(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179253
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】レーダ装置
(51)【国際特許分類】
G01S 13/34 20060101AFI20231212BHJP
G01S 7/02 20060101ALI20231212BHJP
H01Q 3/22 20060101ALI20231212BHJP
H01Q 21/06 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
G01S13/34
G01S7/02 216
H01Q3/22
H01Q21/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092463
(22)【出願日】2022-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 俊明
(72)【発明者】
【氏名】小川 勝
【テーマコード(参考)】
5J021
5J070
【Fターム(参考)】
5J021AA05
5J021AA07
5J021AA09
5J021AA11
5J021AB06
5J021CA03
5J021DB07
5J021EA02
5J021FA13
5J021FA17
5J021FA29
5J021FA31
5J021FA33
5J021GA02
5J021HA01
5J021HA04
5J070AB17
5J070AB18
5J070AC02
5J070AC06
5J070AC12
5J070AC13
5J070AD08
5J070AD13
5J070AG01
5J070AH31
5J070AK40
(57)【要約】
【課題】開示の技術は、上記の点に鑑みてなされたものであり、制御ユニットによる切替制御ではなく、周波数の調整により指向性のビーム方向を変化できるレーダ装置を提供することを目的とする。
【解決手段】レーダ装置1は、時間の経過に応じて周波数が直線的に上昇又は下降するように、高周波信号に第1の変調及び第2の変調を行った高周波変調信号を生成する変調部と、前記高周波変調信号を放射する送信アンテナ16と、前記送信アンテナ16の指向性のビーム幅が広い方向である第1の方向に配列され、かつ、物標に反射された前記高周波変調信号である反射信号を受信する複数の受信アンテナ17と、前記反射信号に、前記第1の変調及び前記第2の変調に対応する復調を行う復調部と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時間の経過に応じて周波数が直線的に上昇又は下降するように、高周波信号に第1の変調及び第2の変調を行った高周波変調信号を生成する変調部と、
前記高周波変調信号を放射する送信アンテナと、
前記送信アンテナの指向性のビーム幅が広い方向である第1の方向に配列され、かつ、物標に反射された前記高周波変調信号である反射信号を受信する複数の受信アンテナと、
前記反射信号に、前記第1の変調及び前記第2の変調に対応する復調を行う復調部と、
を含むレーダ装置。
【請求項2】
前記第1の変調は、時間の経過に応じて周波数が直線的に上昇又は下降することを一定の間隔で繰り返す変調であって、
前記第2の変調は、周波数が一定であって、前記間隔ごとに周波数に前記上昇した幅を加算又は前記下降した幅を減算する変調である
請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項3】
前記第1の変調及び前記第2の変調は、シングルサイドバンド変調である
請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項4】
前記送信アンテナ及び前記受信アンテナは、前記高周波変調信号の周波数の変化に応じて、前記指向性のビーム幅が狭い方向である第2の方向に対してビーム方向が変化する
請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項5】
前記第1の変調及び前記第2の変調は、周期長が可変であり、かつ、互いに同期している
請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項6】
前記送信アンテナ及び前記受信アンテナは、給電線路で直列に接続される複数の放射素子を含む
請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項7】
前記給電線路は、給電の有無を切り替えるスイッチ回路を前記放射素子の間に含む
