(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179294
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】炭化珪素半導体のエピタキシャル成長装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/205 20060101AFI20231212BHJP
C30B 29/36 20060101ALI20231212BHJP
C30B 31/12 20060101ALI20231212BHJP
C30B 25/20 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
H01L21/205
C30B29/36 A
C30B31/12
C30B25/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092540
(22)【出願日】2022-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤林 裕明
(72)【発明者】
【氏名】長屋 正武
(72)【発明者】
【氏名】大原 淳士
(72)【発明者】
【氏名】星 真一
【テーマコード(参考)】
4G077
5F045
【Fターム(参考)】
4G077AA03
4G077BE08
4G077DB04
4G077DB07
4G077EA02
4G077ED06
4G077EG18
4G077EG25
4G077TA04
4G077TA07
4G077TE05
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4G077TK01
5F045AA03
5F045AB06
5F045AC01
5F045AC07
5F045AC16
5F045AC17
5F045AD18
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5F045DP03
5F045EF05
5F045EF15
5F045EK06
5F045EK07
5F045EK22
(57)【要約】
【課題】突出部へ落下したパーティクルの飛散を抑制することができるSiC半導体のエピタキシャル成長装置を提供する。
【解決手段】SiC半導体のエピタキシャル成長装置10は、成長空間111を囲む側壁112を有する炉体11と、エピタキシャル成長が行われるSiC半導体基板20が搭載される載置面121を有する載置台12と、炉体11の上部に設けられ、載置面121の上方から載置面121に向けて、成長空間111に原料ガスを供給する原料ガス供給部13と、側壁112から成長空間111の中央側へ向かって突出する突出部14と、突出部14を加熱するための突出部加熱用ヒータ17と、を備える。エピタキシャル成長膜の形成時または形成後に、突出部14の温度が、突出部14に落下したパーティクルが昇華する温度となるように、突出部加熱用ヒータ17は突出部14を加熱する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化珪素半導体のエピタキシャル成長を行う炭化珪素半導体のエピタキシャル成長装置であって、
前記エピタキシャル成長が行われる成長空間(111)を囲む側壁(112)を有する炉体(11)と、
前記成長空間に配置され、前記エピタキシャル成長が行われる炭化珪素半導体基板(20)が搭載される載置面(121)を有する載置台(12)と、
前記炉体の上部に設けられ、前記載置面の上方から前記載置面に向けて、前記成長空間に原料ガスを供給する原料ガス供給部(13)と、
前記側壁のうち上下方向で前記原料ガス供給部と前記載置台との間の位置に設けられ、前記側壁から前記成長空間の中央側へ向かって突出する突出部(14)と、
前記突出部を加熱するための突出部加熱用ヒータ(17、41)と、を備える、炭化珪素半導体のエピタキシャル成長装置。
【請求項2】
前記側壁から前記成長空間の中心側に向かう一つの方向での前記側壁からの距離が異なる位置に配置され、前記突出部から上側に向かって延びる1つ以上の壁(31)をさらに備える、請求項1に記載の炭化珪素半導体のエピタキシャル成長装置。
【請求項3】
