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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179245
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】画像形成装置、及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/00 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
G03G15/00 303
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092443
(22)【出願日】2022-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】坂口 新太郎
(72)【発明者】
【氏名】水野 雄介
(72)【発明者】
【氏名】荒木 寿則
(72)【発明者】
【氏名】青山 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】相羽 駿介
【テーマコード(参考)】
2H270
【Fターム(参考)】
2H270LA15
2H270LA18
2H270LA22
2H270LA79
2H270LA80
2H270LA99
2H270LD03
2H270LD09
2H270MA08
2H270MA14
2H270MB16
2H270MB25
2H270MB29
2H270MB30
2H270MB43
2H270ZC03
2H270ZC04
(57)【要約】
【課題】トナーの劣化について精度よく判定することができる画像形成装置、及びその制御方法を提供する。
【解決手段】画像形成装置(1)は、トナー収容室、及び、感光ドラムの表面に形成された静電潜像にトナーを供給してトナー像を形成する現像器を備えた現像カートリッジ(60)と、感光ドラムからトナー像をベルトに転写する転写器と、ベルトに光を照射し、ベルトから反射した反射光の光量を検知する光学センサ(90)と、制御部(101)と、を備える。制御部(101)は、所定の現像バイアスを用いて、ベルトにトナーを付着させて、少なくとも1つのトナーパッチを形成するパッチ形成処理と、光学センサ(90)により、トナーパッチのトナーの濃度を検出する濃度検出処理と、検出したトナーの濃度に基づいて、トナーの劣化の程度を判定する判定処理と、を含む処理を実行する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光ドラムと、
前記感光ドラムを帯電させる帯電器と、
前記感光ドラムを露光して前記感光ドラムの表面に静電潜像を形成する露光器と、
トナーを収容するトナー収容室、及び、前記感光ドラムの表面に形成された静電潜像にトナーを供給してトナー像を形成する現像器を備えた現像カートリッジと、
前記感光ドラムに対向するベルトを有し、前記感光ドラムからトナー像をベルトに転写する転写器と、
前記ベルトに光を照射し、前記ベルトから反射した反射光の光量を検知する光学センサと、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
所定の判定タイミングごとに、所定の現像バイアスを用いて、前記ベルトにトナーを付着させて、少なくとも1つのトナーパッチを形成するパッチ形成処理と、
前記光学センサにより、前記トナーパッチに光を照射し、その反射光の正反射成分及び拡散反射成分の光量を検知し、その光量に基づいて前記トナーパッチのトナーの濃度を検出する濃度検出処理と、
前記濃度検出処理で検出したトナーの濃度に基づいて、前記トナー収容室内の前記トナーの劣化の程度を判定する判定処理と、
を含む処理を実行する、画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記パッチ形成処理において、現像バイアスが互いに異なる複数の前記トナーパッチを形成し、
前記濃度検出処理において、前記複数の各トナーパッチのトナーの濃度を検出し、
前記判定処理において、検出した前記複数の各トナーパッチのトナーの濃度を比較することにより、前記トナー収容室内の前記トナーの劣化の程度を判定する、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
報知部を備え、
前記制御部は、
前記判定処理において、判定した前記トナーの劣化の程度が、所定の許容範囲を超えることを判定した場合、前記現像カートリッジの交換を促す報知処理を前記報知部に実行させる、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記トナー収容室のトナーの初期充填量を表す容量情報と、前記トナー収容室のトナーの使用量を表す使用量情報を少なくとも記憶する現像カートリッジメモリを備え、
前記制御部は、
前記容量情報と前記使用量情報とを用いて、前記トナー収容室のトナー残量を算出するとともに、
前記判定したトナーの劣化の程度と算出した前記トナー残量とにより決定されるトナー寿命を求め、求めた前記トナー寿命が所定の閾値に達した場合、前記報知処理を前記報知部に実行させる、請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記パッチ形成処理において、現像バイアスが互いに異なる第1トナーパッチと第2トナーパッチとを形成し、
前記濃度検出処理において、前記第1トナーパッチの濃度及び前記第2トナーパッチの濃度を検出し、
前記判定処理において、検出した前記第1トナーパッチの濃度と検出した前記第2トナーパッチの濃度との差が所定の閾値よりも小さいことを判別した場合、前記トナーの劣化の程度が前記許容範囲を超えると判定する、請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記パッチ形成処理において、前記感光ドラムに対する前記露光器の露光のデューティを所定値以上として、前記第1トナーパッチ及び前記第2トナーパッチを形成する、請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
シートの搬送方向に沿って前記ベルトに対向して順次配置された複数の前記現像カートリッジを備え、
前記制御部は、
前記パッチ形成処理において、前記複数の現像カートリッジごとに、前記少なくとも1つのトナーパッチを形成する、請求項1から6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記パッチ形成処理において、前記複数の現像カートリッジごとに、前記感光ドラムに対する前記露光器の露光のデューティを調整して、前記複数の現像カートリッジごとの前記少なくとも1つのトナーパッチを前記ベルトに順次形成する、請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
感光ドラムと、前記感光ドラムを帯電させる帯電器と、前記感光ドラムを露光して前記感光ドラムの表面に静電潜像を形成する露光器と、トナーを収容するトナー収容室、及び、前記感光ドラムの表面に形成された静電潜像にトナーを供給してトナー像を形成する現像器を備えた現像カートリッジと、前記感光ドラムに対向するベルトを有し、前記感光ドラムからトナー像をベルトに転写する転写器と、前記ベルトに光を照射し、前記ベルトから反射した反射光の光量を検知する光学センサと、を備えた画像形成装置の制御方法であって、
所定の判定タイミングごとに、所定の現像バイアスを用いて、前記ベルトにトナーを付着させて、少なくとも1つのトナーパッチを形成するパッチ形成ステップと、
前記光学センサにより、前記トナーパッチに光を照射し、その反射光の正反射成分及び拡散反射成分の光量を検知し、その光量に基づいて前記トナーパッチのトナーの濃度を検出する濃度検出ステップと、
