(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179268
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】エネルギープラント制御支援装置、エネルギープラント制御支援方法、及びエネルギープラント制御システム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/00 20060101AFI20231212BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
H02J3/00 170
H02J3/38 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092491
(22)【出願日】2022-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(74)【代理人】
【識別番号】100125151
【弁理士】
【氏名又は名称】新畠 弘之
(72)【発明者】
【氏名】村山 大
(72)【発明者】
【氏名】中井 昭祐
(72)【発明者】
【氏名】杉森 洋一
(72)【発明者】
【氏名】村田 仁
(72)【発明者】
【氏名】大谷 圭子
【テーマコード(参考)】
5G066
【Fターム(参考)】
5G066AA03
5G066AE03
5G066AE09
5G066HB08
5G066JA01
5G066JB06
(57)【要約】
【課題】エネルギープラントの運転計画と、運転結果との乖離を抑制する。
【解決手段】本実施形態によれば、第1処理部は、計画値としての時系列なエネルギーの供給量に基づき、所定の制約条件に従い、エネルギー蓄積装置にエネルギーを供給する機器の計画値としての時系列なエネルギーの供給量を第1設定する。第2処理部は、第1期間よりも短い第2期間に処理を実行する第2処理部であって、計画値としての時系列なエネルギーの供給量と、エネルギー蓄積装置から実際に供給される実測値としての時系列なエネルギーの供給量と、の第1差分に基づき、第1差分を減少させるように、所定のルールに従い機器の計画値としての時系列なエネルギーの供給量を第2設定する。エネルギープラント制御支援装置は、第1設定、及び第2設定の少なくとも一方に関する情報を有する信号を機器の制御装置に供給する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1期間におけるエネルギー蓄積装置からの計画値としての時系列なエネルギーの供給量に基づき、エネルギープラントにおける機器の制御を支援するエネルギープラント制御支援装置であって、
前記計画値としての時系列なエネルギーの供給量に基づき、所定の制約条件に従い、前記エネルギー蓄積装置にエネルギーを供給する前記機器の計画値としての時系列なエネルギーの供給量を第1設定する第1処理部と、
前記第1期間よりも短い第2期間に処理を実行する第2処理部であって、前記計画値としての時系列なエネルギーの供給量と、前記エネルギー蓄積装置から実際に供給される実測値としての時系列なエネルギーの供給量と、の第1差分に基づき、前記第1差分を減少させるように、所定のルールに従い前記機器の計画値としての時系列なエネルギーの供給量を第2設定する第2処理部と、
を備え、
前記第1設定、及び前記第2設定の少なくとも一方に関する情報を有する信号を前記機器の制御装置に供給する、エネルギープラント制御支援装置。
【請求項2】
前記所定の制約条件は、前記第1期間における前記エネルギー蓄積装置からの計画値としての時系列なエネルギーの供給量の総量と、前記第1期間における前記エネルギー蓄積装置にエネルギーを供給する前記機器の計画値としての時系列なエネルギーの供給量の総量と、を近接又は一致させることである、請求項1に記載のエネルギープラント制御支援装置。
【請求項3】
前記エネルギープラントは、前記機器を含め前記エネルギー蓄積装置にエネルギーを供給する複数の機器を有し、
前記第2処理部は、前記所定のルールとして、前記第2設定よりも前の所定の時点において前記計画値としての時系列なエネルギーの供給量よりも前記実測値としての時系列なエネルギーの供給量が多い場合には、前記複数の機器のなかの稼働していない機器のうちの単位時間あたりのコストが最も低い機器を稼働させる、請求項2に記載のエネルギープラント制御支援装置。
【請求項4】
前記第2処理部は、前記所定のルールとして、前記第2設定よりも前の所定の時点において前記計画値としての時系列なエネルギーの供給量よりも前記実測値としての時系列なエネルギーの供給量が少ない場合には、前記複数の機器のなかの稼働している機器のうちの単位時間あたりのコストが最も大きい機器の稼働を停止させる、請求項3に記載のエネルギープラント制御支援装置。
【請求項5】
前記第2処理部は、前記第1差分の値が予め定められた範囲である場合には、前記機器の稼働台数を変更しない、請求項3又は4に記載のエネルギープラント制御支援装置。
【請求項6】
前記第1差分の値に応じて、前記機器の計画値としての時系列なエネルギーの供給量を前記第1処理部に対して再設定させる負荷誤差計算部を更に備える、請求項5に記載のエネルギープラント制御支援装置。
【請求項7】
前記エネルギー蓄積装置の蓄積エネルギーの計画値は、前記エネルギー蓄積装置にエネルギーを供給する前記機器の計画値としての時系列なエネルギーの供給量と、前記エネルギー蓄積装置からの計画値としての時系列なエネルギーの供給量と、の第2差分の積算値であり、
前記エネルギー蓄積装置から供給される測定値に基づき、前記エネルギー蓄積装置に実際に蓄積される実測値の蓄積エネルギーを推定する推定部を更に備え、
前記第2処理部は、前記推定部に推定された実測値の蓄積エネルギーと、前記計画値の蓄積エネルギーと、の第3差分に基づき処理を実行する、請求項6に記載のエネルギープラント制御支援装置。
【請求項8】
前記推定部は、過去の前記エネルギープラントの測定値に基づき前記実測値の蓄積エネルギーを推定する、請求項7に記載のエネルギープラント制御支援装置。
【請求項9】
前記第2処理部は、前記エネルギー蓄積装置から供給される測定値に応じて、前記複数の機器の稼働状態を変更する条件を変える、請求項8に記載のエネルギープラント制御支援装置。
【請求項10】
前記エネルギー蓄積装置は、冷熱蓄熱槽であり、
前記第2処理部は、前記エネルギー蓄積装置から供給される測定温度に応じて、前記複数の機器の稼働状態を変更する条件を変える、請求項9に記載のエネルギープラント制御支援装置。
【請求項11】
前記第2処理部は、前記エネルギー蓄積装置の蓄積エネルギーの計画値と、実績値とに更に基づき、複数の機器の稼働状態を変更する条件を変える、請求項10に記載のエネルギープラント制御支援装置。
【請求項12】
