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特開2023-179194X線診断装置、X線診断装置の制御方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179194
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】X線診断装置、X線診断装置の制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20231212BHJP
   A61B 6/10 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
A61B6/03 330B
A61B6/10 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092350
(22)【出願日】2022-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柿沼 恒範
(72)【発明者】
【氏名】小澤 啓介
(72)【発明者】
【氏名】大石 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】今野 和正
(72)【発明者】
【氏名】大西 莉紗
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093CA05
4C093CA13
4C093CA33
4C093FA18
4C093FB11
(57)【要約】
【課題】X線診断装置によって診断を行う際に、患者から発生する音響に基づいて、好適なタイミングで撮影を行うことである。
【解決手段】実施形態のX線診断装置は、取得部と、制御部と、を持つ。取得部は、少なくとも被検体から発生される音響を含む音響情報を取得する。制御部は、前記音響情報に基づいて前記被検体の撮影を行う際に照射するX線の出力を制御する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも被検体から発生される音響を含む音響情報を取得する取得部と、
前記音響情報に基づいて前記被検体の撮影を行う際に照射するX線の出力を制御する制御部と、
を備えるX線診断装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記撮影に適しない前記被検体の状態を表す異常音の情報が前記音響情報に含まれているか否かを判定する異常音判定部、を備え、
前記音響情報に前記異常音の情報が含まれている場合と、前記音響情報に前記異常音の情報が含まれていない場合とで、前記X線の出力の制御を異ならせる、
請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記音響情報に前記異常音の情報が含まれていない場合には、前記X線の出力を通常の撮影状態にさせるように制御し、
前記音響情報に前記異常音の情報が含まれている場合には、前記X線の出力を低下させる、または/および停止させるように制御する、
請求項2に記載のX線診断装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記音響情報に基づいて、前記異常音が含まれない状態のモデル音響を生成するモデル音響生成部、をさらに備え、
前記異常音判定部は、前記音響情報に含まれる音響と前記モデル音響との差分が閾値以上の大きさである場合に、前記音響情報に前記異常音の情報が含まれていると判定する、
請求項3に記載のX線診断装置。
【請求項5】
前記X線の出力を低下させる制御は、前記X線の線量を低下させる制御である、
請求項4に記載のX線診断装置。
【請求項6】
前記被検体に照射されたX線によって得られたデータに対して画像処理を行った画像を生成する画像処理部、をさらに備え、
前記画像処理部は、
前記制御部によって行われた前記X線の出力の制御の状態に基づいて、前記データに対して行う前記画像処理を異ならせる、
請求項5に記載のX線診断装置。
【請求項7】
前記音響は、前記被検体の呼吸音である、
請求項1から請求項6のうちいずれか1項に記載のX線診断装置。
【請求項8】
前記音響は、前記被検体の腹部の音である、
請求項1から請求項6のうちいずれか1項に記載のX線診断装置。
【請求項9】
前記被検体の腹部の音は、前記被検体の腸管の蠕動運動に応じた音である、
請求項8に記載のX線診断装置。
【請求項10】
前記音響は、前記被検体の関節部の音である、
請求項1から請求項6のうちいずれか1項に記載のX線診断装置。
【請求項11】
コンピュータが、
少なくとも被検体から発生される音響を含む音響情報を取得し、
前記音響情報に基づいて前記被検体の撮影を行う際に照射するX線の出力を制御する、
X線診断装置の制御方法。
【請求項12】
コンピュータに、
少なくとも被検体から発生される音響を含む音響情報を取得させ、
前記音響情報に基づいて前記被検体の撮影を行う際に照射するX線の出力を制御させる、
ためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、X線診断装置、X線診断装置の制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、医用画像診断の分野において、X線CT(Computed Tomography:コンピュータ断層撮影)装置など、被検体(患者)にX線を照射して撮影した画像を用いて診断を行うX線診断装置が使用されている。X線診断装置を用いた診断では、より診断に適したX線画像を得るために、診断箇所、つまり、撮影箇所の動きが止まっている状態で撮影を行っている。これは、撮影箇所の動きが止まっていない状態で撮影されたX線画像は、動きによって画像が不鮮明になってしまう、つまり、モーションアーチファクトが発生してしまうことによって、診断に適さない画像となってしまうからである。このため、例えば、X線診断装置によって患者の肺野を撮影する際には、診断を行う医師などが患者に対して声かけを行って、患者の呼吸が最大の吸気状態で動きが止まっているときに撮影を行っている。例えば、X線診断装置によって患者の内臓を撮影する際には、内臓の動き(例えば、腸管の蠕動運動)を意図的に止める(抑制する)ための薬剤を事前に投与し、患者の内臓の動きが止まっている(動きが抑制されている状態となっている)ときに撮影を行っている。
【0003】
しかしながら、X線診断装置によって診断を行う患者の中には、医師などの声かけに応じて呼吸を止めることが難しい患者や、すでに投与、あるいは服用している他の薬剤を含めた人体への影響(つまり、副作用など)の観点から、内臓の動きを止めるための薬剤を投与することができない患者も存在する。このような場合には、撮影箇所の動きが止まっていない状態で撮影を行わざるを得ない。つまり、医師は、動きによって不鮮明となっているX線画像を用いて診断をせざるを得ない。このため、診断を行うために、通常よりも多くのX線画像を撮影する必要が生じてしまうことも考えられる。さらに、内臓の動きを止めるための薬剤を投与した場合においても、例えば、咳やくしゃみなどによる患者の反射的な動きを止める(抑制する)ことは困難である。そして、患者の反射的な動きのタイミングで撮影されたX線画像は、不鮮明な画像となってしまう。この場合において医師は、不鮮明な画像を診断に用いないようにすることも可能であると考えられるが、診断を行うために、撮影を再度行う必要が生じることもあり得る。
【0004】
ところで、X線診断装置は、不鮮明な画像を撮影した場合においても、通常と同じ線量のX線を患者に照射している。このため、通常よりも多くのX線画像を撮影する必要が生じていたり、撮影を再度行う必要が生じたりすると、患者に対して照射されるX線の線量は、その分だけ多くなってしまう。言い換えれば、通常よりも多く行う撮影によって、患者におけるX線の被ばく量が多くなってしまう。
【0005】
