(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179233
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】アトマイズ装置
(51)【国際特許分類】
B22F 9/08 20060101AFI20231212BHJP
B22F 9/00 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
B22F9/08
B22F9/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092418
(22)【出願日】2022-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137486
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 雅直
(74)【代理人】
【識別番号】100129377
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬川 耕司
(72)【発明者】
【氏名】中本 尚樹
(72)【発明者】
【氏名】津田 正徳
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 賢人
(72)【発明者】
【氏名】峯岸 佳弘
(72)【発明者】
【氏名】米虫 悠
【テーマコード(参考)】
4K017
【Fターム(参考)】
4K017AA03
4K017AA04
4K017CA01
4K017CA07
4K017EB23
4K017EF10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】微細な金属粉末を効率よく生成するアトマイズ装置を提供する。
【解決手段】本発明のアトマイズ装置は、上下端面が貫通することで開口を有する中空形状の円筒体31と、円筒体の内部に超音波を発生させるBLT(超音波発生手段)とを備え、下方に向けて流れる複数の溶解原料を、開口を上下方向に向けた状態の円筒体内に形成される定在波音場における音圧の節をそれぞれ通過させて微粒化して金属粉末を生成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下端面が貫通することで開口を有する中空形状の円筒体と、
前記円筒体の内部に超音波を発生させる超音波発生手段とを備え、
下方に向けて流れる複数の溶解原料を、前記開口を上下方向に向けた状態の前記円筒体内に形成される定在波音場における音圧の節をそれぞれ通過させて微粒化して金属粉末を生成することを特徴とするアトマイズ装置。
【請求項2】
前記複数の溶解原料は、前記開口を上下方向に向けた状態の前記円筒体内に形成される定在波音場における中央の音圧の腹から前記円筒体の半径方向に1/4波長ずらした音圧の節をそれぞれ通過することを特徴とする請求項1に記載のアトマイズ装置。
【請求項3】
前記複数の溶解原料が前記円筒体内を通過する溶湯流れの位置は、前記円筒体の中央に対して点対称に配置されないことを特徴とする請求項1又は2に記載のアトマイズ装置。
【請求項4】
前記複数の溶解原料が前記円筒体内を通過する溶湯流れの数は、奇数個であることを特徴とする請求項3に記載のアトマイズ装置。
【請求項5】
前記超音波発生手段は、ボルト締めランジュバン型振動子を有していることを特徴とする請求項1または2に記載のアトマイズ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製の原料を微細化するアトマイズ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ルツボ内で溶解された金属製の原料を、出湯口からチャンバ内に排出し、このチャンバ内で原料を微細化させて回収する加熱溶解装置が記載されている。具体的には、チャンバ内には、超音波を照射する振動子が備えられており、ルツボの出湯口から排出された原料は、振動子から照射される超音波により微細化される。微細化された原料は収容部に至るまでに冷却された後、金属粉末として回収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
超音波により金属製の原料を微細化する方法として、BLT(ボルト締めランジュバン型振動子)と円筒体とを接続して円筒体の内部に超音波を発生させて、ルツボの出湯口から出湯した溶解原料を円筒体内に形成される定在波音場を通過させることにより、溶解原料を微細化する方法が考えられる。
