(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179249
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】電子写真感光体およびそれを備えた画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 5/147 20060101AFI20231212BHJP
G03G 5/04 20060101ALI20231212BHJP
G03G 5/047 20060101ALI20231212BHJP
G03G 5/05 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
G03G5/147
G03G5/147 503
G03G5/04
G03G5/047
G03G5/05 104A
G03G5/05 104B
G03G5/147 504
G03G5/05 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092454
(22)【出願日】2022-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 雅己
(74)【代理人】
【識別番号】100189429
【弁理士】
【氏名又は名称】保田 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213849
【弁理士】
【氏名又は名称】澄川 広司
(72)【発明者】
【氏名】森下 翠
(72)【発明者】
【氏名】松尾 力也
【テーマコード(参考)】
2H068
【Fターム(参考)】
2H068AA04
2H068AA08
2H068AA09
2H068AA14
2H068AA28
2H068AA29
2H068AA31
2H068AA32
2H068AA37
2H068AA39
2H068BB55
2H068CA06
2H068CA31
2H068CA51
2H068CA54
2H068EA13
2H068FA03
2H068FA12
2H068FC15
(57)【要約】
【課題】製品寿命(ライフ)を通じ、長期にわたってクリーニング性と耐摩耗性を保ち、なおかつクリーニングブレードの反転を抑制することができる電子写真感光体およびそれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【解決手段】導電性基体上に感光層を少なくとも備えた電子写真感光体であり、前記感光層の最表面層が、0.1~3.0μmの平均一次粒子径を有するフッ素系樹脂微粒子を、該最表面層中に5~20質量%の割合で含有し、前記最表面層の表面における前記電子写真感光体の軸方向の帯電領域の中央部の幅4mm領域が、JIS-B-0601(1994)に定義される0.05~0.25μmの十点表面粗さRzおよび50~150μmの凹凸の平均間隔Smを有し、前記最表面層の表面が、100°以上の純水に対する接触角を有することを特徴とする電子写真感光体により、上記の課題を解決する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基体上に感光層を少なくとも備えた電子写真感光体であり、
前記感光層の最表面層が、0.1~3.0μmの平均一次粒子径を有するフッ素系樹脂微粒子を、該最表面層中に5~20質量%の割合で含有し、
前記最表面層の表面における前記電子写真感光体の軸方向の帯電領域の中央部の幅4mm領域が、JIS-B-0601(1994)に定義される0.05~0.25μmの十点表面粗さRzおよび50~150μmの凹凸の平均間隔Smを有し、
前記最表面層の表面が、100°以上の純水に対する接触角を有する
ことを特徴とする電子写真感光体。
【請求項2】
前記十点表面粗さRzと凹凸の平均間隔Smとの比Sm/Rzが、300~700である請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
前記感光層が、100~120℃のガラス転移温度Tgを有する請求項1または2に記載の電子写真感光体。
【請求項4】
前記最表面層が、0.01~0.6ppmのNa元素またはK元素を含有する請求項1または2に記載の電子写真感光体。
【請求項5】
前記最表面層が、0.01~0.6ppmのCa元素、0.01~0.6ppmのAl元素、0.01~0.5ppmのMg元素を含有する請求項1または2に記載の電子写真感光体。
【請求項6】
前記最表面層が、金属酸化物を含有する素材と接触させる製造工程を経て得られた層である請求項1または2に記載の電子写真感光体。
【請求項7】
前記最表面層が、シリカ微粒子をさらに含む請求項1または2に記載の電子写真感光体。
【請求項8】
前記感光層が単層型感光層、電荷発生層および電荷輸送層が積層された積層型感光層、または電荷発生層、第1電荷輸送層および第2電荷輸送層が積層された積層型感光層であり、かつ前記最表面層がそれぞれ単層型感光層、電荷輸送層および第2電荷輸送層である請求項1または2に記載の電子写真感光体。
【請求項9】
請求項1に記載の電子写真感光体と、前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、帯電された前記電子写真感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、前記トナー像を記録媒体上に転写する転写手段とを少なくとも備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子写真感光体およびそれを備えた画像形成装置に関する。さらに詳しくは、本開示は、製品寿命(ライフ)を通じ、長期にわたってクリーニング性と耐摩耗性を保ち、なおかつクリーニングブレードの反転を抑制することができる電子写真感光体およびそれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真技術を用いて画像を形成する電子写真方式の画像形成装置(電子写真装置)は、複写機、プリンタ、ファクシミリ装置、複合機などに多用され、これに用いられる電子写真感光体(以下「感光体」ともいう)には、導電性基体上に有機系光導電性材料を主成分として含有する感光層を備えた感光体(「有機感光体」ともいう)が広く用いられている。
有機感光体としては、導電性基体上に電荷発生物質および電荷輸送物質をバインダ樹脂に分散させた単層型感光層を備える構成、および電荷発生物質をバインダ樹脂に分散させた電荷発生層と電荷輸送物質をバインダ樹脂に分散させた電荷輸送層とをこの順で積層させた積層型感光層を備える構成が提案されている。これらのうち、後者の機能分離型の感光体は、電子写真特性および耐久性に優れ、材料選択の自由度が高く、感光体特性を様々に設計できることから広く実用化されている。
【0003】
有機系感光体の欠点として、有機系材料の性質上、感光体周りのクリーナなどの機械的な負荷による表面の摩耗が挙げられる。この欠点を克服する手段として、近年では、表面を硬化させること、フィラーを含有させた保護層を積層することにより、表面の機械的特性を向上させて感光体の耐摩耗性を向上させる検討がなされている。
しかしながら、感光体の耐摩耗性が向上すると、クリーニング工程においてクリーニングブレード反転といった問題が発生し易くなる。
【0004】
そこで、この問題を解決するために、特開平02-150850号公報(特許文献1)には、感光体表面をブラスト処理し粗面化する試み、特開2010-134459号公報(特許文献2)には、フィラーを含有した表面層に線状傷を形成する試みがなされている。
しかしながら、上記の先行技術では、いずれも表面のみに加工を施したものであるため、ライフを通じて効果を発揮することが困難であるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平02-150850号公報
【特許文献2】特開2010-134459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本開示は、製品寿命(ライフ)を通じ、長期にわたってクリーニング性と耐摩耗性を保ち、なおかつクリーニングブレードの反転を抑制することができる電子写真感光体およびそれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、感光体の最表面層が特定の表面性を有することにより、クリーニングブレードの反転を抑制することができ、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
かくして、本開示によれば、導電性基体上に感光層を少なくとも備えた電子写真感光体であり、
前記感光層の最表面層が、0.1~3.0μmの平均一次粒子径を有するフッ素系樹脂微粒子を、該最表面層中に5~20質量%の割合で含有し、
前記最表面層の表面における前記電子写真感光体の軸方向の帯電領域の中央部の幅4mm領域が、JIS-B-0601(1994)に定義される0.05~0.25μmの十点表面粗さRzおよび50~150μmの凹凸の平均間隔Smを有し、
前記最表面層の表面が、100°以上の純水に対する接触角を有する
ことを特徴とする電子写真感光体が提供される。
【0009】
また、本開示によれば、上記の電子写真感光体と、前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、帯電された前記電子写真感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、前記トナー像を記録媒体上に転写する転写手段とを少なくとも備えることを特徴とする画像形成装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、製品寿命(ライフ)を通じ、長期にわたってクリーニング性と耐摩耗性を保ち、なおかつクリーニングブレードの反転を抑制することができる電子写真感光体およびそれを備えた画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の実施の形態に係る感光体の要部の構成を示す模式断面図である。
