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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179280
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】固定子
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/04 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
H02K3/04 J
H02K3/04 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092520
(22)【出願日】2022-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100207859
【弁理士】
【氏名又は名称】塩谷 尚人
(72)【発明者】
【氏名】山田 純平
(72)【発明者】
【氏名】平井 健介
【テーマコード(参考)】
5H603
【Fターム(参考)】
5H603AA03
5H603BB01
5H603BB07
5H603BB12
5H603CA01
5H603CA05
5H603CB04
5H603CB19
5H603CD02
5H603CD11
5H603CD22
5H603CE02
5H603CE05
5H603EE01
(57)【要約】
【課題】導体セグメントに対して中性点バスバを適正に接合する。
【解決手段】固定子は、固定子コアと、固定子コアに設けられ複数の相巻線を有する固定子巻線と、固定子巻線のコイルエンドにおいて各相の相巻線に接続された状態で設けられる中性点バスバ40とを備えている。固定子巻線は、複数の導体セグメント30が接続されることで構成されている。コイルエンドにおいて、導体セグメント30の先端部と中性点バスバ40のバスバ端子部42aとが互いに重なった状態で溶接により接合されており、導体セグメント30の先端部とバスバ端子部42aとの接合部分において、バスバ端子部42aの横断面の面積が、導体セグメント30の導体断面積よりも小さい。
【選択図】 図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子コア(11)と、前記固定子コアに設けられ複数の相巻線を有する固定子巻線(12)と、前記固定子巻線のコイルエンド(CE)において各相の前記相巻線に接続された状態で設けられる中性点バスバ(40)と、を備える固定子(10)であって、
前記固定子巻線は、複数の導体セグメント(30)を用い、それら各導体セグメントが接続されることで構成され、
前記コイルエンドにおいて、前記導体セグメントの先端部どうしが互いに重なった状態で溶接により接合されている一方、前記各導体セグメントのうち前記固定子巻線の中性点に接続される導体セグメントの先端部と、前記中性点バスバのバスバ端子部(42a)とが互いに重なった状態で溶接により接合されており、
前記導体セグメントの先端部と前記バスバ端子部との接合部分において、前記バスバ端子部の横断面の面積が、前記導体セグメントの導体断面積よりも小さい、固定子。
【請求項2】
前記導体セグメントの先端部と前記バスバ端子部とはそれぞれ横断面が略矩形状をなし、それら導体セグメントの先端部及びバスバ端子部の一辺どうしが互いに重なった状態になっており、
前記バスバ端子部は、横断面が長辺及び短辺からなる長方形状をなし、その長辺及び短辺のうち長辺が前記導体セグメントの先端部に重なり、かつ当該先端部と幅が同じである、請求項1に記載の固定子。
【請求項3】
前記中性点バスバは、前記固定子コアの周方向に延びる長尺状の本体部(41)と、前記本体部からその長手方向に交差する向きに突出する複数の突出部(42)とを有しており、
前記突出部は、その先端側に前記バスバ端子部を有するとともに、前記本体部と前記バスバ端子部との間に根元部(42b)を有しており、
前記中性点バスバにおいて、前記本体部及び前記根元部の横断面の面積がそれぞれ前記バスバ端子部の横断面の面積よりも大きい、請求項1又は2に記載の固定子。
【請求項4】
前記中性点バスバに温度センサ(45)が一体に組み付けられている、請求項3に記載の固定子。
【請求項5】
前記中性点バスバにおいて前記温度センサが組み付けられた部位の横断面の面積と、前記導体セグメントの導体断面積とが同じである、請求項4に記載の固定子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機の固定子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
