(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179190
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】自動分析装置
(51)【国際特許分類】
G01N 35/02 20060101AFI20231212BHJP
G01N 35/00 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
G01N35/02 C
G01N35/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092346
(22)【出願日】2022-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 昌造
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058CE03
2G058CE08
2G058GC02
2G058GC05
2G058GC08
(57)【要約】
【課題】 不十分な状態の標準試料の使用を防止すること。
【解決手段】 実施形態に係る自動分析装置は、被検試料又は標準試料と試薬とを反応容器に分注し、前記反応容器内の混合液を測定する。前記自動分析装置は、第1取得部と、更新部とを具備する。前記第1取得部は、前記標準試料を収容した標準試料容器から、項目情報と、キャリブレータ又は精度管理試料を識別する識別情報と、濃度とのうちの少なくとも1つ以上を含む標準試料情報を取得する。前記更新部は、前記標準試料情報が取得されると、前記標準試料の状態に関する状態情報を更新する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検試料又は標準試料と試薬とを反応容器に分注し、前記反応容器内の混合液を測定する自動分析装置であって、
前記標準試料を収容した標準試料容器から、項目情報と、キャリブレータ又は精度管理試料を識別する識別情報と、濃度とのうちの少なくとも1つ以上を含む標準試料情報を取得する第1取得部と、
前記標準試料情報が取得されると、前記標準試料の状態に関する状態情報を更新する更新部と
を具備する自動分析装置。
【請求項2】
前記第1取得部は、ユーザの指示を受け付けた時点と、前記標準試料を用いる前記測定の準備段階の開始時点とのうちの少なくとも1つの時点で前記標準試料情報を取得する、請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
被検試料又は標準試料と試薬とを反応容器に分注し、前記反応容器内の混合液を測定する自動分析装置であって、
ユーザの操作に応じて入力される前記標準試料に関する標準試料情報であって、項目情報と、キャリブレータ又は精度管理試料を識別する識別情報と、濃度とを含む前記標準試料情報の前記入力を受け付けることで、前記標準試料情報を取得する第2取得部と、
前記標準試料情報が取得されると、前記標準試料の状態に関する状態情報を更新する更新部と
を具備する自動分析装置。
【請求項4】
前記状態情報は、前記標準試料の有効期限及び残量のうちの少なくとも一方に関する情報を含む、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記状態情報に基づいて、前記標準試料が有効期限切れ状態又は有効期限切れの兆候状態にあるか否かを判定する第1判定部と、
前記判定の結果に基づいて、前記有効期限切れ状態又は前記兆候状態に関する情報を出力する第1出力部と
を更に備えた請求項4に記載の自動分析装置。
【請求項6】
前記状態情報に基づいて、前記標準試料が残量不足状態又は残量不足の兆候状態にあるか否かを判定する第2判定部と、
前記判定の結果に基づいて、前記残量不足状態又は前記兆候状態に関する情報を出力する第2出力部と
を更に備えた請求項4に記載の自動分析装置。
【請求項7】
前記状態情報に基づいて、前記標準試料が使用不可であるか否かを判定する第3判定部と、
前記判定の結果、前記標準試料が使用不可の場合には、前記測定に用いる標準試料を、前記使用不可の標準試料と同種の標準試料に変更する変更部、
を更に備えた請求項4に記載の自動分析装置。
【請求項8】
前記同種の標準試料に対応する標準試料情報は、前記使用不可の標準試料に対応する標準試料情報に対して、同一の項目情報、同一の識別情報、同一の濃度を含む、
請求項7に記載の自動分析装置。
【請求項9】
前記使用不可の標準試料が精度管理試料であり、前記同種の標準試料がなく、前記使用不可の標準試料と同一の項目情報のキャリブレータがある場合には、
前記変更部は、前記測定に用いる標準試料を前記キャリブレータに変更する、
請求項8に記載の自動分析装置。
【請求項10】
前記変更されたキャリブレータを用いた測定結果と前回のキャリブレーション測定の結果とを比較し、両者の差分が所定範囲外の場合には、エラーを出力する第3出力部、を更に備えた請求項9に記載の自動分析装置。
【請求項11】
所定の設置数又は所定の期間の前記標準試料情報及び前記状態情報を記憶する記憶部、を更に備えた請求項4に記載の自動分析装置。
【請求項12】
前記測定した結果を出力する場合に、前記状態情報を併せて出力する第4出力部、を更に備えた請求項1乃至3のいずれか一項に記載の自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動分析装置では、標準試料を測定する場合、標準試料を収容した標準試料容器をユーザが自動分析装置に設置する必要がある。このとき、標準試料の状態によっては、標準試料を用いるキャリブレーション測定及び精度管理測定などの標準試料測定を有効に実施できない場合がある。例えば、標準試料の有効期限が切れた状態で標準試料測定を実施した場合、有効な検量線が得られない状況や、精度管理を実施できない状況が生じてしまう。また例えば、標準試料の残量が不足した状態で標準試料測定を実施した場合、測定レベル数が不十分となって試薬を無駄に使用してしまう。従って、不十分な状態の標準試料の使用を防止することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、不十分な状態の標準試料の使用を防止することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る自動分析装置は、被検試料又は標準試料と試薬とを反応容器に分注し、前記反応容器内の混合液を測定する。前記自動分析装置は、第1取得部と、更新部とを具備する。前記第1取得部は、前記標準試料を収容した標準試料容器から、項目情報と、キャリブレータ又は精度管理試料を識別する識別情報と、濃度とのうちの少なくとも1つ以上を含む標準試料情報を取得する。前記更新部は、前記標準試料情報が取得されると、前記標準試料の状態に関する状態情報を更新する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る自動分析装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係る自動分析装置の構成の一例を示す模式図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係る標準試料容器の外観の一例を示す模式図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係る標準試料容器の構成の一例を説明するための模式図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態に係る標準試料容器の構成の一例を説明するための模式図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態における動作を説明するためのフローチャートである。
