(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179210
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】冷却装置および蒸発器
(51)【国際特許分類】
F28F 17/00 20060101AFI20231212BHJP
F28F 13/18 20060101ALI20231212BHJP
F25B 39/02 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
F28F17/00 501C
F28F13/18 A
F28F13/18 B
F25B39/02 V
F25B39/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092379
(22)【出願日】2022-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】中野 彬
(72)【発明者】
【氏名】滝口 浩司
(57)【要約】
【課題】フィンに結露した水の着霜を抑制することが可能であるとともに、フィンを容易に製造することが可能な冷却装置および熱交換機を提供する。
【解決手段】この発明による冷却装置100では、複数のフィン41を備え、複数のフィン41の互いに対向する各々の面には、側方端に向かって延びるとともに側方端に向かうにつれて下方に傾斜し、幅が1mm以上である、結露した水を側方に導くためのガイド部43が設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却部と、
前記冷却部に配置される複数のフィンと、を備え、
前記複数のフィンは、鉛直方向に沿って延びるように互いに対向して配置され、冷却される空気に各々接し、
前記複数のフィンの互いに対向する各々の面には、側方端に向かって延びるとともに側方端に向かうにつれて下方に傾斜し、幅が1mm以上である、結露した水を側方に導くためのガイド部が設けられている、冷却装置。
【請求項2】
前記複数のフィンの互いに対向する面には、中央領域から両側方端に各々向かう一対の前記ガイド部が設けられている、請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記ガイド部は、凹部または凸部により構成されている、請求項1に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記凹部は、溝である、請求項3に記載の冷却装置。
【請求項5】
前記溝は、前記溝の延びる方向に直交する方向における断面がU字状またはV字状に形成されている、請求項4に記載の冷却装置。
【請求項6】
前記複数のフィンは、一方面と、前記一方面とは反対の他方面とを各々有し、
前記溝は、前記複数のフィンの各々の前記一方面と前記他方面とに形成されている、請求項4に記載の冷却装置。
【請求項7】
前記複数のフィンの各々の前記一方面と前記他方面とには、前記凹部としての前記溝と前記凸部とが各々形成されており、
前記一方面の前記溝に対応する位置に前記他方面の前記凸部が形成されているとともに、前記一方面の前記凸部に対応する位置に前記他方面の前記溝が形成されており、
前記一方面の上下方向において、前記溝と前記凸部とがこの順で交互に形成されるとともに、前記他方面の上下方向において、前記一方面の前記溝と前記凸部とに対応するように前記凸部と前記溝とがこの順で交互に形成されている、請求項6に記載の冷却装置。
【請求項8】
前記複数のフィンは、互いに対向する各々の面の長手方向が鉛直方向に沿うように設けられるとともに、下から上に空気が流れるように構成されている、請求項1に記載の冷却装置。
【請求項9】
前記複数のフィンには、前記ガイド部の側方端の位置において、互いに対向する各々の面の側方端から側方に突出する突出部が複数設けられており、
前記ガイド部は、前記突出部の側方端まで延びるように構成されている、請求項1に記載の冷却装置。
【請求項10】
前記複数のフィンの空気の流れる方向に沿った各々の面に、親水性塗料、撥水性塗料または過冷却促進剤が塗布されている、請求項1に記載の冷却装置。
【請求項11】
蒸発器本体と、
前記蒸発器本体内に配置される複数のフィンと、を備え、
前記複数のフィンは、鉛直方向に沿って延びるように互いに対向して配置され、冷却される空気に各々接し、
