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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179271
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】表示支援装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 7/18 20060101AFI20231212BHJP
   H04N 23/60 20230101ALI20231212BHJP
   E02F 9/26 20060101ALI20231212BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
H04N7/18 J
H04N5/232 290
E02F9/26 A
E02F9/20 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092496
(22)【出願日】2022-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】藤原 裕介
(72)【発明者】
【氏名】大谷 真輝
(72)【発明者】
【氏名】石田 大輝
(72)【発明者】
【氏名】森 大樹
【テーマコード(参考)】
2D003
2D015
5C054
5C122
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003BA04
2D003BA06
2D003DA04
2D015HA03
2D015HB05
2D015HB07
5C054CA04
5C054CC02
5C054CF06
5C054CF07
5C054DA07
5C054DA09
5C054EA01
5C054EA03
5C054EA05
5C054EA07
5C054FC12
5C054FC14
5C054FC15
5C054FD07
5C054FE05
5C054FE06
5C054FE16
5C054FE18
5C054FE28
5C054FF03
5C054GB01
5C054HA30
5C122DA11
5C122EA55
5C122EA61
5C122EA63
5C122FA06
5C122FA16
5C122FH01
5C122FH02
5C122FH03
5C122FH04
5C122FH10
5C122FH11
5C122FH14
5C122FK23
5C122FK24
5C122HB01
5C122HB05
(57)【要約】
【課題】遠隔操作装置20のオペレータがクラスタゲージ47の表示情報を認識し易くした表示支援装置を提供する。
【解決手段】表示支援装置201は、作業機械40のキャブ424に配備されているクラスタゲージ47を撮影するクラスタ撮影カメラ415の撮影画像をそのまま再現するのではなく、クラスタゲージ47の表示情報に注目したデータ加工を施して生成した再生画面を生成して、遠隔操作装置20のクラスタ画像出力装置2215に表示させる。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠隔操作装置を用いた作業機械の遠隔操作を支援するための表示支援装置であって、
前記作業機械の運転室に配備されている作業機械側情報表示器を撮影するカメラの撮影画像データを加工して再生用画像データを生成し、
前記再生用画像データに基づく再生画面を前記遠隔操作装置に配備されている遠隔操作装置側情報表示器に表示させる、表示支援装置。
【請求項2】
前記再生画面は、前記撮影画像データの見た目に影響を与える加工により生成される前記再生用画像データに基づいて前記遠隔操作装置側情報表示器に表示させる、請求項1記載の表示支援装置。
【請求項3】
前記撮影画像データの加工は、前記再生画面のパラメータについての補正に係る加工である、請求項1または2記載の表示支援装置。
【請求項4】
前記再生画面のパラメータは、前記再生画面の輪郭、傾きまたは明度を含む、請求項3記載の表示支援装置。
【請求項5】
前記撮影画像データの加工は、前記撮影画像データからの前記作業機械側情報表示器の画像データ部分の抽出に係る加工である、請求項1又は2記載の表示支援装置。
【請求項6】
前記撮影画像データの加工は、前記遠隔操作装置側情報表示器の表示画面における特徴点の抽出に係る加工である、請求項1または2記載の表示支援装置。
【請求項7】
前記特徴点は、前記遠隔操作装置側情報表示器の表示画面における色、文字、記号、または映像の変化を含む、請求項6記載の表示支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オペレータが遠隔操作装置から作業機械を遠隔操作することを支援する表示支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
遠隔操作装置のオペレータは、作業機械側からの情報に基づいて作業機械を遠隔操作している。
【0003】
特許文献1は、作業機械の運転室に運転室の表示器の画面をカメラで撮影し、撮影画像をネットにより遠隔操作装置へ伝送し、遠隔操作装置の表示器に表示する表示支援装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-50748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の表示支援装置では、作業機械のカメラで撮影した作業機械の表示器(作業機械側情報表示器)の画面の映像がそのまま遠隔操作装置の表示器(遠隔操作装置側情報表示器)に表示されている。したがって、遠隔操作装置側情報表示器において適切な表示が行われるように、作業機械におけるカメラの取付け時または遠隔操作装置における遠隔操作の開始時に、作業機械と遠隔操作装置との両方で作業員が立ち会って、相互に連絡を取り合い、カメラの向きや画像調整等の作業を行う必要がある。
【0006】
本発明の目的は、作業機械側表示器の表示が遠隔操作装置側表示器に適切に表示されるように、作業機械と遠隔操作装置との両方で作業員が行わなければならない調整作業を省略できるようにした表示支援装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の表示支援装置は、
遠隔操作装置を用いた作業機械の遠隔操作を支援するための表示支援装置であって、
