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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179223
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】固定具
(51)【国際特許分類】
   E04G 7/34 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
E04G7/34 301A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092399
(22)【出願日】2022-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】522226719
【氏名又は名称】株式会社長谷工テクノ
(71)【出願人】
【識別番号】000150615
【氏名又は名称】株式会社長谷工コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】安井 友映
(72)【発明者】
【氏名】梅村 恒
(57)【要約】
【課題】足場板を管部材に対して容易に固定できる固定具を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、管部材が挿通される貫通孔を有する挿通部と、挿通部に接続される係合部と、を備え、係合部は、足場板を管部材に対して固定したときに貫通孔の貫通方向における足場板の一方の側面と対向する第一規制面と、足場板を管部材に対して固定したときに足場板の表面と対向する第二規制面と、を有すると共に、第二規制面と管部材との間に形成され且つ第一規制面及び第二規制面のそれぞれと対向する足場板配置領域に対して前記貫通方向における第一規制面の側と反対側が開放されるように構成されている、ことを特徴とする。
【選択図】図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に延びる管部材に対して足場板を固定する固定具であって、
前記管部材が挿通される貫通孔を有する挿通部と、
前記挿通部に接続され且つ前記足場板と係合可能な係合部と、を備え、
前記係合部は、
前記足場板の一方の面を前記管部材に当接させた状態で該足場板を前記管部材に対して固定したときに前記貫通孔の貫通方向における前記足場板の一方の側面と対向する第一規制面と、
前記足場板の一方の面を前記管部材に当接させた状態で該足場板を前記管部材に対して固定したときに前記足場板の他方の面と対向する第二規制面と、を有すると共に、
前記第二規制面と前記管部材との間に形成され且つ前記第一規制面及び前記第二規制面のそれぞれと対向する足場板配置領域に対して前記貫通方向における前記第一規制面の側と反対側が開放されるように構成されている、固定具。
【請求項2】
前記挿通部と前記係合部とは、一つの板状部材によって構成されている、請求項1に記載の固定具。
【請求項3】
前記貫通孔に挿通された状態の前記管部材に対して前記挿通部を固定可能な固定部を備える、請求項1に記載の固定具。
【請求項4】
前記挿通部の前記貫通孔は、前記貫通方向から見たときに、円形の孔本体領域と、前記孔本体領域の周縁における径方向の対向する位置のそれぞれから径方向外側に向けて突出する一対の凸領域と、を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の固定具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、足場板を管部材に対して固定する固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建築現場等における仮設足場において、同一高さで水平に架設された二つの鋼管等の管部材上に載置された足場板を該管部材に対して固定するものとして、番線が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
この番線は、金属製の線状部材であり、管部材上に足場板が載置された状態で管部材と足場板とを一緒に結束することにより、足場板を管部材に対して固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平6-16555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の番線は、金属製の硬い線状部材であるため、番線による管部材への足場板の固定において管部材に対して足場板をがたつきなく結束する作業には、シノやハッカー等の工具を用いなければならず、結束作業に熟練が必要であり且つ煩雑であった。
【0006】
そこで、本発明は、足場板を管部材に対して容易に固定できる固定具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の固定具は、
所定方向に延びる管部材に対して足場板を固定する固定具であって、
前記管部材が挿通される貫通孔を有する挿通部と、
前記挿通部に接続され且つ前記足場板と係合可能な係合部と、を備え、
前記係合部は、
前記足場板の一方の面を前記管部材に当接させた状態で該足場板を前記管部材に対して固定したときに前記貫通孔の貫通方向における前記足場板の一方の側面と対向する第一規制面と、
前記足場板の一方の面を前記管部材に当接させた状態で該足場板を前記管部材に対して固定したときに前記足場板の他方の面と対向する第二規制面と、を有すると共に、
前記第二規制面と前記管部材との間に形成され且つ前記第一規制面及び前記第二規制面のそれぞれと対向する足場板配置領域に対して前記貫通方向における前記第一規制面の側と反対側が開放されるように構成されている。
【0008】
かかる構成によれば、挿通部の貫通孔に管部材を挿通させ且つ裏面(一方の面)を管部材に当接させた状態の足場板と係合部とを係合させることで、足場板を管部材に対して容易に固定することができる。
