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特開2023-179242情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179242
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
G05B23/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092436
(22)【出願日】2022-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白木 崇志
【テーマコード(参考)】
3C223
【Fターム(参考)】
3C223AA17
3C223BA03
3C223BB17
3C223EB01
3C223EB02
3C223FF22
3C223FF23
3C223FF26
3C223GG01
3C223HH02
3C223HH22
(57)【要約】
【課題】所定の対象を精度良く模擬することが可能な情報処理装置を提供する。
【解決手段】
所定の対象に対して入力データが入力された際に前記所定の対象において前記入力データが変化するよう、前記入力データに対して、少なくとも第1遅れの時定数を含む第1遅れ要素を含む処理を施して第1出力データを出力する第1処理部と、所定値の前記入力データに対応するデータを出力するとともに前記所定の対象の定常状態における入出力を模擬した学習モデルを用いて、前記第1出力データに対応する第2出力データを出力する第2処理部と、前記第2出力データに対して、少なくとも第2遅れの時定数を含む第2遅れ要素を含む処理を施して第3出力データを出力する第3処理部と、前記第1遅れの時定数及び前記第2遅れの時定数の少なくとも一方を調整する調整部と、を備える情報処理装置。
【選択図】図17
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の対象に対して入力データが入力された際に前記所定の対象において前記入力データが変化するよう、前記入力データに対して、少なくとも第1遅れの時定数を含む第1遅れ要素を含む処理を施して第1出力データを出力する第1処理部と、
所定値の前記入力データに対応するデータを出力するとともに前記所定の対象の定常状態における入出力を模擬した学習モデルを用いて、前記第1出力データに対応する第2出力データを出力する第2処理部と、
前記第2出力データに対して、少なくとも第2遅れの時定数を含む第2遅れ要素を含む処理を施して第3出力データを出力する第3処理部と、
前記第1遅れの時定数及び前記第2遅れの時定数の少なくとも一方を調整する調整部と、
を備える情報処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理装置であって、
前記調整部は、前記所定の対象の構造を示す情報に基づいて、前記少なくとも一方を調整する、
情報処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の情報処理装置であって、
前記第3出力データは、前記所定の対象に設けられた内部空間の温度であり、
前記構造を示す情報は、前記内部空間から前記内部空間の外部へ流れる空気の流量に影響を及ぼす構造を示す情報であり、
前記調整部は、前記空気の流量が大きいほど、前記第1遅れの時定数又は前記第2遅れの時定数の少なくとも一方が小さくなるように調整する、
情報処理装置。
【請求項4】
請求項1に記載の情報処理装置であって、
前記調整部は、前記所定の対象の目標とする状態が、第1状態から第2状態へ変化した後の前記少なくとも一方の第1の値と、前記第2状態から前記第1状態へ変化した後の前記少なくとも一方の第2の値とが異なるように、前記少なくとも一方の値を調整する、
情報処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の情報処理装置であって、
前記調整部は、前記第3出力データと、前記第2出力データとに基づいて、前記少なくとも一方の値を調整する、
情報処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の情報処理装置であって、
前記第2出力データは、前記所定の対象の所定の箇所の目標とする温度であり、
前記第3出力データは、前記所定の対象の所定の箇所の温度であり、
前記調整部は、前記第3出力データと、前記第2出力データとの大小関係に基づいて、前記少なくとも一方の値を調整する、
情報処理装置。
【請求項7】
第1の対象に対して入力データが入力された際に前記第1の対象において前記入力データが変化するよう、前記入力データに対して、第1時間要素を含む処理を施して第1出力データを出力する第1処理部と、
所定値の前記入力データに対応するデータを出力するとともに前記第1の対象の定常状態における入出力を模擬した学習モデルを用いて、第1出力データを入力として、第2出力データを出力する第2処理部と、
前記第2出力データに対して、第2時間要素を含む処理を施して第3出力データを出力する第3処理部と、
前記第1の対象の状態に影響を及ぼす第2の対象を模擬し、前記第3出力データに対応する第4出力データを出力する第4処理部と、
を備え、
前記入力データは、前記第4出力データを含む、
情報処理装置。
【請求項8】
請求項7に記載の情報処理装置であって、
前記第3出力データは、前記第1の対象の所定の箇所の温度であり、
前記第2の対象は、前記第1の対象と熱のやりとりをし、
前記第4処理部は、前記所定の箇所の温度に応じて変化する前記第2の対象の温度を前記第4出力データとして出力する、
情報処理装置。
【請求項9】
第1の対象に対して入力データが入力された際に前記第1の対象において前記入力データが変化するよう、前記入力データに対して、第1時間要素を含む処理を施して第1出力データを出力する第1処理部と、
所定値の前記入力データに対応するデータを出力するとともに前記第1の対象の定常状態における入出力を模擬した学習モデルを用いて、前記第1出力データを入力として、第2出力データを出力する第2処理部と、
前記第2出力データに対して、第2時間要素を含む処理を施して第3出力データを出力する第3処理部と、
を備え、
前記第1処理部は、
前記第1の対象の状態に影響を及ぼす第2の対象を模擬したモデルを含む、
情報処理装置。
【請求項10】
請求項9に記載の情報処理装置であって、
前記第3出力データは、前記第1の対象の所定の箇所の温度であり、
前記第2の対象は、前記第1の対象と熱のやりとりをし、
前記第1処理部は、前記モデルを用いて、前記所定の箇所の温度に応じて変化する前記第2の対象の温度を前記第1出力データの一部として出力する
情報処理装置。
【請求項11】
情報処理装置が、
所定の対象に対して入力データが入力された際に前記所定の対象において前記入力データが変化するよう、前記入力データに対して、少なくとも第1遅れの時定数を含む第1遅れ要素を含む処理を施して第1出力データを出力するステップと、
所定値の前記入力データに対応するデータを出力するとともに前記所定の対象の定常状態における入出力を模擬した学習モデルを用いて、前記第1出力データに対応する第2出力データを出力するステップと、
前記第2出力データに対して、少なくとも第2遅れの時定数を含む第2遅れ要素を含む処理を施して第3出力データを出力するステップと、
前記第1遅れの時定数及び前記第2遅れの時定数の少なくとも一方を調整するステップと、
を含む処理を実行する情報処理方法。
【請求項12】
情報処理装置が、
第1の対象に対して入力データが入力された際に前記第1の対象において前記入力データが変化するよう、前記入力データに対して、第1時間要素を含む処理を施して第1出力データを出力するステップと、
所定値の前記入力データに対応するデータを出力するとともに前記第1の対象の定常状態における入出力を模擬した学習モデルを用いて、第1出力データを入力として、第2出力データを出力するステップと、
前記第2出力データに対して、第2時間要素を含む処理を施して第3出力データを出力するステップと、
前記第1の対象の状態に影響を及ぼす第2の対象を模擬し、前記第3出力データに対応する第4出力データを出力するステップと、
を含む処理を実行し、
前記入力データは、前記第4出力データを含む、
情報処理方法。
【請求項13】
情報処理装置が、
第1の対象に対して入力データが入力された際に前記第1の対象において前記入力データが変化するよう、前記入力データに対して、第1時間要素を含む処理を施して第1出力データを出力する第1ステップと、
所定値の前記入力データに対応するデータを出力するとともに前記第1の対象の定常状態における入出力を模擬した学習モデルを用いて、前記第1出力データを入力として、第2出力データを出力する第2ステップと、
前記第2出力データに対して、第2時間要素を含む処理を施して第3出力データを出力する第3ステップと、
を含む処理を実行し、
前記第1ステップは、
前記第1の対象の状態に影響を及ぼす第2の対象を模擬したモデルを用いて前記第1出力データを更に出力する、
情報処理方法。
【請求項14】
コンピュータに
所定の対象に対して入力データが入力された際に前記所定の対象において前記入力データが変化するよう、前記入力データに対して、少なくとも第1遅れの時定数を含む第1遅れ要素を含む処理を施して第1出力データを出力する第1処理部と、
所定値の前記入力データに対応するデータを出力するとともに前記所定の対象の定常状態における入出力を模擬した学習モデルを用いて、前記第1出力データに対応する第2出力データを出力する第2処理部と、
前記第2出力データに対して、少なくとも第2遅れの時定数を含む第2遅れ要素を含む処理を施して第3出力データを出力する第3処理部と、
前記第1遅れの時定数及び前記第2遅れの時定数の少なくとも一方を調整する調整部と、
を実現させる情報処理プログラム。
【請求項15】
コンピュータに
第1の対象に対して入力データが入力された際に前記第1の対象において前記入力データが変化するよう、前記入力データに対して、第1時間要素を含む処理を施して第1出力データを出力する第1処理部と、
所定値の前記入力データに対応するデータを出力するとともに前記第1の対象の定常状態における入出力を模擬した学習モデルを用いて、第1出力データを入力として、第2出力データを出力する第2処理部と、
前記第2出力データに対して、第2時間要素を含む処理を施して第3出力データを出力する第3処理部と、
前記第1の対象の状態に影響を及ぼす第2の対象を模擬し、前記第3出力データに対応する第4出力データを出力する第4処理部と、
