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特開2023-179153樹脂切断装置、造粒機および樹脂切断装置の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179153
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】樹脂切断装置、造粒機および樹脂切断装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   B29B 9/06 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
B29B9/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092273
(22)【出願日】2022-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福井 亮太
(72)【発明者】
【氏名】石川 誠
(72)【発明者】
【氏名】田中 衛
(72)【発明者】
【氏名】原脇 六四
【テーマコード(参考)】
4F201
【Fターム(参考)】
4F201AJ08
4F201AP02
4F201AP06
4F201AP20
4F201AR02
4F201AR07
4F201AR20
4F201BA02
4F201BC01
4F201BC02
4F201BD05
4F201BL09
4F201BL25
4F201BL37
(57)【要約】
【課題】樹脂切断装置におけるカッタ刃押付力の構成要素である回転軸後退力の調整あるいはグラインディング処理を自動化する。
【解決手段】樹脂をペレットに切断する複数のカッタ刃を押出機の樹脂吐出側に設けられたダイスに押し付けるカッタ刃押付力を制御する技術的思想において、複数のカッタ刃の摩耗量を検出した後、この検出された複数のカッタ刃の摩耗量に基づいて、回転軸に加わる回転軸後退力の大きさを自動制御する。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出機から吐出される樹脂を複数のカッタ刃で切断することによりペレットを製造する樹脂切断装置の制御方法であって、
前記複数のカッタ刃を前記押出機の樹脂吐出側に設けられたダイスに押し付けるカッタ刃押付力を制御する工程を備え、
前記カッタ刃押付力を制御する工程は、
前記樹脂を前記ペレットに切断する前記樹脂切断装置の動作中において前記複数のカッタ刃の摩耗量を検出する摩耗量検出工程と、
前記摩耗量検出工程で検出された前記複数のカッタ刃の前記摩耗量に基づいて、前記複数のカッタ刃が配置されたカッタヘッドに取り付けられた回転軸に加わる回転軸後退力の大きさを制御する回転軸後退力制御工程と、
を有する、樹脂切断装置の制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂切断装置の制御方法において、
前記摩耗量検出工程は、摩耗量検出用位置センサからの出力に基づいて、前記複数のカッタ刃の前記摩耗量を検出する、樹脂切断装置の制御方法。
【請求項3】
請求項2に記載の樹脂切断装置の制御方法において、
前記樹脂切断装置には、前記回転軸の前後進を制御するために使用される前後進制御用位置センサが設けられている、樹脂切断装置の制御方法。
【請求項4】
請求項3に記載の樹脂切断装置の制御方法において、
前記摩耗量検出用位置センサは、前記前後進制御用位置センサよりも、位置検出精度が高い、樹脂切断装置の制御方法。
【請求項5】
請求項4に記載の樹脂切断装置の制御方法において、
前記カッタ刃押付力を制御する工程は、
(a)前記前後進制御用位置センサからの出力および前記摩耗量検出用位置センサからの出力に基づいて、前記複数のカッタ刃を前記ダイスに接触させる工程、
(b)前記(a)工程後、前記摩耗量検出用位置センサからの出力に基づいて、前記カッタヘッドの第1位置を取得する工程、
(c)前記(b)工程後、前記樹脂を前記ペレットに切断する前記樹脂切断装置の動作を所定時間実施する工程、
(d)前記(c)工程後、前記摩耗量検出用位置センサからの出力に基づいて、前記カッタヘッドの第2位置を取得する工程、
(e)前記(d)工程後、前記第1位置と前記第2位置の差分を算出する工程、
(f)前記(e)工程後、前記差分と予め定められた設定値とを比較する工程、
(g)前記(f)工程後、前記差分と前記設定値との比較結果に基づいて、前記回転軸に加わる前記回転軸後退力の大きさを制御する工程、
を有する、樹脂切断装置の制御方法。
【請求項6】
請求項5に記載の樹脂切断装置の制御方法において、
前記(g)工程では、前記差分が前記設定値よりも大きい場合、前記回転軸に加わる前記回転軸後退力の大きさを増加させるように制御する、樹脂切断装置の制御方法。
【請求項7】
請求項5に記載の樹脂切断装置の制御方法において、
前記(g)工程では、前記差分が前記設定値よりも小さい場合、前記回転軸に加わる前記回転軸後退力の大きさを減少させるように制御する、樹脂切断装置の制御方法。
【請求項8】
押出機から吐出される樹脂を複数のカッタ刃で切断することによりペレットを製造する樹脂切断装置の制御方法であって、
前記樹脂を前記ペレットに切断する動作の実施前において、前記複数のカッタ刃のそれぞれに対してグラインディング処理を実施する工程を備え、
前記グラインディング処理を実施する工程は、
(a)前記複数のカッタ刃が配置されたカッタヘッドに取り付けられた回転軸の前後進を制御するために使用される前後進制御用位置センサからの出力と、摩耗量検出用位置センサからの出力とに基づいて、前記複数のカッタ刃を前記押出機の樹脂吐出側に設けられたダイスに接触させる工程、
(b)前記(a)工程後、前記摩耗量検出用位置センサからの出力に基づいて、前記カッタヘッドの第1位置を取得する工程、
(c)前記(b)工程後、前記グラインディング処理を所定時間実施する工程、
(d)前記(c)工程後、前記摩耗量検出用位置センサからの出力に基づいて、前記カッタヘッドの第2位置を取得する工程、
(e)前記(d)工程後、前記第1位置と前記第2位置の差分を算出する工程、
(f)前記(e)工程後、前記差分と予め定められた設定値とを比較して、前記グラインディング処理を終了するか否かを判断する工程、
を有する、樹脂切断装置の制御方法。
【請求項9】
請求項8に記載の樹脂切断装置の制御方法において、
前記摩耗量検出用位置センサは、前記前後進制御用位置センサよりも、位置検出精度が高い、樹脂切断装置の制御方法。
【請求項10】
請求項8に記載の樹脂切断装置の制御方法において、
前記(f)工程では、前記グラインディング処理を継続すると判断される場合であっても、予め定められた設定時間を経過する場合には、強制的に前記グラインディング処理を終了する、樹脂切断装置の制御方法。
【請求項11】
押出機の樹脂吐出側に設けられたダイスと、
前記ダイスに設けられた複数のノズルと、
前記複数のノズルから吐出される前記樹脂をペレットに切断する複数のカッタ刃と、
前記複数のカッタ刃が配置されたカッタヘッドと、
前記カッタヘッドに取り付けられた回転軸と、
前記回転軸を回転させるモータと、
前記カッタヘッドと接する流路空間を構成する流路室と、
前記流路室に流体を流入させる流入口と、
前記流路室から前記流体および前記ペレットを流出させる流出口と、
前記複数のカッタ刃を前記ダイスに押し付けるカッタ刃押付力を制御する制御部と、
前記回転軸に回転軸前進力を発生させる回転軸前進力発生部と、
前記回転軸に回転軸後退力を発生させる回転軸後退力発生部と、
前記回転軸の前後進を制御するための前後進制御用位置センサと、
前記複数のカッタ刃の摩耗量を検出するための摩耗量検出用位置センサと、
を備える、樹脂切断装置であって、
前記制御部は、前記摩耗量検出用位置センサからの出力に基づいて、前記回転軸に加わる前記回転軸後退力の大きさを制御する、樹脂切断装置。
【請求項12】
請求項11に記載の樹脂切断装置において、
前記摩耗量検出用位置センサは、前記前後進制御用位置センサよりも、位置検出精度が高い、樹脂切断装置。
【請求項13】
請求項11に記載の樹脂切断装置において、
前記制御部は、
前記摩耗量検出用位置センサからの出力に基づいて、前記カッタヘッドの第1位置を取得する第1位置取得部と、
前記摩耗量検出用位置センサからの出力に基づいて、前記樹脂切断装置の動作を所定時間実施した後における前記カッタヘッドの第2位置を取得する第2位置取得部と、
前記第1位置と前記第2位置の差分を算出するように構成された差分算出部と、
前記差分と予め定められた設定値とを比較するように構成された比較部と、
前記差分と前記設定値との比較結果に基づいて、前記回転軸後退力の大きさを設定する回転軸後退力設定部と、
を有し、
前記制御部は、前記回転軸後退力設定部で設定された前記回転軸後退力の大きさに基づいて、前記回転軸に加える前記回転軸後退力を制御する、樹脂切断装置。
【請求項14】
押出機の樹脂吐出側に設けられたダイスと、
前記ダイスに設けられた複数のノズルと、
前記複数のノズルから吐出される前記樹脂をペレットに切断する複数のカッタ刃と、
前記複数のカッタ刃が配置されたカッタヘッドと、
前記カッタヘッドに取り付けられた回転軸と、
前記回転軸を回転させるモータと、
前記カッタヘッドと接する流路空間を構成する流路室と、
前記流路室に流体を流入させる流入口と、
前記流路室から前記流体および前記ペレットを流出させる流出口と、
前記複数のカッタ刃を前記ダイスに押し付けるカッタ刃押付力を制御する制御部と、
前記回転軸に回転軸前進力を発生させる回転軸前進力発生部と、
前記回転軸に回転軸後退力を発生させる回転軸後退力発生部と、
前記回転軸の前後進を制御するための前後進制御用位置センサと、
前記複数のカッタ刃の摩耗量を検出するための摩耗量検出用位置センサと、
を備える、樹脂切断装置であって、
前記制御部は、前記樹脂を前記ペレットに切断する動作の実施前において、前記複数のカッタ刃のそれぞれに対して施されるグラインディング処理を制御するグラインディング制御部を含み、
前記グラインディング制御部は、
前記摩耗量検出用位置センサからの出力に基づいて、前記カッタヘッドの第1位置を取得する第1位置取得部と、
