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特開2023-179256接合部品、接合部品の製造方法及び接合部品の製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179256
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】接合部品、接合部品の製造方法及び接合部品の製造装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/00 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
B23K20/00 340
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092467
(22)【出願日】2022-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000103976
【氏名又は名称】株式会社オリジン
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松原 宏次
(72)【発明者】
【氏名】押野 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】角谷 康雄
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 基文
【テーマコード(参考)】
4E167
【Fターム(参考)】
4E167AA02
4E167AA03
4E167AA04
4E167AA06
4E167BB04
4E167BB06
4E167DA10
(57)【要約】
【課題】接合時に生じる変形や部材間の平行度の悪化を抑制した接合部品、接合部品の製造方法及び接合部品の製造装置を提供すること。
【解決手段】本開示の接合装置は、回転中心を中心に回転する第1の板状部と、少なくとも一部が回転中心に沿った方向に延びる複数本の脚部と、を含む第1の部材と;第2の板状部と、複数本の脚部の脚部先端のそれぞれが挿入されて固相接合されている孔部と、を含むものであって、孔部は、その深さが、脚部先端が孔部に挿入される挿入深さ以下であり、且つ孔部の回転中心に交差する方向における回転中心に近い側の面から回転中心に遠い側の面までの長さは、脚部先端の回転中心に交差する方向における回転中心に近い側の面から回転中心に遠い側の面までの長さよりも小さい、第2の部材と;を含む。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転中心を中心に回転する第1の板状部と、前記回転中心から前記回転中心に交差する方向に所定距離だけ離間した位置に、その少なくとも一部が前記回転中心に沿った方向に延びる複数本の脚部と、を備える第1の部材と、
第2の板状部と、前記第2の板状部に設けられ前記複数本の脚部の脚部先端のそれぞれが挿入されて固相接合されている孔部と、を備える第2の部材であって、前記孔部は、その深さが、前記脚部先端が当該孔部に挿入される挿入深さ以下であり、且つ前記孔部の前記回転中心に交差する方向における前記回転中心に近い側の面から前記回転中心に遠い側の面までの長さは、前記脚部先端の前記回転中心に交差する方向における前記回転中心に近い側の面から前記回転中心に遠い側の面までの長さよりも小さい、前記第2の部材と、を備える、
接合部品。
【請求項2】
前記脚部先端はその先端面から前記回転中心に沿った方向に突出した突起を備え、前記孔部は底壁を備えた有底孔であり、前記突起と前記底壁とは固相接合されている、
請求項1に記載の接合部品。
【請求項3】
前記突起の基端部の前記回転中心に交差する方向における前記回転中心に近い側の面から前記回転中心に遠い側の面までの長さは、前記先端面の前記回転中心に交差する方向における前記回転中心に近い側の面から前記回転中心に遠い側の面までの長さより小さい、
請求項2に記載の接合部品。
【請求項4】
前記孔部は、前記第2の板状部に設けられた、前記回転中心を中心とする一のリング状の孔である、
請求項1に記載の接合部品。
【請求項5】
前記孔部は、前記第2の板状部に設けられた、前記回転中心を中心とする一のリング状の孔である、
請求項2に記載の接合部品。
【請求項6】
前記脚部の前記脚部先端の反対側に位置する面が、前記回転中心に交差する方向に沿った平坦面を含む、
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の接合部品。
【請求項7】
回転中心を中心に回転する第1の板状部と、前記回転中心から前記回転中心に交差する方向に所定距離だけ離間した位置に、その少なくとも一部が前記回転中心に沿った方向に延びる複数本の脚部と、を備える第1の部材と、
第2の板状部と、前記第2の板状部に設けられ前記複数本の脚部の脚部先端のそれぞれが挿入されて固相接合されている孔部と、を備える第2の部材であって、前記孔部は、前記第2の板状部に設けられた、前記回転中心を中心とする一のリング状の有底孔であって、且つ前記孔部の前記回転中心に交差する方向における前記回転中心に近い側の面から前記回転中心に遠い側の面までの長さは、前記脚部先端の前記回転中心に交差する方向における前記回転中心に近い側の面から前記回転中心に遠い側の面までの長さよりも小さい、前記第2の部材と、を備える、
接合部品。
【請求項8】
回転中心を中心に回転する第1の板状部、及び、前記回転中心から前記回転中心に交差する方向に所定距離だけ離間した位置にその少なくとも一部が前記回転中心に沿った方向に延びる複数本の脚部を備える第1の部材と、第2の板状部、及び、前記第2の板状部に設けられ且つその前記回転中心に交差する方向における前記回転中心に近い側の面から前記回転中心に遠い側の面までの長さが前記脚部の脚部先端の前記回転中心に交差する方向における前記回転中心に近い側の面から前記回転中心に遠い側の面までの長さよりも小さい孔部を備える第2の部材と、を備える接合部品の製造方法であって、
前記第1の部材と前記第2の部材を提供する工程と、
前記複数本の脚部の前記脚部先端を前記孔部に挿入する方向へ相対的に移動するように、前記第1の部材及び前記第2の部材の少なくとも一方の移動を開始する工程と、
前記複数本の脚部の前記脚部先端の全てが前記孔部の開口に接触した状態で、前記第1の部材と前記第2の部材の間への通電を開始する工程と、
前記移動と前記通電とにより、前記脚部先端と前記孔部とを接合する工程であって、前記移動により前記脚部先端が前記孔部に挿入される挿入深さは、前記孔部の深さ以上である、工程と、を備える、
接合部品の製造方法。
【請求項9】
前記第1の部材及び前記第2の部材の少なくとも一方の移動を開始する工程は、前記複数本の脚部の前記回転中心に沿った方向における前記脚部先端の反対側に位置する面の少なくとも一部に接触する第1の電極と、前記第2の部材の前記第1の部材に近接する側とは反対側の面に接触する第2の電極との少なくとも一方を移動させることにより、前記第1の部材及び前記第2の部材の少なくとも一方の移動を開始する工程を備える、
請求項8に記載の接合部品の製造方法。
【請求項10】
回転中心を中心に回転する第1の板状部、及び、前記回転中心から前記回転中心に交差する方向に所定距離だけ離間した位置にその少なくとも一部が前記回転中心に沿った方向に延びる複数本の脚部を備える第1の部材と、第2の板状部、及び、前記第2の板状部に設けられ且つその前記回転中心に交差する方向における前記回転中心に近い側の面から前記回転中心に遠い側の面までの長さが前記脚部の脚部先端の前記回転中心に交差する方向における前記回転中心に近い側の面から前記回転中心に遠い側の面までの長さよりも小さい孔部を備える第2の部材と、を備える接合部品の製造方法であって、
前記第1の部材と前記第2の部材を提供する工程と、
前記複数本の脚部の前記脚部先端を前記孔部に挿入する方向へ相対的に移動するように、前記第1の部材及び前記第2の部材の少なくとも一方の移動を開始する工程であって、前記孔部は、前記第2の板状部に設けられた、前記回転中心を中心とする一のリング状の有底孔である、工程と、
前記複数本の脚部の前記脚部先端の全てが前記孔部の開口に接触した状態で、前記第1の部材と前記第2の部材の間への通電を開始する工程と、
前記移動と前記通電とにより、前記脚部先端と前記孔部とを接合する工程と、を備える、
接合部品の製造方法。
【請求項11】
