(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023017928
(43)【公開日】2023-02-07
(54)【発明の名称】配線部材
(51)【国際特許分類】
H01B 7/00 20060101AFI20230131BHJP
H02G 3/04 20060101ALI20230131BHJP
H01B 7/40 20060101ALI20230131BHJP
【FI】
H01B7/00 301
H02G3/04
H01B7/40 307A
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177878
(22)【出願日】2022-11-07
(62)【分割の表示】P 2020565552の分割
【原出願日】2019-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100117662
【弁理士】
【氏名又は名称】竹下 明男
(74)【代理人】
【識別番号】100103229
【弁理士】
【氏名又は名称】福市 朋弘
(72)【発明者】
【氏名】福嶋 大地
(72)【発明者】
【氏名】平井 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】水野 芳正
(72)【発明者】
【氏名】荒巻 心優
(72)【発明者】
【氏名】西村 哲也
(72)【発明者】
【氏名】白川 純一
(57)【要約】
【課題】配線部材の軽量化及び材料費によるコスト低減を図りつつ、線状伝送部材をシート材に対してなるべくしっかりと固定できるようにすることを目的とする。
【解決手段】配線部材は、シート状に形成された第1層と、前記第1層の主面に設けられた第2層とを含むシート材と、前記シート材上に固定された線状伝送部材とを備える。前記第2層は、前記第1層と前記線状伝送部材との接合を仲立ちする層であり、前記線状伝送部材の延在方向に沿って相互に分離する態様で設けられた複数の部分第2層を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状に形成された第1層と、前記第1層の主面に設けられた第2層とを含むシート材と、
前記シート材上に固定された線状伝送部材と、
を備え、
前記第2層は、前記第1層と前記線状伝送部材との接合を仲立ちする層であり、前記線状伝送部材の延在方向に沿って相互に分離する態様で設けられた複数の部分第2層を含み、
前記線状伝送部材が前記第2層に超音波溶着されて、前記線状伝送部材の被覆と前記第2層との両方が溶けて溶着された状態となっており、
前記第2層は、前記第1層よりも強固に前記線状伝送部材と溶着固定可能な層である、配線部材。
【請求項2】
シート状に形成された第1層と、前記第1層の主面に設けられた第2層とを含むシート材と、
前記シート材上に固定された線状伝送部材と、
を備え、
前記第2層は、前記第1層と前記線状伝送部材との接合を仲立ちする層であり、前記線状伝送部材の延在方向に沿って相互に分離する態様で設けられた複数の部分第2層を含み、
前記線状伝送部材は、前記シート材上で分岐した状態で固定される複数の線状伝送部材を含み、
前記複数の部分第2層は、前記複数の線状伝送部材の分岐部分で、前記複数の線状伝送部材が複数方向に延び出る部分に面状に広がるように、前記複数の線状伝送部材が分岐する状態を保つ領域に設けられるものを含み、
面状に広がる前記部分第2層のうち前記第1層とは反対側の面であって、前記複数の線状伝送部材の間の部分が、露出した状態となっている、配線部材。
【請求項3】
請求項2に記載の配線部材であって、
前記複数の部分第2層は、前記複数の線状伝送部材が分岐する部分で曲る領域に設けられるものを含む、配線部材。
【請求項4】
シート状に形成された第1層と、前記第1層の主面に設けられた第2層とを含むシート材と、
前記シート材上に固定された線状伝送部材と、
を備え、
前記第2層は、前記第1層と前記線状伝送部材との接合を仲立ちする層であり、前記線状伝送部材の延在方向に沿って相互に分離する態様で設けられた複数の部分第2層を含み、
前記複数の部分第2層は、前記複数の線状伝送部材の交差箇所、及び、前記交差箇所を通過する線状伝送部材を当該交差箇所を挟む箇所で固定可能な部分に面状に広がるように、前記複数の線状伝送部材が交差する領域に設けられるものを含み、
面状に広がる前記部分第2層のうち前記第1層とは反対側の面であって、前記複数の線状伝送部材の間の部分が、露出した状態となっている、配線部材。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の配線部材であって、
前記線状伝送部材の少なくとも一部は、前記シート材上で曲げた状態で固定され、
前記複数の部分第2層は、前記線状伝送部材が曲る状態を保つ領域に設けられるものを含む、配線部材。
【請求項6】
シート状に形成された第1層と、前記第1層の主面に設けられた第2層とを含むシート材と、
前記シート材上に固定された線状伝送部材と、
を備え、
前記第2層は、前記第1層と前記線状伝送部材との接合を仲立ちする層であり、前記線状伝送部材の延在方向に沿って相互に分離する態様で設けられた複数の部分第2層を含み、
前記線状伝送部材の少なくとも一部は、前記シート材上で曲げた状態で固定され、
前記複数の部分第2層は、前記線状伝送部材が曲る箇所及び当該曲る線状伝送部材を当該曲る箇所の隣で固定可能な部分に面状に広がるように、前記線状伝送部材が曲る状態を保つ領域でかつ前記線状伝送部材が曲る領域に設けられるものを含み、
面状に広がる前記部分第2層のうち前記第1層とは反対側の面であって、前記複数の線状伝送部材の間の部分が、露出した状態となっている、配線部材。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載の配線部材であって、
前記複数の部分第2層は、前記線状伝送部材が曲る箇所の両隣に設けられるものを含む、配線部材。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の配線部材であって、