前記濃度検出ステップで検出したトナーの濃度に基づいて、前記トナー収容室内の前記トナーの劣化の程度を判定する判定ステップと、を実行する画像形成装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像形成装置、及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真プリンタなどの画像形成装置は、例えば、現像室とトナー収容室を一体化した現像カートリッジを用いて、画像形成処理を行うことが知られている。このような画像形成装置では、感光ドラムの表面上に形成した静電潜像に対して、現像室内で帯電された現像剤としてのトナーを付着することにより、トナー像を感光ドラムの表面上に形成する。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の画像形成装置には、画像形成回数が所定回数に達する毎に、転写ベルト上に濃度検出用のパッチを形成する。そして、形成したパッチの濃度を検出し、その検出結果に基づいて、現像バイアスを調整することにより、トナーの劣化等に起因する画像の濃度の変化を補正して、画質を一定に保つことが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-251511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記のような従来の画像形成装置では、あくまでトナー劣化に起因する画像の濃度変化を補正することを目的とするものであり、トナーの劣化を直接的に判定することを目的とするものではなかった。
【0006】
本開示は、トナーの劣化について精度よく判定することができる画像形成装置、及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本開示の画像形成装置は、感光ドラムと、前記感光ドラムを帯電させる帯電器と、前記感光ドラムを露光して前記感光ドラムの表面に静電潜像を形成する露光器と、トナーを収容するトナー収容室、及び、前記感光ドラムの表面に形成された静電潜像にトナーを供給してトナー像を形成する現像器を備えた現像カートリッジと、前記感光ドラムに対向するベルトを有し、前記感光ドラムからトナー像をベルトに転写する転写器と、前記ベルトに光を照射し、前記ベルトから反射した反射光の光量を検知する光学センサと、制御部と、を備え、前記制御部は、所定の判定タイミングごとに、所定の現像バイアスを用いて、前記ベルトにトナーを付着させて、少なくとも1つのトナーパッチを形成するパッチ形成処理と、前記光学センサにより、前記トナーパッチに光を照射し、その反射光の正反射成分及び拡散反射成分の光量を検知し、その光量に基づいて前記トナーパッチのトナーの濃度を検出する濃度検出処理と、前記濃度検出処理で検出したトナーの濃度に基づいて、前記トナー収容室内の前記トナーの劣化の程度を判定する判定処理と、を含む処理を実行する。
【0008】
上記構成によれば、所定の判定タイミングごとに、トナーパッチが形成された後、そのトナーの濃度が検出される。更に、制御部は、検出したトナーの濃度の検出結果を基にトナー収容室内のトナーの劣化の程度を判定する判定処理を行う。これにより、トナーの劣化について精度よく判定することができる。
【0009】
本開示の画像形成装置において、前記制御部は、前記パッチ形成処理において、現像バイアスが互いに異なる複数の前記トナーパッチを形成し、前記濃度検出処理において、前記複数の各トナーパッチのトナーの濃度を検出し、前記判定処理において、検出した前記複数の各トナーパッチのトナーの濃度を比較することにより、前記トナー収容室内の前記トナーの劣化の程度を判定してもよい。
【0010】
上記構成によれば、制御部は、トナーの劣化の程度をより精度よく判定することができる。
【0011】
本開示の画像形成装置において、報知部を備え、前記制御部は、前記判定処理において、判定した前記トナーの劣化の程度が、所定の許容範囲を超えることを判定した場合、前記現像カートリッジの交換を促す報知処理を前記報知部に実行させてもよい。
【0012】
上記構成によれば、制御部は、トナーの劣化の程度が所定の許容範囲を超えることを判定した場合、現像カートリッジの交換を促す報知処理を報知部に行わせる。これにより、現像カートリッジを適切に交換させることができ、画像形成装置の画質の低下を確実に抑えることができる。
【0013】
本開示の画像形成装置において、前記トナー収容室のトナーの初期充填量を表す容量情報と、前記トナー収容室のトナーの使用量を表す使用量情報を少なくとも記憶する現像カートリッジメモリを備え、前記制御部は、前記容量情報と前記使用量情報とを用いて、前記トナー収容室のトナー残量を算出するとともに、前記判定したトナーの劣化の程度と算出した前記トナー残量とにより決定されるトナー寿命を求め、求めた前記トナー寿命が所定の閾値に達した場合、前記報知処理を前記報知部に実行させてもよい。
【0014】
上記構成によれば、現像カートリッジの交換をより適切なタイミングで行わせることができ、画質の低下をより確実に抑えることができる画像形成装置を構成することができる。
【0015】
本開示の画像形成装置において、前記制御部は、前記パッチ形成処理において、現像バイアスが互いに異なる第1トナーパッチと第2トナーパッチとを形成し、前記濃度検出処理において、前記第1トナーパッチの濃度及び前記第2トナーパッチの濃度を検出し、前記判定処理において、検出した前記第1トナーパッチの濃度と検出した前記第2トナーパッチの濃度との差が所定の閾値よりも小さいことを判別した場合、前記トナーの劣化の程度が前記許容範囲を超えると判定してもよい。
【0016】
上記構成によれば、制御部は、判定処理において、第1トナーパッチの濃度及び第2トナーパッチの濃度を用いることにより、トナーの劣化の程度をより精度よく判定することができる。
【0017】
本開示の画像形成装置において、前記制御部は、前記パッチ形成処理において、前記感光ドラムに対する前記露光器の露光のデューティを所定値以上として、前記第1トナーパッチ及び前記第2トナーパッチを形成してもよい。
【0018】
上記構成によれば、露光器の露光のデューティが所定値以上で第1トナーパッチ及び第2トナーパッチが形成されるので、第1トナーパッチ及び第2トナーパッチの各濃度を大きくすることができる。この結果、判定処理での判定精度を高めることができ、トナーの高精度な劣化の程度の判定をより確実に行うことができる。
【0019】
本開示の画像形成装置において、シートの搬送方向に沿って前記ベルトに対向して順次配置された複数の前記現像カートリッジを備え、前記制御部は、前記パッチ形成処理において、前記複数の現像カートリッジごとに、前記少なくとも1つのトナーパッチを形成してもよい。
【0020】
上記構成によれば、フルカラー画像の画像形成処理を行う場合において、少なくとも1つのトナーパッチが複数の現像カートリッジごとに形成される。これにより、複数の各現像カートリッジでのトナーの劣化の程度を判定する判定処理を行うことができ、各現像カートリッジでのトナーの劣化について精度よく判定することができる。
【0021】
本開示の画像形成装置において、前記制御部は、前記パッチ形成処理において、前記複数の現像カートリッジごとに、前記感光ドラムに対する前記露光器の露光のデューティを調整して、前記複数の現像カートリッジごとの前記少なくとも1つのトナーパッチを前記ベルトに順次形成してもよい。
【0022】
上記構成によれば、フルカラー画像の画像形成処理を行う場合において、複数の現像カートリッジにそれぞれ対応した少なくとも1つのトナーパッチが互いに異なる露光のデューティで形成することが可能となる。これにより、複数の各現像カートリッジでのトナーの劣化の程度をより精度よく判定することができ、トナーの高精度な劣化判定を容易に行うことができる。
【0023】
本開示の画像形成装置の制御方法は、感光ドラムと、前記感光ドラムを帯電させる帯電器と、前記感光ドラムを露光して前記感光ドラムの表面に静電潜像を形成する露光器と、トナーを収容するトナー収容室、及び、前記感光ドラムの表面に形成された静電潜像にトナーを供給してトナー像を形成する現像器を備えた現像カートリッジと、前記感光ドラムに対向するベルトを有し、前記感光ドラムからトナー像をベルトに転写する転写器と、前記ベルトに光を照射し、前記ベルトから反射した反射光の光量を検知する光学センサと、を備えた画像形成装置の制御方法であって、所定の判定タイミングごとに、所定の現像バイアスを用いて、前記ベルトにトナーを付着させて、少なくとも1つのトナーパッチを形成するパッチ形成ステップと、前記光学センサにより、前記トナーパッチに光を照射し、その反射光の正反射成分及び拡散反射成分の光量を検知し、その光量に基づいて前記トナーパッチのトナーの濃度を検出する濃度検出ステップと、前記濃度検出ステップで検出したトナーの濃度に基づいて、前記トナー収容室内の前記トナーの劣化の程度を判定する判定ステップと、を実行する。
【0024】
上記構成によれば、所定の判定タイミングごとに、トナーパッチが形成された後、そのトナーの濃度が検出される。更に、判定ステップにより、検出したトナーの濃度の検出結果を基にトナー収容室内のトナーの劣化の程度が判定される。これにより、トナーの劣化について精度よく判定することができる。
【発明の効果】
【0025】