回転中心を中心に回転する第1の板状部と、前記回転中心から前記回転中心に交差する方向に所定距離だけ離間した位置にその少なくとも一部が前記回転中心に沿った方向に延びる複数本の脚部と、を備える第1の部材に接触する第1の電極と、
第2の板状部と、前記第2の板状部に設けられ且つその前記回転中心に交差する方向における前記回転中心に近い側の面から前記回転中心に遠い側の面までの長さが、前記脚部の脚部先端の前記回転中心に交差する方向における前記回転中心に近い側の面から前記回転中心に遠い側の面までの長さよりも小さい孔部と、を備える第2の部材に接触する第2の電極と、
前記第1の電極と第2の電極との間に電流を供給する通電装置と、
前記第1の電極と前記第2の電極とを相対移動させることにより、前記第1の部材と前記第2の部材とを前記複数本の脚部の前記脚部先端を前記孔部に挿入する方向へ移動させる加圧装置であって、前記第1の部材と前記第2の部材は、前記脚部先端が前記孔部に挿入される挿入深さが、前記孔部の深さ以上となる位置まで移動される、前記加圧装置と、を備える、
接合部品の製造装置。
【請求項12】
前記脚部の前記脚部先端の反対側に位置する面は湾曲面を含み、前記第1の電極は、前記湾曲面に当接可能な接触突起を備える、
請求項11に記載の接合部品の製造装置。
【請求項13】
回転中心を中心に回転する第1の板状部と、前記回転中心から前記回転中心に交差する方向に所定距離だけ離間した位置にその少なくとも一部が前記回転中心に沿った方向に延びる複数本の脚部と、を備える第1の部材に接触する第1の電極と、
第2の板状部と、前記第2の板状部に設けられ且つその前記回転中心に交差する方向における前記回転中心に近い側の面から前記回転中心に遠い側の面までの長さが、前記脚部の脚部先端の前記回転中心に交差する方向における前記回転中心に近い側の面から前記回転中心に遠い側の面までの長さよりも小さい孔部と、を備える第2の部材に接触する第2の電極であって、前記孔部は、前記第2の板状部に設けられた、前記回転中心を中心とする一のリング状の有底孔である、前記第2の電極と、
前記第1の電極と第2の電極との間に電流を供給する通電装置と、
前記第1の電極と前記第2の電極とを相対移動させることにより、前記第1の部材と前記第2の部材とを前記複数本の脚部の前記脚部先端を前記孔部に挿入する方向へ移動させる加圧装置と、を備える、
接合部品の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は金属材料を含む接合部品、接合部品の製造方法及び接合部品の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の駆動系部品、例えば変速機や差動装置に用いられる遊星歯車機構のプラネタリキャリアは、一般に複数の金属部材を接合して形成される。例えば、下記特許文献1には、第1端板とボスを有する第1部材と、第2端板及びその第2端板の一面に立設された複数本(周方向に定ピッチで3本)のブリッジを有し、各ブリッジの先端が第1端板に電子ビーム溶接によって接合された第2部材とを備えたものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-268575号公報
【特許文献2】特許第5124232号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、溶接時に溶融した金属は時間経過と共に固まるが、固まる際に金属は僅かに収縮することがあり、この収縮に伴って生じる力が接合箇所を引っ張るように作用することがある。このような作用により金属部材に変形あるいは位置ズレが生じると、プラネタリキャリアのように高い寸法精度が要求される部品においては、最後に寸法を調整するための仕上げ加工が必要となることがある。また、上記特許文献1のもののように、複数本のブリッジを共通の部材に接合する際に電子ビーム溶接を用いる場合、複数の接合箇所を順番に接合することになるため、すべての接合箇所の接合を完了するまでに比較的長い時間を要する。このような場合、各接合箇所のうち、初期に接合された接合箇所の金属が固まる際は、未だ金属部材同士は相互に固定されていないため、当該箇所の金属が固まる際の収縮力によって金属部材同士に所定量のズレ(変形)が生じる。これに対し、前述の初期の接合以降に接合された接合箇所の金属が固まる際は、金属部材間の一部の接合が完了しているため金属部材同士が相互に固定された状態のため、当該箇所の金属が固まる際の収縮力により生じる金属部材間のズレ量は、初期の接合の際に生じたズレ量に比べて小さくなる。このようなズレ量の違いは、接合後に得られる部品に予期しない位置ズレを生じさせ、接合後の部品における各部材の平行度の悪化要因となり得る。また、ビーム溶接は一般に真空チャンバ等を用いて溶接箇所を真空状態とする必要がある。
【0005】
他方、上記特許文献2には、回転中心から半径方向に離れた位置に形成された軸方向延出部を有する第1部材と孔を有する第2部材とを接合してなる部品を製造するに際し、軸方向延出部の先部を孔に挿入して抵抗溶接することが記載されている。上記特許文献2のものによれば、上述したビーム溶接のように周囲を真空雰囲気とするといった必要はない。しかし、先部の挿入深さは孔の深さよりも小さく設定されているため、十分な接合強度を得るために必要な接合面積を確保することが困難である。加えて、第1部材と第2部材を接合する際に接触させるそれぞれ接触部が、一方のみ傾斜面となっているため、接合面積が小さく、接合強度が不十分となる場合がある。さらには、第2部材に形成される孔は、接合される第1部材の先部の寸法が変わる度にそれに合わせて形成する必要があるため、製造に手間を要する。
【0006】
本開示は、接合時に生じる変形や部材間の平行度の悪化を抑制した接合部品、接合部品の製造方法及び接合部品の製造装置を提供することを第1の目的とする。
【0007】
加えて、本開示は、高い接合強度を有する接合部品、接合部品の製造方法及び接合部品の製造装置を提供することを第2の目的とする。
【0008】
加えて、本開示は、簡易に製造することが可能な接合部品、接合部品の製造方法及び接合部品の製造装置を提供することを第3の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本開示の第1の態様に係る接合部品は、回転中心を中心に回転する第1の板状部と、前記回転中心から前記回転中心に交差する方向に所定距離だけ離間した位置に、その少なくとも一部が前記回転中心に沿った方向に延びる複数本の脚部と、を含む第1の部材と;第2の板状部と、前記第2の板状部に設けられ前記複数本の脚部の脚部先端のそれぞれが挿入されて固相接合されている孔部と、を備える第2の部材であって、前記孔部は、その深さが、前記脚部先端が当該孔部に挿入される挿入深さ以下であり、且つ前記孔部の前記回転中心に交差する方向における前記回転中心に近い側の面から前記回転中心に遠い側の面までの長さは、前記脚部先端の前記回転中心に交差する方向における前記回転中心に近い側の面から前記回転中心に遠い側の面までの長さよりも小さい、前記第2の部材と;を含むものである。
【0010】
このような接合部品によれば、複数本の脚部の脚部先端の、回転中心に交差する方向における回転中心に近い側の面と回転中心に遠い側の面の両方を同時に固相接合できるため、接合時の金属の収縮等に起因する変形や位置ズレが抑制された接合部品を得ることができる。また、孔部の深さを脚部先端の挿入深さ以下とする、言い換えれば孔部の深さを脚部先端の挿入深さと同じかそれよりも短くすることで、孔部の内周面の大部分を接合面とすることができ、広い接合面積を確保することができる。
【0011】
本開示の第2の態様に係る接合部品は、上記本開示の第1の態様に係る接合部品において、前記脚部先端はその先端面から前記回転中心に沿った方向に突出した突起を含み、前記孔部は底壁を備えた有底孔であり、前記突起と前記底壁とは固相接合されている。
【0012】
このような接合部品によれば、脚部先端の側面部分と孔部の内壁面との間の固相接合に加えて、突起と底壁との間も固相接合するため、広い接合面積を確保することができる。
【0013】
本開示の第3の態様に係る接合部品は、上記本開示の第2の態様に係る接合部品において、前記突起の基端部の前記回転中心に交差する方向における前記回転中心に近い側の面から前記回転中心に遠い側の面までの長さは、前記先端面の前記回転中心に交差する方向における前記回転中心に近い側の面から前記回転中心に遠い側の面までの長さより小さい。
【0014】
このような接合部品によれば、広い接合面積を確保することができると共に、寸法出しがしやすくなる。
【0015】
