(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179155
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】バッテリ特性再現装置、バッテリ特性再現方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G01R 31/367 20190101AFI20231212BHJP
G01R 31/389 20190101ALI20231212BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
G01R31/367
G01R31/389
H01M10/48 P
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092277
(22)【出願日】2022-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】大貫 泰道
【テーマコード(参考)】
2G216
5H030
【Fターム(参考)】
2G216BA54
2G216CB12
5H030AA10
5H030AS08
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
(57)【要約】
【課題】測定した二次電池のインピーダンス特性に基づいて二次電池の特性を再現させる等価回路を構成することができるバッテリ特性再現装置、バッテリ特性再現方法、およびプログラムを提供すること。
【解決手段】測定されたバッテリのインピーダンスの周波数特性に含まれる最低の抵抗値を抽出する最低値抽出部と、周波数特性に含まれるそれぞれの周波数の測定点ごとに、当該測定点において測定された抵抗値と、隣接する測定点において測定された抵抗値との差分を抽出する差分抽出部と、最低値抽出部が抽出した最低の抵抗値を第1の抵抗成分として構成し、差分抽出部が抽出した抵抗値の差分を第2の抵抗成分として含むバッテリの等価回路をそれぞれの測定点ごとに構成し、第1の抵抗成分とそれぞれの測定点ごとの等価回路とを直列に接続することによって、バッテリにおけるインピーダンスの周波数特性を再現する特性再現部と、を備えるバッテリ特性再現装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定されたバッテリのインピーダンスの周波数特性に含まれる最低の抵抗値を抽出する最低値抽出部と、
前記周波数特性に含まれるそれぞれの周波数の測定点ごとに、当該測定点において測定された抵抗値と、隣接する測定点において測定された抵抗値との差分を抽出する差分抽出部と、
前記最低値抽出部が抽出した前記最低の抵抗値を第1の抵抗成分として構成し、前記差分抽出部が抽出した前記抵抗値の差分を第2の抵抗成分として含む前記バッテリの等価回路をそれぞれの前記測定点ごとに構成し、第1の抵抗成分とそれぞれの前記測定点ごとの前記等価回路とを直列に接続することによって、前記バッテリにおけるインピーダンスの周波数特性を再現する特性再現部と、
を備えるバッテリ特性再現装置。
【請求項2】
前記差分抽出部は、
前記最低の抵抗値を抽出した測定点の周波数よりも低い周波数の領域において前記抵抗値の差分を抽出する低周波領域抽出部と、
前記最低の抵抗値を抽出した測定点の周波数よりも高い周波数の領域において前記抵抗値の差分を抽出する高周波領域抽出部と、
を備え、
前記特性再現部は、前記低周波領域抽出部が抽出した前記抵抗値の差分を前記第2の抵抗成分として含む前記等価回路と、前記高周波領域抽出部が抽出した前記抵抗値の差分を前記第2の抵抗成分として含む前記等価回路とを異なるものとする、
請求項1に記載のバッテリ特性再現装置。
【請求項3】
前記低周波領域抽出部が抽出した前記抵抗値の差分を前記第2の抵抗成分として含む前記等価回路は、前記第2の抵抗成分と前記測定点の周波数を表すインダクタンス成分とが直列に接続された直列回路と、前記測定点の周波数を表すキャパシタンス成分とが並列に接続された構成であり、
前記高周波領域抽出部が抽出した前記抵抗値の差分を前記第2の抵抗成分として含む前記等価回路は、前記第2の抵抗成分と前記測定点の周波数を表すキャパシタンス成分とが直列に接続された直列回路と、前記測定点の周波数を表すインダクタンス成分とが並列に接続された構成である、
請求項2に記載のバッテリ特性再現装置。
【請求項4】
前記高周波領域抽出部は、前記周波数特性に含まれる前記バッテリにおける高周波側のリアクタンス成分を抽出し、
前記特性再現部は、前記高周波側のリアクタンス成分を表すインダクタンスを有するインダクタを、さらに直列に接続することによって、前記バッテリにおけるインピーダンスの周波数特性を再現する、
請求項3に記載のバッテリ特性再現装置。
【請求項5】
前記低周波領域抽出部は、前記周波数特性に含まれる前記バッテリにおける低周波側のリアクタンス成分を抽出し、
前記特性再現部は、前記低周波側のリアクタンス成分を表すキャパシタンスを有するコンデンサを、さらに直列に接続することによって、前記バッテリにおけるインピーダンスの周波数特性を再現する、
請求項3または請求項4に記載のバッテリ特性再現装置。
【請求項6】
コンピュータが、
測定されたバッテリのインピーダンスの周波数特性に含まれる最低の抵抗値を抽出し、
前記周波数特性に含まれるそれぞれの周波数の測定点ごとに、当該測定点において測定された抵抗値と、隣接する測定点において測定された抵抗値との差分を抽出し、
前記抽出した前記最低の抵抗値を第1の抵抗成分として構成し、前記抽出した前記抵抗値の差分を第2の抵抗成分として含む前記バッテリの等価回路をそれぞれの前記測定点ごとに構成し、第1の抵抗成分とそれぞれの前記測定点ごとの前記等価回路とを直列に接続することによって、前記バッテリにおけるインピーダンスの周波数特性を再現する、
バッテリ特性再現方法。
【請求項7】
コンピュータに、
測定されたバッテリのインピーダンスの周波数特性に含まれる最低の抵抗値を抽出させ、
前記周波数特性に含まれるそれぞれの周波数の測定点ごとに、当該測定点において測定された抵抗値と、隣接する測定点において測定された抵抗値との差分を抽出させ、
前記抽出させた前記最低の抵抗値を第1の抵抗成分として構成させ、前記抽出させた前記抵抗値の差分を第2の抵抗成分として含む前記バッテリの等価回路をそれぞれの前記測定点ごとに構成させ、第1の抵抗成分とそれぞれの前記測定点ごとの前記等価回路とを直列に接続させることによって、前記バッテリにおけるインピーダンスの周波数特性を再現させる、
ためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリ特性再現装置、バッテリ特性再現方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
地球環境上の悪影響を軽減(例えばNOx、SOxの削減、CO2の削減)する取り組みが進んでいる。このため、近年では、地球環境の改善の観点から、CO2の削減のために、例えば、ハイブリッド電気自動車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)や、プラグインハイブリッド自動車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)など、少なくとも、バッテリ(二次電池)により供給される電力によって駆動される電動モータによって走行する電気自動車への関心が高まっている。そして、車載用途のバッテリとして、リチウムイオン二次電池の使用が検討されている。これらの電気自動車では、二次電池の性能を充分に引き出すことが重要である。このため、例えば、SOCや温度、劣化の状態などの関係性から、二次電池の内部の状態を推定することは、非常に有益である。二次電池の状態を推定することができると、二次電池が通電しているときの応答や挙動などを計算することができる。この計算結果に基づいて、例えば、電気自動車の電動モータを駆動する際に、例えば、二次電池の電圧の上限値や下限値を超えないような通電パターンを導き出すことが可能となる。
【0003】
これに関して、例えば、特許文献1には、二次電池の等価回路の導出方法に関する技術が開示されている。特許文献1に開示された導出方法では、二次電池の等価回路を複数段接続することによって、交流インピーダンス法によりリチウムイオン電池の内部インピーダンスの周波数特性を測定し、内部インピーダンスの周波数特性の測定結果に、リチウムイオン電池の正電極の電気化学インピーダンスを表す等価回路と負電極の電気化学インピーダンスを表す等価回路とを複数段接続したインピーダンスモデルを用いている。そして、特許文献1に開示された導出方法では、インピーダンスモデルにおけるインピーダンスの周波数特性の計算結果が一致するように、インピーダンスモデルを構成する各素子のパラメータの最適値を決定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、実際の二次電池におけるインピーダンス特性は、単純な形状で表すことができる特性ではない。このため、従来技術では、インピーダンスモデルにおけるインピーダンスの周波数特性の計算結果と実際の二次電池におけるインピーダンスの周波数特性とを一致させるために、インピーダンスモデルのパラメータの調整を繰り返し行ったり、そもそもの等価回路の回路構成の変更を行ったりする必要があり、その作業が煩雑になってしまう場合があった。
【0006】
本発明は、上記の課題認識に基づいてなされたものであり、測定した二次電池のインピーダンス特性に基づいて二次電池の特性を再現させる等価回路を構成することによって、エネルギー効率の改善を図ることが可能な通電パターンを導出することができるバッテリ特性再現装置、バッテリ特性再現方法、およびプログラムを提供することを目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るバッテリ特性再現装置、バッテリ特性再現方法、およびプログラムは、以下の構成を採用した。
(1):この発明の一態様に係るバッテリ特性再現装置は、測定されたバッテリのインピーダンスの周波数特性に含まれる最低の抵抗値を抽出する最低値抽出部と、前記周波数特性に含まれるそれぞれの周波数の測定点ごとに、当該測定点において測定された抵抗値と、隣接する測定点において測定された抵抗値との差分を抽出する差分抽出部と、前記最低値抽出部が抽出した前記最低の抵抗値を第1の抵抗成分として構成し、前記差分抽出部が抽出した前記抵抗値の差分を第2の抵抗成分として含む前記バッテリの等価回路をそれぞれの前記測定点ごとに構成し、第1の抵抗成分とそれぞれの前記測定点ごとの前記等価回路とを直列に接続することによって、前記バッテリにおけるインピーダンスの周波数特性を再現する特性再現部と、を備えるバッテリ特性再現装置である。
