(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179270
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】電源装置及び電源装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
H02M3/28 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092495
(22)【出願日】2022-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】郭 中為
(72)【発明者】
【氏名】鎌倉 輝男
(72)【発明者】
【氏名】小林 貴之
(72)【発明者】
【氏名】木下 孝志
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA14
5H730AS01
5H730BB27
5H730BB57
5H730BB66
5H730DD04
5H730DD16
5H730EE04
5H730EE07
5H730EE13
5H730EE59
5H730FD01
5H730FD11
5H730FF06
5H730FF09
5H730FG05
(57)【要約】
【課題】コスト上昇を抑制し、高精度且つ安定動作を可能とする。
【解決手段】電源装置は、第1ブリッジ回路と、変圧器と、第2ブリッジ回路と、制御部と、を備える。制御部は、第1ブリッジ回路の複数のスイッチング素子に出力する複数の第1駆動パルスと、第2ブリッジ回路の複数のスイッチング素子に出力する複数の第2駆動パルスと、の間の位相差を制御することにより、第2ブリッジ回路の出力電圧、出力電流又は出力電力を制御する。制御部は、位相差指令値信号の内の分解能未満の部分を切り捨て又は切り上げることにより、位相差制御信号の時間平均が位相差指令値信号となるように位相差制御信号を算出し、位相差制御信号に応じた位相差で、複数の第1駆動パルス及び前記複数の第2駆動パルスを出力する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ブリッジ回路と、
前記第1ブリッジ回路から出力される交流電圧が第1巻線に入力され、誘起された交流電圧を第2巻線から出力する、変圧器と、
前記変圧器の前記第2巻線から出力される交流電圧を直流電圧に変換して出力する、第2ブリッジ回路と、
前記第1ブリッジ回路の複数のスイッチング素子に出力する複数の第1駆動パルスと、前記第2ブリッジ回路の複数のスイッチング素子に出力する複数の第2駆動パルスと、の間の位相差を制御することにより、前記第2ブリッジ回路の出力電圧、出力電流又は出力電力を制御する、制御部と、
を備え、
前記制御部は、位相差指令値信号の内の予め定められた分解能未満の部分を切り捨て又は切り上げることにより、位相差制御信号の時間平均が前記位相差指令値信号となるように前記位相差制御信号を算出し、前記位相差制御信号に応じた位相差で、前記複数の第1駆動パルス及び前記複数の第2駆動パルスを出力する、
ことを特徴とする、電源装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記位相差指令値信号と前記位相差制御信号との差を誤差として記録し、前記誤差を次回の制御インターバルで次回の位相差指令値信号に加算する、
請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
第1ブリッジ回路と、前記第1ブリッジ回路から出力される交流電圧が第1巻線に入力され、誘起された交流電圧を第2巻線から出力する、変圧器と、前記変圧器の前記第2巻線から出力される交流電圧を直流電圧に変換して出力する、第2ブリッジ回路と、を備える電源装置の制御方法であって、
前記第1ブリッジ回路の複数のスイッチング素子に出力する複数の第1駆動パルスと、前記第2ブリッジ回路の複数のスイッチング素子に出力する複数の第2駆動パルスと、の間の位相差を制御することにより、前記第2ブリッジ回路の出力電圧、出力電流又は出力電力を制御し、
位相差指令値信号の内の予め定められた分解能未満の部分を切り捨て又は切り上げることにより、位相差制御信号の時間平均が前記位相差指令値信号となるように前記位相差制御信号を算出し、前記位相差制御信号に応じた位相差で、前記複数の第1駆動パルス及び前記複数の第2駆動パルスを出力する、
ことを特徴とする、電源装置の制御方法。
【請求項4】
ブリッジ回路と、
前記ブリッジ回路から出力される交流電圧が第1巻線に入力され、誘起された交流電圧を第2巻線から出力する、変圧器と、
前記変圧器の前記第2巻線から出力される交流電圧を整流して出力する、整流回路と、
前記ブリッジ回路の複数のスイッチング素子に出力する複数の駆動パルスの周波数を制御することにより、前記整流回路の出力電圧、出力電流又は出力電力を制御する、制御部と、
を備え、
前記制御部は、周波数指令値信号の内の予め定められた分解能未満の部分を切り捨て又は切り上げることにより、周波数制御信号の時間平均が前記周波数指令値信号となるように前記周波数制御信号を算出し、前記周波数制御信号に応じた周波数で、前記複数の駆動パルスを出力する、
ことを特徴とする、電源装置。
【請求項5】
ブリッジ回路と、
前記ブリッジ回路から出力される交流電圧が第1巻線に入力され、誘起された交流電圧を第2巻線から出力する、変圧器と、
前記変圧器の前記第2巻線から出力される交流電圧を整流して出力する、整流回路と、
前記ブリッジ回路の複数のスイッチング素子に出力する複数の駆動パルスの周波数を制御することにより、前記整流回路の出力電圧、出力電流又は出力電力を制御する、制御部と、
を備え、
前記制御部は、周波数指令値信号よりPWM周期指令値信号を算出し、前記PWM周期指令値信号の内の予め定められた分解能未満の部分を切り捨て又は切り上げることにより、PWM周期制御信号の時間平均が前記PWM周期指令値信号となるように前記PWM周期制御信号を算出し、前記PWM周期制御信号に応じたPWM周期で、前記複数の駆動パルスを出力する、
ことを特徴とする、電源装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記PWM周期指令値信号と前記PWM周期制御信号との差を誤差として記録し、前記誤差を次回の制御インターバルで次回のPWM周期指令値信号に加算する、
ことを特徴とする、請求項5に記載の電源装置。
【請求項7】
ブリッジ回路と、前記ブリッジ回路から出力される交流電圧が第1巻線に入力され、誘起された交流電圧を第2巻線から出力する、変圧器と、前記変圧器の前記第2巻線から出力される交流電圧を整流して出力する、整流回路と、を備える電源装置の制御方法であって、