前記摩耗量検出用位置センサからの出力に基づいて、前記グラインディング処理を所定時間実施した後における前記カッタヘッドの第2位置を取得する第2位置取得部と、
前記第1位置と前記第2位置の差分を算出する差分算出部と、
前記差分と予め定められた設定値とを比較する比較部と、
前記差分と前記設定値との比較結果に基づいて、前記グラインディング処理を終了するか否かを判断する判断部と、
を有する、樹脂切断装置。
【請求項15】
請求項14に記載の樹脂切断装置において、
前記摩耗量検出用位置センサは、前記前後進制御用位置センサよりも、位置検出精度が高い、樹脂切断装置。
【請求項16】
押出機と、
前記押出機から押し出された樹脂を切断してペレットにする樹脂切断装置と、
を備える、造粒機であって、
前記樹脂切断装置は、
前記押出機の樹脂吐出側に設けられたダイスと、
前記ダイスに設けられた複数のノズルと、
前記複数のノズルから吐出される前記樹脂をペレットに切断する複数のカッタ刃と、
前記複数のカッタ刃が配置されたカッタヘッドと、
前記カッタヘッドに取り付けられた回転軸と、
前記回転軸を回転させるモータと、
前記カッタヘッドと接する流路空間を構成する流路室と、
前記流路室に流体を流入させる流入口と、
前記流路室から前記流体および前記ペレットを流出させる流出口と、
前記複数のカッタ刃を前記ダイスに押し付けるカッタ刃押付力を制御する制御部と、
前記回転軸に回転軸前進力を発生させる回転軸前進力発生部と、
前記回転軸に回転軸後退力を発生させる回転軸後退力発生部と、
前記回転軸の前後進を制御するための前後進制御用位置センサと、
前記複数のカッタ刃の摩耗量を検出するための摩耗量検出用位置センサと、
を備え、
前記制御部は、前記摩耗量検出用位置センサからの出力に基づいて、前記回転軸に加わる前記回転軸後退力の大きさを制御する、造粒機。
【請求項17】
請求項16に記載の造粒機において、
前記摩耗量検出用位置センサは、前記前後進制御用位置センサよりも、位置検出精度が高い、造粒機。
【請求項18】
請求項11に記載の造粒機において、
前記制御部は、
前記摩耗量検出用位置センサからの出力に基づいて、前記カッタヘッドの第1位置を取得する第1位置取得部と、
前記摩耗量検出用位置センサからの出力に基づいて、前記樹脂切断装置の動作を所定時間実施した後における前記カッタヘッドの第2位置を取得する第2位置取得部と、
前記第1位置と前記第2位置の差分を算出するように構成された差分算出部と、
前記差分と予め定められた設定値とを比較するように構成された比較部と、
前記差分と前記設定値との比較結果に基づいて、前記回転軸後退力の大きさを設定する回転軸後退力設定部と、
を有し、
前記制御部は、前記回転軸後退力設定部で設定された前記回転軸後退力の大きさに基づいて、前記回転軸に加える前記回転軸後退力を制御する、造粒機。
【請求項19】
押出機と、
前記押出機から押し出された樹脂を切断してペレットにする樹脂切断装置と、
を備える、造粒機であって、
前記樹脂切断装置は、
前記押出機の樹脂吐出側に設けられたダイスと、
前記ダイスに設けられた複数のノズルと、
前記複数のノズルから吐出される前記樹脂をペレットに切断する複数のカッタ刃と、
前記複数のカッタ刃が配置されたカッタヘッドと、
前記カッタヘッドに取り付けられた回転軸と、
前記回転軸を回転させるモータと、
前記カッタヘッドと接する流路空間を構成する流路室と、
前記流路室に流体を流入させる流入口と、
前記流路室から前記流体および前記ペレットを流出させる流出口と、
前記複数のカッタ刃を前記ダイスに押し付けるカッタ刃押付力を制御する制御部と、
前記回転軸に回転軸前進力を発生させる回転軸前進力発生部と、
前記回転軸に回転軸後退力を発生させる回転軸後退力発生部と、
前記回転軸の前後進を制御するための前後進制御用位置センサと、
前記複数のカッタ刃の摩耗量を検出するための摩耗量検出用位置センサと、
を備え、
前記制御部は、前記樹脂を前記ペレットに切断する動作の実施前において、前記複数のカッタ刃のそれぞれに対して施されるグラインディング処理を制御するグラインディング制御部を含み、
前記グラインディング制御部は、
前記摩耗量検出用位置センサからの出力に基づいて、前記カッタヘッドの第1位置を取得する第1位置取得部と、
前記摩耗量検出用位置センサからの出力に基づいて、前記グラインディング処理を所定時間実施した後における前記カッタヘッドの第2位置を取得する第2位置取得部と、
前記第1位置と前記第2位置の差分を算出する差分算出部と、
前記差分と予め定められた設定値とを比較する比較部と、
前記差分と前記設定値との比較結果に基づいて、前記グラインディング処理を終了するか否かを判断する判断部と、
を有する、造粒機。
【請求項20】
請求項19に記載の造粒機において、
前記摩耗量検出用位置センサは、前記前後進制御用位置センサよりも、位置検出精度が高い、造粒機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂切断装置、造粒機および樹脂切断装置の制御技術に関し、例えば、複数のカッタ刃をダイスに押し付けるカッタ刃押付力が一定となるように制御しながら、複数のカッタ刃で樹脂を切断する技術に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許第3751014号公報(特許文献1)には、カッタ刃押付力を一定になるように制御する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3751014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
樹脂切断装置は、例えば、ストランド状の溶融樹脂を吐出するダイスの表面に複数のカッタ刃を所定圧力で常に押し付けながら、水中で複数のカッタ刃を回転させることにより、樹脂を切断してペレットを製造する装置である。
【0005】
ここで、複数のカッタ刃をダイスに押し付けるカッタ刃押付力が不適当である場合、複数のカッタ刃が過剰に摩耗する現象や樹脂のカッティング不良(切断不良)が発生するおそれがある。この場合、複数のカッタ刃のそれぞれの短寿命化や製品であるペレットの品質低下が引き起こされるおそれがある。
【0006】
この点に関し、カッタ刃押付力が不適当である場合、カッタ刃押付力の構成力の1つである回転軸後退力を調整することが行われているが、この調整は手動で行われている。このことから、カッタ刃押付力の調整が作業者の経験や技量に左右されてしまう。したがって、カッタ刃押付力の調整を自動化することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施の形態における樹脂切断装置の制御方法は、押出機から吐出される樹脂を複数のカッタ刃で切断することによりペレットを製造する樹脂切断装置の制御方法である。ここで、樹脂切断装置の制御方法は、複数のカッタ刃を押出機の樹脂吐出側に設けられたダイスに押し付けるカッタ刃押付力を制御する工程を備える。そして、カッタ刃押付力を制御する工程は、樹脂をペレットに切断する樹脂切断装置の動作中において複数のカッタ刃の摩耗量を検出する摩耗量検出工程と、摩耗量検出工程で検出された複数のカッタ刃の摩耗量に基づいて、複数のカッタ刃が配置されたカッタヘッドに取り付けられた回転軸に加わる回転軸後退力の大きさを制御する回転軸後退力制御工程と、を有する。
【0008】
一実施の形態における樹脂切断装置の制御方法は、押出機から吐出される樹脂を複数のカッタ刃で切断することによりペレットを製造する樹脂切断装置の制御方法である。ここで、樹脂切断装置の制御方法は、樹脂をペレットに切断する動作の実施前において、複数のカッタ刃のそれぞれに対してグラインディング処理を実施する工程を備える。このとき、グラインディング処理を実施する工程は、(a)複数のカッタ刃が配置されたカッタヘッドに取り付けられた回転軸の前後進を制御するために使用される前後進制御用位置センサからの出力と、摩耗量検出用位置センサからの出力とに基づいて、複数のカッタ刃を押出機の樹脂吐出側に設けられたダイスに接触させる工程と、(b)(a)工程の後、摩耗量検出用位置センサからの出力に基づいて、カッタヘッドの第1位置を取得する工程と、(c)(b)工程の後、グラインディング処理を所定時間実施する工程と、(d)(c)工程後、摩耗量検出用位置センサからの出力に基づいて、カッタヘッドの第2位置を取得する工程と、(e)(d)工程後、第1位置と第2位置の差分を算出する工程と、(f)(e)工程後、差分と予め定められた設定値とを比較して、グラインディング処理を終了するか否かを判断する工程と、を有する
一実施の形態における樹脂切断装置は、押出機の樹脂吐出側に設けられたダイスと、ダイスに設けられた複数のノズルと、複数のノズルから吐出される樹脂をペレットに切断する複数のカッタ刃と、複数のカッタ刃が配置されたカッタヘッドと、カッタヘッドに取り付けられた回転軸と、回転軸を回転させるモータと、カッタヘッドと接する流路空間を構成する流路室と、流路室に流体を流入させる流入口と、流路室から流体およびペレットを流出させる流出口と、複数のカッタ刃をダイスに押し付けるカッタ刃押付力を制御する制御部と、回転軸に回転軸前進力を発生させる回転軸前進力発生部と、回転軸に回転軸後退力を発生させる回転軸後退力発生部と、回転軸の前後進を制御するための前後進制御用位置センサと、複数のカッタ刃の摩耗量を検出するための摩耗量検出用位置センサと、を備える。ここで、制御部は、摩耗量検出用位置センサからの出力に基づいて、回転軸に加わる回転軸後退力の大きさを制御する。
【0009】