前記エネルギー蓄積装置の蓄積エネルギーの計画値よりも前記実績値が大きくなるに従い、前記複数の機器のなかの稼働数を増加させる温度範囲を狭くする、請求項11に記載のエネルギープラント制御支援装置。
【請求項13】
前記エネルギー蓄積装置の蓄積エネルギーの計画値よりも前記実績値が小さくなるに従い、前記複数の機器のなかの稼働数を減少させる温度範囲を狭くする、請求項12に記載のエネルギープラント制御支援装置。
【請求項14】
第1期間におけるエネルギー蓄積装置からの計画値としての時系列なエネルギーの供給量に基づき、エネルギープラントにおける機器の制御を支援するエネルギープラント制御支援方法であって、
前記計画値としての時系列なエネルギーの供給量に基づき、所定の制約条件に従い、前記エネルギー蓄積装置にエネルギーを供給する前記機器の計画値としての時系列なエネルギーの供給量を第1設定する第1処理工程と、
前記第1期間よりも短い第2期間に処理を実行する第2処理工程であって、前記計画値としての時系列なエネルギーの供給量と、前記エネルギー蓄積装置から実際に供給される実測値としての時系列なエネルギーの供給量と、の第1差分に基づき、前記第1差分を減少させるように、所定のルールに従い前記機器の計画値としての時系列なエネルギーの供給量を第2設定する第2処理工程と、
を備え、
前記第1設定、及び前記第2設定の少なくとも一方に関する情報を有する信号を前記機器の制御装置に供給する、エネルギープラント制御支援方法。
【請求項15】
エネルギープラント制御システムであって、
エネルギープラントと、
エネルギープラント制御支援装置と、を備え
前記エネルギープラントは、
エネルギー蓄積装置と、
冷熱を生成し、前記エネルギー蓄積装置に供給する機器と、
前記機器を制御する制御装置と、を有し、
前記エネルギープラント制御支援装置は、
第1期間における前記エネルギー蓄積装置からの計画値としての時系列なエネルギーの供給量に基づき、前記機器の制御を支援するエネルギープラント制御支援装置であって、
前記計画値としての時系列なエネルギーの供給量に基づき、所定の制約条件に従い、前記エネルギー蓄積装置にエネルギーを供給する前記機器の計画値としての時系列なエネルギーの供給量を第1設定する第1処理部と、
前記第1期間よりも短い第2期間に処理を実行する第2処理部であって、前記計画値としての時系列なエネルギーの供給量と、前記エネルギー蓄積装置から実際に供給される実測値としての時系列なエネルギーの供給量と、の第1差分に基づき、前記第1差分を減少させるように、所定のルールに従い前記機器の計画値としての時系列なエネルギーの供給量を第2設定する第2処理部と、
を備え、
前記第1設定、及び前記第2設定の少なくとも一方に関する情報を有する信号を前記機器の制御装置に供給する、エネルギープラント制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エネルギープラント制御支援装置、エネルギープラント制御支援方法、及びエネルギープラント制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギープラント制御支援装置は、対象のエネルギープラントをより効率的に動作させる運転点を提供するシステムである。このようなエネルギープラント制御支援装置では、運転点の演算には、最適化手法を用いることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4050036号公報
【特許文献2】特開2002-362512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、エネルギープラントの運転計画に最適化手法を用いる際の条件として供給先への計画値としての時系列なエネルギーの供給量などが必要となる。このため、運転計画を立案するには前もって計画値としての時系列なエネルギーの供給量を設定する必要がある。しかしながら、前もって設定した計画値と、実際に供給されるエネルギーの実測値との間にはずれが発生し、運転計画と、エネルギープラントの運転結果に乖離が発生じてしまう。
【0005】
本実施形態は、エネルギープラントの運転計画と、運転結果との乖離を抑制可能なエネルギープラント制御支援装置、エネルギープラント制御支援方法、及びエネルギープラント制御システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態によれば、第1期間におけるエネルギー蓄積装置からの計画値としての時系列なエネルギーの供給量に基づき、エネルギープラントにおける機器の制御を支援するエネルギープラント制御支援装置であって第1処理部と、第2処理部と、を備える。第1処理部は、計画値としての時系列なエネルギーの供給量に基づき、所定の制約条件に従い、エネルギー蓄積装置にエネルギーを供給する機器の計画値としての時系列なエネルギーの供給量を第1設定する。第2処理部は、第1期間よりも短い第2期間に処理を実行する第2処理部であって、計画値としての時系列なエネルギーの供給量と、エネルギー蓄積装置から実際に供給される実測値としての時系列なエネルギーの供給量と、の第1差分に基づき、第1差分を減少させるように、所定のルールに従い機器の計画値としての時系列なエネルギーの供給量を第2設定する。エネルギープラント制御支援装置は、第1設定、及び第2設定の少なくとも一方に関する情報を有する信号を機器の制御装置に供給する。
【発明の効果】
【0007】
本実施形態によれば、エネルギープラントの運転計画と、運転結果の乖離を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】エネルギープラント制御システムの概略的な構成例を示す図。
【
図2】最適化エンジンの詳細な構成例を示すブロック図。
【
図3】最適化演算部が生成した運転計画の例を示す図。
【
図4】ルールベースエンジンの詳細な構成例を示すブロック図。
【
図5】ルースベースエンジンを用いない場合の処理結果を示す図。
【
図6】エネルギープラント制御支援装置の処理タイミングの例を示す図。
【
図7】ルールベースエンジンの概念的な処理例を示す図。
【
図8】複数の機器の合計出力の設定値と、稼働機器の合計出力を示す図。
【
図9】蓄熱放熱量の計画値から実績値を減じた値と稼働数との関係を示す図。
【
図10】ルール演算部のルールにしたがったフローチャート。
【
図12】第2実施形態に係るエネルギープラント制御システムの構成例を示す図。
【
図13】第2実施形態に係る処理タイミングの例を示す図。
【
図14】第3実施形態に係るルールベースエンジンの構成例。
【
図15】第3実施形態に係るルールベースエンジンの処理例を示すフローチャート。
【
図17】機器の稼働状態に応じた稼働数の変更条件例を示す図。
【