このため、従来から、X線CT装置のみならず、画像を用いて診断を行う医用画像診断装置において、音の情報に基づいて、画像を撮影するタイミングを図る技術に関する提案がされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-212043号公報
【特許文献2】特開2005-040178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題は、X線診断装置によって診断を行う際に、患者から発生する音響に基づいて、好適なタイミングで撮影を行うことである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態のX線診断装置は、取得部と、制御部と、を持つ。取得部は、少なくとも被検体から発生される音響を含む音響情報を取得する。制御部は、前記音響情報に基づいて前記被検体の撮影を行う際に照射するX線の出力を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係るX線診断装置の構成例を示す図。
図2】実施形態に係るX線診断装置が備えるスキャン制御機能の機能構成の一例を示す図。
図3】実施形態に係るX線診断装置において検査をする際の収音装置の配置の一例を模式的に示す図。
図4】実施形態に係るX線診断装置において異常音の発生有無を判定する音響情報の一例を模式的に示す図。
図5】実施形態に係るX線診断装置における処理の一連の流れの一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、実施形態のX線診断装置、X線診断装置の制御方法、およびプログラムについて説明する。以下の説明においては、X線診断装置が、CT検査をするためのX線CT装置(Computed Tomography:コンピュータ断層撮影)であり、X線画像が、CT画像である場合を例に挙げて説明する。
【0011】
図1は、実施形態に係るX線診断装置(X線CT装置)の構成例を示す図である。X線CT装置1は、被検体である患者PにX線を照射し、患者Pを通過したX線を検出する医用診断装置である。X線CT装置1は、検出したX線に応じた再構成画像(例えば、CT画像)などの画像を生成して表示する。これにより、CT検査の実施者(医師や技師など)は、患者Pに病変があるか否かなどを目視で確認することができる。
【0012】
X線CT装置1は、例えば、架台装置10と、寝台装置30と、コンソール装置40とを備える。図1では、説明の都合上、架台装置10をZ軸方向から見た図とX軸方向から見た図との両方に図を示しているが、実際には、X線CT装置1が備える架台装置10は一つである。本実施形態では、非チルト状態での回転フレーム17の中心軸または寝台装置30の天板33の長手方向をZ軸方向、Z軸方向に直交し、床面に対して水平である軸をX軸方向、Z軸方向に直交し、床面に対して垂直である方向をY軸方向とそれぞれ定義する。X線CT装置1は、特許請求の範囲における「X線診断装置」の一例である。
【0013】
架台装置10は、例えば、X線管を内蔵するX線管装置11と、ウェッジ12と、コリメータ13と、X線高電圧装置14と、X線検出器15と、データ収集システム(以下、DAS:Data Acquisition System)16と、回転フレーム17と、制御装置18とを備える。
【0014】
X線管装置11は、内蔵するX線管が、X線高電圧装置14により印加された高電圧の管電圧に応じて、陰極(フィラメント)から陽極(ターゲット)に向けて熱電子を放出させることでX線を発生させる。X線管装置11は、X線管として、例えば、真空管を含む。以下の説明においては、説明を容易にするため、X線管装置11がX線管であるものとして説明する。X線管装置11は、例えば、陰極から回転する陽極に熱電子を放出させることによりX線を発生させる回転陽極型のX線管である。X線管装置11により発生されたX線は、患者Pに照射される。
【0015】
ウェッジ12は、X線管装置11により発生されたX線を患者Pに照射する際の線量(X線量)を調節するためのフィルタである。ウェッジ12は、患者Pに照射するX線量の分布が予め定められた分布になるように、自身を透過するX線を減衰させる。ウェッジ12は、ウェッジフィルタ(wedge filter)、ボウタイフィルタ(bow-tie filter)とも呼ばれる。ウェッジ12は、例えば、所定のターゲット角度や所定の厚みとなるようにアルミニウムを加工したものである。
【0016】
コリメータ13は、ウェッジ12を透過したX線の照射範囲を絞り込むための機構である。コリメータ13は、例えば、複数の鉛板を組み合わせてスリットを形成することにより、X線の照射範囲を絞り込む。コリメータ13は、X線絞りと呼ばれる場合もある。コリメータ13は、絞り込み範囲が機械的に駆動可能なアクティブコリメータであってよい。
【0017】
X線高電圧装置14は、例えば、高電圧発生装置と、X線制御装置とを備える。高電圧発生装置は、変圧器(トランス)および整流器などを含む電気回路を有し、X線管装置11に印加する高電圧を発生させる。X線制御装置は、X線管装置11に発生させるべきX線量に応じて高電圧発生装置の出力電圧を制御する。高電圧発生装置は、上述した変圧器によって昇圧を行うものであってもよいし、インバータによって昇圧を行うものであってもよい。X線高電圧装置14は、回転フレーム17に設けられてもよいし、架台装置10に設けられた固定フレーム(不図示)の側に設けられてもよい。
【0018】
X線検出器15は、X線管装置11が発生させ、患者Pを通過して入射したX線の強度を検出する。X線検出器15は、検出したX線の強度に応じた電気信号(光信号などでもよい)をDAS16に出力する。X線検出器15は、例えば、複数のX線検出素子列を有する。複数のX線検出素子列のそれぞれは、X線管装置11の焦点を中心とした円弧に沿ってチャネル方向に複数のX線検出素子が配列されたものである。複数のX線検出素子列は、スライス方向(列方向、row方向)に配列される。
【0019】
X線検出器15は、例えば、グリッドと、シンチレータアレイと、光センサアレイとを有する間接型の検出器である。シンチレータアレイは、複数のシンチレータを有する。それぞれのシンチレータは、シンチレータ結晶を有する。シンチレータ結晶は、入射するX線の強度に応じた光量の光を発する。グリッドは、シンチレータアレイのX線が入射する面に配置され、散乱X線を吸収する機能を有するX線遮蔽板を有する。グリッドは、コリメータ(一次元コリメータまたは二次元コリメータ)と呼ばれる場合もある。光センサアレイは、例えば、光電子増倍管(フォトマルチプライヤー:PMT)などの光センサを有する。光センサアレイは、シンチレータにより発せられる光の光量に応じた電気信号を出力する。X線検出器15は、入射したX線を電気信号に変換する半導体素子を有する直接変換型の検出器であってもよい。
【0020】
DAS16は、例えば、増幅器と、積分器と、A/D変換器とを有する。増幅器は、X線検出器15の各X線検出素子により出力される電気信号に対して増幅処理を行う。積分器は、増幅器により増幅処理が行われた電気信号をビュー期間(後述)に亘って積分する。A/D変換器は、積分器による積分結果を示す電気信号をデジタル信号に変換する。DAS16は、デジタル信号に基づく検出データをコンソール装置40に出力する。検出データは、生成元のX線検出素子のチャンネル番号、列番号、および収集されたビューを示すビュー番号により識別されたX線強度のデジタル値である。ビュー番号は、回転フレーム17の回転に応じて変化する番号であり、例えば、回転フレーム17の回転に応じてインクリメントされる番号である。従って、ビュー番号は、X線管装置11の回転角度を示す情報である。ビュー期間とは、あるビュー番号に対応する回転角度から、次のビュー番号に対応する回転角度に到達するまでの間に収まる期間である。DAS16は、ビューの切り替わりを、制御装置18から入力されるタイミング信号によって検知してもよいし、内部のタイマーによって検知してもよいし、図示しないセンサから取得される信号によって検知してもよい。X線CT装置1がフルスキャンを行う場合においてX線管装置11によりX線が連続曝射されている場合、DAS16は、全周囲分(360度分)の検出データ群を収集する。X線CT装置1がハーフスキャンを行う場合においてX線管装置11によりX線が連続曝射されている場合、DAS16は、半周囲分(180度分)の検出データを収集する。
