(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179257
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】燃焼システムおよび排ガス処理ユニット
(51)【国際特許分類】
F23J 15/00 20060101AFI20231212BHJP
B01D 53/22 20060101ALI20231212BHJP
B01D 69/00 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
F23J15/00 Z
B01D53/22
B01D69/00 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092471
(22)【出願日】2022-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【弁理士】
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【弁理士】
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】泉澤 由弥
(72)【発明者】
【氏名】今坂 怜史
(72)【発明者】
【氏名】来田 康司
(72)【発明者】
【氏名】古林 通孝
【テーマコード(参考)】
3K070
4D006
【Fターム(参考)】
3K070DA01
3K070DA81
4D006GA41
4D006HA01
4D006HA21
4D006HA41
4D006HA61
4D006JA25A
4D006KA01
4D006KA71
4D006KB19
4D006KB30
4D006MA01
4D006MA02
4D006MA03
4D006MA06
4D006MA18
4D006MC03
4D006MC08
4D006MC09
4D006MC77
4D006PA01
4D006PA02
4D006PB19
4D006PB64
4D006PB65
(57)【要約】
【課題】燃焼システムにおいて、被処理ガスに含有されるCO
2を容易かつ効率的に分離する。
【解決手段】燃焼システムであるごみ焼却設備1は、燃焼室11にて燃料を燃焼することにより水蒸気を生成するボイラ41と、ボイラ41から水蒸気が供給されるタービン42と、CO
2キャリアを含む分離膜を有し、分離膜により隔てられる第1空間および第2空間のうち、第1空間にCO
2を含有する被処理ガスが供給され、第2空間にタービン42から排出される水蒸気が供給され、被処理ガスに含まれるCO
2を第1空間から第2空間に移動させる分離膜モジュール32とを備える。これにより、被処理ガスに含有されるCO
2を容易かつ効率的に分離することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼システムであって、
燃焼室にて燃料を燃焼することにより水蒸気を生成するボイラと、
前記ボイラから前記水蒸気が供給されるタービンと、
二酸化炭素キャリアを含む分離膜を有し、前記分離膜により隔てられる第1空間および第2空間のうち、前記第1空間に二酸化炭素を含有する被処理ガスが供給され、前記第2空間に前記タービンから排出される前記水蒸気が供給され、前記被処理ガスに含まれる二酸化炭素を前記第1空間から前記第2空間に移動させる分離膜モジュールと、
を備えることを特徴とする燃焼システム。
【請求項2】
請求項1に記載の燃焼システムであって、
二酸化炭素を含有する前記被処理ガスが、前記燃焼室から排出される排ガス、高炉の炉頂から排出される炉頂ガス、大気中の空気、または、水素もしくは炭化水素を主成分とする混合ガスを含むことを特徴とする燃焼システム。
【請求項3】
請求項1に記載の燃焼システムであって、
前記被処理ガスに水を含む液体を供給することにより、前記被処理ガスの温度を低下させるガス冷却部をさらに備えることを特徴とする燃焼システム。
【請求項4】
請求項3に記載の燃焼システムであって、
前記被処理ガスが、前記燃焼室から排出される排ガスを含み、
前記ガス冷却部が、前記燃焼室と前記分離膜モジュールとの間の前記排ガスの経路に設けられ、
前記液体が薬剤を含み、前記ガス冷却部において前記排ガスから所定成分が除去されることを特徴とする燃焼システム。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1つに記載の燃焼システムであって、
