(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179246
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】マイクロプラスチック体外排出促進用の組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 33/10 20160101AFI20231212BHJP
A23L 33/17 20160101ALI20231212BHJP
A23K 20/163 20160101ALI20231212BHJP
【FI】
A23L33/10
A23L33/17
A23K20/163
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092445
(22)【出願日】2022-06-07
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)令和3年(2021年)12月14日に、「一般財団法人旗影会の助成研究一覧」のウェブサイト(https://www.nakashima-foundation.org/kieikai/research/index20.html)において「マイクロプラスチックの体外排泄作用を有する機能性食品素材の探索」(https://www.nakashima-foundation.org/kieikai/pdf/32/2020S038.pdf)を掲載 (2)令和3年(2021年)11月30日に、「一般財団法人旗影会2020年度研究報告概要集」において「マイクロプラスチックの体外排泄作用を有する機能性食品素材の探索」を掲載 (3)令和4年(2022年)2月5日に、学校法人東海大学清水キャンパスの「清水研究室の卒研発表会」において「マイクロプラスチック(MP)の体外排泄作用を有する機能性食品素材の探索」を発表 (4)令和4年(2022年)1月13日に、「第11回シーズ&ニーズビジネスマッチング研究発表会」において「マイクロプラスチックの体外排泄作用を有する食品素材の探索」を発表 (5)令和4年(2022年)5月18日に、「第76回日本栄養・食糧学会大会講演要旨集」において「マイクロプラスチックの体外排泄作用を有する機能性食品素材の探索」を掲載 (6)令和3年(2021年)12月11日に、「2021年度中部支部大会」において「マイクロプラスチック(MP)の体外排泄作用を有する機能性食品素材の探索」を発表 (7)令和3年(2021年)9月22日に、夢ナビの「東海大学の教員による講義動画」において「摂取したマイクロプラスチックの体内吸収を防ぐには?」を発表
(71)【出願人】
【識別番号】000125369
【氏名又は名称】学校法人東海大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 宗茂
(72)【発明者】
【氏名】劉 笛
【テーマコード(参考)】
2B150
4B018
【Fターム(参考)】
2B150AB20
2B150DC14
4B018MD20
4B018MD31
4B018MD33
4B018MD36
4B018MD41
4B018ME14
(57)【要約】
【課題】マイクロプラスチックの体外排出を促進することができる組成物、食品、飼料、及び、方法を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明に係る組成物は、難消化性多糖類、難消化性タンパク質のうちの1種以上の難消化性素材を含有するマイクロプラスチック体外排出促進用である。また、本発明に係る組成物は、前記難消化性多糖類が、キトサン、難消化性デキストリン、乳果オリゴ糖、のうちの1種以上であるのが好ましい。また、本発明に係る組成物は、前記難消化性タンパク質が、卵殻タンパク質であるのが好ましい。また、本発明に係る食品、飼料は、前記組成物を含有するマイクロプラスチック体外排出促進用である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
難消化性多糖類、難消化性タンパク質のうちの1種以上の難消化性素材を含有するマイクロプラスチック体外排出促進用の組成物。
【請求項2】
前記難消化性多糖類が、キトサン、難消化性デキストリン、乳果オリゴ糖、のうちの1種以上である請求項1に記載のマイクロプラスチック体外排出促進用の組成物。
【請求項3】