【0009】
具体的には、貫通孔に管部材が挿通された状態の固定具に対し、係合部の前記開放されている側から足場板を足場板配置領域に差し込むと共に該足場板の裏面(一方の面)を管部材に当接させるといった簡単な作業によって、係合部の第一規制面及び第二規制面によって足場板の前記貫通方向における第一規制面の側への移動、及び、足場板が管部材から離間する方向(他方の面側)への移動を規制することができる。
【0010】
又は、裏面(一方の面)を管部材に当接させた状態の足場板に対し、該足場板が足場板配置領域に位置するまで(即ち、係合部の第一規制面が足場板の前記一方の側面と当接するまで)管部材が貫通孔に挿通された状態の固定具を該管部材に沿って移動させるといった簡単な作業によって、係合部の第一規制面及び第二規制面によって足場板の前記貫通方向における第一規制面の側への移動、及び、足場板が管部材から離間する方向(他方の面側)への移動を規制することができる。
【0011】
前記固定具において、
前記挿通部と前記係合部とは、一つの板状部材によって構成されてもよい。
【0012】
この構成によれば、固定具の構成の簡素化を図ることができる。
【0013】
また、前記固定具は、
前記貫通孔に挿通された状態の前記管部材に対して前記挿通部を固定可能な固定部を備えてもよい。
【0014】
かかる構成によれば、管部材に沿った固定具の移動が固定部によって防がれるため、足場板を管部材に対してより確実に固定することができる。
【0015】
また、前記固定具において、
前記挿通部の前記貫通孔は、前記貫通方向から見たときに、円形の孔本体領域と、前記孔本体領域の周縁における径方向の対向する位置のそれぞれから径方向外側に向けて突出する一対の凸領域と、を有してもよい。
【0016】
例えば、管部材同士を連結するときに用いられるピンを端部に備えた管部材(図15参照)のように、管部材の外周面において径方向の対向する位置からそれぞれ突出する部位を有する管部材であっても、該突出する部位のそれぞれを貫通孔の一対の凸領域の位置に合わせて管部材を挿通部の貫通孔に挿入することで、該貫通孔に対する管部材の挿通を行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
以上より、本発明によれば、足場板を管部材に対して容易に固定できる固定具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本実施形態に係る第一固定具の斜視図である。
図2図2は、前記第一固定具の正面図である。
図3図3は、前記第一固定具の側面図である。
図4図4は、第二固定具の斜視図である。
図5図5は、前記第二固定具の正面図である。
図6図6は、前記第二固定具の側面図である。
図7図7は、第三固定具の斜視図である。
図8図8は、前記第三固定具の正面図である。
図9図9は、前記第三固定具の側面図である。
図10図10は、第四固定具の斜視図である。
図11図11は、前記第四固定具の正面図である。
図12図12は、前記第四固定具の側面図である。
図13図13は、ステージの骨組みの平面図である。
図14図14は、複数の固定具が固定用単管に配置された状態を示す図である。
図15図15は、固定用単管のピン側の端部の斜視図である。
図16図16は、図13のXVI-XVI位置におけるステージの断面図である。
図17図17は、図16に示すステージの搬器側の端部の拡大図である。
図18図18は、他実施形態に係る固定具の正面図である。
図19図19は、前記固定具の側面図である。
図20図20は、上下に延びる管部材に対して足場板を固定した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態について、図1図17を参照しつつ説明する。
【0020】
本実施形態の固定具は、鋼管等の管部材に対して足場板を固定するものであり、例えば、建築現場等の仮設足場では一つの管部材Pに対して複数の固定具1が配置される(図13及び図14参照)。これら複数の固定具1は、図1図12に示すような、第一固定具1A、第二固定具1B、第三固定具1C、及び第四固定具1Dを含む。
【0021】
各固定具1(詳しくは、第一固定具1A、第二固定具1B、第三固定具1C、第四固定具1Dのそれぞれ)は、管部材Pが挿通される貫通孔21を有する挿通部2と、挿通部2に接続され且つ足場板9(図16参照)と係合可能な係合部3と、をそれぞれ備える。本実施形態の各固定具1A、1B、1C、1Dでは、挿通部2と係合部3とは、一体であり、一つの金属製の板状部材によって構成されている。尚、以下では、貫通孔21の貫通方向をX軸方向とし、挿通部2と係合部3とが並ぶ方向をZ軸方向とし、X軸方向及びZ軸方向のそれぞれと直交する方向をY軸方向とする。
【0022】
また、これら各固定具1の係合部3は、図14及び図16に示すように、足場板9を管部材Pに対して固定したときに足場板9の側面(一方の側面)91aと対向し、足場板9が管部材Pに沿って移動しようとしたときに該足場板9の当接によってそれ以上の該足場板9の管部材Pに沿った移動を阻止する(規制する)第一規制面R1と、足場板9を管部材Pに対して固定したときに足場板9の表面92と対向し、足場板9が管部材Pから離間する方向(図16に示す例では、上方)に移動しようとしたときに該足場板9の当接によってそれ以上の該足場板9の前記離間する方向への移動を阻止する(規制する)第二規制面R2と、をそれぞれ有する。
【0023】
以下、各固定具1A、1B、1C、1Dについて具体的に説明する。
【0024】
第一固定具1Aは、図1図3に示すように、貫通孔21Aを有する挿通部2Aと、足場板9と係合可能な係合部3Aと、を備える。この第一固定具1Aでは、挿通部2Aと係合部3Aとが一体である。本実施形態の第一固定具1Aは、所定形状の板状部材(一つの板状部材)が折り曲げられることによって構成されている。
【0025】
