(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179148
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物、中間基材、及び前記中間基材の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 5/24 20060101AFI20231212BHJP
C08G 18/67 20060101ALI20231212BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
C08J5/24 CEY
C08G18/67 010
C08F290/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092260
(22)【出願日】2022-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000230364
【氏名又は名称】日本ユピカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【弁理士】
【氏名又は名称】坂野 博行
(72)【発明者】
【氏名】清水(石根) 希望
(72)【発明者】
【氏名】相原 宏次
(72)【発明者】
【氏名】諸岩 哲治
【テーマコード(参考)】
4F072
4J034
4J127
【Fターム(参考)】
4F072AA02
4F072AA07
4F072AB10
4F072AB27
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4F072AL02
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4F072AL17
4J034CA02
4J034CA03
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4J127CB281
4J127EA05
4J127FA02
(57)【要約】
【課題】
本発明は、上記課題を解決し、繊維材料への含浸性に優れる液状組成物を提供し、かつ複合材料としたときの機械物性に優れる中間材料を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明の繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物は、組成物(A)と組成物(B)と(C)とを含有する繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物であって、前記組成物(A)がイソシアネート基を少なくとも2個以上有する化合物(a1)および、前記(a1)と2個以上の第一のイソシアネート反応性基含有化合物(b2)とを予め反応させた末端イソシアネート基ポリウレタン化合物(a2)の組成物であり、前記組成物(B)が少なくともエチレン性不飽和基含有モノアルコール化合物(b1)を含み、前記(C)は、有機過酸化物系の重合開始剤であることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物(A)と組成物(B)と(C)とを含有する繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物であって、前記組成物(A)がイソシアネート基を少なくとも2個以上有する化合物(a1)および、前記(a1)と2個以上の第一のイソシアネート反応性基含有化合物(b2)とを予め反応させた末端イソシアネート基ポリウレタン化合物(a2)の組成物であり、前記組成物(B)が少なくともエチレン性不飽和基含有モノアルコール化合物(b1)を含み、前記(C)は、有機過酸化物系の重合開始剤であることを特徴とする繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物。
【請求項2】
前記有機過酸化物系の重合開始剤は、10時間半減期温度が90℃以下の種類を含むラジカル重合開始剤であることを特徴とする請求項1記載の液状組成物。
【請求項3】
前記組成物(B)は、第二のイソシアネート反応性基含有化合物(b2)を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の液状組成物。
【請求項4】
重合禁止剤(b3)が、前記組成物(A)及び/又は(B)に配合された請求項1~3のいずれか一項に記載の液状組成物。
【請求項5】
ウレタン化触媒(D)が、前記組成物(A)及び/又は(B)に配合された請求項1~4のいずれか一項に記載の液状組成物。
【請求項6】
前記組成物(A)中のイソシアネート基モル数に対する前記組成物(B)中のイソシアネート反応性基モル数の比(B/A)が0.75~1.2である請求項1~5のいずれか一項に記載の液状組成物。
【請求項7】
前記組成物(A)と前記組成物(B)の少なくともどちらか一方に、イソシアネート反応性基を含まない重合性単量体(E)を含むことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の液状組成物。
【請求項8】
前記組成物(A)と(B)の合計質量に対して前記重合性単量体(E)の含有量は0~40質量%である請求項1~7のいずれか一項に記載の液状組成物。
【請求項9】
B型粘度計で測定された10~50℃における粘度が200~2000mPa・sであることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の液状組成物。
【請求項10】
前記第一及び/又は第二のイソシアネート反応性基含有化合物(b2)が、水酸基当量が30~140g/eqである1分子中に2つ以上のアルコール基を含有する化合物である請求項3~9のいずれか一項に記載の液状組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の液状組成物を繊維材料に含浸してなる繊維強化プラスチック中間基材。
【請求項12】
請求項11記載の繊維強化プラスチック中間基材の製造方法であって、請求項1~10のいずれか一項に記載の液状組成物を任意の組成で前記繊維材料に含浸させる工程と、含浸させて得られた繊維強化プラスチック中間基材を熟成させる工程とを含むことを特徴とする繊維強化プラスチック中間基材の製造方法。
【請求項13】
前記熟成温度は、25~80℃である請求項12記載の方法。
【請求項14】
