(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179177
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】吸収性物品の表面材
(51)【国際特許分類】
A61F 13/511 20060101AFI20231212BHJP
A61F 13/15 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
A61F13/511 200
A61F13/511 400
A61F13/15 142
A61F13/511 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092321
(22)【出願日】2022-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川口 宏子
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200AA03
3B200BA14
3B200BA20
3B200BB01
3B200BB03
3B200BB24
3B200BB30
3B200DC01
3B200DC02
3B200DC04
3B200DC07
(57)【要約】
【課題】十分な抗菌効果を有しつつ、肌かぶれしにくい吸収性物品の表面材に関する。
【解決手段】吸収性物品の表面材は、肌側面と非肌側面を有する。上記吸収性物品の表面材は、第1層と、第2層とを有する。上記第1層は、上記肌側面を構成する繊維集合体からなる。上記第2層は、上記第1層よりも非肌側に位置し、繊維集合体からなる。上記第1層に第1抗菌剤及び第2抗菌剤が配合される。上記第2層に第3抗菌剤が配合される。上記第1抗菌剤及び上記第3抗菌剤は界面活性剤である。上記第1抗菌剤は上記第1層に含まれる繊維の第1繊維処理剤に含有される。上記第3抗菌剤は上記第2層に含まれる繊維の第2繊維処理剤に含有される。上記第2抗菌剤は、金属酸化物抗菌剤であり、上記第1層に含まれる繊維に含有されている。上記第1抗菌剤及び上記第3抗菌剤は、上記第2抗菌剤よりも、水への溶解性が高い。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肌側面と非肌側面を有する吸収性物品の表面材であって、
前記肌側面を構成する繊維集合体からなる第1層と、前記第1層よりも非肌側に位置する繊維集合体からなる第2層とを有し、
前記第1層に第1抗菌剤及び第2抗菌剤が配合され、前記第2層に第3抗菌剤が配合され、
前記第1抗菌剤及び前記第3抗菌剤は界面活性剤であり、前記第1抗菌剤は前記第1層に含まれる繊維の第1繊維処理剤に含有され、前記第3抗菌剤は前記第2層に含まれる繊維の第2繊維処理剤に含有され、
前記第2抗菌剤は、金属酸化物抗菌剤であり、前記第1層に含まれる繊維に含有されており、
前記第1抗菌剤及び前記第3抗菌剤は、前記第2抗菌剤よりも、水への溶解性が高い
吸収性物品の表面材。
【請求項2】
前記金属酸化物抗菌剤は前記第1層に含まれる繊維に練りこまれている
請求項1に記載の吸収性物品の表面材。
【請求項3】
前記第1抗菌剤を含有する前記第1繊維処理剤によって処理された繊維に占める前記第1抗菌剤の割合は、0.1質量%以上3.0質量%以下であり、
前記第3抗菌剤を含有する前記第2繊維処理剤によって処理された繊維に占める前記第3抗菌剤の割合は、0.1質量%以上3.0質量%以下である
請求項1又は2に記載の吸収性物品の表面材。
【請求項4】
前記第1抗菌剤は、前記第3抗菌剤よりも水への溶解性が高い
請求項1から3のいずれか1項に記載の吸収性物品の表面材。
【請求項5】
前記第2抗菌剤を含有する繊維は、芯部と鞘部とを有する芯鞘型繊維であり、前記鞘部にのみ前記第2抗菌剤が配合され、維維表面に前記第2抗菌剤が露出している
請求項1から4のいずれか1項に記載の吸収性物品の表面材。
【請求項6】
前記芯鞘型繊維に占める前記第2抗菌剤の割合は、0.05質量%以上2.5質量%以下である
請求項5に記載の吸収性物品の表面材。
【請求項7】
前記第2抗菌剤は酸化亜鉛である
請求項1から6のいずれか1項に記載の吸収性物品の表面材。
【請求項8】
前記第2層には、金属酸化物抗菌剤は含まれない
請求項1から7のいずれか1項に記載の吸収性物品の表面材。
【請求項9】
前記肌側面は凹凸面である
請求項1から8のいずれか1項に記載の吸収性物品の表面材。
【請求項10】
吸収体と、
前記吸収体の肌側面側に位置する、請求項1から9のいずれか1項に記載の表面材と
を備える吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨ておむつ等の吸収性物品の表面材に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつ、生理用ナプキン、パンティライナー(おりものシート)、失禁パッド等の吸収性物品を着用すると、蒸れ等によって皮膚にかぶれが生じることがある。そのため、かぶれの発生を抑制するべく、吸収性物品に抗菌剤を用いた吸収性物品が提案されている。
例えば特許文献1及び2には、着用者の肌に接する表面材を構成する繊維中に抗菌剤が練り込まれた吸収性物品が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-55187号公報
【特許文献2】特開2021-52938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
抗菌剤を用いた吸収性物品の表面材において、抗菌剤の量を増加させることによって十分な抗菌効果が得られる。その一方で、肌かぶれの原因となる排泄部由来の菌だけではなく、肌のバリア機能を助ける常在菌にも抗菌剤が作用して肌の常在菌のバランスがくずれ、肌かぶれしやすくなるという課題があった。
【0005】
本発明は、十分な抗菌効果を有しつつ、肌かぶれしにくい吸収性物品の表面材に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係る吸収性物品の表面材は、肌側面と非肌側面を有する。
上記吸収性物品の表面材は、第1層と、第2層とを有する。
上記第1層は、上記肌側面を構成する繊維集合体からなる。
上記第2層は、上記第1層よりも非肌側に位置し、
繊維集合体からなる。
上記第1層に第1抗菌剤及び第2抗菌剤が配合される。
上記第2層に第3抗菌剤が配合される。
上記第1抗菌剤及び上記第3抗菌剤は界面活性剤である。上記第1抗菌剤は上記第1層に含まれる繊維の第1繊維処理剤に含有される。上記第3抗菌剤は上記第2層に含まれる繊維の第2繊維処理剤に含有される。
上記第2抗菌剤は、金属酸化物抗菌剤であり、上記第1層に含まれる繊維に含有されている。
上記第1抗菌剤及び上記第3抗菌剤は、上記第2抗菌剤よりも、水への溶解性が高い。
【0007】
本発明の一形態に係る吸収性物品は、吸収体と、上記吸収体の肌側面側に位置する表面材とを備える。
上記表面材は、肌側面と非肌側面を有する。
上記吸収性物品の表面材は、第1層と、第2層とを有する。
上記第1層は、上記肌側面を構成する繊維集合体からなる。
上記第2層は、上記第1層よりも非肌側に位置し、
繊維集合体からなる。
上記第1層に第1抗菌剤及び第2抗菌剤が配合される。
上記第2層に第3抗菌剤が配合される。
上記第1抗菌剤及び上記第3抗菌剤は界面活性剤である。上記第1抗菌剤は上記第1層に含まれる繊維の第1繊維処理剤に含有される。上記第3抗菌剤は上記第2層に含まれる繊維の第2繊維処理剤に含有される。
上記第2抗菌剤は、金属酸化物抗菌剤であり、上記第1層に含まれる繊維に含有されている。
上記第1抗菌剤及び上記第3抗菌剤は、上記第2抗菌剤よりも、水への溶解性が高い。
【発明の効果】
【0008】
本発明の吸収性物品の表面材によれば、十分な抗菌効果を有しつつ、肌かぶれしにくい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の吸収性物品の一実施形態としての使い捨ておむつの一例を示す図であり、各部の弾性部材を伸張させて平面状に広げた状態を示す肌側(表面材側)の模式平面図である。