挿通部2Aは、X軸方向と直交する方向に広がる(即ち、Y軸方向及びZ軸方向に広がる)板状の部位であり、X軸方向(厚さ方向)に貫通する貫通孔21Aを有する。この貫通孔21Aは、第一固定具1Aによって足場板9を管部材Pに固定するときの該管部材Pの横断面形状に対応した形状の孔であり、本実施形態の貫通孔21Aは、円形の孔である。この貫通孔21Aの内径φ1は、管部材Pの外径φp(図13参照)と対応する大きさ、詳しくは、管部材Pの外径φpより僅かに大きい。例えば、本実施形態の管部材Pの外径φpは、48.6mmであり、本実施形態の貫通孔21Aの内径φ1は、50.6mmである。
【0026】
また、挿通部2Aにおいて、Z軸方向における貫通孔21Aの中心Cより一方側(係合部3側:図2における上側)の部位では、Z軸方向の各位置におけるY軸方向の寸法が一定であり、Z軸方向における貫通孔21Aの中心Cより他方側(図2における下側)の部位では、Z軸方向の他方側に進むにつれてY軸方向の寸法が小さくなっている。本実施形態の前記貫通孔21Aの中心Cより他方側の部位では、端縁22(X軸方向から見たときの輪郭)は、貫通孔21Aに沿った円弧状である。
【0027】
係合部3Aは、Z軸方向における挿通部2の一方側の端部からX軸方向の一方側(図3における右側)に延びる第一部位31Aと、第一部位31Aの先端(挿通部2Aの側と反対側の端)からZ軸方向の一方側に延びる第二部位32Aと、第二部位32Aの先端(第一部位31Aの側と反対側の端)からX軸方向の他方側に延びる第三部位33Aと、を有する。
【0028】
係合部3Aにおいて、第一部位31Aは、X軸方向及びY軸方向に広がる板状の部位であり、第二部位32Aは、Y軸方向及びZ軸方向に広がる板状の部位であり、第三部位33Aは、X軸方向及びY軸方向に広がる板状の部位である。より具体的に、これら第一部位31Aと第二部位32Aと第三部位33Aとは、それぞれY軸方向に長い矩形板状であり、本実施形態の係合部3Aでは、第一部位31AのY軸方向の寸法と、第二部位32AのY軸方向の寸法と、第三部位33AのY軸方向の寸法とが、同じである。また、第一~第三部位31A~33AのY軸方向の寸法は、挿通部2Aの前記貫通孔21Aの中心Cより一方側の部位のY軸方向の寸法と同じである。
【0029】
また、第一部位31Aは、挿通部2側の端部にX軸方向の一方側に凹むように切り欠かれた切欠き部311Aを有し、切り欠かれた部位は、挿通部2の貫通孔21Aと繋がっている。また、第二部位32AのZ軸方向の寸法は、足場板9の厚さ寸法と対応する大きさである。即ち、第一部位31Aと第三部位33AとのZ軸方向の間隔は、足場板9の厚さ寸法と対応する大きさである。
【0030】
また、本実施形態の第一固定具1Aでは、端部にピンpを有する管部材Pにおいて、このピンpを利用して第一固定具1Aの位置決めが行われるときに(図17参照)、管部材Pの長尺方向の端縁から第二部位32Aが突出した位置となるように、第一部位31AのX軸方向の寸法が設定されている。
【0031】
本実施形態の第一固定具1Aでは、係合部3Aの第二部位32AにおけるX軸方向の他方側を向いた面が第一規制面R1であり、係合部3Aの第三部位33AにおけるZ軸方向の他方側を向いた面が第二規制面R2である。また、第一規制面R1と第二規制面R2とに対向する領域が、足場板9の少なくとも一部が配置される配置領域(足場板配置領域)Ar1である。本実施形態の係合部3Aにおいて、配置領域Ar1は、第一部位31Aと第二部位32Aと第三部位33Aとのそれぞれと対向する領域である。
【0032】
尚、第一固定具1Aでは、係合部3Aは、貫通孔21Aに管部材Pが挿通された状態のときに、配置領域Ar1に対してX軸方向における第一規制面R1の側と反対側(図3における左側)が開放されるように(即ち、足場板9を配置領域Ar1に出し入れ可能に)構成されている。
【0033】
第二固定具1Bは、図4図6に示すように、貫通孔21Bを有する挿通部2Bと、足場板9と係合可能な係合部3Bと、を備える。この第二固定具1Bでは、第一固定具1Aと同様に、挿通部2Bと係合部3Bとが一体である。本実施形態の第二固定具1Bは、所定形状の板状部材(一つの板状部材)が折り曲げられることによって構成されている。
【0034】
挿通部2Bは、X軸方向と直交する方向に広がる板状の部位であり、X軸方向(厚さ方向)に貫通する貫通孔21Bを有する。この挿通部2Bでは、貫通孔21Bの形状以外は、第一固定具1Aの挿通部2Aと同じ構成である。
【0035】
貫通孔21Bは、X軸方向から見たときに、円形の孔本体領域211Bと、孔本体領域211Bの周縁における径方向の対向する位置のそれぞれから径方向外側に向けて突出する一対の凸領域212Bと、を有する。この孔本体領域211Bは、管部材Pが挿通される領域であり、管部材Pの外径φpと対応する大きさの内径φ2を有する。この内径φ2は、第一固定具1Aの挿通部2Aにおける貫通孔21Aの内径φ1と同じである。即ち、内径φ2は、管部材Pの外径φpより僅かに大きい。また、本実施形態の貫通孔21Bでは、一対の凸領域212Bは、孔本体領域211BのY軸方向の両端から外側に向けてそれぞれ突出している。
【0036】
係合部3Bは、Z軸方向における挿通部2Bの一方側の端部からZ軸方向の一方側に延びる第四部位31Bと、第四部位31Bの先端(挿通部2Bの側と反対側の端)からX軸方向の他方側(図6における左側)に延びる第五部位32Bと、を有する。
【0037】
係合部3Bにおいて、第四部位31Bは、Y軸方向及びZ軸方向に広がる板状の部位であり、第五部位32Bは、X軸方向及びY軸方向に広がる板状の部位である。より具体的に、これら第四部位31Bと第五部位32Bとは、それぞれY軸方向に長い矩形板状であり、本実施形態の係合部3Bでは、第四部位31BのY軸方向の寸法と、第五部位32BのY軸方向の寸法とが、同じである。また、第四及び第五部位31B、32BのY軸方向の寸法は、挿通部2Bにおける貫通孔21B(詳しくは、孔本体領域211B)の中心CよりZ軸方向の一方側(図5における上側)の部位のY軸方向の寸法と同じである。
【0038】
