(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179274
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化性接着剤組成物、硬化物及びこれを用いた偏光板
(51)【国際特許分類】
C09J 201/00 20060101AFI20231212BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20231212BHJP
C09J 4/02 20060101ALI20231212BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
C09J201/00
C09J11/06
C09J4/02
G02B5/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092511
(22)【出願日】2022-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】浅見 一司
(72)【発明者】
【氏名】高橋 照士
【テーマコード(参考)】
2H149
4J040
【Fターム(参考)】
2H149AA02
2H149AB13
2H149BA02
2H149CA02
2H149EA12
2H149EA22
2H149FA01X
2H149FA03W
2H149FA05X
2H149FA08X
2H149FA12X
2H149FA13X
2H149FA15X
2H149FA66
4J040FA131
4J040FA321
4J040GA11
4J040HB15
4J040HD14
4J040HD24
4J040JA02
4J040JB07
4J040MA05
4J040MA10
4J040MB09
4J040NA17
4J040NA19
(57)【要約】
【課題】
高温条件下で偏光子を褐色変化させず高透明性を有する偏光板製造に好適な偏光板用接着剤並びにこれを用いた偏光板を提供することを目的とする。
【解決手段】
ヨウ素又は二色性染料が吸着配向されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光子と保護膜との貼り合わせに用いる接着剤であって、一般式(1)で表されるオニウム塩とカチオン重合性化合物(B)を含有し、活性エネルギー線の照射によるカチオン重合で硬化する活性エネルギー線硬化性接着剤組成物。
A+ ・[(Rf)nPF6-n]- (1)
[式(1)中、Rfは互いに独立して、炭素数1~8のアルキル基、炭素数2~8のアルケニル基、炭素数6~10のアリール基であり、かつそれぞれの基の炭素原子に結合した水素原子をフッ素原子で80%以上置換した基であり、nは1~5の整数であり、A+は1価のオニウムカチオンである。]
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨウ素又は二色性染料が吸着配向されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光子と保護膜との貼り合わせに用いる接着剤であって、一般式(1)で表されるオニウム塩とカチオン重合性化合物(B)を含有し、活性エネルギー線の照射によるカチオン重合で硬化する活性エネルギー線硬化性接着剤組成物。
A+ ・[(Rf)nPF6-n]- (1)
[式(1)中、Rfは互いに独立して、炭素数1~8のアルキル基、炭素数2~8のアルケニル基、炭素数6~10のアリール基であり、かつそれぞれの基の炭素原子に結合した水素原子をフッ素原子で80%以上置換した基であり、nは1~5の整数であり、A+は1価のオニウムカチオンである。]
【請求項2】
上記、オニウム塩が式(2)で表されるオニウム塩である、請求項1に記載の活性エネルギー線硬化性接着剤組成物。
A+ ・[(C2F5)3PF3]- (2)
【請求項3】
カチオン重合性化合物(B)としてエポキシ化合物、オキセタン化合物及びビニル化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含有する請求項1に記載の活性エネルギー線硬化性接着剤組成物。
【請求項4】
さらに、アクリレートモノマー及び/又はポリマー(C)及び光ラジカル重合開始剤(D)のいずれか少なくとも1種を含有する請求項1に記載の性エネルギー線硬化性接着剤組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化性接着剤組成物を活性エネルギー線の照射によるカチオン重合で硬化させた硬化物。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化性接着剤組成物を用いて、ヨウ素又は二色性染料が吸着配向されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光子と保護膜とを貼り合わせた偏光板。
【請求項7】
前記保護膜として、非晶性ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリサルホン系樹脂、脂環式ポリイミド系樹脂から選ばれる少なくともいずれかの透明樹脂のフィルムが偏光子の少なくとも片面に貼合されてなる、請求項6に記載の偏光板。
【請求項8】
ヨウ素または二色性染料が吸着配向されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光子の片面又は両面に接着剤を介して保護膜を貼合し、偏光板を製造する方法であって、前記保護膜の片面に、請求項1~4のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化性接着剤組成物を塗工して接着剤塗工面を形成する塗工工程と、を含む、偏光板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の活性エネルギー線硬化性接着剤組成物、該活性エネルギー線硬化性接着剤組成物を用いて偏光子の片面または両面に保護膜を貼合してなる偏光板およびその製造方法、さらに、該偏光板を用いた光学部材および液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種液晶表示装置は、携帯電話やタブレット端末等のモバイル機器に加えて、カーナビゲーション装置やバックモニター等の車載用の画像表示装置としても使用される等その用途は広がっている。これに伴い、前記画像表示装置には、従来要求されてきたよりも過酷な環境下(例えば、高温環境下)における高い耐久性が求められており、そのような耐久性を確保することを目的とした画像表示装置が提案されている(特許文献1)。
【0003】
偏光板は、液晶表示装置を構成する光学部品の一つとして有用である。偏光板は通常、偏光子の両面に保護膜が積層された構造を有し、液晶表示装置に組み込まれて使用される。これまでは保護膜の多くにトリアセチルセルロースフィルムが使用されてきた。
トリアセチルセルロースの透湿度は高く、これを保護膜として貼合した偏光板は、湿熱下例えば、温度70℃、相対湿度90%のような条件下では劣化を引き起こす等の問題があった。
【0004】
そこで、トリアセチルセルロース樹脂フィルムよりも透湿度の低い樹脂フィルムを保護膜とすることで、かかる問題を解決する方法も提案されており、例えば、非晶性ポリオレフィン樹脂を保護膜とすることが知られている。具体的には、熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂シートを偏光子の少なくとも一方の面に保護膜として積層することが、特許文献2に記載されている。
【0005】
このような透湿度の低い保護膜を従来の装置で貼合する場合、水を主な溶媒とする接着剤、例えば、ポリビニルアルコール水溶液を使用して、ポリビニルアルコール系の偏光子に保護膜を貼合した後に溶媒を乾燥させるいわゆるウェットラミネーションでは、十分な接着強度が得られなかったり、外観が不良になったりする等の問題があった。これは、透湿度の低いフィルムは一般的にトリアセチルセルロースフィルムよりも疎水性であることや透湿度が低いために溶媒である水を十分に乾燥できないこと等の理由による。
【0006】
そこで、特許文献3には、ポリビニルアルコール系の偏光子と、熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂からなる保護膜とを、ポリウレタン系接着剤により接着することが提案されている。しかしながら、ポリウレタン系接着剤は、硬化に長時間を要するという問題があり、また接着力も必ずしも十分とはいえない。
【0007】
また、特許文献4には、芳香環を含まないエポキシ樹脂を主成分とする接着剤が開示されており、加熱または活性エネルギー線の照射によるカチオン重合による接着法が提案されている。これにより、接着力は向上するが偏光板の変色してしまうという問題がある。
【0008】
非晶性ポリオレフィン系樹脂は、例えば、非特許文献1、非特許文献2等に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2018-101117号公報
【特許文献2】特開平6-51117号公報
【特許文献3】特開2000-321432号公報