前記ブリッジ回路の複数のスイッチング素子に出力する複数の駆動パルスの周波数を制御することにより、前記整流回路の出力電圧、出力電流又は出力電力を制御し、
周波数指令値信号よりPWM周期指令値信号を算出し、前記PWM周期指令値信号の内の予め定められた分解能未満の部分を切り捨て又は切り上げることにより、PWM周期制御信号の時間平均が前記PWM周期指令値信号となるように前記PWM周期制御信号を算出し、前記PWM周期制御信号に応じたPWM周期で、前記複数の駆動パルスを出力する、
ことを特徴とする、電源装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電源装置及び電源装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び2には、絶縁型DAB(Dual Active Bridge)双方向コンバータが記載されている。DABコンバータは、1次側ブリッジ回路と2次側ブリッジ回路との間の位相差を制御することにより、出力電圧、出力電流又は出力電力を制御できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-102933号公報
【特許文献2】特開2020-150574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
1次側ブリッジ回路及び2次側ブリッジ回路を制御する制御回路として、ディジタルPWM(Pulse Width Modulation)回路を内蔵したDSP(Digital Signal Processor)が用いられる。ディジタルPWM回路は、発振器から出力されるクロック信号をカウントして動作する。従って、1次側スイッチング信号と2次側スイッチング信号との間の位相差は、クロック周期の整数倍しか取れず、位相差制御の分解能は1クロック周期となる。このため、DABコンバータの出力特性は、階段状になってしまう。これにより、出力制御に必要な電流を出力できない場合は、フィードバック制御の結果により、DABコンバータの出力電圧、出力電流又は出力電力は、低周期で変動してしまう。
【0005】
その対策として、高分解能ディジタルPWM回路を内蔵するDSPを使用することが考えられる。しかしながら、3相DABコンバータでは、12本のPWM信号が必要であり、12個の高分解能ディジタルPWM回路を内蔵するDSPは高価となる。
【0006】
本開示は、コスト上昇を抑制し、高精度且つ安定動作を可能とする電源装置及び電源装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の電源装置は、
第1ブリッジ回路と、
前記第1ブリッジ回路から出力される交流電圧が第1巻線に入力され、誘起された交流電圧を第2巻線から出力する、変圧器と、
前記変圧器の前記第2巻線から出力される交流電圧を直流電圧に変換して出力する、第2ブリッジ回路と、
前記第1ブリッジ回路の複数のスイッチング素子に出力する複数の第1駆動パルスと、前記第2ブリッジ回路の複数のスイッチング素子に出力する複数の第2駆動パルスと、の間の位相差を制御することにより、前記第2ブリッジ回路の出力電圧、出力電流又は出力電力を制御する、制御部と、
を備え、
前記制御部は、位相差指令値信号の内の予め定められた分解能未満の部分を切り捨て又は切り上げることにより、位相差制御信号の時間平均が前記位相差指令値信号となるように前記位相差制御信号を算出し、前記位相差制御信号に応じた位相差で、前記複数の第1駆動パルス及び前記複数の第2駆動パルスを出力する、
ことを特徴とする。
【0008】
本開示の電源装置において、
前記制御部は、前記位相差指令値信号と前記位相差制御信号との差を誤差として記録し、前記誤差を次回の制御インターバルで次回の位相差指令値信号に加算する、
ことを特徴とする。
【0009】
本開示の電源装置の制御方法は、
第1ブリッジ回路と、前記第1ブリッジ回路から出力される交流電圧が第1巻線に入力され、誘起された交流電圧を第2巻線から出力する、変圧器と、前記変圧器の前記第2巻線から出力される交流電圧を直流電圧に変換して出力する、第2ブリッジ回路と、を備える電源装置の制御方法であって、
前記第1ブリッジ回路の複数のスイッチング素子に出力する複数の第1駆動パルスと、前記第2ブリッジ回路の複数のスイッチング素子に出力する複数の第2駆動パルスと、の間の位相差を制御することにより、前記第2ブリッジ回路の出力電圧、出力電流又は出力電力を制御し、
位相差指令値信号の内の予め定められた分解能未満の部分を切り捨て又は切り上げることにより、位相差制御信号の時間平均が前記位相差指令値信号となるように前記位相差制御信号を算出し、前記位相差制御信号に応じた位相差で、前記複数の第1駆動パルス及び前記複数の第2駆動パルスを出力する、
ことを特徴とする。
【0010】
本開示の電源装置は、
ブリッジ回路と、
前記ブリッジ回路から出力される交流電圧が第1巻線に入力され、誘起された交流電圧を第2巻線から出力する、変圧器と、
前記変圧器の前記第2巻線から出力される交流電圧を整流して出力する、整流回路と、
前記ブリッジ回路の複数のスイッチング素子に出力する複数の駆動パルスの周波数を制御することにより、前記整流回路の出力電圧、出力電流又は出力電力を制御する、制御部と、
を備え、
前記制御部は、周波数指令値信号の内の予め定められた分解能未満の部分を切り捨て又は切り上げることにより、周波数制御信号の時間平均が前記周波数指令値信号となるように前記周波数制御信号を算出し、前記周波数制御信号に応じた周波数で、前記複数の駆動パルスを出力する、
ことを特徴とする。
【0011】
本開示の電源装置は、
ブリッジ回路と、
前記ブリッジ回路から出力される交流電圧が第1巻線に入力され、誘起された交流電圧を第2巻線から出力する、変圧器と、
前記変圧器の前記第2巻線から出力される交流電圧を整流して出力する、整流回路と、
前記ブリッジ回路の複数のスイッチング素子に出力する複数の駆動パルスの周波数を制御することにより、前記整流回路の出力電圧、出力電流又は出力電力を制御する、制御部と、
を備え、
前記制御部は、周波数指令値信号よりPWM周期指令値信号を算出し、前記PWM周期指令値信号の内の予め定められた分解能未満の部分を切り捨て又は切り上げることにより、PWM周期制御信号の時間平均が前記PWM周期指令値信号となるように前記PWM周期制御信号を算出し、前記PWM周期制御信号に応じたPWM周期で、前記複数の駆動パルスを出力する、
ことを特徴とする。
【0012】
本開示の電源装置において、
前記制御部は、前記PWM周期指令値信号と前記PWM周期制御信号との差を誤差として記録し、前記誤差を次回の制御インターバルで次回のPWM周期指令値信号に加算する、
ことを特徴とする。
【0013】
本開示の電源装置の制御方法は、
