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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179228
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】温度制御ユニット
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/00 20060101AFI20231212BHJP
   F24H 1/16 20220101ALI20231212BHJP
   F24T 10/10 20180101ALI20231212BHJP
【FI】
H05B3/00 330Z
F24H1/16 A
F24T10/10
H05B3/00 310D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092407
(22)【出願日】2022-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】598019738
【氏名又は名称】鎌田 文彦
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 文彦
【テーマコード(参考)】
3K058
3L034
【Fターム(参考)】
3K058AA81
3K058BA01
3K058BA11
3K058CA22
3K058CB34
3L034BA14
3L034BA17
3L034BB05
(57)【要約】
【課題】液体の温度の低下を抑制し、省エネルギー化を図る。
【解決手段】温度制御ユニット3は、中空箱状に形成されて内部が密閉空間となり、地中に埋設されるタンク31と、タンク31内に収納され、中空箱状に形成されて内部が密閉空間となる内部室32と、内部室32の内部に第一液体を導入する液体導入部323Aと、内部室32の内部の第一液体を外部に導出する液体導出部323Bと、タンク31と内部室32との間に満たされた第二液体314と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空箱状に形成されて内部が密閉空間となり、地中に埋設されるタンクと、
前記タンク内に収納され、中空箱状に形成されて内部が密閉空間となる内部室と、
前記内部室の内部に第一液体を導入する液体導入部と、
前記内部室の内部の前記第一液体を外部に導出する液体導出部と、
前記タンクと前記内部室との間に満たされた第二液体と、を備える温度制御ユニット。
【請求項2】
前記内部室の内部に設けられ、前記液体導入部によって導入された前記第一液体を加熱する加熱装置を備える、
請求項1に記載の温度制御ユニット。
【請求項3】
前記加熱装置は長手状に形成され、
一端が前記液体導入部に接続され、他端が前記液体導出部に接続され、前記加熱装置の外周に螺旋状に配置され、内部に前記第一液体が流通する液体螺旋加熱部を備える、
請求項2に記載の温度制御ユニット。
【請求項4】
前記タンクの外面を覆う保温部がさらに設けられている、請求項1に記載の温度制御ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の温度を一定の温度に調節する温度制御ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気やガスを利用する加熱装置で加熱された温水により、室内などの温度を調節するシステムが知られている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載の温水暖房システムは、温水を生成する温水暖房熱源機と、温水暖房熱源機によって生成された温水を利用して暖房を行う温水暖房端末装置とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-46816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載のシステムでは、特に気温の低い時期においては、一旦システムの電源を切ってしまうと、循環する温水の温度が大きく低下する。そして、システムを利用するために、再度電源を投入する際、暖房に適した温度にまで温水の温度を上昇させるための消費電力が大きくなり、省エネルギーの点で好ましくないという課題があった。
【0005】