請求項11記載の繊維強化プラスチック中間基材を硬化させてなる繊維強化複合材料。
【請求項15】
前記硬化の温度は、70~150℃であることを特徴とする請求項14記載の繊維強化複合材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物、繊維強化プラスチック中間基材、及び前記繊維強化プラスチック中間基材の製造方法に関し、特に硬化性に優れる繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物、繊維強化プラスチック中間基材、及び前記繊維強化プラスチック中間基材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化プラスチック(Fiber reinforced plastic:FRP)は軽量で高強度であることから、様々な構造部材に使用されている。それらの分野は、住宅設備、自動車、船舶、土木、スポーツ用具等多岐にわたるが、近年特に軽量化を要する自動車や輸送関連機器分野でFRPの使用が増加している。
【0003】
FRPの製造には樹脂と繊維が用いられるが、液状の樹脂と繊維(又は織物)を使用して成形する方法とあらかじめ樹脂を繊維に含浸させBステージ化した中間基材(SMC(Sheet molding compound),プリプレグ)を使用する方法がある。中間基材を用いて成形する方法としてはオートクレーブ成形、シートワインディング成形、オーブン成形、プレス成形などがある。これらの成形においては、中間基材をカットし、目標の厚みまで積層し熱をかけて硬化させる成形法である。
【0004】
一方、ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、炭素繊維との密着性に優れることは従来から知られており、炭素繊維のサイジング剤として用いられている(例えば特許文献1)。また、ウレタン(メタ)アクリレート化合物は強化繊維との接着性が良好であるため、強化繊維との接着性の劣る樹脂と混合して用いることが提案されている(例えば特許文献2)。
【0005】
現在、炭素繊維中間基材を用いた成形は、オートクレーブ成形、シートワインディング成形、プレス成形などが主流であるが、これらは成形に要する成形機や金型が高価であることから設備投資が多額になり、少量多品種には向かないという問題がある。
【0006】
従来の中間基材(特にSMC)は、通常、圧縮成形の温度は130~160℃、圧力は8~10MPaの高温高圧でなされるため、当該成形機には多額の設備投資が必要である。そこで設備投資の低減を目的として、エポキシ樹脂を組成物とするマトリックス樹脂に対して、大気圧下での操作が可能なオーブン成形、また金型の費用がより低減でき、さらに設備投資が安価な樹脂型、石膏型、木型などの使用が可能となる低温(100℃程度)低圧での圧縮成形が提案されている(例えば特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11-200252号公報
【特許文献2】特開昭62-292839号公報
【特許文献3】特開2006-160972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述の特許文献1及び2に記載のウレタン(メタ)アクリレート化合物は、強化繊維との複合材料としたときに十分な機械物性を得ることができないため、実用的な機械的強度を有する成形品を得られないという課題があった。
【0009】
また、プリプレグシートのマトリックス樹脂としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂などがあるが、FRP機械物性、硬化性、表面性などをバランスよく満たすマトリックス樹脂が無いのが現状である。例えばエポキシ樹脂をマトリックスとするプリプレグシートは、機械物性に優れる硬化物を与えるが、硬化の際、高温で且つ長時間を要すること、保管を極冷下で行わなければならないことが課題としてあり、ビニルエステル樹脂や不飽和ポリエステル樹脂は、硬化性や保管性に優れるが硬化物の機械物性が不十分であるという課題を有する。
【0010】
さらに、従来の中間基材を用いて成形する方法においては、成形品中のボイドを完全に無くすことができない課題もある。成形品中にボイドが残存すると欠陥部位となり強度低下を招いてしまう。このボイドを極力減らすには積層枚数を減らす、すなわち単位面積質量が大きい中間基材を使用することが解決策となるが、現状の製法には限界がある。Bステージ化の手法としては、粘度の高い半固形の樹脂をホットメルトして高温で繊維に含浸させる方法、粘度の高い半固形の樹脂を溶剤に希釈して、常温で含浸させて溶剤を除去する方法、反応性希釈剤にオリゴマーを溶解させた樹脂に増粘剤を加え、常温で含浸させ化学的に増粘させる方法があるが、いずれの方法も中間基材の単位面積質量に限界がある。反応性希釈剤にオリゴマーを溶解させた樹脂を用いる方法においては、反応性希釈剤の量を増量して含浸時の粘度を低くすることもできるが、硬化収縮が大きくなるため寸法安定性の高いFRPを得ることができない課題がある。
【0011】
従来の中間基材(特にSMC)は高温高圧で成形されるが、より低温低圧のオーブン成形が可能となれば、上記成形機や金型の課題を低減できる。以上のように、低温低圧で圧縮成形が可能な材料が求められている。しかし、現在販売されている材料は、中間基材の保存安定性と製造方法、物性の面から成形温度が130℃以上を推奨しているものがほとんどであり、保存性が良好で低温低圧成形で十分な機械物性を有するFRPを与える中間基材の製造は難しいという課題があった。
【0012】
また、液状組成物によっては、中間基材作成時に含浸させた繊維からの液状組成物の染み出しが生じ、液状組成物による周囲汚損、設計目付からのずれ、などが生じる問題がある。
【0013】
目付のずれは中間基材を用いて成形物を作成する際に、型に賦形するために一定の大きさに切り出した中間基材の質量が変わってしまうため、本来あるべき賦形状態から逸脱し、成形物の製造上問題となる。そのため、中間基材製造において設計目付の管理は重要であり、繊維からの染み出し、目付のずれは解決すべき問題である。また、エポキシ樹脂硬化剤に用いられるアミンなどの化合物は、中間基材製造工程中における刺激物暴露という問題がある。
【0014】