請求項6に記載のレーダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の技術は、レーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、仮想アンテナを作り出す技術がある(例えば、特許文献1)。特許文献1では、第1の方向に沿って配置される複数の送信アンテナを含み、送信波を送信する送信用リニアアレイアンテナと、前記第1の方向と直交する第2の方向に沿って配置される複数の受信アンテナを含み、前記送信波の反射波を受信する受信用リニアアレイアンテナと、前記送信用リニアアレイアンテナと前記受信用リニアアレイアンテナとを制御する制御回路と、を有する電子装置、が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1は、複数の送信及び受信アンテナ素子の切替制御によって、指向性のビーム方向を変化させる。そのため、特許文献1は、受信アンテナ又は送信アンテナの放射素子数を乗算した分の制御ユニットが必要であり、これらの制御が煩雑になる虞がある。
【0005】
開示の技術は、上記の点に鑑みてなされたものであり、制御ユニットによる切替制御ではなく、周波数の調整により指向性のビーム方向を変化できるレーダ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様に係るレーダ装置は、時間の経過に応じて周波数が直線的に上昇又は下降するように、高周波信号に第1の変調及び第2の変調を行った高周波変調信号を生成する変調部と、前記高周波変調信号を放射する送信アンテナと、前記送信アンテナの指向性のビーム幅が広い方向である第1の方向に配列され、かつ、物標に反射された前記高周波変調信号である反射信号を受信する複数の受信アンテナと、前記反射信号に、前記第1の変調及び前記第2の変調に対応する復調を行う復調部と、を含む。
【0007】
第2態様に係るレーダ装置は、第1態様に係るレーダ装置において、前記第1の変調は、時間の経過に応じて周波数が直線的に上昇又は下降することを一定の間隔で繰り返す変調であって、前記第2の変調は、周波数が一定であって、前記間隔ごとに周波数に前記上昇した幅を加算又は前記下降した幅を減算する変調である。
【0008】
第3態様に係るレーダ装置は、第1態様又は第2態様に係るレーダ装置において、前記第1の変調部及び前記第2の変調部は、シングルサイドバンド変調器である。
【0009】
第4態様に係るレーダ装置は、第1態様から第3態様の何れかの態様に係るレーダ装置において、前記送信アンテナ及び前記受信アンテナは、前記高周波変調信号の周波数の変化に応じて、前記指向性のビーム幅が狭い方向である第2の方向に対してビーム方向が変化する。
【0010】
第5態様に係るレーダ装置は、第1態様から第4態様の何れかの態様に係るレーダ装置において、前記第1の変調及び前記第2の変調は、周期長が可変であり、かつ、互いに同期している。
【0011】
第6態様に係るレーダ装置は、第1態様から第5態様の何れかの態様に係るレーダ装置において、前記送信アンテナ及び前記受信アンテナは、給電線路で直列に接続される複数の放射素子を含む。
【0012】
第7態様に係るレーダ装置は、第6態様に係るレーダ装置において、前記給電線路は、給電の有無を切り替えるスイッチ回路を前記放射素子の間に含む。
【発明の効果】
【0013】
開示の技術によれば、制御ユニットによる切替制御ではなく、周波数の調整により指向性のビーム方向を変化できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態に係るレーダ装置の概略構成を示す図である。
【
図2】第1実施形態に係るレーダ装置の指向性パターンの模式図である。
【
図3】第1実施形態に係るレーダ装置のFMCW方式の送信信号の模式図である。
【
図4】第1実施形態に係るレーダ装置の送信アンテナ及び受信アンテナの構成図である。
【
図5】第1実施形態に係るレーダ装置の周波数に対するビーム方向の特性図である。
【
図6】第1実施形態に係るレーダ装置の変調信号とメインビームとの関係図である。
【
図7】第1実施形態に係るレーダ装置の分解能のイメージ図である。
【
図8】第2実施形態に係るレーダ装置の変調信号とメインビームとの関係図である。
【
図9】第2実施形態に係るレーダ装置の変調信号とメインビームとの関係図である。
【
図10】第2実施形態に係るレーダ装置の分解能のイメージ図である。
【
図11】第2実施形態に係るレーダ装置の分解能のイメージ図である。
【