本発明の目的は、液体の温度の低下を抑制し、省エネルギー化を図ることができる温度制御ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の温度制御ユニットは、中空箱状に形成されて内部が密閉空間となり、地中に埋設されるタンクと、前記タンク内に収納され、中空箱状に形成されて内部が密閉空間となる内部室と、前記内部室の内部に第一液体を導入する液体導入部と、前記内部室の内部の前記第一液体を外部に導出する液体導出部と、前記タンクと前記内部室との間に満たされた第二液体と、を備える。
【0007】
上記温度制御ユニットにおいて、前記内部室の内部に設けられ、前記液体導入部によって導入された前記第一液体を加熱する加熱装置を備えることが好ましい。
【0008】
上記温度制御ユニットにおいて、前記加熱装置は長手状に形成され、一端が前記液体導入部に接続され、他端が前記液体導出部に接続され、前記加熱装置の外周に螺旋状に配置され、内部に前記第一液体が流通する液体螺旋加熱部を備えることが好ましい。
【0009】
上記温度制御ユニットにおいて、前記タンクの外面を覆う保温部がさらに設けられていることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る温度調節システムの概略構成を示す模式図。
図2】本実施形態に係るロードヒーターの平面図。
図3】本実施形態に係る温度制御ユニットの概略構成を模式的に示す断面図。
図4】本実施形態の温度制御ユニットの内部室を流れる第一液体の温度を示す図。
図5】変形例2に係る温度調節システムの概略構成を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態に係る温度調節システムの構成について説明する。本発明の温度調節システム1は、省エネルギー化を図りながら、例えばロードヒーターなどの温度調節装置を使用して空間の温度を調節するシステムである。温度調節システム1の熱媒体は液体であり、例えば水や不凍液である。
【0012】
[温度調節システムの全体構成]
図1は、本実施形態の温度調節システム1の全体構成を示す概略図である。
図1に示すように、本実施形態の温度調節システム1は、加熱された液体(本開示の第一液体)の熱により周囲の温度を調節するロードヒーター2と、ロードヒーター2に供給する液体の温度を一定温度に制御する温度制御ユニット3と、温度制御ユニット3及びロードヒーター2の間で液体を循環させる液体循環装置4と、温度調節システム1をコントロールするコントローラ5と、を備えている。
【0013】
[ロードヒーター2の構成]
まず、本実施形態の温度調節装置であるロードヒーター2について説明する。
図2は、ロードヒーター2の概略構成を示す模式図である。
ここで述べる温度調節装置は、温度制御ユニット3により温度が制御された第一液体を利用して対象物の温度を制御する装置である。本実施形態では、温度調節装置としてロードヒーター2を例示するが、これに限定されるものではなく、例えば居室空間の室内温度を調節する空調装置等であってもよい。
本実施形態において、ロードヒーター2は、温度制御ユニット3により温度が制御されて加熱された温かい不凍液などの液体を利用して雪を溶かす装置である。本実施形態のロードヒーター2は、持ち運び時に折り畳み可能な折り畳み式のロードヒーターである。
図2に示すように、ロードヒーター2は、互いに重ねることができる第一ロードヒーター片11および第二ロードヒーター片12を有している。
第一ロードヒーター片11は、板状の第一本体部13と、第一本体部13の内部を蛇行する第一パイプ14と、を有している。第一本体部13は、例えば硬質のプラスチックや金属によって形成されている。
【0014】
第一本体部13は、例えば、長さ180cm、幅90cmとすることができる。第一本体部13は、持ち運びに適した大きさとすることが好ましく、一辺の長さは、50cm以上220cm以下とすることが好ましい。
また、第一本体部13の角部には、面取り部15が設けられている。面取り部15は、第一本体部13の長辺と短辺との間の角を切り落とすように形成されている。面取り部15の形状は、図示したような角面取りに限らず、丸面取りとしてもよい。
【0015】
第一パイプ14は、架橋ポリエチレン管である。本実施形態の第一パイプ14の太さは100mmであるが、第一本体部13の大きさ、内部を流れる液体の種類などに応じて適宜変更することができる。第一パイプ14は、架橋ポリエチレン管に限らず、柔軟性があり、耐食性、耐衝撃性などに優れるパイプであれば他のパイプも採用可能である。
第一パイプ14は、第一本体部13の内部を蛇行しているが、隣り合う第一パイプ14同士の間隔G1は、150mm以上300mm以下とすることが好ましい。間隔G1は、第一パイプ14の太さなどに応じて、最も効率がよくなるように適宜調整することができる。
