IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社村田製作所の特許一覧

<>
  • 特開-電子部品及び電子部品の製造方法 図1
  • 特開-電子部品及び電子部品の製造方法 図2
  • 特開-電子部品及び電子部品の製造方法 図3
  • 特開-電子部品及び電子部品の製造方法 図4
  • 特開-電子部品及び電子部品の製造方法 図5
  • 特開-電子部品及び電子部品の製造方法 図6
  • 特開-電子部品及び電子部品の製造方法 図7
  • 特開-電子部品及び電子部品の製造方法 図8
  • 特開-電子部品及び電子部品の製造方法 図9
  • 特開-電子部品及び電子部品の製造方法 図10
  • 特開-電子部品及び電子部品の製造方法 図11
  • 特開-電子部品及び電子部品の製造方法 図12
  • 特開-電子部品及び電子部品の製造方法 図13
  • 特開-電子部品及び電子部品の製造方法 図14
  • 特開-電子部品及び電子部品の製造方法 図15
  • 特開-電子部品及び電子部品の製造方法 図16
  • 特開-電子部品及び電子部品の製造方法 図17
  • 特開-電子部品及び電子部品の製造方法 図18
  • 特開-電子部品及び電子部品の製造方法 図19
  • 特開-電子部品及び電子部品の製造方法 図20
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179202
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】電子部品及び電子部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/08 20060101AFI20231212BHJP
   H01G 2/10 20060101ALI20231212BHJP
   H01G 11/78 20130101ALI20231212BHJP
   H01G 4/224 20060101ALI20231212BHJP
   H01G 4/32 20060101ALI20231212BHJP
   H01G 9/00 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
H01G9/08 E
H01G9/08 C
H01G2/10 M
H01G11/78
H01G4/224 200
H01G4/32 540
H01G9/00 290L
H01G4/32 573
H01G4/32 542
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092365
(22)【出願日】2022-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】野田 知宏
【テーマコード(参考)】
5E078
5E082
【Fターム(参考)】
5E078AA11
5E078AB02
5E078HA06
5E078HA13
5E078HA24
5E078HA25
5E082AA01
5E082AB03
5E082AB09
5E082BC01
5E082EE07
5E082GG10
5E082HH25
5E082HH27
5E082HH47
5E082HH48
5E082LL03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】リフロー時における外装体の変形を抑制できる電子部品及びその製造方法を提供する。
【解決手段】電子部品100は、外装体20と、第1方向Tで対向する第1面110a及び第2面110bと、第1方向と直交する第2方向Wで対向する第3面及び第4面と、第1方向、第2方向に直交する第3方向Lで対向する第5面110e及び第6面110fと、を有する電子部品素体110と、を備える。外装体20は、第1樹脂材料を含む第1部分21と、第2樹脂材料を含む第2部分22とを有する。第1部分21は、電子部品素体110の第1面110a、第2面110b、第3面及び上記第4面の少なくとも一部に存在する。第2部分22は、電子部品素体110の第1面110a、第2面110b、第3面及び第4面のうちの少なくとも1面に露出した露出部を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
素子と、前記素子を封止する外装体とを含み、第1方向において対向する第1面及び第2面と、前記第1方向と直交する第2方向において対向する第3面及び第4面と、前記第1方向及び前記第2方向に直交する第3方向において対向する第5面及び第6面とを有する電子部品素体と、
前記第5面に形成された第1外部電極と、
前記第6面に形成された第2外部電極と、を備え、
前記外装体は、第1樹脂材料を含む第1部分と、前記第1部分に囲まれた、第2樹脂材料を含む第2部分とを有し、
前記第1部分は、前記電子部品素体の前記第1面、前記第2面、前記第3面及び前記第4面のそれぞれの少なくとも一部に存在し、
前記第2部分は、前記電子部品素体の前記第1面、前記第2面、前記第3面及び前記第4面のうちの少なくとも1面に露出した露出部を有する、電子部品。
【請求項2】
前記露出部は、前記第5面及び前記第6面の少なくとも一方に接している、請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記露出部は、前記電子部品素体1つ当たり1箇所、2箇所又は4箇所に設けられ、かつ、前記第1面及び前記第2面を上下に配置した状態において前記第3方向に直交する平面で断面視したときに左右及び上下の少なくとも一方に対称である、請求項1又は2に記載の電子部品。
【請求項4】
前記露出部は、前記第1面及び前記第2面の少なくとも一方に存在する、請求項1又は2に記載の電子部品。
【請求項5】
前記第1樹脂材料は、ポリフェニレンスルフィド及び液晶ポリマーの少なくとも一方を含み、
前記第2樹脂材料は、エポキシ樹脂及びシリコーン樹脂の少なくとも一方を含む、請求項1又は2に記載の電子部品。
【請求項6】
前記第1樹脂材料の40℃、90%RHにおける水蒸気透過度は、200g・μm/m/day以下であり、
前記第2樹脂材料の40℃、90%RHにおける水蒸気透過度は、500g・μm/m/day以上である、請求項1又は2に記載の電子部品。
【請求項7】
前記第2部分は、前記電子部品素体の内側から前記露出部の露出面に向かうにつれて細くなるテーパー構造を有する、請求項1又は2に記載の電子部品。
【請求項8】
前記テーパー構造は、曲面状のテーパー面を有する、請求項7に記載の電子部品。
【請求項9】
前記素子としての複数の電解コンデンサ素子が前記第1方向に沿って配置された重畳体を備える、請求項1又は2に記載の電子部品。
【請求項10】
素子を準備する工程と、
第1樹脂材料を含み、貫通孔を有する外装体の第1部分を準備する工程と、
前記第1部分と、前記貫通孔内に挿入された前記素子との間の隙間に充填された液状の第2樹脂材料を含む液状材料を硬化させて前記外装体の第2部分とする工程と、
前記素子の周囲のカットラインにおいて前記外装体を切断する工程と、を含み、
前記貫通孔は、一部が前記カットライン上に位置する形状であり、
前記外装体を切断する工程において、前記外装体を前記カットライン上で切断することによって前記第2部分の露出部を形成する、電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品及び電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、固体電解コンデンサ素子の陽極と陰極にそれぞれリードフレームを接続し、固体電解コンデンサ素子の全体と各リードフレームの一部とを覆うようにエポキシ樹脂等の外装樹脂で封止した固体電解コンデンサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-205446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の構造では固体電解コンデンサ素子を格納できない体積部分が多いため、さらなるコンデンサ容量の向上のためには固体電解コンデンサ素子の格納に使用できる有効容積を上げることが求められる。また、コストダウンのために生産性の向上が求められている。
【0005】
