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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179296
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】配管構造
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/122 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
E03C1/122 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092546
(22)【出願日】2022-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大谷 優人
【テーマコード(参考)】
2D061
【Fターム(参考)】
2D061AA04
2D061AA05
2D061AB02
2D061AB10
2D061AC08
2D061AD01
(57)【要約】
【課題】本発明は、一時貯留槽からの排水の流出部分におけるサイホン力が起動した場合の排水音を低減できる配管構造を提供することを目的とする。
【解決手段】配管構造20が有する中子部材70は、点検開口61Bから抜き出し可能に給気接続部61内に配置されて給気流路空間72Bを構成し、給気接続部61の下部で給気流路空間72Bの断面積を点検開口61Bの断面積よりも小さくし、分岐継手60に面する部分は、単流路部62の断面積を上流側から下流側に向かって高さ方向に小さくし、分岐継手60に面する部分における一時貯留槽30側の少なくとも一部には分岐継手60側に凸となる曲面76が形成され、鉛直方向上方から鉛直方向下方に向かうにつれて曲面76の接線と水平方向となす角度が小さくなる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水廻り器具から排出された排水を貯留する一時貯留槽と、
前記一時貯留槽から排出された排水を単一流路から複数流路へ分岐させる流出部と、
前記流出部の下流側に接続され、前記流出部で分岐された複数流路の各々から前記一時貯留槽に貯留された排水を横方向に排出する横引き管と、
前記横引き管からの排水を流下させることにより前記横引き管にサイホン力を発生させる竪管と、
開口部を有し、前記流出部の上方にあり、前記単一流路及び前記複数流路に跨って下端が接続され、前記横引き管へ空気を供給する給気部と、
前記開口部から抜き出し可能に前記給気部内に配置されて給気路を構成し、前記給気部の下部で前記給気路の断面積を前記開口部の断面積よりも小さくし、前記単一流路及び前記複数流路に面する部分は、前記単一流路の断面積を上流側から下流側に向かって高さ方向に小さくし、前記単一流路及び前記複数流路に面する部分における前記一時貯留槽側の少なくとも一部には前記一時貯留槽側に凸となる曲面が形成され、鉛直方向上方から鉛直方向下方に向かうにつれて前記曲面の接線と水平方向となす角度が小さくなる中子部材と、
を備えた配管構造。
【請求項2】
前記中子部材の前記曲面は、鉛直方向上方から鉛直方向下方に向かうにつれて前記接線と前記水平方向となす角度が小さくなる円弧曲面とされている、
請求項1に記載の配管構造。
【請求項3】
前記中子部材の下端は、前記単一流路の上端における鉛直方向上方から前記単一流路の高さ寸法の50%よりも下方にある、
請求項1に記載の配管構造。
【請求項4】
前記中子部材の下端のうち、前記一時貯留槽側から視て、前記複数流路と重なる範囲が切り欠かれている、
請求項1に記載の配管構造。
【請求項5】
前記一時貯留槽に接続され、前記一時貯留槽へ空気を供給する通気管と、
前記給気部と前記通気管とを接続する給気管と、
をさらに備えた、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の配管構造。
【請求項6】
前記中子部材のうち、前記給気管の延びる方向から視て、前記給気管と重なる範囲が切り欠かれている、
請求項5に記載の配管構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、水廻り器具から排出され一時貯留槽に貯留された排水にサイホン力を作用させて流出させるサイホン排水システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-256557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のように、一時貯留槽を備えたサイホン排水システムでは、一時貯留槽からサイホン排水管へ排水が流出し、流路面積が縮径する部分(流出部分)において、サイホン力が起動した場合に大きな排水音が生じやすい。
【0005】