そこで、本発明は、上記課題を解決し、繊維材料への含浸性に優れる液状組成物を提供し、かつ複合材料としたときの機械物性に優れる中間材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者等は、ラジカル重合性化合物を少なくとも含む組成物について種々の観点から多角的に検討を重ねた結果、本発明の繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物を見出すに至った。
【0016】
すなわち、本発明の繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物は、組成物(A)と組成物(B)と(C)とを含有する繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物であって、前記組成物(A)がイソシアネート基を少なくとも2個以上有する化合物(a1)および、前記(a1)と2個以上の第一のイソシアネート反応性基含有化合物(b2)とを予め反応させた末端イソシアネート基ポリウレタン化合物(a2)の組成物であり、前記組成物(B)が少なくともエチレン性不飽和基含有モノアルコール化合物(b1)を含み、前記(C)は、有機過酸化物系の重合開始剤であることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物の好ましい実施態様において、前記有機過酸化物系の重合開始剤は、10時間半減期温度が90℃以下の種類を含むラジカル重合開始剤であることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物の好ましい実施態様において、前記組成物(B)は、第二のイソシアネート反応性基含有化合物(b2)を含むことを特徴とする。
【0019】
また、本発明の繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物の好ましい実施態様において、重合禁止剤(b3)が、前記組成物(A)及び/又は(B)に配合されていることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物の好ましい実施態様において、ウレタン化触媒(D)が、前記組成物(A)及び/又は(B)に配合されていることを特徴とする。
【0021】
また、本発明の繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物の好ましい実施態様において、前記組成物(A)中のイソシアネート基モル数に対する前記組成物(B)中のイソシアネート反応性基モル数の比(B/A)が0.75~1.2であることを特徴とする。
【0022】
また、本発明の繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物の好ましい実施態様において、前記組成物(A)と前記組成物(B)の少なくともどちらか一方に、イソシアネート反応性基を含まない重合性単量体(E)を含むことを特徴とする。
【0023】
また、本発明の繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物の好ましい実施態様において、前記組成物(A)と(B)の合計質量に対して前記重合性単量体(E)の含有量は0~40質量%であることを特徴とする。
【0024】
また、本発明の繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物の好ましい実施態様において、B型粘度計で測定された10~50℃における粘度が200~2000mPa・sであることを特徴とする。
【0025】
また、本発明の繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物の好ましい実施態様において、前記第一及び/又は第二のイソシアネート反応性基含有化合物(b2)が、水酸基当量が30~140g/eqである1分子中に2つ以上のアルコール基を含有する化合物であることを特徴とする。
【0026】
また、本発明の繊維強化プラスチック中間基材は、本発明の液状組成物を繊維材料に含浸してなることを特徴とする。
【0027】
また、本発明の繊維強化プラスチック中間基材の製造方法は、本発明の繊維強化プラスチック中間基材の製造方法であって、本発明の液状組成物を任意の組成で前記繊維材料に含浸させる工程と、含浸させて得られた繊維強化プラスチック中間基材を熟成させる工程とを含むことを特徴とする。
【0028】
また、本発明の繊維強化プラスチック中間基材の製造方法の好ましい実施態様において、前記熟成温度は、25~80℃であることを特徴とする。
【0029】
また、本発明の繊維強化複合材料は、本発明の繊維強化プラスチック中間基材を硬化させてなることを特徴とする。
【0030】
また、本発明の繊維強化複合材料の好ましい実施態様において、前記硬化の温度は、70~150℃であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明の繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物によれば、前記液状組成物が基材への含浸性に優れ、硬化時の収縮が小さく寸法安定性に優れる中間基材を与えることが可能であるという有利な効果を奏する。
【0032】
また、本発明によれば、予めアルコール化合物の一部または全部と2個以上イソシアネート基を有する化合物とを反応させたイソシアネート末端プレポリマーを含む2個以上イソシアネート基を有する化合物からなる液状組成物とアルコール化合物とからなる特定の粘度を有する含浸性に優れた液状組成物を用いる本発明により、単位面積の大きい中間基材を製造することができるという有利な効果を奏する。さらに、本発明によれば、単位面積質量の大きい中間基材に関し、積層回数を減らしボイドの極力少ない高強度なFRP、寸法安定性に優れるFRPを提供することが可能であるという有利な効果を奏する。
【0033】
また、本発明によれば、特定の粘度を有する液状組成物を用いる場合、繊維又は繊維上で樹脂成形する際の繊維又は繊維上からの染み出しを抑制することが可能となり、樹脂成形装置のメンテナンス、作業性が向上し、かつ一般に皮膚刺激性を有するイソシアネート化合物との不要な接触を低減させることが出来る。さらに、特定の粘度を有する液状組成物を用いる場合、繊維又は繊維上で樹脂成形する際の目付のコントロールが容易となるという有利な効果も奏する。
【0034】
また、本発明によれば、予めイソシアネート基を有する化合物の一部をアルコール化合物と反応させたイソシアネート末端プレポリマーを含むイソシアネート基を有する化合物とアルコール化合物とからなる液状組成物を用いることにより、従来繊維又は繊維上で樹脂成形する際の繊維又は繊維上からの染み出しが原因で、使用量の限られていた低分子量、低粘度のイソシアネート基を有する化合物やアルコール化合物の使用量制約を緩和することが可能となるという有利な効果を奏する。
