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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179183
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】半導体モジュール及び電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/07 20060101AFI20231212BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20231212BHJP
   H01L 23/48 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H01L21/60 321V
H01L23/48 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092333
(22)【出願日】2022-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】矢野 新也
(72)【発明者】
【氏名】沼倉 啓一郎
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 裕一
(57)【要約】
【課題】半導体素子の一方の面に複数のリードフレームを接合する場合であっても、はんだの厚みを均一化してリードフレーム間で短絡が生じることを防止する。
【解決手段】半導体モジュール1は、複数のリードフレーム5、7と、複数のリードフレーム5、7が一方の面に接続される半導体素子3と、半導体素子3の他方の面に配置された放熱部材9と、複数のリードフレーム5、7を固定して支持する支持部材11とを備え、支持部材11は、複数のリードフレーム5、7の間に設けられた第1支持部25と、複数のリードフレーム5、7と放熱部材との間に設けられた第2支持部27とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のリードフレームと、
前記複数のリードフレームが一方の面に接続される半導体素子と、
前記半導体素子の他方の面に配置された放熱部材と、
前記複数のリードフレームを固定して支持する支持部材とを備え、
前記支持部材は、
前記複数のリードフレームの間に設けられた第1支持部と、
前記複数のリードフレームと前記放熱部材との間に設けられた第2支持部とを有する半導体モジュール。
【請求項2】
前記第1支持部は、前記複数のリードフレームの間の領域の前記リードフレームの上面から下面まで形成されている請求項1に記載の半導体モジュール。
【請求項3】
前記半導体素子は、前記複数のリードフレームが接続される複数の主電極を、前記一方の面に備えている請求項1に記載の半導体モジュール。
【請求項4】
前記半導体素子と前記複数のリードフレームとを接合する接合部材は、はんだである請求項1に記載の半導体モジュール。
【請求項5】
前記支持部材は、前記半導体素子と前記複数のリードフレームとを接合するはんだの溶融温度で、前記複数のリードフレームを支持することが可能な樹脂材料で形成されている請求項4に記載の半導体モジュール。
【請求項6】
前記半導体素子と前記放熱部材とを接合する接合部材は、前記半導体素子と前記複数のリードフレームとを接合するはんだの溶融温度で、予め設定された一定の厚さを保つことのできる接合材である請求項4に記載の半導体モジュール。
【請求項7】
前記半導体素子は、前記半導体素子内を流れる電流量を制御する制御電極を備え、前記支持部材は、前記制御電極が設けられた側の前記複数のリードフレームの側面に形成された側面部を有する請求項1~6のいずれか1項に記載の半導体モジュール。
【請求項8】
前記複数のリードフレームは、前記半導体素子と接合される部分に貫通孔が形成されている請求項1~6のいずれか1項に記載の半導体モジュール。
【請求項9】
前記半導体素子は、ワイドバンドギャップ半導体である請求項1~6のいずれか1項に記載の半導体モジュール。
【請求項10】