本開示の第4の態様に係る接合部品は、上記本開示の第1の態様に係る接合部品において、前記孔部は、前記第2の板状部に設けられた、前記回転中心を中心とする一のリング状の孔である。
【0016】
このような接合部品によれば、孔部の加工が容易になり、第2の部材の製造を容易にすることができる。
【0017】
本開示の第5の態様に係る接合部品は、上記本開示の第2の態様に係る接合部品において、前記孔部は、前記第2の板状部に設けられた、前記回転中心を中心とする一のリング状の孔である。
【0018】
このような接合部品によれば、孔部の加工が容易になり、第2の部材の製造を容易にすることができる。
【0019】
本開示の第6の態様に係る接合部品は、上記本開示の第1乃至5のいずれかの態様に係る接合部品において、前記脚部の前記脚部先端の反対側に位置する面が、前記回転中心に交差する方向に沿った平坦面を含む。
【0020】
このような接合部品によれば、脚部の脚部先端の反対側に平坦面を設けたことで、この平坦面を、第1の部材を第2の部材と接合する際の被押圧面として機能させることができる。これにより、接合時の押圧力が作用する方向を安定させることができ、製造歩留まりの高い接合部品とすることができる。
【0021】
本開示の第7の態様に係る接合部品は、回転中心を中心に回転する第1の板状部と、前記回転中心から前記回転中心に交差する方向に所定距離だけ離間した位置に、その少なくとも一部が前記回転中心に沿った方向に延びる複数本の脚部と、を含む第1の部材と;第2の板状部と、前記第2の板状部に設けられ前記複数本の脚部の脚部先端のそれぞれが挿入されて固相接合されている孔部と、を備える第2の部材であって、前記孔部は、前記第2の板状部に設けられた、前記回転中心を中心とする一のリング状の有底孔であって、且つ前記孔部の前記回転中心に交差する方向における前記回転中心に近い側の面から前記回転中心に遠い側の面までの長さは、前記脚部先端の前記回転中心に交差する方向における前記回転中心に近い側の面から前記回転中心に遠い側の面までの長さよりも小さい、前記第2の部材と;を含むものである。
【0022】
このような接合部品によれば、複数本の脚部の脚部先端の、回転中心に交差する方向における回転中心に近い側の面と回転中心に遠い側の面の両方を同時に固相接合できるため、接合時の金属の収縮等に起因する変形や位置ズレが抑制された接合部品を得ることができる。また、脚部先端が挿入された固相接合される孔部を一のリング状の有底孔で形成したことで、孔部の加工が容易となり、第2の部材の製造を容易にすることができる。
【0023】
本開示の第8の態様に係る接合部品の製造方法は、回転中心を中心に回転する第1の板状部、及び、前記回転中心から前記回転中心に交差する方向に所定距離だけ離間した位置にその少なくとも一部が前記回転中心に沿った方向に延びる複数本の脚部を備える第1の部材と、第2の板状部、及び、前記第2の板状部に設けられ且つその前記回転中心に交差する方向における前記回転中心に近い側の面から前記回転中心に遠い側の面までの長さが前記脚部の脚部先端の前記回転中心に交差する方向における前記回転中心に近い側の面から前記回転中心に遠い側の面までの長さよりも小さい孔部を備える第2の部材と、を含み、前記第1の部材と前記第2の部材を提供する工程と;前記複数本の脚部の前記脚部先端を前記孔部に挿入する方向へ相対的に移動するように、前記第1の部材及び前記第2の部材の少なくとも一方の移動を開始する工程と;前記複数本の脚部の前記脚部先端の全てが前記孔部の開口に接触した状態で、前記第1の部材と前記第2の部材の間への通電を開始する工程と;前記移動と前記通電とにより、前記脚部先端と前記孔部とを接合する工程であって、前記移動により前記脚部先端が前記孔部に挿入される挿入深さは、前記孔部の深さ以上である、工程と;を含むものである。
【0024】
このような接合部品の製造方法によれば、接合部品の複数の接合箇所を同時に、且つその接合面として回転中心に近い側の面と遠い側の面の少なくとも2箇所の接合を行うことができる。これにより接合時に生じる部材の変形や位置ズレに起因する部材間の平行度の悪化を抑えることができる。
【0025】
本開示の第9の態様に係る接合部品の製造方法は、上記本開示の第8の態様に係る接合部品の製造方法において、前記第1の部材及び前記第2の部材の少なくとも一方の移動を開始する工程は、前記複数本の脚部の前記回転中心に沿った方向における前記脚部先端の反対側に位置する面の少なくとも一部に接触する第1の電極と、前記第2の部材の前記第1の部材に近接する側とは反対側の面に接触する第2の電極との少なくとも一方を移動させることにより、前記第1の部材及び前記第2の部材の少なくとも一方の移動を開始する工程を含む。
【0026】
このような接合部品の製造方法によれば、第1の電極が複数本の脚部の回転中心に沿った方向における脚部先端の反対側に位置する面の少なくとも一部に接触した状態で、第1の部材及び第2の部材の少なくとも一方が移動するため、脚部先端と孔部とが接触した際脚部先端の延在方向と同一方向に加圧力が発生するようになる。これにより加圧力が脚部先端の延在方向とは異なる方向に発生した際に生じ得る脚部の変形や接合不良を抑制することができる。
【0027】
本開示の第10の態様に係る接合部品の製造方法は、回転中心を中心に回転する第1の板状部、及び、前記回転中心から前記回転中心に交差する方向に所定距離だけ離間した位置にその少なくとも一部が前記回転中心に沿った方向に延びる複数本の脚部を備える第1の部材と、第2の板状部、及び、前記第2の板状部に設けられ且つその前記回転中心に交差する方向における前記回転中心に近い側の面から前記回転中心に遠い側の面までの長さが前記脚部の脚部先端の前記回転中心に交差する方向における前記回転中心に近い側の面から前記回転中心に遠い側の面までの長さよりも小さい孔部を備える第2の部材と、を含み、前記第1の部材と前記第2の部材を提供する工程と;前記複数本の脚部の前記脚部先端を前記孔部に挿入する方向へ相対的に移動するように、前記第1の部材及び前記第2の部材の少なくとも一方の移動を開始する工程であって、前記孔部は、前記第2の板状部に設けられた、前記回転中心を中心とする一のリング状の有底孔である、工程と;前記複数本の脚部の前記脚部先端の全てが前記孔部の開口に接触した状態で、前記第1の部材と前記第2の部材の間への通電を開始する工程と;前記移動と前記通電とにより、前記脚部先端と前記孔部とを接合する工程と;を含むものである。
【0028】
このような接合部品の製造方法によれば、接合部品の複数の接合箇所を同時に、且つその接合面として回転中心に近い側の面と遠い側の面の少なくとも2箇所の接合を行うことができる。これにより接合時に生じる部材の変形や位置ズレに起因する部材間の平行度の悪化を抑えることができる。
【0029】
本開示の第11の態様に係る接合部品の製造装置は、回転中心を中心に回転する第1の板状部と、前記回転中心から前記回転中心に交差する方向に所定距離だけ離間した位置にその少なくとも一部が前記回転中心に沿った方向に延びる複数本の脚部と、を備える第1の部材に接触する第1の電極と;第2の板状部と、前記第2の板状部に設けられ且つその前記回転中心に交差する方向における前記回転中心に近い側の面から前記回転中心に遠い側の面までの長さが、前記脚部の脚部先端の前記回転中心に交差する方向における前記回転中心に近い側の面から前記回転中心に遠い側の面までの長さよりも小さい孔部と、を備える第2の部材に接触する第2の電極と;前記第1の電極と第2の電極との間に電流を供給する通電装置と;前記第1の電極と前記第2の電極とを相対移動させることにより、前記第1の部材と前記第2の部材とを前記複数本の脚部の前記脚部先端を前記孔部に挿入する方向へ移動させる加圧装置であって、前記第1の部材と前記第2の部材は、前記脚部先端が前記孔部に挿入される挿入深さが、前記孔部の深さ以上となる位置まで移動される、前記加圧装置と;を含むものである。
【0030】
このような接合部品の製造装置によれば、第1の部材と第2の部材の接合面を同時に接合することが可能となる。そして、この製造装置を用いて製造された接合部品は、接合による変形や位置ズレ、及び第1及び第2の部材間の平行度の悪化が抑制される。
【0031】
本開示の第12の態様に係る接合部品の製造装置は、上記本開示の第11の態様に係る接合部品の製造装置において、前記脚部の前記脚部先端の反対側に位置する面は湾曲面を含み、前記第1の電極は、前記湾曲面に当接可能な接触突起を含む。
【0032】
このような接合部品の製造装置によれば、製造部品がその脚部の脚部先端の反対側に湾曲面を有するものであっても、第1の電極を脚部先端の反対側の面に当接させることができる。これにより、加圧装置の加圧力を回転中心に沿った方向に作用させることができるようになる。