【0005】
しかしながら、溶湯の表面から微細化が始まるため、出湯口から出湯した溶解原料の溶湯流れを太くすると微細化されない溶湯が増加するとともに、微細化前の初期溶湯サイズが大きいと製作可能な金属粉末の粒径サイズが大きくなってしまう。そのため、円筒体内部を通過する溶湯に対する処理量が微量であり、金属粉末の量産に適しない問題がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みたものであり、微細な金属粉末を効率よく生成することが可能なアトマイズ装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明のアトマイズ装置は、上下端面が貫通することで開口を有する中空形状の円筒体と、前記円筒体の内部に超音波を発生させる超音波発生手段とを備え、下方に向けて流れる複数の溶解原料を、前記開口を上下方向に向けた状態の前記円筒体内に形成される定在波音場における音圧の節をそれぞれ通過させて微粒化して金属粉末を生成することを特徴とする。
【0008】
このようにすると、下方に向けて流れる複数の溶解原料が、円筒体内に形成される定在波音場をほぼ同時に通過して微粒化されるため、微細な金属粉末を効率よく生成することができる。また、製作可能な粉末粒径を維持した状態で処理量を多くできるため、安定した粉末製造を可能とする。
【0009】
本発明のアトマイズ装置において、前記複数の溶解原料は、前記開口を上下方向に向けた状態の前記円筒体内に形成される定在波音場における中央の音圧の腹から前記円筒体の半径方向に1/4波長ずらした音圧の節をそれぞれ通過することを特徴とする。
【0010】
このようにすると、下方に向けて流れる複数の溶解原料をほぼ同時に微粒化するために、円筒体の中央付近の必要な範囲に限り、微粒化可能なエネルギーを出力すればよいため、超音波発生手段の負荷を低減できる。
【0011】
本発明のアトマイズ装置において、前記複数の溶解原料が前記円筒体内を通過する溶湯流れの位置は、前記円筒体の中央に対して点対称に配置されないことを特徴とする。
【0012】
このようにすると、2つの溶湯流れの一方が円筒体内に形成される定在波音場を乱して、2つの溶湯流れの他方の位置に対して超音波が有効に機能しなくなるのを防止できる。すなわち、2つの溶湯流れの位置が円筒体の中央に対して点対称に配置されている場合、2つの溶湯流れの一方が円筒体内に形成される定在波音場を乱して、2つの溶湯流れの他方の位置に対して超音波が有効に機能しない可能性がある。
【0013】
本発明のアトマイズ装置において、前記複数の溶解原料が前記円筒体内を通過する溶湯流れの数は、奇数個であることを特徴とする。
【0014】
このようにすると、下方に向けて流れる複数の溶解原料が円筒体内を通過する溶湯流れの位置を、円筒体の中央に対して点対称に配置しないとともに、周方向に均等に配置することができる。
【0015】
本発明のアトマイズ装置において、前記超音波発生手段は、ボルト締めランジュバン型振動子を有していることを特徴とする。
【0016】
このようにすると、超音波を発生させる際の損失を低減することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、微細な金属粉末を効率良く生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係るアトマイズユニット30を有する加熱溶解装置1の構成図である。
【
図2】
図2(a)は、
図1の加熱溶解装置1の出湯部16の下端の平面図であり、
図2(b)は、
図2(a)のA-A線における断面図である。
【
図3】BLT34と円筒体31とを接続した状態を説明する図である。
【
図4】円筒体31内に形成される定在波音場を通過する溶湯流れの位置を示す図である。
【
図5】
図4において1点鎖線で示される部分の音圧分布線を示す図である。
【
図6】本発明の変形例に係るアトマイズユニットの円筒体31内に形成される定在波音場を通過する溶湯流れの位置を示す図である。
【
図7】円筒体31の周方向に形成される曲げ振動を説明する図である。
【
図8】本発明の変形例に係るアトマイズユニットの円筒体31内に形成される定在波音場を通過する溶湯流れの位置を示す図である。
【
図9】本発明の変形例に係るアトマイズユニットの円筒体31内に形成される定在波音場を通過する溶湯流れの位置を示す図である。
【
図10】本発明の変形例に係るアトマイズユニットの円筒体31内に形成される定在波音場を通過する溶湯流れの位置を示す図である。