【特許文献4】特開2004-245925号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】「化学工業」1991年2月号(化学工業社),第20~26頁
【非特許文献2】「機能材料」1993年1月号(第13巻,第1号)(シーエムシー),第40~52頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
カチオン重合で硬化されていることを特徴とする活性エネルギー線硬化型接着剤組成物により貼合された偏光板は、高温環境下に曝された場合に、偏光膜を構成するポリビニルアルコールがその接着剤に含まれる酸発生剤によってポリエン化されることにより、偏光膜に着色が生じ、その単体透過率が低下する問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らが、鋭意検討したところ、接着剤組成物として、特定のオニウム塩を必須成分として含有する活性エネルギー線硬化性接着剤組成物により偏光子と保護膜を貼合することにより、接着性を保ちつつ、且つ、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光子を着色させないことを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下の[1]~[8]に関する。
【0013】
[1]
ヨウ素又は二色性染料が吸着配向されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光子と保護膜との貼り合わせに用いる接着剤であって、一般式(1)で表されるオニウム塩とカチオン重合性化合物(B)を含有し、活性エネルギー線の照射によるカチオン重合で硬化する活性エネルギー線硬化性接着剤組成物。
A+ ・[(Rf)nPF6-n]- (1)
[式(1)中、Rfは互いに独立して、炭素数1~8のアルキル基、炭素数2~8のアルケニル基、炭素数6~10のアリール基であり、かつそれぞれの基の炭素原子に結合した水素原子をフッ素原子で80%以上置換した基であり、nは1~5の整数であり、A+は1価のオニウムカチオンである。]
[2]
上記、オニウム塩が式(2)で表されるオニウム塩である、前項[1]に記載の活性エネルギー線硬化性接着剤組成物。
A+ ・[(C2F5)3PF3]- (2)
[3]
カチオン重合性化合物(B)としてエポキシ化合物、オキセタン化合物及びビニル化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含有する前項[1]に記載の活性エネルギー線硬化性接着剤組成物。
[4]
さらに、アクリレートモノマー及び/又はポリマー(C)及び光ラジカル重合開始剤(D)のいずれか少なくとも1種を含有する前項[1]に記載の性エネルギー線硬化性接着剤組成物。
[5]
前項[1]~[4]のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化性接着剤組成物を活性エネルギー線の照射によるカチオン重合で硬化させた硬化物。
[6]
前項[1]~[4]のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化性接着剤組成物を用いて、ヨウ素又は二色性染料が吸着配向されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光子と保護膜とを貼り合わせた偏光板。
[7]
前記保護膜として、非晶性ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリサルホン系樹脂、脂環式ポリイミド系樹脂から選ばれる少なくともいずれかの透明樹脂のフィルムが偏光子の少なくとも片面に貼合されてなる、前項[6]に記載の偏光板。
[8]
ヨウ素または二色性染料が吸着配向されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光子の片面又は両面に接着剤を介して保護膜を貼合し、偏光板を製造する方法であって、前記保護膜の片面に、前項[1]~[4]のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化性接着剤組成物を塗工して接着剤塗工面を形成する塗工工程と、を含む、偏光板の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の活性エネルギー線硬化性接着剤組成物を用い、偏光板を作製することにより、保護膜と偏光子は十分な接着力を有しながら偏光板は高温環境下においても高い耐久性を確保することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[活性エネルギー線硬化性接着剤組成物]
上記接着剤組成物は、ヨウ素又は二色性染料が吸着配向されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光子と保護膜との貼り合わせに用いる接着剤であって、一般式(1)で表されるオニウム塩を必須成分として含有し、活性エネルギー線の照射によるカチオン重合で硬化することを特徴とする。
【0016】
上記接着剤組成物は、一般式(1)で表されるオニウム塩(A)を必須成分として含有する組成物からなる接着剤である。該接着剤は、一般式(1)で表されるオニウム塩に加え、カチオン重合性化合物(B)を含むことを必需とし、必要に応じてアクリレートモノマー及び/又はポリマー(C)及びラジカル重合開始剤等(D)のさらなるラジカル重合性成分を接着剤の成分として用いることが出来る。該接着剤組成物は、二種以上のカチオン重合性化合物を少なくとも含む、あるいは、一種以上のカチオン重合性化合物と一種以上のこれとは異なる樹脂成分を少なくとも含む、ことが好ましい。
【0017】
A+ ・[(Rf)nPF6-n]- (1)
【0018】
式(1)中、Rfは互いに独立して、炭素数1~8のアルキル基、炭素数2~8のアルケニル基、炭素数6~10のアリール基であり、かつそれぞれの基の炭素原子に結合した水素原子をフッ素原子で80%以上置換した基であり、nは1~5の整数であり、A+は1価のオニウムカチオンである。
【0019】
炭素数1~8のアルキル基としてはメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチルなどの直鎖アルキル基、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、イソヘキシルなどの分岐アルキル基、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのシクロアルキル基が挙げられる。
【0020】
炭素数2~8のアルケニル基としては、ビニル、アリル、1-プロペニル、イソプロペニ、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1-メチル-1-プロペニル、1-メチル-2-プロペニル、2-メチル-1-プロペニル、2-メチル-2-プロペニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、1-メチル-1-ブテニル、2-メチル-2-ブテニル、3-メチル-2-ブテニル、1,2-ジメチル-1-プロペニルなどの直鎖または分岐状のものが挙げられる。
【0021】
炭素数6~10(以下の置換基の炭素数は含まない)のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基及び芳香族複素環炭化水素基(チエニル、フラニル、ピラニル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピリジル、ピリミジル、ピラジニル等単環式複素環;及びインドリル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾチエニル、イソベンゾチエニル、キノリル、イソキノリル、キノキサリニル、キナゾリニル等縮合多環式複素環)が挙げられる。アリール基としては、以上の他に、アリール基中の水素原子の一部が炭素数1~8のアルキル基、炭素数2~8のアルケニル基で置換されていてもよい。
【0022】
式(1)中Rfは、上記炭素数1~8のアルキル基、炭素数2~8のアルケニル基、炭素数6~10のアリール基における炭素原子に結合した水素原子がフッ素原子で通常、80%以上置換されたものである。好ましくは90%以上、さらに好ましくは100%である。フッ素原子の置換率が80%未満では、本発明の接着剤組成物において重合開始能が低下する。Rfの中でも、原料の入手しやすさから、炭素数1~8のアルキル基、フェニル基、ナフチル基が好ましく、さらに炭素数1~4のアルキル基がより好ましい。特に好ましいRfは、炭素数が1~4であり、かつフッ素原子の置換率が100%のアルキル基であり、具体例としては、CF3、CF3CF2、(CF3)2CF、CF3CF2CF2、CF3CF2CF2CF2、(CF3)2CFCF2、CF3CF2(CF2)CF、(CF3)2Cが挙げられる。
【0023】
式(1)中、nはリン原子に置換する置換基Rfの個数を表し、1~5の整数である。原料入手の観点から、好ましくはn=1~3であり、特に好ましくはn=2~3である。
【0024】