図18】第4実施形態に係るルールベースエンジンの処理例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態に係るエネルギープラント制御支援装置、エネルギープラント制御支援方法、及びエネルギープラント制御システムについて、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態は、本発明の実施形態の一例であって、本発明はこれらの実施形態に限定して解釈されるものではない。また、本実施形態で参照する図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号又は類似の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、図面の寸法比率は説明の都合上実際の比率とは異なる場合や、構成の一部が図面から省略される場合がある。
【0010】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態に係るエネルギープラント制御システムの概略的な構成例を示す図である。エネルギープラント制御システム1は、エネルギープラント10と、エネルギープラント制御支援装置20とを備える。エネルギープラント10は、例えば、エネルギーの生成およびエネルギーの蓄積を行うプラントである。より具体的な例として、エネルギープラント10は、熱の生成および蓄熱を行うことが可能なエネルギープラントである。なお、本実施形態では、熱の生成および蓄熱を例に説明するが、これに限定されない。例えばエネルギープラント10は、エネルギーの生成およびエネルギーの蓄積を行うことが可能なプラントであればよく、例えば水素生成プラント、発電プラントなどでもよい。
【0011】
エネルギープラント制御支援装置20は、エネルギープラント10が供給するエネルギーを所定の制約条件で生成させることが可能なシステムである。例えば、この制約条件には、予め決められた第1期間に蓄エネ装置104に供給されるエネルギーと、蓄エネ装置104から負荷106に供給されるエネルギーとを一致させることがある。なお、制約条件は一例であり、これに限定されない。例えば第1期間は、24時間である。
【0012】
図1に示すように、エネルギープラント10は、例えば複数の機器100と、複数の制御装置102と、蓄エネ装置104と、負荷106とを、有する。機器100は、冷熱や温熱を生成する熱源生成装置であり、例えば電気によって冷熱を生成する。
【0013】
制御装置102は、機器100をエネルギープラント制御支援装置20の設定に関する情報を有する設定信号に従い、機器100を制御する装置である。複数の機器100、及び負荷106の状態それぞれは、測定値として観測される。これらの測定値は、エネルギープラント制御支援装置20に供給される。
【0014】
蓄エネ装置104は、例えば冷熱蓄熱槽を備え、冷熱を蓄熱し、負荷106に供給する。負荷106は、例えば冷房などの冷熱プラントである。なお、本実施形態に係る蓄エネ装置104が、エネルギー蓄積装置に対応する。
【0015】
「機器出力」は、機器100の出力であり、機器100から蓄エネ装置104に供給する時系列なエネルギーの供給量に対応する。「蓄エネ放エネ量」は、蓄エネ装置(冷熱蓄熱槽)104の入出力の差分としてあらわされれる。すなわち、この「蓄エネ放エネ量」は、機器100から蓄エネ装置104に供給する時系列なエネルギーの供給量と、蓄エネ装置104から負荷106に供給する時系列なエネルギーの供給量との差分に対応する。
【0016】
「蓄熱量積算値」は、対象時間帯、例えば第1期間の蓄エネ放エネ量を積算したエネルギー量である。冷熱蓄熱槽の場合は冷蓄熱槽の冷媒(一般的には水)の温度から推定することも可能である。すなわち、この「蓄熱量積算値」は、蓄エネ装置104にエネルギーを供給する機器100からの時系列なエネルギーの供給量と、蓄エネ装置104から負荷106に供給される時系列なエネルギーの供給量と、の差分の積算値に対応する。上述のように、負荷106に供給される時系列なエネルギーの供給量と、負荷で消費される時系列な消費エネルギーとは、一致する。
【0017】
エネルギープラント制御支援装置20は、例えば、CPU(Central Processing Unit)を含んで構成される。エネルギープラント制御支援装置20は、例えば、後述する記憶部208(
図2参照)に記憶される所定のプログラムを実行することにより、最適化エンジン202、及びルールベースエンジン204の各処理部を構成することが可能である。
【0018】
最適化エンジン202は、対象のエネルギープラント10をより効率的に動作させる運転点を提供する処理部であり、エネルギープラント10に設定値を出力する。ここでの、より効率的な運転とは、例えば第1期間における蓄エネ装置104からの供給エネルギーの総和と、負荷106の消費エネルギーの総和とを一致させる制約条件下で、蓄エネ装置106に入力するエネルギーをより少ないコストで得ることである。
【0019】
より具体的には、最適化エンジン202は、第1期間における蓄エネ装置104からの計画値としての時系列なエネルギーの供給量の総量と、蓄エネ装置104への複数の機器100の計画値としての時系列なエネルギーの供給量の総量とを、一致させる制約条件下で、複数の機器100の稼働状態を設定する設定値を含む計画値を生成する。なお、本実施形態に係る制約条件は一例であり、これに限定されない。このように、最適化エンジン202は、負荷106に応じて蓄エネ装置104の蓄エネルギーと放エネルギーの計画を立案し、立案した条件に合うように蓄エネ装置104に入力されるエネルギー量を定める運転点の情報を含む計画値をルールベースエンジン204に提供する。なお、最適化エンジン202の詳細は、後述する。
【0020】
ルールベースエンジン204は、最適化エンジン202から出力された計画値とエネルギープラントから伝達された測定値により制御装置の設定値を出力する。このルールベースエンジン204は、最適化エンジン202の第1期間での最適化運転を支援する計画を実行するため、第1期間よりも短い期間である第2期間での設定値を所定のルールに従い生成し、エネルギープラント10に出力する。すなわち、このルールベースエンジン204は、最適化エンジン202の第1期間における全体最適化処理を実行するための設定値を第2期間毎に調整することが可能である。なお、ルールベースエンジン204の詳細も後述する。
【0021】
ここで、
図2及び
図3を用いて、最適化エンジン202の詳細な構成例を説明する。
図2は、最適化エンジン202の詳細な構成例を示すブロック図である。
図2に示すように、最適化エンジン202は、負荷管理部250と、記憶部208と、機器パラメータ管理部210と、機器運用管理部212と、計算条件管理部214と、最適化演算部216と、演算結果管理部218と、を備える。更に記憶部208は、機器パラメータデータベース208aと、機器運用データベース208bと、計算条件データベース208cと、を有する。