【0021】
回転フレーム17は、X線管装置11、ウェッジ12、およびコリメータ13と、X線検出器15とを対向支持する円環状の部材である。回転フレーム17は、固定フレームによって、内部に導入された患者Pを中心として回転自在に支持される。回転フレーム17は、さらにDAS16を支持する。DAS16が出力する検出データは、回転フレーム17に設けられた発光ダイオード(LED)を有する送信機から、光通信によって、架台装置10の非回転部分(例えば、不図示の固定フレーム)に設けられたフォトダイオードを有する受信機に送信され、受信機によってコンソール装置40に転送される。回転フレーム17から非回転部分への検出データの送信方法として、前述の光通信を用いた方法に限らず、非接触型の任意の送信方法を採用してよい。回転フレーム17は、X線管装置11などを支持して回転させることができるものであれば、円環状の部材に限らず、アームのような部材であってもよい。
【0022】
X線CT装置1は、例えば、X線管装置11とX線検出器15の双方が回転フレーム17によって支持されて患者Pの周囲を回転するRotate/Rotate-TypeのX線CT装置(第3世代CT)であるが、これに限らず、円環状に配列された複数のX線検出素子が固定フレームに固定され、X線管装置11が患者Pの周囲を回転するStationary/Rotate-TypeのX線CT装置(第4世代CT)であってもよい。
【0023】
制御装置18は、架台装置10に取り付けられた操作スイッチなどの入力インターフェース(不図示)、またはコンソール装置40に取り付けられた入力インターフェース43からの入力信号を受け付けて、架台装置10および寝台装置30の動作を制御する。制御装置18は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサを有する処理回路と、架台装置10の移動や、架台装置10が備える回転フレーム17の回転、寝台装置30の移動をさせる、例えば、モータやアクチュエータなどを含む駆動機構とを有する。実施形態では、制御装置18が架台装置10に設けられている場合を示しているが、制御装置18は、コンソール装置40に設けられてもよい。
【0024】
制御装置18は、例えば、回転フレーム17を回転させたり、架台装置10をチルトさせたり、架台装置10の筐体(以下、単に「架台装置10」ともいう)を寝台装置30の天板33の方向(Z軸方向)に水平移動させたり、寝台装置30の天板33をY軸方向に上下移動(X軸方向への横移動やZ軸回りの回転移動を含んでもよい)させたりする。架台装置10をチルトさせる場合、制御装置18は、不図示の入力インターフェースや入力インターフェース43に入力された傾斜角度(チルト角度)に基づいて、Z軸方向に平行な軸を中心に回転フレーム17を傾けさせる。制御装置18は、不図示のセンサの出力などによって回転フレーム17の傾きの角度を把握している。制御装置18は、回転フレーム17の傾きの角度を随時、処理回路50に提供する。
【0025】
寝台装置30は、スキャン対象の患者Pを載置して移動させ、架台装置10の回転フレーム17の内部に導入する装置である。寝台装置30は、例えば、基台31と、寝台駆動装置32と、天板33と、支持フレーム34とを備える。基台31は、支持フレーム34を鉛直方向(上下方向)に移動可能に支持する筐体を含む。寝台駆動装置32は、モータやアクチュエータを含む。寝台駆動装置32は、患者Pが載置された天板33を、上下方向(Y軸方向)に移動させる。寝台駆動装置32は、患者Pが載置された天板33を、水平方向(X軸方向)に横移動させたり、Z軸回りに回転移動させたりしてもよい。寝台駆動装置32は、患者Pが載置された天板33を、支持フレーム34に沿って、天板33の長手方向(Z軸方向)に移動させてもよい。X線CT装置1が架台移動型のX線CT装置である場合、寝台駆動装置32が天板33を長手方向に移動させる移動量は、制御装置18が架台装置10を水平方向に最大に移動させた場合でも回転フレーム17の内部に導入されていない患者Pの一部を回転フレーム17の内部に導入させる、つまり、架台装置10の水平移動量を補う分の移動量であってもよい。架台装置10がZ軸方向に移動可能である場合、寝台駆動装置32は、架台装置10を移動させることによって回転フレーム17が患者Pの周囲に来るようにしてもよい。寝台駆動装置32は、架台装置10と天板33との双方を移動させる構成であってもよい。天板33は、患者Pが載置される板状の部材である。X線CT装置1は、患者Pが立位または座位でスキャンされる方式の装置であってもよい。この場合、X線CT装置1は、寝台装置30に代えて被検体支持機構を有し、架台装置10は、回転フレーム17を、床面に垂直な軸方向を中心に回転させる。
【0026】
コンソール装置40は、例えば、メモリ41と、ディスプレイ42と、入力インターフェース43と、ネットワーク接続回路44と、処理回路50とを備える。本実施形態では、コンソール装置40は架台装置10とは別体であるものとして説明するが、架台装置10にコンソール装置40の各構成要素の一部または全部が含まれてもよい。
【0027】
メモリ41は、例えば、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリなどの半導体メモリ素子、ハードディスクドライブ(Hard Disk Drive:HDD)、光ディスクなどにより実現される。メモリ41は、例えば、DAS16により出力された検出データ、検出データに基づいて生成される投影データや、再構成画像、CT画像などのデータを記憶する。これらのデータは、メモリ41ではなく(あるいはメモリ41に加えて)、X線CT装置1が通信可能な外部メモリに記憶されてもよい。外部メモリは、例えば、外部メモリを管理するクラウドサーバが読み書きの要求を受け付けることで、クラウドサーバによって制御されるものである。外部メモリは、例えば、PACS(Picture Archiving and Communication Systems)と称されるシステムにより実現されてもよい。PACSとは、各種画像診断装置によって撮影された画像などを体系的に記憶する医用画像管理システムである。
【0028】
ディスプレイ42は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ42は、処理回路50によって生成された再構成画像やCT画像などの画像や、X線CT装置1の操作者(医師や技師など)による各種操作を受け付けるGUI(Graphical User Interface)画像などを表示する。ディスプレイ42は、例えば、液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display:LCD)やCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、有機EL(Electroluminescence)ディスプレイなどである。ディスプレイ42は、架台装置10に設けられてもよい。ディスプレイ42は、デスクトップ型でもよいし、コンソール装置40の本体部と無線通信可能な表示装置(例えば、タブレット端末)であってもよい。
【0029】