ブリッジ回路と、前記ブリッジ回路から出力される交流電圧が第1巻線に入力され、誘起された交流電圧を第2巻線から出力する、変圧器と、前記変圧器の前記第2巻線から出力される交流電圧を整流して出力する、整流回路と、を備える電源装置の制御方法であって、
前記ブリッジ回路の複数のスイッチング素子に出力する複数の駆動パルスの周波数を制御することにより、前記整流回路の出力電圧、出力電流又は出力電力を制御し、
周波数指令値信号よりPWM周期指令信号を算出し、前記PWM周期指令信号の内の予め定められた分解能未満の部分を切り捨て又は切り上げることにより、PWM周期制御信号の時間平均が前記周期指令値信号となるように前記周期制御信号を算出し、前記PWM周期制御信号に応じたPWM周期で、前記複数の駆動パルスを出力する、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、コスト上昇を抑制し、高精度且つ安定動作を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、第1の実施形態の電源装置の構成を示す図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係る電源装置のトランス部の構成を示す図である。
【
図3】
図3は、比較例の1次側駆動パルス及び2次側駆動パルスの一例を示す図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態の電源装置の制御部の制御ブロックを示す図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態の電源装置の制御部のフローチャートである。
【
図7】
図7は、第1の実施形態の電源装置の制御例の波形を示す図である。
【
図8】
図8は、第1の実施形態の電源装置の出力特性を示す図である。
【
図9】
図9は、第2の実施形態の電源装置の構成を示す図である。
【
図10】
図10は、第2の実施形態の電源装置の制御部の制御ブロックを示す図である。
【
図11】
図11は、第2の実施形態の電源装置の制御部のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本開示に係る実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではなく、また、以下の実施形態において、同一の部位には同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0017】
<第1の実施形態>
(構成)
図1は、第1の実施形態の電源装置の構成を示す図である。電源装置1は、3相DAB(Dual Active Bridge)方式の電源装置である。
【0018】
第1の実施形態では、電源装置1が3相DAB方式の電源装置としたが、本開示はこれに限定されない。電源装置1は、単相DAB方式の電源装置であっても良い。
【0019】
電源装置1は、直流電源2から出力されコンデンサ3により平滑化された1次側電圧V1を受ける。電源装置1から出力された直流電圧は、コンデンサ4により平滑化され、2次側電圧V2が負荷5に入力される。
【0020】
電源装置1は、第1ブリッジ回路10と、第2ブリッジ回路20と、リアクトル31と、リアクトル32と、リアクトル33と、トランス部40と、制御部50と、を含む。
【0021】
第1ブリッジ回路10は、第1アーム10aと、第2アーム10bと、第3アーム10cと、を含む。第1ブリッジ回路10は、3個のアームを含む3相のブリッジ回路である。第1アーム10aは、U相のアームである。第2アーム10bは、V相のアームである。第3アーム10cは、W相のアームである。第1アーム10aと、第2アーム10bとの間の位相差は、120度である。第2アーム10bと、第3アーム10cとの間の位相差は、120度である。第3アーム10cと、第1アーム10aとの間の位相差は、120度である。
【0022】
第1アーム10aは、スイッチング素子11と、スイッチング素子12と、を含む。第2アーム10bは、スイッチング素子13と、スイッチング素子14と、を含む。第3アーム10cは、スイッチング素子15と、スイッチング素子16と、を含む。
【0023】
スイッチング素子11と、スイッチング素子13と、スイッチング素子15とは、ハイサイドのスイッチング素子である。スイッチング素子12と、スイッチング素子14と、スイッチング素子16とは、ローサイドのスイッチング素子である。
【0024】
本開示では、各トランジスタがMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)であることとしたが、これに限定されない。各トランジスタは、シリコンパワーデバイス、GaNパワーデバイス、SiCパワーデバイスなどでも良い。
【0025】
各トランジスタは、積極的に電流を流すことができる寄生ダイオード(ボディダイオード)を有する、又は、逆並列にダイオードが接続されている。寄生ダイオードとは、MOSFETのバックゲートとソース及びドレインとの間のpn接合である。ダイオードは、トランジスタのオフ時の過渡的な逆起電力を逃すためのフリーホイールダイオードとして利用可能である。
【0026】
スイッチング素子11のソース端子は、スイッチング素子12のドレイン端子に電気的に接続されている。スイッチング素子11のドレイン端子は、スイッチング素子13のドレイン端子に電気的に接続されている。スイッチング素子12のソース端子は、スイッチング素子14のソース端子に電気的に接続されている。
【0027】
スイッチング素子13のソース端子は、スイッチング素子14のドレイン端子に電気的に接続されている。スイッチング素子13のドレイン端子は、スイッチング素子15のドレイン端子に電気的に接続されている。スイッチング素子14のソース端子は、スイッチング素子16のソース端子に電気的に接続されている。
【0028】
スイッチング素子15のソース端子は、スイッチング素子16のドレイン端子に電気的に接続されている。
【0029】
スイッチング素子11のドレイン端子と、スイッチング素子13のドレイン端子と、スイッチング素子15のドレイン端子との接続点N1は、電源装置1の一方の入力端子である。スイッチング素子12のソース端子と、スイッチング素子14のソース端子と、スイッチング素子16のソース端子との接続点N2は、電源装置1の他方の入力端子である。
【0030】
接続点N1は、コンデンサ3の高電位側端に電気的に接続されている。接続点N2は、コンデンサ3の低電位側端に電気的に接続されている。接続点N1と、接続点N2との間には、コンデンサ3により平滑化された1次側電圧V1が入力される。
【0031】