セグメント構造の固定子では、コイルエンドにおいて導体セグメントの先端部どうしが溶接により接合されている。また、各導体セグメントのうち固定子巻線の中性点に接続される導体セグメントの先端部が、溶接により中性点バスバに接合されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-77026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
中性点バスバは、各相の導体セグメントに対して溶接により接合され、その接合により固定子巻線(導体セグメント)に支持された状態で設けられている。この場合、導体セグメントと中性点バスバとの接合部分では、導体セグメントどうしの接合部分に比べてより高い接合強度が要求される。ただし、導体セグメントと中性点バスバとの接合部分の強度を高めるべく溶接エネルギの増加等を行うと、導体セグメント側が過剰に高温になることで絶縁被膜が溶ける等の不都合の発生が懸念される。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、導体セグメントに対して中性点バスバを適正に接合することができる固定子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について説明する。
【0007】
手段1は、
固定子コアと、前記固定子コアに設けられ複数の相巻線を有する固定子巻線と、前記固定子巻線のコイルエンドにおいて各相の前記相巻線に接続された状態で設けられる中性点バスバと、を備える固定子であって、
前記固定子巻線は、複数の導体セグメントを用い、それら各導体セグメントが接続されることで構成され、
前記コイルエンドにおいて、前記導体セグメントの先端部どうしが互いに重なった状態で溶接により接合されている一方、前記各導体セグメントのうち前記固定子巻線の中性点に接続される導体セグメントの先端部と、前記中性点バスバのバスバ端子部とが互いに重なった状態で溶接により接合されており、
前記導体セグメントの先端部と前記バスバ端子部との接合部分において、前記バスバ端子部の横断面の面積が、前記導体セグメントの導体断面積よりも小さいことを特徴とする。
【0008】
セグメント構造の固定子では、コイルエンドにおいて導体セグメントの先端部どうしが互いに重なった状態で溶接により接合されている。また、各導体セグメントのうち固定子巻線の中性点に接続される導体セグメントの先端部と、中性点バスバのバスバ端子部とが互いに重なった状態で溶接により接合されている。この接合により、導体セグメントに対して中性点バスバが接続されている。そして特に、導体セグメントの先端部とバスバ端子部との接合部分において、バスバ端子部の横断面の面積が、導体セグメントの導体断面積よりも小さくなっている構成とした。
【0009】
この場合、それらセグメント先端部とバスバ端子部との溶接時には、断面積の違いからバスバ端子部がセグメント先端部よりも高温となる。これにより、導体セグメントの先端部どうしの溶接と比べて、溶接の深さを大きくすることができる。換言すれば、導体セグメントの先端部どうしの溶接と、セグメント先端部及びバスバ端子部の溶接とで溶接エネルギ等の溶接条件を同じにしつつも、セグメント先端部及びバスバ端子部の溶接において、溶接の深さを大きくすることができる。導体セグメントの先端部どうしの接合と、セグメント先端部及びバスバ端子部の接合とを対比すると、それら各接合部分での荷重のかかり方等が相違し、後者の方が接合強度を要することが考えられるが、そのような要求にも好適に対応できる。その結果、導体セグメントに対して中性点バスバを適正に接合することができる。
【0010】
手段2では、手段1において、前記導体セグメントの先端部と前記バスバ端子部とはそれぞれ横断面が略矩形状をなし、それら導体セグメントの先端部及びバスバ端子部の一辺どうしが互いに重なった状態になっており、前記バスバ端子部は、横断面が長辺及び短辺からなる長方形状をなし、その長辺及び短辺のうち長辺が前記導体セグメントの先端部に重なり、かつ当該先端部と幅が同じである。
【0011】
導体セグメントの先端部及びバスバ端子部の一辺どうしを互いに重なった状態で接合する構成において、横断面が長方形状をなすバスバ端子部の長辺を導体セグメントの先端部に重ね、かつバスバ端子部の長辺と導体セグメントの先端部との幅を互いに同じにした。この場合、導体セグメントの先端部及びバスバ端子部のそれぞれの横断面の面積を相違させつつも、その接合部分の重ね合わせを導体セグメントの先端部どうしの溶接部分と同様に行うことができる。これにより、溶接を好適に実施することができる。