【
図7】
図7は、第2の実施形態における動作を説明するためのフローチャートである。
【
図8】
図8は、第2の実施形態における動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して各実施形態について説明する。
【0008】
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係る自動分析装置の機能構成を示すブロック図である。
図1に示される自動分析装置1は、被検試料又は標準試料と試薬とを反応容器に分注し、反応容器内の混合液を測定する装置である。この自動分析装置1は、分析機構2、解析回路3、駆動機構4、入力インタフェース5、出力インタフェース6、通信インタフェース7、記憶回路8、及び制御回路9を備える。
【0009】
分析機構2は、標準試料を収容した標準試料容器から標準試料情報を読み取って制御回路9に送出する。分析機構2は、標準試料または被検試料などのサンプルと、このサンプルに設定される各検査項目で用いられる試薬とを混合する。分析機構2は、サンプルと試薬との混合液を測定し、例えば吸光度で表される標準データおよび被検データを生成する。なお、標準試料としては、キャリブレーション測定により検量線を作成するキャリブレータ、及び精度管理測定により検量線の精度管理を実施する精度管理試料(コントロール試料)がある。
【0010】
解析回路3は、分析機構2により生成される標準データ、及び被検データを解析することで、検量データ、及び分析データを生成するプロセッサである。解析回路3は、記憶回路8から解析プログラムを読み出し、読み出した解析プログラムに従って検量データおよび分析データなどを生成する。例えば、解析回路3は、標準データに基づき、標準データと、標準試料について予め設定された標準値との関係を示す検量データを生成する。また、解析回路3は、被検データと、この被検データに対応する検査項目の検量データとに基づき、濃度値および酵素の活性値として表される分析データを生成する。解析回路3は生成した検量データおよび分析データなどを制御回路9へ出力する。
【0011】
駆動機構4は、制御回路9の制御に従い、分析機構2を駆動させる。駆動機構4は、例えば、ギア、ステッピングモータ、ベルトコンベア、及びリードスクリュー等により実現される。
【0012】
入力インタフェース5は、例えば、操作者から、又は病院内ネットワークNWを介して測定を依頼された血液検体に係る各検査項目の分析パラメータ等の設定を受け付ける。入力インタフェース5は、例えば、マウス、キーボード、及び、操作面へ触れることで指示が入力されるタッチパッド等により実現される。入力インタフェース5は、制御回路9に接続され、操作者から入力される操作指示を電気信号へ変換し、電気信号を制御回路9へ出力する。なお、本明細書において入力インタフェース5はマウス、及びキーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、自動分析装置1とは別体に設けられた外部の入力機器から入力される操作指示に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路9へ出力する電気信号の処理回路も入力インタフェース5の例に含まれる。
【0013】
出力インタフェース6は、制御回路9に接続され、制御回路9から供給される信号を出力する。出力インタフェース6は、例えば、表示回路、印刷回路、及び音声デバイス等により実現される。表示回路には、例えば、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、及びプラズマディスプレイ等が含まれる。なお、表示対象を表すデータをビデオ信号に変換し、ビデオ信号を外部へ出力する処理回路も表示回路に含まれる。印刷回路は、例えば、プリンタ等を含む。なお、印刷対象を表すデータを外部へ出力する出力回路も印刷回路に含まれる。音声デバイスは、例えば、スピーカ等を含む。なお、音声信号を外部へ出力する出力回路も音声デバイスに含まれる。
【0014】
通信インタフェース7は、例えば、病院内ネットワークNWと接続する。通信インタフェース7は、病院内ネットワークNWを介してHIS(Hospital Information System)とデータ通信を行う。なお、通信インタフェース7は、病院内ネットワークNWと接続する検査部門システム(Laboratory Information System:LIS)を介してHISとデータ通信を行っても構わない。
【0015】
記憶回路8は、磁気的、若しくは光学的記録媒体、又は半導体メモリ等の、プロセッサにより読み取り可能な記録媒体等を含む。なお、記憶回路8は、必ずしも単一の記憶装置により実現される必要はない。例えば、記憶回路8は、複数の記憶装置により実現されても構わない。
【0016】
記憶回路8は、解析回路3で実行される解析プログラム、及び制御回路9に備わる機能を実現するための制御プログラムを記憶している。記憶回路8は、解析回路3により生成される検量データを検査項目毎に記憶する。記憶回路8は、解析回路3により生成される分析データをサンプル毎に記憶する。記憶回路8は、操作者から入力された検査オーダ、又は通信インタフェース7が病院内ネットワークNWを介して受信した検査オーダを記憶する。記憶回路8は、標準試料毎に、標準試料情報及び状態情報を記憶する。このとき、記憶回路8は、所定の設置数又は所定の期間の標準試料情報及び状態情報を記憶してもよい。記憶回路8は、記憶部の一例である。
【0017】
ここで、標準試料情報は、例えば、項目情報と、キャリブレータ又は精度管理試料を識別する識別情報と、濃度とのうちの少なくとも1つ以上を含んでいる。また例えば、標準試料情報は、前述した項目情報、識別情報及び濃度に加え、試薬名、標準試料の有効期限、開封後有効期限、使用回数(未開封時)、ロット番号、製品番号、キャリブレータのレベル情報などを適宜、含んでもよい。なお、使用回数(未開封時)は、未開封の標準試料容器に収容された標準試料の使用可能な回数を意味している。また、ロット番号が異なる標準試料では濃度が異なる場合があるので、標準試料情報は濃度を含むことが好ましい。
【0018】