【0033】
本開示の第13の態様に係る接合部品の製造装置は、回転中心を中心に回転する第1の板状部と、前記回転中心から前記回転中心に交差する方向に所定距離だけ離間した位置にその少なくとも一部が前記回転中心に沿った方向に延びる複数本の脚部と、を備える第1の部材に接触する第1の電極と;第2の板状部と、前記第2の板状部に設けられ且つその前記回転中心に交差する方向における前記回転中心に近い側の面から前記回転中心に遠い側の面までの長さが、前記脚部の脚部先端の前記回転中心に交差する方向における前記回転中心に近い側の面から前記回転中心に遠い側の面までの長さよりも小さい孔部と、を備える第2の部材に接触する第2の電極であって、前記孔部は、前記第2の板状部に設けられた、前記回転中心を中心とする一のリング状の有底孔である、前記第2の電極と;前記第1の電極と第2の電極との間に電流を供給する通電装置と;前記第1の電極と前記第2の電極とを相対移動させることにより、前記第1の部材と前記第2の部材とを前記複数本の脚部の前記脚部先端を前記孔部に挿入する方向へ移動させる加圧装置と;を含むものである。
【0034】
このような接合部品の製造装置によれば、第1の部材と第2の部材の接合面を同時に接合することが可能となる。そして、この製造装置を用いて製造された接合部品は、接合による変形や位置ズレ、及び第1及び第2の部材間の平行度の悪化が抑制される。
【発明の効果】
【0035】
上述した構成を備えることにより、接合による変形や位置ズレ、及び部材間の平行度の悪化が抑制された、接合部品、接合部品の製造方法及び接合部品の製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本開示の第1の実施の形態に係る接合部品の第1の部材の一例を示した斜視図である。
図2】本開示の第1の実施の形態に係る接合部品の第1の部材の一例を示したものであって、図2(A)は平面図、図2(B)は図2(A)に示すA-A線に沿って切断した断面図である。
図3】本開示の第1の実施の形態に係る接合部品の第2の部材の一例を示したものであって、図3(A)は平面図、図3(B)は図3(A)に示すB-B線に沿って切断した断面図である。
図4】本開示の第1の実施の形態に係る接合部品の製造装置の一例を示した概略説明図である。
図5図4に示す製造装置の第1の電極の一の変形例を示した要部拡大図である。
図6】本開示の第1の実施の形態に係る接合部品の製造方法の一例を示したフローチャートである。
図7】本開示の第1の実施の形態に係る接合部品の第1の部材と第2の部材を接合する際の動作説明図である。
図8】本開示の第1の実施の形態の一の変形例に係る接合部品の第1の部材と第2の部材を接合する際の動作説明図である。
図9】本開示の第1の実施の形態の他の変形例に係る接合部品を示した要部拡大図である。
図10】本開示の第2の実施の形態に係る接合部品の第2の部材の一例を示したものであって、図10(A)は平面図、図10(B)は図10(A)に示すC-C線に沿って切断した断面図である。
図11】本開示の第2の実施の形態に係る接合部品の第1の部材と第2の部材を接合する際の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面を参照して本開示を実施するための各実施の形態について説明する。なお、以下では本開示の目的を達成するための説明に必要な範囲を模式的に示し、本開示の該当部分の説明に必要な範囲を主に説明することとし、説明を省略する箇所については公知技術によるものとする。
【0038】
<第1の実施の形態>
初めに、第1の実施の形態に係る接合部品1の各部の構成について説明する。本実施の形態に係る接合部品1(図3参照)は、例えば回転する自動車部品であってよい。より詳しくは、変速機や差動装置に用いられる遊星歯車機構のプラネタリキャリアとすることができる。そして、本実施の形態に係る接合部品1は、第1の部材10と第2の部材20とを接合することにより製造されるものである。
【0039】
図1は、本開示の第1の実施の形態に係る接合部品の第1の部材の一例を示した斜視図である。また、図2は、本開示の第1の実施の形態に係る接合部品の第1の部材の一例を示したものであって、図2(A)は平面図、図2(B)は図2(A)に示すA-A線に沿って切断した断面図である。本実施の形態に係る接合部品1を構成する第1の部材10は、図1及び図2に示すように、扁平な第1の板状部11と、この第1の板状部11の縁部に連結した複数本の脚部12と、を含むものである。
【0040】
第1の板状部11は、その中心部を貫通する第1の中央孔13が形成された、金属(例えばアルミニウム、アルミニウム合金、鋼材、鋳鉄、ステンレス鋼等)製の板体で構成することができる。この第1の中央孔13の周囲には、所定の角度間隔で複数個(図1及び図2においては3つ)の貫通孔14が形成されており、この貫通孔14には、例えば遊星歯車機構を構成するピニオンギヤの回転軸を支持することができる。第1の中央孔13の中心が、接合部品1が回転する際の回転中心RAとなり得る。
【0041】
複数本の脚部12は、回転中心RAから回転中心RAに交差する方向に所定距離だけ離間(離隔)した位置に配設される。具体的には、第1の板状部11の縁部の複数箇所(図1及び図2においては3箇所)から、接合部品1の回転中心RAに交差する方向、例えば第1の板状部11の延在方向に沿って所定長さ延びる延在部15と、この延在部15の端部に連結され接合部品1の回転中心RAに沿った方向に屈曲する屈曲部16と、屈曲部16から接合部品1の回転中心RAに沿った方向に所定長さ延在する垂下部17とを含むものとすることができる。このような構成を含むことにより、複数本の脚部12は、その外観が略L字状に構成され得る。複数本の脚部12は、第1の板状部11と一体的に形成されていてよい。また、この複数本の脚部12は、例えば接合部品1の回転中心RAを基準に所定の角度間隔を空けて設けられていてよい。なお、本実施の形態においては、複数本の脚部12として3つの脚部12を含むものを例示するが、脚部12の数は2つであっても、4つ以上であってもよい。また、上記の通り、垂下部17は、回転中心RAに沿った方向に延在するものであるが、ここでいう回転中心RAに沿った方向とは、回転中心RAの延在方向に平行な方向のみならず、回転中心RAの延在方向に対して僅かな角度(例えば1~15°程度)傾斜した方向をも含み得る。
【0042】
屈曲部16は、その外側部分が実質的に直角な角部が形成されるように屈曲していてよい。これにより、屈曲部16の上側の面(後述する被押圧面PS2に対応)は、回転中心RAに交差する方向に沿った平坦面となっていてよい。また、複数本の脚部12を構成する垂下部17における、屈曲部16に連結した端部とは反対側の端部は、後述する第2の部材20の孔部22と接合する脚部先端17Aを構成することができる。また、この脚部先端17Aの端部は実質的に平坦面で形成された先端面17Dであってよく、且つその縁部は面取り加工が施され脚部側テーパ部17Cとなっていてよい。また垂下部17は、回転中心と交差する方向に沿って切断したときの断面が回転中心RAを中心とした円弧状となるよう、湾曲した形状であってよい。なお、前述の円弧状に代えて、その断面が矩形状となっていてもよい。
【0043】
図3は、本開示の第1の実施の形態に係る接合部品の第2の部材の一例を示したものであって、図3(A)は平面図、図3(B)は図3(A)に示すB-B線に沿って切断した断面図である。本実施の形態に係る接合部品1を構成する第2の部材20は、図3に示すように、扁平な第2の板状部21を含むものである。
【0044】
第2の板状部21は、平面視略円形状の扁平な金属製の板体で構成することができる。第2の板状部21を構成する金属は、第1の板状部11と同一のものであっても異なるものであってもよい。この第2の板状部21の中心部には、第2の板状部21の表面21Fから裏面21Rへ貫通する第2の中央孔23が形成されていてよい。この第2の中央孔23の周囲には、所定の角度間隔で複数個(図3においては3つ)の貫通孔24が形成されていてよく、この貫通孔24には、第1の板状部11に設けられた貫通孔14と同様に、例えば遊星歯車機構を構成するピニオンギヤの回転軸を支持することができる。第2の中央孔23の中心は、接合部品1が回転する際の回転中心RAとなり得る。すなわち、第1の中央孔13と第2の中央孔23の中心は、第1の部材10と第2の部材20とが接合された際、同一線上に位置し得る。
【0045】