前記複数のフィンの互いに対向する各々の面には、側方端に向かって延びるとともに側方端に向かうにつれて下方に傾斜し、幅が1mm以上である、結露した水を側方に導くためのガイド部が設けられている、蒸発器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、冷却装置および蒸発器に関し、特に、フィンを含み、空気を冷却する冷却装置および蒸発器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フィンを含み、空気を冷却する冷却装置および蒸発器が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、鉛直方向に延びるプレート状の複数のフィンと、複数のフィンの各々に設けられた伝熱チューブとを備える熱交換器と、熱交換器に向かって空気を流すためのファンとを備える空気調和機が開示されている。特許文献1の熱交換器では、冷媒を蒸発させることにより空気を冷却している。
【0004】
ここで、冷媒を蒸発することにより空気を冷却するように構成されているフィンを備えた蒸発器の場合、冷却された空気中の水分がフィンに結露することが知られている。また、結露した水がさらに冷やされることにより凍結して、着霜する場合がある。そのため、上記特許文献1では、フィンの表面に上方から下方に向けて延びる、幅が5μm以上200μm以下の複数の溝をレーザ加工により形成している。これにより、濡れ性を変化させて結露した水が付着しにくくし、結露した水をファンの風により滴下することにより、結露した水が凍結して着霜することを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1では、フィンにレーザ加工で複数の溝を形成しているため、フィンを1枚製造するための手間がかかる。その結果、複数のフィンを製造し、複数のフィンから構成される熱交換器(冷却部)および空気調和機(冷却装置)を製造する工程が煩雑であるという問題点がある。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、フィンに結露した水の着霜を抑制することが可能であるとともに、フィンを容易に製造することが可能な冷却装置および熱交換機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面による冷却装置は、冷却部と、冷却部に配置される複数のフィンと、を備え、複数のフィンは、鉛直方向に沿って延びるように互いに対向して配置され、冷却される空気に各々接し、複数のフィンの互いに対向する各々の面には、側方端に向かって延びるとともに側方端に向かうにつれて下方に傾斜し、幅が1mm以上である、結露した水を側方に導くためのガイド部が設けられている。
【0009】
この発明の第1の局面による冷却装置では、上記のように、側方端に向かって延びるとともに側方端に向かうにつれて下方に傾斜するガイド部に沿って、結露した水が側方端に導かれて、凍結する前に排出されるため、結露した水がフィンに着霜することを抑制することができる。また、ガイド部の幅が1mm以上であることにより、プレス加工によりフィンにガイド部を形成することができる。これにより、複数のガイド部をプレス加工により同時に形成することができるとともに、複数のフィンに対して同時にプレス加工により複数のガイド部を形成することができる。そのため、フィンにレーザ加工で複数のガイド部を形成する場合に比べて、製造工程を簡素化することができる。これらの結果により、フィンに結露した水の着霜を抑制することができるとともに、フィンを容易に製造することができる。
【0010】
上記第1の局面による冷却装置において、好ましくは、複数のフィンの互いに対向する面には、中央領域から両側方端に各々向かう一対のガイド部が設けられている。このように構成すれば、中央領域から両側方端に結露した水を導く場合は、一方の側端部から他方の側端部に結露した水を導く場合と比べて結露した水を移動させる距離を短くすることができるため、より迅速に結露した水を排水することができるとともに、結露した水が凍結することを効果的に抑制することができる。
【0011】
上記第1の局面による冷却装置において、好ましくは、ガイド部は、凹部または凸部により構成されている。このように構成すれば、プレス加工によりフィンを製造するための金型に凸部または凹部を形成することにより、容易にガイドをフィンに形成することができる。また、凹部または凸部に沿って結露した水を流すことにより、結露した水を側方端に導くことができる。
【0012】
この場合、好ましくは、凹部は溝である。このように構成すれば、溝に沿って結露した水を流すことにより、結露した水を側方端に導くことができる。
【0013】