【0035】
本発明の繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物によれば、得られた中間基材は低温又は低圧成形が可能であり、且つ機械物性に優れ、ボイドや未含浸部位がほとんど無い信頼性の高い複合材料を与えることが可能であるという有利な効果を奏する。又、本発明の中間基材は硬化性と保管性に優れるという有利な効果も奏する。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、何ら以下の説明に限定されるものではない。本発明において「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」を示す。同様に「(メタ)アクリル酸エステル」は、「アクリル酸エステル」及び「メタクリル酸エステル」を示す。
【0037】
本発明の繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物は、組成物(A)と組成物(B)と(C)とを含有する繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物であって、前記組成物(A)がイソシアネート基を少なくとも2個以上有する化合物(a1)および、前記(a1)と2個以上の第一のイソシアネート反応性基含有化合物(b2)とを予め反応させた末端イソシアネート基ポリウレタン化合物(a2)の組成物であり、前記組成物(B)が少なくともエチレン性不飽和基含有モノアルコール化合物(b1)を含み、前記(C)は、有機過酸化物系の重合開始剤であることを特徴とする。
【0038】
まず、組成物(A)について記載する。組成物(A)は、含浸性の確保と染み出し防止の両立という観点から、2個以上のイソシアネート基を有する化合物(a1)および(a1)と1分子中に2個以上のイソシアネート反応性基含有化合物(b2)とを予め反応させた末端イソシアネート基ポリウレタン化合物(a2)を含む組成物とすることができる。
【0039】
2個以上のイソシアネート基を有する化合物(a1)としては、例えば、1,3-キシリレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4‘-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、4,4’―ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、m-テトラメチルキシレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート化合物、水添キシリレンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水添メチレンビスフェニレンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、等の脂環族イソシアネート化合物、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート化合物、2官能イソシアネート化合物が3量化されたイソシアヌレート環を有する3官能イソシアネート、ポリオールで変性されたイソシアネートプレポリマー等を挙げることができる。これらのイソシアネート化合物は、単独で用いられることも、2種以上を併用することもできる。
【0040】
(a2)について記載する。(a2)は上述の(a1)と後述する(b2)とを反応させた末端イソシアネート基ポリウレタン化合物である。(b2)を組成物(A)に配合してもよく、(b2)を組成物(A)及び(B)の両方に配合しても良い。また、(b2)の配合量の一部または全部を(A)に配合し、組成物(B)と混合する前に(b2)が持つイソシアネート反応性基を(a1)と予め反応させることによって(a2)を得てもよい。この場合、組成物(A)について部分的にプレポリマー化させた末端イソシアネート基を有する反応物を含むことができる。また、(b2)の配合量の一部を(A)に配合し、(b2)の配合量の一部を組成物(B)に配合する場合、組成物(B)と混合する前に(b2)が持つイソシアネート反応性基を(a1)と予め反応させることによって(a2)を得ることができる。反応条件には特に制約はなく、ウレタン化合物の合成に於ける公知の反応条件を任意に選択することができる。
【0041】
次いで組成物(B)について記載する。本発明の繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物の好ましい実施態様において、前記組成物(B)は、含浸性の確保と染み出し防止の両立という観点から、第二のイソシアネート反応性基含有化合物(b2)を含むことを特徴とする。また、組成物(A)に含まれる(a2)の程度、量等によって、組成物(B)に(b2)を含まないようにし、又は含むようにすることができる。
【0042】
本発明において、組成物(B)は、エチレン性不飽和基含有モノアルコール化合物(b1)、2個以上のイソシアネート反応性基含有化合物(b2)、及び、後述するように、重合禁止剤(b3)を含むことができる組成物とすることができる。組成物(B)は、エチレン性不飽和基含有モノアルコール化合物(b1)が必須成分であり、好ましくは、一分子中に2個以上のイソシアネート反応性基含有化合物(b2)を含むことができ、後述するように重合禁止剤は必要に応じて配合することができる組成物である。
【0043】
また、本発明の繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物の好ましい実施態様において、前記第一及び/又は第二のイソシアネート反応性基含有化合物(b2)が、含浸性の付与という観点から、水酸基当量が30~140g/eqである1分子中に2つ以上のアルコール基を含有する化合物であることを特徴とする。
【0044】
組成物(B)に配合されるエチレン性不飽和基含有モノアルコール化合物(b1)、2個以上のイソシアネート反応性基を有する化合物(b2)は、混合の作業性という観点から、繊維への含浸温度(10~50℃の範囲で任意の温度)で液状のものが好ましいが、組成物(B)として該液状組成物となるのであれば固形の材料を用いてもよい。
【0045】