【
図2】本開示の実施形態に係る画像形成装置の要部の構成を模式側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の感光体は、導電性基体上に感光層を少なくとも備えた電子写真感光体であり、
前記感光層の最表面層が、0.1~3.0μmの平均一次粒子径を有するフッ素系樹脂微粒子を、該最表面層中に5~20質量%の割合で含有し、
前記最表面層の表面における前記電子写真感光体の軸方向の帯電領域の中央部の幅4mm領域が、JIS-B-0601(1994)に定義される0.05~0.25μmの十点表面粗さRzおよび50~150μmの凹凸の平均間隔Smを有し、
前記最表面層の表面が、100°以上の純水に対する接触角を有する
ことを特徴とする。
以下に、本開示の感光体の特徴となる構成要件、感光体の最表面層の表面性について説明し、その後で(1)感光体および(2)画像形成装置について説明する。
なお、以下に記述する実施形態および実施例は本発明の具体的な一例にすぎず、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0013】
<フッ素系樹脂微粒子>
感光層の最表面層は、0.1~3.0μmの平均一次粒子径を有するフッ素系樹脂微粒子を、最表面層中に5~20質量%の割合で含有する。
フッ素系樹脂微粒子は、その滑剤としての優れた特性から、感光体表面に滑性を付加できる。
【0014】
(材料)
フッ素系樹脂微粒子としては、4フッ化エチレン樹脂(PTFE)微粒子、3フッ化塩化エチレン樹脂微粒子、6フッ化プロピレン樹脂微粒子、フッ化ビニル樹脂微粒子、フッ化ビニリデン樹脂微粒子、2フッ化2塩化エチレン樹脂微粒子およびこれらのユニットを含有する共重合体樹脂微粒子、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)樹脂微粒子、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)樹脂微粒子などが挙げられる。
これらの中でも、感光層の最表面層を塗布により形成する場合、塗布液での分散性および分散安定性の観点から、4フッ化エチレン樹脂(PTFE)微粒子が好ましい。
【0015】
フッ素系樹脂微粒子としてが、例えば、以下の市販品が挙げられる。
PTFE樹脂微粒子としては、ダイキン工業株式会社の製品名:ルブロンL-2、L-5、L-5F、株式会社喜多村の製品名:KTL-500F、KTL-1N、KTL-2N、旭硝子株式会社の製品名:FLUON PTFE L173J、テクノケミカル株式会社の製品名:microdispers-200、綜研化学株式会社の製品名:MP-300、三井・デュポンフロロケミカル株式会社の製品名:TLP-10F-1などが挙げられる
PFA樹脂微粒子としては、三井・デュポンフロロケミカル株式会社の製品名:MP-101などが挙げられる。
FEP樹脂微粒子としては、三井・デュポンフロロケミカル株式会社の製品名:120-JRなどが挙げられる。
【0016】
(平均一次粒子径)
フッ素系樹脂微粒子は、0.1~3.0μmの平均一次粒子径を有する。
フッ素系樹脂微粒子の平均一次粒子径が上記の範囲内であれば、塗布形成の際の塗布液粒での微粒子の分散安定性が良好であり、感光体の画像形成において良好な画質が得られることから好ましい。
フッ素系樹脂微粒子の平均一次粒子径が0.1μm未満では、微粒子同士の凝集が激しく極めて分散し難く、また分散液の安定性が低くなることで表面性の制御ができなくなることがある。一方、フッ素系樹脂微粒子の一次粒子径が3.0μmを超えると、画質欠陥が発生し易くなる。
より好ましいフッ素系樹脂微粒子の平均一次粒子径は、0.25~0.5μmである。
なお、本開示において、平均一次粒子径は、例えば、レーザ回折・散乱式粒度分析計(日機装株式会社製、型式:マイクロトラックMT3000II)を用いて、微粒子が分散された分散液と同じ溶剤に希釈した測定液で測定した値をいう。
【0017】
(含有量)
感光体の最表面層中のフッ素系樹脂微粒子の含有量が高い程、感光体の耐摩耗性が良好になるが、フッ素系樹脂微粒子の含有量が20質量%を超えると、感光体の電気特性の悪化が顕著になり、画像形成装置における実使用に耐えられなくなることがある。一方、フッ素系樹脂微粒子の含有量が5%未満では、感光体の耐摩耗性の改善効果が得られないことがある。
【0018】
<十点表面粗さRzおよび凹凸の平均間隔Sm>
最表面層の表面における感光体の軸方向の帯電領域の中央部の幅4mm領域が、JIS-B-0601(1994)に定義される0.05~0.25μmの十点表面粗さRzおよび50~150μmの凹凸の平均間隔Smを有する。
感光体の凹凸の表面粗さを上記の範囲に規定することにより、クリーニングブレードと感光体の摩擦低減効果が得られる。
【0019】
十点平均粗さRzは、感光体の最表面層の断面曲線から基準長さだけ抜き取った部分において、平均線に平行かつ断面曲線を横切らない直線から、平均線に垂直な方向に測定した最高から5番目までの山頂の標高の平均値と最深から5番目までの谷底の標高の平均値との差をμmで表した値を意味し、その測定方法については、実施例で説明する。
また、凹凸の平均間隔Smは、感光体の最表面層の断面曲線から基準長さだけ抜き取った部分において、1つの山およびそれに隣り合う1つの山に対応する平均線の長さの平均値を意味し、その測定方法については、実施例で説明する。
【0020】
十点平均粗さRzが0.25μmを超えると、クリーニング不良が起こり易くなる。一方、十点平均粗さRzが0.05μm未満では、摩擦低減効果が得られないことがある。
好ましい十点平均粗さRzは、0.12~0.22μmである。
また、凹凸の間隔Smが上記の範囲では、ライフを通じて摩擦低減効果が得られ易い。凹凸の間隔Smが150μmを超えると、長期使用により凸部の頂部が摩耗した際に、頂部に広い平坦部分が生じ、クリーニングブレードとの接触面積が増大するため、摩擦低減効果が低くなることがある。一方、凹凸の間隔Smが50μm未満では、クリーニングブレードとの接触点が多くなり、摩擦低減効果が得られないことがある。
好ましい凹凸の間隔Smは、90~120μmである。
【0021】
<十点表面粗さRzと凹凸の平均間隔Smとの比Sm/Rz>
十点表面粗さRzと凹凸の平均間隔Smとの比Sm/Rzは、300~700であること好ましい。
比Sm/Rzの規定は、クリーニングブレードとの接点の一つ一つにかかる負荷を規定することを意味する。比Sm/Rzが上記の範囲では、クリーニングブレードとの接点にかかる負荷が適切であり、クリーニング性と耐摩耗性とを両立させることができる。比Sm/Rzが700を超えると、一点にかかる負荷が大きくなり、摩擦が大きくなることがある。一方、比Sm/Rzが300未満で小さ過ぎると、負荷が小さ過ぎ、クリーニング不良を起こすことがある。
より好ましい比Sm/Rzは、400~600である。
【0022】
<純水に対する接触角>
最表面層の表面は、100°以上の純水に対する接触角を有する。
接触角が100°以上であることにより、耐摩耗性の感光体であってもライフを通じてクリーニング不良が起こらない感光体を提供できる。一方、接触角があまりに大き過ぎると、画像形成において感光体とトナーとが接着し難くなる。
好ましい接触角は、90~120°である。
接触角の測定方法については、実施例において具体的に説明する。
【0023】
感光体の最表面層にシリコーンオイルまたはシロキサン骨格を有する樹脂を添加すること、すなわち電荷輸送層などの最表面層の形成用塗布液を調製する際に、シリコーンオイルまたはシロキサン骨格を有する樹脂を添加することにより、純水に対する接触角を制御することができる。
シリコーンオイルとしては、例えば、ダウ・東レ株式会社の製品名:SH200などが挙げられる。その添加量は、最表面層が電荷輸送層である場合、電荷輸送材料に対して0.1~0.5質量%が適量である。
また、シロキサン骨格を有する樹脂としては、例えば、住化ポリカーボネート株式会社の製品名:SDポリカSIA8001-20などが挙げられる。その添加量は、最表面層のバインダ樹脂の5~15%が適当である。
シリコーンオイルおよびシロキサン骨格を有する樹脂のいずれも場合にも、最表面層が電荷輸送層である場合、電荷輸送材料とバインダ樹脂を投入するタイミングで添加するのが好ましい。
【0024】
<感光層のガラス転移温度Tg>
感光層は、100~120℃のガラス転移温度Tgを有することが好ましい。
感光層のガラス転移温度Tgが100℃未満で低過ぎると、感光体の耐摩耗性が低下することがある。一方、感光層のガラス転移温度Tgが120℃を超え、高過ぎると耐摩耗性が良好になるが、感光体表面がリフレッシュされ難くなる結果、画質不良を生じることがある。
より好ましい感光層のガラス転移温度Tgは、105~115℃である。
【0025】
<最表面層中のNa元素またはK元素>
最表面層は、0.01~20ppmのNa元素またはK元素を含有することが好ましい。
本発明者らは、感光層とその表面層用塗布液のフッ素系樹脂微粒子の分散性を最適化するため、鋭意検討した結果、塗布液を調製する工程において、分散液がソーダ石灰ガラス素材と接触することにより、層中におけるフッ素系樹脂微粒子の分散均一性が向上することが分かった。
