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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179279
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】インパクト工具
(51)【国際特許分類】
   B25B 21/02 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
B25B21/02 Z
B25B21/02 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092519
(22)【出願日】2022-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】常 娟
(72)【発明者】
【氏名】王 豪豪
(72)【発明者】
【氏名】楊 威
(72)【発明者】
【氏名】手島 治樹
(57)【要約】
【課題】インパクト工具の寿命が短くなることを抑制すること。
【解決手段】インパクト工具は、モータと、少なくとも一部がモータよりも前方に配置され、モータにより回転されるスピンドルと、スピンドルの周囲に配置されるハンマと、少なくとも一部がスピンドルよりも前方に配置され、ハンマにより回転方向に打撃されるアンビルと、スピンドルの後端面に設けられた開口から前方に延びるようにスピンドルの内部に形成され、潤滑油が収容される第1空間を含む内部空間と、スピンドルの外周面に設けられ、第1空間からの潤滑油をハンマとの間に供給する第1供給口と、開口から挿入され、第1空間の後端部に繋がる内部空間の第2空間に配置される蓋と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
少なくとも一部が前記モータよりも前方に配置され、前記モータにより回転されるスピンドルと、
前記スピンドルの周囲に配置されるハンマと、
少なくとも一部が前記スピンドルよりも前方に配置され、前記ハンマにより回転方向に打撃されるアンビルと、
前記スピンドルの後端面に設けられた開口から前方に延びるように前記スピンドルの内部に形成され、潤滑油が収容される第1空間を含む内部空間と、
前記スピンドルの外周面に設けられ、前記第1空間からの潤滑油を前記ハンマとの間に供給する第1供給口と、
前記開口から挿入され、前記第1空間の後端部に繋がる前記内部空間の第2空間に配置される蓋と、を備える、
インパクト工具。
【請求項2】
前記蓋は、フェルト製である、
請求項1に記載のインパクト工具。
【請求項3】
前記蓋は、金属製、合成樹脂製、又はゴム製である、
請求項1に記載のインパクト工具。
【請求項4】
前記第1空間の内径は、前記第2空間の内径よりも小さい、
請求項1に記載のインパクト工具。
【請求項5】
前記第1空間の後端部と前記第2空間の前端部との境界に段差部が設けられ、
前記蓋は、前記段差部に支持される、
請求項4に記載のインパクト工具。
【請求項6】
前記第1空間の内径は、前記第2空間の内径よりも大きい、
請求項1に記載のインパクト工具。
【請求項7】
前記ハンマは、ボディ部と、ボディ部から後方に突出し、前記スピンドルの外周面に接触する内周面を有する内筒部と、を有し、
前記第1供給口は、前記スピンドルの外周面と前記内筒部の内周面との間に前記潤滑油を供給する、
請求項1に記載のインパクト工具。
【請求項8】
前記第1供給口は、周方向に複数設けられる、
請求項7に記載のインパクト工具。
【請求項9】
前記内筒部の内周面に設けられ、潤滑油が収容される第1溝を備える、
請求項7に記載のインパクト工具。
【請求項10】
前記スピンドルと前記ハンマとの間に配置されるボールと、
前記スピンドルの外周面において前記第1供給口よりも前方に設けられ、前記第1空間からの潤滑油を前記ボールに供給する第2供給口と、を備える、
請求項1に記載のインパクト工具。
【請求項11】
前記第2供給口は、周方向に複数設けられる、
請求項10に記載のインパクト工具。
【請求項12】
周方向において、前記第1供給口と前記第2供給口とは、異なる位置に配置される、
請求項10に記載のインパクト工具。
【請求項13】
前記スピンドルの前端面に設けられ、前記第1空間からの潤滑油を前記アンビルとの間に供給する第3供給口を備える、
請求項1に記載のインパクト工具。
【請求項14】
前記スピンドルは、スピンドルシャフト部と、前記スピンドルシャフト部の前端部から前方に突出するスピンドル凸部と、を有し、
前記アンビルは、前記アンビルの後端面に設けられ、前記スピンドル凸部が配置されるアンビル凹部を有し、
前記ハンマは、前記スピンドルシャフト部の周囲に配置され、
前記第3供給口は、前記スピンドル凸部の前端面に設けられる、
請求項13に記載のインパクト工具。
【請求項15】
前記スピンドル凸部の外周面に設けられ、潤滑油が収容される第2溝を備える、
請求項14に記載のインパクト工具。
【請求項16】
前記スピンドルは、スピンドルシャフト部と、前記スピンドルシャフト部の前端部から後方に窪むスピンドル凹部と、を有し、
前記アンビルは、前記アンビルの後端面に設けられ、前記スピンドル凹部に配置されるアンビル凸部を有し、
前記ハンマは、前記スピンドルシャフト部の周囲に配置され、
前記第3供給口は、前記スピンドル凹部の内面に設けられる、
請求項13に記載のインパクト工具。
【請求項17】
前記スピンドル凹部の内周面に設けられ、潤滑油が収容される第2溝を備える、
請求項16に記載のインパクト工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は、インパクト工具に関する。
【背景技術】
【0002】
インパクト工具に係る技術分野において、特許文献1に開示されているようなインパクト工具が知られている。特許文献1に開示されているインパクト工具は、スピンドルと、スピンドルの周囲に配置されるハンマとを備える。スピンドルの内部空間に潤滑油が収容される。潤滑油は、スピンドルの内部空間からスピンドルとハンマとの間に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-037560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スピンドルの内部空間から潤滑油が漏洩すると、スピンドルとハンマとの間に供給される潤滑油の量が少なくなってしまう。その結果、スピンドル及びハンマの少なくとも一方が激しく摩耗したり焼き付きを起こしたりして、インパクト工具の寿命が短くなってしまう可能性がある。
【0005】
本明細書で開示する技術は、インパクト工具の寿命が短くなることを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、インパクト工具を開示する。インパクト工具は、モータと、スピンドルと、ハンマと、アンビルと、蓋と、を備えてもよい。スピンドルの少なくとも一部は、モータよりも前方に配置されてもよい。スピンドルは、モータにより回転されてもよい。ハンマは、スピンドルの周囲に配置されてもよい。アンビルの少なくとも一部は、スピンドルよりも前方に配置されてもよい。アンビルは、ハンマにより回転方向に打撃されてもよい。スピンドルの内部に内部空間が形成されてもよい。内部空間は、スピンドルの後端面に設けられた開口から前方に延びるように形成されてもよい。内部空間は、潤滑油が収容される第1空間と、蓋が配置される第2空間とを含んでもよい。第2空間は、第1空間よりも後方に配置されてもよい。第1空間の後端部と第2空間の前端部とは、繋がってもよい。開口は、第2空間の後端部に設けられてもよい。蓋は、開口から第2空間に挿入されてもよい。スピンドルの外周面に、第1空間からの潤滑油をスピンドルとハンマとの間に供給する第1供給口が設けられてもよい。
【発明の効果】
【0007】
本明細書で開示する技術によれば、インパクト工具の寿命が短くなることが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係るインパクト工具を示す前方からの斜視図である。
図2図2は、実施形態に係るインパクト工具の上部を示す側面図である。
図3図3は、実施形態に係るインパクト工具の上部を示す縦断面図である。
図4図4は、実施形態に係るインパクト工具の上部を示す横断面図である。
図5図5は、実施形態に係るインパクト工具の一部を示す前方からの分解斜視図である。
図6図6は、実施形態に係るインパクト工具の一部を示す後方からの分解斜視図である。
図7図7は、変形例に係るスピンドル及びアンビルを模式的に示す断面図である。