エチレン性不飽和基含有モノアルコール化合物(b1)とは水酸基を含有する(メタ)アクリル酸エステルのことであり、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0046】
これらのエチレン性不飽和基含有モノアルコール化合物(b1)は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。又、これらエチレン性不飽和基含有モノアルコール化合物(b1)のうち、液状組成物の粘度や硬化物の機械物性の点から2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましい。又、耐熱性を必要とする場合は、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0047】
2個以上のイソシアネート反応性基を有する化合物(b2)としては、脂肪族アルコール、及びポリエステルポリオール、アミノ基含有化合物等が挙げられる。
【0048】
脂肪族アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,4-ブテンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-エチル-2-メチルプロパン-1,3-ジオール、2-ブチル-2-エチルプロパン-1,3-ジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,4-ジメチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、1,7-へプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。環状脂肪族アルコールとしては、水添ビスフェノールA、トリシクロデカンジメタノール、スピログリコールなどが挙げられる。このうち、液状組成物の粘度や増粘性、硬化物の機械物性の点から、水酸基当量が30~140g/eqである1分子中に2つ以上のアルコール基を含有するアルコールが好ましく、更には炭素数2~4のポリオールとして、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオールが挙げられ、1,3-プロパンジオールが好適に用いられる。
【0049】
ポリエステルポリオールとしては、不飽和及び又は飽和酸と、前述の脂肪族アルコールとを重縮合させたものが挙げられる。不飽和酸としては、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸が挙げられる。飽和酸としては、オルソフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、コハク酸、セバシン酸、アルキルコハク酸、アルケニルコハク酸、イタコン酸、ビフェニルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、5-tert-ブチル-1,3-ベンゼンジカルボン酸及びこれらの酸無水物、低級アルキルエステル、酸ハロゲン化物などのようなエステル形成性誘導体が挙げられる。
【0050】
アミノ基含有化合物としては、アルカノールアミン、ポリアミンが挙げられる。アルカノールアミンとしては、炭素数2~20のジ-及びトリ-アルカノールアミンが挙げられ、具体的にはジエタノールアミン、トリエタノールアミン及びイソプロパノールアミンなどが挙げられる。ポリアミンとしては、脂肪族アミンとして、炭素数2~6のアルキレンジアミンや炭素数4~20のポリアルキレンポリアミンが挙げられ、具体的には、エチレンジアミン、プロピレンジアミン及びヘキサメチレンジアミン、アルキレン基の炭素数が2~6のジアルキレントリアミン~ヘキサアルキレンヘプタミン、例えば、ジエチレントリアミン及びトリエチレンテトラミンなどが挙げられる。又、炭素数6~20の芳香族ポリアミンとして、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、メチレンジアニリン及びジフェニルエーテルジアミン、炭素数4~20の脂環式ポリアミンとして、イソホロンジアミン、シクロヘキシレンジアミン及びジシクロヘキシルメタンジアミンなども挙げられる。
【0051】
これら2個以上のイソシアネート反応性基を有する化合物(b2)として、脂肪族アルコール、及びポリエステルポリオール、アミノ基含有化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0052】
また、本発明の繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物の好ましい実施態様において、重合禁止剤(b3)が、前記組成物(A)及び/又は(B)に配合されていることを特徴とする。すなわち、重合禁止剤(b3)は、前記組成物(A)のみに含まれていても良く、また、前記組成物(B)のみに含まれていても良く、さらに、前記組成物(A)及び(B)の両方に含まれていても良い。
【0053】
重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、パラベンゾキノン、メチルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、トルハイドロキノン等の公知の重合禁止剤が使用できる。
【0054】
重合開始剤(C)は、後述する繊維強化複合材料化において、ラジカル重合により中間基材を硬化させる際の必須成分である。成分(C)としては、例えば、有機過酸化物系の重合開始剤を挙げることができる。好ましい実施態様において、前記有機過酸化物系の重合開始剤は、10時間半減期温度が90℃以下の種類を含むラジカル重合開始剤であることを特徴とする。
【0055】
有機過酸化物系の重合開始剤としては、例えば、ビス (2-エチルヘキシルl) ペルオキシジカルボナートなどのパーオキシジカーボネート系、ジベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド系、tert-ブチル=2-エチルペルオキシヘキサノアートなどのパーオキシエステル系、クミルペルオキシネオデカノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチル=ネオデカンペルオキシアートなどのペルオキシネオデカノエート系、t-アミルぺルオキシピバレートなどのぺルオキシピバレート系、t-ブチル(2-エチルブチリル)ペルオキシド、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)等が挙げられるが、これに限定しない。上述に例示した有機過酸化物系の重合開始剤は、10時間半減期温度が90℃以下の重合開始剤(C)としても例示することができる。すなわち、これら重合開始剤を、10時間半減期温度が90℃以下の種類を含むラジカル重合開始剤として用いることができる。