【
図11】本発明の変形例に係るアトマイズユニットを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本実施形態に係るアトマイズユニットを有する加熱溶解装置を図面を参照しつつ説明する。
図1に示す加熱溶解装置1は、水冷式のコールドクルーシブル型の加熱溶解装置であり、原料N(溶解原料N)から金属粉末を生成することができる。具体的には、加熱溶解装置1は、20[μm]以下の金属粉末を生成する。原料Nは、高融点金属であり、例えば、スズ(Sn)、チタン合金、ジルコニウム、タンタルである。
【0020】
以下において、加熱溶解装置1を設置した状態での設置面に平行な向きである水平方向を「D1」を付して記載し、上下方向を「D2」を付して記載する。上下方向D2は、水平方向D1に垂直な方向でもある。
【0021】
加熱溶解装置1は、チャンバ2と、出湯ユニット10と、アトマイズユニット30と、操作盤50と、制御装置51と、第1電圧供給回路52と、第2電圧供給回路53と、第3電圧供給回路54とを備えている。
【0022】
チャンバ2は、上下方向D2において上端及び下端が閉塞した容器であり、製品の酸化を防止するため、不活性ガスが充填されている。チャンバ2の内部には、出湯ユニット10、アトマイズユニット30を収容可能な空間が形成されている。具体的には、チャンバ2は、円筒状に延びる上側容器部2aと、上側容器部2aよりも下方に位置する円錐体状の下側容器部2bとを有している。
【0023】
上側容器部2aの内部には、チャンバ2の内周面から内側に向けて延びる間仕切り板3a、5aが設けられている。間仕切り板3a、5aにより、チャンバ2の内部には、出湯ユニット10及びアトマイズユニット30が保持される保持空間3、5が区画されている。具体的には、チャンバ2の内部において、間仕切り板3aよりも上の保持空間3に、出湯ユニット10が収容されている。チャンバ2の内部において、間仕切り板3aと間仕切り板5aとで区画される保持空間5に、アトマイズユニット30が収容されている。下側容器部2bの内部には、生成された金属粉末が収容される空間である収容部6が形成されている。具体的には、チャンバ2の内部において、間仕切り板5aよりも下側の空間が、収容部6になっている。
【0024】
出湯ユニット10は、ルツボ11と、溶解コイル12aと、出湯コイル12bとを備えている。出湯ユニット10は、溶解コイル12aに通電し炉本体内を誘導加熱することで原料Nを溶解するとともに、炉床を冷却することにより炉本体の底部に生じるスカルNaと称される原料Nの凝固物で出湯部16を閉止し、出湯部16に形成されたスカルNaを出湯コイル12bに通電し出湯部16を誘導加熱することにより溶解して、出湯部16を通じて溶湯を出湯するユニットである。
【0025】
ルツボ11は、原料Nが収容される容器である。ルツボ11は、例えば銅材により形成され、円筒状の側壁11aと、側壁11aの下方に設けられた底板11bとを有している。側壁11aと底板11bとにより、原料Nが収容される空間が形成されている。側壁11aは、上部が開口する円筒状の部位である。側壁11aは、内周面に形成されたスリットにより複数のセグメントに分割されている。各セグメントは、内部に冷却流路を有しており、冷却流路の内部には水等の冷媒が通れるようになっている。セグメントを分割するスリットには、薄板状の絶縁部材が埋め込まれている。底板11bは、円板状の部位である。底板11bは、内部に冷却流路を有しており、冷却流路の内部には水等の冷媒が通れるようになっている。底板11bの径方向の中心には、溶解した溶湯を出湯させるための出湯部16が形成されている。底板11bの径方向は、水平方向D1と平行な方向でもある。
【0026】
出湯部16は、上下方向D2に延びた漏斗状の部位である。出湯部16の下端部には、
図2(a)及び
図2(b)に示すように、上下方向D2に貫通する4つの出湯口16a~16dが形成される。出湯口16a~16dは、同一円周上において周方向に90度おきに配置される。出湯口16a~16dの水平断面は、円形であり、その内径は、5[mm]以下である。
【0027】
本実施形態では、ルツボ11は、チャンバ2の内部に設けられた固定部3bにより固定されている。具体的には、固定部3bは、間仕切り板3aにボルトにより固定されている。これにより、固定部3bは、ルツボ11をチャンバ2内で位置決め保持した状態で固定することができる。ルツボ11における側壁11aには、溶解コイル12aが外周面に沿って巻かれている。本実施形態では、溶解コイル12aの下端は、上下方向D2において、底板11bよりも上方となるように側壁11aに対して外周面に沿って巻かれている。溶解コイル12aには、第1電圧供給回路52から高周波の溶解電圧が印加される。