さらに、リフローで基板に実装されるコンデンサは、260℃近い高温にさらされるため、このリフロー実装前に外部環境にさらされてコンデンサに水分が不可避的に侵入すると、リフロー実装時に内圧(固体電解コンデンサの内部の水蒸気圧)による応力が発生し、外装体の変形、例えば膨れが発生する。膨れが発生すると、コンデンサの電気特性の低下や、外装体のクラック(ひび割れ)の発生、電子回路基板の高さ設計を超過してしまう等の不具合が発生するおそれがある。
【0006】
また、コンデンサ容量の向上のために外装体を薄くし、その分だけ固体電解コンデンサ素子の積層枚数を多くすることも考えられるが、外装体を薄くすると、リフロー時の内圧の上昇に耐えられずにクラックが発生する可能性が高くなる。クラックが外装体の外面に露出すると、クラックから水分や酸素が浸入するため内部の素子の劣化が加速されて電気特性のさらなる劣化が引き起こされる。
【0007】
なお、外部環境にさらされる時間が短ければこのような問題は生じないが、工程上、外部環境にさらされる時間が長くなってしまう場合には上述のような問題として顕在化する。
【0008】
このようなリフロー時の内圧上昇等に起因する外装体の変形が不具合を引き起こすという課題は、固体電解コンデンサといったコンデンサのみならず、他の電子部品においても発生し得るものである。
【0009】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、リフロー時における外装体の変形を抑制できる電子部品を提供することを目的とする。さらに、本発明は、リフロー時における外装体の変形を抑制できる電子部品を実現可能な電子部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の電子部品は、素子と、上記素子を封止する外装体とを含み、第1方向において対向する第1面及び第2面と、上記第1方向と直交する第2方向において対向する第3面及び第4面と、上記第1方向及び上記第2方向に直交する第3方向において対向する第5面及び第6面とを有する電子部品素体と、上記第5面に形成された第1外部電極と、上記第6面に形成された第2外部電極と、を備え、上記外装体は、第1樹脂材料を含む第1部分と、上記第1部分に囲まれた、第2樹脂材料を含む第2部分とを有し、上記第1部分は、上記電子部品素体の上記第1面、上記第2面、上記第3面及び上記第4面のそれぞれの少なくとも一部に存在し、上記第2部分は、上記電子部品素体の上記第1面、上記第2面、上記第3面及び上記第4面のうちの少なくとも1面に露出した露出部を有する。
【0011】
本発明の電子部品の製造方法は、素子を準備する工程と、第1樹脂材料を含み、貫通孔を有する外装体の第1部分を準備する工程と、上記第1部分と、上記貫通孔内に挿入された上記素子との間の隙間に充填された液状の第2樹脂材料を含む液状材料を硬化させて上記外装体の第2部分とする工程と、上記素子の周囲のカットラインにおいて上記外装体を切断する工程と、を含み、上記貫通孔は、一部が上記カットライン上に位置する形状であり、上記外装体を切断する工程において、上記外装体を上記カットライン上で切断することによって上記第2部分の露出部を形成する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、リフロー時における外装体の変形を抑制できる電子部品を提供することができる。さらに、本発明によれば、リフロー時における外装体の変形を抑制できる電子部品を実現可能な電子部品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の実施形態に係る電子部品の一例を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、図1に示す電子部品のX-X線に沿った断面図である。
図3図3は、図1に示す電子部品のY-Y線に沿った断面図である。
図4図4は、図1に示す電子部品が備える電子部品素体の第1主面又は第2主面を模式的に示す図である。
図5図5は、図1に示す電子部品が備える電子部品素体の第1側面又は第2側面を模式的に示す図である。
図6図6は、本発明の他の実施形態に係る電子部品の一例を模式的に示す断面図であり、図1のY-Y線に沿った断面図に対応する。
図7図7は、本発明のさらに他の実施形態に係る電子部品の一例を模式的に示す断面図であり、図1のY-Y線に沿った断面図に対応する。
図8図8は、本発明のさらに他の実施形態に係る電子部品の一例を模式的に示す断面図であり、図1のX-X線に沿った断面図に対応する。
図9図9は、図1に示す電子部品が備える固体電解コンデンサ素子の一例を模式的に示す断面図である。
図10図10は、本発明の実施形態に係る電子部品の製造方法で使用する外装体の第1部分の一例を模式的に示す斜視図である。
図11図11は、図10に示す外装体の第1部分の平面図である。
図12図12は、本発明の他の実施形態に係る電子部品の製造方法で使用する外装体の第1部分の一例を模式的に示す平面図である。
図13図13は、本発明のさらに他の実施形態に係る電子部品の製造方法で使用する外装体の第1部分の一例を模式的に示す平面図である。
図14図14は、本発明のさらに他の実施形態に係る電子部品の製造方法で使用する外装体の第1部分の一例を模式的に示す平面図である。
図15図15は、本発明の実施形態に係る電子部品の製造方法で使用するワークの一例を模式的に示す平面図である。
図16図16は、複数の固体電解コンデンサ素子が互いに重なり合った重畳体を準備する工程の一例を模式的に示す図である。
図17図17は、粘着性シートを外装体の第1部分に貼り付ける工程の一例を模式的に示す図である。
図18図18は、粘着性シート上に導電性ペーストを供給する工程の一例を模式的に示す図である。
図19図19Aは、重畳体を貫通孔内に挿入する工程の一例を模式的に示す図である。図19Bは、各素子の先端部を導電性ペースト内に埋め込む工程の一例を模式的に示す図である。図19Cは、貫通孔内に挿入された各素子の周囲に液状材料を充填する工程の一例を模式的に示す図である。
図20図20は、貫通孔の周囲において外装体の第1部分を切断する工程の一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の電子部品及び電子部品の製造方法について説明する。
しかしながら、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下において記載する個々の望ましい構成を2つ以上組み合わせたものもまた本発明である。
【0015】
[電子部品]
図1は、本発明の実施形態に係る電子部品の一例を模式的に示す斜視図である。図2は、図1に示す電子部品のX-X線に沿った断面図である。図3は、図1に示す電子部品のY-Y線に沿った断面図である。図4は、図1に示す電子部品が備える電子部品素体の第1主面又は第2主面を模式的に示す図である。図5は、図1に示す電子部品が備える電子部品素体の第1側面又は第2側面を模式的に示す図である。
なお、図3と、後述する図6図8では、固体電解コンデンサ素子の内部構造の図示は省略している。
【0016】
また、図1図5においては、電子部品100及び電子部品素体110の長さ方向をL、幅方向をW、高さ方向をTで示している。ここで、長さ方向Lと幅方向Wと高さ方向Tとは互いに直交している。また、高さ方向Tは、本発明の電子部品における第1方向の一例であり、幅方向Wは、本発明の電子部品における第2方向の一例であり、長さ方向Lは、本発明の電子部品における第3方向の一例である。
【0017】
電子部品100は、固体電解コンデンサであり、図1図5に示すように、略直方体状の外形を有している。電子部品100は、電子部品素体110と、第1外部電極120と、第2外部電極130と、を備える。
【0018】
電子部品素体110は、素子(電子部品素子)として固体電解コンデンサ素子10(以下、単に「素子10」と略記する場合がある)を備え、複数の素子10が高さ方向Tに沿って配置された重畳体(コンデンサ素子集合体)11を備える。複数の素子10は、互いに重なり合うように配置されることによって重畳体11を形成している。さらに、電子部品素体110は、外装体20と、集電電極30と、を備える。
なお、重畳体11に含まれる素子10の数は、2以上であれば特に限定されず、適宜設定可能である。
【0019】