【0056】
また、好ましい態様において、10時間半減期温度が90℃以下、低温での硬化性に優れる中間基材を得るという観点から、より好ましくは、10時間半減期温度が40℃以上80℃以下の重合開始剤(C)を用いることができる。このような重合開始剤(C)の例としては、特に限定されないが、例えば、t-ヘキシル=2-エチルヘキサンペルオキソアート、t-ヘキシルペルオキシピバレート、t-ブチルパーオキシオクトエート等を挙げることができる。
【0057】
その他の有機過酸化物系の重合開始剤(C)としては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド系、ベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド系、t-ブチルパーオキシベンゾエートなどのパーオキシエステル系、クメンハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド系、ジクミルパーオキサイドなどジアルキルパーオキサイド系、ビス(4-ターシャリーブチロイルヘキシル)パーオキシジカーボネートなどのパーオキシジカーボネート系などが挙げられるがこれに限定しない。
【0058】
10時間半減期温度が90℃以下の重合開始剤などの有機過酸化物系の重合開始剤は、単独又は2種以上混合して使用することができる。また、10時間半減期温度が90℃以下の重合開始剤などの有機過酸化物系の重合開始剤が含まれていれば足り、10時間半減期温度に関わらず2種以上を混合して使用することができる。
【0059】
重合開始剤(C)の添加量は、液状組成物100質量部に対して、0.05~5質量部である。
【0060】
また、本発明の繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物の好ましい実施態様において、さらに、ウレタン化触媒(D)が、前記組成物(A)又は(B)に配合されていることを特徴とする。
【0061】
また、本発明の繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物の好ましい実施態様において、前記組成物(A)と前記組成物(B)の少なくともどちらか一方に、イソシアネート反応性基を含まない重合性単量体(E)を含むことを特徴とする。
【0062】
次に、ウレタン化触媒(D)及びイソシアネートを含まない重合性単量体(E)について記載する。これらの成分はそれぞれ必要に応じて配合することができ、組成物(A)又は(B)のどちらにも配合できる。
【0063】
ウレタン化触媒(D)には酸性触媒、塩基性触媒が使用できるが、活性の高いジブチル錫ジラウレートやジブチル錫ジアセテートなどのスズ化合物が好ましい。触媒の添加量は、選択する他の原料によって異なるが、熟成時の発熱及びウレタンアクリレート形成の速度、中間基材の貯蔵安定性、硬化物の機械物性の観点から、液状組成物質量に対して、0~800ppmとすることができる。
【0064】
イソシアネート反応性基を含まない重合性単量体(E)としては、イソシアネート基と常温で反応しないものが好ましく、イソシアネート基と常温で反応しない重合性単量体(E)としては、ビニルモノマーや単官能(メタ)アクリル酸エステル、多官能(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。イソシアネート基と反応する重合性単量体を(A)に配合すると保管時に反応して粘度が上昇し作業性が悪くなる虞や十分な機械物性を得ることができない虞がある。
【0065】
重合性単量体(E)としては、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、酢酸ビニルなどが挙げられ、又、単官能(メタ)アクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル、ベンジル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレートなど、多官能(メタ)アクリル酸エステルとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレンジ(メタ)アクリレート、ノルボルネンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレートなどが挙げられる。これらの重合性単量体(E)は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。中間基材としてのタック性や臭気、その硬化物の機械物性の点からジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレンジ(メタ)アクリレート、ベンジルメタクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートの適用が好ましい。
【0066】
また、本発明の繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物の好ましい実施態様において、前記組成物(A)と(B)の合計質量に対して重合性単量体(E)の含有量が40質量%以下であることを特徴とする。すなわち、重合性単量体(E)の配合量は、中間基材として目標とする粘度特性やタック性に対し、熟成で得られるウレタンアクリレートに合わせて、液状組成物中に0~40質量%の範囲で調整される。中間基材の硬化収縮を小さくする観点からすると、0~20質量%がより好ましい。
【0067】
また、本発明の繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物の好ましい実施態様において、優れたFRP機械物性を与えるという観点から、さらに、前記組成物(A)中のイソシアネート基モル数に対する前記組成物(B)中のイソシアネート反応性基モル比(B/A)が0.75~1.2、好ましくは、0.9~1.1であることを特徴とする。
【0068】