状態情報は、例えば、標準試料の有効期限及び残量のうちの少なくとも一方に関する情報を含んでいる。有効期限に関する情報としては、例えば、標準試料容器の設置日時や開封日時等の期限開始日時と、標準試料の使用日時、測定日時、標準試料情報の取得日時などが適宜、使用可能となっている。なお、標準試料情報が標準試料の有効期限や開封後有効期限を含まない場合、状態情報は、標準試料の有効期限や開封後有効期限を更に含んでもよい。残量に関する情報としては、例えば、測定に使用した使用回数が適宜、使用可能となっている。なお、測定に使用した使用回数は、使用回数(未開封時)以下の値である。測定に使用した使用回数は、測定に使用した使用日時毎に追加更新し、残量を確認する際に、使用日時毎の使用回数を合計して求めてもよい。あるいは、測定に使用した使用回数は、測定に使用する度に合計回数を求めて上書更新してもよい。また、標準試料情報が使用回数(未開封時)を含まない場合、状態情報は、使用回数(未開封時)を更に含んでもよい。状態情報は、状態履歴情報と呼んでもよい。
【0019】
制御回路9は、自動分析装置1の中枢として機能するプロセッサである。制御回路9は、記憶回路8に記憶されているプログラムを実行することで、実行したプログラムに対応する機能を実現する。例えば、制御回路9は、制御プログラムを実行することで、システム制御機能91、取得機能92、管理機能93及び出力機能94を実現する。なお、本実施形態では、単一のプロセッサによってシステム制御機能91、取得機能92、管理機能93及び出力機能94が実現される場合を説明するが、これに限定されない。例えば、複数の独立したプロセッサを組み合わせて制御回路を構成し、各プロセッサが制御プログラムを実行することによりシステム制御機能91、取得機能92、管理機能93及び出力機能94を実現しても構わない。なお、制御回路9の各機能は、便宜的に機能を分担させたものであり、以下の説明に限定されない。例えば、制御回路9の各機能の一部又は全部をシステム制御機能91に含めてもよく、システム制御機能91の一部を取得機能92、管理機能93及び出力機能94に含めてもよい。また例えば、取得機能92及び出力機能94の一部又は全部を管理機能93に含めてもよい。あるいは、管理機能93の一部又は全部を取得機能92及び出力機能94に分担させてもよい。
【0020】
システム制御機能91は、入力インタフェース5から入力される入力情報に基づき、自動分析装置1における各部を統括して制御する機能である。例えば、制御回路9は、サンプルを用いた測定、標準試料を用いたキャリブレーション測定、標準試料を用いたコントロール測定などを実行するように各部を制御する。なお、キャリブレーション測定とは、検量線を新たに作成するための測定である。コントロール測定とは、作成された検量線、又は、既に設定されている検量線の精度管理に必要な測定である。具体的には、制御回路9は、反応ディスク205の回動動作、サンプル分注プローブ216の回動動作および分注動作、第1試薬ラックの回動動作および吐出動作、並びに第2試薬ラックの回動動作および吐出動作などに関する駆動機構4及び分析機構2を制御する。また、制御回路9は、検査項目に応じた解析を実施するように解析回路3を制御する。なお、制御回路9は、記憶回路8で記憶されているデータの少なくとも一部を記憶する記憶領域を備えても構わない。システム制御機能91は、制御部の一例である。検量線作成のための測定はキャリブレーション測定と呼んでもよい。精度管理のための測定は新規のコントロール測定と呼んでもよい。
【0021】
取得機能92は、分析機構2に設けられた読取部を介して、標準試料に対応する標準試料情報を取得する機能である。取得機能92は、標準試料を収容した標準試料容器から、項目情報と、キャリブレータ又は精度管理試料を識別する識別情報と、濃度とのうちの少なくとも1つ以上を含む標準試料情報を取得してもよい。例えば、取得機能92は、ユーザの指示を受け付けた時点と、標準試料を用いる測定の準備段階の開始時点とのうちの少なくとも1つの時点で標準試料情報を取得してもよい。これに限らず、取得機能92は、例えば、装置を起動した時点、スタートアップ動作の時点、シャットダウン動作の時点のうちの少なくとも1つの時点で標準試料情報を取得してもよい。また例えば、取得機能92は、ユーザの操作に応じて入力される、標準試料に関する標準試料情報であって、項目情報と、キャリブレータ又は精度管理試料を識別する識別情報と、濃度とを含む当該標準試料情報の当該入力を受け付けることにより、標準試料情報を取得してもよい。読取部及び取得機能92は、第1取得部の一例である。入力インタフェース5及び取得機能92は、第2取得部の一例である。
【0022】
管理機能93は、標準試料容器に収容された標準試料の状態を管理する機能である。管理機能93は、標準試料情報が取得されると、標準試料の状態に関する状態情報を更新してもよい。なお、状態情報は、標準試料の有効期限及び残量のうちの少なくとも一方に関する情報を含んでもよい。例えば、管理機能93は、標準試料の有効期限に関する情報として、標準試料情報の取得日時を更新してもよい。また例えば、管理機能93は、標準試料の残量に関する情報として、標準試料の使用回数を更新してもよい。使用回数の更新は、標準試料を用いた測定の後に実施することが望ましいが、これに限らない。なお、有効期限及び使用回数は、取得された標準試料情報に含まれていてもよく、ユーザの操作に応じて、状態情報として入力されてもよい。
【0023】
また、管理機能93は、状態情報に基づいて、標準試料が使用不可であるか否かを判定してもよい。例えば、管理機能93は、状態情報に基づいて、標準試料が有効期限切れ状態又は有効期限切れの兆候状態にあるか否かを判定してもよい。また例えば、管理機能93は、状態情報に基づいて、標準試料が残量不足状態又は残量不足の兆候状態にあるか否かを判定してもよい。管理機能93は、更新部、各判定部及び変更部の一例である。
【0024】
出力機能94は、システム制御機能91、取得機能92及び管理機能93の処理結果などを出力インタフェース6から出力する機能である。例えば、出力機能94は、管理機能93による判定の結果に基づいて、標準試料の有効期限切れ状態又は兆候状態に関する情報を出力してもよい。また例えば、出力機能94は、管理機能93による判定の結果に基づいて、標準試料の残量不足状態又は兆候状態に関する情報を出力してもよい。また、出力機能94は、測定した結果を出力する場合に、状態情報を併せて出力してもよい。また、出力機能94による出力は、印刷、記憶装置への保存、オンライン通信によるホストPC(personal computer)への送信を想定しているが、これに限らない。また、出力機能94は、標準試料の測定結果、被検試料の測定結果の出力時に標準試料情報及び状態情報を出力してもよい。出力機能94は、各出力部の一例である。
【0025】
図2は、
図1に示される分析機構2の構成の一例を示す模式図である。この分析機構2は、被検試料の項目や、この項目のキャリブレータに対して選択的に反応する第1試薬や第1試薬と対の第2試薬などの試薬が入った試薬容器300と、標準試料が封入された標準試料容器300sと、この試薬容器300及び標準試料容器300sを収容する試薬ラック201と、第1試薬の入った試薬容器300及び標準試料容器300sを収容した試薬ラック201を収容して保冷する第1試薬庫202と、第2試薬の入った試薬容器300を収容した試薬ラック201を収容して保冷する第2試薬庫203と、円周上に複数の反応容器204を配置した反応ディスク205と、被検試料やキャリブレータを納める被検試料容器217をセットするディスクサンプラ206とを備えている。なお、標準試料容器300sは、第1試薬庫202及び第2試薬庫203のうちの少なくとも一方に収容されていればよい。この例では、標準試料容器300sは、第1試薬庫202のみに収容されている。第1試薬庫202は、試薬庫の一例である。