【0008】
(2):上記(1)の態様において、前記差分抽出部は、前記最低の抵抗値を抽出した測定点の周波数よりも低い周波数の領域において前記抵抗値の差分を抽出する低周波領域抽出部と、前記最低の抵抗値を抽出した測定点の周波数よりも高い周波数の領域において前記抵抗値の差分を抽出する高周波領域抽出部と、を備え、前記特性再現部は、前記低周波領域抽出部が抽出した前記抵抗値の差分を前記第2の抵抗成分として含む前記等価回路と、前記高周波領域抽出部が抽出した前記抵抗値の差分を前記第2の抵抗成分として含む前記等価回路とを異なるものとするものである。
【0009】
(3):上記(2)の態様において、前記低周波領域抽出部が抽出した前記抵抗値の差分を前記第2の抵抗成分として含む前記等価回路は、前記第2の抵抗成分と前記測定点の周波数を表すインダクタンス成分とが直列に接続された直列回路と、前記測定点の周波数を表すキャパシタンス成分とが並列に接続された構成であり、前記高周波領域抽出部が抽出した前記抵抗値の差分を前記第2の抵抗成分として含む前記等価回路は、前記第2の抵抗成分と前記測定点の周波数を表すキャパシタンス成分とが直列に接続された直列回路と、前記測定点の周波数を表すインダクタンス成分とが並列に接続された構成であるものである。
【0010】
(4):上記(3)の態様において、前記高周波領域抽出部は、前記周波数特性に含まれる前記バッテリにおける高周波側のリアクタンス成分を抽出し、前記特性再現部は、前記高周波側のリアクタンス成分を表すインダクタンスを有するインダクタを、さらに直列に接続することによって、前記バッテリにおけるインピーダンスの周波数特性を再現するものである。
【0011】
(5):上記(3)または(4)の態様において、前記低周波領域抽出部は、前記周波数特性に含まれる前記バッテリにおける低周波側のリアクタンス成分を抽出し、前記特性再現部は、前記低周波側のリアクタンス成分を表すキャパシタンスを有するコンデンサを、さらに直列に接続することによって、前記バッテリにおけるインピーダンスの周波数特性を再現するものである。
【0012】
(6):この発明の一態様に係るバッテリ特性再現方法は、コンピュータが、測定されたバッテリのインピーダンスの周波数特性に含まれる最低の抵抗値を抽出し、前記周波数特性に含まれるそれぞれの周波数の測定点ごとに、当該測定点において測定された抵抗値と、隣接する測定点において測定された抵抗値との差分を抽出し、前記抽出した前記最低の抵抗値を第1の抵抗成分として構成し、前記抽出した前記抵抗値の差分を第2の抵抗成分として含む前記バッテリの等価回路をそれぞれの前記測定点ごとに構成し、第1の抵抗成分とそれぞれの前記測定点ごとの前記等価回路とを直列に接続することによって、前記バッテリにおけるインピーダンスの周波数特性を再現する、バッテリ特性再現方法である。
【0013】
(7):この発明の一態様に係るプログラムは、コンピュータに、測定されたバッテリのインピーダンスの周波数特性に含まれる最低の抵抗値を抽出させ、前記周波数特性に含まれるそれぞれの周波数の測定点ごとに、当該測定点において測定された抵抗値と、隣接する測定点において測定された抵抗値との差分を抽出させ、前記抽出させた前記最低の抵抗値を第1の抵抗成分として構成させ、前記抽出させた前記抵抗値の差分を第2の抵抗成分として含む前記バッテリの等価回路をそれぞれの前記測定点ごとに構成させ、第1の抵抗成分とそれぞれの前記測定点ごとの前記等価回路とを直列に接続させることによって、前記バッテリにおけるインピーダンスの周波数特性を再現させる、ためのプログラムである。
【発明の効果】
【0014】
上述した(1)~(7)の態様によれば、測定した二次電池のインピーダンス特性に基づいて二次電池の特性を再現させる等価回路を構成することによって、エネルギー効率の改善を図ることが可能な通電パターンを導出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態に係るバッテリ特性再現装置の構成の一例を示す図である。
【
図2】実施形態のバッテリ特性再現装置に入力されるバッテリ特性データの一例を示す図である。
【
図3】実施形態のバッテリ特性再現装置が備える等価回路構成部における再現等価回路の構成方法を説明する図である。
【
図4】実施形態の等価回路構成部が構成した低周波領域の等価回路の周波数特性を示す図である。
【
図5】実施形態の低周波領域の等価回路において定数を変更した場合の周波数特性の違いを示す図である。
【
図6】実施形態の等価回路構成部が構成した高周波領域の等価回路の周波数特性を示す図である。
【
図7】実施形態の高周波領域の等価回路において定数を変更した場合の周波数特性の違いを示す図である。
【
図8】実施形態のバッテリ特性再現装置が構成した再現等価回路の構成の一例とその特性を示す図である。
【
図9】実施形態のバッテリ特性再現装置が構成した再現等価回路のインピーダンス特性の一致度合いを説明する図である。
【
図10】実施形態のバッテリ特性再現装置が構成した再現等価回路におけるリアクタンス成分の特性の一例を示す図である。
【
図11】実施形態のバッテリ特性再現装置が構成する再現等価回路におけるリアクタンス成分の周波数特性の一例を示す図である。
【
図12】実施形態のバッテリ特性再現装置が構成した再現等価回路の構成の一例とその特性を示す図である。
【
図13】実施形態のバッテリ特性再現装置が構成した再現等価回路のインピーダンス特性の一例を示す図である。
【
図14】実施形態のバッテリ特性再現装置が構成した再現等価回路のインピーダンス特性の一致度合いの一例を示す図である。
【
図15】実施形態のバッテリ特性再現装置が構成した再現等価回路におけるリアクタンス成分の特性の一例を示す図である。
【
図16】実施形態のバッテリ特性再現装置が構成した再現等価回路の構成の一例とその特性を示す図である。
【
図17】実施形態のバッテリ特性再現装置が構成した再現等価回路の構成の一例とその特性を示す図である。
【
図18】実施形態のバッテリ特性再現装置が構成した再現等価回路のインピーダンス特性の一致度合いの一例を示す図である。
【
図19】実施形態のバッテリ特性再現装置が構成した再現等価回路のインピーダンス特性の一例を示す図である。
【
図20】実施形態のバッテリ特性再現装置が構成した再現等価回路のより詳細な構成の一例を示す図である。
【
図21】実施形態のバッテリ特性再現装置において再現等価回路を構成する際に実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図22】実施形態のバッテリ特性再現装置が構成した再現等価回路を用いてバッテリの応答を計算した場合の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照し、本発明のバッテリ特性再現装置、バッテリ特性再現方法、およびプログラムの実施形態について説明する。
【0017】
[バッテリ特性再現装置の構成]
図1は、実施形態に係るバッテリ特性再現装置の構成の一例を示す図である。バッテリ特性再現装置100は、例えば、最低値抽出部102と、低周波領域抽出部104と、高周波領域抽出部106と、等価回路構成部108と、を備える。
【0018】
バッテリ特性再現装置100やバッテリ特性再現装置100が備える構成要素は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することで動作する。バッテリ特性再現装置100やバッテリ特性再現装置100が備える構成要素は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。バッテリ特性再現装置100やバッテリ特性再現装置100が備える構成要素は、専用のLSIによって実現されてもよい。プログラムは、予めバッテリ特性再現装置100が備えるHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体がバッテリ特性再現装置100が備えるドライブ装置に装着されることでバッテリ特性再現装置100が備えるHDDやフラッシュメモリにインストールされてもよい。
【0019】
バッテリ特性再現装置100は、入力されたバッテリ特性データに基づいて、バッテリのインピーダンス特性を表す等価回路を構成する。バッテリ特性データは、例えば、インピーダンスアナライザなど、バッテリの内部における交流電流の流れやすさの指標を表すインピーダンスを測定する測定器などによって測定された、バッテリの内部のインピーダンス特性を表す特性データである。つまり、バッテリ特性再現装置100は、入力されたバッテリ特性データを再現するための等価回路(以下、「再現等価回路」という)を構成する。バッテリ特性再現装置100は構成した再現等価回路を表す情報を出力する。再現等価回路は、バッテリを通電させる際のパラメータを任意に設定することによって、バッテリが通電しているときの応答や挙動などの計算に用いることができる。例えば、バッテリが電気自動車などの車両に搭載されたものである場合、このバッテリの再現等価回路に電動モータを駆動する際の通電パターンを表すパラメータを設定することによって、バッテリの電圧の上限値や下限値を超えないような通電パターンを導き出すことが可能となる。
【0020】
図2は、実施形態のバッテリ特性再現装置100に入力されるバッテリ特性データの一例を示す図である。
図2に示したバッテリ特性データは、今回、再現等価回路を構成する対象のバッテリのインピーダンス特性を、例えば、インピーダンスアナライザなどによって測定したデータである。
図2に示したバッテリ特性データは、例えば、円筒型のバッテリのインピーダンス特性である。
図2の(a)は、測定したインピーダンス特性に含まれるインピーダンス|z|(絶対値)と、位相とをボード線図で示したものである。
図2の(b)は、
図2の(a)に示したインピーダンス|z|と同じデータを、実数部(抵抗成分Z-Re)と、虚数部(リアクタンス成分Z-Im)とに分けて示した周波数特性である。一般的に、バッテリのインピーダンス|z|における抵抗成分Z-Reの特性には極小点(抵抗値が最低の値となる点)が存在することが知られている。
図2の(b)に示した一例では、4[kHz]付近が極小点となっている。
【0021】
最低値抽出部102は、入力されたバッテリ特性データに基づいて、
図2の(b)に示されたような、抵抗成分Z-Reの特性が極小点となる周波数の測定点(以下、「極小測定点」という)を抽出する。最低値抽出部102は、抽出した極小測定点における抵抗成分Z-Reの抵抗値(極小の抵抗値)を抵抗値Rsとし、極小測定点の角周波数を角周波数ω0として等価回路構成部108に出力する。最低値抽出部102は、抽出した極小測定点を表す情報(角周波数ω0の情報であってもよい)を、低周波領域抽出部104と高周波領域抽出部106とのそれぞれに出力する。抵抗値Rsは、「第1の抵抗成分」の一例である。