【0028】
出湯部16には、出湯コイル12bが外周面に沿って巻かれている。本実施形態では、出湯コイル12bは、出湯部16における下端よりも上側まで巻かれている。出湯コイル12bには、第2電圧供給回路53から高周波の出湯電圧が印加される。出湯コイル12bの周囲には、出湯部16から排出された溶湯から出湯コイル12bを保護するための図示しない保護部材が設けられている。
【0029】
チャンバ2の内部において、出湯ユニット10よりも下方の保持空間5には、アトマイズユニット30が保持されている。アトマイズユニット30は、出湯ユニット10から出湯される溶湯を微粒化するユニットである。アトマイズユニット30は、
図3に示すように、円筒体31と、伝達棒32と、ホーン33と、BLT(ボルト締めランジュバン型振動子)34とを有している。なお、
図1では、伝達棒32、ホーン33及びBLT34の図示を省略し、アトマイズユニット30として円筒体31だけを図示している。
【0030】
図3に示すように、円筒体31は、上下両端面が貫通することで開口31aを有する中空状の部材である。本実施形態では、円筒体31は、銅材などの導電性材料により形成されている。円筒体31は、開口31aを上下方向D2に向けた状態で、ルツボ11よりも下方に配置されている。具体的には、円筒体31は、出湯部16の先端から4つの出湯口16a~16dの各中心線を仮想線(
図1で1点鎖線で図示している)として下側に向けて垂直に延ばした場合に、これらの仮想線が円筒体31の開口31aの内側を通過する水平方向D1の位置に配置されている。なお、円筒体31は、振動を効率良く伝播する、音響的な性質と強度的な性質が良い材料(例えばアルミやチタン、銅等)で形成されていることが好適である。
【0031】
アトマイズユニット30は、間仕切り板5aに固定されるが、円筒体31と間仕切り板5aとの間には、図示しない保持層が介在している。保持層は、円筒体31を間仕切り板5aに対して振動可能に保持する層である。保持層は、円筒体31の振動を阻害することなく、円筒体31を間仕切り板5aに保持できる材質であることが望ましい。例えば、保持層は、シリコンゴムやブタジエンゴム等を用いることができる。
【0032】
BLT34は、超音波振動子であり、
図3に示すように、伝達棒32及びホーン33を介して円筒体31の側面に接続される。なお、伝達棒32の先端は、円筒体31の側面にねじ止めされている。BLT34には、第3電圧供給回路44からの振動電圧が印加される。BLT34は、円筒体31が有する固有周波数(共振周波数)で円筒体31を振動させて超音波を発生する。そのとき、円筒体31内には、放射された超音波により定在波音場が形成される。
【0033】
操作盤50は、作業者の操作を受付ける、操作キーや、操作画面等を備えるユーザインタフェースである。操作盤50が受付けた操作に応じた信号は、制御装置51に出力される。制御装置51は、加熱溶解装置1の駆動を制御する。制御装置51は、例えば、CPU、ROM、RAM等を備え、CPUがROMに記憶されたプログラムを実行することで所定の処理を実行するプログラマブルコントローラである。制御装置51では、CPUが、ROMに記憶されたプログラムを実行することで、第1電圧供給回路52、第2電圧供給回路53及び第3電圧供給回路54の各動作を制御する。
【0034】
具体的には、大気中において周波数が28kHzでBLT34を駆動して円筒体31(内径53.4mm、外径61.3mm、高さ30mm)を振動させる場合、
図4に示すように、円筒体31の内部で波長が12.29mmの定在波音場が形成される。なお、本実施形態において、円筒体31は、円筒体31の周方向の曲げ振動が形成されない厚さを有している。
【0035】
円筒体31内に形成される定在波音場では、円筒体31の中央が音圧の腹(腹(1))となり、最大音圧となる。円筒体31の中央から円筒体31の半径方向に1/4波長ずらした位置が音圧の節(節(1))となる。その音圧の節(節(1))から、円筒体31の半径方向外側に向かって、音圧の腹(腹(2))、音圧の節(節(2))、音圧の腹(腹(3))、音圧の節(節(3))、音圧の腹(腹(4))、音圧の節(節(4))、音圧の腹(腹(5))の順に配置される。
図4では、音圧の腹を実線で図示し、音圧の節を点線で図示している。そのため、