入力インターフェース43は、X線CT装置1の操作者による各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作の内容を示す電気信号を処理回路50に出力する。例えば、入力インターフェース43は、検出データを収集する際の収集条件、投影データを生成する際の生成条件、再構成画像を再構成する際の再構成条件、再構成画像から後処理画像を生成する際の画像処理条件などの入力操作を受け付ける。入力インターフェース43は、例えば、マウスやキーボード、タッチパネル、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、カメラ、赤外線センサ、マイクなどにより実現される。入力インターフェース43は、一部の入力操作を受け付ける機能(特に、架台装置10の筐体の水平移動させる機能)が操作スイッチなどとして架台装置10に設けられてもよい。入力インターフェース43は、コンソール装置40の本体部と無線通信可能な表示装置(例えば、タブレット端末)により実現されてもよい。本明細書において入力インターフェース43は、マウスやキーボードなどの物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェースの例に含まれる。
【0030】
ネットワーク接続回路44は、例えば、プリント回路基板を有するネットワークカード、あるいは無線通信モジュールなどを含む。ネットワーク接続回路44は、接続する対象のネットワークの形態に応じた情報通信用プロトコルを実装する。ネットワークは、例えば、LAN(Local Area Network)やWAN(Wide Area Network)、インターネット、セルラー網、専用回線などを含む。ネットワーク接続回路44は、例えば、上述したPACSなどにより実現される外部メモリとコンソール装置40との接続を実現する。
【0031】
処理回路50は、X線CT装置1の全体の動作を制御する。処理回路50は、例えば、システム制御機能51、前処理機能52、再構成処理機能53、画像処理機能54、スキャン制御機能55、表示制御機能56などを実行する。処理回路50は、例えば、ハードウェアプロセッサがメモリ41に記憶されたプログラム(ソフトウェア)を実行することにより、これらの機能を実現するものである。
【0032】
ハードウェアプロセッサとは、例えば、CPU、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)または複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))などの回路(circuitry)を意味する。メモリ41にプログラムを記憶させる代わりに、ハードウェアプロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合、ハードウェアプロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。ハードウェアプロセッサは、単一の回路として構成されるものに限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのハードウェアプロセッサとして構成され、各機能を実現するようにしてもよい。複数の構成要素を1つのハードウェアプロセッサに統合して各機能を実現するようにしてもよい。複数の構成要素を1つの専用のLSIに組み込んで各機能を実現するようにしてもよい。ここで、プログラム(ソフトウェア)は、予めROMやRAM、フラッシュメモリなどの半導体メモリ素子、ハードディスクドライブなどの記憶装置を構成する記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体がコンソール装置40に備えるドライブ装置に装着されることで、コンソール装置40に備える記憶装置にインストールされてもよい。プログラム(ソフトウェア)は、他のコンピュータ装置からネットワーク接続回路44が接続するネットワークを介して予めダウンロードされて、コンソール装置40に備える記憶装置にインストールされてもよい。コンソール装置40に備える記憶装置にインストールされたプログラム(ソフトウェア)は、制御装置18が備える処理回路に転送されて実行されてもよい。
【0033】
コンソール装置40または処理回路50が備える各構成要素は、分散化されて複数のハードウェアにより実現されてもよい。処理回路50は、コンソール装置40が備える構成ではなく、コンソール装置40と通信可能な処理装置によって実現されてもよい。処理装置は、例えば、一つのX線CT装置と接続されたワークステーション、あるいは複数のX線CT装置に接続され、以下に説明する処理回路50と同等の処理を一括して実行する装置(例えば、クラウドサーバ)である。すわなち、本実施形態の構成を、X線CT装置と、他の処理装置とがネットワークを介して接続されたX線CT検査システム(医用診断システム)として実現することも可能である。
【0034】
システム制御機能51は、例えば、入力インターフェース43が受け付けた入力操作に基づいて、処理回路50の各種機能を制御する。
【0035】
前処理機能52は、DAS16により出力された検出データに対して対数変換処理やオフセット補正処理、チャネル間の感度補正処理、ビームハードニング補正などの前処理を行って投影データを生成し、生成した投影データをメモリ41に記憶させる。
【0036】
再構成処理機能53は、前処理機能52により生成された投影データに対して、フィルタ補正逆投影法や逐次近似再構成法などによる所定の再構成処理を行って再構成画像を生成し、生成した再構成画像をメモリ41に記憶させる。再構成処理機能53(前処理機能52を含んでもよい)は、「画像処理部」の一例である。
【0037】
画像処理機能54は、入力インターフェース43が受け付けた入力操作に基づいて、再構成画像を公知の方法により、三次元画像(CT画像)や任意断面の断面画像に変換する。三次元画像への変換は、前処理機能52によって行われてもよい。
【0038】
スキャン制御機能55は、X線高電圧装置14、DAS16、制御装置18、および寝台駆動装置32に指示することで、架台装置10における検出データの収集処理を制御する。スキャン制御機能55は、位置合わせ画像、本撮影画像、および検査や診断に用いる画像を撮影する際の各部の動作をそれぞれ制御する。
【0039】
このとき、スキャン制御機能55は、画像を撮影する際に患者Pに照射させるX線の出力を制御する。より具体的には、スキャン制御機能55は、患者Pに照射させるX線の線量や、患者PへのX線の照射自体を行うか否かを制御する。スキャン制御機能55におけるX線の出力の制御では、不図示の収音装置により収音された音響をリアルタイムに監視(モニタリング)し、収音された音響が異常音であるか否かを判定する。異常音とは、例えば、画像を撮影しているときに患者Pが動いてしまったことによって、患者Pから発生される音響である。そして、スキャン制御機能55は、収音された音響が異常音ではない場合には、画像を撮影するためのX線の出力の制御を通常の制御とする。一方、スキャン制御機能55は、収音された音響が異常音である場合には、患者Pに照射するX線の線量を低下させる、または/および患者PにX線を照射しない、つまり、画像の撮影をスキップするようにX線の出力を制御する。これは、収音された音響が異常音であるということは、患者Pが動いてしまったことが想定され、このときに撮影された画像には、いわゆる、モーションアーチファクトが発生し、医師による患者Pの検査や診断に好適ではない不鮮明な画像になる可能性が高いことが想定されるためである。そして、スキャン制御機能55は、検査や診断に好適ではない不鮮明な画像になる可能性が高いにもかかわらず、通常の画像を撮影するときと同じ線量のX線を患者Pに照射して不鮮明な画像を撮影してしまうよりも、患者PにおけるX線の被ばく量を低減させるために、X線の線量を低下させる、または/および患者PにX線を照射しないようにした方が好適であると考えられるためである。スキャン制御機能55におけるこの機能(X線の出力を制御する機能)の詳細については後述する。
【0040】
表示制御機能56は、ディスプレイ42の表示態様を制御する。例えば、表示制御機能56は、ディスプレイ42を制御して、処理回路50によって生成された再構成画像や、X線CT装置1の操作者による各種操作を受け付けるGUI画像などを表示させる。表示制御機能56は、スキャン制御機能55が患者Pを撮影する際に照射するX線の線量を制御する際に、例えば、スキャン制御機能55が判定している音響の情報をCT検査の実施者(医師や技師など)に提示するための音響画像などをディスプレイ42に表示させてもよい。