【0022】
低周波領域抽出部104は、入力されたバッテリ特性データにおいて、最低値抽出部102により出力された極小測定点よりも周波数が低い領域に存在するそれぞれの測定点における抵抗成分Z-Reの抵抗値を抽出する。低周波領域抽出部104は、抽出したそれぞれの測定点において、隣接する二つの測定点の抵抗値同士の差分を算出する。さらに、低周波領域抽出部104は、抵抗値の差分を算出した隣接する二つの測定点を代表する角周波数を算出する。低周波領域抽出部104は、入力されたバッテリ特性データにおいて周波数が低い領域に存在する測定点の数の抵抗値の差分と、対応する角周波数を算出する。このとき、低周波領域抽出部104は、隣接する二つの測定点のいずれか一方の角周波数を抵抗値の差分に対応する角周波数としてもよいし、隣接する二つの測定点の角周波数の中心の値(例えば、平均値)を抵抗値の差分に対応する角周波数としてもよい。低周波領域抽出部104は、算出したそれぞれの抵抗値の差分を抵抗値Rnとし、それぞれの抵抗値Rnに対応する角周波数を角周波数ωnとして等価回路構成部108に出力する。
【0023】
高周波領域抽出部106は、入力されたバッテリ特性データにおいて、最低値抽出部102により出力された極小測定点よりも周波数が高い領域に存在するそれぞれの測定点における抵抗成分Z-Reの抵抗値を抽出する。高周波領域抽出部106は、抽出したそれぞれの測定点において、隣接する二つの測定点の抵抗値同士の差分を算出する。さらに、高周波領域抽出部106は、抵抗値の差分を算出した隣接する二つの測定点を代表する角周波数を算出する。高周波領域抽出部106は、入力されたバッテリ特性データにおいて周波数が高い領域に存在する測定点の数の抵抗値の差分と、対応する角周波数を算出する。このとき、高周波領域抽出部106は、隣接する二つの測定点のいずれか一方の角周波数を抵抗値の差分に対応する角周波数としてもよいし、隣接する二つの測定点の角周波数の中心の値(例えば、平均値)を抵抗値の差分に対応する角周波数としてもよい。高周波領域抽出部106は、算出したそれぞれの抵抗値の差分を抵抗値Rmとし、それぞれの抵抗値Rmに対応する角周波数を角周波数ωmとして等価回路構成部108に出力する。
【0024】
低周波領域抽出部104と高周波領域抽出部106とを合わせた構成は、「差分抽出部」の一例である。抵抗値Rnと抵抗値Rmとを合わせた抵抗値は、「第2の抵抗成分」の一例である。
【0025】
等価回路構成部108は、最低値抽出部102により出力された抵抗値Rsと、低周波領域抽出部104により出力された抵抗値Rnおよび角周波数ωnと、高周波領域抽出部106により出力された抵抗値Rmおよび角周波数ωmとに基づいて、入力されたバッテリ特性データが表すバッテリのインピーダンス特性を再現するための再現等価回路を構成する。等価回路構成部108は、「特性再現部」の一例である。
【0026】
ここで、等価回路構成部108が再現等価回路を構成する方法の一例について説明する。
図3は、実施形態のバッテリ特性再現装置100が備える等価回路構成部108における再現等価回路の構成方法を説明する図である。
図3の(a)には、極小測定点付近の抵抗成分Z-Reの特性の一例を示している。
図3の(a)では、それぞれの角周波数ωが、測定点である。
図3の(b)には、等価回路構成部108が再現等価回路を構成する際に、極小測定点よりも周波数が低い領域の測定点に対応する等価回路として設ける一段分の等価回路のブロック(以下、「回路ブロック」という)CBLの一例を示し、
図3の(c)には、等価回路構成部108が再現等価回路を構成する際に、極小測定点よりも周波数が高い領域の測定点に対応する等価回路として設ける一段分の回路ブロックCBHの一例を示している。
【0027】
図3の(a)には、最低値抽出部102が、抵抗成分Z-Reの特性に基づいて、極小測定点(角周波数ω0)の抵抗値Rsを抽出した場合の一例を示している。等価回路構成部108は、抵抗値Rsの抵抗R0を、最低値抽出部102により出力された抵抗値Rsに対応する等価回路として構成する。
【0028】
低周波領域抽出部104は、
図3の(a)に示した抵抗成分Z-Reの特性に基づいて、極小測定点よりも周波数が低い領域に存在するそれぞれの測定点(角周波数ωi)における抵抗値R
iを抽出する。低周波領域抽出部104は、例えば、角周波数ωiの抵抗値R
iと、角周波数ωiよりも周波数が低い側に隣接する測定点である角周波数ωi-1の抵抗値R
i-1とを抽出する。そして、低周波領域抽出部104は、抽出した隣接する二つの測定点の抵抗値同士の差分である抵抗値Rnを、下式(1)によって算出する。
【0029】
Rn=Ri-1-Ri ・・・(1)
【0030】
図3の(a)には、低周波領域抽出部104が、角周波数ωi-2の抵抗値R
i-2と角周波数ωi-3の抵抗値R
i-3との差分を抵抗値Rnとして算出した場合の一例を示している。さらに、
図3の(a)には、低周波領域抽出部104が、角周波数ωi-2と角周波数ωi-3との中心の角周波数ωを、算出した抵抗値Rnに対応する角周波数ωnとしている場合の一例を示している。
【0031】
等価回路構成部108は、低周波領域抽出部104により出力された抵抗値Rnと角周波数ωnとに基づいて、キャパシタンスCnを下式(2)によって算出し、インダクタンスLnを下式(3)によって算出する。
【0032】
Cn=√2/(Rnωn) ・・・(2)
【0033】
Ln=Rn/((√2)ωn) ・・・(3)
【0034】
そして、等価回路構成部108は、
図3の(b)に示したような、抵抗値Rnの抵抗RとインダクタンスLnのインダクタLとを直列接続し、この直列回路にキャパシタンスCnのコンデンサCを並列接続した回路ブロックCBLを、低周波領域抽出部104により出力された抵抗値Rnおよび角周波数ωnに対応する等価回路として構成する。つまり、等価回路構成部108は、
図3の(b)に示した回路ブロックCBLを、極小測定点よりも周波数が低い領域におけるバッテリ特性を再現するための等価回路として含む再現等価回路を構成する。等価回路構成部108は、極小測定点よりも周波数が低い領域に存在するそれぞれの測定点ごとに、
図3の(b)に示した回路ブロックCBLを設ける。ただし、回路ブロックCBLが備えるそれぞれの構成要素の抵抗値Rn、キャパシタンスCn、およびインダクタンスLnの値は、低周波領域抽出部104により出力された抵抗値Rnと角周波数ωnとに応じて異なるものである。
【0035】
ここで、
図3の(b)に示した回路ブロックCBLの周波数特性について説明する。
図4は、実施形態の等価回路構成部108が構成した低周波領域の等価回路(回路ブロックCBL)の周波数特性を示す図である。
図4の(a)には、一つの回路ブロックCBLの回路構成を示し、
図4の(b)には、一つの回路ブロックCBLのインピーダンスの周波数特性を示し、
図4の(c)には、一つの回路ブロックCBLのナイキストプロット(コールコールプロットともいう)を示している。
【0036】
図4に示した一例は、
図4の(a)に示した回路ブロックCBLが、周波数が1[kHz]の測定点に対応するものであり、回路ブロックCBLを構成する抵抗Rの抵抗値Rnが、例えば、Rn=10[mΩ]であるものとした場合の一例である。この場合、上式(2)および(3)から、コンデンサCのキャパシタンスCnはCn=22.5[mF]となり、インダクタLのインダクタンスLnはLn=1.13[uH]となる。
【0037】
そして、回路ブロックCBLのインピーダンスの周波数特性を、抵抗成分Z-Re(実数部)と、リアクタンス成分Z-Im(虚数部)とに分けて示すと、
図4の(b)に示したような特性となる。より具体的には、周波数が1[kHz]において、抵抗成分Z-Reは1/2Rnとなり、リアクタンス成分Z-Imは(√2/2)Rnでマイナス側の極値となる特性となる。そして、
図4の(b)に示した周波数特性をナイキストプロットで表すと、
図4の(c)に示したように、低周波側で抵抗成分Z-Reが高く、高周波側で抵抗成分Z-Reが低くなり、中心周波数(=1[kHz])のところで抵抗成分Z-Reが1/2Rnで、リアクタンス成分Z-Imがマイナス側に(√2/2)Rnである、半円弧の軌跡を描く特性となる。
【0038】
図4の(a)に示した回路ブロックCBLのインピーダンスZ
BLK-Lは、下式(4)のように表すことができる。
【0039】
【0040】
このとき、回路ブロックCBLの抵抗成分ZBLK-L(re)は、下式(5)のように表すことができる。
【0041】
【0042】
ここで、キャパシタンスCnをCn=k/(Rnω0)と置き換え、インダクタンスLnをLn=Rn/(kω0)と置き換えると、上式(5)で表される抵抗成分ZBLK-L(re)は、下式(6)のように表すことができる。ここでkは定数である。
【0043】
【0044】
上式(6)から、回路ブロックCBLの抵抗成分の傾き(ZBLK-L(re))’は、下式(7)のように表すことができる。
【0045】
【0046】
上式(7)から、定数kは、k≧√2であれば、抵抗成分の傾き(ZBLK-L(re))’は、(ZBLK-L(re))’≦0となって、常に負の状態となる。
【0047】
ここで比較のため、定数kを変えた場合における回路ブロックCBLのインピーダンスの周波数特性の違いについて説明する。
図5は、実施形態の低周波領域の等価回路(回路ブロックCBL)において定数kを変更した場合の周波数特性の違いを示す図である。
図5の(a)には、回路ブロックCBLにおいて定数kが異なる場合のリアクタンス成分Z-Imを示し、
図5の(b)には、回路ブロックCBLにおいて定数kが異なる場合の抵抗成分Z-Reを示している。
図5では、定数kを、k=1、k=√2、k=2とした場合におけるリアクタンス成分Z-Imと抵抗成分Z-Reとのそれぞれを示している。
図5の(a)に示したように、定数kがk=√2である場合、リアクタンス成分Z-Imは、中心周波数(=1[kHz])のところにマイナス側の極値が現れる。これに対して、定数kがk<√2である場合(ここでは、定数kがk=1である場合)、リアクタンス成分Z-Imの変化は大きくなるものの、極値は、中心周波数から高周波側に移動してしまう。定数kがk>√2である場合(ここでは、定数kがk=2である場合)、リアクタンス成分Z-Imの変化は小さくなり、極値は、中心周波数から低周波側に移動してしまう。一方、
図5の(b)に示したように、定数kがk=√2である場合、抵抗成分Z-Reは、低周波側での平坦な部分が最も長くなり、高抵抗側から低抵抗側への変化も比較的急峻になる。これに対して、定数kがk<√2である場合(ここでは、定数kがk=1である場合)、抵抗成分Z-Reの変化における高抵抗側から低抵抗側への変化はk=√2である場合よりも急峻になるものの、中心周波数の近傍に抵抗値が高くなるピークが現れてしまう。定数kがk>√2である場合(ここでは、定数kがk=2である場合)、中心周波数の近傍に抵抗成分Z-Reのピークは現れないものの、抵抗成分Z-Reの変化における高抵抗側から低抵抗側への変化は緩やかになり、低周波側での平坦な部分が短くなってしまう。これらのことから、回路ブロックCBLにおいてキャパシタンスCnおよびインダクタンスLnを計算する際の定数kは、k=√2が好適であると考えられる。