本開示の一態様によれば、トナーの劣化について精度よく判定することができる画像形成装置、及びその制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本開示の実施形態1に係る画像形成装置の構成を説明する概略図である。
図2】上記画像形成装置の機能ブロックを示すブロック図である。
図3図1に示した光学センサの具体的な構成例を説明する図である。
図4図2に示した現像カートリッジ情報の詳細を示す図である。
図5】上記現像カートリッジでのトナーの劣化の原因を説明する図である。
図6】上記画像形成装置の主要な動作例を説明するフローチャートである。
図7図6に示した劣化検出処理を説明するフローチャートである。
図8図7に示したトナーパッチ形成処理の動作例を説明する図である。
図9】上記トナーパッチ形成処理において、露光のデューティを変化させた場合でのトナーパッチの形成例を説明する図である。
図10】(A)は、上記光学センサでのブラックのトナーパッチに対する反射光の正反射成分及び拡散反射成分の光量の一例を説明するグラフであり、(B)は、上記光学センサでのブラック以外のカラー色のトナーパッチに対する反射光の正反射成分及び拡散反射成分の光量の一例を説明するグラフである。
図11】印刷枚数と、(トナーパッチ正反射光/ベルト面正反射光)との具体的な関係の一例を示すグラフである。
図12】本開示の実施形態2に係る画像形成装置の構成を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
〔実施形態1〕
以下、本開示の実施形態1について図1図4を参照しつつ説明する。本実施形態では、画像形成装置1の一例として、トナーを用いてシートSに画像を形成するレーザプリンタについて説明する。
【0028】
(画像形成装置1の構成)
図1は、本開示の実施形態1に係る画像形成装置1の構成を説明する概略図である。尚、以下の説明では、画像形成装置1として、フルカラー画像の画像形成処理を行う、直接転写タンデム方式のカラープリンタを例示する。
【0029】
図1に示すように、画像形成装置1は、本体筐体2の内部に、給送トレイ7と、ベルトユニット20と、露光ユニット30と、4つのプロセスカートリッジ40と、定着ユニット80とを備えている。ベルトユニット20、露光ユニット30、プロセスカートリッジ40、及び定着ユニット80が、シートSに画像を形成する画像形成部を構成している。また、画像形成装置1は、画像が形成されたシートSを排出する排出トレイ5と、各部を制御する制御部101とを備えている。
【0030】
本体筐体2には、その前面を覆うフロントカバー2Aが設けられている。フロントカバー2Aは、画像形成装置1の下方前端を中心にして開閉可能に設けられている。画像形成装置1では、フロントカバー2Aを開くことにより、本体筐体2の内部に対して、画像形成部のベルトユニット20などを適宜挿抜することができるようになっている。
【0031】
給送トレイ7には、印刷媒体としてのシートSが複数収容されている。給送トレイ7の近傍には、給送ローラを含む不図示の給送機構が設けられており、給送機構によって給送トレイ7から1枚ずつのシートSがレジストローラ15へ送り出される。レジストローラ15は、シートSを所定のタイミングで、ベルトユニット20に送出する。尚、印刷媒体としては、印刷用紙などの紙媒体に限らず、他にも、例えばOHPシート等のプラスチックからなる樹脂媒体であってもよい。
【0032】
露光ユニット30は、4つのプロセスカートリッジ40ごとに設けられたレーザ光源31を備えており、対応するプロセスカートリッジ40に含まれた後述の感光ドラム52にレーザ光を照射する。これにより、露光ユニット30は、感光ドラム52を露光して感光ドラム52の表面に静電潜像を形成する。露光ユニット30は、露光器の一例である。
【0033】
尚、上記の説明に代えて、LEDなどの発光素子を露光ユニット30に用いることもできる。すなわち、本開示はレーザプリンタ以外にLEDプリンタにも適用することができる。
【0034】
プロセスカートリッジ40は、給送トレイ7と露光ユニット30との間でシートSの搬送方向である前後方向に並んで配置されている。プロセスカートリッジ40は、ドラムカートリッジ51と、現像カートリッジ60とを備えている。このプロセスカートリッジ40は、フロントカバー2Aを上方へ回動させた後、本体筐体2の開口部から交換可能となっている。すなわち、プロセスカートリッジ40では、現像カートリッジ60がドラムカートリッジ51と共に使われ、ドラムカートリッジ51と共に、本体筐体2に一体的に着脱可能に装着されている。また、プロセスカートリッジ40では、ドラムカートリッジ51と現像カートリッジ60とは互いに分離可能に構成されている。
【0035】
各プロセスカートリッジ40は、現像カートリッジ60のトナー収容室66に収容される現像剤としてのトナーの色が相違するのみであり、構成は同一である。具体的には、4つのプロセスカートリッジ40は、ブラック、イエロー、マゼンタ、及びシアンのトナーをそれぞれ収容している。
【0036】
また、各色のトナーには、例えば、正帯電性であって非磁性の1成分トナーが用いられている。この1成分トナーは、例えば、懸濁重合法によって球状に形成したスチレンーアクリル系樹脂に、カーボンブラック等の周知の着色剤及び4級アンモニウム塩等の荷電制御剤を添加したものである。さらに、この1成分トナーには、平均粒径5μm~10μmのトナー母粒子が用いられており、その表面には外添剤として、例えばシリカが添加されている。なお、平均粒径5μm~7μmの微細なトナー母粒子を用いることにより、画像形成装置1での画像形成処理後の印刷物の画質を向上させることが可能となる。
【0037】
ドラムカートリッジ51は、感光ドラム52と、帯電器53とを備えている。感光ドラム52は、ドラムカートリッジ51の枠体を構成するドラムフレームに回転可能に支持されている。帯電器53は、制御部101の制御により、感光ドラム52を帯電する。具体的にいえば、帯電器53は、例えば、感光ドラム52の表面を一様に正極性に帯電させる。また、帯電器53は、例えば、スコロトロン型の帯電器、または帯電ローラを有する帯電器である。
【0038】
現像カートリッジ60は、感光ドラム52に形成された静電潜像を現像する現像器(現像室)を含んでいる。現像カートリッジ60は、現像室内において、現像ローラ63と、供給ローラ62とを備えている。現像ローラ63及び供給ローラ62は、現像カートリッジ60の枠体を構成する現像フレームに回転可能に支持されている。現像ローラ63には、制御部101の制御により、現像時に現像電圧としての現像バイアスが印加される。現像ローラ63は、現像器の一例である。
【0039】
また、現像カートリッジ60は、ブレード組立体64と、トナーを収容するトナー収容室61とを有している。言い換えれば、現像カートリッジ60は、現像室とトナー収容室61とを一体的に構成している。
【0040】
尚、上記の説明では、ドラムカートリッジ51と現像カートリッジ60とが互いに分離可能なプロセスカートリッジ40を用いた場合について説明した。しかしながら、本実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、ドラムカートリッジと現像カートリッジとが分離不可能な一体的なプロセスカートリッジを用いることもできる。
【0041】
ベルトユニット20は、給送トレイ7と各プロセスカートリッジ40との間に設けられている。ベルトユニット20は、駆動ローラ21と、従動ローラ22と、転写ベルト23と、転写ローラ24とを備えている。ベルトユニット20は、4つの各プロセスカートリッジ40の感光ドラム52に対向するベルトとしての転写ベルト23を備えている。ベルトユニット20は、転写器の一例である。
【0042】
駆動ローラ21及び従動ローラ22は、前後方向に離間して平行に配置されている。駆動ローラ21と従動ローラ22との間には、エンドレスベルトからなる転写ベルト23が設けられている。駆動ローラ21は、その回転軸21Aが軸受け部材26Aに軸支されており、図示しないモータが制御部101の制御されることにより、図1の反時計回り方向に回転駆動される。これにより、画像形成装置1では、シートSが転写ベルト23に載置された状態で所定の搬送方向に搬送される。
【0043】
従動ローラ22は、駆動ローラ21と回転軸を平行に揃えて設けられ、バネ25によって前方に付勢されることで転写ベルト23に適度な張力を与えている。
【0044】
転写ベルト23は、その外側の面が各感光ドラム52に接している。また、転写ベルト23の内側には、4つの転写ローラ24が、各感光ドラム52との間で転写ベルト23を挟持するように、各感光ドラム52に対向して配置されている。この転写ローラ24には、制御部101の制御により、転写時に転写電圧としての転写バイアスが印加される。これにより、画像形成装置1では、転写時に感光ドラム52と転写ローラ24との間で所定量の転写電流が通電される。