【0041】
このような構成によってX線CT装置1では、X線管装置11により発生されたX線を患者Pに照射して、患者Pの撮影(スキャン)を行う。X線CT装置1における患者Pのスキャンの態様としては、ヘリカルスキャン、コンベンショナルスキャン、ステップアンドシュートなどの態様がある。ヘリカルスキャンとは、天板33を移動させながら回転フレーム17を回転させて患者Pをらせん状にスキャンする態様である。コンベンショナルスキャンとは、天板33を静止させた状態で回転フレーム17を回転させて患者Pを円軌道でスキャンする態様である。ステップアンドシュートとは、天板33の位置を一定間隔で移動させてコンベンショナルスキャンを複数のスキャンエリアで行う態様である。
【0042】
次に、スキャン制御機能55においてX線の出力を制御する機能を実現するための構成および動作について説明する。図2は、実施形態に係るX線診断装置(X線CT装置1)が備えるスキャン制御機能55の機能構成の一例を示す図である。スキャン制御機能55は、例えば、取得機能552と、モデル音響生成機能554と、音響モニタリング機能556と、制御機能558とを備える。モデル音響生成機能554は、例えば、音響抽出機能5542を備える。音響モニタリング機能556は、例えば、異常音判定機能5562を備える。図2には、スキャン制御機能55において、収音された音響に基づいて、画像を撮影するためのX線の出力を制御する機能を実行する構成の一例を示している。
【0043】
図2には、スキャン制御機能55がモニタリングして異常音であるか否かを判定する音響を収音する収音装置700を併せて示している。収音装置700は、例えば、聴診器などのような、患者Pの体表面に接触させて装着することにより、患者Pから発生される音響を収音するための装置である。収音装置700は、例えば、マイクなどのような、患者Pに接触しない箇所に配置され、患者Pから発生される音響を収音するための装置であってもよい。収音装置700は、装着あるいは配置された箇所において、患者Pから発生される音響を逐次(リアルタイムに)収音する。
【0044】
ここで、X線CT装置1において患者PをCT検査する際の収音装置700の配置の一例について説明する。図3は、実施形態に係るX線診断装置(X線CT装置1)において検査(CT検査)をする際の収音装置700の配置の一例を模式的に示す図である。図3の(a)は、X線CT装置1によって患者Pの肺野を撮影する場合における収音装置700の配置の一例である。図3の(a)には、患者Pの体表面に接触させて装着する収音装置700を、患者Pの胸部に装着した場合の一例を示している。この場合、収音装置700は、患者Pの呼吸音を逐次収音する。図3の(b)は、X線CT装置1によって患者Pの腸管を撮影する場合における収音装置700の配置の一例である。図3の(b)には、患者Pの体表面に接触させて装着する収音装置700を、患者Pの腹部に装着した場合の一例を示している。この場合、収音装置700は、患者Pの腸管が蠕動運動する際に発生される音響を逐次収音する。図3の(c)は、X線CT装置1によって患者Pの腕部を撮影する場合における収音装置700の配置の一例である。図3の(c)には、患者Pの体表面に接触させて装着する収音装置700を、患者Pの肘部に装着した場合の一例を示している。この場合、収音装置700は、患者Pの肘が動く際になど関節部で発生される音響を逐次収音する。図3の(a)~図3の(c)では、それぞれの箇所において患者Pから発生される音響を収音する収音装置700を一つずつ装着した場合を示したが、患者Pに装着する収音装置700は、一つに限定されるものではなく、患者Pにより発生される同様の音響を収音する複数の収音装置700を患者Pに装着してもよい。
【0045】
さらに、患者Pにより発生される異なる音響を収音するための複数の収音装置700を、患者Pに同時に装着してもよい。図3の(e)は、X線CT装置1によって患者Pの肺野を撮影する場合において、呼吸音に加えて、患者Pの反射的な動きによって発生される音響を収音する場合の収音装置700の配置の一例である。図3の(e)には、患者Pに接触しない収音装置700aを、患者Pの顔(ここでは、口)の周辺に配置した場合の一例を示している。この場合、収音装置700aは、例えば、咳やくしゃみなど、患者Pが意図しないで発生される音響を逐次収音する。図3の(f)および図3の(f)も、図3の(e)と同様に、収音装置700によるそれぞれの収音に加えて、収音装置700aによる収音を行う場合の一例である。
【0046】
収音装置700(収音装置700aも含む)は、収音した音響を表す情報(以下、「音響情報」という)を、コンソール装置40に逐次出力(伝送)する。収音装置700における音響情報のコンソール装置40への伝送は、無線通信によって行ってもよいし、有線のケーブルによって行ってもよい。
【0047】
取得機能552は、収音装置700により逐次伝送された音響情報を取得する。取得機能552は、取得した音響情報を、モデル音響生成機能554と音響モニタリング機能556とのそれぞれに逐次出力する。取得機能552は、音響情報を取得した時間を記録してもよい。この場合、取得機能552は、取得した音響情報と、記録した時間を表す情報とを対応付けて、モデル音響生成機能554と音響モニタリング機能556とのそれぞれに出力してもよい。取得機能552は、「取得部」の一例である。
【0048】
モデル音響生成機能554は、取得機能552により逐次出力された、X線CT装置1によって撮影を行う前に収音装置700によって収音された音響情報に基づいて、モデル音響を生成する。X線CT装置1によって撮影を行う前に収音装置700によって収音された音響情報(以下、「撮影前音響情報」という)とは、例えば、医師の声かけやX線CT装置1からの自動音響による指示に応じて、撮影中の呼吸の仕方などを患者Pが練習しているときに収音された音響を表す情報である。モデル音響は、実際に撮影が行われているとき(正常に撮影が行われているとき)に患者Pから発生されることが想定される音響を表す音響情報である。このため、モデル音響には、異常音を表す音響の情報は含まれず、通常の状態において患者Pから発生される音響を表す情報が含まれる。モデル音響は、実際に撮影を行っているときに患者Pから異常音が発生されたか否かを判定するための基準として用いられる。モデル音響には、X線CT装置1が設置されている検査室(検査環境)の内外のノイズなど、正常に撮影が行われているときにおいても発生されることが想定される、現在の撮影環境における周囲の音響を表す情報が含まれてもよい。
【0049】
音響抽出機能5542は、撮影前音響情報に含まれる音響の中から、患者Pにより発生された音響(以下、「生体音響」という)を抽出する。音響抽出機能5542は、例えば、患者Pの生体音響の音量(生体音響の振幅)を抽出する。音響抽出機能5542は、例えば、撮影前音響情報に含まれる音響の中から、最大の振幅の生体音響や、生体音響の振幅の平均値など、一つの値の生体音響を抽出してもよい。音響抽出機能5542は、生体音響に加えて、撮影前音響情報に含まれる音響の中から、現在の撮影環境の音響(以下、「環境音」という)も抽出してもよい。現在の環境音とは、X線CT装置1が備えるそれぞれの構成要素から発生される音響である。現在の環境音は、例えば、回転フレーム17が回転するときに発生される音響である。
【0050】
音響抽出機能5542による音響の抽出においては、例えば、撮影前音響情報に含まれる生体音響のサンプル数が少なかったり、異常音の生体音響が含まれていたりすることも考えられる。この場合、音響抽出機能5542は、例えば、CT検査の実施者や操作者(医師や技師など)に、モデル音響の生成に必要な撮影前音響情報の再度の収音を促すような通知を行ってもよい。この場合、音響抽出機能5542は、例えば、表示制御機能56によって抽出した生体音響や環境音を表す画像をディスプレイ42に表示させることにより、CT検査の実施者や操作者(医師や技師など)に、現時点で抽出した音響を提示して、異常音と判断される音響であるか否かの判定を行うように促してもよい。
【0051】