【
図2】
図1のII-II線で切断した吸収性物品の模式断面図である。
【
図3】上記使い捨ておむつの一部を構成する、第1実施形態に係る表面材の一部を拡大して示す模式断面図である。
【
図4】(A)は第1及び第2実施形態の表面材に用いられる第1繊維の模式断面図であり、(B)は繊維処理剤が剥落した第1繊維の模式斜視図である。
【
図5】第1及び第2実施形態の表面材に用いられる第2繊維の模式断面図である。
【
図6】上記使い捨ておむつの一部を構成する、第2実施形態に係る表面材の一部を拡大して示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の表面材を備える吸収性物品について、使い捨ておむつを例にあげ、図面を参照しながら説明する。
【0011】
<使い捨ておむつの全体構成>
図1に示す本実施形態の使い捨ておむつ1は、いわゆる展開型の使い捨ておむつである。尚、展開型の使い捨ておむつに限定されず、パンツ型の使い捨ておむつ、生理用ナプキン、パンティライナー、失禁パッドにも本発明の表面材を適用できる。
使い捨ておむつ1及び該使い捨ておむつ1を構成する各構成部材は、着用者の前後方向に対応する縦方向Xと、着用者の左右方向に対応し縦方向Xに直交する横方向Yとを有する。さらに、使い捨ておむつ1及び該使い捨ておむつ1を構成する各構成部材は、縦方向X及び横方向Yの双方に直交する厚み方向Zを有する。
本明細書において、各構成における肌側とは、使い捨ておむつ着用時の着用者の肌側に位置する側を示す。各構成における非肌側とは、使い捨ておむつ着用時の着用者の肌側とは反対側に位置する側を示す。また、厚み方向Zに関しては、着用時に着用者の肌に近い側を上、着衣に近い側を下ということがある。
使い捨ておむつ1は、以下、おむつ1と称する。
【0012】
図1に示すように、おむつ1は、縦方向X腹側に位置する腹側領域Aと、縦方向X背側に位置する背側領域Bと、腹側領域Aと背側領域Bとの間に位置する股下領域Cと、に区分される。
背側領域Bは、股下領域Cから左右の横方向Y外方に突出した側部を含む。当該側部の横方向Yにおける側縁部には、ファスニングテープ9が設けられている。同様に、腹側領域Aは、股下領域Cから左右の横方向Y外方に突出した側部を含む。
腹側領域Aの非肌側面には、ファスニングテープ9を接着させるためのランディングテープ(図示せず)が設けられている。該ランディングテープは、機械的面ファスナーの雌部材からなる。ファスニングテープ9は、機械的面ファスナーの雄部材からなる止着部91を有する。
股下領域Cは、腹側領域A及び背側領域Bよりも幅狭となるように、横方向Y内方に括れた脚繰りが形成され、着用時に着用者の排尿部及び肛門等を含む股間部に配置される。
なお、ここでいう「着用時」は、通常想定される適正な着用位置が維持された状態をいう。
【0013】
図1及び2に示すように、おむつ1は、表面材(トップシート)10(30)と、裏面材(バックシート)3と、吸収体4と、サイドシート5と、一対のファスニングテープ9と、中間シート7と、防漏シート8と、を有する。おむつ1は、裏面材3、防漏シート8、吸収体4、中間シート7及び表面材10(30)が厚み方向Zに積層された構成を有する。これらの構成は、例えば、ホットメルト接着剤等の公知の接合手段により互いに接合されている。
【0014】
吸収体4は、縦方向Xに沿って延び、表面材10(30)と裏面材3との間に配置される。すなわち、吸収体4は、表面材10(30)の非肌側に配される。吸収体4は、着用者の尿や便に含まれる水分等の液状排泄物(以下、「液」又は「排泄液」ということがある。)を表面材10(30)側の面から吸収し、内部で拡散させて当該液を保持する。
吸収体4は、吸収性コア40と、コアラップシート41と、を有する。
吸収性コア40は、液を保持することが可能な吸収性材料を主体として構成される。具体的に、吸収性コア40は、親水性繊維の積繊体、当該積繊体に吸収性ポリマーを担持させた構成、又は吸水性ポリマーのみからなる構成等を有する。
コアラップシート41は、吸収性コア40を被覆し、例えば吸収性コア40の形状を保持する機能等を有する。コアラップシート41は、例えばティッシュペーパー状の薄く柔らかい紙や液透過性の不織布等で形成される。
【0015】
表面材10(30)は、おむつ1の着用時、着用者の肌に接するように配置される。表面材10(30)は、吸収体4の肌側面4a側(厚み方向Z上方側)に配置され、例えば、おむつ1の肌側面の横方向Y中央部を構成する。表面材10(30)は、液透過性のシート材として構成され、合成繊維又は天然繊維からなる不織布等で形成される。
表面材10(30)は、肌側面10a(30a)と、非肌側面10b(30b)と、を有する。
表面材10(30)の詳細については後述する。
【0016】
表面材10(30)と吸収体4との間に、中間シート7が設けられていてもよい。中間シート7には、各種製法によって得られる不織布を用いることができる。中間シート7は、表面材10(30)から吸収体4への液の透過性の向上、吸収体4に吸収された液の表面材10(30)への液戻りの防止等の観点から配置される。
【0017】
裏面材3は、吸収体4の非肌側(厚み方向Z下方)に配置され、例えば、おむつ1の非肌側面のほぼ全体を構成し、着用時のおむつ1の外装を構成する。裏面材3は、防漏性を有していることが好ましく、例えば、液難透過性、水蒸気透過性及び撥水性等の機能を有するシート材で形成される。
【0018】
一対のサイドシート5は、表面材10(30)の横方向Y側部に配置され、例えば、おむつ1の肌側面の横方向Y側部を構成する。サイドシート5は、防漏性を備えていることが望ましく、例えば、液難透過性、水蒸気透過性及び撥水性等の機能を有するシート材で形成される。一対のサイドシート5では、横方向Y中央部側が表面材10(30)に重なって配置され、横方向Y側部が表面材10(30)の外側まで延出し、裏面材3と接合される。
おむつ1では、サイドシート5は、糸状又は帯状の弾性部材50が配されることで、立体ギャザー形成用シートを構成している。
【0019】
防漏シート8は、液不透過性又は液難透過性の樹脂フィルムからなり、裏面材3の肌側面を被覆する。
【0020】
<表面材>
以下、上記おむつ1に用いられる第1実施形態の表面材10及び第2実施形態の表面材30それぞれについて説明する。
【0021】
[第1実施形態]
第1実施形態における表面材10について説明する。
(表面材10の概略構成)
図3に示すように、表面材10は、第2層12と、第2層12上に形成された第1層11とが積層されて構成される。表面材10は、肌側面10a及び非肌側面10bが平坦なフラット表面材である。
尚、本明細書でいう「平坦」は、巨視的に凹凸が無く平坦であることを意味し、繊維で構成されているが故に生じ得る比較的小さな凹凸の存在は許容される。例えば、厚み方向における凸部の頂部と凹部の底部との差が0.3mm未満の凹凸は許容される。
【0022】
第1層11は、第1繊維2を含む繊維集合体から構成されている。第1層11は、表面材10の肌側面10aを構成する。
第2層12は、第2繊維6を含む繊維集合体から構成されている。第2層12は、表面材10の非肌側面10bを構成する。
【0023】
第1層11及び第2層12はそれぞれ繊維材料のシート状物からなる。シート状物としては、例えばカード法により製造された不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布及びニードルパンチ不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布及びニードルパンチ不織布等の種々の不織布を用いることができる。
【0024】
本実施形態の表面材10では、第1層11に第1抗菌剤及び第2抗菌剤が配合され、第2層12に第3抗菌剤が配合される。第2抗菌剤は、後述する
図4における符号22で示され、以下、第2抗菌剤22という。
第1抗菌剤及び第3抗菌剤は、界面活性剤であり、繊維表面を処理する繊維処理剤に配合される。第2抗菌剤22は、金属酸化物抗菌剤である。第2抗菌剤22は、繊維に含有されており、より詳細には、繊維に練り込まれて配合される。このように、第1抗菌剤及び第3抗菌剤と、第2抗菌剤22とは、繊維への配合形態が異なっている。