前記複数の部分第2層は、前記シート材の端末部に設けられたものを含む、配線部材。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の配線部材であって、
前記線状伝送部材の延在方向に沿った方向における、前記複数の部分第2層の間隔が異なっている、配線部材。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の配線部材であって、
前記シート材の延在方向に沿った方向における前記複数の部分第2層の長さが異なっている、配線部材。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の配線部材であって、
前記部分第2層は、前記線状伝送部材の側方にはみ出して前記第1層の主面上に設けられたものを含み、
前記部分第2層のうち前記線状伝送部材の側方にはみ出して設けられた部分を介して、前記線状伝送部材の少なくとも一部を覆うように前記シート材に取付けられたカバーをさらに備える、配線部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、配線部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、シート状に形成された外装部材と、延在方向に沿った少なくとも一部の領域で前記外装部材に重なるように配設された電線と、を備え、前記電線の絶縁被覆と前記外装部材とが重なる部分の少なくとも一部が溶着されたワイヤーハーネスを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電線の絶縁被覆と外装部材の材質との相性が良くなかったり、溶着面積が小さかったりする場合などには、十分な固定強度が得られない恐れがある。この場合に、外装部材の主面に、溶着による外装部材と電線絶縁被覆との接合を仲立ちする保持部を設けることが考えられる。
【0005】
しかしながら、この場合、保持部を、外装部材の主面全体に設けると、質量増、材料費によるコスト増を招く。
【0006】
そこで、本発明は、配線部材の軽量化及び材料費によるコスト低減を図りつつ、線状伝送部材をシート材に対してなるべくしっかりと固定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、第1の態様に係る配線部材は、シート状に形成された第1層と、前記第1層の主面に設けられた第2層とを含むシート材と、前記シート材上に固定された線状伝送部材と、を備え、前記第2層は、前記第1層と前記線状伝送部材との接合を仲立ちする層であり、前記線状伝送部材の延在方向に沿って相互に分離する態様で設けられた複数の部分第2層を含み、前記線状伝送部材が前記第2層に超音波溶着されて、前記線状伝送部材の被覆と前記第2層との両方が溶けて溶着された状態となっており、前記第2層は、前記第1層よりも強固に前記線状伝送部材と溶着固定可能な層とされている。
【0008】
第2の態様は、シート状に形成された第1層と、前記第1層の主面に設けられた第2層とを含むシート材と、前記シート材上に固定された線状伝送部材と、を備え、前記第2層は、前記第1層と前記線状伝送部材との接合を仲立ちする層であり、前記線状伝送部材の延在方向に沿って相互に分離する態様で設けられた複数の部分第2層を含み、前記線状伝送部材は、前記シート材上で分岐した状態で固定される複数の線状伝送部材を含み、前記複数の部分第2層は、前記複数の線状伝送部材の分岐部分で、前記複数の線状伝送部材が複数方向に延び出る部分に面状に広がるように、前記複数の線状伝送部材が分岐する状態を保つ領域に設けられるものを含み、面状に広がる前記部分第2層のうち前記第1層とは反対側の面であって、前記複数の線状伝送部材の間の部分が、露出した状態とされている。
【0009】
第3の態様は、第2の態様に係る配線部材であって、前記複数の部分第2層は、前記複数の線状伝送部材が分岐する部分で曲る領域に設けられるものを含む。
【0010】
第4の態様は、シート状に形成された第1層と、前記第1層の主面に設けられた第2層とを含むシート材と、前記シート材上に固定された線状伝送部材と、を備え、前記第2層は、前記第1層と前記線状伝送部材との接合を仲立ちする層であり、前記線状伝送部材の延在方向に沿って相互に分離する態様で設けられた複数の部分第2層を含み、前記複数の部分第2層は、前記複数の線状伝送部材の交差箇所、及び、前記交差箇所を通過する線状伝送部材を当該交差箇所を挟む箇所で固定可能な部分に面状に広がるように、前記複数の線状伝送部材が交差する領域に設けられるものを含み、面状に広がる前記部分第2層のうち前記第1層とは反対側の面であって、前記複数の線状伝送部材の間の部分が、露出した状態とされている。
【0011】
第5の態様は、第1から第4のいずれか1つの態様に係る配線部材であって、前記線状伝送部材の少なくとも一部は、前記シート材上で曲げた状態で固定され、前記複数の部分第2層は、前記線状伝送部材が曲る状態を保つ領域に設けられるものを含む。
【0012】
第6の態様は、シート状に形成された第1層と、前記第1層の主面に設けられた第2層とを含むシート材と、前記シート材上に固定された線状伝送部材と、を備え、前記第2層は、前記第1層と前記線状伝送部材との接合を仲立ちする層であり、前記線状伝送部材の延在方向に沿って相互に分離する態様で設けられた複数の部分第2層を含み、前記線状伝送部材の少なくとも一部は、前記シート材上で曲げた状態で固定され、前記複数の部分第2層は、前記線状伝送部材が曲る箇所及び当該曲る線状伝送部材を当該曲る箇所の隣で固定可能な部分に面状に広がるように、前記線状伝送部材が曲る状態を保つ領域でかつ前記線状伝送部材が曲る領域に設けられるものを含み、面状に広がる前記部分第2層のうち前記第1層とは反対側の面であって、前記複数の線状伝送部材の間の部分が、露出した状態とされている。
【0013】
第7の態様は、第5又は第6の態様に係る配線部材であって、前記複数の部分第2層は、前記線状伝送部材が曲る箇所の両隣に設けられるものを含む。
【0014】