第四部位31BのZ軸方向の寸法は、足場板9の厚さ寸法と対応する大きさである。ここで、本実施形態の第二固定具1Bにおける第四部位31Bと挿通部2Bとの境界位置は、Z軸方向における孔本体領域211Bの一方側の端縁位置である(図5参照)。また、第四部位31Bは、中央に貫通孔311Bを有る。この貫通孔311Bは、釘が挿通される孔であり、その内径は、孔本体領域211Bの内径φ2より小さい。
【0039】
本実施形態の第二固定具1Bでは、係合部3Bの第四部位31BにおけるX軸方向の他方側を向いた面が第一規制面R1であり、係合部3Bの第五部位32BにおけるZ軸方向の他方側を向いた面が第二規制面R2である。また、第一規制面R1と第二規制面R2とに対向する領域が、足場板9の少なくとも一部が配置される配置領域(足場板配置領域)Ar2である。本実施形態の係合部3Bにおいて、配置領域Ar2は、第四部位31Bと第五部位32Bと挿通部2Bの貫通孔21Bに挿通された管部材P(図6における仮想線参照)とのそれぞれと対向する領域である。
【0040】
尚、第二固定具1Bでは、係合部3Bは、貫通孔21Bに管部材Pが挿通された状態のときに、配置領域Ar2に対してX軸方向における第一規制面R1の側と反対側(図6における左側)が開放されるように(即ち、足場板9を配置領域Ar2に出し入れ可能に)構成されている。
【0041】
第三固定具1Cは、図7図9に示すように、貫通孔21Cを有する挿通部2Cと、足場板9と係合可能な係合部3Cと、を備える。この第三固定具1Cでは、第一及び第二固定具1A、1Bと同様、挿通部2Cと係合部3Cとが一体である。本実施形態の第三固定具1Cは、所定形状の板状部材(一つの板状部材)が折り曲げられることによって構成されている。
【0042】
挿通部2Cは、X軸方向と直交する方向に広がる板状の部位であり、X軸方向(厚さ方向)に貫通する貫通孔21Cを有する。この挿通部2Cは、第二固定具1Bの挿通部2Bと同じ構成である。即ち、挿通部2Cの貫通孔21Cは、X軸方向から見たときに、円形の孔本体領域211Cと、孔本体領域211Cの周縁における径方向の対向する位置のそれぞれから径方向外側に向けて突出する一対の凸領域212Cと、を有する。孔本体領域211Cの内径φ3は、第一固定具1Aの挿通部2Aにおける貫通孔21Aの内径φ1及び第二固定具1Bの挿通部2Bにおける貫通孔21Bの孔本体領域211Bの内径φ2のそれぞれと同じである。
【0043】
係合部3Cは、Z軸方向における挿通部2Cの一方側の端部からZ軸方向の一方側に延びる第六部位31Cと、第六部位31Cの先端(挿通部2Cの側と反対側の端)からX軸方向の他方側(図9における左側)に延びる第七部位32Cと、第六部位31Cの先端からX軸方向の一方側(図9における右側)に延びる第八部位33Cと、を有する。
【0044】
係合部3Cにおいて、第六部位31Cは、Y軸方向及びZ軸方向に広がる板状の部位であり、第七部位32C及び第八部位33Cは、それぞれX軸方向及びY軸方向に広がる板状の部位である。より具体的に、第六部位31Cは、Y軸方向に長い矩形板状であり、第七部位32Cと第八部位33Cとは、略正方形の板状である。本実施形態の係合部3Cでは、第二固定具1Bと同様に、第六部位31CのY軸方向の寸法は、挿通部2Cにおける貫通孔21C(詳しくは、孔本体領域211C)の中心CよりZ軸方向の一方側の部位のY軸方向の寸法と同じである。また、第六部位31CのZ軸方向の寸法は、足場板9の厚さ寸法と対応する大きさである。ここで、本実施形態の第三固定具1Cにおける第六部位31Cと挿通部2Cとの境界位置は、Z軸方向における孔本体領域211Cの一方側の端縁位置である(図8参照)。
【0045】
また、第七部位32CのY軸方向の寸法と第八部位33CのY軸方向の寸法とは、同じであり、第六部位31CのY軸方向の寸法の半分又は略半分である。
【0046】
本実施形態の第三固定具1Cでは、係合部3Cの第六部位31CにおけるX軸方向の一方側を向いた面と他方側を向いた面とのそれぞれが第一規制面R1であり、係合部3Cの第七部位32Cと第八部位33CとにおけるZ軸方向の他方側を向いた面のそれぞれが第二規制面R2である。また、第一規制面R1と第二規制面R2とに対向する領域が、足場板9の少なくとも一部が配置される配置領域(足場板配置領域)Ar3である。本実施形態の係合部3Cにおいて、配置領域Ar3は、第六部位31Cと第七部位32Cと挿通部2Bの貫通孔21Bに挿通された管部材P(図9における仮想線参照)とのそれぞれと対向する領域と、第六部位31Cと第八部位33Cと挿通部2Bの貫通孔21Bに挿通された管部材P(図9における仮想線参照)とのそれぞれと対向する領域と、である。
【0047】
尚、第三固定具1Cでは、係合部3Cは、貫通孔21Cに管部材Pが挿通された状態のときに、各配置領域Ar3に対してX軸方向における対応する第一規制面R1の側と反対側(第七部位32Cと対応する配置領域Ar3では図9における左側であり、第八部位33Cと対応する配置領域Ar3では図9における右側)がそれぞれ開放されるように(即ち、足場板9を各配置領域Ar3に出し入れ可能に)構成されている。
【0048】
第四固定具1Dは、図10図12に示すように、貫通孔21Dを有する挿通部2Dと、足場板9と係合可能な係合部3Dと、を備える。また、第四固定具1Dは、貫通孔21Dに挿通された状態の管部材Pに対して挿通部2Dを固定可能な固定部4も備える。この第四固定具1Dでは、挿通部2Dと係合部3Dと固定部4の一部41とが一体である。本実施形態の第四固定具1Dにおける挿通部2Dと係合部3Dと固定部4の一部41とは、所定形状の板状部材(一つの板状部材)が折り曲げられることによって構成されている。
【0049】
挿通部2Dは、X軸方向と直交する方向に広がる板状の部位であり、X軸方向(厚さ方向)に貫通する貫通孔21Dを有する。この挿通部2Dは、第二固定具1B及び第三固定具1Cの各挿通部2B、2Cと同じ構成である。即ち、挿通部2Dの貫通孔21Dは、X軸方向から見たときに、円形の孔本体領域211Dと、孔本体領域211Dの周縁における径方向の対向する位置のそれぞれから径方向外側に向けて突出する一対の凸領域212Dと、を有する。孔本体領域211Dの内径φ4は、第一固定具1Aの挿通部2Aにおける貫通孔21Aの内径φ1、第二固定具1Bの挿通部2Bにおける貫通孔21Bの孔本体領域211Bの内径φ2、及び第三固定具1Cの挿通部2Cにおける貫通孔21Cの孔本体領域211Cの内径φ3のそれぞれと同じである。