【0022】
負荷管理部250は、負荷106での時系列な消費エネルギーを管理する。例えば負荷管理部250は、第1期間内の予め設定されている最低インターバル毎の負荷106での消費エネルギーを管理する。なお、上述したように、負荷106での時系列な消費エネルギーは、蓄エネ装置104からの時系列なエネルギーの供給量に対応する。
【0023】
記憶部208は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。機器パラメータデータベース208aは、エネルギープラント10を構成する複数の機器100の機器パラメータを格納する。また、機器100の性能指標や定格を示すパラメータを機器パラメータと称する。
【0024】
機器運用データベース208bは、複数の機器100の運用を管理するデータが格納する。機器の運用とは、機器の停止期間や部分負荷での稼働条件等を示す。また、機器100の停止期間や部分負荷での稼働条件等の設定を行うパラメータを機器運用パラメータと称する。
【0025】
計算条件データベース208cは、最適化演算部216での計算条件が格納する。また、最適化演算部216での最適化計算の計算時間上限や並列計算の方法などを示すパラメータを計算条件と称する。
【0026】
機器パラメータ管理部210は、機器パラメータデータベース208aのデータを管理する。この機器パラメータ管理部210は、最適化演算部216での計算に必要となる機器パラメータを最適化演算部216に供給する。
【0027】
機器運用管理部212は、機器運用データベース208bのデータを管理する。この機器運用管理部212は、最適化演算部216での計算に必要となる機器運用パラメータを最適化演算部216に供給する。
【0028】
計算条件管理部214は、計算条件データベース208cのデータを管理する。この計算条件管理部214は、最適化演算部216での計算に必要となる計算条件を最適化演算部216に供給する。
【0029】
最適化演算部216は、機器パラメータ管理部210、機器運用管理部212、及び計算条件管理部214それぞれから機器パラメータ、機器運用パラメータ、及び計算条件に関するデータを取得し、エネルギープラントの運転計画を立案する。立案した結果は、演算結果管理部218に伝達される。最適化エンジンの内部演算については、一般的な演算方法などを用いることが可能である(例えば、特許文献2参照)。
【0030】
すなわち、この最適化演算部216は、コストを最小化することを目的関数とし、負荷106に対する需給バランスと、複数の機器100の稼働量と、蓄エネ装置104の蓄熱量積算値を制約条件として内蔵する所定の演算式を演算することにより最適運転点を見出して、運転計画として出力する。
【0031】
図3は、最適化演算部216が生成した運転計画の例を示す図である。
図Aは、複数の機器100の機器出力の供給量L300と、蓄エネ装置104の負荷106への供給量L302を示す図である。横軸は時間を示し、縦軸はエネルギー量(MJ/h)を示す。すなわち、供給量L300が、蓄エネ装置104にエネルギーを供給する機器100の計画値としての時系列なエネルギーの供給量に対応する。また、負荷106への供給量L302が、蓄エネ装置104からの計画値としての時系列なエネルギーの供給量に対応する。
【0032】
図Bは、蓄エネ装置(冷熱蓄熱槽)104の蓄エネ放エネ量を示す図である。横軸は時間を示し、縦軸はエネルギー量(MJ/h)を示す。上述のように、蓄エネ放エネ量L304は蓄エネ装置104の入出力の差分である。すなわち、機器出力の供給量L300と、負荷106への供給量L302の差分が蓄エネ放エネ量L304となる。0より上側が蓄エネ放エネ量L304の蓄積エネルギー量を示し、下側が蓄エネ放エネ量L304の放出エネルギー量を示す。
【0033】
図Cは、蓄熱量積算値L306を示す図である。横軸は時間を示し、縦軸はエネルギー量(MJ/h)を示す。蓄熱量積算値L306は、蓄エネ放エネ量L304を時系列に積算したエネルギー量である。すなわち、蓄熱量積算値L306は、蓄エネ装置104にエネルギーを供給する機器100の計画値としての時系列なエネルギーの供給量L300と、蓄エネ装置104からの計画値としての時系列なエネルギーの供給量L302と、の差分の積算値である。
【0034】
図3のC図に示すように、最適化演算部216は、蓄熱量積算値L306が第1期間の終了時に0となることを制約条件として、目的関数を最小化する。すなわち、最適化演算部216は、第1期間における蓄エネ装置104からの計画値としての時系列なエネルギーの供給量L302の総量と、第1期間における蓄エネ装置104にエネルギーを供給する機器100の計画値としての時系列なエネルギーの供給量L300の総量と、を0に近接又は一致させることを制約条件として、目的関数を最小化する。ここで、近接とは、制約条件を設けない場合の第1期間の終了時における蓄熱量積算値L306よりも、目的値である0に近づくことを意味する。
【0035】
これにより、
図Aに示すように、最適化演算部216は、複数の機器100の機器出力の供給量L300を時系列に計画する。負荷106への供給量L302は、負荷106の時系列な計画値に対応する。B図に示すように、機器出力の供給量L300を時系列に計画することにより、蓄エネ装置104における蓄エネ放エネ量L304の蓄積エネルギー量と、放出エネルギー量とが時系列に計画される。
【0036】
演算結果管理部218は、計画値をルールベースエンジン204に供給する。
図3に示すように、この計画値には、第1期間内の計画値としての複数の機器100の供給量L300、計画値としての供給量L302、計画値としての蓄エネ放エネ量L304、及び計画値としての蓄熱量積算値L306が含まれる。なお、本実施形態では、最適化エンジン202の演算結果管理部218の出力値を計画値と称し、測定値もしくは測定値から計算される値を実績値と称する。また、上述のように、計画値としての供給量L300と、計画値としての供給量L302を用いて、計画値としての蓄エネ放エネ量L304、及び計画値としての蓄熱量積算値L306を演算可能である。
【0037】
ここで、
図4乃至
図8を用いて、ルールベースエンジン204の詳細な構成を説明する。
図4は、ルールベースエンジン204の詳細な構成例を示すブロック図である。
図4に示すように、ルールベースエンジン204は、測定値取得部220と、記憶部221と、機器パラメータ管理部222と、機器運用管理部224と、測定値管理部226と、計画管理部228と、ルール演算部230と、設定値管理部232とを備える。更に記憶部221は、機器パラメータデータベース221aと、機器運用データベース221bと、測定値データベース221cと、を有する。
【0038】