また、表面材10は、その厚み方向Zに亘って抗菌性界面活性剤(第1抗菌剤及び第3抗菌剤)が存在する形態となっている。
【0025】
図3、後述する第2実施形態の表面材30を示す
図6において、第2層12を構成する第2繊維6を、内部が白い輪郭線だけの線状で示している。第1層11を構成する第1繊維2を、内部が塗りつぶされた線状で示している。また、
図3及び6において、内部が白い輪郭線だけの小円、内部が黒い小円は、いずれも繊維同士の溶融部を模式的に示したものである。
【0026】
(第1層の構成)
上述したように、第1層11は第1抗菌剤及び第2抗菌剤22を含有する。
第1抗菌剤は抗菌性界面活性剤である。第1抗菌剤は第1繊維2の表面処理に用いられる第1繊維処理剤に配合される。第1繊維処理剤は、後述する
図4における符号21で示され、以下、第1繊維処理剤21という。第1繊維処理剤21は繊維表面に親水性を付与するために用いられる。
第2抗菌剤22は金属酸化物抗菌剤であり、第1繊維2に練り込まれている。
抗菌性界面活性剤である第1抗菌剤、該第1抗菌剤を含む第1繊維処理剤21、金属酸化物である第2抗菌剤22、第1繊維2の構造については後述する。
【0027】
尚、本実施形態では、1つの繊維(第1繊維2)に第1抗菌剤及び第2抗菌剤が配合される例をあげるが、この形態に限られない。少なくとも、第1層11に、繊維処理剤に配合された抗菌性界面活性剤からなる第1抗菌剤と、繊維に練り込まれて配合された第2抗菌剤22が存在すればよい。
例えば、第1層11が2種類の繊維を含み、一方の繊維が第1抗菌剤のみを含み、他方の繊維が第2抗菌剤のみを含んでもよい。より具体的には、一方の繊維は第1抗菌剤が配合された繊維処理剤により表面処理され、第2抗菌剤は練り込まれておらず、他方の繊維は抗菌剤が配合されていない繊維処理剤により表面処理され、第2抗菌剤が練り込まれていてもよい。
【0028】
また、第1層11は、第1抗菌剤や第2抗菌剤といった抗菌剤が配合されない繊維が含まれて構成されてもよい。
【0029】
(第2層の構成)
第2層12には第3抗菌剤が配合される。
第3抗菌剤は抗菌性界面活性剤である。第3抗菌剤は第2繊維6の表面処理に用いられる第2繊維処理剤に配合される。第2繊維処理剤は、後述する
図5における符号63で示され、以下、第2繊維処理剤63という。第2繊維処理剤63は繊維表面に親水性を付与するために用いられる
抗菌性界面活性剤である第3抗菌剤、該第3抗菌剤を含む第2繊維処理剤63、第2繊維6の構造については後述する。
【0030】
第2層12には、繊維に練り込まれる金属酸化物抗菌剤が配合されても配合されなくてもよいが、金属酸化物抗菌剤が配合されないことがより好ましい。
第2層12に含まれる繊維に金属酸化物抗菌剤が配合されないことで、表面材10全体の抗菌剤量を少なくすることができ、肌の常在菌のバランスが良好に保持されやすくなり、肌かぶれを抑制することができる。
【0031】
尚、本実施形態では、第2層12が、第3抗菌剤が配合された第2繊維6のみから構成される例をあげるが、抗菌剤が配合されていない繊維が含まれて構成されてもよい。
【0032】
(第1、第2及び第3抗菌剤の水への溶解性の関係)
各抗菌剤の水への溶解性は、後述する溶解度の測定方法により測定した溶解度で比較することができる。以下、「水への溶解性」を「水溶解性」という。
【0033】
表面材10において、第1抗菌剤の溶解度をS1、第2抗菌剤22の溶解度をS2、第3抗菌剤の溶解度をS3としたとき、 S1≧S3>S2 の関係となっている。
言い換えると、界面活性剤からなる第1抗菌剤及び第3抗菌剤は、金属酸化物抗菌剤からなる第2抗菌剤22よりも、水溶解性が高い。
そして、第1抗菌剤の水溶解性は、第3抗菌剤と同等又は第3抗菌剤よりも高い。
【0034】
表面材10において、第1抗菌剤の溶解度S1及び第3抗菌剤の溶解度S3は、第2抗菌剤の溶解度S2よりも大きくなっている。つまり、第1抗菌剤及び第3抗菌剤は、表面材10に配合される複数種類の抗菌剤において、相対的に水溶解性が高く、尿等の排泄液に溶けやすい。このため、第1抗菌剤及び第3抗菌剤による抗菌効果は、排泄初期から速やかに発揮される。
【0035】
また、第1繊維2の第1繊維処理剤21は、排泄液が供給されることで剥落しやすく、排泄液とともに主に吸収体4へ移行しやすくなっている。このため、第1繊維処理剤21に含まれる第1抗菌剤が、排泄液とともに吸収体4へ移行し、吸収体4での菌繁殖を抑制することで(抗菌効果)、消臭効果が得られる。
同様に、第2繊維6の第2繊維処理剤63は、排泄液が供給されることで剥落しやすく、排泄液とともに主に吸収体4へ移行しやすくなっている。このため、第2繊維処理剤63に含まれる第3抗菌剤が、排泄液とともに吸収体4へ移行し、吸収体4での菌繁殖を抑制することで(抗菌効果)、消臭効果が発揮される。
ここで、尿臭は、フェノール系化合物及びインドール類の増加により、強くなる(腐敗尿臭)。本実施形態では、第1抗菌剤及び第3抗菌剤によりフェノール系化合物及びインドール類の増加が抑制され、消臭効果が得られる。
【0036】
一方、第2抗菌剤は、相対的に水溶解性が低いことで、第1及び第3抗菌剤と比べて徐々にゆっくりと抗菌効果を発揮しやすいため、表面材10全体での抗菌効果が持続しやすくなっている。
ここで、第1繊維2の詳細構造については後述するが、表面材10の第1層11に含まれる第1繊維2は、第2抗菌剤22が練り込まれ、第1繊維処理剤21による表面処理前では表面に第2抗菌剤22が露出した形態となっている。また、第1繊維2は、その表面が第1抗菌材を含む第1繊維処理剤21により処理されて構成される。第2抗菌剤22は、繊維に練り込まれていることで、吸収体4等の他の層に移動し難く、表面材10に留まりやすい。
第1繊維2は、排泄液によって、その表面に配されている第1繊維処理剤21が剥落することで、繊維に練り込まれている第2抗菌剤が部分的に露出する形態となる。これにより、第2抗菌剤と尿や便等の排泄物とがより接触しやすくなり、第2抗菌剤による抗菌効果が効率的に発揮される。
このように、第2抗菌剤は、第1抗菌剤及び第3抗菌剤と比較して水溶解性が低いことに加え、第1繊維2の第1繊維処理剤21が剥落することでより一層抗菌効果が発揮される。このため、第2抗菌剤22は、表面材10全体で第1抗菌剤や第3抗菌剤よりも徐々にゆっくりと抗菌効果を発揮することになり、表面材10全体での抗菌効果が持続しやすくなる。
更に、第2抗菌剤22が着用者の肌に直接接触し得る第1層11に配合されることで、尿や便等の排泄物と第2抗菌剤22とは高い頻度で効率的に接触することができる。これにより、排泄物に起因する細菌の繁殖が抑制され(抗菌効果)、皮膚トラブルが抑制される。
その上、第2抗菌剤は繊維に練り込まれて表面材10に留まりやすい状態となっていることで、第2抗菌剤が着用者の肌に移行して肌の常在菌のバランスを崩すことを抑制することができる。
【0037】
このように、表面材10には、抗菌性界面活性剤からなる抗菌剤(第1抗菌剤及び第3抗菌剤)と金属酸化物から成る抗菌剤(第2抗菌剤)というように、水溶解性及び繊維への配合形態が互いに異なる抗菌剤が複数種類用いられている。
着用者の肌に直接接触し得る第1層11に、該第1層11に留まりやすい形態で配合され、水溶解性が低い第2抗菌剤22は、尿や便等の排泄物と効率的に接触し安定した抗菌効果の持続を提供することができるという特徴を有する。
第1層11及び第2層12に含まれる第1繊維処理剤21及び第2繊維処理剤63に含有され、おむつ1の着用中、排泄液とともに吸収体4に移行しやすくなっている第1抗菌剤及び第3抗菌剤は、吸収体4での菌繁殖を抑制して(抗菌効果)、消臭効果を発揮するという特徴を有する。
表面材10に、水溶解性及び繊維への配合形態が互いに異なる抗菌剤を複数種類用いることで、それぞれの抗菌剤をその特徴に合わせて効率的に配合することができる。これにより、全体的に少ない配合量の抗菌剤で、優れた抗菌効果が長時間にわたって安定的に発揮され得る表面材10を得ることができる。加えて、抗菌剤の配合量を全体的に少なくすることで、肌かぶれの原因となる排泄物由来の菌だけではなく、肌のバリア機能を助ける常在菌にも抗菌剤が作用して肌の常在菌のバランスがくずれてしまうという事態の発生が効果的に抑制され、肌かぶれしにくい表面材10を得ることができる。
