットの手摺Bに重ねて描かれた基準線L1は、手摺Bの垂直な側壁が広がる方向(側壁の面内方向)を示している。
【0031】
図2に見て取れるように、操作棒固定部14(
図1参照)の昇降方向は、上昇するにつれて、バケットの内側へ近づくように傾斜しているのが分かる。すなわち、操作棒固定部14は、バケットの内側へ向かう水平移動を伴いながら斜め上方へ上昇する。このように、前後スライド部22の機構に加えて昇降方向が傾斜しているので、バケットの外側に操作棒固定部14が配置された構成であっても、把持部16をバケット内側の作業者側に寄せて作業を行うことができる。また、昇降機構によって上昇させても、水平方向では作業者側へ近づくように移動するので、高さの増大に応じて重心をバケット側に移すことができ、重量バランスを安定な状態に保つことができる。
【0032】
加えて、昇降動作に伴う力は、基準線L2に沿った方向に作用する。すなわち、基準線L2に沿った力が本体2側に伝達される。この基準線L2に沿った力は、手摺Bの基準線L1に平行な面内方向の力成分だけでなく、手摺Bの側壁に直交する面外方向の力成分も含んでいる。したがって、昇降動作の際に、取り付けクランプ4aによる挟持圧力が増大する方向へ力が作用する。このように本実施の形態に係る間接作業補助装置1では、昇降動作によって取り付けクランプ4aの「ずれ」や「滑り」が発生し難い構成となっている。
【0033】
図3は、間接作業補助装置1の内部構造を示す斜視図である。説明の便宜のため、回転部18(
図1参照)から上の構成と、昇降部20のカバー20dとが除かれた状態が表さ
れている。
【0034】
カバー20dを取り外すことにより、昇降部20を昇降自在にガイドする昇降ガイド部8の構成が表れている。昇降ガイド部8は板状の基板8aを有しており、この基板8aが水平ガイド部6に対して水平方向へ移動自在に設けられている。基板8aに対して昇降動作をサポートする機構が配置されている。基板8aの上端には、水平ガイド部6の水平ガイドレール6aに対してブレーキを掛けることのできる水平ブレーキ10が2箇所設けられている。この水平ブレーキ10を用いることにより、水平位置だけを独立してロック及び解除できる。
【0035】
操作棒固定部14の構成の一つである昇降部20(
図1参照)は、天板20aと底板20bとを繋ぐ2本のスライド支柱20cを有している。これらスライド支柱20cが、昇降ガイド部8の4つの支柱ガイド8b1、8b2に対してスライド可能にガイドされている。支柱ガイド8b1、8b2のうち下方の支柱ガイド8b2側には、ブレーキ機構が備えられている。上述した把持部16(
図1参照)に取り付けられたブレーキ解除レバー12bから延びるブレーキワイヤー12aに連結されるワイヤー連結金具12cが、ブレーキ解除レバー12bの操作によって引き上げられることにより、支柱ガイド8b2に対するスライド支柱20cのロック状態が解除されるように構成されている。
【0036】
昇降部20の天板20a上に設けられた前後スライド部22には、上述の水平ブレーキ10と同様に、前後ブレーキ22cが設けられている。前後スライド台22aを前後ガイドレール22bに沿って滑らせて、適当な作業位置が決定した状態で前後ブレーキ22cのノブを回すことにより位置固定ができる。
【0037】
このような昇降部20を上方へ付勢するために、2本のガススプリング8pが昇降ガイド部8内に設けられている。これらガススプリング8pの付勢が間接的に作用することにより、上昇時の遠隔操作棒等の荷重が軽減されて軽快な操作が可能となる。
【0038】
続いて、昇降ガイド部8の構成要素の配置について、
図4を用いて詳しく説明する。
【0039】
図4は、中央縦断により昇降部20(
図1参照)及び昇降ガイド部8(
図1参照)を破断させた斜視図である。破断面には斜線を施して表している。また、説明の便宜のため、天板20a(
図3参照)より上方の構造及びガススプリング8pを除いて図示している。
【0040】
基板8aの上方には定滑車8iが設けられている。また、定滑車8iの直下にはベルト8jで繋がれた動滑車8c(第1動滑車)が設けられている。定滑車8iから延びるベルト8jは、動滑車8cの下方に巻き掛けられて上方へ折り返され、ベルトクランプ8mに固定されている。ベルトクランプ8mは、動滑車8cの固定端を形成する。そして、動滑車8cは、上下に延びる動滑車ガイドレール8fに沿って昇降可能に設けられている。定滑車8iの上方に巻き掛けられたベルト8j(動滑車8cの自由端側)は、動滑車8cとは逆側で動滑車ケース8eに固定されている。この動滑車ケース8e内には、動滑車8d(第2動滑車)が設けられている。すなわち、ベルト8jは、動滑車ケース8eを介して間接的に動滑車8dの回転軸8dAに連結されている。