を実現させ、
前記入力データは、前記第4出力データを含む、
情報処理プログラム。
【請求項16】
コンピュータに、
第1の対象に対して入力データが入力された際に前記第1の対象において前記入力データが変化するよう、前記入力データに対して、第1時間要素を含む処理を施して第1出力データを出力する第1処理部と、
所定値の前記入力データに対応するデータを出力するとともに前記第1の対象の定常状態における入出力を模擬した学習モデルを用いて、前記第1出力データを入力として、第2出力データを出力する第2処理部と、
前記第2出力データに対して、第2時間要素を含む処理を施して第3出力データを出力する第3処理部と、
を実現させ、
前記第1処理部は、
前記第1の対象の状態に影響を及ぼす第2の対象を模擬したモデルを含む、
情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
機器等の所定の対象を模擬したシミュレーションモデルを用いることにより、所定の対象へデータを入力した際の出力を得ることができる。しかし、シミュレーションモデルが複雑である場合、出力を得るために多大な時間を要する場合がある。
【0003】
このような場合に、シミュレーションモデルを代理するモデル(以下、「代理モデル」と呼ぶ)を新たに生成し、シミュレーションモデルに代えて代理モデルを用いることにより、計算の高速化を図る技術が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-181069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、機器等の状態に影響を及ぼす要因を代理モデルに十分に反映することができない場合がある。このような場合、機器等を十分な精度で模擬することができない。
【0006】
本発明の目的は、所定の対象を精度良く模擬することが可能な情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための一の発明は、所定の対象に対して入力データが入力された際に前記所定の対象において前記入力データが変化するよう、前記入力データに対して、少なくとも第1遅れの時定数を含む第1遅れ要素を含む処理を施して第1出力データを出力する第1処理部と、所定値の前記入力データに対応するデータを出力するとともに前記所定の対象の定常状態における入出力を模擬した学習モデルを用いて、前記第1出力データに対応する第2出力データを出力する第2処理部と、前記第2出力データに対して、少なくとも第2遅れの時定数を含む第2遅れ要素を含む処理を施して第3出力データを出力する第3処理部と、前記第1遅れの時定数及び前記第2遅れの時定数の少なくとも一方を調整する調整部と、を備える情報処理装置である。本発明の他の特徴については、本明細書の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、所定の対象を精度良く模擬することが可能な情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】情報処理システム1の概略構成を示す図である。
図2】情報処理装置3のハードウェア構成を説明する図である。
図3】シミュレーションモデルSMを説明する概念図である。
図4】学習データ5を説明する図である。
図5】サンプルデータSDを説明する図である。
図6】サンプルデータSDを説明する図である。
図7】代理モデル8を説明する図である。
図8】情報処理装置3の機能ブロックを説明する図である。
図9】学習モデル6を出力するまでの処理の流れを説明するフローチャートである。
図10】各種パラメータを出力するまでの処理の流れを説明するフローチャートである。
図11】代理モデル8が用いる各種パラメータを同定する処理を説明する図である。
図12】情報処理装置4のハードウェア構成を説明する図である。
図13】情報処理装置4の機能ブロックを説明する図である。
図14】ショーケース2に影響を及ぼす要因が代理モデル11に十分に反映されない場合を説明する図である。
図15】ショーケース2のケース内温度の推移を説明する図である。
図16】予め設定された第2遅れの時定数と開口21のサイズとの関係を説明する図である。
図17】調整部414と、代理モデル11との関係を説明する図である。
図18】出力データを出力するまでの処理の流れを説明するフローチャートである。
図19】調整部414と、代理モデル11との関係を説明する図である。
図20】ショーケース2に影響を及ぼす要因が代理モデル11に十分に反映されない場合を説明する図である。
図21】ショーケース2のケース内温度の推移を説明する図である。
図22】調整部414と、代理モデル11との関係を説明する図である。
図23】出力データを出力するまでの処理の流れを説明するフローチャートである。
図24】ショーケース2に影響を及ぼす要因が代理モデル11に十分に反映されない場合を説明する図である。
図25】ショーケース2のケース内温度の推移を説明する図である。
図26】代理モデル12を説明する図である。
図27】情報処理装置5の機能ブロックを説明する図である。
図28】出力データを出力するまでの処理の流れを説明するフローチャートである。
図29】代理モデル13を説明する図である。
図30】情報処理装置6の機能ブロックを説明する図である。
図31】出力データを出力するまでの処理の流れを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
==実施形態==
<<情報処理システム>>
図1は、本実施形態の情報処理システム1の概略構成を示す図である。情報処理システム1は、例えば、所定の機器としてショーケース2のシミュレーションを実行するシステムであり情報処理装置3と、情報処理装置4と、を含む。
【0011】
なお、本実施形態では、所定の機器としてショーケース2を例示して説明するが、これに限られない。所定の機器としては、例えば各種装置、電子・電気回路等の機器であってもよい。
【0012】
<ショーケース>
ショーケース2は、例えば、食品等を冷却し、保管するためのケースである。ショーケース2には、ショーケース2の状態を観測するセンサ20が、複数取り付けられている。なお、図1では、便宜上、複数のセンサ20は、1つのブロックとして描かれている。
【0013】
<情報処理装置3>
情報処理装置3は、ショーケース2のシミュレーションモデルの代わりとなる代理モデルを生成するための装置である。なお、詳細は後述するが、本実施形態の代理モデルは、時間的要素を含まない学習モデル(後述)と、時間的要素を含むモデルとからなる。
【0014】
<情報処理装置4>
情報処理装置4は、情報処理装置3で生成された代理モデルを用いてショーケース2のシミュレーションを実行する装置である。なお、本実施形態では、情報処理装置3,4は、例えば、代理モデルを開発する会社のサーバ室に設けられ、ショーケース2は、所定の店舗に設置されている。
【0015】
[情報処理装置3のハードウェア構成]
図2は、情報処理装置3のハードウェアの一例を示す図である。例示する情報処理装置3は、プロセッサ300、主記憶装置301、補助記憶装置302、入力装置303、出力装置304、及び通信装置305を備える。なお、例示する情報処理装置3は、その全部または一部が、例えば、クラウドシステムによって提供される仮想サーバのように、仮想化技術やプロセス空間分離技術等を用いて提供される仮想的な情報処理資源を用いて実現されるものであってもよい。また、情報処理装置3によって提供される機能の全部または一部は、例えば、クラウドシステムがAPI(Application Programming Interface)等を介して提供するサービスによって実現してもよい。
【0016】
プロセッサ300は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、AI(Artificial Intelligence)チップ等を用いて構成されている。
【0017】
主記憶装置301は、プログラムやデータを記憶する装置であり、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発性メモリ(NVRAM(Non Volatile RAM))等である。
【0018】
補助記憶装置302は、例えば、SSD(Solid State Drive)、ハードディスクドライブ、光学式記憶装置(CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)等)、ストレージシステム、ICカード、SDカードや光学式記録媒体等の記録媒体の読取/書込装置、クラウドサーバの記憶領域等である。補助記憶装置302には、記録媒体の読取装置や通信装置305を介してプログラムやデータを読み込むことができる。補助記憶装置302に格納(記憶)されているプログラムやデータは主記憶装置301に随時読み込まれる。
【0019】
補助記憶装置302には、学習データ8及びサンプルデータSDが記憶されている。詳細は後述するが、学習データ8は、情報処理装置3のモデル生成部311が実行する処理において用いられるデータである。サンプルデータSDは、情報処理装置3のパラメータ同定部313が実行する処理において用いられるデータである。
【0020】
入力装置303は、外部からの入力を受け付けるインタフェースであり、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、カードリーダ、ペン入力方式のタブレット、音声入力装置等である。
【0021】
出力装置304は、処理経過や処理結果等の各種情報を出力するインタフェースである。出力装置304は、例えば、上記の各種情報を可視化する表示装置(液晶モニタ、LCD(Liquid Crystal Display)、グラフィックカード等)、上記の各種情報を音声化する装置(音声出力装置(スピーカ等))、上記の各種情報を文字化する装置(印字装置等)である。
【0022】
入力装置303及び出力装置304は、ユーザとの間で情報の受け付けや情報の提示を行うユーザインタフェースを構成する。
【0023】
通信装置305は、他の装置との間の通信を実現する装置である。通信装置305は、インターネット等の通信ネットワークを介して他の装置との間の通信を実現する、有線方式または無線方式の通信インタフェースであり、例えば、NIC(Network Interface Card)、無線通信モジュール、USBモジュール等である。
【0024】