【0045】
また、クリーニング部70が、転写ベルト23の下方に配置されている。クリーニング部70は、例えば、クリーニングローラ71と、回収ローラと、ブレードと、トナー貯留部とを備えている。クリーニングローラ71は、転写ベルト23に接触する。回収ローラは、クリーニングローラ71に接触する。ブレードは、回収ローラに接触する。トナー貯留部は、ブレードの下方に配置されている。これにより、クリーニング部70では、トナーがクリーニングローラ71によって転写ベルト23から除去される。更に、クリーニング部70では、異物が回収ローラ及びブレードを介してトナー貯留部内に落下される。尚、上記の説明以外に、クリーニングローラ71に代えて、クリーニングブレードまたはクリーニングブラシを転写ベルト23に接触させる構成でもよい。
【0046】
定着ユニット80は、各プロセスカートリッジ40及びベルトユニット20の後側に配置されている。すなわち、定着ユニット80は、各プロセスカートリッジ40及びベルトユニット20に対して、図1の左側から右側への所定方向の下流側に配置されている。定着ユニット80は、加熱ローラ81と、加熱ローラ81と対向して配置されて加熱ローラ81を押圧する加圧ローラ82とを備えている。
【0047】
このように構成される画像形成装置1では、まず、各感光ドラム52の表面が、帯電器53により一様に帯電された後、各レーザ光源31から照射されるレーザ光により露光される。これにより、各感光ドラム52上に画像データに基づく静電潜像が形成される。
【0048】
また、トナー収容室61内のトナーが、供給ローラ62の回転により現像ローラ63に供給され、現像ローラ63の回転により現像ローラ63とブレード組立体64との間に進入して一定厚さの薄層として現像ローラ63上に担持される。
【0049】
現像ローラ63上に担持されたトナーは、現像ローラ63が感光ドラム52に対向して接触するときに、感光ドラム52上に形成された静電潜像に供給される。これにより、感光ドラム52上でトナーが選択的に担持されて静電潜像が可視像化され、反転現像によりトナー像が形成される。
【0050】
そして、転写ベルト23上に供給されたシートSが各感光ドラム52と転写ベルト23の内側に配置される各転写ローラ24との間を通過することで、各感光ドラム52上に形成されたトナー像がシートS上に順次転写される。シートSが加熱ローラ81と加圧ローラ82との間を通過すると、シートS上に転写されたトナー像が熱定着される。そして、熱定着されたシートSは、搬送ローラ83により搬送され、更に排出ローラ84により、排出トレイ5上に排出される。
【0051】
(画像形成装置1の電気的構成)
図2は、上記画像形成装置1の機能ブロックを示すブロック図である。画像形成装置1は、制御部101と、本体メモリ102と、光学センサ90と、ディスプレイ104とを備えている。また、画像形成装置1は、コネクタ201及びコネクタ202を有する。
【0052】
コネクタ201は、ドラムカートリッジ51に設けられたドラムメモリ51Mと電気的に接続する。コネクタ201とドラムメモリ51Mが電気的に接続されると、制御部101がドラムメモリ51Mと通信可能になる。つまり、制御部101は、ドラムメモリ51Mへの情報の書き込みおよび情報の書き換え、ならびにドラムメモリ51Mからの情報の読み出しを実行することが可能になる。
【0053】
ドラムメモリ51Mは、情報の読み出しおよび書き込みが可能なメモリである。ドラムメモリ51Mの種類は特に限定されない。例えば、ドラムメモリ51Mは、フラッシュROM、EEPROM(登録商標)、またはICチップであってよい。
【0054】
コネクタ202は、現像カートリッジ60に設けられた現像メモリ60Mと電気的に接続する。コネクタ202と現像メモリ60Mとが電気的に接続されると、制御部101が現像メモリ60Mと通信可能になる。すなわち、制御部101は、現像メモリ60Mへの情報の書き込みおよび情報の書き換え、ならびに現像メモリ60Mからの情報の読み出しを実行することが可能になる。
【0055】
現像メモリ60Mは、情報の読み出しおよび書き込みが可能なメモリである。現像メモリ60Mの種類は特に限定されない。例えば、現像メモリ60Mは、フラッシュROM、EEPROM(登録商標)、またはICチップであってよい。
【0056】
尚、上記の説明以外に、ベルトユニット20に関する、ベルトID、ベルト累積回転数などを含んだ所定のベルトユニット情報を記憶するベルトメモリをベルトユニット20に設ける。そして、制御部101が、ベルトメモリとの間でベルトユニット情報の読み出しおよび書き込みを行う構成でもよい。
【0057】
(制御部101)
制御部101は、例えば、CPU、RAM、ROMおよび入出力回路を備えており、装着されたカートリッジの情報やROMに記憶されたプログラムやデータなどに基づいて演算処理を行うことによって、画像形成制御を実行する。また、制御部101は画像形成装置1の各部から取得した情報に応じて、画像形成制御以外の制御処理も適宜実行する。
【0058】
制御部101は、所定のタイミングでドラムメモリ51Mからドラムカートリッジ情報510を読み出す。制御部101は、読み出したドラムカートリッジ情報510を、本体メモリ102にドラムカートリッジ情報1021として記憶させる。
【0059】
制御部101は、所定のタイミングで現像メモリ60Mから現像カートリッジ情報600を読み出す。制御部101は、読み出した現像カートリッジ情報600を、本体メモリ102に現像カートリッジ情報1022として記憶させる。
【0060】
制御部101がドラムメモリ51M、または現像メモリ60Mから情報を読み出す、所定のタイミングは特に限定されない。例えば、制御部101は、ドラムカートリッジ51、または現像カートリッジ60が画像形成装置1に装着されたときに、ドラムメモリ51M、または現像メモリ60Mからから情報を読み出してもよい。または、画像形成装置1の電源がオフ状態からオン状態になったときに、ドラムメモリ51M、または現像メモリ60Mから情報を読み出してもよい。そして、制御部101は読み出した情報を、本体メモリ102に記憶させてもよい。
【0061】
制御部101は、上記画像形成部を制御することにより、所定の判定タイミングごとに、転写ベルト23にトナーを付着させて、少なくとも1つのトナーパッチを形成するパッチ形成処理を実行する(詳細は後述。)。また、制御部101は、後に詳述するように、光学センサ90の検出結果と、現像メモリ60Mに記憶されている情報とを用いて、各現像カートリッジ60のトナー収容室61内のトナーの劣化の程度を判定する判定処理を実行する。
【0062】
尚、上記の説明以外に、制御部101が現像メモリ60Mから読み出して本体メモリ102に記憶させた情報を基に、判定処理を実行してもよい。
【0063】
(本体メモリ102)
本体メモリ102は、情報の読み出しおよび書き込みが可能なメモリである。本体メモリ102は、例えばフラッシュROMまたはEEPROM(登録商標,Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory)である。
【0064】
本体メモリ102は、ドラムカートリッジ情報1021と、現像カートリッジ情報1022と、装置ID1023と、枚数カウンタ1024と、を記憶する。
【0065】
ドラムカートリッジ情報1021は、画像形成装置1に装着されたドラムカートリッジ51に関する情報である。本実施形態では、ドラムカートリッジ情報1021はドラムカートリッジ情報510と同様の情報を含む。ドラムカートリッジ情報1021は、ドラムカートリッジ51毎に区別して記憶される。
【0066】
現像カートリッジ情報1022は、画像形成装置1に装着された現像カートリッジ60に関する情報である。本実施形態では、現像カートリッジ情報1022は現像カートリッジ情報600と同様の情報を含む。現像カートリッジ情報1022は、現像カートリッジ60毎に区別して記憶される。
【0067】
装置ID1023は、画像形成装置1の識別情報である。装置ID1023は、例えば画像形成装置のシリアルナンバーであってもよい。
【0068】
枚数カウンタ1024は、画像形成装置1における印刷枚数の累計を示すカウンタである。枚数カウンタ1024は、印刷、つまり画像形成処理ごとに制御部101によってインクリメントされる。なお、枚数カウンタ1024は、制御部101の指示に応じて初期化することが可能であってもよい。また、枚数カウンタ1024の値は、制御部101によって適宜読み出されて、不図示の通信部を介して図示しないサーバに送信されてよい。