前記作業機械の運転室に配備されている作業機械側情報表示器を撮影するカメラの撮影画像データを加工して再生用画像データを生成し、
前記再生用画像データに基づく再生画面を前記遠隔操作装置に配備されている遠隔操作装置側情報表示器に表示させる。
【0008】
本発明の表示支援装置によれば、作業機械側情報表示器を撮影するカメラの撮影画像データを加工して再生用画像データを生成し、再生用画像データに基づく再生画面を遠隔操作装置側情報表示器に表示させる。加工によって、遠隔操作装置側情報表示器の画面は適正化されるので、作業機械側表示器を遠隔操作装置の表示器に適切に表示するために、作業機械と遠隔操作装置との両方で作業員が行わなければならない調整作業を省略することができる。
【0009】
本発明の表示支援装置は、前記再生画面は、前記撮影画像データの見た目に影響を与える加工により生成される前記再生用画像データに基づいて前記遠隔操作装置側情報表示器に表示させることが好ましい。
【0010】
当該構成の表示支援装置によれば、撮影画像データの見た目に影響を与える加工によって、遠隔操作装置側情報表示器に再生画面が表示される。これにより、遠隔操作装置側情報表示器に表示される再生画面は、オペレータが視認しやすいように自動調整される。
【0011】
本発明の表示支援装置は、前記撮影画像データの加工は、前記再生画面のパラメータについての補正に係る加工であることが好ましい。
【0012】
当該構成の表示支援装置によれば、撮影画像データの加工は、再生画面のパラメータについての補正とされる。これにより、遠隔操作装置側情報表示器に表示される再生画面は、設定されたパラメータにおいて適切なものに自動調整される。
【0013】
本発明の表示支援装置は、前記再生画面のパラメータは、前記再生画面の輪郭、傾きまたは明度を含むことが好ましい。
【0014】
当該構成の表示支援装置によれば、再生画面のパラメータは、再生画面の輪郭、傾きまたは明度を含む。これにより、遠隔操作装置側情報表示器に表示される再生画面は、オペレータから見易く自動調整される。
【0015】
本発明の表示支援装置は、前記撮影画像データの加工は、前記撮影画像データからの前記作業機械側情報表示器の画像データ部分の抽出に係る加工であることが好ましい。
【0016】
当該構成の表示支援装置によれば、撮影画像データの加工は、撮影画像データからの作業機械側情報表示器の画像データ部分の抽出に係る加工とされるので、作業機械側情報表示器を撮影するために、作業機械の運転席にすでに装備済みのカメラ(例:操縦用カメラ)を利用することが可能となる。すなわち、作業機械側情報表示器の撮影専用のカメラを追加することを省略することができる。
【0017】
本発明の表示支援装置は、前記撮影画像データの加工は、前記遠隔操作装置側情報表示器の表示画面における特徴点の抽出に係る加工であることが好ましい。
【0018】
当該構成の表示支援装置によれば、撮影画像データの加工は、遠隔操作装置側情報表示器の表示画面における特徴点の抽出に係る加工となる。これにより、再生用画像データのデータサイズが減少するので、再生用画像データの伝送や処理の負荷が軽減される。
【0019】
本発明の表示支援装置では、前記特徴点は、前記遠隔操作装置側情報表示器の表示画面における色、文字、記号、または映像の変化を含むことが好ましい。
【0020】
当該構成の表示支援装置によれば、特徴点は、遠隔操作装置側情報表示器の表示画面における色、文字、記号、または映像の変化を含む。これにより、遠隔操作装置のオペレータが作業機械の遠隔操作に重要な情報の漏れを抑止しつつ、再生用画像データの伝送や処理の負荷を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】遠隔操縦システム全体の模式図である。
図2】遠隔操作装置の一例の模式図である。
図3】作業機械の模式的な側面図である。
図4】キャブ内を実機撮像装置から見た図である。
図5】作業機械のキャブ内のクラスタゲージの撮影専用カメラであるクラスタ撮影カメラの取付けたときのキャブ内を示す図である。
図6】通常表示状態のクラスタゲージの正面図である。
図7】通知発生状態のクラスタゲージの正面図である。
図8】遠隔操作支援システムの機能についてのフローチャートである。
図9図1の遠隔操縦システムにおいて第1実施形態の表示支援装置の処理の実行に関連する所定の構成要素で構成したサブシステムのブロック図である。
図10図9の補正部で実施する補正処理の複数の具体例の説明図である。
図11図1の遠隔操縦システムにおいて第2実施形態の表示支援装置の処理の実行に関連する所定の構成要素で構成したサブシステムのブロック図である。
図12】第2実施形態で用いる実機撮像装置を装備するキャブの内部の側面図である。
図13図12から実機撮像装置の側方視の画角を抽出した図である。
図14図1の遠隔操縦システムにおいて第3実施形態の表示支援装置の処理の実行に関連する所定の構成要素で構成したサブシステムのブロック図である。
図15図14のテキスト画面生成部が生成した再生画像データに基づいて表示されたクラスタ画像出力装置の表示画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の複数の実施形態について説明する。本発明は、これら実施形態に限定されないことは言うまでもない。なお、複数の図間で同一の構成要素については、同一の符号を使用する。
【0023】
(遠隔操作支援システム)
図1は、本発明の実施形態の表示支援装置201を装備する遠隔操縦システム全体の模式図である。遠隔操作支援システムは、遠隔操作支援サーバ10と、遠隔操作装置20と、遠隔操作装置20を通じて遠隔操作可能な作業機械40と、により構成されている。
【0024】
この遠隔操作支援システムでは、表示支援装置201は、遠隔操作装置20により構成されているが、遠隔操作支援サーバ10または作業機械40により構成されていてもよい。さらに、表示支援装置201を構成する複数の処理または機能の要素が、遠隔操作支援サーバ10、遠隔操作装置20、および作業機械40に分散配置されていてもよい。
【0025】
遠隔操作支援サーバ10、遠隔操作装置20および作業機械40は、相互にネットワーク通信可能に構成されている。遠隔操作支援サーバ10および遠隔操作装置20の相互通信ネットワークと、遠隔操作支援サーバ10および作業機械40の相互通信ネットワークと、は同一であってもよく相違していてもよい。なお、相互通信ネットワークは、典型的には、後述の図9等に示しているインターネット50である。
【0026】
(遠隔操作支援サーバ)
