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特開2023-179165電流検出回路、過電流保護回路、リニア電源
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179165
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】電流検出回路、過電流保護回路、リニア電源
(51)【国際特許分類】
   H02M 1/00 20070101AFI20231212BHJP
   G05F 1/56 20060101ALI20231212BHJP
   G01R 19/00 20060101ALI20231212BHJP
   H03K 17/08 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
H02M1/00 H
G05F1/56 320C
G01R19/00 B
H03K17/08 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092295
(22)【出願日】2022-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安坂 信
【テーマコード(参考)】
2G035
5H430
5H740
5J055
【Fターム(参考)】
2G035AB02
2G035AD03
2G035AD10
2G035AD11
2G035AD23
2G035AD56
5H430BB01
5H430BB09
5H430BB12
5H430EE04
5H430FF08
5H430FF13
5H430HH01
5H430LA07
5H740AA08
5H740BC01
5H740BC02
5H740JA01
5H740JB01
5H740KK01
5H740MM12
5J055AX03
5J055AX08
5J055BX16
5J055CX07
5J055DX14
5J055EX05
5J055EY01
5J055EY21
5J055EZ03
5J055EZ10
(57)【要約】
【課題】検出精度の高い電流検出回路を提供する。
【解決手段】電流検出回路11は、監視対象電流Ioutに応じたセンス電流Isを流すように構成された第1トランジスタM1と、センス電流Isが流れる経路上に設けられており、その両端間電圧が電流検出信号Vsとして引き出されるように構成された第2トランジスタM2と、制御端が第2トランジスタM2の制御端に接続されており、第2トランジスタM2よりも高いオン閾値電圧Vth[M3]を持ち、第2トランジスタM2を線形領域で駆動するように構成された第3トランジスタM3と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視対象電流に応じたセンス電流を流すように構成された第1トランジスタと、
前記センス電流が流れる経路上に設けられており、その両端間電圧が電流検出信号として引き出されるように構成された第2トランジスタと、
制御端が前記第2トランジスタの制御端に接続されており、前記第2トランジスタよりも高いオン閾値電圧を持ち、前記第2トランジスタを線形領域で駆動するように構成された第3トランジスタと、
を備える、電流検出回路。
【請求項2】
前記第2トランジスタ及び前記第3トランジスタは、いずれも同一構造のMOSFETであって、それぞれのゲート電極の極性が異なる、請求項1に記載の電流検出回路。
【請求項3】
前記第2トランジスタは、P型ポリシリコンで形成されたゲート電極を持つPMOSFETであり、前記第3トランジスタは、N型ポリシリコンで形成されたゲート電極を持つPMOSFETである、請求項2に記載の電流検出回路。
【請求項4】
前記第2トランジスタは、N型ポリシリコンで形成されたゲート電極を持つNMOSFETであり、前記第3トランジスタは、P型ポリシリコンで形成されたゲート電極を持つNMOSFETである、請求項2に記載の電流検出回路。
【請求項5】
前記第2トランジスタは、デプレッション型NMOSFETであり、前記第3トランジスタは、エンハンスメント型NMOSFETである、請求項1に記載の電流検出回路。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の電流検出回路と、
前記電流検出信号に基づいて前記監視対象電流を上限値以下に制限するための過電流保護信号を生成するように構成された保護信号生成回路と、
を備える、過電流保護回路。
【請求項7】
前記保護信号生成回路は、前記電流検出信号と検出閾値との差分に応じて前記過電流保護信号を生成するように構成されたアンプを含む、請求項6に記載の過電流保護回路。
【請求項8】
前記保護信号生成回路は、ゲート・ソース間に印加される前記電流検出信号に応じて前記過電流保護信号を生成するように構成されたトランジスタを含む、請求項6に記載の過電流保護回路。
【請求項9】
入力電圧の印加端と出力電圧の印加端との間に接続されるように構成された出力トランジスタと、
前記出力電圧又はこれに応じた帰還電圧が基準電圧と一致するように前記出力トランジスタを駆動するように構成されたドライバと、
前記出力トランジスタに流れる出力電流を前記監視対象電流とする請求項6に記載の過電流保護回路と、
を備える、リニア電源。
【請求項10】
前記過電流保護回路は、前記入力電圧の印加端と前記出力電圧の印加端との間に接続されている、請求項9に記載のリニア電源。
【請求項11】
前記過電流保護回路は、前記入力電圧の印加端と接地端との間に接続されている、請求項9に記載のリニア電源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電流検出回路及びこれを用いた過電流保護回路並びにリニア電源に関する。
【背景技術】
【0002】
監視対象電流を検出する電流検出回路は、様々な用途(例えば出力トランジスタに流れる出力電流を所定の上限値以下に制限する過電流保護回路)として利用されている。
【0003】
なお、上記に関連する従来技術の一例としては、特許文献1を挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-115646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の電流検出回路は、その検出精度について改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