【0069】
本体メモリ102には、上述した各種情報に加えて、ディスプレイ104に表示させる画像が記憶されていてもよい。また、本体メモリ102には、画像形成装置1の制御方法を実現する制御プログラムが記憶されていてもよい。
【0070】
(光学センサ90)
光学センサ90は、転写ベルト23に光を照射し、転写ベルト23から反射した反射光の光量を検知する。また、光学センサ90は、制御部101が上記判定処理を実行する前において、転写ベルト23上に形成されたトナーパッチに光を照射し、その反射光の正反射成分及び拡散反射成分の光量を検知する。そして、制御部101は、それらの検知結果である、正反射成分及び拡散反射成分の光量に基づいてトナーパッチのトナーの濃度を検出する濃度検出処理を実行する(詳細は後述。)。
【0071】
ここで、図3を用いて、光学センサ90について具体的に説明する。図3は、図1に示した光学センサ90の具体的な構成例を説明する図である。図3に示すように、光学センサ90は、所定の光、例えば、近赤外光(波長:800~1000nm)を発光する発光素子91と、近赤外光の反射光を受光する第1受光素子92及び第2受光素子93とを備えている。発光素子91は、転写ベルト23の表面であるベルト面23aに近赤外光を照射する。
【0072】
また、光学センサ90では、第1受光素子92及び第2受光素子93はベルト面23aで反射された反射光の光量を検出する。つまり、ベルト面23aにトナーTnが付着すると、単位面積あたりのトナーTnの付着量に応じて反射光の正反射成分の光量と拡散反射成分の光量が変化する。そして、光学センサ90が、転写ベルト23のベルト面23aで反射された反射光の光量を検出することで、ベルト面23a上に形成されたトナーパッチTPの単位面積あたりのトナーTnの付着量を検出することができる。
【0073】
第1受光素子92は、ベルト面23aで反射された光の正反射成分が入射する位置、つまり発光素子91からベルト面23aに照射された光のうち、ベルト面23aの垂線(図3に一点鎖線にて図示)に対して対称な方向(入射角θ1=反射角θ2)に反射する反射成分が入射する位置に配置される。第1受光素子92は、検知した光の光量を制御部101に出力する。
【0074】
第2受光素子93は、ベルト面23aで反射された光の拡散反射成分が入射する位置、つまり発光素子91からベルト面23aに照射された光のうち、正反射成分ではない成分の光が入射する位置に配置される。第2受光素子93は、検知した光の光量を制御部101に出力する。
【0075】
尚、転写ベルト23では、ベルト面23aは実質的に平滑面であるため、ベルト面23aのトナーが付着していない、つまり露出している部分の反射光は正反射成分が主となる。一方、ベルト面23aのトナーTnが付着している部分は、そのトナーTnの粒子が存在するため、粗い面となる。このため、ベルト面23aのトナーTnで覆われた部分の反射光は拡散反射成分が主となる。
【0076】
また、正反射成分は、図3に示すように、ベルト面23aの垂線に対して対称な方向(入射角θ1=反射角θ2)に反射する成分であるから第1受光素子92に入射する。一方、拡散反射成分は、図3に示すように、ベルト面23aの垂線に対してあらゆる方向に反射するから第1受光素子92と第2受光素子93の両方に入射する。従って、第1受光素子92が検知した光量から第2受光素子93が検知した光量を引くことで、ベルト面23aのトナーTnで覆われていない部分である、露出している部分の反射光の強さを求めることができる。更に、露出している部分の反射光の強さに基づいてベルト面23aのトナーTnで覆われている部分の割合、つまりトナー付着量を求めることができる。
【0077】
また、トナーパッチTPは、後に詳述するように、ブラック、イエロー、マゼンタ、またはシアンの各色のトナーTnの単色によって画像形成された、対応するトナーTnの劣化の程度を判定するためのトナー劣化判定用画像である。更に、このトナーパッチTPの形成では、例えば、画像形成時の現像バイアスとは無関係な固定値の現像バイアスである、所定の現像バイアスが用いられる。
【0078】
また、光学センサ90は、例えば、図1に示すように、転写ベルト23の駆動ローラ21の設置箇所に対向して設けられている。これにより、光学センサ90の検知精度を高めることができる。つまり、駆動ローラ21は、その固定された回転軸21A周りに回転駆動するため、転写ベルト23が駆動ローラ21の表面に沿って流れるところでは、転写ベルト23の表面の位置が最も安定する。従って、光学センサ90では、第1受光素子92及び第2受光素子93は最も安定した状態でそれぞれ正面反射成分の光及び拡散反射成分の光を受光することができ、光学センサ90の検知精度を高めることができる。
【0079】
図2に戻って、ディスプレイ104は、文字や画像を表示可能な出力インタフェースである。ディスプレイ104の一例としては、液晶ディスプレイが挙げられる。ディスプレイ104の表示面は、画像形成装置1のユーザが表示面に表示された情報を視認し易いように、本体筐体2の外表面に設けられていてもよい。ディスプレイ104は、制御部101から入力された画像を表示面に表示させる。
【0080】
また、本実施形態のディスプレイ104には、タッチパネル機能が付与されており、ディスプレイ104はユーザから印刷ジョブの指示、すなわち画像形成処理の指示などのユーザの操作指示を受け付ける操作受付部を構成している。
【0081】
尚、上記の説明以外に、例えば、ディスプレイ104の近傍に設けられた不図示の操作ボタン、及び外部からの指示データをオンラインで受信する、図示しない通信部の少なくとも一方も操作受付部に含めることができる。
【0082】
また、ディスプレイ104は、制御部100に制御によって、情報を報知する報知部を構成している。尚、この説明以外に、例えば、報知部として、ディスプレイ104に追加またはディスプレイ104に代えて、スピーカなどの音声出力部を用いることもできる。
【0083】
(現像カートリッジ情報600)
図4は、図2に示した現像カートリッジ情報600の詳細を示す図である。現像メモリ60Mは、現像カートリッジ情報600として、少なくとも、容量情報602と、累積ドットカウント604とを記憶している。また、現像メモリ60Mは現像カートリッジ情報600として、トナーID601、現像カートリッジ仕様情報603、現像ローラ累積回転数605、印刷枚数606、及びトナー劣化情報607を記憶していてもよい。
【0084】
トナーID601は、現像カートリッジ60の識別情報である。容量情報602は、現像カートリッジ60のトナー収容室61のトナーの初期充填量を表す情報である。すなわち、容量情報602は、現像カートリッジ60が新品のときに充填されているトナーの量を示す情報である。
【0085】
現像カートリッジ仕様情報603は、現像ローラ63の仕様及びトナーの仕様に関する情報である。現像ローラ63の仕様とは、現像ローラ63の種類、大きさ、形状、材質、特性、および各種設定値等のうち、一つ以上を指す。また、トナーの仕様とは、トナーの平均粒径、円形度、材質、特性、および各種設定値のうち一つ以上を指す。本実施形態では、現像カートリッジ仕様情報603は、現像ローラ63の種類と、現像ローラ63の回転速度を決定するためのパラメータと、を含んでいる。現像ローラ63の回転速度を決定するためのパラメータは、現像ローラ63の各種仕様に基づいて予め定められていてよい。
【0086】
累積ドットカウント604は、現像カートリッジ60の使用開始からの、印刷時のドット数のカウントの累積値である。つまり、累積ドットカウント604は、現像カートリッジ60のトナー収容室61のトナーの使用量を表す使用量情報の一例である。
【0087】
現像ローラ累積回転数605は、現像カートリッジ60の使用開始からの、現像ローラ63の回転数の累積値である。トナーは消費物であり、また現像ローラ63も回転数に応じて劣化していく。そのため、累積ドットカウント604と現像ローラ累積回転数605は、現像カートリッジ60の寿命を示す情報であるともいえる。
【0088】
印刷枚数606は、現像カートリッジ60の使用開始からの印刷枚数を示す情報である。トナー劣化情報607は、制御部101が上記判定処理を実行したときの判定結果に応じた情報である。具体的には、トナー劣化情報607は、例えば、現像カートリッジ60のトナー収容室61のトナーが使えなくなるまでの残り%で示される劣化レベルで表される。
【0089】
以上で挙げられた現像カートリッジ情報600の各種情報は、現像カートリッジ情報600に含まれ得る情報の一例に過ぎない。現像カートリッジ情報600には前述した各種情報以外の他の情報も含まれ得る。また、現像カートリッジ情報600の前述した各種情報のうち、一部が適宜省略されてもよい。