【0041】
動滑車8dには、ベルト8kが上方に巻き掛けられており、一方が基板8aの下端側に設けられたベルトクランプ8nに固定されて固定端(第2固定端)を形成している。そして、ベルト8kのうち動滑車8dの自由端である他方側が昇降部20の底板20b上に設けられたベルトクランプ20e(第2自由端の固定対象)に固定されている。この動滑車8dは、動滑車8cと同様に、基板8aの上下方向に設けられた動滑車ガイドレール8gに沿って昇降可能に設けられている。次に、これらの昇降機構を単純化した模式図で示す
。
【0042】
図5は、昇降部20及び昇降ガイド部8(
図3参照)の正面視による模式図である。矩形で表した基板8a上に、
図4に示した各構成が配置されている。
【0043】
水平方向における中央側の上方に2つの定滑車8iが設けられ、これに上方から巻き掛けられるベルト8jによって、それぞれ2つの動滑車8c、8dが連結されている。そして、定滑車8iと動滑車8cとの間に渡すようにしてガススプリング8pが配置されている。
【0044】
このように構成されているので、昇降部20に下向きの力が加わると、底板20bからベルト8kを介して動滑車8dを引き下げる力が伝達される。これにより、定滑車8iに巻き掛けられたベルト8jの一端が引っ張られ、動滑車8cが引き上げられる。このとき、ガススプリング8p(
図3参照)によって伸長方向に作用する付勢に抗して動滑車8cが引き上げられる。すなわち、ガススプリング8pによって生じる付勢力が、間接的に昇降部20を持ち上げる向きの力として作用する。
【0045】
なお、
図5に模式的に表したように、本実施の形態に係る構成では、動滑車ガイドレール8fの延びる方向に対してガススプリング8pの伸縮方向が傾斜するように配置されている。
【0046】
このように構成すると、ガススプリング8pの収縮に伴って動滑車ガイドレール8fの延びる方向に対するガススプリング8pの傾斜角が大きくなる。そして、この傾斜角が大きくなるにつれて、ガススプリング8pから動滑車8cに作用する力のうち、動滑車ガイドレール8fに沿う方向成分の力が減少する。このように、動滑車ガイドレール8fの延びる方向に対してガススプリング8pの伸縮方向を傾斜させる構成を採用することにより、バネ定数を低く抑えて、可動域全体においてスムーズな操作を行うことが可能となる。
【0047】
また、支柱ガイド8b2には、ブレーキ機構が取り付けられていることを上述した。作業者は、把持部16(
図2参照)に取り付けられたブレーキ解除レバー12bを必要に応じて操作することにより、細かい位置合わせを容易に行うことが可能となる。これらの動作を、次の
図6に示す。
【0048】
図6は、昇降部20及び昇降ガイド部8(
図3参照)の動作を示す模式図である。ここでは、昇降部20が降下した状態が示されている。ガススプリング8pは、接続されている動滑車8cが動滑車ガイドレール8fに沿って上昇することによって圧縮されている。動滑車8cの上昇により、動滑車8cの移動距離の2倍の長さ分だけ、ベルト8jが定滑車8i側に送られる。そして、定滑車8iを介して送り出されたベルト8jによって、もう一段設けられている動滑車8dが降下する。動滑車8cの場合と同様に、動滑車8dが動滑車ガイドレール8gに沿って移動する距離の2倍の長さ分だけベルト8kが自由端側(底板20b側)に送られる。
【0049】
すなわち、動滑車8cの移動距離の4倍のストロークで昇降部20が昇降運動を行う構成になっている。このように構成されているので、付勢手段をコンパクトに設計することができ、軽量化が可能となる。よって、バケット内の限られた領域で十分な作業スペースを確保することができる。
【0050】
<第1変形例>
図7は、昇降部20及び昇降ガイド部8の第1変形例を示す模式図である。
【0051】
動滑車8c及び定滑車8iの連結構成については、
図5に示した構成と同じである。しかし、動滑車8dが用いられず、可動部分が動滑車8cの1段のみで構成されている点において
図5の構成とは異なっている。
【0052】
図6の構成では、動滑車8c、8dを介して動滑車8cの4倍のストロークが昇降部20に生じていたが、動滑車8cが一段で構成されている
図7の例では昇降部20のストロークは動滑車8cの移動量の2倍に抑えられる。
【0053】
昇降範囲が比較的小さい場合、用途に応じて軽量化のために動滑車を1段だけ用いて構成することもできる。ここでは、昇降部20の底板20bと定滑車8iとの間を連結する部材としてベルト8k1を図示している。この第1変形例では、動滑車8dに相当する構成は必要ないので、ベルト8k1の代用として剛性を有する部材を選択することもできる。