請求項1~6のいずれか1項に記載の半導体モジュールを備えた電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体モジュール及び電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来では、基板の上に配置された半導体チップと半導体チップの表面に形成された電極と接合されたリードフレームから構成される半導体装置において、半導体チップとリードフレーム間を接続するはんだの厚さを制御するための半導体装置が特許文献1に開示されている。特許文献1に開示された半導体装置では、基板とリードフレームの間にスペーサを設けて、半導体チップと基板との間のはんだの厚みと、半導体チップとリードフレームとの間のはんだの厚みを均一化していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-125678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の半導体装置では、半導体チップの一方の面に複数のリードフレームを接合する場合には、リードフレーム間の隙間が狭くなり、リードフレーム間にスペーサを設置することが困難になる。したがって、スペーサを設置できないことによって、はんだの厚みを均一化することができず、はみ出たはんだが這い上がることによってリードフレーム間で短絡が生じてしまうという問題点があった。
【0005】
そこで、本発明は上記実情に鑑みて提案されたものであり、半導体素子の一方の面に複数のリードフレームを接合する場合であっても、はんだの厚みを均一化してリードフレーム間で短絡が生じることを防止できる半導体モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様に係る半導体モジュールは、複数のリードフレームが一方の面に接続される半導体素子と、半導体素子の他方の面に配置された放熱部材と、複数のリードフレームを固定して支持する支持部材とを備えている。そして、支持部材は、複数のリードフレームの間に設けられた第1支持部と、複数のリードフレームと放熱部材との間に設けられた第2支持部とを有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、半導体素子の一方の面に複数のリードフレームを接合する場合であっても、はんだの厚みを均一化してリードフレーム間で短絡が生じることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態に係る半導体モジュールの構造を示す図2のB-B線の断面図である。
図2図2は、第1実施形態に係る半導体モジュールの構造を示す図1のA-A線の断面図である。
図3A図3Aは、第1実施形態に係る半導体モジュールを構成する支持部材の構造を示す上面図である。
図3B図3Bは、第1実施形態に係る半導体モジュールを構成する支持部材の構造を示す側面図である。
図3C図3Cは、第1実施形態に係る半導体モジュールを構成する支持部材の構造を示す側面図である。
図3D図3Dは、第1実施形態に係る半導体モジュールを構成する支持部材の構造を示す底面図である。
図4図4は、第1実施形態に係る半導体モジュールの製造方法を説明するための側面図である。
図5図5は、第1実施形態に係る半導体モジュールの製造方法を説明するための側面図である。
図6図6は、第1実施形態に係る半導体モジュールの製造方法を説明するための側面図である。
図7図7は、第2実施形態に係る半導体モジュールの構造を示す断面図である。
図8A図8Aは、第2実施形態に係る半導体モジュールを構成する支持部材の構造を示す上面図である。
図8B図8Bは、第2実施形態に係る半導体モジュールを構成する支持部材の構造を示す図8AのC-C線の断面図である。
図9図9は、第2実施形態に係る半導体モジュールの製造方法を説明するための側面図である。
図10図10は、第2実施形態に係る半導体モジュールの製造方法を説明するための図11のD-D線の断面図である。
図11図11は、第2実施形態に係る半導体モジュールの製造方法を説明するための上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1実施形態]
以下、本発明を適用した第1実施形態について図面を参照して説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0010】
[半導体モジュールの構造]
図1、2を参照して、本実施形態に係る半導体モジュールの構造を説明する。図1は、本実施形態に係る半導体モジュールの構造を示す図2のB-B線の断面図であり、図2は、本実施形態に係る半導体モジュールの構造を示す図1のA-A線の断面図である。
【0011】
半導体モジュール1は、インバータやコンバータなどの電力変換装置に使用されるパワー半導体モジュールである。図1、2に示すように、半導体モジュール1は、半導体素子3と、第1リードフレーム5と、第2リードフレーム7と、放熱部材9と、支持部材11と、封止材13を備えている。また、半導体素子3と第1リードフレーム5との間は第1接合部材17で接合され、半導体素子3と第2リードフレーム7との間は第2接合部材19で接合され、半導体素子3と放熱部材9との間は第3接合部材21で接合されている。