情報処理装置3には、例えば、オペレーティングシステム、ファイルシステム、DBMS(DataBase Management System)(リレーショナルデータベース、NoSQL等)、KVS(Key-Value Store)等が導入されていてもよい。
【0025】
情報処理システム1が備える各機能は、情報処理装置3のプロセッサ300が、主記憶装置301に格納されているプログラム(「情報処理プログラム」に相当。また、情報処理装置3は、「コンピュータ」に相当)を読み出して実行することにより、もしくは、情報処理システム1を構成するハードウェア(FPGA、ASIC、AIチップ等)によって実現される。情報処理システム1は、各種の情報(データ)を、例えば、データベースのテーブルやファイルシステムが管理するファイルとして記憶する。
【0026】
[シミュレーションモデル]
補助記憶装置302に記憶されている学習データ8は、代理モデルのうち、学習モデルを生成するためのデータである。なお、本実施形態の学習データ8は、ショーケース2を、物理的、電気的に模擬したシミュレーションモデルSMを用いて生成されたデータである。以下、まずは、ショーケース2を模擬したシミュレーションモデルSMについて詳細に説明する。
【0027】
図3は、シミュレーションモデルSMを説明する概念図である。シミュレーションモデルSMは、ショーケース2の特性や挙動に影響を与えるm個の入力データWsi(t)(i=1~m)を入力した場合に、ショーケース2の特性や挙動を示すn個の出力データZsj(t)(j=1~n)を出力する。なお、入力データWsi(t)(i=1~m)と、出力データZsj(t)(j=1~n)とは、所定の期間の時系列データであり、tは時間を意味する。
【0028】
本実施形態では、入力データWsi(t)(i=1~m)は、ショーケース2の挙動を制御するための変数、又はショーケース2の挙動に影響を及ぼす変数についての時系列データである。以下では、m個の入力データWsi(t)(i=1~m)のうち、入力データWs1(t)を冷凍機周波数、入力データWs2(t)を膨張弁の開度、入力データWs3(t)を室外気温、入力データWs4(t)を室内気温として説明する。
【0029】
出力データZsj(t)(j=1~n)は、ショーケース2の挙動を示す変数についてのデータである。以下では、n個の入力データZsj(t)(j=1~n)のうち、出力データZs1(t)をケース内温度、出力データZs2(t)を冷媒配管温度として説明する。
【0030】
ここで、例えば、冷凍機周波数(Ws1(t))を上げると、ケース内温度(Zs1(t))は下がり、冷媒配管温度(Zs2(t))は上がる。一方、膨張弁の開度(Ws2(t))を上げると、ケース内温度(Zs1(t))は下がり、冷媒配管温度(Zs2(t))は下がる。このように、ショーケース2を制御等するための入力データWsi(t)(i=1~m)を変化させると、出力データZsj(t)(j=1~n)は変化する。
【0031】
ところで、シミュレーションモデルSMは、ショーケース2を物理的、電気的に模擬しているため、シミュレーションモデルSMを用いることにより、精度良く、ショーケース2の挙動を把握できる。しかしながら、一般に、シミュレーションモデルSMを用いてシミュレーションを実行すると、計算時間が長くなる。そこで、本実施形態では、シミュレーションモデルSMから得られた入出力の結果を用いて、代理モデル(後述)を生成する。
【0032】
[学習データ]
図4は、本実施形態の学習データ8を説明する図である。学習データ8は、上述の補助記憶装置302に記憶されている。学習データ8は、複数のデータ80を含んでいる。なお、例えば図4の一列目には、データ80aが配列され、二列目には、データ80bが配列されている。また、データ80のそれぞれには、m個の入力データW01~W0mと、n個の出力データZ01~Z0nとが対応付けられたデータである。
【0033】
ここで、複数のデータ80の夫々は、本実施形態では、前述のシミュレーションモデルSMに基づいて生成されたデータである。入力データW0i(i=1~m)と、出力データZ0j(j=1~n)との夫々は、シミュレーションモデルSMの定常解に基づいている。
【0034】
入力データW0i(i=1~m)の夫々は、予め用意された定数値の時系列データである。出力データZ0j(j=1~n)の夫々は、定数値の時系列データである入力データW0i(i=1~m)と、出力データについての任意の初期条件とをシミュレーションモデルSMに入力した場合の、出力データZsj(t)(j=1~n)の夫々の収束値である。
【0035】
つまり、出力データZ0j(j=1~n)は夫々、シミュレーションモデルSMの出力データZsj(t)(j=1~n)において、十分な時間tが経過した後における値である。
【0036】
複数のデータ80のうち、データ80aを例示して説明する。データ80aの入力データは、冷凍機周波数として80[Hz]、膨張弁の開度として0.6、室外気温として20℃、室内気温として27℃が予め与えられたデータであることを意味する。
【0037】
データ80aの出力データは、データ80aの定常的な入力データをシミュレーションモデルSMに入力した場合に、十分な時刻tが経過したときにケース内温度が-2℃、冷媒管温度が38℃に収束したことを意味する。
【0038】
このように、データ80は、定常時の入力データと、定常時の出力データと、の関係を示すデータである。したがって、詳細は後述するが、このようなデータ80を、学習データ8として用いることにより、ショーケース2の定常状態における入出力を模擬する学習モデルを生成することができる。
【0039】
[サンプルデータ]
サンプルデータSDは、ショーケース2のうち、時間的に変化する要素を含むモデルを生成する際に用いられるデータであり、サンプルデータSDは、上述の補助記憶装置302に記憶されている。サンプルデータSDは、シミュレーションモデルSMへの入力と、解とが対応付けられたデータである。本実施形態では、サンプルデータSDの数は、入力データW0i(i=1~m)の数と同じであり、mである。m個のサンプルデータSDの夫々を識別する場合、サンプルデータSD(k=1~m)と呼ぶ。サンプルデータSDは、入力データWki(t)(i=1~m)と、出力データZkj(t)(j=1~n)とを含む。
【0040】
なお、以下の説明において、m個のサンプルデータSD(k=1~m)を区別する必要がない場合は、「サンプルデータSD」と呼ぶ。また、このとき、入力データWki(t)(i=1~m)と、出力データZkj(t)(j=1~n)とを夫々、入力データW(t)(i=1~m)と、出力データZ(t)(j=1~n)と呼ぶ。
【0041】
本実施形態では、サンプルデータSDは、m個の入力データWki(t)(i=1~m)のうち、Wkk(t)を所定の動的な時系列データとし、他の入力データWki(t)(i≠k)を所定の定数値の時系列データとした場合の、シミュレーションモデルSMの解である。
【0042】
図5及び6は、本実施形態のm個のサンプルデータSD(k=1~m)のうち、例えば、サンプルデータSDを説明する図である。図5は、サンプルデータSDの入力データを説明する図であり、図6は、サンプルデータSDの出力データを説明する図である。
【0043】
サンプルデータSDは、m個の入力データW1i(t)(i=1~m)のうち、入力データW11(t)、つまり、冷凍機周波数を所定の動的な時系列データとしている。この際、入力データW11(t)以外の入力データW1i(i≠1)は、所定の定数値の時系列データであり、図5において図示を省略している。
【0044】
サンプルデータSDにおける出力データZ1j(t)(j=1~n)は、入力データW1i(t)(i=1~m)と、所定の初期条件(例えば、出力の初期値)とをシミュレーションモデルSMに入力した場合に出力される出力データである。図6では、出力データZ11(t)、つまり、冷凍機周波数の時系列データのみを示し、他の出力データについては図6において図示を省略している。
【0045】
便宜上、ここでは図示を省略しているが、同様に、サンプルデータSDは、m個の入力データW2i(t)(i=1~m)のうち、入力データW22(t)、つまり、膨張弁の開度を所定の動的な時系列データとしている。他のサンプルデータSD(k=3~m)についても、上記と同様に生成されればよい。
【0046】
なお、本実施形態では、サンプルデータSDは、m個の入力データW3i(t)(i=1~m)の全てを所定の低数値の時系列データとしている。サンプルデータSDにおける入力データW33(t)は、室外気温についての時系列データである。室外気温は、冷凍機周波数や膨張弁の開度といった他の変数に比べ、変動の速度は十分に遅い。このような変数についての入力データは、定数値の時系列データとしてもよい。
【0047】
サンプルデータSDと同様の理由から、サンプルデータSDについても、m個の入力データW4i(t)(i=1~m)の全てを所定の低数値の時系列データとしている。サンプルデータSDにおける入力データW44(t)は、室内気温についての時系列データである。
【0048】
なお、本実施形態では、サンプルデータSDは、シミュレーションモデルSMの解であるとして説明したが、これに限られるものではない。例えば、ショーケース2に対する所定期間の入力データと出力データとの実績値を複数取得し、これらをサンプルデータSDとしてもよい。
【0049】
[代理モデル]
図7は、代理モデル11を説明する図である。代理モデル11は、第1層L1と、第2層L2と、第3層L3との夫々におけるモデルを含む。以下、夫々のモデルについて説明する。
【0050】
第1層L1の遅れモデルDMijは、入力W(i=1~m)に対して、時間的な遅れを施して出力する処理を実行するモデルである。具体的には、遅れモデルDMijは、以下に示す遅れ要素(以下、「第1遅れ要素」と称する)を含む処理を実行する。
【0051】
これらの式において、t(kは整数)は、離散化された時間である。Δt≡t-tk-1は、離散化された時間のステップ間隔である。式1-2のpは整数であって、時刻tk-pは、時刻tに影響を及ぼす時刻の範囲の最も過去の時刻となるよう予め設定される。
【0052】
本実施形態において、第1遅れ要素は、少なくとも第1遅れの時定数Tと、むだ時間dとを含む。なお、第1遅れの時定数Tと、むだ時間dとは、遅れモデルDMij毎に定められるパラメータである。
【0053】
第1層L1の進みモデルAMijは、入力W(i=1~m)に対して、時間的な進みを施して出力する処理を実行する。具体的には、進みモデルAMijは、以下に示す進み要素を含む処理を実行する。