ソーダ石灰ガラス中の酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウムなどの接触帯電性の高い金属酸化物が含まれていることにより、塗布液中のフッ素系樹脂微粒子が帯電しこれらの金属酸化物がフッ素系樹脂微粒子の表面に吸着することで、フッ素系樹脂微粒子の分散安定性が向上しているものと考えられる。特に、接触帯電性が高いナトリウム成分、カリウム成分を含むことは分散安定性への寄与が大きいことがわかった。Na元素またはK元素の含有量を上記の範囲に規定することで、感光体特性に影響を与えることなく分散安定性を向上することができる。
したがって、本開示の感光体の最表面層は、金属酸化物を含有する素材と接触させる製造工程を経て得られた層であることが好ましい。
【0026】
Na元素の含有量が0.1ppm未満、K元素の含有量が0.01ppm未満では、フッ素系樹脂微粒子の分散安定性への寄与はほとんど得られない。一方、Na元素の含有量が20ppmを超える、K元素の含有量が10ppmを超えると、フッ素系樹脂微粒子の分散性は良好であるもの表面層内を電荷輸送される際に、摩耗分が電荷のトラップサイトとなり電荷移動が阻害されるため、感度悪化につながることがある。
Na元素の含有量は、0.1~0.6ppmがより好ましい。
また、K元素の含有量は、0.1~0.6ppmがより好ましい。
Na元素およびK元素、後述するCa元素およびMg元素の含有量については、例えば、感光体の電荷輸送層をICP発光分光分析装置(サーモフィッシャーサイエンティフィク社製、型式:iCAP-6500)を用いて測定することができる。
【0027】
<最表面層中のCa元素、Al元素またはMg元素>
最表面層は、0.01~10ppmのCa元素、0.01~8ppmのAl元素、0.01~4ppmのMg元素を含有することが好ましい。
ソーダ石灰ガラスの構成成分として、カルシウム成分、アルミニウム成分およびマグネシウム成分も含まれている。ナトリウムやカリウムと比較すると劣るが、フッ素系樹脂微粒子の分散安定性の向上に寄与することがわかっており、Ca元素、Al元素またはMg元素の含有量を上記の範囲に規定することで、感光体特性に影響を与えることなく分散安定性を向上することができる。
Ca、AlおよびMgは、酸素間の電気陰性度の差がNaおよびKと比較しては劣るものの、フッ素系樹脂微粒子の分散安定性には効果を有する。
【0028】
Ca元素、Al元素またはMg元素の含有量が0.01ppm未満では、フッ素系樹脂微粒子の分散安定性への寄与はほとんど得られない。一方、Ca元素の含有量が10ppmを超える、Al元素の含有量が8ppmを超える、Mg元素の含有量が4ppmを超えると、フッ素系樹脂微粒子の分散性は良好であるもの表面層内を電荷輸送される際に、摩耗分が電荷のトラップサイトとなり電荷移動が阻害されるため、感度悪化につながることがある。
Ca元素およびAl元素の含有量は、0.01~0.6ppmがより好ましい。
また、Mg元素の含有量は、0.01~0.5ppmがより好ましい。
【0029】
<シリカ微粒子>
最表面層は、シリカ微粒子をさらに含むことが好ましい。
電荷輸送層には、耐摩耗性等を向上させる目的として、無機フィラー微粒子を添加してもよい。無機フィラー微粒子は、前記フッ素系樹脂微粒子との合計が電荷輸送層中における全固形成分の5~17重量%、より好ましくは8~12重量%の範囲になるように含有される。上記無機微粒子としてはシリカ微粒子が例に挙げられる。
【0030】
(材料)
最表面層に用いるシリカ粒子としては、例えば、乾式シリカ粒子、湿式シリカ粒子が挙げられる。
乾式シリカ粒子としては、シラン化合物を燃焼させて得られる燃焼法シリカ(ヒュームドシリカ)、金属珪素粉を爆発的に燃焼させて得られる爆燃法シリカが挙げられる。
湿式シリカ粒子としては、珪酸ナトリウムと鉱酸との中和反応によって得られる湿式シリカ粒子(アルカリ条件で合成・凝集した沈降法シリカ、酸性条件で合成・凝集したゲル法シリカ粒子)、酸性珪酸をアルカリ性にして重合することで得られるコロイダルシリカ粒子(シリカゾル粒子)、有機シラン化合物(例えばアルコキシシラン)の加水分解によって得られるゾルゲル法シリカ粒子が挙げられる。
これらの中でも、シリカ粒子としては、残留電位の発生、その他電気特性の悪化による画像欠陥の抑制(細線再現性の悪化の抑制)の観点から、表面のシラノール基が少なく、低い空隙構造を持つ燃焼法シリカ粒子が望ましい。
また、シリカ微粒子ジメチルジクロロシランもしくはヘキサメチルジシラザン処理されている場合、最も良好な電子写真特性を発現することができる。
【0031】
(平均一次粒子径)
シリカ粒子は、30nm以下の数平均一次粒子径を有することが好ましい。
数平均一次粒子径が30nmを超えると、感光層中に生成する凝集構造が大きくなることにより、クリーニング不良の問題が発生し易くなることがある。一方、数平均一次粒子径が7nm未満では、シリカ粒子の凝集力が強く、解砕し難く、その分散性が低下することがあり、より好ましいシリカ粒子の数平均一次粒子径は、7~30nmである。
なお、数平均一次粒子径は、シリカ粒子を走査型電子顕微鏡観察によって30000~300000倍、例えば10000倍に拡大し、ランダムに100個の粒子を一次粒子として観察し、画像解析によってフェレ方向平均径としての測定値である。
【0032】
(1)電子写真感光体
感光層は、単層型感光層、電荷発生層および電荷輸送層が積層された積層型感光層、または電荷発生層、第1電荷輸送層および第2電荷輸送層が積層された積層型感光層であり、かつ前記最表面層がそれぞれ単層型感光層、電荷輸送層および第2電荷輸送層であることが好ましい。
【0033】
図1は、本開示の実施の形態に係る感光体の要部の構成を示す模式断面図である。
感光体1は、導電性支持体11上に下引き層15が設けられ、その上に電荷発生物質を含有する電荷発生層12と、電荷輸送物質およびそれを結着させるバインダ樹脂を含有する電荷輸送層13とがこの順序で積層されてなる積層構造の積層型感光層(「機能分離型感光層」ともいう)14が設けられた積層型感光体(「機能分離型感光体」ともいう)である。以下、感光体1の各構成について説明する。
【0034】
<導電性基体11>
導電性基体11は、導電性支持体とも称され、感光体の電極としての機能と支持部材としての機能を有し、その構成材料は、当該技術分野で用いられる材料であれば特に限定されない。
具体的には、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、亜鉛、ステンレス鋼およびチタンなどの金属材料、ならびに表面に金属箔ラミネート、金属蒸着処理または導電性高分子、酸化スズ、酸化インジウムなどの導電性化合物の層を蒸着もしくは塗布した、ポリエチレンテレフタレート、ナイロンおよびポリスチレンなどの高分子材料、硬質紙ならびにガラスなどが挙げられる。これらの中でも、加工の容易性の点からアルミニウムが好ましく、JIS3003系、JIS5000系およびJIS6000系などのアルミニウム合金が特に好ましい。
導電性支持体の形状は、
図2に示すような円筒状(ドラム状)に限定されず、シート状、円柱状、無端ベルト状などであってもよい。
また、導電性支持体の表面には、必要に応じて、画質に影響のない範囲内で、レーザ光による干渉縞防止のために、陽極酸化皮膜処理、薬品もしくは熱水などによる表面処理、着色処理、または表面を粗面化するなどの乱反射処理が施されていてもよい。
【0035】
<下引き層(「中間層」ともいう)15>
本開示の感光体は、導電性支持体11と感光層14との間に下引き層15を備えるのが好ましい。
下引き層15は、中間層とも称され、導電性基体11からの感光層14への電荷の注入を防止する機能を有している。したがって、仮に、導電性基体11または感光層14に欠陥が存在する場合であっても、この欠陥に起因して感光層14の微小領域での帯電性の低下を阻止することができる。その結果、露光によって消去されるべき部分以外の表面電荷の減少を抑制して、画像のかぶりなどによる画像欠陥の発生を好適に防止することができる。
また、下引き層15を設けることによって、導電性基体11の表面に存在する凸凹を被覆して均一な表面を形成することができるので、感光層14の成膜性を高めることができる。さらに、導電性基体11と感光層14との接着性を向上させ、感光層14の導電性基体11からの剥離を防止または抑制することができる。この下引き層15には、例えば、樹脂材料で構成される樹脂層またはアルマイト層などを用いることができる。
【0036】
下引き層15を構成する樹脂材料としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂のような樹脂、これらの樹脂を構成する繰返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂等を挙げることができる。また、下引き層15を構成する他の樹脂材料としては、例えば、カゼイン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、セルロース、ニトロセルロース、エチルセルロース等を挙げることもできる。なお、以上のような樹脂は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0037】
これらの樹脂の中でも、ポリアミド樹脂を用いることが好ましく、特に、アルコール可溶性ナイロン樹脂を用いることが好ましい。アルコール可溶性ナイロン樹脂の好ましい例としては、例えば、6-ナイロン、6,6-ナイロン、6,10-ナイロン、11-ナイロン、2-ナイロン、12-ナイロンのような所謂ナイロン、N-アルコキシメチル変性ナイロン、N-アルコキシエチル変性ナイロンのような化学的に変性させたナイロンなどが挙げられる。
【0038】
下引き層15は、電荷調整機能を付与するために、フィラー微粒子として金属酸化物微粒子を含んでいてもよい。