【0050】
係合部3Dは、第二固定具1Bの係合部3Bと同じ構成である。即ち、係合部3Dは、Z軸方向における挿通部2Dの一方側の端部からZ軸方向の一方側に延びる矩形板状の第九部位31Dと、第九部位31Dの先端からX軸方向の他方側(図12における左側)に延びる矩形板状の第十部位32Dと、を有する。この係合部3Dにおいても、第九部位31DのZ軸方向の寸法は、足場板9の厚さ寸法と対応する大きさである。ここで、本実施形態の第四固定具1Dにおける第九部位31Dと挿通部2Dとの境界位置は、Z軸方向における孔本体領域211Dの一方側の端縁位置である(図11参照)。
【0051】
固定部4は、挿通部2Dに接続される基部40と、基部40から進退可能な進退部材45と、を有する。
【0052】
基部40は、挿通部2Dから延びる延設部41と、延設部41に固定され且つ進退部材45を進退可能に保持する保持部42と、を有する。
【0053】
延設部41は、Z軸方向における挿通部2Dの他方側の端部からX軸方向の他方側に延びる部位である。この延設部41は、X軸方向及びY軸方向に広がり、Y軸方向において孔本体領域211Dの中心Cと対応する位置にZ軸方向に貫通する貫通孔411を有する。本実施形態の延設部41は、矩形板状であり、中央部に貫通孔411を有する。
【0054】
保持部42は、進退部材45を進退可能に保持する。この保持部42は、Z軸方向から見て延設部41の貫通孔411と重なる位置に配置されている。本実施形態の保持部42は、ナットであり、延設部41のZ軸方向における他方側の面に配置されている。
【0055】
進退部材45は、保持部42に保持された状態でZ軸方向に進退できる。本実施形態の進退部材45は、ボルトであり、ヘッドが保持部42に対してZ軸方向の他方側に位置するように保持部42と螺合している。この進退部材45が基部40に対して貫通孔21D側(Z軸方向の一方側)に進出することで、進退部材45の先端が貫通孔21Dを挿通する管部材Pの周面に当接する。この当接において進退部材45の先端が管部材Pの周面に対して十分な力で押し付けられることで、挿通部2Dが管部材Pに対して固定される。
【0056】
本実施形態の第四固定具1Dでは、係合部3Dの第九部位31DにおけるX軸方向の他方側を向いた面が第一規制面R1であり、係合部3Dの第十部位32DにおけるZ軸方向の他方側を向いた面が第二規制面R2である。また、第一規制面R1と第二規制面R2とに対向する領域が、足場板9の少なくとも一部が配置される配置領域(足場板配置領域)Ar4である。本実施形態の係合部3Dにおいて、配置領域Ar4は、第九部位31Dと第十部位32Dと挿通部2Dの貫通孔21Dに挿通された管部材P(図12における仮想線参照)とのそれぞれと対向する領域である。
【0057】
尚、第四固定具1Dでは、係合部3Dは、貫通孔21Aに管部材Pが挿通された状態のときに、配置領域Ar4に対してX軸方向における第一規制面R1の側と反対側(図12における左側)が開放されるように(即ち、足場板9を配置領域Ar4に出し入れ可能に)構成されている。
【0058】
次に、上述の各固定具1(第一固定具1A、第二固定具1B、第三固定具1C、第四固定具1D)を用いた足場板9の固定について、建築現場の足場等において資材等を昇降させる搬器のステージSを例に、図13図17も参照しつつ説明する。
【0059】
先ず、ステージSの骨組みが組み立てられる(図13参照)。このステージSの骨組みでは、水平方向に延びる二つの梁枠Bが互いに平行になるように配置され、これら二つの梁枠Bに架け渡されるように、複数の根太単管(管部材)Pが配置される。これら複数の根太単管Pは、隣り合う根太単管P同士が互いに平行となるように、それぞれ配置される。そして、これら複数の根太単管Pのうち、所定の根太単管Pにそれぞれ複数の固定具1が配置される。尚、全ての根太単管Pに複数の固定具1が配置されてもよい。
【0060】
本実施形態のステージSでは、二つの梁枠Bに対して九つの根太単管Pが架け渡され、これら九つの梁枠Bのうち、両端位置の二つの根太単管Pと、中央位置の一つの根太単管Pとに、複数の固定具1がそれぞれ配置される(図13参照)。尚、以下では、複数の固定具1が配置された根太単管Pを「固定用単管P1」と称することもある。
【0061】
ここで、各根太単管Pは、1600mm程度の管部材であり、一方の端部にピンpを有する(図14及び図15参照)。そして、ピンp側の端部が搬器の配置される側(図13における上側)に向くように、各根太単管Pがクランプ等によって梁枠Bに固定される。根太単管Pの一方の端部に配置されるピンpは、根太単管P同士を連結するためのジョイントと係合する部位(部材)である。このピンpは、根太単管Pを径方向に貫通し、両端部が根太単管Pの外周面から突出している(図15参照)。
【0062】
また、各固定用単管P1では、ピンp側の端部から反対側の端部に向けて順に、一つの第一固定具1Aと、二つの第二固定具1Bと、複数の第三固定具1Cと、一つの第四固定具1Dと、が配置されている(図13及び図14参照)。これら各固定具1A~1Dは、固定用単管P1が梁枠Bに固定される前に各固定具1A~1Dの貫通孔21A~21Dに固定用単管P1を挿通させることで、該固定用単管P1に配置される。
【0063】
このとき、二つの第二固定具1Bは、係合部3Bの第五部位32Bの延びる方向が互いに反対向き(離れる向き)となるように配置されている。即ち、二つの第二固定具1Bは、第四部位31Bの第一規制面R1と反対側の面が互いに対向する向きとなるように配置されている。また、各第三固定具1Cでは、第七部位32Cがピンp側を向くように、挿通部2Cの貫通孔21Cに固定用単管P1が挿通される。尚、固定用単管P1に配置されたときの各第三固定具1C向きは、異なっていてもよい。