【0054】
本実施形態において、進み要素は、少なくとも進み時定数Tと、ゲインGとを含む。なお、進み時定数Tと、ゲインGとは、遅れモデルDMij毎に定められるパラメータである。
【0055】
なお、第1層L1から出力された出力データXは、「第1出力データ」に相当する。以下、本明細書において同様とする。
【0056】
第2層L2の学習モデル9は、前述の学習データ8を用いて生成されたモデルである。学習モデル9は、第1層L1からの第1出力データX(i=1~m)に対して、時間的な要素を含まない処理を実行し、出力データY~Yを出力する。なお、図7においては、出力データY~Yのうち、出力データYを示している。
【0057】
なお、第2層L2から出力された出力データYは、「第2出力データ」に相当する。以下、本明細書において同様とする。
【0058】
第3層L3の平滑化モデルSMは、入力に対して、時間的な遅れを施して出力する処理を実行する。具体的には、平滑化モデルSMは、以下に示す遅れ要素(以下、「第2遅れ要素」と称する)を含む処理を実行する。
【0059】
本実施形態において、第2遅れ要素は、少なくとも第2遅れの時定数Tαを含む。なお、第2遅れの時定数Tαは、平滑化モデルSM毎に定められるパラメータである。
【0060】
以下では、前述の第1遅れ要素(遅れの時定数T、むだ時間d)と、進み要素(進み時定数T、ゲインG)と、第2遅れ要素(遅れの時定数Tα)とを、「各種パラメータ10」と称する。
【0061】
詳細は後述するが、各種パラメータ10は、第1層L1に入力された入力データW(t)(i=1~m)がシミュレーションモデルSMに入力された際の出力データZsj(t)(j=1~n)と、第3層L3から出力された出力データZ(t)(j=1~n)とを比較し、両者が一致するように、最適化されることによって同定される。
【0062】
なお、第3層L3から出力された出力データZは、「第3出力データ」に相当する。以下、本明細書において同様とする。
【0063】
[情報処理装置3の機能ブロック]
図8は、本実施形態の図2の情報処理装置3の機能ブロックを示す図である。本実施形態の情報処理装置3には、プロセッサ300が所定のプログラムを実行することにより、取得部310と、モデル生成部311と、取得部312と、パラメータ同定部313と、出力部314とが実現される。
【0064】
取得部310は、補助記憶装置302に記憶された学習データ8を取得する。
【0065】
モデル生成部311は、取得部310が取得した学習データ8に基づき、代理モデル11の第2層L2の学習モデル9を生成する。学習モデル9は、学習データ8が含む複数のデータ80の夫々について、入力データを入力した場合に、対応する出力データを出力するよう学習済みの学習モデルである。
【0066】
取得部312は、補助記憶装置302に記憶されたサンプルデータSDを取得する。
【0067】
パラメータ同定部313は、詳細は後述するが、サンプルデータSDに基づいて、代理モデル11の第1層L1の遅れモデルDMij及び進みモデルAMij、第3層L3の平滑化モデルDMで用いられる各種パラメータ10を同定する。
【0068】
出力部314は、モデル生成部311が生成した学習モデル9と、パラメータ同定部313が同定した各種パラメータ10とを、情報処理装置4の補助記憶装置402(後述)に出力する。
【0069】
<学習モデルを出力するまでの処理>
図9は、情報処理装置3が図7の学習モデル9を生成するまでの処理の流れを説明するフローチャートである。学習モデル9を生成するまでの処理は、ステップS101~ステップS103を含んでいる。
【0070】
先ず、取得部310は、ステップS101において、補助記憶装置302から学習データ8を取得する。図4に示した学習データ8は、ステップS101において取得部310が取得した学習データの一例である。
【0071】
次いで、モデル生成部311は、ステップS102において、図4に示した学習データ8を用いて、学習モデル9を生成する。
【0072】
本実施形態では学習モデル9がニューラルネットワークであるものとして説明する。なお、学習モデル9はSVM(Support Vector Machine)、ベイジアンネットワーク、回帰木等、他の学習アルゴリズムで構築された学習モデルであってよい。
【0073】
モデル生成部311は、学習データ8における入力データを、図示しないニューラルネットワークの入力層に入力し、出力層からデータを取得する。そして、モデル生成部311は、出力層から出力されたデータと、学習データ8における出力データとを比較し、両者が一致するように、演算処理に用いるパラメータを最適化する。
【0074】
演算処理に用いるパラメータとは、例えばニューロン間の重み(結合係数)、各ニューロンで用いられる活性化関数の係数等である。パラメータの最適化の方法は特に限定されないが、モデル生成部311は、例えば誤差逆伝播法を用いてパラメータの最適化を行う。
【0075】
ここで、学習モデル9の学習に用いられる学習データ8の夫々は、前述のように定数値の時系列データである。そのため、ここでの学習において、複数のデータ80の夫々が仮に動的な時系列データである場合に比べると、計算のコストは小さい。
【0076】
次いで、出力部314は、ステップS103において、モデル生成部311が生成した学習モデル9を、情報処理装置4の補助記憶装置402(後述)に出力する。この結果、図7の代理モデル11のうち、第2層L2の学習モデル9が得られることになる。
【0077】
<各種パラメータを出力するまでの処理>
図10は、情報処理装置3が各種パラメータ10を出力するまでの処理の流れを説明するフローチャートである。
【0078】
各種パラメータ10を出力するまでの処理は、ステップS201~ステップS204を含んでいる。
【0079】
先ず、取得部312は、ステップS201において、補助記憶装置302に記憶されているm個のサンプルデータSD(k=1~m)を取得する。
【0080】
次いで、パラメータ同定部313は、ステップS202において、冷凍機周波数の入力データW11(t)に対するパラメータ10の同定を実行する。
【0081】
具体的には、パラメータ同定部313は、サンプルデータSDに基づいて、入力データW11(t)に施すための遅れモデルDM1j、進みモデルAM1j及び平滑化モデルSMが用いる各種パラメータ10の同定を実行する。
【0082】
更に具体的には、パラメータ同定部313は、入力データW1i(t)(i=1~m)がシミュレーションモデルSMに入力された際の出力データZsj(t)(j=1~n)と、第1層L1に入力され、第3層L3から出力された第3出力データZ1j(t)(j=1~n)とを比較し、両者が一致するように、最適化することによって、入力データW11(t)に対するパラメータ10を同定する。
【0083】
図11は、入力データW11(t)に対するパラメータ10を同定した代理モデル11を用いた計算結果の一例を説明する図である。図11において、サンプルデータSDの出力Z1i(t)(i=1~m)のうちZ11(t)が、破線で示されている。
【0084】
また、図11において、パラメータ同定部313によって遅れモデルDM1j、進みモデルAM1j及び平滑化モデルSMについての各種パラメータ10が同定され、第3層L3から出力された第3出力データZ(t)~Z(t)のうちZ(t)が、実線で示されている。Zs1(t)と、Z(t)とは、いずれもケース内温度についての時系列データである。
【0085】
このような同定処理がされることにより、代理モデル11を用いた場合であっても、冷凍機周波数の入力データW11(t)に対し、シミュレーションモデルSMと同等の精度の出力を得ることができる。
【0086】
パラメータ同定部313は、ステップS202の処理を、入力データW11(t)以外の入力データに用いられる各種パラメータ10について実行する(ステップS203)。
【0087】
次いで、ステップS202に戻り、パラメータ同定部313は、膨張弁の開度の入力データW22(t)に対する、遅れモデルDM2j、進みモデルAM2j及び平滑化モデルSMについての各種パラメータ10の同定を実行する。
【0088】
具体的には、パラメータ同定部313は、サンプルデータSDに基づいて、入力データW22(t)に施すための遅れモデルDM2j、進みモデルAM2j及び平滑化モデルSMが用いる各種パラメータ10の同定を実行する。
【0089】
サンプルデータSDでは、膨張弁の開度以外の入力データW2i(t)(i≠1)は、定数値の時系列データである。従って、上記の冷凍機周波数の場合と同様にして、サンプルデータSDを用いて、遅れモデルDM2j、進みモデルAM2j及び平滑化モデルSMについての各種パラメータ10の同定を実行することができる。
【0090】
上記と同様にして、パラメータ同定部313は、サンプルデータSDを用いて、未定の遅れモデルDMkj、進みモデルAMkj及び平滑化モデルSMについての各種パラメータ10の同定を実行する(k=5~m)。
【0091】
なお、室外気温については、冷凍機周波数や膨張弁の開度といった他の変数に比べ、変動の速度は十分に遅く、一定とみなすことができる。そのため、室外気温に対するパラメータ10の同定は実行しなくてもよい。室内気温についても同様である。
【0092】
なお、本実施形態では、サンプルデータSD(l=1~m)を用いて各種パラメータ10の同定を実行する毎に、平滑化モデルSMについての各種パラメータ10が同定される。
【0093】
このような場合、例えば、複数の同定された平滑化モデルSMのうち、一の平滑化モデルSMについての各種パラメータ10を選択すればよい。例えば、第3層L3から出力された第3出力データZ(t)(j=1~n)と、シミュレーションモデルSMに入力された際の出力Zsj(t)(j=1~n)とを全てのjについて比較した場合の誤差が最も小さくするものを選択すればよい。
【0094】
次いで、出力部314は、ステップS204において、遅れモデルDMlj、進みモデルAMlj及び平滑化モデルSM(l=1~m)が用いる同定された各種パラメータ10を、情報処理装置4の補助記憶装置402(後述)に出力する。
【0095】
<各種パラメータが同定された結果>
以上説明した処理により、各種パラメータ10が同定されることによって、代理モデル11が生成される。代理モデル11は、シミュレーションモデルSMよりも高速で計算を実行することができ、かつシミュレーションモデルと同等の精度で出力データを出力することができる。
【0096】
[情報処理装置4のハードウェア構成]