スイッチング素子11のソース端子と、スイッチング素子12のドレイン端子との接続点N3は、第1ブリッジ回路10の1個目の出力端子である。スイッチング素子13のソース端子と、スイッチング素子14のドレイン端子との接続点N4は、第1ブリッジ回路10の2個目の出力端子である。スイッチング素子15のソース端子と、スイッチング素子16のドレイン端子との接続点N5は、第1ブリッジ回路10の3個目の出力端子である。
【0032】
第2ブリッジ回路20は、第1アーム20aと、第2アーム20bと、第3アーム20cと、を含む。第2ブリッジ回路20は、3個のアームを含む3相のブリッジ回路である。第1アーム20aは、U相のアームである。第2アーム20bは、V相のアームである。第3アーム20cは、W相のアームである。第1アーム20aと、第2アーム20bとの位相差は、120度である。第2アーム20bと、第3アーム20cとの位相差は、120度である。第3アーム20cと、第1アーム20aとの位相差は、120度である。
【0033】
第1アーム20aは、スイッチング素子21と、スイッチング素子22と、を含む。第2アーム20bは、スイッチング素子23と、スイッチング素子24と、を含む。第3アーム20cは、スイッチング素子25と、スイッチング素子26と、を含む。
【0034】
スイッチング素子21と、スイッチング素子23と、スイッチング素子25とは、ハイサイドのスイッチング素子である。スイッチング素子22と、スイッチング素子24と、スイッチング素子26とは、ローサイドのスイッチング素子である。
【0035】
スイッチング素子21のソース端子は、スイッチング素子22のドレイン端子に電気的に接続されている。スイッチング素子21のドレイン端子は、スイッチング素子23のドレイン端子に電気的に接続されている。スイッチング素子22のソース端子は、スイッチング素子24のソース端子に電気的に接続されている。
【0036】
スイッチング素子23のソース端子は、スイッチング素子24のドレイン端子に電気的に接続されている。スイッチング素子23のドレイン端子は、スイッチング素子25のドレイン端子に電気的に接続されている。スイッチング素子24のソース端子は、スイッチング素子26のソース端子に電気的に接続されている。
【0037】
スイッチング素子25のソース端子は、スイッチング素子26のドレイン端子に電気的に接続されている。
【0038】
スイッチング素子21のソース端子と、スイッチング素子22のドレイン端子との接続点N6は、第2ブリッジ回路20の1個目の入力端子である。スイッチング素子23のソース端子と、スイッチング素子24のドレイン端子との接続点N7は、第2ブリッジ回路20の2個目の入力端子である。スイッチング素子25のソース端子と、スイッチング素子26のドレイン端子との接続点N8は、第2ブリッジ回路20の3個目の入力端子である。
【0039】
スイッチング素子21のドレイン端子と、スイッチング素子23のドレイン端子と、スイッチング素子25のドレイン端子との接続点N9は、電源装置1の一方の出力端子である。スイッチング素子22のソース端子と、スイッチング素子24のソース端子と、スイッチング素子26のソース端子との接続点N10は、電源装置1の他方の出力端子である。
【0040】
接続点N9は、コンデンサ4の高電位側端に電気的に接続されている。接続点N10は、コンデンサ4の低電位側端に電気的に接続されている。コンデンサ4の2次側電圧V2が、電源装置1の出力電圧となる。
【0041】
電圧センサ6は、2次側電圧V2を表す信号S1を、制御部50に出力する。
【0042】
コンデンサ4の高電位側端は、負荷5の高電位側端に電気的に接続されている。コンデンサ4の低電位側端は、負荷5の低電位側端に電気的に接続されている。
【0043】
リアクトル31の一端は、接続点N3に電気的に接続されている。リアクトル31の他端は、トランス部40に電気的に接続されている。
【0044】
リアクトル32の一端は、接続点N4に電気的に接続されている。リアクトル32の他端は、トランス部40に電気的に接続されている。
【0045】
リアクトル33の一端は、接続点N5に電気的に接続されている。リアクトル33の他端は、トランス部40に電気的に接続されている。
【0046】
実施形態では、リアクトル31からリアクトル33までが1次側に設けられていることとしたが、本開示はこれに限定されない。リアクトル31からリアクトル33までは、2次側に設けられても良い。或いは、リアクトルは、1次側及び2次側の両側に設けられても良い。
【0047】
トランス部40は、第1巻線と、第2巻線と、コアと、を含む。トランス部40は、変圧器の一種である。
【0048】
図2は、第1の実施形態に係る電源装置のトランス部の構成を示す図である。
【0049】
図2に示すように、トランス部40は、トランス40aと、トランス40bと、トランス40cと、を含む。実施形態において、トランス部40は、3相変圧器である。
図2に示す例では、トランス部40は、Y(スター)結線方式の3相変圧器である。
図2では、トランス部40は、Y結線方式の3相変圧器であるものとして示しているが、本開示はこれに限定されない。例えば、トランス部40は、Δ(デルタ)結線方式の3相変圧器であってもよい。
【0050】
トランス40aは、第1巻線41aと、第2巻線42aと、コア43aと、第1端子44aと、第2端子45aと、を含む。トランス40aは、U相のトランスである。
【0051】
第1巻線41aは、1次側の巻線である。第2巻線42aは、2次側の巻線である。第1巻線41aと、第2巻線42aとは、コア43aに巻かれている。第1巻線41aの一端は、第1端子44aに電気的に接続されている。第1端子44aは、リアクトル31の他端に電気的に接続されている。第2巻線42aの一端は、第2端子45aに電気的に接続されている。第2端子45aは、接続点N6に電気的に接続されている。
【0052】
トランス40bは、第1巻線41bと、第2巻線42bと、コア43bと、第1端子44bと、第2端子45bと、を含む。トランス40bは、V相のトランスである。
【0053】
第1巻線41bは、1次側の巻線である。第2巻線42bは、2次側の巻線である。第1巻線41bと、第2巻線42bとは、コア43bに巻かれている。第1巻線41bの一端は、第1端子44bに電気的に接続されている。第1端子44bは、リアクトル32の他端に電気的に接続されている。第2巻線42bの一端は、第2端子45bに電気的に接続されている。第2端子45bは、接続点N7に電気的に接続されている。
【0054】
トランス40cは、第1巻線41cと、第2巻線42cと、コア43cと、第1端子44cと、第2端子45cと、を含む。トランス40cは、W相のトランスである。
【0055】
