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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179258
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】コイル部品およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/29 20060101AFI20231212BHJP
   H01F 27/30 20060101ALI20231212BHJP
   H01F 41/04 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
H01F27/29 123
H01F27/29 G
H01F27/29 P
H01F27/30 101A
H01F41/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092475
(22)【出願日】2022-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】孝山 康太
【テーマコード(参考)】
5E062
5E070
【Fターム(参考)】
5E062FG11
5E070AB01
5E070BA05
5E070EA01
5E070EA06
(57)【要約】
【課題】ワイヤと端子電極の接合強度を向上できるコイル部品を提供する。
【解決手段】コイル部品は、巻芯部、該巻芯部の第1端に設けられた第1鍔部、および、該巻芯部の第2端に設けられた第2鍔部を含むコアと、前記第1鍔部に設けられた第1端子電極と、前記第2鍔部に設けられた第2端子電極と、前記巻芯部に巻回され、前記第1端子電極に接続された第1端部および前記第2端子電極に接続された第2端部を有するワイヤとを備え、
前記第1端子電極は、前記第1鍔部の少なくとも第1面上に設けられ、前記ワイヤの前記第1端部は、前記第1端部の一部が露出するように前記第1鍔部の前記第1面上の前記第1端子電極に埋め込まれ、前記第1端子電極は、前記第1端部が埋め込まれた金属層と、前記金属層と前記第1端部の間の少なくとも一部に存在する合金層とを有し、前記合金層は、前記第1端部に含まれる金属元素と前記金属層に含まれる金属元素との合金を含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻芯部、該巻芯部の第1端に設けられた第1鍔部、および、該巻芯部の第2端に設けられた第2鍔部を含むコアと、
前記第1鍔部に設けられた第1端子電極と、
前記第2鍔部に設けられた第2端子電極と、
前記巻芯部に巻回され、前記第1端子電極に接続された第1端部および前記第2端子電極に接続された第2端部を有するワイヤと
を備え、
前記第1端子電極は、前記第1鍔部の少なくとも第1面上に設けられ、
前記ワイヤの前記第1端部は、前記第1端部の一部が露出するように前記第1鍔部の前記第1面上の前記第1端子電極に埋め込まれ、
前記第1端子電極は、前記第1端部が埋め込まれた金属層と、前記金属層と前記第1端部の間の少なくとも一部に存在する合金層とを有し、
前記合金層は、前記第1端部に含まれる金属元素と前記金属層に含まれる金属元素との合金を含む、コイル部品。
【請求項2】
前記ワイヤの前記第1端部は、前記第1面に対向する第1主面と、前記第1主面と反対側に位置する第2主面とを含み、
前記ワイヤの前記第1端部の延在する方向に直交する断面において、前記第1主面の幅方向の寸法は、前記第2主面の幅方向の寸法よりも小さい、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記第1鍔部の前記第1面は、実装側を向く面であり、
前記ワイヤの前記第1端部は、前記第1面に対向する第1主面と、前記第1主面と反対側に位置する第2主面とを含み、
前記第1端子電極の外表面は、前記第1面に沿って延在する平坦領域と、前記平坦領域と前記ワイヤの前記第1端部の間に延在するフィレット領域とを含み、
前記フィレット領域における前記ワイヤの前記第1端部に接続される部分は、前記ワイヤの前記第1端部の前記第2主面と同一面に位置する、請求項1または2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記第1鍔部の前記第1面は、凹部を有し、
前記第1面に直交する方向からみて、前記ワイヤの前記第1端部の少なくとも一部は、前記凹部に重なる、請求項1または2に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記ワイヤの前記第1端部の少なくとも一部は、前記凹部内に位置する、請求項4に記載のコイル部品。
【請求項6】
前記第1鍔部の前記第1面は、実装側を向く面であり、
前記第1端子電極の外表面は、前記第1面に沿って延在する平坦領域と、前記平坦領域と前記ワイヤの前記第1端部の間に延在するフィレット領域とを含み、
前記フィレット領域は、前記凹部の外側まで延在している、請求項4に記載のコイル部品。
【請求項7】
前記第1鍔部の前記第1面は、実装側を向く面であり、
前記第1端子電極の外表面は、前記第1面に沿って延在する平坦領域と、前記平坦領域と前記ワイヤの前記第1端部の間に延在するフィレット領域とを含み、
前記ワイヤの前記第1端部の延在する方向に直交する断面において、前記フィレット領域の幅方向の寸法は、前記ワイヤの前記第1端部の高さ方向の寸法よりも大きい、請求項1または2に記載のコイル部品。
【請求項8】
前記ワイヤの前記第1端部は、前記第1面に対向する第1主面と、前記第1主面と反対側に位置する第2主面とを含み、
前記ワイヤの前記第1端部の延在する方向に直交する断面において、前記合金層は、前記ワイヤの前記第1端部の高さ方向の中心線に対して、前記第2主面よりも前記第1主面側に偏在している、請求項1または2に記載のコイル部品。
【請求項9】
コアの巻芯部の第1端の第1鍔部に第1端子電極を設け、前記巻芯部の第2端の第2鍔部に第2端子電極を設ける端子電極形成工程と、
前記コアの前記巻芯部にワイヤを巻回するワイヤ巻回工程と、
前記第1端子電極に前記ワイヤの第1端部を接続し、前記第2端子電極に前記ワイヤの第2端部を接続するワイヤ接続工程と
を備え、
前記ワイヤ接続工程では、
前記ワイヤの前記第1端部を前記第1端子電極上に載置し、ヒータにより前記ワイヤの前記第1端部を前記第1端子電極側に向けて加圧しつつ加熱して、