図1の情報処理装置4は、上述したように、代理モデルを用いてシミュレーションを実行する装置である。図12は、情報処理装置4のハードウェアの一例を示す図である。例示する情報処理装置4は、ショーケース2の代理モデル11を用いて、ショーケース2のシミュレーションを実行する装置である。情報処理装置4のハードウェア構成は、情報処理装置3のハードウェア構成と同様であるため、共通する部分の説明は省略する。
【0097】
情報処理装置4の補助記憶装置302には、前述の学習モデル9と、各種パラメータ10とが記憶されている。学習モデル9は、図9のステップS103において出力部314が出力したものである。各種パラメータ10は、図10のステップS204において出力部314が出力したものである。
【0098】
[情報処理装置4の機能ブロック]
図13は、本実施形態の情報処理装置4の機能ブロックを示す図である。本実施形態の情報処理装置4には、プロセッサ400が所定のプログラムを実行することにより、取得部410と、処理部411と、処理部412と、処理部413と、調整部414と、出力部415とが実現される。
【0099】
[取得部410]
取得部410は、ショーケース2に対する入力データを取得する。ここでの入力データは、ショーケース2を制御するために、ショーケース2に対して実際に入力された入力データW(t)(i=1~m)である。なお、入力データW(t)の変数は夫々、学習データ8の入力データW0i(t)の変数に対応している(i=1~m)。
【0100】
[処理部411]
処理部411(第1処理部に相当)は、代理モデル11(図7)の第1層L1に相当する処理を実行する。処理部411は、入力データW(t)(i=1~m)に対して、所定の時間要素を含む処理を施して第1出力データX(t)(i=1~m)を出力する。このとき、処理部411は、ショーケース2に対して入力データW(t)(i=1~m)が入力された際にショーケース2において入力データが変化するよう、所定の時間要素を含む処理を施す。
【0101】
処理部411は、先ず、入力データW(t)(i=1~m)に対して、第1遅れ要素を含む処理を施して出力する。具体的には、処理部411は、入力データW(t)を、遅れモデルDMij図7)に入力して出力を得る(i=1~m)。
【0102】
処理部411は、更に、入力データW(t)(i=1~m)に対して、進み要素を含む処理を更に施して出力する。具体的には、処理部411は、入力データW(t)を、進みモデルAMij図7)に入力して出力を得る(i=1~m)。
【0103】
そして、処理部411は、遅れモデルDMijの出力と、進みモデルAMijの出力との和を、第1出力データX(t)(i=1~m)とする。
【0104】
[処理部412]
処理部412(第2処理部に相当)は、代理モデル11(図7)の第2層L2に相当する処理を実行する。処理部412は、学習モデル9を用いて、処理部411からの第1出力データX(t)(i=1~m)に対応する第2出力データY(t)(j=1~n)を出力する。
【0105】
[処理部413]
処理部413(第3処理部に相当)は、代理モデル11(図7)の第3層L3に相当する処理を実行する。処理部413は、第2出力データY(t)(j=1~n)に対して、第2遅れ要素を含む処理を施して第3出力データZ(t)(j=1~n)を出力する。具体的には、処理部413は、第2出力データYを、平滑化モデルSM図7)に入力して第3出力データZ(t)(j=1~n)を得る。
【0106】
[調整部414]
調整部414は、第1遅れの時定数T及び第2遅れの時定数Tαの少なくとも一方を調整する。本実施形態では、調整部414は、第2遅れの時定数Tαのみを調整することとする(詳細は後述)。
【0107】
所定の機器の状態に影響を及ぼす要因が、上述の方法で生成された代理モデル11に十分に反映されない場合、代理モデル11は機器を十分な精度で模擬することができない。調整部414は、そのような場合に、第2遅れの時定数Tαを調整することにより、代理モデル11の精度を向上させるための処理を実行する。調整部414が実行する処理の詳細については後述する。
【0108】
[出力部415]
出力部415は、第3出力データZ(t)(j=1~n)を出力装置404に出力する。
【0109】
[調整部414の処理の詳細]
所定の機器の状態に影響を及ぼす要因が代理モデル11に十分に反映されない場合の一例として、所定の機器の構造を示す情報が可変である場合がある。
【0110】
調整部414は、所定の機器の構造を示す情報に基づいて、第2遅れの時定数Tαを調整する。以下、所定の機器の例として本実施形態のショーケース2の例を挙げて説明する。
【0111】
また、以下では、構造を示す情報の例として、ショーケース2の内部空間から内部空間の外部へ流れる空気の流量(以下、単に「空気の流量」と称する)に影響を及ぼす構造を示す情報を挙げて説明する。
【0112】
図14は、ショーケース2に影響を及ぼす要因が代理モデル11に十分に反映されない場合を説明する図である。本実施形態のショーケース2は、ショーケース2の内部と、ショーケース2の外部とを接続する開口21を有している。開口21は、そのサイズを調節可能に設けられている。開口21は、空気の流量に影響を及ぼす構造の一例である。
【0113】
本実施形態では、開口21の形状は円形であり、開口21のサイズとは開口21の口径とする。しかし、開口21の形状は円形に限られず、開口21のサイズは、開口21の面積を特定することができる指標であればよい。
【0114】
なお、ショーケース2の内部には冷却器が設けられているが、ここでは図示を省略している。
【0115】
図14(a)に示すショーケース2の状態は、開口21のサイズがL1である。図14(b)に示すショーケース2の状態は、開口21のサイズがL2である。ここで、L2はL1よりも大きいとする。
【0116】
図15は、ショーケース2のケース内温度の推移を説明する図であり、横軸は時間、縦軸はケース内温度である。この図において、実線は開口21のサイズがL1の場合、破線は開口21のサイズがL2の場合のケース内温度の推移を示している。
【0117】
ここで、時刻tよりも前の時刻においては、ショーケース2に設けられた冷却器(図14に図示せず)がオンの状態であり、時刻tにおいて冷却器がオンからオフに切り替わり、時刻t以後の時刻においては冷却器がオフの状態を維持する場合を想定している。
【0118】
この場合、いずれの開口21のサイズであっても、時刻t以前の時刻においてはケース内温度が所定の温度Tに維持されている。
【0119】
そして、時刻t以後の時刻においては、いずれの開口21のサイズであっても、ケース内温度は上昇し、ショーケース2が設置された場所の室内気温である温度Tに収束する。ここで、開口21のサイズが大きいほど、温度Tに収束するまでの時間は短い。
【0120】
このように、開口21のサイズが可変である場合等に、上述の方法で生成された代理モデル11によってショーケース2を十分な精度で模擬することは困難である。
【0121】
具体的には、上述の方法で代理モデル11を生成する際に、開口21のサイズは所定の一定値に維持される。従って、開口21のサイズが所定の一定値からの差が大きいほど、第3出力データであるケース内温度の精度は低下する。
【0122】
そこで、調整部414は、ショーケース2に設けられた開口21のサイズに応じて、第2遅れの時定数Tαを調整する。このとき、調整部414は、予め設定された第2遅れの時定数Tαと開口21のサイズとの関係を用いて、第2遅れの時定数Tαを調整する。
【0123】
調整部414が第2遅れの時定数Tαを調整する手順について、図16及び図17を用いて説明する。
【0124】
図16は、予め設定された第2遅れの時定数Tαと開口21のサイズとの関係を説明する図である。図16の横軸は開口21のサイズであり、縦軸は第2遅れの時定数Tαである。この図において、第2遅れの時定数Tαと開口21のサイズとの関係は、開口21のサイズが大きいほど、第2遅れの時定数Tαが小さくなるように設定されている。
【0125】
調整部414は、図16の関係を用いて、開口21のサイズが大きいほど、第2遅れの時定数Tαが小さくなるように調整する。調整部414は、例えば、開口21のサイズがL1の場合には第2遅れの時定数をTα1とし、開口21のサイズがL2の場合には第2遅れの時定数をTα2とする。
【0126】
図17は、調整部414と、代理モデル11との関係を説明する図である。調整部414は、上述の処理によって第2遅れの時定数Tαを調整すると、第2遅れの時定数Tαを第3層L3に出力し、平滑化モデルに反映させる。
【0127】
以上説明した情報処理装置4の構成によれば、ショーケース2の開口21のサイズが可変である場合を考慮に入れることができる。これによって、ショーケース2を精度良く模擬することができる。
【0128】
なお、以上の説明では、空気の流量に影響を及ぼす構造として開口21を挙げたが、これに限られるものではない。空気の流量に影響を及ぼす構造の他の例として、ショーケース2の内部空間にファンが設置されている場合には、ファン等も挙げられる。
【0129】
ファンの回転数が高いほど空気の流量が大きく、ケース内温度が収束するまでの時間は短いと考えられる。また、ファンの回転数が低いほど空気の流量が小さく、ケース内温度が収束するまでの時間は長いと考えられる。
【0130】
従って、ファンの回転数に基づいて第2遅れの時定数Tαを調整することにより、ファンの回転数に応じたケース内温度の推移を精度良く模擬することができる。
【0131】
<第3出力データを出力するまでの処理>
図18は、本実施形態の情報処理方法により、情報処理装置4が第3出力データを出力するまでの処理の流れを説明するフローチャートである。第3出力データを出力するまでの処理は、ステップS301~ステップS307を含んでいる。
【0132】
先ず、調整部414は、ステップS301において、ショーケース2に設けられた開口21のサイズに基づいて、第2遅れの時定数を調整する。ここで調整された第2遅れの時定数は、第3層L3に出力され、平滑化モデルに反映される(図17)。
【0133】
次いで、取得部410は、ステップS302において、ショーケース2に対する入力データW(t)(i=1~m)を取得する。
【0134】
次いで、処理部411は、ステップS303において、入力データW(t)(i=1~m)に対して、第1遅れ要素を含む処理を施す。ステップS303は、代理モデル(図17)の第1層L1の処理に相当する。
【0135】
次いで、処理部411は、ステップS304において、入力データW(t)に対して、進み要素を含む処理を含む処理を更に施し、第1出力データX(t)を出力する(i=1~m)。