【0090】
(画像形成装置1の動作例)
以下、図5図10も参照して本実施形態1の画像形成装置1の動作例について具体的に説明する。尚、以下の説明では、トナー収容室61のトナーの劣化の程度を判定する判定処理について主に説明する。また、ブラック、イエロー、マゼンタ、及びシアンの各色の現像カートリッジ60に対する判定処理を同時に行う場合について説明する。
【0091】
(トナーTnの劣化の原因)
まず図5を用いて現像カートリッジ60のトナー収容室61のトナーが劣化する原因について説明する。図5は、上記現像カートリッジ60でのトナーTnの劣化の原因を説明する図である。
【0092】
図5に示すように、本実施形態1の画像形成装置1において、画像形成処理が行われると、感光ドラム52は、図5にR1にて示す方向に回転している。また、感光ドラム52では、図示しない電源から負極性の電圧VDが印加されることにより、帯電器53からの+電荷Peが表面52aに付着する。そして、レーザ光源31(図1)が表面52aにレーザ光Lを照射すると、表面52aは露光されて表面52aから+電荷Peが除かれる。
【0093】
一方、現像カートリッジ60側では、現像ローラ63は、図示しない現像バイアス供給回路で生成された現像バイアスVGが印加された状態で、図5にR2にて示す方向に回転している。また、現像カートリッジ60側では、トナー収容室61のトナーTnが供給ローラ62を介して現像ローラ63側に順次送られ、更に+電荷Peが除かれた表面52aの部分にトナーTnが付着することにより静電潜像が感光ドラム52に形成される。このとき、現像カートリッジ60側では、トナーTnに摩擦が作用し、トナーTnから外添剤が喪失することがある。すなわち、トナーTnでは、トナーTn同士または現像ローラ63等との接触による摩擦のために、劣化が発生することがある。
【0094】
トナーTnでは、上記のような外添剤の喪失の程度に応じて、トナーTnの劣化の程度もまた進行して、トナーTnが帯電可能な帯電量が低下する。このため、感光ドラム52の表面52aでは、+電荷Peが存在している部分(つまり、トナーTnを付着させたくない部分)と、+に帯電させたトナーTnとの間に働く静電気力(斥力)が小さくなる。この結果、感光ドラム52の表面52aの+電荷Peが存在している部分にトナーがつく現象である、かぶりの現象が発生することがある。すなわち、画像形成装置1では、トナーTnの劣化の程度が進むにつれて、感光ドラム52の暗部部位の電位と明部部位の電位との電位差が小さくなることで起きる、かぶりの現象を生じ易くなる。
【0095】
(画像形成装置1の主要な動作例)
次に、図6を用いて本実施形態1の画像形成装置1の主要な動作例について具体的に説明する。図6は、上記画像形成装置1の主要な動作例を説明するフローチャートである。
【0096】
図6のステップS1に示すように、制御部101は、画像形成装置1に対して印刷ジョブが通知されたことを検知すると、画像形成装置1の各部を制御してシートSに対する印刷処理(画像形成処理)を実行する。
【0097】
次に、制御部101は、本体メモリ102の現像カートリッジ情報1022または現像メモリ60Mの現像カートリッジ情報600を参照することにより、劣化検出タイミングが所定のタイミングに達したか否かについて判断する(ステップS2)。具体的にいえば、制御部101は、所定のタイミングとして、例えば、印刷枚数606を参照して取得される、現像カートリッジ60の使用開始からの印刷枚数が所定枚数に達したタイミングを用いて、このタイミングに達したか否かについて判断する。
【0098】
また、別の所定のタイミングとしては、現像ローラ累積回転数605を参照して取得される、現像カートリッジ60の使用開始からの、現像ローラ63の回転数の累積値が所定回数に達したタイミングを用いることができる。
【0099】
更に、別の所定のタイミングとしては、本体筐体2の内部に設けられた図示しない温湿度センサの検出結果に基づいて、制御部101が画像形成装置1の周囲環境の変化を判別したタイミングを用いることもできる。
【0100】
制御部101は、所定のタイミングに達していないと判断した場合(ステップS2でNO)、制御部101は、ステップS4に進む。一方、制御部101は、所定のタイミングに達していると判断した場合(ステップS2でYES)、制御部101は、各現像カートリッジ60のトナー収容室61のトナー劣化の程度を検出する劣化検出処理を実行する(ステップS3)。
【0101】
ここで、図7図11も用いてステップS3の劣化検出処理のサブフローの動作例について具体的に説明する。図7は、図6に示した劣化検出処理を説明するフローチャートである。図8は、図7に示したトナーパッチ形成処理の動作例を説明する図である。図9は、上記トナーパッチ形成処理において、露光のデューティを変化させた場合でのトナーパッチの形成例を説明する図である。図10(A)は、上記光学センサ90でのブラックのトナーパッチに対する反射光の正反射成分及び拡散反射成分の光量の一例を説明するグラフであり、図10(B)は、上記光学センサでのブラック以外のカラー色のトナーパッチに対する反射光の正反射成分及び拡散反射成分の光量の一例を説明するグラフである。図11は、印刷枚数と、(トナーパッチ正反射光/ベルト面正反射光)との具体的な関係の一例を示すグラフである。
【0102】
図7のステップS11に示すように、制御部101は、所定の現像バイアスを用いて、転写ベルト23にトナーを付着させて、少なくとも1つのトナーパッチを形成するパッチ形成処理を実行する。
【0103】
具体的にいえば、パッチ形成処理では、図8に示すように、制御部101は、ブラック、イエロー、マゼンタ、及びシアンの各プロセスカートリッジ40を動作させる。これにより、ブラックのトナーパッチTPK、イエローのトナーパッチTPY、マゼンタのトナーパッチTPM、及びシアンのトナーパッチTPCが、シートSの搬送方向Hに沿って順次転写ベルト23のベルト面23aに形成される。
【0104】
また、本実施形態1の画像形成装置1では、制御部101は、パッチ形成処理で形成される、各色のトナーパッチTPにおいて、上記現像バイアス供給回路を制御することにより、現像バイアスが互いに異なる複数のトナーパッチTPを形成する。
【0105】
具体的にいえば、制御部101は、パッチ形成処理において、各色のトナーパッチTPにおいて、例えば、250Vの現像バイアスを用いた第1トナーパッチと、例えば、200Vの現像バイアスを用いた第2トナーパッチとを形成する。尚、250V及び200Vの現像バイアスは、各々所定の現像バイアスの一例である。
【0106】
また、制御部101は、パッチ形成処理において、露光ユニット30の露光のデューティを所定値(例えば、80%)以上として、第1トナーパッチ及び第2トナーパッチを形成する。
【0107】
ここで、露光のデューティとは、単位面積当たりの露光した面積の割合(%)である。具体的には、画像形成装置1において、トナーパッチTPを形成するために感光ドラム52表面を露光する場合、露光ユニット30では、トナーパッチTPを形成するために用いる領域を、レーザ光源31からのレーザ光を所定のデューティで点滅させながら走査する。そして、制御部101がレーザ光の点滅のデューティを変更すると、トナーパッチTPを形成するために用いる領域における露光した面積の割合がレーザ光の点滅のデューティに応じて変化する。
【0108】
具体的にいえば、露光のデューティを30%、50%、70%、及び100%とした場合、露光した面積の割合が大きくなって、例えば、ブラックのトナーが転写ベルト23により付着し易くなる。このため、露光のデューティを30%、50%、70%、及び100%とした場合では、図9に例示するように、それぞれブラックのトナーパッチTPK4、TPK3、TPK2、及びTPK1として転写ベルト23のベルト面23aに形成される。
【0109】
更に、本実施形態1の画像形成装置1では、制御部101は、複数の現像カートリッジ60ごと、つまりトナーの色ごとに、露光のデューティを調整して、第1トナーパッチ及び第2トナーパッチを形成する。具体的にいえば、制御部101は、例えば、マゼンタの第1トナーパッチ及び第2トナーパッチのみ露光のデューティを80%とし、他の色の第1トナーパッチ及び第2トナーパッチの露光のデューティを100%とする。
【0110】
このように、本実施形態1の画像形成装置1では、トナーの色ごとに、露光のデューティを変更しているので、各色のトナーの劣化の程度をより精度よく判定することができ、トナーの高精度な劣化判定を容易に行うことができる。
【0111】