第8の態様は、第1から第7のいずれか1つの態様に係る配線部材であって、前記複数の部分第2層は、前記シート材の端末部に設けられたものを含む。
【0015】
第9の態様は、第1から第8のいずれか1つの態様に係る配線部材であって、前記線状伝送部材の延在方向に沿った方向における、前記複数の部分第2層の間隔が異なっているものである。
【0016】
第10の態様は、第1から第9のいずれか1つの態様に係る配線部材であって、前記シート材の延在方向に沿った方向における前記複数の部分第2層の長さが異なっているものである。
【0017】
第11の態様は、第1から第10のいずれか1つの態様に係る配線部材であって、前記部分第2層は、前記線状伝送部材の側方にはみ出して前記第1層の主面上に設けられたものを含み、前記部分第2層のうち前記線状伝送部材の側方にはみ出して設けられた部分を介して、前記線状伝送部材の少なくとも一部を覆うように前記シート材に取付けられたカバーをさらに備える。
【発明の効果】
【0018】
第1の態様によると、第2層によって、線状伝送部材をシート材に対してなるべくしっかりと固定できる。また、第2層は、前記線状伝送部材の延在方向に沿って相互に分離する態様で形成された複数の部分第2層を含むため、シート材の主面全体に第2層を設ける場合と比較して、配線部材の軽量化及び材料費によるコスト低減を図ることができる。
【0019】
第2の態様によると、部分第2層で、前記複数の線状伝送部材が分岐する状態を保つことができるため、線状伝送部材を効果的にシート材に固定できる。
【0020】
第3の態様によると、部分第2層によって、複数の線状伝送部材が分岐する部分で曲る状態を保つことができる。
【0021】
第4の態様によると、部分第2層によって、前記複数の線状伝送部材が交差する状態を保つことができる。
【0022】
第5の態様によると、部分第2層によって、線状伝送部材が曲る状態を保つことができる。
【0023】
第6の態様によると、部分第2層によって、線状伝送部材が曲る状態を保つことができる。
【0024】
第7の態様によると、部分第2層によって、線状伝送部材が曲る状態を保つことができる。
【0025】
第8の態様によると、部分第2層によって、シート材の端末部で線状伝送部材をしっかりと保持できる。
【0026】
第9の態様によると、好ましいとされる固定強度に応じて、複数の部分第2層の間隔を異ならせることで、線状伝送部材をシート材に対してなるべくしっかりと固定しつつ、配線部材の軽量化及び材料費によるコスト低減を図ることができる。
【0027】
第10の態様によると、好ましいとされる固定強度に応じて、前記複数の部分第2層の長さを異ならせることで、線状伝送部材をシート材に対してなるべくしっかりと固定しつつ、配線部材の軽量化及び材料費によるコスト低減を図ることができる。
【0028】
第11の態様によると、カバーによって線状伝送部材を保護できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】実施形態に係る配線部材を示す概略平面図である。
【
図2】
図1のII-II線における部分概略断面図である。
【
図3】
図1のIII-III線における部分概略断面図である。
【
図4】
図1のIV-IV線における部分概略断面図である。
【
図5】部分第2層の配設領域に関する変形例を示す概略部分平面図である。
【
図6】部分第2層の配設領域に関する他の変形例を示す概略部分平面図である。
【
図7】部分第2層の配設領域に関するさらに他の変形例を示す概略部分平面図である。
【
図8】カバーを設けた変形例を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、実施形態に係る配線部材について説明する。
図1は配線部材10を示す概略平面図であり、
図2は
図1のII-II線における部分概略断面図であり、
図3は
図1のIII-III線における部分概略断面図であり、
図4は
図1のIV-IV線における部分概略断面図である。
【0031】
配線部材10は、車両に搭載された複数の部品につながれて、部品間で電気及び光の少なくとも一方を伝送する部材である。配線部材10は、シート材20と、シート材20上に固定された線状伝送部材30と、を備える。線状伝送部材30がシート材20の主面上に固定されることで、配線部材10が全体として扁平に形成されている。配線部材10が車両に組付けられた状態で、配線部材10は扁平な形態のままであってもよいし、厚み方向に曲った形態とされてもよい。
【0032】
シート材20は、シート状に形成された第1層22と、第1層22の主面に設けられた第2層24とを含む。
【0033】
第1層22は、シート材20の外形状を規定するものであり、この点において、第1層22は、ベースとなる基材である。
【0034】
第2層24は、第1層22と線状伝送部材30との接合を仲立ちする層である。つまり、第1層22の主面に第2層24が設けられ、当該第2層24に線状伝送部材30が固定されることで、仮に線状伝送部材30を第1層22に固定した場合よりも、第2層24に線状伝送部材30を固定した場合の方が、線状伝送部材30がシート材20から剥がれ難くなる。
【0035】
第1層22及び第2層24を構成する材料は特に限定されるものではなく、例えば、PVC(ポリ塩化ビニル)、PE(ポリエチレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PP(ポリプロピレン)等の樹脂を含むものであってもよい。また基材の構造は特に限定されるものではなく、織物、編物、不織布など繊維を有する繊維材であってもよいし、押出成形又は射出成形等による部材など繊維を有しない非繊維材であってもよい。基材が、押出成形又は射出成形等による非繊維材である場合、発泡成形された発泡体であってもよいし、発泡成形されずに一様に充実な充実材であってもよい。
【0036】
第1層22及び第2層24に対して、金属層等の他の層が重ね合されてもよい。
【0037】
第1層22が配線部材10のベースとしての役割を有することに鑑みると、第1層22は、第2層24よりも引張り強度等に優れているとよい。