本発明は、上記事実に鑑み、一時貯留槽からの排水の流出部分におけるサイホン力が起動した場合の排水音を低減できる配管構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第一態様の配管構造は、水廻り器具から排出された排水を貯留する一時貯留槽と、前記一時貯留槽から排出された排水を単一流路から複数流路へ分岐させる流出部と、前記流出部の下流側に接続され、前記流出部で分岐された複数流路の各々から前記一時貯留槽に貯留された排水を横方向に排出する横引き管と、前記横引き管からの排水を流下させることにより前記横引き管にサイホン力を発生させる竪管と、開口部を有し、前記流出部の上方にあり、前記単一流路及び前記複数流路に跨って下端が接続され、前記横引き管へ空気を供給する給気部と、前記開口部から抜き出し可能に前記給気部内に配置されて給気路を構成し、前記給気部の下部で前記給気路の断面積を前記開口部の断面積よりも小さくし、前記単一流路及び前記複数流路に面する部分は、前記単一流路の断面積を上流側から下流側に向かって高さ方向に小さくし、前記単一流路及び前記複数流路に面する部分における前記一時貯留槽側の少なくとも一部には前記一時貯留槽側に凸となる曲面が形成され、鉛直方向上方から鉛直方向下方に向かうにつれて前記曲面の接線と水平方向となす角度が小さくなる中子部材と、を備える。
【0007】
この配管構造では、給気路を構成すると共に給気部の下部の流路断面積を小さくする中子部材が給気部内に配置されている。また、中子部材の一時貯留槽側の少なくとも一部には、鉛直方向上方から鉛直方向下方に向かうにつれて、水平方向となす角度が小さくなる曲面が形成されている。これにより、一時貯留槽から流出する排水の排水量を確保しつつ、一時貯留槽から流出する排水に含まれる空気の巻き込みによる排水時の騒音を低減することができる。
【0008】
本開示の第二態様の配管構造は、第一態様に記載の配管構造において、前記中子部材の前記曲面は、鉛直方向上方から鉛直方向下方に向かうにつれて前記接線と前記水平方向となす角度が小さくなる円弧曲面とされている。
【0009】
この配管構造では、中子部材に形成された曲面は、円弧状に形成された円弧曲面とされており、一時貯留槽から流出した排水が流れる流路の抵抗は、曲面が円弧状とされていない場合と比べて小さくなる。これにより、一時貯留槽から流出する排水に含まれる空気の巻き込みによる排水時の騒音をより低減することができる。
【0010】
本開示の第三態様の配管構造は、第一態様又は第二態様に記載の配管構造において、前記中子部材の下端は、前記単一流路の上端における鉛直方向上方から前記単一流路の高さ寸法の50%よりも下方にある。
【0011】
この配管構造では、中子部材の下端が単一流路の鉛直方向上方から流路の高さ寸法の50%よりも下方にあるため、単一流路を流れる排水の流速を低減しつつ、一時貯留槽に貯留される排水の水位が下がり過ぎない。このため、一時貯留槽から流出される排水に含まれる空気の量が低減される。これにより、一時貯留槽から流出する排水に含まれる空気の巻き込みによる排水時の騒音をより低減することができる。
【0012】
本開示の第四態様の配管構造は、第一態様~第三態様のいずれか一態様に記載の配管構造において、前記中子部材の下端のうち、前記一時貯留槽側から視て、前記横引き管と重なる範囲が切り欠かれている。
【0013】
この配管構造では、中子部材の下端が一時貯留槽側から視て、横引き管と重なる範囲を切り欠かれているため、中子部材に当たった排水が横引き管に流れやすい。このため、排水の流れが給気部の内部で乱れることが低減される。これにより、一時貯留槽から流出する排水に含まれる空気の巻き込みによる排水時の騒音をより低減することができる。
【0014】
本開示の第五態様の配管構造は、第一態様~第四態様のいずれか一態様に記載の配管構造において、前記一時貯留槽に接続され、前記一時貯留槽へ空気を供給する通気管と、前記給気部と前記通気管とを接続する給気管と、をさらに備える。
【0015】
この配管構造では、一時貯留槽に接続された通気管と給気部とが接続されているので、一時貯留槽の水位が高い場合に一時貯留槽からの排水を、給気部を介して横引き管へ流出させることができる。
【0016】
本開示の第六態様の配管構造は、第一態様~第五態様のいずれか一態様に記載の配管構造において、前記中子部材のうち、前記給気管の延びる方向から視て、前記給気管と重なる範囲が切り欠かれている。
【0017】
この配管構造では、中子部材には、給気管と重なる範囲が給気管の延びる方向から視て切り欠かれているため、給気管から給気部に空気が流入しやすい。このため、排水の流れが給気部の内部で乱れることが低減される。これにより、一時貯留槽から流出する排水に含まれる空気の巻き込みによる排水時の騒音をより低減することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の配管構造によれば、一時貯留槽からの排水の流出部分におけるサイホン力が起動した場合の排水音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る配管構造を示す側面図である。
図2】本発明の実施形態に係る配管構造を示す斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係る配管構造の分岐継手付近を示す斜視図である。
図4図5の4B-4B線断面図である。
図5図3のA-A線断面図である。
図6】本発明の実施形態に係る中子部材を一時貯留槽から見た図である。
図7】本発明の実施形態に係る中子部材の斜視図である。
図8図5の4B-4B線に対応する、比較例に係る配管構造の断面図である。
図9】実施例の配管構造及び比較例の配管構造における排水時の騒音の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態に係る配管構造について、図面を参照しながら説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一の構成要素であることを意味する。但し、明細書中に特段の断りが無い限り、各構成要素は一つに限定されず、複数存在してもよい。