好ましいフッ素化アルキルフルオロリン酸アニオンの具体例としては[(CF3)PF5]-、[(CF3)2PF4]-、[(CF3)3PF3]-、[(CF3CF2)PF5]-、[(CF3CF2)2PF4]-、[(CF3CF2)3PF3]-、[((CF3)2CF)PF5]-、[((CF3)2CF)2PF4]-、[((CF3)2CF)3PF3]-、[(CF3CF2CF2)PF5]-、[(CF3CF2CF2)2PF4]-、[(CF3CF2CF2)3PF3]-、[((CF3)2CFCF2)PF5]-、[((CF3)2CFCF2)2PF4]-、[((CF3)2CFCF2)3PF3]-、[(CF3CF2CF2CF2)PF5]-、[(CF3CF2CF2CF2)2PF4]-、および[(CF3CF2CF2CF2)3PF3]-が挙げられ、これらのうち、[(CF3)2PF4]-、[(CF3)3PF3]-、[(CF3CF2)2PF4]-、[(CF3CF2)3PF3]-、[((CF3)2CF)2PF4]-、[((CF3)2CF)3PF3]-、[(CF3CF2CF2)2PF4]-、[(CF3CF2CF2)3PF3]-、[((CF3)2CFCF2)2PF4]-、[((CF3)2CFCF2)3PF3]-、[(CF3CF2CF2CF2)2PF4]-および[(CF3CF2CF2CF2)3PF3]-が特に好ましい。
【0025】
式(1)中、A+は1価のオニウムカチオンである。1価のオニウムカチオンとは、非共有電子対を持つ元素を含んだ化合物にプロトン又は陽イオン型の原子団(アルキル基等)が配位して生じる陽イオンを意味し、1価のオニウムカチオンとしては以下のカチオンが挙げられる。
【0026】
オキソニウムカチオン(トリメチルオキソニウムカチオン、トリエチルオキソニウム及びテトラメチレンメチルオキソニウムカチオン等);
ピリリニウムカチオン(4-メチルピリリニウムカチオン及び2,6-ジフェニルピリリニウムカチオン等);
クロメニウムカチオン(2,4-ジメチルクロメニウムカチオン等);
イソクロメニウムカチオン(1,3-ジメチルイソクロメニウムカチオン等);
アンモニウムカチオン[アンモニウムカチオン、1級アンモニウムカチオン(n-ブチルアンモニウムカチオン等)、2級アンモニウムカチオン(ジエチルアンモニウムカチオン等)、3級アンモニウムカチオン(トリエチルアンモニウムカチオン等)、4級アンモニウムカチオン(テトラメチルアンモニウムカチオン、フェニルトリメチルアンモニウムカチオン及びテトラブチルアンモニウムカチオン等)];
ピロリジニウムカチオン(N,N-ジメチルピロリジニウムカチオン及びN,N-ジエチルピロリジニウムカチオン等);
イミダゾリニウムカチオン(N,N'-ジメチルイミダゾリニウムカチオン及びN-エチル-N'-メチルイミダゾリニウムカチオン等);
アミジニウムカチオン(N,N'-ジメチルテトラヒドロピリミジニウムカチオン、N-ベンジル-1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセニウムカチオン及びN-ベンジル-1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネニウムカチオン等);
モルホリニウムカチオン(N,N'-ジメチルモルホリニウムカチオン等)、ピペリジウムカチオン(N,N'-ジエチルピペリジニウムカチオン等);
ピリジニウムカチオン(N-メチルピリジニウムカチオン、N-メトキシピリジニウムカチオン、N-ブトキシピリジニウムカチオン、N-ベンジルオキシピリジニウムカチオン、及びN-ベンジルピリジニウムカチオン等)。
イミダゾリウムカチオン(N,N'-ジメチルイミダゾリウムカチオン及び1-エチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン等);
キノリウムカチオン(N-メチルキノリウムカチオンカチオン及びN-ベンジルキノリウムカチオン等);
イソキノリウムカチオン(N-メチルイソキノリウム等);
チアゾニムカチオン(ベンジルベンゾチアゾニウムカチオン等);
アクリジウムカチオン(ベンジルアクリジウムカチオン及びフェナシルアクリジウム等);
ジアゾニウムカチオン(フェニルジアゾニウムカチオン、2,4,6-トリエトキシフェニルジアゾニウムカチオン、2,4,6-トリヘキシルオキシフェニルジアゾニウムカチオン及び4-アニリノフェニルジアゾニウムカチオン等);
グアジニウムカチオン(ヘキサメチルグアニジニウムカチオン及び2-ベンジル-2-tert-ブチル-1,1,3,3-テトラメチルグアニジニウムカチオン等)。
ホスホニウムカチオン[3級ホスホニウムカチオン(トリフェニルホスホニウムカチオン及びトリtert-ブチルホスホニウムカチオン等)並びに4級ホスホニウムカチオン(テトラフェニルホスホニウムカチオン、テトラ-p-トリルホスホニウムカチオン、トリフェニルベンジルホスホニウムカチオン、トリフェニルブチルカチオン、テトラエチルホスホニウムカチオン及びテトラブチルホスホニウムカチオン等)等]。
スルホニウムカチオン{トリフェニルスルホニウムカチオン、4-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムカチオン、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド及び4-ヒドロキシフェニルメチルベンジルスルホニウムカチオン等};
スルホキソニウムカチオン(トリフェニルスルホキソニウム等);
チアンスレニウムカチオン[5-(4-メトキシフェニル)チアンスレニウム、5-フェニルチアンスレニウム及び5-トリルチアンスレニウムカチオン等];
チオフェニウムカチオン(2-ナフチルテトラヒドロチオフェニウム等);
ヨードニウムカチオン[ジフェニルヨードニウムカチオン、ジ-p-トリルヨードニウムカチオン及び4-イソプロピルフェニル(p-トリル)ヨードニウムカチオン等]
【0027】
上記オニウムカチオンの中でも、反応性の面からスルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオン、ジアゾニウムカチオン、ピリジニウムカチオンが好ましく、熱安定性の面からスルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオンが特に好ましい。
【0028】
好ましいヨードニウムカチオンの具体例としては、ジフェニルヨードニウムカチオン、ジ-p-トリルヨードニウムカチオン及び4-イソプロピルフェニル(p-トリル)ヨードニウムカチオンの他、ジ-(4-tertブチル)フェニルヨードニウムカチオン、4-オクチルオキシフェニルフェニルヨードニウムカチオン、ジ-4-イソプロピルフェニルヨードニウムカチオン、ビス(2,4-ジイソプロピルフェニル)ヨードニウムカチオン、4-ヘキシルフェニル(p-トリル)ヨードニウムカチオン、4-シクロヘキシルフェニル(p-トリル)ヨードニウムカチオン、ビス(4-ドデシルフェニル)ヨードニウムカチオン、ビス(4-メトキシフェニル)ヨードニウムカチオン、ビス(4-デシルオキシ)フェニルヨードニウムカチオン、4-(2-ヒドロキシテトラデシルオキシ)フェニルフェニルヨードニウムカチオン等が挙げられる。
【0029】
好ましいスルホニウムカチオンの具体例としては、上記トリフェニルスルホニウムカチオン、4-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムカチオン、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド及び4-ヒドロキシフェニルメチルベンジルスルホニウムカチオンの他、トリス(4-クロロフェニル)スルホニウムカチオン、トリス(4-フルオロフェニル)スルホニウムカチオン、4-tert-ブチルフェニルジフェニルスルホニウムカチオン、ジフェニルフェナシルスルホニウムカチオン等が挙げられる。
【0030】
一般式(1)で表されるオニウム塩(A)の具体例として、好ましいヨードニウム塩としては、ジフェニルヨードニウムトリス(ノナフルオロブチル)トリフルオロホスフェート、ジ(tert-ブチルフェニル)ヨードニウムトリス(ノナフルオロブチル)トリフルオロホスフェート、ジ(tert-ブチルフェニル)ヨードニウム ペンタフルオロエチルペンタフルオロホスフェート、ジ(tert-ブチルフェニル)ヨードニウム ノナフルオロブチルペンタフルオロホスフェート、ジ(tert-ブチルフェニル)ヨードニウムビス(ペンタフルオロエチル)テトラフルオロホスフェート、ジ(tert-ブチルフェニル)ヨードニウムビス( ヘプタフルオロプロピル)テトラトリフルオロホスフェート、クミル-p-トリルヨードニウムトリス(ノナフルオロブチル)トリフルオロホスフェート、クミル-p-トリルヨードニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、クミル-p-トリルヨードニウムトリス(ヘプタフルオロプロピル)トリフルオロホスフェート、フェニル(4-オクチルオキシフェニル)ヨードニウムトリス(ノナフルオロブチル)トリフルオロホスフェート等を挙げることが出来る。
【0031】