以上のように、十分な抗菌効果を有しつつ、肌の常在菌のバランスが良好に保持されて肌かぶれしにくい表面材10を得ることができる。
【0038】
また、表面材10においては、第1抗菌剤及び第3抗菌剤は繊維処理剤に含まれて排泄液とともに吸収体4に移行しやすく、第2抗菌剤は表面材10に留まりやすい形態となっている。これにより、これら第1、第2及び第3抗菌剤が着用者の肌に移行して肌の常在菌のバランスを崩すことを抑制することができ、皮膚トラブルが抑制される。
加えて、第1抗菌剤及び第3抗菌剤が第2抗菌剤よりも水溶解性が高いことで、第1抗菌剤及び第3抗菌剤による抗菌効果は即効性があるのに対し、第2抗菌剤による抗菌効果は、第1抗菌剤及び第3抗菌剤による抗菌効果よりも、ゆっくりと穏やかに発揮される。これにより、本実施形態の表面材10を有するおむつ1では、抗菌効果が、排泄初期から長時間に亘って持続し得る。
【0039】
また、このような構成とすることで、第2層12に含まれる繊維に金属酸化物からなる抗菌剤を配合しなくとも十分な抗菌効果を得ることができるため、第2層12に金属酸化物抗菌剤を配合しなくてもよい。第2層12に金属酸化物抗菌剤が配合されないことで、表面材10全体の抗菌剤量を少なくすることができ、肌の常在菌のバランスが良好に保持されやすく、肌かぶれをより一層抑制することができる。
【0040】
また、第1抗菌剤の水溶解性は、第3抗菌剤と同等又は第3抗菌剤よりも高くてもよいが、抗菌効果のより高い持続性を得る観点から、第1抗菌剤は第3抗菌剤よりも水溶解性が高いことがより好ましい。
第1抗菌剤が第3抗菌剤よりも水溶解性が高いということは、第3抗菌剤は第1抗菌剤よりもより排泄液に溶けにくいということである。
従って、より着用者の肌に近い第1層11に、第1層11よりも非肌側に位置する第2層12に配合する第3抗菌剤よりも水溶解性が高い第1抗菌剤を用いることで、着用者からの排泄液にすぐに第1抗菌剤による抗菌効果が発揮され得、着用初期から抗菌効果を得ることができる。
更に、第1抗菌剤と第3抗菌剤の水溶解性を異ならせることで、排泄液により吸収体4に移行した第2繊維処理剤63に含まれる第3抗菌剤の抗菌効果は、排泄液により吸収体4に移行した第1繊維処理剤21に含まれる第1抗菌剤よりも、徐々に穏やかに発揮されることなり、抗菌効果がより長時間持続し、消臭効果が持続する。
加えて、水溶解性が互いに異なる抗菌性界面活性剤(第1抗菌剤及び第3抗菌剤)を用いることで、それぞれの配合量を少量としても抗菌効果を良好に持続させることが出来るので、表面材10全体の抗菌剤量を少なくなるように調整することができ、肌の常在菌のバランスが良好に保持されやすく、肌かぶれをより一層抑制することができる。
【0041】
(第1繊維の詳細構成)
第1層11に含まれる第1繊維2は、例えば、1種類の合成樹脂(熱可塑性樹脂)又は2種類以上の合成樹脂を混合したブレンドポリマーからなる単一繊維でもよく、あるいは複合繊維でもよい。ここでいう複合繊維は、成分の異なる2種類以上の合成樹脂を紡糸口金で複合し、同時に紡糸して得られる合成繊維(熱可塑性繊維)で、複数の成分がそれぞれ繊維の長さ方向に連続した構造で、単繊維内で相互接着しているものをいう。複合繊維の形態には、芯鞘型、サイドバイサイド型等がある。
【0042】
第2抗菌剤22が練り込まれた第1繊維2は、予め第2抗菌剤22が練り込まれた合成樹脂を紡糸する工程を経て得ることができる。第1繊維に金属酸化物からなる第2抗菌剤22が練り込まれることで、噴霧、塗工する等して繊維に第2抗菌剤を付着させる場合と比較して、第2抗菌剤22の繊維からの脱落が効果的に防止される。
【0043】
抗菌効果の良好な発揮の観点から、第1繊維2は、第1繊維処理剤21が配される前の状態で繊維表面に金属酸化物抗菌剤(第2抗菌剤)が露出していることが好ましい。このように、金属酸化物抗菌剤を繊維表面に効率的に露出させる観点から、第1繊維2は、芯鞘型繊維であることが特に好ましい。
本実施形態では、第1繊維2が芯鞘型繊維である例をあげる。
【0044】
図4を用いて芯鞘型繊維である第1繊維2の構成について説明する。
図4に示すように、第1繊維2は、芯部2Cと、鞘部2Sと、第1繊維処理剤21とを有する。
第1繊維処理剤21は、芯部2Cと鞘部2Sからなる繊維表面に配される。
鞘部2Sは、第2抗菌剤22が練り込まれて構成される。鞘部2Sは、樹脂部20と、該樹脂部20に配合された第2抗菌剤22とを有する。
【0045】
第2抗菌剤22は、芯部2Cには配合されず、鞘部2Sにのみ配合されることが好ましい。鞘部2Sにのみ第2抗菌剤22が配合されることで、少ない配合量の第2抗菌剤22で、繊維表面に第2抗菌剤22を露出させやすくすることができる。これにより、第2抗菌剤22と排泄物とが高頻度で効率的に接触することができ、抗菌効果が効率的に発揮される。
【0046】
原料繊維となる芯鞘型の繊維は、例えば、芯部2CがPET(ポリエチレンテレフタレート)やPP(ポリプロピレン)、鞘部2Sは第2抗菌剤(酸化亜鉛)が練り込まれたPE(ポリエチレン)からなり、芯鞘比が質量比で20/80~80/20のものを用いることができる。なお、芯鞘比は芯と鞘各々を構成する樹脂の質量比(芯/鞘)を示す。
【0047】
金属酸化物からなる第2抗菌剤22の粒径は、該第2抗菌剤22が配合される繊維の太さや、該繊維への金属酸化物抗菌剤(第2抗菌剤)の練り込みやすさの観点から適宜設定される。一般に、金属酸化物の平均粒径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による累積体積50容量%における体積累積粒径D50で表して1.5μm以上7μm以下である。
【0048】
排尿や排便初期から効果的に吸収体4での菌繁殖を抑制しつつ、肌の常在菌のバランスを良好に保持する観点から、第1抗菌剤を含有する第1繊維処理剤によって処理された繊維(実施形態における第1繊維2)に占める第1抗菌剤の割合は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.15質量%以上であり、好ましくは3.0質量%以下、より好ましくは2.5質量%以下であり、好ましくは0.1質量%以上3.0質量%以下であり、より好ましくは0.15質量%以上2.5質量%以下である。
第1繊維2に占める第1抗菌剤の割合の算出方法については後述する。
【0049】
第2抗菌剤22と排泄液とが高頻度で接触し効率的な抗菌効果が得られるとともに、肌の常在菌のバランスを良好に保持する観点から、芯鞘型の第1繊維2に占める第2抗菌剤22の割合は、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、好ましくは2.5質量%以下、より好ましくは2.0質量%以下であり、好ましくは0.05質量%以上2.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以上2.0質量%以下である。
第1繊維に占める第2抗菌剤の割合の算出方法については後述する。
また、芯鞘型の第1繊維2において、第2抗菌剤22と排泄液とがより高頻度で接触し効率的な抗菌効果が得られるとともに、肌の常在菌のバランスを良好に保持する観点から、鞘部のみに金属酸化物抗菌剤(第2抗菌剤)が含まれることが好ましい。上記観点から、鞘部2Sに占める第2抗菌剤22の割合は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上であり、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは4.0質量%以下であり、好ましくは0.1質量%以上5.0質量%以下、より好ましくは0.2質量%以上4.0質量%以下である。
【0050】
(第2繊維の詳細構成)