電子部品素体110は、略直方体状の外形を有している。電子部品素体110は、高さ方向Tにおいて対向する第1主面110a及び第2主面110b、高さ方向Tに直交する幅方向Wにおいて対向する第1側面110c及び第2側面110d、並びに、高さ方向T及び幅方向Wに直交する長さ方向Lにおいて対向する第1端面110e及び第2端面110fを有している。ここで、電子部品素体110の第1主面110a及び第2主面110bは、それぞれ、本発明の電子部品における電子部品素体の第1面及び第2面の一例であり、電子部品素体110の第1側面110c及び第2側面110dは、それぞれ、本発明の電子部品における電子部品素体の第3面及び第4面の一例であり、電子部品素体110の第1端面110e及び第2端面110fは、それぞれ、本発明の電子部品における電子部品素体の第5面及び第6面の一例である。
【0020】
上記のように電子部品素体110は、略直方体状の外形を有しているが、角部及び稜線部に丸みが付けられていてもよい。角部は、電子部品素体110の3面が交わる部分であり、稜線部は、電子部品素体110の2面が交わる部分である。
【0021】
第1外部電極120は、電子部品素体110の第1端面110eに形成されており、第2外部電極130は、電子部品素体110の第2端面110fに形成されている。
【0022】
外装体20は、複数の素子10を封止している。すなわち、外装体20には、複数の素子10の重畳体11が埋設されている。また、外装体20は、集電電極30を封止している。そして、外装体20は、第1樹脂材料を含む第1部分21と、第1部分21に囲まれた、第2樹脂材料を含む第2部分22と、を有している。
【0023】
外装体20が第1部分21及び第2部分22を含むため、第1部分21の第1樹脂材料及び第2部分22の第2樹脂材料として、それぞれ異なる特性をもった樹脂材料を選択することできる。具体的には、第1樹脂材料としては、リフロー時の高温に耐えるため高温での強度に優れ、かつ信頼性の担保のため長期的な熱耐久性に優れた樹脂材料、例えば、ポリフェニレンスルフィド、液晶ポリマー等の熱可塑性樹脂を用いることができる。他方、第2樹脂材料としては、高い透気性を有する樹脂材料、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂を用いることができる。
【0024】
図3図5に示すように、第1部分21は、電子部品素体110の第1主面110a、第2主面110b、第1側面110c及び第2側面110dのそれぞれの少なくとも一部に存在している。このため、高温での強度に優れた樹脂材料を用いて、リフロー時の内圧による応力が高い箇所に第1部分21を配置することができる。以下、電子部品素体110の第1主面110a、第2主面110b、第1側面110c及び第2側面110dを単に「4面」と総称する場合がある。
【0025】
ただし、このような高強度の樹脂材料は、透気性が低い材料である場合が多いため、上記4面全体を第1部分21のみから構成した場合は、実装された後の使用時に分解ガスが電子部品素体110の内部に滞留して膨れが生じ、特性の劣化につながるおそれがある。
【0026】
そこで、第2部分22は、上記4面のうちの少なくとも1面に露出した露出部23を有している(図3及び図4参照)。このため、高い透気性を有する樹脂材料を用いて露出部23を有する第2部分22を形成し、電子部品素体110の内部(例えば素子10周辺)で発生したガスを、第2部分22を拡散させ、露出部23の露出面23aから放出させることができる。その結果、リフロー時の水分による内圧上昇や、使用時の分解ガスによる膨れを抑制することができる。
【0027】
以上より、電子部品100は、リフロー時における外装体20の変形を抑制できる。また、その結果、電子部品100の電気特性の低下や、外装体20のクラック(ひび割れ)の発生、電子部品100が実装される電子回路基板の高さ設計を超過してしまう等の不具合の発生を抑制することができる。
【0028】
また、外装体20が第1部分21及び第2部分22を含むが、第1部分21の第1樹脂材料として強度が高い樹脂材料を用いることができるため、外装体20の厚みを、1種類の材料のみから構成された従来の外装体に比べて、同等若しくはより薄くすることが可能である。すなわち、素子10の格納に使用できる有効容積を大きくしてコンデンサ容量を向上することができる。
【0029】
さらに、電子部品100は、後述する製造方法により高い生産性で製造することができる。
【0030】
第1部分21は、上記4面を構成(形成)する主要な部分であり、例えば、上記4面のうちの第1部分21が占める面積割合は、上記4面の合計面積を100%としたときに、60%以上、95%以下であってもよいし、70%以上、90%以下であってもよい。
【0031】
外装体20の変形をより効果的に抑制する観点からは、図3図5に示すように、第1部分21は、上記4面のうちの2面が交わる4つの稜線部110gに存在することが好ましい。すなわち、これらの4つの稜線部110gは、いずれも第1部分21から形成されていることが好ました。
【0032】
図3図5に示すように、第1部分21は、複数の板状部分から構成されており、これらの板状部分を上記4面のそれぞれの少なくとも一部に配置した構造を有している。すなわち、第1部分21は、その内部に複数の素子10(重畳体11)と第2部分22の一部とが収納される空間24を形成している。第1部分21は、第1樹脂材料を含む所定の材料から管構造に一体成型された後、その管構造の一部を切断することによって形成されたものであり、第1部分21には継ぎ目や内部の接合界面は存在していない。
【0033】
図2図4及び図5に示すように、第1部分21は、電子部品素体110の第1端面110e及び第2端面110fの外周部分、すなわち第1端面110e及び第2端面110fによって形成される稜線部110h及び/又は角部110jに存在しているが、第1端面110e及び第2端面110fの外周部分を除く中心部分には存在していない。
【0034】
第2部分22は、上記4面を構成(形成)する補助的な部分であり、例えば、上記4面のうちの第2部分22が占める面積割合は、上記4面の合計面積を100%としたときに、5%以上、40%以下であってもよいし、10%以上、30%以下であってもよい。
【0035】
図3に示すように、第2部分22は、複数の素子10(重畳体11)が収納された第1部分21による空間24内に存在している。このように、第2部分22は、空間24内であって複数の素子10(重畳体11)の周囲に充填されていてもよい。
【0036】
なお、ここで、第2部分22が空間24内であって複数の素子10(重畳体11)の周囲に充填された状態とは、第2部分22が、空間24内であって複数の素子10(重畳体11)の周囲の空間を完全に満たしていてもよいし、完全には満たしていなくてもよい。後者の場合、例えば、第2部分22に気泡がわずかに残っていてもよいし、第2部分22と第1部分21との間に隙間がわずかに残っていてもよいし、第2部分22と少なくとも1つの素子10との間に隙間がわずかに残っていてもよい。
【0037】
また、図3に示すように、第2部分22は、第1部分21による空間24内に存在するとともに、一部が露出部23として空間24外に突出し、上記4面のうちの少なくとも1面に露出している。すなわち、露出部23は、空間24外に突出した第2部分22の一部(突出部)である。さらに、第2部分22は、露出部23のみならず、上記4面に露出していない非露出部25を有している。非露出部25は、第1部分21で覆われており、第1部分21に対して電子部品素体110の中心により近い側に位置している。
【0038】
露出部23は、第1端面110e及び第2端面110fの少なくとも一方に接していることが好ましく、図4に示したように、第1端面110e及び第2端面110fのそれぞれに接していてもよい。図示は省略するが、露出部23は、第1端面110e及び第2端面110fのうち、一方に接し、他方に接していなくてもよい(他方の手前まで存在していてもよい)。これにより、個片化前の第1部分を、射出成形で成形しやすい貫通孔を有する形状とすることができ、生産性を低下させることなく露出部23を形成することができる。
【0039】
なお、露出部23が第1端面110eに接する場合、露出部23は第1端面110eの一部に存在し(第1端面110eの一部を構成し)、露出部23が第2端面110fに接する場合、露出部23は第1端面110fの一部に存在する(第1端面110fの一部を構成する)。
【0040】
図4に示したように、露出部23は、当該露出部が露出する面において、長さ方向Lに延在する帯状(例えば、長さ方向Lに長辺を有する長方形状)に設けられていてもよい。
【0041】
図6は、本発明の他の実施形態に係る電子部品の一例を模式的に示す断面図であり、図1のY-Y線に沿った断面図に対応する。図7は、本発明のさらに他の実施形態に係る電子部品の一例を模式的に示す断面図であり、図1のY-Y線に沿った断面図に対応する。図8は、本発明のさらに他の実施形態に係る電子部品の一例を模式的に示す断面図であり、図1のX-X線に沿った断面図に対応する。