【0026】
そして、1サイクル毎に、第1試薬庫202、第2試薬庫203、及びディスクサンプラ206は夫々回動し、反応ディスク205は回転して制御回路9により制御された位置に停止する。
【0027】
また、分析機構2は、1サイクル毎に、第1試薬庫202及び第2試薬庫203の第1及び第2試薬吸引位置の試薬容器300から第1及び第2試薬を吸引した後、第1及び第2試薬分注位置に停止した反応容器204に分注する第1試薬分注プローブ214及び第2試薬分注プローブ215と、ディスクサンプラ206の制御回路9に制御された位置の被検試料容器217から被検試料或いはキャリブレータを吸引した後、被検試料分注位置に停止した反応容器204に分注するサンプル分注プローブ216とを備えている。
【0028】
また、分析機構2は、第1試薬分注プローブ214、第2試薬分注プローブ215、及びサンプル分注プローブ216を回動及び上下動可能に保持する第1試薬分注アーム208、第2試薬分注アーム209、及び分注アーム210を備えている。
【0029】
更に、分析機構2は、1サイクル毎に、攪拌位置に停止した反応容器204内における混合液を攪拌する攪拌ユニット211と、この混合液を含む反応容器204を測光位置から測定する測光ユニット213と、洗浄・乾燥位置に停止した反応容器204内の測定を終えた混合液を吸引すると共に、反応容器204内を洗浄・乾燥する洗浄ユニット212とを備えている。ここで、混合液としては、例えば、(i)被検試料及び第1試薬、(ii)キャリブレータ及び第1試薬、(iii)被検試料、第1試薬及び第2試薬、(iv)キャリブレータ、第1試薬及び第2試薬、などが適宜、使用可能となっている。
【0030】
測光ユニット213は、反応ディスク205の外周近傍に設けられている。測光ユニット213は、反応容器204内に吐出されたサンプルと試薬との混合液における所定の成分を光学的に測定する。測光ユニット213は、光源および光検出器を有する。測光ユニット213は、制御回路9の制御に従い、光源から光を照射する。照射された光は、反応容器204の第1側壁から入射され、第1側壁と対向する第2側壁から出射される。測光ユニット213は、反応容器204から出射された光を、光検出器により検出する。
【0031】
具体的には、例えば、光検出器は、反応容器204内の標準試料と試薬との混合液を通過した光を検出し、検出した光の強度に基づき、吸光度などにより表される標準データを生成する。また、光検出器は、反応容器204内の被検試料と試薬との混合液を通過した光を検出し、検出した光の強度に基づき、吸光度などにより表される被検データを生成する。測光ユニット213は、生成した標準データおよび被検データを解析回路3へ出力する。
【0032】
洗浄ユニット212は、反応ディスク205の外周近傍に設けられている。洗浄ユニット212は、測光ユニット213による混合液の測定が終了した反応容器204の内部を洗浄する。この洗浄ユニット212は、反応容器204を洗浄するための洗浄液を供給する洗浄液供給ポンプ(図示せず)を備えている。また、洗浄ユニット212は、洗浄液供給ポンプから供給された洗浄液の反応容器204内への吐出や、反応容器204内の混合液、及び洗浄液の各液体の吸引を行う洗浄ノズルを備えている。
【0033】
また、分析機構2は、第1試薬庫202に収容された標準試料容器300sに記される標準試料情報を読み取る第1読取部220を備えている。第1読取部220は、例えば、第1試薬庫202の外部に設けられている。標準試料容器300sの背面部に貼付されている情報ラベルの光学式マークが第1読取部220から光学的に読み取れるよう、第1試薬庫202の筐体の側面部には、窓部が設けられている。窓部は、例えば、第1試薬庫202の筐体の側面部の上端から下方へ延びる矩形状かつスリット状形状をしている。第1読取部220の不図示の送光部から出射した輝線は、窓部を介して、情報ラベルに当たる。情報ラベルで拡散反射した光が、窓部を介して第1読取部220の不図示の受光部に入射する。また同様に、分析機構2は、第2試薬庫203に収容された標準試料容器300sに記される標準試料情報を読み取る第2読取部221を備えている。第2読取部221及び第2試薬庫203は、第1読取部220及び第1試薬庫202と同様の構成を有している。
【0034】
制御回路9は、前述した各種の測定などを実行するように各部を制御する場合に、第1試薬庫202及び第2試薬庫203、ディスクサンプラ206の夫々回動、反応ディスク205の回転、分注アーム210、第1試薬分注アーム208、第2試薬分注アーム209、及び攪拌ユニット211の夫々回動及び上下動、洗浄ユニット212の上下動などを行う機構などを制御する。
【0035】
続いて、以上のような自動分析装置に用いられる標準試料容器300s及びその周辺構成について
図3乃至5を用いて説明する。
図3は標準試料容器の外観の一例を示す模式図である。但し、標準試料容器は、
図3乃至
図5に示す構成に限らない。標準試料容器300sは、標準試料容器の一例である。
【0036】
ここで、標準試料容器300sは、
図3乃至
図5に示すように、ソフト容器301と、収容部302と、プローブ接続部303と、取出し部304と、情報ラベル305とを備えている。すなわち、標準試料容器300sは、
図2に示すように、例えば、底面部及び上面部が台形状の四角柱形状である収容部302を有している。収容部302の上面部には吸引用の取出し部304が設けられている。収容部302の側面部のうちの背面部には、情報ラベル305が貼付されている。背面部は、標準試料容器300sが第1試薬庫202内で円環状に配列された際、円環の外側を向く部位を表す。
【0037】
ソフト容器301は、
図4及び
図5に示すように、自動分析装置1の検量線作成または精度管理に用いる標準試料が封入された柔軟な容器であり、標準試料を密閉状態で保持可能である。標準試料は、所定の濃度の測定対象物質を含む液体である。補足すると、標準試料は、例えば、検査項目において分析される成分の濃度が既知の溶液である。ソフト容器301の材質としては、ケースよりも柔軟な部材で形成され、例えば、樹脂フィルムによって形成されている。ソフト容器301の材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリアセタール、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、及び、ポリブチレン等で構成されたグループから選択されたポリマ材料が使用される。ソフト容器301は、当該選択されたポリマ材料のフィルム(樹脂フィルム)によって形成される。係るソフト容器301を用いることにより、標準試料と空気との接触を避けることができる。ソフト容器301は、取出し部304が容器本体を貫通して設けられ、プローブ接続部303及び取出し部304を介して収容部302に取り付けられた状態で、当該収容部302に収容されている。