図12】第3実施形態に係るレーダ装置のスイッチ回路の模式図である。
【
図13】第3実施形態に係るレーダ装置のスイッチ回路の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、開示の技術の実施形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において同一又は等価な構成要素及び部分には同一の参照符号を付与している。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0016】
[第1実施形態]
第1実施形態に係るレーダ装置1の構成について説明する。
図1は、レーダ装置1の概略構成図である。レーダ装置1は、局部発振器(Local Oscillator、LO)11、第1の信号発生器12、第2の信号発生器13、第1の混合器14、第2の混合器15、送信アンテナ16、受信アンテナ17、第3の混合器18、第4の混合器19、第5の混合器20、A/D(Analog/Digital)変換器21、信号処理部22、及び方向性結合器23を含む。本開示において、局部発振器11、第1の信号発生器12、第2の信号発生器13、第1の混合器14及び第2の混合器15をまとめて変調部と記載する。また、本開示において、局部発振器11、第1の信号発生器12、第2の信号発生器13、第3の混合器18、第4の混合器19及び第5の混合器20をまとめて復調部と記載する。
【0017】
ここで、任意の受信アンテナ、第3の混合器、第4の混合器、第5の混合器、A/D変換器を表す場合は、それぞれ参照番号17、18、19、20、21を用い、これらを区別して表す場合は、参照番号の末尾にアルファベットA~Hを用いる場合がある。また、
図1において、アルファベットD~Gに対応する受信アンテナ、第3の混合器、第4の混合器、第5の混合器、A/D変換器について、図示を省略している。また、第1実施形態では、受信アンテナ17、第3の混合器18、第4の混合器19、第5の混合器20及びA/D変換器21を8個ずつ記載しているが、これに限定しない。
【0018】
局部発振器11は、高周波信号を発生する。
【0019】
第1の信号発生器12は、第1の変調信号を生成する。第1の信号発生器12は、時間の経過に応じて周波数が直線的に上昇又は下降することを一定の間隔で繰り返す信号を生成する。第1の信号発生器12は、例えば、FMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)信号又は三角波信号である第1の変調信号を生成する。なお、本開示において、第1の変調信号を生成する変調を、第1の変調と記載する。
【0020】
第2の信号発生器13は、第2の変調信号を生成する。第2の信号発生器13は、周波数が一定であって、当該周波数に、第1の変調信号の間隔ごとに、第1の変調信号の上昇した幅を加算又は下降した幅を減算する信号を生成する。第2の信号発生器13は、例えば、ステップ周波数信号である第2の変調信号を生成する。なお、本開示において、第2の変調信号を生成する変調を、第2の変調と記載する。
【0021】
第1の混合器14は、第1の信号発生器12から第1の変調信号及び第2の信号発生器13から第2の変調信号を受け付け、第3の変調信号を生成する。すなわち、第1の混合器14は、高周波信号に第1の変調及び第2の変調を行った高周波変調信号を生成する。
【0022】
第2の混合器15は、第1の混合器14から第3の変調信号及び局部発振器11から発生する高周波信号を受け付け、高周波変調信号を生成する。詳しくは、第2の混合器15は、時間の経過に応じて周波数が直線的に上昇又は下降する高周波変調信号を生成する。
【0023】
送信アンテナ16は、第2の混合器15から高周波変調信号を受け付け、高周波変調信号を空中に放射する。
【0024】
受信アンテナ17は、送信アンテナ16の指向性のビーム幅が広い方向である第1の方向に配列され、かつ、物標に反射された高周波変調信号である反射信号を受信する。なお、受信アンテナ17A~17Hをまとめて配列受信アンテナと記載する。ここで、指向性とは、電波等の強さが方向によって異なる性質である。また、ビーム幅とは、メインビームの最大利得から-3dB(デシベル)になる範囲である。ビーム幅が広い方向とは、水平ビーム幅及び垂直ビーム幅のうち、広い幅をもつビーム幅の方向である。
【0025】
ここで、送信アンテナ16及び受信アンテナ17は、高周波変調信号の周波数の変化に応じて、指向性のビーム幅が狭い方向である第2の方向に対してビーム方向が変化する。送信アンテナ16及び受信アンテナ17は、給電線路で直列に接続される複数の放射素子を含む。ここで、ビーム方向とは、メインビームの方向である。