金属酸化物微粒子としては、例えば、酸化チタン微粒子、酸化アルミニウム微粒子、水酸化アルミニウム微粒子、酸化錫微粒子などが挙げられる。
フィラー微粒子の平均粒径は、0.01~0.3μm程度であることが好ましく、0.02~0.1μm程度であることがより好ましい。
【0039】
下引き層15は、例えば、前記樹脂を適当な溶剤に溶解または分散させて、下引き層用塗布液(下引き層用樹脂液)を調製し、この塗布液を導電性基体11の表面に塗布し、乾燥させることによって形成することができる。なお、下引き層15に前記金属酸化物微粒子のようなフィラー微粒子を添加する場合、下引き層用塗布液中にフィラー微粒子を分散させればよい。
【0040】
下引き層用塗布液の溶剤には、水、各種有機溶剤、またはこれらの混合溶剤が用いられる。かかる溶剤の具体例としては、例えば、水、メタノール、エタノール、ブタノールのようなアルコール類のみからなる単独溶剤、水とアルコール類との混合溶剤、2種以上のアルコール類を含む混合溶剤、アセトンまたはジオキソラン等とアルコール類との混合溶剤、ジクロロエタン、クロロホルム、トリクロロエタンのようなハロゲン系有機溶剤類とアルコール類等との混合溶剤等が挙げられる。これらの溶剤の中でも、地球環境に対する配慮から、非ハロゲン系有機溶剤が好適に用いられる。
【0041】
フィラー微粒子を塗布液中に分散させる方法としては、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライタ、振動ミル、超音波分散機、ペイントシェーカー等を利用する分散方法を用いることができる。また、フィラー微粒子を含有する塗布液を超高圧で微小空隙中に通過させるメディアレスタイプの分散装置を利用する分散方法も用いることができる。かかる分散方法では、塗布液を微小空隙中に通過させる際に発生する非常に強いせん断力によって、フィラー微粒子を塗布液中に分散させる。このため、フィラー微粒子をより安定的に塗布液中に分散させることができる。
【0042】
下引き層用塗布液の塗布方法としては、例えば、スプレイ法、バーコート法、ロールコート法、ブレード法、リング法、浸漬塗布法等が挙げられる。これら塗布方法の中でも、特に、浸漬塗布法が好ましい。ここで、浸漬塗布法は、基体を塗布液で満たした塗工槽に浸漬した後、一定速度または逐次変化する速度で塗工槽から引上げることによって、基体の表面に層を形成する方法である。かかる方法は、比較的簡単で、生産性および原価の点で優れているため、感光体を製造する場合に広く利用されている。
【0043】
下引き層15の膜厚は、0.01~20μm程度であることが好ましく、0.05~10μm程度であることがより好ましい。下引き層15の膜厚を前記下限値以上とすることにより、導電性基体11の凸凹を確実に被覆することができ、均一かつ平坦性の高い表面を有する下引き層15を形成することができる。このため、下引き層15は、その機能を十分に発揮することができる。その結果、導電性基体11からの感光層14への電荷の注入をより確実に阻止して、感光層14の帯電性の低下を防止することがきる。一方、下引き層15の膜厚を前記上限値以下とすることにより、例えば、浸漬塗布法によって下引き層15を精度よく形成することができる。このため、下引き層15上に感光層14を均一に形成することができるので、十分な感度を有する感光体1を得ることができる。
【0044】
<電荷発生層15>
下引き層15上設けられる電荷発生層12は、光を吸収することによって電荷を発生する電荷発生物質を主成分として含有する。なお、電荷発生層12中に含まれる電荷発生物質の量は、特に限定されないが、40~80質量%程度であることが好ましい。
【0045】
電荷発生物質としては、各種有機光導電性材料および各種無機光導電性材料のうちの1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
有機光導電性材料としては、例えば、モノアゾ系顔料、ビスアゾ系顔料、トリスアゾ系顔料のようなアゾ系顔料、インジゴ、チオインジゴのようなインジゴ系顔料、ペリレンイミド、ペリレン酸無水物のようなペリレン系顔料、アントラキノン、ピレンキノンのような多環キノン系顔料、金属フタロシアニン(例えば、オキソチタニウムフタロシアニン化合物)、無金属フタロシアニンのようなフタロシアニン系化合物、スクアリリウム色素、ピリリウム塩類、チオピリリウム塩類、トリフェニルメタン系色素等が挙げられる。一方、無機光導電性材料としては、例えば、セレン、非晶質シリコン等が挙げられる。
【0046】
これらの電荷発生物質の中でも、フタロシアニン系化合物が好ましく、オキソチタニウムフタロシアニン化合物がより好ましい。ここで、「オキソチタニウムフタロシアニン化合物」とは、オキソチタニウムフタロシアニンおよびその誘導体を意味する。オキソチタニウムフタロシアニン誘導体としては、例えば、フタロシアニン基に含まれる芳香環の水素原子の少なくとも1つがハロゲン原子(例えば、塩素原子、フッ素原子)、ニトロ基、シアノ基、スルホン酸基のような置換基で置換されたオキソチタニウムフタロシアニン、中心金属であるチタン原子に塩素原子のような配位子が配位したオキソチタニウムフタロシアニン等が挙げられる。
【0047】
また、オキソチタニウムフタロシアニン化合物は、特定の結晶構造を有することが好ましい。具体的には、オキソチタニウムフタロシアニン化合物は、Cu-Kα特性X線(波長1.54Å)に対するX線回折スペクトルにおいて、少なくともブラッグ角(2θ±0.2°)27.2°に回折ピークを示す結晶構造を有することが好ましい。ここで、ブラッグ角2θとは、入射X線と回折X線とのなす角度であり、所謂回折角を表す。
このようなオキソチタニウムフタロシアニン化合物を電荷発生物質として用いることによって、更に優れた感度および解像度を有する感光体1を得ることができる。また、オキソチタニウムフタロシアニン化合物は、電荷発生能力および電荷注入能力に優れている。このため、オキソチタニウムフタロシアニン化合物は、光を吸収することによって多量の電荷を発生すると共に、発生した電荷をその内部に蓄積することなく、電荷輸送層13に効率よく注入することができる。
オキソチタニウムフタロシアニン化合物は、例えば例えば、Moser, Frank HおよびArthur L. ThomasによるPhthalocyanine Compounds、Reinhold Publishing Corp.、New York、1963に記載される製造方法に従って製造することができる。
例えば、オキソチタニウムフタロシアニンは、フタロニトリルと四塩化チタンとを加熱融解させることによって、またはこれらをα-クロロナフタレンのような適当な溶媒中で加熱反応させることによって、ジクロロチタニウムフタロシアニンを合成し、次いで、塩基または水で加水分解することによって製造することができる。
また、オキソチタニウムフタロシアニンは、イソインドリンとテトラブトキシチタンのようなチタニウムテトラアルコキシドとを、N-メチルピロリドンのような適当な溶媒中で加熱反応させることによっても製造することができる。
【0048】
電荷発生層12の形成方法としては、例えば、電荷発生物質を導電性基体11の表面に真空蒸着する方法、または電荷発生物質を適当な溶剤中に溶解または分散して得られる電荷発生層用塗布液を導電性基体11の表面に塗布する方法等が用いられる。これらの中でも、結着剤であるバインダ樹脂を溶剤中に混合(溶解または分散)して得られるバインダ樹脂液中に、電荷発生物質を分散して電荷発生層用塗布液を調製し、得られた塗布液を導電性基体11の表面に塗布する方法が好適に用いられる。以下、この方法について説明する。
【0049】
電荷発生層12に用いられるバインダ樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルホルマール樹脂のような樹脂、これらの樹脂を構成する繰返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂等が挙げられる。
共重合体樹脂の具体例としては、例えば、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル-無水マレイン酸共重合体樹脂、アクリロニトリル-スチレン共重合体樹脂のような絶縁性樹脂等が挙げられる。なお、バインダ樹脂は、これらの樹脂に限定されるものではなく、一般に用いられる樹脂であってもよい。なお、以上のような樹脂は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0050】
電荷発生層用塗布液の溶剤としては、例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタンのようなハロゲン化炭化水素類、メタノール、エタノールのようなアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンのようなケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチルのようなエステル類、テトラヒドロフラン、ジオキサンのようなエーテル類、1,2-ジメトキシエタンのようなエチレングリコールのアルキルエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素類、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミドのような非プロトン性極性溶剤等が挙げられる。これらの溶剤の中でも、地球環境に対する配慮から、非ハロゲン系有機溶剤類が好適に用いられる。なお、以上のような溶剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いるようにしてもよい。