第1巻線41cは、1次側の巻線である。第2巻線42cは、2次側の巻線である。第1巻線41cと、第2巻線42cとは、コア43cに巻かれている。第1巻線41cの一端は、第1端子44cに電気的に接続されている。第1端子44cは、リアクトル33の他端に電気的に接続されている。第2巻線42cの一端は、第2端子45cに電気的に接続されている。第2端子45cは、接続点N8に電気的に接続されている。
【0056】
第1巻線41aの他端と、第1巻線41bの他端と、第1巻線41cの他端とは、それぞれ、電気的に接続されている。第2巻線42aの他端と、第2巻線42bの他端と、第2巻線42cの他端とは、それぞれ、電気的に接続されている。
【0057】
再び
図1を参照すると、制御部50は、第1ブリッジ回路10および第2ブリッジ回路20を制御する。制御部50は、例えば、ディジタルPWM(Pulse Width Modulation)回路を内蔵したDSP(Digital Signal Processor)、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)などの情報処理装置と、RAM(Random Access Memory)又はROM(Read Only Memory)などの記憶装置とを有する。制御部50は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現されてもよい。制御部50は、ハードウェアと、ソフトウェアとの組み合わせで実現されてもよい。
【0058】
制御部50は、1次側駆動パルスP1を第1ブリッジ回路10に出力することで、スイッチング素子11からスイッチング素子16のオン状態とオフ状態とを切り替える。具体的には、制御部50は、ハイレベルの1次側駆動パルスP1をスイッチング素子11からスイッチング素子16のゲート端子に出力することで、スイッチング素子11からスイッチング素子16をオン状態に切り替える。制御部50は、ローレベルの1次側駆動パルスP1をスイッチング素子11からスイッチング素子16のゲート端子に出力することで、スイッチング素子11からスイッチング素子16をオフ状態に切り替える。
【0059】
制御部50は、2次側駆動パルスP2を第2ブリッジ回路20に出力することで、スイッチング素子21からスイッチング素子26のオン状態とオフ状態とを切り替える。具体的には、制御部50は、ハイレベルの2次側駆動パルスP2をスイッチング素子21からスイッチング素子26のゲート端子に出力することで、スイッチング素子21からスイッチング素子26をオン状態に切り替える。制御部50は、ローレベルの2次側駆動パルスP2をスイッチング素子21からスイッチング素子26のゲート端子に出力することで、スイッチング素子21からスイッチング素子26をオフ状態に切り替える。
【0060】
(比較例)
第1の実施形態を説明する前に、比較例について説明する。
【0061】
図3は、比較例の1次側駆動パルス及び2次側駆動パルスの一例を示す図である。波形201は、スイッチング素子11(1次側U相ハイサイド)のゲートに入力される1次側駆動パルスP1を表す。波形202は、スイッチング素子21(2次側U相ハイサイド)のゲートに入力される2次側駆動パルスP2を表す。
【0062】
ディジタルPWM回路は、1次側駆動パルスP1(波形201)と2次側駆動パルスP2(波形202)との間の位相差203をクロック周期の整数倍にしかできず、位相差203の最小値は、1クロック周期となる。
【0063】
図4は、比較例の出力特性を示す図である。
図4において、横軸は、電流制御指令(A(アンペア))を表し、縦軸は、出力電流(A)を表す。
【0064】
上記したように、ディジタルPWM回路は、1次側駆動パルスP1(波形201)と2次側駆動パルスP2(波形202)との間の位相差203をクロック周期の整数倍にしかできず、位相差203の最小値は、1クロック周期となる。従って、
図4の波形204に示すように、比較例の出力特性は、階段状になってしまう。このため、出力制御に必要な電流を出力できない場合は、フィードバック制御の結果により、比較例の出力電圧、出力電流又は出力電力は、低周期で変動してしまう。
【0065】
(実施形態)
図5は、第1の実施形態の電源装置の制御部の制御ブロックを示す図である。
【0066】
制御部50は、減算器51と、位相差算出部52と、位相差クロック数算出部53と、駆動パルス生成部54と、1次側パルス駆動部55と、2次側パルス駆動部56と、を含む。
【0067】
減算器51、位相差算出部52及び位相差クロック数算出部53は、DSPとソフトウェアで実現することが例示される。駆動パルス生成部54は、DSPに内蔵されているディジタルPWM回路で実現することが例示される。1次側パルス駆動部55及び2次側パルス駆動部56は、電圧レベルを変換するレベルシフト回路で実現することが例示される。
【0068】
減算器51は、電圧制御指令値Vrefから信号S1を減算し、電圧偏差を表す信号S11を、位相差算出部52に出力する。
【0069】
なお、実施形態では、減算器51が電圧偏差を表す信号S11を出力することとし、制御部50が電圧制御することとしたが、本開示はこれに限定されない。減算器51が電流制御指令値から2次側出力電流を表す信号を減算することとし、制御部50が電流制御することとしても良い。或いは、減算器51が電力制御指令値から2次側出力電力を表す信号を減算することとし、制御部50が電力制御することとしても良い。
【0070】
位相差算出部52は、信号S11に基づいて、位相差φを算出し、位相差クロック数算出部53に出力する。例えば、位相差算出部52は、信号S11にPID(比例積分微分)演算を行って、位相差φを算出することが例示されるが、本開示はこれに限定されない。位相差φは、ディジタルPWM回路の分解能未満の部分(例えば、小数点以下の部分)を含んでいて良い。位相差φの単位は、ラジアンであっても良いし、度(degree)であっても良い。
【0071】
位相差クロック数算出部53は、位相差φに基づいて、ディジタルPWM回路が位相差にすることが可能なクロック数φcntを算出し、駆動パルス生成部54に出力する。例えば、位相差クロック数算出部53は、位相差φの中のディジタルPWM回路の分解能未満の部分を切り捨て、切り上げ又は四捨五入してクロック数φcntを算出することが例示されるが、本開示はこれに限定されない。
【0072】
駆動パルス生成部54は、ディジタルPWM回路が例示される。駆動パルス生成部54は、クロック数φcntに基づいて、1次側パルス信号S12を1次側パルス駆動部55に出力し、2次側パルス信号S13を2次側パルス駆動部56に出力する。駆動パルス生成部54は、1次側パルス信号S12と2次側パルス信号S13との間の位相差を、クロック数φcntに応じた位相差とする。
【0073】
1次側パルス駆動部55は、1次側パルス信号S12の電圧レベルを変換した1次側駆動パルスP1を第1ブリッジ回路10に出力する。
【0074】