【0136】
次いで、処理部412は、ステップS305において、学習モデル9を用いて、処理部411から出力された第1出力データX(t)(i=1~m)に対応する第2出力データY(t)(j=1~n)を出力する。ステップS305は、代理モデル(図17)の第2層L2の処理に相当する。
【0137】
次いで、処理部413は、ステップS306において、第2出力データY(t)(j=1~n)に対して、第2遅れ要素を含む処理を施して、第3出力データZ(t)(j=1~n)を出力する。ステップS306は、代理モデル(図17)の第3層L3の処理に相当する。
【0138】
次いで、出力部415は、ステップS307において、第3出力データZ(t)(j=1~n)を、出力装置404に出力する。
【0139】
以上説明した処理によれば、ショーケース2の開口21のサイズが可変である場合を考慮に入れることができる。これによって、ショーケース2を精度良く模擬することができる。
【0140】
以上説明したように、本実施形態では、調整部414は、第2遅れの時定数Tαのみを調整する態様を示した。これに代えて、調整部414は、第1遅れの時定数Tを調整することとしてもよい(図19)。この場合、調整部414は、第1遅れの時定数Tを調整すると、第1遅れの時定数Tを第1層L1に出力し、遅れモデル及び進みモデルに反映させる。
【0141】
調整部414が第1遅れの時定数Tを調整することが好ましい場合の例として、ショーケース2の空気の流量(内部空間から内部空間の外部へ流れる空気の流量)に影響を及ぼす構造として、内部空間にファンが設置されている場合が挙げられる。
【0142】
一般に、ファンをオン状態からオフ状態に切り替える場合は、ファンをオフ状態からオン状態に切り替える場合に比べて、実際にファンが所定の回転数に達するまでの時間が遅い場合がある。
【0143】
従って、このような場合、ファンがオン状態の期間における第1遅れの時定数Td1を、ファンがオフ状態の期間における第1遅れの時定数Td2よりも短くなるように調整すればよい。
【0144】
これによって、ファンをオン状態からオフ状態に切り替える操作と、ファンをオフ状態からオン状態に切り替える操作が含まれる場合であっても、ケース内温度の推移を精度良く模擬することができる。
【0145】
また、ショーケースを例示して説明したが、調整部414の処理は、ショーケース以外の機器に対しても適用可能である。例えば、冷蔵庫、冷凍庫、温蔵庫等のように、内部空間を有する機器に対して適用することができる。そして、内部空間と、内部空間の外部とを接続する開口21が機器に設けられている場合は、開口21のサイズが、機器の構造を示す情報となる。この場合、第3出力データZは、機器に設けられた内部空間の温度とする。
【0146】
==第2実施形態==
前述のように、所定の機器の状態に影響を及ぼす要因が、上述の方法で生成された代理モデル11に十分に反映されない場合、代理モデル11は機器を十分な精度で模擬することができない。本実施形態の情報処理システムは、そのような場合であって、第1実施形態とは異なる場合において、所定の機器を模擬する精度を向上させるシステムである。本実施形態の情報処理システムは、第1実施形態と比べると、調整部414が実行する処理のみが異なる。
【0147】
先ず、所定の機器の状態に影響を及ぼす要因が代理モデル11に十分に反映されない場合の、第1実施形態以外の例について説明する。本実施形態でも、所定の機器の例としてショーケース2を挙げて説明する。
【0148】
図20は、ショーケース2に影響を及ぼす要因が代理モデル11に十分に反映されない場合を説明する図である。図20に示すショーケース2の状態は、冷却器23によってケース内温度が所定の温度Tに維持されている。一方、ショーケース2が設置された場所の室内気温は、温度Tである。
【0149】
また、ショーケース2は、ショーケース2の内部と、ショーケース2の外部とを接続する開口21を有している。
【0150】
図21は、ショーケース2のケース内温度の推移を説明する図であり、横軸は時間、縦軸はケース内温度である。この図において、時刻tよりも前の時刻においてはショーケース2に設けられた冷却器23がオフの状態であり、時刻tから時刻tの時刻においては冷却器23がオンの状態であり、時刻tよりも後の時刻においては冷却器23がオフの状態を維持する場合を想定している。また、この図において、実線は第3出力データZ(t)、破線はY(t)を示している。
【0151】
この場合、時刻tよりも前の時刻においては、ケース内温度は、室内気温である温度Tを維持する。時刻t以後の時刻においては、ケース内温度は下降し、所定の温度Tを目標に推移する。時刻t以後の時刻においては、ケース内温度は上昇し、温度Tを目標に推移する。
【0152】
この過程において、ケース内温度が時刻tから温度Tを目標として収束するまでの時間と、時刻tから温度Tを目標として収束するまでの時間とは、一般に異なる。
【0153】
このような現象は、上述の方法で生成された代理モデル11によって十分な精度で模擬することは困難である。これは、上述の方法で生成された代理モデル11は、目標とする温度が温度Tから温度Tに変化した後と、目標とする温度が温度Tから温度Tに変化した後とについて、同一の時定数が用いられるためである。
【0154】
従って、上述の方法で生成された代理モデル11によれば、ケース内温度が時刻tから温度Tを目標として収束するまでの早さと、時刻tから温度Tを目標として収束するまでの早さとが一致し、図21に示した現象を模擬することができない。
【0155】
そこで、調整部414は、ケース内温度の目標とする温度が、一方の温度から他方の温度へ変化した後の第2遅れの時定数Tαと、これとは逆に、他方の温度から一方の温度へ変化した後の第2遅れの時定数Tαとが異なるように、第2遅れの時定数Tαを調整する。以下、調整部414が実行する処理の詳細を説明する。
【0156】
図22は、調整部414と、代理モデル11との関係を説明する図である。調整部414は、第3出力データZと、第2出力データYとに基づいて、第2遅れの時定数Tαの値を調整する。調整部414は、第2遅れの時定数Tαの値を調整すると、第2遅れの時定数Tαを第3層L3に出力し、平滑化モデルに反映させる。
【0157】
この例では、第3出力データZと、第2出力データYとは、ケース内温度についての出力データである。第3出力データZは、模擬されたケース内温度である。一方、第2出力データYは、ケース内温度の目標とする温度である。
【0158】
本実施形態では、調整部414は、第3出力データZと、第2出力データYとの大小関係に基づいて、第2遅れの時定数Tαの値を調整する。
【0159】
この例では、調整部414は、第3出力データZが、第2出力データYよりも大きい場合(時刻tから時刻t)に、第2遅れの時定数がTα3となるように調整する。更に、調整部414は、第3出力データZが、第2出力データYよりも小さい場合(時刻tよりも前の時刻と、tよりも後の時刻)に、第2遅れの時定数がTα4となるように調整する。このとき、調整部414は、時定数Tα3が時定数Tα4よりも大きくなるように調整する。
【0160】
以上説明した情報処理装置4の構成によれば、ショーケース2のケース内温度が2つの温度の間で変化する場合に、変化する方向に応じた時定数となるように調整することができる。これによって、ショーケース2を精度良く模擬することができる。
【0161】
<第3出力データを出力するまでの処理>
図23は、本実施形態の情報処理方法により、情報処理装置4が第3出力データを出力するまでの処理の流れを説明するフローチャートである。出力データを出力するまでの処理は、ステップS401~ステップS407を含んでいる。
【0162】
なお、第1実施形態で示した図18のフローチャートは一の時間ステップにおける処理のみを示したが、図23では、全ての時間ステップにおける処理を示している。
【0163】
ステップS401~ステップS404、ステップS406及びステップS407についてはそれぞれ、第1実施形態のステップS302~ステップS307の処理と同様であるため、説明は省略する。本実施形態の処理は、ステップS404の後に、ステップS405を含む。
【0164】
ステップS405において、調整部414は、ステップS404において出力された第2出力データY(t)と、前回の時間ステップについてのステップS406において出力された第3出力データZ(ti-1)とに基づいて、第2遅れの時定数Tαを調整する。具体的には、調整部414は、第2出力データY(t)と、第3出力データZ(ti-1)との大小関係に基づいて、第2遅れの時定数Tαを調整する。ここで調整された第2遅れの時定数Tαは、第3層L3に出力され、次の時間ステップにおいて平滑化モデルに反映される。
【0165】
この例では、図21に示すように、時刻tの直後から時刻tは、第3出力データZ(t)の方が、第2出力データY(t)よりも大きい。このような時間帯では、調整部414は、第2遅れの時定数をTα3に設定する。
【0166】
また、この例では、時刻tの直後からは、第3出力データZ(t)の方が、第2出力データY(t)よりも小さい。このような時間帯では、調整部414は、第2遅れの時定数をTα4に設定する。この例では、調整部414は、第2遅れの時定数Tα3を、第2遅れの時定数をTα4よりも小さく設定する。
【0167】
以上説明した処理によれば、ショーケース2のケース内温度が2つの温度の間で変化する場合に、変化する方向に応じた時定数となるように調整することができる。これによって、ショーケース2を精度良く模擬することができる。
【0168】
以上、ショーケースのケース内温度を例示して説明したが、調整部414は、ショーケース以外の機器や、温度以外の状態を示す量にも適用可能である。
【0169】
つまり、調整部414は、所定の機器の目標とする状態が、一の状態(「第1状態」に相当)から他の状態(「第2状態」に相当)へ変化した後の第2遅れの時定数Tαの値(「第1の値」に相当)と、他方の状態から一方の状態へ変化した後の第2遅れの時定数Tαの値(「第2の値」に相当)とが異なるように第2遅れの時定数Tαの値を調整する。
【0170】
ここで、所定の機器の所定の箇所の温度を模擬する場合、第2出力データYは、所定の機器の所定の箇所の目標とする温度とし、第3出力データZは、所定の機器の所定の箇所の温度とする。
【0171】
==第3実施形態==
図24は、ショーケース2に影響を及ぼす要因が代理モデル11に十分に反映されない場合を説明する図である。この図に示すショーケース2の状態は、ケース内温度が所定の温度Tに維持されている。一方、ショーケース2が設置された場所の室内気温は、温度Tである。