図4において1点鎖線で示される部分の音圧分布線は、
図5のようになる。
【0036】
気中超音波による微粒化は、音圧の節で起こるため、
図4に示した定在波音場において、節(1)、節(2)、節(3) 、節(4)の何れかの位置を出湯口16a~16dから出湯された溶湯が通過するようにする。ただし、円筒体31内の節(1)、節(2)、節(3)及び節(4)のどの節でも微粒化可能なエネルギーを出力するには、振動源であるBLT34を高出力で駆動し続ける必要がある。その場合、発熱により円筒体31の振動状態に影響が出て微粒化エネルギーが低下する。
【0037】
そのため、本実施形態では、円筒体31の中央の音圧の腹(腹(1))から円筒体31の半径方向に1/4波長(約3.1mm)の音圧の節(節(1))の位置で微粒化可能な条件で、振動源であるBLT34を駆動する。なお、
図4では、出湯口16a~16dから出湯された後、円筒体31内に形成される定在波音場を通過する溶湯流れを16N(1)~16N(4)として図示している。
【0038】
また、本実施形態では、4つの出湯口16a~16dを配置する際、隣り合う4つの溶湯流れ16N(1)~16N(4)が、溶湯流れの直径分以上、または、微粒化後に粉体の接触数が最小限となるように間隔をあけるために90°間隔としている。なお、本実施形態では、円筒管31が径方向に伸縮する呼吸振動の場合に理想とされる位置に、4つの溶湯流れ16N(1)~16N(4)を配置している。
【0039】
以上説明した本実施形態のアトマイズユニット30は、上下端面が貫通することで開口31aを有する中空形状の円筒体31と、円筒体31の内部に超音波を発生させるBLT34(超音波発生手段)とを備え、下方に向けて流れる溶解原料を、開口31aを上下方向に向けた状態の円筒体31内に形成される定在波音場における音圧の節(節(1))をそれぞれ通過させて微粒化して金属粉末を生成する。
【0040】
このようにすると、下方に向けて流れる複数の溶解原料が、円筒体31内に形成される定在波音場をほぼ同時に通過して微粒化されるため、微細な金属粉末を効率よく生成することができる。また、製作可能な粉末粒径を維持した状態で処理量を多くできるため、安定した粉末製造を可能とする。
【0041】
本実施形態のアトマイズユニット30において、下方に向けて流れる4つの溶解原料は、円筒体31内に形成される定在波音場における中央の音圧の腹(腹(1))から円筒体31の半径方向に1/4波長ずらした音圧の節(節(1))をそれぞれ通過する。
【0042】
このようにすると、下方に向けて流れる4つの溶解原料をほぼ同時に微粒化するために、円筒体31の中央付近の必要な範囲に限り、微粒化可能なエネルギーを出力すればよいため、BLT34の負荷を低減できる。
【0043】
本実施形態のアトマイズユニット30において、超音波発生手段は、BLT34を有している。
【0044】
このようにすると、超音波を発生させる際の損失を低減することができる。すなわち、例えば、円筒体の外周面に沿って誘導コイルを巻回し、誘導コイルに振動電圧を印加して誘導コイルに高周波電流を流し、円筒体を電磁力により径方向で振動させて円筒体内に超音波を発生させる場合には、ジュール損失が大きい問題がある。
【0045】
なお、具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。
【0046】
例えば、上記実施形態では、4つの出湯口16a~16dから出湯された4つの溶湯流れ16N(1)~16N(4)が円筒体31の中央付近において90°間隔となるが、それに限られない。出湯口の数および円筒体31内を通過する溶湯流れの数は、2つ以上であればよく、その配置は任意である。例えば、
図6に示すように、円筒体31を通過する溶湯流れ16N(1)~16N(3)は、3つであり、120°間隔で配置されてもよい。なお、円筒体31を通過する溶湯流れの数および配置に応じた出湯口が形成された出湯部16を使用する必要がある。
【0047】
この場合、例えば円筒体31の中央に対して溶湯流れ16N(1)~16N(3)のそれぞれの反対側には、他の溶湯流れは配置されない。すなわち、3つの溶湯流れ16N(1)~16N(3)は、円筒体31の中央に対して点対称に配置されない。
【0048】
また、
図7に示すように、縦振動するBLT34を、伝達棒32及びホーン33を介して円筒体31の側面における1点に接続すると、円筒体31は、円筒体31の周方向に5つの腹、5つの節が交互に曲げ振動が起こる場合がある(具体例の条件での腹、節の数)。この場合、腹の位置は、伝達棒32の接続位置から72°間隔でほぼ均一に起こる。このため、