【0012】
半導体素子3は、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)等の電力用スイッチング半導体素子や還流ダイオード等の電力用整流半導体素子として機能する半導体チップである。半導体素子3のデバイス構造としては、いわゆる横型の半導体デバイスであり、チップ上面に異なる電位の主電極を複数備えている。
【0013】
例えば、半導体素子3がMOSFETである場合には、ドレイン電極とソース電極とゲート電極を備え、ダイオードである場合には、アノード電極とカソード電極を備えている。この他に、半導体素子3内を流れる電流量を制御する制御電極を備えていてもよく、制御用のソース電極や温度検出用の電極、電流検出用の電極を備えていてもよい。電極は、主にアルミニウムや銅などの金属材料で構成されているが、その表面は、はんだ接合のためにめっきでニッケルなどの金属が形成されていてもよい。本実施形態では、一例として半導体素子3がMOSFETである場合について説明する。
【0014】
また、半導体素子3の材料として、シリコン材料が一般的であるが、より高性能な半導体チップを実現するために、半導体素子3が、炭化珪素や窒化ガリウムなどのワイドバンドギャップ半導体であってもよい。
【0015】
第1リードフレーム5はドレイン電極に接続された金属板の配線であり、第2リードフレーム7はソース電極に接続された金属板の配線である。金属材料としては、銅やアルミニウム、銅のクラッド材料などが使用される。第1リードフレーム5は第1接合部材17によって半導体素子3に接合され、第2リードフレーム7は第2接合部材19によって半導体素子3に接合されている。第1接合部材17と第2接合部材19は、はんだや焼結銀などの金属で形成されている。
【0016】
尚、第1リードフレーム5及び第2リードフレーム7と半導体素子3との間に応力緩和用の銅や銅モリブデンなどで構成される金属板材料を設け、その上下をはんだや焼結銀で接合するという構成としてもよい。第1リードフレーム5と第2リードフレーム7は、はんだ接合のために、表面にニッケルなどのめっきが行われていてもよい。さらに、はんだが広がりすぎないようにレジストを設けてもよいし、樹脂を充填しやすくするための穴を開けるなどの加工が行われていてもよい。
【0017】
放熱部材9は、銅を主成分とした熱伝導率が高い金属材料で形成された金属板である。放熱部材9は、半導体素子3の下面に配置され、半導体素子3で発生した熱を図示していない冷却器に放熱する機能を有する。ただし、銅の他にもアルミニウム、銅モリブデンなどの熱伝導率の高い金属材料で形成されていてもよい。放熱部材9は、第3接合部材21によって半導体素子3と接合されている。第3接合部材21は、はんだや焼結銀などの金属で形成されている。
【0018】
尚、半導体素子3が縦型の半導体素子である場合には、放熱部材9として、例えばセラミック基板のような絶縁機能を有する材料を用いる必要がある。しかし、本実施形態では半導体素子3が横型の半導体素子を採用しているので、放熱部材9に絶縁機能を有する材料を用いる必要がなく、高い放熱性能を実現することができる。特に、放熱部材9の放熱効果を高めるために、1mm以上の厚い材料を用いることによって、より放熱性能を向上させることができる。本実施形態では、一例として放熱部材9に銅を用いた場合について説明する。
【0019】
支持部材11は、第1及び第2リードフレーム5、7を固定し、第1及び第2リードフレーム5、7を放熱部材9に対して支持する。支持部材11は、絶縁性を有し、リフロー工程で第1及び第2リードフレーム5、7と半導体素子3を接合するはんだの溶融温度になっても溶けることなく、第1及び第2リードフレーム5、7を支持することが可能な材料で形成されている。例えば、支持部材11は、液晶ポリマーなどの樹脂材料で形成されている。
【0020】
ここで、図3A~Dを参照して、支持部材11の構造を説明する。図3Aは支持部材11の上面図、図3B図3AのX方向から見た側面図、図3C図3AのY方向から見た側面図、図3Dは底面図である。
【0021】
図3A~Dに示すように、支持部材11は、上面部23と、第1支持部25と、第2支持部27と、側面部29とを有する。
【0022】
上面部23は、第1及び第2リードフレーム5、7の上面の一部を覆い、第1支持部25とともに、第1リードフレーム5と第2リードフレーム7を連結して固定する。
【0023】
第1支持部25は、第1リードフレーム5と第2リードフレーム7の間に設けられ、第1リードフレーム5と第2リードフレーム7を連結して固定する。第1支持部25は、第1リードフレーム5と第2リードフレーム7の間に設けられているので、第1リードフレーム5と第2リードフレーム7の間で短絡が生じることを防止できる。