【0048】
図3に戻り、高周波領域抽出部106は、
図3の(a)に示した抵抗成分Z-Reの特性に基づいて、極小測定点よりも周波数が高い領域に存在するそれぞれの測定点(角周波数ωj)における抵抗値R
jを抽出する。高周波領域抽出部106は、例えば、角周波数ωjの抵抗値R
jと、角周波数ωjよりも周波数が高い側に隣接する測定点である角周波数ωj+1の抵抗値R
j+1とを抽出する。そして、高周波領域抽出部106は、抽出した隣接する二つの測定点の抵抗値同士の差分である抵抗値Rmを、下式(8)によって算出する。
【0049】
Rm=Rj+1-Rj ・・・(8)
【0050】
図3の(a)には、高周波領域抽出部106が、角周波数ωj-2の抵抗値R
j-2と角周波数ωj-3の抵抗値R
j-3との差分を抵抗値Rmとして算出した場合の一例を示している。さらに、
図3の(a)には、高周波領域抽出部106が、角周波数ωj-2と角周波数ωj-3との中心の角周波数ωを、算出した抵抗値Rmに対応する角周波数ωmとしている場合の一例を示している。
【0051】
等価回路構成部108は、高周波領域抽出部106により出力された抵抗値Rmと角周波数ωmとに基づいて、キャパシタンスCmを下式(9)によって算出し、インダクタンスLmを下式(10)によって算出する。
【0052】
Cm=√2/(Rmωm) ・・・(9)
【0053】
Lm=Rm/((√2)ωm) ・・・(10)
【0054】
そして、等価回路構成部108は、
図3の(c)に示したような、抵抗値Rmの抵抗RとキャパシタンスCmのコンデンサCとを直列接続し、この直列回路にインダクタンスLmのインダクタLを並列接続した回路ブロックCBHを、高周波領域抽出部106により出力された抵抗値Rmおよび角周波数ωmに対応する等価回路として構成する。つまり、等価回路構成部108は、
図3の(c)に示した回路ブロックCBHを、極小測定点よりも周波数が高い領域におけるバッテリ特性を再現するための等価回路として含む再現等価回路を構成する。等価回路構成部108は、極小測定点よりも周波数が高い領域に存在するそれぞれの測定点ごとに、
図3の(c)に示した回路ブロックCBHを設ける。ただし、回路ブロックCBHが備えるそれぞれの構成要素の抵抗値Rm、キャパシタンスCm、およびインダクタンスLmの値は、高周波領域抽出部106により出力された抵抗値Rmと角周波数ωmとに応じて異なるものである。
【0055】
ここで、
図3の(c)に示した回路ブロックCBHの周波数特性について説明する。
図6は、実施形態の等価回路構成部108が構成した高周波領域の等価回路(回路ブロックCBH)の周波数特性を示す図である。
図6の(a)には、一つの回路ブロックCBHの回路構成を示し、
図6の(b)には、一つの回路ブロックCBHのインピーダンスの周波数特性を示し、
図6の(c)には、一つの回路ブロックCBHのナイキストプロットを示している。
【0056】
図6に示した一例は、
図6の(a)に示した回路ブロックCBHも、周波数が1[kHz]の測定点に対応するものであり、回路ブロックCBHを構成する抵抗Rの抵抗値Rmが、例えば、Rm=10[mΩ]であるものとした場合の一例である。この場合、上式(9)および(10)から、コンデンサCのキャパシタンスCmはCm=22.5[mF]となり、インダクタLのインダクタンスLmはLm=1.13[uH]となる。
【0057】
そして、回路ブロックCBHのインピーダンスの周波数特性を、抵抗成分Z-Re(実数部)と、リアクタンス成分Z-Im(虚数部)とに分けて示すと、
図6の(b)に示したような特性となる。より具体的には、周波数が1[kHz]において、抵抗成分Z-Reは1/2Rmとなり、リアクタンス成分Z-Imは(√2/2)Rmでプラス側の極値となる特性となる。そして、
図6の(b)に示した周波数特性をナイキストプロットで表すと、
図6の(c)に示したように、低周波側で抵抗成分Z-Reが低く、高周波側で抵抗成分Z-Reが高くなり、中心周波数(=1[kHz])のところで抵抗成分Z-Reが1/2Rmで、リアクタンス成分Z-Imがプラス側に(√2/2)Rmである、半円弧の軌跡を描く特性となる。つまり、回路ブロックCBHにおける抵抗成分Z-Reおよびリアクタンス成分Z-Imの特性は、回路ブロックCBLにおける特性とは逆の特性である。
【0058】
図6の(a)に示した回路ブロックCBHのインピーダンスZ
BLK-Hは、下式(11)のように表すことができる。
【0059】
【0060】
このとき、回路ブロックCBHの抵抗成分ZBLK-H(re)は、下式(12)のように表すことができる。
【0061】
【0062】
ここで、キャパシタンスCmをCm=k/(Rmω0)と置き換え、インダクタンスLmをLm=Rm/(kω0)と置き換えると、上式(12)で表される抵抗成分ZBLK-H(re)は、下式(13)のように表すことができる。この場合のkも定数である。
【0063】
【0064】
上式(13)から、回路ブロックCBHの抵抗成分の傾き(ZBLK-H(re))’は、下式(14)のように表すことができる。
【0065】
【0066】
上式(14)から、定数kは、k≧√2であれば、抵抗成分の傾き(ZBLK-H(re))’は、(ZBLK-H(re))’≧0となって、常に正の状態となる。
【0067】
ここで比較のため、定数kを変えた場合における回路ブロックCBHのインピーダンスの周波数特性の違いについて説明する。
図7は、実施形態の高周波領域の等価回路(回路ブロックCBH)において定数kを変更した場合の周波数特性の違いを示す図である。
図7の(a)には、回路ブロックCBHにおいて定数kが異なる場合のリアクタンス成分Z-Imを示し、
図7の(b)には、回路ブロックCBHにおいて定数kが異なる場合の抵抗成分Z-Reを示している。
図7でも、定数kを、k=1、k=√2、k=2とした場合におけるリアクタンス成分Z-Imと抵抗成分Z-Reとのそれぞれを示している。
図7の(a)に示したように、定数kがk=√2である場合、リアクタンス成分Z-Imは、中心周波数(=1[kHz])のところにプラス側の極値が現れる。これに対して、定数kがk<√2である場合(ここでは、定数kがk=1である場合)、リアクタンス成分Z-Imの変化は大きくなるものの、極値は、中心周波数から低周波側に移動してしまう。定数kがk>√2である場合(ここでは、定数kがk=2である場合)、リアクタンス成分Z-Imの変化は小さくなり、極値は、中心周波数から高周波側に移動してしまう。一方、
図7の(b)に示したように、定数kがk=√2である場合、抵抗成分Z-Reは、高周波側での平坦な部分が最も長くなり、低抵抗側から高抵抗側への変化も比較的急峻になる。これに対して、定数kがk<√2である場合(ここでは、定数kがk=1である場合)、抵抗成分Z-Reの変化における低抵抗側から高抵抗側への変化はk=√2である場合よりも急峻になるものの、中心周波数の近傍に抵抗値が高くなるピークが現れてしまう。定数kがk>√2である場合(ここでは、定数kがk=2である場合)、中心周波数の近傍に抵抗成分Z-Reのピークは現れないものの、抵抗成分Z-Reの変化における低抵抗側から高抵抗側への変化は緩やかになり、高周波側での平坦な部分が短くなってしまう。これらのことから、回路ブロックCBHにおいても、回路ブロックCBLと同様に、キャパシタンスCnおよびインダクタンスLnを計算する際の定数kは、k=√2が好適であると考えられる。
【0068】
等価回路構成部108は、それぞれの測定点ごとに、最低値抽出部102により出力された抵抗値Rsに基づく抵抗R0、低周波領域抽出部104により出力された抵抗値Rnおよび角周波数ωnに基づく回路ブロックCBL、あるいは、高周波領域抽出部106により出力された抵抗値Rmおよび角周波数ωmに基づく回路ブロックCBHのいずれかを構成する。そして、等価回路構成部108は、それぞれの測定点ごとに構成した、抵抗R0と、回路ブロックCBLと、回路ブロックCBHとのそれぞれを直列に接続させて、入力されたバッテリ特性データが表すバッテリのインピーダンス特性を再現するための再現等価回路を構成する。
【0069】
<第1実施形態>
次に、バッテリ特性再現装置100において構成した再現等価回路を、第1実施形態として説明する。
図8は、実施形態のバッテリ特性再現装置100が構成した再現等価回路(第1実施形態の再現等価回路)の構成の一例とその特性を示す図である。
図8の(a)には、バッテリ特性再現装置100(より具体的には、等価回路構成部108)が構成した再現等価回路(以下、「再現等価回路EC1」という)の一例を示している。
図8の(b)は、インピーダンス特性に含まれるインピーダンス|z|(絶対値)と、位相とをボード線図で示したものである。
図8の(c)は、
図8の(b)に示したインピーダンス|z|と同じデータを、抵抗成分Z-Re(実数部)と、リアクタンス成分Z-Im(虚数部)とに分けて示した周波数特性である。
図8の(b)および
図8の(c)には、比較のために、測定したインピーダンス特性(バッテリ特性再現装置100に入力されるインピーダンス特性)が表す測定値と、再現等価回路EC1を用いて計算(シミュレーション)したインピーダンス特性の再現値(計算値)とを併せて示している。
図8の(a)におけるインピーダンス|z|および位相の測定値の特性と、
図8の(c)における抵抗成分Z-Reおよびリアクタンス成分Z-Imの測定値の特性とのそれぞれは、
図2に示した特性と同じものである。
【0070】
図8の(a)に示した再現等価回路EC1は、抵抗R1、インダクタL1、およびコンデンサC1を備える回路ブロックCBL1と、抵抗R2、インダクタL2、およびコンデンサC2を備える回路ブロックCBL2と、抵抗Rn、インダクタLn、およびコンデンサCnを備える回路ブロックCBLnと、抵抗R0と、抵抗Rn+1、インダクタLn+1、およびコンデンサCn+1を備える回路ブロックCBH1と、抵抗Rn+2、インダクタLn+2、およびコンデンサCn+2を備える回路ブロックCBH2と、抵抗Rn+m、インダクタLn+m、およびコンデンサCn+mを備える回路ブロックCBHmとが、この順番で直列接続されている。再現等価回路EC1は、抵抗R0と、複数の回路ブロックCBLと、複数の回路ブロックCBHとが直列に接続された構成であるため、それぞれの構成要素が接続される順番は、再現するバッテリのインピーダンス特性には影響しない。
【0071】
再現等価回路EC1を用いて計算したインピーダンス特性を