【0172】
また、ショーケース2の内部には、物体22が配置されている。物体22は、例えば食品等の商品である。物体22は、ショーケース2と熱のやり取りをするが、物体22の熱容量は、ケース内の空気の熱容量とは一般に異なる。
【0173】
図25は、ショーケース2のケース内温度の推移を説明する図であり、横軸は時間、縦軸はケース内温度である。この図において、実線は物体22が配置されていない場合、破線は物体22が配置されている場合のケース内温度の推移を示している。
【0174】
ここで、時刻tよりも前の時刻においては、ショーケース2に設けられた冷却器23がオフの状態であり、時刻tにおいて冷却器23がオフからオンに切り替わり、時刻t以後の時刻においては冷却器23がオンの状態を維持する場合を想定している。
【0175】
この場合、物体22の有無に関わらず、時刻t以前の時刻においてはケース内温度が室内気温である温度Tに維持されている。
【0176】
そして、時刻t以後の時刻においては、物体22の有無に関わらず、ケース内温度は下降し、所定の温度Tに収束する。この過程において、物体22が配置されていない場合の方が、温度Tに収束するまでの時間は短い。つまり、物体22が配置されていることによって、ショーケース2の冷却が阻害されることがあり得る。
【0177】
上述した代理モデル11を生成する方法では、このような物体22が配置される場合は考慮されていない。従って、内部に物体22が配置されているショーケース2を、上述の方法で生成された代理モデル11によって十分な精度で模擬することは困難である。
【0178】
本実施形態の情報処理システムは、上述のような現象を精度良く模擬するためのシステムである。以下、詳述する。
【0179】
[代理モデル]
図26は、本実施形態の代理モデル12を説明する図である。本実施形態の代理モデル12は、第1層L1と、第2層L2と、第3層L3と、第4層L4の夫々におけるモデルを含むが、第1~第3層(L1~L3)については第1実施形態と同様であるため、この図において簡略化して「代理モデル11」と示されている。
【0180】
本実施形態の代理モデル12においては、第1層L1には、入力データW(i=1~m)が入力され、第4層L4には、入力データWm+1が入力される。そして、第3層L3からは、第3出力データZが出力される。本実施形態においても、第3出力データZはケース内温度とする。以下、第4層L4について説明する。
【0181】
第4層L4におけるモデルは、物体22の状態を模擬するモデルである。本実施形態では、ショーケース2のケース内温度を入力データとし、物体22の温度を出力データとして出力するモデルである。本実施形態では、ここでのモデルは遅れモデルDMであり、入力データWm+1に対して、時間的な遅れを施して出力データを出力する。
【0182】
なお、第4層L4から出力された出力データは、「第4出力データ」に相当する。以下、本明細書において同様とする。
【0183】
具体的には、遅れモデルDMには、第3出力データZが、入力データWm+1として入力される。更に、第1層L1には、第1実施形態で示した入力データW(i=1~m)と、第4出力データとが入力される。
【0184】
つまり、代理モデル12は、第3出力データZとして出力されたケース内温度を入力の一部として用い、後の時間ステップにおける出力にフィードバックさせるモデルといえる。これによって、ショーケース2と、物体22との熱のやり取りを考慮に入れることができ、図25を用いて説明した現象を精度良く模擬することができる。
【0185】
なお、代理モデル12に含まれるパラメータは、代理モデル11に含まれる各種パラメータ10に加え、第4層L4に含まれるパラメータからなる。代理モデル12に含まれるこれらのパラメータは、図10を用いて説明した方法と同様の方法で同定される。
【0186】
<情報処理装置>
本実施形態の情報処理システムは、第1実施形態と比べると、情報処理装置4に代えて情報処理装置5を用いる点で異なっている。図27は、本実施形態の情報処理装置5の機能ブロックを説明する図である。
【0187】
本実施形態の情報処理装置5は、第1実施形態の情報処理装置4と比べると、取得部410が扱うデータと、処理部514(第4処理部に相当)を更に備える点と、調整部414を備えない点とで異なっている。取得部410が扱うデータと、処理部514以外の構成については第1実施形態と同様であるため、ここでは取得部410、処理部514について説明する。
【0188】
[取得部410]
取得部410は、本実施形態では、ショーケース2に対する入力データW(i=1~m+1)を取得する。これらのうち、入力データW(i=1~m)は、第1実施形態の入力データW(i=1~m)と同様である。
【0189】
一方、入力データWm+1は、第3出力データZである。つまり、取得部410は、各時間ステップごとに、処理部413から出力される第3出力データZを取得する。
【0190】
[処理部514]
処理部514は、機器(「第1の対象」に相当)の状態に影響を及ぼす要因(「第2の対象」に相当)を模擬し、第3出力データZに対応する第4出力データを出力する。ショーケース2は、所定の機器の一例であり、物体22は、所定の危機に影響を及ぼす要因の一例である。
【0191】
本実施形態では、処理部411に入力される入力データは、処理部514によって出力された第4出力データを含む。図26に示した代理モデル12の例では、第1層L1(図示を省略)に入力される入力データは、入力データW(i=1~m)と、第4出力データである。
【0192】
以上説明した情報処理装置5の構成によれば、ショーケース2に影響を及ぼす要因が存在する場合に、そのような要因がショーケース2に及ぼす影響を考慮に入れることができる。これによって、ショーケース2を精度良く模擬することができる。
【0193】
<第3出力データを出力するまでの処理>
図28は、本実施形態の情報処理方法により、情報処理装置5が第3出力データZを出力するまでの処理の流れを説明するフローチャートである。第3出力データZを出力するまでの処理は、ステップS501~ステップS508を含んでいる。
【0194】
ステップS501、ステップS504~ステップS508についてはそれぞれ、第1実施形態のステップS302~ステップS307の処理と同様であるため、説明は省略する。本実施形態の処理は、ステップS501の後に、ステップS502と、ステップS503とを含む。
【0195】
ステップS502において、取得部410は、付加された対象の入力データである第3出力データZを取得する。ここでの第3出力データZは、1つ前の時間ステップにおける第3出力データZである。
【0196】
ステップS503において、処理部514は、遅れモデルDM(図26)を用いて、第3出力データZに対応する第4出力データを出力する。
【0197】
ステップS504以降の処理は、第1実施形態のステップS303以降の処理と同様である。なお、本実施形態では、ステップS504において、処理部411は、入力データW(i=1~m)と、第4出力データに対して、第1遅れ要素を含む処理を施す。
【0198】
以上説明した処理によれば、ショーケース2に影響を及ぼす要因が存在する場合に、そのような要因がショーケース2に及ぼす影響を考慮に入れることができる。これによって、ショーケース2を精度良く模擬することができる。
【0199】
以上、ショーケースを例示して説明したが、情報処理装置5の処理は、ショーケース以外の機器に対しても適用可能である。つまり、情報処理装置5の処理は、機器の所定の箇所の温度を第3出力データZjとして模擬する場合に、機器と熱のやり取りをする要因(例えば、上述の物体22)が存在する場合にも適用可能である。
【0200】
機器と熱のやり取りをする要因としては、例えば、機器の内部空間に存在している要因であってもよいし、機器の外側の表面に接触している要因であってもよい。処理部514は、機器と熱のやり取りをする要因の温度を第4出力データとして出力する。
【0201】
==第4実施形態==
本実施形態の情報処理システムは、第3実施形態で述べた物体22が配置された場合のような、機器の状態に影響を及ぼす要因が存在する場合に、機器を精度良く模擬することが可能なシステムの他の例である。
【0202】
[代理モデル]
図29は、本実施形態の代理モデル13を説明する図である。代理モデル13は、第1層L1と、第2層L2と、第3層L3との夫々におけるモデルを含む。第1~第3層(L1~L3)については第1実施形態と同様であるが、第1層L1に入力される入力データが異なっている。
【0203】
本実施形態の代理モデル13においては、第1層L1には、入力データW(i=1~m+1)が入力される。そして、第3層L3からは、第3出力データZが出力される。本実施形態においても、第3出力データZはケース内温度とする。
【0204】
入力データW(i=1~m+1)のうち、入力データW(i=1~m)は、第1実施形態で示した入力データである。一方、入力データWm+1は、ケース内温度である。本実施形態では、入力データWm+1として、第3出力データZを用いる。
【0205】
つまり、代理モデル13は、第3出力データZとして出力されたケース内温度を入力の一部として用い、後の時間ステップにおける出力にフィードバックさせるモデルといえる。これによって、ショーケース2と、物体22との熱のやり取りを考慮に入れることができ、図25を用いて説明した現象を精度良く模擬することができる。
【0206】
なお、代理モデル13に含まれるパラメータは、代理モデル11に含まれる各種パラメータ10に加え、遅れモデルDMm+1jと、進みモデルAMm+1jに含まれるパラメータからなる。代理モデル13に含まれるこれらのパラメータは、図10を用いて説明した方法と同様の方法で同定される。
【0207】
<情報処理装置>
本実施形態の情報処理システムは、第3実施形態と比べると、情報処理装置5に代えて情報処理装置6を用いる点で異なっている。図30は、本実施形態の情報処理装置6の機能ブロックを説明する図である。
【0208】
本実施形態の情報処理装置6は、第3実施形態の情報処理装置5と比べると、処理部611を備える点と、処理部411及び処理部514を備えない点とで異なっている。処理部611以外の構成については第3実施形態と同様であるため、説明は省略する。
【0209】
[処理部611]
処理部611は、所定の機器(「第1の対象」に相当)の状態に影響を及ぼす要因(「第2の対象」に相当)を模擬したモデルを含む。ショーケース2は、所定の機器の一例であり、物体22は、所定の危機に影響を及ぼす要因の一例である。