一実施の形態における樹脂切断装置は、押出機の樹脂吐出側に設けられたダイスと、ダイスに設けられた複数のノズルと、複数のノズルから吐出される樹脂をペレットに切断する複数のカッタ刃と、複数のカッタ刃が配置されたカッタヘッドと、カッタヘッドに取り付けられた回転軸と、回転軸を回転させるモータと、カッタヘッドと接する流路空間を構成する流路室と、流路室に流体を流入させる流入口と、流路室から流体およびペレットを流出させる流出口と、複数のカッタ刃をダイスに押し付けるカッタ刃押付力を制御する制御部と、回転軸に回転軸前進力を発生させる回転軸前進力発生部と、回転軸に回転軸後退力を発生させる回転軸後退力発生部と、回転軸の前後進を制御するための前後進制御用位置センサと、複数のカッタ刃の摩耗量を検出するための摩耗量検出用位置センサと、を備える。ここで、制御部は、樹脂をペレットに切断する動作の実施前において、複数のカッタ刃のそれぞれに対して施されるグラインディング処理を制御するグラインディング制御部を含む。このグラインディング制御部は、摩耗量検出用位置センサからの出力に基づいて、複数のカッタ刃が配置されたカッタヘッドの第1位置を取得する第1位置取得部と、摩耗量検出用位置センサからの出力に基づいて、グラインディング処理を所定時間実施した後におけるカッタヘッドの第2位置を取得する第2位置取得部と、第1位置と第2位置の差分を算出する差分算出部と、差分と予め定められた設定値とを比較する比較部と、差分と設定値との比較結果に基づいて、グラインディング処理を終了するか否かを判断する判断部と、を有する。
【0010】
一実施の形態における造粒機は、押出機と、押出機から押し出された樹脂を切断してペレットにする樹脂切断装置と、を備える。ここで、樹脂切断装置は、押出機の樹脂吐出側に設けられたダイスと、ダイスに設けられた複数のノズルと、複数のノズルから吐出される樹脂をペレットに切断する複数のカッタ刃と、複数のカッタ刃が配置されたカッタヘッドと、カッタヘッドに取り付けられた回転軸と、回転軸を回転させるモータと、カッタヘッドと接する流路空間を構成する流路室と、流路室に流体を流入させる流入口と、流路室から流体およびペレットを流出させる流出口と、複数のカッタ刃をダイスに押し付けるカッタ刃押付力を制御する制御部と、回転軸に回転軸前進力を発生させる回転軸前進力発生部と、回転軸に回転軸後退力を発生させる回転軸後退力発生部と、回転軸の前後進を制御するための前後進制御用位置センサと、複数のカッタ刃の摩耗量を検出するための摩耗量検出用位置センサと、を備える。そして、制御部は、摩耗量検出用位置センサからの出力に基づいて、回転軸に加わる回転軸後退力の大きさを制御する。
【0011】
一実施の形態における造粒機は、押出機と、押出機から押し出された樹脂を切断してペレットにする樹脂切断装置と、を備える。ここで、樹脂切断装置は、押出機の樹脂吐出側に設けられたダイスと、ダイスに設けられた複数のノズルと、複数のノズルから吐出される樹脂をペレットに切断する複数のカッタ刃と、複数のカッタ刃が配置されたカッタヘッドと、カッタヘッドに取り付けられた回転軸と、回転軸を回転させるモータと、カッタヘッドと接する流路空間を構成する流路室と、流路室に流体を流入させる流入口と、流路室から流体およびペレットを流出させる流出口と、複数のカッタ刃をダイスに押し付けるカッタ刃押付力を制御する制御部と、回転軸に回転軸前進力を発生させる回転軸前進力発生部と、回転軸に回転軸後退力を発生させる回転軸後退力発生部と、回転軸の前後進を制御するための前後進制御用位置センサと、複数のカッタ刃の摩耗量を検出するための摩耗量検出用位置センサと、を備える。そして、制御部は、樹脂をペレットに切断する動作の実施前において、複数のカッタ刃のそれぞれに対して施されるグラインディング処理を制御するグラインディング制御部を含む。グラインディング制御部は、摩耗量検出用位置センサからの出力に基づいて、複数のカッタ刃が配置されたカッタヘッドの第1位置を取得する第1位置取得部と、摩耗量検出用位置センサからの出力に基づいて、グラインディング処理を所定時間実施した後におけるカッタヘッドの第2位置を取得する第2位置取得部と、第1位置と第2位置の差分を算出する差分算出部と、差分と予め定められた設定値とを比較する比較部と、差分と設定値との比較結果に基づいて、グラインディング処理を終了するか否かを判断する判断部と、を有する。
【発明の効果】
【0012】
一実施の形態によれば、樹脂切断装置におけるカッタ刃押付力の構成要素である回転軸後退力の調整あるいはグラインディング処理を自動化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】造粒システムの模式的な構成を示す図である。
図2】樹脂切断装置の模式的な構成を示す図である。
図3】ダイスの模式的な構成例を示す平面図である。
図4】カッタヘッドの模式的な構成例を示す平面図である。
図5】樹脂切断装置の主要部の模式的な構成を示す図である。
図6】制御部の動作例を説明するグラフである。
図7】具現化態様における樹脂切断装置の模式的な構成を示す図である。
図8】摩耗量検出用位置センサの動作範囲と前後進制御用位置センサの動作範囲との切り分けを説明する図である。
図9】回転軸後退力制御部の機能ブロック図である。
図10】第1制御動作例の流れを示すフローチャートである。
図11】第2制御動作例の流れを示すフローチャートである。
図12】制御部の機能ブロック図である。
図13】グラインディング制御部の機能ブロック図である。
図14】グラインディング処理の制御動作の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、図面をわかりやすくするために平面図であってもハッチングを付す場合がある。
【0015】
<造粒システム>
図1は、造粒システムの模式的な構成を示す図である。
【0016】
造粒システム100は、押出機1および樹脂切断装置2を含む造粒機10と、配管4と、ポンプ5と、脱水機6と、タンク7と、遠心脱水乾燥機8と、振動篩9とを有している。
【0017】
押出機1は、回転するスクリュによって樹脂原料20を混練して、混練された樹脂を樹脂切断装置2のダイスに設けられた複数のノズルから押し出すように構成されている。
【0018】
樹脂切断装置2は、ダイスに設けられた複数のノズルから押し出された溶融状態の樹脂を複数のカッタ刃で切断してペレットを製造するように構成されている。
【0019】
配管4は、温水(流体)を流す流路として機能する。また、ポンプ5は、配管4を流れる温水を循環させる機能を有する。そして、タンク7は、温水を貯蔵する貯蔵槽である。
【0020】
脱水機6は、ペレットを温水から分離する機能を有するとともに、遠心脱水乾燥機8は、さらに、ペレットを乾燥させる機能を有する。振動篩9は、ペレットをサイズ別に分別するように構成されている。
【0021】
このように構成されている造粒システム100は、以下に示すように動作する。すなわち、まず、押出機1に樹脂原料20を供給する。すると、押出機1に供給された樹脂原料20は、スクリュによって混練された後、溶融状態の樹脂は、ダイスに設けられた複数のノズルから押し出される。押し出された樹脂は、樹脂切断装置2に設けられている複数のカッタ刃で切断される。この樹脂の切断は、温水が流れている流路室の内部で行われる。これにより、溶融状態の樹脂は、所定のサイズのペレット30に切断された後、温水で冷却されて固化する。このようにして、押出機1と樹脂切断装置2を含む造粒機10によって、固化したペレット30が製造される。
【0022】
このとき、配管4とポンプ5によって、タンク7と流路室の間を温水が循環している。この結果、流路室で生成されたペレット30と温水との混合物であるスラリー3は、配管4を通って脱水機6に運ばれる。脱水機6では、ペレット30と温水とが分離され、温水は、タンク7に還流する。一方、少量の温水とペレット30の混合物であるスラリー3は、遠心脱水乾燥機8に運ばれる。遠心脱水乾燥機8では、ペレット30に付着した少量の温水が分離される。そして、遠心脱水乾燥機8で少量の温水から分離されて乾燥したペレット30は、振動篩9に運ばれるとともに、遠心脱水乾燥機8で分離された少量の温水は、タンク7に還流する。その後、振動篩9では、ペレット30がサイズ別に分別される。
【0023】
以上のようにして、造粒システム100によってペレット30を製造することができる。
【0024】
<樹脂切断装置の基本構成>
続いて、造粒システム100の構成要素となる樹脂切断装置2の構成を説明する。
【0025】
図2は、樹脂切断装置の模式的な構成を示す図である。
【0026】
図2において、樹脂切断装置2は、ダイス50と、カッタヘッド51と、回転軸52と、モータ53と、スリーブ54と、ハウジング55と、流路室60と、流入口60aと、流出口60bを有している。
【0027】
ダイス50は、樹脂を混練して押し出す押出機の樹脂吐出側に設けられており、このダイス50には、複数のノズルが設けられている。これらの複数のノズルのそれぞれからは、押出機から押し出された樹脂が吐出されるようになっている。
【0028】
カッタヘッド51は、ダイス50に押し付けられるように配置され、このカッタヘッド51には、複数のカッタ刃が設けられている。これらの複数のカッタ刃は、ダイス50に設けられている複数のノズルから吐出される樹脂をペレットに切断する機能を有する。
【0029】
また、カッタヘッド51には、回転軸52が取り付けられており、この回転軸52には、モータ53が取り付けられている。この結果、カッタヘッド51は、モータ53によって回転する回転軸52に取り付けられていることになるため、回転可能に構成されている。
【0030】
回転軸52の周囲には、回転軸52の軸方向に摺動可能なスリーブ54が設けられており、このスリーブ54の外側には、ハウジング55が設けられている。ここで、回転軸52は、スリーブ54に対して回転可能である一方、回転軸52の軸方向のスリーブ54に対する相対移動はできないように構成されている。すなわち、回転軸52とスリーブ54は、回転軸52の軸方向には一体的に移動するように構成されている。このスリーブ54は、ハウジング55に対して回転軸52の軸方向に相対移動が可能なように構成される。
【0031】
流路室60は、カッタヘッド51と接する流路空間を構成する。この流路室60には、例えば、温水などの流体を流入させる流入口60aと、流路室60から流体およびペレットを流出させる流出口60bが設けられている。
【0032】
<<ダイスの構成例>>
図3は、ダイスの模式的な構成例を示す平面図である。
【0033】
図3において、ダイス50は、例えば、平面形状が略円形形状をしており、複数のノズル50aを有している。この複数のノズル50aのそれぞれからは、押出機で混練されて溶融した樹脂が吐出するようになっている。
【0034】
<<カッタヘッドの構成例>>
図4は、カッタヘッドの模式的な構成例を示す平面図である。