前記分離膜モジュールの前記第2空間から排出される二酸化炭素含有水蒸気を復水することにより、水と二酸化炭素とを分離する復水器をさらに備えることを特徴とする燃焼システム。
【請求項6】
請求項5に記載の燃焼システムであって、
前記タービンから排出され、前記分離膜モジュールの前記第2空間を経由しない水蒸気を復水するもう1つの復水器をさらに備えることを特徴とする燃焼システム。
【請求項7】
請求項1ないし4のいずれか1つに記載の燃焼システムであって、
前記分離膜モジュールの前記第2空間から排出される二酸化炭素含有水蒸気から水を分離するもう1つの分離膜モジュールをさらに備えることを特徴とする燃焼システム。
【請求項8】
請求項1ないし4のいずれか1つに記載の燃焼システムであって、
前記分離膜モジュールの前記第2空間から排出される二酸化炭素含有水蒸気を利用して所定の生成物を生成する二酸化炭素利用装置をさらに備えることを特徴とする燃焼システム。
【請求項9】
請求項1ないし4のいずれか1つに記載の燃焼システムであって、
前記燃料が廃棄物であり、前記被処理ガスが、前記燃焼室から排出される排ガスを含むことを特徴とする燃焼システム。
【請求項10】
排ガス処理ユニットであって、
排ガスに水および薬剤を含む液体を供給して前記排ガスから所定成分を除去するとともに、前記排ガスの温度を低下させる湿式洗煙塔と、
二酸化炭素キャリアを含む分離膜を有し、前記分離膜により隔てられる第1空間および第2空間のうち、前記第1空間に前記湿式洗煙塔を通過した前記排ガスが供給され、前記第2空間に水蒸気が供給され、前記排ガスに含まれる二酸化炭素を前記第1空間から前記第2空間に移動させる分離膜モジュールと、
を備えることを特徴とする排ガス処理ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼システムおよび排ガス処理ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CO2(二酸化炭素)を発生する様々な施設において、CO2回収の需要が高まっており、分離膜を用いたCO2の分離回収が注目されている。例えば、特許文献1の燃焼システムでは、分離膜である促進輸送膜によって隔てられた第1処理室および第2処理室のうち、第1処理室にメタンガスを含む被処理ガスが供給され、第2処理室に水蒸気を含むスイープガスが供給される。これにより、被処理ガス中のCO2が選択的に第2処理室へと透過する。特許文献1における上記水蒸気は、第1処理室を通過したガスから除去されたものである、または、第1処理室を通過したガスに含まれるメタンガスの燃焼排ガスを用いて生成される。
【0003】
特許文献2では、混合ガス流を促進輸送膜の一方の面に沿って通過させ、水蒸気を膜のもう一方の面に沿って通過させることにより、混合ガス流からCO2を除去する手法が開示されている。当該水蒸気は、内燃機関から発生した排ガスを冷却する作用、または、内燃機関の冷却液の作用によって生成される。特許文献3の装置は、第一空間に流入するCO2含有ガスに含まれるCO2を分離膜によって選択的に第二空間に透過させるように構成されたCO2分離器と、水タンクと、水タンクにおける水面よりも上の空間と第二空間とを連通させる水蒸気供給流路と、第二空間を減圧するポンプとを有する。ポンプの減圧により水タンク内部の水の蒸発が促進され、水蒸気が第二空間に供給される。
【0004】
なお、特許文献4では、ボイラおよび蒸気タービンを備えた発電プラントから排出される被処理気体からCO2を回収する方法が開示されている。当該方法では、CO2吸着材を用いて被処理気体からCO2を吸着する吸着工程と、CO2を吸着したCO2吸着材から脱離用水蒸気を用いてCO2を脱離させる脱離工程とが行われる。脱離用水蒸気は、蒸気タービン出口から排出される出口蒸気の一部を圧縮して得られる過熱蒸気から調製される飽和蒸気である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6966993号公報
【特許文献2】特表2015-536814号公報
【特許文献3】特開2021-159813号公報