【0042】
第1主面110a及び第2主面110bを上下に配置した状態において長さ方向Lに直交する平面で断面視したときに、第2部分22は、H型であってもよいし(図3参照)、逆U型であってもよいし(図6参照)、十字型であってもよいし(図7参照)、T型であってもよい(図8参照)。なお、逆U型及びT型は、それぞれ、図6及び図8に示した形状を上下反転した形状であってもよい。すなわち、第2部分22は、U型又は逆T型であってもよい。
【0043】
以下、第1主面110a及び第2主面110bを上下に配置した状態において長さ方向Lに直交する平面で断面視することを、単に「横断面視する」と言う場合がある。
【0044】
露出部23は、電子部品素体110の1つ当たり、1箇所に設けられてもよいし(図8参照)、2箇所に設けられてもよいし(図6及び図7参照)、4箇所に設けられてもよい(図3参照)。いずれの場合も、露出部23は、横断面視したときに、左右及び上下の少なくとも一方に対称であることが好ましい。これにより、応力が一部に集中することなく均等に分散させることができる。
【0045】
なお、露出部23は、電子部品素体110の1つ当たり、最大で4箇所あれば上述の効果は充分得られる。露出部23の設置箇所がそれよりも多くても効果は小さい一方で射出成形の金型の費用の増加を招いてしまう。
【0046】
より詳細には、露出部23は、図3に示した場合では左右及び上下に対称であり、図6に示した場合では左右に対称であり、図7に示した場合では左右及び上下に対称であり、図8に示した場合では左右に対称である。
【0047】
なお、露出部23が左右に対称であるとは、横断面視したときに、露出部23の輪郭が、高さ方向Tに延びる電子部品素体110の中心線CL1に対して対称(実質的に対称である場合を含む)である状態を示す。また、露出部23が上下に対称であるとは、横断面視したときに、露出部23の輪郭が、幅方向をWに延びる電子部品素体110の中心線CL2に対して対称(実質的に対称である場合を含む)である状態を示す。
【0048】
露出部23は、図3図4図6~8に示したように、第1主面110a及び第2主面110bの少なくとも一方に存在することが好ましい。第1主面110a、第2主面110bといった高さ方向において対向する2面は、面積が大きいため、これにより、露出部23を広く設けることができる。また、後述する電子部品100の製造工程において、素子10(重畳体11)を個片化前の外装体の第1部分に挿入した時に、素子10が幅方向Wにずれてカットラインに重なることを容易に防ぐことができる。
【0049】
この素子10の幅方向Wへのずれを防止する観点からは、露出部23は、図5に示したように、第1側面110c及び第2側面110dに存在しないことが好ましい。すなわち、第1側面110c及び第2側面110dには第1部分21のみが存在することが好ましい。
【0050】
第2部分22は、図3に示したように、電子部品素体110の内側から露出部23の露出面23aに向かうにつれて細くなるテーパー構造を有することが好ましい。これにより、リフロー時の内圧により第1部分21と第2部分22の間の界面に剥離が生じたとしても、第2部分22がこのテーパー部で引っ掛かるため、第2部分22が断層のように第1部分21から飛び出さないようにすることができる。その結果、電子部品100の寸法、例えば高さ方向Tにおける寸法(T寸)が電子回路基板の高さ設計を超過してしまうのを抑制できる。
【0051】
より詳細には、この場合、第2部分22(露出部23)の断面であって露出面23aが露出した面と平行な断面の面積が、電子部品素体110の内側から露出部23の露出面23aに向かうにつれて小さくなる。また、第2部分22(露出部23)は、露出面23aと、露出面23aに接続され、かつ露出面23aに対して傾斜したテーパー面23bとを有している。
【0052】
なお、ここで、「電子部品素体の内側」とは、電子部品素体の中心により近い方を意味する。
【0053】
また、図3には、露出部23の第1部分21と対向する対向面23c(接合面)が全てテーパー面23bから構成されている場合を示しているが、第2部分22がテーパー構造を有する場合は、対向面23cの一部のみがテーパー面23bから構成されてもよい。例えば、図3において露出部23の両側に位置する2つの対向面23cのうちの一方の対向面23cのみがテーパー面23bから構成されていてもよい。
【0054】
また、図6図8に示した型において、露出部23の第1部分21と対向する対向面23c(接合面)の少なくとも一部が図3に示したようなテーパー面から構成されていてもよい。
【0055】
また、図3には各テーパー面23bが単一の面から構成されている場合を示しているが、テーパー面23bは、複数の面から構成されていてもよい。具体的には、例えば、テーパー面23bは、微細な階段形状(踏み面部及び蹴上げ部)から構成されていてもよい。
【0056】
図3に示したように、テーパー面23bは、曲面状であることが好ましい。これにより、露出部23における第2部分22と第1部分21の間の接触面積を増やすことができるため、接合強度(例えば幅方向Wの接合強度)を向上できる。
【0057】
なお、図3では、曲面状のテーパー面23bが、凸状、すなわち露出部23の外側に膨らんだ形状である場合を示しているが、凹状、すなわちすなわち露出部23の内側にへこんだ形状であってもよい。
【0058】
第1樹脂材料は、少なくとも1種の熱可塑性樹脂であり、第2樹脂材料は、少なくとも1種の熱硬化性樹脂であることが好ましい。従来技術では、外装体は通常では熱硬化性樹脂であったが、第1樹脂材料を熱可塑性樹脂にすることで高温での強度がより高い材料を、第1部分21を構成する第1樹脂材料に選択できる。また、第1樹脂材料を熱可塑性樹脂、第2樹脂材料を熱硬化性樹脂にすることで、後述するように電子部品100を容易に製造することができる。
【0059】
第1樹脂材料としての少なくとも1種の熱可塑性樹脂の融点は、260℃以上であることが好ましく、275℃以上であることがより好ましく、300℃以上であることがさらに好ましい。このような熱可塑性樹脂を使用することで、リフロー時の高温での外装体20の強度を確保できる。
【0060】
なお、少なくとも1種の熱可塑性樹脂の融点の上限に制限はないが、通常では400℃以下であり、好ましくは360℃以下であり、より好ましくは330℃以下である。
【0061】
第1樹脂材料は、ポリフェニレンスルフィド(PPS)及び液晶ポリマー(LCP)の少なくとも一方を含むことが好ましい。これらの樹脂は、熱可塑性樹脂であるが、高温での強度が高く、かつ熱可塑性樹脂の成形方法として一般に用いられる射出成型で第1部分21の形状に加工可能な材料であることから、第1樹脂材料として好適である。
【0062】
第2樹脂材料は、エポキシ樹脂及びシリコーン樹脂の少なくとも一方を含むことが好ましい。これらの樹脂は、熱硬化性樹脂であるが、高い透気性を有する材料であることから、第2樹脂材料として好適である。また、後述する本実施形態に係る電子部品100の製造方法では、常温でハンドリングすることから硬化前に常温で液状である材料が適切であり、これらの樹脂はそのような材料に該当し得る。また、これらの樹脂は、コンデンサ封止材としても絶縁性、耐熱性等の点で適切な材料である。
【0063】
このように、第2樹脂材料の透気性、例えば水蒸気透過度は、第1樹脂材料の透気性、例えば水蒸気透過度よりも高いことが好ましい。より具体的には、第1樹脂材料の40℃、90%RHにおける水蒸気透過度は、300g・μm/m/day以下(好ましくは200g・μm/m/day以下)であってもよく、第2樹脂材料の40℃、90%RHにおける水蒸気透過度は、500g・μm/m/day以上(好ましくは800g・μm/m/day以上)であってもよい。
【0064】
ここで、水蒸気透過度は、はJIS Z 0208に規格されたカップ法に基づいて測定される。すなわち、各樹脂材料を厚さ300~800μmの薄板状に形成した試料を準備し、当該試料及び透湿カップを用いて該規格の条件B(温度40±0.5℃、相対湿度90±2%)にて水蒸気透過度を測定し、単位厚みでの値に換算し、厚みの影響を除いたものを水蒸気透過度とする。
【0065】