【0038】
また、第2層24は、第1層22と線状伝送部材30との接合を仲立ちする層であることに鑑みると、第2層24は、第1層22によりも強い力で線状伝送部材30に固定できるとよい。
【0039】
このような組合せの一例として、第1層22が不織シート、織物シート、編物シートであり、第2層24の樹脂のベース樹脂が線状伝送部材30の表面を構成する樹脂のベース樹脂と同じである場合を採用してもよい。
【0040】
この場合、第1層22は、構成繊維として引張り強度に優れたものを用いることで、比較的柔軟でかつ引張り強度に優れた構成とすることができ、ベースとなる基材として適している。また、第1層22の表面には、繊維等による細かい隙間が形成されるため、第2層24が熱等によって溶けて当該隙間に充填されて固化することで、第1層22と第2層24とを比較的強固に接合できる。つまり、第1層22と第2層24とを一種のアンカー効果によって比較的強固に接合できる。この場合、第1層22の融点は、第2層24の融点よりも高い、第2層24を溶かして第1層22の隙間に充填し易い。
【0041】
この場合、第1層22を構成する材料は、線状伝送部材30の表面を構成する樹脂とは関係無く材料を用いることができる。例えば、線状伝送部材30の表面がPVC(ポリ塩化ビニル)で形成されている場合に、第1層22を構成する樹脂として、PP(ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PE(ポリプロピレン)等を用いてもよい。
【0042】
また、第2層24の樹脂のベース樹脂が線状伝送部材30の表面を構成する樹脂のベース樹脂と同じであれば、線状伝送部材30を第2層24に溶着等することで、当該線状伝送部材30を第2層24に比較的強固に接合できる。例えば、線状伝送部材30の外周の被覆のベース樹脂がPVCである場合、第2層24のベース樹脂をPVCにするとよい。
【0043】
また、線状伝送部材30を第2層24に対して接着剤で固定する場合を想定しても、一般的に、接着剤は、相溶性(親和性)が良好な部材に対して良好な接着性を示し、特に、同系の樹脂に対して良好な接着性を示す。このため、第2層24の樹脂のベース樹脂が線状伝送部材30の表面を構成する樹脂のベース樹脂と同じであれば、当該ベース樹脂に対して良好な接着剤を用いることで、線状伝送部材30と第2層24とを比較的強固に接合できる。
【0044】
また、上記組合せの他の例として、第1層22よりも第2層24が柔軟な樹脂であってもよい。
【0045】
この場合、第1層22は、第2層24よりも硬いため、引張り強度等に優れたものとし易く、ベースとなる基材として適したものを選定できる。
【0046】
また、第2層24は、第1層22よりも柔軟であれば、線状伝送部材30を第2層24に固定する際に、線状伝送部材30を第2層24にある程度埋めた状態とすることができ、線状伝送部材30の周方向における固定領域を大きくすることができる。これにより、線状伝送部材30の固定強度を向上させることができる。
【0047】
第1層22と第2層24の柔軟性を変更することは、共通するベース樹脂を用いたとしても、添加する可塑剤の割合を変更することによって実現可能である。例えば、第1層22及び第2層24のベース樹脂をPVCとし、添加する可塑剤の量を第1層22よりも第2層24に対して多くすることで、第2層24を第1層22よりも柔軟にすることができる。第1層22及び第2層24のベース樹脂は、PVCでなくてもよく、PE、PP、PET等であってもよい。第2層24を柔軟することは、例えば、ベースとなる樹脂の重合度を変更する、他の樹脂を共重合させる、柔軟性を高めることができる改質剤(例えば、オレフィン系又はスチレン系などの熱可塑性エラストマー)を添加する等によってなされてもよい。なお、第1層22と第2層24とが共通するベース樹脂製であれば、第1層22と第2層24とを溶融又は接着剤等によって比較的強固に接合することができる。
【0048】
上記各例に限られず、第2層24は、第1層22に線状伝送部材30を固定した場合よりも線状伝送部材30の固定強度を高めることができる構成であればよい。
【0049】
ここでは、第1層22は、複数の線状伝送部材30を分岐する経路に沿って保持すべく、幹線部22aと、複数(ここでは4つ)の延出部22bとを含む。
【0050】
幹線部22aは、細長い長方形状に形成されている。複数の延出部22bは、細長い長方形状に形成されている。
【0051】
2つの延出部22bは、幹線部22aの両端部から一側方に延出している。他の2つの延出部22bは、幹線部22aの延在方向中間部から一側方に延出している。複数の延出部22bの基端部は、幹線部22aの一側縁部に重ねられている。複数の延出部22bの基端部は、幹線部22aの一側縁部に対して溶着、接着剤、両面テープ等によって接合されていてもよい。
【0052】
ここでは、複数の延出部22bは、幹線部22aの一側方に延出しているが、その一部が他側方から延出していてもよい。ここでは、複数の延出部22bは、幹線部22aに対して直交する方向に延出しているが、幹線部22aに対して斜め方向に延出していてもよい。また、複数の延出部22bの長さは同じであってもよいし、異なってもよい。また、延出部22bは無くてもよい。
【0053】
延出部22bの基端部のうち幹線部22aに重なる部分の両側部に固定部材40が装着されている。固定部材40は、基部42と、柱部44と、係止部46とを備えるクランプ或はクリップと呼ばれる部材である。基部42は、平板状に形成されている。柱部44は、基部42に垂設されている。係止部46は、柱部44の先端に設けられている。係止部46は、固定対象部材50に形成された孔52に挿通係止可能に形成されている。係止部46が、固定対象に形成された孔52に挿入されて係止することによって、固定部材40が固定対象部材50に固定された状態となる。固定部材40が固定対象部材50に固定された状態で、基部42は、抜け止め部としてはたらき、係止部46は戻り止め部としてはたらく。固定部材40は、例えば、樹脂を材料とした射出成形による一体成形品である。