【特許文献4】特許第5812694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ボイラおよびタービンを有する燃焼システムにおいて、排ガス等、CO2を含有する被処理ガスから分離膜を用いてCO2を分離する場合に、特許文献1ないし3の手法を適用することが考えられる。しかしながら、特許文献1ないし3の手法では、分離膜に供給する水蒸気を生成するための、追加の装置やエネルギーが必要となる。したがって、燃焼システムにおいて、このような追加の装置やエネルギーを要することなく、CO2を容易かつ効率的に分離する手法が求められている。また、被処理ガスが排ガスである場合に、排ガスに含有されるCO2の分離を適切に行う手法も求められている。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、燃焼システムにおいて、被処理ガスに含有されるCO2を容易かつ効率的に分離することを目的とし、排ガス処理において、排ガスに含有されるCO2の分離を適切に行うことも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、燃焼システムであって、燃焼室にて燃料を燃焼することにより水蒸気を生成するボイラと、前記ボイラから前記水蒸気が供給されるタービンと、二酸化炭素キャリアを含む分離膜を有し、前記分離膜により隔てられる第1空間および第2空間のうち、前記第1空間に二酸化炭素を含有する被処理ガスが供給され、前記第2空間に前記タービンから排出される前記水蒸気が供給され、前記被処理ガスに含まれる二酸化炭素を前記第1空間から前記第2空間に移動させる分離膜モジュールとを備える。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の燃焼システムであって、二酸化炭素を含有する前記被処理ガスが、前記燃焼室から排出される排ガス、高炉の炉頂から排出される炉頂ガス、大気中の空気、または、水素もしくは炭化水素を主成分とする混合ガスを含む。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の燃焼システムであって(請求項1または2に記載の燃焼システムであってもよい。)、前記被処理ガスに水を含む液体を供給することにより、前記被処理ガスの温度を低下させるガス冷却部をさらに備える。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の燃焼システムであって、前記被処理ガスが、前記燃焼室から排出される排ガスを含み、前記ガス冷却部が、前記燃焼室と前記分離膜モジュールとの間の前記排ガスの経路に設けられ、前記液体が薬剤を含み、前記ガス冷却部において前記排ガスから所定成分が除去される。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の燃焼システムであって、前記分離膜モジュールの前記第2空間から排出される二酸化炭素含有水蒸気を復水することにより、水と二酸化炭素とを分離する復水器をさらに備える。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の燃焼システムであって、前記タービンから排出され、前記分離膜モジュールの前記第2空間を経由しない水蒸気を復水するもう1つの復水器をさらに備える。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の燃焼システムであって(請求項1ないし6のいずれか1つに記載の燃焼システムであってもよい。)、前記分離膜モジュールの前記第2空間から排出される二酸化炭素含有水蒸気から水を分離するもう1つの分離膜モジュールをさらに備える。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の燃焼システムであって(請求項1ないし7のいずれか1つに記載の燃焼システムであってもよい。)、前記分離膜モジュールの前記第2空間から排出される二酸化炭素含有水蒸気を利用して所定の生成物を生成する二酸化炭素利用装置をさらに備える。
【0016】
請求項9に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の燃焼システムであって(請求項1ないし8のいずれか1つに記載の燃焼システムであってもよい。)、前記燃料が廃棄物であり、前記被処理ガスが、前記燃焼室から排出される排ガスを含む。
【0017】