前記ワイヤの前記第1端部の延在する方向に直交する断面において、前記ワイヤの前記第1端部における前記第1鍔部に対向する第1主面の幅方向の寸法が、前記ワイヤの前記第1端部における前記第1主面と反対側に位置し前記ヒータにより加圧される第2主面の幅方向の寸法よりも小さい状態で、前記ワイヤの前記第1端部を前記第1端子電極の金属層に埋め込んで、前記ワイヤの前記第1端部を前記第1端子電極に熱圧着する、コイル部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コイル部品およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コイル部品としては、特開2017-162897号公報(特許文献1)に記載されたものがある。このコイル部品は、コアと、コアに設けられた端子電極と、コアに巻回され端子電極に接続されたワイヤとを有する。ワイヤの端部は、その一部が露出するように端子電極に埋め込まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-162897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記従来のようなコイル部品を実際に使用しようとすると、ワイヤと端子電極の接合が十分でない問題があることがわかった。
【0005】
そこで、本開示の目的は、ワイヤと端子電極の接合強度を向上したコイル部品およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本開示の一態様であるコイル部品は、
巻芯部、該巻芯部の第1端に設けられた第1鍔部、および、該巻芯部の第2端に設けられた第2鍔部を含むコアと、
前記第1鍔部に設けられた第1端子電極と、
前記第2鍔部に設けられた第2端子電極と、
前記巻芯部に巻回され、前記第1端子電極に接続された第1端部および前記第2端子電極に接続された第2端部を有するワイヤと
を備え、
前記第1端子電極は、前記第1鍔部の少なくとも第1面上に設けられ、
前記ワイヤの前記第1端部は、前記第1端部の一部が露出するように前記第1鍔部の前記第1面上の前記第1端子電極に埋め込まれ、
前記第1端子電極は、前記第1端部が埋め込まれた金属層と、前記金属層と前記第1端部の間の少なくとも一部に存在する合金層とを有し、
前記合金層は、前記第1端部に含まれる金属元素と前記金属層に含まれる金属元素との合金を含む。
【0007】
ここで、第1端部の一部が露出するとは、第1端部の一部が第1端子電極に対して露出していればよく、他の部材が第1端部の一部を覆っていてもよい。
前記態様によれば、第1端子電極は金属層と合金層とを有し、合金層は金属層とワイヤの第1端部の間に存在し、合金層は第1端部に含まれる金属元素と金属層に含まれる金属元素との合金を含む。これにより、ワイヤの第1端部と第1端子電極の金属層との界面は合金化されており、ワイヤと第1端子電極の接合強度を向上できる。
【0008】
好ましくは、コイル部品の一実施形態では、
前記ワイヤの前記第1端部は、前記第1面に対向する第1主面と、前記第1主面と反対側に位置する第2主面とを含み、
前記ワイヤの前記第1端部の延在する方向に直交する断面において、前記第1主面の幅方向の寸法は、前記第2主面の幅方向の寸法よりも小さい。
【0009】
ここで、ワイヤの第1端部の延在する方向に直交する断面とは、ワイヤの第1端部におけるワイヤの中心軸に直交する断面をいう。幅方向の寸法とは、当該断面において、第1面に平行な方向の寸法をいう。
【0010】
前記実施形態によれば、コイル部品の製造において、ヒータを用いてワイヤの第1端部を第1端子電極に熱圧着する際、第1主面の幅方向の寸法は、第2主面の幅方向の寸法よりも小さいので、第2主面に加えられたヒータの熱が、第1主面に集中して伝達される。これにより、ワイヤの第1端部の第1主面を含む近傍と第1端子電極の金属層との界面の合金化を促進することができ、ワイヤと第1端子電極の接合強度をより向上できる。また、第2主面の幅方向の寸法は、第1主面の幅方向の寸法よりも大きいので、ワイヤの第1端部の視認性が向上し、イメージセンサを用いたワイヤの第1端部の位置確認などの検査が容易となる。
【0011】
好ましくは、コイル部品の一実施形態では、
前記第1鍔部の前記第1面は、実装側を向く面であり、
前記ワイヤの前記第1端部は、前記第1面に対向する第1主面と、前記第1主面と反対側に位置する第2主面とを含み、
前記第1端子電極の外表面は、前記第1面に沿って延在する平坦領域と、前記平坦領域と前記ワイヤの前記第1端部の間に延在するフィレット領域とを含み、
前記フィレット領域における前記ワイヤの前記第1端部に接続される部分は、前記ワイヤの前記第1端部の前記第2主面と同一面に位置する。
【0012】
前記実施形態によれば、第1鍔部の第1面側を実装基板に実装する際、ワイヤの第1端部の第2主面と第1端子電極のフィレット領域がコイル部品の実装面に含まれる。このとき、フィレット領域におけるワイヤの第1端部に接続される部分は、ワイヤの第1端部の第2主面と同一面に位置するので、ワイヤの第1端部の第2主面と第1端子電極のフィレット領域との接続箇所を滑らかにできる。つまり、コイル部品の実装面の平坦性を向上でき、コイル部品の実装性が向上する。
【0013】
好ましくは、コイル部品の一実施形態では、
前記第1鍔部の前記第1面は、凹部を有し、
前記第1面に直交する方向からみて、前記ワイヤの前記第1端部の少なくとも一部は、前記凹部に重なる。
【0014】
前記実施形態によれば、第1面に直交する方向からみて、ワイヤの第1端部の少なくとも一部は、凹部に重なるので、凹部上の第1端子電極に対するワイヤの第1端部の位置合わせが容易となる。これにより、ワイヤの第1端子電極への接続が容易となる。
【0015】
好ましくは、コイル部品の一実施形態では、前記ワイヤの前記第1端部の少なくとも一部は、前記凹部内に位置する。
【0016】
前記実施形態によれば、ワイヤの第1端部の少なくとも一部は、凹部内に位置するので、ワイヤの第1端部の凹部上の第1端子電極への位置合わせがより容易となる。これにより、ワイヤの第1端子電極への接続がより容易となる。
【0017】
好ましくは、コイル部品の一実施形態では、
前記第1鍔部の前記第1面は、実装側を向く面であり、
前記第1端子電極の外表面は、前記第1面に沿って延在する平坦領域と、前記平坦領域と前記ワイヤの前記第1端部の間に延在するフィレット領域とを含み、
前記フィレット領域は、前記凹部の外側まで延在している。
【0018】
前記実施形態によれば、フィレット領域は凹部の外側まで延在しているので、フィレット領域の傾斜を緩やかにできる。これにより、第1鍔部の第1面側を実装基板に実装する際、コイル部品の実装面に含まれるフィレット領域の平坦性を向上でき、コイル部品の実装性が向上する。
【0019】