【0016】
第二ロードヒーター片12は、第一ロードヒーター片11と同様の構造である。すなわち、第二ロードヒーター片12は、第一本体部13と略同形状をなす第二本体部17と、第二本体部17の内部を蛇行する第二パイプ18と、を有し、第二本体部17には面取り部19が設けられている。
【0017】
第一パイプ14と第二パイプ18とは接続パイプ20を介して接続されている。すなわち、第一パイプ14を流れる液体は、接続パイプ20を介して第二パイプ18に流入する。
第一ロードヒーター片11と第二ロードヒーター片12とは、ヒンジ21によって接続されている。第一ロードヒーター片11と第二ロードヒーター片12とがヒンジ21によって接続されていることによって、持ち運び時などに、接続パイプ20に過度な負荷がかかることを防止する事ができる。
【0018】
第一パイプ14および第二パイプ18の、接続パイプ20とは反対側の端部には、コネクタ22が接続されている。コネクタ22には、後述する液体送り配管41と液体戻し配管42が接続される。
【0019】
本実施形態のロードヒーター2は折り畳み式であるため、アスファルトの通路、タイル仕上げの通路など、所望の通路に持ち運んで設置することができる。
また、本実施形態のロードヒーター2の本体部13,17には、面取り部15,19が設けられているため、角部に人が躓くことがない。
なお、上記実施形態では、ロードヒーター2は、2分割としたが、これに限ることはなく、例えば、ロードヒーター片の数は3以上でもよい。また、本実施形態では、ロードヒーターとして折り畳み式のものを採用しているが、本発明の温度調節システムには、通常の埋め込み式のロードヒーターも採用が可能である。
さらに、温度調節装置として、ロードヒーター2を例示しているが、これに限定されるものではなく、温度制御ユニット3から導入される液体を用いて対象物の温度を調節するいかなるものであってもよい。例えば、家屋やビニールハウス等の建物内の室温を調整するための冷暖房装置であってもよい。
【0020】
[温度制御ユニット3の構成]
次に、ロードヒーター2で使用される液体を一定の温度範囲に維持するための温度制御ユニット3について説明する。
この温度制御ユニット3は、例えば地表から所定の深さ位置(例えば2~3mの位置)に埋設して設けられている。例えば、図1に示すように、温度調節システム1は、温度制御ユニット3を設置するための設置室61を備える。この設置室61は、例えば、コンクリート等により形成でき、少なくとも一部が地中に埋設される。
設置室61の底部には、温度制御ユニット3が設けられ、当該温度制御ユニット3は、設置室61の底部よりも深く地中に埋設されている。
また、設置室61の側方には、ロードヒーター2と温度制御ユニット3との間で液体を循環させる液体循環装置4が設けられている。図1に示す例では、液体循環装置4が設置室61の側方に設けられる例を示すが、これに限定されない。例えば、設置室61の外部に設けられていてもよく、温度制御ユニット3に一体的に設けられていてもよい。
【0021】
図3は、温度制御ユニット3の概略構成を示す断面図である。
温度制御ユニット3は、図3に示すように、タンク31と、タンク31内に収納される内部室32と、内部室32内に配置される加熱装置33と、を備えている。また、上述したように、温度制御ユニット3に、液体循環装置4を一体的に設ける構成としてもよい。
【0022】
タンク31は、中空箱状に形成されて内部が密閉空間となり、上述したように、設置室61の底部から地中内に埋設させることで、例えば地表から2~3m以内の深さで地中に配置される。
具体的には、本実施形態のタンク31は、中心軸が鉛直方向に沿う有底筒状に形成されており、鉛直上端部が開放されるタンク本体311を備える。本実施形態では、タンク本体311は、内径が例えば300mmに形成される。タンク本体311は、例えばコンクリートまたは樹脂等により形成することができる。
タンク本体311の鉛直上端部には、タンク蓋部312が設けられており、当該タンク蓋部312はタンク本体311に接続されている。このタンク蓋部312には、タンク31の中心軸を中心とした開口313が設けられ、当該開口313には、後述する内部室32が挿通されている。
【0023】
また、タンク31に内部には、第二液体314が導入されて満たされている。この第二液体314は、水や不凍液などを用いることができ、タンク31の内壁と、内部室32の外壁との間に充填されている。この第二液体314は、使用時に外部に流出されるものではなく、常時、タンク31内に充填される。なお、タンク蓋部312に、第二液体314を導入または導出するための第二液体導入口が別途設けられてもよく、この場合、第二液体314を交換することも可能である。