請求項10に記載の発明は、排ガス処理ユニットであって、排ガスに水および薬剤を含む液体を供給して前記排ガスから所定成分を除去するとともに、前記排ガスの温度を低下させる湿式洗煙塔と、二酸化炭素キャリアを含む分離膜を有し、前記分離膜により隔てられる第1空間および第2空間のうち、前記第1空間に前記湿式洗煙塔を通過した前記排ガスが供給され、前記第2空間に水蒸気が供給され、前記排ガスに含まれる二酸化炭素を前記第1空間から前記第2空間に移動させる分離膜モジュールとを備える。
【発明の効果】
【0018】
請求項1ないし9の発明では、燃焼システムにおいて、被処理ガスに含有されるCO2を容易かつ効率的に分離することができる。請求項10の発明では、排ガス処理において、排ガスに含有されるCO2の分離を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施形態に係るごみ焼却設備の構成を示すブロック図である。
【
図2】湿式洗煙塔および分離膜モジュールを示す断面図である。
【
図3】第1比較例のごみ焼却設備の構成を示すブロック図である。
【
図4】第2実施形態に係るごみ焼却設備の構成を示すブロック図である。
【
図5】第3実施形態に係るごみ焼却設備の構成を示すブロック図である。
【
図6】第4実施形態に係るごみ焼却設備の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るごみ焼却設備1の構成を示すブロック図である。ごみ焼却設備1は、廃棄物であるごみを焼却する廃棄物焼却設備であり、ごみを燃料として燃焼してエネルギーに変換する燃焼システムでもある。ごみ焼却設備1は、燃焼室11と、排ガス流路21と、エコノマイザ22と、集じん器23と、湿式洗煙塔31と、分離膜モジュール32と、脱硝装置24と、煙突25とを備える。燃焼室11は、焼却炉であり、図示省略のごみピットから投入されるごみを燃焼(焼却)する。排ガス流路21は、燃焼室11から排出される排ガスが流れる煙道である。
図1の例では、排ガス流路21は、燃焼室11から煙突25に至る流路である。エコノマイザ22、集じん器23、湿式洗煙塔31、分離膜モジュール32および脱硝装置24は、排ガス流路21に設けられ、排ガスの流れ方向における上流側から下流側に向かって(すなわち、燃焼室11から煙突25に向かって)順に配置される。
図1では、複数の太線の矢印にて排ガス流路21を示し、燃焼室11とエコノマイザ22との間の矢印のみに排ガス流路を示す符号21を付している。
【0021】
エコノマイザ22は、後述のボイラ41に供給される水を排ガスとの熱交換により加熱する。集じん器23は、いわゆるバグフィルタであり、排ガスに含まれる飛灰をろ布により捕集する。集じん器23の上流側において、粉末状の排ガス処理薬剤が排ガスに供給され、集じん器23において飛灰と共に当該排ガス処理薬剤が捕集されてもよい。排ガス処理薬剤は、硫黄酸化物、塩化水素、ダイオキシン類、水銀化合物等の除去に利用される。集じん器23を通過した排ガスは湿式洗煙塔31に流入する。
【0022】
図2は、湿式洗煙塔31および分離膜モジュール32を示す断面図である。湿式洗煙塔31の内部には、例えば、少なくとも1つ(
図2では、複数)の噴霧部311と、充填層312とが設けられる。噴霧部311は、所定の薬剤および水を含む液体を噴霧する。当該薬剤は、例えば、苛性ソーダ等のアルカリ薬剤である。充填層312には、所定の充填材が充填される。充填材間の隙間には、当該液体が流れ込む。
図2の例では、排ガスが湿式洗煙塔31の下部から内部に流入し、上方に向かって流れる。湿式洗煙塔31内では、排ガスが当該液体の噴霧を受けるとともに、充填材間の隙間を通過する。これにより、排ガスの温度が、例えば50℃~70℃に低下するとともに、排ガスに含まれる硫黄酸化物、塩化水素等の所定成分が除去される。湿式洗煙塔31の上部に到達した排ガスは、分離膜モジュール32に排出される。湿式洗煙塔31では、後述の分離膜322におけるCO
2(二酸化炭素)の分離の阻害物質を除去することが可能である。
【0023】
分離膜モジュール32は、例えば、外筒321と、分離膜322とを備える。外筒321は、例えば、有蓋および有底の筒状形状を有し、
図2の上下方向に延びる。分離膜322は、上下方向に延びる筒状形状を有し、外筒321の内部に収容される。分離膜モジュール32は、分離膜322の内部空間である第1空間326と、分離膜322の外周面と外筒321の内周面との間の空間である第2空間327とを有する。第1空間326および第2空間327は、分離膜322により隔てられる。分離膜322は、例えば、有機高分子膜であり、水分存在下で稼働する。分離膜322は、アミン種等のCO
2キャリアを含み、CO