好ましくは、コイル部品の一実施形態では、
前記第1鍔部の前記第1面は、実装側を向く面であり、
前記第1端子電極の外表面は、前記第1面に沿って延在する平坦領域と、前記平坦領域と前記ワイヤの前記第1端部の間に延在するフィレット領域とを含み、
前記ワイヤの前記第1端部の延在する方向に直交する断面において、前記フィレット領域の幅方向の寸法は、前記ワイヤの前記第1端部の高さ方向の寸法よりも大きい。
【0020】
前記実施形態によれば、フィレット領域の幅方向の寸法は、ワイヤの第1端部の高さ方向の寸法よりも大きいので、フィレット領域の傾斜を緩やかにできる。これにより、第1鍔部の第1面側を実装基板に実装する際、コイル部品の実装面に含まれるフィレット領域の平坦性を向上でき、コイル部品の実装性が向上する。
【0021】
好ましくは、コイル部品の一実施形態では、
前記ワイヤの前記第1端部は、前記第1面に対向する第1主面と、前記第1主面と反対側に位置する第2主面とを含み、
前記ワイヤの前記第1端部の延在する方向に直交する断面において、前記合金層は、前記ワイヤの前記第1端部の高さ方向の中心線に対して、前記第2主面よりも前記第1主面側に偏在している。
【0022】
前記実施形態によれば、合金層は、第2主面よりも第1主面側に偏在しているので、ワイヤの第1端部の第1主面側での第1端子電極の金属層との接合強度を向上できる。
【0023】
好ましくは、コイル部品の製造方法の一実施形態では、
コアの巻芯部の第1端の第1鍔部に第1端子電極を設け、前記巻芯部の第2端の第2鍔部に第2端子電極を設ける端子電極形成工程と、
前記コアの前記巻芯部にワイヤを巻回するワイヤ巻回工程と、
前記第1端子電極に前記ワイヤの第1端部を接続し、前記第2端子電極に前記ワイヤの第2端部を接続するワイヤ接続工程と
を備え、
前記ワイヤ接続工程では、
前記ワイヤの前記第1端部を前記第1端子電極上に載置し、ヒータにより前記ワイヤの前記第1端部を前記第1端子電極側に向けて加圧しつつ加熱して、
前記ワイヤの前記第1端部の延在する方向に直交する断面において、前記ワイヤの前記第1端部における前記第1鍔部に対向する第1主面の幅方向の寸法が、前記ワイヤの前記第1端部における前記第1主面と反対側に位置し前記ヒータにより加圧される第2主面の幅方向の寸法よりも小さい状態で、前記ワイヤの前記第1端部を前記第1端子電極の金属層に埋め込んで、前記ワイヤの前記第1端部を前記第1端子電極に熱圧着する。
【0024】
前記実施形態によれば、ヒータを用いてワイヤの第1端部を第1端子電極に熱圧着する際、第1主面の幅方向の寸法は、第2主面の幅方向の寸法よりも小さいので、第2主面に加えられたヒータの熱が、第1主面に集中して伝達される。これにより、ワイヤの第1端部の第1主面を含む近傍と第1端子電極の金属層との界面の合金化を促進することができ、ワイヤと第1端子電極の接合強度をより向上できる。
【発明の効果】
【0025】
本開示の一態様であるコイル部品およびその製造方法によれば、ワイヤと端子電極の接合強度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】コイル部品の第1実施形態を示す側面図である。
図2】コイル部品の底面図である。
図3図2のIII-III断面図である。
図4A】ワイヤ接続工程を説明する断面図である。
図4B】ワイヤ接続工程を説明する断面図である。
図5】コイル部品の第2実施形態を示す底面図である。
図6図5のVI-VI断面図である。
図7】コイル部品の第3実施形態を示す断面図である。
図8】コイル部品の第4実施形態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本開示の一態様であるコイル部品を図示の実施の形態により詳細に説明する。なお、図面は一部模式的なものを含み、実際の寸法や比率を反映していない場合がある。
【0028】
(第1実施形態)
図1は、コイル部品の第1実施形態を示す側面図である。図2は、コイル部品の底面図である。図1図2に示すように、コイル部品1は、コア10と、コア10に設けられた第1端子電極31および第2端子電極32と、コア10に巻回され第1端子電極31および第2端子電極32に電気的に接続されたワイヤ20と、コア10に取り付けられた板部材15とを有する。
【0029】
コア10は、一定方向に延びる形状であってワイヤ20が巻回された巻芯部13と、巻芯部13の延びる方向の第1端131に設けられ、当該方向と直交する方向に張り出す第1鍔部11と、巻芯部13の延びる方向の第2端132に設けられ、当該方向と直交する方向に張り出す第2鍔部12とを有する。巻芯部13の延びる方向は、巻芯部13の軸方向ともいう。コア10の材料としては、例えば、フェライトの焼結体や、磁性粉含有樹脂の成型体などの磁性体が好ましく、アルミナや、樹脂などの非磁性体であってもよい。
【0030】
以下では、コア10の底面を実装基板に実装される面とし、コア10の底面と反対側の面をコア10の天面とする。巻芯部13の軸方向であって第1鍔部11から第2鍔部12に向かう方向をL方向とし、コア10の底面においてL方向と直交する方向をW方向とし、コア10の底面から天面に向かう方向をT方向とする。T方向は、L方向およびW方向に直交する。W,L,Tの順に並べたとき、右手系を構成する。L方向をコア10の長さ方向、W方向をコア10の幅方向、T方向をコア10の高さ方向ともいう。
また、ある要素に対して「上方(above)」には、当該要素とは離れた上方、すなわち当該要素上の他の物体を介した上側の位置や間隔を空けた上側の位置だけではなく、当該要素と接する直上の位置(on)も含む。「当該要素の上方」とは、重力方向に規定される鉛直上方のような絶対的な一方向ではなく、当該要素を基準に、当該要素を境界とする外側と内側とのうち、外側に向かう方向を指す。
【0031】
巻芯部13の軸方向に直交する断面の形状は、四角形状である。なお、巻芯部13の断面形状は、四角形状以外の六角形状などの他の多角形状や、円状、楕円状、これらを適宜組み合わせた形状であってもよい。
【0032】
第1鍔部11は、巻芯部13側を向く内端面111と、内端面111と反対側を向く外端面112と、内端面111と外端面112を連結しかつ実装時において実装基板側に向けられる底面113と、底面113と反対側を向く天面114と、内端面111と外端面112を連結しかつ底面113と天面114を連結する2つの第1側面115および第2側面116とを有する。
【0033】
第2鍔部12は、巻芯部13側を向く内端面121と、内端面121と反対側を向く外端面122と、実装時において実装基板側に向けられる底面123と、底面123と反対側を向く天面124と、内端面121と外端面122を連結しかつ底面123と天面124を連結する2つの第1側面125および第2側面126とを有する。