【0051】
電荷発生物質とバインダ樹脂とを含有する電荷発生層12において、電荷発生物質の質量M1とバインダ樹脂の質量M2との比(M1/M2)は、10/100~400/100であることが好ましい。比(M1/M2)が10/100以上であることにより、感光体1の感度の低下を防止または抑制することができる。一方、比(M1/M2)が400/100以下であることにより、電荷発生層12は、十分な膜強度を維持することができる。また、この場合、電荷発生層12中に電荷発生物質が十分に分散するので、粗大粒子の形成が阻止される。このため、露光によって消去されるべき部分以外の表面電荷が高く維持され、白地にトナーが付着して微小な黒点が形成されることに起因する画像のかぶり等の画像欠陥の発生を好適に防止することができる。
【0052】
電荷発生層用塗布液の塗布方法としては、例えば、スプレイ法、バーコート法、ロールコート法、ブレード法、リング法、浸漬塗布法等を挙げることができる。これらの塗布方法の中でも、下引き層用塗布液の塗布方法において説明したような浸漬塗布法が特に好ましい。また、塗布によって電荷発生層12を形成する場合、電荷発生層用塗布液中に酸化防止剤または紫外線吸収剤等を添加することにより、塗布液の安定性を高めることができる。
【0053】
電荷発生層12の膜厚は、0.05~5μm程度であることが好ましく、0.1~1μm程度であることがより好ましい。電荷発生層12の膜厚を前記下限値以上とすることにより、電荷発生層12の光吸収による電荷発生効率が向上し、感光体1の感度を高めることができる。一方、電荷発生層12の膜厚を前記上限値以下とすることにより、電荷発生層12内部での電荷移動が感光層14の表面電荷を消去する過程の律速とならず、感光体1の感度を高めることができる。
【0054】
<電荷輸送層13>
電荷輸送層は電荷発生物質で発生した電荷を受け入れ輸送する機能を有し、電荷輸送物質を、バインダ樹脂中に含有させることによって得られる。また、本開示では耐摩耗性の向上を目的として、感光体の最表面層になる電荷輸送層にフッ素系樹脂微粒子を添加している。
【0055】
電荷輸送物質としては、特に限定されず、当該技術分野で用いられる化合物を使用することができる。
具体的な電荷輸送物質の例としては、カルバゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、イミダゾロン誘導体、イミダゾリジン誘導体、ビスイミダゾリジン誘導体、スチリル化合物、ヒドラゾン化合物、多環芳香族化合物、インドール誘導体、ピラゾリン誘導体、オキサゾロン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、キナゾリン誘導体、ベンゾフラン誘導体、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、アミノスチルベン誘導体、トリアリールアミン誘導体、トリアリールメタン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、スチルベン誘導体およびベンジジン誘導体などを挙げることができる。
電荷輸送層を構成するバインダ樹脂には、透明性や耐刷性に優れるなどの理由から、当該分野で周知のポリカーボネートやポリアリレートを主成分とする樹脂が好適に選択される。
その他に、上記のポリカーボネート樹脂以外に第2成分であるバインダ樹脂として、例えばポリメチルメタクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などのビニル重合体樹脂、または、これらを構成する繰返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂、あるいは、ポリエステル樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂およびフェノール樹脂またはポリカーボネート骨格とポリジメチルシロキサン骨格を有する共重合体樹脂などを用いることができる。またこれらの樹脂を部分的に架橋した熱硬化性樹脂を用いてもよい。特に、シリコーン樹脂やシロキサン骨格を有する樹脂を用いた場合には表面平滑性が高くなり、感光層の表面の水の接触角が100°以上になり、ライフを通じてクリーニング不良を防ぐため好ましい。
これらの樹脂は単独で使用してもよく、また、2種以上の混合物を使用してもよい。なお、上記のポリカーボネート樹脂が主成分であるとは、電荷輸送層を構成する総バインダ樹脂中におけるポリカーボネート樹脂の重量%が、最も高い割合を占めることを意味し、好ましくは50~90重量%の範囲であることを意味する。
また、上記の第2成分であるバインダ樹脂とは、電荷輸送層を構成するバインダ樹脂の合計重量に対して、上記のポリカーボネート樹脂の含有量より低く、10~50重量%の範囲で用いられ得るバインダ樹脂を意味する。
また、電荷輸送層における電荷輸送物質とバインダ樹脂との割合は、重量比で10/18~10/10の範囲が好ましい。
【0056】
また、上記フィラー微粒子の分散にはホモジナイザーや高圧衝突タイプ等の公知の分散機を用いることができる。
特に高圧衝突タイプの分散機が微粒子へのダメージ低減の観点から好ましい。
高圧衝突タイプの分散機としては、高圧噴射式乳化分散機が挙げられる。この高圧噴射式乳化分散機とは、高圧プランジャポンプなどで処理液(スラリー、乳化液または分散液等)を微細な流路に圧入し、排出部の特殊バルブの調整で吐出口から高圧で噴射・衝突させることで、微粒子にダメージを与えず乳化・分散・表面処理を行う湿式微粒化装置を意味する。
したがって、高圧噴射式分散機は、吐出口からの噴射時に圧力を調節して高圧噴射液同士の衝突、および高圧噴射液と装置の壁面との衝突による被分散物の乳化・分散または粉砕に使用される。よって、上記の高圧噴射式分散機としては、高圧ポンプとこれに配管により接続された複数の小径のオリフィスを有する治具と、該オリフィスより液が吐出される際に液同士が衝突すべく加工された治具により構成される装置を用いることができる。
このような装置としては、スギノマシン株式会社のスターバースト、吉田機械興業株式会社のナノヴェイタ、マイクロフルイディックスのマイクロフルイダイザーが利用できる。
なお、衝突パス回数が増えると、液衝突の発熱が蓄積しやすいことから、分散回路に冷却装置をつけるのが望ましい。
本開示でいうところの高圧とは、前記高圧ポンプの吐出量、吐出圧とオリフィス径および長さ、更には溶媒および被分散物の粘度によりおおむね決定される10~300MPaを好適に意味する。
処理圧力が10MPaより低くなると、液同士の衝突エネルギーが足りずに、所望する粒径まで分散できない。
一方、処理圧力が300MPaより高くなると、液同士の衝突エネルギーが高すぎて、分散物の劣化および分散液の爆発等の恐れがある。もっと好ましい処理圧力は50~150MPaである。
【0057】
また、電荷輸送層には成膜性、表面平滑性を向上させるために、可塑剤またはレベリング剤などを電荷輸送層に添加してもよい。上記可塑剤としては、たとえばフタル酸エステルなどの二塩基酸エステル、脂肪酸エステル、リン酸エステル、塩素化パラフィンおよびエポキシ型可塑剤などを挙げることができる。また、上記レベリング剤としては、たとえばシリコーン系レベリング剤などを挙げることができる。特に、シリコーン系レベリング剤を用いた場合には、上記のバインダ樹脂で表面平滑性を付与する能力のないものを用いた際にも水の接触角が100°以上になり、ライフを通じてクリーニング不良を防ぐことができるため、好ましい。
また感光層には、酸化防止剤または紫外線吸収剤などを添加してもよい。特に電荷輸送層には、酸化防止剤または紫外線吸収剤などを添加することが好ましく、各層を塗布によって形成する際の塗布液の安定性を高めることができる。
さらに、電荷輸送層は、酸化防止剤を添加するのが特に好ましい。この酸化防止剤の電荷輸送層への添加により、オゾン、窒素酸化物などの酸化性ガスに対する感光層の劣化を低減することができる。
上記酸化防止剤としては、フェノール系化合物、ハイドロキノン系化合物、トコフェロール系化合物またはアミン系化合物などが挙げられる。これらの中でも、ヒンダードフェノール誘導体もしくはヒンダードアミン誘導体、またはこれらの混合物が好適に用いられる。
【0058】
溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンおよびモノクロルベンゼンなどの芳香族炭化水素;ジクロロメタンおよびジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素;テトラヒドロフラン、ジオキサンおよびジメトキシメチルエーテルなどのエーテル類;、並びに、N,N-ジメチルホルムアミドなどの非プロトン性極性溶剤などが挙げられる。また、必要に応じてアルコール類、アセトニトリルまたはメチルエチルケトンなどの溶剤をさらに加えて使用することもできる。これらの溶剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0059】
電荷輸送層用塗布液の塗布方法としては、スプレイ法、バーコート法、ロールコート法、ブレード法、リング法および浸漬塗布法などを挙げることができる。これらの塗布方法の中でも、特に浸漬塗布法は、前記のように種々の点で優れているので、電荷輸送層16を形成する場合にも利用できる。
【0060】
電荷輸送層の膜厚は、特に限定されないが、好ましくは5~50μm、より好ましくは10~40μm程度である。
電荷輸送層の膜厚が5μm未満であると、感光体表面の帯電保持能が低下することがある。一方、電荷輸送層の膜厚が50μmを超えると、感光体の解像度が低下することがある。
【0061】
(2)画像形成装置100