遠隔操作支援サーバ10は、演算処理装置101と、データベース102と、を備えている。演算処理装置101は、シングルコアプロセッサまたはマルチコアプロセッサもしくはこれを構成するプロセッサコアにより構成され、メモリなどの記憶装置から必要なデータおよびソフトウェアを読み取り、当該データを対象として当該ソフトウェアに従った後述の演算処理を実行する。データベース102は、撮像画像データ等を記憶保持する。データベース102は、遠隔操作支援サーバ10とは別個のデータベースサーバにより構成されていてもよい。
【0027】
(遠隔操作装置)
遠隔操作装置20は、遠隔制御装置200と、遠隔入力インターフェース210と、遠隔出力インターフェース220と、を備えている。遠隔制御装置200は、演算処理装置(シングルコアプロセッサまたはマルチコアプロセッサもしくはこれを構成するプロセッサコア)により構成され、メモリなどの記憶装置から必要なデータおよびソフトウェアを読み取り、当該データを対象として当該ソフトウェアに従った演算処理を実行する。表示支援装置201は、遠隔制御装置200が実行するソフトウェアとして遠隔制御装置200に実装されている。
【0028】
遠隔入力インターフェース210は、遠隔操作機構211を備えている。遠隔出力インターフェース220は、遠隔画像出力装置221と、遠隔音響出力装置222と、遠隔無線通信機器224と、を備えている。
【0029】
遠隔操作機構211には、走行用操作装置と、旋回用操作装置と、ブーム用操作装置と、アーム用操作装置と、バケット用操作装置と、が含まれている。各操作装置は、回動操作を受ける操作レバーを有している。走行用操作装置の操作レバー(走行レバー)は、作業機械40の下部走行体410(図3)を動かすために操作される。走行レバーは、走行ペダルを兼ねていてもよい。例えば、走行レバーの基部または下端部に固定されている走行ペダルが設けられていてもよい。旋回用操作装置の操作レバー(旋回レバー)は、作業機械40の旋回機構430を構成する油圧式の旋回モータを動かすために操作される。ブーム用操作装置の操作レバー(ブームレバー)は、作業機械40においてブーム441を動かすブームシリンダ442の操作に使用される。アーム用操作装置の操作レバー(アームレバー)は、作業機械40のアーム443を動かすアームシリンダ444の操作に使用される。バケット用操作装置の操作レバー(バケットレバー)は、作業機械40のバケット445を動かすバケットシリンダ446の操作に使用される。
【0030】
図2は、遠隔操作装置20の一例の模式図である。遠隔操作機構211(図1)を構成する各操作レバーは、オペレータが着座するためのシートStの周囲に配置されている。シートStは、アームレスト付きのハイバックチェアのような形態であるが、ヘッドレストがないローバックチェアのような形態、または、背もたれがないチェアのような形態など、オペレータが着座できる任意の形態の着座部であってもよい。
【0031】
シートStの前方に左右のクローラに応じた左右一対の走行レバー2110が左右横並びに配置されている。一つの操作レバーが複数の操作レバーを兼ねていてもよい。例えば、図2に示されているシートStの左側フレームの前方に設けられている左側操作レバー2111が、前後方向に操作された場合にアームレバーとして機能し、かつ、左右方向に操作された場合に旋回レバーとして機能してもよい。同様に、図2に示されているシートStの右側フレームの前方に設けられている右側操作レバー2112が、前後方向に操作された場合にブームレバーとして機能し、かつ、左右方向に操作された場合にバケットレバーとして機能してもよい。レバーパターンは、オペレータの操作指示によって任意に変更されてもよい。
【0032】
遠隔画像出力装置221は、シートStの前方、左斜め前方および右斜め前方のそれぞれに配置された略矩形状の画面を有する中央遠隔画像出力装置2210、左側遠隔画像出力装置2211および右側遠隔画像出力装置2212、ならびにクラスタ画像出力装置2215により構成されている。
【0033】
中央遠隔画像出力装置2210、左側遠隔画像出力装置2211および右側遠隔画像出力装置2212のそれぞれの画面(画像表示領域)の形状およびサイズは同じであってもよく相違していてもよい。クラスタ画像出力装置2215は、作業機械40のキャブ424内のクラスタゲージ47(図4)を表示するものであり、遠隔操作の樽にシートStに着座中のオペレータが視認可能となる向きで、上辺を中央遠隔画像出力装置2210の下辺の右端部に取り付けられている。
【0034】
中央遠隔画像出力装置2210の画面および左側遠隔画像出力装置2211の画面が傾斜角度θ1(例えば、120°≦θ1≦150°)をなすように、左側遠隔画像出力装置2211の右縁が、中央遠隔画像出力装置2210の左縁に隣接している。図2に示されているように、中央遠隔画像出力装置2210の画面および右側遠隔画像出力装置2212の画面が傾斜角度θ2(例えば、120°≦θ2≦150°)をなすように、右側遠隔画像出力装置2212の左縁が、中央遠隔画像出力装置2210の右縁に隣接している。当該傾斜角度θ1およびθ2は同じであっても相違していてもよい。
【0035】
中央遠隔画像出力装置2210、左側遠隔画像出力装置2211および右側遠隔画像出力装置2212のそれぞれの画面は、鉛直方向に対して平行であってもよく、鉛直方向に対して傾斜していてもよい。中央遠隔画像出力装置2210、左側遠隔画像出力装置2211および右側遠隔画像出力装置2212のうち少なくとも1つの画像出力装置が、複数に分割された画像出力装置により構成されていてもよい。例えば、中央遠隔画像出力装置2210が、略矩形状の画面を有する上下に隣接する一対の画像出力装置により構成されていてもよい。
【0036】
遠隔音響出力装置222は、一または複数のスピーカーにより構成され、シートStの後方、左アームレスト後部および右アームレスト後部のそれぞれに配置された中央音響出力装置2220、左側音響出力装置2221および右側音響出力装置2222により構成されている。中央音響出力装置2220、左側音響出力装置2221および右側音響出力装置2222のそれぞれの仕様は同じであってもよく相違していてもよい。遠隔音響出力装置222は、シートStの周りで位置の変位が可能な音響である仮想音源Vssを実現する。
【0037】
(作業機械)
作業機械40は、実機制御装置400と、実機入力インターフェース41と、実機出力インターフェース42と、作業機構440と、を備えている。実機出力インターフェース42は、遠隔操作支援サーバ10および遠隔操作装置20と無線通信を実行するための実機無線通信機器422を備えている。