【0034】
板部材15は、第1鍔部11および第2鍔部12に対して跨るように固定されている。板部材15は、第1鍔部11の天面114と第2鍔部12の天面124とに接着剤により取り付けられる。板部材15の材料は、例えば、コア10と同じである。コア10と板部材15は、ともに磁性体であるので、閉磁路を構成し、インダクタンス値の取得効率が向上する。したがって、磁気効率が上がり、少ないワイヤ数で所望のインダクタンス値が得られる。なお、この実施形態では、コイル部品1は、板部材15を備えているが、板部材15を備えていなくてもよく、または、板部材15の代わりに樹脂部材を用いてもよい。
【0035】
コア10および板部材15を含むコイル部品1の全体のサイズとしては、例えば、長さ方向(L方向)が4.5mmであり、幅方向(W方向)が3.2mmであり、高さ方向(T方向)が3.5mmである。
【0036】
ワイヤ20は、導線と、該導線を被覆する被覆部とを有する。導線は、例えば、銅、銀、金などの金属からなる。被覆部は、ポリウレタンやポリアミドイミドなどの樹脂からなる。ワイヤ20の直径は、例えば、60μm以上かつ180μm以下である。
【0037】
ワイヤ20の第1端部21は、第1端子電極31に電気的に接続され、ワイヤ20の第2端部22は、第2端子電極32に電気的に接続されている。ワイヤ20と第1端子電極31および第2端子電極32とは、熱圧着によって接続される。つまり、第1端部21は、熱圧着により第1端子電極31に接続される部分である。第1端部21の被覆部の少なくとも一部は、熱圧着の際の熱により焼失される。このため、第1端部21は、主に導線から構成される。第1端部21の被覆部は、熱圧着の前に予め剥離されていてもよい。同様に、第2端部22は、熱圧着により第2端子電極32に接続される部分であり、主に導線から構成される。
【0038】
第1端子電極31は、第1鍔部11の少なくとも底面113上に設けられている。具体的に述べると、第1端子電極31は、底面113と、内端面111、外端面112、第1側面115および第2側面116の底面113側の一部分とを覆う。底面113は、特許請求の範囲に記載の「第1鍔部の第1面」に相当する。
【0039】
同様に、第2端子電極32は、第2鍔部12の少なくとも底面123上に設けられている。具体的に述べると、第2端子電極32は、底面123と、内端面121、外端面122、第1側面125および第2側面126の底面123側の一部分とを覆う。
【0040】
コイル部品1は、実装基板に実装される際、第1鍔部11の底面113および第2鍔部12の底面123が実装側を向く。このとき、巻芯部13の軸方向と、実装基板の主面は平行となる。すなわち、コイル部品1は、ワイヤ20の巻回軸が実装基板と平行となる横巻型である。
【0041】
図3は、図2のIII-III断面図である。図3は、ワイヤ20の第1端部21の延在する方向に直交する断面図である。つまり、図3の断面は、ワイヤ20の第1端部21におけるワイヤ20の中心軸に直交する断面である。以下、ワイヤ20の第1端部21と第1端子電極31との接続について説明するが、ワイヤ20の第2端部22と第2端子電極32との接続についても同様である。
【0042】
図2図3に示すように、ワイヤ20の第1端部21は、第1端部21の一部が露出するように第1鍔部11の底面113上の第1端子電極31に埋め込まれている。
【0043】
第1端子電極31は、第1鍔部11の底面113に接触する下地層310と、下地層310に積層された金属層311と、金属層311と第1端部21の間の少なくとも一部に存在する合金層315とを有する。第1端部21は、金属層311に埋め込まれている。
【0044】
下地層310は、例えば、ディップ工法により塗布されたAgガラスペーストなどの導電性ペーストを焼付した焼結体である。下地層310が焼結体である場合、下地層310自体の強度や耐衝撃性を確保できるとともに、下地層310と第1鍔部11との固着力を確保できる。下地層310は、例えば、低電気抵抗に優れるAg層である。
【0045】
金属層311は、第1層311aと第2層311bと第3層311cとを有する。第1層311aと第2層311bと第3層311cとは、下地層310の底面113から上方に順に積層されている。第1層311aと第2層311bと第3層311cとは、それぞれ、めっきにより形成されためっき層である。第1層311aは、例えば、Cuからなり、導電性を有するCu層である。第2層311bは、例えば、Niからなり、耐はんだ食われ性を有するNi層である。第3層311cは、例えば、Snからなり、はんだ濡れ性を有するSn層である。
【0046】
下地層310の厚みは、例えば、5μm以上30μm以下である。第1層311aの厚みは、例えば、1μm以上5μm以下である。第2層311bの厚みは、例えば、1μm以上5μm以下である。第3層311cの厚みは、例えば、5μm以上20μm以下である。
【0047】
合金層315は、ワイヤ20の第1端部21に含まれる金属元素と金属層311に含まれる金属元素との合金を含む。ワイヤ20の第1端部21に含まれる金属元素は、第1端部21の導線に含まれる金属元素である。金属層311に含まれる金属元素は、第2層311bに含まれる金属元素と、第3層311cに含まれる金属元素である。
【0048】
具体的に述べると、ワイヤ20の第1端部21は、第2層311b上に配置され、第3層311cに埋め込まれている。そして、合金層315は、第1端部21と第2層311bの界面と、第1端部21と第3層311cの界面とに位置する。
【0049】
第1端部21と第2層311bの界面に位置する合金層315は、例えば、CuとNiの合金であり、その厚みは、例えば、1μmである。第1端部21と第3層311cの界面に位置する合金層315は、例えば、CuとSnの合金であり、その厚みは、例えば、6μmであり、第2層311bよりも厚い。なお、合金層315、第1層311a、第2層311bおよび第3層311cの厚みに関して、図面は、実際の寸法や比率を反映していない。
【0050】
上記構成によれば、第1端子電極31は金属層311と合金層315とを有し、合金層315は金属層311とワイヤ20の第1端部21の間に存在し、合金層315は第1端部21に含まれる金属元素と金属層311に含まれる金属元素との合金を含む。これにより、ワイヤ20の第1端部21と第1端子電極31の金属層311との界面は合金化されており、つまり、第1端部21の金属元素と第2層311bの金属元素が互いに拡散して合金化され、かつ、第1端部21の金属元素と第3層311cの金属元素が互いに拡散して合金化されており、ワイヤ20と第1端子電極31の接合強度を向上できる。好ましくは、合金層315として、CuとNiの合金と、CuとSnの合金との双方を含むことで、接続強度をより向上できる。なお、金属層311は、第1層311a、第2層311bおよび第3層311cの3つの層に限定されず、当該層の増減は自由である。いずれにしても、ワイヤ20の第1端部21と金属層311との界面に合金層315が形成される。