上記凹部が溝である冷却装置において、好ましくは、溝は、溝の延びる方向に直交する方向における断面がU字状またはV字状に形成されている。このように構成すれば、溝がU字状またはV字状に形成されていることにより、溝が矩形状に形成されている場合と異なり、溝に結露した水を底部に集めることができるため、効率よく結露した水を側方端に導くことができる。
【0014】
上記第1の局面による冷却装置において、好ましくは、複数のフィンは、一方面と、一方面とは反対の他方面とを各々有し、溝は、複数のフィンの各々の一方面と他方面とに形成されている。このように構成すれば、複数のフィンの各々の一方面と他方面とに結露した水を各々側方端に導くことができる。
【0015】
この場合、好ましくは、複数のフィンの各々の一方面と他方面とには、凹部としての溝と凸部とが各々形成されており、一方面の溝に対応する位置に他方面の凸部が形成されているとともに、一方面の凸部に対応する位置に他方面の溝が形成されており、一方面の上下方向において、溝と凸部とがこの順で交互に形成されるとともに、他方面の上下方向において、一方面の溝と凸部とに対応するように凸部と溝とがこの順で交互に形成されている。このように構成すれば、溝部または凸部が連続することにより、空気の流れのよどみが発生することを抑制することができる。また、一方面の溝に対応する位置に他方面の凸部が形成されていることによって、一方面の溝を形成することにより他方面の凸部をプレス加工により一体的に形成することができる。さらに、一方面の凸部に対応する位置に他方面の溝が形成されていることによって、一方面の凸部を形成することにより他方面の溝をプレス加工により一体的に形成することができる。これらの結果、効率よく一方面および他方面の上下方向に沿って凸部と溝とが交互に設けられたフィンを製造することができる。
【0016】
上記第1の局面による冷却装置において、好ましくは、複数のフィンは、互いに対向する各々の面の長手方向が鉛直方向に沿うように設けられるとともに、下から上に空気が流れるように構成されている。このように構成すれば、フィンの鉛直方向の長さよりも、側方端を結ぶ長さの方が短くなるため、鉛直方向に結露した水を導く場合と異なり、側方端に結露した水を導くように構成することによってより迅速に結露した水を端部に導くことができる。また、下から上に空気が流れたとしても、鉛直方向に結露した水を導く場合と異なり、空気の流れによる影響を受けにくいため、より迅速に側方端に結露した水を導くことができる。
【0017】
上記第1の局面による冷却装置において、好ましくは、複数のフィンには、ガイド部の側方端の位置において、互いに対向する各々の面の側方端から側方に突出する突出部が複数設けられており、ガイド部は、突出部の側方端まで延びるように構成されている。このように構成すれば、突出部を設けることにより、突出部を設けずにフィンの側面に沿って水を排出する場合と異なり、フィンの側面において排出中の結露水が凍結することを抑制することができる。
【0018】
上記第1の局面による冷却装置において、好ましくは、複数のフィンの空気の流れる方向に沿った各々の面に、親水性塗料、撥水性塗料または過冷却促進剤が塗布されている。このように構成すれば、親水性塗料を塗布することにより結露した水の濡れ角を小さくして、結露した水のフィンの表面からの突出量を小さくすることができるため、空気の流れる流路を狭くすることを抑制することができる。また、撥水性塗料を塗布することにより、フィンに結露した水を側方端に導きやすくすることができる。また、過冷却促進剤を塗布することにより、結露した水が凍結することを抑制することができる。
【0019】
この発明の第2の局面による蒸発器は、蒸発器本体と、蒸発器本体内に配置される複数のフィンと、を備え、複数のフィンは、鉛直方向に沿って延びるように互いに対向して配置され、冷却される空気に各々接し、複数のフィンの互いに対向する各々の面には、側方端に向かって延びるとともに側方端に向かうにつれて下方に傾斜し、幅が1mm以上である、結露した水を側方に導くためのガイド部が設けられている。
【0020】