第2の板状部21の、回転中心RAから回転中心RAに交差する方向、より詳しくは放射方向(半径方向)に所定距離離れた位置には、複数個の孔部22が設けられる。本実施の形態に係る孔部22は、図3に示すように、第2の板状部21の表面21Fから裏面21Rへ貫通した所定の深さD1を有する貫通孔であって、且つ平面視で略円弧状に形成された孔とすることができる。この孔部22の、回転中心RAに交差する方向、より詳しくは第2の板状部21の延在方向における回転中心RAに近い側の面から回転中心RAに遠い側の面までの長さ(以下、この長さを「孔部の幅」ともいう)W21は、脚部先端17Aの同じく回転中心RAに交差する方向における回転中心RAに近い側の面から回転中心RAに遠い側の面までの長さ(以下、この長さを「脚部先端の幅」ともいう)W11(図2参照)よりも(例えばミリオーダーあるいはマイクロオーダーといった数値範囲で)小さい。脚部先端の幅W11と孔部の幅W21とをこのような寸法に予め調整することにより、両部材を接合する際、孔部22に脚部先端17Aが圧入するようになり、両者の少なくとも回転中心RAに近い側の面と回転中心RAに遠い側の面の2面が固相接合されることとなる。
【0046】
また、孔部22としては、図3に示すように、第2の板状部21の回転中心RAから放射方向に所定距離離れた位置に、例えば所定の延在角度W22を有する平面視円弧状のものが、脚部12の位置に合わせて3つ設けられた構成を採用することができる。ここで、3つの孔部22の延在角度W22は、3つの脚部12の各垂下部17の延在角度W12よりも僅かに小さいか、あるいは各垂下部17の延在角度W12以上となるように調整される。孔部22の延在角度W22を垂下部17の延在角度W12よりも僅かに小さくすると、孔部22に脚部先端17Aに挿入した際、孔部22の四方の内周面と脚部先端17Aの四方の外周面とを固相接合することが可能となる。これにより、孔部22の延在角度W22を垂下部17の延在角度W12以上とした場合に比して、より広い接合面積を確保することができるという利点がある。なお、仮に脚部12が上述した断面矩形状に形成されている場合には、孔部22も脚部12の形状に合わせて平面視矩形状に形成するとよい。
【0047】
さらに、孔部22を、脚部12の数に合わせて複数個設けることに代えて、回転中心RAを中心とする一のリング状の孔で構成することもできる。このように孔部22を一のリング状の孔で構成すると、第1の部材10と第2の部材20を製造する際の位置合わせの自由度が高くなると共に、第2の部材20の製造時に垂下部17の延在角度W12を考慮する必要がなくなる。これにより、第1の部材10及び第2の部材20の製造時の歩留まりをさらに向上できる。また、孔部22がリング状の第2の部材20には、例えば垂下部17の延在角度W12のみが異なる複数の第1の部材を接合することができ、部品の共通化も実現できる。
【0048】
第2の板状部21の表面21F側に位置する孔部22の開口のうち、少なくとも第2の板状部21の延在方向における回転中心RAに近い側の縁と回転中心RAに遠い側の縁には、面取り加工が施され孔部側テーパ部22Cが形成されていてよい。この孔部側テーパ部22Cの傾斜角度は、脚部側テーパ部17Cの傾斜角度と実質的に同一であって良い。このように、脚部先端17Aの回転中心RAに近い側の縁と回転中心RAに遠い側の縁とに設けられた脚部側テーパ部17Cに加えて、孔部22の開口の回転中心RAに近い側の縁と回転中心RAに遠い側の縁にも孔部側テーパ部22Cが設けられることにより、第1の部材10と第2の部材20を接合する際、両テーパ部17C、22Cが接合面を構成して大きな接合面積を形成することができる。これにより、接合部品1の接合部分の接合強度を高くすることができる。なお、本実施の形態においては脚部側テーパ部17C及び孔部側テーパ部22Cの両方を設けた場合について例示しているが、いずれか一方のみを設けてもよいし、テーパ部を設けなくてもよい。
【0049】
本実施の形態に係る接合部品1は、上述した構成を含む第1の部材10と第2の部材20とが固相接合されて形成される。具体的には、複数本の脚部12の脚部先端17Aのそれぞれが1乃至複数個の孔部22に圧入され通電されることで、脚部先端17Aの側面の少なくとも一部と孔部22の内周面の少なくとも一部とが固相接合されたものであってよい。ここで、「固相接合」とは、接合材を溶融させない固相(固体)状態で、加圧あるいは加熱しながら加圧して接合する方法を指すものである。ただし、接合材としての第1の部材10及び第2の部材20において、その形状等に起因して接合時に局所的に溶融が生じた場合であっても、接合面の大部分が固相状態で接合されていれば、本開示における「固相接合」に該当するものとする。これにより、第1の部材10と第2の部材20の間の複数の接合面を同時に接合することが可能となり、複数の接合面の接合タイミングが異なることに起因して生じる変形や位置ズレを抑制できる。そして、前述の変形等を抑制することで寸法調整のための仕上げ加工を別途行う必要がほとんどなくなり、製造工程を簡略化できる。また、接合部分の接合タイミングが同じになるため、接合箇所の金属が固まる際の収縮力が各接合箇所に実質的に同じタイミングで発生するようになり、接合後の部品における各部材の平行度の悪化が抑制されることが期待できる。
【0050】
<接合部品の製造装置>
次に、本実施の形態に係る接合部品の製造装置2について、その構成を簡単に説明する。以下の説明においては、接合部品の製造装置2によって接合される対象物として、上述した接合部品1を例示的に示す。したがって、以下に示す効果等の説明は本実施の形態に係る接合部品1の効果の説明を兼ねている。ただし、本製造装置2によって接合される接合部品は上述の接合部品1に限定されない。
【0051】
図4は、本開示の第1の実施の形態に係る接合部品の製造装置の一例を示した概略説明図である。なお、この図4に示す第1の部材10は、その構造が理解しやすいよう、第2の部材20に対して上方向に離間させた状態で示されている。本実施の形態に係る接合部品の製造装置2は、図4に示すように、接合部品1の第1の部材10に接触する第1の電極30と、接合部品1の第2の部材20に接触する第2の電極40と、第1の電極30と第2の電極40とを相対移動させることで第1の部材10と第2の部材20とを相対移動させることが可能な加圧装置50と、第1の電極30と第2の電極40との間に電流を供給する通電装置60と、を少なくとも含むものである。
【0052】
第1の電極30は、その下面が第1の部材10の上面に少なくとも部分的に接触することで、第1の部材10に電気的に接続する導電性材料で構成することができる。本実施の形態においては、この第1の電極30の上面は加圧装置50に固定されており、加圧装置50の動作に追従して矢印M1で示す方向(上下方向)に移動することができる。これに関連して、この第1の電極30は、その下面が複数本の脚部12それぞれの屈曲部16の少なくとも一部に接触するように形成されているとよい。第1の電極30が複数本の脚部12に接触することで、加圧装置50からの加圧力が各脚部12に無駄なく作用させることができる。したがって、第1の電極30は、第1の板状部11には接触していなくてもよい。
【0053】
ここで、図4に示す第1の電極30は、第1の部材10の脚部先端17Aを第2の部材20の孔部22の延在方向に沿った方向に押圧するために、第1の部材10に接触する下面(以下、この面を「押圧面」ともいう)PS1が実質的に水平面で構成され、当該押圧面PS1の一部が、屈曲部16の一部に接触するように形成されている。このような接触構造を採用しているのは、主に加圧装置50からの加圧力が垂下部17の延在方向とは異なる方向に発生した際に生じ得る脚部12の変形や接合不良を抑制するためである。しかし、第1の電極30の押圧面PS1の形状はこれに限定されない。具体的には、第1の電極30の押圧面PS1は、複数本の脚部12の回転中心RAに沿った方向における脚部先端17Aとは反対側に位置する面(以下、この面を「被押圧面」という)PS2の少なくとも一部に接触する形状であればよい。このような形状を有していれば、脚部先端17Aを垂下部17の延在方向に沿った方向、言い換えれば回転中心RAの延在方向に沿った方向に押圧することができる。被押圧面PS2は、脚部先端17Aの直上に位置する面ということもできる。なお、図4に示す第1の部材10においては、被押圧面PS2は、屈曲部16の外側面と延在部15の一部で構成されており、押圧面PS1は、回転中心RAに交差する方向の長さが被押圧面PS2よりも長くなるように設定され、押圧面PS1の一部が被押圧面PS2の一部を押圧するように配設されたものが例示されている。