【0054】
固定部材40は、延出部22bの基端部のうち幹線部22aに重なる部分の両側部に挿通される。固定部材40が固定対象部材に固定された状態で、延出部22bの基端部のうち幹線部22aに重なる部分が、基部42と固定対象部材50との間で固定され、配線部材10を固定部材40に固定することができる。
【0055】
上記幹線部22a及び複数の延出部22bは、一体形成されていてもよい。
【0056】
第2層24は、線状伝送部材30の延在方向に沿って相互に分離する態様で設けられた複数の部分第2層25a、25b、26、27、28、29を含む。
【0057】
部分第2層25a、25b、26、27、28、29を設ける領域は、線状伝送部材30を設ける位置に関係しているため、線状伝送部材30について説明する。
【0058】
線状伝送部材30は、電気又は光を伝送する線状の部材であればよい。例えば、線状伝送部材30は、芯線と芯線の周囲の絶縁被覆とを有する一般電線であってもよいし、裸導線、エナメル線、ニクロム線、光ファイバ等であってもよい。電気を伝送する線状伝送部材30と光を伝送する線状伝送部材30とは、並設されていてもよいし、どちらか一方のみが配設されていてもよい。
【0059】
電気を伝送する線状伝送部材30としては、各種信号線、各種電力線であってもよい。電気を伝送する線状伝送部材30は、信号又は電力を空間に対して送る又は受けるアンテナ、コイル等として用いられてもよい。
【0060】
線状伝送部材30は、電気又は光を伝送する伝送線本体32と、伝送線本体32を覆う被覆34とを含むことが考えられる。例えば線状伝送部材30が一般電線である場合、伝送線本体32は芯線に相当し、被覆34は絶縁被覆に相当する。係る芯線は、1本又は複数本の素線を含む。素線は、例えば銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の導電材料によって形成される。芯線が複数本の素線で構成される場合、複数本の素線は撚られていることが好ましい。また絶縁被覆は、PVC又はPEなどの樹脂材料が芯線の周囲に押出成形されるなどして形成される。
【0061】
シート材20と線状伝送部材30とは固定されている。シート材20と線状伝送部材30とは、接触部位固定されている。接触部位固定とは、シート材20と線状伝送部材30とが接触する部分がくっついて固定されているものである。
【0062】
係る接触部位固定の態様として、接触部位間接固定であってもよいし、接触部位直接固定であってもよいし、異なる領域で両者が併用されていてもよい。ここで接触部位間接固定とは、シート材20と線状伝送部材30とが、その間に設けられた接着剤等を介して間接的にくっついて固定されているものである。また接触部位直接固定とは、シート材20と線状伝送部材30とが別に設けられた接着剤等を介さずに直接くっついて固定されているものである。接触部位直接固定では、例えばシート材20と線状伝送部材30とのうち少なくとも一方に含まれる樹脂が溶かされることによってくっついて固定されることが考えられる。以下では、シート材20と線状伝送部材30とが、接触部位直接固定の状態にあるものとして説明する。
【0063】
係る接触部位直接固定の状態が形成されるに当たり、樹脂は、例えば、熱によって溶かされることも考えられるし、溶剤によって溶かされることも考えられる。つまり、接触部位直接固定の状態としては、熱による接触部位直接固定の状態であってもよいし、溶剤による接触部位直接固定の状態であってもよい。好ましくは、熱による接触部位直接固定の状態であるとよい。
【0064】
このとき接触部位直接固定の状態を形成する手段は特に限定されるものではなく、溶着、融着、溶接等の公知の手段を用いることができる。例えば、溶着によって熱による接触部位直接固定の状態を形成する場合、超音波溶着、加熱加圧溶着、熱風溶着、高周波溶着など種々の溶着手段を採用することができる。またこれらの手段によって接触部位直接固定の状態が形成されると、シート材20と線状伝送部材30とは、その手段による接触部位直接固定の状態とされる。具体的には、例えば、超音波溶着によって接触部位直接固定の状態が形成されると、シート材20と線状伝送部材30とは、超音波溶着による接触部位直接固定の状態とされる。
【0065】
接触部位直接固定の場合、シート材20に含まれる樹脂と、線状伝送部材30の被覆34に含まれる樹脂とのうちいずれか一方のみが溶けていてもよいし、両方が共に溶けていてもよい。前者の事例の場合、溶けた方の樹脂が溶けない方の樹脂の外面にくっついた状態となり、比較的はっきりした界面が形成されることがある。後者の事例の場合、両方の樹脂が混ざり合ってはっきりした界面が形成されないことがある。特に、線状伝送部材30の被覆34とシート材20とが、同じ樹脂材料など相溶しやすい樹脂を含む場合などに、両方の樹脂が混ざり合ってはっきりした界面が形成されないことがある。
【0066】
ここでは、配線部材10は、複数の線状伝送部材30を含む。複数の線状伝送部材30は、第1層22に対して次の態様で布線されている。
【0067】
すなわち、複数の線状伝送部材30の延在方向中間部が第1層22のうち幹線部22aに沿って配設される。複数の線状伝送部材30の端部は、いずれかの延出部22bの位置で曲げられて対応する延出部22bに沿って配設される。
【0068】
複数の線状伝送部材30の一部は、複数の延出部22bのうち幹線部22aの中間寄りの2つの延出部22bに対応する位置で、他の線状伝送部材30から分岐する。この部分では、一部の線状伝送部材30は、曲って延出部22bに向うように配設される。また、一部の線状伝送部材30は、他の線状伝送部材30に対して交差して延出部22bに向うように配設される(
図1の交差箇所31参照)。また、複数の線状伝送部材30の一部は、幹線部22aの端部で曲って、幹線部22aの端部の延出部22bに向うように配設される。
【0069】
複数の線状伝送部材30の端部は、延出部22bの端部でコネクタ60に接続される。線状伝送部材30が電線である場合、コネクタ60は、電線の端部に接続された端子をコネクタハウジング内に収容した電気コネクタである。コネクタ60が相手側となる部品のコネクタに接続されることで、複数の部品同士が線状伝送部材30を介して電気的に又は光信号を送受信に接続される。