モデル音響生成機能554は、音響抽出機能5542により抽出された音響に基づいて、モデル音響を生成する。音響抽出機能5542により抽出された音響が、振幅が最大の生体音響(環境音を含んでもよい)や生体音響(環境音を含んでもよい)の振幅の平均値などの一つの値である場合、モデル音響生成機能554は、抽出された音響自体をモデル音響としてもよい。音響抽出機能5542により抽出された音響に現在の環境音が含まれる場合、モデル音響生成機能554は、患者Pの生体音響と現在の環境音とのそれぞれを別々のモデル音響として生成してもよいし、患者Pの生体音響と現在の環境音とを考慮した一つのモデル音響を生成してもよい。モデル音響生成機能554は、生成したモデル音響を、音響モニタリング機能556に出力する。モデル音響生成機能554は、「モデル音響生成部」の一例である。
【0052】
ところで、X線CT装置1によって撮影を行う前の状態においては、例えば、回転フレーム17は実際に回転していないなど、X線CT装置1が備えるそれぞれの構成要素から環境音が発せられないことも考えられる。このような場合、モデル音響生成機能554は、現在の環境音として、例えば、X線CT装置1における以前の撮影のときに収音された環境音や、X線CT装置1の製造時に予め収音された環境音を用いて、モデル音響を生成してもよい。モデル音響生成機能554は、例えば、AI(Artificial Intelligence:人工知能)による学習機能(機械学習機能)を用いて、モデル音響を生成してもよい。
【0053】
音響モニタリング機能556は、取得機能552により逐次出力された、X線CT装置1において実際に患者Pの撮影を行っているときに収音装置700によって収音された音響情報をリアルタイムに監視(モニタリング)する。音響モニタリング機能556は、モデル音響生成機能554により出力されたモデル音響に基づいて、モニタリングしている音響情報に異常音を表す情報が含まれているか否かを判定する。
【0054】
異常音判定機能5562は、モニタリングしている音響情報と、モデル音響生成機能554により出力されたモデル音響との差分に基づいて、異常音が発生したか否かを判定する。このとき、異常音判定機能5562は、音響情報とモデル音響とを逐次比較し、音響情報がモデル音響から逸脱している場合に、異常音が発生された可能性があることを検知する。そして、異常音判定機能5562は、モデル音響から逸脱している音響情報の大きさ、言い換えれば、音響情報とモデル音響との差分が、モデル音響に基づく所定の閾値以上の大きさである場合に、異常音が発生されたと判定する。所定の閾値は、例えば、モデル音響が表す、患者Pにおける最大の振幅の生体音響や、生体音響の振幅の平均値である。モデル音響生成機能554により出力されたモデル音響が、音響抽出機能5542により抽出された最大の振幅の生体音響や生体音響の振幅の平均値などの一つの値である場合、所定の閾値は、モデル音響が表す値そのものであってもよい。異常音判定機能5562は、「異常音判定部」の一例である。
【0055】
音響モニタリング機能556は、モニタリングしている音響情報に異常音を表す情報が含まれているか否かの判定結果(異常音判定機能5562による異常音の発生有無の判定結果)を、制御機能558に出力する。
【0056】
さらに、音響モニタリング機能556は、異常音判定機能5562が、異常音が発せられている判定した場合、この期間を計時する。より具体的には、音響モニタリング機能556は、X線CT装置1において実際に患者Pの撮影を開始した時刻から、異常音判定機能5562によって異常音が発せられたと判定された時刻までの経過時間と、異常音判定機能5562によって異常音が発せられていないと判定された時刻までの経過時間とに基づいて、異常音が発せられている期間を計時する。音響モニタリング機能556は、X線CT装置1において実際に患者Pの撮影を開始した時刻から異常音判定機能5562によって異常音が発せられたと判定された時刻までの経過時間、つまり、異常音の発生開始時刻を表す情報と、計時した異常音が発せられている期間を表す情報とのそれぞれを、異常音時間情報として制御機能558に出力する。
【0057】
ここで、異常音判定機能5562における異常音の発生有無の判定の一例について説明する。図4は、実施形態に係るX線診断装置(X線CT装置1)において異常音の発生有無を判定する音響情報の一例を模式的に示す図である。図4には、収音装置700が収音し、取得機能552が取得して逐次出力している音響情報(音響モニタリング機能556においてモニタリングしている音響情報)が表す生体音響の振幅の時間的な変化の一例を示している。ここでは、モデル音響が、患者Pにおける最大の振幅の生体音響であり、異常音判定機能5562が、モデル音響が表す最大の振幅の値を所定の閾値(上限閾値TUおよび下限閾値TL)として異常音の発生の有無を判定するものとする。図4に示した一例では、上限閾値TUの振幅が「0.2」であり、下限閾値TLの振幅が「-0.2」であるものとしている。上限閾値TUと下限閾値TLとのそれぞれは、上述したように、プラス側とマイナス側で絶対値が同じ値としてもよいが、それぞれ異なる値にしてもよい。上限閾値TUと下限閾値TLとのそれぞれは、上述したように、モデル音響に基づく値に限定されない。例えば、上限閾値TUと下限閾値TLとのそれぞれは、CT検査の実施者(医師や技師など)が任意の値に設定してもよい。
【0058】
異常音判定機能5562は、モニタリングしている音響情報が表す振幅の値が、上限閾値TUと下限閾値TLとのうちいずれか一方または両方の閾値以上の大きさである場合に、異常音が発生されたと判定する。図4に示した一例では、時間が約50000~60000[mS]の間の期間OPにおいて、異常音判定機能5562は、異常音が発生されたと判定する。この場合、音響モニタリング機能556は、期間OPの間、音響情報に異常音を表す情報が含まれていることを表す判定結果を、制御機能558に出力する。さらに、音響モニタリング機能556は、X線CT装置1において実際に患者Pの撮影を開始した時刻(時間=0[mS])からの期間OPの開始時刻と、期間OPとのそれぞれを表す異常音時間情報を、制御機能558に出力する。
【0059】
図2に戻り、制御機能558は、音響モニタリング機能556(より具体的には、異常音判定機能5562)により出力された、モニタリングしている音響情報に異常音を表す情報が含まれているか否かの判定結果に基づいて、患者Pの撮影を行う際に照射するX線の出力を制御する。より具体的には、判定結果が、音響情報に異常音を表す情報が含まれていないということを表している場合、制御機能558は、患者Pに照射するX線の線量が通常の画像を撮影するときと同じ線量となるようにX線の出力を制御する。つまり、制御機能558は、X線CT装置1において通常の撮影状態で画像を撮影するように、X線の出力を制御する。一方、判定結果が、音響情報に異常音を表す情報が含まれているということを表している場合、制御機能558は、患者PにおけるX線の被ばく量を低減させるようにX線の出力を制御する。より具体的には、制御機能558は、図4に示した期間OPの期間において患者Pに照射するX線の線量を、通常の画像を撮影するときよりも少なくなる、または/および患者PにX線を照射しない(X線の線量をゼロにする)ようにX線の出力を制御する。
【0060】
制御機能558におけるX線の出力の制御は、異常音時間情報に基づいて行ってもよい。より具体的には、制御機能558は、音響モニタリング機能556(より具体的には、異常音判定機能5562)により異常音時間情報が出力されていないときには、患者Pに照射するX線の線量が通常の画像を撮影するときと同じ線量となるようにX線の出力を制御し、異常音時間情報が出力されたときには、患者Pに照射するX線の線量を低下させる、または/およびゼロにするようにX線の出力を制御してもよい。制御機能558は、「制御部」の一例である。
【0061】