例えば、本明細書中に開示されている電流検出回路は、監視対象電流に応じたセンス電流を流すように構成された第1トランジスタと、前記センス電流が流れる経路上に設けられており、その両端間電圧が電流検出信号として引き出されるように構成された第2トランジスタと、制御端が前記第2トランジスタの制御端に接続されており、前記第2トランジスタよりも高いオン閾値電圧を持ち、前記第2トランジスタを線形領域で駆動するように構成された第3トランジスタと、を備える。
【0007】
なお、その他の特徴、要素、ステップ、利点、及び、特性については、以下に続く発明を実施するための形態及びこれに関する添付の図面によって、さらに明らかとなる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、検出精度の高い電流検出回路及びこれを用いた過電流保護回路並びにリニア電源を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、リニア電源の比較例を示す図である。
図2図2は、リニア電源の第1実施形態を示す図である。
図3図3は、MOSFETのRon-Vgs特性を示す図である。
図4図4は、MOSFETのRon-Vthばらつき特性を示す図である。
図5図5は、MOSFETのVds-Id特性を示す図である。
図6図6は、比較例における過電流上限値のばらつきを示す図である。
図7図7は、第1実施形態における過電流上限値のばらつきを示す図である。
図8図8は、リニア電源の第2実施形態を示す図である。
図9図9は、リニア電源の第3実施形態を示す図である。
図10図10は、リニア電源の第4実施形態を示す図である。
図11図11は、リニア電源の第5実施形態を示す図である。
図12図12は、リニア電源の第6実施形態を示す図である。
図13図13は、リニア電源の第7実施形態を示す図である。
図14図14は、リニア電源の第8実施形態を示す図である。
図15図15は、リニア電源の第9実施形態を示す図である。
図16図16は、リニア電源の第10実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<リニア電源(比較例)>
図1は、リニア電源の比較例(=後出の実施形態と対比される一般的な回路構成の例)を示す図である。本比較例のリニア電源1は、入力電圧Vinから所望の出力電圧Voutを生成して出力端子OUTに接続された負荷2に供給する。例えば、リニア電源1は、LDO[low drop out]レギュレータであってもよい。
【0011】
本図に即して述べると、リニア電源1は、出力トランジスタM0と、過電流保護回路10と、ドライバ20と、帰還電圧生成回路30と、基準電圧生成回路40とを備える。なお、これらの構成要素は、その一部又は全部が半導体装置に集積化されていてもよい。
【0012】
出力トランジスタM0は、入力電圧Vinの印加端と出力電圧Voutの印加端との間に接続されている。本図に即して述べると、出力トランジスタM0は、例えばPMOSFET[P-channel type metal oxide semiconductor field effect transistor]であってもよい。この場合、出力トランジスタM0のソースが入力電圧Vinの印加端に接続されて、出力トランジスタM0のドレインが出力電圧Voutの印加端に接続される。
【0013】
過電流保護回路10は、入力電圧Vinの印加端と出力電圧Voutの印加端との間に接続されており、出力トランジスタM0に流れる出力電流Ioutを監視対象電流として過電流保護信号OCPを生成する(詳細は後述)。
【0014】
ドライバ20は、出力トランジスタM0の駆動制御を行う。本図に即して述べると、ドライバ20は、非反転入力端(+)に入力される帰還電圧Vfbが反転入力端(-)に入力される基準電圧Vrefと一致するように、出力トランジスタM0のゲート信号G0を生成するオペアンプである。ゲート信号G0は、帰還電圧Vfbが基準電圧Vrefよりも低いときに低下して、帰還電圧Vfbが基準電圧Vrefよりも高いときに上昇する。なお、ドライバ20は、過電流保護信号OCPに応じて出力電流Ioutを過電流上限値Iocp以下に制限するようにゲート信号G0を調整する機能を備えていてもよい。
【0015】
帰還電圧生成回路30は、出力端子OUTと接地端との間に直列接続された抵抗31及び32を含み、出力電圧Voutを分圧して帰還電圧Vfbを生成する。なお、帰還電圧生成回路30を省略して出力電圧Voutをドライバ20に直接入力してもよい。
【0016】
基準電圧生成回路40は、入力電圧Vin及び周囲温度の影響を受け難い基準電圧Vrefを生成してドライバ20の反転入力端(-)に出力する。
【0017】
<過電流保護回路>
引き続き、図1を参照しながら、過電流保護回路10について詳述する。本比較例の過電流保護回路10は、電流検出回路11と、保護信号生成回路12と、を含む。
【0018】
電流検出回路11は、トランジスタM1とセンス抵抗Rsを含み、出力電流Ioutに応じた電流検出信号Vsを生成する。
【0019】
トランジスタM1(例えばPMOSFET)のソースは、センス抵抗Rsを介して出力トランジスタM0のソースに接続されている。トランジスタM1のドレインは、出力トランジスタM0のドレインに接続されている。トランジスタM1のゲートは、出力トランジスタM0のゲート(=ゲート信号G0の印加端)に接続されている。
【0020】
このように接続されたトランジスタM1のオン抵抗(導通度)は、出力トランジスタM0のオン抵抗(導通度)と同一の挙動で制御される。従って、トランジスタM1には、出力電流Ioutに比例したセンス電流Is(=Iout/m、ただしm>1)が流れる。なお、センス電流Isは、入力電圧Vinの印加端からセンス抵抗Rs及びトランジスタM1を介して出力電圧Voutの印加端に至る電流経路に流れる。
【0021】
センス抵抗Rsは、センス電流Isが流れる経路上に設けられており、その両端間電圧が電流検出信号Vs(=Is×Rs)として引き出される。
【0022】
保護信号生成回路12は、電流検出信号Vsに基づいて出力電流Ioutを過電流上限値Iocp以下に制限するための過電流保護信号OCPを生成する。なお、過電流保護回路10は、過電流保護信号OCPに応じてドライバ20を制御してもよいしゲート信号G0を直接調整してもよい。
【0023】
このような過電流保護回路10を備える構成であれば、負荷2に異常が生じて過大な出力電流Ioutが流れ得る状況であっても、出力電流Ioutに制限を掛けることができる。従って、リニア電源1及びその周辺回路を保護することが可能となる。