【0026】
第3の混合器18は、受信アンテナ17から反射信号及び局部発振器11から高周波信号を受け付け、第1の中間周波数信号を生成する。
【0027】
第4の混合器19は、第3の混合器18から第1の中間周波数信号及び第2の信号発生器13から分配された第2の変調信号を受け付け、第2の中間周波数信号を生成する。
【0028】
第5の混合器20は、第4の混合器19から第2の中間周波数信号及び第1の信号発生器12から分配された第1の変調信号を受け付け、ビート信号であるベースバンド信号を生成する。
【0029】
A/D変換器21は、第5の混合器20からベースバンド信号を受け付け、時間離散化(サンプリング)及びレベルを離散化してディジタル信号に変換する。
【0030】
信号処理部22は、A/D変換器21でサンプリングされたディジタル受信信号を受け付け、観測された物標との相対速度及び距離等を算出する。
【0031】
方向性結合器23は、局部発振器11の高周波信号のエネルギーを分配する。
【0032】
ここで、受信アンテナ、第3の混合器、第4の混合器、第5の混合器及びA/D変換器は、同じアルファベットが付番された同士で処理を行う。例えば、第3の混合器18Aは、受信アンテナ17Aから高周波信号を受け付ける。また、第4の混合器19Aは、第3の混合器18Aから第1の中間周波数信号を受け付ける。また、第5の混合器20Aは、第4の混合器19Aから第2の中間周波数信号を受け付ける。また、A/D変換器21Aは、第5の混合器20Aからベースバンド信号を受け付ける。
【0033】
以上より、変調部は、時間の経過に応じて周波数が直線的に上昇又は下降するように、高周波信号に第1の変調及び第2の変調を行った高周波変調信号を生成する。また、復調部は、反射信号に、第1の変調及び第2の変調に対応する復調を行う。
【0034】
次に、第1実施形態に係るレーダ装置1の指向性について
図2を用いて説明する。
図2は、第1実施形態に係るレーダ装置1の指向性パターンの模式図である。
送信アンテナ16の指向性は、第1の方向に対しては広角で、第2の方向に対して狭角である。すなわち、送信アンテナ16の指向性パターンは、ファンビーム形状である。ここで、本開示において、第1の方向を水平方向、第2の方向を垂直方向としているが、これに限定しない。
【0035】
送信アンテナ16は、高周波変調信号を空中に放射する。高周波変調信号は、物標に照射され、一定の割合で物標から反射される。受信アンテナ17は、物標から反射された高周波変調信号を反射信号として受信する。
【0036】
受信アンテナ17の指向性は、送信アンテナ16と同様に、第1の方向に対して広角であり、第2の方向に対して狭角である。すなわち、受信アンテナ17の指向性パターンは、ファンビーム形状である。
【0037】
次に、第1実施形態に係るレーダ装置1の変調信号の波形について
図3を用いて説明する。本開示において、送信信号として、振幅が一定で周波数が周期的かつ時間的かつ連続的に変化する波(FMCW)を用いる場合について説明する。
図3は、第1実施形態に係るレーダ装置1のFMCW方式の送信信号の模式図である。
図3は、3つのグラフである、
図3(a)、
図3(b)及び
図3(c)が記載されている。
図3(a)、
図3(b)及び
図3(c)の横軸は、時間の流れであり、縦軸は、周波数の高さである。
【0038】
図3(a)は、第1の変調信号の時間に対する周波数変化を示す。第1の変調信号は、一連のチャープ、すなわち、増加する周波数を有する正弦波となる(アップチャープ)。第1の変調信号の周波数は、所定の期間T
c内で、スタート周波数f
startからストップ周波数f
stopに線形に増加するアップチャープである。
【0039】
図3(b)は、第2の変調信号の時間に対する周波数変化を示す。第2の変調信号は、所定の期間T
s内で、一定の周波数を保ち、その後周波数が増加する。第2の変調信号の周波数の増加幅は、f
start及びf
stopの差分と同一である。本開示において、第2の変調信号の周波数を、昇順にf
1~f
5と記載する。また、所定の期間T
sは、T
cと同一の期間である。第1実施形態において、T
sはT
p内において5サイクルであるが、これに限定しない。
【0040】
図3(c)は、第3の変調信号の時間に対する周波数変化を示す。第3の変調信号は、第1の変調信号と同様に増加する周波数を有する正弦波となる。第3の変調信号の波形は、所定の期間T
c内で、スタート周波数(f
start+f
1)からストップ周波数(f
stop+f