【0038】
実機制御装置400は、演算処理装置(シングルコアプロセッサまたはマルチコアプロセッサもしくはこれを構成するプロセッサコア)により構成され、メモリなどの記憶装置から必要なデータおよびソフトウェアを読み取り、当該データを対象として当該ソフトウェアに従った演算処理を実行する。
【0039】
図3は、作業機械40の模式的な側面図である。作業機械40は、例えばクローラショベル(建設機械)であり、クローラ式の下部走行体410と、下部走行体410に旋回機構430を介して旋回可能に搭載されている上部旋回体420と、を備えている。上部旋回体420の前方左側部にはキャブ424(運転室)が設けられている。上部旋回体420の前方中央部には作業機構440が設けられている。
【0040】
作業機構440は、上部旋回体420に起伏可能に装着されているブーム441と、ブーム441の先端に回動可能に連結されているアーム443と、アーム443の先端に回動可能に連結されているバケット445と、を備えている。作業機構440には、伸縮可能な油圧シリンダにより構成されているブームシリンダ442、アームシリンダ444およびバケットシリンダ446が装着されている。
【0041】
ブームシリンダ442は、作動油の供給を受けることにより伸縮してブーム441を起伏方向に回動させるように当該ブーム441と上部旋回体420との間に介在する。アームシリンダ444は、作動油の供給を受けることにより伸縮してアーム443をブーム441に対して水平軸回りに回動させるように当該アーム443と当該ブーム441との間に介在する。バケットシリンダ446は、作動油の供給を受けることにより伸縮してバケット445をアーム443に対して水平軸回りに回動させるように当該バケット445と当該アーム443との間に介在する。
【0042】
実機入力インターフェース41は、実機操作機構411と、実機撮像装置412と、実機周辺監視装置414と、クラスタ撮影カメラ415と、を備えている。実機操作機構411は、キャブ424の内部に配置された運転座席429(図12)の周囲に遠隔操作機構211と同様に配置された複数の操作レバーを備えている。遠隔操作レバーの操作態様に応じた信号を受信し、当該受信信号に基づいて実機操作レバーを動かす駆動機構またはロボットがキャブ424に設けられている。
【0043】
(キャブ)
図4は、キャブ424内を実機撮像装置412(図3)から見た図である。実機撮像装置412は、図4の光景に係る撮像画像を生成する。実機撮像装置412(図1)による撮影画像には、モニタ表示装置としてクラスタゲージ47の画像が含まれている。実機撮像装置412は、フロントウィンドウ4210および左右一対のサイドウィンドウ4211,4212(図4)越しに作業機械40の前方を撮影するビデオカメラとしてキャブ424内に既設されている。フロントウィンドウ4210およびサイドウィンドウ4211,4212のうち一部または全部が省略されていてもよい。また、実機撮像装置412は、クラスタゲージ47を撮像領域に含むよう既設されている。クラスタゲージ47は、作業機械40の計器として、作業機械40に装備されている各種センサの検出値や検出状態を作業機械40の運転者に表示するものになっている。
【0044】
実機周辺監視装置414は、基本姿勢(例えば、光軸が前方に向けられている姿勢)の実機撮像装置412では撮像できない実空間領域(例えば、キャブ424の右側領域、左側領域および/もしくは後方領域および/または死角領域)における対象物体obj(例えば、作業員、他の作業機械および/または車両など)の存在を検知するための測距センサ等により構成されている。
【0045】
実機撮像装置412の撮影画像において、中央は、フロントウィンドウ4210越しに見えるキャブ424の前方の風景であり、左右の端部は、それぞれ左右のサイドウィンドウ4211,4212越しに見えるキャブ424の斜め前方の風景となっている。実機撮像装置412のパン機能および/またはチルト機能、ならびにズーム機能が、オペレータの手動操作または自動制御により発揮されてもよい。
【0046】
図4の撮影画像の例では、作業機械40の左右のクローラに応じた左右一対の走行レバー4110と共に、フロントウィンドウ4210の窓枠の右隅部に取り付けられたクラスタゲージ47が映っている。クラスタゲージ47の画面は、図2のクラスタ画像出力装置2215に映し出される。
【0047】
(クラスタゲージ)
図5は、作業機械40のキャブ424内のクラスタゲージ47に撮影専用カメラであるクラスタ撮影カメラ415を取付けたときのキャブ424内を示す図である。図5は、実機撮像装置412(図1)の位置から前方を見たときの光景でもある。クラスタ撮影カメラ415は、キャブ424内に既設されている掛け具416を利用して、取り付けられている。掛け具416は、詳細には、後述の図12で再説明するが、右のサイドウィンドウ4212に沿って延在している。掛け具416は、オペレータがキャブ424内の運転座席に着座している時に、オペレータの右肩付近の高さになるように、配設されている。
【0048】
カメラ固定具417は、例えばカメラ取付用として市販されているものが使用可能である。カメラ固定具417は、関節付き構造またはフレキシブル構造を有し、基端部において掛け具416の所定の前後方向に位置に固定され、先端部においてクラスタ撮影カメラ415の底部のねじ穴にねじ留めされている。
【0049】
クラスタ撮影カメラ415の撮影範囲は、作業機側情報表示器としてのクラスタゲージ47のほぼ全体をカバーするように、カメラ固定具417の長さ、形状および/または角度が調整される。クラスタ撮影カメラ415は、クラスタゲージ47にほぼ正対する位置に保持されることが望ましいが、取付位置は、位置調整作業の不備や作業機械40に生じる振動等の要因により所定の正対位置から多少のずれが生じることが通常である。このため、クラスタ撮影カメラ415の撮影画像を、データ加工することなく、生(なま)データのまま、クラスタ画像出力装置2215(図9)で再生すると、遠隔操作装置20のオペレータからはクラスタゲージ47の肝心な表示情報が見づらいという問題が生じる。その対策については、図9以降で説明する。
【0050】
図6および図7は、それぞれ通常表示状態および通知発生状態におけるクラスタゲージ47の正面図である。相違点は、図7では、クラスタゲージ47の注意通知ウィンドウ4717が表示されているのに対し、図6では、注意通知ウィンドウ4717が表示されていない点である。