なお、第1樹脂材料の水蒸気透過度の下限は特に限定されず、第1樹脂材料の40℃、90%RHにおける水蒸気透過度は、0g・μm/m/dayを超える値(好ましくは5g・μm/m/day以上)であってもよい。また、第2樹脂材料の水蒸気透過度の上限も特に限定されず、第2樹脂材料の40℃、90%RHにおける水蒸気透過度は、100000g・μm/m/day以下(好ましくは60000g・μm/m/day以下)であってもよい。
【0066】
また、上記樹脂の40℃、90%RHにおける水蒸気透過度は、下記に示す通りである(いずれも、単位はg・μm/m/day)。
ポリフェニレンスルフィド :175
液晶ポリマー :10
エポキシ樹脂 :1000
シリコーン樹脂 :50000
【0067】
第1樹脂材料及び第2樹脂材料は、それぞれ、強化材として、シリカ粒子、アルミナ粒子、金属酸化物粒子等のフィラーや、セラミック繊維等の繊維を含んでいてもよい。なかでも、第1樹脂材料は、強化材として、繊維長が50μm以上のセラミック繊維を含むことが好ましい。
【0068】
なお、第1樹脂材料の水蒸気透過度とは、第1部分21を構成する全ての組成を含む材料についての水蒸気透過度を意味し、第1樹脂材料がフィラーや繊維を含む場合は、フィラーや繊維を含む材料全体についての水蒸気透過度を表す。第2樹脂材料の水蒸気透過度についても同様である。
【0069】
複数の素子10は高さ方向Tに重ねて配置されている。複数の素子10の各々の延在方向は、電子部品素体110の第1主面110a及び第2主面110bと略平行となっている。高さ方向Tに隣接する素子10同士は、導電性接着剤(図示せず)を介して互いに接合されていてもよい。
【0070】
図9は、図1に示す電子部品が備える固体電解コンデンサ素子の一例を模式的に示す断面図である。
【0071】
図2及び図9に示すように、各固体電解コンデンサ素子10は、略平板状の電子部品素子であり、表面が多孔質状の弁作用金属基体から構成された平面視長方形状の薄膜(箔)である陽極40と、陽極40の基端面40bを除いて陽極40の表面上に設けられた誘電体層41(図9参照、図2では図示せず)と、陽極40の基端面40bに沿って誘電体層41上に設けられた直線状の(帯状に延在する)絶縁部材であるマスク層42と、マスク層42よりも陽極40の先端面40a側において誘電体層41上に設けられた陰極43と、を備える。各固体電解コンデンサ素子10において、陰極43は、誘電体層41を介して陽極40と対向している。
【0072】
図2に示したように、各陰極43は、電子部品素体110の第1端面110eにおいて集電電極30を介して第1外部電極120と電気的に接続されており、各陽極40は、電子部品素体110の第2端面110fにおいて第2外部電極130と電気的に接続されている。
【0073】
陽極40は、電子部品素体110の第1端面110e及び第2端面110fの間に延設されている。
【0074】
陰極43は、電子部品素体110の第1端面110e及び第2端面110fの間に延設されている。また、陰極43は、誘電体層41上に設けられた固体電解質層44と、固体電解質層44上に設けられたカーボン層45と、カーボン層45上に設けられた陰極導体層46と、を有している。
【0075】
図2に示したように、集電電極30は、複数の素子10の複数の陰極43と電気的に接続されている。集電電極30は、電子部品素体110の第1端面110eに露出しており、少なくとも電子部品素体110の第1端面110e側の部分に設けられている。また、集電電極30は、第1端面110eから奥まった位置に厚みを持った形状で形成されている。
【0076】
そして、図2に示したように、各陰極43の少なくとも第1外部電極120側の部分が集電電極30内に埋め込まれており、これにより、各陰極43と集電電極30との間の電気的接続が確保されている。
【0077】
集電電極30は、導電成分(導電材料)及び樹脂成分(樹脂材料)の複合材料である。導電成分は、銀、銅、ニッケル、錫等の金属単体、又は、これらの金属の少なくとも1種を含有する合金等を主成分として含むことが好ましい。樹脂成分は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等を主成分として含むことが好ましい。集電電極30は、例えば、銀ペースト等の導電性ペーストを用いて形成可能である。
【0078】
図2に示したように、第1外部電極120は、電子部品素体110の第1端面110eに設けられている。図1では、第1外部電極120は、電子部品素体110の第1端面110eから、第1主面110a、第2主面110b、第1側面110c及び第2側面110dの各々に亘って設けられている。第1外部電極120は、第1端面110eにおいて電子部品素体110から露出した集電電極30と電気的に接続されている。すなわち、第1外部電極120は、集電電極30を介して各陰極43と電気的に接続されている。
【0079】
また、集電電極30は、複数の素子10(重畳体11)の収納された空間24内に存在しており、電子部品素体110の第1端面110eは、主に、集電電極30及び外装体20の第1部分21から形成されているため、第1外部電極120は、この第1端面110e上に形成することができる。したがって、第1外部電極120と集電電極30との電気的接続が容易であり、かつ、第1外部電極120を薄い厚みで形成することが可能となる。
【0080】
具体的には、第1外部電極120は、スパッタ法により形成される、いわゆるスパッタ膜を有していてもよい。スパッタ膜の材質としては、例えば、Ni、Sn、Ag、Cu、Au等が挙げられる。
【0081】
また、第1外部電極120は、蒸着法により形成される、いわゆる蒸着膜を有していてもよい。蒸着膜の材質としては、例えば、Ni、Sn、Ag、Cu等が挙げられる。
【0082】
このように、第1外部電極120は、スパッタ膜及び/又は蒸着膜から形成可能であることから、第1外部電極120の膜厚は、第2外部電極130の膜厚に比べて薄くてもよい。具体的には、第1外部電極120の膜厚は、1μm以上、100μm以下であることが好ましく、5μm以上、50μm以下であることがより好ましく、10μm以上、30μm以下であることがさらに好ましい。
【0083】
図2に示したように、第2外部電極130は、電子部品素体110の第2端面110fに設けられている。図1では、第2外部電極130は、電子部品素体110の第2端面110fから、第1主面110a、第2主面110b、第1側面110c及び第2側面110dの各々に亘って設けられている。第2外部電極130は、第2端面110fにおいて電子部品素体110から露出する素子10の陽極40(弁作用金属基体)と電気的に接続されている。第2外部電極130は、電子部品素体110の第2端面110fにおいて陽極40と直接的に接続されてもよく、間接的に接続されてもよい。
【0084】
第1外部電極120及び第2外部電極130の少なくとも一方は、導電成分と樹脂成分とを含む樹脂電極層を有していてもよい。導電成分は、銀、銅、ニッケル、錫等の金属単体、又は、これらの金属の少なくとも1種を含有する合金等を主成分として含むことが好ましい。樹脂成分は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等を主成分として含むことが好ましい。樹脂電極層は、例えば、銀ペースト等の導電性ペーストを用いて形成可能である。
【0085】
第1外部電極120及び第2外部電極130の少なくとも一方は、めっき法により形成される、いわゆるめっき層を有していてもよい。めっき層としては、例えば、亜鉛・銀・ニッケル層、銀・ニッケル層、ニッケル層、亜鉛・ニッケル・金層、ニッケル・金層、亜鉛・ニッケル・銅層、ニッケル・銅層等が挙げられる。これらのめっき層上には、例えば、銅めっき層と、ニッケルめっき層と、錫めっき層とが順に(あるいは、一部のめっき層を除いて)設けられることが好ましい。
【0086】
第1外部電極120及び第2外部電極130の少なくとも一方は、樹脂電極層及びめっき層をともに有していてもよい。例えば、第1外部電極120は、集電電極30に接続された樹脂電極層と、樹脂電極層の表面上に設けられた外層めっき層と、を有していてもよい。また、第1外部電極120は、集電電極30に接続された内層めっき層と、内層めっき層を覆うように設けられた樹脂電極層と、樹脂電極層の表面上に設けられた外層めっき層と、を有していてもよい。また、第2外部電極130は、陽極40(弁作用金属基体)に接続された樹脂電極層と、樹脂電極層の表面上に設けられた外層めっき層と、を有していてもよい。また、第2外部電極130は、陽極40(弁作用金属基体)に接続された内層めっき層と、内層めっき層を覆うように設けられた樹脂電極層と、樹脂電極層の表面上に設けられた外層めっき層と、を有していてもよい。