【0012】
手段3では、手段1又は2において、前記中性点バスバは、前記固定子コアの周方向に延びる長尺状の本体部と、前記本体部からその長手方向に交差する向きに突出する複数の突出部とを有しており、前記突出部は、その先端側に前記バスバ端子部を有するとともに、前記本体部と前記バスバ端子部との間に根元部を有しており、前記中性点バスバにおいて、前記本体部及び前記根元部の横断面の面積がそれぞれ前記バスバ端子部の横断面の面積よりも大きい。
【0013】
中性点バスバでは、固定子コアの周方向に延びる本体部から複数の突出部が突出しており、その突出部において、先端側がバスバ端子部、本体部側が根元部となっている。そして、中性点バスバにおいて、本体部及び根元部の横断面の面積がそれぞれバスバ端子部の横断面の面積よりも大きい構成となっている。この構成によれば、導体セグメントの先端部及びバスバ端子部の溶接時に溶接部分が高熱となり、その熱が導体セグメント及び中性点バスバのそれぞれに伝わる際に、根元部を介して中性点バスバの本体部側に伝わりやすくなっている。つまり、溶接の熱は、導体セグメント側と中性点バスバ側とのうち中性点バスバ側に伝わりやすくなっている。そのため、導体セグメントの絶縁被覆が熱により溶ける等の不都合が生じにくくなっている。
【0014】
手段4では、手段3において、前記中性点バスバに温度センサが一体に組み付けられている。
【0015】
中性点バスバは、電流が流れる際の発熱により高温となり、その温度が温度センサにより検出される。ただしこの場合、中性点バスバの熱が突出部を介して導体セグメント側に逃げてしまうと、温度検出精度の低下が懸念される。なお、固定子巻線では相ごとに通電が切り替えられる一方、中性点バスバではいずれの相の通電時にも通電状態が継続されるため、中性点バスバの方が高温になることが考えられる。
【0016】
この点、上記のとおり中性点バスバにおいて本体部及び根元部の横断面の面積がそれぞれバスバ端子部の横断面の面積よりも大きくなっており、換言すれば、バスバ端子部の横断面の面積が本体部及び根元部の横断面の面積よりも小さくなっており、これにより、中性点バスバの熱が導体セグメント側に逃げてしまうことが抑制される。よって、温度センサによる温度検出精度の低下が抑制される。
【0017】
手段5では、手段4において、前記中性点バスバにおいて前記温度センサが組み付けられた部位の横断面の面積と、前記導体セグメントの導体断面積とが同じである。
【0018】
中性点バスバにおいて温度センサが組み付けられた部位の横断面の面積と、導体セグメントの導体断面積とが同じであることにより、導体セグメント及び中性点バスバの通電時において電流密度が同じになる。これにより、中性点バスバに一体に設けられた温度センサにおいて温度検出精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】固定子の一部を示す斜視図。
図2】固定子の一部を示す正面図。
図3】固定子の平面図。
図4】固定子コアに導体セグメントを挿入する状態を示す説明図。
図5】中性点バスバの斜視図。
図6】導体セグメントとバスバ端子部との接合部分を拡大して示す斜視図。
図7】導体セグメントとバスバ端子部との接合部分を拡大して示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る回転電機の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の実施形態及び変形例相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付しており、同一符号の部分についてはその説明を援用する。この実施形態の回転電機としてのモータは、例えば車両用の電動機や、飛行体用の電動機として用いられる。
【0021】
本実施形態の回転電機は、永久磁石同期電動機をはじめ、巻線界磁型や誘導機に適用できるものであり、多相の巻線を有する回転電機である。回転電機は、円筒形状の固定子や、固定子の径方向に対向して配置される回転子などを備える。回転子は、回転軸を中心にして回転可能に配置されている。まずは、図1図3を用いて固定子10の概略構成について説明する。なお、以下の説明において、軸方向とは、固定子10の軸方向、すなわち回転子の回転軸の軸方向のことを示し、径方向とは、固定子10の径方向、すなわち回転子の回転軸に直交する方向のことを示し、周方向とは、固定子10の周方向、すなわち回転子の回転軸を中心とする周回方向のことを示す。
【0022】