【0051】
クラスタゲージ47の正面は、上側の表示画面471と下側のキー配列部472とに分割されている。表示画面471には、キー配列部472より十分に大きな面積が確保されている。図6および図7の表示画面471の表示内容は、一例である。図示の例では、表示画面471のみがクラスタゲージ47の画面表示となっており、キー配列部472は、物理的なキーから構成されている。しかしながら、表示画面471およびキー配列部472を一体のタッチパネルから構成して、クラスタゲージ47の正面全体を表示画面から構成することもできる。
【0052】
表示画面471には、温度計4711、燃料計4712、数値表示部4713および外部画像部4714の表示が含まれている。数値表示部4713には、作業中の所定の作業パラメータについての数値(実際には、”○○”に具体的な数値が表示される。)が表示されている。外部画像部4714は、表示画面471の下部を占めている。外部画像部4714の画像は、実機撮像装置412とは別に配備されたビデオカメラが撮影する撮影画像であり、例えば、上部旋回体420の後部に配備されて、作業機械40の後方を撮影するビデオカメラ(図示せず)により撮影された撮影画像や、実機周辺監視装置414が検知した対象物体objの距離画像である。
【0053】
図7の注意通知ウィンドウ4717の通知内容は、例えばオペレータが作業機械40に搭乗して直接運転するときの注意喚起や、作業機械40の処理においてエラーが発生したときの各種エラーである。注意通知ウィンドウ4717は、オペレータが見落とさないように、目立つ背景色(例:赤色)の上にテキスト(文字や数字)が記載されている。この例では、注意通知ウィンドウ4717上のテキストは、作業機械40の燃料が所定レベル以下となったことをオペレータに通知する内容になっている。
【0054】
(遠隔操作支援システムの作動)
図8は、遠隔操作支援システムの機能についてのフローチャートである。当該フローチャートにおいて「”C”+”数字”(例:C10およびC40)」が記載されているブロックは、記載スペースの関係上、具体的な処理内容を示していない。これらのブロックは、データの送信および/または受信を意味し、当該データの送信および/または受信を条件として分岐方向の処理が実行される条件分岐を意味する処理内容となっている。
【0055】
以降、遠隔画像出力装置221のうち中央遠隔画像出力装置2210、左側遠隔画像出力装置2211および右側遠隔画像出力装置2212をクラスタ画像出力装置2215と区別するために、適宜、「メイン画像出力装置」で総称する。また、メイン画像出力装置の再生画面とクラスタ画像出力装置2215の再生画面とを区別するために、適宜、それぞれ「メイン再生画面」および「クラスタ再生画面」という。
【0056】
図8のフローチャートにおいて、遠隔制御装置200の表示支援装置201による処理は、STEP212で実施される。変形例では、表示支援装置は、遠隔操作支援サーバ10の演算処理装置101または作業機械40の実機制御装置400内に配備されてもよい。表示支援装置が遠隔操作支援サーバ10の演算処理装置101に配備される場合は、当該表示支援装置による処理は、STEP110において実施される。表示支援装置が作業機械40の実機制御装置400内に配備される場合は、当該表示支援装置による処理は、STEP410において実施される。
【0057】
図8のフローチャートを時間順に説明する。最初に、遠隔操作装置20において、遠隔無線通信機器224を通じて、遠隔操作支援サーバ10に対して環境確認要求が送信される(図8/STEP210)。例えば、オペレータにより遠隔入力インターフェース210を通じて指定操作があったことが、環境確認要求の送信開始要件として定められていてもよい。「指定操作」は、例えば、オペレータが遠隔操作を意図する作業機械40を指定するための遠隔入力インターフェース210におけるタップなどの操作である。
【0058】
遠隔操作支援サーバ10において、環境確認要求が受信された場合、演算処理装置101により当該環境確認要求が該当する作業機械40(作業機械40が複数存在することを想定している。)に対して送信される(図8/C10)。
【0059】
作業機械40において、実機無線通信機器422を通じて環境確認要求が受信された場合(図8/C40)、実機制御装置400により実機撮像装置412のメイン撮像画像およびクラスタ撮影カメラ415のクラスタ撮像画像の両撮像画像が取得され、かつ、実機無線通信機器422を通じて、メイン撮像画像およびクラスタ撮像画像をそれぞれ表わすメイン撮像画像データ及びクラスタ撮像画像データが遠隔操作支援サーバ10に対して継続的に送信される(図8/STEP410)。
【0060】
作業機械40は、STEP410の実施以降、遠隔操作支援サーバ10から送信停止の指示があるまで、両撮像画像データの送信を継続する。
【0061】
遠隔操作支援サーバ10において、演算処理装置101により、作業機械40から遠隔操作装置20へメイン撮像画像データおよびクラスタ撮像画像データを中継する(図8/C11)。演算処理装置101は、中継の際、単なる中継にとどまらず、メイン撮像画像データおよびクラスタ撮像画像データに対し、データベース102に基づく所定のデータを付加して遠隔操作装置20へ送信したり、データベース102に所定の記録情報(例:中継のログ情報や作業機械40の管理情報)を記録してもよい。
【0062】
遠隔操作装置20において、遠隔無線通信機器224を通じて遠隔操作支援サーバ10からメイン撮像画像データおよびクラスタ撮像画像データが受信された場合(図8/C21)、遠隔操作装置20の遠隔制御装置200は、メイン撮像画像データに基づき生成したメイン再生画面をメイン画像出力装置(遠隔画像出力装置221の中央遠隔画像出力装置2210、左側遠隔画像出力装置2211および右側遠隔画像出力装置2212)に出力する。遠隔制御装置200は、また、受信したクラスタ撮像画像データに対しては所定のデータ加工を行ってから、クラスタ再生画像データを生成する。そして、クラスタ再生画像データに基づく再生画面を遠隔画像出力装置221のクラスタ画像出力装置2215に表示する(図8/STEP212)。なお、本発明の表示支援処理の各実施形態におけるデータ加工の詳細については、図9以降で後述する。
【0063】