【0087】
[電子部品の製造方法]
電子部品100は、以下の方法により製造することができる。以下の例では、大判の弁作用金属基体を用いて、複数の固体電解コンデンサ素子を同時に製造する方法について説明する。
【0088】
図10は、本発明の実施形態に係る電子部品の製造方法で使用する外装体の第1部分の一例を模式的に示す斜視図である。
【0089】
まず、図10に示すように、上述の第1樹脂材料を含み、複数の貫通孔223を有する外装体220の第1部分221(外装体20の第1部分21となる部材)を準備する。第1部分221は、所定の厚さを有する平面視長方形状の平らな板材に、貫通孔223が縦横にそれぞれ複数ずつ設けられた部材である。各貫通孔223は、第1部分221の主面に対して直交する方向に設けられており、その両端部は開放されている。第1部分221は射出成型により作成できる。第1部分221に使用する第1樹脂材料としては、射出成型可能な樹脂が好適であり、具体的には、PPS(ポリフェニレンスルフィド)、LCP(液晶ポリマー)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、ポリイミド、ポリアミド等の熱可塑性樹脂が好適である。第1樹脂材料は、強化材として、シリカ粒子、アルミナ粒子、金属酸化物粒子等のフィラーや、セラミック繊維等の繊維を含んでいてもよい。
【0090】
図11は、図10に示す外装体の第1部分の平面図である。
【0091】
後述するように、第1部分221は、カットラインにおいて切断されて個片化されるが、図11に示すように、各貫通孔223は、一部がカットライン(図11中の一点鎖線)上に位置する形状である。すなわち、貫通孔223は、カットラインに部分的に重なっており、貫通孔223の一部がカットラインで切り出される素体領域(図11中の太い破線)の外側に配置されている。これにより、上述の第2部分22の露出部23を容易に形成することができる。すなわち、各貫通孔223の形状を変えるだけで露出部23を有する第2部分22を形成できるため、追加の工程等が不要であり、生産性を低下させることなく露出部23を有する構造の電子部品100を得ることができる。
【0092】
図12は、本発明の他の実施形態に係る電子部品の製造方法で使用する外装体の第1部分の一例を模式的に示す平面図である。図13は、本発明のさらに他の実施形態に係る電子部品の製造方法で使用する外装体の第1部分の一例を模式的に示す平面図である。図14は、本発明のさらに他の実施形態に係る電子部品の製造方法で使用する外装体の第1部分の一例を模式的に示す平面図である。
【0093】
より具体的には、第1部分221の主面を平面視したとき(貫通孔223の延びる方向に見たとき)の貫通孔223の形状は、図11図14に示したように、カットライン(各図中の一点鎖線)で囲まれた領域内に設定された長方形Recを基本形状とし、第2部分22の露出部23に対応する1以上の領域においてその長方形Recの一部をカットラインの外側まで突出させた形状である。
【0094】
図11に示すように円弧状の突出部を設けた場合は、図3に示したような曲面状のテーパー面23bを有する露出部23を形成することができる。一方、図12図14に示すように矩形状の突出部を設けた場合は、図6図8に示したような対向面23cが上記4面のいずれかに直交する露出部23を形成することができる。
【0095】
図11に示す場合は、図3に示したような電子部品素体110を形成することができる。図12に示す場合は、図6に示したような電子部品素体110を形成することができる。図13に示す場合は、図7に示したような電子部品素体110を形成することができる。図14に示す場合は、図8に示したような電子部品素体110を形成することができる。
【0096】
次に、重畳体11を準備する。
【0097】
図15は、本発明の実施形態に係る電子部品の製造方法で使用するワークの一例を模式的に示す平面図である。
【0098】
まず、図15に示すように、帯状の保持部211に素子部212(複数の固体電解コンデンサ素子10)が一定間隔で短冊状に連結されたワーク210を準備する。各素子部212にはマスク層42が形成されている。
【0099】
詳細には、まず、表面に多孔質部を有する弁作用金属基体をレーザー加工又は打ち抜き加工等で切断することにより、複数の素子部212と保持部211とを含む形状に加工する。
【0100】
弁作用金属基体は、例えば、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、ジルコニウム等の金属単体、又は、これらの金属を含む合金等の弁作用金属によって構成されている。
なお、弁作用金属基体は、芯部と当該芯部の少なくとも一方の主面に設けられた多孔質部とによって構成されていればよく、金属箔の表面をエッチングしたもの、金属箔の表面に多孔質状の微粉焼結体を形成したもの等を適宜採用することができる。
【0101】
次に、各々の素子部212の短辺に沿うように、素子部212の両主面及び両側面にマスク層を形成する。
【0102】
マスク層は、例えば、絶縁性樹脂を含む組成物等のマスク材をスクリーン印刷、ローラー転写、ディスペンサ塗布、インクジェット印刷等により塗布して形成される。絶縁性樹脂としては、例えば、ポリフェニルスルホン(PPS)、ポリエーテルスルホン(PES)、シアン酸エステル樹脂、フッ素樹脂(テトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体等)、可溶性ポリイミドシロキサンとエポキシ樹脂からなる組成物、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、及び、それらの誘導体又は前駆体等が挙げられる。
【0103】
この後、マスク層に親水性部材を塗布してもよいし、塗布しなくてもよい。
【0104】
次に、弁作用金属基体に陽極酸化処理を行うことにより、弁作用金属基体の表面に誘電体層となる酸化被膜を形成する。例えば、誘電体層は、アルミニウムの酸化物で構成されている。この際、レーザー加工又は打ち抜き加工等で切断された素子部212の側面にも酸化被膜が形成される。なお、すでにアルミニウムの酸化物が形成されている化成箔を弁作用金属基体として用いてもよい。この場合も、切断後の弁作用金属基体に陽極酸化処理を行うことにより、切断された素子部212の側面に酸化被膜を形成する。
【0105】
次に、素子部212の誘電体層上に固体電解質層を形成する。具体的には、素子部212を、固体電解質を含有する処理液に浸漬することにより、処理液が弁作用金属基体の多孔質部に含浸される。所定時間の浸漬後、素子部212を処理液から引き上げ、所定温度及び所定時間で乾燥させる。処理液への浸漬、引き上げ及び乾燥を所定回数繰り返すことにより、固体電解質層が形成される。
【0106】
固体電解質を含有する処理液として、例えば、ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアニリン類等の導電性高分子の分散液が用いられる。これらの中では、ポリチオフェン類が好ましく、PEDOTと呼ばれるポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)が特に好ましい。また、上記導電性高分子は、ポリスチレンスルホン酸(PSS)等のドーパントを含んでいてもよい。導電性高分子の分散液を誘電体層の外表面に付着し乾燥させることで、導電性高分子膜を形成することができる。あるいは、固体電解質を含有する処理液として、重合性モノマー、例えば3,4-エチレンジオキシチオフェン等の重合性モノマーと酸化剤との含有液が用いられてもよい。この含有液を誘電体層の外表面に付着させて、化学重合により導電性高分子膜を形成することができる。この導電性高分子膜が、固体電解質層となる。
【0107】
その後、カーボンペーストに素子部212を浸漬、引き上げ及び乾燥することにより、カーボン層を所定の領域に形成する。カーボンペーストは、導電成分としてのカーボン粒子と、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の樹脂成分とを含有する導電性ペーストである。
【0108】
そして、導電性ペーストに素子部212を浸漬、引き上げ及び乾燥することにより、陰極導体層を所定の領域に形成する。陰極導体層形成用の導電性ペーストとしては、例えば、導電成分としての金属粒子と、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の樹脂成分とを含有するものが挙げられる。金属粒子としては、例えば、金、銀、銅、白金等が挙げられる。なかでも、陰極導体層形成用の導電性ペーストとしては、導電成分として銀粒子を含有する銀ペーストが好適である。