【0038】
また、ソフト容器301には、折り癖がつけられていて、取出し部304から第1試薬分注プローブ214に標準試料が吸引される際、ソフト容器301内の標準試料が少なくなる。これに伴って、折り癖がついたソフト容器301は、しぼむ。これにより、ソフト容器301は、標準試料容器300sの輸送時又は輸送後に行われるターンテーブルの回転動作時などの移動時において、標準試料の泡の発生を抑制する。具体的には、柔軟な部材である樹脂フィルムによって形成されたソフト容器301に標準試料を収容しているため、標準試料の液面の波立ちによる泡が発生しにくい。以降では、単に標準試料容器300sに標準試料が収容されているものとして説明する。
【0039】
収容部302は、非密閉状態でソフト容器301を収容する。例えば、収容部302は、外気と連通する孔部(図示せず)が形成され、孔部により、非密閉状態となっている。また、収容部302は、プローブ接続部303及び取出し部304を保持している。収容部302の材質としては、例えば、金属またはポリマ素材によって形成されている。
【0040】
プローブ接続部303は、収容部302の一部に保持され、第1試薬分注プローブ214を取出し部304に着脱自在に接続するための部材である。
【0041】
取出し部304は、収容部302の他の一部に保持され、ソフト容器301内の標準試料を第1試薬分注プローブ214に吸引させるための部材である。取出し部304は、外部からソフト容器301内への逆流を防止する弁を備えてもよい。第1試薬分注プローブ214は、分注プローブの一例である。
【0042】
情報ラベル305は、標準試料情報を表す光学式マークが印刷されている。光学式マークとしては、例えば、バーコード、又はQRコード(登録商標)等の二次元コードが、適宜、使用可能となっている。なお、情報ラベル305に代えて、標準試料情報を送信可能なRFID(radio frequency identifier)を用いてもよい。この場合、RFIDは、例えば、収容部302の上面部に貼付けてもよい。RFIDは無線タグと呼んでもよい。
【0043】
次に、以上のように構成された自動分析装置の動作例について
図6のフローチャートを参照しながら説明する。この動作例は、標準試料容器300sが1つの場合において、標準試料を用いた測定に先行して、標準試料の状態を確認する処理に関する。制御回路9は、例えば、自動分析装置1の起動時において、記憶回路8に記憶されている制御プログラムを読み出し、システム制御機能91を実施する。また、制御回路9は、ユーザが指示した時点又は測定の準備開始の時点で取得機能92、管理機能93及び出力機能94を実施する。
【0044】
なお、以降では、プローブなどの動作において、駆動機構4が各部を駆動する際の「駆動機構4により」、或いは「駆動機構4によって駆動され」などの記載を省略する。また、特に記載しない限り、何れの動作も、制御回路9が各部を制御するものとする。これらのことは以降のフローチャートでも同様である。
【0045】
始めに、自動分析装置1は、未開封の標準試料容器300sが第1試薬庫202に設置されると、制御回路9が、第1読取部220を介して標準試料容器300sから標準試料情報を取得する。また、制御回路9は、取得した標準試料情報と、当該標準試料情報に対応する標準試料の状態に関する状態情報とを記憶回路8に保存する。状態情報は、例えば、標準試料容器300sの設置日時及び残りの使用回数である。また、標準試料容器300sの開封時には、標準試料容器300sの開封日時及び残りの使用回数を追加するように状態情報が更新保存される。これにより、以下のステップST1以降の処理が可能となる。
【0046】
(ステップST1)
制御回路9は、例えば、標準試料を用いる測定の準備段階の開始時点で、第1読取部220を介して標準試料容器300sから標準試料情報を取得すると、標準試料情報の取得日時を追加するように状態情報を更新保存する。また、制御回路9は、状態情報に基づいて、標準試料が残量不足状態にあるか否かを判定する。例えば、制御回路9は、次回の標準試料測定分の残量が存在するか否かを判定する。この場合、具体的には、制御回路9は、状態情報内の最終の使用回数(残量)が、次回の標準試料測定分の使用回数(閾値)以上に存在するか否かを判定する。ステップST1の判定の結果、否の場合にはステップST2に移行し、残量が存在する場合には、ステップST3に移行する。
【0047】
(ステップST2)
標準試料の残量が存在しない場合(ST1:No)には、制御回路9は、当該判定結果に基づいて、標準試料の残量不足状態に関する情報を出力インタフェース6から出力する。これにより、制御回路9は、標準試料の残量不足エラーをユーザに報告して交換を促し、処理を終了する。処理の終了後、例えば、新たな標準試料容器300sが自動分析装置1に設置され、前述同様に、標準試料情報及び状態情報が記憶回路8に保存された後、ステップST1以降の処理が実行される。
【0048】
(ステップST3)
標準試料の残量が存在する場合(ST1:Yes)には、制御回路9は、状態情報内の最終の使用回数から次回の標準試料測定分の使用回数を減算し、減算後の使用回数を最新の取得日時に関連付けるように状態情報を更新保存する。
【0049】
しかる後、制御回路9は、状態情報に基づいて、標準試料の期限が有効か否かを判定する。例えば、制御回路9は、状態情報内の開封日時と、現在の日時とを比較し、標準試料が有効期限切れ状態にあるか否かを判定する。ステップST3の判定の結果、否の場合にはステップST4に移行し、期限が有効な場合にはステップST5に移行する。
【0050】
(ステップST4)
標準試料の期限が有効でない場合(ST3:No)には、制御回路9は、当該判定結果に基づいて、標準試料の有効期限切れ状態に関する情報を出力インタフェース6から出力する。これにより、制御回路9は、標準試料の有効期限切れエラーをユーザに報告して交換を促し、処理を終了する。処理の終了後、前述同様に、新たな標準試料容器300sが自動分析装置1に設置され、標準試料情報及び状態情報が記憶回路8に保存された後、ステップST1以降の処理が実行される。
【0051】
(ステップST5)
標準試料の期限が有効な場合(ST3:Yes)には、制御回路9は、次回の標準試料測定が予約されているか否かを判定する。ステップST5の判定の結果、否の場合には処理を終了し、予約されている場合にはステップST6に移行する。
【0052】
(ステップST6)
ステップST5の後、制御回路9は、標準試料の期限が次回の標準試料測定の完了まで有効か否かを判定する。ステップST6の判定の結果、否の場合にはステップST4に移行して有効期限切れエラーを報告し、次回の測定完了まで期限が有効な場合には処理を終了する。
【0053】
ステップST6の終了後、自動分析装置1は、標準試料を用いた測定を行い、測定した結果と、状態情報とを併せて出力インタフェース6から出力する。このとき、自動分析装置1は、標準試料の状態情報を更に出力してもよい。
【0054】