5)に線形に増加するアップチャープとなり、波形の周期はT
pとなる。
図3(c)には、T
pを1サイクルとする2サイクルのチャープが示されている。
【0041】
次に、第1実施形態に係るレーダ装置1の周波数スキャンによるビームスキャンの原理について
図4及び
図5を用いて説明する。
【0042】
図4は、第1実施形態に係るレーダ装置1の送信アンテナ16及び受信アンテナ17の構成図である。
図4では、送信アンテナ16と配列受信アンテナである受信アンテナ17A~17Hが示されている。
【0043】
送信アンテナ16及び受信アンテナ17A~17Hのアンテナの各々は、放射素子31が複数配列される。放射素子31は、1本の給電線路32で直列に接続される。各放射素子31は、送信周波数又は受信周波数がf0において、z軸方向に放射又は到来する電波に対し同位相で合成されるように接続する。すなわち、送信アンテナ16又は受信アンテナ17A~17Hの指向性のメインビームは、f0においてz軸方向に形成する。θは、メインビームの方向を示す角度である。
【0044】
指向性のメインビームは、放射素子31の配列及び給電線路32の接続方法が同じ状態において、送信周波数又は受信周波数をf
0よりも小さな値とした場合、zx面内においてθが正となる方向にスキャンする。逆に、指向性のメインビームは、送信周波数又は受信周波数をf
0よりも大きな値とした場合、zx面内においてθが負となる方向にスキャンする。θ
0、θ
H、及びθ
Lは、
図5で後述するメインビームの方向を示す。なお、zx面は、第2の方向に相当する。
【0045】
図5は、第1実施形態に係るレーダ装置1の周波数に対するビーム方向の特性図である。メインビームの方向は、周波数f
0におけるメインビームの方向がθ
0とすると、f
0よりも低い周波数f
Lにおいてθ
Lとなる。メインビームの方向は、f
0よりも高い周波数f
Hにおいてθ
Hとなる。ここで、送信アンテナ16及び受信アンテナ17は、直列で給電されるアンテナであれば、形式を問わず用いることができる。また、送信アンテナ16及び受信アンテナ17は、誘電体基板等に形成される平面アンテナや導波管で給電される導波管スロットアンテナ等であってもよい。なお、
図5において、θ
0=0degである。また、メインビームの方向がθ
Lとは、
図4のzx面における上方向(+x方向)に相当し、メインビームの方向がθ
Hとは、
図4のzx面における下方向(-x方向)に相当する。
【0046】
次に、第1実施形態に係るレーダ装置1の第1の変調信号、第2の変調信号及び第3の変調信号とそれぞれのサイクルにおける指向性のメインビームとの関係について
図6を用いて説明する。
【0047】
図6は、第1実施形態に係るレーダ装置1の変調信号とメインビームとの関係図である。期間C1からC5までの合計である期間T
pにおける指向性のメインビームは、送信アンテナ16に最終的入力される信号は第3の変調波であることから、時間の経過に伴い、矢印Aで示す方向にスキャンする。C1~C5は、上述した
図3のT
c及びT
sに相当する。また、それぞれの期間C1~C5の各期間における指向性のメインビームは、順に矢印A1~A5で示す角度範囲にスキャンする。例えば、期間C1の時間の指向性のメインビームは、矢印A1の角度範囲をスキャンする。スキャンの角度範囲は、例えば、メインビームのビーム幅の範囲内である。
【0048】
すなわち、レーダ装置1は、第3の変調信号が周期的にスキャンされる期間Tpにおいて、第2の方向にスキャンする。そして、レーダ装置1は、第1の変調が周期的にスキャンされる期間Tsにおいて、メインビームが指向する方向にFMCWレーダセンサの原理に基づき物標の測距等を行う。
【0049】
すなわち、レーダ装置1は、メインビームがY1に指向しているサイクル内において、その指向方向に測距を行う。レーダ装置1は、メインビームがY2に指向しているサイクル内において、その指向方向に測距を行う。このように、レーダ装置1は、順次、期間C1~C5まで同様な動作をすることにより、第3の変調信号が周期的にスキャンされる期間Tpにおいて、第2の方向に対し指向性制御と等価の動作をする。
【0050】
次に、第1実施形態に係るレーダ装置1の分解能について、
図7を用いて説明する。
図7は、第1実施形態に係るレーダ装置1の分解能のイメージ図である。分解能は、第1の方向(yz面内)に対して、送信アンテナ16及び受信アンテナ17の配列数に依存し、一般的には配列数の増加に伴い高くなる。分解能は、第2の方向(zx面内)に対して、第2の変調信号の周波数変更のステップ数に依存し、ステップ数の増加に伴い高くなる。分解能は、レンジ方向(z軸方向)に対して、第1の変調信号のチャープの周波数帯域に依存し、周波数帯域の増加に伴い高くなる。