一般式(1)で表されるオニウム塩(A)として、好ましいスルホニウム塩としては、トリフェニルスルホニウムトリス(ノナフルオロブチル)トリフルオロホスフェート、トリス(パラフルオロフェニル)スルホニウムトリス(ヘプタフルオロプロピル)トリフルオロホスフェート、(4-フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、4-フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムトリス(ノナフルオロブチル)トリフルオロホスフェート、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド-ビス-トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、トリス(4-tertブチルフェニル)スルホニウムビス(ペンタフルオロエチル)テトラフルオロホスフェート、トリス(4-tertブチルフェニル)スルホニウムビス(ノナフルオロブチル)テトラフルオロホスフェート、トリス(4-フルオロフェニル)スルホニウム-ペンタフルオロエチル-ペンタフルオロホスフェート、トリス(4-フルオロフェニル)スルホニウム-ノナフルオロブチル-ペンタフルオロホスフェート等を挙げることが出来る。
【0032】
これらオニウム塩(A)は、単独で用いてもよく、また2種以上を併用して用いてもよい。一般式(1)で表されるオニウム塩(A)の使用量は、カチオン重合性化合物(B)100質量部に対して0.1~20質量部である。好ましくは0.2~10質量部であり、より好ましくは0.3~5.0質量部である。この範囲であれば接着性を保ちつつ偏光板としての着色耐久性を得ることができる。
【0033】
本発明の、一般式(1)で表されるオニウム塩は公知の方法、例えば複分解法によって製造できる。複分解法は例えば、新実験化学講座14-I巻(1978年、丸善)p-448;AdvanceinPolymerScience,62,1-48(1984);新実験化学講座14-III巻(1978年、丸善)pp1838-1846;有機硫黄化学(合成反応編、1982年、化学同人)、第8章、pp237-280;日本化学雑誌,87,(5),74(1966);特開昭64-45357号、特開昭61-212554号、特開昭61-100557号、特開平5-4996号、特開平7-82244号、特開平7-82245号、特開昭58-210904号、特開平6-184170号などに記載されている。また、市販品を容易に入手可能であり、例えば、商品名で、「CPI-210S」又は「IK-1」(サンアプロ(株)製)等が挙げられる。
【0034】
本発明の活性エネルギー線硬化性接着剤組成物はカチオン重合性化合物(B)を含む。カチオン重合性化合物(B)は、活性エネルギー線(例えば、紫外線、可視光、電子線、X線等)の照射及び加熱によりカチオン重合反応が進行し、硬化する化合物又はオリゴマーであることが好ましい。カチオン重合性化合物としては、例えば、分子内に1個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物、分子内に1個以上のオキセタン環を有するオキセタン化合物、ビニル化合物などが挙げられる。これらのカチオン重合性化合物は単独又は2種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、エポキシ化合物、オキセタン化合物及びビニル化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物が好ましく、特にエポキシ化合物及びオキセタン化合物が好ましい。エポキシ化合物としては、例えば、脂環式エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物、水素化エポキシ化合物等を挙げることができ、接着性及び硬化速度の観点から、脂環式エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物などが好ましい。また、エポキシ化合物の分子内に存在するエポキシ基の数は、例えば1個、好ましくは2個以上、特に2個であってもよい。2官能(エポキシ基の数が2個)のエポキシ化合物を用いると、偏光子の収縮応力に対しても密着性が高いことから、耐剥がれ性などに優れた偏光板を形成するのに有利である。
【0035】
脂環式エポキシ化合物は、脂環式環に結合したエポキシ基を分子内に1個以上有する化合物であってよい。「脂環式環に結合したエポキシ基」とは、下記式(2)において、酸素原子-O-を含む3員環を意味する。下記式(2)中、mは2~5の整数であってよい。
【0036】
【0037】
脂環式エポキシ化合物は、式(2)における(CH2)m中の1個又は複数個の水素原子を取り除いた形の基が他の化学構造に結合している化合物であってもよい。具体的には、当該脂環式エポキシ化合物は、式(2)における(CH2)m中の水素を取り除いた形の基が、直接、又は直鎖状若しくは分岐鎖状アルキレン基(例えば、直鎖状又は分岐鎖状C1-12アルキレン基)を介して、1又は複数の式(2)の化合物に結合している。なお、前記直鎖状若しくは分岐鎖状アルキレン基を構成する-CH2-は、-O-又は-CO-に置換されてもよい。また、(CH2)m中の1個又は複数個の水素原子は、メチル基やエチル基などの直鎖状又は分岐鎖状アルキル基で適宜置換されていてもよい。これらのうち、接着性及び硬化速度の観点から、エポキシシクロペンタン構造〔上記式(2)においてm=3〕、エポキシシクロヘキサン構造〔上記式(2)においてm=4〕を有する脂環式エポキシ化合物が有利である。
【0038】
好適な2官能の脂環式エポキシ化合物(2官能脂環式エポキシ化合物という場合がある)の具体的な例を掲げると、例えば、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3’,4’-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、エチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、ジエチレングリコールビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチルエーテル)、エチレングリコールビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチルエーテル)、2,3,14,15-ジエポキシ-7,11,18,21-テトラオキサトリスピロ[5.2.2.5.2.2]ヘンイコサン、3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-8,9-エポキシ-1,5-ジオキサスピロ[5.5]ウンデカン、4-ビニルシクロヘキセンジオキサイド、リモネンジオキサイド、ビス(2,3-エポキシシクロペンチル)エーテル、ジシクロペンタジエンジオキサイド等が挙げられる。
【0039】
脂肪族エポキシ化合物としては、脂肪族炭素原子に結合するオキシラン環(3員の環状エーテル)を分子内に少なくとも1個有する化合物、例えば、単官能の脂肪族エポキシ化合物(例えば、ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテルなどの直鎖状又は分岐鎖状C2-12アルキルグリシジルエーテル);2官能の脂肪族エポキシ化合物(例えば、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルなどの直鎖状又は分岐鎖状C2-12アルキルジグリシジルエーテル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテルなどの環状アルキルジグリシジルエーテル、好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C2-6アルキルジグリシジルエーテルなど);3官能以上の脂肪族エポキシ化合物(例えば、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテルなどのC1-12アルキルグリシジルエーテルなど);4-ビニルシクロヘキセンジオキサイド、リモネンジオキサイド等の、脂環式環に直接結合するエポキシ基1個と、脂肪族炭素原子に結合するオキシラン環とを有するエポキシ化合物などが挙げられる。
【0040】
芳香族エポキシ化合物は、分子内に芳香族環とエポキシ基とを有する化合物である。その具体例としては、例えば、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェールFのジグリシジルエーテル、ビスフェノールSのジグリシジルエーテル等のビスフェノール型エポキシ化合物又はそのオリゴマー;フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、ヒドロキシベンズアルデヒドフェノールノボラックエポキシ樹脂等のノボラック型のエポキシ樹脂;2,2’,4,4’-テトラヒドロキシジフェニルメタンのグリシジルエーテル、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノンのグリシジルエーテル等の多官能型のエポキシ化合物;エポキシ化ポリビニルフェノール等の多官能型のエポキシ樹脂などが挙げられる。
【0041】