第2層12に含まれる第2繊維6は、例えば、1種類の合成樹脂(熱可塑性樹脂)又は2種類以上の合成樹脂を混合したブレンドポリマーからなる単一繊維でもよく、あるいは複合繊維でもよい。ここでいう複合繊維は、成分の異なる2種類以上の合成樹脂を紡糸口金で複合し、同時に紡糸して得られる合成繊維(熱可塑性繊維)で、複数の成分がそれぞれ繊維の長さ方向に連続した構造で、単繊維内で相互接着しているものをいう。複合繊維の形態には、芯鞘型、サイドバイサイド型等がある。
本実施形態では、第2繊維6が芯鞘型繊維である例をあげる。
【0051】
図5を用いて芯鞘型繊維である第2繊維6の構成について説明する。
図5に示すように、第2繊維6は、芯部6Cと、鞘部6Sと、第2繊維処理剤63とを有する。
第2繊維処理剤63は、芯部6Cと鞘部6Sからなる繊維表面に配される。
第2繊維6には、金属酸化物抗菌剤は配合されていない。
【0052】
原料繊維となる芯鞘型の繊維は、例えば、芯部6CがPET(ポリエチレンテレフタレート)やPP(ポリプロピレン)、鞘部6SはPE(ポリエチレン)からなり、芯鞘比が質量比で20/80~80/20のものを用いることができる。
【0053】
長時間にわたって吸収体4での菌繁殖を抑制しつつ、肌の常在菌のバランスを良好に保持する観点から、第3抗菌剤を含有する第2繊維処理剤によって処理された繊維(実施形態における第2繊維6)に占める第3抗菌剤の割合は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.15質量%以上であり、好ましくは3.0質量%以下、より好ましくは2.5質量%以下であり、好ましくは0.1質量%以上3.0質量%以下であり、より好ましくは0.15質量%以上2.5質量%以下である。
第2繊維に占める第3抗菌剤の割合の算出方法については後述する。
【0054】
(繊維処理剤)
第1層11に含まれる第1繊維2は、その表面が第1繊維処理剤によって親水化処理されている。
第2層12に含まれる第2繊維6は、その表面が第2繊維処理剤によって親水化処理されている。
繊維処理剤で繊維表面を処理することで、排泄液によって表面材10を構成する繊維間に形成される液膜が取り除きやすくなり、排泄液が繊維間に残存しにくくなる。これにより、さらっとしたドライ感を着用者に与えることができる。
【0055】
第1繊維処理剤は、第1抗菌剤(抗菌性界面活性剤)を含む。更に、第1繊維処理剤は、初期親水性の付与、耐久親水性の付与、カード工程時の静電気の抑制、繊維の収束性を向上する等の目的でその他の成分を含んでもよい。
第2繊維処理剤は、第3抗菌剤(抗菌性界面活性剤)を含む。更に、第2繊維処理剤は、初期親水性の付与、耐久親水性の付与、カード工程時の静電気の抑制、繊維の収束性を向上する等の目的でその他の成分を含んでもよい。
【0056】
抗菌性界面活性剤である第1抗菌剤及び第3抗菌剤それぞれは、アニオン系、カチオン系、非イオン系界面活性剤いずれでも良い。特に皮膚への刺激性の観点から非イオン系界面活性剤又はアニオン系界面活性剤であることが好ましい。
アニオン系界面活性剤としては、スルホン酸型アニオン活性剤、硫酸エステル型アニオン活性剤、リン酸エステル型アニオン活性剤等を用いることができる。特に抗菌性や皮膚への刺激性の観点からアルキルリン酸エステル塩であることが好ましい。
非イオン系界面活性剤としては、エステル型非イオン活性剤、エーテル型非イオン活性剤等を用いることができる。特に抗菌性や皮膚への刺激性の観点からソルビタン脂肪酸エステルやしょ糖脂肪酸エステルであることが好ましい。
カチオン系界面活性剤としては、アルキルアミン塩型カチオン活性剤、第4級アンモニウム塩型カチオン活性剤等を用いることができる。特に抗菌性の観点から塩化アルキルベンジルジメチルアンモニウムであることが好ましい。
第1抗菌剤及び第3抗菌剤は、同じ系の界面活性剤であってもよいし、異なる系の界面活性剤であってもよい。
【0057】
上述したように、第1抗菌剤と第3抗菌剤とは水溶解性が同等であってもよいし異なってもよいが、排泄初期からの抗菌効果の持続の観点から、第1抗菌剤が第3抗菌剤より水に溶けやすい、すなわち水溶解性が高いことがより好ましい。
異なる界面活性剤を用いることにより、第1抗菌剤と第3抗菌剤の水溶解性を異ならせることができる。
【0058】
例えば、第1抗菌剤及び第3抗菌剤にアニオン系界面活性剤を用いる場合、第1抗菌剤及び第3抗菌剤として、互いに炭素数が異なるアルキルリン酸エステル塩を用いることで、第1抗菌剤と第3抗菌剤の水溶解性を異ならせることができる。
具体的には、第1抗菌剤として用いるアルキルリン酸エステル塩の炭素数を、第3抗菌剤として用いるアルキルリン酸エステル塩の炭素数よりも少なくすることで、第1抗菌剤の水溶解性を第3抗菌剤よりも高くすることができる。例えば、第1抗菌剤として炭素数が8~12のアルキルリン酸エステル塩を、第3抗菌剤として炭素数が12~18のアルキルリン酸エステル塩を用いることができる。
【0059】
アニオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤は、カチオン系界面活性剤よりも肌への刺激が少ない。
このため、第1抗菌剤及び第3抗菌剤のいずれか一方にアニオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤を用い、他方にカチオン系界面活性剤を用いる場合、着用者の肌に接する第1層11に配合される第1抗菌剤にアニオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤を用い、着用者の肌により遠く位置する第2層12に配合される第3抗菌剤にカチオン系界面活性剤を用いることが好ましい。
このような構成とすることで、肌への刺激が低減され、皮膚トラブルの発生を抑制することができる表面材10とすることができる。
また、カチオン系界面活性剤は、アニオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤よりも抗菌効果が高い傾向にあり、また、第3抗菌剤は直接肌に接しない第2層12に配合されるので、第1抗菌剤にアニオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤、第3抗菌剤にカチオン系界面活性剤を用いることで、肌への刺激を低減しつつも、高い消臭効果を得ることができる。
より具体的な実施形態としては、第1抗菌剤としてアルキルリン酸エステル塩を用い、第3抗菌剤として塩化ベンザルコニウムを用いる表面材10が挙げられる。
【0060】
(第2抗菌剤)
金属酸化物からなる第2抗菌剤としては、酸化亜鉛、酸化銀、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化銅等を用いることができる。これらの金属酸化物は1種を単独で用いてもよく、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも抗菌性、安全性、価格面より酸化亜鉛を含むことが好ましい。
本実施形態では、金属酸化物抗菌剤(第2抗菌剤)として酸化亜鉛を用いる例をあげる。後述する第2実施形態の表面材30においても、抗菌剤として酸化亜鉛を用いる例をあげるが、表面材30に用いる金属酸化物抗菌剤として、上記抗菌剤を用いることができる。
【0061】
(表面材10の製造方法)
肌側面及び非肌側面のいずれもが平坦面の表面材10は、例えば次のように製造することができる。
カード法などの公知の方法により製造した、第1繊維2からなる繊維ウエブと、第2繊維6からなる繊維ウエブとを積層し、この積層体を例えば公知のエアスルー加工等を利用して加熱処理する。斯かる加熱処理により、各繊維ウエブに含まれる繊維と繊維との交点が溶融、融着することで繊維間が結合され、不織布(表面材10)が製造される。
【0062】
[第2実施形態]
第2実施形態における表面材30について説明する。上述の実施形態と同様の構成については同様の符号を付し、説明を省略する場合がある。
第1実施形態の表面材10は、肌側面及び非肌側面の双方が平坦なフラット表面材であったが、これに限定されず、本実施形態の表面材30のように、凹凸面を有する凹凸表面材であってもよい。以下、説明する。
【0063】
(表面材30の構成)