2次側パルス駆動部56は、2次側パルス信号S13の電圧レベルを変換した2次側駆動パルスP2を第2ブリッジ回路20に出力する。
【0075】
図6は、第1の実施形態の電源装置の制御部のフローチャートである。制御部50は、制御インターバル毎に、
図6に示す処理を実行する。
【0076】
位相差算出部52は、信号S11に基づいて、位相差φを算出する(ステップS100)。先に説明したように、位相差φは、ディジタルPWM回路の分解能未満の部分(例えば、小数点以下の部分)を含んでいて良い。
【0077】
位相差クロック数算出部53は、位相差φをクロック数φcntf1に換算する(ステップS102)。例えば、位相差クロック数算出部53は、次の式(1)によって、位相差φをクロック数φcntf1に換算することができる。式(1)において、Tswは、スイッチング周期であり、Tclkは、クロック周期である。なお、式(1)は、位相差φの単位がラジアンの場合であるが、位相差φの単位が度の場合は、「2π」の部分を「360」(度)に置き換えれば良い。
【0078】
φcntf1=φ/(2π)×Tsw/Tclk ・・・(1)
【0079】
クロック数φcntf1は、ディジタルPWM回路の分解能未満の部分(例えば、小数点以下の部分)を含んでいて良い。
【0080】
位相差クロック数算出部53は、クロック数φcntf1に、前回の制御インターバルで算出された丸め誤差Errを加算して、クロック数φcntf2を算出する(ステップS104)。丸め誤差Errは、後で説明するステップS108で算出される。クロック数φcntf2は、前回の丸め誤差Errを加味して、今回の制御インターバルで1次側駆動パルスP1と2次側駆動パルスP2との間の位相差としたいクロック数である。クロック数φcntf2は、ディジタルPWM回路の分解能未満の部分(例えば、小数点以下の部分)を含んでいて良い。
【0081】
例えば、位相差クロック数算出部53は、次の式(2)によって、クロック数φcntf2を算出することができる。
【0082】
φcntf2=φcntf1+Err ・・・(2)
【0083】
丸め誤差Errが、本開示の誤差の一例に相当する。クロック数φcntf1が、誤差を加算する前の、本開示の位相差指令値信号の一例に相当する。クロック数φcntf2が、誤差を加算した後の、本開示の位相差指令値信号の一例に相当する。
【0084】
位相差クロック数算出部53は、クロック数φcntf2から整数のクロック数φcntを算出する(ステップS106)。例えば、位相差クロック数算出部53は、クロック数φcntf2の中のディジタルPWM回路の分解能未満の部分を切り捨て、切り上げ又は四捨五入してクロック数φcntを算出することができる。クロック数φcntは、ディジタルPWM回路の分解能未満の部分(例えば、小数点以下の部分)を含まない。クロック数φcntは、今回の制御インターバルで実際に1次側駆動パルスP1と2次側駆動パルスP2との間の位相差となるクロック数である。
【0085】
例えば、位相差クロック数算出部53は、次の式(3)によって、クロック数φcntを算出することができる。式(3)において、round関数は、引数の小数点以下の部分を四捨五入する関数である。
【0086】
φcnt=round(φcntf2) ・・・(3)
【0087】
クロック数φcntが、本開示の位相差制御信号の一例に相当する。
【0088】
位相差クロック数算出部53は、クロック数φcntf2からクロック数φcntを減算して、今回の制御インターバルでの丸め誤差Errを算出する(ステップS108)。位相差クロック数算出部53は、算出した丸め誤差Errを、次の制御インターバルで使用するために、記録媒体(例えば、メモリ)に記録する。
【0089】
例えば、位相差クロック数算出部53は、次の式(4)によって、丸め誤差Errを算出することができる。
【0090】
Err=φcntf2-φcnt ・・・(4)
【0091】
駆動パルス生成部54は、クロック数φcntを、1次側パルス信号S12と2次側パルス信号S13との間の位相差に設定する(ステップS110)。その後、制御部50は、今回の制御インターバルでの演算を終了する。
【0092】
(実施形態の第1制御例)
例えば、ディジタルPWM回路の分解能が1度(クロック数φcntを度に換算した値)であり、位相差φが116.1度で一定であり、丸めの方法として切り捨てを採用した場合を仮定して、検討する。
【0093】
第1制御インターバルから第9制御インターバルまででは、クロック数φcntを度に換算した値は116度となり、第10制御インターバルでは、クロック数φcntを度に換算した値は117度となる。クロック数φcntを度に換算した値の、第1制御インターバルから第10制御インターバルまでの時間平均は、116.1度となる。換言すると、制御部50は、実際の位相差の時間平均を、目標の位相差φに制御することができる。
【0094】
なお、この例では、クロック数φcntを度に換算した値は116度又は117度に変動することになるが、スイッチング周波数に近い高周波での変動であるので、2次側電圧V2の変動は、出力フィルタ回路(例えば、コンデンサ4)で抑制される。
【0095】
(実施形態の第2制御例)
図7は、第1の実施形態の電源装置の制御例の波形を示す図である。
図7において、横軸は、時間を表す。波形205は、位相差φを表し、波形206は、実際の位相差(クロック数φ
cntを度に換算した値)を表す。
【0096】
図7に示す例では、位相差φ(波形205)は、約115度から約117度まで直線状に変化している。位相差φ(波形205)は、タイミングt
0において、116度となっている。
【0097】
タイミングt0よりも前の期間207では、位相差φ(波形205)が115度と116度との間の値であるので、クロック数φcntを度に換算した値(波形206)は、115度又は116度となる。
【0098】
タイミングt0よりも後の期間208では、位相差φ(波形205)が116度と117度との間の値であるので、クロック数φcntを度に換算した値(波形206)は、116度又は117度となる。
【0099】
このように、制御部50は、クロック数φcntを度に換算した値の時間平均を、目標の位相差φに制御することができる。換言すると、制御部50は、実際の位相差の時間平均を、目標の位相差φに制御することができる。
【0100】
なお、この例では、クロック数φcntを度に換算した値は115度、116度又は117度に変動することになるが、スイッチング周波数に近い高周波での変動であるので、2次側電圧V2の変動は、出力フィルタ回路(例えば、コンデンサ4)で抑制される。
【0101】
(効果)
図8は、第1の実施形態の電源装置の出力特性を示す図である。
図8において、横軸は、電流制御指令(A)を表し、縦軸は、出力電流(A)を表す。