【0070】
第2層24の複数の部分第2層25a、25b、26、27、28、29は、上記線状伝送部材30の延在方向に沿って相互に分離する態様で設けられている。ここでは、部分第2層25a、25b、26、27、28、29は方形状に形成されているが、その他の形状、例えば、円形状、多角形状(三角形、五角形等)でもよい。部分第2層25a、25b、26、27、28、29は、幹線部22a又は延出部22bの延在方向の部分的な領域において、当該領域を通る複数の線状伝送部材30を全て固定する幅を有している。もっとも、部分第2層25a、25b、26、27、28、29は、幹線部22a又は延出部22bの延在方向の部分的な領域において、当該領域を通る複数の線状伝送部材30の一部を固定する幅を有していてもよい。
【0071】
部分第2層25a、25bは、複数の線状伝送部材30が分岐する状態を保つ領域に設けられている。
【0072】
このように、複数の線状伝送部材30が分岐する箇所では、少なくとも1本の線状伝送部材30が曲っている。このため、部分第2層25a、25bは、線状伝送部材30が分岐する部分で曲る箇所を含む領域に設けられている。ここでは、部分第2層25a、25bは、分岐箇所において曲る線状伝送部材30だけではなく、真っ直ぐ配設される線状伝送部材30に対応する領域にも設けられている。つまり、複数の線状伝送部材30が分岐する各箇所において、曲る線状伝送部材30及び真っ直ぐ配設される線状伝送部材30に対応する領域に1つの部分第2層25a(又は25b)が設けられている。
【0073】
また、部分第2層25aは、複数の線状伝送部材30が交差する領域に設けられている。すなわち、複数の線状伝送部材30が分岐する箇所では、少なくとも1本の線状伝送部材30が他の線状伝送部材30に対して交差する場合がある(交差箇所31参照)。部分第2層25aは、複数の線状伝送部材30が分岐する部分で交差する領域に設けられている。このため、部分第2層25aは、交差箇所31において交差する線状伝送部材30に対して、その交差箇所31を挟む箇所で当該線状伝送部材30に固定されている。
【0074】
ここでは、複数の線状伝送部材30が分岐する箇所で、交差箇所31を生じる例で説明した。しかしながら、複数の線状伝送部材30は、コネクタの端子の並び等に応じて、整列順を入替えるため等の目的で、分岐箇所以外でも、交差する場合があり得る。部分第2層は、分岐箇所以外においても、複数の線状伝送部材30が交差する領域に設けられてもよい。
【0075】
部分第2層26は、線状伝送部材が曲る状態を保つ領域に設けられている。
【0076】
ここでは、幹線部22aの両端部で、複数の線状伝送部材30が曲っており、部分第2層26は、幹線部22aの両端部で複数の線状伝送部材30が曲る状態を保つ領域に設けられている。
【0077】
複数の線状伝送部材30が曲る状態を保つ領域としては、線状伝送部材30が曲る箇所そのものを含む領域である場合を想定することができる。これにより、線状伝送部材30のうち曲った部分自体が部分第2層26によって第1層22に対して所定の経路に沿って保持される。ここでは、各部分第2層26は、複数の線状伝送部材30の曲る箇所を第1層22に固定している。
【0078】
図1に示す例では、部分第2層26は、複数の線状伝送部材30の曲る箇所及びその隣の箇所に広がる形状に形成されている。しかしながら、
図5に示すように、複数の線状伝送部材30の曲る箇所を中心とする局所領域に部分第2層126が設けられてもよい。
【0079】
また、複数の線状伝送部材30が曲る状態を保つ領域としては、必ずしも線状伝送部材30の曲る箇所を含む必要は無い。例えば、
図6に示すように、一対の部分第2層226が、線状伝送部材30が曲る箇所に対して当該線状伝送部材30の経路に沿って両隣に設けられてもよい。一対の部分第2層226は、線状伝送部材30が曲る箇所の両隣で、線状伝送部材30の姿勢を一定に保つため、線状伝送部材30の曲げ状態も一定に保たれる。
【0080】
部分第2層27は、シート材20の端末部、ここでは、延出部22bの端末部に設けられている。部分第2層26は、延出部22bの端末の縁に接するように設けられていてもよいし、延出部22bの端末の縁から1cm以内離れた位置に設けられていてもよい。
【0081】
部分第2層28は、幹線部22aにおいて複数の線状伝送部材30が分岐又は曲らすに真っ直ぐ延在する領域に設けられている。
【0082】
部分第2層29は、延出部22bにおいて複数の線状伝送部材30が分岐又は曲らすに真っ直ぐ延在する領域に設けられている。
【0083】
複数の線状伝送部材30は、部分第2層25a、25b、26、27、28、29が設けられた領域では、当該部分第2層25a、25b、26、27、28、29に対して比較的強固な力で固定される(
図2参照)。
【0084】
また、複数の線状伝送部材30は、部分第2層25a、25b、26、27、28、29が設けられない領域では、シート材20に対して固定されない(
図3参照)。シート材20のうち部分第2層25a、25b、26、27、28、29が設けられない領域においても、線状伝送部材30が第1層22に固定されていてもよい。
【0085】
上記のようなシート材20は、例えば、第1層22を構成する材料に、部分的に予め所定形状に形成された部分第2層25a、25b、26、27、28、29を接合等していくことで、製造することができる。
【0086】
このように構成された配線部材10によると、第2層24によって、線状伝送部材30をシート材20に対してなるべくしっかりと固定できる。また、第2層24は、線状伝送部材30の延在方向に沿って相互に分離する態様で形成された複数の部分第2層25a、25b、26、27、28、29を含むため、シート材20の主面全体に第2層を設ける場合と比較して、配線部材10の軽量化及び材料費によるコスト低減を図ることができる。
【0087】