前記難消化性タンパク質が、卵殻タンパク質である請求項1に記載のマイクロプラスチック体外排出促進用の組成物。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の組成物を含有するマイクロプラスチック体外排出促進用の食品。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の組成物を含有するマイクロプラスチック体外排出促進用の飼料。
【請求項6】
難消化性多糖類、難消化性タンパク質のうちの1種以上の難消化性素材を含有する組成物を経口投与することによって、
マイクロプラスチックの体外排出を促進する方法(ただし、人間を治療する方法を除く。)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロプラスチックの体外排出を促進する組成物、食品、飼料、及び、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地球環境問題が深刻化するなか、海洋プラスチックゴミへの関心が急速に高まっている。
特に、分析技術の向上に伴って、これまで見逃されていた微細なマイクロプラスチックを検出することが可能となったことから、様々な分野においてマイクロプラスチックの悪影響が顕在化することとなっている。
そのため、マイクロプラスチックに関する技術について、種々の技術が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、マイクロプラスチックおよび二酸化炭素を含有する被処理水から前記マイクロプラスチックを回収し、かつ二酸化炭素を固定化する水処理方法であって、マイクロプラスチック吸着回収能を有する藻類を前記被処理水中に存在させ、前記被処理水から前記マイクロプラスチックを回収し、且つ前記被処理水から前記藻類内に二酸化炭素を固定化させる工程を備える、水処理方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在、食塩やミネラルウォーターといった日常的にヒトが摂取している様々な食品にも微細なマイクロプラスチックが含まれているといった報告や、ヒトの便中にもマイクロプラスチックが存在するといった報告がされている。
つまり、マイクロプラスチックは、特許文献1が問題視するような生物をとりまく水中などの環境だけではなく、生物内部などの生体内環境に対しても影響を及ぼす存在であることがわかる。
【0006】
本発明者らは、生体内部に取り込まれてしまったマイクロプラスチックを排除するため、マイクロプラスチックの体外排出を促進できるような全く新しい技術を創出することができれば、マイクロプラスチックに基づく悪影響を生物から取り除く(又は、悪影響を低減させる)一助となると考えた。
【0007】
そこで、本発明は、マイクロプラスチックの体外排出を促進することができる組成物、食品、飼料、及び、方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は、以下の手段により解決することができる。
(1)難消化性多糖類、難消化性タンパク質のうちの1種以上の難消化性素材を含有するマイクロプラスチック体外排出促進用の組成物。
(2)前記難消化性多糖類が、キトサン、難消化性デキストリン、乳果オリゴ糖、のうちの1種以上である前記1に記載のマイクロプラスチック体外排出促進用の組成物。
(3)前記難消化性タンパク質が、卵殻タンパク質である前記1に記載のマイクロプラスチック体外排出促進用の組成物。
(4)前記1から前記3のいずれか1つに記載の組成物を含有するマイクロプラスチック体外排出促進用の食品。
(5)前記1から前記3のいずれか1つに記載の組成物を含有するマイクロプラスチック体外排出促進用の飼料。
(6)難消化性多糖類、難消化性タンパク質のうちの1種以上の難消化性素材を含有する組成物を経口投与することによって、マイクロプラスチックの体外排出を促進する方法(ただし、人間を治療する方法を除く。)。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る組成物、食品、飼料によると、マイクロプラスチックの体外排出を促進することができる。
本発明に係る方法によると、マイクロプラスチックの体外排出を促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】コントロール群(C群)、難消化性デキストリン群(D群)、乳果オリゴ糖群(O群)、キトサン群(K群)、卵殻タンパク質群(E群)の5つの群におけるラットの体重変化の結果である。
【
図2】5つの群におけるラットの累積摂餌量の結果である。
【
図3】5つの群におけるラットの組織重量の結果である。
【