【0024】
<電流検出精度に関する考察>
ところで、電流検出回路11の検出精度に影響を及ぼし得る要因としては、出力トランジスタM0とトランジスタM1とのペア比ばらつき、センス抵抗Rsの絶対値ばらつき、及び、保護信号生成回路12の入力オフセットばらつきが考えられる。
【0025】
特に、半導体装置への集積化を鑑みると、ミスマッチばらつきよりも絶対値ばらつきのほうが大きくなることが一般的である。すなわち、上記した諸要因のうち、センス抵抗Rsの絶対値ばらつきが電流検出回路11の検出精度に大きく影響すると考えられる。
【0026】
以下では、上記の考察に鑑み、電流検出回路11の検出精度を高めることのできる種々の実施形態を提案する。
【0027】
<リニア電源(第1実施形態)>
図2は、リニア電源の第1実施形態を示す図である。第1実施形態のリニア電源1は、先出の比較例(図1)を基本としつつ、センス抵抗Rsに代えて、トランジスタM2及びM3(例えばいずれもPMOSFET)と電流源CS1を含む。
【0028】
トランジスタM2のソースは、出力トランジスタM0のソース(=入力電圧Vinの印加端)に接続されている。トランジスタM2のドレインは、トランジスタM1のソースに接続されている。トランジスタM1のドレインは、出力トランジスタM0のドレイン(=出力電圧Voutの印加端)に接続されている。
【0029】
トランジスタM3のソースは、出力トランジスタM0のソースに接続されている。トランジスタM2及びM3それぞれのゲートは、いずれもトランジスタM3のドレインに接続されている。トランジスタM3のドレインは、電流源CS1の第1端に接続されている。電流源CS1の第2端は、接地端に接続されている。
【0030】
トランジスタM1は、出力電流Ioutに応じたセンス電流Isを流すように構成された第1トランジスタに相当する。
【0031】
トランジスタM2は、センス電流Isが流れる経路上に設けられており、その両端間電圧(=ドレイン・ソース間電圧Vds)が電流検出信号Vsとして引き出されるように構成された第2トランジスタに相当する。
【0032】
トランジスタM3は、トランジスタM2よりも高いオン閾値電圧Vth[M3]を持ちトランジスタM2を線形領域で駆動するように構成された第3トランジスタに相当する。
【0033】
このように、電流検出回路11を形成する第2トランジスタ及び第3トランジスタは、第1トランジスタのソース側に設けてもよい。例えば、Pチャネル型であるトランジスタM1のソース側に第2トランジスタ及び第3トランジスタを設ける場合には、第2トランジスタ及び第3トランジスタとして、それぞれPチャネル型のトランジスタM2及びM3を用いればよい。
【0034】
ところで、トランジスタM2は、高濃度のP型ポリシリコンで形成されたゲート電極を持つPMOSFETである。以下では、通常のPMOSFETと区別するために「PゲートPMOSFET」と表記する場合がある。一方、トランジスタM3は、高濃度のN型ポリシリコンで形成されたゲート電極を持つ通常のPMOSFETである。すなわち、トランジスタM2及びM3は、いずれも同一構造のPMOSFETであって、それぞれのゲート電極の極性が異なる。
【0035】
PゲートPMOSFETは、ゲート電極の極性を変えることにより、オン閾値電圧Vthを変化させたPMOSFETである。通常のPMOSFETは、約0.7Vのオン閾値電圧Vthを持つ。一方、PゲートPMOSFETでは、オン閾値電圧Vthが-0.15V程度となる。
【0036】
なお、PゲートPMOSFETと通常のPMOSFETは、ゲート電極の極性が違うだけでそれぞれのデバイス構造は全く同一である。そのため、共通のシリコン基板上に形成されている限り、それぞれの素子特性(オン閾値電圧Vth及びオン抵抗Ronなど)のばらつき方は同じになる。
【0037】
また、先にも述べたように、トランジスタM2及びM3それぞれのゲートは、いずれもトランジスタM3のドレインに接続されている。そして、トランジスタM3のドレインには、電流源CS1で生成される基準電流Irefが流されている。従って、トランジスタM3のゲート・ソース間には、トランジスタM3のオン閾値電圧Vth[M3](≒0.7V)に相当する電位差が生じている。
【0038】
トランジスタM3のオン閾値電圧Vth[M3]は、トランジスタM2のオン閾値電圧Vth[M2](≒-0.15V)よりも遥かに高い。そのため、トランジスタM2は、十分に線形領域で駆動される。線形領域では、トランジスタM2のドレイン・ソース間が抵抗と同等の特性になる。すなわち、トランジスタM2のドレイン・ソース間から引き出される電流検出信号Vsは、トランジスタM1に流れるセンス電流Isに比例する。
【0039】
第1実施形態のリニア電源1であれば、先出の比較例(図1)と異なり、センス抵抗Rsの絶対値ばらつきを考慮する必要がない。従って、電流検出回路11の検出精度を高めることが可能となり、延いては、過電流上限値Iocpのばらつきを小さく抑えることが可能となる。以下、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0040】
図3は、MOSFETのRon-Vgs特性(=オン抵抗Ronとゲート・ソース間電圧Vgsとの相関関係)を示す図である。
【0041】
本図で示すように、MOSFETのオン抵抗Ronは、MOSFETのゲート・ソース間電圧Vgsが高いほど小さくなる。ここで、MOSFETのゲート・ソース間電圧VgsがMOSFETのオン閾値電圧Vthよりも十分に高く、MOSFETが線形領域で駆動されるときには、MOSFETのドレイン・ソース間が抵抗と同等の特性になる。
【0042】
図4は、MOSFETのRon-Vthばらつき特性(=オン抵抗Ronのばらつきとオン閾値電圧Vthのばらつきとの相関関係)を示す図である。
【0043】
本図で示すように、MOSFETのオン抵抗Ronのばらつきとオン閾値電圧Vthのばらつきとの間には正の相関がある。つまり、オン閾値電圧Vthが低くなる方向にばらついたときにはオン抵抗値Ronが小さくなる方向にばらつく。逆に、オン閾値電圧Vthが高くなる方向にばらついたときにはオン抵抗値Ronが大きくなる方向にばらつく。
【0044】
図5は、MOSFETのVds-Id特性(=ドレイン・ソース間電圧Vdsとドレイン電流Idとの相関関係、ゲート・ソース間電圧Vgsは固定)を示す図である。なお、本図の実線は第1実施形態(図2)の挙動を示している。また、本図の破線は比較例(図1)の挙動を示している。