【0051】
同様に、ワイヤ20の第2端部22は、第2端部22の一部が露出するように第2鍔部12の底面123(第1面)上の第2端子電極32に埋め込まれている。第2端子電極32は、第2端部22が埋め込まれた金属層と、金属層と第2端部22の間の少なくとも一部に存在する合金層とを有する。合金層は、第2端部22に含まれる金属元素と金属層に含まれる金属元素との合金を含む。これにより、ワイヤ20と第2端子電極32の接合強度を向上できる。なお、第1端子電極31および第2端子電極32のうちの少なくとも第1端子電極31に合金層が存在していればよい。
【0052】
図3に示すように、ワイヤ20の第1端部21は、底面113に対向する第1主面21aと、第1主面21aと反対側に位置する第2主面21bと、第1主面21aと第2主面21bを接続する側面21cとを含む。第1主面21aおよび第2主面21bは、互いに平行な平坦面である。側面21cは、第1端部21の外側に向かって突出する凸面である。第1端部21の断面形状は、偏平形状である。
【0053】
ワイヤ20の第1端部21の延在する方向に直交する断面において、第1主面21aの幅方向の寸法(以下、第1主面21aの幅W1という)は、第2主面21bの幅方向の寸法(以下、第2主面21bの幅W2という)よりも小さい。幅方向の寸法とは、当該断面において底面113に平行な方向(W方向)の寸法をいう。
【0054】
例えば、ワイヤ20の第1端部21の延在する方向に直交する断面で、かつ、ワイヤ20の第1端部21の延在する方向の長さの中心を通過する断面において、第1主面21aの幅W1は、180μmであり、第2主面21bの幅W2は、200μmである。また、ワイヤ20の第1端部21の高さ方向の寸法(以下、第1端部21の高さHという)は、15μmである。また、2つの側面21c,21cの間の幅において、最も広い部分は、ワイヤ20の高さHの中心(中心線C)よりも第2主面21b側の高い位置にある。
なお、図5に示すように、第1鍔部11の底面113が凹部117を有し、ワイヤ20の第1端部21が凹部117に重なる場合、コイル部品の底面側からみて、凹部117の延在方向とワイヤ20の第1端部21の延在する方向とは、ほぼ一致しているものとする。このとき、ワイヤ20の第1端部21の延在する方向に直交する断面とは、例えば、凹部117の延在方向の長さの中心を通過する断面とする。図5では、凹部117の延在方向はL方向に一致するが、コイル部品の底面側からみて凹部117の延在方向がL方向に対して傾斜する場合、コイル部品の底面側からみてワイヤ20の第1端部21の延在方向もL方向に対して傾斜しており、このときも、ワイヤ20の第1端部21の延在方向(L方向に対して傾斜する方向)に直交する断面とは、例えば、凹部117の延在方向(L方向に対して傾斜する方向)の長さの中心を通過する断面とする。
【0055】
上記構成によれば、コイル部品1の製造において、ヒータを用いてワイヤ20の第1端部21を第1端子電極31に熱圧着する際、第1主面21aの幅W1は、第2主面21bの幅W2よりも小さいので、第2主面21bに加えられたヒータの熱が、第1主面21aに集中して伝達される。これにより、ワイヤ20の第1端部21の第1主面21aを含む近傍と第1端子電極31の金属層311との界面の合金化を促進することができ、ワイヤ20と第1端子電極31の接合強度をより向上できる。つまり、第1端部21の第1主面21aと第2層311bとの界面の合金化を促進し、第1端部21の側面21cの第1主面21a側と第3層311cとの界面の合金化を促進する。
【0056】
また、第2主面21bの幅W2は、第1主面21aの幅W1よりも大きいので、ワイヤ20の第1端部21の視認性が向上し、イメージセンサを用いたワイヤ20の第1端部21の位置確認などの検査が容易となる。
【0057】
同様に、ワイヤ20の第2端部22は、第2鍔部12の底面123に対向する第1主面と、第1主面と反対側に位置する第2主面とを含み、ワイヤ20の第2端部22の延在する方向に直交する断面において、第1主面の幅方向の寸法は、第2主面の幅方向の寸法よりも小さい。これにより、ワイヤ20の第2端部22の第1主面を含む近傍と第2端子電極32の金属層との界面の合金化を促進することができ、ワイヤ20と第2端子電極32の接合強度をより向上できる。なお、第1端部21および第2端部22のうちの少なくとも第1端部21において、第1主面の幅が第2主面の幅よりも小さければよい。
【0058】
図3に示すように、第1端子電極31の外表面は、平坦領域31aと、平坦領域31aとワイヤ20の第1端部21の間に延在するフィレット領域31bとを含む。平坦領域31aは、底面113に沿って延在する面である。フィレット領域31bは、平坦領域31aからワイヤ20の第1端部21に向かって連続的に高くなるように形成された傾斜面である。フィレット領域31bは、凹曲面を有していてもよい。フィレット領域31bにおけるワイヤ20の第1端部21に接続される部分は、好ましくは、ワイヤ20の第1端部21の第2主面21bと同一面に位置する。
【0059】
上記構成によれば、第1鍔部11の底面113側を実装基板に実装する際、ワイヤ20の第1端部21の第2主面21bと第1端子電極31のフィレット領域31bがコイル部品1の実装面に含まれる。このとき、フィレット領域31bにおけるワイヤ20の第1端部21に接続される部分は、ワイヤ20の第1端部21の第2主面21bと同一面に位置するので、ワイヤ20の第1端部21の第2主面21bと第1端子電極31のフィレット領域31bとの接続箇所を滑らかにできる。つまり、コイル部品1の実装面の平坦性を向上でき、コイル部品1の実装性が向上する。
【0060】
同様に、第2端子電極32の外表面は、底面123に沿って延在する平坦領域と、平坦領域とワイヤ20の第2端部22の間に延在するフィレット領域とを含み、フィレット領域におけるワイヤ20の第2端部22に接続される部分は、好ましくは、ワイヤ20の第2端部22の第2主面と同一面に位置する。これにより、コイル部品1の実装面の平坦性を向上でき、コイル部品1の実装性が向上する。なお、第1端子電極31および第2端子電極32のうちの少なくとも第1端子電極31において、フィレット領域の接続部分が、ワイヤの第2主面と同一面に位置していればよい。