【0051】
以上より、レーダ装置1は、制御ユニットによる切替制御ではなく、周波数の調整により指向性のビーム方向を変化できる。
【0052】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態の手法は、第1実施形態の手法に加え、第1の変調信号又は第2の変調信号のサイクルを可変にする。なお、第1実施形態と同様の構成及び作用となる箇所については同一符号を付して説明を省略する。
【0053】
第2実施形態に係るレーダ装置1の変調信号とメインビームとの関係について
図8及び
図9を用いて説明する。
図8及び
図9は、第2実施形態に係るレーダ装置1の変調信号とメインビームとの関係図である。上述した
図4と同様に、それぞれの期間C1~C3の各期間における指向性のメインビームは、順に矢印A1~A3で示す角度範囲にスキャンする。
【0054】
レーダ装置1は、放射素子31の個数がそれぞれ異なる複数の送信アンテナ16又は受信アンテナ17を含む。レーダ装置1は、送信アンテナ16又は受信アンテナ17と第2の混合器15又は第3の混合器18の間に設置されたスイッチ回路33を切り替えることにより、送信アンテナ16又は受信アンテナ17の接続先を切り替える。スイッチ回路33は、一端が第2の混合器15又は第3の混合器18に接続され、他端が放射素子31の個数がそれぞれ異なる送信アンテナ16又は受信アンテナ17の何れかに接続される。
【0055】
レーダ装置1は、第1の変調信号の期間Tc及び第2の変調信号の期間Tsを可変とし、そのサイクルの時間である周期長に応じて送信アンテナ16又は受信アンテナ17の指向性を変更する。ここで、Tc=Tsとし、期間Tpを一定としている。
【0056】
図8では、スイッチ回路33は、放射素子が6個の送信アンテナ16又は受信アンテナ17に接続している。
図9では、スイッチ回路33は、放射素子が4個の送信アンテナ16又は受信アンテナ17に接続している。また、上述した
図6では、スイッチ回路33は、放射素子が8個の送信アンテナ16又は受信アンテナ17に接続している。また、期間T
p内におけるT
c及びT
sについて、
図3及び
図6では、5サイクルであるのに対し、
図8では3サイクル、
図9では2サイクルである。すなわち、第1の変調及び第2の変調は、周期長が可変であり、かつ、互いに同期している。
【0057】
レーダ装置1は、周期長が長くなるにつれて、第2の方向に対して広角になるよう、期間Tc及びTsの変更に伴う指向性を変更する。レーダ装置1は、例えば、それぞれの周期に対応する指向性を有するアンテナを複数設け、スイッチ回路33により接続先を切り替える。
【0058】
アンテナの指向性を変更することは、第1の変調信号のチャープの期間に、ビームの傾きにより物標に照射される領域が大きく変更されないためである。すなわち、周期長は、周期長によるビームの傾きを考慮した上で決定する。
【0059】
次に、第2実施形態に係るレーダ装置1の分解能について
図7、
図10及び
図11を用いて説明する。
図10及び
図11は、第2実施形態に係るレーダ装置1の分解能のイメージ図である。
【0060】
図7は、第1実施形態で上述した通り、
図6に示す変調信号及びアンテナを用いた際の分解能のイメージである。
図10は、
図8に示す変調信号及びアンテナを用いた際の分解能のイメージである、
図11は、
図9に示す変調信号及びアンテナを用いた際の分解能のイメージである。ここで、
図7、
図10、
図11のT
c及びT
sは、T
p内において順に5サイクル、3サイクル、2サイクルである。そして、
図7、
図10、
図11の第2の方向に対する分解能は、升の区切りが順に5つ、3つ、2つであり、レンジ方向に対する分解能は、順により細分化されている。
【0061】
すなわち、レーダ装置1は、期間Tc及びTsを長くする程、第2の方向に対する分解能が低下し、レンジ方向に対する分解能が向上する。換言すれば、レーダ装置1は、期間Tc及びTsを短くする程、第2の方向に対する分解能が向上し、レンジ方向に対する分解能が低下する。
【0062】
第2実施形態に係るレーダ装置1によれば、第2の方向及びレンジ方向に対する分解能を可変にできる。そのため、レーダ装置1の利用シーンに応じ、適した分解能に変更可能である。なお、第2実施形態に係るレーダ装置1は、期間Tpを一定の場合で説明したが、これに限定しない。
【0063】
[第3実施形態]