本開示の画像形成装置は、本開示の感光体と、感光体を帯電させる帯電手段と、帯電された感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、トナー像を記録媒体上に転写する転写手段とを少なくとも備え、その他、転写されたトナー像を記録媒体上に定着して画像を形成する定着手段、感光体に残留するトナーを除去し回収するクリーニング手段、および感光体に残留する表面電荷を除電する除電手段から選択される手段を備えていてもよい。
以下、図面に基づいて本開示の画像形成装置およびその動作について説明するが、以下の記載内容に限定されるものではない。
【0062】
図2は、本開示の実施形態に係る画像形成装置の要部の構成を模式側面図である。。
図2の画像形成装置(レーザプリンタ)100は、本開示の感光体1と、露光手段(半導体レーザ)31と、帯電手段(帯電器)32と、現像手段(現像器)33と、転写手段(転写帯電器)34と、搬送ベルト(図示せず)と、定着手段(定着器)35と、クリーニング手段(クリーナ)36とを含んで構成される。符号51は記録媒体(記録紙または転写紙)を示す。
【0063】
感光体1は、画像形成装置100本体に回転自在に支持され、図示しない駆動手段によって回転軸線44回りに矢符41方向に回転駆動される。駆動手段は、例えば電動機と減速歯車とを含んで構成され、その駆動力を感光体1の芯体を構成する導電性支持体に伝えることによって、感光体1を所定の周速度で回転駆動させる。帯電手段(帯電器)32、露光手段31、現像手段(現像器)33、転写手段(転写帯電器)34およびクリーニング手段(クリーナ)36は、この順序で、感光体1の外周面に沿って、矢符41で示される感光体1の回転方向上流側から下流側に向って設けられる。
【0064】
帯電器32は、感光体1の外周面を均一に所定の電位に帯電させる帯電手段である。
露光手段31は、半導体レーザを光源として備え、光源から出力されるレーザビーム光を、帯電器32と現像器33との間の感光体1の表面に照射することによって、帯電された感光体1の外周面に対して画像情報に応じた露光を施す。光は、主走査方向である感光体1の回転軸線44の延びる方向に繰返し走査され、これらが結像して感光体1の表面に静電潜像が順次形成される。すなわち、帯電器32により均一に帯電された感光体1の帯電量がレーザビームの照射および非照射によって差異が生じて静電潜像が形成される。
【0065】
現像器33は、露光によって感光体1の表面に形成される静電潜像を、現像剤(トナー)によって現像する現像手段であり、感光体1を臨んで設けられ、感光体1の外周面にトナーを供給する現像ローラ33aと、現像ローラ33aを感光体1の回転軸線44と平行な回転軸線まわりに回転可能に支持すると共にその内部空間にトナーを含む現像剤を収容するケーシング33bとを備える。
【0066】
転写帯電器34は、現像によって感光体1の外周面に形成される可視像であるトナー像を、図示しない搬送手段によって矢符42方向から感光体1と転写帯電器34との間に供給される記録媒体である転写紙51上に転写させる転写手段である。転写帯電器34は、例えば、帯電手段を備え、転写紙51にトナーと逆極性の電荷を与えることによってトナー像を転写紙51上に転写させる接触式の転写手段である。
【0067】
クリーナ36は、転写帯電器34による転写動作後に感光体1の外周面に残留するトナーを除去し回収する清掃手段であり、感光体1の外周面に残留するトナーを剥離させるクリーニングブレード36aと、クリーニングブレード36aによって剥離されたトナーを収容する回収用ケーシング36bとを備える。また、このクリーナ36は、図示しない除電ランプと共に設けられる。
【0068】
また、画像形成装置100には、感光体1と転写帯電器34との間を通過した転写紙51が搬送される下流側に、転写された画像を定着させる定着手段である定着器35が設けられる。定着器35は、図示しない加熱手段を有する加熱ローラ35aと、加熱ローラ35aに対向して設けられ、加熱ローラ35aに押圧されて当接部を形成する加圧ローラ35bとを備える。
符号37は、転写紙と感光体を分離する分離手段、符号38は、画像形成装置の前記の各手段を収容するケーシングを示す。
【0069】
この画像形成装置100による画像形成動作は、次のようにして行われる。
まず、感光体1が駆動手段によって矢符41方向に回転駆動されると、露光手段31による光の結像点よりも感光体1の回転方向上流側に設けられる帯電器32によって、感光体1の表面が正の所定電位に均一に帯電される。
【0070】
次いで、露光手段31から、感光体1の表面に対して画像情報に応じた光が照射される。感光体1は、この露光によって、光が照射された部分の表面電荷が除去され、光が照射された部分の表面電位と光が照射されなかった部分の表面電位とに差異が生じ、静電潜像が形成される。
露光手段31による光の結像点よりも感光体1の回転方向下流側に設けられる現像器33から、静電潜像の形成された感光体1の表面にトナーが供給されて静電潜像が現像され、トナー像が形成される。
【0071】
感光体1に対する露光と同期して、感光体1と転写帯電器34との間に、転写紙51が供給される。転写帯電器34によって、供給された転写紙51にトナーと逆極性の電荷が与えられ、感光体1の表面に形成されたトナー像が、転写紙51上に転写される。
トナー像の転写された転写紙51は、搬送手段によって定着器35に搬送され、定着器35の加熱ローラ35aと加圧ローラ35bとの当接部を通過する際に加熱および加圧され、トナー像が転写紙51に定着されて堅牢な画像となる。このようにして画像が形成された転写紙51は、搬送手段によって画像形成装置100の外部へ排紙される。
【0072】
一方、転写帯電器34によるトナー像の転写後も感光体1の表面上に残留するトナーは、クリーナ36によって感光体1の表面から剥離されて回収される。このようにしてトナーが除去された感光体1の表面の電荷は、除電ランプからの光によって除去され、感光体1の表面上の静電潜像が消失する。その後、感光体1はさらに回転駆動され、再度帯電から始まる一連の動作が繰返されて連続的に画像が形成される。
【実施例0073】
以下に、図面に基づき実施例および比較例により本開示を具体的に説明するが、これらの実施例により本発明が限定されるものではない。
なお、実施例および比較例で得られた感光体およびそれらの原料の物性を下記の方法により測定した。
【0074】
(1)感光体の最表面層の十点表面粗さRzおよび凹凸の平均間隔Smの測定
表面粗さ測定装置(株式会社東京精密製、型式:Surfcom1400D)を用いて、基準長さ0.8mm、カットオフ波長0.8mm、測定速度0.1mm/sec、カットオフ種類ガウシアンの方法で、感光体の最表面層(電荷輸送層)の軸方向の帯電領域の中央部の幅4mm領域の十点表面粗さRz(μm)および凹凸の平均間隔Sm(μm)を測定する。
このRzおよびSmは、JIS-B-0601(1994)に定義される十点表面粗さRzおよび凹凸の平均間隔Smに相当する。
【0075】
(2)感光体の最表面層の純水に対する接触角の測定
接触角計(協和界面科学株式会社製、型式:CA-DT・A型)および試薬に純水(温度20℃)を用いて、温度20℃、湿度50%の環境下で感光体の最表面層(電荷輸送層)表面(感光体の軸方向の中央部)の接触角(°)を測定する。
【0076】
(3)感光層のガラス転移温度Tgの測定
示差走査熱量分析装置(セイコー電子工業株式会社(現 株式会社日立ハイテクサイエンス)製、型番:DSC6200)を用いて、日本工業規格(JIS)K7121-1987に準じて、試料1gを昇温速度10℃/分で加熱してDSC曲線を測定する。得られたDSC曲線において、ガラス転移に相当する吸熱ピークの高温側のベースラインを低温側に延長した直線と、ピークの立ち上がり部分から頂点までの曲線に対して勾配が最大になるような点で引いた接線との交点の温度をガラス転移温度(Tg)とする。
試料は、カッターナイフなどで最表面層に1cm四方の傷をつけて剥離することにより得た。
【0077】
(4)感光体の最表面層中の金属元素濃度の測定
ICP発光分光分析装置(サーモフィッシャーサイエンティフィク社製、型式:iCAP-6500)を用いて、感光体の最表面層(電荷輸送層)中のNa、K、CaおよびMg元素の含有量を測定する。
試料は、カッターナイフなどで最表面層に1cm四方の傷をつけて剥離することにより得た。
【0078】
(実施例1)
(下引き層の作製)
酸化チタン(石原産業株式会社製、製品名:タイペーク(登録商標)TTO-D-1)3質量部およびポリアミド樹脂(東レ株式会社製、製品名:アミラン(登録商標)CM8000)2質量部を、メチルアルコール25質量部に添加し、ペイントシェーカーにて8時間分散処理して、下引き層用塗布液3kgを調製した。
得られた下引き層用塗布液を塗布槽に満たし、導電性基体11として直径30mm、長さ357mmのアルミニウム製の円筒状の基体を浸漬した後に引き上げ、得られた塗膜を自然乾燥させて、導電性基体11上に膜厚1μmの下引き層15を形成した。
【0079】
(電荷発生層の作製)
次いで、電荷発生物質として、CuKα1.541ÅのX線に対するブラッグ角(2θ±0.2°)27.2°に主要なピークを示すX線回折スペクトルを有するチタニルフタロシアニン1質量部およびバインダ樹脂としてブチラール樹脂(積水化学工業株式会社製、製品名:エスレックBM-2)1質量部を、メチルエチルケトン98質量部に混合し、ペイントシェーカーにて8時間分散処理して、電荷発生層用塗布液3kgを調製した。
得られた電荷発生層用塗布液を、下引き層を形成する場合と同様の浸漬法で、先に設けた下引き層15の表面に塗布し、得られた塗膜を自然乾燥させて、膜厚0.3μmの電荷発生層12を形成した。
【0080】
(電荷輸送層の作製)