固定子10は、円環状をなす固定子コア11と、その固定子コア11に巻装された固定子巻線12とを備えている。本実施形態の回転電機は、インナロータ型の回転電機であり、固定子10の径方向内側に、回転子が回転可能な状態で配置されるようになっている。固定子巻線12は、相巻線としてU相巻線、V相巻線及びW相巻線を有し、それら各相巻線がY結線された3相巻線である。固定子巻線12は、不図示のインバータを介して電源から電力(交流電力)が供給されることで磁束を発生する。
【0023】
固定子コア11は、円環状のバックヨーク21と、バックヨーク21から径方向内側へ突出し周方向に所定距離を隔てて配列された複数のティース22とを有し、隣り合うティース22の間にスロット23が形成されている。スロット23は、径方向を長手として延びる開口形状をなし、固定子コア11において周方向に等間隔に設けられている。そして、そのスロット23に巻装された状態で固定子巻線12が設けられている。固定子コア11は、例えば磁性体である電磁鋼板からなるコアシートが軸方向に積層されたコアシート積層体として構成されている。
【0024】
固定子巻線12は、略矩形断面(平角断面)の一定太さの電気導体が略U字状に成形された分割導体としての複数の導体セグメント30を用い、コイルエンドCEにおいて各導体セグメント30が互いに接続されることで構成されている。なお、軸方向両側において固定子コア11よりも軸方向外側となる部分がコイルエンドCEである。以下、固定子巻線12のセグメント構造について詳しく説明する。
【0025】
図4は、固定子コア11のスロット23に導体セグメント30を挿入する状態を示す説明図である。図4に示すように、導体セグメント30は、略U字状をなし、直線状をなす一対の直線部31と、一対の直線部31どうしを繋ぐように屈曲形成されたターン部32とを有している。一対の直線部31は、固定子コア11の軸方向の厚さよりも長い長さを有している。導体セグメント30は、横断面が矩形状をなす導体(対向する一対の平面部を有する導体)を絶縁被膜により被覆した平角導線を用いて構成されており、各直線部31の先端部は、絶縁被膜が切除されることで、導体が露出した導体露出部33となっている。
【0026】
固定子コア11のスロット23には、複数の導体セグメント30が径方向に一列に並べられた状態で挿入される。これにより、スロット23内において導体セグメント30の各直線部31が複数層に積層された状態で収容される。導体セグメント30において、一対の直線部31は所定のコイルピッチを隔てた2つのスロット23にそれぞれ収容される。なお、スロット23内には、固定子コア11と固定子巻線12(導体セグメント30)との間を電気絶縁する絶縁シート24が設けられている。絶縁シート24は、スロット23内に挿入される複数の導体セグメント30をまとめて囲むように折り曲げられ、スロット23内において固定子コア11の内周面(内壁面)と導体セグメント30との間に挟まれた状態で設けられている。
【0027】
導体セグメント30の一対の直線部31は、2つのスロット23において径方向位置を1つずらしてそれぞれ収容されている。例えば一方の直線部31が径方向奥側(バックヨーク側)からn番目の位置に収容される場合、他方の直線部31は径方向奥側からn+1番目の位置に収容されるようになっている。
【0028】
固定子コア11のスロット23に対する各導体セグメント30の挿入に際し、各導体セグメント30の直線部31は、固定子コア11の軸方向両端の第1端側及び第2端側のうち第1端側から挿入され、その直線部31の先端部が第2端側から突出する。この場合、固定子コア11の第1端側では、導体セグメント30のターン部32により軸方向一方の側のコイルエンドCEが形成される。
【0029】
また、固定子コア11の第2端側では、各直線部31の反ターン部側が周方向に屈曲され、かつ互いに異なる導体セグメント30の直線部31どうしが溶接により接合されることにより、軸方向他方の側のコイルエンドCEが形成される(図2参照)。各導体セグメント30の接合部分では、各導体セグメント30の先端部がいずれも同じ方向(すなわち軸方向)に延び、かつ導体セグメント30の先端部どうしが互いに重なった状態で、軸方向(図1のA方向)からの溶接により接合されている。この場合、各導体セグメント30の先端部は、平坦面どうしが対向し互いに重なる状態でレーザ溶接により接合される。
【0030】
また、固定子巻線12において、各相の相巻線は中性点バスバ40により相互に接続される構成となっている。図1等に示すように、中性点バスバ40は、コイルエンドCEにおいて固定子巻線12の径方向外側に配置され、各相巻線の巻線端部となる導体セグメント30に対して溶接により接続されている。以下に、中性点バスバ40の構成を詳しく説明する。