図6に示すように、表面材30は、第2層32と、第2層32上に形成された第1層31とが積層されて構成される。表面材30は、肌側面30aが凹凸面、非肌側面30bが平坦面である凹凸表面材である。
【0064】
第1層31は、第1繊維2を含む繊維集合体から構成されている。第1層31は、表面材30の肌側面30aを構成する。肌側面30aは、複数の凸部33及び複数の凹部34が設けられた凹凸面となっている。
第2層32は、第2繊維6を含む繊維集合体から構成されている。第2層32は、表面材30の非肌側面30bを構成する。非肌側面30bは、平坦面となっている。
【0065】
第1層31及び第2層32はそれぞれ繊維材料のシート状物からなる。シート状物としては、例えばカード法により製造された不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布及びニードルパンチ不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布及びニードルパンチ不織布等の種々の不織布を用いることができる。
【0066】
表面材30を備えたおむつ1では、着用者の肌に接する表面材30の肌側面30aが凹凸面であることで、着用時、表面材30が部分的に、より詳細には、凸部33の頂部及びその近傍の領域が、肌に接しやすくなっており、表面材30の肌側面30aが肌に全面的に接触することに起因するべたつき感やムレ、擦れに起因する刺激感が低減される。
【0067】
図6に示すように、表面材30は、その肌側面30aに、複数の凹部34と複数の凸部33とを有する。凸部33は、肌側面30aの一面に複数形成される。凸部33どうしの間には、非肌側面30b側に向かって凹陥した凹部34が形成されている。
複数の凸部33は、これらが例えば千鳥格子状に形成されている。複数の凹部34も、同様に千鳥格子状に形成されている。尚、凸部33及び凹部34それぞれの形状及び配置は特に限定されない。
【0068】
凹部34は、第1層31と第2層32とが部分的に圧搾加工によって繊維が圧密化されて接合されて構成される。凹部34における圧密化は、表面材30を構成する繊維材料の溶融を伴う方法を利用してもよいし、繊維材料の溶融が伴わない方法を利用してもよい。繊維材料の溶融を伴う圧搾加工として、具体的には、熱を伴うエンボス加工、超音波エンボス等の公知のエンボス加工が挙げられ、凹部34はエンボス部ともいう。
【0069】
図6に示すように、凸部33は複数の凹部34間に位置する。凸部33は、平坦な第2層32の部分と、おむつ1としたときに着用者の肌に向かってドーム状に突出した第1層31の部分と、を有する。本実施形態の表面材30において、凸部33の内部は空洞であり、中空の凸部33となっている。凸部33内部の空洞部分を中空部35という。中空部35は、第1層31の非肌側面31bと第2層32の肌側面32aとにより囲まれて形成される。
【0070】
本実施形態の表面材30においても、第1実施形態の表面材10と同様に、第1層31に第1抗菌剤及び第2抗菌剤22が配合され、第2層32に第3抗菌剤が配合される。
第1抗菌剤及び第3抗菌剤は、界面活性剤であり、それぞれ、繊維表面を処理する第1繊維処理剤21及び第2繊維処理剤63に配合される。第2抗菌剤22は、金属酸化物抗菌剤である。第2抗菌剤22は、繊維に含有されており、より詳細には、繊維に練り込まれて配合される。このように、第1抗菌剤及び第3抗菌剤と、第2抗菌剤22とは、繊維への配合形態が異なっている。
第1層31に用いられる第1繊維2及び第2層32に用いられる第2繊維6は、第1実施形態で挙げた第1繊維2及び第2繊維6と同様の構成を有しており、ここでは説明を省略する。また、第1抗菌剤、第2抗菌剤、及び第3抗菌剤の水溶解性についても、第1実施形態と同様である。
【0071】
表面材30には、第1実施形態と同様に、抗菌性界面活性剤からなる抗菌剤(第1抗菌剤及び第3抗菌剤)と金属酸化物から成る抗菌剤(第2抗菌剤)というように、水溶解性及び繊維への配合形態が互いに異なる抗菌剤が複数種類用いられている。
このように、表面材30に、水溶解性及び繊維への配合形態が互いに異なる抗菌剤を複数種類用いることで、それぞれの抗菌剤をその特徴に合わせて効率的に配合することができる。これにより、全体的に少ない配合量の抗菌剤で、優れた抗菌効果が長時間にわたって安定的に発揮され得る表面材30を得ることができる。加えて、抗菌剤の配合量を全体的に少なくすることで、肌かぶれの原因となる排泄物由来の菌だけではなく、肌のバリア機能を助ける常在菌にも抗菌剤が作用して肌の常在菌のバランスがくずれてしまうという事態の発生が効果的に抑制され、肌かぶれしにくい表面材30を得ることができる。
以上のように、十分な抗菌効果を有しつつ、肌の常在菌のバランスが良好に保持されて肌かぶれしにくい表面材30を得ることができる。
【0072】
表面材30では、凹凸構造を有することで、第1実施形態の両面がフラット構造の表面材10と比較して、第1層31の凸部33の頂部に接する着用者の肌と第2層32との距離を、長く設定することができる。
このため、例えば肌への刺激は強いが抗菌効果の高い抗菌剤を、第2層32に用いる抗菌剤として用いる等、抗菌剤の材料選択の範囲を広げることができるとともに、抗菌効果を向上させつつ肌への刺激をより抑制する構成とすることができる。
一例として、第1層31に第1抗菌剤としてアニオン系界面活性剤若しくは、非イオン系界面活性剤を配合し、第2層32に第3抗菌剤として該アニオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤よりも肌への刺激が強いものの抗菌効果が高いカチオン系界面活性剤を配合することができ、肌への刺激を低減しつつも、高い消臭効果を得ることができる。
【0073】
また、表面材30において、中空部35を有することで、排泄液は、第1層31を通過した後、一時的に中空部35に貯留した後、第2層32へと移行する。中空部35に一時的に排泄液が貯留されることで、第1層31に留まりやすく配合されている第2抗菌剤22と排泄液とが接する頻度が高くなり、より抗菌効果が向上する。
【0074】
(表面材30の製造方法例)
以下、表面材30の製造方法例をあげるが、これに限定されない。
肌側面30aが凹凸面、非肌側面30bが平坦面の表面材30は、第1繊維2から構成される不織布と第2繊維6から構成される不織布とを重ね合わせ、これら不織布を部分的に接合することによって製造することができる。
第1繊維2からなる不織布は、表面材30の第1層31を構成する。
第2繊維6からなる不織布は、表面材30の第2層32を構成する。
【0075】
製造方法の一例として、特開2004-174234号公報に記載される製造方法を用いることができる。
すなわち、相互に噛み合う2つの、周面に凹凸形状を有するギアロール間に、第1層31となる不織布のシート状物を噛みこませることによって、当該シート状物が間欠的に延伸され、凹凸賦形加工がなされる。このように凹凸加工されたシート状物において、延伸された部分は凸部33を構成する。一方、延伸されない部分が、表面材30としたときに、凹部34を構成する。このように複数の凸部33が形成された第1層31となるシート状物を、第2層32となるシート状物に重ね合わせ、その重ね合わせたものを、少なくとも一方が所定温度に加熱された2つのロール間で狭圧し、部分的に接合する。これにより、第1層31と第2層32とは、圧密化して熱融着によって部分的に接合され、凹凸構造を有する表面材30が製造される。該表面材30における第1層31側の面(肌側面30a)は凹凸を有し、表面材30の第2層32側の面(非肌側面30b)はほぼ平坦である。
【0076】
<補足説明>
【0077】
[各抗菌剤の水に対する溶解度例]
以下に示す第1~第3抗菌剤それぞれの水に対する溶解度S1~S3は、後述する溶解度の測定方法により算出される。
【0078】
第2抗菌剤22が排泄液によって他の層へ移動し難くして、表面材10(又は表面材30)において第2抗菌剤(金属酸化物抗菌剤)と排泄物との効率的な接触を実現し、長時間にわたり、便等の排泄物による肌かぶれを防止する観点から、第2抗菌剤22は水難溶性若しくは水不溶性であることが好ましい。言い換えると、第2抗菌剤22の水溶解性が小さいことが好ましい。