遠隔操作装置20のオペレータは、メイン画像出力装置およびクラスタ画像出力装置2215のそれぞれに継続的に表示されている再生画面を見つつ、遠隔操作装置20の遠隔操作機構211を操作して、作業機械40を遠隔操縦する。オペレータによる遠隔操作機構211の操作は、遠隔操作態様として遠隔制御装置200により認識され、遠隔制御装置200は、遠隔操作指令として遠隔操作支援サーバ10に送信する(図8/STEP220)。
【0064】
遠隔操作支援サーバ10において、演算処理装置101により当該遠隔操作指令が受信された場合、演算処理装置101により、当該遠隔操作指令が作業機械40に対して送信される(図8/C12)。
【0065】
作業機械40において、実機制御装置400により、実機無線通信機器422を通じて操作指令が受信された場合(図8/C41)、作業機構440等の動作が制御される(図8/STEP420)。例えば、バケット445により作業機械40の前方の土をすくい、上部旋回体420を旋回させたうえでバケット445から土を落とす作業が実行される。
【0066】
(表示支援装置)
以下、図9図15を参照して、表示支援装置201の種々の実施形態について説明する。表示支援装置201は、遠隔操縦システム(図1)に組み込まれて、表示支援処理を実施する。実施の際には、遠隔操縦システム内の所定の構成要素と間接的な連携が必要となる。典型的には、所定の構成要素には、遠隔操作支援サーバ10における演算処理装置101と、遠隔操作装置20における遠隔制御装置200および遠隔画像出力装置221と、作業機械40における実機制御装置400および実機無線通信機器422とが含まれる。具体的な所定の構成要素については、各実施形態で説明する。
【0067】
なお、図9図15の実施形態では、遠隔操縦システムの構成簡略化のために、遠隔操作装置20と作業機械40とが、間に遠隔操作支援サーバ10を介在させることなく、データ送受する場合の遠隔操縦システムに組み込まれた表示支援装置201を示している。したがって、所定の構成要素から、遠隔操作支援サーバ10における演算処理装置101は除外されている。
【0068】
(第1実施形態)
図9は、図1の遠隔操縦システムにおいて第1実施形態の表示支援装置201の処理の実行に関連する所定の構成要素で構成したサブシステムのブロック図である。図9のサブシステムは、データの流れ順に、作業機械40におけるクラスタ撮影カメラ415、実機制御装置400、および実機無線通信機器422と、遠隔操作装置20における遠隔無線通信機器224、遠隔制御装置200および遠隔画像出力装置221とを備えている。実機無線通信機器422と、遠隔無線通信機器224とは、ネットワークとしてのインターネット50により接続されている。
【0069】
さらに、具体的には、実機制御装置400には、エンコーダ451が含まれる。実機無線通信機器422には、ハブ452およびWIFI部453が含まれる。遠隔無線通信機器224には、WIFI部251が含まれる。遠隔制御装置200には、補正部2521を備えるPC252が含まれる。遠隔画像出力装置221には、クラスタ画像出力装置2215が含まれる。補正部2521は、第1実施形態の表示支援装置201を構成する。
【0070】
クラスタ撮影カメラ415は、詳細にはビデオカメラであり、動画の撮影画像を出力している。撮影画像は、典型的にデジタル信号であるが、アナログ信号であってもよい。エンコーダ451は、クラスタ撮影カメラ415の出力を所定の伝送規格に合致したデジタル信号に変換し、ハブ452に出力する。
【0071】
ハブ452は、エンコーダ451からの入力を含む複数の入力を切り替えてWIFI部453に出力する。WIFI部453は、インターネット50を介して遠隔操作装置20のWIFI部251にデータを送信する。WIFI部251,453は、ルータに内蔵されているものが使用される。
【0072】
遠隔操作装置20において、補正部2521は、WIFI部251を介して受信した撮影画像データを補正した再生用画像データを生成する。補正部2521が実施する具体的な補正処理については、図10で後述する。
【0073】
遠隔操作装置2021が生成する再生用画像データは、クラスタ画像出力装置2215において表示される再生画面の基礎になるものである。クラスタ画像出力装置2215は、PC252からの再生用画像データに基づいて再生画面を出力する。こうして、クラスタ画像出力装置2215は、クラスタ撮影カメラ415が撮影により生成した映像に基づく再生画面(例:図6または図7)を再生して、遠隔操作装置20のオペレータに提供する。
【0074】
図10は、図9の補正部2521で実施する補正処理の複数の具体例の説明図である。ここでは、クラスタ画像出力装置2215における再生画面の補正パラメータとして輪郭、傾きおよび明度が例示されている。補正部2521は、設定された各補正パラメータについて、目標値またはその許容範囲となるように、補正前の撮影画像データを補正する。
【0075】
補正処理について詳説すると、キャブ424に配備するクラスタ撮影カメラ415は、クラスタゲージ47の縦横がクラスタ撮影カメラ415の縦横の画角にほぼ等しくなる距離でクラスタゲージ47に正対して取り付けられることが適切である。
【0076】
しかしながら、クラスタ撮影カメラ415は、通常、クラスタゲージ47に対して縦方向、横方向および周方向(クラスタゲージ47の表示面の法線に対する回転方向)にずれて取り付けられたり、事情によりずれて取り付けざるを得ないことがある。そのような場合、クラスタ撮影カメラ415の撮影画像をそのままクラスタ画像出力装置2215に画面表示すると、クラスタ画像出力装置2215における、クラスタゲージ47を映した画面形状は、本来の形状(この例では、縦長の矩形)にならず、例えば、図10の左側の上から1番目および2番目に補正前の形状として示すように、台形になったり、傾斜したりして、いわゆる歪みを含む形状で表示されてしまう。歪みを含む映像画面は、遠隔操作装置20のオペレータから見づらく、クラスタゲージ47における表示情報を理解しづらくする。
【0077】
補正部2521は、これに対処して、クラスタ画像出力装置2215におけるクラスタゲージ47の再生形状および傾斜角が、それぞれ図10の右側の上から1番目および2番目に補正後の形状および傾斜角0°となるように、クラスタ撮影カメラ415の撮影画像に基づく撮影画像データをデータ加工して、元データとしての撮影画像データを変更して、遠隔操作装置20のオペレータの見た目に影響を与える再生画像の基にする再生用画像データを生成する。これにより、クラスタ画像出力装置2215におけるクラスタゲージ47の再生画面は、傾斜角0°のクラスタゲージ47の本来の形状、すなわち歪みが解消された状態で表示される。