図8の(b)に示したボード線図で比較すると、インピーダンス|z|は、抵抗成分Z-Reの特性が極小点(抵抗値が最低の値となる点)となる4[kHz]以下の周波数で測定値と再現値とが概ね一致していることがわかる。さらに、位相は、周波数が0.1[Hz]~1[kHz]の範囲で測定値と再現値とが概ね一致していることがわかる。一方、再現等価回路EC1を用いて計算したインピーダンス特性を
図8の(c)に示した周波数特性で比較すると、抵抗成分Z-Reは、全ての周波数で測定値と再現値とが概ね一致しており、リアクタンス成分Z-Imは、10[kHz]以下の周波数で測定値と再現値とが概ね一致していることがわかる。
【0072】
ここで、抵抗成分Z-Reおよびリアクタンス成分Z-Imにおける測定値と再現値との一致度合いについて説明する。
図9は、実施形態のバッテリ特性再現装置100が構成した再現等価回路(再現等価回路EC1)のインピーダンス特性の一致度合いを説明する図である。
図9の(a)には、抵抗成分Z-Reの周波数特性を示し、
図9の(b)には、リアクタンス成分Z-Imの周波数特性を示している。
図9の(a)および
図9の(b)では、再現等価回路EC1を構成する回路ブロックCBLと回路ブロックCBHとにおける定数kを仮に変更して構成した再現等価回路における周波数特性の違いを示している。より具体的には、回路ブロックCBLにおけるキャパシタンスCn(Cn=k/(Rnω0))およびインダクタンスLn(Ln=Rn/(kω0))と、回路ブロックCBHにおけるキャパシタンスCm(Cm=k/(Rmω0))およびインダクタンスLm(Lm=Rm/(kω0))とのそれぞれの定数kを、k=1、k=√2、k=2のいずれかに仮に変更することによって、それぞれの再現等価回路における周波数特性の違いを示している。
【0073】
図9の(a)に示した抵抗成分Z-Reで比較すると、定数kがk=√2である場合、抵抗成分Z-Reの再現値の周波数特性と、抵抗成分Z-Reの測定値の周波数特性とは、概ね一致していることがわかる。これに対して、定数kがk=1である場合、抵抗成分Z-Reの再現値の周波数特性は、抵抗成分Z-Reの測定値の周波数特性よりも全体的に高い値になってしまうことがわかる。定数kがk=2である場合、抵抗成分Z-Reの再現値の周波数特性は、抵抗成分Z-Reの測定値の周波数特性よりも全体的に低い値になってしまうことがわかる。一方、
図9の(b)に示したリアクタンス成分Z-Imで比較すると、定数kがk=√2である場合、リアクタンス成分Z-Imの再現値は、100[Hz]以下の周波数でリアクタンス成分Z-Imの測定値と概ね一致しているが、100[Hz]よりも高い周波数では、徐々にリアクタンス成分Z-Imの測定値よりも低い値になってしまうことがわかる。これに対して、定数kがk=1である場合、リアクタンス成分Z-Imの再現値は、100[Hz]よりも高い周波数では定数kがk=√2である場合と同様の傾向であるものの、100[Hz]以下の周波数においても、リアクタンス成分Z-Imの測定値との間に差異がある(概ね値が高い方に差異がある)ことがわかる。定数kがk=2である場合、リアクタンス成分Z-Imの再現値は、100[Hz]よりも高い周波数では定数kがk=√2である場合と同様の傾向であるものの、100[Hz]以下の周波数においても、リアクタンス成分Z-Imの測定値との間に差異がある(概ね値が低い方に差異がある)ことがわかる。これらのことからも、回路ブロックCBLと回路ブロックCBHとにおける定数kは、k=√2が好適であることが確認できる。
【0074】
このように、バッテリ特性再現装置100では、入力されたバッテリ特性データが表すバッテリのインピーダンス特性に基づいて、
図8の(a)に示したような再現等価回路EC1を構成することによって、上述したような所定の周波数の範囲において、再現等価回路EC1を構成する対象のバッテリを実際に測定して得たインピーダンス特性と同様のインピーダンス特性を再現(計算)することができる。しかも、バッテリ特性再現装置100では、最低値抽出部102が抵抗値Rsを抽出し、低周波領域抽出部104が抵抗値Rnおよび角周波数ωnを抽出し、高周波領域抽出部106が抵抗値Rmおよび角周波数ωmを抽出し、等価回路構成部108が、抽出されたそれぞれの値を所定の回路構成に当てはめるという簡便な処理を行うのみで、再現等価回路EC1を構成することができる。これにより、バッテリ特性再現装置100によって構成された再現等価回路EC1を用いて、バッテリが通電しているときの応答や挙動などを計算することにより、バッテリの内部における種々の状態の推定を行うことができる。
【0075】
<第2実施形態>
次に、バッテリ特性再現装置100が構成した第1実施形態の再現等価回路EC1を用いて計算したインピーダンス特性において、高周波側で発生しているリアクタンス成分Z-Imの差異(
図8の(c)参照)に着目し、この差異をより低減させる再現等価回路を構成する方法の一例を、第2実施形態として説明する。
【0076】
図10は、実施形態のバッテリ特性再現装置100が構成した再現等価回路(再現等価回路EC1)におけるリアクタンス成分の特性の一例を示す図である。
図10の(a)には、リアクタンス成分Z-Imの測定値と再現値との差分(以下、「差分リアクタンス成分ΔZ-Im」という)の周波数特性を示し、
図10の(b)には、差分リアクタンス成分ΔZ-Imを角周波数ωで除算した場合(=(ΔZ-Im)/ω)の周波数特性を示している。
【0077】
図10の(a)に示したように、差分リアクタンス成分ΔZ-Imの周波数特性は、100[Hz]以上の周波数で概ね直線となっている。つまり、差分リアクタンス成分ΔZ-Imの周波数特性は、リアクタンス成分Z-Imにおいて測定値と再現値とに差異が発生している10[kHz]以上の周波数では直線の特性となっている。そして、
図10の(b)に示したように、(ΔZ-Im)/ωの周波数特性は、100[Hz]~100[kHz]の範囲の周波数において平坦に近い値となっている。ここで、差分リアクタンス成分ΔZ-Imの単位はオーム([Ω])であるため、差分リアクタンス成分ΔZ-Imを角周波数ωで除算した値(=(ΔZ-Im)/ω)の単位は、ヘンリー([H])に相当するものである。つまり、差分リアクタンス成分ΔZ-Imを角周波数ωで除算した値は、インダクタンス(以下、「インダクタンスLs」という)に相当するものである。
【0078】
ここで、差分リアクタンス成分ΔZ-Imを角周波数ωで除算した値(以下、「インダクタンスLs」という)の周波数特性の違いについて説明する。
図11は、実施形態のバッテリ特性再現装置100が構成する再現等価回路におけるリアクタンス成分(インダクタンスLs)の周波数特性の一例を示す図である。
図11には、再現等価回路を構成する回路ブロックCBLにおけるキャパシタンスCn(Cn=k/(Rnω0))およびインダクタンスLn(Ln=Rn/(kω0))と、回路ブロックCBHにおけるキャパシタンスCm(Cm=k/(Rmω0))およびインダクタンスLm(Lm=Rm/(kω0))とのそれぞれの定数kを、k=1、k=√2、k=2のいずれかに仮に変更した場合におけるインダクタンスLsの周波数特性の違いを示している。
【0079】
図11に示したように、定数kがk=√2である場合、インダクタンスLsの周波数特性は、上述したように、100[Hz]~100[kHz]の範囲の周波数において平坦に近い値となっていることがわかる。これに対して、定数kがk=1である場合や、定数kがk=2である場合には、インダクタンスLsは周波数によって変動し、周波数特性が平坦に近いとはいうことができない値となっていることがわかる。これらのことからも、回路ブロックCBLと回路ブロックCBHとにおける定数kは、k=√2が好適であることが確認できる。
【0080】
そこで、等価回路構成部108は、
図10の(b)や
図11において平坦に近いインダクタンスLsのインダクタL0を、
図8の(a)に示した再現等価回路EC1に直列に接続する(挿入する)ことにより、高周波側で発生するリアクタンス成分Z-Imの差異を低減(補正)させた再現等価回路を構成する。ここで挿入するインダクタL0のインダクタンスLsは、例えば、高周波領域抽出部106が、入力されたバッテリ特性データに基づいて高周波側のリアクタンス成分Z-Imを抽出することによって決定してもよい。インダクタL0のインダクタンスLsは、例えば、等価回路構成部108が、
図8の(a)に示したような再現等価回路EC1を一旦構成した後、この再現等価回路EC1を用いて計算したリアクタンス成分Z-Im(再現値)と入力されたバッテリ特性データが表すリアクタンス成分Z-Im(測定値)との差分の計算を行って決定してもよい。このとき、等価回路構成部108は、平坦に近い部分の値を平均化して、インダクタL0のインダクタンスLsを決定してもよい。
【0081】
図12は、実施形態のバッテリ特性再現装置100が構成した再現等価回路(第2実施形態の再現等価回路)の構成の一例とその特性を示す図である。
図12の(a)には、バッテリ特性再現装置100(より具体的には、等価回路構成部108)が構成した再現等価回路(以下、「再現等価回路EC2」という)の一例を示している。
図12の(b)は、インピーダンス特性に含まれるインピーダンス|z|(絶対値)と、位相とをボード線図で示したものである。
図12の(c)は、
図12の(b)に示したインピーダンス|z|と同じデータを、抵抗成分Z-Re(実数部)と、リアクタンス成分Z-Im(虚数部)とに分けて示した周波数特性である。
図12の(b)および
図12の(c)にも、
図8の(b)および
図8の(c)と同様に、比較のために、インピーダンス特性の測定値と再現値(計算値)とを併せて示している。
図12の(b)および
図12の(c)における測定値の特性のそれぞれは、
図8の(b)および
図8の(c)と同様に、
図2に示した特性と同じものである。
【0082】
図12の(a)に示した再現等価回路EC2は、
図8の(a)に示した第1実施形態の再現等価回路EC1における回路ブロックCBHmの後に、インダクタL0が直列接続されている。再現等価回路EC2でも、抵抗R0と、複数の回路ブロックCBLと、複数の回路ブロックCBHと、インダクタL0とが直列に接続された構成であるため、それぞれの構成要素が接続される順番は、再現するバッテリのインピーダンス特性には影響しない。
【0083】
再現等価回路EC2を用いて計算したインピーダンス特性を
図12の(b)に示したボード線図で比較すると、インピーダンス|z|は、全ての周波数で測定値と再現値とが概ね一致しており、位相は、0.1[Hz]以上の周波数で測定値と再現値とが概ね一致していることがわかる。一方、再現等価回路EC2を用いて計算したインピーダンス特性を
図12の(c)に示した周波数特性で比較すると、抵抗成分Z-Reとリアクタンス成分Z-Imとの両方が、全ての周波数で測定値と再現値とが概ね一致していることがわかる。