【0102】
制御部50は、クロック数φ
cntの時間平均を、目標のクロック数φ
cntf1に制御することができる。換言すると、制御部50は、実際の位相差の時間平均を、目標の位相差φに制御することができる。従って、電源装置1の出力特性は、
図8の波形209に示すように、略直線状になる。
【0103】
これにより、電源装置1は、高分解能ディジタルPWM回路を必要としないで、高精度且つ安定動作が可能となる。
【0104】
<第2の実施形態>
第1の実施形態では、実際の位相差の時間平均を目標の位相差φに制御する場合について説明したが、本開示はこれに限定されない。実際の周波数の時間平均を目標の周波数fに制御することとしてもよい。
【0105】
図9は、第2の実施形態の電源装置の構成を示す図である。電源装置101は、LLC共振を利用した電流共振コンバータ(LLCコンバータ)である。
【0106】
第2の実施形態では、電源装置101がフルブリッジ方式の電源装置としたが、本開示はこれに限定されない。電源装置101は、ハーフブリッジ方式の電源装置であっても良い。
【0107】
電源装置101は、直流電源2から出力されコンデンサ3により平滑化された1次側電圧V1を受ける。電源装置101から出力された直流電圧は、コンデンサ4により平滑化され、2次側電圧V2が負荷5に入力される。
【0108】
電源装置101は、ブリッジ回路110と、整流回路120と、トランス140と、コンデンサ141と、インダクタ142と、制御部150と、を含む。
【0109】
ブリッジ回路110は、第1アーム110aと、第2アーム110bと、を含む。ブリッジ回路110は、2個のアームを含む単相のブリッジ回路である。
【0110】
第1アーム110aの構成は、第1アーム10a(
図1参照)の構成と同様であるので、説明を省略する。第2アーム110bの構成は、第2アーム10b(
図1参照)の構成と同様であるので、説明を省略する。
【0111】
トランス140は、1次巻線140aと、2次巻線140bと、コア140cと、を含む。1次巻線140a及び2次巻線140bは、コア140cに巻回されている。
【0112】
1次巻線140aは、励磁インダクタンス140dを含む。1次巻線140aの一端は、インダクタ142及びコンデンサ141を介して、接続点N3に電気的に接続されている。1次巻線140aの他端は、接続点N4に電気的に接続されている。なお、励磁インダクタンス140dでは不足の場合は、インダクタンス素子を更に付加しても良い。
【0113】
励磁インダクタンス140d、インダクタ142及びコンデンサ141は、LLC共振回路を構成する。
【0114】
なお、本開示では、LLC共振回路が1次巻線140aの側にあることとしたが、これに限定されない。LLC共振回路は、2次巻線140bの側にあっても良い。また、LLC共振回路は、1次巻線140aの側と、2次巻線140bの側と、の両側にあっても良い。
【0115】
整流回路120は、ブリッジダイオードである。整流回路120は、ダイオード121からダイオード124までを含む。
【0116】
ダイオード121のアノードは、ダイオード122のカソードに電気的に接続されている。ダイオード121のカソードは、ダイオード123のカソードに電気的に接続されている。ダイオード123のアノードは、ダイオード124のカソードに電気的に接続されている。ダイオード122のアノードは、ダイオード124のアノードに電気的に接続されている。
【0117】
ダイオード121のアノードとダイオード122のカソードとの接続点N11が、整流回路120の一方の入力端子である。ダイオード123のアノードとダイオード124のカソードとの接続点N12が、整流回路120の他方の入力端子である。ダイオード121のカソードとダイオード123のカソードとの接続点N9が、整流回路120の一方(高電位側)の出力端子である。ダイオード122のアノードとダイオード124のアノードとの接続点N10が、整流回路120の他方(低電位側)の出力端子である。
【0118】
整流回路120の一方の入力端子である接続点N11は、トランス140の2次巻線140bの一端に電気的に接続されている。整流回路120の他方の入力端子である接続点N12は、トランス140の2次巻線140bの他端に電気的に接続されている。
【0119】
整流回路120の一方(高電位側)の出力端子である接続点N9は、コンデンサ4の一端(高電位側端)に電気的に接続されている。整流回路120の他方(低電位側)の出力端子である接続点N10は、コンデンサ4の他端(低電位側端)に電気的に接続されている。
【0120】
整流回路120は、2次巻線140bに励磁される電圧を全波整流して、コンデンサ4に出力する。コンデンサ4は、整流回路120で全波整流された電圧を平滑化する。
【0121】
制御部150は、ブリッジ回路110を制御する。制御部150は、駆動パルスP11をブリッジ回路110に出力することで、スイッチング素子11からスイッチング素子14のオン状態とオフ状態とを切り替える。制御部150は、駆動パルスP11の周波数を制御することにより、電源装置101の出力電圧、出力電流又は出力電力を制御できる。
【0122】
図10は、第2の実施形態の電源装置の制御部の制御ブロックを示す図である。
【0123】
制御部150は、減算器151と、周波数算出部152と、クロック数算出部153と、駆動パルス生成部154と、パルス駆動部155と、を含む。
【0124】
減算器151、周波数算出部152及びクロック数算出部153は、DSPとソフトウェアで実現することが例示される。駆動パルス生成部154は、DSPに内蔵されているディジタルPWM回路で実現することが例示される。パルス駆動部155は、電圧レベルを変換するレベルシフト回路で実現することが例示される。
【0125】
減算器151は、電圧制御指令値Vrefから信号S1を減算し、電圧偏差を表す信号S21を、周波数算出部152に出力する。
【0126】
なお、実施形態では、減算器151が電圧偏差を表す信号S21を出力することとし、制御部150が電圧制御することとしたが、本開示はこれに限定されない。減算器151が電流制御指令値から2次側出力電流を表す信号を減算することとし、制御部150が電流制御することとしても良い。或いは、減算器151が電力制御指令値から2次側出力電力を表す信号を減算することとし、制御部150が電力制御することとしても良い。
【0127】
周波数算出部152は、信号S21に基づいて、周波数fを算出し、クロック数算出部153に出力する。例えば、周波数算出部152は、信号S21にPID(比例積分微分)演算を行って、周波数fを算出することが例示されるが、本開示はこれに限定されない。周波数fは、ディジタルPWM回路の分解能未満の部分を含んでいて良い。
【0128】
周波数fが、本開示の周波数指令値信号の一例に相当する。