【0024】
特に、第1支持部25は、第1リードフレーム5と第2リードフレーム7の間の領域の全体、すなわち第1及び第2リードフレーム5、7の上面から下面まで形成されている。したがって、第1支持部25は、第1及び第2リードフレーム5、7の間に、はんだが這い上がることを完全に防止することができるので、第1リードフレーム5と第2リードフレーム7の間で短絡が生じることを確実に防止できる。
【0025】
第2支持部27は、第1及び第2リードフレーム5、7と放熱部材9との間に設けられ、第1及び第2リードフレーム5、7と放熱部材9との間の距離を所定の距離に保っている。すなわち、半導体素子3と第1及び第2接合部材17、19と第3接合部材21の厚さの合計が、予め設定された所定の値になるように、第2支持部27の高さが設定されている。
【0026】
ここで、半導体素子3の高さは一定値で変化しないので、第3接合部材21に一定の厚さを保つことのできる接合材を用いれば、第2支持部27の高さが設定されているので、第1及び第2接合部材17、19を所望の厚さに形成することができる。また、左右にある2つの第2支持部27が、同じ高さで第1及び第2リードフレーム5、7を支持するので、第1接合部材17の厚さと第2接合部材19の厚さを均一な厚さに形成することができる。
【0027】
側面部29は、第1及び第2リードフレーム5、7の側面の一部を覆い、上面部23と第1支持部25とともに、第1リードフレーム5と第2リードフレーム7を連結して固定する。半導体素子3が制御電極を備えている場合には、図2に示すように制御ワイヤ31、33が制御電極に接続されている。そこで、側面部29を、制御電極が設けられている側の第1及び第2リードフレーム5、7の側面に形成すれば、第1及び第2接合部材17、19のはんだが制御ワイヤ31、33の側にはみ出て這い上がることを防止できる。
【0028】
図2では、第1及び第2接合部材17、19のはんだがはみ出て、這い上がることによって、這い上がり部40、42を形成している。しかし、側面部29を制御ワイヤ31、33の側の側面に形成したことにより、這い上がり部40、42は制御ワイヤ31、33の反対側に形成されている。したがって、第1及び第2接合部材17、19のはんだと制御ワイヤ31、33が短絡することによって、制御ワイヤ31、33が放電することを防止できる。
【0029】
封止材13は、半導体素子3の周囲に充填された樹脂であり、具体的に、封止材13は、半導体素子3及び支持部材11の周囲と、放熱部材9の全体と、第1及び第2リードフレーム5、7の上面を被覆して、半導体モジュール1の全体を被覆している。図1では、放熱部材9の上面と側面が封止材13で被覆されているが、放熱部材9の下面も封止材13で被覆してもよい。封止材13としては、例えば樹脂のポッティング材料やゲルが使用され、トランスファ成形によって形成されている。
【0030】
[半導体モジュールの製造方法]
次に、図3~6を参照して、本実施形態に係る半導体モジュールの製造方法を説明する。まず、図3A~Dに示すように、第1リードフレーム5と第2リードフレーム7を支持部材11で連結するように、第1及び第2リードフレーム5、7と支持部材11を一体に形成する。例えば、第1リードフレーム5と第2リードフレーム7と支持部材11をトランスファモールドなどの工法で一体に成形すればよい。このとき、はんだを実装できるように、はんだが実装される箇所の樹脂やバリを必要に応じて研磨などで除去しておくようにする。
【0031】
次に、図4に示すように、半導体素子3と放熱部材9を第3接合部材21で接合する。図4は、接合した後の状態を示す側面図である。第3接合部材21は、はんだであり、リフロー工程を行うことによって接合する。このとき、半導体素子3の傾きを防止するために、第3接合部材21として、第1及び第2リードフレーム5、7と半導体素子3を接合するはんだの溶融温度になっても、予め設定された一定の厚さを保つことのできる接合材を用いる。例えば、ニッケルボール入りのはんだを使用すればよい。また、半導体素子3の傾きを防止するために、ワイヤを用いてもよいし、放熱部材9に銅の突起を設けてもよい。
【0032】
さらに、第3接合部材21として、第1接合部材17と第2接合部材19の接合時に溶融しない焼結銀のような接合材を用いてもよい。この場合、第1及び第2リードフレーム5、7を半導体素子3と接合するときにリフロー工程を行っても、第3接合部材21は溶融しないので、その厚さを一定に保つことができ、半導体素子3の傾きを防止することができる。同様に、第3接合部材21として高融点のはんだを用いた場合も、溶融しないので、第3接合部材21の厚さを一定に保つことができ、半導体素子3の傾きを防止することができる。