【0084】
このように、バッテリ特性再現装置100では、高周波側で発生しているリアクタンス成分Z-Imの測定値と再現値(計算値)との差異に基づいて、
図12の(a)に示したような再現等価回路EC2を構成することによって、上述したようなほぼ全ての周波数の範囲において、再現等価回路EC2を構成する対象のバッテリを実際に測定して得たインピーダンス特性と同様のインピーダンス特性を再現(計算)することができる。しかも、バッテリ特性再現装置100では、リアクタンス成分Z-Imの測定値と再現値(計算値)との差異に基づくインダクタンスLsのインダクタL0を直列に接続する(挿入する)という簡便な処理を行うのみで、再現等価回路EC2を構成することができる。これにより、バッテリ特性再現装置100によって構成された再現等価回路EC2を用いて、バッテリが通電しているときの応答や挙動などを計算することにより、バッテリの内部における種々の状態の推定をより高精度に行うことができる。
【0085】
ここで、構成が異なるバッテリのバッテリ特性データが入力された場合においてバッテリ特性再現装置100が再現等価回路EC2を構成した場合の一例について説明する。
図13は、実施形態のバッテリ特性再現装置100が構成した再現等価回路(再現等価回路EC2)のインピーダンス特性の一例を示す図である。
図13に示した一例は、バッテリ特性再現装置100が、構成がそれぞれ異なる四種類のバッテリに対応する再現等価回路EC2を構成した場合におけるインピーダンス特性に含まれるインピーダンス|z|(絶対値)と、位相とをボード線図で示したものである。
図13の(a)に示したインピーダンス特性は、例えば、角型のバッテリのボード線図である。
図13の(b)に示したインピーダンス特性は、例えば、角型のバッテリを複数接続してモジュール(組電池)とした構成のバッテリのボード線図である。
図13の(c)に示したインピーダンス特性は、例えば、特定用途向けのバッテリのボード線図である。
図13の(d)に示したインピーダンス特性は、例えば、特定用途向けのバッテリを複数接続してモジュールとした構成のバッテリのボード線図である。
【0086】
図13の(a)~
図13の(d)に示したボード線図のそれぞれを見てわかるように、バッテリ特性再現装置100が構成した再現等価回路EC2では、バッテリの構成に関わらずに、インピーダンス|z|(絶対値)および位相における測定値と再現値とが、1[Hz]以上の周波数で概ね一致していることがわかる。つまり、バッテリ特性再現装置100では、バッテリの構成に関わらずに、入力されたバッテリ特性データが表すインピーダンス特性を精度よく再現することができることがわかる。ところで、
図13の(b)や
図13の(d)に示したモジュールとしたバッテリでは、例えば、バスバーなどのバッテリの接続部品によってバッテリ同士を接続していることも考えられる。このことから、バッテリ特性再現装置100では、バスバーなどのようなバッテリの接続部品の特性も含めた全体のインピーダンス特性を再現する再現等価回路EC2を構成していることもわかる。
【0087】
<第3実施形態>
次に、バッテリ特性再現装置100が構成した第1実施形態の再現等価回路EC1を用いて計算したインピーダンス特性をより詳細に見た場合において、低周波側で発生しているリアクタンス成分Z-Imの差異に着目し、この差異をより低減させる再現等価回路を構成する方法の一例を、第3実施形態として説明する。
【0088】
図14は、実施形態のバッテリ特性再現装置100が構成した再現等価回路(再現等価回路EC1)のインピーダンス特性の一致度合いの一例を示す図である。
図14の(a)は、測定したインピーダンス特性が表すインピーダンス|z|(絶対値)の測定値と、再現等価回路EC1を用いて計算(シミュレーション)したインピーダンス特性が表すインピーダンス|z|(絶対値)の再現値(計算値)とのそれぞれを、抵抗成分Z-Re(実数部)と、リアクタンス成分Z-Im(虚数部)とに分けて示した周波数特性である。
図14の(a)は、
図8の(c)に示した周波数特性における低周波側(10[kHz」までの範囲)を拡大したものである。
図14の(b)は、
図14の(a)に示した周波数特性をナイキストプロットで表したものである。
【0089】
図14の(a)に示した周波数特性を見てわかるように、抵抗成分Z-Reは全ての周波数で測定値と再現値とが概ね一致しているものの、リアクタンス成分Z-Imは、0.2[Hz]程度よりも低い周波数において測定値と再現値との間に差異がある。これを、
図14の(b)に示したナイキストプロットで見てみると、測定値には、リアクタンス成分Z-Imが0[Ω]である所から周波数が下がっていく(低周波側に移動していく)につれて、ナイキストプロット上で右斜め上方向に直線状に延びる特性を確認することができる。この特性は、ワールブルグ抵抗特性として一般的に知られているものである。
図14の(b)に示したナイキストプロットにおける再現値では、このワールブルグ抵抗特性の部分に差異が発生していることがわかる。ここで、
図14の(b)に示したナイキストプロットにおいて、高周波側の測定値と再現値との差異は、上述した第2実施形態の再現等価回路EC2によって低減させることができると考えられる。
【0090】
そこで、リアクタンス成分Z-Imにおける測定値と再現値との関係を確認すると、
図15に示すような特性があることがわかる。
図15は、実施形態のバッテリ特性再現装置100が構成した再現等価回路(再現等価回路EC1)におけるリアクタンス成分の特性の一例を示す図である。
図15の(a)には、リアクタンス成分Z-Imの測定値と再現値との差分(差分リアクタンス成分ΔZ-Im)の周波数特性を示し、
図15の(b)には、差分リアクタンス成分ΔZ-Imに角周波数ωを乗算して逆数をとった場合(=1/{(ΔZ-Im)*ω})の周波数特性を示している。
【0091】
図15の(a)に示したように、差分リアクタンス成分ΔZ-Imの周波数特性は、周波数が下がっていくにつれて大きくなる特性である。つまり、差分リアクタンス成分ΔZ-Imの周波数特性は、周波数が下がっていくにつれてリアクタンス成分Z-Imの測定値と再現値との差異が大きくなる特性となっている。そして、
図15の(b)に示したように、1/{(ΔZ-Im)*ω}の周波数特性は、概ね0.1[Hz]よりも低周波側の周波数において平坦に近い値となっている。ここで、差分リアクタンス成分ΔZ-Imの単位はオーム([Ω])であるため、差分リアクタンス成分ΔZ-Imに角周波数ωを乗算して逆数をとった値(=1/{(ΔZ-Im)*ω})の単位は、ファラド([F])に相当するものである。つまり、差分リアクタンス成分ΔZ-Imに角周波数ωを乗算して逆数をとった値は、キャパシタンス(以下、「キャパシタンスCs」という)に相当するものである。
【0092】
そこで、等価回路構成部108は、
図15の(b)において平坦に近いキャパシタンスCsのコンデンサC0を、
図8の(a)に示した再現等価回路EC1に直列に接続する(挿入する)ことにより、低周波側で発生するリアクタンス成分Z-Imの差異を低減(補正)させた再現等価回路を構成する。ここで挿入するコンデンサC0のキャパシタンスCsは、例えば、低周波領域抽出部104が、入力されたバッテリ特性データに基づいて低周波側のリアクタンス成分Z-Imを抽出することによって決定してもよい。コンデンサC0のキャパシタンスCsは、例えば、等価回路構成部108が、
図8の(a)に示したような再現等価回路EC1を一旦構成した後、この再現等価回路EC1を用いて計算したリアクタンス成分Z-Im(再現値)と入力されたバッテリ特性データが表すリアクタンス成分Z-Im(測定値)との差分の計算を行って決定してもよい。このとき、等価回路構成部108は、平坦に近い部分の値を平均化して、コンデンサC0のキャパシタンスCsを決定してもよい。
【0093】
図16は、実施形態のバッテリ特性再現装置100が構成した再現等価回路(第3実施形態の再現等価回路)の構成の一例とその特性を示す図である。
図16の(a)には、バッテリ特性再現装置100(より具体的には、等価回路構成部108)が構成した再現等価回路(以下、「再現等価回路EC3」という)の一例を示している。
図16の(b)は、インピーダンス特性に含まれるインピーダンス|z|(絶対値)を、抵抗成分Z-Re(実数部)と、リアクタンス成分Z-Im(虚数部)とに分けて示した周波数特性である。
図16の(c)は、
図16の(b)に示した周波数特性をナイキストプロットで表したものである。
図16の(b)および
図16の(c)にも、
図8の(b)および
図8の(c)と同様に、比較のために、インピーダンス特性の測定値と再現値(計算値)とを併せて示している。
図16の(b)および
図16の(c)における測定値の特性のそれぞれは、
図8の(b)および
図8の(c)と同様に、
図2に示した特性と同じものである。
【0094】
図16の(a)に示した再現等価回路EC3は、
図8の(a)に示した第1実施形態の再現等価回路EC1における回路ブロックCBL1の前に、コンデンサC0が直列接続されている。再現等価回路EC3でも、抵抗R0と、複数の回路ブロックCBLと、複数の回路ブロックCBHと、コンデンサC0とが直列に接続された構成であるため、それぞれの構成要素が接続される順番は、再現するバッテリのインピーダンス特性には影響しない。
【0095】
再現等価回路EC3を用いて計算したインピーダンス特性を
図16の(b)に示した周波数特性で比較すると、抵抗成分Z-Reとリアクタンス成分Z-Imとが、低周波側の周波数で測定値と再現値とが概ね一致していることがわかる。一方、再現等価回路EC3を用いて計算したインピーダンス特性を
図16の(c)に示したナイキストプロットで比較すると、低周波側において測定値と再現値との間の差異、つまり、ワールブルグ抵抗特性の部分に発生していた差異が少なくなり、概ね一致していることがわかる。
図16の(c)に示したナイキストプロットにおける高周波側における測定値と再現値との差異は、上述したように、第2実施形態の再現等価回路EC2と同様の再現等価回路を構成することによって概ね一致させることができると考えられる。
【0096】
このように、バッテリ特性再現装置100では、低周波側で発生しているリアクタンス成分Z-Imの測定値と再現値(計算値)との差異(ワールブルグ抵抗特性の部分の差異)に基づいて、