【0064】
次に、複数の足場板9が、第一固定具1A側から第四固定具1D側に向けて各根太単管P上に順に配置される。このとき、足場板9が裏面93を各根太単管Pに当接させた状態で各固定用単管P1において隣り合う固定具1A~1D間に位置するように配置される(図16参照)。尚、各固定具1A~1Dの貫通孔21A~21Dの各内径φ1~φ4は、固定用単管P1の外径φpよりそれぞれ大きいため、固定具1A~1D間に足場板9を配置するときには、隣り合う固定具1A~1Dの間隔が足場板9を挿入可能な間隔になるまで一方又は双方の固定具1A~1Dの位置を固定用単管P1に沿ってずらすことができる。
【0065】
具体的には、先ず、第一固定具1Aと第二固定具1Bとによって足場板9が各固定用単管P1に固定される。詳しくは、以下の通りである。
【0066】
足場板9の一方の側面(図16における右側の側面)91aが係合部3Aの第二部位32Aの第一規制面R1に当接するまで、各固定用単管P1に配置された第一固定具1Aの係合部3Aの配置領域Ar1に足場板9がそれぞれ差し込まれる。このとき、足場板9に押されて各第一固定具1Aが固定用単管P1に対して搬器側(図16における右側)に移動しようとするが、固定用単管P1の一方の端部において外周面から突出するピンpの両端部が挿通部2Aの貫通孔周縁部(貫通孔21Aを画定する部位)に引っかかるため、第一固定具1Aの搬器側への移動が阻止される。
【0067】
続いて、足場板9が第一固定具1Aの係合部3Aの配置領域Ar1に差し込まれた状態(係合部3Aと係合した状態)で、二つの第二固定具1Bのうちの第一固定具1A側の第二固定具1B(以下、単に「一方の第二固定具1B」とも称する。)が、係合部3Bの配置領域Ar2内に足場板9が位置する、より詳しくは、係合部3Bの第四部位31Bの第一規制面R1に足場板9の他方の側面(図16における左側の側面)91bが当接するまで、一方の第二固定具1Bが固定用単管P1に沿って第一固定具1A側に移動させられる。
【0068】
これにより、第一固定具1Aの係合部3A(詳しくは、第二部位32Aの第一規制面R1)と、第二固定具1Bの係合部3B(詳しくは、第四部位31Bの第一規制面R1)との間において、足場板9が各固定用単管P1に対して固定される。
【0069】
このとき、第一固定具1Aの係合部3Aの第二部位32A(第一規制面R1)が固定用単管P1の長尺方向の端縁より突出した位置となっているため、第二部位32Aの第一規制面R1に一方の側面91aを当接させている足場板9の幅方向の一部も、各根太単管Pの長尺方向の端縁より突出している(図17参照)。
【0070】
これにより、搬器とステージSとの隙間αを抑えることができる。しかも、搬器の昇降時において設置誤差や揺れ等によって搬器の一部が昇降領域Ar10を僅かに超えたとき、又は、搬器に積載した資材等が昇降領域Ar10を僅かに超えたときに、該搬器や該資材等がステージSと接触しても、根太単管から突出している足場板9と接触するだけで、ステージSを構成する根太単管Pに接触しない。これにより、前記接触した足場板9は損傷するが、前記接触に起因するステージS全体の損壊を防ぐことができる。
【0071】
次に、二つの第二固定具1Bによって桟木Wが各固定用単管P1に固定される。詳しくは、以下の通りである。
【0072】
一方の第二固定具1Bの第四部位31Bにおける第一規制面R1と反対側の面に当接するように、桟木Wが各根太単管P上に配置される。続いて、二つの第二固定具1Bのうちの第三固定具1C側の第二固定具1B(以下、単に「他方の第二固定具1B」とも称する。)が、第四部位31Bにおける第一規制面R1と反対側の面に桟木Wが当接するまで、固定用単管P1に沿って第一固定具1A側に移動させられる。そして、二つの第二固定具1Bによって桟木Wが挟み込まれた状態で、他方の第二固定具1Bの係合部3B(第四部位31B)における貫通孔311Bを通じて釘が桟木Wに打ち込まれる。これにより、ステージSからの桟木Wの上方への抜けが防がれる。
【0073】
この桟木Wの上下方向の寸法は、足場板9の厚さより大きい。即ち、各根太単管P上に配置された状態で足場板9より桟木Wが上方に突出している。これにより、ステージS上で物が転がったときに該物がステージS上から搬器側に落下するのを防ぐことができる。
【0074】
次に、第二固定具1Bと第三固定具1Cとによって足場板9が各固定用単管P1に固定される。詳しくは、以下の通りである。
【0075】
足場板9の一方の側面91aが係合部3Bの第四部位31Bの第一規制面R1に当接するまで、各固定用単管P1に配置された他方の第二固定具1Bの係合部3Bの配置領域Ar2に足場板9がそれぞれ差し込まれる。
【0076】
続いて、足場板9が他方の第二固定具1Bの係合部3Bの配置領域Ar2に差し込まれた状態(係合部3Bと係合した状態)で、第三固定具1Cが、係合部3Cの配置領域Ar3内に足場板9が位置する、より詳しくは、係合部3Cの第六部位31Cの第二固定具1B側の第一規制面R1(以下、単に「一方の規制面R1」とも称する。)に足場板9の他方の側面91bが当接するまで、第三固定具1Cが固定用単管P1に沿って第二固定具1B側に移動させられる。
【0077】
これにより、第二固定具1Bの係合部3B(詳しくは、第四部位31Bの第一規制面R1)と、第三固定具1Cの係合部3C(詳しくは、第六部位31Cの一方の第一規制面R1)との間において、足場板9が各固定用単管P1に対して固定される。
【0078】
次に、X軸方向において隣り合う二つの第三固定具1Cによって足場板9が各固定用単管P1に固定される。詳しくは、以下の通りである。
【0079】
足場板9の一方の側面91aが係合部3Cの第六部位31Cの第四固定具1D側の第一規制面R1(以下、単に「他方の規制面R1」とも称する。)に当接するまで、各固定用単管P1に配置された一方の第三固定具(前記隣り合う二つの第三固定具1Cのうちの第二固定具1B側の第三固定具)1Cの係合部3Cの配置領域Ar3に足場板9がそれぞれ差し込まれる。