図8図8は、変形例に係るスピンドルを模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1つ又はそれ以上の実施形態において、インパクト工具は、モータと、スピンドルと、ハンマと、アンビルと、蓋と、を備えてもよい。スピンドルの少なくとも一部は、モータよりも前方に配置されてもよい。スピンドルは、モータにより回転されてもよい。ハンマは、スピンドルの周囲に配置されてもよい。アンビルの少なくとも一部は、スピンドルよりも前方に配置されてもよい。アンビルは、ハンマにより回転方向に打撃されてもよい。スピンドルの内部に内部空間が形成されてもよい。内部空間は、スピンドルの後端面に設けられた開口から前方に延びるように形成されてもよい。内部空間は、潤滑油が収容される第1空間と、蓋が配置される第2空間とを含んでもよい。第2空間は、第1空間よりも後方に配置されてもよい。第1空間の後端部と第2空間の前端部とは、繋がってもよい。開口は、第2空間の後端部に設けられてもよい。蓋は、開口から第2空間に挿入されてもよい。スピンドルの外周面に、第1空間からの潤滑油をスピンドルとハンマとの間に供給する第1供給口が設けられてもよい。
【0010】
上記の構成では、潤滑油が収容される第1空間よりも後方の第2空間に蓋が配置される。そのため、第1空間に収容されている潤滑油が開口を介して漏洩することが抑制される。これにより、第1供給口からスピンドルとハンマとの間に供給される潤滑油の量が少なくなってしまうことが抑制される。したがって、スピンドル及びハンマの摩耗又は焼き付きが抑制され、インパクト工具の寿命が短くなることが抑制される。
【0011】
1つ又はそれ以上の実施形態において、蓋は、フェルト製でもよい。
【0012】
上記の構成では、開口から第2空間に蓋を挿入するときの作業性の低下が抑制される。フェルトは変形可能なので、インパクト工具の組立者は、フェルトを潰しながら第2空間に挿入することにより、作業性良く蓋を第2空間に挿入することができる。また、第2空間の内径よりも大きい外径のフェルトが潰されながら第2空間に挿入されることにより、フェルトの外周面が第2空間の内周面に密着する。したがって、フェルトの外周面と第2空間の内周面とのシール性が向上するので、第1空間に収容されている潤滑油が開口を介して漏洩することが効果的に抑制される。
【0013】
なお、蓋は、金属製、合成樹脂製、又はゴム製でもよい。
【0014】
1つ又はそれ以上の実施形態において、第1空間の内径は、第2空間の内径よりも小さくてもよい。
【0015】
上記の構成では、第1空間の内径よりも大きい外径の蓋が第2空間に配置される。
【0016】
1つ又はそれ以上の実施形態において、第1空間の後端部と第2空間の前端部との境界に段差部が設けられてもよい。蓋は、段差部に支持されてもよい。
【0017】
上記の構成では、開口から第2空間に挿入された蓋は、段差部により第1空間に入り込んでしまうことが抑制される。蓋は、前後方向において、段差部により位置決めされる。
【0018】
なお、第1空間の内径は、第2空間の内径よりも大きくてもよい。
【0019】
1つ又はそれ以上の実施形態において、ハンマは、ボディ部と、ボディ部から後方に突出し、スピンドルの外周面に接触する内周面を有する内筒部と、を有してもよい。第1供給口は、スピンドルの外周面とハンマの内筒部の内周面との間に潤滑油を供給してもよい。
【0020】
上記の構成では、スピンドルの外周面とハンマの内筒部の内周面との間に第1空間からの潤滑油が供給されるので、スピンドルのハンマの外周面とハンマの内筒部の内周面との摩耗又は焼き付きが抑制される。
【0021】
1つ又はそれ以上の実施形態において、第1供給口は、周方向に複数設けられてもよい。
【0022】
上記の構成では、第1供給口が周方向に複数設けられるので、スピンドルの外周面とハンマの内筒部の内周面との間に潤滑油が満遍なく供給される。
【0023】
1つ又はそれ以上の実施形態において、インパクト工具は、ハンマの内筒部の内周面に設けられ、潤滑油が収容される第1溝を備えてもよい。
【0024】
上記の構成では、スピンドルの外周面とハンマの内筒部の内周面との間に第1溝からの潤滑油が供給されるので、スピンドルの外周面とハンマの内筒部の内周面との摩耗又は焼き付きが抑制される。
【0025】
1つ又はそれ以上の実施形態において、第1溝は、第1供給口よりも前方に設けられてもよい。
【0026】
上記の構成では、前後方向において第1供給口と第1溝との位置が異なるので、スピンドルの外周面とハンマの内筒部の内周面との間に潤滑油が満遍なく供給される。
【0027】
なお、第1溝は、第1供給口よりも後方に設けられてもよいし、第1供給口に対向するように設けられてもよい。
【0028】
1つ又はそれ以上の実施形態において、インパクト工具は、スピンドルとハンマとの間に配置されるボールと、スピンドルの外周面において第1供給口よりも前方に設けられ、第1空間からの潤滑油をボールに供給する第2供給口と、を備えてもよい。
【0029】
上記の構成では、ボールに第1空間からの潤滑油が供給されるので、ボールの摩耗が抑制される。また、ボールに接触するスピンドル溝の内面及びハンマ溝の内面の摩耗が抑制される。
【0030】
1つ又はそれ以上の実施形態において、第2供給口は、周方向に複数設けられてもよい。
【0031】
上記の構成では、第2供給口が周方向に複数設けられるので、ボールに潤滑油が満遍なく供給される。
【0032】
1つ又はそれ以上の実施形態において、周方向において、第1供給口と第2供給口とは、異なる位置に配置されてもよい。
【0033】
上記の構成では、スピンドル、ハンマ、及びボールのそれぞれに第1空間からの潤滑油が満遍なく供給される。
【0034】
1つ又はそれ以上の実施形態において、インパクト工具は、スピンドルの前端面に設けられ、第1空間からの潤滑油をアンビルとの間に供給する第3供給口を備えてもよい。
【0035】
上記の構成では、スピンドルとアンビルとの間に第1空間からの潤滑油が供給されるので、スピンドル及びアンビルの摩耗が抑制される。
【0036】
1つ又はそれ以上の実施形態において、スピンドルは、スピンドルシャフト部と、スピンドルシャフト部の前端部に設けられるスピンドル凸部又はスピンドル凹部と、を有してもよい。アンビルは、アンビルの後端面に設けられ、スピンドル凸部が配置されるアンビル凹部又はスピンドル凹部に配置されるアンビル凸部を有してもよい。ハンマは、スピンドルシャフト部の周囲に配置されてもよい。第3供給口は、スピンドル凸部の前端面又はスピンドル凹部の内面に設けられてもよい。
【0037】
上記の構成では、スピンドル凸部の表面とアンビル凹部の内面と間、又は、スピンドル凹部の内面とアンビル凸部の表面との間に第1空間からの潤滑油が供給されるので、スピンドル凸部の表面とアンビル凹部の内面との摩耗、又は、スピンドル凹部の内面とアンビル凸部の表面との摩耗が抑制される。
【0038】
1つ又はそれ以上の実施形態において、インパクト工具は、スピンドル凸部の外周面又はスピンドル凹部の内周面に設けられ、潤滑油が収容される第2溝を備えてもよい。
【0039】
上記の構成では、スピンドル凸部の表面とアンビル凹部の内面との間に第2溝からの潤滑油が供給されるので、スピンドル凸部の表面とアンビル凹部の内面との摩耗、又は、スピンドル凹部の内面とアンビル凸部の表面との摩耗が抑制される。
【0040】
[実施形態]
実施形態について図面を参照しながら説明する。実施形態においては、左、右、前、後、上、及び下の用語を用いて各部の位置関係について説明する。これらの用語は、インパクト工具1の中心を基準とした相対位置又は方向を示す。インパクト工具1は、動力源としてモータ6を有する。
【0041】
実施形態において、モータ6の回転軸AXと平行な方向を適宜、軸方向、と称し、回転軸AXの周囲を周回する方向を適宜、周方向又は回転方向、と称し、回転軸AXの放射方向を適宜、径方向、と称する。
【0042】
回転軸AXは、前後方向に延伸する。軸方向一方側は、前方であり、軸方向他方側は、後方である。また、径方向において、回転軸AXに近い位置又は接近する方向を適宜、径方向内側、と称し、回転軸AXから遠い位置又は離隔する方向を適宜、径方向外側、と称する。
【0043】
<インパクト工具>
図1は、実施形態に係るインパクト工具1を示す前方からの斜視図である。図2は、実施形態に係るインパクト工具1の上部を示す側面図である。図3は、実施形態に係るインパクト工具1の上部を示す縦断面図である。図4は、実施形態に係るインパクト工具1の上部を示す横断面図である。図5は、実施形態に係るインパクト工具1の一部を示す前方からの分解斜視図である。図6は、実施形態に係るインパクト工具1の一部を示す後方からの分解斜視図である。