【0024】
さらに、タンク31の外周には、例えば発泡材等の断熱材により構成された保温部315が配置されている。保温部315は、タンク本体311の円筒外周面に沿って地中との間に設けられていてもよく、さらに、タンク本体311の底部と地中との間に設けられていてもよい。保温部315の厚みとしては特に限定されないが、保温効果を向上させるために、6cm以上の厚みとすることが好ましい。
【0025】
内部室32は、中空箱状に形成されて内部が密閉空間となり、タンク31の内部に収納される。具体的には、内部室32は、タンク蓋部312の開口313からタンク本体311の内部に挿通される鋼管321と、鋼管321の上端に接続される第二蓋部322と、第二蓋部322の上部に設けられるコネクタ部323と、を備える。
ここで、本実施形態では、第二蓋部322が、タンク蓋部312に接合されることで、タンク蓋部312の開口313が閉塞され、タンク31の内部が密閉される。タンク蓋部312への第二蓋部322の接合方法としては特に限定されず、例えば、ねじ等の締結部材により第二蓋部322をタンク蓋部312に固定する構成等が例示できる。また、タンク蓋部312と第二蓋部322との間には、適宜パッキン等の封止部材を配置してもよい。
【0026】
鋼管321は、例えば、有底筒状に形成され、上端部が第二蓋部322によって閉塞されることで、内部が密閉される。例えば、鋼管321の水平方向の幅寸法は、タンク本体311の水平方向の幅寸法よりも小さく、上述のように、開口313からタンク31の内部に挿通可能な寸法となる。例えば、本実施形態では、タンク本体311及び鋼管321は、有底円筒状に形成されており、タンク本体311の筒内周径が300.0mmであり、鋼管321の筒外周径が約114.3mmである。また、タンク31内に鋼管321が挿通された状態で、鋼管321の外周面の底部と、タンク本体311の内周面の底部との間には、所定寸法の隙間が設けられている。
上述のようにタンク31の内部には、第二液体314が満たされている。つまり、鋼管321は、タンク31内で第二液体314に浸漬される構成となる。
【0027】
また、鋼管321の内部には、加熱装置33が設けられている。加熱装置33の構成としては特に限定されないが、例えば、第二蓋部322の下面から鋼管321の内部に挿通され、鋼管321の円筒中心軸に沿って長手となるシーズヒーター等を例示できる。
具体的には、第二蓋部322には、加熱装置33を装着可能な装着孔が第二蓋部322を貫通するように設けられており、当該装着孔にシーズヒーター等の加熱装置33が螺合等されて固定される。また、加熱装置33のヒーター端子331は、コネクタ部323から露出しており、当該ヒーター端子331はコントローラ5に接続される。これにより、コントローラ5から供給される電力によって、加熱装置33が駆動される。
【0028】
また、コネクタ部323には、液体導入部323A、及び液体導出部323Bが設けられている。これらの液体導入部323A及び液体導出部323Bは、それぞれ、コネクタ部323から鋼管321内部に接続されており、鋼管321の内部において、加熱装置33の外周面に沿って螺旋状に配置される螺旋状のパイプである液体螺旋加熱部332に接続されている。つまり、鋼管321内に配置される液体螺旋加熱部332の一端は、液体導入部323Aに接続され、他端は液体導出部323Bに接続される。
また、液体導入部323A及び液体導出部323Bは、それぞれコネクタ部323から液体循環装置4に接続されている。
このような構成では、ロードヒーター2を流通することで、冷やされた第一液体は、液体循環装置4によって、液体導入部323Aに送られる。液体導入部323Aに送られた第一液体は、液体螺旋加熱部332を通って、液体導出部323Bに向かって流されるが、この際、加熱装置33が駆動されることで、加熱される。そして、加熱された第一液体は、液体導出部323Bから液体循環装置4を介してロードヒーター2に再度送られる。
【0029】
また、図示は省略するが、温度制御ユニット3に温度センサーが設けられていてもよい。例えば、コネクタ部323において、液体導入部323Aに温度センサーが設けられ、液体導入部323Aから内部室32の内部に流れる第一液体の温度を測定してもよい。または、コネクタ部323において、液体導出部323Bに温度センサーが設けられて、内部室32から送り出される第一液体の温度を測定してもよい。或いは、液体導入部323A及び液体導出部323Bの双方に温度センサーが設けられる構成などとしてもよい。