【0054】
図5は、図4に示す製造装置の第1の電極の変形例を示した要部拡大図である。この図5は、図4における第1の電極の一部(詳しくは図4中の左側部分に対応する箇所)を拡大して示したものである。本実施の形態の変形例に係る第1の電極30Aは、図5(A)に示すように、その押圧面PS1が被押圧面PS2に合わせた大きさに設定されている。この第1の電極30Aによれば、押圧面PS1が小さくて済むため、第1の電極30B自体を小さくすることができる。
【0055】
また、上述した第1の部材10は、その屈曲部16の外側に角部が形成されたものを例示したが、屈曲部が湾曲した形状(以下、この屈曲部を「屈曲部16A」という)であってもよい。この屈曲部16Aは、その外側が円弧状に湾曲した湾曲面16A1で構成されていてよい。これに関連して、本実施の形態の他の変形例に係る第1の電極30Bは、図5(B)に示すように、被押圧面PS2と押圧面PS1との接触面積を大きくするために、被押圧面PS2の形状、特に、屈曲部16Aの湾曲面16A1に沿った面を有する接触突起31が設けられる。このような接触突起31を採用することにより、第1の電極30で第1の部材10を押圧する際、接触突起31と湾曲面16A1とが当接することで押圧面PS1と被押圧面PS2との接触面積を大きくすることができ、加圧装置50からの加圧力が垂下部17の延在方向に沿った方向により確実に印加されるようになる。
【0056】
第2の電極40は、その上面に第2の部材20が載置され、第2の板状部21の裏面21Rと接触することで、第2の部材20に電気的に接続する導電性材料で構成することができる。第2の部材20を移動不能に支持するために、第2の電極40の上面には、例えば吸引装置や第2の電極40の上面に沿って移動可能な複数のグリッパといった図示しない保持装置が設けられていると好ましい。
【0057】
加圧装置50は、第1の電極30と第2の電極40とを相対移動させるよう、互いに近接する方向に押圧して、第1の部材10と第2の部材20とを複数本の脚部12の脚部先端17Aを孔部22に挿入する方向へ移動させることが可能な装置であってよい。本実施の形態においては、第1の電極30を矢印M1で示す方向に移動させることが可能な装置を採用している。これにより、第1の電極30を第1の部材10に接触させ、第1の部材10を第2の部材20に近接する方向に移動させることができる。加圧装置50の詳細な構成については図示を省略するが、典型的には流体(水、油、空気等)を用いたピストン・シリンダ機構や、ボールねじやリニアモータといった電動機を用いた直動機構を採用することができる。なお、本実施の形態に係る加圧装置50は、第1の電極30側を押圧するものを例示しているが、その動作方向が同じであればこのような構成に限定されず、例えば第2の電極40側、あるいは2つの電極30、40の両方を押圧することが可能な構成を採用することもできる。
【0058】
通電装置60は、第1の電極30及び第2の電極40を介して第1の部材10及び第2の部材20の接合面に電流を供給するための電源回路であってよい。この通電装置60としては、典型的には商用交流電源61に接続された充電回路、充電回路により充電されるコンデンサ、トランス等を含み、第1の部材10と第2の部材20とが接合した接合面に、パルス状電流を供給するものを採用することができる。ここで、パルス状電流は、典型的には単一のパルス状電流である。そのパルス状電流は、例えば数万から数十万アンペアの電流ピーク値を有し、パルス幅は例えば10ミリ秒~100ミリ秒とすることができる。具体的な電流ピーク値やパルス幅については、第1の部材10及び第2の部材20の材質や形状、あるいは通電時の目標温度(具体的には、第1及び第2の部材の軟化温度以上溶融温度以下等)に応じて適宜選択することができる。このパルス状電流により、接合面を加熱することができ、接合面同士の接合を確実に行うことができる。
【0059】
本実施の形態に係る接合部品の製造装置2は、上述した構成を備えることにより、第1の部材と第2の部材の複数の接合面を同時に接合することが可能な製造装置を提供することができる。そして、この製造装置2を用いて製造された接合部品は、接合に伴って生じる変形や位置ズレ、及び第1及び第2の部材間の平行度の悪化が抑制されたものとなる。
【0060】
<接合部品の製造方法>
次に、本開示の一実施の形態に係る接合部品の製造方法について説明する。本実施の形態においては、当該接合部品の製造方法を実行する装置として上述した製造装置2を用い、接合対象物としての接合部品として上述した接合部品1を用いて説明を行う。しかしながら、本開示の製造方法は上述の製造装置2による実施には限定されず、また上述の接合部品1とは異なる接合部品も製造可能であることは、明確に理解されるべきである。なお、以下に示す効果等の説明は、本実施の形態に係る製造装置2及び接合部品1の効果の説明を兼ねている。
【0061】
図6は、本開示の第1の実施の形態に係る接合部品の製造方法の一例を示したフローチャートである。また、図7は、本開示の第1の実施の形態に係る接合部品の第1の部材と第2の部材を接合する際の動作説明図であって、図7(A)は加圧装置の動作開始直前の状態を示し、図7(B)は通電装置の動作開始直前の状態を示し、図7(C)は接合が完了した状態を示したものである。なお、図7においては、図4に示した接合部分のうちの一部(詳しくは図4中の左側部分)に対応する箇所を拡大して示す。また、この図7は、その接合過程が視認しやすいように端面図で示されている。
【0062】
本実施の形態に係る接合部品の製造方法は、図6及び図7に示すように、先ず製造装置2内に第1の部材10及び第2の部材20を提供する(ステップS1)。詳しくは、第2の電極40の上面に第2の部材20を載置して固定した後、この固定された第2の部材20の上面側に、第1の部材10を、その脚部先端17Aが第2の部材20の孔部22に位置合わせされた状態で載置することで、第1及び第2の部材10、20を製造装置2内に配置する(図7(A)参照)。このとき、複数の脚部12の脚部先端17Aに設けられた脚部側テーパ部17Cと、複数の孔部22の表面側21Fの端部に設けられた孔部側テーパ部22Cとを当接させると、上述した第1の部材10と第2の部材20との位置合わせをガイドすることができる。
【0063】
次に、加圧装置50を動作させて第1の電極30の下方向への移動を開始する(ステップS2)。第1の電極30の移動が開始してから所定時間が経過すると、第1の電極30の押圧面PS1が、複数の脚部12の被押圧面PS2に接触する(図7(B)参照)。
【0064】
第1の電極30の押圧面PS1と第1の部材10の被押圧面PS2とが接触すると(ステップS3でYes)、加圧装置50による、第1の部材10及び第2の部材20の少なくとも一方の移動が開始される。そして、この加圧装置50の動作を継続したまま、すなわち加圧装置50による移動と並行して通電装置60を動作させ、第1及び第2の電極30、40間への電流の供給を開始する(ステップS4)。これにより、第1の部材10と第2の部材20の接合面、すなわち脚部先端17Aと孔部22の接触部分に加圧力の印加と電流の供給とが行われる。脚部先端17Aと孔部22の接触部分、より詳細には脚部側テーパ部17Cと孔部側テーパ部22Cとの間に電流が供給されると、当接した両テーパ部17C、22C及びその周囲がジュール熱により加熱され、第1の部材10及び第2の部材20の少なくとも一方を構成する金属の軟化温度に至るまで昇温される。そして、加圧装置50から印加される加圧力によって、軟化温度にまで昇温された接合面部分が圧入変位(塑性流動)して接合面同士が固相接合され、接合部JA1が形成される。
【0065】
第1及び第2の電極30、40間への電流の供給が開始された後、加圧装置50による加圧力の印加が継続されると、脚部先端17Aの孔部22内への挿入(圧入)が進行する。そして、脚部先端17Aの挿入深さが規定の挿入深さL1に到達すると(ステップS5でYes)、加圧装置50による移動と通電装置60による通電とに基づく脚部先端17Aと孔部22とを接合する工程を完了する(ステップS6)。ここで、孔部の深さD1が、この規定の挿入深さL1以下、言い換えれば孔部の深さD1が規定の挿入深さL1と同一か、それよりも短く設定されていることは、特に留意すべき事項である。このように、規定の挿入深さL1が孔部の深さD1以上である(つまり、L1≧D1)と、図7(C)に示すように、接合が完了した接合部品1における接合部JA1が、孔部22の内周面の深さ方向における全長にわたって形成されることになる。これにより、接合部JA1の面積が、脚部先端の挿入深さが孔部の深さよりも小さい場合に比べて大きく確保されるので、接合部分の接合強度の高い接合部品1を提供することができる製造方法となる。なお、本実施の形態においては、上述の通り、第1の部材10と第2の部材20の接合面を固相接合によって接合した接合部品の製造方法について説示しているが、これに代えて、接合面の溶融を伴う接合方法、例えば抵抗溶接を用いて第1の部材10と第2の部材20の接合面を溶接することもできる。