この発明の第2の局面による蒸発器では、上記のように、側方端に向かって延びるとともに側方端に向かうにつれて下方に傾斜するガイド部に沿って、結露した水が側方端に導かれて、凍結する前に排出されるため、結露した水がフィンに着霜することを抑制することができる。また、ガイド部の幅が1mm以上であることにより、プレス加工により形成することができる。これにより、複数のガイド部をプレス加工により同時に形成することができるとともに、複数のフィンに対して同時にプレス加工により複数のガイド部を形成することができる。そのため、フィンにレーザ加工で複数のガイド部を形成する場合に比べて、製造工程を簡素化することができる。これらの結果により、フィンに結露した水の着霜を抑制することができるとともに、フィンの製造工程を簡素化することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、上記のように、フィンに結露した水の着霜を抑制することが可能であるとともに、フィンを容易に製造することが可能な冷却装置および熱交換機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
(冷却装置の構成)
図1~
図4を参照して、実施形態による冷却装置100の構成について説明する。
【0025】
冷却装置100は、冷媒により空気を冷却し、冷却された空気によって物品または空間を冷却する。冷却装置100は、冷蔵ショーケース、冷凍ショーケース、自動販売機、またはエアコンに用いられる。
【0026】
図1に示すように、冷却装置100は、圧縮機1と、凝縮器2と、膨張部3と、蒸発器4とを含む冷凍サイクルを備える。冷媒は、圧縮機1と、凝縮器2と、膨張部3と、蒸発器4とを循環するように構成されている。なお、蒸発器4は、特許請求の範囲に記載した「冷却部」の一例である。
【0027】
圧縮機1は、冷媒を圧縮する。具体的には、低圧の冷媒蒸気は、高圧の気相冷媒に圧縮される。圧縮機1において圧縮された冷媒は、凝縮器2に供給される。
【0028】
凝縮器2は、冷媒を凝縮する。具体的には、高圧の冷媒蒸気は、高圧の液相冷媒に凝縮される。凝縮器2において凝縮された冷媒は、膨張部3に供給される。
【0029】
膨張部3は、冷媒を膨張させる。具体的には、高圧の液相冷媒が、膨張されて低圧低温の気液二相の冷媒に変化する。膨張部3は、たとえば、膨張弁である。膨張部3で膨張された冷媒は、蒸発器4に供給される。
【0030】
蒸発器4は、冷媒を蒸発させる。具体的には、低温低圧の冷媒が、低圧の気相冷媒に変化する。このとき、空気の熱を奪って冷媒が蒸発するため、空気は冷却される。気相冷媒は、圧縮機1に戻る。
【0031】
図2に示すように、蒸発器4は、蒸発器本体40と、複数のフィン41と、複数の伝熱チューブ42とを含む。蒸発器本体40の内部には、複数のフィン41が配置される。
【0032】
複数のフィン41は、板状である。複数のフィン41は、各々鉛直方向に沿って延びるように配置される。複数のフィン41は、各々対向して配置される。つまり、複数のフィン41の各々の対向する面の長手方向が、鉛直方向に沿うように設けられる。なお、本実施形態では、空気は、複数のフィン41の対向する面の間を下方側から上方側に流れる。複数のフィン41は、たとえば、アルミニウムから形成される。
【0033】
複数の伝熱チューブ42は、複数のフィン41の互いに対向する各々の面を貫通するように設けられる。複数の伝熱チューブ42は、各々冷媒が内部を通過する。伝熱チューブ42は、たとえば、銅から形成される。伝熱チューブ42の外周を空気が通過することによって、空気の熱が冷媒に奪われて、冷媒が蒸発する。
【0034】
複数のフィン41は、一方面41aと、一方面41aとは反対の他方面41bとを各々有する。1つのフィン41は、複数のフィン41が並ぶ方向において、端に位置するフィン41を除き、一方面41aおよび他方面41bにおいて、各々別のフィン41と対向する。
【0035】
複数のフィン41の対向する各々の面には、結露した水を側方に導くためのガイド部43が設けられている。具体的には、複数のフィン41の互いに対向する面には、中央領域Cから両側方端Aに各々向かう一対のガイド部43が設けられている。中央領域Cとは、フィン41の短手方向の辺の中心を通る中心線と、中心線の近傍とを含む。中央領域Cから両側方端Aに各々向かう一対のガイド部43は、中央領域Cの同じ位置から両側方端Aに向かってもよく、中央領域Cの異なる位置から両側方端Aに向かってもよい。ガイド部43は、両側方端Aに向かって延びるとともに両側方端Aに向かうにつれて下方に傾斜する。ガイド部43の幅は、1mm以上である。また、ガイド部43の深さは、ガイド部43の幅よりも小さい。ガイド部43の傾斜角度は、15度程度あればよく、たとえば、10度以上20度未満に設定される。複数のガイド部43は、等間隔で配置される。また、複数のガイド部43の間に配置される伝熱チューブ42も等間隔で配置される。
【0036】
図3に示すように、ガイド部43は、ガイド部43の延びる方向に直交する方向において断面視でU字状またはV字状に形成されている。ガイド部43は、矩形状に構成するよりもU字状またはV字状に形成することにより結露した水が底部に溜まりやすくなる。