図16の(a)に示したような再現等価回路EC3を構成することによって、上述したように、低周波側の周波数(ワールブルグ抵抗特性が現れる周波数)の範囲において、再現等価回路EC3を構成する対象のバッテリを実際に測定して得たインピーダンス特性と同様のインピーダンス特性を再現(計算)することができる。しかも、バッテリ特性再現装置100では、リアクタンス成分Z-Imの測定値と再現値(計算値)との差異に基づくキャパシタンスCsのコンデンサC0を直列に接続する(挿入する)という簡便な処理を行うのみで、再現等価回路EC3を構成することができる。これにより、バッテリ特性再現装置100によって構成された再現等価回路EC3を用いて、バッテリが通電しているときの応答や挙動などを計算することにより、バッテリの内部における種々の状態の推定をより高精度に行うことができる。
【0097】
<第4実施形態>
次に、バッテリ特性再現装置100が構成した第1実施形態の再現等価回路EC1を用いて計算したインピーダンス特性において、第2実施形態における高周波側で発生するリアクタンス成分Z-Imの差異の低減(補正)と、第3実施形態における低周波側で発生するリアクタンス成分Z-Imの差異の低減(補正)との両方を含めた再現等価回路を構成する方法の一例を、第4実施形態として説明する。
【0098】
図17は、実施形態のバッテリ特性再現装置100が構成した再現等価回路(第4実施形態の再現等価回路)の構成の一例とその特性を示す図である。
図17の(a)には、バッテリ特性再現装置100(より具体的には、等価回路構成部108)が構成した再現等価回路(以下、「再現等価回路EC4」という)の一例を示している。
図17の(b)は、インピーダンス特性に含まれるインピーダンス|z|(絶対値)と、位相とをボード線図で示したものである。
図17の(c)は、
図17の(b)に示したインピーダンス|z|と同じデータを、抵抗成分Z-Re(実数部)と、リアクタンス成分Z-Im(虚数部)とに分けて示した周波数特性である。
図17の(b)および
図17の(c)にも、
図8の(b)および
図8の(c)と同様に、比較のために、インピーダンス特性の測定値と再現値(計算値)とを併せて示している。
図17の(b)および
図17の(c)における測定値の特性のそれぞれは、
図8の(b)および
図8の(c)と同様に、
図2に示した特性と同じものである。
【0099】
図17の(a)に示した再現等価回路EC4は、第2実施形態の再現等価回路EC2と同様に、
図8の(a)に示した第1実施形態の再現等価回路EC1における回路ブロックCBHmの後にインダクタL0が直列接続され、第3実施形態の再現等価回路EC3と同様に、
図8の(a)に示した第1実施形態の再現等価回路EC1における回路ブロックCBL1の前にコンデンサC0が直列接続されている。再現等価回路EC4でも、抵抗R0と、複数の回路ブロックCBLと、複数の回路ブロックCBHと、インダクタL0と、コンデンサC0とが直列に接続された構成であるため、それぞれの構成要素が接続される順番は、再現するバッテリのインピーダンス特性には影響しない。
【0100】
再現等価回路EC4を用いて計算したインピーダンス特性を
図17の(b)に示したボード線図で比較すると、インピーダンス|z|と位相とが、全ての周波数で測定値と再現値とが概ね一致していることがわかる。一方、再現等価回路EC4を用いて計算したインピーダンス特性を
図17の(c)に示した周波数特性で比較すると、抵抗成分Z-Reとリアクタンス成分Z-Imとが、全ての周波数で測定値と再現値とが概ね一致していることがわかる。
【0101】
ここで、再現等価回路EC4を用いて計算したインピーダンス特性における低周波側の一致度合いについて説明する。
図18は、実施形態のバッテリ特性再現装置100が構成した再現等価回路(再現等価回路EC4)のインピーダンス特性の一致度合いの一例を示す図である。
図18の(a)は、測定したインピーダンス特性が表すインピーダンス|z|(絶対値)の測定値と、再現等価回路EC4を用いて計算(シミュレーション)したインピーダンス特性が表すインピーダンス|z|(絶対値)の再現値(計算値)とのそれぞれを、抵抗成分Z-Re(実数部)と、リアクタンス成分Z-Im(虚数部)とに分けて示した周波数特性である。
図18の(a)は、
図14の(a)を用いて説明した第3実施形態と同様に、
図17の(c)に示した周波数特性における低周波側(10[kHz」までの範囲)を拡大したものである。
図18の(b)は、
図18の(a)に示した周波数特性をナイキストプロットで表したものである。
【0102】
図18の(a)に示した周波数特性を見てわかるように、抵抗成分Z-Reとリアクタンス成分Z-Imとは、全ての周波数で測定値と再現値とが概ね一致していることがわかる。さらに、
図18の(b)に示したナイキストプロットで見てみても、測定値と再現値とは、ワールブルグ抵抗特性の部分を含めて、全ての周波数で概ね一致していることがわかる。
【0103】
このように、バッテリ特性再現装置100では、高周波側および低周波側で発生しているリアクタンス成分Z-Imの測定値と再現値(計算値)との差異に基づいて、
図17の(a)に示したような再現等価回路EC4を構成することによって、上述したようなほぼ全ての周波数の範囲において、再現等価回路EC4を構成する対象のバッテリを実際に測定して得たインピーダンス特性と同様のインピーダンス特性を再現(計算)することができる。しかも、バッテリ特性再現装置100では、第2実施形態の再現等価回路EC2や第3実施形態の再現等価回路EC3と同様に、リアクタンス成分Z-Imの測定値と再現値(計算値)との差異に基づくインダクタンスLsのインダクタL0と、キャパシタンスCsのコンデンサC0とを直列に接続する(挿入する)という簡便な処理を行うのみで、より広い周波数の範囲で再現性の高い再現等価回路EC4を構成することができる。これにより、バッテリ特性再現装置100によって構成された再現等価回路EC4を用いて、バッテリが通電しているときの応答や挙動などを計算することにより、バッテリの内部における種々の状態の推定をさらに高精度に行うことができる。
【0104】
ここで、構成が異なるバッテリのバッテリ特性データが入力された場合においてバッテリ特性再現装置100が再現等価回路EC4を構成した場合の一例について説明する。
図19は、実施形態のバッテリ特性再現装置100が構成した再現等価回路(再現等価回路EC4)のインピーダンス特性の一例を示す図である。
図19に示した一例は、バッテリ特性再現装置100が、構成がそれぞれ異なる二種類のバッテリに対応する再現等価回路EC4を構成した場合におけるインピーダンス特性に含まれるインピーダンス|z|(絶対値)を抵抗成分Z-Re(実数部)とリアクタンス成分Z-Im(虚数部)とに分けた周波数特性をナイキストプロットで表したものである。
図19の(a)に示したインピーダンス特性は、例えば、フィルムによってバッテリのセルをラミネートしたパウチ型のバッテリのナイキストプロットである。
図19の(b)に示したインピーダンス特性は、例えば、角型のバッテリのナイキストプロットである。
【0105】
図19の(a)および
図19の(b)に示したナイキストプロットのそれぞれを見てわかるように、バッテリ特性再現装置100が構成した再現等価回路EC4では、バッテリの構成に関わらずに、ワールブルグ抵抗特性の部分を含めた全ての周波数で測定値と再現値とが概ね一致していることがわかる。つまり、バッテリ特性再現装置100では、バッテリの構成に関わらずに、入力されたバッテリ特性データが表すインピーダンス特性を精度よく再現することができることがわかる。
【0106】
[再現等価回路の詳細な構成]
次に、再現等価回路EC4のより詳細な構成について説明する。
図20は、実施形態のバッテリ特性再現装置100が構成した再現等価回路(再現等価回路EC4)のより詳細な構成の一例を示す図である。
図20に示した再現等価回路EC4(以下、「再現等価回路EC4A」という)は、コンデンサC0と、五十三個の回路ブロックCBL(回路ブロックCBL1~CBL53)と、抵抗R0と、二十二個の回路ブロックCBH(回路ブロックCBH54~CBH75)と、インダクタL0とが、この順番で直列接続されている。
【0107】
上述したように、
図20に示した再現等価回路EC4Aにおいて、抵抗R0は、極小測定点の抵抗値Rsに対応するものとして設けた等価回路であり、それぞれの回路ブロックCBLは、極小測定点よりも低周波側に存在するそれぞれの測定点に対応するものとして設けた等価回路であり、それぞれの回路ブロックCBHは、極小測定点よりも高周波側に存在するそれぞれの測定点に対応するものとして設けた等価回路である。このように、バッテリ特性再現装置100では、少なくとも、それぞれの測定点に対応する等価回路を設ける。さらに、
図20に示した再現等価回路EC4Aにおいて、コンデンサC0は、低周波側のインピーダンス特性を補正するものとして設けた等価回路であり、インダクタL0は、高周波側のインピーダンス特性を補正するものとして設けた等価回路である。このように、バッテリ特性再現装置100では、低周波側および高周波側のいずれか一方あるいは両方のインピーダンス特性を補正するための等価回路を設ける。再現等価回路EC4Aでも、抵抗R0と、五十三個の回路ブロックCBLと、二十二個の回路ブロックCBHと、インダクタL0と、コンデンサC0とが直列に接続された構成であるため、それぞれの構成要素が接続される順番は、再現するバッテリのインピーダンス特性には影響しない。
【0108】
[バッテリ特性再現装置の処理の一例]
ここで、バッテリ特性再現装置100において再現等価回路を構成する処理の一例について説明する。
図21は、実施形態のバッテリ特性再現装置100において再現等価回路ECを構成する際に実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。以下の説明においては、バッテリ特性再現装置100において、再現等価回路EC4Aを構成する場合について説明する。
【0109】
バッテリ特性再現装置100にバッテリ特性データが入力されると、最低値抽出部102は、極小測定点を抽出し、抽出した極小測定点の抵抗値(極小の抵抗値)を抵抗Raとして取得する(ステップS100)。最低値抽出部102は、取得した抵抗値Rsと、抽出した極小測定点の角周波数ω0とを等価回路構成部108に出力する。これにより、等価回路構成部108は、最低値抽出部102により出力された抵抗値Rsに対応する抵抗R0を設ける(ステップS110)。
【0110】
低周波領域抽出部104は、極小測定点よりも低周波側で隣接する二つの測定点のそれぞれの抵抗値を取得し、取得した二つの抵抗値の差分(抵抗値Rn)を算出する(ステップS200)。さらに、低周波領域抽出部104は、抵抗値Rnに対応する角周波数ωnを算出する(ステップS210)。低周波領域抽出部104は、算出した抵抗値Rnと角周波数ωnとを等価回路構成部108に出力する。これにより、等価回路構成部108は、低周波領域抽出部104により出力された抵抗値Rnおよび角周波数ωnに対応する回路ブロックCBLを設ける(ステップS220)。そして、低周波領域抽出部104は、極小測定点よりも低周波側に存在する全ての測定点に対応する抵抗値Rnと角周波数ωnとの算出が完了したか否かを判定する(ステップS230)。ステップS230において、極小測定点よりも低周波側に存在する全ての測定点に対応する抵抗値Rnと角周波数ωnとの算出が完了していないと判定した場合、低周波領域抽出部104は処理をステップS200に戻す。