【0033】
こうして半導体素子3に放熱部材9が接合されると、次に第1リードフレーム5と半導体素子3を第1接合部材17で接合し、第2リードフレーム7と半導体素子3を第2接合部材19で接合する。図5に示すように、第1及び第2リードフレーム5、7と支持部材11が一体に形成された部材を、半導体素子3と放熱部材9が接合された部材の上に設置する。図5は、設置した後の状態を示す側面図である。
【0034】
このとき、第1リードフレーム5と半導体素子3を接合する箇所に第1接合部材17を配置し、第2リードフレーム7と半導体素子3を接合する箇所に第2接合部材19を配置する。第1及び第2接合部材17、19ははんだであり、はんだの量を多めにすることによって、図5に示すように、隙間60ができて、支持部材11が放熱部材9から浮いている状態にする。
【0035】
この後、上部から荷重をかけた状態でリフロー炉内の温度をはんだ溶融温度まで上げると、はんだが溶融する。その結果、図6に示すように、支持部材11が放熱部材9に接するまで沈むので、第1及び第2リードフレーム5、7と放熱部材9との間の距離を、第2支持部27の高さに設定することができる。図6は、第1及び第2リードフレーム5、7を接合した後の状態を示す側面図である。
【0036】
尚、第1及び第2接合部材17、19のはんだの量を多めにしているので、接合する際にはんだがはみ出て、第1及び第2リードフレーム5、7の側面に這い上がることになる。しかし、本実施形態では、図2に示すように、制御ワイヤ31、33が設けられた側の第1及び第2リードフレーム5、7の側面は、側面部29で覆われており、第1及び第2リードフレーム5、7の間も第1支持部25が設けられている。
【0037】
したがって、はんだは制御ワイヤ31、33の反対側の側面を這い上がり、這い上がり部40、42を形成して固まる。これにより、第1及び第2リードフレーム5、7の間ではんだが短絡することを防止できるだけではなく、制御ワイヤ31、33とはんだが短絡して放電することも防止できる。
【0038】
こうして、第1及び第2リードフレーム5、7と半導体素子3が接続されると、アルミニウムや銅、金、銀などの金属ワイヤで形成された制御ワイヤ31、33をゲート電極や制御用のソース電極にボンディングする。この後、トランスファモールド成形か樹脂ポッティングによって、封止材13を形成すると、本実施形態に係る半導体モジュール1が完成する。さらに、半導体モジュール1をグリースなどで冷却器に取り付けてもよいし、接合材を用いて冷却器と接合してもよい。
【0039】
[第1実施形態の効果]
以上、詳細に説明したように、本実施形態に係る半導体モジュール1は、複数のリードフレーム5、7と、半導体素子3と、放熱部材9と、複数のリードフレーム5、7を固定して支持する支持部材11とを備えている。そして、支持部材11は、複数のリードフレーム5、7の間に設けられた第1支持部25と、複数のリードフレーム5、7と放熱部材9との間に設けられた第2支持部27とを有する。これにより、半導体素子3の一方の面に複数のリードフレーム5、7を接合する場合であっても、はんだの厚みを均一化してリードフレームが短絡することを防止できる。
【0040】
特に、本実施形態では、第1支持部25を、第1リードフレーム5と第2リードフレーム7の間に設けているので、第1リードフレーム5と第2リードフレーム7の間の短絡を防止することができる。また、第2支持部27を、第1及び第2リードフレーム5、7と放熱部材9との間に設けているので、第1及び第2リードフレーム5、7と放熱部材9との間の距離を所定の距離に保つことができる。これにより、第1及び第2接合部材17、19のはんだの厚みを均一な厚さに形成することができる。さらに、本実施形態では、第1及び第2リードフレーム5、7の間の距離を近くでき、チップあたりの接合面積を大きくできるので、放熱性能を向上させることができるとともに、抵抗や寄生インダクタンスを低減することができる。このように、本実施形態に係る半導体モジュール1によれば、高い信頼性と高い性能を有するパワーモジュールを実現することができる。
【0041】
また、本実施形態に係る半導体モジュール1では、第1支持部25が、複数のリードフレーム5、7の上面から下面まで形成されている。これにより、第1及び第2リードフレーム5、7の間に、はんだが這い上がることを完全に防止することができる。したがって、第1リードフレーム5と第2リードフレーム7の間の短絡を確実に防止することができる。
【0042】