水素化エポキシ化合物は、脂環式環を有するポリオールのグリシジルエーテルであってよく、芳香族ポリオールを触媒の存在下、加圧下で芳香環に選択的に水素化反応を行うことにより得られる核水添ポリヒドロキシ化合物をグリシジルエーテル化したものであってよい。芳香族ポリオールの具体例としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェールF、ビスフェノールS等のビスフェノール型化合物;フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ヒドロキシベンズアルデヒドフェノールノボラック樹脂等のノボラック型樹脂;テトラヒドロキシジフェニルメタン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、ポリビニルフェノール等の多官能型の化合物などが挙げられる。芳香族ポリオールの芳香環に水素化反応を行って得られる脂環式ポリオールにエピクロロヒドリンを反応させることにより、グリシジルエーテルとすることができる。これらの水素化エポキシ化合物のうち、水素化されたビスフェノールAのジグリシジルエーテルなどが好ましい。
【0042】
エポキシ化合物のエポキシ当量は、例えば、43~1500g/当量であり、好ましくは700~1000g/当量であり、さらに好ましくは90~500g/当量であり、特に100~300g/当量であってもよい。エポキシ当量が上記範囲内であると、耐剥がれ性に優れた偏光板を形成できる。
【0043】
エポキシ化合物の割合は、カチオン重合性化合物に対して、40~100質量部であり、好ましくは60~99質量部であり、さらに好ましくは80~98質量部であり、とりわけ90質量部~97質量部であってよい。これらの範囲にあると、密着性(又は接着性)に有利である。また、硬化速度を最適化し、密着性等を向上させるという観点などから、脂環式エポキシ化合物と脂肪族エポキシ化合物とを併用することもできる。この場合、脂環式エポキシ化合物と脂肪族エポキシ化合物との割合(質量比)は、例えば、脂環式エポキシ化合物/脂肪族エポキシ化合物=95/5~5/95であり、好ましくは90/10~10/90とすることができる。この範囲にあると、密着性及び耐久性の高い接着剤層を形成するのに有利である。
【0044】
カチオン重合性化合物の1つであるオキセタン化合物としては、分子内に1個以上のオキセタン環(オキセタニル基)を含有する化合物であってよく、例えば、単官能のオキセタン化合物[例えば、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン(オキセタンアルコールという場合がある)、2-エチルヘキシルオキセタン、1,4-ビス〔{(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ}メチル〕ベンゼン(キシリレンビスオキセタンという場合がある)、3-エチル-3-(フェノキシメチル)オキセタン、3-(シクロヘキシルオキシ)メチル-3-エチルオキセタン;2官能のオキセタン化合物[例えば、3-エチル-3〔{(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ}メチル〕オキセタンなどが挙げられる。オキセタン化合物は、カチオン重合性化合物の主成分として用いてもよいし、エポキシ化合物と併用してもよい。特に、硬化性を高め、耐剥がれ性や耐カール性等を向上できる場合があることから、エポキシ化合物とオキセタン化合物とを併用することが好ましい。この場合、オキセタン化合物の割合は、エポキシ化合物100質量部に対して、例えば、0.5~70質量部であり、好ましくは1~50質量部であり、さらに好ましくは3~40質量部とすることができる。オキセタン化合物の割合が上限値以下であると、密着性(又は接着性)の観点から有利であり、下限値以上であると、高温等に対する耐久性の観点から有利である。
【0045】
カチオン重合性化合物(B)となり得るビニル化合物としては、芳香族、脂肪族又は脂環式のビニルエーテル化合物が挙げられ、その具体例としては、例えば、n-アミルビニルエーテル、i-アミルビニルエーテル、n-ヘキシルビニルエーテル、n-オクチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、n-ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル、オレイルビニルエーテル等の炭素数5~20のアルキル又はアルケニルアルコールのビニルエーテル;2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、3-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル等の水酸基含有ビニルエーテル;シクロヘキシルビニルエーテル、2-メチルシクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル等の脂肪族環又は芳香族環を有するモノアルコールのビニルエーテル;グリセロールモノビニルエーテル、1,4-ブタンジオールモノビニルエーテル、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、ペンタエリトリトールジビニルエーテル、ペンタエリトリトールテトラビニルエーテル、トリメチロールプロパンジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、1,4-ジヒドロキシシクロヘキサンモノビニルエーテル、1,4-ジヒドロキシシクロヘキサンジビニルエーテル、1,4-ジヒドロキシメチルシクロヘキサンモノビニルエーテル、1,4-ジヒドロキシメチルシクロヘキサンジビニルエーテル等の多価アルコールのモノ~ポリビニルエーテル;ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルモノビニルエーテル等のポリアルキレングリコールモノ~ジビニルエーテル;グリシジルビニルエーテル、エチレングリコールビニルエーテルメタクリレート等のその他のビニルエーテルなどが挙げられる。ビニル化合物は、カチオン重合性化合物の主成分として用いてもよいし、エポキシ化合物、又はエポキシ化合物及びオキセタン化合物と併用してもよい。接着剤の低粘度化及び硬化速度が向上できる場合があることから、ビニル化合物を併用してもよい。
【0046】
カチオン重合型の接着剤は、環状ラクトン化合物、環状アセタール化合物、環状チオエーテル化合物、スピロオルトエステル化合物のような上記以外の他のカチオン重合性化合物をさらに含むことができる。
【0047】
本発明の接着剤組成物はその他成分として、ラジカル重合性成分(C)を用いることが出来る。
【0048】
ラジカル重合性成分としては、種々の化合物が挙げられ、例えば(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類、マレイミド類、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、(メタ)アクリルアルデヒド、N-ビニル-2-ピロリドン、トリアリルイソシアヌレート、アジピン酸ジビニル、ビニルトリメトキシシランなどが挙げられる。
入手のしやすさや扱いやすさの点から(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類、マレイミド類が好ましく、(メタ)アクリレート類が特に好ましい。
【0049】
分子内に1個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート類の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ-ト、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ-ト、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメチロールモノ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノールアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、p-クミルフェノールアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノールアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、ノニルフェノールアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルアルコールのアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、ペンタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-ブトキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、(2-エチル-2-メチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、(2-イソブチル-2-メチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、(1,4-ジオキサスピロ[4,5]デカン-2-イル)メチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、アリル(メタ)アクリレート、N-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、N-(メタ)アクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタルイミド、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0050】