【0037】
ガイド部43は、凹部43aまたは凸部43bにより構成されている。凹部43aは、具体的には、溝である。凹部43aおよび凸部43bは、複数のフィン41の各々の一方面41aと他方面41bとに形成されている。
【0038】
図4に示すように、一方面41aの凹部43aに対応する位置に他方面41bの凸部43bが形成されている。また、一方面41aの凸部43bに対応する位置に他方面41bの凹部43aが形成されている。また、一方面41aにおいて、凹部43aと凸部43bとがこの順で交互に形成されるとともに、他方面41bにおいて、一方面41aの凹部43aと凸部43bとに対応するように凸部43bと凹部43aとがこの順で交互に形成されている。これにより、プレス加工により一方面41a(他方面41b)に凹部43aを形成することにより、他方面41b(一方面41a)に凸部43bが形成される。
【0039】
複数のフィン41には、ガイド部43の側方端の位置において、互いに対向する各々の面の側方端から側方に突出する突出部44が複数設けられている。ガイド部43は、突出部44の側方端まで延びるように構成されている、突出部44は、両側方端Aに設けられる。
【0040】
複数のフィン41の互いに対向する面の各々に、親水性塗料、撥水性塗料または過冷却促進剤が塗布されている。
【0041】
図2に示すように、複数のフィン41の表面で冷却された空気に含まれる水分は、冷却されて結露し、水滴50となりガイド部43に沿って両側方端Aに向かって流れる。水滴50の径の大きさは1mm程度であるため、ガイド部43の幅wが1mm以上に設定される。ガイド部43の幅wは、ガイド部43の延びる方向に直交する方向の長さであり、ガイド部43の最短の長さである。ガイド部43に沿って流れた水滴50は、突出部44の端部から鉛直方向に沿って落下する。
【0042】
(フィンの製造方法)
まず、フィン41を構成する金属板を用意する。金属板は、複数のフィン41を製造することが可能な大きさを有している。次に、フィン41を構成する金属板をプレス加工し、複数のガイド部43を形成する。プレス加工の金型には、凹部43aと凸部43bとが形成されている。これにより、一方面41aおよび他方面41bに同時に凹部43aと凸部43bとが形成される。次に、複数の伝熱チューブ42を挿入する複数の挿入孔も設けられる。そして、金属板を切断し、複数のフィン41が形成される。そのため、複数のフィン41ごとにレーザ加工でガイド部43を設ける場合と比べて、少ない工程数で複数のフィン41を製造することができる。製造された複数のフィン41を組み立て、伝熱チューブ42を挿入して、蒸発器本体40に配置することで蒸発器4が製造される。
【0043】
(結露した水の排出経路のシミュレーション)
長手方向の長さ759mm、短手方向の長さ96mmのフィン41にガイド部43を設けた実施例と、長手方向の長さ759mm、短手方向の長さ96mmのフィン41にガイド部43を設けない比較例とについて、結露した水の排出経路をシミュレーションした。なお、実施例では、ガイド部43以外に発生した結露水は、鉛直方向に落下するものとする。また、溝の幅および深さの影響はないものとする。その結果、側方端に結露水を導く実施例では、鉛直方向に結露した水を流す比較例と比べて、排水経路を84%削減することができることが分かった。つまり、比較例よりも迅速に結露した水を排出できるため、凍結を防止することができるといえる。
【0044】
長手方向の長さ207mm、短手方向の長さ96mmのフィン41にガイド部43を設けた実施例と、長手方向の長さ207mm、短手方向の長さ96mmのフィン41にガイド部43を設けない比較例とについて、結露した水の排出経路をシミュレーションした。なお、実施例では、ガイド部43以外に発生した結露水は、鉛直方向に落下するものとする。また、溝の幅および深さの影響はないものとする。その結果、側方端に結露水を導く実施例では、鉛直方向に結露した水を流す比較例と比べて、排水経路を18%削減することができることが分かった。つまり、比較例よりも迅速に結露した水を排出できるため、凍結を防止することができるといえる。
【0045】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0046】