【0078】
図10の一番下に示す補正部2521による補正例は、明度の補正である。例えば、クラスタ撮影カメラ415における表示画面の明度にクラスタ画像出力装置2215の再生画面の明度を一致させたり、クラスタゲージ47の実際の明度に関係なく、クラスタ画像出力装置2215に再生されるクラスタゲージ47の映像の明度が所望値になるように、明度が補正される。
【0079】
第1実施形態では、表示支援装置201としての補正部2521は、遠隔操作装置20に装備されているが、作業機械40に装備させることもできる。さらに、遠隔操作装置20と作業機械40との間に遠隔操作支援サーバ10を中継させる場合には、補正部2521を遠隔操作支援サーバ10に装備させることもできる。
【0080】
補正部2521が作業機械40に配備される場合、補正部2521は、データの流れ方向にエンコーダ451の前または後ろに設けられる。なお、補正処理は、遠隔操作支援サーバ10や遠隔操作装置20で行う方が有利である。なぜならば、遠隔操作装置20は、商用電源から電力供給を受けているのに対し、作業機械40の電源は、バッテリであり、作業機械40で補正処理が行われる場合には、作業機械40のバッテリの電力消費を高めてしまうからである。
【0081】
このように、クラスタ撮影カメラ415で撮影したクラスタゲージ47の撮影画像が、PC252の補正部2521で補正されて、クラスタ画像出力装置2215に適正に表示される結果、従来、遠隔操作装置20の作業員と作業機械40の作業員との二人で、遠隔操作開始前に行っていた調整作業を省略することができる。なお、全自動補正の場合は、遠隔操作装置20と作業機械40との両方で作業員による調整作業を省略できるが、遠隔操作装置20と作業機械40とのうち、補正部2521を装備する方のみは、調整作業員を残して、当該調整作業員が遠隔操作装置20の作動開始に先立って手動で各補正パラメータについて調整することもできる。
【0082】
(第2実施形態)
図11は、図1の遠隔操縦システムにおいて第2実施形態の表示支援装置201の処理の実行に関連する所定の構成要素で構成したサブシステムのブロック図である。第1実施形態との相違点を述べると、第2実施形態では、第1実施形態のクラスタ撮影カメラ415および補正部2521は、それぞれ実機撮像装置412およびクラスタ映像トリミング部2523に置き換えられている。クラスタ映像トリミング部2523は、表示支援装置201を構成している。クラスタ映像トリミング部2523が構成要素になっているPC252は、遠隔制御装置200の構成要素である。
【0083】
図12は、第2実施形態で用いる実機撮像装置412を装備するキャブ424の内部の側面図である。実機撮像装置412は、図4で前述したように、キャブ424の外側前方をフロントウィンドウ4210越しに撮影するメインカメラとしてキャブ424内に配備されている。
【0084】
実機撮像装置412について詳述する前に、キャブ424の内部を概略的に説明する。キャブ424は、前側をフロントウィンドウ4210で覆われているとともに、後ろ側と下側をそれぞれ後壁部433および下壁部435で画成されている。床部436は、下壁部435との間に間隙を空けて、下壁部435の上に配設される。下壁部435と床部436との間の間隙には、機器や配線(図示せず)が配設されている。
【0085】
運転座席429は、フロントウィンドウ4210に対峙して、床部436の上に配設される。クラスタゲージ47は、運転座席429に着座したオペレータがフロントウィンドウ4210の右斜め下方に見下ろせる場所に配置されている。隔壁431は、運転座席429の後ろ側にかつキャブ424の後壁部433を運転座席429の背もたれの高さまで覆うように立設されている。
【0086】
掛け具416(図5も参照)は、キャブ424の前後方向に長い矩形状のループであり、キャブ424の右側の内壁に前後方向の両端部において固定されている。実機撮像装置412は、前述の図4で示した撮影範囲が実現される向きおよび位置で隔壁431の上端部に取り付けられている。
【0087】
図13は、図12から実機撮像装置412の側方視の画角を抽出した図である。αは、実機撮像装置412の画角範囲である。βは、実機撮像装置412から見たクラスタゲージ47の画角範囲であり、画角範囲αの内側に存在する。
【0088】
なお、(a)画角範囲βの位置は、クラスタゲージ47の取付時に固定されるので、この固定された相対位置をPC252においてあらかじめ設定しておくことにより、設定後は、クラスタ映像トリミング部2523は、画角範囲αから画角範囲βを支障なくトリミングすることができる。
【0089】
また、クラスタ映像トリミング部2523は、上記(a)の固定画角範囲のトリミングに代えて、クラスタゲージ47の特徴(例:輪郭部の色、輪郭形状または四隅にあらかじめ付けた所定のマーク)に基づいてトリミングの範囲を動的に決定することもできる。
【0090】
図11に戻って、クラスタ映像トリミング部2523は、実機撮像装置412の撮影画像からクラスタゲージ47の画像部分をトリミングする。この結果、PC252は、クラスタ映像トリミング部2523がトリミング加工して抽出して生成したクラスタゲージ47の再生用画像データをクラスタ画像出力装置2215に出力する。クラスタ画像出力装置2215は、PC252からの入力に基づく再生画面を表示する。
【0091】
このように、クラスタ撮影カメラ415で撮影したクラスタゲージ47の撮影画像が、PC252のクラスタ映像トリミング部2523で補正されて、クラスタ画像出力装置2215に表示される結果、従来、遠隔操作装置20の作業員と作業機械40の作業員との二人で、遠隔操作開始前に行っていた調整作業を省略または遠隔操作装置20のオペレータ単独(トリミング範囲の手動設定)で行うことができる。
【0092】
第2実施形態においても、表示支援装置201を遠隔操作装置20から作業機械40に移すこともできる。さらに、遠隔操作装置20と作業機械40との間に遠隔操作支援サーバ10を中継させる場合には、表示支援装置201を遠隔操作支援サーバ10に配備することもできる。
【0093】
(第3実施形態)
図14は、図1の遠隔操縦システムにおいて第3実施形態の表示支援装置201の処理の実行に関連する所定の構成要素で構成したサブシステムのブロック図である。第1実施形態との相違点を述べると、第3実施形態では、第1実施形態のエンコーダ451は、特徴点抽出部456とテキスト送信部457とに置き換えられている。また、第3実施形態では、第1実施形態の補正部2521は、テキスト画面生成部2525に置き換えられている。