【0044】
実施形態において、インパクト工具1は、ねじ締め工具の一種であるインパクトドライバである。インパクト工具1は、ハウジング2と、リヤカバー3と、ハンマケース4と、ベアリングボックス24と、ハンマケースカバー51と、バンパ52と、モータ6と、減速機構7と、スピンドル8と、打撃機構9と、アンビル10と、工具保持機構11と、ファン12と、バッテリ装着部13と、トリガレバー14と、正逆転切換レバー15と、操作表示部16と、ライトアセンブリ18とを備える。
【0045】
ハウジング2は、合成樹脂製である。実施形態において、ハウジング2は、ナイロン製である。ハウジング2は、左ハウジング2Lと、左ハウジング2Lの右方に配置される右ハウジング2Rとを含む。左ハウジング2Lと右ハウジング2Rとは、複数のねじ2Sにより固定される。ハウジング2は、一対の半割れハウジングにより構成される。
【0046】
ハウジング2は、モータ収容部21と、グリップ部22と、バッテリ保持部23とを有する。
【0047】
モータ収容部21は、モータ6を収容する。モータ収容部21は、ハンマケース4の少なくとも一部を収容する。モータ収容部21は、筒状である。
【0048】
グリップ部22は、作業者に握られる。グリップ部22は、モータ収容部21から下方に延びる。トリガレバー14は、グリップ部22の上部に設けられる。
【0049】
バッテリ保持部23は、バッテリ装着部13を介してバッテリパック25を保持する。バッテリ保持部23は、グリップ部22の下端部に接続される。前後方向及び左右方向のそれぞれにおいて、バッテリ保持部23の外形の寸法は、グリップ部22の外形の寸法よりも大きい。
【0050】
リヤカバー3は、モータ収容部21の後端部の開口を覆うように配置される。リヤカバー3は、モータ収容部21の後方に配置される。リヤカバー3は、ファン12の少なくとも一部を収容する。ファン12は、リヤカバー3の内側に配置される。リヤカバー3は、後側ロータベアリング37を保持する。リヤカバー3は、合成樹脂製である。リヤカバー3は、2本のねじ3Sによりモータ収容部21の後端部に固定される。
【0051】
モータ収容部21は、吸気口19を有する。リヤカバー3は、排気口20を有する。ハウジング2の外部空間の空気は、吸気口19を介してハウジング2の内部空間に流入する。ハウジング2の内部空間の空気は、排気口20を介してハウジング2の外部空間に流出する。
【0052】
ハンマケース4は、減速機構7の少なくとも一部、スピンドル8、打撃機構9、及びアンビル10の少なくとも一部を収容する。ハンマケース4は、金属製である。実施形態において、ハンマケース4は、アルミニウム製である。ハンマケース4は、筒状である。ハンマケース4は、大筒部4Aと、小筒部4Bと、接続部4Cとを含む。小筒部4Bは、大筒部4Aよりも前方に配置される。大筒部4Aの前端部と小筒部4Bの後端部とは、接続部4Cを介して接続される。接続部4Cは、環状である。大筒部4Aの外径は、小筒部4Bの外径よりも大きい。大筒部4Aの内径は、小筒部4Bの内径よりも大きい。
【0053】
ベアリングボックス24は、減速機構7の少なくとも一部を収容する。ベアリングボックス24は、前側ロータベアリング38及びスピンドルベアリング44を保持する。ベアリングボックス24は、金属製である。ベアリングボックス24は、ハンマケース4の後部に固定される。ベアリングボックス24は、後側環状部24Aと、前側環状部24Bとを有する。前側環状部24Bは、後側環状部24Aよりも前方に配置される。後側環状部24Aの前端部と前側環状部24Bの後端部とは、接続部24Cを介して接続される。接続部24Cは、環状である。後側環状部24Aの外径は、前側環状部24Bの外径よりも小さい。後側環状部24Aの内径は、前側環状部24Bの内径よりも小さい。ベアリングボックス24とハンマケース4とは、ねじ部により固定されてもよいし、嵌め込み(軽合)により固定されてもよい。例えば、前側環状部24Bの外周部にねじ山が形成され、大筒部4Aの内周部にねじ溝が形成されてもよい。前側環状部24Bのねじ山と大筒部4Aのねじ溝とが結合されることにより、ベアリングボックス24とハンマケース4とが固定されてもよい。前側環状部24Bが大筒部4Aに嵌め込まれることにより、ベアリングボックス24とハンマケース4とが固定されてもよい。前側ロータベアリング38は、後側環状部24Aの径方向内側に配置される。スピンドルベアリング44は、接続部24Cの径方向内側に配置される。
【0054】
ハンマケース4は、左ハウジング2Lと右ハウジング2Rとに挟まれる。ハンマケース4の後部は、モータ収容部21に収容される。ハンマケース4は、モータ収容部21の前部に接続される。ベアリングボックス24は、モータ収容部21及びハンマケース4のそれぞれに固定される。
【0055】
ハンマケースカバー51は、ハンマケース4を保護する。ハンマケースカバー51は、ハンマケース4とハンマケース4の周囲の物体との接触を抑制する。ハンマケースカバー51は、大筒部4Aの外周面を覆うように配置される。なお、ハンマケースカバー51は省略されてもよい。
【0056】
バンパ52は、ハンマケース4を保護する。バンパ52は、ハンマケース4とハンマケース4の周囲の物体との接触を抑制する。バンパ52は、物体と接触したときの衝撃を緩和する。バンパ52は、小筒部4Bの周囲に配置される。
【0057】
モータ6は、インパクト工具1の動力源である。モータ6は、インナロータ型のブラシレスモータである。モータ6は、ステータ26と、ロータ27とを有する。ステータ26は、モータ収容部21に支持される。ロータ27の少なくとも一部は、ステータ26の内側に配置される。ロータ27は、ステータ26に対して回転する。ロータ27は、前後方向に延びる回転軸AXを中心に回転する。
【0058】
ステータ26は、ステータコア28と、後側インシュレータ29と、前側インシュレータ30と、コイル31とを有する。
【0059】
ステータコア28は、積層された複数の鋼板を含む。鋼板は、鉄を主成分とする金属製の板である。ステータコア28は、筒状である。ステータコア28は、ロータ27よりも径方向外側に配置される。ステータコア28は、コイル31を支持する複数のティースを有する。
【0060】
後側インシュレータ29及び前側インシュレータ30のそれぞれは、合成樹脂製の電気絶縁部材である。後側インシュレータ29及び前側インシュレータ30のそれぞれは、ステータコア28とコイル31とを電気的に絶縁する。後側インシュレータ29は、ステータコア28の後部に固定される。前側インシュレータ30は、ステータコア28の前部に固定される。後側インシュレータ29は、ティースの表面の一部を覆うように配置される。前側インシュレータ30は、ティースの表面の一部を覆うように配置される。
【0061】
コイル31は、後側インシュレータ29及び前側インシュレータ30を介してステータコア28に装着される。コイル31は、複数配置される。コイル31は、後側インシュレータ29及び前側インシュレータ30を介してステータコア28のティースの周囲に配置される。コイル31とステータコア28とは、前側インシュレータ30及び後側インシュレータ29により電気的に絶縁される。複数のコイル31は、ヒュージング端子36を介して接続される。
【0062】
ロータ27は、回転軸AXを中心に回転する。ロータ27は、ロータコア32と、ロータシャフト33と、ロータ磁石34とを有する。
【0063】
ロータコア32及びロータシャフト33のそれぞれは、鋼製である。ロータコア32は、実質的に円筒状である。ロータシャフト33は、ロータコア32の径方向内側に配置される。ロータコア32とロータシャフト33とは、固定される。ロータシャフト33の後端部は、ロータコア32の後端面から後方に突出する。ロータシャフト33の前端部は、ロータコア32の前端面から後方に突出する。
【0064】
ロータ磁石34は、ロータコア32に固定される。ロータ磁石34は、ロータコア32の内部に配置される。
【0065】
前側インシュレータ30にセンサ基板35が取り付けられる。センサ基板35は、ねじ30Sにより前側インシュレータ30に固定される。センサ基板35は、円環状の回路基板と、回路基板に支持される回転検出素子とを有する。センサ基板35の少なくとも一部は、ロータ磁石34の前端面に対向する。回転検出素子は、ロータ磁石34の位置を検出することにより、ロータ27の回転方向の位置を検出する。
【0066】
ロータシャフト33の後端部は、後側ロータベアリング37に回転可能に支持される。ロータシャフト33の前端部は、前側ロータベアリング38に回転可能に支持される。後側ロータベアリング37は、リヤカバー3に保持される。前側ロータベアリング38は、ベアリングボックス24に保持される。