【0035】
図4において、カッタヘッド51は、例えば、平面形状が略円形形状をしており、このカッタヘッド51には、複数のカッタ刃51aが設けられている。これらの複数のカッタ刃51aのそれぞれは、平面形状が略矩形形状をしている。
【0036】
カッタヘッド51は、ダイス50に押し付けられながら回転するように構成されており、これによって、カッタヘッド51に設けられた複数のカッタ刃51aで、ダイス50に設けられた複数のノズル50aから吐出する樹脂を切断するようになっている。
【0037】
<樹脂切断装置の基本動作>
樹脂切断装置2は、このように構成されており、以下に、その動作について図2を参照しながら説明することにする。
【0038】
まず、押出機で混練された樹脂は、溶融状態で、ダイス50に設けられた複数のノズルから流路室60に吐出される。吐出された溶融状態の樹脂は、モータ53により回転する回転軸52に取り付けられて高速回転するカッタヘッド51に設けられた複数のカッタ刃で切断される。そして、切断された樹脂は、流路室60の流入口60aから流れ込む温水で冷却されて固化することにより、ペレットが生成される。このとき、流路室60に流れ込んだ温水は、流路室60の流出口60bから流出することから、生成されたペレットも流出口60bから排出される。排出された温水とペレットの混合物であるスラリーは、例えば、図1に示すように、配管4を通って脱水機6に運ばれる。その後の動作は、図1に示す造粒システムの動作で説明した通りである。以上のようにして、樹脂切断装置2では、溶融状態の樹脂を切断することにより、固化したペレットを製造できる。
【0039】
<カッタ刃押付力を制御する必要性>
ここで、カッタヘッド51に設けられた複数のカッタ刃をダイス50に押し付けるカッタ刃押付力は、適切な一定値に制御する必要がある。なぜなら、カッタ刃をダイス50に押し付けると、カッタ刃は摩耗することから、カッタ刃をダイスに押し付けるカッタ刃押付力が大きすぎるとカッタ刃の摩耗量が増大する一方、カッタ刃押付力が小さいと、カッタ刃がダイスから離れてしまい、樹脂をペレットに正常に切断できなくなる切断トラブルの発生原因となるからである。したがって、樹脂切断装置2は、カッタ刃押付力を一定に制御するための構成を有している。以下では、この構成について説明する。
【0040】
<カッタ刃押付力を制御する構成>
図2において、樹脂切断装置2は、制御部70と、回転軸前進力発生部80と、回転軸後退力発生部90を有している。
【0041】
回転軸前進力発生部80は、回転軸52に回転軸前進力Ffを発生させるように構成されている。例えば、回転軸前進力発生部80は、第1空隙室に注入する圧力媒体の圧力によって、回転軸前進力を発生するように構成されている。具体的に、第1空隙室の受圧面積と圧力媒体による圧力との積が回転軸前進力Ffとなる。この回転軸前進力Ffとは、回転軸52(スリーブ54)をダイス50に近づける方向の力であり、回転軸前進力発生部80で発生される力である。
【0042】
回転軸後退力発生部90は、回転軸52に回転軸後退力Fbを発生させるように構成されている。例えば、回転軸後退力発生部90は、第2空隙室に注入する圧力媒体の圧力によって、回転軸後退力を発生するように構成されている。具体的に、第2空隙室の受圧面積と圧力媒体による圧力との積が回転軸後退力Fbとなる。回転軸前進力Fbとは、回転軸52(スリーブ54)をダイス50から遠ざける方向の力であり、回転軸後退力発生部90で発生される力である。
【0043】
制御部70は、複数のカッタ刃をダイス50に押し付けるカッタ刃押付力を制御するように構成されており、回転数制御部71と、回転軸前進力制御部72と、回転軸後退力制御部73を有している。
【0044】
回転数制御部71は、回転軸52の回転数を制御するように構成されている。具体的には、回転軸52が取り付けられているモータ53の回転を制御することにより、回転軸52の回転数を制御するように構成されている。
【0045】
回転軸前進力制御部72は、第1空隙室に注入する圧力媒体の圧力を調整することにより、回転軸前進力Ffを制御するように構成されている。
【0046】
回転軸後退力制御部73は、第2空隙室に注入する圧力媒体の圧力を調整することにより、回転軸前進力Fbを制御するように構成されている。
【0047】
このように構成されている制御部70では、例えば、以下の関係式で表されるカッタ刃押付力が一定となるように制御するように構成されている。
【0048】
具体的に、カッタ刃押付力をFとし、回転軸前進力をFfとし、複数のカッタ刃の回転によって発生するカッタ刃推進力であって、回転軸の回転数に応じて大きさが変化するカッタ刃推進力をFsとし、回転軸後退力をFbとし、流路室に充填されている流体の流体圧に起因する後退力をFwとし、回転軸の前進あるいは後退に起因する摺動抵抗力をFrとした場合、カッタ刃押付力Fは、F=Ff+Fs-Fb-Fw±Frで表される。
【0049】
例えば、図5は、樹脂切断装置の主要部の模式的な構成を示す図である。この図5において、回転軸前進力Ff、カッタ刃推進力Fs、回転軸後退力Fbとし、流路室に充填されている流体の流体圧に起因する後退力Fw、摺動抵抗力をFrが図示されている。
【0050】
このとき、「Fw」と「Fr」は、樹脂切断装置2の構造によって決まるほぼ一定の値(定数)であり、予め推定することが可能である。したがって、樹脂切断装置2の制御部70は、カッタ刃押付力Fを一定に保つために、「Ff+Fs-Fb」の値が一定となるように制御する。以下では、この制御部70の動作例について説明する。
【0051】
<制御部70の動作例>
図6は、制御部70の動作例を説明するグラフである。
【0052】
図6において、横軸は回転軸の回転数(Nc)を示している一方、縦軸は力を示している。まず、制御部70がモータ53を動作させると、モータ回転数の増加に合わせて、回転軸52の回転数Ncも増加する。このとき、造粒機10の樹脂生産量に合わせて回転軸52の回転数Ncは調整される。すなわち、造粒機10の樹脂生産量が小さいときは回転軸52の回転数Ncは小さくなり、造粒機10の樹脂生産量が大きいときは回転軸52の回転数Ncは大きくなる。ここで、カッタ刃推進力Fsは、回転軸52の回転数Ncが大きくなるにしたがって増加するという特性がある。
【0053】
このことから、回転数Ncが変化しても「Ff+Fs-Fb」を一定に保つためには、回転軸前進力Ffと回転軸後退力Fbとを制御する必要がある。具体的には、図6に示すように、回転軸52の回転数Ncが大きくなるにしたがって、回転軸前進力制御部72は、カッタ刃推進力Fsの増加を相殺するように回転軸前進力Ffを減少させている。そして、回転軸後退力制御部73は、回転軸52の回転数Ncが変化しても、回転軸後退力Fbが一定値となるように制御する。ここで、回転軸後退力制御部73において、回転軸52の回転数Ncが変化しても、回転軸後退力Fbが一定値となるように制御する理由は、制御の安定性および調整の簡便性を重視しているからである。すなわち、回転軸前進力制御部72によって回転軸前進力Ffを可変制御するとともに、回転軸後退力制御部73によって回転軸後退力Fbを可変制御すると、制御が複雑化する。このため、回転軸前進力制御部72によって、カッタ刃推進力Fsの増加を相殺するように回転軸前進力Ffを減少させることができれば、回転軸後退力制御部73によって回転軸後退力Fbを可変制御する必要がなくなり、制御の安定性および調整の簡便性を実現できる。
【0054】
このようにして、図6に示す制御部70の動作例によれば、回転軸52の回転数Ncが変化しても、カッタ刃押付力Fを一定に保持することができる。
【0055】
<改善の検討>
上述したように、回転軸52の回転数Ncが大きくなるにしたがってカッタ刃推進力Fsが増加することから、このカッタ刃推進力Fsの増加を相殺するために、回転軸前進力制御部72は、回転軸前進力Ffを減少させるように制御している。例えば、図6においてはわかりやすく説明するために、回転軸前進力Ffが回転軸52の回転数Ncの増加に伴って一次関数的に減少する例が示されている。
【0056】
ただし、実際には、回転軸前進力制御部72は、「押圧カーブ」と呼ばれる二次関数で表される曲線に基づいて、回転軸前進力Ffとカッタ刃推進力Fsとの和が一定になるように、回転軸52の回転数Ncに応じて回転軸前進力Ffを制御している。つまり、「押圧カーブ」は、回転軸前進力Ffとカッタ刃推進力Fsの和を回転軸52の回転数Ncが変化しても一定値となるように制御するための関係式である。この「押圧カーブ」による回転軸前進力制御部72の制御によって、カッタ刃は、いずれの回転数Ncにおいても概ね一定の力でダイス50に押し付けられることになる。
【0057】
このようにして、カッタ刃押付力Fが一定となるように制御されているが、樹脂切断装置における樹脂の切断動作を続けていく中で、種々の要因によってカッタ刃押付力Fが一定値からずれる場合がある。この場合、カッタ刃の異常摩耗やカッティング不良によるトラブルが発生する可能性がある。この点に関し、カッタ刃押付力Fが一定値からずれた場合、カッタ刃押付力Fが適切な値となるように回転軸前進力Ffを調整することが考えられる。しかしながら、回転軸前進力Ffとカッタ刃推進力Fsとの関係(「押圧カーブ」)は保持したいため、回転軸前進力Ffは変更せずに、回転軸後退力Fbを変更することによって、カッタ刃押付力Fが適切な値となるように調整している。この回転軸後退力Fbの調整は、手動で行われている。
【0058】
具体的に、作業者は、以下に示す作業を行っている。
(1)カッタ刃の摩耗量を確認する(1日や半日ごと)。
(2)摩耗量が適切であるか、あるいは、異常であるかを判断する。
(3)回転軸後退力Fbの値を嵩上げするのか、あるいは、嵩下げするのか判断する。
(4)どの程度、回転軸後退力Fbの値を変更するか決定する。
(5)(1)に戻り繰り返す。
【0059】
このことから、回転軸後退力Fbの調整を手動で行うと、定期的なカッタ刃の摩耗量の調査や記録が必要となり、手間や時間を要する。また、作業者の熟練度によって調整の精度が左右されることになる。そこで、本実施の形態では、作業者の作業負担の軽減を図るとともに作業者の技能に頼らない回転軸後退力Fbの調整を行うための工夫を施している。以下では、この工夫を施した本実施の形態における技術的思想を説明する。