図8に示すように、円筒体31の中央付近での5つの溶湯流れ16N(1)~16N(5)の位置も同様に72°間隔としてもよい。
【0049】
この場合、例えば円筒体31の中央に対して5つの溶湯流れ16N(1)~16N(5)のそれぞれの反対側には、他の溶湯流れは配置されない。すなわち、5つの溶湯流れ16N(1)~16N(5))は、円筒体31の中央に対して点対称に配置されない。
【0050】
さらに、
図8に示すように、5つの溶湯流れ16N(1)~16N(5)の位置を、円筒体31の周方向に形成される5つの腹と円筒体31の中心軸を結んだ直線上と音圧の節が交わる位置としてもよい。これにより、呼吸振動が優勢な振動であるため曲げ振動の影響は少ないが、より効率的に大きい音響エネルギーを溶湯流れに与えることが可能となる。
【0051】
上記変形例のアトマイズユニットにおいて、下方に向けて流れる複数の溶解原料が円筒体31内を通過する溶湯流れの位置は、円筒体31の中央に対して点対称に配置されない。
【0052】
このようにすると、2つの溶湯流れの一方が円筒体31内に形成される定在波音場を乱して、2つの溶湯流れの他方の位置に対して超音波が有効に機能しなくなるのを防止できる。すなわち、2つの溶湯流れの位置が円筒体31の中央に対して点対称に配置されている場合、2つの溶湯流れの一方が円筒体31内に形成される定在波音場を乱して、2つの溶湯流れの他方の位置に対して超音波が有効に機能しない可能性がある。
【0053】
本変形例のアトマイズユニットにおいて、下方に向けて流れる複数の溶解原料が円筒体31内を通過する溶湯流れの数は、奇数個である。
【0054】
このようにすると、下方に向けて流れる複数の溶解原料が円筒体31内を通過する溶湯流れの位置を、円筒体31の中央に対して点対称に配置しないとともに、周方向に均等に配置することができる。
【0055】
また、
図9に示すように、円筒体31の中央付近での6つの溶湯流れ16N(1)~16N(6)の位置を60°間隔としてもよい。
【0056】
また、振動源であるBLT34を高出力で駆動して円筒体31の振動をさらに大きくすれば、円筒体31の中央から離れた音圧の節(節(2))においても微粒化可能なエネルギーが得られる。例えば、円筒体31内に形成される定在波音場において、節(1)、節(2)の何れかの位置を複数の出湯口から出湯された溶湯が通過するようにしてもよい。
【0057】
例えば、
図10に示すように、円筒体31の中央付近の音圧の節(節(1))において4つの溶湯流れ16N(1)~16N(4)を90°間隔とし、且つ、節(1)の外側の節(2)において4つの溶湯流れ16N(5)~16N(8)を90°間隔としてもよい。
【0058】
さらに、振動源であるBLT34を高出力で駆動して円筒体31の振動をさらに大きくすれば、円筒体31の中央から離れた音圧の節(節(4))においても微粒化可能なエネルギーが得られる。その場合、円筒体31内に形成される定在波音場において、節(1)、節(2)、節(3) 、節(4)の何れかの位置を複数の出湯口から出湯された溶湯が通過するようにしてもよい。
【0059】
上記実施形態では、溶解原料Nの例を示したが、それに限られない。本発明の加熱溶解装置1で使用される溶解原料Nは、任意である。
【0060】
上記実施形態では、円筒体の内部に超音波を発生させる超音波発生手段として、BLT34を有しているが、それに限られない。円筒体の内部に超音波を発生させる超音波発生手段は、任意である。
【0061】
上記実施形態では、1つの円筒体の内部において溶湯を微粒化しているが、それに限られない。溶湯の流れ方向に沿って多段に並べた複数の円筒体の内部において溶湯をそれぞれ微粒化してもよい。その場合、出湯粒径の太い1本の溶湯流れを段階的に微細化して溶湯流径を細くすることができる。
図11に示すように、2つの円筒体31を溶湯の流れ方向に沿って並べた場合に限らず、3つ以上の円筒体31を溶湯の流れ方向に沿って並べてもよい。
【0062】
上記実施形態では、アトマイズユニット30を有するコールドクルーシブル型の加熱溶解装置1であるが、それに限られない。アトマイズユニット30を備えるものであれば、原料を溶解するための構成はどのような構成であってもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 加熱溶解装置
16a~16d 出湯口
16N(1)~16N(4) 溶湯流れ
30 アトマイズユニット(アトマイズ装置)
31 円筒体
34 BLT(超音波発生手段)