【0067】
ロータシャフト33の前端部は、ベアリングボックス24の後側環状部24Aに設けられた開口を介してハンマケース4の内部空間に配置される。
【0068】
ロータシャフト33の前端部にピニオンギヤ41が固定される。ピニオンギヤ41は、減速機構7の少なくとも一部に連結される。ロータシャフト33は、ピニオンギヤ41を介して減速機構7に連結される。
【0069】
減速機構7は、ロータシャフト33とスピンドル8とを連結する。減速機構7のギヤは、ロータ27により駆動される。減速機構7は、ロータ27の回転をスピンドル8に伝達する。減速機構7は、ロータシャフト33の回転速度よりも低い回転速度でスピンドル8を回転させる。減速機構7は、ステータ26よりも前方に配置される。減速機構7は、遊星歯車機構を含む。
【0070】
減速機構7は、ピニオンギヤ41の周囲に配置される複数のプラネタリギヤ42と、複数のプラネタリギヤ42の周囲に配置されるインターナルギヤ43とを有する。ピニオンギヤ41、プラネタリギヤ42、及びインターナルギヤ43のそれぞれは、ハンマケース4に収容される。複数のプラネタリギヤ42のそれぞれは、ピニオンギヤ41に噛み合う。プラネタリギヤ42は、ピン42Pを介してスピンドル8に回転可能に支持される。スピンドル8は、プラネタリギヤ42により回転される。インターナルギヤ43は、プラネタリギヤ42に噛み合う内歯を有する。
【0071】
インターナルギヤ43は、ハンマケース4の大筒部4Aに固定される。インターナルギヤ43は、ハンマケース4に対して常に回転不可能である。インターナルギヤ43の後端部とベアリングボックス24との境界にOリング39Aが配置される。ベアリングボックス24とハンマケース4との境界にOリング39Bが配置される。
【0072】
モータ6の駆動によりロータシャフト33が回転すると、ピニオンギヤ41が回転し、プラネタリギヤ42がピニオンギヤ41の周囲を公転する。プラネタリギヤ42は、インターナルギヤ43の内歯に噛み合いながら公転する。プラネタリギヤ42の公転により、ピン42Pを介してプラネタリギヤ42に接続されているスピンドル8は、ロータシャフト33の回転速度よりも低い回転速度で回転する。
【0073】
スピンドル8は、モータ6により回転軸AXを中心に回転される。スピンドル8は、ロータ27により回転される。スピンドル8は、減速機構7を介して伝達されたロータ27の回転力により回転する。スピンドル8は、モータ6の回転力を、ボール48及びハンマ47を介してアンビル10に伝達する。スピンドル8の少なくとも一部は、モータ6よりも前方に配置される。スピンドル8は、ステータ26よりも前方に配置される。スピンドル8の少なくとも一部は、ロータ27よりも前方に配置される。スピンドル8の少なくとも一部は、減速機構7よりも前方に配置される。スピンドル8の少なくとも一部は、アンビル10よりも後方に配置される。
【0074】
スピンドル8は、スピンドルシャフト部8Aと、第1フランジ部8Bと、第2フランジ部8Cと、連結部8Dと、保持部8Eと、スピンドル凸部8Fとを有する。
【0075】
スピンドルシャフト部8Aは、前後方向に長いロッド状である。スピンドルシャフト部8Aの中心軸と回転軸AXとは、一致する。第1フランジ部8Bは、スピンドルシャフト部8Aの外周面の後端部から径方向外側に延びる。第2フランジ部8Cは、第1フランジ部8Bよりも後方に配置される。第2フランジ部8Cは、環状である。連結部8Dは、第1フランジ部8Bの一部と第2フランジ部8Cの一部とを連結する。保持部8Eは、第2フランジ部8Cの後面から後方に突出する。保持部8Eは、筒状である。スピンドル凸部8Fは、スピンドルシャフト部8Aの前端部から前方に突出する。ピン42Pの前端部は、第1フランジ部8Bに支持される。ピン42Pの後端部は、第2フランジ部8Cに支持される。プラネタリギヤ42は、第1フランジ部8Bと第2フランジ部8Cとの間に配置される。プラネタリギヤ42は、ピン42Pを介して第1フランジ部8B及び第2フランジ部8Cに回転可能に支持される。スピンドルベアリング44は、保持部8Eの周囲に配置される。スピンドルベアリング44は、保持部8Eを保持する。スピンドルベアリング44は、ベアリングボックス24に保持される。
【0076】
打撃機構9は、モータ6により駆動される。モータ6の回転力は、減速機構7及びスピンドル8を介して打撃機構9に伝達される。打撃機構9は、モータ6により回転するスピンドル8の回転力に基づいて、アンビル10を回転方向に打撃する。打撃機構9は、ハンマ47と、ボール48と、コイルスプリング49と、ワッシャ50とを有する。ハンマ47、ボール48、コイルスプリング49、及びワッシャ50を含む打撃機構9は、ハンマケース4の大筒部4Aに収容される。
【0077】
ハンマ47は、減速機構7よりも前方に配置される。ハンマ47は、スピンドル8の周囲に配置される。ハンマ47は、スピンドルシャフト部8Aの周囲に配置される。ハンマ47は、スピンドルシャフト部8Aに保持される。ボール48は、スピンドル8とハンマ47との間に配置される。
【0078】
ハンマ47は、ボディ部47Aと、外筒部47Bと、内筒部47Cと、ハンマ突起部47Dとを有する。ボディ部47Aは、スピンドルシャフト部8Aの周囲に配置される。ボディ部47Aは、環状である。外筒部47B及び内筒部47Cのそれぞれは、ボディ部47Aから後方に突出する。外筒部47Bは、内筒部47Cよりも径方向外側に配置される。ボディ部47Aの後面と外筒部47Bの内周面と内筒部47Cの外周面とにより凹部47Eが規定される。凹部47Eは、ハンマ47の後端部から前方に窪むように設けられる。凹部47Eは、リング状である。スピンドルシャフト部8Aは、ボディ部47A及び内筒部47Cよりも径方向内側に配置される。内筒部47Cは、スピンドルシャフト部8Aの外周面8Sに接触する内周面47Sを有する。ハンマ突起部47Dは、ボディ部47Aから前方に突出する。ハンマ突起部47Dは、2つ設けられる。
【0079】
ハンマ47は、モータ6により回転される。モータ6の回転力は、減速機構7及びスピンドル8を介してハンマ47に伝達される。ハンマ47は、モータ6により回転するスピンドル8の回転力に基づいて、スピンドル8と一緒に回転可能である。ハンマ47の回転軸とスピンドル8の回転軸とモータ6の回転軸AXとは一致する。ハンマ47は、回転軸AXを中心に回転する。
【0080】
ワッシャ50は、凹部47Eの内側に配置される。ワッシャ50は、複数のボール54を介してハンマ47に支持される。ボール54は、ワッシャ50よりも前方に配置される。ボール54は、ボディ部47Aの後面とワッシャ50の前面との間に配置される。
【0081】
コイルスプリング49は、スピンドルシャフト部8Aの周囲に配置される。コイルスプリング49の後端部は、第1フランジ部8Bに支持される。コイルスプリング49の前端部は、凹部47Eの内側に配置され、ワッシャ50に支持される。コイルスプリング49は、ハンマ47を前方に移動させる弾性力を常時発生する。
【0082】
ボール48は、鉄鋼のような金属製である。ボール48は、スピンドルシャフト部8Aとボディ部47Aとの間に配置される。スピンドルシャフト部8Aは、ボール48の少なくとも一部が配置されるスピンドル溝8Gを有する。スピンドル溝8Gは、スピンドルシャフト部8Aの外周面の一部に設けられる。ハンマ47は、ボール48の少なくとも一部が配置されるハンマ溝47Gを有する。ハンマ溝47Gは、ボディ部47A及び内筒部47Cの内周面の一部に設けられる。
【0083】
ボール48は、2つ設けられる。スピンドル溝8Gは、スピンドルシャフト部8Aの外周面に2つ設けられる。ハンマ溝47Gは、ボディ部47A及び内筒部47Cの内周面に2つ設けられる。一方のボール48は、一方のスピンドル溝8Gと一方のハンマ溝47Gとの間に配置される。他方のボール48は、他方のスピンドル溝8Gと他方のハンマ溝47Gとの間に配置される。ボール48は、スピンドル溝8Gの内側及びハンマ溝47Gの内側のそれぞれを転がることができる。ハンマ47は、ボール48に伴って移動可能である。スピンドル8とハンマ47とは、スピンドル溝8G及びハンマ溝47Gにより規定される可動範囲において、軸方向及び回転方向のそれぞれに相対移動することができる。
【0084】
アンビル10は、モータ6よりも前方に配置される。アンビル10は、ロータ27の回転力に基づいて回転するインパクト工具1の出力部である。アンビル10の少なくとも一部は、スピンドル8よりも前方に配置される。アンビル10の少なくとも一部は、ハンマ47よりも前方に配置される。アンビル10は、ハンマ47により回転方向に打撃される。