【0045】
先にも述べたように、第1実施形態のリニア電源1において、トランジスタM2(=PゲートPMOSFET)と、トランジスタM3(=通常のPMOSFET)は、ゲート電極の極性が違うだけで、それぞれのデバイス構造は全く同一である。従って、共通のシリコン基板上に形成されている限り、それぞれの素子特性(オン閾値電圧Vth[M2]並びにVth[M3]、及び、オン抵抗Ron[M2]並びにRon[M3]など)のばらつき方は同じになる。
【0046】
例えば、トランジスタM2のオン抵抗Ron[M2]が大きくなる方向にばらついたとき、オン抵抗Ron[M2]と正の相関を持つオン閾値電圧Vth[M2]は、高くなる方向にばらつく(先出の図4を参照)。このとき、トランジスタM2と同一構造を持つトランジスタM3のオン閾値電圧Vth[M3]も高くなる方向にばらつくことになる。その結果、トランジスタM2のゲートに印加される電圧が高くなるので、トランジスタM2のオン抵抗Ron[M2]が引き下げられる。反対に、トランジスタM2のオン抵抗Ron[M2]が小さくなる方向にばらついたときには、上記と逆の作用が働き、トランジスタM2のオン抵抗Ron[M2]が引き上げられる。
【0047】
このように、第1実施形態のリニア電源1であれば、トランジスタM2のオン抵抗Ron[M2]のばらつきが補正されるので、電流検出信号Vsのばらつきが小さくなる。
【0048】
本図に即して述べると、先出の比較例(図1)では、ドレイン電流Id(=センス電流Is)に対するドレイン・ソース間電圧Vds(=電流検出信号Vs)のばらつきがd1となる。このばらつきd1は、主にセンス抵抗Rsの絶対値ばらつきにより決定される。
【0049】
一方、第1実施形態のリニア電源1であれば、先に説明したオン抵抗Ron[M2]の補正作用により、ドレイン電流Id(=センス電流Is)に対するドレイン・ソース間電圧Vds(=電流検出信号Vs)のばらつきがd2(<d1)に抑えられる。
【0050】
図6は、比較例(図1)における過電流上限値Iocpのばらつきを示す図である。なお、本図の横軸は出力電流Ioutを示しており、本図の縦軸は出力電圧Voutを示している。先出の比較例(図1)では、センス抵抗Rsの絶対値ばらつきの影響を受けるので、過電流上限値Iocpのばらつきd3が数十%(例えば±30%)となる。
【0051】
図7は、第1実施形態(図2)における過電流上限値Iocpのばらつきを示す図である。なお、先出の図6と同じく、本図の横軸は出力電流Ioutを示しており、本図の縦軸は出力電圧Voutを示している。第1実施形態のリニア電源1であれば、センス抵抗Rsの絶対値ばらつきの影響を受けないので、過電流上限値Iocpのばらつきd4が数%(例えば±5%)に低減され得る。
【0052】
<リニア電源(第2実施形態)>
図8は、リニア電源の第2実施形態を示す図である。第2実施形態のリニア電源1は、先出の第1実施形態(図2)を基本としつつ、保護信号生成回路12の構成要素として、アンプA1と、電圧源E1と、トランジスタM4(例えばPMOSFET)と、を含む。
【0053】
アンプA1の反転入力端(-)は、トランジスタM2のソースに接続されている。アンプA1の非反転入力端(+)は、電圧源E1の正極端に接続されている。電圧源E1の負極端は、トランジスタM2のドレインに接続されている。アンプA1の出力端は、トランジスタM4のゲートに接続されている。トランジスタM4のソースは、入力電圧Vinの印加端に接続されている。トランジスタM4のドレインは、ドライバ20の出力端に接続されている。
【0054】
アンプA1は、電圧源E1の負極端を基準電位端とし、非反転入力端(+)に入力されるオフセット電圧Vofs(=検出閾値に相当)と、反転入力端(-)に入力される電流検出信号Vsとの差分(=Vofs-Vs)に応じてトランジスタM4のオン抵抗(導通度)を制御するようにゲート信号G1を生成する。
【0055】
電流検出信号Vs(=Is×Rs)がオフセット電圧Vofsよりも低いときには、アンプA1から出力されるゲート信号G1がハイレベルに張り付いた状態となる。従って、トランジスタM4がフルオフ状態となるので、出力トランジスタM0のゲート・ソース間がオープン状態となる。その結果、出力トランジスタM0のオン抵抗が引き上げられることはなく、出力トランジスタM0に流れる出力電流Ioutには何ら制限が掛からない状態(=過電流保護動作が解除された状態)となる。
【0056】
一方、出力異常等により出力電流Ioutが増大して、電流検出信号Vsがオフセット電圧Vofsよりも高くなると、両電圧の差分値に応じてアンプA1から出力されるゲート信号G1がハイレベルから低下する。従って、トランジスタM4がオン状態となって出力トランジスタM0のゲート・ソース間に駆動電流Idrv(=過電流保護信号OCPに相当)が流れるので、ゲート信号G0が上昇して出力トランジスタM0のゲート・ソース間電圧が引き下げられる。その結果、出力トランジスタM0のオン抵抗が上昇し、出力電流Ioutに制限が掛かった状態(=過電流保護動作が発動された状態)となる。最終的には、電流検出信号Vsとオフセット電圧Vofsとがイマジナリショートする状態でトランジスタM4のゲート制御が平衡する。
【0057】
<リニア電源(第3実施形態)>
図9はリニア電源の第3実施形態を示す図である。第3実施形態のリニア電源1では、先出の第2実施形態(図8)を基本としつつ、過電流保護回路10の回路構成に変更が加えられている。
【0058】
本図に即して具体的に述べると、電流検出回路11は、先出のトランジスタM2及びM3と電流源CS1に代えて、トランジスタM2’及びM3’(例えばいずれもNMOSFET[N-channel type MOSFET])と電流源CS2を含む。
【0059】
また、保護信号生成回路12は、先出のアンプA1、電圧源E1及びトランジスタM4に代えて、アンプA2、電圧源E2、トランジスタM5(例えばNMOSFET)、及びトランジスタM6並びにM7(例えばいずれもPMOSFET)を含む。
【0060】
トランジスタM1のソースは、出力トランジスタM0のソース(=入力電圧Vinの印加端)に接続されている。トランジスタM1のドレインは、トランジスタM2’のドレインに接続されている。トランジスタM2’のソースは、出力トランジスタM0のドレイン(=出力電圧Voutの印加端)に接続されている。
【0061】