【0210】
また、処理部611に入力される入力データは、第1実施形態の処理部411に入力される入力データと比べると、処理部413によって出力された第3出力データZを含む点で異なっている。図29に示した代理モデル13の例では、処理部611に入力される入力データは、入力データW(i=1~m+1)である。
【0211】
これらのうち、入力データW(i=1~m)は、第1実施形態のW(i=1~m)である。一方、入力データWm+1は、第3出力データZである。
【0212】
処理部611は、入力データW(i=1~m)に対しては、第1実施形態と同様に、所定の時間要素を含む処理を施して第1出力データX(i=1~m)を出力する。
【0213】
処理部611はまた、入力データWm+1に対しては、物体22を模擬したモデルを用い、物体22の温度を第1出力データXm+1として出力する。なお、本実施形態では、物体22を模擬したモデルとして、遅れモデルDMm+1jと、進みモデルAMm+1jとを用いる。
【0214】
以上説明した情報処理装置6の構成によれば、ショーケース2に影響を及ぼす要因が存在する場合に、そのような要因がショーケース2に及ぼす影響を考慮に入れることができる。これによって、ショーケース2を精度良く模擬することができる。
【0215】
<第3出力データを出力するまでの処理>
図31は、本実施形態の情報処理方法により、情報処理装置6が第3出力データを出力するまでの処理の流れを説明するフローチャートである。出力データを出力するまでの処理は、ステップS601~ステップS607を含んでいる。
【0216】
ステップS601、ステップS605~ステップS607については、第3実施形態のステップS501、ステップS506~ステップS508の処理(図28)と同様であるため、説明は省略する。
【0217】
本実施形態では、ステップS602において、取得部410は、付加された対象の入力データである第3出力データZを、入力データWm+1として取得する。ここでの第3出力データZは、1つ前の時間ステップにおける第3出力データZである。
【0218】
ステップS603において、処理部611は、入力データW(i=1~m+1)に対して、第1遅れ要素を含む処理を施す。更に、ステップS604において、処理部611は、入力データW(i=1~m+1)に対して、進み要素を含む処理を施す。
【0219】
ステップS605以降の処理は、第3実施形態のステップS506以降の処理と同様である。
【0220】
なお、ステップS603及びステップS604は、「第1ステップ」に相当する。ステップS605は、「第2ステップ」に相当する。ステップS606は、「第3ステップ」に相当する。
【0221】
以上説明した処理によれば、ショーケース2に影響を及ぼす要因が存在する場合に、そのような要因がショーケース2に及ぼす影響を考慮に入れることができる。これによって、ショーケース2を精度良く模擬することができる。
【0222】
以上、ショーケースを例示して説明したが、情報処理装置6の処理は、ショーケース以外の機器に対しても適用可能である。つまり、情報処理装置6の処理は、機器の所定の箇所の温度を第3出力データZとして模擬する場合に、機器と熱のやり取りをする要因(例えば、上述の物体22)が存在する場合にも適用可能である。
【0223】
機器と熱のやり取りをする要因としては、例えば、機器の内部空間に存在している要因であってもよいし、機器の外側の表面に接触している要因であってもよい。処理部611は、機器と熱のやり取りをする要因を模擬するモデルを用いて、要因の温度を第1出力データの一部として出力する。
【0224】
==まとめ==
以上説明したように、実施形態の情報処理装置4は、所定の対象に対して入力データが入力された際に所定の対象において入力データが変化するよう、入力データに対して、少なくとも第1遅れの時定数を含む第1遅れ要素を含む処理を施して第1出力データを出力する処理部411と、所定値の入力データに対応するデータを出力するとともに所定の対象の定常状態における入出力を模擬した学習モデル9を用いて、第1出力データに対応する第2出力データを出力する処理部412と、第2出力データに対して、少なくとも第2遅れの時定数を含む第2遅れ要素を含む処理を施して第3出力データを出力する処理部413と、第1遅れの時定数及び第2遅れの時定数の少なくとも一方を調整する調整部414と、を備える。
【0225】
このような構成によれば、所定の対象の状態に影響を及ぼす要因を考慮に入れることができる。これによって、所定の対象を精度良く模擬することができる。
【0226】
また、情報処理装置4において、調整部414は、所定の対象の構造を示す情報に基づいて、少なくとも一方を調整する。このような構成によれば、所定の対象の構造が変更された場合を考慮に入れることができる。これによって、所定の対象を精度良く模擬することができる。
【0227】
また、情報処理装置4において、第3出力データは、所定の対象に設けられた内部空間の温度であり、構造を示す情報は、内部空間と、内部空間の外部とを接続する開口21のサイズであり、調整部414は、開口21のサイズが大きいほど、第1遅れの時定数又は第2遅れの時定数の少なくとも一方が小さくなるように調整する。このような構成によれば、開口21のサイズが変更された場合を考慮に入れることができる。これによって、所定の対象の内部空間の温度を精度良く模擬することができる。
【0228】
また、情報処理装置4において、調整部414は、所定の対象の目標とする状態が、第1状態から第2状態へ変化した後の少なくとも一方の第1の値と、第2状態から第1状態へ変化した後の少なくとも一方の第2の値とが異なるように、少なくとも一方の値を調整する。このような構成によれば、所定の対象が2つの状態の間で変化する場合に、変化する方向に応じた時定数となるように調整することができる。これによって、所定の対象を精度良く模擬することができる。
【0229】
また、情報処理装置4において、調整部414は、第3出力データと、第2出力データとに基づいて、少なくとも一方の値を調整する。このような構成によれば、所定の対象が変化する方向に応じた時定数を更に定量的に調整することができる。これによって、所定の対象を更に精度良く模擬することができる。
【0230】
また、情報処理装置4において、第2出力データは、所定の対象の所定の箇所の目標とする温度であり、第3出力データは、所定の対象の所定の箇所の温度であり、調整部414は、第3出力データと、第2出力データとの大小関係に基づいて、少なくとも一方の値を調整する。このような構成によれば、所定の対象の所定の箇所が2つの温度の間で変化する場合に、変化する方向に応じた時定数となるように調整することができる。これによって、所定の対象の所定の箇所の温度を精度良く模擬することができる。
【0231】
また、実施形態の情報処理装置5は、第1の対象に対して入力データが入力された際に第1の対象において入力データが変化するよう、入力データに対して、第1時間要素を含む処理を施して第1出力データを出力する処理部411と、所定値の入力データに対応するデータを出力するとともに第1の対象の定常状態における入出力を模擬した学習モデル9を用いて、第1出力データを入力として、第2出力データを出力する処理部412と、第2出力データに対して、第2時間要素を含む処理を施して第3出力データを出力する処理部413と、第1の対象の状態に影響を及ぼす第2の対象を模擬し、第3出力データに対応する第4出力データを出力する処理部514と、を備え、入力データは、第4出力データを含む。
【0232】
このような構成によれば、第2の対象が存在する場合に、第2の対象が第1の対象に及ぼす影響を考慮に入れることができる。これによって、所定の対象を精度良く模擬することができる。
【0233】
また、情報処理装置5において、第3出力データは、第1の対象の所定の箇所の温度であり、第2の対象は、第1の対象と熱のやりとりをし、処理部514は、所定の箇所の温度に応じて変化する第2の対象の温度を第4出力データとして出力する。このような構成によれば、第2の対象の温度が、第1の対象に及ぼす影響を考慮に入れることができる。これによって、所定の対象を精度良く模擬することができる。
【0234】
また、実施形態の情報処理装置6は、第1の対象に対して入力データが入力された際に第1の対象において入力データが変化するよう、入力データに対して、第1時間要素を含む処理を施して第1出力データを出力する処理部411と、所定値の入力データに対応するデータを出力するとともに第1の対象の定常状態における入出力を模擬した学習モデル9を用いて、第1出力データを入力として、第2出力データを出力する処理部412と、第2出力データに対して、第2時間要素を含む処理を施して第3出力データを出力する処理部413と、を備え、処理部411は、第1の対象の状態に影響を及ぼす第2の対象を模擬したモデルを含む。
【0235】
このような構成によれば、第2の対象が存在する場合に、第2の対象が第1の対象に及ぼす影響を考慮に入れることができる。これによって、所定の対象を精度良く模擬することができる。
【0236】
また、情報処理装置6において、第3出力データは、第1の対象の所定の箇所の温度であり、第2の対象は、第1の対象と熱のやりとりをし、処理部411は、モデルを用いて、所定の箇所の温度に応じて変化する第2の対象の温度を第1出力データの一部として出力する。このような構成によれば、第2の対象の温度が、第1の対象に及ぼす影響を考慮に入れることができる。これによって、所定の対象を精度良く模擬することができる。
【符号の説明】
【0237】
1:情報処理システム
2:ショーケース
20:センサ
21:開口
22:物体
23:冷却器
3:情報処理装置
300:プロセッサ
301:主記憶装置
302:補助記憶装置
303:入力装置
304:出力装置
305:通信装置
310:取得部
311:モデル生成部
312:取得部
313:パラメータ同定部
314:出力部
5:情報処理装置
400:プロセッサ
401:主記憶装置
402:補助記憶装置
403:入力装置
404:出力装置
405:通信装置
410:取得部
411:処理部
412:処理部
413:処理部
414:調整部
415:出力部
5:情報処理装置
514:処理部
6:情報処理装置
611:処理部
8:学習データ
SD:サンプルデータ
9:学習モデル
10:パラメータ
11:代理モデル
12:代理モデル
13:代理モデル
図1
図2
図3
図4
図5
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