また、線状伝送部材30の分岐部分では、線状伝送部材30が曲っていたり、交差していたりするため、シート材20に対する線状伝送部材30の固定強度が弱くなる恐れがある。そこで、部分第2層25a、25bを、複数の線状伝送部材30が分岐する状態を保つ領域に設けることで、複数の線状伝送部材30が分岐する状態を保つことができ、線状伝送部材30を効果的にシート材20に固定できる。
【0088】
特に、部分第2層25a、25bを、複数の線状伝送部材30が分岐する箇所で曲る部分に設けることで、複数の線状伝送部材30が分岐する部分で曲る状態を効果的に保つことができる。
【0089】
また、複数の線状伝送部材30の交差箇所31では、シート材20から離れる側の線状伝送部材30は、シート材20に対する固定領域が小さくなる。そこで、部分第2層25aを、複数の線状伝送部材30が交差する領域に設けることで、複数の線状伝送部材30が交差する状態を効果的に保つことができる。
【0090】
また、複数の線状伝送部材30が曲る箇所では、線状伝送部材30が元に戻ろうとする力が作用する恐れがある。そこで、部分第2層26を、線状伝送部材30が曲る状態を保つ領域に設けることで、線状伝送部材30が曲る状態を効果的に保つことができる。
【0091】
特に、部分第2層26、126を、線状伝送部材30が曲る領域に設けられることで、線状伝送部材30が曲る状態を効果的に保つことができる。
【0092】
また、部分第2層226を、線状伝送部材30が曲る箇所の両隣に設けられた場合でも、線状伝送部材30のうち曲る箇所の両隣の部分を一定姿勢に保つことができ、線状伝送部材30が曲る状態を効果的に保つことができる。
【0093】
また、シート材20の端末部では、コネクタ60を動かした場合等に、線状伝送部材30をシート材20から剥がす方向への力が作用する恐れがある。そこで、部分第2層27を、シート材20の端末部に設けられることで、線状伝送部材30からシート材20の端末部でしっかりと保持できる。
【0094】
シート材20の延在方向(幹線部22aの延在方向、延出部22bの延在方向)に沿った方向において、部分第2層25a、25b、26、27、28、29の長さは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。部分第2層25a、25b、26、27、28、29の長さは、線状伝送部材30を直線状態で保持する箇所よりも、線状伝送部材30の分岐箇所、分岐箇所及び端末部の少なくとも1つの箇所の方が大きくてもよい。
図1に示す例では、線状伝送部材30の曲げ箇所に配設される部分第2層26の長さは、線状伝送部材30の直線箇所に配設される部分第2層28.29よりも大きく設定されている。これにより、好ましいとされる固定強度に応じて、複数の部分第2層25a、25b、26、27、28、29の長さを異ならせることで、線状伝送部材30をシート材20に対してなるべくしっかりと固定しつつ、配線部材10の軽量化及び材料費によるコスト低減を図ることができる。
【0095】
部分第2層の長さを異ならせる場合、少なくとも2段階の大きさであればよいが、より多段階で異なっていてもよい。複数の部分第2層25a、25b、26、27、28、29の幅が同じである場合、複数の部分第2層25a、25b、26、27、28、29の長さを異ならせることは、部分第2層25a、25b、26、27、28、29の面積を異ならせることと同義である。もっとも、部分第2層の幅は、保持対象となる線状伝送部材30の本数及び間隔等によって変更されてもよい。
【0096】
線状伝送部材30の延在方向に沿った方向における複数の部分第2層の間隔は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0097】
図7では、線状伝送部材30の延在方向に沿った方向における複数の部分第2層325、326の間隔を異ならせた例を示している。
【0098】
図7では、変形例に係る配線部材310の一部の概略平面図を示している。
【0099】
この配線部材310では、シート材320の第1層322は、弧状帯部分322aと、当該弧状帯部分322aの両端から延出する直線帯状部分322bとを含む。複数の線状伝送部材30は、第1層322の延在方向に沿って配設されている。複数の線状伝送部材30は、一方の直線帯状部分322bから延出してコネクタ360に接続されている。
【0100】
第2層324は、複数の部分第2層325、326を含む。複数の部分第2層325は、弧状帯部分322aに設けられ、複数の部分第2層326は、直線帯状部分322bに設けられている。弧状帯部分322aにおける複数の部分第2層325の間隔及び部分第2層325とその隣の部分第2層326との間隔は、直線帯状部分322bにおける複数の部分第2層326の間隔よりも小さい。
【0101】
このため、複数の線状伝送部材30が曲る箇所及びその周辺では、部分第2層325、326を、比較的密な間隔で設けることで、線状伝送部材30が曲る状態を効果的に保つことができる。一方、複数の線状伝送部材30が直線的に配設される箇所では、部分第2層326を、比較的粗な間隔で設けることで、配線部材10の軽量化及び材料費減によるコスト低減が可能となる。
【0102】
部分第2層は、複数の線状伝送部材30が分岐する箇所、端末部等で、他の部分よりも密に設けられてもよい。
図7においても、端末部で2つの部分第2層326が他の部分よりも比較的密な間隔が設けられている。
【0103】
部分第2層の間隔を異ならせる場合、少なくとも2段階の大きさで異ならせればよいが、より多段階で異なっていてもよい。
【0104】
図8に示す変形例に係る配線部材410では、部分第2層25a、25b、26は、線状伝送部材30の側方にはみ出して第1層22の上に設けられている。ここでは、部分第2層25a、25b、26において、複数の線状伝送部材30が並列状態で配置されており、部分第2層25a、25b、26は、その両側側のものよりも外側にはみ出している。
【0105】