【0080】
続いて、足場板9が一方の第三固定具1Cの係合部3Cの第八部位33C側の配置領域Ar3に差し込まれた状態(係合部3Cと係合した状態)で、他方の第三固定具(前記隣り合う二つの第三固定具1Cのうちの第四固定具1D側の第三固定具)1Cが、係合部3Cの第七部位32C側の配置領域Ar3内に足場板9が位置する、より詳しくは、係合部3Cの第六部位31Cの一方の規制面R1に足場板9の他方の側面91bが当接するまで、他方の第三固定具1Cが固定用単管P1に沿って第二固定具1B側に移動させられる。
【0081】
これにより、隣り合う二つの第三固定具1Cの係合部3C(詳しくは、第六部位31Cの第一規制面R1)間において、足場板9が各固定用単管P1に対して固定される。
【0082】
この隣り合う二つの第三固定具1Cの係合部3C間に配置することによる足場板9の固定が、最も第二固定具1B側において隣り合う二つの第三固定具1Cの係合部3C間から、第四固定具1D側へ順に行われる。
【0083】
次に、第三固定具1Cと第四固定具1Dとによって足場板9が各固定用単管P1に固定される。詳しくは、以下の通りである。
【0084】
足場板9の一方の側面91aが係合部3Cの第六部位31Cの他方の規制面R1に当接するまで、各固定用単管P1に配置された第三固定具1Cの係合部3Cの配置領域Ar3に足場板9がそれぞれ差し込まれる。
【0085】
続いて、足場板9が第三固定具1Cの係合部3Cの配置領域Ar3に差し込まれた状態(係合部3Cと係合した状態)で、第四固定具1Dが、係合部3Dの配置領域Ar4内に足場板9が位置する、より詳しくは、係合部3Dの第九部位31Dの第一規制面R1に足場板9の他方の側面91bが当接するまで、第四固定具1Dが固定用単管P1に沿って第三固定具1C側に移動させられる。
【0086】
これにより、第三固定具1Cの係合部3C(詳しくは、第六部位31Cの他方の第一規制面R1)と、第四固定具1Dの係合部3D(詳しくは、第九部位31Dの第一規制面R1)との間において、足場板9が各固定用単管P1に対して固定される。
【0087】
そして、この状態で第四固定具1Dの固定部4の進退部材(本実施形態の例では、ボルト)45を基部40から固定用単管P1に向けて進出させ、該進退部材45の先端を挿通部2Dの貫通孔21Dを挿通している固定用単管P1に押し付けることで、第四固定具1Dが該固定用単管P1に対して固定される。これにより、各固定具1A、1B、1C、1D、及び各固定具1A、1B、1C、1D間に配置された足場板9の固定用単管P1に沿った方向の位置が固定され、ステージSが完成する。
【0088】
以上の固定具1(第一~第四固定具1A~1D)は、所定方向に延びる管部材Pに対して足場板9を固定する固定具1であって、管部材Pが挿通される貫通孔21を有する挿通部2と、挿通部2に接続され且つ足場板9と係合可能な係合部3と、を備える。そして、係合部3は、足場板9の一方の面(裏面)93を管部材P(本実施形態の例では、固定用単管P1)に当接させた状態で該足場板9を管部材Pに対して固定したときにX軸方向(貫通孔21の貫通方向)における足場板9の一方の側面91と対向する第一規制面R1と、足場板9の一方の面93を管部材Pに当接させた状態で該足場板9を管部材Pに対して固定したときに足場板9の他方の面(表面)92と対向する第二規制面R2と、を有すると共に、第二規制面R2と管部材Pとの間に形成され且つ第一規制面R1及び第二規制面R2のそれぞれと対向する配置領域(足場板配置領域)Ar1~Ar4に対してX軸方向における第一規制面R1の側と反対側が開放されるように構成されている。
【0089】
このため、挿通部2の貫通孔21に管部材Pを挿通させ且つ裏面(一方の面)93を管部材Pに当接させた状態の足場板9と係合部3とを係合させることで、足場板9を管部材Pに対して容易に固定することができる。
【0090】
具体的には、貫通孔21に管部材Pが挿通された状態の固定具1に対し、係合部3の前記開放されている側から足場板9を配置領域Ar1~Ar4に差し込むと共に該足場板9の裏面(一方の面)93を管部材Pに当接させるといった簡単な作業によって、係合部3の第一規制面R1及び第二規制面R2によって足場板9のX軸方向における第一規制面R1の側への移動、及び、足場板9が管部材Pから離間する方向(Z軸方向の一方側)への移動を規制することができる。
【0091】
又は、裏面(一方の面)93を管部材Pに当接させた状態の足場板9に対し、該足場板9が配置領域Ar1~Ar4に位置するまで(即ち、係合部3の第一規制面R1が足場板9の一方の側面91と当接するまで)管部材Pが貫通孔21に挿通された状態の固定具1を該管部材Pに沿って移動させるといった簡単な作業によって、係合部3の第一規制面R1及び第二規制面R2によって足場板9のX軸方向における第一規制面R1の側への移動、及び、足場板9が管部材Pから離間する方向への移動を規制することができる。
【0092】
本実施形態の固定具1において、挿通部2と係合部3とは、一つの板状部材によって構成されている。この構成によれば、固定具1の構成の簡素化を図ることができる。
【0093】
また、本実施形態の第四固定具1Dは、貫通孔21Dに挿通された状態の管部材Pに対して挿通部2Dを固定可能な固定部4を備えている。これにより、管部材Pに沿った第四固定具1Dの移動が固定部4によって防がれるため、足場板9を管部材Pに対してより確実に固定することができる。
【0094】
また、本実施形態の第二~第四固定具1B~1Dにおいて、挿通部2B~2Dの貫通孔21B~21Dは、X軸方向から見たときに、円形の孔本体領域211B~211Dと、孔本体領域211B~211Dの周縁における径方向の対向する位置のそれぞれから径方向外側に向けて突出する一対の凸領域212B~212Dと、を有している。
【0095】