前記突出部加熱用ヒータ(41)は、前記突出部の内部に配置されている、請求項1または2に記載の炭化珪素半導体のエピタキシャル成長装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化珪素(以下、SiCという)半導体のエピタキシャル成長を行うエピタキシャル成長装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、エピタキシャル成長が行われる成長空間を囲む側壁を有する炉体と、炉体の側壁から成長空間の中央側へ向かって突出する突出部とを備えるエピタキシャル成長装置が開示されている。成長空間に配置されるSiC半導体基板に向けて、原料ガスが供給されることで、SiC半導体基板の表面上に、SiC半導体がエピタキシャル成長して、エピタキシャル成長膜が形成される。このエピタキシャル成長装置によれば、突出部によって、SiC半導体基板に向かう原料ガスが、炉体の側壁周辺に向かって広がることを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、エピタキシャル成長膜の形成時では、原料ガスの一部が炉体の側壁に付着することで、寄生生成物が側壁に形成される。上記のような突出部を備えるエピタキシャル成長装置を用いると、寄生生成物の一部がパーティクル(すなわち、粒子)となって落下して、突出部の上面に付着する。同じ装置を用いて、エピタキシャル成長膜の形成が繰り返し行われるとき、先回までのエピタキシャル成長膜の形成によって、このパーティクルが突出部の上面に付着した状態で、今回のエピタキシャル成長膜の形成が行われる。このときの突出部の温度が、パーティクルが昇華する温度よりも低い場合、突出部に付着したパーティクルが飛散して、形成中のエピタキシャル成長膜に到達することで、エピタキシャル成長膜に、パーティクルを起点として、三角欠陥等の結晶欠陥が生じることが、本発明者によって見出された。
【0005】
また、先回までのエピタキシャル成長膜の形成によって、寄生生成物が側壁に形成されたり、今回のエピタキシャル成長膜の形成中に寄生生成物が側壁に形成されたりする。これらの場合においても、今回のエピタキシャル成長膜の形成中に、寄生生成物の一部がパーティクルとなって突出部の上面に落下し、落下したパーティクルが飛散することでも、上記の問題が生じる。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、突出部へ落下したパーティクルの飛散を抑制することができるSiC半導体のエピタキシャル成長装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明によれば、
SiC半導体のエピタキシャル成長を行うSiC半導体のエピタキシャル成長装置は、
エピタキシャル成長が行われる成長空間(111)を囲む側壁(112)を有する炉体(11)と、
成長空間に配置され、エピタキシャル成長が行われるSiC半導体基板(20)が搭載される載置面(121)を有する載置台(12)と、
炉体の上部に設けられ、載置面の上方から載置面に向けて、成長空間に原料ガスを供給する原料ガス供給部(13)と、
側壁のうち上下方向で原料ガス供給部と載置台との間の位置に設けられ、側壁から成長空間の中央側へ向かって突出する突出部(14)と、
突出部を加熱するための突出部加熱用ヒータ(17、41)と、を備える。
【0008】
これによれば、エピタキシャル成長膜の形成時または形成後に、突出部の温度が、突出部へ落下したパーティクルが昇華する温度となるように、突出部加熱用ヒータが突出部を加熱する。これにより、突出部へ落下したパーティクルを昇華させ、パーティクルを消滅させることができる。よって、エピタキシャル成長膜の形成時に、突出部へ落下したパーティクルの飛散を抑制することができる。
【0009】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態におけるSiC半導体のエピタキシャル成長装置の断面模式図である。
【
図2】第2実施形態におけるSiC半導体のエピタキシャル成長装置の断面模式図である。
【
図3】第3実施形態におけるSiC半導体のエピタキシャル成長装置の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0012】
(第1実施形態)
図1に示すように、本実施形態のSiC半導体のエピタキシャル成長装置10は、CVD法(すなわち、化学的気相成長法)により、SiC半導体基板20の表面上に、SiC半導体をエピタキシャル成長させて、エピタキシャル成長膜21を形成する。エピタキシャル成長装置10は、縦型であり、炉体11と、載置台12と、原料ガス供給部13と、突出部14と、側壁加熱用ヒータ15と、基板加熱用ヒータ16と、突出部加熱用ヒータ17と、を備える。
【0013】