そして、部分第2層25a、25b、26のうち線状伝送部材30の側方にはみ出した部分を介して、線状伝送部材30の少なくとも一部を覆うように、カバー420がシート材20に取付けられている。ここでは、部分第2層25a、25bに取付けられたカバー420は、線状伝送部材30の分岐箇所を覆っている。部分第2層26に取付けられたカバー420は、線状伝送部材30の曲げ箇所を覆っている。
【0106】
部分第2層25a、25b、26は、線状伝送部材30の固定に適した構成であるため、カバー420を線状伝送部材30の周囲の構成樹脂と同じとすること等によって、部分第2層25a、25b、26を介してカバー420を第1層22に比較的強固に固定できる。
【0107】
これにより、線状伝送部材30のうち比較的しっかりとした固定が必要な箇所において、線状伝送部材30を、部分第2層25a、25b、26によってしっかりとシート材20に固定できると共に、カバー420も当該線状伝送部材30を覆うようにシート材20に取付けするのに適する。
【0108】
カバーは、線状伝送部材30をより広い領域で覆っていてもよい。例えば、カバーは、シート材20の全体において線状伝送部材30を覆っていてもよい。
【0109】
{変形例}
なお、上記実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。
【0110】
例えば、上記実施形態において、幹線部22a又は延出部22bが弧状を描くように曲っていてもよい。また、
図5に示す変形例と
図6に示す変形例とが組合わされ、線状伝送部材30の曲る部分及びその両隣の部分に部分第2層が設けられてもよい。また、
図7に示す例において、カバーが設けられてもよい。
本明細書及び図面は、下記配線部材を開示する。
(1)シート状に形成された第1層と、前記第1層の主面に設けられた第2層とを含むシート材と、前記シート材上に固定された線状伝送部材と、を備え、前記第2層は、前記第1層と前記線状伝送部材との接合を仲立ちする層であり、前記線状伝送部材の延在方向に沿って相互に分離する態様で設けられた複数の部分第2層を含む、配線部材である。
(2)(1)の配線部材であって、前記線状伝送部材は、前記シート材上で分岐した状態で固定される複数の線状伝送部材を含み、前記複数の部分第2層は、前記複数の線状伝送部材が分岐する状態を保つ領域に設けられるものを含む。
(3)(2)の配線部材であって、前記複数の部分第2層は、前記複数の線状伝送部材が分岐する部分で曲る領域に設けられるものを含む。
(4)(1)から(3)のいずれか1つの配線部材であって、前記複数の部分第2層は、前記複数の線状伝送部材が交差する領域に設けられるものを含む。
(5)(1)から(4)のいずれか1つの配線部材であって、前記線状伝送部材の少なくとも一部は、前記シート材上で曲げた状態で固定され、前記複数の部分第2層は、前記線状伝送部材が曲る状態を保つ領域に設けられるものを含む。
(6)(5)の配線部材であって、前記複数の部分第2層は、前記線状伝送部材が曲る領域に設けられるものを含む。
(7)(5)又は(6)の配線部材であって、前記複数の部分第2層は、前記線状伝送部材が曲る箇所の両隣に設けられるものを含む。
(8)(1)から(7)のいずれか1つの配線部材であって、前記複数の部分第2層は、前記シート材の端末部に設けられたものを含む。
(9)(1)から(8)のいずれか1つの配線部材であって、前記線状伝送部材の延在方向に沿った方向における、前記複数の部分第2層の間隔が異なっているものである。
(10)(1)から(9)のいずれか1つの配線部材であって、前記シート材の延在方向に沿った方向における前記複数の部分第2層の長さが異なっているものである。
(11)(1)から(10)のいずれか1つの配線部材であって、前記部分第2層は、前記線状伝送部材の側方にはみ出して前記第1層の主面上に設けられたものを含み、前記部分第2層のうち前記線状伝送部材の側方にはみ出して設けられた部分を介して、前記線状伝送部材の少なくとも一部を覆うように前記シート材に取付けられたカバーをさらに備える。
(1)の配線部材によると、第2層によって、線状伝送部材をシート材に対してなるべくしっかりと固定できる。また、第2層は、前記線状伝送部材の延在方向に沿って相互に分離する態様で形成された複数の部分第2層を含むため、シート材の主面全体に第2層を設ける場合と比較して、配線部材の軽量化及び材料費によるコスト低減を図ることができる。
(2)の配線部材によると、部分第2層で、前記複数の線状伝送部材が分岐する状態を保つことができるため、線状伝送部材を効果的にシート材に固定できる。
(3)の配線部材によると、部分第2層によって、複数の線状伝送部材が分岐する部分で曲る状態を保つことができる。
(4)の配線部材によると、部分第2層によって、前記複数の線状伝送部材が交差する状態を保つことができる。
(5)の配線部材によると、部分第2層によって、線状伝送部材が曲る状態を保つことができる。
(6)の配線部材によると、部分第2層によって、線状伝送部材が曲る状態を保つことができる。
(7)の配線部材によると、部分第2層によって、線状伝送部材が曲る状態を保つことができる。
(8)の配線部材によると、部分第2層によって、シート材の端末部で線状伝送部材をしっかりと保持できる。
(9)の配線部材によると、好ましいとされる固定強度に応じて、複数の部分第2層の間隔を異ならせることで、線状伝送部材をシート材に対してなるべくしっかりと固定しつつ、配線部材の軽量化及び材料費によるコスト低減を図ることができる。
(10)の配線部材によると、好ましいとされる固定強度に応じて、前記複数の部分第2層の長さを異ならせることで、線状伝送部材をシート材に対してなるべくしっかりと固定しつつ、配線部材の軽量化及び材料費によるコスト低減を図ることができる。
(11)の配線部材によると、カバーによって線状伝送部材を保護できる。
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0111】
10、310、410 配線部材
20、320 シート材
22、322 第1層
24、324 第2層
25a、25b、26、27、28、29、126、226、326 部分第2層
30 線状伝送部材
31 交差箇所
420 カバー