2を選択的に透過する促進輸送膜である。分離膜322は、水分存在下で稼働するものであれば、高分子膜以外の膜であってよい。CO
2キャリアは、アルカリ種等、アミン種以外の物質であってよい。分離膜322が、筒状の多孔質支持体の表面に設けられ、外筒321内に配置されてもよい。分離膜322は、平膜型、管状型、中空糸型、スパイラル型等であってもよい。また、湿式洗煙塔31に対して、複数の分離膜モジュール32が直列または並列に設けられてもよい。
【0024】
図2の例では、湿式洗煙塔31から排出された排ガスは、分離膜モジュール32の下端の流入口から第1空間326に流入し、上方に向かって、すなわち、湿式洗煙塔31内での流れ方向と同じ方向に流れる。当該排ガスは、湿式洗煙塔31を通過することにより、水蒸気を多く含んでおり、水分がほぼ飽和状態である。また、後述するように、第2空間327には、CO
2をほとんど含まない水蒸気がスイープガスとして供給される。当該水蒸気は、例えば、分離膜モジュール32の上端の流入口から第2空間327に流入し、下方に向かって流れる。
【0025】
ここで、促進輸送膜である分離膜322では、CO2の透過速度を高くするために、常時、十分な量の水を保持する必要がある。既述のように、第1空間326および第2空間327における水分濃度(湿度)が高いことにより、分離膜322では、十分な量の水を保持した状態が維持される。また、第2空間327に流入する水蒸気は、CO2をほとんど含まず、第2空間327のCO2の分圧は、第1空間326のCO2の分圧よりも十分に小さい。その結果、第1空間326では、排ガスに含まれるCO2と分離膜322のCO2キャリアとが反応し、分離膜322へのCO2の収着および拡散が生じる。また、第2空間327では、分離膜322におけるCO2の放散(脱離)が生じ、第2空間327を流れる水蒸気にCO2が混合される。一例では、分離膜322において下式の反応が生じる。
【0026】
【0027】
以上のように、分離膜モジュール32は、排ガスを被処理ガスとして、排ガスに含まれるCO
2を第1空間326から第2空間327に移動させ、排ガスからCO
2を分離(除去)する。ごみ焼却設備1では、湿式洗煙塔31および分離膜モジュール32により、排ガスに含まれる所定成分の除去およびCO
2の分離を行う排ガス処理ユニット3が構成される。CO
2除去後の排ガスは、分離膜モジュール32の上端の流出口から第1空間326の外部に排出され、脱硝装置24(
図1参照)に導かれる。第2空間327においてCO
2が混合された水蒸気(以下、「CO
2含有水蒸気」ともいう。)は、分離膜モジュール32の下端近傍の流出口から第2空間327の外部に排出される。分離膜モジュール32から排出されたCO
2含有水蒸気については後述する。
【0028】
排ガス処理ユニット3では、排ガスの流れ方向において、分離膜モジュール32が湿式洗煙塔31の下流側に配置されるのであるならば、湿式洗煙塔31の下方に分離膜モジュール32が配置されてよく、湿式洗煙塔31と分離膜モジュール32とが略水平方向に並んで配置されてもよい。また、分離膜モジュール32の第1空間326における排ガスの流れ方向と、第2空間327における水蒸気の流れ方向は、同じであっても、逆向きであってもよい。また、両者は、交差するような流れ方向であってもよい。
【0029】
図1の脱硝装置24は、内部に脱硝触媒が設けられた脱硝塔を有し、排ガスに含まれる窒素酸化物等を除去する。脱硝装置24では、必要に応じて排ガスが再加熱されてもよい。脱硝装置24を通過した排ガスは、煙突25から外部に排出される。
【0030】
ごみ焼却設備1は、ボイラ41と、タービン(蒸気タービン)42と、復水器43と、復水タンク44と、脱気器45とをさらに備える。ボイラ41は、ボイラ管群である排熱回収部411を有する。排熱回収部411では、燃焼室11にて発生する排ガスを熱源として高温かつ高圧の水蒸気が生成される。このように、ボイラ41では、燃焼室11にてごみを燃焼することにより水蒸気が生成される。高圧の水蒸気はタービン42に供給される。後述するように、ごみ焼却設備1では、ボイラ41、タービン42、分離膜モジュール32、復水器43、復水タンク44および脱気器45の順に水(水蒸気)が循環しており、当該水の循環経路を、複数の破線の矢印にて示している。
【0031】