【0085】
アンビル10は、アンビルシャフト部10Aと、アンビル突起部10Bとを有する。アンビルシャフト部10Aは、前後方向に長いロッド状である。アンビルシャフト部10Aの中心軸と回転軸AXとは、一致する。アンビル突起部10Bは、アンビルシャフト部10Aの後端部に設けられる。アンビル突起部10Bは、アンビルシャフト部10Aの後端部から径方向外側に突出する。アンビル突起部10Bは、2つ設けられる。アンビル突起部10Bの前方にワッシャ56が配置される。ワッシャ56は、接続部4Cの後面に支持される。ワッシャ56は、アンビル突起部10Bの前面とハンマケース4との接触を抑制する。
【0086】
アンビル10の前端面に工具孔10Cが設けられる。アンビル10の後端面にアンビル凹部10Dが設けられる。工具孔10Cは、アンビルシャフト部10Aの前端面から後方に延びるように形成される。工具孔10Cに先端工具が挿入される。先端工具は、アンビル10に装着される。アンビル凹部10Dは、アンビル10の後端面から前方に窪むように設けられる。アンビル凹部10Dにスピンドル凸部8Fが配置される。
【0087】
なお、アンビル10の後端面から後方に突出するようにアンビル凸部が設けられ、スピンドル8の前端面にアンビル凸部が配置されるスピンドル凹部が設けられてもよい。
【0088】
アンビル10は、アンビルベアリング46に回転可能に支持される。アンビル10の回転軸とハンマ47の回転軸とスピンドル8の回転軸とモータ6の回転軸AXとは一致する。アンビル10は、回転軸AXを中心に回転する。アンビルベアリング46は、アンビルシャフト部10Aの周囲に配置される。アンビルベアリング46は、ハンマケース4の小筒部4Bの内側に配置される。アンビルベアリング46は、ハンマケース4の小筒部4Bに保持される。アンビルベアリング46は、アンビルシャフト部10Aの前部を回転可能に支持する。実施形態において、アンビルベアリング46は、前後方向に2つ配置される。前側のアンビルベアリング46と後側のアンビルベアリング46との間にワッシャ58が配置される。後側のアンビルベアリング46の後方に支持部材57が配置される。支持部材57として、スナップリングが例示される。支持部材57は、小筒部4Bの内周面に設けられた溝に配置される。支持部材57は、アンビルベアリング46が小筒部4Bから後方に抜けることを抑制する。アンビルベアリング46とアンビルシャフト部10Aとの間にOリング45が配置される。
【0089】
ハンマ突起部47Dは、アンビル突起部10Bに接触可能である。ハンマ突起部47Dとアンビル突起部10Bとが接触している状態で、モータ6が駆動することにより、アンビル10は、ハンマ47及びスピンドル8と一緒に回転する。
【0090】
アンビル10は、ハンマ47により回転方向に打撃される。例えばねじ締め作業において、アンビル10に作用する負荷が高くなると、コイルスプリング49の荷重だけではアンビル10を回転させることができなくなる状況が発生する場合がある。コイルスプリング49の荷重だけではアンビル10を回転させることができなくなると、アンビル10及びハンマ47の回転が停止する。スピンドル8とハンマ47とは、ボール48を介して軸方向及び周方向のそれぞれに相対移動可能である。ハンマ47の回転が停止しても、スピンドル8の回転は、モータ6が発生する動力により継続される。ハンマ47の回転が停止している状態で、スピンドル8が回転すると、ボール48がスピンドル溝8G及びハンマ溝47Gのそれぞれにガイドされながら後方に移動する。ハンマ47の回転が停止している状態で、スピンドル8が回転すると、スピンドル8の外周面8Sとハンマ47の内周面47Sとが摺動する。ハンマ47は、ボール48から力を受け、ボール48に伴って後方に移動する。すなわち、ハンマ47は、アンビル10の回転が停止された状態で、スピンドル8が回転することにより、後方に移動する。ハンマ47が後方に移動することにより、ハンマ突起部47Dとアンビル突起部10Bとの接触が解除される。
【0091】
上述のように、コイルスプリング49は、ハンマ47を前方に移動させる弾性力を常時発生する。後方に移動したハンマ47は、コイルスプリング49の弾性力により、前方に移動する。ハンマ47は、前方に移動するとき、ボール48から回転方向の力を受ける。すなわち、ハンマ47は、回転しながら前方に移動する。ハンマ47が回転しながら前方に移動すると、ハンマ47は、回転しながらアンビル突起部10Bに接触する。これにより、アンビル突起部10Bは、ハンマ47のハンマ突起部47Dにより回転方向に打撃される。アンビル10には、モータ6の動力とハンマ47の慣性力との両方が作用する。したがって、アンビル10は、高いトルクで回転軸AXを中心に回転することができる。
【0092】
工具保持機構11は、アンビル10の前部の周囲に配置される。工具保持機構11は、アンビル10の工具孔10Cに挿入された先端工具を保持する。工具保持機構11は、先端工具を着脱可能である。
【0093】
工具保持機構11は、ボール71と、リーフスプリング72と、スリーブ73と、コイルスプリング74と、位置決め部材75とを有する。
【0094】
アンビル10は、ボール71を支持する支持凹部76を有する。支持凹部76は、アンビルシャフト部10Aの外面に形成される。実施形態において、支持凹部76は、アンビルシャフト部10Aに2つ形成される。
【0095】
ボール71は、アンビル10に移動可能に支持される。ボール71は、支持凹部76に配置される。ボール71は、1つの支持凹部76に1つ配置される。
【0096】
アンビルシャフト部10Aに、支持凹部76の内面と工具孔10Cの内面とを結ぶ貫通孔が形成される。ボール71の直径は、貫通孔の直径よりも小さい。ボール71が支持凹部76に支持された状態で、ボール71の少なくとも一部を介して、工具孔10Cの内側に配置される。ボール71は、工具孔10Cに挿入された先端工具を固定することができる。ボール71は、先端工具を固定する係合位置と先端工具の固定を解除する解除位置とに移動可能である。
【0097】
リーフスプリング72は、ボール71を係合位置に移動させる弾性力を発生する。リーフスプリング72は、アンビルシャフト部10Aの周囲に配置される。リーフスプリング72は、ボール71を前方に移動させる弾性力を発生する。
【0098】
スリーブ73は、円筒状の部材である。スリーブ73は、アンビルシャフト部10Aの周囲に配置される。スリーブ73は、アンビルシャフト部10Aの周囲において軸方向に移動可能である。スリーブ73は、係合位置に配置されているボール71が係合位置から脱出することを阻止することができる。スリーブ73は、軸方向に移動されることにより、ボール71を係合位置から解除位置に移動可能な状態に変化させることができる。
【0099】
スリーブ73は、アンビルシャフト部10Aの周囲において、ボール71の径方向外側への移動を阻止する阻止位置と径方向外側への移動を許容する許容位置とに移動可能である。
【0100】
スリーブ73が阻止位置に配置されることにより、係合位置に配置されているボール71が径方向外側に移動することが抑制される。すなわち、スリーブ73が阻止位置に配置されることにより、係合位置に配置されているボール71が係合位置から脱出することが阻止される。スリーブ73が阻止位置に配置されることにより、先端工具がボール71により固定された状態が維持される。
【0101】
スリーブ73が許容位置に移動されることにより、係合位置に配置されているボール71が径方向外側に移動することが許容される。スリーブ73は、許容位置に移動されることにより、ボール71を係合位置から解除位置に移動可能な状態に変化させる。すなわち、スリーブ73が許容位置に配置されることにより、係合位置に配置されているボール71が係合位置から脱出することが許容される。スリーブ73が許容位置に配置されることにより、先端工具がボール71により固定された状態が解除可能になる。
【0102】
コイルスプリング74は、スリーブ73が阻止位置に移動するように弾性力を発生する。コイルスプリング74は、アンビルシャフト部10Aの周囲に配置される。阻止位置は、許容位置よりも後方に規定される。コイルスプリング74は、スリーブ73を後方に移動させる弾性力を発生する。
【0103】
位置決め部材75は、アンビルシャフト部10Aの外面に固定されたリング状の部材である。位置決め部材75は、スリーブ73の後端部に対向可能な位置に固定される。位置決め部材75は、スリーブ73を阻止位置に位置決めする。コイルスプリング74から後方に移動する弾性力を付与されているスリーブ73は、位置決め部材75に接触することにより、阻止位置に位置決めされる。