分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート類〔以下、「多官能(メタ)アクリレート」という〕の具体例としては、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメチロールジ(メタ)アクリレート、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ又はテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ又はヘキサ(メタ)アクリレート、及び水素添加ビスフェノールAのジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(繰返し数8以上)ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(繰返し数6以上)ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート及びエポキシ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。3個以上の(メタ)アクリロイル基を有するポリエステル(メタ)アクリレートとしては、デンドリマー型の(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0051】
(メタ)アクリルアミド類の具体例としては、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-(3-N,N-ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N-ジアリル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリンなどが挙げられる。
【0052】
マレイミド類の具体例としては、N-メチルマレイミド、N-ヒドロキシエチルマレイミド、N-ヒドロキシエチルシトラコンイミド、N-ヒドロキシエチルシトラコンイミドとイソホロンジイソシアネートのウレタン化反応物などが挙げられる。
【0053】
本発明の接着剤組成物に含まれるラジカル重合性成分(C)は、オニウム塩(A)成分が光で分解する際に発生するラジカルで硬化させることが可能であるが、少ない照射量で十分な反応率を得るために、(D)成分として光ラジカル重合開始剤を配合することが好ましい。
【0054】
(D)成分として光ラジカル重合開始剤の具体例として、例えば、次のような化合物を挙げることができる。
【0055】
4’-フェノキシ-2,2-ジクロロアセトフェノン、4’-tert-ブチル-2,2-ジクロロアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、α,α-ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-(4-ドデシルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、及び2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタン-1-オンの如き、アセトフェノン系光重合開始剤;
ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、及びベンゾインイソブチルエーテルの如き、ベンゾインエーテル系光重合開始剤;
ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、及び2,4,6-トリメチルベンゾフェノンの如き、ベンゾフェノン系光重合開始剤;
2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、及び1-クロロ-4-プロポキシチオキサントンの如き、チオキサントン系光重合開始剤;
2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、及びビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイドの如き、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤;
1,2-オクタンジオン,1-〔4-(フェニルチオフェニル)〕-,2-(O-ベンゾイルオキシム)の如き、オキシム・エステル系光重合開始剤;
カンファーキノンなど。
【0056】
(D)成分は、1種類を単独で、又は2種類以上を所望の性能に応じて配合し、用いることができる。
(D)成分の光ラジカル重合開始剤を配合する場合、その含有割合は、組成物全体を基準として、好ましくは10質量部以下であり、より好ましくは0.1~10質量部であり、さらに好ましくは0.1~5質量部である。光ラジカル重合開始剤(D)の含有割合を上記範囲とすることで、十分な接着強度が得られ、又、硬化性にも優れる。
【0057】
さらに、本発明の効果を損なわない限り、接着剤組成物にはその他の添加剤、例えば、イオントラップ剤、酸化防止剤、老化防止剤、安定剤、連鎖移動剤、増感剤、粘着付与剤、熱可塑性樹脂、充填剤、流動調整剤、可塑剤、消泡剤、有機溶剤、染料、顔料、処理剤、紫外線遮断剤などを配合することができる。イオントラップ剤には、例えば、粉末状のビスマス系、アンチモン系、マグネシウム系、アルミニウム系、カルシウム系、チタン系及びこれらの混合系などの無機化合物が包含され、酸化防止剤には、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤などが包含される。粘着付与樹脂としては、例えば、ロジン酸、重合ロジン酸及びロジン酸エステル等のロジン類、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、芳香族炭化水素樹脂、脂肪族飽和炭化水素樹脂並びに石油樹脂等が挙げられる。
【0058】
本発明の接着剤組成物の製造方法としては、前記成分を、常法に従い攪拌及び混合することにより製造することができる。この場合、必要に応じて加熱することもできる。加熱温度および時間としては、使用する組成物、基材及び目的等に応じて適宜設定すれば良いが、30~80℃で30分~2時間程度が好ましい。
【0059】
組成物の粘度としては、基材に対する塗工性に優れる点で、10~1000mPa・sが好ましい。
【0060】
[偏光板]
本発明に係る偏光板は、一軸延伸されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素が吸着配向された偏光子の片面又は両面に、保護膜を貼合したものである。偏光子を構成するポリビニルアルコール系樹脂は、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することにより得られる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニル及びこれと共重合可能な他の単量体の共重合体などが例示される。酢酸ビニルに共重合される他の単量体として、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類などが挙げられる。ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常85~100モル%であり、好ましくは98~100モル%の範囲である。このポリビニルアルコール系樹脂は、さらに変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマールやポリビニルアセタールなども使用し得る。ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常1,000~10,000であり、好ましくは1,500~10,000の範囲である。
【0061】
偏光板は、このようなポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色して、その二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、ホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程、及びこれらの工程が施されて二色性色素が吸着配向された一軸延伸ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに保護膜を貼合する工程を経て、製造される。
【0062】