タービン42では、高圧の水蒸気を利用して発電が行われる。タービン42での使用済みの水蒸気は、排出水蒸気としてタービン42から排出される。排出水蒸気は、圧力が低下した低温かつ低圧の水蒸気である。排出水蒸気の温度は、例えば100℃以下であり、本処理例では、50℃~70℃である。本実施の形態では、タービン42からの排出水蒸気は、加熱および加圧されることなく、そのままの状態で、
図2の分離膜モジュール32の第2空間327にスイープガスとして供給される。排出水蒸気は、加熱、冷却、加圧または減圧されて分離膜モジュール32に供給されてもよい。
【0032】
CO
2含有水蒸気は、復水器43に流入する。復水器43では、冷却によりCO
2含有水蒸気に含まれる水が凝縮する(すなわち、復水される)。換言すると、CO
2含有水蒸気から水が除去され、濃縮されたCO
2ガスが得られる。復水器43には、真空ポンプ等を有するガス抽出器(空気抽出器)が設けられており、CO
2ガスはガス抽出器により抽出可能である。凝縮した水(復水)は、復水タンク44に送られ、貯留される。濃縮されたCO
2ガスは、CO
2貯留タンク51に貯留される。CO
2ガスは、後述の二酸化炭素利用装置56(
図6参照)においてメタンの生成等に利用されてもよい(以下同様)。復水タンク44内の水(液体)は、脱気器45により脱気された後、エコノマイザ22にて排ガスとの熱交換により加熱される。加熱後の水は、排熱回収部411に供給され、高圧の水蒸気が生成される。
【0033】
図3は、第1比較例のごみ焼却設備9の構成を示すブロック図である。第1比較例のごみ焼却設備9では、
図1の分離膜モジュール32に代えて、CO
2回収部92が設けられる。CO
2回収部92は、化学吸収法によりCO
2を回収するものであり、吸収塔と、再生塔とを備える。吸収塔では、例えば、アミンおよび水を含む液体が排ガス中に噴霧され、CO
2が当該液体に吸収される。すなわち、排ガスからCO
2が除去される。CO
2を吸収した液体は、再生塔に送られて加熱され、CO
2が取り出されて回収される。CO
2回収部92を通過した排ガスは、脱硝装置24を介して煙突25から外部に排出される。
【0034】
ところで、湿式洗煙塔31から排出された排ガスは、高温であり、化学吸収法によりCO
2を回収するには、40℃程度まで排ガスを冷却する必要がある。したがって、
図3の第1比較例のごみ焼却設備9では、湿式洗煙塔31とCO
2回収部92との間で、ガス冷却部91により排ガスを冷却する必要があり(循環水冷却設備を付加した湿式洗煙塔31により冷却してもよい。)、CO
2の回収に係る処理が非効率となる。吸着法によりCO
2を回収することも考えられるが、この場合、吸着剤の再生処理が必要となり、同様に、CO
2の回収に係る処理が非効率となる。また、第1比較例のごみ焼却設備9では、タービン42から排出される低圧の排出水蒸気は、復水器43に直接流入して復水される。すなわち、排出水蒸気はいずれの用途にも利用されず、復水される。なお、ごみ焼却設備9の復水器43では、排出水蒸気に混合する空気等は大気に放出される。
【0035】
次に、分離膜モジュールにおいて、促進輸送膜ではなく、分子篩作用によりCO2の分離を行う分子篩膜(例えば、ゼオライト膜等)を用いる第2比較例について述べる。分子篩膜では、膜の両側に差圧(駆動力)を与えることにより、CO2を選択的に、かつ、連続的に透過させることが可能であるが、燃焼排ガスにおいては、排ガスの圧力はあまり高くないため、CO2を効率よく分離することができない。したがって、排ガスの圧力を高くする圧縮機や、分子篩膜の透過側を減圧する真空ポンプが必要となる。また、水分の存在下ではCO2が透過しにくくなるため、排ガスを除湿する機構も必要となる。
【0036】
一方、
図1のごみ焼却設備1では、CO
2キャリアを含む分離膜322を有する分離膜モジュール32が設けられる。分離膜322により隔てられる第1空間326および第2空間327のうち、第1空間326には、CO
2を含有する排ガスが供給され、第2空間327には、タービン42から排出される水蒸気が供給される。これにより、分離膜モジュール32では、排ガスに含まれるCO
2を第1空間326から第2空間327に移動させ、排ガスからCO
2を分離することが可能となる。このように、ごみ焼却設備1では、第1比較例におけるガス冷却部91を用いることなく、また、第1比較例において利用されない、タービン42から排出される水蒸気(すなわち、排出水蒸気)を活用して、排ガスに含有されるCO