図4】5つの群におけるラットの糞重量の結果である。
【
図5】5つの群におけるラットの乾燥糞重量の結果である。
【
図6】5つの群における糞中へのMP排泄率の結果である。
【
図7】5つの群における消化管中MP残存率の結果である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る組成物、食品、飼料、及び、方法を実施するための形態(本実施形態)について説明する。
【0012】
[組成物]
本実施形態に係る組成物は、難消化性素材を含有する(難消化性素材を有効成分として含む)とともに、マイクロプラスチック体外排出促進用の組成物である。
以下、本実施形態に係る組成物の各構成を詳細に説明する。
【0013】
(難消化性素材)
難消化性素材とは、消化酵素で消化されない、又は、消化され難い素材(食物用の素材)であって、具体的には、後記する難消化性多糖類、難消化性タンパク質である。
本発明者らは、数多くの実験を行うことによって、難消化性素材(難消化性多糖類、難消化性タンパク質)を含有する組成物が、マイクロプラスチックの体外排出を促進する効果を発揮することを見出した。
なお、本実施形態に係る組成物に含有する難消化性素材(難消化性多糖類、難消化性タンパク質)は、1種でもよいし、2種以上でもよい。
【0014】
(難消化性素材:難消化性多糖類)
難消化性素材である「難消化性多糖類」とは、難消化性(消化酵素で消化されない、又は、消化され難い性質)を呈する多糖類であって、例えば、不溶性食物繊維(キトサン、キチン、セルロース、ヘミセルロース、リグニンなど)、水溶性食物繊維(難消化性デキストリン、ポリデキストロース、グアーガム、イヌリン、ペクチンなど)、乳果オリゴ糖が挙げられ、これらの中でも、特に、不溶性食物繊維、水溶性食物繊維が好ましく、特に、後記の実施例において有意な効果を確認しているキトサン、難消化性デキストリンが非常に好ましい。
【0015】
キトサンとは、エビやカニの甲殻などから抽出されるキチンからアセチル基を外す脱アセチル化を行って精製される不溶性食物繊維であり、例えば、甲陽ケミカル株式会社のコーヨーキトサンFM-80などを使用することができる。
また、難消化性デキストリンとは、トウモロコシのデンプン分解物から製造させる水溶性食物繊維であり、例えば、松谷化学工業株式会社のファイバーソル2などを使用することができる。
また、乳果オリゴ糖(乳糖果糖オリゴ糖)とは、ラクトスクロースとも呼ばれる物質であり、例えば、塩水港精糖株式会社のLS-90Pなどを使用することができる。
【0016】
(難消化性素材:難消化性タンパク質)
難消化性素材である「難消化性タンパク質」とは、難消化性(消化酵素で消化されない、又は、消化され難い性質)を呈するタンパク質であって、近年、そばなどに含まれるたんぱく質の一部が難消化性で、コレステロール低下作用、糖質代謝改善作用など、食物繊維と似た働きをすることがわかり、その作用に注目が集まっている。難消化性タンパク質としては、例えば、卵殻タンパク質、そばタンパク質、酒粕タンパク質などが挙げられ、これらの中でも、特に、卵殻タンパク質が好ましい。
なお、卵殻タンパク質とは、鶏卵の卵殻膜を微粉末化したタンパク質であり、例えば、キユーピー株式会社のEMパウダー(300)などを使用することができる。
【0017】
(マイクロプラスチック体外排出促進用)
本実施形態に係る組成物の用途は、生体内部に取り込まれてしまったマイクロプラスチックの体外排除を促進する用途、つまり、「マイクロプラスチック体外排出促進用」という用途である。
そして、本実施形態に係る組成物が前記の用途として使用できる点については、後記する実施例の結果によって裏付けている。
なお、本実施形態に係る組成物を生物が体内に取り込む(経口摂取する)ことによって、所望の効果(マイクロプラスチック体外排出を促進する効果)を発揮することから、組成物は後記する食品や飼料に含有させるのが好ましい。
【0018】
[食品]
本実施形態に係る食品は、前記した組成物を含有する食品であって、前記した「マイクロプラスチック体外排出促進用」という用途の食品である。
食品とは、ヒトが食べるものであり、固形物、流動物、乳化物、液体、粉末などの食品形態の種類は特に限定されず、前記した組成物を含有可能なものであればよい。
【0019】
[飼料]
本実施形態に係る飼料は、前記した組成物を含有する飼料であって、前記した「マイクロプラスチック体外排出促進用」という用途の飼料である。
飼料とは、家畜、家禽、魚介類などの飼育される動物に与える餌であり、食品の形態と同様に飼料の形態の種類は特に限定されず、前記した組成物を含有可能なものであればよい。