測定値取得部220は、負荷106及び複数の機器100との通信インターフェイスであり、各測定値を取得する。また、測定値取得部220は、各測定値を測定値データベース221cに供給する。
【0039】
記憶部221は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。機器パラメータデータベース221aは、エネルギープラント10を構成する複数の機器100のルールベースエンジン204用の機器パラメータを格納する。また、機器運用データベース208bは、複数の機器100の運用を管理するルールベースエンジン204用のデータを格納する。測定値データベース221cは、測定値取得部220から供給される各測定値を時系列に記憶する。
【0040】
機器パラメータ管理部222は、機器パラメータデータベース221aのデータを管理する。この機器パラメータ管理部222は、ルール演算部230での計算に必要となる機器パラメータをルール演算部230に供給する。
【0041】
機器運用管理部224は、機器運用データベース221bのデータを管理する。この機器運用管理部224は、ルール演算部230での計算に必要となる機器運用パラメータをルール演算部230に供給する。
【0042】
測定値管理部226は、測定値データベース221cのデータを管理する。この測定値管理部226は、最適化演算部216での計算に必要となる測定値データを最適化演算部216に供給する。
【0043】
計画管理部228は、演算結果管理部218(
図3参照)から供給される計画値を管理する。ルール演算部230は、計画値を用いて第2期間である最低インターバル毎の複数の機器100の機器出力の合計量、供給量などを設定する。ルール演算部230の詳細は後述する。
【0044】
図5は、ルースベースエンジン204を用いない場合の運転計画に従った処理結果を示す図である。
図Aは、計画値としての複数の機器100の供給量L300と、計画値としての負荷106への供給量L302と、実績値としての負荷106への供給量L302aと、を示す図である。横軸は時間を示し、縦軸はエネルギー量(MJ/h)を示す。
【0045】
図Bは、実績値としての蓄エネ放エネ量L304aを示す図である。横軸は時間を示し、縦軸はエネルギー量(MJ/h)を示す。上述のように、実績値としての蓄エネ放エネ量L304aは蓄エネ装置104における実績値の入出力の差分である。すなわち、実績値としての蓄エネ放エネ量L304aは、計画値としての複数の機器100の供給量L300と、実績値としての負荷106への供給量L302aと、の差分である。
図Cは、実績値としての蓄熱量積算値L306aを示す図である。横軸は時間を示し、縦軸はエネルギー量(MJ/h)を示す。
【0046】
図5のA図に示すように、ルースベースエンジン204を用いない場合には、計画値の供給量L302と、実績値の供給量L302aと、にぶれが生じる。これは、後述するように計画値の供給量L302が例えば前日22:00に設定された予測であるためである。
【0047】
B図に示すように、実績値の供給量L302aが計画値の供給量L302よりも少ない場合、計画値の供給量L302通りに機器出力を運転すれば、実績値の蓄エネ放エネ量L304aは上振れする。一方で、実績値の供給量L302aが計画値の供給量L302よりも多い場合は、実績値の蓄エネ放エネ量L304aは下振れする。
【0048】
図Cに示すように、実績値としての蓄熱量積算値L306aは、計画値の供給量L302と、実績値の供給量L302aとの間の差分量により、相違してしまう。この例ではプラス側にぶれている。このままであると蓄熱量積算値L306aが0とならずに蓄熱量が残ってしまう。そこで、ルースベースエンジン204は、最適化エンジン202の運転計画に沿ってエネルギープラント10の運転を進めるように、各設定値を第1期間より短い第2期間毎に再設定する。この際にルースベースエンジン204は、所定のルールに従い、例えば複数の機器100のコストを抑えるように各設定値を設定する。これにより、第1期間におけるエネルギープラント10の全体的な最適化運転が実行され、且つ最適化運転にずれが生じても、複数の機器100のコストを抑えるようにエネルギープラント10の運転が実行される。
【0049】
ここで、ルールベースエンジン204の処理タイミングを最適化エンジン202の処理タイミングを含め説明する。
図6は、エネルギープラント制御支援装置20の処理タイミングの例を示す図である。
図6のA図は、最適化エンジン202の処理時間例を示す図である。横軸は時間を示し、縦軸は計算中又は停止中の状態を示す。処理状態L400は、ハイレベルである際に演算中の状態であることを示し、ロウレベルである際に停止中の状態あることを示す。
【0050】
図6のB図は、ルールベースエンジン204の処理時間例を示す図である。横軸は時間を示し、縦軸は計算中又は停止中の状態を示す。処理状態L402は、ハイレベルである際に演算中の状態であることを示し、ロウレベルである際に停止中の状態あることを示す。
【0051】
図Aに示すように、最適化エンジン202は、例えば、22:00より前に翌日計画を立案し、翌日の運転計画値をルールベースエンジン204に出力する。この出力のタイミングは、最適化エンジン202の最適化演算部が動作するたびに行われる。このようにして計算された運転計画値は、ルールベースエンジン204の計画管理部228に一時的に保存される。計画管理部228は、常に最も後から作成された計画をルール演算部230に伝達する。
【0052】
ルール演算部230は、第2時間である最低インターバルT60毎に運転計画値を用いて再演算を繰り返す。
図Bでは、最低インターバルT60の後に演算を行っている例を示すが、これに限定されない。例えばインターバルは、最低インターバルT60以上であれば、一定間隔ではなくてもよい。このように、ルール演算部230は、最適化エンジン202の計画時間である第1時間よりも短い第2時間の間隔で、繰り返し演算処理を行う。
【0053】
ここで、ルールベースエンジン204の概念的な処理例を説明する。
図7は、ルールベースエンジン204の概念的な処理例を示す図である。
図7の
図Aは、最適化エンジン202の計画値の負荷106への供給量L302と、実績値の負荷106への供給量L302aを示す図である。横軸は時間を示し、縦軸はエネルギー量(MJ/h)を示す。最適化エンジン202は、例えば15分毎の負荷106への供給量L302を前日の22:00までに計画している。つまり、最適化エンジン202の計画値が15分単位であり、1日24時間分の計画値は96時間帯から構成される。この場合、第1期間は24時間である。
【0054】
B図は、ルールベースエンジン204が第2期間毎に定周期処理を行っていることを概念的に示す図である。C図は、ルールベースエンジン204が出力する機器出力設定値に対応する複数の機器100の供給量L300bを示す図である。横軸は時間を示し、縦軸はエネルギー量(MJ/h)を示す。