【0104】
ファン12は、モータ6のステータ26よりも後方に配置される。ファン12は、モータ6を冷却するための気流を生成する。ファン12は、ロータ27の少なくとも一部に固定される。ファン12は、ブッシュ12Aを介してロータシャフト33の後部に固定される。ファン12は、後側ロータベアリング37とステータ26との間に配置される。ファン12は、ロータ27の回転により回転する。ロータシャフト33が回転することにより、ファン12は、ロータシャフト33と一緒に回転する。ファン12が回転することにより、ハウジング2の外部空間の空気が、吸気口19を介してハウジング2の内部空間に流入する。ハウジング2の内部空間に流入した空気は、ハウジング2の内部空間を流通することにより、モータ6を冷却する。ハウジング2の内部空間を流通した空気は、ファン12が回転することにより、排気口20を介してハウジング2の外部空間に流出する。
【0105】
バッテリ装着部13は、バッテリ保持部23の下部に配置される。バッテリ装着部13は、バッテリパック25に接続される。バッテリパック25は、バッテリ装着部13に装着される。バッテリパック25は、バッテリ装着部13に着脱可能である。バッテリパック25は、バッテリ保持部23の前方からバッテリ装着部13に挿入されることにより、バッテリ装着部13に装着される。バッテリパック25は、バッテリ装着部13から前方に抜去されることにより、バッテリ装着部13から外される。バッテリパック25は、二次電池を含む。実施形態において、バッテリパック25は、充電式のリチウムイオン電池を含む。バッテリ装着部13に装着されることにより、バッテリパック25は、インパクト工具1に電力を供給することができる。モータ6は、バッテリパック25から供給される電力に基づいて駆動する。操作表示部16は、バッテリパック25から供給される電力により作動する。
【0106】
トリガレバー14は、グリップ部22に設けられる。トリガレバー14は、モータ6を起動するために作業者に操作される。トリガレバー14が操作されることにより、モータ6の駆動と停止とが切り換えられる。
【0107】
正逆転切換レバー15は、グリップ部22の上部に設けられる。正逆転切換レバー15は、作業者に操作される。正逆転切換レバー15が操作されることにより、モータ6の回転方向が正転方向及び逆転方向の一方から他方に切り換えられる。モータ6の回転方向が切り換えられることにより、スピンドル8の回転方向が切り換えられる。
【0108】
操作表示部16は、バッテリ保持部23に設けられる。操作表示部16は、グリップ部22よりも前方側において、バッテリ保持部23の上面に設けられる。操作表示部16は、操作ボタン16Aを有する。操作ボタン16Aは、1つでもよいし複数でもよい。実施形態において、操作ボタン16Aは、複数設けられる。作業者により操作ボタン16Aが操作されることにより、モータ6の動作モードが切り換えられる。
【0109】
ライトアセンブリ18は、照明光を射出する。ライトアセンブリ18は、アンビル10及びアンビル10の周辺を照明光で照明する。ライトアセンブリ18は、アンビル10の前方を照明光で照明する。また、ライトアセンブリ18は、アンビル10に装着された先端工具及び先端工具の周辺を照明光で照明する。実施形態において、ライトアセンブリ18は、ハンマケースカバー51の左側及び右側のそれぞれに配置される。ライトアセンブリ18は、回路基板18Aと、回路基板18Aに支持される発光素子18Bと、発光素子18Bから射出された光が通過する光学部材18Cとを有する。
【0110】
なお、発光素子18Bの位置は限定されない。発光素子18Bは、例えばトリガレバー14の上方に配置されてもよい。
【0111】
<潤滑油の供給>
スピンドル8は、内部空間60を有する。スピンドル8の後端面に開口59が設けられる。実施形態において、開口59は、保持部8Eの後端部に設けられる。内部空間60は、開口59から前方に延びるようにスピンドル8の内部に形成される。
【0112】
内部空間60は、第1空間61と、第2空間62とを含む。第1空間61は、第2空間62よりも前方に配置される。第1空間61の後端部は、第2空間62の前端部に繋がる。開口59は、第2空間62の後端部に設けられる。回転軸AXに直交する断面において、第1空間61及び第2空間62のそれぞれは、円形状である。第1空間61の内径は、第2空間62の内径よりも小さい。第1空間61の後端部と第2空間62の前端部との境界に段差部63が設けられる。
【0113】
なお、第1空間61の内径は、第2空間62の内径よりも大きくてもよい。
【0114】
第1空間61に潤滑油が収容される。潤滑油は、グリス(grease)を含む。実施形態において、第1空間61は、第2空間62の前端部に繋がる後側空間61Aと、後側空間61Aよりも前方に配置される前側空間61Bとを含む。前側空間61Bの後端部は、後側空間61Aの前端部に繋がる。前側空間61Bの内径は、後側空間61Aの内径よりも小さい。
【0115】
インパクト工具1は、開口59を塞ぐ蓋5を備える。蓋5は、内部空間60に収容されている潤滑油が開口59から漏出することを抑制する。蓋5は、開口59から内部空間60に挿入される。蓋5は、第2空間62に配置される。
【0116】
蓋5は、実質的に円柱状である。蓋5の外周面は、第2空間62の内周面に接触する。蓋5の前面の周縁部は、段差部63に支持される。
【0117】
蓋5は、金属製でもよいし、合成樹脂製でもよいし、ゴムでもよい。実施形態において、蓋5は、フェルト製である。フェルトとして、羊毛フェルトが例示される。蓋5が第2空間62に挿入される前において、蓋5の外径は、第2空間62の内径よりも大きい。フェルト製の蓋5は、変形可能である。蓋5は、潰されながら第2空間62に挿入される。第2空間62の内径よりも大きい外径の蓋5が潰されながら第2空間62に挿入されることにより、蓋5の外周面が第2空間62の内周面に密着する。
【0118】
第2空間62にピニオンギヤ41が配置される。第2空間62において、ピニオンギヤ41は、蓋5よりも後方に配置される。ピニオンギヤ41は、開口59から第2空間62に挿入される。蓋5が開口59から第2空間62に挿入された後、ロータシャフト33の前端部に固定されたピニオンギヤ41が開口59から第2空間62に挿入される。
【0119】
スピンドル8は、第1供給口81と、第2供給口82と、第3供給口83とを有する。
【0120】
第1供給口81は、スピンドルシャフト部8Aの外周面に設けられる。第1供給口81は、第1空間61からの潤滑油をスピンドル8とハンマ47との間に供給する。実施形態において、第1供給口81は、スピンドルシャフト部8Aの外周面8Sと内筒部47Cの内周面47Sとの間に潤滑油を供給する。第1供給口81は、スピンドルシャフト部8Aの内部に形成された第1流路91を介して第1空間61の後側空間61Aに接続される。第1流路91は、後側空間61Aと第1供給口81とを接続するように、後側空間61Aから径方向外側に延びるように設けられる。スピンドル8の遠心力により、後側空間61Aに収容されている潤滑油は、第1供給口81に向かって第1流路91を流れる。後側空間61Aから第1流路91を介して第1供給口81に供給された潤滑油は、スピンドルシャフト部8Aの外周面8Sと内筒部47Cの内周面47Sとの間に供給される。
【0121】
上述のように、ハンマ47の回転が停止している状態で、スピンドル8が回転すると、スピンドル8の外周面8Sとハンマ47の内周面47Sとが摺動する。摺動面である外周面8Sと内周面47Sとの間に潤滑油が供給されることにより、外周面8S及び内周面47Sの摩耗又は焼き付きが抑制される。
【0122】
第1供給口81は、周方向に複数設けられる。実施形態において、第1供給口81は、第1供給口81Aと、周方向において第1供給口81Aとは異なる位置に設けられる第1供給口81Bとを含む。前後方向において、第1供給口81Aの位置と第1供給口81Bの位置とは、実質的に等しい。
【0123】
第2供給口82は、スピンドルシャフト部8Aの外周面に設けられる。第2供給口82は、スピンドルシャフト部8Aの外周面において第1供給口81よりも前方に設けられる。第2供給口82は、第1空間61からの潤滑油をボール48に供給する。また、第2供給口82は、スピンドルシャフト部8Aの外周面と内筒部47Cの内周面との間にも潤滑油を供給する。ボール48の表面に潤滑油が供給されることにより、ボール48が転がるスピンドル溝8Gの内面及びハンマ溝47Gの内面に潤滑油が供給される。第2供給口82は、スピンドルシャフト部8Aの内部に形成された第2流路92を介して第1空間61の前側空間61Bに接続される。第2流路92は、前側空間61Bと第2供給口82とを接続するように、前側空間61Bから径方向外側に延びるように設けられる。スピンドル8の遠心力により、前側空間61Bに収容されている潤滑油は、第2供給口82に向かって第2流路92を流れる。前側空間61Bから第2流路92を介して第2供給口82に供給された潤滑油は、ボール48の表面に供給される。また、前側空間61Bから第2流路92を介して第2供給口82に供給された潤滑油は、スピンドルシャフト部8Aの外周面と内筒部47Cの内周面47Sとの間に供給される。