かかる構成によれば、管部材P同士を連結するときに用いられるピンpを端部に備えた管部材P(図15参照)のように、管部材Pの外周面において径方向の対向する位置からそれぞれ突出する部位を有する管部材Pであっても、該突出する部位のそれぞれを貫通孔21B~21Dの一対の凸領域212B~212Dの位置に合わせて管部材Pを挿通部2B~2Dの貫通孔21B~21Dに挿入することで、該貫通孔21B~21Dに対する管部材Pの挿通を行うことができる。
【0096】
尚、本発明の固定具は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。
【0097】
上記実施形態の固定具1では、第四固定具1Dのみが固定部4を備えているが、この構成に限定されない。第一~第三固定具1A~1Cのうちの少なくとも一つが、固定部4を備えていてもよい。また、第四固定具1Dは、固定部4を備えない構成であってもよい。
【0098】
また、上記実施形態の固定具1では、第一固定具1Aの貫通孔21Aは、凸領域を有していない円形の孔であるが、この構成に限定されない。第一固定具1Aの貫通孔21Aは、第二~第四固定具1B~1Dと同様に、孔本体領域と一対の凸領域とを有する構成であってもよい。また、第二~第四固定具の各貫通孔21B~21Dの少なくとも一つが、凸領域212B~212Dを有していない円形の孔であってもよい。
【0099】
また、固定部4の具体的な構成は限定されない。上記実施形態の第四固定具1Dの固定部4は、進退部材(ボルト)45の先端を管部材Pに押し付けることで挿通部2Dを管部材Pに対して固定する構成であるが、例えば、管部材Pを挟持する等の他の構成であってもよい。
【0100】
上記実施形態の固定具1では、第一規制面R1と第二規制面R2とは、連続しているがこの構成に限定されない。第一規制面R1と第二規制面R2とは、分離していてもよい。また、上記実施形態の固定具1では、第一規制面R1と第二規制面R2とがそれぞれY軸方向に長尺な矩形状の面であるが、この構成に限定されず、他の形状であってもよい。また、第一規制面R1と第二規制面R2とは、互いに異なる形状であってもよい。また、固定具1の係合部3において、一つの足場板9に対して複数の第一規制面R1や複数の第二規制面R2が配置されている構成であってもよい。
【0101】
また、上記実施形態の固定具1では、挿通部2と係合部3とが一つの板状の部材によって構成されているが、この構成に限定されない。固定具1において、挿通部2と係合部3とが別部材によって構成されていてもよく、少なくとも一方が板状でない部材によって構成されていてもよい。即ち、固定具1において、挿通部2が、X軸方向に貫通し且つ管部材Pを挿通可能な貫通孔21を有すると共に、係合部3が、第一規制面R1と第二規制面R2とを有し且つ足場板配置領域Ar1~Ar4の第一規制面R1の側と反対側が開放された構成であればよい。また、固定具1において、挿通部2と係合部3とは、他の部位又は部材を介して接続されていてもよい。
【0102】
また、桟木W等を固定するのに用いられる固定具1Eは、図18及び図19に示されるように、接続部5を介して二つの第二固定具1Bを接続したような構成であってもよい。この接続部5のX軸方向の寸法は、桟木WのX軸方向の寸法と対応する。具体的には、固定具1Eは、二つの挿通部2Eと、二つの係合部3Eと、少なくとも一つの接続部5と、を備える。そして、各挿通部2Eは、対応する位置に貫通孔21Eをそれぞれ有し、各係合部3Eは、挿通部2EのZ軸方向の一方側の端部からZ軸方向の一方側に延び且つ第一規制面R1を有する第十一部位31Eと、第十一部位31Eの先端からX軸方向に延び且つ第二規制面R2を有する第十二部位32Eと、をそれぞれ有する。また、二つの第十二部位32Eは、X軸方向において互いに離れる向きに延びている。尚、第十一部位31Eは、第二固定具1Bの第四部位31Bの貫通孔311Bと同様の釘を挿通可能な貫通孔を有していてもよい。
【0103】
また、ステージS等を組み立てるために固定用単管等の管部材Pに複数の固定具1が配置される場合において、一つの管部材Pに配置される第一~第四固定具1A~1Dの並び順や、第一~第四固定具1A~1Dのそれぞれの数は、限定されない。
【0104】
また、上記実施形態では、管部材Pに配置される複数の固定具1のうち、両端に配置されるのは、ピンpの突出を利用して管部材Pに対する位置の固定を行う第一固定具1Aと、固定部4によって管部材Pに対する位置の固定を行う第四固定具1Dであるが、この配置に限定されず、両方共に固定部4を有する固定具1Dであってもよい(図20参照)。
【0105】
また、上記実施形態の固定具1は、水平に配置された根太単管(管部材)Pの上に配置された足場板9を該根太単管Pに固定しているが、例えば、図20に示すように、上下方向に延びる管部材Pに対して足場板9を固定してもよい。この場合、足場板9の固定には、第四固定具1D等の固定部4を備えた固定具1が用いられる。
【符号の説明】
【0106】
1、1E…固定具、1A…第一固定具、1B…第二固定具、1C…第三固定具、1D…第四固定具、2、2A、2B、2C、2D、2E…挿通部、21、21A、21B、21C、21D、21E…貫通孔、211B、211C、211D…孔本体領域、212B、212C、212D…凸領域、22…端縁、3、3A、3B、3C、3D…係合部、31A…第一部位、311A…切欠き部、32A…第二部位、33A…第三部位、31B…第四部位、311B…貫通孔、32B…第五部位、31C…第六部位、32C…第七部位、33C…第八部位、31D…第九部位、32D…第十部位、31E…第十一部位、32E…第十二部位、4…固定部、40…基部、41…延設部、411…貫通孔、42…保持部、45…進退部材、9…足場板、91、91a、91b…側面、92…表面、93…裏面(一方の面)、Ar1、Ar2、Ar3、Ar4…配置領域(足場板配置領域)、Ar10…昇降領域、B…梁枠、C…中心、p…ピン、P…根太単管(管部材)、P1…固定用単管(管部材)、R1…第一規制面、R2…第二規制面、S…ステージ、W…桟木、α…隙間、φ1、φ2、φ3、φ4…内径、φp…外径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20