【0066】
本実施の形態に係る接合部品の製造方法においては、上述した通り、複数(上述の接合部品1においては3つ)の接合箇所を同時に、且つその接合面として回転中心RAに近い側の面と回転中心RAに遠い側の面の少なくとも2箇所の接合を行うことができる。これにより、部材の接合時に生じる変形や位置ズレ、及び部材間の平行度の悪化を抑制することができる。また、本製造方法で製造される接合部品にあっては、孔部22の深さ方向全長にわたって接合部が形成できるため、広い接合面積を確保でき、接合部品の使用時等においても接合部分が強度不足によって破損しにくくなる。
【0067】
上述した本実施の形態に係る接合部品1においては、脚部先端17Aの側面部分のみが孔部22に接合されたものを例示した。しかし、本開示は上述の構造のみに限定されるものではない。具体的には、脚部先端17Aの側面部分に加えて、脚部先端17Aの下面部分を孔部22に接合してもよい。そこで、以下には本実施の形態の一変形例に係る接合部品1A及びその製造方法について説明を行う。なお、この接合部品1Aを製造するための装置としては、上述した製造装置2を利用することが可能である。
【0068】
図8は、本開示の第1の実施の形態の一の変形例に係る接合部品の第1の部材と第2の部材を接合する際の動作説明図であって、図8(A)は加圧装置の動作開始直前の状態を示し、図8(B)は通電装置の動作開始直前の状態を示し、図8(C)は接合が完了した状態を示したものである。なお、この図8図7と同様に、接合部分の一部を拡大して示した端面図である。本変形例に係る接合部品1Aは、図8に示すように、第1の部材10Aの脚部先端17Bが、その先端面17Dから回転中心RAに沿った方向に突出する突起(プロジェクション)18を有し、第2の部材20Aの孔部22Aが、底壁25を有する所定の深さD2の有底孔で形成されている点以外は、上述した接合部品1と同様の構成を有していてよい。したがって、接合部品1Aのうち、接合部品1と同様の構成からなる部分については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0069】
突起18は、先端面17Dから回転中心RAに沿った方向に突出するように形成され、第1及び第2の部材の接合時には底壁25に接触し、その端部が塑性流動して接合部JA3を形成するものである。図8に示す突起18は、脚部側テーパ部17Cを延長することで形成されたものが例示されている。また、底壁25は、その表面が略水平面で形成された所定の肉厚を有する壁で形成することができる。この底壁25に肉厚は、第2の部材20Aの上面に第1の部材10Aを載置したときに、突起18の先端が底壁25の上面に当接するか、極めて近接した位置となるように調整される。この調整を行うことで、突起18と底壁25との接合を確実に行うことができる。
【0070】
上述した構成を備える接合部品1Aを製造する製造方法について、以下に説明する。なお、接合部品1Aの製造方法は、その工程は接合部品1の製造方法と同様であるので、以下の説明においては図6図8を参照して説明を行うものとする。
【0071】
初めに、製造装置2内に第1の部材10A及び第2の部材20Aを提供する(ステップS1)。詳しくは、第2の電極40の上面に第2の部材20Aを載置して固定した後、この固定された第2の部材20Aの上面側に、第1の部材10Aを、その脚部先端17Bが第2の部材20Aの孔部22Aに位置合わせされた状態で載置することで、第1及び第2の部材10A、20Aを製造装置2内に配置する(図8(A)参照)。次に、加圧装置50を動作させて第1の電極30の下方向への移動を開始する(ステップS2)。第1の電極30の移動が開始してから所定時間が経過すると、第1の電極30の押圧面PS1が、複数の脚部12の被押圧面PS2に接触する(図8(B)参照)。
【0072】
第1の電極30の押圧面PS1と第1の部材10Aの被押圧面PS2とが接触すると(ステップS3でYes)、加圧装置50による、第1の部材10A及び第2の部材20Aの少なくとも一方の移動が開始される。そして、この加圧装置50の動作を継続したまま、すなわち、加圧装置50による移動と並行して、通電装置60を動作させ、第1及び第2の電極30、40間への電流の供給を開始する(ステップS4)。これにより、第1の部材10Aと第2の部材20Aの接合面、すなわち脚部先端17Bと孔部22Aの接触部分に加圧力の印加と電流の供給とが行われる。第1及び第2の電極30、40間への電流の供給が開始された後、加圧装置50による加圧力の印加が継続されると、脚部先端17Bの孔部22A内への挿入(圧入)が進行する。脚部先端17Bが孔部22Aへ挿入されると、先ず脚部先端17Bの側面部分が孔部22Aの内壁面に接触して塑性流動することで第1の接合部JA2の生成が始まり、次いで、突起18の先端が底壁25の表面に接触して塑性流動することで第2の接合部JA3の生成が始まる。そして、脚部先端17Bの挿入深さが規定の挿入深さL2に到達すると(ステップS5でYes)、加圧装置50による移動と通電装置60による通電とに基づく脚部先端17Bと孔部22Aとを接合する工程を完了する(ステップS6)。
【0073】
本変形例においても、孔部22Aの深さD2が、この規定の挿入深さL2以下、言い換えれば孔部の深さD2が規定の挿入深さL2と同一か、それよりも短く設定されていることは、特に留意すべき事項である。規定の挿入深さL2が孔部22Aの深さD2以上(つまり、L2≧D2)であることで、接合時に突起18の先端を底壁25の表面に接触させることができ、図8(C)に示すように、第2の接合部JA3を第1の接合部JA2とは別に形成することができる。これにより、本変形例の接合部品1Aの第1の接合部JA2の面積は、例えば上述した接合部JA1の面積と比較すると小さいが、第2の接合部JA3が別途形成されることにより、広い接合面積を確保することができる。
【0074】
図9は、本開示の第1の実施の形態の他の変形例に係る接合部品を示した要部拡大図である。なお、この図9図8(A)と同様の状態を示したものである。本変形例に係る接合部品の第1の部材10Bは、図8に示した一の変形例と同様に、脚部先端17Eの先端面17Dから回転中心RAに沿った方向に突出する突起18Aを有している。しかし、この突起18Aは、一の変形例に示された突起18と異なり、その基端部の回転中心RAに交差する方向における回転中心RAに近い側の面から回転中心RAに遠い側の面までの長さが、先端面17Dにおける同様の位置の長さより小さく設定されている。
【0075】
突起18Aの基端部を上述のように設定することにより、寸法出しが容易になる。なお、突起の形状は上述した2つの形状等には限定されない。具体的には、先端面17Dに互いに平行に複数個配設されてもよいし、あるいは先端面17D上にスポット的に複数個配設されるようにしてもよい。
【0076】
さらに、孔部22Aを、上述した孔部22と同様に、脚部12の数に合わせて複数個設けることに代えて、回転中心RAを中心とする一のリング状の孔で構成することもできる。孔部22Aを一のリング状の孔で構成すると、第1の部材10A、10Bと第2の部材20Aを製造する際の位置合わせの自由度が高くなると共に、第2の部材20Aの製造時に垂下部17の延在角度W12を考慮する必要がなくなる。これにより、第1の部材10A、10B及び第2の部材20Aの製造時の歩留まりをさらに向上できる。また、孔部22Aがリング状の第2の部材20Aには、例えば垂下部17の延在角度W12のみが異なる複数の第1の部材を接合することができるため、部品の共通化も実現できる。
【0077】
<第2の実施の形態>
上述の第1の実施の形態においては、孔部22、22Aの深さが、脚部先端17A、17Bの挿入深さ以下のものについて説明を行ったが、本開示はこのような寸法にも限定されない。これを踏まえて、以下に本開示の第2の実施の形態を説明する。なお、第2の実施の形態に係る接合部品1Bは、第2の部材20Bの形状を除き、上述した第1の実施の形態に係る接合部品1と同様のものを採用することができる。具体的には、第1の部材の形状等は上述した接合部品1の第1の部材10と同様であってよい。そこで、以下には第2の実施の形態に係る接合部品1Bの各種構成のうち、第1の実施の形態に係る接合部品1と異なる部分についてのみ説明を行い、第1の実施の形態に係る接合部品1と共通する部分については同一の符号を付すと共に上述の説明を援用するものとしてその説明を省略する。