【0060】
<実施の形態における基本思想>
本実施の形態における基本思想は、樹脂を混練して押し出す押出機から吐出される樹脂を切断することによりペレットを製造する樹脂切断装置の制御技術に関する技術的思想である。そして、基本思想は、樹脂をペレットに切断する複数のカッタ刃を押出機の樹脂吐出側に設けられたダイスに押し付けるカッタ刃押付力を制御する技術的思想において、複数のカッタ刃の摩耗量を検出した後、この検出された複数のカッタ刃の摩耗量に基づいて、回転軸に加わる回転軸後退力Fbの大きさを自動制御するという思想である。
【0061】
具体的に、本実施の形態における樹脂切断装置の制御方法は、樹脂をペレットに切断する樹脂切断装置の動作中において複数のカッタ刃の摩耗量を検出する摩耗量検出工程と、摩耗量検出工程で検出された複数のカッタ刃の摩耗量に基づいて、複数のカッタ刃が配置されたカッタヘッドに取り付けられた回転軸に加わる回転軸後退力Fbの大きさを制御する回転軸後退力制御工程と、を有する。
【0062】
これにより、基本思想によれば、手動で調整していた回転軸後退力Fbの調整に関し、摩耗量検出工程と回転軸後退力制御工程とを設けることによって自動化することができる。この結果、基本思想によれば、作業者の技量によらずに回転軸後退力Fbの大きさを適切な値に調整することができる。このことから、基本思想によれば、自動でカッタ刃押付力Fを一定に制御することができるので、カッタ刃の異常摩耗やカッティング不良によるトラブルの発生を抑制することができる。したがって、基本思想によれば、樹脂を切断してペレットを製造するペレット製造方法において、カッタ刃の短寿命化や製造されるペレットの品質低下を抑制することができる。
【0063】
以下では、基本思想を具現化した具現化態様について説明する。
【0064】
<具現化態様>
上述した基本思想は、摩耗量検出工程と回転軸後退力制御工程とを備えることを特徴とする思想であり、この基本思想を具現化するにあたっては、摩耗量検出工程の具現化と回転軸後退力制御工程の具現化が必要とされる。したがって、以下では、摩耗量検出工程の具現化態様と回転軸後退力制御工程の具現化態様のそれぞれについて説明する。
【0065】
<<摩耗量検出工程の具現化態様>>
カッタ刃押付力Fが適切な値からずれていると、カッタ刃の異常摩耗やカッティング不良が生じる。この点に関し、カッタ刃の異常摩耗やカッティング不良は、カッタ刃の摩耗量に基づいて判断される。したがって、カッタ刃の異常摩耗やカッティング不良が生じていることを判断するためには、カッタ刃の摩耗量を検出する必要がある。そこで、具現化態様では、例えば、カッタ刃の摩耗量を検出するために、摩耗量検出用位置センサを使用する。具体的には、回転軸の前後進と連動するように回転軸に摩耗量検出用位置センサを設ける。これにより、回転軸に取り付けられたカッタヘッドの位置を摩耗量検出用位置センサによって検出することができる。すなわち、樹脂をペレットに切断する樹脂切断装置の動作中においては、回転するカッタヘッドに配置された複数のカッタ刃がダイスに押し付けられている。このため、カッタ刃が摩耗するが、このカッタ刃の摩耗によってカッタヘッドの位置が変化する。そして、カッタヘッドの位置が変化するということは、カッタヘッドに取り付けられた回転軸の位置が変化することを意味する。この点に関し、回転軸に摩耗量検出用位置センサを設けると、この摩耗量検出用位置センサによって回転軸の位置および回転軸に取り付けられたカッタヘッドの位置を検出することができる。このことは、間接的にカッタヘッドの位置を通じてカッタ刃の摩耗量を検出することができることを意味する。以上のようにして、具現化態様では、回転軸に回転軸の前後進と連動する摩耗量検出用位置センサを設けることにより、カッタ刃の摩耗量を検出している。
【0066】
ここで、回転軸には、回転軸の前後進と連動する前後進制御用位置センサが設けられている。すなわち、カッタヘッドに配置された複数のカッタ刃をダイスに接触させたり、離したりするために、カッタヘッドに取り付けられた回転軸を前後進させることが行われる。このとき、回転軸の前後進の制御は、前後進制御用位置センサからの出力に基づいて行われる。このことから、既に設けられている前後進制御用位置センサを摩耗量検出用位置センサとして使用することが考えられる。
【0067】
ところが、本発明者の検討によると、前後進制御用位置センサを摩耗量検出用位置センサとして使用することは困難であることが判明した。以下に、この点について説明する。例えば、前後進制御用位置センサは、前後進として起点から±8mmの範囲を検出するように構成されており、検出位置精度は0.1mm程度である。これに対し、カッタ刃の摩耗量は、0.01mmの精度での正確な検出が必要であり、前後進制御用位置センサの分解能では充分とは言えない。つまり、カッタ刃の摩耗量を検出するためには、0.01mm単位で正確にカッタヘッドの位置(回転軸の位置)をモニタリングする必要があり、前後進制御用位置センサでは、分解能が不足することが懸念される。そして、カッタヘッドの位置(回転軸の位置)のモニタリングが不正確であると、回転軸後退力Fbの自動制御がうまく作動せずに誤動作を引き起こしてトラブルの原因となってしまう。
【0068】
そこで、具現化態様では、前後進制御用位置センサの他に、カッタ刃の摩耗量を検出する摩耗量検出用位置センサを設けている。すなわち、樹脂切断装置には、位置検出センサとして、前後進制御用位置センサと摩耗量検出用位置センサとが設けられている。特に、摩耗量検出用位置センサの位置検出精度は、前後進制御用位置センサの位置検出精度よりも高い。具体的に、前後進制御用位置センサの位置検出精度は0.1mmのオーダであるのに対し、摩耗量検出用位置センサの位置検出精度は0.01mmのオーダである。これにより、具現化態様では、微細量であるカッタ刃の摩耗量を精度良く検出できる。
【0069】
次に、摩耗量検出用位置センサを取り付けた樹脂切断装置の構成例を説明する。
【0070】
図7は、具現化態様における樹脂切断装置2の模式的な構成を示す図である。図7において、回転軸52には、摩耗量検出用位置センサ200Aが設けられている。この摩耗量検出用位置センサ200Aは、検出板201を有しており、この検出板201は、回転軸52の前後進に追従して可動することができるように回転軸52に取り付けられている。そして、摩耗量検出用位置センサ200Aは、回転軸52の前後進に追従する検出板201を使用して回転軸52の位置(カッタヘッドの位置)を検出するように構成されている。
【0071】
なお、樹脂切断装置2には、摩耗量検出用位置センサ200Aと同様の構成をした前後進制御用位置センサも設けられているが、図7では図示されていない。この前後進制御用位置センサも検出板を使用して回転軸の位置を検出するように構成されている。
【0072】
図8は、摩耗量検出用位置センサ200Aの動作範囲と前後進制御用位置センサ200Bの動作範囲との切り分けを説明する図である。図8において、摩耗量検出用位置センサ200Aは、検出板201を使用してカッタヘッド51の位置を検出するように構成されており、このカッタヘッド51がダイス50に接触する近傍領域(図8の矢印1で示す領域)でのカッタヘッド51の位置を検出するように構成されている。
【0073】
一方、前後進制御用位置センサ200Bも検出板201を使用してカッタヘッド51の位置を検出するように構成されており、図8の矢印2で示す領域でのカッタヘッド51の位置を検出するように構成されている。
【0074】
つまり、具現化態様における樹脂切断装置では、カッタヘッド51がダイス50に接触する近傍領域において、摩耗量検出用位置センサ200Aでカッタヘッド51の位置を検出するように構成されているので、カッタ刃の摩耗量を精度よく検出できる。
【0075】
<<回転軸後退力制御工程の具現化態様>>
続いて、回転軸後退力制御工程の具現化態様について説明する。
【0076】
図9は、回転軸後退力制御部73の機能ブロック図である。
【0077】
図9において、回転軸後退力制御部73は、入力部300と、第1位置取得部301と、第2位置取得部302と、差分算出部303と、比較部304と、回転軸後退力設定部305と、データ記憶部306を有している。
【0078】
入力部300は、例えば、摩耗量検出用位置センサ200Aからの出力データを入力するように構成されている。また、入力部300は、予め設定された摩耗量上限値を入力するように構成されている。そして、入力部300に入力された摩耗量検出用位置センサ200Aからの出力データや、予め設定された摩耗量上限値は、データ記憶部306に記憶される。すなわち、データ記憶部306は、各種データを記憶する機能を有する。
【0079】
第1位置取得部301は、データ記憶部306に記憶されている摩耗量検出用位置センサ200Aからの出力データに基づいて、複数のカッタ刃が配置されたカッタヘッドの「第1位置」を取得するように構成されている。ここで、「第1位置」とは、カッタヘッドをダイスの表面に接触させた際のカッタヘッドが配置されている位置を表している。第1位置取得部301で取得された「第1位置」に関するデータは、データ記憶部306に記憶される。
【0080】
第2位置取得部302は、データ記憶部306に記憶されている摩耗量検出用位置センサ200Aからの出力データに基づいて、複数のカッタ刃が配置されたカッタヘッドの「第2位置」を取得するように構成されている。ここで、「第2位置」とは、樹脂切断装置での樹脂切断動作を所定時間実施した後においてカッタヘッドが配置されている位置を表している。第2位置取得部302で取得された「第2位置」に関するデータは、データ記憶部306に記憶される。
【0081】
差分算出部303は、データ記憶部306に記憶されている「第1位置」と「第2位置」とに基づいて、「第1位置」と「第2位置」との差分を算出するように構成されている。この「第1位置」と「第2位置」との差分がカッタ刃の摩耗量に相当する。すなわち、差分算出部303は、「第1位置」と「第2位置」との差分を算出することにより、カッタ刃の摩耗量を算出していることになる。この摩耗量に対応する「第1位置」と「第2位置」との差分に関するデータは、データ記憶部306に記憶される。