また、本発明の繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物の好ましい実施態様において、B型粘度計で測定された10~50℃における前記組成物(A)と(B)の混合物である液状組成物の粘度が200~2000mPa・sであることを特徴とする。すなわち、本発明の液状組成物の粘度は、前記組成物(A)と(B)を混合した時点で、10~50℃で目的とする中間基材の単位面積質量にもよるが、特に200~2000mPa・sが好ましい。粘度が2000mPa・sを越えると基材への含浸が悪くなり、得られた中間基材中に液状組成物の未含浸部位が出来てしまい好ましくない。
【0069】
本発明の液状組成物は熟成により、ウレタン(メタ)アクリレートへと変化するが、重合性単量体(E)を除く、ウレタンアクリレートのエチレン性不飽和基当量は200~1000g/eqが好ましく、より好ましくは300~800g/eqである。200g/eq未満となると硬化物の機械物性のバランスが悪くなり、1000g/eqを越えると耐熱性の低下が起こり、好ましくない。
【0070】
本発明の液状組成物には、粘弾性の調整や機械物性の向上を目的に無機粒子やゴム粒子を配合してもよい。無機粒子としては、特に限定されないが炭酸カルシウム、アルミナ、タルク、酸化チタン、シリカ等が挙げられる。ゴム成分としては、特に限定されないが架橋ゴム粒子、ゴム成分が架橋ポリマーに包まれたコアシェルゴム粒子が挙げられる。これらの配合量は液状樹脂組成物の粘度にもよるが2~80質量%、好ましくは2~75質量%である。
【0071】
更に本発明の液状組成物には、FRPのさらなる機械強度、衝撃性向上のためにカーボンナノチューブを配合することができる。カーボンナノチューブは液状組成物の粘度、塗工性の観点から単層のカーボンナノチューブが好適で、その配合量はFRP中の単層カーボンナノチューブが0.05~0.5質量%となるようにするのが好ましい。
【0072】
更に本発明の液状組成物には必要に応じて低収縮剤、内部離型剤、成分分散剤などを配合することができる。これらの配合物は、溶解性の観点から液状のものが好ましいが、熱を加えて組成物に溶解すれば固形でも良い。
【0073】
また、本発明の繊維強化プラスチック中間基材は、本発明の繊維強化プラスチック中間基材用液状組成物を繊維材料に含浸してなることを特徴とする。
【0074】
本発明の中間基材に用いられる繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ザイロン繊維、ボロン繊維、バサルト繊維、セルロース等が挙げられるが、これらには限定されない。又、強化繊維含有率は10~90質量%、機械特性と成形性の面から、好ましくは30~80質量%が望ましい。強化繊維の表面処理剤については限定がない。また、織物としては上記で挙げた繊維を用いた一方向、クロス、NCF、不織布等が挙げられるが、これらには限定されない。又、繊維基材と繊維基材の間にコア材を挟み込むことも可能である。コア材の例としては、発泡不織布、ハニカムコアマットなどが挙げられる。
【0075】
また、本発明の繊維強化プラスチック中間基材の製造方法は、本発明の液状組成物を任意の組成で繊維材料に含浸させる工程と、前記含浸させて得られた繊維強化プラスチック中間基材を熟成させる工程と、を含むことを特徴とする。本発明において、特に限定されないが、例えば、10~60℃までの温度で前記液状組成物を任意の組成で繊維材料に含浸させることができる。樹脂が含浸した繊維材料はそのままロールに巻き取っても良いし、フィルムで挟み、ロール状、又は綴ら状にすることができる。その後同材料を熟成させ中間基材を得る。従来においては、合成したウレタンアクリレート樹脂を加熱したり、溶剤に希釈したりして、繊維や織物に含浸させ中間基材を作製していたが、驚くべきことに、本発明においては、繊維又は織物に含浸した液状組成物が熟成を経て、合成して得られるウレタンアクリレートと同様の樹脂を形成することを見出した。これにより、本発明においては、液状組成物と繊維とをより強固に結合させることが可能となり、後述する実施例により明らかなように、より良好な含浸性、硬化性、及び硬化物の機械物性等を発揮し得るという有利な効果を奏するものである。
【0076】
好ましい実施態様において、ウレタンアクリレート化の促進とラジカル重合反応抑制の観点から、前記熟成の温度は、25~80℃とすることができ、より好ましくは30~45℃である。このように、液状組成物をフィルム上に塗工し、その塗工面に繊維又は織物をのせ更にフィルムで挟み、ローラーで圧力をかけ液状組成物を繊維又は織物に含浸させることができる。なお、塗工場所から塗布物が繊維又は織物に接触するまでは、塗布物が一定の幅を保つために防波堤状の冶具があるのが好ましい。もしくは、繊維又は織物に液状組成物を滴下又は噴霧し更にフィルムで挟み、ローラーで圧力をかけ液状組成物を繊維又は織物に含浸させることができる。これらの方法で含浸させたものをロール状、又は綴ら状にし、炉(25~80℃)にて熟成させて中間基材を得ることができる。
【0077】
また、本発明の繊維強化複合材料は、本発明の繊維強化プラスチック中間基材を硬化させてなることを特徴とする。
【0078】
ウレタンアクリレートが繊維上に形成された本発明の中間基材の硬化物は、熱と圧力を加えて加熱硬化させることにより得られることができる。すなわち、ラジカル重合による硬化を行うことが可能である。本発明の繊維強化複合材料の好ましい実施態様において、前記硬化の温度は、低温成形が可能な中間基材であるという観点から、70~150℃であることを特徴とする。熱と圧力を加える成形方法としては、オートクレーブ成形、オーブン成形、シートワインディング成形、プレス成形等がある。液状組成物中の重合開始剤の種類にもよるが成形温度は、70~150℃、好ましくは80~130℃、より好ましくは80~100℃で、成形時間は3~60分であることが好ましく、圧力は0.05~10MPaが好ましい。
【実施例0079】
以下、実施例により本発明の一実施態様についてさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。特に断りのない限り「部」は「質量部」を「%」は「質量%」を意味する。
【0080】
〔液状組成物の調製〕
今回の例において使用した液状組成物の各成分の略号を表1に示した。実施例に用いたE1~5および比較例に用いたC-1~3において、表1に示した化合物を使用した。
【0081】
【0082】
<実施例に用いる末端イソシアネート基ポリウレタン化合物を含む組成物(A)の合成および調製>