炉体11は、その内部に、エピタキシャル成長が行われる成長空間111を形成する。炉体11は、成長空間111を囲む円筒状の側壁112を有する。側壁112は、上下方向に延びており、横方向から成長空間111を囲む。炉体11は、黒鉛、高融点金属炭化物、高融点金属炭化物に覆われた黒鉛などによって構成されている。高融点金属炭化物は、SiC半導体のエピタキシャル成長を行うときの温度でも溶融しない金属炭化物である。高融点金属炭化物としては、TaC、NbC等が挙げられる。
【0014】
載置台12は、エピタキシャル成長が行われるSiC半導体基板20が搭載される載置面121を有する。載置台12は、成長空間111のうち下方に配置される。載置台12は、円盤形状である。載置台12は、黒鉛、高融点金属炭化物、高融点金属炭化物に覆われた黒鉛などによって構成されている。
【0015】
原料ガス供給部13は、炉体11の上部に設けられている。原料ガス供給部13は、載置面121の上方から載置面121に向けて、成長空間111に原料ガスとキャリアガスの混合ガスを供給する。原料ガスは、SiH4等のSi原料ガスと、C3H8等のC原料ガスである。キャリアガスは、He、Ar、H2等である。
【0016】
原料ガス供給部13は、側壁112の上部に設けられたガス導入口131と、複数の穴132を有する仕切板133とを有する。仕切板133は、炉体11の内部空間を、ガス導入口側のガス導入空間134と、成長空間111とに仕切る。
図1中の矢印A1のように、ガス導入口131からガス導入空間134に混合ガスが導入される。ガス導入空間134に導入された混合ガスは、
図1中の矢印A2のように、複数の穴132から流出する。これにより、載置面121に向けて、シャワー状に混合ガスが供給される。
【0017】
突出部14は、側壁112のうち上下方向で原料ガス供給部13と載置台12との間の位置に設けられている。突出部14は、側壁112から成長空間111の中央側へ向かって突出している。突出部14は、側壁112とは別体であり、側壁112に固定されている。突出部14は、側壁112の全周にわたって円環状に配置されている。突出部14は、横方向に延びている。
図1では、突出部14は、側壁112から水平方向に延びているが、水平方向に対して斜め上側または斜め下側に向かって延びていてもよい。突出部14は、黒鉛、高融点金属炭化物、高融点金属炭化物に覆われた黒鉛などによって構成されている。突出部14を構成する材料は、側壁112を構成する材料と同じであっても、異なっていてもよい。なお、側壁112と突出部14とは、継ぎ目がない一体成形体であってもよい。
【0018】
突出部14は、成長空間111のうち突出部14よりも上側の部分と比較して、原料ガスが通過する空間の断面積を小さくすることで、原料ガスの流れを調整する。すなわち、成長空間111の断面積を絞ることで、原料ガス供給部13からSiC半導体基板20に向かう原料ガスが、側壁112に向かって広がることを抑制する。換言すると、突出部14は、SiC半導体基板20に向かう原料ガスを成長空間111の中心側に収束させる。
【0019】
側壁加熱用ヒータ15は、側壁112を加熱する。側壁加熱用ヒータ15は、側壁112の外側に配置される。側壁加熱用ヒータ15は、通電によって発熱する通電発熱体を用いた直接加熱方式のヒータである。側壁加熱用ヒータ15は、誘導加熱コイルを用いた誘導加熱方式のヒータであってもよい。
【0020】
基板加熱用ヒータ16は、SiC半導体基板20を加熱する。基板加熱用ヒータ16は、載置台12の内部に配置される。基板加熱用ヒータ16は、側壁加熱用ヒータ15と同様に、直接加熱方式のヒータであるが、誘導加熱方式のヒータであってもよい。なお、載置台12の内部に限らず、載置台12が図よりも薄い形状の場合、載置台12に対して載置面121側の反対側に、基板加熱用ヒータ16が配置されてもよい。
【0021】
突出部加熱用ヒータ17は、突出部14を加熱する。突出部加熱用ヒータ17は、側壁112の外側であって、上下方向で突出部14と同じ位置に配置される。突出部加熱用ヒータ17は、側壁加熱用ヒータ15と同様に、直接加熱方式のヒータであるが、誘導加熱方式のヒータであってもよい。
【0022】
また、エピタキシャル成長装置10は、図示しないガス排出部を備える。ガス排出部は、炉体11のうち載置台12よりも下側の部分に設けられる。ガス排出部は、成長空間111のガスを炉体11の外部に排出する。
【0023】
次に、上記したエピタキシャル成長装置10を用いたエピタキシャル成長膜21の形成方法について説明する。
【0024】
SiC単結晶で構成されたSiC半導体基板20を載置面121に設置する。キャリアガスとしてH
2、原料ガスとしてSiH
4、C
3H
8を用いる。この場合、側壁112の温度がSiH