【0129】
クロック数算出部153は、周波数fに基づいて、ディジタルPWM回路が周波数とすることが可能な、パルス信号S22の1周期のクロック数Tcntを算出し、駆動パルス生成部154に出力する。
【0130】
駆動パルス生成部154は、ディジタルPWM回路が例示される。駆動パルス生成部154は、クロック数Tcntに基づいて、パルス信号S22をパルス駆動部155に出力する。
【0131】
パルス駆動部155は、パルス信号S22の電圧レベルを変換した駆動パルスP11をブリッジ回路110に出力する。
【0132】
図11は、第2の実施形態の電源装置の制御部のフローチャートである。制御部150は、制御インターバル毎に、
図11に示す処理を実行する。
【0133】
周波数算出部152は、信号S21に基づいて、周波数fを算出する(ステップS200)。先に説明したように、周波数fは、ディジタルPWM回路の分解能未満の部分を含んでいて良い。
【0134】
周波数fが、本開示の周波数指令値信号の一例に相当する。
【0135】
クロック数算出部153は、周波数fの1周期をクロック数Tcntf1に換算する(ステップS202)。例えば、クロック数算出部153は、次の式(5)によって、周波数fの1周期をクロック数Tcntf1に換算することができる。式(5)において、Tclkは、クロック周期である。
【0136】
Tcntf1=1/f×1/Tclk ・・・(5)
【0137】
クロック数Tcntf1は、ディジタルPWM回路の分解能未満の部分(例えば、小数点以下の部分)を含んでいて良い。
【0138】
クロック数算出部153は、クロック数Tcntf1に、前回の制御インターバルで算出された丸め誤差Errを加算して、クロック数Tcntf2を算出する(ステップS204)。丸め誤差Errは、後で説明するステップS208で算出される。クロック数Tcntf2は、前回の丸め誤差Errを加味して、今回の制御インターバルで駆動パルスP11の1周期(=1/f)としたいクロック数である。クロック数Tcntf2は、ディジタルPWM回路の分解能未満の部分(例えば、小数点以下の部分)を含んでいて良い。
【0139】
例えば、クロック数算出部153は、先に説明した式(2)によって、クロック数Tcntf2を算出することができる。
【0140】
丸め誤差Errが、本開示の誤差の一例に相当する。クロック数Tcntf1が、誤差を加算する前の、本開示のPWM周期指令値信号の一例に相当する。クロック数Tcntf2が、誤差を加算した後の、本開示のPWM周期指令値信号の一例に相当する。
【0141】
クロック数算出部153は、クロック数Tcntf2から整数のクロック数Tcntを算出する(ステップS206)。例えば、クロック数算出部153は、クロック数Tcntf2の中のディジタルPWM回路の分解能未満の部分を切り捨て、切り上げ又は四捨五入してクロック数Tcntを算出することができる。クロック数Tcntは、ディジタルPWM回路の分解能未満の部分(例えば、小数点以下の部分)を含まない。クロック数Tcntは、今回の制御インターバルで実際に駆動パルスP11の1周期となるクロック数である。
【0142】
例えば、クロック数算出部153は、先に説明した式(3)によって、クロック数Tcntを算出することができる。
【0143】
クロック数Tcntが、本開示のPWM周期制御信号の一例に相当する。
【0144】
クロック数算出部153は、クロック数Tcntf2からクロック数Tcntを減算して、今回の制御インターバルでの丸め誤差Errを算出する(ステップS208)。クロック数算出部153は、算出した丸め誤差Errを、次の制御インターバルで使用するために、記録媒体(例えば、メモリ)に記録する。
【0145】
例えば、クロック数算出部153は、先に説明した式(4)によって、丸め誤差Errを算出することができる。
【0146】
駆動パルス生成部154は、クロック数Tcntを、パルス信号S22の1周期のクロック数に設定する(ステップS210)。その後、制御部150は、今回の制御インターバルでの演算を終了する。
【0147】
制御部150は、クロック数Tcntの時間平均を目標の周期に制御することができる。つまり、制御部150は、パルス信号S22の周波数の時間平均を、目標の周波数fに制御することができる。これにより、電源装置101は、高分解能ディジタルPWM回路を必要としないで、高精度且つ安定動作が可能となる。
【0148】
(変形例)
第2の実施形態では、制御部150がクロック数Tcntf1、Tcntf2、及び、Tcntを用いて実際の周波数を制御することとしたが、本開示はこれに限定されない。制御部150は、クロック数Tcntf1、Tcntf2、及び、Tcntを用いて実際の周波数を制御することに代えて、周波数を直接用いて制御することとしても良い。例えば、制御部150は、次の式(6)から式(9)によって、周波数を直接制御できる。fclkは、クロック周波数である。
【0149】
fcntf1=f ・・・(6)
fcntf2=fcntf1+Err ・・・(7)
fcnt=1/round(fclk/fcntf2) ・・・(8)
Err=fcntf2-fcnt ・・・(9)
【0150】
周波数fcntf1が、誤差を加算する前の、本開示の周波数指令値信号の一例に相当する。周波数fcntf2が、誤差を加算した後の、本開示の周波数指令値信号の一例に相当する。周波数fcntが、本開示の周波数制御信号の一例に相当する。
【0151】
以上、本開示の実施形態を説明したが、これら実施形態の内容により本開示が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0152】
1、101 電源装置
2 直流電源
3、4、141 コンデンサ
5 負荷
6 電圧センサ
10 第1ブリッジ回路
10a 第1アーム
10b 第2アーム
10c 第3アーム
11、12、13、14、15、16、21、22、23、24、25、26 スイッチング素子
20 第2ブリッジ回路
31、32、33 リアクトル
40 トランス部
40a、40b、40c トランス
41a、41b、41c 第1巻線
42a、42b、42c 第2巻線
43a、43b、43c コア
44a、44b、44c 第1端子
45a、45b、45c 第2端子
50、150 制御部
51、151 減算器
52 位相差算出部
53 位相差クロック数算出部
54、154 駆動パルス生成部
55 1次側パルス駆動部
56 2次側パルス駆動部
110 ブリッジ回路
120 整流回路
140 トランス
142 インダクタ
140a 1次巻線
140b 2次巻線
140c コア
140d 励磁インダクタンス
121、122、123、124 ダイオード
152 周波数算出部
153 クロック数算出部
155 パルス駆動部