【0078】
図10は、本開示の第2の実施の形態に係る接合部品の第2の部材の一例を示したものであって、図10(A)は平面図、図10(B)は図10(A)に示すC-C線に沿って切断した断面図である。本実施の形態に係る接合部品1B(図11参照)の第2の部材20Bは、図10に示すように、第2の板状部21の、回転中心RAから放射方向に所定距離離れた位置に、回転中心RAを中心とした円環状のリング孔22Bが設けられている。このリング孔22Bは、図10(B)に示すように、第2の板状部21の表面21Fから所定の深さD3だけ進んだ位置に底壁25Aが設けられた有底孔で構成することができる。このリング孔22Bの、回転中心RAに交差する方向、より詳しくは第2の板状部21の延在方向における回転中心RAに近い側の面から回転中心RAに遠い側の面までの長さ(以下、この長さを「リング孔の幅」ともいう)W31は、脚部先端17Aの幅W11よりも小さい。リング孔の幅W31と脚部先端17Aの幅W11とがこのような寸法に調整されることにより、リング孔22Bに脚部先端17Aを加圧挿入することで、回転中心RAに近い側の面と回転中心RAに遠い側の面の2面を固相接合することが可能となる。
【0079】
本実施の形態に係る接合部品1Bは、第1の部材10と第2の部材20Bとが固相接合されて形成される。具体的には、複数本の脚部12の脚部先端17Aがリング孔22Bに圧入されることで、脚部先端17Aの側面の少なくとも一部とリング孔22Bの外側壁面及び内側壁面の少なくとも一部とが固相接合されたものであってよい。これにより、第1の部材10と第2の部材20Bの間の複数の接合面を同時に接合することが可能となり、複数の接合面の接合タイミングが異なることに起因して生じる変形等を抑制できる。そして、前述の変形を抑制することで寸法調整のための仕上げ加工を別途行う必要がなくなり、製造工程を簡略化できる。また、接合部分の接合タイミングが同じになるため、接合箇所の金属が固まる際の収縮力が各接合箇所に実質的に同じタイミングで発生するようになり、接合後の部品における各部材の平行度の悪化が抑制されることが期待できる。
【0080】
また、本実施の形態に係る接合部品1Bは、上述したリング孔22Bを採用したことにより、第1の部材10の脚部12の延在角度W12や本数を考慮することなく第2の部材20Bを製造することができるため、その製造が容易になる。また、この第2の部材20Bに接合される第1の部材10は、その脚部12の延在角度W12及び本数については何ら制約されないから、例えば脚部の本数の異なる複数種類の第1の部材10を接合でき、部品の共通化が可能となる。さらに、第1の部材10と第2の部材20Bの接合時における円周方向の位置合わせの自由度が高いため、第1の部材10及び第2の部材20Bを製造する際の歩留まりが向上する。
【0081】
次に、本実施の形態に係る接合部品1Bの製造方法について、以下に簡単に説明を行う。なお、接合部品1Bを製造するための装置としては、上述した製造装置2を利用することが可能である。また、接合部品1Bの製造方法は、その工程は接合部品1の製造方法と同様であるので、以下の説明においては図6図11を主に参照して説明を行うものとする。
【0082】
図11は、本開示の第2の実施の形態に係る接合部品の第1の部材と第2の部材を接合する際の動作説明図であって、図11(A)は加圧装置の動作開始直前の状態を示し、図11(B)は通電装置の動作開始直前の状態を示し、図11(C)は接合が完了した状態を示したものである。なお、この図11図7及び図8と同様に、接合部分の一部を拡大して示した端面図である。本実施の形態に係る接合部品1Bを製造する場合、先ず、製造装置2内に第1の部材10及び第2の部材20Bを提供する(ステップS1)。詳しくは、第2の電極40の上面に第2の部材20Bを載置して固定した後、この固定された第2の部材20Bの上面側に、第1の部材10を、その脚部先端17Aが第2の部材20Aのリング孔22Bに位置合わせされた状態で載置することで、第1及び第2の部材10、20Bを製造装置2内に配置する(図11(A)参照)。次に、加圧装置50を動作させて第1の電極30の下方向への移動を開始する(ステップS2)。第1の電極30の移動が開始してから所定時間が経過すると、第1の電極30の押圧面PS1が、複数の脚部12の被押圧面PS2に接触する(図11(B)参照)。
【0083】
第1の電極30の押圧面PS1と第1の部材10の被押圧面PS2とが接触すると(ステップS3でYes)、加圧装置50による、第1の部材10A及び第2の部材20Aの少なくとも一方の移動が開始される。そして、この加圧装置50の動作を継続したまま、すなわち、加圧装置50による移動と並行して、通電装置60を動作させ、第1及び第2の電極30、40間への電流の供給を開始する(ステップS4)。これにより、第1の部材10と第2の部材20Bの接合面、すなわち脚部先端17Aとリング孔22Bの接触部分に加圧力の印加と電流の供給とが行われる。第1及び第2の電極30、40間への電流の供給が開始された後、加圧装置50による加圧力の印加が継続されると、脚部先端17Aのリング孔22B内への挿入(圧入)が進行する。脚部先端17Aがリング孔22Bへ挿入されると、脚部先端17Aの側面部分がリング孔22Bの外側壁面及び内側壁面に接触して塑性流動することで接合部JA4の生成が始まる。そして、脚部先端17Aの挿入深さが規定の挿入深さL3に到達すると(ステップS5でYes)、加圧装置50による移動と通電装置60による通電とに基づく脚部先端17Aとリング孔22Bとを接合する工程を完了する(ステップS6)。
【0084】
本実施の形態においては、上述した通り、リング孔22Bの深さD3を、脚部先端17Aの挿入深さL3以下とする必要はない。特に、本実施の形態に係るリング孔22Bは有底孔で形成したものを例示しているから、リング孔22Bの深さD3は脚部先端17Aの挿入深さL3以上とするとよい。
【0085】
本実施の形態に係る接合部品の製造方法においても、上述した通り、複数の接合箇所を同時に、且つその接合面として回転中心RAに近い側の面と回転中心RAに遠い側の面の少なくとも2箇所の接合を行うことができる。これにより、部材の接合時に生じる変形や部材間の平行度の悪化を抑制することができる。また、本製造方法で製造される接合部品1Bにあっては、複数の脚部先端17Aが一のリング孔22Bに挿入され接合されるため、各部材の製造時の位置合わせが容易になる。
【0086】
上述した各実施の形態に係る接合部品の製造方法においては、第1の部材及び第2の部材が製造装置内に提供される際、第1の部材を第2の電極に固定された第2の部材の上面側に載置するものを説示したが、本開示はこれに限定されない。具体的には、製造装置内に提供される第1の部材を、第1の電極に一時的に取り付ける形態で提供されてもよい。この場合には、製造装置内の第1の電極に、第1の部材を一時的に保持するための、例えば吸引装置や膨張可能なバルーンを用いた把持手段といった図示しない周知の保持装置が設けられているとよい。
【0087】
本開示は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本開示の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。そして、それらはすべて、本開示の技術思想に含まれるものである。
【符号の説明】
【0088】
1、1A、1B 接合部品
2 製造装置
10、10A、10B 第1の部材
11 第1の板状部
12 脚部
16、16A 屈曲部
17 垂下部
17A、17B、17E 脚部先端
17C 脚部側テーパ部
17D 先端面
18、18A 突起
20、20A、20B 第2の部材
21 第2の板状部
22、22A 孔部
22B リング孔
22C 孔部側テーパ部
30、30A、30B 第1の電極
31 接触突起
40 第2の電極
50 加圧装置
60 通電装置
D1、D2、D3 孔部の深さ
L1、L2、L3 脚部先端の挿入深さ
W11 脚部先端の幅
W21 孔部の幅
W31 リング孔の幅
RA 回転中心
PS1 押圧面
PS2 被押圧面
JA1、JA4 接合部
JA2 第1の接合部
JA3 第2の接合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11