【0094】
特徴点抽出部456と、テキスト送信部457と、テキスト画面生成部2525とは、表示支援装置201を構成する。
【0095】
特徴点抽出部456は、実機制御装置400の構成要素である。テキスト送信部457は、ハブ452およびWIFI部453と共に、実機無線通信機器422の構成要素である。テキスト画面生成部2525は、PC252の構成要素であり、PC252は、遠隔制御装置200の構成要素である。
【0096】
特徴点抽出部456は、クラスタ撮影カメラ415の撮影画像に基づく撮影画像データから特徴点を抽出する。特徴点は、例えば色・文字・記号・動体認識(映像の変化)などであり、テキスト表示領域を示したものである。例えば、このクラスタゲージ47では、注意喚起やエラーのテキストの通知は、赤の背景色の上にテキストが表示されるようになっている(図7の注意通知ウィンドウ4717)。したがって、特徴点抽出部456は、クラスタ撮影カメラ415の撮影画像から赤色の領域としての注意通知ウィンドウ4717を抽出し、抽出した注意通知ウィンドウ4717に対して周知のOCR(Optical character recognition)による文字認識を使って、表示中のテキストをテキストコードで抽出する。テキストコードは、画像に比してデータサイズが大幅に低減している。
【0097】
テキスト送信部457は、特徴点抽出部456が抽出したテキストコードを遠隔操作装置20にシリアル送信する。こうして、作業機械40から遠隔操作装置20に伝送される情報のデータサイズは大幅に圧縮される。すなわち、伝送負荷およびその後の再生画面の生成処理の負荷が大幅に軽減する。
【0098】
遠隔操作装置20において、テキスト画面生成部2525は、テキスト送信部457から受信したテキストコードに基づいて再生画像データを生成する。PC252は、再生画像データに基づく再生画面を生成し、クラスタ画像出力装置2215に出力する。これにより、クラスタ画像出力装置2215は、作業機械40のクラスタゲージ47が表示している注意通知ウィンドウ4717(図7)のテキストを表示する。図15は、図14のテキスト画面生成部2525が生成した再生画像データに基づいて表示されたクラスタ画像出力装置2215の表示画面を示している。また、遠隔音響出力装置222にテキスト送信部457から受信したテキストコードに基づいて音声が出力されることで、注意喚起やエラーのテキストの通知がなされてもよい。
【0099】
(変形例)
この遠隔操縦システムでは、作業機械は、建設機械のクローラショベルについて説明している。作業機械は、建設機械に限定されることなく、水産、農業、土木、山林、警備、または交通その他の分野で使用される作業機械であってよい。
【0100】
この遠隔操縦システムでは、作業機械側情報表示器としてクラスタゲージ47が用いられている。作業機械側情報表示器は、クラスタゲージ47に限定されず、作業機械の動作や状態に関係して遠隔操作装置のオペレータに対して作業機械を遠隔操作に必要な情報であって作業機械において情報を表示している表示器であればよい。また、作業機械側情報表示器は、キャブ424に配備されているものに限定されない。作業機械側情報表示器は、作業機械のキャブ424以外の室内や、室外の外部に配備されるものであってもよい。
【0101】
実施形態の表示支援装置201では、カメラの撮影画像データのデータ加工として、形状補正、傾き補正、明度補正、トリミング、特徴抽出(テキスト抽出)が単独で説明されている。本発明のデータ加工は、それらの組合せであってもよい。遠隔操作装置側情報表示器における作業機械側情報表示器の表示や伝送の改善に関する加工であれば、それら以外のデータ加工、例えば作業機械側情報表示器の表示面の法線回りの回転角としての傾斜角でなく、表示面の直交二軸の一方の軸回りの回転角としての傾斜角(反り角、のめり角)の矯正であったりしてもよい。
【0102】
(補足)
本発明の実施形態の表示支援装置201は、作業機械側情報表示器としてのクラスタゲージ47を撮影するカメラ(例:実機撮像装置412またはクラスタ撮影カメラ415)の撮影画像データに対し、クラスタ撮影カメラ415の表示情報に着目したデータ加工を施した再生用画像データを生成し、生成した再生用画像データに基づく再生画面を遠隔画像出力装置221のクラスタ画像出力装置2215に表示させる点で、特許文献1の表示支援装置とは明確に相違する。
【0103】
すなわち、特許文献1の表示支援装置では、作業機械側情報表示器の撮影画像データは、途中のデータ加工は省略した生(なま)データとして、遠隔画像出力装置に送られて、再生されている。当業者が、たとえ、通常の設計事項の範囲で特許文献1の表示支援装置に対して処理を付加するとしても、作業機械側情報表示器の撮影画像の品質を遠隔画像出力装置において改善するために、せいぜいノイズを除去する程度である。ノイズの除去は、元の画像(クラスタ撮影カメラ415の表示画面)に戻すだけの処理であって、本発明の実施形態の表示支援装置201のように、クラスタ撮影カメラ415の表示画面ではなく、表示情報に着目したデータ加工に属するものではない。
【0104】
これに対し、表示支援装置201では、クラスタ撮影カメラ415の撮影した元画像としてのクラスタゲージ47の撮影画像に対して遠隔操作装置20のオペレータがクラスタゲージ47の表示情報が分かり易くなるような、遠隔操作装置20のオペレータの見た目に影響を与える画像を新たに生成するデータ加工、換言すると、クラスタゲージ47の表示画面の再生改善ではなく、表示画面の内容である表示情報を理解し易くする再生画面をクラスタ画像出力装置2215に再生するデータ加工を施してから、クラスタ画像出力装置2215に表示している。
【符号の説明】
【0105】
20・・・遠隔操作装置、40・・・作業機械、47・・・クラスタゲージ、50・・・インターネット、200・・・遠隔制御装置、201・・・表示支援装置、221・・・遠隔画像出力装置、224・・・遠隔無線通信機器、400・・・実機制御装置、412・・・実機撮像装置、415・・・クラスタ撮影カメラ、422・・・実機無線通信機器、424・・・キャブ、456・・・特徴点抽出部、457・・・テキスト送信部、2215・・・クラスタ画像出力装置、2521・・・補正部、2523・・・クラスタ映像トリミング部、2525・・・テキスト画面生成部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15