音響情報に異常音を表す情報が含まれている場合における制御機能558のX線の線量の制御は、X線CT装置1において患者Pの撮影(スキャン)を行う際の動作に応じて切り替えてもよい。例えば、制御機能558は、ヘリカルスキャン、コンベンショナルスキャン、ステップアンドシュートなどの態様のように、回転フレーム17を回転させながら患者Pの撮影を行う場合には、回転フレーム17の回転を停止させることなく、異常音が発生している期間OPの期間に患者Pに照射するX線の線量を低下させるように制御してもよい。例えば、制御機能558は、回転フレーム17を回転させずに、つまり、一定の方向から患者Pの撮影を行う場合には、異常音が発生している期間OPの期間に患者PにX線を照射しないように制御してもよい。例えば、制御機能558は、ヘリカルスキャンの態様で患者Pの撮影を行う場合には、異常音が発生している期間OPの期間に患者Pに照射するX線の線量を低下させるように制御し、コンベンショナルスキャンやステップアンドシュートの態様で患者Pの撮影を行う場合には、異常音が発生している期間OPの期間に患者PにX線を照射しないように制御してもよい。
【0062】
次に、スキャン制御機能55において、収音された音響に基づいて、画像を撮影するためのX線の出力を制御する一連の処理の流れの一例について説明する。図5は、実施形態に係るX線診断装置(X線CT装置1)における処理の一連の流れの一例を示すフローチャートである。
【0063】
患者Pの検査や診断を開始する準備が整うと(天板33に載置された患者Pが回転フレーム17の内部に導入されると)、X線CT装置1では、スキャン制御機能55が、画像を撮影するためのX線の出力を制御する処理を開始する。画像を撮影するためのX線の出力を制御する処理を開始すると、取得機能552は、収音装置700によって収音された音響情報を取得する(ステップS100)。取得機能552は、取得した音響情報を、モデル音響生成機能554と音響モニタリング機能556とのそれぞれに逐次出力する。以降、取得機能552は、収音装置700によって収音された音響情報の逐次取得と、モデル音響生成機能554と音響モニタリング機能556とのそれぞれへの逐次出力とを繰り返す。
【0064】
モデル音響生成機能554は、音響抽出機能5542によって、取得機能552により逐次出力された音響情報(ここでは、撮影前音響情報)の中から、患者Pの生体音響(環境音を含んでもよい)を抽出する(ステップS102)。そして、モデル音響生成機能554は、音響抽出機能5542により抽出された生体音響(環境音を含んでもよい)に基づいて、モデル音響を生成する(ステップS104)。ここでは、モデル音響生成機能554が、患者Pの生体音響に基づくモデル音響を生成するものとする。モデル音響生成機能554は、生成したモデル音響を、音響モニタリング機能556に出力する。
【0065】
その後、スキャン制御機能55は、CT検査の実施者(医師や技師など)によって診断の開始が指示されたか否かを確認する(ステップS200)。ステップS200において、診断の開始が指示されていないことが確認された場合、スキャン制御機能55は、ステップS200の処理を繰り返す。つまり、スキャン制御機能55は、診断を開始する指示がされるのを待つ。
【0066】
一方、ステップS200において、診断の開始が指示されたことが確認された場合、音響モニタリング機能556は、取得機能552により逐次出力された音響情報(ここでは、診断開始後の音響情報)のモニタリング(監視)を開始する(ステップS202)。
【0067】
そして、音響モニタリング機能556は、異常音判定機能5562によって異常音を検知したか否かを確認する(ステップS300)。つまり、音響モニタリング機能556は、モニタリングしている音響情報に、異常音が発生されたと判定する生体音響の情報が含まれているか否かを確認する。ステップS300において、異常音を検知したことが確認された場合、制御機能558は、音響モニタリング機能556におけるステップS300の処理を繰り返す。つまり、制御機能558は、異常音が検知されなくなる(音響情報に異常音が発生されたと判定される生体音響の情報が含まれなくなる)まで、診断を開始(撮影を開始)するのを待つ。
【0068】
一方、ステップS300において、異常音を検知しないことが確認された場合、制御機能558は、患者Pの撮影(スキャン)を開始する(ステップS302)。そして、制御機能558は、通常の画像を撮影するときと同じ線量となるようにX線の出力を制御する。
【0069】
そして、制御機能558は、音響モニタリング機能556(異常音判定機能5562)によって異常音が検知されたか否かを確認する(ステップS400)。つまり、制御機能558は、患者Pの撮影(スキャン)を開始した後も、異常音が検知されたか否かの確認を随時行う。ステップS400において、異常音が検知されないことが確認された場合、制御機能558は、患者Pに照射するX線の線量が通常の画像を撮影するときと同じ線量となるように(通常の撮影を行うように)、X線の出力を制御する(ステップS402)。
【0070】
一方、ステップS400において、異常音が検知されたことが確認された場合、制御機能558は、患者Pに照射するX線の線量を低下させる、または/およびX線の線量をゼロにするように、X線の出力を制御する(ステップS412)。
【0071】
その後、スキャン制御機能55は、今回指示された診断が完了したか否かを確認する(ステップS500)。ステップS500において、今回指示された診断が完了していないことが確認された場合、スキャン制御機能55は、処理をステップS400に戻して、ステップS400~ステップS500の処理、つまり、患者Pの撮影を繰り返す。
【0072】
一方、ステップS500において、今回指示された診断が完了したことが確認された場合、スキャン制御機能55は、今回指示された診断に応じた患者Pの撮影を終了する。
【0073】
このような処理によって、X線CT装置1では、コンソール装置40が備える処理回路50内のスキャン制御機能55が、収音装置700によって収音された音響の音響情報をリアルタイムに監視(モニタリング)して、異常音の音響が収音された(異常音が発生された)と判定した場合、撮影を行う際に患者Pに照射するX線の線量を、通常の画像を撮影するときよりも少なくなる、または/およびゼロにするように、X線の出力を制御する。これにより、X線CT装置1では、患者Pの検査や診断に好適ではない不鮮明な画像を撮影してしまう(モーションアーチファクトが発生した画像を撮影してしまう)可能性が高いことが想定される場合において、患者PにおけるX線の被ばく量を低減させることができる。言い換えれば、X線CT装置1では、患者Pに対して不要な線量のX線を照射してしまうのを回避することができる。
【0074】
そして、X線CT装置1では、スキャン制御機能55によってX線の出力が制御された状態でDAS16により出力された検出データに基づいて、再構成画像を生成することができる。つまり、X線CT装置1では、前処理機能52が、DAS16により出力された検出データに対して前処理を行って投影データを生成し、再構成処理機能53が、前処理機能52により生成された投影データに対して再構成処理を行って再構成画像を生成することができる。このとき、異常音が発生されたときにDAS16により出力された検出データや、前処理機能52により生成された投影データは、通常の画像を撮影するときよりもX線の線量が低下された状態、または/およびゼロの状態で得られたデータである。このため、上述したように、再構成処理機能53が生成した再構成画像は、検査や診断に好適ではない不鮮明な画像になる可能性が高い。このため、例えば、再構成処理機能53は、異常音が発生されたときには、再構成処理を行わない、つまり、再構成画像の生成をスキップするようにしてもよい。
【0075】