トランジスタM3’のソースは、出力トランジスタM0のドレインに接続されている。トランジスタM2’及びM3’それぞれのゲートは、いずれも、トランジスタM3’のドレインに接続されている。トランジスタM3’のドレインは、電流源CS2の第1端に接続されている。電流源CS2の第2端は、入力電圧Vinの印加端に接続されている。
【0062】
トランジスタM1は、出力電流Ioutに応じたセンス電流Isを流すように構成された第1トランジスタに相当する。
【0063】
トランジスタM2’は、センス電流Isが流れる経路上に設けられており、その両端間電圧(=ドレイン・ソース間電圧Vds)が電流検出信号Vsとして引き出されるように構成された第2トランジスタに相当する。
【0064】
トランジスタM3’は、トランジスタM2’よりも高いオン閾値電圧Vth[M3’]を持ち、トランジスタM2’を線形領域で駆動するように構成された第3トランジスタに相当する。
【0065】
このように、電流検出回路11を形成する第2トランジスタ及び第3トランジスタは、第1トランジスタのドレイン側に設けてもよい。例えば、Pチャネル型であるトランジスタM1のドレイン側に第2トランジスタ及び第3トランジスタを設ける場合には、第2トランジスタ及び第3トランジスタとして、それぞれNチャネル型のトランジスタM2’及びM3’を用いればよい。
【0066】
アンプA2の反転入力端(-)は、トランジスタM2’のソースに接続されている。アンプA2の非反転入力端(+)は、電圧源E2の負極端に接続されている。電圧源E2の正極端は、トランジスタM2’のドレインに接続されている。アンプA2の出力端は、トランジスタM5のゲートに接続されている。トランジスタM5のソースは、出力電圧Voutの印加端に接続されている。トランジスタM5のドレインは、トランジスタM7のドレインに接続されている。
【0067】
トランジスタM6及びM7それぞれのソースは、いずれも入力電圧Vinの印加端に接続されている。トランジスタM6及びM7それぞれのゲートは、いずれもトランジスタM7のドレインに接続されている。トランジスタM6のドレインは、ドライバ20の出力端に接続されている。このように接続されたトランジスタM6及びM7は、トランジスタM5のドレイン電流をミラーして、出力トランジスタM0のゲート・ソース間に流れる駆動電流Idrvを生成するカレントミラーとして機能する。
【0068】
アンプA2は、電圧源E2の正極端を基準電位端とし、非反転入力端(+)に入力されるオフセット電圧Vofs(=検出閾値に相当)と、反転入力端(-)に入力される電流検出信号Vsとの差分(=Vs-Vofs)に応じてトランジスタM5のオン抵抗(導通度)を制御するようにゲート信号G2を生成する。
【0069】
電流検出信号Vs(=Is×Rs)がオフセット電圧Vofsよりも低いときには、アンプA2から出力されるゲート信号G2がローレベルに張り付いた状態となる。従って、トランジスタM5がフルオフ状態となるので、トランジスタM6及びM7から成るカレントミラーは動作せず、出力トランジスタM0のゲート・ソース間がオープン状態となる。その結果、出力トランジスタM0のオン抵抗が引き上げられることはなく、出力トランジスタM0に流れる出力電流Ioutには何ら制限が掛からない状態(=過電流保護動作が解除された状態)となる。
【0070】
一方、出力異常等により出力電流Ioutが増大して、電流検出信号Vsがオフセット電圧Vofsよりも高くなると、両電圧の差分値に応じてアンプA2から出力されるゲート信号G2がローレベルから上昇する。従って、トランジスタM5がオン状態となって出力トランジスタM0のゲート・ソース間に駆動電流Idrv(=過電流保護信号OCPに相当)が流れるので、ゲート信号G0が上昇して出力トランジスタM0のゲート・ソース間電圧が引き下げられる。その結果、出力トランジスタM0のオン抵抗が上昇し、出力電流Ioutに制限が掛かった状態(=過電流保護動作が発動された状態)となる。最終的には、電流検出信号Vsとオフセット電圧Vofsとがイマジナリショートする状態でトランジスタM5のゲート制御が平衡する。
【0071】
ところで、トランジスタM2’は、高濃度のN型ポリシリコンで形成されたゲート電極を持つNMOSFETである。以下では、通常のNMOSFETと区別するために「NゲートNMOSFET」と表記する場合がある。一方、トランジスタM3’は、高濃度のP型ポリシリコンで形成されたゲート電極を持つ通常のNMOSFETである。すなわち、トランジスタM2’及びM3’は、いずれも同一構造のNMOSFETであって、それぞれのゲート電極の極性が異なる。
【0072】
NゲートNMOSFETは、ゲート電極の極性を変えることにより、オン閾値電圧Vthを変化させたNMOSFETである。通常のNMOSFETは、約0.7Vのオン閾値電圧Vthを持つ。一方、NゲートNMOSFETでは、オン閾値電圧Vthが-0.15V程度となる。
【0073】
なお、NゲートNMOSFETと通常のNMOSFETは、ゲート電極の極性が違うだけでそれぞれのデバイス構造は全く同一である。そのため、共通のシリコン基板上に形成されている限り、それぞれの素子特性(オン閾値電圧Vth及びオン抵抗Ronなど)のばらつき方は同じになる。
【0074】
また、先にも述べたように、トランジスタM2’及びM3’それぞれのゲートは、いずれもトランジスタM3’のドレインに接続されている。そして、トランジスタM3’のドレインには、電流源CS2で生成される基準電流Irefが流されている。従って、トランジスタM3’のゲート・ソース間には、トランジスタM3’のオン閾値電圧Vth[M3’](≒0.7V)に相当する電位差が生じている。
【0075】
トランジスタM3’のオン閾値電圧Vth[M3’]は、トランジスタM2’のオン閾値電圧Vth[M2’](≒-0.15V)よりも遥かに高い。そのため、トランジスタM2’は、十分に線形領域で駆動される。なお、線形領域では、トランジスタM2’のドレイン・ソース間が抵抗と同等の特性になる。すなわち、トランジスタM2’のドレイン・ソース間から引き出される電流検出信号Vsは、トランジスタM1に流れるセンス電流Isに比例する。
【0076】
第3実施形態のリニア電源1であれば、先出の第1実施形態(図2)及び第2実施形態(図8)と同じく、センス抵抗Rsの絶対値ばらつきを考慮する必要がない。従って、電流検出回路11の検出精度を高めることが可能となり、延いては、過電流上限値Iocpのばらつきを小さく抑えることが可能となる。
【0077】
ただし、第3実施形態のリニア電源1では、過電流保護回路10が入力電圧Vinの印加端と出力電圧Voutの印加端との間に接続されている。従って、過電流保護動作に支障を来さないためには、入出力電圧差(=Vin-Vout)がトランジスタM7のオン閾値電圧Vth[M7]よりも高くなければならない点に留意が必要である。