【0030】
[液体循環装置4の構成]
液体循環装置4は、上述したように、ロードヒーター2と、温度制御ユニット3を接続して、第一液体を循環させるポンプである。
つまり、液体循環装置4は、温度制御ユニット3から送られる第一液体をロードヒーター2へ送る液体送り配管41と、ロードヒーター2で利用された第一液体を温度制御ユニット3に戻す液体戻し配管42と、を有している。液体送り配管41はコネクタ部323の液体導出部323Bに接続され、液体戻し配管42は、コネクタ部323の液体導入部323Aに接続されている。
【0031】
[コントローラ5の構成]
コントローラ5は、利用者の指示を受け付けて、温度調節システム1のモードを、暖房モードと冷房モードとの間で切り替えたり、ロードヒーター2に送る第一液体の温度を監視したりする装置である。コントローラ5は、例えば、温度センサーの測定値に基づいて制御を行う。
【0032】
[コントローラ5による温度調節システム1の動作〕
次に、温度調節システム1の動作について説明する。
なお、以下で示す具体的な温度は、一例にすぎず、環境などに応じて異なる温度とすることができる。
【0033】
〔暖房モードの動作〕
まず、気温が地熱(10℃~15℃)以下となる日(例えば、冬季)において、温度調節システム1でロードヒーター2を使用する場合の動作について説明する。
コントローラ5は、例えば利用者の設定入力によって温度調節システム1の動作モードを暖房モードに設定する。
【0034】
この暖房モードでは、コントローラ5は、加熱装置33を所定の出力となるように作動させる。加熱装置33の出力は、液体螺旋加熱部332内の液体を、例えば80℃まで加熱可能な出力である。また、コントローラ5は、液体循環装置4を駆動させて液体の循環を開始する。すなわち、温度制御ユニット3の加熱装置33によって加熱された第一液体は、液体循環装置4によりロードヒーター2に送られ、ロードヒーター2と温度制御ユニット3との間で循環する。
【0035】
ロードヒーター2に供給された液体は、ロードヒーター2で雪の溶解等に利用された後、液体循環装置4によって、液体戻し配管42から温度制御ユニット3に戻される。温度制御ユニット3に戻った液体は、液体螺旋加熱部332を通過する間に加熱装置33によって再度加熱される。
【0036】
なお、上記は、一例として利用者によって動作モードが暖房モードに設定される例であるが、これに限定されるものではない。例えば、コントローラ5は、温度センサーにより測定される温度が、予め設定された所定温度以下となる場合に、暖房モードに設定されるものであってもよい。或いは、コントローラ5は、夜間の間、加熱装置33の駆動を停止させるように制御してもよい。
【0037】
ところで、従来のロードヒーターへの温水の供給システムでは、ロードヒーターの使用時のみに、ヒートポンプを用いてロードヒーターに供給する液体を加熱する。この場合、ヒートポンプを駆動した際に液体の温度が上昇するが、ヒートポンプの駆動を停止すると急激に温度が低下し、1時間も経過しないうちに30度以下の温度となる。ロードヒーターに液体を供給する配管が地中に埋設されている場合では、地熱以下への温度低下は抑制されるものの、地中の温度近傍で変位することになる。
このような従来の構成では、次にヒートポンプを駆動させてロードヒーターに液体を供給する際に、6~7℃近傍の液体を加熱する必要があり、より多くの熱量が必要となるので、ヒートポンプの電力消費が大きくなる。
なお、ヒートポンプに代わって、化石燃料を用いたヒーター、または、ヒートポンプと化石燃料を用いたヒーターとの併用も考えられるが、これらの場合、COの排出により環境に悪影響を及ぼす。
【0038】
これに対して、図4は、本実施形態の温度制御ユニット3において、夜間での加熱装置33の駆動を停止した場合の、内部室32内に保持される第一液体の温度、つまり、液体導出部323Bから流出される第一液体の温度を示している。図4において、Tは、加熱装置33の駆動を停止したタイミングを示している。
図4を見ると分かるように、本実施形態では、温度制御ユニット3の加熱装置33の駆動を停止した後も、約13時間の間、第一液体の温度を30℃以上にキープすることができる。
本実施形態の温度制御ユニット3では、タンク31が地中に埋設されている。これにより、タンク31の内部の第二液体314は、地中の温度よりも低下することがない。すなわち、図4において、朝に加熱装置33を駆動させなかった場合でも、第二液体314の温度は、地中の温度より低くなることを抑制できる。