一軸延伸は、二色性色素による染色の前に行ってもよいし、二色性色素による染色と同時に行ってもよいし、二色性色素による染色の後に行ってもよい。一軸延伸を二色性色素による染色後に行う場合、この一軸延伸は、ホウ酸処理の前に行ってもよいし、ホウ酸処理中に行ってもよい。またもちろん、これらの複数の段階で一軸延伸を行うことも可能である。一軸延伸するには、周速の異なるロール間で一軸に延伸してもよいし、熱ロールを用いて一軸に延伸してもよい。また、大気中で延伸を行う乾式延伸であってもよいし、溶剤により膨潤した状態で延伸を行う湿式延伸であってもよい。延伸倍率は、通常4~8倍程度である。
【0063】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色するには、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、二色性色素を含有する水溶液に浸漬すればよい。二色性色素として、具体的にはヨウ素又は二色性染料が用いられる。
【0064】
二色性色素としてヨウ素を用いる場合は通常、ヨウ素及びヨウ化カリウムを含有する水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液におけるヨウ素の含有量は通常、水100質量部あたり0.01~0.5質量部程度であり、ヨウ化カリウムの含有量は通常、水100質量部あたり0.5~10質量部程度である。この水溶液の温度は、通常20~40℃程度であり、また、この水溶液への浸漬時間は、通常30~300秒程度である。
【0065】
一方、二色性色素として二色性染料を用いる場合は、通常、水溶性二色性染料を含む水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液における二色性染料の含有量は、通常、水100質量部あたり1×10-3~1×10-2質量部程度である。この水溶液は、硫酸ナトリウムなどの無機塩を含有していてもよい。この水溶液の温度は、通常20~80℃程度であり、また、この水溶液への浸漬時間は、通常30~300秒程度である。
【0066】
二色性色素による染色後のホウ酸処理は、染色されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液に浸漬することにより行われる。ホウ酸水溶液におけるホウ酸の含有量は通常、水100質量部あたり2~15質量部程度、好ましくは5~12質量部程度である。二色性色素としてヨウ素を用いる場合には、このホウ酸水溶液はヨウ化カリウムを含有するのが好ましい。ホウ酸水溶液におけるヨウ化カリウムの含有量は通常、水100質量部あたり2~20質量部程度、好ましくは5~15質量部である。ホウ酸水溶液への浸漬時間は、通常100~1,200秒程度であり、好ましくは150~600秒程度であり、さらに好ましくは200~400秒程度である。ホウ酸水溶液の温度は、通常50℃以上であり、好ましくは50~85℃である。
【0067】
ホウ酸処理後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムは通常、水洗処理される。水洗処理は、例えば、ホウ酸処理されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを水に浸漬することにより行われる。水洗後は乾燥処理が施されて、偏光子が得られる。水洗処理における水の温度は、通常5~40℃程度であり、浸漬時間は、通常2~120秒程度である。その後に行われる乾燥処理は通常、熱風乾燥機や遠赤外線ヒーターを用いて行われる。乾燥温度は、通常40~100℃である。乾燥処理における処理時間は、通常120~600秒程度である。
【0068】
こうして、ヨウ素又は二色性染料が吸着配向されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光子が得られる。次いで、この偏光子は、本発明の接着剤組成物を用いて、片面又は両面に保護膜が貼合される。
【0069】
本発明の偏光板は、典型的には、本発明の接着剤組成物を未硬化の状態で保護膜に塗工して接着剤塗工面を形成する塗工工程と、保護膜の該接着剤塗工面に偏光子を貼合する貼合工程と、接着剤組成物を硬化させる硬化工程とを含む方法によって製造することができる。
【0070】
なお、本発明において偏光子を製造する他の方法としては、偏光子と保護膜との間に本発明の接着剤組成物を未硬化の状態で滴下した後、ロール等で均一に押し広げながら圧着させ、次いで上記の接着剤組成物を硬化させて接着剤層を形成する方法等も採用できる。
【0071】
[塗工工程]
偏光子への接着剤の塗工方法に特別な限定はなく、例えば、ドクターブレード、ワイヤーバー、ダイコーター、カンマコーター、グラビアコーターなど、種々の塗工方式が利用できる。また、各塗工方式には各々最適な粘度範囲があるため、溶剤を用いて粘度調整を行うことも有用な技術である。このための溶剤には、偏光子の光学性能を低下させることなく、接着剤組成物を良好に溶解するものが用いられるが、その種類にも特別な限定はない。例えば、トルエンに代表される炭化水素類、酢酸エチルに代表されるエステル類などの有機溶剤が使用できる。接着剤層の厚さは、通常50μm以下であり、好ましくは20μm以下であり、さらに好ましくは10μm以下である。接着剤層が薄ければ薄いほど偏光板としての歪みが抑えられる。
【0072】
[貼合工程]
保護膜に本発明の接着剤組成物を塗工したときは、次いでその接着剤塗工面に偏光子が貼合される。また、偏光子と保護膜との間に接着剤組成物を適用したときは、そのまま両者が貼合される。本発明の偏光板に用いられる保護膜は、典型的には透明性を有する膜である。保護膜は特に限定されず、具体的には、現在偏光板の保護膜として最も広く用いられているトリアセチルセルロース等のアセチルセルロース系樹脂のフィルムや、トリアセチルセルロースよりも透湿度の低い透明樹脂のフィルムを用いることができる。
【0073】
本発明の偏光板において、典型的には、アセチルセルロース系樹脂のフィルムやトリアセチルセルロースよりも透湿度の低い透明樹脂のフィルムが、偏光子の少なくとも片面に貼合されることができる。
【0074】
なお、上記のトリアセチルセルロースの透湿度は、概ね400g/m2/24hr程度である。偏光子の両面に保護膜を貼合する場合、2枚の保護膜を段階的に片面ずつ貼合してもよいし、両面を一段階で貼合してもかまわない。
【0075】
アセチルセルロース系樹脂のフィルムとしては、前述のトリアセチルセルロースフィルムの他、ジアセチルセルロースフィルム、アセチルブチルセルロースフィルム等が挙げられる。
【0076】
トリアセチルセルロースよりも透湿度の低い透明樹脂のフィルムの例としては、非晶性ポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリサルホン系樹脂、脂環式ポリイミド系樹脂等から選ばれる少なくともいずれかの透明樹脂のフィルムが挙げられる。中でも非晶性ポリオレフィン系樹脂からなるフィルムが特に好ましい。非晶性ポリオレフィン系樹脂は通常、ノルボルネンや多環ノルボルネン系モノマーのような環状オレフィンの重合単位を有するものであり、環状オレフィンと鎖状オレフィンとの共重合体であってもよい。このような非晶性ポリオレフィン系樹脂としては、前述の非特許文献1や非特許文献2等に記載されているものを例示できる。なかでも、熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂が代表的である。また、極性基が導入されているものも有効である。市販されている非晶性ポリオレフィン系樹脂としては、ジェイエスアール(株)の「アートン」、日本ゼオン(株)の「ZEONEX」および「ZEONOR」、三井化学(株)の「APO」および「アペル」等がある。非晶性ポリオレフィン系樹脂を製膜してフィルムとする際、製膜には、溶剤キャスト法、溶融押出法等、公知の方法が適宜用いられる。これらの非晶性ポリオレフィン系樹脂フィルムは、概ね300g/m2/24hr以下の透湿度を有する。
【0077】
本発明において偏光子の両面に保護膜を貼合する場合、偏光子の一方の面と他方の面とに貼合される保護膜は、同じ種類でも異なる種類でもよい。偏光子の両面に相異なる種類の保護膜を貼合する場合には、たとえば、一方の保護膜として、アセチルセルロース系樹脂のフィルムを用い、他方の保護膜として、トリアセチルセルロースよりも透湿度の低い透明樹脂のフィルムを用いることができる。アセチルセルロース系保護膜と偏光子との接着には、従来、水を溶媒とする接着剤を用いるウェットラミネーションが採用されていたが、この場合は長大な乾燥炉が必要となる。一方、本発明では乾燥炉を全く必要としない。この場合の利点としては、前述の通り、乾燥炉への設備投資が必要ないことや、偏光子および/または接着剤層の熱劣化が起きないことや、カールの抑制が可能であること等が挙げられる。
【0078】
なお、偏光子の一方の面にアセチルセルロース系樹脂フィルムのような透湿度の比較的高い保護膜を設ける場合、該保護膜と偏光子との貼合面には、ポリビニルアルコール系接着剤等、本発明の活性エネルギー線硬化性接着剤以外の接着剤を用いてもよい。
【0079】
保護膜における偏光子への貼合面となる面には、偏光子との貼合に先立って、ケン化処理、コロナ処理、プライマ処理、アンカーコーティング処理、プラズマ処理、火炎処理等の易接着処理が施されてもよい。また、保護膜の偏光子への貼合面と反対側の表面には、ハードコート層、反射防止層、防眩層等の各種処理層を有していてもよい。保護膜の厚みは、通常5~200μm程度の範囲であり、好ましくは10~120μmであり、さらに好ましくは10~85μmである。