【0055】
図Aに示すように、例えば14:00の計画値であれば、14:15までの供給量L302が計画されている。B図に示すように、ルールベースエンジン204は定周期処理を行う。この場合、例えばC図に示すように、ルールベースエンジン204は、14:10現在に機器出力設定値を出力する。このとき、ルールベースエンジン204は、14:09時点における計画値の供給量L302と、実績値の供給量L302aとの差分に基づき、機器出力設定値を出力している。これにより、
図Cに示すように、実績値の機器出力の供給量L300aは、ルールベースエンジン204が出力する機器出力設定値に近づき、計画値の蓄エネ放エネ量L304と、実績値の蓄エネ放エネ量L304aとの差分が減少する。
【0056】
ここで、
図8乃至
図10を用いて、ルール演算部230のルールの具体的例を説明する。本実施形態のルールは、複数の機器100を稼働させる場合の出力単価を抑制する場合の例である。
【0057】
図8は、複数の機器100の合計出力の設定値と、複数の機器100の稼働機器の合計出力を示す図である。縦軸はエネルギー量(MJ/h)を示す。
【0058】
図9は、蓄熱放熱量の計画値L304から実績値L304aを減じた値と稼働数との関係を示す図である。横軸は、計画値L304から実績値L304aを減じた値D304を示し、縦軸は追加の稼働台数を示す。ルール演算部230は、値D304が、デルタマイナス(Δminus)よりも小さければ稼働台数を1台追加する例を示している。一方で、値D304が、デルタプラス(Δplus)よりも大きければ稼働台数を1台削減する例を示している。このように、本実施形態に係るルール演算部230は、不感帯としてデルタマイナス(Δminus)、及びデルタプラス(Δplus)を設けている。
【0059】
図10は、ルール演算部230のルールにしたがったフローチャートである。
図10に示すように、ルール演算部230は、機器運用データベース208bの情報を用いて、エネルギープラント10の機器100毎の時間あたりの単価を確定する(ステップS100)。時間あたりの単価は変動する場合があるので、機器運用データベース208bは最新のデータに常に更新されている。
【0060】
次に、ルール演算部230は、エネルギープラント10の機器100毎の時間あたりの単価をソート処理して、単価の安い順にソートする(ステップS102)。
【0061】
次に、ルール演算部230は、最も単価の安い機器100を加算する(ステップS104)。最初の加算は0に対して加算する。
【0062】
続けてルール演算部230は、加算した稼働させるべき機器100の合計出力値が、計画値としての供給量L300(
図3、5参照)を超えているか否かを判定する(ステップS106)。ルール演算部230は、越えていないと判定する場合(ステップS106のNo)、ステップS104からの処理を繰り返す。
図8は、3台の機器100を順に加算した際に合計供給量L300を越えている例を示している。
【0063】
一方で、ルール演算部230は、越えている判定する場合(ステップS106のYes)、各機器100の出力合計を計画値としての合計供給量L300と一致するまで低下させる設定を行う。例えば、一番単価の高い機器100の出力を低下させる。
【0064】
続けて、ルール演算部230は、実績値としての蓄エネ放エネ量L304a(
図5参照)が計画値としての蓄エネ放エネ量L304(
図3参照)を越えているか否かを判定する(ステップS108)。
【0065】
ルール演算部230は、実績値としての蓄エネ放エネ量L304aが計画値としての蓄エネ放エネ量L304を越えていると判定する場合(ステップS108のYes)、
図9に示すように、蓄エネ放エネ量L304aから蓄エネ放エネ量L304を減じた値がデルタマイナス(Δminus)よりも大きければ最も単価の高い機器100の稼働を1台停止し(ステップS110)、全体処理を終了する。一方で、ルール演算部230は、実績値としての蓄エネ放エネ量L304aが計画値としての蓄エネ放エネ量L304を越えていないと判定する場合(ステップS108のNo)、
図9に示すように、蓄エネ放エネ量L304から蓄エネ放エネ量L304aを減じた値がデルタプラス(Δplus)よりも大きければ、稼働していない機器のなかで最も単価の安い機器100の稼働を1台追加し(ステップS110)、全体処理を終了する。
【0066】
このように、実績値としての蓄エネ放エネ量L304aと、計画値としての蓄エネ放エネ量L304とに相違が生じても、デルタマイナス(Δminus)、デルタプラス(Δplus)を越えないと、機器100の稼働状態を変更しないようにする。これにより、実績値と計画値との相違量がデルタマイナス(Δminus)、デルタプラス(Δplus)より小さな場合には、機器の稼働状態の変更時に生じるエネルギー消費を抑制し、相違量がデルタマイナス(Δminus)、デルタプラス(Δplus)より大きければ機器100の稼働状態を変更し、実績値と計画値との相違量を減少させることが可能となる。つまり、デルタマイナス(Δminus)、デルタプラス(Δplus)は、機器100の稼働変動により生じるエネルギー消費を考慮して設定することが可能である。
【0067】
図11は、
図10の処理例に従った処理結果を示す図である。
図Aは、実績値としての複数の機器100の供給量L300aと、計画値としての負荷106への供給量L302と、実績値としての負荷106への供給量L302aと、を示す図である。横軸は時間を示し、縦軸はエネルギー量(MJ/h)を示す。
【0068】
図Bは、実績値としての蓄エネ放エネ量L304aを示す図である。横軸は時間を示し、縦軸はエネルギー量(MJ/h)を示す。上述のように、実績値としての蓄エネ放エネ量L304aは蓄エネ装置104における実績値の入出力の差分である。
図Cは、実績値としての蓄熱量積算値L306aを示す図である。横軸は時間を示し、縦軸はエネルギー量(MJ/h)を示す。
【0069】
図11のA図に示すように、ルースベースエンジン204を用いる場合には、計画値の供給量L302と、実績値の供給量L302aとの相違が、実績値としての複数の機器100の機器出力の供給量L300aに反映される。これにより、
図Bに示すように、ルースベースエンジン204は、実績値としての蓄エネ放エネ量L304aと、計画値としての蓄エネ放エネ量L304(
図3参照)とをほぼ同じ値にすることが可能となる。このため、実績値としての蓄熱量積算値L306aは、計画値としての蓄熱量積算値L306(
図3参照)とほぼ同じ値となり、
図Cに示すように蓄エネ装置(冷熱蓄熱槽)104の蓄積エネルギーを過不足なく計画通りに消費することができる。
【0070】