【0082】
なお、差分算出部303では、樹脂切断装置での樹脂切断動作を所定時間実施した後の摩耗量を算出することになるが、例えば、差分算出部303は、所定時間の数倍に対応する時間の摩耗量を推定する機能も有していてもよい。
【0083】
具体的に、差分算出部303で算出される「第1位置」と「第2位置」との差分は、樹脂切断動作を所定時間実施した後の摩耗量に相当するが、この差分の定数倍を演算することにより、所定時間の定数倍の時間だけ樹脂切断動作を実施した後の摩耗量を推定することができる。例えば、差分算出部303で算出される「第1位置」と「第2位置」との差分が、樹脂切断動作を2時間実施した後の摩耗量とすると、差分算出部303は、この差分の12倍を演算することにより、樹脂切断動作を2×12=24時間実施した後の摩耗量を算出することができるように構成されていることになる。
【0084】
比較部304は、例えば、データ記憶部306に記憶されている「第1位置」と「第2位置」との差分と、データ記憶部306に記憶されている摩耗量上限値とを比較するように構成されている。言い換えれば、比較部304は、樹脂切断動作を所定時間実施した後の摩耗量と摩耗量上限値とを比較して、樹脂切断動作を所定時間実施した後の摩耗量が摩耗量上限値よりも大きいか、あるいは、小さいかを判断するように構成されている。そして、比較部304での比較結果は、データ記憶部306に記憶される。
【0085】
なお、比較部304は、樹脂切断動作を所定時間実施した後の摩耗量と摩耗量上限値の定数倍とを比較するように構成されていてもよい。この場合、比較部304の比較結果から、樹脂切断動作を所定時間実施した後の摩耗量が極端に大きい異常摩耗(摩耗量上限値の定数倍)が生じていることを把握することができる。
【0086】
回転軸後退力設定部305は、比較部304の比較結果に基づいて、回転軸に加わる回転軸後退力の大きさを設定するように構成されている。例えば、比較部304による比較結果が「樹脂切断動作を所定時間実施した後の摩耗量>摩耗量上限値」の場合、過剰摩耗が生じているおそれが高い。このことから、回転軸後退力設定部305は、回転軸後退力の大きさを増加させる(嵩上げする)ように構成されている。一方、比較部304による比較結果が「樹脂切断動作を所定時間実施した後の摩耗量<摩耗量上限値」の場合、回転軸後退力設定部305は、回転軸後退力の大きさを減少させる(嵩下げする)ように構成されている。また、比較部304による比較結果が「樹脂切断動作を所定時間実施した後の摩耗量=摩耗量上限値」の場合、回転軸後退力設定部305は、回転軸後退力の大きさを現状維持するように構成されている。そして、回転軸後退力設定部305で設定された回転軸後退力の大きさの設定情報は、データ記憶部306に記憶される。
【0087】
続いて、回転軸後退力制御部73は、回転軸後退力設定部305によって設定された回転軸後退力の大きさに基づいて、回転軸に加わる回転軸後退力を制御するように構成されている。すなわち、回転軸後退力制御部73は、データ記憶部306に記憶されている回転軸後退力の大きさの設定情報に基づいて、回転軸に加わる回転軸後退力を制御するように構成されている。以上のようにして、回転軸後退力制御部73が構成されている。
【0088】
<<回転軸後退力の制御動作(制御方法)>>
次に、回転軸後退力の制御動作例について説明する。
【0089】
以下では、2つの回転軸後退力の制御動作例を説明する。
【0090】
(1)第1制御動作例
図10は、第1制御動作例の流れを示すフローチャートである。
【0091】
図10において、まず前提として予め設定された摩耗量上限値がデータ記憶部306に記憶されている。そして、樹脂切断装置2の制御部70は、前後進制御用位置センサ200Bの出力および摩耗量検出用位置センサ200Aの出力に基づいて、回転軸52を前進させることにより、回転軸52に取り付けられたカッタヘッド51をダイス50に接触させる(S101)。例えば、制御部70は、決められた押圧で回転軸52を前進させてカッタヘッド51をダイス50に接触させる。このとき、カッタヘッド51をダイス50に接触させる直前までの回転軸52の位置は、前後進制御用位置センサ200Bによって検出され、その後、カッタヘッド51がダイス50に接触するまでの回転軸52の位置は、前後進制御用位置センサ200Bよりも位置検出精度の高い摩耗量検出用位置センサ200Aに切り換えられて検出される。
【0092】
次に、摩耗量検出用位置センサ200Aからの出力が回転軸後退力制御部73の入力部300に入力された後、入力された摩耗量検出用位置センサ200Aの出力データがデータ記憶部306に記憶される。そして、第1位置取得部301は、データ記憶部306に記憶されている摩耗量検出用位置センサ200Aの出力データに基づいて、カッタヘッド51の「第1位置」を取得する(S102)。取得されたカッタヘッド51の「第1位置」は、データ記憶部306に記憶される。
【0093】
その後、樹脂切断装置2において樹脂切断動作が2時間実施される(S103)。これにより、カッタヘッド51に配置されている複数のカッタ刃の摩耗が進行する。その後、摩耗量検出用位置センサ200Aからの出力が回転軸後退力制御部73の入力部300に入力された後、入力された摩耗量検出用位置センサ200Aの出力データがデータ記憶部306に記憶される。そして、第2位置取得部302は、データ記憶部306に記憶されている摩耗量検出用位置センサ200Aの出力データに基づいて、カッタヘッド51の「第2位置」を取得する(S104)。取得されたカッタヘッド51の「第2位置」は、データ記憶部306に記憶される。
【0094】
続いて、差分算出部303は、データ記憶部306に記憶されている「第1位置」と「第2位置」を入力した後、「第1位置」と「第2位置」の差分を算出する。この差分は、2時間当たりのカッタ刃の摩耗量に相当する。さらに、差分算出部303は、算出した2時間当たりのカッタ刃の摩耗量を12倍する演算を実施して、1日換算の摩耗量を算出する(S105)。この1日換算の摩耗量は、データ記憶部306に記憶される。
【0095】
次に、比較部304は、データ記憶部306に記憶されている1日換算の摩耗量と摩耗量上限値とを入力した後、入力した1日換算の摩耗量と摩耗量上限値×10とを比較する(S106)。そして、回転軸後退力設定部305は、比較部304の比較結果に基づいて、回転軸後退力Fbの大きさを設定する。具体的に、回転軸後退力設定部305は、比較部304による比較結果が「1日換算の摩耗量≧摩耗量上限値×10」である場合、異常摩耗が生じていると判断して、回転軸後退力の大きさを増加する設定を行う(嵩上げ設定を行う)(S107)。一方、回転軸後退力設定部305は、比較部304による比較結果が「1日換算の摩耗量<摩耗量上限値×10」である場合、異常摩耗が生じていないと判断して、回転軸後退力の大きさを現状維持する設定を行う(S108)。なお、これらの設定情報は、データ記憶部306に記憶される。
【0096】
そして、回転軸後退力制御部73は、データ記憶部306に記憶されている設定情報に基づいて、回転軸後退力Fbを制御する(S109)。例えば、設定情報が嵩上げ設定である場合、回転軸後退力制御部73は、回転軸後退力Fbを増加させる制御を行う。これに対し、設定情報が現状維持設定である場合、回転軸後退力制御部73は、回転軸後退力Fbを現状維持する制御を行う。
【0097】
その後、樹脂切断装置2の樹脂切断動作を終了する場合(S110)、制御部70は、樹脂切断装置2の樹脂切断動作を終了する制御を行う。一方、樹脂切断装置2の樹脂切断動作を継続する場合、S102に戻り同様の動作を繰り返す。
【0098】
以上のようにして、第1制御動作例によれば、2時間で摩耗量の判定を行い、異常摩耗(摩耗量上限値の10倍)を早急に自動検出することができる。
【0099】
(2)第2制御動作例
図11は、第2制御動作例の流れを示すフローチャートである。
【0100】
図11において、まず前提として予め設定された摩耗量標準値がデータ記憶部306に記憶されている。そして、樹脂切断装置2の制御部70は、前後進制御用位置センサ200Bの出力および摩耗量検出用位置センサ200Aの出力に基づいて、回転軸52を前進させることにより、回転軸52に取り付けられたカッタヘッド51をダイス50に接触させる(S201)。例えば、制御部70は、決められた押圧で回転軸52を前進させてカッタヘッド51をダイス50に接触させる。このとき、カッタヘッド51をダイス50に接触させる直前までの回転軸52の位置は、前後進制御用位置センサ200Bによって検出され、その後、カッタヘッド51がダイス50に接触するまでの回転軸52の位置は、前後進制御用位置センサ200Bよりも位置検出精度の高い摩耗量検出用位置センサ200Aに切り換えられて検出される。
【0101】
次に、摩耗量検出用位置センサ200Aからの出力が回転軸後退力制御部73の入力部300に入力された後、入力された摩耗量検出用位置センサ200Aの出力データがデータ記憶部306に記憶される。そして、第1位置取得部301は、データ記憶部306に記憶されている摩耗量検出用位置センサ200Aの出力データに基づいて、カッタヘッド51の「第1位置」を取得する(S202)。取得されたカッタヘッド51の「第1位置」は、データ記憶部306に記憶される。
【0102】
その後、樹脂切断装置2において樹脂切断動作が24時間実施される(S203)。これにより、カッタヘッド51に配置されている複数のカッタ刃の摩耗が進行する。その後、摩耗量検出用位置センサ200Aからの出力が回転軸後退力制御部73の入力部300に入力された後、入力された摩耗量検出用位置センサ200Aの出力データがデータ記憶部306に記憶される。そして、第2位置取得部302は、データ記憶部306に記憶されている摩耗量検出用位置センサ200Aの出力データに基づいて、カッタヘッド51の「第2位置」を取得する(S204)。取得されたカッタヘッド51の「第2位置」は、データ記憶部306に記憶される。
【0103】
続いて、差分算出部303は、データ記憶部306に記憶されている「第1位置」と「第2位置」を入力した後、「第1位置」と「第2位置」の差分を算出する。この差分は、1日当たりのカッタ刃の摩耗量に相当する。この1日当たりの摩耗量に相当する「第1位置」と「第2位置」との差分は、データ記憶部306に記憶される。