具体的には、第2抗菌剤22の溶解度S2は、好ましくは0.01g/100ml以上0.5g/100ml以下、より好ましくは0.03g/100ml以上0.3g/100ml以下、更に好ましくは0.05g/100ml以上0.2g/100ml以下である。
【0079】
長時間にわたり、吸収体4での菌繁殖を抑制するという効果をより一層顕著なものとする観点から、第1抗菌剤(抗菌性界面活性剤)と第3抗菌剤(抗菌性界面活性剤)の溶解度が異なることが好ましく、第1抗菌剤の溶解度S1と第3抗菌剤の溶解度S3の差は、好ましくは0.2g/100ml以上、より好ましくは0.4g/100ml以上、更に好ましくは0.6g/100ml以上である。
【0080】
排尿や排便初期から速やかに吸収体4での菌繁殖を抑制する観点から、第1抗菌剤の溶解度S1は、好ましくは1g/100ml以上5g/100ml以下、より好ましくは1.5g/100ml以上4.5g/100ml以下、更に好ましくは2.0g/100ml以上4.0g/100ml以下である。
【0081】
長時間にわたり、吸収体4での菌繁殖を抑制する観点から、第3抗菌剤の溶解度S3は、好ましくは1g/100ml以上5g/100ml以下、より好ましくは1.5g/100ml以上4.5g/100ml以下、更に好ましくは2.0g/100ml以上4.0g/100ml以下である。
【0082】
(抗菌剤の溶解度の測定方法)
抗菌剤5gを100mlの水に加えて、室温(25℃)にて300rpmで30分間攪拌する。これとは別に、ろ紙の質量を測定し、測定された質量をろ紙の初期質量とする。
質量測定したろ紙を用いて、攪拌後の溶液をろ過し、該ろ紙を乾燥機にて40℃、2時間乾燥させる。乾燥後のろ紙の質量を測定し、測定された質量をろ紙の乾燥後質量とする。そして、下記式により溶解度を算出する。
溶解性(g)=5(g)―{(ろ紙の乾燥後質量)(g)-(ろ紙の初期質量)(g)}
このようにして算出した溶解性が大きいほど、水溶解性が大きいことを表し、該溶解性が小さいほど、水溶解性が小さいことを表す。
【0083】
[第1繊維(第2繊維)に占める第1抗菌剤(第3抗菌剤)の割合の算出方法]
第1層(第2層)が第1繊維2(第2繊維6)のみから構成される場合、第1抗菌剤(第3抗菌剤)を含有する第1繊維処理剤21(第2繊維処理剤63)によって処理された第1繊維2(第2繊維6)に占める抗菌性界面活性剤からなる第1抗菌剤(第3抗菌剤)の割合は、次のように算出することができる。
【0084】
表面材の第1層(第2層)から300mm2以上の切片を切り出す。切片の面積が300mm2に満たない場合には、複数箇所から切片を切り出し、その合計面積が300mm2以上となるようにする。そして、切片の質量を測定する。
前記切片について、非極性溶媒から極性溶媒までの多段階溶媒抽出法を行い、該切片に存在する抗菌剤(抗菌性界面活性剤)を分離し、単一の組成物を含んだ溶液を得る。得られた溶液を乾燥・固化させ、1H-NMR(核磁気共鳴法)、IR(赤外分光法)、LC(液体クロマトグラフィ)、GC(ガスクロマトグラフィ)、MS(質量分析法)、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)、蛍光X線などを複合して、抗菌剤の化学構造を同定する。また、特定した化学構造を有する抗菌剤を標準物質として、GC、LCなどの周知の分析手段によって検量線を作成し、切片中の抗菌剤を定量する。この定量結果に基づいて、切片中の抗菌剤の質量を求める。切片に抗菌剤が複数種類存在する場合、各種抗菌剤の質量の合計を求め、その合計を切片中の抗菌剤の質量とする。そして、切片中の抗菌剤の質量を、切片の質量で除して、100を乗じることで第1繊維(第2繊維)に占める第1抗菌剤(第3抗菌剤)の割合を算出する。
【0085】
尚、表面材を構成する第1層(第2層)は、少なくとも抗菌性界面活性剤からなる抗菌剤が配合されている繊維を含んでいればよく、抗菌性界面活性剤からなる抗菌剤が配合されていない繊維が含まれていてもよい。
【0086】
[第2抗菌剤の存在の確認方法]
金属酸化物からなる第2抗菌剤(金属酸化物抗菌剤)が繊維に練り込まれていることは、表面材を剃刀(例えばフェザー安全剃刀株式会社製片刃)で切断して測定片を得、該測定片の切断面を拡大して観察することで確認することができる。
例えば、測定片の切断面を日立製作所株式会社製S-4000型電界放射型操作電子顕微鏡を用いて倍率1000倍で観察する。
切断面観測から、繊維中の金属酸化物からなる第2抗菌剤が練り込まれて存在すること、鞘部の表面に金属酸化物からなる第2抗菌剤が露出していることを確認することができる。
また、切断面観測から、繊維の断面輪郭の他、例えば芯鞘型繊維であるか、単繊維構造であるかといった繊維構造を把握することができる。更に、芯鞘型繊維である場合、切断面観測により、芯部及び鞘部それぞれの面積比率を算出することができる。
また、切断面観測時に、既知の寸法のものを同時に写し込むことで、凸部33の高さ、各層の厚みといった各構成要素の寸法を求めることができる。
また、繊維断面をSEM-EDX分析することで、鞘部に含まれている剤が酸化亜鉛(第2抗菌剤)であることを確認することができる。
【0087】
[第1繊維に占める第2抗菌剤の割合の算出方法]
芯鞘型繊維(第1繊維)に占める第2抗菌剤(金属酸化物抗菌剤)の割合の算出方法について説明する。
測定対象の繊維を1gはかり取る。なお、1gを切り取ることが難しい場合は、任意の大きさに切り取ってその質量を測定し、以下、試薬等を当該質量に応じた量に変更して行う。
切断片をできるだけ小さく切り刻んで300mlビーカーに入れ、更に該ビーカーにイオン交換水200mlを入れてマグネティックスターラーで攪拌し、繊維が完全に水と触れるようにする。液を撹拌しながら濃塩酸(約10M)3mlを少しずつ加え、更に1時間撹拌し、第2層を構成する繊維の表面に存在する抗菌剤を溶出させる。次いで、5.1Mの水酸化ナトリウム水溶液を6ml加えて液を中和させた後、pH10.7の緩衝液(28質量%・NH3水溶液54.7mlと0.535gのNH4Clとを含み、イオン交換水で溶解させたもの)10mlを加えてpHの微調整を行う。
続いて、エリオクロムブラックT試薬(エリオクロムブラックT粉末0.125gと塩酸ヒドロキシルアミン1.125gを無水エタノール25mlに溶解させたもの)を指示薬として加え、液を淡いピンク色とする。0.0002MのEDTA・2Naを滴定液として用いて滴定を行い液がピンク色から淡い青~緑に変色したときの該滴定液の添加量(ml)を滴定値Aとする。そして、以下の式により抗菌剤の質量を算出する。下記式中の「5000000」は、1mоl当たりの滴定液の体積(ml)を意味する。
抗菌剤の質量(g)=滴定値A×抗菌剤1mоl当たりの質量/5000000
以上のようにして算出された抗菌剤の質量は、測定対象の繊維(第1繊維)の1g(単位質量)当たりに含まれる第2抗菌剤の配合量となる。したがって、算出された第2抗菌剤の質量を100倍した値が芯鞘型の第1繊維に占める第2抗菌剤の割合となる。
【0088】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0089】
例えば、以上の実施形態では、吸収性物品として使い捨ておむつの例を示したが、これに限定されない。本発明の吸収性物品は、例えば、尿取りパットやおりものシート、生理用ナプキン等であってもよく、これら吸収性物品の表面材として本発明の表面材を用いることができる。吸収性物品は、一般に、液透過性の表面材、液不透過性の裏面材、及び両シート間に介在配置された液保持性の吸収体を有して構成される。
【0090】
また、例えば、上述の実施形態では、表面材が2層から構成される例をあげたが、3層以上で構成されてもよい。この場合、表面材の肌側面を構成する第1層に抗菌性界面活性剤からなる第1抗菌剤と繊維に練り込まれた金属酸化物抗菌剤からなる第2抗菌剤が含まれ、該第1層よりも非肌側に位置する第2層に抗菌性界面活性剤からなる第3抗菌剤が含まれればよい。例えば、表面材は、上記第1層と上記第2層との間に他の層が介在する構成であってもよいし、肌側から非肌側に向かって上記第1層、上記第2層、他の層が順に位置する構成であってもよい。