【0020】
(その他の原料)
本実施形態に係る組成物、食品、飼料は、前記した難消化性素材以外に、従来公知の組成物、食品、飼料に含まれる一般的な素材(例えば、サプリメントとする場合は、賦形剤や結合剤など)を含んでいてもよい。
なお、本実施形態に係る組成物は、難消化性素材のみで構成されていてもよい。
【0021】
[方法]
本実施形態に係る方法は、難消化性素材を含有する組成物を生物に経口投与することによって、マイクロプラスチックの体外排出を促進する方法(ただし、人間を治療する方法を除く)である。そして、本実施形態に係る方法における経口投与の対象は、人間以外の生物であり、例えば、家畜、家禽、魚介類などの飼育される動物が挙げられる。
なお、組成物を動物に経口投与する量やタイミングについては、生体内に取り込まれたマイクロプラスチックの量に応じて、適宜、設定すればよい。
【0022】
[組成物等の製造方法]
本実施形態に係る組成物、食品、飼料の製造方法は、一般的な製造方法であればよく、例えば、食品の場合は、当該食品を製造する過程において、食品の原料に対して組成物(又は、難消化性素材)を添加すればよい。
【実施例0023】
実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。
[動物試験:試験内容]
まず、実験動物であるラット(30匹)に対して、1週間にわたり、AIN-93M組成の飼料(下記表1のコントロール群の飼料であってマイクロプラスチックを添加していないもの)を用いて馴化を実施した。
そして、1週間の馴化期間後の30匹のラットについて、コントロール群(C群)、難消化性デキストリン群(D群)、乳果オリゴ糖群(O群)、キトサン群(K群)、卵殻タンパク質群(E群)の5つの群に6匹ずつ群分けした。
その後、各群のラットに対して、6日間にわたり、1日1回の計6回、1kgの各飼料に対してマイクロプラスチックを0.72g添加した表1に示すMP含有飼料を給餌し、毎日(AM10時ごろ)、各ラットの体重、摂餌量、飲水量の測定、及び、糞の回収と糞の凍結保存を実施した。
そして、6日間のMP含有飼料の給餌期間の後、7日目の測定解剖日に、イソフルラン麻酔下にて解剖を行い、臓器(心臓、肝臓、消化管(食道から肛門まで)、腎臓、脂肪(精巣上体脂肪及び腎臓周囲脂肪))を摘出し、各臓器の重量を測定し、冷凍保存した。なお、6日間のMP含有飼料の給餌期間と7日目の測定解剖日を併せて、適宜、「本試験期間」という。
そして、動物試験(6日間のMP含有飼料の給餌期間)は、代謝ケージにおいて、室温23±1℃、湿度35±5%、12時間ごとの明暗サイクル(明期;8:00am~8:00pm)の環境下でラットを飼育し、飼料は、Paired-feeding、水は超純水を自由摂取させた。
【0024】
[動物実験:使用した試験動物、飼料など]
実験動物は、日本エスエルシー株式会社の9週齢のSprague-Dawley系ラット、雄性30匹を使用した。
飼料は、米国国立栄養研究所から発表されたAIN-93M組成の飼料を基準飼料として使用した。そして、馴化に使用した飼料は、詳細には、表1に示すコントロール群に示した飼料であって、マイクロプラスチックを添加していないものを使用した。また、本試験期間に使用したMP含有飼料は、表1に示すとおり、約1kgの飼料に0.72gのマイクロプラスチックを添加し混合させたものであって、適宜、コントロール群用のMP含有飼料からコーンスターチ又はカゼインの一部を所定の素材で置換したものを使用した。
マイクロプラスチックは、Cospheric社の青色着色ポリエチレン粒子を使用し、粒径は180~212μm(平均粒径約200μm)、粒子密度は0.99~1.01g/cc、個数密度は2.54×105個/gであった。
難消化性デキストリンは、松谷化学工業株式会社のファイバーソル2を使用した。
乳果オリゴ糖は、塩水港精糖株式会社のLS-90Pを使用した。
キトサンは、甲陽ケミカル株式会社のコーヨーキトサンFM-80を使用した。
卵殻タンパク質は、キユーピー株式会社のEMパウダー(300)を使用した。
【0025】
表1に各群のラットに給餌したMP含有飼料の組成を示す。
【0026】
【0027】
[実験結果:体重変化]
各群のラットの体重変化の結果を
図1に示す。
この体重変化の結果は、各群におけるラット6匹の平均体重(AM10時における測定値の平均値)の本試験期間中の推移を示している。
なお、
図1では、本試験期間の開始日をday1(1日目)としている。
【0028】
[実験結果:累積摂餌量]
各群のラットの累積摂餌量の結果を
図2に示す。