次いで、フッ素系樹脂微粒子として4フッ化ポリエチレン樹脂微粒子(平均一次粒子径:約0.2μm、ダイキン工業株式会社製、製品名:ルブロンL-2)4.8gを、オーブンにて温度150℃で30分間、加熱処理を行った。
得られた4フッ化ポリエチレン樹脂微粒子を、フッ素系分散剤(東亜合成株式会社製、製品名:GF-400)0.34gおよびテトロヒドロフラン25.5g共にポリプロピレン容器に入れて混合し、撹拌機(柴田科学株式会社製、型式:M-103型)および撹拌羽根にて30時間、撹拌して、フッ素系樹脂微粒子分散液を得た。
【0081】
得られたフッ素系樹脂微粒子分散液、電荷輸送物質として次式:
【化1】
で表されるトリフェニルアミン系化合物(TPD)(東京化成工業株式会社製、商品名:D2448)15.3g、バインダ樹脂としてポリカーボネート樹脂(帝人化成社株式会社製、製品名:TS2050)27.6g、シリコーンオイル0.0031g、およびテトロヒドロフラン126.5gを混合して固形分24質量%の懸濁液を作製した。
得られた懸濁液を湿式乳化分散装置(マイクロフルイダイザー社製、型式:M-110P)を用いて、設定圧力:100MPaの条件で、装置を5回通過させる分散処理を行い、電荷輸送層用塗布液200gを調製した。
【0082】
得られた電荷輸送層用塗布液を、下引き層を形成する場合と同様の浸漬法で、先に設けた電荷発生層12の表面に塗布し、得られた塗膜を温度130℃で90分間乾燥させて、膜厚28μmの電荷輸送層13を形成し、電荷発生層12および電荷輸送層13からなる感光層14を形成した。以上のようにして、
図1に示す構造の感光体1を得た。
【0083】
(実施例2)
電荷輸送層用塗布液の調製において、フッ素系樹脂微粒子として、4フッ化ポリエチレン樹脂微粒子(平均一次粒子径:約0.2μm、ダイキン工業株式会社製、製品名:ルブロンL-2)4.8gを2.4gに変更し、4フッ化ポリエチレン樹脂微粒子(平均一次粒子径:約0.5μm、株式会社喜多村製、製品名:KTL-500F)2.4gを加えること以外は、実施例1と同様にして感光体1を得た。
【0084】
(実施例3)
電荷輸送層用塗布液の調製において、フッ素系樹脂微粒子として、4フッ化ポリエチレン樹脂微粒子(平均一次粒子径:約0.2μm、ダイキン工業株式会社製、製品名:ルブロンL-2)4.8gを4.3gに変更し、シリカ微粒子(平均一次粒子径:約16nm、日本アエロジル株式会社製、製品名:AEROSIL(登録商標)R972V)0.5gを加えること以外は、実施例1と同様にして感光体1を得た。
【0085】
(実施例4)
電荷輸送層用塗布液の調製において、フッ素系樹脂微粒子として、4フッ化ポリエチレン樹脂微粒子(平均一次粒子径:約0.2μm、ダイキン工業株式会社製、製品名:ルブロンL-2)4.8gの代わりに、4フッ化ポリエチレン樹脂微粒子(平均一次粒子径:約0.2μm、三井・ケマーズフロロプロダクツ株式会社製、製品名:TLP10F-1)4.8gを用いること以外は、実施例1と同様にして感光体1を得た。
【0086】
(実施例5)
電荷輸送層用塗布液の調製において、フッ素系樹脂微粒子として、4フッ化ポリエチレン樹脂微粒子(平均一次粒子径:約0.2μm、ダイキン工業株式会社製、製品名:ルブロンL-2)の代わりに、4フッ化ポリエチレン樹脂微粒子(平均一次粒子径:約2.5μm、株式会社喜多村製、製品名:KTL-2F)4.8gを用いること以外は、実施例1と同様にして感光体1を得た。
【0087】
(実施例6)
電荷輸送層用塗布液の調製において、フッ素系樹脂微粒子4.8gを2.9gに、フッ素系分散剤0.34gを0.20gに、フッ素系樹脂微粒子分散液の溶剤としてのテトロヒドロフラン25.5gを17.3gに変更し、電荷輸送物質27.6gを16.0gに、バインダ樹脂のポリカーボネート樹脂27.6gを28.9gに、電荷輸送物質とバインダ樹脂と共に加える電荷輸送層用塗布液の溶剤としてのテトロヒドロフラン126.5gを134.7gに変更すること以外は、実施例1と同様にして感光体1を得た。
【0088】
(実施例7)
電荷輸送層用塗布液の調製において、フッ素系樹脂微粒子4.8gを8.6gに、フッ素系分散剤0.34gを0.61gに、フッ素系樹脂微粒子分散液の溶剤としてのテトロヒドロフラン25.5gを42.0gに変更し、電荷輸送物質27.6gを13.8gに、バインダ樹脂のポリカーボネート樹脂27.6gを24.9gに、電荷輸送物質とバインダ樹脂と共に加える電荷輸送層用塗布液の溶剤としてのテトロヒドロフラン126.5gを110.0gに変更すること以外は、実施例1と同様にして感光体1を得た。
【0089】
(実施例8)
電荷輸送層用塗布液の調製において、フッ素系分散剤0.34gを0.14gに、フッ素系樹脂微粒子分散液の溶剤としてのテトロヒドロフラン25.5gを24.8gに変更し、電荷輸送物質27.6gを15.4gに、バインダ樹脂のポリカーボネート樹脂27.6gを27.7gに、電荷輸送物質とバインダ樹脂と共に加える電荷輸送層用塗布液の溶剤としてのテトロヒドロフラン126.5gを127.2gに変更すること以外は、実施例1と同様にして感光体1を得た。
【0090】
(実施例9)
電荷輸送層用塗布液の調製において、バインダ樹脂として、ポリカーボネート樹脂(帝人化成社株式会社製、製品名:TS2050)27.6gを24.8gに変更し、ポリエチレン系樹脂(東洋紡株式会社製、製品名:バイロン(登録商標)GK-360)2.8gを加えること以外は、実施例1と同様にして感光体1を得た。
【0091】
(実施例10)
電荷輸送層用塗布液の調製において、バインダ樹脂として、ポリカーボネート樹脂(帝人化成社株式会社製、製品名:TS2050)27.6gを24.8gに変更し、ポリエチレン系樹脂(三菱瓦斯化学株式会社製、製品名:FPC-0820)2.8gを加えること以外は、実施例1と同様にして感光体1を得た。
【0092】
(実施例11)
電荷輸送層用塗布液の調製において、分散装置を通過させる回数5回を8回に変更すること以外は、実施例8と同様にして感光体1を得た。
【0093】
(実施例12)
電荷輸送層用塗布液の調製において、フッ素系分散剤0.34gを0.48gに、フッ素系樹脂微粒子分散液の溶剤としてのテトロヒドロフラン25.5gを26.1gに変更し、電荷輸送物質27.6gを15.3gに、バインダ樹脂のポリカーボネート樹脂27.6gを27.5gに、電荷輸送物質とバインダ樹脂と共に加える電荷輸送層用塗布液の溶剤としてのテトロヒドロフラン126.5gを125.9gに変更し、分散装置を通過させる回数5回を3回に変更すること以外は、実施例1と同様にして感光体1を得た。
【0094】
(実施例13)
電荷輸送層用塗布液の調製において、バインダ樹脂として、ポリカーボネート樹脂(帝人化成社株式会社製、製品名:TS2050)27.6gを13.8gに変更し、ポリエチレン系樹脂(東洋紡株式会社製、製品名:バイロン(登録商標)GK-360)13.8gを加えること以外は、実施例1と同様にして感光体1を得た。
【0095】
(実施例14)
電荷輸送層用塗布液の調製において、バインダ樹脂として、ポリカーボネート樹脂(帝人化成社株式会社製、製品名:TS2050)27.6gを13.8gに変更し、ポリエチレン系樹脂(三菱瓦斯化学株式会社製、製品名:FPC-0820)13.8gを加えること以外は、実施例1と同様にして感光体1を得た。
【0096】
(実施例15)
電荷輸送層用塗布液の調製において、フッ素系樹脂微粒子分散液を混合するポリプロピレン容器をソーダ石灰ガラス容器に変更すること以外は、実施例8と同様にして感光体1を得た。
【0097】
(実施例16)
電荷輸送層用塗布液の調製において、フッ素系樹脂微粒子分散液の撹拌羽根による撹拌時間30時間を72時間にすること以外は、実施例15と同様にして感光体1を得た。
【0098】
(実施例17)
電荷輸送層用塗布液の調製において、電荷輸送物質およびバインダ樹脂を加えるときにガラスの摩耗粉(ソーダ石灰ガラス、平均一次粒子径:約0.10μm)0.024gを加えること以外は、実施例15と同様にして感光体1を得た。
【0099】
(比較例1)
電荷輸送層用塗布液の調製において、フッ素系樹脂微粒子として、4フッ化ポリエチレン樹脂微粒子(平均一次粒子径:約0.2μm、ダイキン工業株式会社製、製品名:ルブロンL-2)4.8gの代わりに、4フッ化ポリエチレン樹脂微粒子(平均一次粒子径:約0.12μm、スリーエムジャパン株式会社製、製品名:TF9207Z)4.8gを用いること以外は、実施例1と同様にして感光体1を得た。
【0100】
(比較例2)
電荷輸送層用塗布液の調製において、フッ素系樹脂微粒子として、4フッ化ポリエチレン樹脂微粒子(平均一次粒子径:約0.2μm、ダイキン工業株式会社製、製品名:ルブロンL-2)4.8gの代わりに、4フッ化ポリエチレン樹脂微粒子(平均一次粒子径:約3.1μm、ダイキン工業株式会社製、製品名:ルブロンL-5F)4.8gを用いること以外は、実施例1と同様にして感光体1を得た。
【0101】
(比較例3)
電荷輸送層用塗布液の調製において、フッ素系樹脂微粒子として、4フッ化ポリエチレン樹脂微粒子(平均一次粒子径:約0.2μm、ダイキン工業株式会社製、製品名:ルブロンL-2)4.8gを1.9gに、フッ素系分散剤0.34gを0.13gに、フッ素系樹脂微粒子分散液の溶剤としてのテトロヒドロフラン25.5gを13.2gに変更し、電荷輸送物質27.6gを16.4gに、バインダ樹脂のポリカーボネート樹脂27.6gを29.5gに、電荷輸送物質とバインダ樹脂と共に加える電荷輸送層用塗布液の溶剤としてのテトロヒドロフラン126.5gを138.8gに変更すること以外は、実施例1と同様にして感光体1を得た。
【0102】
(比較例4)