【0104】
次に、比較部304は、データ記憶部306に記憶されている1日当たりの摩耗量と摩耗量標準値とを入力した後、入力した1日当たりの摩耗量と摩耗量標準値とを比較する(S206)。そして、回転軸後退力設定部305は、比較部304の比較結果に基づいて、回転軸後退力Fbの大きさを設定する。具体的に、回転軸後退力設定部305は、比較部304による比較結果が「1日当たりの摩耗量>摩耗量標準値」である場合、異常摩耗が生じていると判断して、回転軸後退力の大きさを増加する設定を行う(嵩上げ設定を行う)(S207)。一方、比較部304による比較結果が「1日当たりの摩耗量>摩耗量標準値」でなく、「1日当たりの摩耗量=摩耗量標準値」である場合(S208)、異常摩耗が生じていないと判断して、回転軸後退力の大きさを現状維持する設定を行う(S209)。また、回転軸後退力設定部305は、比較部304による比較結果が「1日当たりの摩耗量>摩耗量標準値」でなく、「1日当たりの摩耗量=摩耗量標準値」でもない場合、すなわち、「1日当たりの摩耗量<摩耗量標準値」である場合(S208)、カッティング不良のおそれがあると判断して、回転軸後退力の大きさを減少する設定を行う(S210)。なお、これらの設定情報は、データ記憶部306に記憶される。
【0105】
そして、回転軸後退力制御部73は、データ記憶部306に記憶されている設定情報に基づいて、回転軸後退力Fbを制御する(S211)。例えば、設定情報が嵩上げ設定である場合、回転軸後退力制御部73は、回転軸後退力Fbを増加させる制御を行う。これに対し、設定情報が現状維持設定である場合、回転軸後退力制御部73は、回転軸後退力Fbを現状維持する制御を行う。さらに、設定情報が嵩下げ設定である場合、回転軸後退力制御部73は、回転軸後退力Fbを減少させる制御を行う。
【0106】
その後、樹脂切断装置2の樹脂切断動作を終了する場合(S212)、制御部70は、樹脂切断装置2の樹脂切断動作を終了する制御を行う。一方、樹脂切断装置2の樹脂切断動作を継続する場合、S202に戻り同様の動作を繰り返す。
【0107】
以上のようにして、第2制御動作例によれば、24時間で摩耗量の判定を行い、適切な摩耗量となるように回転軸後退力Fbを自動調整することができる。
【0108】
<<具現化態様における特徴>>
次に、具体的態様における特徴点について説明する。
【0109】
具体的態様における第1特徴点は、樹脂切断装置に前後進制御用位置センサとともに、摩耗量検出用位置センサを設けている点にある。これにより、摩耗量検出用位置センサからの出力に基づくカッタヘッドの位置情報(回転軸の位置情報)によって、カッタ刃の摩耗量を高精度に検出することができる。
【0110】
ここで、前後進制御用位置センサの他に別の摩耗量検出用位置センサを設ける技術的意義について説明する。例えば、前後進制御用位置センサからの出力に基づくカッタヘッドの位置情報によって、カッタ刃の摩耗量を検出することが考えられる。
【0111】
ところが、前後進制御用位置センサは、回転軸の前後進を制御するために使用される位置センサであり、位置検出範囲は広範囲であるというメリットがある一方、位置検出精度は摩耗量を検出するには不充分であるというデメリットがある。例えば、前後進制御用位置センサの位置検出範囲は、基準位置±8mmである一方、前後進制御用位置センサの位置検出精度は0.1mm程度である。
【0112】
この点に関し、カッタ刃の摩耗量の検出には、少なくとも0.01mm程度の位置検出精度が必要である。したがって、位置検出精度が0.01mm程度の前後進制御用位置センサが存在すれば、この前後進制御用位置センサを使用してカッタ刃の摩耗量も検出することが可能であるが、実際にはそのような位置センサは存在しない。このことから、具現化態様では、前後進制御用位置センサの他に、摩耗量検出用位置センサを設けている。この摩耗量検出用位置センサの位置検出範囲は、前進3mmおよび後退1mmの範囲であるが、位置検出精度が0.01mm程度という高分解能を有している。このため、具現化態様では、カッタ刃の摩耗量を高精度で検出するために、前後進制御用位置センサとは別に摩耗量検出用位置センサを設けているのである。
【0113】
続いて、具現化態様における第2特徴点は、摩耗量検出用位置センサの出力に基づいて算出される摩耗量から回転軸に加わる回転軸後退力の大きさを適切に設定して、回転軸後退力を自動制御する点にある。これにより、第2特徴点によれば、作業者の技量によらずに回転軸後退力の大きさを適切な値に調整することができる。すなわち、第2特徴点によれば、自動でカッタ刃押付力を一定に制御することができるので、カッタ刃の異常摩耗やカッティング不良によるトラブルの発生を抑制することができる。したがって、第2特徴点によれば、樹脂を切断してペレットを製造するペレット製造方法において、カッタ刃の短寿命化や製造されるペレットの品質低下を抑制することができる。
【0114】
具体的には、例えば、図9に示すように、回転軸後退力制御部73が、入力部300と、第1位置取得部301と、第2位置取得部302と、差分算出部303と、比較部304と、回転軸後退力設定部305と、データ記憶部306とを含む点に第2特徴点がある。これにより、摩耗量検出用位置センサの出力に基づいて回転軸後退力の大きさを自動調整することが可能となる。つまり、第1特徴点と第2特徴点とを組み合わせることにより、回転軸後退力の自動制御が可能となる。
【0115】
<応用例>
上述した具現化態様では、前後進制御用位置センサの他に、前後進制御用位置センサよりも位置検出精度の高い摩耗量検出用位置センサを樹脂切断装置に設けている。そこで、以下では、位置検出精度の高い摩耗量検出用位置センサを利用した応用例を説明する。
【0116】
樹脂切断装置は、例えば、ストランド状の溶融樹脂を吐出するダイスの表面に複数のカッタ刃を所定圧力で常に押し付けながら、水中で複数のカッタ刃を回転させることにより、樹脂を切断してペレットを製造する装置である。
【0117】
ここで、樹脂切断装置の運転動作を続けると、カッタ刃は摩耗する。このことから、カッタ刃は定期的に交換する必要がある。カッタ刃を交換した際には、樹脂切断装置の運転動作に先立って、カッタ刃をダイスの表面に適切な力で押し付けながら回転させることによりカッタ刃を研磨するグラインディング処理が実施される。このグラインディング処理は、樹脂切断装置に設けられている前後進制御用位置センサからの出力信号に基づいて、カッタ刃の摩耗量を作業員が判定しながら行われている。具体的に、グラインディング処理は、カッタ刃をダイスの表面に押し付けるカッタ刃押付力などの運転パラメータやグラインディング時間を作業員が機器の状態を監視しながら手動で調整している。
【0118】
現状使用している前後進制御用位置センサは、ノイズや機器の振動などの影響によって出力信号の振れが生じる場合があり、位置検出精度が低い。このため、適切なグラインディング処理が実施できているかを作業員が判断することは難しい。
【0119】
このように現状のグラインディング処理は、作業員の手動調整で行われていることから、カッタ刃がダイスに触れた際の音や全体のカッタ刃の削れ具合を判定できる作業員の技量と前後進制御用位置センサの位置検出精度に依存してグラインディング処理の良否が左右されてしまうという改善の余地が存在する。
【0120】
この点に関し、上述した具現化態様における樹脂切断装置には、前後進制御用位置センサの他に、前後進制御用位置センサよりも位置検出精度の高い摩耗量検出用位置センサが設けられている。したがって、位置検出精度の高い摩耗量検出用位置センサを使用して、カッタ刃の摩耗量を高精度に検出させるとともに、この検出した摩耗量に基づいて、グラインディング処理の終了判定を自動化することにより、作業員の技量や経験に左右されることなく、カッタ刃を適切に研磨することができる樹脂切断装置を実現できると考えられる。応用例では、摩耗量検出用位置センサを使用したグラインディング処理の自動化を実現する樹脂切断装置(樹脂切断装置を備える造粒機も含む)について説明する。
【0121】
<<制御部の機能ブロック構成>>
図12は、制御部70の機能ブロック図である。図12に示すように、制御部70は、具現化態様と同様に、複数のカッタ刃をダイス50に押し付けるカッタ刃押付力を制御するように構成されており、回転数制御部71と、回転軸前進力制御部72と、回転軸後退力制御部73を有している。さらに、応用例において、制御部70は、樹脂をペレットに切断する動作の実施前において、複数のカッタ刃のそれぞれに対して施されるグラインディング処理を制御するグラインディング制御部74を含む。
【0122】
図13は、グラインディング制御部74の機能ブロック図である。
【0123】
図13において、グラインディング制御部74は、入力部400と、第1位置取得部401と、第2位置取得部402と、差分算出部403と、比較部404と、判断部405と、表示部406と、データ記憶部407を有している。
【0124】
入力部400は、摩耗量検出用位置センサ200Aからの出力データ(出力信号)を入力するように構成されている。また、入力部400は、予め設定された摩耗量設定値を入力するように構成されている。そして、入力部400に入力された摩耗量検出用位置センサ200Aからの出力データや、予め設定された研磨量設定値は、データ記憶部407に記憶される。すなわち、データ記憶部407は、各種データを記憶する機能を有する。
【0125】
第1位置取得部401は、データ記憶部407に記憶されている摩耗量検出用位置センサ200Aからの出力データに基づいて、複数のカッタ刃が配置されたカッタヘッドの「第1位置」を取得するように構成されている。ここで、「第1位置」とは、カッタヘッドをダイスの表面に接触させた際のカッタヘッドが配置されている位置を表している。そして、「第1位置」に関するデータは、データ記憶部407に記憶される。
【0126】
第2位置取得部402は、データ記憶部407に記憶されている摩耗量検出用位置センサ200Aからの出力データに基づいて、複数のカッタ刃が配置されたカッタヘッドの「第2位置」を取得するように構成されている。ここで、「第2位置」とは、グラインディング処理を所定時間実施した後においてカッタヘッドが配置されている位置を表している。「第2位置」に関するデータは、データ記憶部407に記憶される。