【0078】
なお、第3実施形態のリニア電源1では、トランジスタM2’をNゲートNMOSFETとして、トランジスタM3’を通常のNMOSFETとした例を挙げたが、第2トランジスタ及び第3トランジスタの組み合わせは、何ら上記に限定されない。例えば、トランジスタM2’をデプレッション型NMOSFETとし、トランジスタM3’をエンハンスメント型NMOSFETとしてもよい。
【0079】
<リニア電源(第4実施形態)>
図10は、リニア電源の第4実施形態を示す図である。第4実施形態のリニア電源1では、先出の第3実施形態(図9)を基本としつつ、保護信号生成回路12の構成要素のうち、先出のアンプA2及び電圧源E2が省略されている。
【0080】
本図に即して述べると、トランジスタM5のゲートは、トランジスタM2’のドレインに接続されている。このように接続されたトランジスタM5は、そのゲート・ソース間に印加される電流検出信号Vsがオン閾値電圧Vth[M5]よりも高いか否かに応じて、駆動電流Idrv(=過電流保護信号OCP)を生成するように動作する。
【0081】
第4実施形態のリニア電源1であれば、先出の第3実施形態(図9)と比べて、回路規模を縮小することができる。
【0082】
ただし、第4実施形態のリニア電源1では、先出の第3実施形態(図9)と同様、過電流保護回路10が入力電圧Vinの印加端と出力電圧Voutの印加端との間に接続されている。従って、過電流保護動作に支障を来さないためには、入出力電圧差(=Vin-Vout)がトランジスタM5及びM7それぞれの合算オン閾値電圧(=Vth[M5]+Vth[M7])よりも高くなければならない。
【0083】
また、第4実施形態のリニア電源1では、トランジスタM5のオン閾値ばらつき及び温度特性の影響を受けやすい。従って、先出の第3実施形態(図9)と比べて、過電流上限値Iocpのばらつき抑制効果が小さくなり得る点にも留意すべきである。
【0084】
<リニア電源(第5実施形態)>
図11は、リニア電源の第5実施形態を示す図である。第5実施形態のリニア電源1では、先の第3実施形態(図9)を基本としつつ、トランジスタM2’、M3’及びM5それぞれのソースがいずれも出力電圧Voutの印加端ではなく接地端に接続されている。
【0085】
つまり、第5実施形態のリニア電源1では、過電流保護回路10が入力電圧Vinの印加端と接地端との間に接続されている。従って、先出の第3実施形態(図9)と異なり、入力出力電圧差(=Vin-Vout)を気にする必要がなくなる。
【0086】
<リニア電源(第6実施形態)>
図12は、リニア電源の第6実施形態を示す図である。第6実施形態のリニア電源1では、先出の第4実施形態(図10)を基本としつつ、トランジスタM2’、M3’及びM5それぞれのソースがいずれも出力電圧Voutの印加端ではなく接地端に接続されている。或いは、第6実施形態のリニア電源1では、先出の第5実施形態(図11)を基本としつつ、保護信号生成回路12の構成要素のうち、先出のアンプA2及び電圧源E2が省略されていると理解することもできる。
【0087】
第6実施形態のリニア電源1であれば、先出の第4実施形態(図10)と異なり、入力出力電圧差(=Vin-Vout)を気にする必要がなくなる。また、先出の第5実施形態(図11)と比べて、回路規模を縮小することもできる。ただし、過電流上限値Iocpのばらつき抑制効果が小さくなり得る点には留意が必要である。
【0088】
<リニア電源(第7実施形態)>
図13は、リニア電源の第7実施形態を示す図である。第7実施形態のリニア電源1では、先出の第3実施形態(図9)を基本としつつ、Pチャネル型の出力トランジスタM0及びトランジスタM1がそれぞれNチャネル型の出力トランジスタM0’及びトランジスタM1’(例えばいずれもNMOSFET)に置換されている。
【0089】
本図に即して述べると、出力トランジスタM0’及びトランジスタM1’それぞれのドレインは、入力電圧Vinの印加端に接続されている。出力トランジスタM0’のソースは、出力電圧Voutの印加端に接続されている。トランジスタM1’のソースは、トランジスタM2’のドレインに接続されている。出力トランジスタM0’及びトランジスタM1’それぞれのゲートは、いずれもドライバ20の出力端に接続されている。
【0090】
トランジスタM1’は、出力電流Ioutに応じたセンス電流Isを流すように構成された第1トランジスタに相当する。
【0091】
トランジスタM2’は、センス電流Isが流れる経路上に設けられており、その両端間電圧(=ドレイン・ソース間電圧Vds)が電流検出信号Vsとして引き出されるように構成された第2トランジスタに相当する。
【0092】
トランジスタM3’は、トランジスタM2’よりも高いオン閾値電圧Vth[M3’]を持ち、トランジスタM2’を線形領域で駆動するように構成された第3トランジスタに相当する。
【0093】
このように、電流検出回路11を形成する第2トランジスタ及び第3トランジスタは、第1トランジスタのソース側に設けてもよい。例えば、Nチャネル型であるトランジスタM1’のソース側に第2トランジスタ及び第3トランジスタを設ける場合には、第2トランジスタ及び第3トランジスタとして、それぞれNチャネル型のトランジスタM2’及びM3’を用いればよい。
【0094】
また、第7実施形態のリニア電源1では、上記の変更に伴い、ドライバ20の入力極性が反転されている。本図に即して述べると、ドライバ20は、反転入力端(-)に入力される帰還電圧Vfbが非反転入力端(+)に入力される基準電圧Vrefと一致するように、出力トランジスタM0’のゲート信号G0を生成するオペアンプである。ゲート信号G0は、帰還電圧Vfbが基準電圧Vrefよりも低いときに上昇し、帰還電圧Vfbが基準電圧Vrefよりも高いときに低下する。
【0095】
さらに、第7実施形態のリニア電源1では、保護信号生成回路12の構成要素のうち、トランジスタM6及びM7が省略されている。本図に即して述べると、トランジスタM5のドレインは、ドライバ20の出力端に接続されている。
【0096】
電流検出信号Vs(=Is×Rs)がオフセット電圧Vofsよりも低いときには、アンプA2から出力されるゲート信号G2がローレベルに張り付いた状態となる。従って、トランジスタM5がフルオフ状態となるので、出力トランジスタM0’のゲート・ソース間がオープン状態となる。その結果、出力トランジスタM0’のオン抵抗が引き上げられることはなく、出力トランジスタM0’に流れる出力電流Ioutには何ら制限が掛からない状態(=過電流保護動作が解除された状態)となる。