【0061】
図3に示すように、ワイヤ20の第1端部21の延在する方向に直交する断面において、フィレット領域31bの幅方向の寸法(以下、フィレット領域31bの幅W3という)は、好ましくは、ワイヤ20の第1端部21の高さHよりも大きい。
【0062】
上記構成によれば、フィレット領域31bの傾斜を緩やかにできる。これにより、第1鍔部11の底面113側を実装基板に実装する際、コイル部品1の実装面に含まれるフィレット領域31bの平坦性を向上でき、コイル部品1の実装性が向上する。
【0063】
同様に、第2端子電極32の外表面において、フィレット領域の幅は、好ましくは、ワイヤ20の第2端部22の高さよりも大きい。これにより、コイル部品1の実装面の平坦性を向上でき、コイル部品1の実装性が向上する。なお、第1端子電極31および第2端子電極32のうちの少なくとも第1端子電極31において、フィレット領域の幅が、ワイヤ端部の高さよりも大きければよい。
【0064】
図3に示すように、ワイヤ20の第1端部21の延在する方向に直交する断面において、合金層315は、好ましくは、ワイヤ20の第1端部21の高さ方向(T方向)の中心線Cに対して、第2主面21bよりも第1主面21a側に偏在している。第1主面21a側に偏在とは、第1主面21a側に偏って存在していることをいい、合金層315の一部が第2主面21b側に存在していてもよい。
【0065】
上記構成によれば、ワイヤ20の第1端部21の第1主面21a側での第1端子電極31の金属層311との接合強度を向上できる。
【0066】
同様に、第2端子電極32において、合金層は、好ましくは、ワイヤ20の第2端部22の高さ方向の中心線に対して、第2主面よりも第1主面側に偏在している。これにより、ワイヤ20の第2端部22の第1主面側での第2端子電極32の金属層との接合強度を向上できる。なお、第1端子電極31および第2端子電極32のうちの少なくとも第1端子電極31において、合金層は、第2主面よりも第1主面側に偏在していればよい。
【0067】
次に、コイル部品1の製造方法について説明する。
【0068】
図2を参照して、コア10の巻芯部13の第1端131の第1鍔部11に第1端子電極31を設け、巻芯部13の第2端132の第2鍔部12に第2端子電極32を設ける(以下、端子電極形成工程という)。端子電極形成工程の後、コア10の巻芯部13にワイヤ20を巻回する(以下、ワイヤ巻回工程という)。ワイヤ巻回工程の後、第1端子電極31にワイヤ20の第1端部21を接続し、第2端子電極32にワイヤ20の第2端部22を接続する(以下、ワイヤ接続工程という)。
【0069】
ワイヤ接続工程では、図4Aに示すように、ワイヤ20の第1端部21を第1端子電極31上に載置し、ヒータ50の押圧面51によりワイヤ20の第1端部21を第1端子電極31側に向けて加圧しつつ加熱する。すると、図4Bに示すように、ヒータ50の加圧および加熱により、第1端部21および第1端子電極31(金属層311)が溶融し変形して、第1端部21が第1端子電極31に熱圧着される。
【0070】
このとき、ワイヤ20の第1端部21の延在する方向に直交する断面において、ワイヤ20の第1端部21の第1主面21aの幅W1が、ヒータ50により加圧されるワイヤ20の第1端部21の第2主面21bの幅W2よりも小さい状態で、ワイヤ20の第1端部21を第1端子電極31の金属層311に埋め込んで、ワイヤ20の第1端部21を第1端子電極31に熱圧着する。
【0071】
熱圧着の条件としては、例えば、ヒータ50の温度を500℃とし1秒間の加圧を行う。その後加圧しながら、ヒータ50の温度を1秒かけて300℃まで下げ、その後ヒータ50を引き上げる。これにより、ワイヤ20および金属層311に十分に熱が伝わり、ワイヤ20の第1端部21と第1端子電極31の金属層311との間の界面が合金化される。また、ヒータ50による加圧の際、ヒータ50のワイヤ20に対する圧力を徐々に下げるように制御することで、ワイヤ20の第1主面21aの幅W1をワイヤ20の第2主面21bの幅W2よりも小さくすることができる。
【0072】
上記構成によれば、ヒータを用いてワイヤ20の第1端部21を第1端子電極31に熱圧着する際、第1主面21aの幅W1は、第2主面21bの幅W2よりも小さいので、第2主面21bに加えられたヒータ50の熱が、第1主面21aに集中して伝達される。これにより、ワイヤ20の第1端部21の第1主面21aを含む近傍と第1端子電極31の金属層311との界面の合金化を促進することができ、ワイヤ20と第1端子電極31の接合強度をより向上できる。
【0073】
同様に、ワイヤ接続工程では、ワイヤの第2端部を第2端子電極上に載置し、ヒータによりワイヤの第2端部を第2端子電極側に向けて加圧しつつ加熱して、ワイヤの第2端部の延在する方向に直交する断面において、ワイヤの第2端部における第2鍔部に対向する第1主面の幅方向の寸法が、ワイヤの第2端部における第1主面と反対側に位置しヒータにより加圧される第2主面の幅方向の寸法よりも小さい状態で、ワイヤの第2端部を第2端子電極の金属層に埋め込んで、ワイヤの第2端部を第2端子電極に熱圧着する。なお、第1端子電極31および第2端子電極32のうちの少なくとも第1端子電極31において、ワイヤの端部の第1主面の幅が、ワイヤの端部の第2主面の幅よりも小さい状態で、ワイヤの端部を端子電極の金属層に埋め込んで、ワイヤの端部を端子電極に熱圧着すればよい。
【0074】
(第2実施形態)
図5は、コイル部品の第2実施形態を示す底面図である。図6は、図5のVI-VI断面図である。第2実施形態は、第1実施形態とは、第1鍔部および第2鍔部に凹部を設けている点が相違する。この相違する構成を以下に説明する。その他の構成は、第1実施形態と同じ構成であり、その説明を省略する。
【0075】
図5に示すように、第2実施形態のコイル部品1Aでは、第1鍔部11の底面113は、凹部117を有する。底面113に直交する方向からみて、ワイヤ20の第1端部21の少なくとも一部は、凹部117に重なる。
【0076】
凹部117は、L方向に延在している。凹部117は、内端面111、外端面112および底面113に開口している。凹部117の深さは、例えば、外端面112から内端面111に向かって連続的に深くなっている。なお、凹部117の深さは、一定であってもよく、または、外端面112から内端面111に向かって連続的に浅くなっていてもよい。
【0077】
同様に、第2鍔部12の底面123は、凹部127を有する。底面123に直交する方向からみて、ワイヤ20の第2端部22の少なくとも一部は、凹部127に重なる。凹部127は、凹部117と同様の構成である。凹部117と凹部127は、底面123に直交する方向からみて、コイル部品1Aの中心に対して点対称の位置にある。