【0109】
以上の結果、各素子部212に固体電解コンデンサ素子10が形成されたワーク210が作成される。
【0110】
ここで、上述の第1部分221には、短冊状のワーク210の素子10と同じ個数とピッチで略直方体状の貫通孔223が空いており、そのような貫通孔223の列を複数備えている。
【0111】
図16は、複数の固体電解コンデンサ素子が互いに重なり合った重畳体を準備する工程の一例を模式的に示す図である。
【0112】
続いて、図16に示すように、短冊状に複数の素子10が形成されたワーク210を複数枚準備し、複数の素子10が重なり合うように所定枚数のワーク210を束ねた状態でクランプ等の治具(図示せず)で固定する。これにより、複数の素子10が高さ方向Tに沿って配置された重畳体11が複数作成される。なお、複数の重畳体11は、一列(図16の紙面に対して垂直方向に並んだ列)に配列されている。
【0113】
図17は、粘着性シートを外装体の第1部分に貼り付ける工程の一例を模式的に示す図である。
【0114】
次に、図17に示したように、各貫通孔223の第1の開口223aを閉じるように粘着性シート250(以下、単に「シート250」と略記する場合がある)を第1部分221に貼り付ける。すなわち、粘着性を有するシート250を第1部分221の片面全面に貼り付けて各貫通孔223の片側を閉じるようにする。これにより、封止後にシート250を剥離することで電子部品素体110の第1端面110eに集電電極30の端面を容易に露出することが可能となる。
【0115】
なお、各貫通孔223は、第1の開口223a(下側の開口)が蓋をされた状態となればよく、粘着性シート250を貼り付ける代わりに、例えば、第1部分221を平らな台に配置することによって第1の開口223aに蓋をしてもよい。
【0116】
図18は、粘着性シート上に導電性ペーストを供給する工程の一例を模式的に示す図である。
【0117】
次に、図18に示したように、各貫通孔223の第1の開口223aを粘着性シート250で蓋をした状態で、各貫通孔223の第2の開口223b(上側の開口)からシート250上に導電性ペースト230を供給する。この結果、各貫通孔223内においてシート250上に導電性ペースト230が塗布される。導電性ペースト230としては、例えば、導電成分としての金属粒子と、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の樹脂成分とを含有するものが挙げられる。金属粒子としては、例えば、銀、銅、ニッケル、錫等が挙げられる。なかでも、導電性ペースト230としては、導電成分として銀粒子を含有する銀ペーストが好適である。また、導電性ペースト230の供給には、例えばディスペンサ等を用いることが可能である。
【0118】
図19Aは、重畳体を貫通孔内に挿入する工程の一例を模式的に示す図である。図19Bは、各素子の先端部を導電性ペースト内に埋め込む工程の一例を模式的に示す図である。図19Cは、貫通孔内に挿入された各素子の周囲に液状材料を充填する工程の一例を模式的に示す図である。
【0119】
次に、図19Aに示すように、固定した複数のワーク210を第1部分221に対して相対的に移動させ、同一列の貫通孔223内に、第2の開口223bから重畳体11を挿入する。
【0120】
このように、保持部211に複数の素子10が一定間隔で短冊状に連結されたワーク210を用いることによって、第1部分221への素子10の挿入を短冊単位で実施できるため、素子10を一枚ずつ、又は重畳体11を1体ずつ第1部分221へ挿入するよりも、大幅に生産性を向上することができる。
【0121】
このとき、図19Bに示すように、各素子10の先端部、すなわち、陰極43の先端部で導電性ペースト230を押し広げ、各素子10の陰極43の先端部を導電性ペースト230内に埋め込む。すなわち、全ての素子10に導電性ペースト230が接続されるようにする。
【0122】
そして、各陰極43が埋め込まれた状態で、シート250上で導電性ペースト230を例えば加熱することによって硬化させる。この結果、各素子10の陰極43の少なくとも先端部が集電電極30内に埋め込まれた状態で集電電極30が形成される(図2参照)。
【0123】
続いて、図19Cに示すように、各貫通孔223内に挿入された各素子10の周囲、すなわち隣り合う素子10の間と、重畳体11及び第1部分221の間の隙間とに液状材料222を充填する。例えば、液状材料222を各貫通孔223内にディスペンサ等により注入し、真空脱泡を行うことによって各素子10の周囲に液状材料222を充填する。注入や真空脱泡の際に加熱して液状材料222の粘度を下げてもよい。液状材料222は、上述の第2樹脂材料(ただし、硬化前の液状のもの)を含んでいる。液状の第2樹脂材料に含まれる樹脂は、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂が好適である。液状の第2樹脂材料は、強化材として、シリカ粒子、アルミナ粒子、金属酸化物粒子等のフィラーや、セラミック繊維等の繊維を含んでいてもよい。
【0124】
硬化前の液状材料222は、25℃で、100Pa・s以下の粘度であることが好ましい。100Pa・s以下の粘度であれば、真空オーブンで脱泡と加熱するだけで容易に充填可能であるため、生産性を上げることができる。硬化前の液状材料222の粘度は、25℃で、30Pa・s以下であることがより好ましく、5Pa・s以下であることがさらに好ましい。
【0125】
なお、硬化前の液状材料222の粘度の下限に制限はないが、液状材料222を充填した後から加熱硬化するまでの間に、第1部分221とシート250との隙間から液状材料222が漏れることがないように、粘度は低すぎないことが好ましい。より具体的には、硬化前の液状材料222の粘度は、25℃で、通常では0.01Pa・s以上であり、好ましくは0.1Pa・s以上であり、より好ましくは0.3Pa・s以上である。
【0126】
そして、各貫通孔223内に充填された液状材料222を硬化する。例えば、真空オーブンで液状材料222を加熱して硬化させて外装体220の第2部分222a(外装体20の第2部分22となる部分)とする。
なお、液状材料222の硬化物である第2部分222aには気泡がわずかに残っていてもよい。また、第2部分222aと第1部分221との間、及び/又は、第2部分222aと少なくとも1つの素子10との間には、隙間がわずかに残っていてもよい。
【0127】
その後、他の列の貫通孔223についても、列毎に、導電性ペースト230の供給、複数の素子10(重畳体11)の挿入、液状材料222の充填、及び液状材料222の硬化を行い、全ての貫通孔223内に複数の素子10(重畳体11)及び第2部分222aを収納する。
【0128】
続いて、液状材料222を硬化した後、第1部分221からシート250を剥離する。剥離面には各素子10が接続された集電電極30が露出し、この剥離面が電子部品素体110の第1端面110eになる。少なくとも1つの陰極の端面がこの剥離面に露出してもよい。
【0129】
他方、第1部分221の上部には各素子10の不要部分や液状材料222の不要な部分、さらにはワーク210の保持部211が存在する。また、第1部分221の高さはチップの長手方向の長さになるため、所定長さに整える必要がある。そのため、所定のカットライン(例えば図19C中の一点鎖線)に沿って、第1部分221の上部の不要部分をグラインダ等で削り取る。不要部分が削り取られて露出した面が、電子部品素体110の第2端面110fになる。第2端面110fには各素子10の陽極40(弁作用金属基体から構成された箔)が露出している。
【0130】
次に、個片化のためにカットを行う。
【0131】
図20は、貫通孔の周囲において外装体の第1部分を切断する工程の一例を模式的に示す図である。
【0132】
図20に示すように、素子10(重畳体11)の周囲のカットライン(図20中の一点鎖線)において外装体(第1部分221及び第2部分222a)を切断する。これにより、第1部分221から第1部分21を形成するとともに、第2部分222aから第2部分22を形成する。すなわち、第2部分22の露出部23を形成する。例えば、各貫通孔223の周囲において所定のカットライン(図20中の一点鎖線)をダイサー等で切断する。
【0133】
以上により素子10の重畳体11を備える電子部品素体110を得る。
【0134】