以上のように、制御部101は、所定の判定タイミングごとに、転写ベルト23に各色のトナーを付着させて、少なくとも1つのトナーパッチを形成するパッチ形成ステップを実行する。
【0112】
次に、図7のステップS12に示すように、制御部101は、パッチ形成処理で形成した各色の第1トナーパッチ及び第2トナーパッチについて、そのトナーの濃度を検出する濃度検出処理を実行する。
【0113】
具体的にいえば、制御部101は、各色の第1トナーパッチ及び第2トナーパッチに対して、光学センサ90の発光素子91から上記近赤外光を照射させる。そして、制御部101は、光学センサ90の第1受光素子92及び第2受光素子93により、それぞれ反射光の正反射成分及び拡散反射成分の光量を検知させる。そして、制御部101は、各色の第1トナーパッチ及び第2トナーパッチにおいて、正反射成分の光量と拡散反射成分の光量の差を求めて、求めた差を基に各色の第1トナーパッチ及び第2トナーパッチでのトナーの濃度を検出する。
【0114】
より具体的にいえば、ブラックのトナーの場合には、図10(A)に例示するように、トナー付着量と第1受光素子92が検知する光量の関係は曲線200Sで示され、トナー付着量と第2受光素子93が検知する光量の関係は曲線200Kで示される。そして、制御部101は、第1受光素子92が検知する光量と第2受光素子93が検知する光量の差から反射光の正反射成分の光量を求める。更に、制御部101は、正反射成分が小さいほどブラックの第1トナーパッチの濃度及びブラックの第2トナーパッチの濃度が大きい濃度であることを検出する。
【0115】
また、イエロー、マゼンタ、及びシアンの各色のトナーの場合には、図10(B)に例示するように、トナー付着量と第1受光素子92が検知する光量の関係は曲線300Sで示され、トナー付着量と第2受光素子93が検知する光量の関係は曲線300Kで示される。そして、制御部101は、第1受光素子92が検知する光量と第2受光素子93が検知する光量の差から反射光の正反射成分の光量を求める。更に、制御部101は、正反射成分が小さいほどイエロー、マゼンタ、及びシアンの各色の第1トナーパッチの濃度及びイエロー、マゼンタ、及びシアンの各色の第2トナーパッチの濃度が大きい濃度であることを検出する。
【0116】
上述の通り、トナー付着量と第1受光素子92が検知する光量の関係と、トナー付着量と第2受光素子93が検知する光量の関係は、ブラックのトナーとイエロー、マゼンタ、及びシアンの各色のトナーでは大きく異なる。しかしながら、トナーパッチの濃度は光学センサ90を用いて同様に求めることができる。
【0117】
詳細にいえば、制御部101は、例えば、色ごとに、トナー劣化情報607に含められた正反射成分の光量と拡散反射成分の光量の差及び濃度の関係を表す関係式またはテーブルなどの濃度変換情報に基づき、求めた差から対応する色の第1トナーパッチ及び第2トナーパッチの各トナーの濃度を取得する。尚、濃度変換情報は、例えば、画像形成装置1の工場出荷前段階において、色ごとに、新品の現像カートリッジ60に対する光学センサ90の検知結果を用いて作成されて、予め現像メモリ60Mに記憶されたものである。
【0118】
以上のように、制御部101は、色ごとに、光学センサ90により、トナーパッチに光を照射し、その反射光の正反射成分及び拡散反射成分の光量を検知し、その光量に基づいてトナーパッチのトナーの濃度を検出する濃度検出ステップを実行する。
【0119】
次に、図7のステップS13に示すように、制御部101は、濃度検出処理で検出した第1トナーパッチ及び第2トナーパッチの各トナーの濃度に基づいて、色ごとに、トナー収容室61内のトナーの劣化レベル、つまり劣化の程度を判定する判定処理を実行する。
【0120】
具体的にいえば、制御部101は、判定処理において、色ごとに、検出した第1トナーパッチの濃度と検出した第2トナーパッチの濃度との差を求める。更に、制御部101は、求めた濃度の差が所定の閾値よりも小さいことを判別した場合、トナーの劣化の程度が許容範囲を超えると判断する。
【0121】
詳細には、制御部101は、濃度の差に基づいて、トナーの上記劣化レベルを判別する。この劣化レベルは、上述したように、現像カートリッジ60のトナー収容室61のトナーが使えなくなるまでの残り%で示されている。具体的には、例えば、0%から10%単位に100%までの11段階のレベルが濃度の差と予め関連付けられて、トナー劣化情報607に記憶されている。また、制御部101は、トナーの劣化の程度、つまり劣化レベルの表示は、「初期値」、つまり新品を「劣化レベル=100%」として、「許容でき得る下限」、つまり許容範囲を超える値に達したとき「劣化レベル=0%」となるように設定する。
【0122】
ここで、本開示の発明者等が実施した検証試験について具体的に説明する。この検証試験では、画像形成装置1において、所定条件で印刷処理(画像形成処理)を続けることにより徐々にトナーの劣化を進めながら、第1トナーパッチ(現像バイアス=200V)の濃度と第2トナーパッチ(現像バイアス=250V)の濃度を測定した。つまり、検証試験では、その試験結果を基づいて、第1トナーパッチ及び第2トナーパッチにおいて、それぞれ印刷枚数と、トナーパッチ正反射光の光量をベルト面正反射光の光量で除算して算出される、反射光に含まれる正反射成分との割合との関係を求めて、図11に曲線402及び曲線401を得た。
【0123】
そして、検証試験では、第1トナーパッチの濃度は、図11の曲線402に例示するように、トナーの劣化が進むにつれて正反射成分が減る、つまりトナー濃度が濃くなることが確かめられた。一方、第2トナーパッチの濃度は、図11の曲線401に例示するように、トナーの劣化が進むにつれて正反射成分が減ってトナー濃度が濃くなるが、正反射成分の減少率は、第1トナーパッチのものよりも小さいことが確認された。すなわち、検証試験によれば、図11に例示するように、トナーの劣化が進むにつれて、第1トナーパッチの濃度と第2トナーパッチの濃度との差が小さくなることがわかった。
【0124】
そこで、本実施形態1の画像形成装置1では、制御部101は、劣化レベルとして、検証試験の結果を鑑みて、第1トナーパッチの濃度と第2トナーパッチの濃度との差40を劣化レベル=100%とし、その差20を0%とした。但し、差40以上は100%とした。更に、その差40と差20との間を11段階に等分して100%から0%まで10%単位で変化するトナーの劣化レベルの指標として用いた。
【0125】
以上のように、制御部101は、濃度検出ステップで検出したトナーの濃度に基づいて、色ごとに、トナー収容室61内のトナーの劣化の程度を判定する判定ステップを実行する。
【0126】
次に、図7のステップS14に示すように、制御部101は、現像メモリ60Mにおいて、色ごとに、判定処理で判定されたトナーの劣化レベルにトナー劣化情報607を更新する。
【0127】
図6に戻って、ステップS4に示すように、制御部101は、色ごとに、現像メモリ60Mの容量情報602と累積ドットカウント604とを参照することにより、トナー収容室61内のトナーの残量を算出する。このトナーの残量は、例えば、新品の現像カートリッジ60のトナー収容室61内のトナーの量を100%としたときの比率(%)で示される。
【0128】
続いて、制御部101は、色ごとに、現像メモリ60Mのトナー劣化情報607を参照することにより、トナー収容室61内のトナーの劣化レベルの値を取得する。更に、制御部101は、色ごとに、トナーの劣化レベルとステップS4で算出したトナーの残量とにより決定されるトナー寿命を求める(ステップS5)。具体的には、制御部101は、トナーの劣化レベル及びトナーの残量のうち、0%に近い値を有するものをトナー寿命として取得する。
【0129】
次に、制御部101は、色ごとに、取得したトナー寿命に基づいて、現像カートリッジ60の交換が必要か否かについて判断する(ステップS6)。具体的には、制御部101は、トナー寿命が所定の閾値(例えば、0%)に達していないことを判断した場合(ステップS6でNO)、制御部101は、ステップS1に進む。
【0130】
一方、制御部101は、トナー寿命が所定の閾値(例えば、0%)に達していることを判断した場合(ステップS6でYES)、ディスプレイ104に現像カートリッジの交換を促す交換表示の報知処理を実行させる(ステップS7)。
【0131】
尚、上記の説明以外に、制御部101は、判定処理において、判定したトナーの劣化の程度が、所定の許容範囲を超えることを判定した場合、対応する色の現像カートリッジ60の交換を促す報知処理を実行させてもよい。これにより、本実施形態1では、現像カートリッジ60を適切に交換させることができ、画像形成装置1の画質の低下を確実に抑えることができる
【0132】