2を容易かつ効率的に分離することができる。また、第2比較例における圧縮機または真空ポンプも不要であり、排ガスを除湿する機構も不要となるため、省エネルギーを実現するとともに、ごみ焼却設備1の製造コストを削減することも可能である。なお、ごみ焼却設備1の設計によっては、排出水蒸気が、タービン42から排出される抽気蒸気を含んでもよい。
【0037】
好ましくは、ごみ焼却設備1が、燃焼室11と分離膜モジュール32との間の排ガスの経路に設けられる湿式洗煙塔31を備える。湿式洗煙塔31はガス冷却部として、水を含む液体を排ガスに供給することにより、排ガスの温度を低下させる。これにより、高温の排ガスにより分離膜322にダメージが生じることを防止または抑制するとともに、排ガス中の水分量を増大して、分離膜322においてCO2を効率よく分離することが可能となる。より好ましくは、上記液体が薬剤を含むことにより、ガス冷却部(湿式洗煙塔31)において、排ガスの温度を低下させつつ排ガスから所定成分を適切に除去することができる。その結果、当該成分により分離膜322におけるCO2の分離が阻害されることを防止または抑制することができる。
【0038】
好ましくは、タービン42駆動用の水の循環経路に復水器43が設けられ、当該復水器43が、分離膜モジュール32の第2空間327から排出されるCO2含有水蒸気を復水することにより、水とCO2とが分離される。これにより、CO2含有水蒸気に含まれるCO2を容易に回収することができる。
【0039】
図1の排ガス処理ユニット3は、排ガスに水および薬剤を含む液体を供給して排ガスから所定成分を除去するとともに、排ガスの温度を低下させる上記湿式洗煙塔31と、CO
2キャリアを含む分離膜322を有し、排ガスに含まれるCO
2を分離する上記分離膜モジュール32とを備える。これにより、高温の排ガスによる分離膜322へのダメージ、および、排ガス中の当該成分によるCO
2分離の阻害を防止または抑制するとともに、排ガス中の水分量を容易に増大することができる。その結果、排ガスに含有されるCO
2の分離を適切に行うことができる。
【0040】
(第2実施形態)
図4は、本発明の第2実施形態に係るごみ焼却設備1の構成を示すブロック図である。
図4のごみ焼却設備1では、
図1のごみ焼却設備1と比較して、CO
2回収用復水器52が追加される。他の構成は
図1と同様であり、同じ構成に同じ符号を付す。
【0041】
図4のごみ焼却設備1では、タービン42から排出される一部の排出水蒸気が分離膜モジュール32の第2空間327(
図2参照)に供給され、残りの排出水蒸気が復水器43に流入する。第2空間327では、排出水蒸気にCO
2が混合され、CO
2含有水蒸気が第2空間327から排出される。CO
2含有水蒸気は、CO
2回収用復水器52に流入する。CO
2回収用復水器52では、CO
2含有水蒸気に含まれる水が冷却により凝縮し、濃縮されたCO
2ガスが得られる。凝縮した水(復水)は、外部に排水される。当該水が、復水タンク44に送られてもよい。濃縮されたCO
2ガスは、CO
2貯留タンク51に貯留される。タービン42から復水器43に流入する排出水蒸気は復水され、排出水蒸気に混合する空気等は大気に放出される。
【0042】
以上のように、
図4のごみ焼却設備1では、復水器43と、CO
2回収用復水器52とが設けられる。CO
2回収用復水器52では、分離膜モジュール32の第2空間327から排出されるCO
2含有水蒸気が復水される。復水器43では、タービン42から排出され、分離膜モジュール32の第2空間327を経由しない水蒸気が復水される。このように、CO
2回収専用の復水器(CO
2回収用復水器52)を設けることにより、CO
2含有水蒸気に含まれるCO
2を容易に回収することができる。また、ボイラ・タービンに使用する水に排ガス成分が影響することを防ぐことができる。
【0043】
(第3実施形態)
図5は、本発明の第3実施形態に係るごみ焼却設備1の構成を示すブロック図である。
図5のごみ焼却設備1では、
図1のごみ焼却設備1と比較して、水分離膜モジュール53が追加される。他の構成は
図1と同様であり、同じ構成に同じ符号を付す。
【0044】
図5のごみ焼却設備1では、
図4のごみ焼却設備1と同様に、タービン42から排出される一部の排出水蒸気が分離膜モジュール32の第2空間327に供給され、残りの排出水蒸気が復水器43に流入する。第2空間327では、排出水蒸気にCO
2が混合され、CO
2含有水蒸気が第2空間327から排出される。CO