【0078】
上記構成によれば、底面113に直交する方向からみて、ワイヤ20の第1端部21の少なくとも一部は、凹部117に重なるので、凹部117上の第1端子電極31に対するワイヤ20の第1端部21の位置合わせが容易となる。つまり、第1端子電極31は、凹部117に追従した凹形状となるため、ワイヤ20の第1端部21を第1端子電極31の凹形状部分に容易に位置決めすることができる。これにより、ワイヤ20の第1端子電極31への接続が容易となる。同様に、底面123に直交する方向からみて、ワイヤ20の第2端部22の少なくとも一部は、凹部127に重なるので、ワイヤ20の第2端子電極32への接続が容易となる。なお、第1鍔部11および第2鍔部12のうちの少なくとも第1鍔部11に凹部を設けていればよい。
【0079】
図6に示すように、第1端子電極31において、フィレット領域31bは、好ましくは、ワイヤ20の第1端部21の延在する方向に直交する断面において、凹部117の外側まで延在している。上記構成によれば、フィレット領域31bの傾斜を緩やかにできる。これにより、第1鍔部11の底面113側を実装基板に実装する際、コイル部品1Aの実装面に含まれるフィレット領域31bの平坦性を向上でき、コイル部品1Aの実装性が向上する。
【0080】
同様に、第2端子電極32において、フィレット領域は、好ましくは、ワイヤ20の第2端部22の延在する方向に直交する断面において、凹部127の外側まで延在している。これによれば、フィレット領域の傾斜を緩やかにでき、コイル部品1Aの実装面の平坦性を向上でき、コイル部品1Aの実装性が向上する。なお、第1端子電極31および第2端子電極32のうちの少なくとも第1端子電極31において、フィレット領域が凹部の外側まで延在していればよい。
【0081】
図6に示すように、ワイヤ20の第1端部21は、凹部117の上方外側に位置する。つまり、ワイヤ20の第1端部21の第1主面21aは、凹部117よりも上方に位置する。具体的に述べると、ワイヤ20の第1端部21の第1主面21aは、凹部117の開口端上の第2層311bよりも下方に位置し、ワイヤ20の第1端部21の第2主面21bは、凹部117の開口端上の第2層311bよりも上方に位置する。ここで、凹部117の深さを深くし、または、第1端子電極31の厚みを薄くすることで、ワイヤ20の第1端部21の少なくとも一部が、凹部117内に位置するようにしてもよい。つまり、ワイヤ20の第1端部21の第1主面21aが、凹部117の開口端よりも下方に位置する。これによれば、ワイヤ20の第1端部21の凹部117上の第1端子電極31への位置合わせがより容易となる。したがって、ワイヤ20の第1端子電極31への接続がより容易となる。
【0082】
同様に、第2端子電極32において、ワイヤ20の第2端部22の少なくとも一部が、凹部127内に位置するようにしてもよい。これによれば、ワイヤ20の第2端部22の凹部127上の第2端子電極32への位置合わせがより容易となり、ワイヤ20の第2端子電極32への接続がより容易となる。なお、第1端子電極31および第2端子電極32のうちの少なくとも第1端子電極31において、ワイヤの端部の少なくとも一部が、凹部内に位置していればよい。
【0083】
(第3実施形態)
図7は、コイル部品の第3実施形態を示す断面図である。図7は、図3に対応する断面図である。第3実施形態は、第1実施形態とは、第1端子電極の外面の形状が相違する。この相違する構成を以下に説明する。その他の構成は、第1実施形態と同じ構成であり、その説明を省略する。
【0084】
図7に示すように、第3実施形態のコイル部品1Bでは、第1端子電極31の外表面において、フィレット領域31bにおけるワイヤ20の第1端部21に接続される部分は、ワイヤ20の第1端部21の第2主面21bよりも低い位置にある。つまり、フィレット領域31bは、ワイヤ20の第1端部21の側面21cに接続される。
【0085】
上記構成によれば、ワイヤ20の第1端部21の上部が、第1端子電極31の外表面から突出することになる。このため、ワイヤ20の第1端部21の視認性が向上し、イメージセンサを用いたワイヤ20の第1端部21の位置確認などの検査が容易となる。
【0086】
同様に、第2端子電極32の外表面において、フィレット領域におけるワイヤ20の第2端部22に接続される部分は、好ましくは、ワイヤ20の第2端部22の第2主面よりも低い位置にある。これにより、ワイヤ20の第2端部22の視認性が向上し、イメージセンサを用いたワイヤ20の第2端部22の位置確認などの検査が容易となる。なお、第1端子電極31および第2端子電極32のうちの少なくとも第1端子電極31において、フィレット領域の接続部分が、ワイヤの第2主面よりも低い位置にあればよい。
第3実施形態のコイル部品1Bの製造方法としては、第1実施形態と同様に、圧着時の加熱の温度と加圧の圧力変化を調整することで、コイル部品1Bを製造することができる。
【0087】
(第4実施形態)
図8は、コイル部品の第4実施形態を示す側面図である。第4実施形態は、第1実施形態とは、ワイヤの接続位置が相違する。この相違する構成を以下に説明する。その他の構成は、第1実施形態と同じ構成であり、その説明を省略する。図8では、便宜上、第1端子電極31および第2端子電極32をハッチングにて示す。
【0088】
図8に示すように、第4実施形態のコイル部品1Cでは、第1端子電極31は、第1鍔部11の天面114、外端面112および底面113に連続的に設けられている。ワイヤ20の第1端部21は、第1端部21の一部が露出するように第1鍔部11の天面114上の第1端子電極31に埋め込まれている。このとき、天面114は、特許請求の範囲に記載の「第1鍔部の第1面」に相当する。底面113は、実装側を向く面である。
【0089】
同様に、第2端子電極32は、第2鍔部12の天面124、外端面122および底面123に連続的に設けられている。ワイヤ20の第2端部22は、第2端部22の一部が露出するように第2鍔部12の天面124上の第2端子電極32に埋め込まれている。底面123は、実装側を向く面である。
【0090】
上記構成によれば、第1端子電極31および第2端子電極32において、ワイヤ20の接続箇所と実装基板に実装する実装箇所とを異なる箇所とすることができる。したがって、ワイヤ20の接続状態に関わらず、コイル部品1Cを実装箇所にて安定して実装することができる。また、ワイヤ20と第1端子電極31および第2端子電極32とを滑らかにに接続できるため、第1鍔部11の天面114上および第2鍔部12の天面124上に板部材を取り付ける際、板部材の傾きを抑制できる。このとき、板部材はワイヤ20の第1端部21および第2端部22を覆うことになるが、第1端部21は第1端子電極31に対して露出し、第2端部22は第2端子電極32に対して露出している。なお、第1端子電極31および第2端子電極32のうちの少なくとも第1端子電極31において、ワイヤ20の接続箇所と実装基板に実装する実装箇所とを異なる箇所とすればよい。