【0097】
一方、出力異常等により出力電流Ioutが増大して、電流検出信号Vsがオフセット電圧Vofsよりも高くなると、両電圧の差分値に応じてアンプA2から出力されるゲート信号G2がローレベルから上昇する。従って、トランジスタM5がオン状態となって出力トランジスタM0’のゲート・ソース間に駆動電流Idrv(=過電流保護信号OCPに相当)が流れるので、ゲート信号G0が低下して出力トランジスタM0’のゲート・ソース間電圧が引き下げられる。その結果、出力トランジスタM0’のオン抵抗が上昇し、出力電流Ioutに制限が掛かった状態(=過電流保護動作が発動された状態)となる。最終的には、電流検出信号Vsとオフセット電圧Vofsとがイマジナリショートする状態でトランジスタM5のゲート制御が平衡する。
【0098】
このように、出力トランジスタM0’及びトランジスタM1’がそれぞれNMOSFETである場合でも、センス抵抗Rsを用いない電流検出回路11を適用することが可能である。従って、電流検出回路11の検出精度を高めることが可能となり、延いては、過電流上限値Iocpのばらつきを小さく抑えることが可能となる。
【0099】
<リニア電源(第8実施形態)>
図14は、リニア電源の第8実施形態を示す図である。第8実施形態のリニア電源1では、先出の第7実施形態(図13)を基本としつつ、過電流保護回路10の回路構成に変更が加えられている。
【0100】
本図に即して具体的に述べると、電流検出回路11は、先出のトランジスタM2’及びM3’と電流源CS2に代えて、トランジスタM2及びM3と電流源CS1(例えば図8を参照)を含む。
【0101】
また、保護信号生成回路12は、先出のアンプA2、電圧源E2及びトランジスタM5に代えて、アンプA1、電圧源E1及びトランジスタM4(例えば図8を参照)と、トランジスタM8及びM9(例えばいずれもNMOSFET)と、を含む。
【0102】
トランジスタM1’のソースは、出力トランジスタM0’のソース(=出力電圧Voutの印加端)に接続されている。トランジスタM1’のドレインは、トランジスタM2のドレインに接続されている。トランジスタM2のソースは、出力トランジスタM0’のドレイン(=入力電圧Vinの印加端)に接続されている。トランジスタM2及びM3と電流源CS1の接続関係については、先出の第2実施形態(図8)と同一なので、重複した説明を省略する。
【0103】
トランジスタM1’は、出力電流Ioutに応じたセンス電流Isを流すように構成された第1トランジスタに相当する。
【0104】
トランジスタM2は、センス電流Isが流れる経路上に設けられており、その両端間電圧(=ドレイン・ソース間電圧Vds)が電流検出信号Vsとして引き出されるように構成された第2トランジスタに相当する。
【0105】
トランジスタM3は、トランジスタM2よりも高いオン閾値電圧Vth[M3]を持ちトランジスタM2を線形領域で駆動するように構成された第3トランジスタに相当する。
【0106】
このように、電流検出回路11を形成する第2トランジスタ及び第3トランジスタは、第1トランジスタのドレイン側に設けてもよい。例えば、Nチャネル型であるトランジスタM1’のドレイン側に第2トランジスタ及び第3トランジスタを設ける場合には、第2トランジスタ及び第3トランジスタとして、それぞれPチャネル型のトランジスタM2及びM3を用いればよい。
【0107】
アンプA1、電圧源E1及びトランジスタM4の接続関係については、先出の第2実施形態(図8)と同一なので、重複した説明を省略する。トランジスタM4のドレインは、トランジスタM9のドレインに接続されている。
【0108】
トランジスタM8及びM9それぞれのソースは、いずれも出力電圧Voutの印加端に接続されている。トランジスタM8及びM9それぞれのゲートは、いずれもトランジスタM9のドレインに接続されている。トランジスタM8のドレインは、ドライバ20の出力端に接続されている。このように接続されたトランジスタM8及びM9は、トランジスタM4のドレイン電流をミラーして、出力トランジスタM0’のゲート・ソース間に流れる駆動電流Idrvを生成するカレントミラーとして機能する。
【0109】
電流検出信号Vs(=Is×Rs)がオフセット電圧Vofsよりも低いときには、アンプA1から出力されるゲート信号G1がハイレベルに張り付いた状態となる。従って、トランジスタM4がフルオフ状態となるので、トランジスタM8及びM9から成るカレントミラーは動作せず出力トランジスタM0’のゲート・ソース間がオープン状態となる。その結果、出力トランジスタM0’のオン抵抗が引き上げられることはなく、出力トランジスタM0’に流れる出力電流Ioutには何ら制限が掛からない状態(=過電流保護動作が解除された状態)となる。
【0110】
一方、出力異常等により出力電流Ioutが増大して、電流検出信号Vsがオフセット電圧Vofsよりも高くなると、両電圧の差分値に応じてアンプA1から出力されるゲート信号G1がハイレベルから低下する。従って、トランジスタM4がオン状態となって出力トランジスタM0’のゲート・ソース間に駆動電流Idrv(=過電流保護信号OCPに相当)が流れるので、ゲート信号G0が低下して出力トランジスタM0’のゲート・ソース間電圧が引き下げられる。その結果、出力トランジスタM0’のオン抵抗が上昇し、出力電流Ioutに制限が掛かった状態(=過電流保護動作が発動された状態)となる。最終的には、電流検出信号Vsとオフセット電圧Vofsとがイマジナリショートする状態でトランジスタM4のゲート制御が平衡する。
【0111】
第8実施形態のリニア電源1であれば、先出の第7実施形態(図13)と同じく、電流検出回路11の検出精度を高めることが可能となり、延いては、過電流上限値Iocpのばらつきを小さく抑えることが可能となる。
【0112】
ただし、第8実施形態のリニア電源1では、過電流保護回路10が入力電圧Vinの印加端と出力電圧Voutの印加端との間に接続されている。従って、過電流保護動作に支障を来さないためには、入出力電圧差(=Vin-Vout)がトランジスタM9のオン閾値電圧Vth[M9]よりも高くなければならない点に留意が必要である。
【0113】
<リニア電源(第9実施形態)>
図15は、リニア電源の第9実施形態を示す図である。第9実施形態のリニア電源1では、先の第8実施形態(図14)を基本としつつ、トランジスタM8及びM9それぞれのソースがいずれも出力電圧Voutの印加端ではなく接地端に接続されている。