【0124】
第2供給口82は、周方向に複数設けられる。実施形態において、第2供給口82は、第2供給口82Aと、周方向において第2供給口82Aとは異なる位置に設けられる第2供給口82Bとを含む。前後方向において、第2供給口82Aの位置と第2供給口82Bの位置とは、実質的に等しい。
【0125】
周方向において、第1供給口81と第2供給口82とは、異なる位置に配置される。実施形態においては、周方向において、第1供給口81と第2供給口82とは、90度だけ異なる位置に配置される。周方向において、第1供給口81Aと第1供給口81Bとは、180度だけ異なる位置に配置される。周方向において、第2供給口82Aと第2供給口82Bとは、180度だけ異なる位置に配置される。周方向において、第1供給口81Aの位置を0度の位置とした場合、第2供給口82Aは、90度の位置に配置され、第1供給口81Bは、180度の位置に配置され、第2供給口82Bは、270度の位置に配置される。
【0126】
なお、周方向における第1供給口81と第2供給口82との相対角度は、一例である。また、第1供給口81は、2つでなくてもよく、1つでもよいし、3つ以上の任意の複数でもよい。第2供給口82は、2つでなくてもよく、1つでもよいし、3つ以上の任意の複数でもよい。
【0127】
第3供給口83は、スピンドル8の前端面に設けられる。第3供給口83は、第1空間61からの潤滑油をスピンドル8とアンビル10との間に供給する。実施形態において、第3供給口83は、スピンドル凸部8Fの前端面に設けられる。実施形態において、第3供給口83は、スピンドル凸部8Fの表面とアンビル凹部10Dの内面との間に潤滑油を供給する。第3供給口83は、前側空間61Bの前端部に接続される。前側空間61Bから第3供給口83に供給された潤滑油は、スピンドル凸部8Fの表面とアンビル凹部10Dの内面との間に供給される。
【0128】
なお、スピンドルシャフト部8Aの前端部にスピンドル凹部が設けられ、アンビル10の後端面にスピンドル凹部に配置されるアンビル凸部が設けられてもよい。第3供給口83は、スピンドル凹部の内面に設けられてもよい。
【0129】
ハンマ47の内筒部47Cの内周面に第1溝47Rが設けられる。第1溝47Rは、内筒部47Cの内周面から径方向外側に窪むように形成される。第1溝47Rは、スピンドルシャフト部8Aを囲むように形成される。第1溝47Rは、第1供給口81よりも前方に配置される。前後方向において、第1溝47Rは、第1供給口81と第2供給口82との間に設けられる。なお、第1溝47Rは、第1供給口81よりも後方に配置されてもよいし、第1供給口81に対向するように配置されてもよい。第1溝47Rに潤滑油が収容される。第1溝47Rに収容されている潤滑油は、スピンドルシャフト部8Aの外周面と内筒部47Cの内周面との間に供給される。
【0130】
スピンドル凸部8Fの外周面に第2溝8Rが設けられる。第2溝8Rは、スピンドル凸部8Fの外周面から径方向内側に窪むように形成される。第2溝8Rは、回転軸AXを囲むように形成される。第2溝8Rに潤滑油が収容される。第2溝8Rに収容されている潤滑油は、スピンドル凸部8Fの表面とアンビル凹部10Dの内面との間に供給される。
【0131】
なお、スピンドルシャフト部8Aの前端部にスピンドル凹部が設けられ、アンビル10の後端面にスピンドル凹部に配置されるアンビル凸部が設けられる場合、第2溝8Rがスピンドル凹部の内周面に設けられてもよい。
【0132】
<インパクト工具の動作>
次に、インパクト工具1の動作について説明する。例えば、作業対象にねじ締め作業を実施するとき、ねじ締め作業に使用される先端工具(ドライバビット)が、アンビル10の工具孔10Cに挿入される。工具孔10Cに挿入された先端工具は、工具保持機構11により保持される。先端工具がアンビル10に装着された後、作業者は、グリップ部22を例えば右手で握ってトリガレバー14を右手の人差し指で引き操作する。トリガレバー14が引き操作されると、バッテリパック25からモータ6に電力が供給され、モータ6が起動し、同時にライトアセンブリ18が点灯する。モータ6の起動により、ロータ27のロータシャフト33が回転する。ロータシャフト33が回転すると、ロータシャフト33の回転力がピニオンギヤ41を介してプラネタリギヤ42に伝達される。プラネタリギヤ42は、インターナルギヤ43の内歯に噛み合った状態で、自転しながらピニオンギヤ41の周囲を公転する。プラネタリギヤ42は、ピン42Pを介してスピンドル8に回転可能に支持される。プラネタリギヤ42の公転により、スピンドル8は、ロータシャフト33の回転速度よりも低い回転速度で回転する。
【0133】
ハンマ突起部47Dとアンビル突起部10Bとが接触している状態で、スピンドル8が回転すると、アンビル10は、ハンマ47及びスピンドル8と一緒に回転する。アンビル10が回転することにより、ねじ締め作業が進行する。
【0134】
ねじ締め作業の進行により、アンビル10に所定値以上の負荷が作用した場合、アンビル10及びハンマ47の回転が停止する。ハンマ47の回転が停止している状態で、スピンドル8が回転すると、ハンマ47は、後方に移動する。ハンマ47が後方に移動することにより、ハンマ突起部47Dとアンビル突起部10Bとの接触が解除される。後方に移動したハンマ47は、コイルスプリング49の弾性力により、回転しながら前方に移動する。ハンマ47が回転しながら前方に移動することにより、アンビル10は、ハンマ47により回転方向に打撃される。これにより、アンビル10は、高いトルクで回転軸AXを中心に回転する。そのため、ねじは作業対象に高いトルクで締め付けられる。
【0135】
<効果>
以上説明したように、実施形態において、インパクト工具1は、モータ6と、スピンドル8と、ハンマ47と、アンビル10と、蓋5と、を備えてもよい。スピンドル8の少なくとも一部は、モータ6よりも前方に配置されてもよい。スピンドル8は、モータ6により回転されてもよい。ハンマ47は、スピンドル8の周囲に配置されてもよい。アンビル10の少なくとも一部は、スピンドル8よりも前方に配置されてもよい。アンビル10は、ハンマ47により回転方向に打撃されてもよい。スピンドル8の内部に内部空間60が形成されてもよい。内部空間60は、スピンドル8の後端面に設けられた開口59から前方に延びるように形成されてもよい。内部空間60は、潤滑油が収容される第1空間61と、蓋5が配置される第2空間62とを含んでもよい。第2空間62は、第1空間61よりも後方に配置されてもよい。第1空間61の後端部と第2空間62の前端部とは、繋がってもよい。開口59は、第2空間62の後端部に設けられてもよい。蓋5は、開口59から第2空間62に挿入されてもよい。スピンドル8の外周面8Sに、第1空間61からの潤滑油をスピンドル8とハンマ47との間に供給する第1供給口81が設けられてもよい。
【0136】
上記の構成では、潤滑油が収容される第1空間61よりも後方の第2空間62に蓋5が配置される。そのため、第1空間61に収容されている潤滑油が開口59を介して漏洩することが抑制される。これにより、第1供給口81からスピンドル8とハンマ47との間に供給される潤滑油の量が少なくなってしまうことが抑制される。したがって、スピンドル8及びハンマ47の摩耗又は焼き付きが抑制され、インパクト工具1の寿命が短くなることが抑制される。
【0137】
実施形態において、蓋5は、フェルト製でもよい。
【0138】
上記の構成では、開口59から第2空間62に蓋5を挿入するときの作業性の低下が抑制される。フェルトは変形可能なので、インパクト工具1の組立者は、フェルトを潰しながら第2空間62に挿入することにより、作業性良く蓋5を第2空間62に挿入することができる。また、第2空間62の内径よりも大きい外径のフェルトが潰されながら第2空間62に挿入されることにより、フェルトの外周面が第2空間62の内周面に密着する。したがって、フェルトの外周面と第2空間62の内周面とのシール性が向上するので、第1空間61に収容されている潤滑油が開口59を介して漏洩することが効果的に抑制される。
【0139】
実施形態において、第1空間61の内径は、第2空間62の内径よりも小さくてもよい。