【0111】
一方、ステップS230において、極小測定点よりも低周波側に存在する全ての測定点に対応する抵抗値Rnと角周波数ωnとの算出が完了したと判定した場合、高周波領域抽出部106は、極小測定点よりも高周波側で隣接する二つの測定点のそれぞれの抵抗値を取得し、取得した二つの抵抗値の差分(抵抗値Rm)を算出する(ステップS300)。さらに、高周波領域抽出部106は、抵抗値Rmに対応する角周波数ωmを算出する(ステップS310)。高周波領域抽出部106は、算出した抵抗値Rmと角周波数ωmとを等価回路構成部108に出力する。これにより、等価回路構成部108は、高周波領域抽出部106により出力された抵抗値Rmおよび角周波数ωmに対応する回路ブロックCBHを設ける(ステップS320)。そして、高周波領域抽出部106は、極小測定点よりも高周波側に存在する全ての測定点に対応する抵抗値Rmと角周波数ωmとの算出が完了したか否かを判定する(ステップS330)。ステップS330において、極小測定点よりも高周波側に存在する全ての測定点に対応する抵抗値Rmと角周波数ωmとの算出が完了していないと判定した場合、高周波領域抽出部106は処理をステップS300に戻す。
【0112】
一方、ステップS330において、極小測定点よりも高周波側に存在する全ての測定点に対応する抵抗値Rmと角周波数ωmとの算出が完了していないと判定した場合、高周波領域抽出部106(等価回路構成部108であってもよい)は、インダクタンスLsを決定する(ステップS400)。そして、等価回路構成部108は、決定したインダクタンスLsに対応するインダクタL0を設ける(ステップS410)。
【0113】
低周波領域抽出部104(等価回路構成部108であってもよい)は、キャパシタンスCsを決定する(ステップS500)。そして、等価回路構成部108は、決定したキャパシタンスCsに対応するコンデンサC0を設ける(ステップS510)。
【0114】
その後、等価回路構成部108は、設けたそれぞれの構成要素を直列に接続して再現等価回路EC4Aを構成する(ステップS600)。そして、バッテリ特性再現装置100は、再現等価回路EC4Aを構成する本フローチャートの処理を終了する。
【0115】
このような処理によって、バッテリ特性再現装置100は、再現等価回路EC4Aを構成する。
図21に示したフローチャートでは、最低値抽出部102、低周波領域抽出部104、および高周波領域抽出部106が、順次処理を行うものとして説明した。しかし、バッテリ特性再現装置100では、最低値抽出部102が極小測定点を抽出する処理(ステップS100の処理)が終了した後であれば、低周波領域抽出部104と高周波領域抽出部106とのそれぞれ(等価回路構成部108を含んでもよい)は、自身が実行する処理を同時に開始してもよい。つまり、バッテリ特性再現装置100では、低周波領域抽出部104(および等価回路構成部108)におけるステップS200~ステップS230の処理と、高周波領域抽出部106(および等価回路構成部108)におけるステップS300~ステップS330の処理とを同時に実行してもよい。さらに、バッテリ特性再現装置100では、低周波領域抽出部104、高周波領域抽出部106、および等価回路構成部108のそれぞれが、ステップS400~ステップS600の処理における対応する処理を同時に実行してもよい。
【0116】
これにより、バッテリ特性再現装置100によって構成された再現等価回路EC4Aを用いて、バッテリが通電しているときの応答や挙動などを計算することにより、バッテリの内部における種々の状態の推定をさらに高精度に行うことができる。ここで、再現等価回路EC4Aを用いてバッテリの応答を計算した場合の一例について説明する。
図22は、実施形態のバッテリ特性再現装置100が構成した再現等価回路(再現等価回路EC4A)を用いてバッテリの応答を計算した場合の一例を示す図である。
図22は、所定の電圧波形をバッテリに与えた場合における電流の応答を計算した場合の一例である。
図22の(a)には、再現等価回路EC4Aに与える(入力する)電圧波形の一例を示し、
図22の(b)には、入力された
図22の(a)の電圧波形に応じて再現等価回路EC4Aによって計算される電流の応答(電流波形)の一例を示している。
図22の(b)では、電流波形に、オーバーシュートやアンダーシュートなどの非線形の特性が現れることを推定することができる。このように、バッテリ特性再現装置100が構成した再現等価回路EC4Aを用いることによって、バッテリの応答の推定を高精度に行うことができる。
【0117】
上記に述べたとおり、実施形態のバッテリ特性再現装置100によれば、例えば、最低値抽出部102と、低周波領域抽出部104と、高周波領域抽出部106と、等価回路構成部108と、を備える。そして、実施形態のバッテリ特性再現装置100では、最低値抽出部102が、入力されたバッテリ特性データに基づいて、極小測定点を抽出して、再現するインピーダンス特性において中心となる抵抗値Rsと、抽出した極小測定点を表す情報(例えば、角周波数ω0)を等価回路構成部108に出力する。さらに、実施形態のバッテリ特性再現装置100では、低周波領域抽出部104が、入力されたバッテリ特性データに基づいて、極小測定点よりも低周波側に存在する隣接する二つの測定点の抵抗値の差分(抵抗値Rn)と、対応する角周波数ωnとをそれぞれの測定点ごとに算出して、等価回路構成部108に出力する。さらに、実施形態のバッテリ特性再現装置100では、高周波領域抽出部106が、入力されたバッテリ特性データに基づいて、極小測定点よりも高周波側に存在する隣接する二つの測定点の抵抗値の差分(抵抗値Rm)と、対応する角周波数ωmとをそれぞれの測定点ごとに算出して、等価回路構成部108に出力する。そして、実施形態のバッテリ特性再現装置100では、等価回路構成部108が、最低値抽出部102により出力された抵抗値Rsと、低周波領域抽出部104により出力された抵抗値Rnおよび角周波数ωnと、高周波領域抽出部106により出力された抵抗値Rmおよび角周波数ωmとに基づいた複数の構成要素(等価回路)を直列に接続して、再現等価回路を構成する。さらに、実施形態のバッテリ特性再現装置100では、高周波領域抽出部106(等価回路構成部108であってもよい)が、高周波側で発生するリアクタンス成分Z-Imの差異を低減(補正)するためのインダクタンスLsを決定し、低周波領域抽出部104(等価回路構成部108であってもよい)が、低周波側で発生するリアクタンス成分Z-Imの差異を低減(補正)するためのキャパシタンスCsを決定する。そして、実施形態のバッテリ特性再現装置100では、等価回路構成部108が、決定したインダクタンスLsおよび/またはキャパシタンスCsに基づいた構成要素(等価回路)を直列に接続して、再現等価回路を構成する。このように、実施形態のバッテリ特性再現装置100では、入力されたバッテリ特性データが表すバッテリのインピーダンス特性を精度よく再現するための再現等価回路を、簡便な処理を行うのみで構成することができる。これにより、実施形態のバッテリ特性再現装置100によって構成された再現等価回路の所定のパラメータを設定することによって、バッテリが通電しているときの応答や挙動などを計算することができる。このことにより、実施形態のバッテリ特性再現装置100によって構成された再現等価回路を用いて、バッテリの内部における種々の状態の推定を高精度に行うことができる。例えば、バッテリが電気自動車などの車両に搭載されたものである場合、実施形態のバッテリ特性再現装置100によって構成された再現等価回路に電動モータを駆動する際の通電パターンを表すパラメータを設定することによって、バッテリの電圧の上限値や下限値を超えないような好適な通電パターンを導き出すことが可能となる。
【0118】
以上説明した実施形態のバッテリ特性再現装置100によれば、測定されたバッテリのインピーダンスの周波数特性に含まれる最低の抵抗値Rsを抽出する最低値抽出部102と、周波数特性に含まれるそれぞれの周波数の測定点ごとに、当該測定点において測定された抵抗値と、隣接する測定点において測定された抵抗値との差分を抽出する差分抽出部(低周波領域抽出部104および高周波領域抽出部106)と、最低値抽出部102が抽出した最低の抵抗値Rsを第1の抵抗成分(抵抗R0)として構成し、差分抽出部が抽出した抵抗値の差分を第2の抵抗成分(抵抗R)として含むバッテリの等価回路(回路ブロックCBLおよび回路ブロックCBH)をそれぞれの測定点ごとに構成し、抵抗R0とそれぞれの測定点ごとの等価回路とを直列に接続することによって、バッテリにおけるインピーダンスの周波数特性を再現する等価回路構成部108と、を備えることにより、測定したバッテリのインピーダンス特性に基づいてバッテリの特性を再現させる再現等価回路を構成することができる。これらのことから、実施形態のバッテリ特性再現装置100が構成した再現等価回路を用いて、バッテリにおいて、エネルギー効率の改善を図り、地球環境上の悪影響を軽減させることへの貢献が期待される。
【0119】
上記説明した実施形態は、以下のように表現することができる。
ハードウェアプロセッサと、
プログラムを記憶した記憶装置と、を備え、
前記ハードウェアプロセッサが前記記憶装置に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、
測定されたバッテリのインピーダンスの周波数特性に含まれる最低の抵抗値を抽出し、
前記周波数特性に含まれるそれぞれの周波数の測定点ごとに、当該測定点において測定された抵抗値と、隣接する測定点において測定された抵抗値との差分を抽出し、
前記抽出した前記最低の抵抗値を第1の抵抗成分として構成し、前記抽出した前記抵抗値の差分を第2の抵抗成分として含む前記バッテリの等価回路をそれぞれの前記測定点ごとに構成し、第1の抵抗成分とそれぞれの前記測定点ごとの前記等価回路とを直列に接続することによって、前記バッテリにおけるインピーダンスの周波数特性を再現する、
ように構成されている、バッテリ特性再現装置。
【0120】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形および置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0121】
100・・・バッテリ特性再現装置
102・・・最低値抽出部
104・・・低周波領域抽出部
106・・・高周波領域抽出部
108・・・等価回路構成部
CBL・・・回路ブロック
CBH・・・回路ブロック
R・・・抵抗
L・・・インダクタ
C・・・コンデンサ