4の分解温度以上である1000℃以上になるように、側壁加熱用ヒータ15によって、側壁112を加熱する。SiC半導体基板20の温度が1600~1750℃になるように、基板加熱用ヒータ16によって、SiC半導体基板20を加熱する。この状態で、
図1中の矢印A1、A2のように、原料ガス供給部13からSiC半導体基板20に向けて原料ガスとキャリアガスの混合ガスを供給する。
【0025】
側壁112が加熱されることで、SiC半導体基板20に向かう原料ガスが加熱分解され、SiC半導体基板20の表面上に、SiC半導体がエピタキシャル成長し、エピタキシャル成長膜21が形成される。エピタキシャル成長膜21の形成後に、SiC半導体基板20が別のものに取り換えられて、新たにエピタキシャル成長膜21が形成される。このように、同じ装置を用いて、エピタキシャル成長膜21の形成が繰り返し行われる。
【0026】
ところで、エピタキシャル成長膜21の形成時に、原料ガスの一部が側壁112に付着することで、
図1に示すように、SiまたはSiCで構成される寄生生成物22が側壁112に形成される。
図1中の矢印A3のように、寄生生成物22の一部がパーティクルとなって落下して、突出部14の上面に付着する。
【0027】
先回までのエピタキシャル成長膜21の形成によって、このパーティクルが突出部14の上面に付着した状態で、今回のエピタキシャル成長膜21の形成が行われる。このときの突出部14の温度が、パーティクルが昇華する温度よりも低い場合、突出部14に付着したパーティクルが飛散して、形成中のエピタキシャル成長膜21に到達することで、エピタキシャル成長膜21に、パーティクルを起点として、三角欠陥等の結晶欠陥が生じる。
【0028】
また、先回までのエピタキシャル成長膜21の形成によって、寄生生成物22が側壁112に形成されたり、今回のエピタキシャル成長膜21の形成中に寄生生成物22が側壁112に形成されたりする。これらの場合においても、今回のエピタキシャル成長膜21の形成中に、寄生生成物22の一部がパーティクルとなって突出部14の上面に落下し、落下したパーティクルが飛散することでも、上記の問題が生じる。
【0029】
そこで、本実施形態では、エピタキシャル成長膜21の形成時、すなわち、原料ガスを供給して、SiC半導体基板20の表面上にSiC半導体をエピタキシャル成長させるときに、突出部加熱用ヒータ17によって、突出部14を加熱する。突出部14の加熱温度は、下記のように、側壁112の加熱温度に応じて設定される。
【0030】
側壁112の加熱温度によって、寄生生成物22の成分が異なる。このため、側壁112の加熱温度が寄生生成物22の主成分がSiとなる温度であるとき、突出部14の加熱温度は、Siで構成されるパーティクルが昇華する温度、すなわち、1400℃以上とされる。また、側壁112の加熱温度が寄生生成物22の主成分がSiCとなる温度であるとき、突出部14の温度は、SiCで構成されるパーティクルが昇華する温度、すなわち、2000℃以上とされる。
【0031】
これにより、突出部14に落下したパーティクルを昇華させ、パーティクルを消滅させることができる。よって、エピタキシャル成長膜21の形成時に、突出部14へ落下したパーティクルの飛散を抑制することができる。パーティクルを起点とする結晶欠陥がエピタキシャル成長膜21に生じることを回避することができる。
【0032】
突出部14の加熱を、エピタキシャル成長膜21の形成時ではなく、エピタキシャル成長膜21の形成後に行ってもよい。エピタキシャル成長膜21の形成後とは、エピタキシャル成長膜21が形成されたSiC半導体基板20を炉体11の外部へ取り出した後のことである。突出部14の加熱を、エピタキシャル成長膜21の形成後に行うことで、エピタキシャル成長膜21の形成時における突出部14の加熱によるSiC半導体基板20およびエピタキシャル成長膜21への温度影響を回避することができる。
【0033】
本実施形態と異なり、エピタキシャル成長装置10が突出部加熱用ヒータ17を備えていない場合、エピタキシャル成長膜21の形成を複数回行うときに、突出部14の上面にパーティクルがある程度付着する度に、パーティクルを除去するメンテナンスを行う必要がある。これに対して、本実施形態によれば、突出部14の加熱を、エピタキシャル成長膜21の形成時または形成後に行うことで、上記のメンテナンス頻度を低減でき、エピタキシャル成長膜21の生産性を向上させることができる。
【0034】
(第2実施形態)
図2に示すように、本実施形態のSiC半導体のエピタキシャル成長装置10は、3つのトラップ用壁31を備える点で、第1実施形態と異なる。他の構成は、第1実施形態と同じである。
【0035】
3つのトラップ用壁31のそれぞれは、突出部14から上側に向かって延びている。