【0091】
また、例えば、上述の第2の実施形態の表面材30においては、凸部33が中空構造である例をあげたが、中実構造であってもよい。
【0092】
また、上述の各実施形態の第1繊維及び第2繊維は、それぞれ、第1~第3抗菌剤以外の有機化合物などの抗菌剤を更に含んでいてもよい。
【0093】
また、抗菌剤配合繊維にスキンケア剤が含まれていてもよい。
スキンケア剤としては、疎水性スキンケア剤、親水性スキンケア剤等を用いることができる。
【0094】
疎水性スキンケア剤とは、水溶性及び水分散性を有さないか、また極めて溶解性が低い疎水性成分のことであり、且つ着用者の肌に対して保護、治癒等の効能を有する組成物又は化合物のことである。より具体的には、疎水性成分とは、成分の剤10gをイオン交換水1L中で混合した後に24時間静置したときの溶解量が1g未満のものを言い、好ましくは、0.1g以下の溶解量のものであり、特に好ましくは完全に溶解しないものである。
疎水性スキンケア剤としては、炭素鎖長12~28の脂肪酸又は該脂肪酸とグリセリンのエステル化合物や、ワックス、ワセリン等が挙げられ、特に、炭素差長12~28の不飽和脂肪酸又は該不飽和脂肪酸のグリセリンエステル化合物を含むことが好ましい。当該グリセリンエステルは、グリセリンと前述の不飽和脂肪酸のモノエステル、ジエステル又はトリエステルであるが、特に、トリエステルであることが好ましい。脂肪酸又は脂肪酸化合物を含む剤としては、アルガンオイル、シアバター等の天然物抽出成分が好ましく使用できる。特に、不飽和脂肪酸を含む疎水性の植物油であるアルガンオイルは、肌の水分と油分のバランスを保ち乾燥を防ぎ、スキンケア剤として機能する。また、アルガンオイルは、オレイン酸、リノール酸といった不飽和脂肪酸を多くふくみ、活性酸素除去力が強く、例えば日焼けによる肌のダメージを軽減させることができる。
【0095】
一方、親水性スキンケア剤とは、水溶性又は水分散性を有する親水性成分のことであり、かぶれや炎症の発生を抑制し、かぶれや炎症が生じた場合には、当該かぶれや炎症の進行を抑制するか、又は当該かぶれや炎症を緩和させることができるものであることが好ましい。より具体的には、親水性成分とは、成分の剤10gをイオン交換水1L中で混合した後に24時間静置したときの溶解量又は分散量が1g以上のものを言い、好ましくは、5g以上の溶解量又は分散量のものであり、より好ましくは、1g以上溶解するもの、一層好ましくは5g以上溶解するもので、最も好ましいのは、完全に溶解するものである。
親水性スキンケア剤としては、桃の葉エキス、ハマメリスエキス等の天然物抽出成分や炭鎖数が2~4の多価アルコール、ポリエチレングリコール、スキンケア等の機能を有する親水性化合物等を用いることができる。
これらの中でも、植物抽出エキスである桃の葉エキス(親水性エキス)は、抗菌作用、抗炎症作用を有することから好ましい。表面材に供給された液に親水性成分である桃の葉エキスがとけ、肌に移行することによりスキンケア効果が生じる。
炭鎖数が2~4の多価アルコールは、親水性成分であり、典型的には、1,3-ブチレングリコールである。1,3-ブチレングリコールを用いることにより、保湿効果と潤滑性が向上する。潤滑性が向上することにより、肌と不織布との摩擦を低減することができ、肌へのダメージが抑制される。1,3-ブチレングリコールは、保湿性のある液状の水溶性基剤成分で、さらっとした使用感でべたつきが少なく、肌の潤いを保つ。1,3-ブチレングリコールは、保湿剤として用いられる他、溶剤としても用いられる。例えば、桃の葉エキスをスキンケア剤として用いる場合、桃の葉エキスの溶剤として1,3-ブチレングリコールを用いることができる。尚、ここでは、1,3-ブチレングリコールを例にあげたが、炭鎖数が2~4の多価アルコールであれば同様の効果を示し、例えばプロピレングリコールを用いてもよい。プロピレングリコールも桃の葉エキス(親水性エキス)の抽出溶媒として用いることができる。
【0096】
本発明は以下の構成をとることもできる。
<1>
肌側面と非肌側面を有する吸収性物品の表面材であって、
前記肌側面を構成する繊維集合体からなる第1層と、前記第1層よりも非肌側に位置する繊維集合体からなる第2層とを有し、
前記第1層に第1抗菌剤及び第2抗菌剤が配合され、前記第2層に第3抗菌剤が配合され、
前記第1抗菌剤及び前記第3抗菌剤は界面活性剤であり、前記第1抗菌剤は前記第1層に含まれる繊維の第1繊維処理剤に含有され、前記第3抗菌剤は前記第2層に含まれる繊維の第2繊維処理剤に含有され、
前記第2抗菌剤は、金属酸化物抗菌剤であり、前記第1層に含まれる繊維に含有されており、
前記第1抗菌剤及び前記第3抗菌剤は、前記第2抗菌剤よりも、水への溶解性が高い
吸収性物品の表面材。
<2>
前記金属酸化物抗菌剤は前記第1層に含まれる繊維に練りこまれている
前記<1>に記載の吸収性物品の表面材。
<3>
前記第1抗菌剤を含有する前記第1繊維処理剤によって処理された繊維に占める前記第1抗菌剤の割合は、好ましくは0.1質量%以上3.0質量%以下であり、より好ましくは0.15質量%以上2.5質量%以下であり、
前記第3抗菌剤を含有する前記第2繊維処理剤によって処理された繊維に占める前記第3抗菌剤の割合は、好ましくは0.1質量%以上3.0質量%以下であり、より好ましくは0.15質量%以上2.5質量%以下である
前記<1>又は<2>請求項1に記載の吸収性物品の表面材。
<4>
前記第1抗菌剤は、前記第3抗菌剤よりも水への溶解性が高い
前記<1>から<3>のいずれか1に記載の吸収性物品の表面材。
<5>
前記第1抗菌剤の水に対する溶解度は、好ましくは1g/100ml以上5g/100ml以下、より好ましくは1.5g/100ml以上4.5g/100ml以下、更に好ましくは2.0g/100ml以上4.0g/100ml以下であり、
前記第3抗菌剤の水に対する溶解度は、好ましくは1g/100ml以上5g/100ml以下、より好ましくは1.5g/100ml以上4.5g/100ml以下、更に好ましくは2.0g/100ml以上4.0g/100ml以下である
前記<4>に記載の吸収性物品の表面材。
<6>
前記第1抗菌剤の水に対する溶解度と前記第3抗菌剤の水に対する溶解度との差は、好ましくは0.2g/100ml以上、より好ましくは0.4g/100ml以上、更に好ましくは0.6g/100ml以上である
前記<4>又は<5>に記載の吸収性物品の表面材。
<7>
前記第2抗菌剤の水に対する溶解度は、好ましくは0.01g/100ml以上0.5g/100ml以下、より好ましくは0.03g/100ml以上0.3g/100ml以下、更に好ましくは0.05g/100ml以上0.2g/100ml以下である。
前記<1>から<6>のいずれか1に記載の吸収性物品の表面材。
<8>
前記第2抗菌剤を含有する繊維は、芯部と鞘部とを有する芯鞘型繊維であり、前記鞘部にのみ前記第2抗菌剤が配合され、維維表面に前記第2抗菌剤が露出している
前記<1>から<7>のいずれか1に記載の吸収性物品の表面材。
<9>
前記芯鞘型繊維に占める前記第2抗菌剤の割合は、好ましくは0.05質量%以上2.5質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以上2.0質量%以下である
前記<8>に記載の吸収性物品の表面材。
<10>
前記第2抗菌剤は酸化亜鉛である
前記<1>から<9>のいずれか1に記載の吸収性物品の表面材。
<11>
前記第2層には、金属酸化物抗菌剤は含まれない
前記<1>から<10>のいずれか1に記載の吸収性物品の表面材。
<12>
前記肌側面は凹凸面である
前記<1>から<11>のいずれか1に記載の吸収性物品の表面材。
<13>
吸収体と、
前記吸収体の肌側面側に位置する、前記<1>から<12>のいずれか1に記載の表面材と
を備える吸収性物品。
【符号の説明】
【0097】
1…使い捨ておむつ(吸収性物品)
2…第1繊維
6…第2繊維
10、30…表面材(吸収性物品の表面材)
11、31…第1層
12、32…第2層
21…第1繊維処理剤
22…第2抗菌剤
63…第2繊維処理剤