【0031】
図5に示すように、中性点バスバ40は、平角導体よりなり、長尺状の本体部41と、本体部41からその長手方向に交差する向きに突出する3つの突出部42とを有している。中性点バスバ40は、平板から打ち抜かれた打ち抜き材よりなる。本体部41は、平面視において円弧状に延びるようにして長尺に形成されている。固定子巻線12に対する組み付け状態で言えば、中性点バスバ40は、周方向に延びる本体部41と、本体部41よりも径方向内側で固定子巻線12側に延びる突出部42とを有するものとなっている(図1参照)。3つの突出部42は、U相、V相及びW相の各相巻線の巻線端部にそれぞれ接合される部位である。本実施形態では、突出部42の径方向先端部が、コイルエンドCEにおける各相巻線の巻線端部に対してレーザ溶接により接合されるようになっている。
【0032】
より詳しくは、突出部42は、その先端側に、導体セグメント30に対して接合される部位であるバスバ端子部42aを有するとともに、本体部41とバスバ端子部42aとの間に根元部42bを有している。突出部42は、バスバ端子部42aと根元部42bとが互いに交差する向きに延びるよう屈曲形成されている。また、バスバ端子部42a及び根元部42bは幅寸法が相違しており、根元部42bの方がバスバ端子部42aよりも幅寸法が大きいものとなっている。さらに言えば、中性点バスバ40において、本体部41及び根元部42bの横断面の面積がそれぞれバスバ端子部42aの横断面の面積よりも大きいものとなっている。
【0033】
また、本体部41の中間部分には、平角導体の一部を折り返して形成された折り返し部43が設けられている。折り返し部43は、固定子10の温度を検出する温度センサ45(図1参照)を組み付けるためのセンサ組付部である。具体的には、中性点バスバ40には、折り返し部43に挟まれた状態で温度センサ45が組み付けられるようになっている。不図示とするが、温度センサ45には信号線が接続されている。
【0034】
中性点バスバ40の本体部41は、その横断面の面積が導体セグメント30の導体断面積と同じになっている。これにより、本体部41において温度センサ45が組み付けられた部位の横断面の面積は、導体セグメント30の導体断面積と同じになっている。そのため、導体セグメント30及び中性点バスバ40の通電時において電流密度が同じになり、中性点バスバ40に一体に設けられた温度センサ45において温度検出精度が高めるようになっている。
【0035】
図6及び図7は、導体セグメント30の先端部とバスバ端子部42aとの接合部分を拡大して示す図である。なお、図7は、導体セグメント30及びバスバ端子部42aの接合部分を軸方向から見た平面図である。
【0036】
図6において、導体セグメント30の先端部と中性点バスバ40のバスバ端子部42aとは各々軸方向に延び、導体どうしが互いに重なった状態となっている。そしてこの状態で、溶接により互いに接合されている。導体セグメント30は、導体露出部33においてバスバ端子部42aに接合されている。セグメント先端部とバスバ端子部42aの溶接時には、導体セグメント30どうしの溶接と同様に、軸方向(図のA方向)からレーザ溶接が行われる。
【0037】
また、図7に示すように、導体セグメント30の導体露出部33とバスバ端子部42aとはそれぞれ横断面が略矩形状をなし、それら導体露出部33及びバスバ端子部42aの一辺どうしが互いに重なった状態になっている。より詳しくは、バスバ端子部42aは、横断面が長辺及び短辺からなる長方形状をなし、その長辺及び短辺のうち長辺が導体セグメント30の導体露出部33に重なり、かつ導体露出部33と長辺の幅が同じになっている。また、導体セグメント30の導体露出部33の短辺の幅W1と、バスバ端子部42aの短辺の幅W2とはW1>W2となっている。こうした構成により、導体セグメント30及びバスバ端子部42aの接合部分では、バスバ端子部42aの横断面の面積が、導体セグメント30の導体断面積よりも小さくなっている。
【0038】
上記構成の固定子10について作用効果を以下に説明する。
【0039】
固定子10における導体セグメント30とバスバ端子部42aとの接合部分において、バスバ端子部42aの横断面の面積が、導体セグメント30の導体断面積よりも小さくなっている構成とした。この場合、セグメント先端部とバスバ端子部42aとの溶接時において、断面積の違いからバスバ端子部42aがセグメント先端部よりも高温となる。これにより、導体セグメント30どうしの溶接と比べて、溶接の深さを大きくすることができる。換言すれば、導体セグメント30どうしの溶接と、セグメント先端部及びバスバ端子部42aの溶接とで溶接エネルギ等の溶接条件を同じにしつつも、セグメント先端部及びバスバ端子部42aの溶接において、溶接の深さを大きくすることができる。