2含有水蒸気は、水分離膜モジュール53に流入する。水分離膜モジュール53は、例えば親水性の水分離膜を有する。当該水分離膜では、CO
2含有水蒸気に含まれる水蒸気が分離され、濃縮されたCO
2ガスが得られる。分離された水蒸気は、復水器43に流入し、復水される。濃縮されたCO
2ガスは、CO
2貯留タンク51に貯留される。
【0045】
以上のように、
図5のごみ焼却設備1では、分離膜モジュール32の第2空間327から排出されるCO
2含有水蒸気から水を分離するもう1つの分離膜モジュール(水分離膜モジュール53)が設けられる。これにより、CO
2含有水蒸気から高濃度のCO
2を容易に回収することができる。また、ボイラ・タービン系の蒸気を失うことなく運転することができる。
【0046】
(第4実施形態)
図6は、本発明の第4実施形態に係るごみ焼却設備1の構成を示すブロック図である。
図6のごみ焼却設備1では、
図4のごみ焼却設備1におけるCO
2回収用復水器52に代えて、水素ガス混合器54が設けられる。他の構成は
図4と同様であり、同じ構成に同じ符号を付す。
【0047】
水素ガス混合器54には、分離膜モジュール32からCO2含有水蒸気が流入する。水素ガス混合器54では、水素ガスがCO2含有水蒸気に混合され、CO2含有水蒸気が常圧化される。また、水素ガス混合器54では、CO2含有水蒸気に含まれる水が凝縮する。水素およびCO2を含むガスは、メタンガス生成部55に送られ、メタネーションによりメタンガスが生成される。このように、水素ガス混合器54およびメタンガス生成部55は、CO2含有水蒸気を利用してメタンガスを生成する二酸化炭素利用装置56である。水素ガス混合器54において凝縮した水(復水)は、外部に排水される。当該水が、復水タンク44に送られてもよい。二酸化炭素利用装置56では、メタネーション以外の処理が行われてよく、メタンガス以外の生成物が生成されてよい。
【0048】
以上のように、
図6のごみ焼却設備1では、分離膜モジュール32の第2空間327から排出されるCO
2含有水蒸気を利用して所定の生成物を生成する二酸化炭素利用装置56が設けられる。これにより、排ガスに含まれるCO
2を効率よく利用することが可能となる。
【0049】
上記ごみ焼却設備1および排ガス処理ユニット3では様々な変形が可能である。
【0050】
上記ごみ焼却設備1では、ボイラ41、タービン42および分離膜モジュール32を主たる構成として燃焼システムが実現されるが、当該燃焼システムは、火力発電等、廃棄物の焼却以外の用途に用いられてもよい。燃焼室11にて燃焼される燃料は、廃棄物以外に、化石燃料、カーボンニュートラル燃料(CN燃料)等であってもよい。CO2が分離される被処理ガスは、燃焼室11から排出される排ガス以外のガスであってよく、外部から供給されるガスを含む、2種類以上のガスであってもよい。例えば、CO2を含有する被処理ガスが、高炉の炉頂から排出される炉頂ガス、大気中の空気(DAC:Direct Air Capture)、または、水素もしくは炭化水素を主成分とする混合ガス(シフト反応ガス、バイオガス等)を含んでもよい。いずれの場合も、上記燃焼システムでは、被処理ガスに含有されるCO2を容易かつ効率的に分離することが可能である。一方、燃焼システムの好ましい態様は、ごみ焼却設備1であり、この場合、燃焼室11にて燃焼される燃料が廃棄物であり、被処理ガスが、燃焼室11から排出される排ガスを含む。
【0051】
ごみ焼却設備1では、湿式洗煙塔31が省略され、排ガスに水を含む液体(アルカリ薬剤を含まなくてよい。)を噴霧する冷却塔がガス冷却部として設けられてもよい。被処理ガスが排ガス以外である場合に、当該被処理ガスに水を含む液体を供給することにより、当該被処理ガスの温度を低下させるガス冷却部が設けられてもよい。被処理ガスの温度によっては、ガス冷却部が省略されてもよい。
【0052】
分離膜モジュール32の第2空間327から排出されるCO2含有水蒸気は、必ずしも復水される必要はなく、例えば、二酸化炭素利用装置56においてCO2含有水蒸気のまま利用されてもよい。
【0053】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0054】
1 ごみ焼却設備
3 排ガス処理ユニット
11 燃焼室
31 湿式洗煙塔
32 分離膜モジュール
41 ボイラ
42 タービン
43 復水器
52 CO2回収用復水器
53 水分離膜モジュール
56 二酸化炭素利用装置
322 分離膜
326 第1空間
327 第2空間