図2では、3つのトラップ用壁31のそれぞれは、鉛直方向上側に向かって延びているが、鉛直方向に対して斜め上側に向かって延びていてもよい。
【0036】
3つのトラップ用壁31のそれぞれは、突出部14と同様に、側壁112に沿う円環状であって、側壁112から成長空間111の中心側に向かう一つの方向での側壁112からの距離が異なる位置に配置されている。換言すると、3つのトラップ用壁31のそれぞれは、半径が異なる円筒形状であって、同心円状に配置されている。3つのトラップ用壁31のうち最も側壁112に近い壁31は、側壁112に対して間をあけて配置されている。3つのトラップ用壁31のそれぞれは、互いに間をあけて配置されている。
【0037】
3つのトラップ用壁31のそれぞれは、黒鉛、高融点金属炭化物、高融点金属炭化物に覆われた黒鉛などによって構成されている。3つのトラップ用壁31のそれぞれを構成する材料は、突出部14を構成する材料と同じであっても、異なっていてもよい。なお、3つのトラップ用壁31のそれぞれと突出部14とは、継ぎ目がない一体成形体であってもよい。
【0038】
本実施形態によれば、第1実施形態と共通の構成から奏される効果を、第1実施形態と同様に得ることができる。さらに、本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
【0039】
(1)エピタキシャル成長装置10は、3つのトラップ用壁31を備える。3つのトラップ用壁31によって、パーティクルをトラップ(すなわち、捕捉)することができる。このため、突出部14からのパーティクルの飛散を抑制する効果が第1実施形態よりも高い。
【0040】
なお、本実施形態では、トラップ用壁31の数は、3つであるが、これに限られず、1つ以上であればよい。トラップ用壁31が1つの場合、「側壁112から成長空間111の中心側に向かう一つの方向での距離が異なる位置に配置されている」は、「側壁112から所定距離の位置に配置されている」という意味である。
【0041】
(第3実施形態)
図3に示すように、本実施形態のSiC半導体のエピタキシャル成長装置10は第1実施形態の突出部加熱用ヒータ17の代わりに、突出部加熱用ヒータ41を備える。突出部加熱用ヒータ41は、第1実施形態の突出部加熱用ヒータ17と同じ目的のものである。突出部加熱用ヒータ41は、突出部14の内部に配置されている。突出部加熱用ヒータ41は、直接加熱方式のヒータであるが、誘導加熱方式のヒータであってもよい。
【0042】
エピタキシャル成長装置10の他の構成は、第1実施形態と同じである。このため、本実施形態によれば、第1実施形態と共通の構成から奏される効果を、第1実施形態と同様に得ることができる。さらに、本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
【0043】
(1)突出部加熱用ヒータ41は、突出部14の内部に配置されている。これによれば、突出部加熱用ヒータが側壁112の外側に配置される場合と比較して、突出部14の上面から突出部加熱用ヒータ41までの距離が短いため、突出部14を効率的に加熱することができる。すなわち、ヒータのエネルギロスを小さくでき、突出部14を狙いの温度に加熱するときのヒータのパワーを小さくすることができる。
【0044】
(他の実施形態)
(1)上記した各実施形態では、突出部14は、円環状の部材である。しかしながら、突出部14は、円環状の部材ではなく、側壁112の円周方向に互いに間をあけて配置された複数の部材であってもよい。この場合であっても、突出部14が存在する部分では、突出部14によって原料ガスが流れる空間の断面積が絞られることで、突出部14による効果が得られる。また、この場合、第2実施形態のトラップ用壁31は、突出部14と同様に、側壁112の円周方向に互いに間をあけて配置される。
【0045】
(2)本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能であり、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。すなわち、炉体11、載置台12のそれぞれの形状を他の形状に変更することが可能である。原料ガス供給部13の構成を他の構成に変更することが可能である。また、第2実施形態と第3実施形態とを組み合わせることが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0046】
11 炉体
111 成長空間
112 側壁
12 載置台
121 載置面
13 原料ガス供給部
14 突出部
17、41 突出部加熱用ヒータ
20 SiC半導体基板