この後、電子部品素体110をバレル研磨してもよい。具体的には、電子部品素体110を、バレル槽内に研磨材とともに封入し、当該バレル槽を回転させることにより、電子部品素体110を研磨してもよい。これにより、電子部品素体110の角部及び稜線部に丸みがつけられる。
【0135】
なお、必要に応じてバレル研磨された電子部品素体110の第2端面110f(陽極端面)には、エアロゾルデポジション法により金属微粒子(例えば、Cuの微粒子)を噴出して衝突させてもよい。これにより、電子部品素体110の第2端面110f(陽極端面)に露出した陽極40上に金属膜(コンタクト層)を形成してもよい。
【0136】
次に、電子部品素体110の第1端面110e(陰極端面)及び第2端面110f(陽極端面)にそれぞれ第1外部電極120及び第2外部電極130を形成する。例えば、導電性ペーストをスクリーン印刷法等で塗布して硬化し、第1外部電極120及び第2外部電極130として樹脂電極層をそれぞれ形成する。樹脂電極層形成用の導電性ペーストとしては、導電成分として銀粒子を含有する銀ペーストが好適である。その後、めっきすることによって樹脂電極層上にめっき層を形成してもよい。
【0137】
このとき、第1外部電極120として、スパッタ法や蒸着法により例えば数μm厚の薄いスパッタ膜及び/又は蒸着膜を形成してもよい。
【0138】
上記方法により電子部品100(固体電解コンデンサ)を得ることができる。
【0139】
なお、上記実施形態では、集電電極30を有する場合について説明したが、集電電極30を設けずに各固体電解コンデンサ素子10の陰極43を第1外部電極120に直接的に接続してもよい。この場合は、例えば、粘着性シート250の剥離後にシート250が貼り付けられていた第1部分221の下部をグラインダ等で削り取ることによって電子部品素体110の第1端面110e(陰極端面)に各陰極43を露出させ、第1端面110eに露出した各陰極43上に第1外部電極120を形成してもよい。
【0140】
また、集電電極30を設けない場合は、外装体220の第2部分222aは、以下の工程に従って実施してもよい。すなわち、まず、第1部分221の各貫通孔223内に液状材料222をディスペンサ等により注入して充填する。次に、液状材料222が充填された各貫通孔223内に複数の固体電解コンデンサ素子10(重畳体11)を挿入し、挿入された各素子10の周囲に液状材料222を充填する。例えば、複数の素子10の挿入後に真空脱泡を行うことによって、各素子10の周囲に液状材料222を充填する。そして、各貫通孔223内に充填された液状材料222を、例えば真空オーブンで加熱することによって、硬化する。
【0141】
また、上記実施形態では、外装体20が2種類の樹脂材料、すなわち第1部分21及び第2部分22のみから構成される場合について説明したが、本発明の電子部品における外装体は3種類の樹脂材料から構成されてもよい。例えば、第1部分及び第2部分の間に樹脂材料からなる1層以上の中間樹脂層を設けてもよい。このような中間樹脂層は、例えば、複数の固体電解コンデンサ素子の積層体を封止する第2部分を、第1部分の貫通孔より小さい寸法でトランスファ成形等により形成しておき、その後、固体電解コンデンサ素子の積層体を第2部分ごと第1部分の貫通孔内に挿入し、そして、第2部分と第1部分との間の隙間に液状の樹脂材料を充填して硬化することによって形成することができる。
【0142】
また、上記実施形態では、電子部品100が素子としての固体電解コンデンサ素子10を複数備える場合について説明したが、本発明の電子部品は、素子(電子部品素子)を少なくとも1つ備えていればよく、素子を1つだけ備えていてもよい。
【0143】
また、上記実施形態では、複数の貫通孔223の空いた第1部分221を用いて複数の電子部品素体110を同時に作製する場合について説明したが、本発明の電子部品の製造方法では、貫通孔が1つだけ空いた第1部分を用いて電子部品素体を1個ずつ作製してもよい。
【0144】
また、上記実施形態では、電子部品100が固体電解コンデンサである場合について説明したが、本発明の電子部品は、素子(電子部品素子)と外装体とを備える電子部品であれば特に限定されず、固体電解コンデンサの他に、例えば、フィルムコンデンサ、電気二重層コンデンサ、固体電池等であってもよい。
【0145】
本明細書には、以下の内容が開示されている。
【0146】
<1>
素子と、前記素子を封止する外装体とを含み、第1方向において対向する第1面及び第2面と、前記第1方向と直交する第2方向において対向する第3面及び第4面と、前記第1方向及び前記第2方向に直交する第3方向において対向する第5面及び第6面とを有する電子部品素体と、
前記第5面に形成された第1外部電極と、
前記第6面に形成された第2外部電極と、を備え、
前記外装体は、第1樹脂材料を含む第1部分と、前記第1部分に囲まれた、第2樹脂材料を含む第2部分とを有し、
前記第1部分は、前記電子部品素体の前記第1面、前記第2面、前記第3面及び前記第4面のそれぞれの少なくとも一部に存在し、
前記第2部分は、前記電子部品素体の前記第1面、前記第2面、前記第3面及び前記第4面のうちの少なくとも1面に露出した露出部を有する、電子部品。
【0147】
<2>
前記露出部は、前記第5面及び前記第6面の少なくとも一方に接している、<1>に記載の電子部品。
【0148】
<3>
前記露出部は、前記電子部品素体1つ当たり1箇所、2箇所又は4箇所に設けられ、かつ、前記第1面及び前記第2面を上下に配置した状態において前記長さ方向に直交する平面で断面視したときに左右及び上下の少なくとも一方に対称である、<1>又は<2>に記載の電子部品。
【0149】
<4>
前記露出部は、前記第1面及び前記第2面の少なくとも一方に存在する、<1>から<3>のいずれか1つに記載の電子部品。
【0150】
<5>
前記第1樹脂材料は、ポリフェニレンスルフィド及び液晶ポリマーの少なくとも一方を含み、
前記第2樹脂材料は、エポキシ樹脂及びシリコーン樹脂の少なくとも一方を含む、<1>から<4>のいずれか1つに記載の電子部品。
<6>
前記第1樹脂材料の40℃、90%RHにおける水蒸気透過度は、200g・μm/m/day以下であり、
前記第2樹脂材料の40℃、90%RHにおける水蒸気透過度は、500g・μm/m/day以上である、<1>から<5>のいずれか1つに記載の電子部品。
【0151】
<7>
前記第2部分は、前記電子部品素体の内側から前記露出部の露出面に向かうにつれて細くなるテーパー構造を有する、<1>から<6>のいずれか1つに記載の電子部品。
【0152】
<8>
前記テーパー構造は、曲面状のテーパー面を有する、<7>に記載の電子部品。
【0153】
<9>
前記素子としての複数の電解コンデンサ素子が前記第1方向に沿って配置された重畳体を備える、<1>から<8>のいずれか1つに記載の電子部品。
【0154】
<10>
素子を準備する工程と、
第1樹脂材料を含み、貫通孔を有する外装体の第1部分を準備する工程と、
前記第1部分と、前記貫通孔内に挿入された前記素子との間の隙間に充填された液状の第2樹脂材料を含む液状材料を硬化させて前記外装体の第2部分とする工程と、
前記素子の周囲のカットラインにおいて前記外装体を切断する工程と、を含み、
前記貫通孔は、一部が前記カットライン上に位置する形状であり、
前記外装体を切断する工程において、前記外装体を前記カットライン上で切断することによって前記第2部分の露出部を形成する、電子部品の製造方法。
【符号の説明】
【0155】
10 固体電解コンデンサ素子
11 重畳体
20 外装体
21 第1部分
22 第2部分
23 露出部
23a 露出面
23b テーパー面
23c 対向面
24 空間
25 非露出部
30 集電電極
40 陽極
40a 先端面
40b 基端面
41 誘電体層
42 マスク層
43 陰極
44 固体電解質層
45 カーボン層
46 陰極導体層
100 電子部品
110 電子部品素体
110a 第1主面
110b 第2主面
110c 第1側面
110d 第2側面
110e 第1端面
110f 第2端面
110g、110h 稜線部
110j 角部
120 第1外部電極
130 第2外部電極
210 ワーク
211 保持部
212 素子部
220 外装体
221 第1部分
222 液状材料
222a 第2部分
223 貫通孔
223a 第1の開口
223b 第2の開口
230 導電性ペースト
250 粘着性シート

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20