【0127】
差分算出部403は、データ記憶部407に記憶されている「第1位置」と「第2位置」とに基づいて、「第1位置」と「第2位置」との差分を算出するように構成されている。この「第1位置」と「第2位置」との差分がカッタ刃の研磨量に相当する。すなわち、差分算出部403は、「第1位置」と「第2位置」との差分を算出することにより、カッタ刃の研磨量を算出していることになる。この研磨量に対応する「第1位置」と「第2位置」との差分に関するデータは、データ記憶部407に記憶される。
【0128】
比較部404は、例えば、データ記憶部407に記憶されている「第1位置」と「第2位置」との差分と、データ記憶部407に記憶されている研磨量設定値とを比較するように構成されている。言い換えれば、比較部404は、グラインディング処理を所定時間実施した後の研磨量と研磨量設定値とを比較して、グラインディング処理を所定時間実施した後の研磨量が研磨量設定値よりも大きいか、あるいは、小さいかを判断するように構成されている。そして、比較部404での比較結果は、データ記憶部407に記憶される。
【0129】
判断部405は、比較部404の比較結果に基づいて、グラインディング処理を終了するか否かを判断するように構成されている。例えば、比較部404による比較結果が「グラインディング処理を所定時間実施した後の研磨量≧研摩量設定値」の場合、充分にグラインディング処理が行われたことになる。この場合、判断部405は、表示部406に対して、グラインディング処理が終了したことを表示する処理を行う。これにより、表示部406において、グラインディング処理が終了したことが表示され、この表示を見た作業者が停止ボタンを押すことにより、モータが停止して、グラインディング処理が終了する。一方、比較部404による比較結果が「グラインディング処理を所定時間実施した後の研磨量<研摩量設定値」の場合、判断部405は、グラインディング処理が不充分であるとして、グラインディング処理を継続するように構成されている。さらに、判断部405は、タイマによるグラインディング時間の管理も行うように構成されており、例えば、グラインディング処理が不充分である場合であっても、予め定められた設定時間を経過する場合には、強制的にグラインディング処理を終了する旨を表示する処理を行う。
【0130】
以上のようにして、グラインディング制御部74が構成されている。
【0131】
<<グラインディング処理の制御動作(制御方法)>>
図14は、グラインディング処理の制御動作の流れを示すフローチャートである。
【0132】
図14において、まず前提として予め設定された研磨量設定値がデータ記憶部407に記憶されている。また、予め設定された設定時間がデータ記憶部407に記憶されている。
そして、グラインディング制御部74は、樹脂をペレットに切断する動作の実施前において、複数のカッタ刃のそれぞれに対してグラインディング処理を施すための準備をする(S301)。具体的には、例えば、モータを起動させる。
【0133】
次に、グラインディング制御部74は、カッタ刃の摺動動作(回転軸のなじみ動作)を実施する(S302)。その後、制御部70は、複数のカッタ刃が配置されたカッタヘッド51に取り付けられた回転軸52の前後進を制御するために使用される前後進制御用位置センサ200Bからの出力に基づいて、回転軸52に回転軸前進力Ffを加える(S303)。なお、カッタヘッド51がダイス50に接触していない場合には(S304)、回転軸前進力Ffの大きさを増加する設定を行なった後(S305)、回転軸前進力Ffを回転軸52に加えることを停止して(S306)、S302に戻る。
【0134】
制御部70は、カッタヘッド51がダイス50と接触する近傍領域に到達すると、前後進制御用位置センサ200Bの出力から摩耗量検出用位置センサ200Aの出力に切り替えて、摩耗量検出用位置センサ200Aからの出力に基づいて、回転軸52に回転軸前進力Ffを加える制御を行う。このとき、摩耗量検出用位置センサ200Aからの出力がグラインディング制御部74の入力部400に入力された後、入力された摩耗量検出用位置センサ200Aの出力データ(出力信号)がデータ記憶部407に記憶される。
【0135】
続いて、カッタヘッド51がダイス50に接触すると(S304)、第1位置取得部401は、データ記憶部407に記憶されている摩耗量検出用位置センサ200Aの出力データに基づいて、カッタヘッド51の「第1位置」を取得する(S307)。取得されたカッタヘッド51の「第1位置」は、データ記憶部407に記憶される。
【0136】
その後、樹脂切断装置2においてグラインディング処理が実施される(S308)。これにより、カッタヘッド51に配置されている複数のカッタ刃の研磨が行われる。その後、摩耗量検出用位置センサ200Aからの出力がグラインディング制御部74の入力部400に入力された後、入力された摩耗量検出用位置センサ200Aの出力データがデータ記憶部407に記憶される。そして、第2位置取得部402は、データ記憶部407に記憶されている摩耗量検出用位置センサ200Aの出力データに基づいて、カッタヘッド51の「第2位置」を取得する(S309)。取得されたカッタヘッド51の「第2位置」は、データ記憶部407に記憶される。
【0137】
続いて、差分算出部403は、データ記憶部407に記憶されている「第1位置」と「第2位置」を入力した後、「第1位置」と「第2位置」の差分を算出する(S310)。この差分は、グラインディング処理におけるカッタ刃の研磨量に相当する。この研磨量に相当する「第1位置」と「第2位置」との差分は、データ記憶部407に記憶される。
【0138】
次に、比較部404は、データ記憶部407に記憶されている実際の研磨量と研磨量設定値とを入力した後、実際の研磨量と研磨量設定値とを比較する(S311)。そして、判断部405は、比較部404の比較結果に基づいて、グラインディング処理を終了するか否かを判断する(S311)。具体的に、判断部405は、比較部304による比較結果が「研磨量≧研磨量設定値」である場合、グラインディング処理が充分実施されていると判断して、グラインディング処理を終了する(S313)。一方、比較部404による比較結果が「研磨量<研磨量設定値」である場合、判断部405は、予め設定されている設定時間が経過しているか否かを判断する(S312)。そして、判断部405は、設定時間を経過していると判断すると、比較部404による比較結果が「研磨量<研磨量設定値」であっても強制的にグラインディング処理を終了する。これに対し、判断部405は、設定時間を経過していると判断すると、グラインディング制御部74は、カッタ刃の研磨量が不充分であるとして、S308に戻り、グラインディング処理を継続する。以上のようにして、グラインディング処理の制御動作によれば、前後進制御用位置センサ200Bよりも高い位置検出精度を有する摩耗量検出用位置センサ200Aを使用して、グラインディング処理の自動化を実現することができる。
【0139】
<<応用例における効果>>
応用例における樹脂切断装置は、前後進制御用位置センサだけでなく、この前後進制御用位置センサよりも高い位置検出精度を有する摩耗量検出用位置センサを備えている。そして、応用例における樹脂切断装置では、この摩耗量検出用位置センサからの出力に基づいて、グラインディング処理の適切な終了時間を判断するためのグラインディング制御部が設けられている。このことから、応用例によれば、高い位置検出精度を有する摩耗量検出用位置センサからの出力に基づいてカッタ刃の正確な研磨量を算出することができるとともに、算出された正確な研磨量に基づいて、グラインディング制御部がグラインディング処理の適切な終了タイミングを自動判定することができる。これにより、応用例によれば、作業員の技量や経験値に左右されることなく、カッタ刃に対して適切な研磨量での研磨処理(グラインディング処理)を施すことができる。
【0140】
さらに、応用例によれば、以下に示す効果を得ることができる。
【0141】
(1)グラインディング処理だけでなく、グラインディング処理の準備工程も自動化することができるので、準備工程での省力化を図ることができる。
【0142】
(2)グラインディング処理が自動化されているので、樹脂切断装置(造粒機)の搬入先(顧客)単独でもグラインディング作業を容易に行うことができる。
【0143】
(3)自動化されたグラインディング処理によって、カッタ刃の適切な研磨を実施することができるので、カッタ刃の使用寿命を延ばすことができる。
【0144】
(4)グラインディング処理が適切に自動化されていることから、樹脂切断装置で製造されるペレットの品質向上を図ることができる。
【0145】
(5)グラインディング処理が自動化されていることから、グラインディング作業の軽労化やグラインディング作業のトラブル発生を低減することができる。
【0146】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0147】
1 押出機
2 樹脂切断装置
3 スラリー
4 配管
5 ポンプ
6 脱水機
7 タンク
8 遠心脱水乾燥機
9 振動篩
30 ペレット
50 ダイス
50a ノズル
51 カッタヘッド
51a カッタ刃
52 回転軸
53 モータ
54 スリーブ
55 ハウジング
60 流路室
60a 流入口
60b 流出口
70 制御部
71 回転数制御部
72 回転軸前進力制御部
73 回転軸後退力制御部
74 グラインディング制御部
80 回転軸前進力発生部
90 回転軸後退力発生部
100 造粒システム
200A 摩耗量検出用位置センサ
200B 前後進制御用位置センサ
201 検出板
300 入力部
301 第1位置取得部
302 第2位置取得部
303 差分算出部
304 比較部
305 回転軸後退力設定部
306 データ記憶部
400 入力部
401 第1位置取得部
402 第2位置取得部
403 差分算出部
404 比較部
405 判断部
406 表示部
407 データ記憶部
図1
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