上述したように第1の実施形態によれば、自動分析装置の制御回路9は、標準試料を収容した標準試料容器から、項目情報と、キャリブレータ又は精度管理試料を識別する識別情報と、濃度とのうちの少なくとも1つ以上を含む標準試料情報を取得する。また、制御回路9は、標準試料情報が取得されると、標準試料の状態に関する状態情報を更新する。従って、標準試料の状態に関する状態情報を考慮して、不十分な状態の標準試料の使用を防止することができる。
【0055】
また、第1の実施形態によれば、制御回路9は、ユーザの指示を受け付けた時点と、標準試料を用いる測定の準備段階の開始時点とのうちの少なくとも1つの時点で標準試料情報を取得してもよい。この場合、標準試料の状態を確認する必要性が高い時点で標準試料情報を取得できると共に、状態情報を更新することができる。
【0056】
また、第1の実施形態によれば、制御回路9は、ユーザの操作に応じて入力される、標準試料に関する標準試料情報であって、項目情報と、キャリブレータ又は精度管理試料を識別する識別情報と、濃度とを含む当該標準試料情報の当該入力を受け付けることにより、標準試料情報を取得する。また、制御回路9は、標準試料情報が取得されると、標準試料の状態に関する状態情報を更新する。従って、ユーザの操作によって標準試料情報が入力された場合でも、標準試料の状態に関する状態情報を考慮して、不十分な状態の標準試料の使用を防止することができる。
【0057】
また、第1の実施形態によれば、状態情報は、標準試料の有効期限及び残量のうちの少なくとも一方に関する情報を含んでもよい。この場合、標準試料の有効期限及び残量のうちの少なくとも一方に関する状態を考慮して、不十分な状態の標準試料の使用を防止することができる。例えば、標準試料の有効期限切れ、もしくは残量不足による有効ではない標準試料測定を防止することができる。
【0058】
また、第1の実施形態によれば、制御回路9は、状態情報に基づいて、標準試料が有効期限切れ状態にあるか否かを判定する。また、制御回路9は、判定の結果に基づいて、有効期限切れ状態に関する情報を出力する。従って、有効期限切れ状態にある標準試料の使用を防止することができる。
【0059】
また、第1の実施形態によれば、制御回路9は、状態情報に基づいて、標準試料が残量不足状態にあるか否かを判定する。また、制御回路9は、判定の結果に基づいて、残量不足状態に関する情報を出力する。従って、残量不足状態にある標準試料の使用を防止することができる。
【0060】
また、第1の実施形態によれば、制御回路9は、記憶回路8は、所定の設置数又は所定の期間の状態情報を記憶する。従って、所定の設置数又は所定の期間に応じた適切な範囲で、標準試料の状態を管理することができる。
【0061】
また、第1の実施形態によれば、制御回路9は、測定した結果を出力する場合に、状態情報を併せて出力する。これにより、測定した結果と、標準試料の状態とを比較できるので、例えば、検量線作成、精度管理に用いられた標準試料の状態情報を容易に確認することが可能となる。また例えば、測定結果に問題が生じた場合、原因究明の容易化を図ることができる。
【0062】
(変形例)
第1の実施形態では、標準試料が有効期限切れ状態にあるか否かを判定したが、これに限定されない。例えば、制御回路9は、状態情報に基づいて、標準試料が有効期限切れ状態の兆候状態にあるか否かを判定してもよい。なお、兆候状態の判定基準としては、有効期限切れ状態の判定基準を緩和したものを用いればよい。また、制御回路9は、判定の結果に基づいて、有効期限切れ状態の兆候状態に関する情報を出力してもよい。このような変形例によれば、有効期限切れ状態の兆候状態にある標準試料の使用を防止することができる。
【0063】
また、第1の実施形態では、状態情報が有効期限を含んでおり、標準試料情報が有効期限を含んでいないが、これに限らず、標準試料情報が有効期限を含んでもよい。この場合、制御回路9は、標準試料情報内の有効期限と、現在の日時とを比較し、標準試料が有効期限切れ状態又はその兆候状態にあるか否かを判定することができる。このような変形例としても、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0064】
また、第1の実施形態では、標準試料が残量不足状態にあるか否かを判定したが、これに限定されない。例えば、制御回路9は、状態情報に基づいて、標準試料が残量不足状態の兆候状態にあるか否かを判定してもよい。なお、兆候状態の判定基準としては、残量不足状態の判定基準を緩和したものを用いればよい。また、制御回路9は、判定の結果に基づいて、残量不足状態の兆候状態に関する情報を出力してもよい。このような変形例によれば、残量不足状態の兆候状態にある標準試料の使用を防止することができる。
【0065】
また、第1の実施形態では、標準試料情報が残りの使用回数(使用可能な回数)を含んでいないが、これに限らず、標準試料情報が残りの使用回数を含んでもよい。この場合、制御回路9は、標準試料情報内の残りの使用回数と、状態情報内の使用回数(使用した回数)とに基づいて、標準試料が残量不足状態又はその兆候状態にあるか否かを判定することができる。このような変形例としても、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0066】
また、第1の実施形態では、標準試料容器300sを第1試薬庫202に収容したが、これに限定されない。例えば、標準試料容器300sを第2試薬庫203に収容してもよく、標準試料容器300sを標準試料庫(図示せず)に収容してもよい。このような変形例としても、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0067】
また、第1の実施形態では、標準試料容器300sの情報ラベル305から標準試料情報が光学的に読み取られたが、これに限定されない。例えば、標準試料容器300sに設けたRFIDから標準試料情報を無線で読み出してもよい。このような変形例としても、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。また、この場合、読出専用のRFIDに限らず、読出/書込可能なRFIDを用いてもよい。例えば、標準試料容器300sに設けたRFIDから標準試料情報を無線で読み出し、当該RFIDに状態情報を無線で書き込んでもよい。この場合、標準試料容器300sのRFIDが標準試料情報及び状態情報を保存するので、自動分析装置1が故障した際に、他の自動分析装置に標準試料容器300sを移し替えて標準試料測定を継続することができる。
【0068】
以上が第1の実施形態の変形例である。これらの変形例は、以下の各実施形態にも同様に適用することができる。
【0069】
<第2の実施形態>
第2の実施形態は、1つの標準試料容器300sを設置した第1の実施形態とは異なり、複数の標準試料容器300sを設置している。すなわち、第2の実施形態は、有効期限又は残量が不適切な状態の標準試料があった場合に、他の標準試料への渡り(変更)が可能な形態である。
【0070】