一方、本実施形態では、加熱装置33を加熱することで、第一液体に加えて、内部室32自体の温度も上昇し、その熱は鋼管321からタンク31内の第二液体314に伝搬する。ここで、タンク31の内部が空気である場合、空気は水に比べて断熱性が高いため、タンク31内の温度上昇は小さくなる。これに対して、本実施形態のように、タンク31の内部が第二液体314で満たされている。また、この第二液体314は、空気よりも熱伝導率が高い。したがって、内部室32が加熱されると、第二液体314に内部室32からの熱が高効率で伝搬されることで蓄熱することができる。また、タンク本体311の外周には、断熱材により構成された保温部315が設けられている。このため、タンク本体311から地中への熱の放出が抑制される。
これにより、本実施形態では、図4に示すように、長時間の間、内部室32内の第一液体の温度を30℃以上に保持することができる。
【0039】
〔冷房モードの動作〕
本実施形態の温度調節システム1では、加熱装置33の駆動を停止している間、液体循環装置4から導入された第一液体を冷却する冷却モードとしても使用することができる。
例えば、上記実施形態では、温度調節装置として、道路等の対象物上に設置可能で対象物上の氷雪を溶解させるロードヒーター2を例示しているが、温度調節装置として、居住空間やビニールハウス等の内部の温度を調節する空調装置を用いてもよい。この場合、夏期において、空調装置は、気温の上昇によって暖められた空気の熱量を第一液体に吸収させる。温度が上昇した第一液体は、液体循環装置4によって温度制御ユニット3に送られ、内部室32の内部において放熱されて冷却される。この際、内部室32に放熱された熱は、さらに、鋼管321からタンク31内の第二液体314に放熱されることで、内部室32の温度上昇が抑制される。また、タンク31は、地中に埋設されているため、夏期においても温度上昇が抑制される。つまり、内部室32からの熱量が第二液体314に伝搬されても、その熱量は地中に放熱されることになる。
これによって、本実施形態の温度調節システム1では、加熱装置33を駆動させない状況下で、長期間に亘って、省電力で第一液体を冷却させることができる。つまり、従来のヒートポンプを用いた装置では、冷媒の圧縮や蒸発に係る電力が必要となるため、その分、消費電力が大きくなるが、本実施形態の温度調節システムでは、単に第一液体を温度制御ユニット3に送り込むだけで、第一液体を冷却することができ、電力消費を大幅に減少させることができる。
【0040】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態の温度制御ユニット3は、中空箱状に形成されて内部が密閉空間となり、地中に埋設されるタンク31と、このタンク31内に収納され、中空箱状に形成されて内部が密閉空間となる内部室32とを備える。また、温度制御ユニット3は、内部室32の内部に第一液体を導入する液体導入部323Aと、内部室32の内部の第一液体を外部に導出する液体導出部323Bとを備える。そして、温度制御ユニット3のタンク31には、第二液体314が満たされている。つまり、タンク31と内部室32との間に第二液体314が満たされている。
【0041】
このような温度制御ユニット3では、第二液体によって内部室32の温度変化を効果的に抑制でき、これにより、内部室32の内部の第一液体の温度変化を抑制することができる。つまり、タンク31の内部が空気である場合、当該空気が断熱層として機能して内部室32の熱をタンク31で蓄熱することが困難であるが、本実施形態では、空気よりも熱伝達率が高い第二液体によってタンク31が満たされている。これにより、内部室32が加熱装置33等によって加熱されている場合に、その熱量が第二液体に伝搬されて蓄熱される。よって、内部室32及び第一液体の温度低下が抑制される。したがって、第一液体を加熱することなく、その温度を長時間一定の温度範囲内に維持することができ、省エネルギー化を図ることができる。
【0042】
また、内部室32が加熱されていない場合では、内部室32に導入された第一液体の熱が内部室32内に放熱される。また、タンク31は、地中に埋設されているため、第二液体に熱が蓄熱されていない状態では、第二液体の温度は地中の温度と略同等となっている。したがって、第一液体から内部室32に放熱された熱は、タンク31内の第二液体に伝搬されることで、内部室32の熱を効果的に下げることができる。
【0043】
本実施形態の温度制御ユニット3では、内部室32の内部に加熱装置33が設けられている。