次に第3実施形態について説明する。第3実施形態に係るレーダ装置1は、第2実施形態に係るレーダ装置1のスイッチ回路と異なるスイッチ回路を含む。なお、第1実施形態又は第2実施形態と同様の構成及び作用となる箇所については同一符号を付して説明を省略する。
【0064】
第3実施形態に係るレーダ装置1のスイッチ回路33について、
図12及び
図13を用いて説明する。
【0065】
図12は、第3実施形態に係るレーダ装置1のスイッチ回路33の模式図である。レーダ装置1は、高周波の伝送を通過又は遮断するためのスイッチ回路33を給電線路32の途中に含む。換言すれば、給電線路32は、給電の有無を切り替えるスイッチ回路33を放射素子31の間に含む。レーダ装置1は、スイッチ回路33のON/OFFの切り替えにより、指向性の変更を行う。
【0066】
具体的には、スイッチ回路33AがONかつスイッチ回路33BがONの場合、給電される放射素子は8個であり、B1に示した指向性となる。同様に、スイッチ回路33AがOFFかつスイッチ回路33BがONの場合、給電される放射素子は6個であり、B2に示した指向性となる。スイッチ回路33AがOFFかつスイッチ回路33BがOFFの場合、給電される放射素子は4個であり、B3に示した指向性となる。
【0067】
図13は、第3実施形態に係るレーダ装置1のスイッチ回路33の模式図である。スイッチ回路33は、高周波電力の不要な反射を抑制するために、アンテナ素子の入力インピーダンスと等価な終端抵抗34を含む。スイッチ回路33は、スイッチがOFFの場合、終端抵抗34に接続する。
【0068】
[変形例]
以上、各実施形態のレーダ装置1について説明してきた。しかし、本開示は、上記各実施形態に限定されない。種々の改良又は改変が可能である。
【0069】
第1の混合器14、第4の混合器19及び第5の混合器20は、それぞれ抑圧片側(SSB、SINGLE SIDE BAND)波を生成する構成としてもよい。すなわち、第1の変調及び第2の変調は、シングルサイドバンド変調であってもよい。また、レーダ装置1は、増幅器、AGC(Automatic Gain Control)回路又はフィルタ回路等を用いてもよい。
【0070】
第1の変調信号は、減少する周波数を有するダウンチャープから構成されるようにしてもよい。この場合、第2の変調信号は、所定の期間Ts内で、第1の周波数f1において一定の周波数を保ち、その後周波数が減少する。また、第3の変調信号は、減少する周波数を有する正弦波となる。
【0071】
[付記1]
時間の経過に応じて周波数が直線的に上昇又は下降するように、高周波信号に第1の変調及び第2の変調を行った高周波変調信号を生成する変調部と、
前記高周波変調信号を放射する送信アンテナと、
前記送信アンテナの指向性のビーム幅が広い方向である第1の方向に配列され、かつ、物標に反射された前記高周波変調信号である反射信号を受信する複数の受信アンテナと、
前記反射信号に、前記第1の変調及び前記第2の変調に対応する復調を行う復調部と、
を含むレーダ装置。
【0072】
[付記2]
前記第1の変調は、時間の経過に応じて周波数が直線的に上昇又は下降することを一定の間隔で繰り返す変調であって、
前記第2の変調は、周波数が一定であって、前記間隔ごとに周波数に前記上昇した幅を加算又は前記下降した幅を減算する変調である
付記1に記載のレーダ装置。
【0073】
[付記3]
前記第1の変調及び前記第2の変調は、シングルサイドバンド変調である
付記1又は付記2に記載のレーダ装置。
【0074】
[付記4]
前記送信アンテナ及び前記受信アンテナは、前記高周波変調信号の周波数の変化に応じて、前記指向性のビーム幅が狭い方向である第2の方向に対してビーム方向が変化する
付記1から付記3の何れかに記載のレーダ装置。
【0075】
[付記5]
前記第1の変調及び前記第2の変調は、周期長が可変であり、かつ、互いに同期している
付記1から付記4の何れかに記載のレーダ装置。
【0076】
[付記6]
前記送信アンテナ及び前記受信アンテナは、給電線路で直列に接続される複数の放射素子を含む
付記1から付記5の何れかに記載のレーダ装置。
【0077】
[付記7]
前記給電線路は、給電の有無を切り替えるスイッチ回路を前記放射素子の間に含む
付記6に記載のレーダ装置。
【符号の説明】
【0078】
1 レーダ装置
11 局部発振器
12 第1の信号発生器
13 第2の信号発生器
14 第1の混合器
15 第2の混合器
16 送信アンテナ
17 受信アンテナ
18 第3の混合器
19 第4の混合器
20 第5の混合器
21 A/D変換器
22 信号処理部
23 方向性結合器
31 放射素子
32 給電線路
33、33A、33B スイッチ回路
34 終端抵抗