本実施形態では、上記のように、側方端に向かって延びるとともに側方端に向かうにつれて下方に傾斜するガイド部43に沿って、結露した水が側方端に導かれて、凍結する前に排出されるため、結露した水がフィン41に着霜することを抑制することができる。また、ガイド部43の幅が1mm以上であることにより、プレス加工によりフィン41にガイド部43を形成することができる。これにより、複数のガイド部43をプレス加工により同時に形成することができるとともに、複数のフィン41に対して同時にプレス加工により複数のガイド部43を形成することができる。そのため、フィン41にレーザ加工で複数のガイド部43を形成する場合に比べて、製造工程を簡素化することができる。これらの結果により、フィン41に対する結露した水の着霜を抑制することができるとともに、フィン41を容易に製造することができる。
【0047】
本実施形態では、上記のように、複数のフィン41の互いに対向する面には、中央領域Cから両側方端Aに各々向かう一対のガイド部43が設けられている。これにより、中央領域Cから両側方端Aに結露した水を導く場合は、一方の側端部から他方の側端部に結露した水を導く場合と比べて結露した水を移動させる距離を短くすることができるため、より迅速に結露した水を排水することができるとともに、結露した水が凍結することを効果的に抑制することができる。
【0048】
本実施形態では、上記のように、ガイド部43は、凹部43aまたは凸部43bにより構成されている。これにより、プレス加工によりフィン41を製造するための金型に凸部または凹部を設けることにより、容易にガイド部43をフィン41に形成することができる。また、凹部43aまたは凸部43bに沿って結露した水を流すことにより、結露した水を側方端に導くことができる。
【0049】
本実施形態では、上記のように、凹部43aは溝である。これにより、溝に沿って結露した水を流すことにより、結露した水を側方端に導くことができる。
【0050】
本実施形態では、上記のように、溝は、溝の延びる方向に直交する方向において断面視でU字状またはV字状に形成されている。これにより、溝がU字状またはV字状に形成されていることにより、溝が矩形状に形成されている場合と異なり、溝に結露した水を底部に集めることができるため、効率よく結露した水を側方端に導くことができる。
【0051】
本実施形態では、上記のように、複数のフィン41は、一方面41aと、一方面41aとは反対の他方面41bとを各々有し、溝は、複数のフィン41の各々の一方面41aと他方面41bとに形成されている。これにより、複数のフィン41の各々の一方面41aと他方面41bとに結露した水を各々側方端に導くことができる。
【0052】
本実施形態では、上記のように、複数のフィン41の各々の一方面41aと他方面41bとには、凹部43aとしての溝と凸部43bとが各々形成されており、一方面41aの溝に対応する位置に他方面41bの凸部43bが形成されているとともに、一方面41aの凸部43bに対応する位置に他方面41bの溝が形成されており、一方面41aの上下方向において、溝と凸部43bとがこの順で交互に形成されるとともに、他方面41bの上下方向において、一方面41aの溝と凸部43bとに対応するように凸部43bと溝とがこの順で交互に形成されている。これにより、溝部または凸部43bが連続することにより、空気の流れのよどみが発生することを抑制することができる。また、一方面41aの溝に対応する位置に他方面41bの凸部43bが形成されていることによって、一方面41aの溝を形成することにより他方面41bの凸部43bをプレス加工により一体的に形成することができる。さらに、一方面41aの凸部43bに対応する位置に他方面41bの溝が形成されていることにより、一方面41aの凸部43bを形成することにより他方面41bの溝をプレス加工により一体的に形成することができる。これらの結果、効率よく一方面41aおよび他方面41bの上下方向に沿って凸部43bと溝とが交互に設けられたフィン41を製造することができる。
【0053】
本実施形態では、上記のように、複数のフィン41は、互いに対向する各々の面の長手方向が鉛直方向に沿うように設けられるとともに、下から上に空気が流れるように構成されている。これにより、フィン41の鉛直方向の長さよりも、側方端を結ぶ長さの方が短くなるため、鉛直方向に結露した水を導く場合と異なり、側方端に結露した水を導くように構成することによってより迅速に結露した水を端部に導くことができる。また、下から上に空気が流れたとしても、鉛直方向に結露した水を導く場合と異なり、空気の流れによる影響を受けにくいため、より迅速に側方端に結露した水を導くことができる。
【0054】