これにより、内部室32内の第一液体を加熱することができる。また、上述したように、加熱装置33により内部室32を加熱することで、その熱が第二液体に伝搬されてタンク31内に蓄熱される。これにより、加熱装置33の駆動を停止しても、長時間内部室32及び、内部室32の内部の第一液体の温度を一定の範囲内に維持することができる。
【0044】
本実施形態の温度制御ユニット3では、加熱装置33は長手状に形成されており、その外周面に沿って、第一液体が流通する液体螺旋加熱部332が設けられている。
これにより、温度制御ユニット3に導入された第一液体を、効率よく加熱することができる。
【0045】
本実施形態の温度制御ユニット3では、タンク31の外面を覆う保温部315がさらに設けられている。
これにより、タンク31内の第二液体が蓄熱されている状態で、その熱量が外部に逃げることを抑制でき、長時間、タンク31内部の第二液体の温度を維持することができる。
【0046】
〔変形例〕
本発明は上述の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良、および各実施形態を適宜組み合わせる等によって得られる構成は本発明に含まれるものである。
(変形例1)
例えば、上記実施形態では、温度調節装置としてロードヒーター2を採用したがこれに限定されない。上述したように、温度調節装置としては、例えば、居住空間やビニールハウスなどの空間の温度を調節する空調装置であってもよい。
【0047】
(変形例2)
上記実施形態では、温度制御ユニット3は、内部室32の鋼管321の内部に加熱装置33が設けられる構成としているが、加熱装置33が設けられない構成としてもよい。
図5は、変形例2に係る温度調節システム1Aの概略構成を示す図である。
例えば図5に示すように、第一液体を加熱する給湯器7が温度制御ユニット3Aに接続される構成としてもよい。
給湯器7は、第一液体を加熱して所望の温度として、温度制御ユニット3Aに送り出す。給湯器7により加熱される第一液体は、例えば水道管から供給される水道水であってもよく、上述した実施形態のロードヒーター2等のような温度調節装置から戻された水や不凍液等であってもよい。
【0048】
また、図5に示す変形例2では、給湯器7により第一液体を加熱するので、内部室32の内部に加熱装置33が設けられない。この場合、液体螺旋加熱部332が設けられておらず、内部室32が第一液体を貯留する貯水室として用いられる。
すなわち、液体導入部323Aから導入された第一液体は、そのまま鋼管321の内部に注ぎ込まれて貯留される。また、内部室32内の第一液体を排出する場合は、例えば、ポンプ4Aを用いて、内部室32内の第一液体をくみ上げて送り出す。
【0049】
このような構成でも、上記実施形態と同様の作用効果が得られる。つまり、給湯器7によって加熱された第一液体が内部室32に導入されることで、内部室32が加熱され、その熱はタンク31の第二液体に伝搬されることで蓄熱される。また、タンク31が保温部315で覆われていることで、タンク31の外部への熱流出を抑制でき、第一液体の温度低下が抑制される。
【0050】
(変形例3)
上記変形例2では、内部室32の内部に加熱装置33及び液体螺旋加熱部332が設けられず、内部室32を貯水室として用いる例である。これに対して、変形例2において、上記実施形態で説明したような加熱装置33を内部室32に設ける構成としてもよい。つまり、給湯器7を設けつつ、さらに内部室32の内部にシーズヒーター等の加熱装置33を設ける構成としてもよい。この場合、給湯器7から送られ内部室32に貯水された第一液体の温度が一定以下となった場合に、内部室32の中の第一液体を加熱装置33により加熱することができる。
【0051】
(変形例4)
上記実施形態では、温度制御ユニット3を地下2~3mの位置に埋設するために、設置室61を設け、設置室61の底部に温度制御ユニット3を埋設する構成としたが、これに限定されない。設置室61は設けられていなくてもよく、例えば、地面に穴を掘設し、当該穴に温度制御ユニット3を挿通して埋設させる構成としてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1…温度調節システム、2…ロードヒーター(温度調節装置)、3…温度制御ユニット、5…コントローラ、31…タンク、32…内部室、33…加熱装置、4…液体循環装置、311…タンク本体、312…タンク蓋部、314…第二液体、321…鋼管、322…第二蓋部、323…コネクタ部、323A…液体導入部、323B…液体導出部、332…液体螺旋加熱部。
図1
図2
図3
図4
図5