さらに、本実施形態に係る半導体モジュール1では、半導体素子3が、複数のリードフレーム5、7が接続される複数の主電極を一方の面に備えている。複数の主電極を一方の面に備えた横型の半導体デバイスでは、リードフレームの間の距離が近くなる。したがって、本実施形態に係る半導体モジュール1を横型の半導体デバイスに適用することによって、第1及び第2リードフレーム5、7の間の距離が近くなったとしても、第1及び第2リードフレーム5、7の間の短絡を防止することができる。
【0043】
また、本実施形態に係る半導体モジュール1では、半導体素子3と複数のリードフレーム5、7とを接合する接合部材が、はんだである。これにより、リフロー工程を行うことで、半導体素子3と複数のリードフレーム5、7を容易に接合することができる。
【0044】
さらに、本実施形態に係る半導体モジュール1では、支持部材11が、半導体素子3と複数のリードフレーム5、7とを接合するはんだの溶融温度で、複数のリードフレーム5、7を支持することが可能な樹脂材料で形成されている。これにより、リフロー工程を行っても第1及び第2リードフレーム5、7を所定の高さに支持することができるので、半導体素子3と第1及び第2リードフレーム5、7とを接続するはんだの厚みを均一化することができる。
【0045】
また、本実施形態に係る半導体モジュール1では、半導体素子3と放熱部材9とを接合する接合部材が、半導体素子3と複数のリードフレーム5、7とを接合するはんだの溶融温度で、予め設定された一定の厚さを保つことができる接合材である。これにより、はんだの厚みを一定の値に管理することができるので、半導体素子3の傾きを抑制することができる。さらに、第1及び第2接合部材17、19の厚さを、予め設定された所定の厚さに形成することができる。
【0046】
さらに、本実施形態に係る半導体モジュール1では、半導体素子3が制御電極を備え、支持部材11は、複数のリードフレーム5、7の制御電極が設けられた側の側面に形成された側面部29を有している。これにより、制御電極が設けられた側に、はんだが這い上がることを防止できるので、制御ワイヤ31、33がはんだと短絡して、放電が発生することを防止できる。
【0047】
また、本実施形態に係る半導体モジュール1では、半導体素子3がワイドバンドギャップ半導体で構成されている。ワイドバンドギャップ半導体では、チップの面積が小さくなるので、第1及び第2リードフレーム5、7の間で短絡しやすくなる。したがって、本実施形態に係る半導体モジュール1をワイドバンドギャップ半導体に適用することによって、チップの面積が小さくなったとしても、より効果的にリードフレーム5、7の間の短絡を防止することができる。
【0048】
さらに、本実施形態では、半導体モジュール1を備えた電力変換装置を構成している。これにより、放熱性能が高く、信頼性も高い半導体モジュール1を用いて電力変換装置を構成するので、放熱性能が高く、高い信頼性を有する電力変換装置を実現することができる。
【0049】
[第2実施形態]
以下、本発明を適用した第2実施形態について図面を参照して説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0050】
図7は、本実施形態に係る半導体モジュール1の構造を示す断面図である。図7に示すように、本実施形態に係る半導体モジュール1では、第1リードフレーム5の半導体素子3と接続される部分に貫通孔51が形成されていることが第1実施形態と相違している。同様に、第2リードフレーム7の半導体素子3と接続される部分には、貫通孔53が形成されている。そして、これらの貫通孔51、53の中には、第1及び第2リードフレーム5、7を半導体素子3に接合するときに、第1及び第2接合部材17、19が流入している。
【0051】
第1実施形態では、第1及び第2リードフレーム5、7を接合するときに、第1及び第2接合部材17、19が、第1及び第2リードフレーム5、7の側面にはみ出て、這い上がり部40、42を形成していた。
【0052】
しかし、本実施形態では、貫通孔51、53を形成したので、第1及び第2接合部材17、19が、第1及び第2リードフレーム5、7の側面にはみ出ることはなくなる。したがって、制御ワイヤ31、33が第1及び第2接合部材17、19のはんだと短絡することによって、制御ワイヤ31、33が放電することを防止できる。
【0053】
ここで、図8A、Bを参照して、支持部材11の構造を説明する。図8Aは支持部材11の構造を示す上面図、図8B図8AのC-C線における断面図である。図8A、Bに示すように、支持部材11は、第1支持部25と、第2支持部27とを有する。
【0054】