以上説明したように、本実施形態によれば、エネルギープラント制御支援装置20の最適化エンジン202は、エネルギープラント10における第1期間の供給量L300を供給する場合に、目的とする所定のコストが最小化するように、各機器100の設定値を含む運転計画を生成し、ルースベースエンジン204は、最適化エンジン202の運転計画に沿ってエネルギープラント10の運転を進めるように、各機器100の設定値を第1期間より短い第2期間毎に再設定する。この際にルースベースエンジン204は、所定のルールに従い、例えば複数の機器100のコストを抑えるように各設定値を設定することとした。これにより、エネルギープラント制御支援装置20は、第1期間におけるエネルギープラント10の全体的な最適化運転を実行しつつ、且つ最適化運転にずれが生じても、所定のルールにしたがって複数の機器100のコストを抑えるようにエネルギープラント10の運転をすることができる。
【0071】
(第2実施形態)
第2実施形態に係るエネルギープラント制御支援装置20は、負荷誤差計算部206の出力に応じて最適化エンジン202が再計算することが可能である点で第1実施形態に係るエネルギープラント制御支援装置20と相違する。以下では可能である点で第1実施形態に係るエネルギープラント制御支援装置20と相違する点を説明する。
【0072】
図12は、第2実施形態に係るエネルギープラント制御システム1の構成例を示す図である。
図12に示すように、エネルギープラント制御支援装置20は、負荷誤差計算部206を更に備える点で第1実施形態に係るエネルギープラント制御支援装置20と相違する。
【0073】
負荷誤差計算部206は、エネルギープラント10の測定値として負荷に関する値として実績値の供給量L302a(
図11参照を)を取得し、最適化エンジン202から計画値の供給量L302(
図11参照を)を取得する。そして、負荷誤差計算部206は、供給量L302aと、供給量L302との差分値が所定値を越える場合に、最適化エンジン202に運転計画を再度演算させる最適演算計算トリガ信号を伝達する。
【0074】
図13は、第2実施形態に係るエネルギープラント制御支援装置20の処理タイミングの例を示す図である。
図13のA図は、最適化エンジン202の処理時間例を示す図である。横軸は時間を示し、縦軸は計算中又は停止中の状態を示す。処理状態L400aは、ハイレベルである際に演算中の状態であることを示し、ロウレベルである際に停止中の状態あることを示す。
【0075】
図13のB図は、ルールベースエンジン204の処理時間例を示す図である。横軸は時間を示し、縦軸は計算中又は停止中の状態を示す。処理状態L402aは、ハイレベルである際に演算中の状態であることを示し、ロウレベルである際に停止中の状態あることを示す。
【0076】
図Aに示すように、最適化エンジン202は、22:00より前に第1期間である翌日計画を立案し、翌日の運転計画値をルールベースエンジン204に出力する。負荷誤差計算部206は、エネルギープラント10の運転が開始されると、供給量L302aと、供給量L302との差分値の演算を継続する。そして、負荷誤差計算部206は、差分値が所定値を越える場合に、最適化エンジン202に運転計画を再度演算させる最適演算計算トリガ信号を伝達する。
【0077】
図Aでは、負荷誤差計算部206は、タイミングt10、t14において最適演算計算トリガ信号を最適化エンジン202に伝達している。これにより、最適化エンジン202は、運転計画の再演算を行い、タイミングt12、t16において運転計画をルールベースエンジン204に供給している。
図Bに示すように、ルールベースエンジン204は、タイミングt12、t16に供給される運転計画に従い、所定のルールに基づき各設定値を再演算する。
【0078】
以上説明したように、本実施形態によれば、負荷誤差計算部206が、計画値としての供給量L302aと、実績値としての供給量L302との差分値が所定値を越える場合に、適化エンジン202に運転計画を再度演算させることとした。これにより、計画値としての供給量L302aと、実績値としての供給量L302とのずれが所定値より大きくなる場合に、再度の最適化演算が可能となる。このため、給量L302aと、供給量L302とにずれが大きくなるにしたがい、ルールベースエンジン204による機器100の稼働状態の制御による計画値としての供給量L302aと、実績値としての供給量L302とのずれが増加するが、再度の最適化演算することにより、供給量L302aと、実績値としての供給量L302とのずれをより抑制可能となる。このように、ルールベースエンジン204の処理精度をより上げることとなり、第1期間全体としてのコストの増加を抑制できる。
【0079】
(第3実施形態)
第3実施形態に係るエネルギープラント制御支援装置20は、蓄エネ装置104の蓄積エネルギーを推定可能である蓄積エネルギー量推定部234を更に備える点で第1実施形態に係るエネルギープラント制御支援装置20と相違する。以下では可能である点で第1実施形態に係るエネルギープラント制御支援装置20と相違する点を説明する。
【0080】
図14は、第3実施形態に係るルールベースエンジン204の構成例を示すブロック図である。
図14に示すように、ルールベースエンジン204は、蓄積エネルギー量推定部234と、蓄エネ推定値管理部236とを更に備える。また、第3実施形態に係る記憶部221は、蓄エネデータベース221dを更に有する。
【0081】
蓄積エネルギー量推定部234は、蓄エネ装置104の測定値に基づき、蓄エネ装置104の蓄積エネルギーを推定する。蓄積エネルギー量推定部234は、例えば、蓄エネ装置104が蓄熱槽である場合には、測定可能な量は温度であり、温度に基づき蓄熱量を推定する。また、蓄積エネルギー量推定部234は、例えば、蓄エネ装置104が蓄電池であれば、測定可能な量は電圧であり、電圧に基づき蓄電量を推定する。さらにまた、蓄積エネルギー量推定部234は、蓄エネ装置104が水素タンクであれば、測定可能な量は水素タンクの内圧であり、圧力に基づき蓄電量を推定する。なお、本実施形態に係る蓄積エネルギー量推定部234が、推定部に対応する。
【0082】
本実施形態に係る蓄積エネルギー量推定部234は、測定値取得部220が取得した最新の測定データと、測定値データベース221cに保存されている過去のデータを用いて蓄積エネルギー量を推定する。例えば、蓄積エネルギー量推定部234は、蓄エネ装置104のモデルを有しており、このモデルを用いて蓄積エネルギー量を推定する。推定に用いるモデルは、一般的なモデルを用いることが可能である。
【0083】
蓄エネデータベース221dは、蓄積エネルギー量推定部234の推定値と、推定に用いた測定データを関連づけて記憶する。蓄エネ推定値管理部236は、蓄エネデータベース221dを管理し、蓄積エネルギー量推定部234の推定値をルールベースエンジン202に供給する。
【0084】
図15は、第3実施形態に係るルールベースエンジン204の処理例を示すフローチャートである。