以上のように、本実施形態1の画像形成装置1は、トナーを収容するトナー収容室61、及び、感光ドラム52の表面に形成された静電潜像にトナーを供給してトナー像を形成する現像器を備えた現像カートリッジ60と、感光ドラム52からトナー像を転写ベルト23に転写するベルトユニット20とを備える。また、本実施形態1の画像形成装置1は、転写ベルト23に光を照射し、転写ベルト23から反射した反射光の光量を検知する光学センサ90と、制御部101とを備える。制御部101は、所定の現像バイアスを用いて、転写ベルト23にトナーを付着させて、少なくとも1つのトナーパッチを形成するパッチ形成処理と、光学センサ90により、トナーパッチのトナーの濃度を検出する濃度検出処理と、検出したトナーの濃度に基づいて、トナーの劣化の程度を判定する判定処理と、を含む処理を実行する。
【0133】
以上の構成により、本実施形態1の画像形成装置1では、所定の判定タイミングごとに、各色のトナーパッチが形成された後、そのトナーの濃度が検出される。更に、制御部101は、検出したトナーの濃度の検出結果を基にトナー収容室61内のトナーの劣化の程度を判定する判定処理を行う。これにより、本実施形態1の画像形成装置1では、各色のトナーの劣化について精度よく判定することができる。
【0134】
また、本実施形態1の画像形成装置1では、トナーの劣化について精度よく判定することができるので、トナーの特性が変化する前にトナー切れにならないように、安全側(トナーを使い残す側)に振った制御をする比較例に比べて、トナーを無駄なく使用することができる。これにより、本実施形態1では、メンテナンス作業が容易でコストパフォーマンスに優れた画像形成装置1を容易に構成することができる。
【0135】
更に、本実施形態1の画像形成装置1では、現像室とトナー収容室61とを一体化した現像カートリッジ60において、トナー収容室61内のトナーの劣化について精度よく判定することができる。このため、本実施形態1の画像形成装置1では、現像室内のトナーの劣化についても精度よく判定することが可能となる。この結果、本実施形態1の画像形成装置1では、現像カートリッジ60の交換をより適切に行わせて、画像形成装置1での画質が低下するのを確実に抑えることができる。
【0136】
また、本実施形態1の画像形成装置1では、トナーの劣化検出処理において、既存の光学センサ90を利用してトナーの劣化を判定しているので、専用のトナー劣化センサを追加する必要がない。この結果、本実施形態1では、トナーの劣化を判定する場合でも、コストが安価な画像形成装置1を容易に構成することができる。
【0137】
また、本実施形態1の画像形成装置1では、制御部101は、パッチ形成処理において、色ごとに、露光のデューティを所定値以上とするとともに、現像バイアスが互いに異なる第1トナーパッチと第2トナーパッチとを形成している。また、制御部101は、濃度検出処理において、色ごとに、第1トナーパッチの濃度及び第2トナーパッチの濃度を検出し、判定処理において、色ごとに、検出した第1トナーパッチの濃度と検出した第2トナーパッチの濃度との差が所定の閾値よりも小さいことを判別した場合、トナーの劣化の程度が許容範囲を超えると判定している。
【0138】
以上の構成により、本実施形態1の画像形成装置1では、トナーの劣化の程度をより精度よく判定することができる。また、所定値以上のデューティを用いていることから、第1トナーパッチ及び第2トナーパッチの各濃度を大きくすることができる。この結果、本実施形態1の画像形成装置1では、判定処理での判定精度を高めることができ、トナーの高精度な劣化の程度の判定をより確実に行うことができる。
【0139】
また、本実施形態1の画像形成装置1では、制御部101は、色ごとに、トナーの劣化の程度とトナー残量とによりトナー寿命を決定し、決定したトナー寿命が所定の閾値に達した場合に報知処理をディスプレイ104に実行させている。これにより、本実施形態1では、現像カートリッジ60の交換をより適切なタイミングで行わせることができ、画質の低下をより確実に抑えることができる画像形成装置1を構成することができる。
【0140】
〔実施形態2〕
本開示の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0141】
図12は、本開示の実施形態2に係る画像形成装置1の構成を説明する概略図である。図12において、本実施形態2と実施形態1との主な相違点は、中間転写ベルト123を備えたベルトユニット120を用いた点である。
【0142】
図12に示すように、本実施形態2の画像形成装置1では、ベルトユニット120は、駆動ローラ121と従動ローラ122と対向ローラ128とからなる3つのローラの間に架設された中間転写ベルト123を備えている。そして、本実施形態2の画像形成装置1では、対向ローラ128の表面に配設された中間転写ベルト123と2次転写ローラ126との間を搬送されるシートSに、各感光ドラム52から中間転写ベルト123に一旦転写されていたトナー像が転写される。また、対向ローラ128は、駆動ローラ121及び従動ローラ122よりも下方に配設されているため、クリーニング部70は従動ローラ122と対向ローラ128との間に斜めに架設された中間転写ベルト123にクリーニングローラ71を当接させている。
【0143】
また、本実施形態2の画像形成装置1では、各色のトナーパッチは中間転写ベルト123に形成される。本実施形態2の画像形成装置1では、駆動ローラ121の回転軸121Aは、溝183Aに嵌合された軸受け部材126Aに軸支されている。そして、本実施形態2の画像形成装置1では、光学センサ90が溝183Aと一体的に構成された部材に取り付けられている。すなわち、光学センサ90は、実施形態1のものと同様に、図12に示すように、駆動ローラ21の設置箇所に対向して設けられている。これにより、本実施形態2の画像形成装置1では、実施形態1のものと同様に、光学センサ90の検知精度を高めることができる。
【0144】
以上の構成により、本実施形態2では、実施形態1と同様な効果を奏する。
【0145】
なお、上記の各実施形態の説明では、ベルトユニット(転写器)20に転写ベルト23を有するカラープリンタについて説明したが、本開示はこれに限定されるものではない。例えば、モノクロ画像を形成するモノクロプリンタに適用することもできる。このモノクロプリンタに本開示を適用した場合には、トナーパッチをシートSに形成してもよいし、モノクロプリンタが備える転写ローラにトナーパッチを形成してもよい。
【0146】
また、上記の説明では、ブラック、イエロー、マゼンタ、及びシアンの各色の現像カートリッジ60に対する判定処理を同時に行う場合について説明したが、本開示はこれに限定されない。具体的にいえば、ブラック、イエロー、マゼンタ、及びシアンの各色の現像カートリッジ60の色ごとに交換可能であることから、判定処理を色単位に行うこともできる。この場合には、例えば、現像カートリッジ60ごとに、新品に交換した以降の印刷枚数を記録して、個別に管理することにより、制御部101は、各色の現像カートリッジ60についての判定処理を適切に実行することができる。
【0147】
また、上記の説明以外に、例えば、ステップS3の劣化検出処理と同時に、または別の所定の濃度判定タイミングにおいて、濃度判定用のトナーパッチを形成する。そして、制御部101が、例えば、光学センサ90を用いて、濃度判定用のトナーパッチのトナーの濃度を検知して、更に、制御部101が、その検知結果を基に現像バイアスの決定することにより、印刷物の画質の低下を抑える処理を実行してもよい。尚、濃度判定用のトナーパッチを形成では、トナー劣化判定用画像のトナーパッチTPと異なり、その濃度判定用のトナーパッチを形成するときに用いられている、画像形成時の現像バイアスが用いられる。
【0148】
本開示は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、各実施形態に開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる構成についても本開示の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0149】
1 画像形成装置
20、120 ベルトユニット(転写器)
23 転写ベルト(ベルト)
123 中間転写ベルト(ベルト)
30 露光ユニット(露光器)
52 感光ドラム
53 帯電器
60 現像カートリッジ
61 トナー収容室
63 現像ローラ(現像器)
90 光学センサ
101 制御部
104 ディスプレイ(報知部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12