しかしながら、例えば、再構成処理機能53が行う再構成処理によっては、異常音が発生されたときでも、得られたデータが、X線の線量が低下されたことによってノイズが多くなっている状態のものである場合には、検査や診断に好適ではない不鮮明な画像になってしまうのを回避することができる場合もあると考えられる。つまり、再構成処理機能53が、X線の線量が低下されていることによるノイズを除去する補正を含む再構成処理を行うことによって、検査や診断に好適な画像を生成することができる場合もあると考えられる。そして、再構成処理機能53は、異常音が発生されていないときには、通常の再構成処理を行って再構成画像を生成し、異常音が発生されたときには、通常とは異なる再構成処理(ノイズ除去の補正を含む再構成処理)を行うようにしてもよい。例えば、再構成処理機能53は、異常音が発生されていないときには、フィルタ補正逆投影法によって再構成画像を生成し、異常音が発生されたときには、逐次近似再構成法によって再構成画像を生成してもよい。例えば、再構成処理機能53は、異常音が発生されたときには、AIによる機械学習機能の一つであるディープラーニング(Deep Learning:深層学習)を用いてノイズを除去する再構成処理によって再構成画像を生成し、異常音が発生されていないときには、ディープラーニングを用いない再構成処理によって再構成画像を生成してもよい。ここで、ディープラーニングとは、入力層と出力層とを複数の中間層で結んだニューラルネットワークに畳み込み処理を用いたニューラルネットワーク(DCNN:Deep Convolutional Neural Network)である。この場合、スキャン制御機能55は、異常音時間情報を再構成処理機能53に出力してもよい。そして、再構成処理機能53は、異常音時間情報に基づいて、再構成画像を生成するための再構成処理を切り替えてもよい。つまり、再構成処理機能53は、スキャン制御機能55により出力された異常音時間情報に基づいて、再構成画像を生成する一連の投影データのうち、ノイズが多くなっている位置(時間)を特定して、再構成画像を生成するための再構成処理を切り替えてもよい。より具体的には、再構成処理機能53は、スキャン制御機能55により異常音時間情報が出力されていないときには、ノイズ除去の補正を含まない再構成処理を行って再構成画像を生成し、異常音時間情報が出力されたときには、ノイズ除去の補正を含む再構成処理を行って再構成画像を生成するようにしてもよい。このような再構成処理機能53における異常音時間情報に基づいた再構成処理の切り替えは、例えば、周期的な動きをしている肺野の診断を行う場合よりも、周期的な動きをしていない腸管の診断を行う場合において、より有効であると考えられる。これは、周期的な動きをしている肺野の診断をしているときに異常音が発生された場合には、次の周期の投影データから再構成画像を生成することが可能であるが、周期的な動きをしていない腸管の診断をしているときに異常音が発生された場合には、同様の再構成画像を生成することが困難であると考えられるからである。
【0076】
上記に述べたとおり、実施形態のX線診断装置では、収音された音響をリアルタイムに監視(モニタリング)し、異常音が発生されたと判定した場合には、撮影を行う際に患者に照射するX線の線量を、通常の画像を撮影するときよりも少なくなる、または/およびゼロにするように、X線の出力を制御する。これにより、実施形態のX線診断装置では、患者の検査や診断に好適ではない不鮮明な画像を撮影してしまう可能性が高いことが想定される場合に、患者に対して不要な線量のX線を照射してしまうのを回避する(患者の被ばく量を低減させる)ことができる。
【0077】
しかも、実施形態のX線診断装置では、患者に照射するX線の出力の制御を、収音された音響に基づいて行っている。このため、例えば、患者の腸管を診断する際に、従来であれば、腸管の蠕動運動を意図的に止める(抑制する)ための薬剤を事前に患者に投与する必要があったが、実施形態のX線診断装置では、薬剤の投与などによって動きを抑制しなくても、検査や診断に好適な画像を撮影することができるタイミングを収音された音響に基づいて判断することもできる。このことにより、実施形態のX線診断装置では、薬剤を投与したことによって患者に発生することが想定される副作用などの人体への影響を考慮することなく、患者に対して好適な検査や診断を行うことができる。一方、患者に薬剤を投与した場合、実施形態のX線診断装置では、収音された音響に基づいて、確実に動きが抑制された状態(異常音が発生されない状態)が確認された上で画像を撮影することができるため、患者に対して好適な検査や診断を行うことができる。
【0078】
上述した実施形態のX線CT装置1では、コンソール装置40が備える処理回路50内のスキャン制御機能55が、患者Pの検査や診断を開始する準備が整うと、画像を撮影するためのX線の出力を制御する処理を開始する場合について説明した。つまり、実施形態のX線CT装置1では、常に、X線の出力を制御する処理を行う場合について説明した。しかし、実施形態のX線CT装置1におけるX線の出力の制御は、その制御を実施するか否かを切り替える、つまり、X線の出力制御のオンとオフとを切り替える構成にしてもよい。この場合、例えば、スキャン制御機能55が、表示制御機能56によって、リアルタイムに監視(モニタリング)している音響情報(生体音響や環境音)を表す画像をディスプレイ42に表示させることによって、CT検査の実施者や操作者(医師や技師など)に、モニタリングしている音響を提示し、CT検査の実施者や操作者の判断によって、X線の出力制御のオンとオフとが切り替えられるようにしてもよい。この場合のX線CT装置1の構成や、動作、処理は、容易に考えることができる。従って、この場合のX線CT装置1の構成や、動作、処理に関する詳細な説明は省略する。
【0079】
上述した実施形態では、X線診断装置がX線CT装置である場合を例に挙げて説明したが、これはあくまで一例であり、X線診断装置は、X線を照射しながら検査や診断を行う医用診断装置であれば、X線CT装置に限定されない。例えば、X線診断装置は、X線を照射しながら患者の血管(動脈や静脈)の状態を撮影する検査、いわゆる、アンギオグラフィー検査を行う医用診断装置であってもよい。この場合におけるX線診断装置の構成や、動作、処理は、上述した実施形態のX線診断装置(X線CT装置)の構成や、動作、処理と等価なものになるようにすればよい。従って、X線CT装置以外の医用診断装置である場合のX線診断装置の構成や、動作、処理に関する詳細な説明は省略する。
【0080】
上記説明した実施形態は、以下のように表現することができる。
処理回路(processing circuitry)を備え、
前記処理回路は、
少なくとも被検体から発生される音響を含む音響情報を取得し、
前記音響情報に基づいて前記被検体の撮影を行う際に照射するX線の出力を制御する、
X線診断装置。
【0081】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、少なくとも被検体(P)から発生される音響を含む音響情報を取得する取得部(552)と、前記音響情報に基づいて前記被検体(P)の撮影を行う際に照射するX線の出力を制御する制御部(558)と、を持つことにより、被検体(P)の検査や診断を行うX線診断装置によって診断を行う際に、被検体(P)から発生する音響に基づいて、好適なタイミングで撮影を行うX線診断装置を実現することができる。
【0082】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0083】
1・・・X線CT装置、10・・・架台装置、11・・・X線管装置、12・・・ウェッジ、13・・・コリメータ、14・・・X線高電圧装置、15・・・X線検出器、16・・・データ収集システム(DAS)、17・・・回転フレーム、18・・・制御装置、30・・・寝台装置、31・・・基台、32・・・寝台駆動装置、33・・・天板、34・・・支持フレーム、40・・・コンソール装置、41・・・メモリ、42・・・ディスプレイ、43・・・入力インターフェース、44・・・ネットワーク接続回路、50・・・処理回路、51・・・システム制御機能、52・・・前処理機能、53・・・再構成処理機能、54・・・画像処理機能、55・・・スキャン制御機能、552・・・取得機能、554・・・モデル音響生成機能、5542・・・音響抽出機能、556・・・音響モニタリング機能、5562・・・異常音判定機能、558・・・制御機能、56・・・表示制御機能、700・・・収音装置
図1
図2
図3
図4
図5