電荷輸送層用塗布液の調製において、フッ素系樹脂微粒子として、4フッ化ポリエチレン樹脂微粒子(平均一次粒子径:約0.2μm、ダイキン工業株式会社製、製品名:ルブロンL-2)4.8gを10.1gに、フッ素系分散剤0.34gを0.71gに、フッ素系樹脂微粒子分散液の溶剤としてのテトロヒドロフラン25.5gを48.1gに変更し、電荷輸送物質27.6gを13.3gに、バインダ樹脂のポリカーボネート樹脂27.6gを23.9gに、電荷輸送物質とバインダ樹脂と共に加える電荷輸送層用塗布液の溶剤としてのテトロヒドロフラン126.5gを103.9gに変更すること以外は、実施例1と同様にして感光体1を得た。
【0103】
(比較例5)
電荷輸送層用塗布液の調製において、分散装置を通過させる回数5回を8回に変更すること以外は、実施例12と同様にして感光体1を得た。
【0104】
(比較例6)
電荷輸送層用塗布液の調製において、分散装置を通過させる回数5回を3回に変更すること以外は、実施例8と同様にして感光体1を得た。
【0105】
(比較例7)
電荷輸送層用塗布液の調製において、シリコーンオイルを添加しないこと以外は、実施例1と同様にして感光体1を得た。
【0106】
(比較例8)
電荷輸送層用塗布液の調製において、フッ素系樹脂微粒子分散液の撹拌羽根による撹拌時間30時間を50時間にすること以外は、実施例15と同様にして感光体1を得た。
【0107】
(比較例9)
電荷輸送層用塗布液の調製において、フッ素系樹脂微粒子分散液の撹拌羽根による撹拌時間30時間を48時間にすること以外は、実施例17と同様にして感光体1を得た。
【0108】
[評価]
作製した実施例1~17および比較例1~9の感光体について、以下のように(1)感度(感度安定性)、(2)耐刷性、(3)耐クリーニング性および(4)ブレード反転を
(1)感度(感度安定性)を評価した。
【0109】
(1)感度(感度安定性)
評価対象の感光体を、試験用に改造したデジタル複写機(シャープ株式会社製、型式:MX-B455W)のユニットに装着し、デジタル複写機から現像器を取り外し、代わりに現像部位に表面電位計(トレック・ジャパン社製、型式:MODEL 344)を取り付けた。温度25℃、相対湿度50%の常温常湿(N/N)の環境下において、レーザ光による露光を施さなかった場合の感光体の表面電位を-600Vに調整し、その状態で黒地部分の表面電位VL(-V)を測定した。
得られたVLから下記の基準で感度を評価した。表面電位VLの絶対値が小さい程、高感度であると評価した。
【0110】
<評価基準>
VG:|VL|<100
高感度を要求される高速の複合機もしくはプリンタにおいても問題なく使用可
G :100≦|VL|<120
中低速の複合機もしくはプリンタにおいては問題なく使用可
NG:120≦|VL|<140
低速で安価な複合機もしくはプリンタの場合であれば、やや濃度は薄いものの問題なく使用可
B:140≦|VL|
感度が悪いため、濃度が薄く、実使用上問題あり
【0111】
(2)耐刷性
評価対象の感光体を、試験用に改造したデジタル複写機(シャープ株式会社製、型式:MX-B455W)のユニットに装着し、現像器を取り付け、クリーニング器のクリーニングブレードが、感光体に接する圧力、いわゆるクリーニングブレード圧を21gf/cm(2.05×10-1N/cm:初期線圧)に調整し、温度25℃/湿度8%環境下で、文字テストチャート(ISO19752)を記録紙35万枚に印刷することで、耐刷試験を行なった。
耐刷試験開始時と35万枚画像形成後の感光層の厚みを、膜厚測定装置(フィルメトリックス社製、型式:F-20-EXR)を用いて測定した。
耐刷試験開始時の膜厚と35万枚画像形成後の膜厚との差から、感光体ドラム10万回転あたりの削れ量(膜減り量)を求め、得られた削れ量から下記の基準で耐刷性を評価した。
なお、削れ量が多い程、耐刷性が悪いと評価した。
【0112】
<評価基準>
VG:削れ量<1.00μm/10万回転
ロングライフを要求される複合機もしくはプリンタにおいても問題なく使用可
G :1.00μm/10万回転≦削れ量<1.10μm/10万回転
削れ量がやや多いもののロングライフを要求される複合機もしくはプリンタの場合以外であれば問題なく使用可
NB:1.10μm/10万回転≦削れ量<1.20μm/10万回転
削れ量が多いものの安価な複合機もしくはプリンタの場合であれば問題なく使用可
B :1.20μm/10万回転≦削れ量
削れ量が多く実使用上問題あり
【0113】
(3)耐クリーニング性
耐刷試験後の感光体のクリーニング不良発生レベルを確認するために、35万枚画像形成後の感光体を、試験用デジタル複写機(シャープ株式会社製、型式:MX-B455W)のユニットに装着し、A4用紙に100%濃度未転写画像を1枚出力し、その直後に複写機を強制的に停止させ、感光体の表面を目視観察し、下記の基準でクリーニング性(クリーニング不良の度合い)を評価した。
【0114】
<評価基準>
VG:発生なし
G :1、2本のクリーニング不良あり
高画質を要求される複合機もしくはプリンタ以外の場合であれば問題なく使用可
NB:3~5本のクリーニング不良あり
安価な複合機もしくはプリンタの場合であれば問題なく使用可
B :多数(6本以上)のクリーニング不良あり
実使用上問題あり
【0115】
(4)ブレード反転
35万枚の印刷が完了するまでにおけるブレード反転の発生の有無を確認した。
【0116】
(5)画質
温度25℃、相対湿度50%の常温常湿(N/N)の環境下において、書込み1dotパターン、1dot抜けパターン、1ラインの周期パターン(主走査および副走査方向)の計4つのパターンで画像を形成し、初期の画質を下記基準で評価した。
【0117】
<評価基準>
VG:いずれの再現性も良く高画質画像が得られる
G :2~3つのパターンが明瞭に判別でき、実使用上問題ないレベル
高画質を要求される複合機もしくはプリンタ以外の場合であれば問題なく使用可
NB:いずれか1つのパターンが判別できるだけであり、実使用上画質悪化と判定
安価な複合機もしくはプリンタの場合であれば問題なく使用可
B :いずれのパターンも判別できず、実使用不可能なレベル
実使用上問題あり
【0118】
(6)総合判定
上記の評価結果に基づいて、下記の基準で総合評価した。
VG:全ての項目でVG判定、非常に良好
G :いずれかの項目でG判定を含むものの、全ての項目でG判定以上
ロングライフ、高画質な複合機もしくはプリンタ以外の場合であれば問題なく使用可
NB:いずれかの項目でG判定を含むものの、全ての項目でNB判定以上
安価な複合機もしくはプリンタの場合であれば問題なく使用可
B :いずれかの項目にB判定があり、実使用不可
感光体の構成材料および物性を表1に、得られた評価結果を表2~3に示す。
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
表1および表2~3の結果から、次のことがわかる。
(1)導電性基体上に感光層を少なくとも備えた電子写真感光体であり、感光層の最表面層が、0.1~3.0μmの平均一次粒子径を有するフッ素系樹脂微粒子を、最表面層中に5~20質量%の割合で含有し、最表面層の表面における感光体の軸方向の帯電領域の中央部の幅4mm領域が、JIS-B-0601(1994)に定義される0.05~0.25μmの十点表面粗さRzおよび50~150μmの凹凸の平均間隔Smを有し、最表面層の表面が、100°以上の純水に対する接触角を有する感光体(実施例1~17)は、耐刷性・クリーニング性に優れ、ブレード反転も発生せず、画像不良や感度の悪化を起こさないこと
【0123】
(2)フッ素系樹脂微粒子の平均一次粒子径が小さ過ぎる場合(比較例1)、分散性が悪化し、画像不良につながる欠陥を有すること、一方、平均一次粒子径が大きすぎる場合(比較例2)、平均一次粒子径の大きい粒子が存在することで画像不良につながること、一方、実施例3では目立った画像不良にはならないが粒子の凝集が観察され、実施例4では平均一次粒子径の大きい粒子由来の、実使用上問題ない程度の画像不良が観察されたことから、平均一次粒子径の好ましい範囲が0.25~2.0μmであること
【0124】
(3)フッ素系樹脂微粒子の含有量が少な過ぎる場合(比較例3)、耐刷性が大幅に悪化し、フッ素系樹脂微粒子の含有量が多すぎる場合(比較例4)、感度が大幅に悪化し、また画質不良が観察され。実施例6は実施例1と比較すると耐刷性がやや劣る結果であり、実施例7は実施例1と比較すると実使用上問題ない範囲内ではあるものの感度と画質の悪化が観察されたことから、フッ素系樹脂微粒子の含有量の好ましい範囲が8~15質量%であること
【0125】
(4)十点平均粗さRzと凹凸の平均間隔Smとには、概ね相関がみられ、Rzが小さくなるとSmが大きくなり、Rzが大きくなるとSmが小さくなる傾向にあり、Rzが小さ過ぎ、Smが大き過ぎる場合(比較例5)、ブレードとの摩擦がとても大きくなり、ブレード反転が発生し、Rzが大き過ぎ、Smが小さ過ぎる場合(比較例6)、クリーニング不良が発生し、実施例11は実施例1と比較すると、実使用上問題ない程度ではあるがクリーニング不良が見られた。実施例12は実施例1と比較すると耐刷性が劣る結果であり、これは感光体とブレードとの摩擦が大きくなったことによるものと考えられ、Rzのより好ましい範囲が0.12~0.22μm、Smのより好ましい範囲が90~120μmであること
【0126】
(5)感光体の最表面層の純水に対する接触角が小さすぎる場合(比較例7)、クリーニング性が悪化すること
【0127】
(6)実施例15と比較例8は
感光体の最表面層の電荷輸送層の塗布液の調製時に、金属酸化物としてのソーダ石灰ガラスと接触させた場合でも、金属酸化物の含有量(濃度)が規定範囲内であれば(実施例15)、耐刷性・クリーニング性・画質・感度は良好でブレード反転も起こらず、一方、金属酸化物の含有量(濃度)が規定よりも高いと(比較例8)、感度が大幅に悪化すること