本実施形態では、上記のように、複数のフィン41には、ガイド部43の側方端の位置において、互いに対向する各々の面の側方端から側方に突出する突出部44が複数設けられており、ガイド部43は、突出部44の側方端まで延びるように構成されている。これにより、突出部44を設けることにより、突出部44を設けずにフィン41の側面に沿って水を排出する場合と異なり、フィン41の側面において排出中の結露水が凍結することを抑制することができる。
【0055】
本実施形態では、上記のように、複数のフィン41の空気の流れる方向に沿った各々の面に、親水性塗料、撥水性塗料または過冷却促進剤が塗布されている。これにより、親水性塗料を塗布することにより結露した水の濡れ角を小さくして、結露した水のフィン41の表面からの突出量を小さくすることができるため、空気の流れる流路を狭くすることを抑制することができる。また、撥水性塗料を塗布することにより、フィン41に結露した水を側方端に導きやすくすることができる。また、過冷却促進剤を塗布することにより、結露した水が凍結することを抑制することができる。
【0056】
(変形例)
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であり制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更(変形例)が含まれる。
【0057】
たとえば、上記実施形態では、複数のフィンの各々の対向する面の長手方向が鉛直方向に沿うように設けられる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば、複数のフィンの各々の対向する面の短手方向が、鉛直方向に沿うように設けられてもよい。この場合、ガイド部は、短手方向の端部近傍だけに設けられてもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、空気は、下方側から上方側に流れる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば、空気は、上方側から下方側に流れてもよく、横方向に流れてもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、複数のフィンの第1面および第2面に凹部と凸部とを設ける例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、複数のフィンの第1面および第2面に凹部と凸部とのうちいずれか一方のみを設けてもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、ガイド部の延びる方向に直交する方向において断面視でU字状またはV字状である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば、ガイド部の延びる方向に直交する方向において断面視で矩形状であってもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、一方面において、凹部と凸部とがこの順で交互に形成される例を示したが、本発明はこれに限らない。たとえば、連続して凹部が形成された後、凸部が形成されてもよく、連続して凸部が形成された後、凹部が形成されてもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、フィンには突出部が設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、フィンに突出部を設けられていなくともよい。
【0063】
また、上記実施形態では、複数のフィンの互いに対向する面の各々に、親水性塗料、撥水性塗料または過冷却促進剤が塗布されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、複数のフィンの互いに対向する面の各々に、親水性塗料、撥水性塗料または過冷却促進剤のいずれもが塗布されていなくてもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、冷却部は、冷媒を使用する冷凍サイクルの蒸発器である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、冷却部は、たとえば、冷媒を使用しないペルチェ式冷却装置であってもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 圧縮機
2 凝縮器
3 膨張部
4 蒸発器(冷却部)
40 蒸発器本体
41 フィン
41a 一方面
41b 他方面
43 ガイド部
43a 凹部
43b 凸部
44 突出部
100 冷却装置