これに伴い、制御回路9は、状態情報に基づいて、標準試料が使用不可であるか否かを判定し、当該判定の結果、標準試料が使用不可の場合には、測定に用いる標準試料を、使用不可の標準試料と同種の標準試料に変更する機能を含んでいる。なお、標準試料が使用不可の場合とは、例えば、標準試料の有効期限又は残量が不適切な状態にある場合を意味している。また、同種の標準試料に対応する標準試料情報は、例えば、使用不可の標準試料に対応する標準試料情報に対して、同一の項目情報、同一の識別情報を含んでおり、更に、同一の濃度を含んでいてもよい。同一の項目情報は、例えば、TP(トータルプロテイン:血清総蛋白)、ALB(アルブミン)、AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)、ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)及びHDL(高比重リボタンパク)等の測定項目が同一であることを意味している。同一の識別情報は、標準試料がキャリブレータ及び精度管理試料のいずれであるか(測定種類に応じた試料種類)が同一であることを意味している。測定種類は、キャリブレーション測定、及び精度管理測定(コントロール測定)を意味している。すなわち、同種の標準試料とは、使用不可の標準試料に対して、測定項目が同一であり、測定種類に応じた試料種類が同一である標準試料を意味している。同種の標準試料は、更に、濃度が同一である標準試料を意味してもよい。補足すると、同種の標準試料は、ロット番号の異なる標準試料の場合には濃度が異なることがあるので、濃度が同一であることを条件とはしていない。なお、同種の標準試料がロット番号の異なる標準試料の場合、標準試料情報に当該ロット番号の濃度情報を含ませることで、標準試料の濃度を自動的に更新することができる。
【0071】
また、制御回路9は、使用不可の標準試料が精度管理試料であり、同種の標準試料がなく、使用不可の標準試料と同一の項目情報のキャリブレータがある場合には、測定に用いる標準試料を当該キャリブレータに変更してもよい。また、制御回路9は、変更されたキャリブレータを用いた測定結果と前回のキャリブレーション測定の結果とを比較し、両者の差分が所定範囲外の場合には、エラーを出力してもよい。このエラーは、試薬状態が有効でないことに対応する。制御回路9は、第3判定部、変更部及び第3出力部の一例である。
【0072】
他の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0073】
次に、以上のように構成された自動分析装置の動作例について
図7及び
図8のフローチャートを参照しながら説明する。この動作例は、標準試料容器300sが複数の場合において、標準試料を用いた測定に先行して、標準試料の状態を確認する処理に関する。
【0074】
始めに概要を述べる。
図7に示すように、標準試料が使用不可の場合、使用不可の標準試料が精度管理試料及びキャリブレータのいずれであるかを確認する(ST11~ST12)。
【0075】
キャリブレータが使用不可の場合、同種のキャリブレータが設置されていればキャリブレータ渡りを行い、設置されていなければ標準試料なしを出力する(ST13~ST15)。
【0076】
精度管理試料が使用不可の場合、同種の精度管理試料が設置されていれば精度管理試料渡りを行い、設置されていなければ同一項目のキャリブレータが設置されているかを確認する(ST16~ST18)。同一項目のキャリブレータが設置されていなければ標準試料なしを出力し、設置されていれば精度管理試料なしを出力して当該同一項目のキャリブレータを試薬状態の確認に使用する(ST19~ST20)。
【0077】
試薬状態を確認する場合、
図8に示すように、同一項目のキャリブレータを用いた標準試料測定の測定結果と、当該キャリブレータを用いたキャリブレーション測定実施時の測定結果とを比較し、両者の差分によって、試薬が有効な状態であるか否かを確認している(ST21~ST25)。
【0078】
以上が動作例の概要である。続いて、この動作例を
図7及び
図8のフローチャートに沿って詳細に説明する。
【0079】
(ステップST11)
制御回路9は、状態情報に基づいて、標準試料が使用不可であるか否かを判定し、使用不可の場合にはステップST12に移行し、否(使用可能)の場合には処理を終了する。なお、この処理の終了後、当該使用可能な状態の標準試料を用いた測定が行われる。
【0080】
(ステップST12)
制御回路9は、精度管理試料が使用不可か否かを判定する。具体的には、制御回路9は、標準試料情報に基づいて、使用不可の標準試料が精度管理試料であるか否かを判定し、否の場合にはステップST13に移行し、精度管理試料の場合にはステップST16に移行する。
【0081】
(ステップST13)
制御回路9は、記憶回路8内の標準試料情報に基づいて、使用不可の標準試料(キャリブレータ)と同種のキャリブレータが設置されているか否かを判定する。同種のキャリブレータとは、使用不可の標準試料(キャリブレータ)に対して、測定項目が同一であり、識別情報がキャリブレータを示す標準試料を意味している。なお、使用不可のキャリブレータのレベル情報がある場合には、設置されているキャリブレータの標準試料情報から取得した濃度情報で上書きしてもよい。ステップST13の判定の結果、同種のキャリブレータが設置されている場合にはステップST14に移行し、否の場合にはステップST15に移行する。
【0082】
(ステップST14)
制御回路9は、使用不可の標準試料(渡り元)に代えて、同種のキャリブレータ(渡り先)を使用するキャリブレータ渡り(変更)を行う。また、制御回路9は、渡り元の標準試料と渡り先の標準試料の情報を出力インタフェース6から出力することにより、ユーザへ報告する。ユーザへの報告は、メッセージで表示する形式でもよく、標準試料画面で渡り元と渡り先の情報を示す形式といった任意の形式が使用可能である。ステップST14の後、処理を終了する。なお、この処理の終了後、渡り先のキャリブレータを用いた測定が行われる。
【0083】
(ステップST15)
制御回路9は、標準試料が使用不可の状態であり、予備の標準試料も設置されていないことを出力インタフェース6から出力する。これにより、制御回路9は、測定に用いる標準試料がないことをユーザに報告して交換を促す。ステップST15の後、処理を終了する。なお、この処理の終了後、ユーザの操作により、新たな標準試料容器300sが自動分析装置1に設置される。
【0084】
(ステップST16)
制御回路9は、記憶回路8内の標準試料情報に基づいて、使用不可の標準試料(精度管理試料)と同種の精度管理試料が設置されているか否かを判定する。同種の精度管理試料とは、使用不可の標準試料(精度管理試料)に対して、測定項目が同一であり、識別情報が精度管理試料を示しており、濃度が同一である標準試料を意味している。ステップST16の判定の結果、同種の精度管理試料が設置されている場合にはステップST17に移行し、否の場合にはステップST18に移行する。
【0085】
(ステップST17)
制御回路9は、使用不可の標準試料(渡り元)に代えて、同種の精度管理試料(渡り先)を使用する精度管理試料渡りを行う。また、制御回路9は、渡り元の標準試料と渡り先の標準試料の情報を出力インタフェース6から出力することにより、ユーザへ報告する。ユーザへの報告は、前述同様に、任意の形式が使用可能である。ステップST17の後、処理を終了する。なお、この処理の終了後、渡り先の精度管理試料を用いた測定が行われる。
【0086】
(ステップST18)