第1支持部25は、第1リードフレーム5と第2リードフレーム7の間に設けられ、第1リードフレーム5と第2リードフレーム7を連結して固定する。第1支持部25は、第1リードフレーム5と第2リードフレーム7の間に設けられているので、第1リードフレーム5と第2リードフレーム7の間の短絡を防止することができる。
【0055】
第2支持部27は、第1及び第2リードフレーム5、7と放熱部材9との間に設けられ、第1及び第2リードフレーム5、7と放熱部材9との間の距離を所定の距離に保っている。すなわち、半導体素子3と第1及び第2接合部材17、19と第3接合部材21の厚さの合計が、予め設定された所定の値になるように、第2支持部27の高さが設定されている。
【0056】
[半導体モジュールの製造方法]
次に、図8~11を参照して、本実施形態に係る半導体モジュールの製造方法を説明する。まず、図8A、Bに示すように、第1及び第2リードフレーム5、7と支持部材11を一体に形成する。例えば、第1リードフレーム5と第2リードフレーム7と支持部材11をトランスファモールドなどの工法で一体に成形すればよい。このとき、はんだを実装できるように、はんだが実装される箇所の樹脂やバリを必要に応じて研磨などで除去しておくようにする。
【0057】
次に、第1実施形態の図4と同様に半導体素子3と放熱部材9を第3接合部材21で接合する。半導体素子3に放熱部材9が接合されると、次に第1リードフレーム5と半導体素子3を第1接合部材17で接合し、第2リードフレーム7と半導体素子3を第2接合部材19で接合する。図9に示すように、第1及び第2リードフレーム5、7と支持部材11が一体に形成された部材を、半導体素子3と放熱部材9が接合された部材の上に設置する。図9は、設置した後の状態を示す側面図である。
【0058】
このとき、第1リードフレーム5と半導体素子3を接合する箇所に第1接合部材17を配置し、第2リードフレーム7と半導体素子3を接合する箇所に第2接合部材19を配置する。第1及び第2接合部材17、19ははんだであり、はんだの量を多めにすることによって、図9に示すように、隙間60ができて、支持部材11が放熱部材9から浮いている状態にする。
【0059】
この後、上部から荷重をかけた状態でリフロー炉内の温度をはんだ溶融温度まで上げると、はんだが溶融する。その結果、図10に示すように、支持部材11が放熱部材9に接するまで沈むので、第1及び第2リードフレーム5、7と放熱部材9との間の距離を、第2支持部27の高さに設定することができる。図10は、第1及び第2リードフレーム5、7を接合した後の状態を示す断面図である。
【0060】
尚、第1及び第2接合部材17、19のはんだを多めに用いているので、図10、11に示すように、接合する際にはんだが貫通孔51、53内に流入する。したがって、はんだが、第1及び第2リードフレーム5、7の側面にはみ出て這い上がることはないので、制御ワイヤ31、33が第1及び第2接合部材17、19のはんだと短絡することによって、制御ワイヤ31、33が放電することを防止できる。
【0061】
こうして、第1及び第2リードフレーム5、7と半導体素子3が接続されると、アルミニウムや銅、金、銀などの金属ワイヤで形成された制御ワイヤ31、33をゲート電極や制御用のソース電極にボンディングする。この後、トランスファモールド成形か樹脂ポッティングによって、封止材13を形成すると、本実施形態に係る半導体モジュール1が完成する。さらに、半導体モジュール1をグリースなどで冷却器に取り付けてもよいし、接合材を用いて冷却器と接合してもよい。
【0062】
[第2実施形態の効果]
以上、詳細に説明したように、本実施形態に係る半導体モジュール1では、複数のリードフレーム5、7の半導体素子3と接合される部分に貫通孔51、53が形成されている。これにより、第1及び第2接合部材17、19のはんだは貫通孔51、53に流入するので、はんだが制御ワイヤ31、33と短絡して、制御ワイヤ31、33が放電することを防止できる。
【0063】
なお、上述の実施形態は本発明の一例である。このため、本発明は、上述の実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計などに応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0064】
1 半導体モジュール
3 半導体素子
5 第1リードフレーム
7 第2リードフレーム
9 放熱部材
11 支持部材
13 封止材
17 第1接合部材
19 第2接合部材
21 第3接合部材
23 上面部
25 第1支持部
27 第2支持部
29 側面部
31、33 制御ワイヤ
40、42 這い上がり部
51、53 貫通孔
60 隙間
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11