【0091】
なお、本開示は上述の実施形態に限定されず、本開示の要旨を逸脱しない範囲で設計変更可能である。例えば、第1から第4実施形態のそれぞれの特徴点を様々に組み合わせてもよい。
【0092】
前記実施形態では、ワイヤは1本であり、端子電極は2つであるが、ワイヤおよび端子電極の数量を増加してもよい。
【0093】
前記実施形態では、ワイヤの第1端部を第1鍔部の底面または天面において接続しているが、第1鍔部の内端面、外端面、第1側面または第2側面に接続してもよい。ワイヤの第2端部についても同様である。
【0094】
前記実施形態では、第1鍔部の底面を、実装側を向く面としているが、第1鍔部の底面以外の他の面を、実装側を向く面としてもよい。
【0095】
前記実施形態では、端子電極は、下地層と金属層から構成しているが、下地層を金属端子としてもよい。このとき、Cuなどの金属端子上に金属層をめっき処理により形成し、金属端子をコアに接着剤などを用いて固定する。このように、金属端子を用いることで、耐久性を向上することができる。
【0096】
<1>
巻芯部、該巻芯部の第1端に設けられた第1鍔部、および、該巻芯部の第2端に設けられた第2鍔部を含むコアと、
前記第1鍔部に設けられた第1端子電極と、
前記第2鍔部に設けられた第2端子電極と、
前記巻芯部に巻回され、前記第1端子電極に接続された第1端部および前記第2端子電極に接続された第2端部を有するワイヤと
を備え、
前記第1端子電極は、前記第1鍔部の少なくとも第1面上に設けられ、
前記ワイヤの前記第1端部は、前記第1端部の一部が露出するように前記第1鍔部の前記第1面上の前記第1端子電極に埋め込まれ、
前記第1端子電極は、前記第1端部が埋め込まれた金属層と、前記金属層と前記第1端部の間の少なくとも一部に存在する合金層とを有し、
前記合金層は、前記第1端部に含まれる金属元素と前記金属層に含まれる金属元素との合金を含む、コイル部品。
<2>
前記ワイヤの前記第1端部は、前記第1面に対向する第1主面と、前記第1主面と反対側に位置する第2主面とを含み、
前記ワイヤの前記第1端部の延在する方向に直交する断面において、前記第1主面の幅方向の寸法は、前記第2主面の幅方向の寸法よりも小さい、<1>に記載のコイル部品。
<3>
前記第1鍔部の前記第1面は、実装側を向く面であり、
前記ワイヤの前記第1端部は、前記第1面に対向する第1主面と、前記第1主面と反対側に位置する第2主面とを含み、
前記第1端子電極の外表面は、前記第1面に沿って延在する平坦領域と、前記平坦領域と前記ワイヤの前記第1端部の間に延在するフィレット領域とを含み、
前記フィレット領域における前記ワイヤの前記第1端部に接続される部分は、前記ワイヤの前記第1端部の前記第2主面と同一面に位置する、<1>または<2>に記載のコイル部品。
<4>
前記第1鍔部の前記第1面は、凹部を有し、
前記第1面に直交する方向からみて、前記ワイヤの前記第1端部の少なくとも一部は、前記凹部に重なる、<1>から<3>の何れか一つに記載のコイル部品。
<5>
前記ワイヤの前記第1端部の少なくとも一部は、前記凹部内に位置する、<4>に記載のコイル部品。
<6>
前記第1鍔部の前記第1面は、実装側を向く面であり、
前記第1端子電極の外表面は、前記第1面に沿って延在する平坦領域と、前記平坦領域と前記ワイヤの前記第1端部の間に延在するフィレット領域とを含み、
前記フィレット領域は、前記凹部の外側まで延在している、<4>または<5>に記載のコイル部品。
<7>
前記第1鍔部の前記第1面は、実装側を向く面であり、
前記第1端子電極の外表面は、前記第1面に沿って延在する平坦領域と、前記平坦領域と前記ワイヤの前記第1端部の間に延在するフィレット領域とを含み、
前記ワイヤの前記第1端部の延在する方向に直交する断面において、前記フィレット領域の幅方向の寸法は、前記ワイヤの前記第1端部の高さ方向の寸法よりも大きい、<1>から<6>の何れか一つに記載のコイル部品。
<8>
前記ワイヤの前記第1端部は、前記第1面に対向する第1主面と、前記第1主面と反対側に位置する第2主面とを含み、
前記ワイヤの前記第1端部の延在する方向に直交する断面において、前記合金層は、前記ワイヤの前記第1端部の高さ方向の中心線に対して、前記第2主面よりも前記第1主面側に偏在している、<1>から<7>の何れか一つに記載のコイル部品。
<9>
コアの巻芯部の第1端の第1鍔部に第1端子電極を設け、前記巻芯部の第2端の第2鍔部に第2端子電極を設ける端子電極形成工程と、
前記コアの前記巻芯部にワイヤを巻回するワイヤ巻回工程と、
前記第1端子電極に前記ワイヤの第1端部を接続し、前記第2端子電極に前記ワイヤの第2端部を接続するワイヤ接続工程と
を備え、
前記ワイヤ接続工程では、
前記ワイヤの前記第1端部を前記第1端子電極上に載置し、ヒータにより前記ワイヤの前記第1端部を前記第1端子電極側に向けて加圧しつつ加熱して、
前記ワイヤの前記第1端部の延在する方向に直交する断面において、前記ワイヤの前記第1端部における前記第1鍔部に対向する第1主面の幅方向の寸法が、前記ワイヤの前記第1端部における前記第1主面と反対側に位置し前記ヒータにより加圧される第2主面の幅方向の寸法よりも小さい状態で、前記ワイヤの前記第1端部を前記第1端子電極の金属層に埋め込んで、前記ワイヤの前記第1端部を前記第1端子電極に熱圧着する、コイル部品の製造方法。
【符号の説明】
【0097】
1、1A、1B、1C コイル部品
10 コア
11 第1鍔部
111 内端面
112 外端面
113 底面(第1面)
114 天面
115 第1側面
116 第2側面
117 凹部
12 第2鍔部
121 内端面
122 外端面
123 底面(第1面)
124 天面
125 第1側面
126 第2側面
127 凹部
13 巻芯部
15 板部材
20 ワイヤ
21 第1端部
21a 第1主面
21b 第2主面
21c 側面
22 第2端部
31 第1端子電極
31a 平坦領域
31b フィレット領域
310 下地層
311 金属層
311a 第1層
311b 第2層
311c 第3層
315 合金層
32 第2端子電極
50 ヒータ
C ワイヤの第1端部の高さの中心線
H ワイヤの第1端部の高さ
W1 第1主面の幅
W2 第2主面の幅
W3 フィレット領域の幅
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8