この累積摂餌量とは、6日間のMP含有飼料の給餌期間での各群におけるラット6匹の平均累積摂餌量である。
【0029】
[実験結果:組織重量]
各群のラットの各組織重量の結果を
図3に示す。
この組織重量とは、本試験期間の最終日に各群におけるラット6匹から摘出した各臓器の平均重量である。なお、この重量とは、ラットの体重100gあたりの各臓器重量(g/100g)である。
そして、前記のとおり、各臓器とは、心臓、肝臓、消化管(食道から肛門まで)、腎臓、脂肪(精巣上体脂肪及び腎臓周囲脂肪)の5つである。
【0030】
[実験結果:糞重量]
各群のラットの糞重量の結果を
図4に示す。
この糞重量の結果は、各群におけるラット6匹の平均の糞重量である。
なお、例えば、
図4のday2の糞重量は、本試験期開始から2日目のAM10時までに採取した糞重量であって、day3の糞重量は、本試験期間の2日目のAM10時から3日目のAM10時までに採取した糞重量である(この点は、下記の
図5も同様である)。
【0031】
[実験結果:乾燥糞重量]
各群のラットの乾燥糞重量の結果を
図5に示す。
この乾燥糞重量の結果は、各群におけるラット6匹の平均の乾燥糞重量である。
なお、乾燥糞重量とは、採取した糞を、60℃、24時間の乾燥処理を施した後の重量である。
【0032】
[実験結果:糞中へのMP排泄率]
各群における糞中へのMP排泄率の結果を
図6と表2に示す。
まず、「糞中におけるマイクロプラスチック(MP)の量」の算出は、次のように実施した。凍結保存していた糞を自然解凍させ均一化(混合)した後、40mgを精秤・採取し、10%KOH溶液(富士フイルム和光純薬株式会社)200mLに添加し、ホットスターラー(アズワン株式会社、RSH-1DN)を用いて、50℃、24時間の攪拌を実施した。その後、吸引ろ過によって、溶液中のマイクロプラスチックを孔径5μmのPTFEメンブレン上に回収した。そして、クリーンベンチ内においてメンブレンを乾燥後、ルーペを用いてマイクロプラスチックの数(40mg中)を計測し、糞中のマイクロプラスチックの数を算出(計測したMPの数×糞の重量(mg)/40(mg))した。
次に、所定時刻までに「ラットが摂取したマイクロプラスチックの数」は、所定時刻までにラットが摂取した摂餌量をもとに算出した。
そして、「糞中へのMP排泄率」は、例えば、
図5のC群の120hrの値を算出する場合、「0~120hrにおける糞中におけるマイクロプラスチックの数」/「0~120hrまでにラットが摂取したマイクロプラスチックの数」×100で算出した。
なお、「0~120hrまでにラットが摂取したマイクロプラスチックの数」は、0~120hrに摂取した累積餌量に、餌中のマイクプラスチック重量比(0.72/(1000+0.72))を乗じ、さらに個数密度2.54×10
5個/gを乗じて求めた。
【0033】
【0034】
[実験結果:消化管中MP残存率]
各群の消化管中(食道から肛門まで)におけるマイクロプラスチックの残存率(消化管中MP残存率)を
図7に示す。
冷凍保存した消化管を自然解凍した後、部位(胃、小腸及び大腸)を分け、10%KOH溶液(富士フイルム和光純薬株式会社)に添加し、ホットスターラー(アズワン株式会社、RSH-1DN)を用いて、50℃、24時間の攪拌を実施した。その後、吸引ろ過によって、溶液中のマイクロプラスチックを孔径5μmのPTFEメンブレン上に回収した。そして、クリーンベンチ内においてメンブレンを乾燥後、ルーペを用いてマイクロプラスチックの数を計測した。
そして、「消化管中MP残存率」は、「消化管に存在したマイクロプラスチックの数(前記の方法で計測したMP数)」/「ラットが摂取したマイクロプラスチックの数」×100で算出した。
【0035】
[実験結果:結果の検討]
図6と表2の結果によると、糞中へのマイクロプラスチックの排泄率は、コントロール群(C群)と比較して、難消化性素材を含有する飼料を給餌した難消化性デキストリン群(D群)、乳果オリゴ糖群(O群)、キトサン群(K群)、卵殻タンパク質群(E群)の4つの群の数値が上昇することを確認した。そして、これらの中でも、キトサン群(K群)と卵殻タンパク質群(E群)と難消化性デキストリン群(D群)が有意な高値を示した。
この
図6と表2の結果から、マイクロプラスチックの体外排泄の促進に寄与する成分として、難消化性素材の中でも、キトサンと卵殻タンパク質と難消化性デキストリンが有効(特にキトサンが非常に有効)であることが確認できた。
【0036】
図7の結果によると、消化管中に残存するマイクロプラスチックは、キトサン群(K群)がコントロール群(C群)と比較して、有意に低値を示すことが確認できた。