制御回路9は、記憶回路8内の標準試料情報に基づいて、使用不可の標準試料(精度管理試料)と同一の項目を測定できるキャリブレータが設置されているか否かを判定する。同一の項目を測定できるキャリブレータとは、使用不可の標準試料(精度管理試料)に対して、測定項目が同一であり、識別情報がキャリブレータを示しており、濃度が同一である標準試料を意味している。ステップST18の判定の結果、同一の項目を測定可能なキャリブレータが設置されている場合にはステップST19に移行し、否の場合にはステップST15に移行する。
【0087】
(ステップST19)
制御回路9は、標準試料(精度管理試料)が使用不可の状態であることと、予備の標準試料(精度管理試料)が設置されていないことと、同一の測定項目を測定できるキャリブレータが設置されていることとを出力インタフェース6から出力する。これにより、制御回路9は、測定に用いる精度管理試料がないことをユーザに報告する。ステップST19の後、ステップST20に移行する。
【0088】
(ステップST20)
制御回路9は、同一の測定項目を測定できるキャリブレータを試薬状態の確認に使用する。このステップST20は、以下のステップST21~ST25に示すように実行される。
【0089】
(ステップST21)
制御回路9は、同一の測定項目を測定できるキャリブレータを用いて標準試料測定を実施し、測定結果を得る。
【0090】
(ステップST22)
制御回路9は、ステップST21で得られた測定結果と、当該キャリブレータを用いたキャリブレーション測定実施時の測定結果とを比較する。
【0091】
(ステップST23)
制御回路9は、ステップST22の比較の結果、両方の測定結果の差が所定範囲外か否かを判定し、所定範囲外の場合にはステップST24に移行し、否の場合にはステップST25に移行する。
【0092】
(ステップST24)
制御回路9は、測定結果の差が所定範囲外の場合、試薬が有効な状態でないことを出力インタフェース6から出力する。これにより、制御回路9は、試薬状態が有効でない旨をユーザに報告し、処理を終了する。
【0093】
(ステップST25)
制御回路9は、測定結果の差が所定範囲内にある場合、試薬が有効な状態であるが、精度管理を実施していないことを出力インタフェース6から出力する。この出力は、例えば、フラグ、メッセージ、測定結果最大ブレ幅のうち、1つ以上を用いてもよい。測定結果の最大ブレ幅は、例えば、リニア検量線の項目で同一キャリブレータでの吸光度差に+1%の差が生じた場合、測定時の吸光度も+1%程度の差が生じる可能性があるため、測定結果に+1%の最大ブレ幅の表示を行う。例えば、測定結果「100」の場合、「100(最大乖離範囲+1%)」といった表示を行う。また例えば、曲線の検量線の場合、吸光度の+1%のブレで1%以上の測定結果のブレが生じるため、検量線に基づいた表記を行う。例えば、測定結果「100」の場合、「100(最大乖離範囲100-105)」といった表記を行う。なお、曲線の検量線には、例えば、4係数ロジスティック曲線(Logit-4)やスプライン曲線などの近似関数が適宜、使用可能となっている。いずれにしても、制御回路9は、試薬状態が有効であるが精度管理を未実施である旨をユーザに報告し、処理を終了する。これにより、自動分析装置1に有効な精度管理試料が設置されていない状態でも、試薬状態を確認し、被検試料の測定を継続することが可能となる。
【0094】
上述したように第2の実施形態によれば、制御回路9は、状態情報に基づいて、標準試料が使用不可であるか否かを判定する。また、制御回路9は、判定の結果、標準試料が使用不可の場合には、測定に用いる標準試料を、使用不可の標準試料と同種の標準試料に変更する。従って、第1の実施形態の効果に加え、使用不可の標準試料を同種の標準試料に変更することにより、変更後の標準試料を用いて測定を実施することができる。
【0095】
補足すると、第2の実施形態によれば、有効でない標準試料測定の実施を防止することに加え、同種の標準試料が設置されている場合、標準試料の渡りを発生させて自動標準試料測定を実施することができる。これにより、標準試料容器を設置する作業の削減や、測定オーダを作成する作業の削減を図ることができる。また例えば、ロット番号が異なる標準試料がある場合、検量線の有効期限切れ後に標準試料渡りを実施する。この場合、標準試料情報に当該ロット番号の濃度情報を含ませることで、標準試料の濃度を自動的に更新することができる。
【0096】
また、第2の実施形態によれば、同種の標準試料に対応する標準試料情報は、使用不可の標準試料に対応する標準試料情報に対して、同一の項目情報、同一の識別情報、同一の濃度を含んでもよい。この場合、標準試料情報に基づいて、同種の標準試料を容易に検索することができる。
【0097】
また、第2の実施形態によれば、使用不可の標準試料が精度管理試料であり、同種の標準試料がなく、使用不可の標準試料と同一の項目情報のキャリブレータがある場合には、制御回路9は、測定に用いる標準試料をキャリブレータに変更する。従って、同種の精度管理試料がない場合でも、同一項目のキャリブレータを用いた測定を実施して、現在使用中の試薬の変質状態を確認することが可能となる。また、標準試料を希釈し、複数レベルの標準試料測定を実施してもよい。
【0098】
また、第2の実施形態によれば、変更されたキャリブレータを用いた測定結果と前回のキャリブレーション測定の結果とを比較し、両者の差分が所定範囲外の場合には、エラーを出力する。これにより、試薬状態が有効でない場合にはその旨をユーザに報告し、交換を促すことができる。
【0099】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、不十分な状態の標準試料の使用を防止することができる。
【0100】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA)等の回路を意味する。プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、
図1における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0101】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0102】
1 自動分析装置
2 分析機構
3 解析回路
4 駆動機構
5 入力インタフェース
6 出力インタフェース
7 通信インタフェース
8 記憶回路
9 制御回路
91 システム制御機能
92 取得機能
93 管理機能
94 出力機能
201 試薬ラック
202 第1試薬庫
203 第2試薬庫
204 反応容器
205 反応ディスク
206 ディスクサンプラ
208 第1試薬分注アーム
209 第2試薬分注アーム
210 分注アーム
211 攪拌ユニット
212 洗浄ユニット
213 測光ユニット
214 第1試薬分注プローブ
215 第2試薬分注プローブ
216 サンプル分注プローブ
217 被検試料容器
220 第1読取部
221 第2読取部
300s 標準試料容器
300 試薬容器
301 ソフト容器
302 収容部
303 プローブ接続部
304 取出し部
305 情報ラベル