【0080】
[硬化工程]
以上のように、未硬化の状態の接着剤組成物を介して偏光子と保護膜とを貼合した後、活性エネルギー線を照射することによって接着剤組成物を硬化させ、保護膜を偏光子上に固着させる。
【0081】
活性エネルギー線の光源は特に限定されないが、波長400nm以下に発光分布を有する活性エネルギー線が好ましく、具体的には、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ等が好ましい。接着剤組成物への光照射強度は、該接着剤組成物の組成によって適宜決定され、特に限定されないが、重合開始剤の活性化に有効な波長領域の照射強度が0.1~6000mW/cm2であることが好ましい。該照射強度が0.1mW/cm2以上である場合、反応時間が長くなりすぎず、6000mW/cm2以下である場合、光源から輻射される熱および接着剤組成物の硬化時の発熱によるエポキシ樹脂の黄変や偏光子の劣化を生じるおそれが少ない。接着剤組成物への光照射時間は、硬化させる接着剤組成物ごとに制御されるものであって特に限定されないが、上記の照射強度と照射時間との積として表される積算光量が10~10000mJ/cm2となるように設定されることが好ましい。接着剤組成物への積算光量が10mJ/cm2以上である場合、重合開始剤由来の活性種を十分量発生させて硬化反応をより確実に進行させることができ、10000mJ/cm2以下である場合、照射時間が長くなりすぎず、良好な生産性を維持できる。
【0082】
活性エネルギー線の照射によって接着剤組成物を硬化させる場合、偏光子の偏光度、透過率および色相、ならびに保護膜の透明性といった偏光板の諸機能が低下しない条件で硬化を行なうことが好ましい。
【実施例0083】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0084】
(実施例1)
(A)成分として、4-(フェニルチオ)フェニル-ジフェニルスルホニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート(サンアプロ(株)製、商品名CPI-210S)を3部、(B)成分として3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート((株)ダイセル製、商品名セロキサイド2021P)を35部及びブタンジオールジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス(株)製、商品名デナコールEX-214L)を27部、その他の成分として3-エチル-3-フェノキシメチルオキセタン(東亞合成(株)製、商品名OXT-211)35を加えて、均一に分散させ、60℃で30分加熱攪拌して溶解させ、重粘度27mPa・s/25℃)の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得た。
【0085】
(実施例2)~(実施例10)
表1に記載の配合の各成分に変更した以外は実施例1と同様に調整し、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得た。
【0086】
(比較例1)~(比較例4)
表1に記載の配合の各成分に変更した以外は実施例1と同様に調整し、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得た。
【0087】
実施例及び比較例で配合した各成分を表1に示す。表1における括弧内の数字は、質量部を意味する。
【0088】
【0089】
a-1;4-(フェニルチオ)フェニル-ジフェニルスルホニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート(商品名:CPI-210S、サンアプロ(株)製)
a-2;4-イソプロピルフェニル(p-トリル)ヨードニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート(商品名:IK-1、サンアプロ(株)製)
a-3;4-(フェニルチオ)フェニル-ジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート(商品名:CPI-110P、サンアプロ(株)製)
a-4;ビス(4-ターシャルブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート(商品名:WPI-170、富士フィルム和光純薬(株)製)
b-1;3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(商品名:セロキサイド2021P、(株)ダイセル製)
b-2;ビスフェノールA型エポキシ(商品名JER828、三菱ケミカル(株)製)
b’-1;ブタンジオールジグリシジルエーテル(商品名:デナコールEX-214L、ナガセケムテックス(株)製)
c-1;ポリエーテル系ウレタンアクリレート(商品名:KAYARAD UX-6101、日本化薬(株)製)
c-2;4-ヒドロキシブチルアクリレート(商品名:4-HBA、大阪有機化学工業(株)製)
c-3;テトラヒドロフルフリルアクリレート(商品名:ビスコート#150、大阪有機化学工業(株)製)
d-1;1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名:Omnirad184、IGM Resins B.V.製)
e-1;3-エチル-3-フェノキシメチルオキセタン(商品名:OXT-211、東亞合成(株)製)
【0090】
[偏光子1の作製]
厚さ75μmのポリビニルアルコール系フィルム[(株)クラレ製ビニロンフィルムVF-PS]を約55℃の水に浸漬した。このフィルムを3%ホウ酸水溶液中で50℃で5倍に延伸し、緊張状態を保ったまま水洗、乾燥して偏光膜を得た。本評価では偏光子の褐変を目視で容易に判断するため、ヨウ素又は二色性染料を吸着させずに作製した。
【0091】
[偏光子2の作製]
厚さ75μmのポリビニルアルコール系フィルム[(株)クラレ製ビニロンフィルムVF-PS]を約55℃の水に浸漬した後、二色性染料液中で染色した。このフィルムを3%ホウ酸水溶液中で50℃で5倍に延伸し、緊張状態を保ったまま水洗、乾燥して偏光子2を得た。
【0092】
[偏光板1の製造]
厚さ50μmの非晶性ポリオレフィン樹脂フィルム〔商品名ゼオノアZF14、日本ゼオン(株)製、以下「ZF14」という〕上に、易接着処理としてコロナ処理(春日電機社製AGF-B10、出力0.3kW、速度3m/分)を実施した。
その後、「ZF14」と偏光子1との間に実施例1~10及び比較例1~4で得られた活性エネルギー硬化性接着剤組成物を流延させラミネートした後、高圧水銀ランプ(ハリソン東芝ライティング社製HX4000L)を120W、5m/min、1パスの条件で硬化しラミネートフィルムを得た。次に、得られたラミネートフィルムの偏光子1側と「ZF14」との間に同じ接着剤組成物を流延させラミネートした後、高圧水銀ランプを同条件で硬化し偏光板1を得た。
【0093】
[偏光板2の製造]
厚さ50μmの非晶性ポリオレフィン樹脂フィルム〔商品名ゼオノアZF14、日本ゼオン(株)製、以下「ZF14」という〕上に、易接着処理としてコロナ処理(春日電機社製AGF-B10、出力0.3kW、速度3m/分)を実施した。
フィルム上に実施例1~10及び比較例1~4で得られた活性エネルギー硬化性接着剤組成物をバーコーターにより約1μmの厚みに塗布した。これに、偏光子2をラミネートした後、高圧水銀ランプを120W、5m/min、1パスの条件で硬化しラミネートフィルムを得た。次に、同じくコロナ処理した「ZF14」上に同じ接着剤組成物をバーコーターにより約1μmの厚みに塗布し、得られたラミネートフィルムの偏光子2側とラミネートした後、高圧水銀ランプを同条件で硬化し偏光板2を得た。
【0094】
<着色評価>
偏光板1を、両面テープを介してガラスに貼り付け105℃乾燥機に7日間投入した後、取り出してその色相を目視で評価した結果を表2に示す。評価基準は下記の通り。
(評価基準)
◎;無色(偏光子の褐変無し)
×;黄色~褐色
【0095】
<接着性評価>
偏光板2の偏光子と保護フィルムの間にカッターの刃を入れる。結果を表2に示す。評価基準は下記の通り。
(評価基準)
◎;基材破壊(カッター刃が入らない)
○;基材破壊(カッター刃は入る)
×;手で剥がれる
【0096】
着色評価および接着性評価の結果を表2に示した。
【0097】
【0098】
表2の通り、実施例1~10の活性エネルギー硬化性接着剤組成物を用いた偏光板1の着色評価はいずれも良好であるのに対し、比較例1~4の接着剤組成物を用いた偏光板1は105℃で7日間投入後には着色していた。また、実施例1~10の接着剤組成物を用いた偏光板2の接着性はいずれも良好であるのに対し、比較例4の接着剤組成物を用いた偏光板2は接着力が弱く容易に手で剥がれてしまった。これより、本発明の活性エネルギー硬化性接着剤組成物は偏光子と保護フィルムを貼合させた偏光板の接着剤組成物として用いるのに有用であり、該偏光子を他の保護フィルムと貼合させた時に十分な接着性を保ちつつ、且つ、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光子を着色させない。