温度計、撹拌機、気体導入管、及び還流冷却器を備えた5つ口フラスコに、表2および表5に示す(a1)、(b2)、(D)、(E)をそれぞれの実施例に応じた記載量仕込み、空気流下(0.2L/min)、温度95~105℃に保持し4時間反応させ、イソシアネート基を少なくとも2個以上有する化合物(a1)と末端イソシアネート基ポリウレタン化合物(a2)とを含む含有液状組成物(A)をそれぞれ得た。
【0083】
<実施例に用いる液状組成液(B)の調製>
容器に表2および表5に示す(b1)および(b2)をそれぞれの実施例に応じた記載量仕込み、常温常圧下、均一溶液になるまで撹拌し、各液状組成物(B)を得た。
【0084】
【表2】
なお、表2中、「←」の表示は、左側の値と同じことを意味する。(以下の表においても同様。)
【0085】
比較例に用いる樹脂の合成および調整
ウレタンアクリレートの合成
温度計、撹拌機、気体導入管、及び還流冷却器を備えた5つ口フラスコに、IPDI( エボニック社製)516.8部、1、3―PDО(デュポン社製)を94.9部、2-HEMA(三菱ガス化学社製)248.6 部、DEGDMA(新中村化学社製、NKエステル2G) 139.9部、THQ0.1部、及びBHT0.4部、DBTDL0.2部を仕込み、乾燥空気流下(0.2L/min)、温度108~112 ℃ で反応させた。反応は、IRにて追跡し、イソシアネート基の吸収(2270cm-1付近)が一定になったところを終点とした。反応には3時間を要した。(液状組成物中のイソシアネート基モル数に対するイソシアネート反応基モル数の割合は1.0、ウレタン(メタ)アクリレートの理論エチレン性不飽和基当量は450g/eq、粘度は80℃ で約6P a・s)。
【0086】
ウレタンアクリレートの調整(C―2)
上記ウレタンメタクリレートを983.3部,PR-CBZ 04(日本ユピカ社製専用促進剤)2.0部、P―E9.9部を80℃で調製し、均一溶液になるまで撹拌し、樹脂組成物(C-2) を得た。P―EをP-HОに変更したものは、調整の途中で硬化が始まり組成液が得られなかったため断念した。
【0087】
エポキシ組成物の調製(C―3)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂ブレンド品(ジャパンエポキシレジン製エピコート#1001/828=50/50)917.4部にジシアンジアミド45.9部、尿素誘導体36.7部を配合し、均一溶液になるまで撹拌し、樹脂組成物(C-3)を得た。
【0088】
<液状組成物調製>
実施例に用いる液状組成物E―1~5に関して、上記で調製した液状組成物(A)および(B)および(C)を常温常圧下、均一溶液になるまで撹拌し、各液状組成物を得た。また、比較例に用いる液状組成物 C-1を表2に示す配合で常温常圧下、均一溶液になるまで撹拌し、各液状組成物を得た。さらに上記に示す方法で調整した比較例に用いる樹脂C―2~3を用いた。
【0089】
<中間材料の作製、成形および評価>
C-SMC作製
ポリエチレン製フィルム(DIC製DIFAREN)の上に30cm×30cmの型枠を置き、1インチに切断した炭素繊維(三菱ケミカル社製 炭素繊維トウPYROFIL TR50S12L:フィラメント数12000本)143.1gをランダムに分散した。前記調製した液状組成物E―1~6およびC―1をそれぞれ126.9g均一に回しかけ、ポリエチレン製保護フィルムで挟み、駆動式脱泡ロール(東海精機(株)社製)にて脱泡した。その後、40℃のオーブンで7日間熟成させC-SMC(E―1~6 S、C-1 S)を得た。
【0090】
C-2および3に関しては、粘度が高く常温での含浸が不可能であったため、ホットメルト法でC-SMCを作製し、C-SMC(C―2 SおよびC-3 S)を得た。
【0091】
繊維への含浸性評価
それぞれのC―SMCに対し、目視にて含浸の具合を確認した。結果を表3に示した。
〇:良好 ×:未含浸部あり
【0092】
中間基材のはみだし評価
熟成後のC―SMC端部よりオリゴマーがはみだした距離(cm)を評価した。結果を表3に示した。
【0093】
中間基材の目付の評価
C-SMCの寸法と質量を測り、C-SMCの質量を面積で除した値をg/m2の単位で示した。結果を表3に示した。
【0094】
【0095】
C-SMC成形評価
前記作製したC-SMCを成形し、含浸状態及び力学物性を評価した。結果を表4に示した。含浸状態評価は、得られた成形体をダイヤモンドカッターにて切削し、小口面(10cm×2mm)を拡大鏡(150倍)で観察し、ボイド数を数えた。曲げ特性はASTM D 790、層間せん断特性はJIS K 7078に準拠した。
【0096】
【0097】
オーブン成形評価
実施例に用いる液状組成物E―6,7に関して、上記で調製した液状組成物(A)および(B)を常温常圧下、均一溶液になるまで撹拌し、各液状組成物を得た。また、比較例に用いる液状組成物 C-4を表5に示す配合で常温常圧下、均一溶液になるまで撹拌し、各液状組成物を得たポリエチレン製フィルム(DIC製DIFAREN)の上に30cm×30cmの型枠を置き、1インチに切断した炭素繊維(三菱ケミカル社製 炭素繊維トウPYROFIL TR50S12L:フィラメント数12000本)143.1gをランダムに分散した。前記調製した液状組成物E―6,7およびC―4をそれぞれ126.9g均一に回しかけ、ポリエチレン製保護フィルムで挟み、駆動式脱泡ロール(東海精機(株)社製)にて脱泡した。その後、40℃のオーブンで7日間熟成させC-SMC(E―6,7 S、C-4 S)を得た。得られたC―SMC(E―6,7 S、C-4 S)を減圧(0.1MPa)下、各条件でオーブンにて硬化させ、各成形体を得た。
【0098】
力学物性評価
得られた成形体に関し、含浸状態及び力学特性として曲げ特性と層間せん断特性を測定した。含浸状態評価は、得られた成形体をダイヤモンドカッターにて切削し、小口面(10cm×2mm)を拡大鏡(150倍)で観察し、ボイド数を数えた。曲げ特性はASTM D 790、層間せん断特性はJIS K 7078に準拠した。結果を表6に示した。
【0099】
【0100】
【0101】
<評価結果>
表3から表6より、該液状組成物が比較例組成物と比較して、表3に示すように含浸性を損なうことなく染み出しの少ないC-SMCを得ることができた。これにより熟成後のC-SMCの目付も設定目付に近似しており中間基材としての精度が向上した。また、低温低圧で成形可能でかつ複合材料としたときの力学特性に優れる中間材料を提供することが示された。
本発明のラジカル重合性樹脂組成物及び中間材料は、軽量で高強度であるため、輸送機器や産業資材、土木補強材、スポーツ用具など、応用範囲はこれらに限られるものではなく、多岐に渡り使用できる。