【0114】
すなわち、第9実施形態のリニア電源1では、過電流保護回路10が入力電圧Vinの印加端と接地端との間に接続されている。従って、先出の第8実施形態(図14)と異なり、入力出力電圧差(=Vin-Vout)を気にする必要がなくなる。
【0115】
<リニア電源(第10実施形態)>
図16は、リニア電源の第10実施形態を示す図である。第10実施形態のリニア電源1は、先出の第8実施形態(図14)を基本としつつ、保護信号生成回路12の構成要素のうち、先出のアンプA1及び電圧源E1が省略されている。
【0116】
本図に即して述べると、トランジスタM4のゲートは、トランジスタM2のドレインに接続されている。このように接続されたトランジスタM4は、そのゲート・ソース間に印加される電流検出信号Vsがオン閾値電圧Vth[M4]よりも高いか否かに応じて、駆動電流Idrv(=過電流保護信号OCP)を生成するように動作する。
【0117】
第10実施形態のリニア電源1であれば、先出の第8実施形態(図14)と比べて、回路規模を縮小することができる。
【0118】
<実施形態の組み合わせ>
なお、これまでに説明してきた第1~第10実施形態は、矛盾のない限り、適宜組み合わせて実施してもよい。例えば、改めて図示はしないが、第9実施形態(図15)と第10実施形態(図16)を組み合わせることにより、アンプA1及び電圧源E1を省略しつつ、トランジスタM8及びM9それぞれのソースを接地端に接続してもよい。
【0119】
<総括>
以下では、上記で説明した種々の実施形態について総括的に述べる。
【0120】
例えば、本明細書中に開示されている電流検出回路は、監視対象電流に応じたセンス電流を流すように構成された第1トランジスタと、前記センス電流が流れる経路上に設けられており、その両端間電圧が電流検出信号として引き出されるように構成された第2トランジスタと、制御端が前記第2トランジスタの制御端に接続されており、前記第2トランジスタよりも高いオン閾値電圧を持ち、前記第2トランジスタを線形領域で駆動するように構成された第3トランジスタと、を備える構成(第1の構成)とされている。
【0121】
なお、上記第1の構成による電流検出回路において、前記第2トランジスタ及び前記第3トランジスタは、いずれも同一構造のMOSFETであって、それぞれのゲート電極の極性が異なる構成(第2の構成)としてもよい。
【0122】
また、上記第2の構成による電流検出回路において、前記第2トランジスタは、P型ポリシリコンで形成されたゲート電極を持つPMOSFETであり、前記第3トランジスタは、N型ポリシリコンで形成されたゲート電極を持つPMOSFETである構成(第3の構成)にしてもよい。
【0123】
また、上記第2の構成による電流検出回路において、前記第2トランジスタは、N型ポリシリコンで形成されたゲート電極を持つNMOSFETであり、前記第3トランジスタは、P型ポリシリコンで形成されたゲート電極を持つNMOSFETである構成(第4の構成)にしてもよい。
【0124】
また、上記第1の構成による電流検出回路において、前記第2トランジスタは、デプレッション型NMOSFETであり、前記第3トランジスタは、エンハンスメント型NMOSFETである構成(第5の構成)にしてもよい。
【0125】
また、例えば、本明細書中に開示されている過電流保護回路は、上記第1~第5いずれかの構成による電流検出回路と、前記電流検出信号に基づいて前記監視対象電流を上限値以下に制限するための過電流保護信号を生成するように構成された保護信号生成回路と、を備える構成(第6の構成)とされている。
【0126】
なお、上記第6の構成による過電流保護回路において、前記保護信号生成回路は、前記電流検出信号と検出閾値との差分に応じて前記過電流保護信号を生成するように構成されたアンプを含む構成(第7の構成)としてもよい。
【0127】
また、上記第6の構成による過電流保護回路において、前記保護信号生成回路は、ゲート・ソース間に印加される前記電流検出信号に応じて前記過電流保護信号を生成するように構成されたトランジスタを含む構成(第8の構成)としてもよい。
【0128】
また、例えば、本明細書中に開示されているリニア電源は、入力電圧の印加端と出力電圧の印加端との間に接続されるように構成された出力トランジスタと、前記出力電圧又はこれに応じた帰還電圧が基準電圧と一致するように前記出力トランジスタを駆動するように構成されたドライバと、前記出力トランジスタに流れる出力電流を前記監視対象電流とする、上記第6~第8いずれかの構成による過電流保護回路を備える構成(第9の構成)とされている。
【0129】
なお、上記第9の構成によるリニア電源において、前記過電流保護回路は、前記入力電圧の印加端と前記出力電圧の印加端との間に接続されている構成(第10の構成)としてもよい。
【0130】
また、上記第9の構成によるリニア電源において、前記過電流保護回路は、前記入力電圧の印加端と接地端との間に接続されている構成(第11の構成)にしてもよい。
【0131】
<その他の変形例>
なお、本明細書中に開示されている種々の技術的特徴は、上記実施形態のほか、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきであり、本開示の技術的範囲は、特許請求の範囲により規定されるものであって、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【符号の説明】
【0132】
1 リニア電源
2 負荷
10 過電流保護回路
11 電流検出回路
12 保護信号生成回路
20 ドライバ
30 帰還電圧生成回路
31、32 抵抗
40 基準電圧生成回路
A1、A2 アンプ
CS1、CS2 電流源
E1、E2 電圧源
M0 出力トランジスタ(PMOSFET)
M0’ 出力トランジスタ(NMOSFET)
M1 トランジスタ(PMOSFET)
M1’ トランジスタ(NMOSFET)
M2 トランジスタ(PゲートPMOSFET)
M2’ トランジスタ(NゲートNMOSFET)
M3 トランジスタ(PMOSFET)
M3’ トランジスタ(NMOSFET)
M4 トランジスタ(PMOSFET)
M5 トランジスタ(NMOSFET)
M6、M7 トランジスタ(PMOSFET)
M8、M9 トランジスタ(NMOSFET)
OUT 出力端子
Rs センス抵抗
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16