【0040】
導体セグメント30どうしの接合と、セグメント先端部及びバスバ端子部42aの接合とを対比すると、それら各接合部分での荷重のかかり方等が相違し、後者の方が接合強度を要することが考えられるが、そのような要求にも好適に対応できる。つまり、セグメント先端部及びバスバ端子部42aの接合部分では、中性点バスバ40自身の重みや他部材との接触による外力が作用することが考えられ、導体セグメント30どうしの接合部分よりも耐荷重を高めておくことが望ましい。この点、上記のとおり溶接の深さを大きくすることで接合強度を高めることが可能になっている。その結果、導体セグメント30に対して中性点バスバ40を適正に接合することができるものとなっている。
【0041】
バスバ端子部42aの横断面の長辺をセグメント先端部に重ね、かつバスバ端子部42aの長辺とセグメント先端部との幅を互いに同じにした。これにより、セグメント先端部及びバスバ端子部42aのそれぞれの横断面の面積を相違させつつも、その接合部分の重ね合わせを導体セグメント30どうしの溶接部分と同様に行うことができる。そのため、溶接作業が好適に行われるものとなっている。
【0042】
中性点バスバ40において、本体部41及び根元部42bの横断面の面積がそれぞれバスバ端子部42aの横断面の面積よりも大きい構成となっている。この構成によれば、セグメント先端部及びバスバ端子部42aの溶接時に溶接部分が高熱となり、その熱が導体セグメント30及び中性点バスバ40のそれぞれに伝わる際に、根元部42bを介して中性点バスバ40の本体部41側に伝わりやすくなっている。つまり、溶接の熱は、導体セグメント30側と中性点バスバ40側とのうち中性点バスバ40側に伝わりやすくなっている。そのため、導体セグメント30側での温度上昇が抑えられ、導体セグメント30の絶縁被覆が熱により溶ける等の不都合が生じにくくなっている。
【0043】
また、中性点バスバ40は、電流が流れる際の発熱により高温となり、その温度が温度センサ45により検出される。ただしこの場合、中性点バスバ40の熱が突出部42を介して導体セグメント30側に逃げてしまうと、温度検出精度の低下が懸念される。なお、固定子巻線12では相ごとに通電が切り替えられる一方、中性点バスバ40ではいずれの相の通電時にも通電状態が継続されるため、中性点バスバ40の方が高温になることが考えられる。この点、上記のとおり中性点バスバ40において本体部41及び根元部42bの横断面の面積がそれぞれバスバ端子部42aの横断面の面積よりも大きくなっており、換言すれば、バスバ端子部42aの横断面の面積が本体部41及び根元部42bの横断面の面積よりも小さくなっており、これにより、中性点バスバ40の熱が導体セグメント30側に逃げてしまうことが抑制される。よって、温度センサ45による温度検出精度の低下が抑制される。
【0044】
(他の実施形態)
上記実施形態を例えば次のように変更してもよい。
【0045】
・上記実施形態では、導体セグメント30の先端部とバスバ端子部42aとの横断面がそれぞれ略矩形状をなし、それらの一辺どうしを互いに重ね合わせていたが、この構成を変更してもよい。例えばバスバ端子部42aの横断面を、略三角形状や略半円状など、略矩形状でない断面形状にして、導体セグメント30の先端部とバスバ端子部42aとの平面部どうしを互いに重ね合わせる構成としてもよい。いずれにしろ、導体セグメント30の先端部とバスバ端子部42aとの接合部分において、バスバ端子部42aの横断面の面積が、導体セグメント30の導体断面積よりも小さいものであればよい。
【0046】
・中性点バスバ40の本体部41と導体セグメント30とは導体断面積が相違していてもよい。この場合、中性点バスバ40の本体部41の方が導体セグメント30よりも導体断面積が大きい構成、又は、中性点バスバ40の本体部41の方が導体セグメント30よりも導体断面積が小さい構成が可能である。
【0047】
・上記実施形態では、インナロータ式の回転電機での適用例を説明したが、これ以外にアウタロータ式の回転電機に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0048】
10…固定子、11…固定子コア、12…固定子巻線、30…導体セグメント、40…中性点バスバ、42a…バスバ端子部、CE…コイルエンド。
図1
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図7