図10のフローチャートにステップS200、S202が追加されている点で相違する。
【0085】
測定値取得部220が最新の測定データを蓄エネ装置104から取得する(ステップS200)。蓄積エネルギー量推定部234は、測定値取得部220が取得した最新の測定データと、測定値データベース221cに保存されている過去のデータを用いて蓄エネ装置104の蓄積エネルギー量を推定する(ステップS202)。そして、蓄積エネルギー量推定部234は、蓄エネ推定値管理部236を介して、蓄積エネルギー量の推定値を蓄エネ装置104における蓄エネ放エネ量の実施値としてルール演算部230に供給する。ルール演算部230は、蓄積エネルギー量の推定値を用いて、ステップS108からステップS112の処理を実行する。
【0086】
以上説明したように、本実施形態によれば、蓄積エネルギー量推定部234が蓄エネ装置104から取得した測定データに基づき、蓄エネ装置104の蓄積されたエネルギー量を推定することとした。これにより、ルール演算部230は、蓄エネ装置104の蓄積されたエネルギー量を直接的に計測することが困難である場合にも、所定のルールに従った機器100毎の設定値を演算可能となる。
【0087】
(第4実施形態)
第4実施形態に係るエネルギープラント制御支援装置20は、ルール演算部230が、蓄エネ装置104の測定データに応じて、機器100の稼働状態を変更する更なるル-ルを有する点で第1実施形態に係るエネルギープラント制御支援装置20と相違する点を説明する。
【0088】
第4実施形態に係るルール演算部230は、蓄エネ装置104の測定温度に応じて、機器100の稼働数を変更する。この場合、ルール演算部230は、実績値としての蓄エネ放エネ量L304a(
図5参照)と、計画値としての蓄エネ放エネ量L304(
図3参照)とを比較し、機器100の稼働数の変更条件を変更する。
【0089】
図16は、機器100の稼働状態を模式的に示す図である。複数の機器100の合計出力の設定値と、複数の機器100の稼働機器の合計出力の関係を示す。縦軸はエネルギー量(MJ/h)を示す。ルール演算部230は、実績値としての蓄エネ放エネ量L304a(
図5参照)と、計画値としての蓄エネ放エネ量L304(
図3参照)とを比較し、3状態に判別する。例えば、ルール演算部230は、稼働している複数の機器100の合計出力値が、複数の機器100の合計出力の設定値よりも所定量多い状態を、運転台数過多の状態と判定する。また、ルール演算部230は、稼働している複数の機器100の合計出力値と、複数の機器100の合計出力の設定値との差分の絶対値が所定の範囲である場合に、運転台数適正の状態と判定する。さらにまた、ルール演算部230は、稼働している複数の機器100の合計出力値が、複数の機器100の合計出力の設定値よりも所定量少ない状態を、運転台数過小の状態と判定する。
【0090】
蓄エネ装置104が冷熱蓄熱槽である場合には、温度測定値が基準値を上回ると追加で機器を稼働する必要がある。これは、負荷に供給する温度を一定以下とする必要があるためである。本実施形態に係るルール演算部230は、
図17に示すように、稼働台数を追加または停止する条件を変更する。
【0091】
図17は、機器100の稼働状態に応じた稼働数の変更条件例を示す図である。運転台数過小の状態において稼働数を増加させる温度をT1uとし、稼働数を減少させる温度をT1dとする。また、運転台数適正の状態において稼働数を増加させる温度をT2uとし、稼働数を減少させる温度をT2dとする。さらにまた、運転台数過多の状態において稼働数を増加させる温度をT3uとし、稼働数を減少させる温度をT3dとする。
【0092】
このとき、T3u>T2u>T1uとする。これにより、稼働台数を増やす測定温度は、運転台数過多の状態、運転台数適正の状態、運転台数過小の状態の順で高くなる。換言すると、運転台数過小の状態、運転台数適正の状態、転台数過多の状態の順で運転台数を増加させる温度範囲を広くしていることになる。例えば、運転台数過多の状態であれば、時間の経過と共に温度が減少する傾向を示す。一方で運転台数過小の状態であれば、時間の経過と共に温度が増加する傾向を示す。このように、温度条件を変更することにより、運転台数過小の状態では、運転台数過多の状態よりも運転台数を増加させるバイアスをかけることが可能となる。
【0093】
このとき、T3d>T2d>T1dとする。これにより、稼働台数を減らす測定温度は、転台数過多の状態、運転台数適正の状態、運転台数過小の状態の順で高くなる。換言すると、運転台数過小の状態、運転台数適正の状態、転台数過多の状態の順で運転台数を減少させる温度範囲を狭くしていることになる。例えば、運転台数過多の状態であれば、時間の経過と共に温度が減少する傾向を示す。一方で運転台数過小の状態であれば、時間の経過と共に温度が増加する傾向を示す。このように、温度条件を変更することにより、運転台数過多の状態では、運転台数過小の状態よりも運転台数を減少させるバイアスをかけることが可能となる。これらから分かるように、各ケースにより蓄熱槽温度と稼働台数を追加または停止する条件を変化させることにより、より安定して蓄エネ装置104の温度を基準範囲に保つことが可能となる。
【0094】
図18は、第4実施形態に係るルールベースエンジン204の処理例を示すフローチャートである。
図10のフローチャートにステップS300、S302が追加されている点で相違する。
【0095】
測定値取得部220が測定値として温度を蓄エネ装置104から取得する(ステップS300)。ルール演算部230は、ステップS108~S112での処理情報に基づき、複数の機器100の状態を
図16に示した運転台数過多の状態、運転台数適正の状態、運転台数過小の状態のいずれかに判別し、
図17に示した条件例にしたがって、複数の機器100の稼働数を変更し(ステップS302)、全体処理を終了する。
【0096】
以上説明したように、本実施形態によれば、ルール演算部230が複数の機器100の合計出力の設定値と、複数の機器100の稼働機器の合計出力との関係に基づき、蓄エネ装置104の状態(ケース)を分類し、分類に応じて機器100の稼働状態を変更する温度範囲を変更することとした。これにより、蓄エネ装置104の状態に応じて、機器100の運転台数の増減にバイアスをかけることが可能となり、より安定して蓄エネ装置104の温度を基準範囲に保つことが可能となる。
【0097】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0098】
1:エネルギープラント制御システム、10:エネルギープラント、20:エネルギープラント制御支援装置、100:機器、102:制御装置、104:蓄エネ装置、106:負荷、202:最適化エンジン、204:ルールベースエンジン、234:蓄積エネルギー量推定部、250:負荷管理部。