【0140】
上記の構成では、第1空間61の内径よりも大きい外径の蓋5が第2空間62に配置される。
【0141】
実施形態において、第1空間61の後端部と第2空間62の前端部との境界に段差部63が設けられてもよい。蓋5は、段差部63に支持されてもよい。
【0142】
上記の構成では、開口59から第2空間62に挿入された蓋5は、段差部63により第1空間61に入り込んでしまうことが抑制される。蓋5は、前後方向において、段差部63により位置決めされる。
【0143】
実施形態において、ハンマ47は、ボディ部47Aと、ボディ部47Aから後方に突出し、スピンドル8の外周面8Sに接触する内周面47Sを有する内筒部47Cと、を有してもよい。第1供給口81は、スピンドル8の外周面8Sと内筒部47Cの内周面47Sとの間に潤滑油を供給してもよい。
【0144】
上記の構成では、スピンドル8の外周面8Sと内筒部47Cの内周面47Sとの間に第1空間61からの潤滑油が供給されるので、スピンドル8の外周面8Sと内筒部47Cの内周面47Sとの摩耗又は焼き付きが抑制される。
【0145】
実施形態において、第1供給口81は、周方向に複数設けられてもよい。
【0146】
上記の構成では、第1供給口81が周方向に複数設けられるので、スピンドル8の外周面8Sと内筒部47Cの内周面47Sとの間に潤滑油が満遍なく供給される。
【0147】
実施形態において、インパクト工具1は、内筒部47Cの内周面47Sに設けられ、潤滑油が収容される第1溝47Rを備えてもよい。
【0148】
上記の構成では、スピンドル8の外周面8Sと内筒部47Cの内周面47Sとの間に第1溝47Rからの潤滑油が供給されるので、スピンドル8の外周面8Sと内筒部47Cの内周面47Sとの摩耗又は焼き付きが抑制される。
【0149】
実施形態において、第1溝47Rは、第1供給口81よりも前方に設けられてもよい。
【0150】
上記の構成では、前後方向において第1供給口81と第1溝47Rとの位置が異なるので、スピンドル8の外周面8Sと内筒部47Cの内周面47Sとの間に潤滑油が満遍なく供給される。
【0151】
実施形態において、インパクト工具1は、スピンドル8とハンマ47との間に配置されるボール48と、スピンドル8の外周面8Sにおいて第1供給口81よりも前方に設けられ、第1空間61からの潤滑油をボール48に供給する第2供給口82と、を備えてもよい。
【0152】
上記の構成では、ボール48に第1空間61からの潤滑油が供給されるので、ボール48の摩耗が抑制される。また、ボール48に接触するスピンドル溝8Gの内面及びハンマ溝47Gの内面の摩耗が抑制される。
【0153】
実施形態において、第2供給口82は、周方向に複数設けられてもよい。
【0154】
上記の構成では、第2供給口82が周方向に複数設けられるので、ボール48に潤滑油が満遍なく供給される。
【0155】
実施形態において、周方向において、第1供給口81と第2供給口82とは、異なる位置に配置されてもよい。
【0156】
上記の構成では、スピンドル8、ハンマ47、及びボール48のそれぞれに第1空間61からの潤滑油が満遍なく供給される。
【0157】
実施形態において、インパクト工具1は、スピンドル8の前端面に設けられ、第1空間61からの潤滑油をアンビル10との間に供給する第3供給口83を備えてもよい。
【0158】
上記の構成では、スピンドル8とアンビル10との間に第1空間61からの潤滑油が供給されるので、スピンドル8及びアンビル10の摩耗が抑制される。
【0159】
実施形態において、スピンドル8は、スピンドルシャフト部8Aと、スピンドルシャフト部8Aの前端部から前方に突出するスピンドル凸部8Fと、を有してもよい。アンビル10は、アンビル10の後端面に設けられ、スピンドル凸部8Fが配置されるアンビル凹部10Dを有してもよい。ハンマ47は、スピンドルシャフト部8Aの周囲に配置されてもよい。第3供給口83は、スピンドル凸部8Fの前端面に設けられてもよい。
【0160】
上記の構成では、スピンドル凸部8Fの表面とアンビル凹部10Dの内面と間に第1空間61からの潤滑油が供給されるので、スピンドル凸部8Fの表面とアンビル凹部10Dの内面との摩耗が抑制される。
【0161】
実施形態において、インパクト工具1は、スピンドル凸部8Fの外周面に設けられ、潤滑油が収容される第2溝8Rを備えてもよい。
【0162】
上記の構成では、スピンドル凸部8Fの表面とアンビル凹部10Dの内面との間に第2溝8Rからの潤滑油が供給されるので、スピンドル凸部8Fの表面とアンビル凹部10Dの内面との摩耗が抑制される。
【0163】
[変形例]
図7は、変形例に係るスピンドル8及びアンビル10を模式的に示す断面図である。上述の実施形態においては、スピンドル8は、スピンドルシャフト部8Aと、スピンドルシャフト部8Aの前端部から前方に突出するスピンドル凸部8Fと、を有し、アンビル10は、アンビル10の後端面に設けられ、スピンドル凸部8Fが配置されるアンビル凹部10Dを有することとした。スピンドル8は、スピンドルシャフト部8Aと、スピンドルシャフト部8Aの前端部から後方に窪むスピンドル凹部8Hと、を有し、アンビル10は、アンビル10の後端面から後方に突出するように設けられ、スピンドル凹部8Hに配置されるアンビル凸部10Eを有してもよい。第3供給口83は、スピンドル凹部8Hの内面に設けられてもよい。また、潤滑油が収容される第2溝8Rが、スピンドル凹部8Hの内周面に設けられてもよい。
【0164】
図8は、変形例に係るスピンドル8を模式的に示す断面図である。上述の実施形態においては、第1空間61の内径は、第2空間62の内径よりも小さいこととした。図8に示すように、第1空間61の内径は、第2空間62の内径よりも大きくてもよい。
【0165】
上述の実施形態においては、インパクト工具1がインパクトドライバであることとした。インパクト工具1は、インパクトレンチでもよい。
【0166】
上述の実施形態において、インパクト工具1の電源は、バッテリパック25でなくてもよく、商用電源(交流電源)でもよい。
【符号の説明】
【0167】
1…インパクト工具、2…ハウジング、2L…左ハウジング、2R…右ハウジング、2S…ねじ、3…リヤカバー、3S…ねじ、4…ハンマケース、4A…大筒部、4B…小筒部、4C…接続部、5…蓋、6…モータ、7…減速機構、8…スピンドル、8A…スピンドルシャフト部、8B…第1フランジ部、8C…第2フランジ部、8D…連結部、8E…保持部、8F…スピンドル凸部、8G…スピンドル溝、8H…スピンドル凹部、8R…第2溝、8S…外周面、9…打撃機構、10…アンビル、10A…アンビルシャフト部、10B…アンビル突起部、10C…工具孔、10D…アンビル凹部、10E…アンビル凸部、11…工具保持機構、12…ファン、12A…ブッシュ、13…バッテリ装着部、14…トリガレバー、15…正逆転切換レバー、16…操作表示部、16A…操作ボタン、18…ライトアセンブリ、18A…回路基板、18B…発光素子、18C…光学部材、19…吸気口、20…排気口、21…モータ収容部、22…グリップ部、23…バッテリ保持部、24…ベアリングボックス、24A…後側環状部、24B…前側環状部、24C…接続部、25…バッテリパック、26…ステータ、27…ロータ、28…ステータコア、29…後側インシュレータ、30…前側インシュレータ、30S…ねじ、31…コイル、32…ロータコア、33…ロータシャフト、34…ロータ磁石、35…センサ基板、36…ヒュージング端子、37…後側ロータベアリング、38…前側ロータベアリング、39A…Oリング、39B…Oリング、41…ピニオンギヤ、42…プラネタリギヤ、42P…ピン、43…インターナルギヤ、44…スピンドルベアリング、45…Oリング、46…アンビルベアリング、47…ハンマ、47A…ボディ部、47B…外筒部、47C…内筒部、47D…ハンマ突起部、47E…凹部、47G…ハンマ溝、47R…第1溝、47S…内周面、48…ボール、49…コイルスプリング、50…ワッシャ、51…ハンマケースカバー、52…バンパ、54…ボール、56…ワッシャ、57…支持部材、58…ワッシャ、59…開口、60…内部空間、61…第1空間、61A…後側空間、61B…前側空間、62…第2空間、63…段差部、71…ボール、72…リーフスプリング、73…スリーブ、74…コイルスプリング、75…位置決め部材、76…支持凹部、81…第1供給口、81A…第1供給口、81B…第1供給口、82…第2供給口、82A…第2供給口、82B…第2供給口、83…第3供給口、91…第1流路、92…第2流路、AX…回転軸。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8