【0054】
<第2変形例>
図8は、昇降部20及び昇降ガイド部8の第2変形例を示す模式図である。この第2変形例では、
図5の構成のように、2つの動滑車8c、8dを組み合わせて用いている点については同様であるが、
図5の動滑車8cに相当する動滑車8c1を上下逆に設置し、且つ、定滑車8iを用いていない点において異なっている。
【0055】
すなわち、第2変形例の動滑車8c1は、動滑車ガイドレール8f1に沿って上下に摺動可能に配置されており、ガススプリング8pによって上方に向かって付勢されている。このように構成されているので、
図5の構成に比べて、2個の定滑車8iが不要となり軽量化が可能となる。
【0056】
なお、動滑車8c1に巻き掛けられる巻き掛け部材であるベルト8jの固定端が基板8a上に設けられ、自由端側が操作棒固定部14(
図1参照)の昇降部20を引き上げるようにガススプリング8pで付勢されている構成において、
図5の構成と共通している。
【0057】
以上に述べた構成に限定されることなく、本発明は以下のような変形例も含まれる。
【0058】
(1)上記の実施の形態では、操作棒固定部14の昇降部20を昇降ガイド部8に対してロックするための昇降ブレーキ12が、左右のスライド支柱20cのそれぞれに対して設けられている構成を例として示した。しかし、少なくとも一方に設けられていれば同様の効果を得ることができる。また、昇降ガイド部8に対してロックできる構成であれば、昇降ブレーキ12は、支柱ガイド8b2以外の昇降ガイド部8内の構成上に設けられていても構わない。
【0059】
(2)上記の実施の形態では、昇降ガイド部8がバケットの外側に配置される構成を例として示した。しかし、スペースに余裕があれば、昇降ガイド部8をバケットの内側へ設ける構成でも構わない。
【0060】
(3)上記の実施の形態では、操作棒固定部14に、把持部16、回転部18及び昇降部20が含まれる構成を例として示した。しかし、遠隔操作棒を固定する構造を有し、且つ、昇降ガイド部8に対して相対的に昇降運動可能な機構を備えていれば、把持部16、回転部18及び昇降部20のすべてを備えている必要はない。また、把持機構以外の遠隔操作棒固定手段を用いる構成でも構わない。
【0061】
(4)上記の実施の形態では、動滑車8cを摺動可能に支持する動滑車ガイドレール8fの延びる方向に対して、ガススプリング8pの伸縮方向が僅かに傾斜するように構成さ
れている例を示した。しかし、傾斜させずに平行に設置しても構わない。傾斜角が大きくなれば、上述のようにバネ定数を低下させることができるが、比較的バネ定数の小さいガススプリングの特性だけでスムーズな操作感が十分に得られる場合は、動滑車ガイドレール8fとガススプリング8pとを重ねるように配置しても構わない。
【0062】
(5)上記の実施の形態では、動滑車8cと定滑車8iとの間に渡すようにしてガススプリング8pが配置された構成を例として示した。しかし、定滑車8iにについては、基板8aと一体であれば、他の構成に接続されていても構わない。例えば、基板8aに直接固定される構成でもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 間接作業補助装置
2 本体
4 手摺取付部
4a 取付クランプ
6 水平ガイド部
6a、6b 水平ガイドレール
8 昇降ガイド部
8a 基板
8b1、8b2 支柱ガイド
8c、8c1 動滑車(第1動滑車)
8d 動滑車(第2動滑車)
8dA 回転軸
8e 動滑車ケース
8f、8f1、8g 動滑車ガイドレール
8h ストッパー
8i 定滑車
8j ベルト(巻き掛け部材)
8k、8k1 ベルト(第2巻き掛け部材)
8m ベルトクランプ(固定端)
8n ベルトクランプ(第2固定端)
8p ガススプリング(付勢手段)
10 水平ブレーキ
12 昇降ブレーキ
12a ブレーキワイヤー
12b ブレーキ解除レバー
12c ワイヤー連結金具
14 操作棒固定部
16 把持部
18 回転部
20 昇降部
20a 天板
20b 底板
20c スライド支柱
20d カバー
20e ベルトクランプ(第2自由端の固定対象)
22 前後スライド部
22a 前後スライド台
22b 前後ガイドレール
22c 前後ブレーキ
24 吊金具
100 固定装置
101 クランプ
102 ボールジョイント
200 ヘルパー
201 水平方向駆動部
202 垂直方向駆動部
203 フットスイッチ
204 移動部
205 支持柱
B バケットの手摺
B1 縁部
L1 手摺の基準線
L2 昇降方向の基準線
S 遠隔操作棒