【0021】
また、各図面において重複する構成及び符号については、説明を省略する場合がある。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において構成を省略する又は異なる構成と入れ替える等、適宜変更を加えて実施することができる。
【0022】
図中の矢印Zは鉛直方向の上方向を示し、矢印X及びYは水平方向において互いに直交する方向を示す。
【0023】
<配管構造>
(サイホン排水システム)
図1には、本実施形態に係る配管構造20の概略が示されている。配管構造20は、サイホン力を利用して水廻り器具12からの排水を排出するサイホン排水システムの構造である。配管構造20は、一例として、多層に形成された共同住宅10に用いられている。
【0024】
配管構造20は、排水を下方へ流す排水立て管22を備えている。排水立て管22は、上下方向(鉛直方向)沿って延在され、共同住宅10の各階のスラブ14を貫いている。また、排水立て管22は、共同住宅10において平面上の異なる場所に複数設けられている。排水立て管22は、例えば、共同住宅10の各階の各住居とは壁で区画された配管スペース(パイプスペース等とも称す)内に収容されている。
【0025】
共同住宅10の各住戸には、水廻り器具12が設けられている。水廻り器具12は、例えば浴室ユニットであり、浴槽12A及び洗い場12Bが一体化されて形成されている。水廻り器具12には、排水導入管24の一端が接続されている。
【0026】
排水導入管24の他端は、後述する一時貯留槽30と接続されている。これにより、排水導入管24は、水廻り器具12の浴槽12A及び洗い場12Bから排出される排水を、一時貯留槽30へ導入する。なお、排水導入管24は、一時貯留槽30側が低くなるように勾配をもって配設されていることが好ましい。
【0027】
一時貯留槽30は、水廻り器具12からの排水を一時的に貯留可能であり、略直方体状に形成されている。一時貯留槽30の一方の側壁には、流入部30Aが形成され、排水導入管24の他端が接続されている。一時貯留槽30の一方の側壁と対向する他方の側壁の下部には、突出部30Bが形成されている。流入部30Aは、排水導入管24の接続側が凹となる形状とされている。
【0028】
突出部30Bには、後述する流出部としての分岐継手60が接続され、分岐継手60を介してサイホン排水管40が接続されている。突出部30Bは、分岐継手60が接続される側に突出する凸状とされ、先端に水平方向に長い長孔形状の流出開口部30Cが形成されている。一時貯留槽30は、例えば塩化ビニル等の樹脂材料で形成されている。
【0029】
一時貯留槽30の天壁には、点検口32が形成されており、点検口32は蓋34で閉鎖されている。
【0030】
(分岐継手)
図3及び図4に示すように、分岐継手60は、単流路部62及び複流路部64を有している。単流路部62は、突出部30Bから延出され、単流路部62内には、流出開口部30Cと連続する、1本の単一流路63A及び単一流路63Aから単一流路63Aと直交する水平方向に拡径された単一空間63Bが形成されている。また、単流路部62は、本開示の「単一流路」の一例である。
【0031】
複流路部64は、単流路部62から単流路部62と同方向に2本平行に突出されており、内部には、複流路部64の外形に沿って互いに平行配置された2本の分岐流路65が形成されている。各々の分岐流路65は、単一空間63Bから連続されており、後述する横引き管42が接続されている。図5に示すように、単一流路63Aの内径は横引き管42の内径よりも大きく、単一流路63Aの下端が横引き管42の下端と略同一高さに配置され、単一流路63Aの上端は横引き管42の上端よりも高い位置に配置されている。また、複流路部64は、本開示の「複数流路」の一例である。
【0032】
単流路部62の上部には、給気部としての給気接続部61が形成されている。言い換えれば、給気接続部61は、単流路部62と複流路部64に跨り、分岐継手60に下端が接続されている。給気接続部61は、略円筒状とされ、内部に単一空間63Bの上方から連通する連通流路61Aが形成されている。給気接続部61の上端には、連通流路61Aから上方へ開口する点検開口61Bが形成されている。点検開口61Bは、蓋61Dで閉鎖されている。また、給気接続部61の側面上部には、連通流路61Aから通気管50側へ開口する接続開口61Cが形成されている。接続開口61Cには、給気管66が接続されている。
【0033】
(サイホン排水管)
図2に示すように、サイホン排水管40は、スラブ14に沿って配設される複数(本実施形態においては2本)の横引き管42と、合流横引き管44と、竪管46と、横合流継手部材48と、を備えている。
【0034】
横引き管42は、水廻り器具12から排出された排水を複数流路で横方向に排出する。横引き管42は、例えば呼び径が25J(内径が約28mm)のポリブデン管で形成され、スラブ14上で水平方向に沿って無勾配で配設されている。なお、ここでの無勾配とは、厳密に水平方向である必要はなく、スラブ14に沿って多少の段差や勾配のあるものを含む。
【0035】
2本の横引き管42それぞれの「上流側」の端部は、分岐継手60の分岐流路65と接続されている。横引き管42それぞれの「下流側」の端部は、横合流継手部材48を介して、1本の合流横引き管44に接続されている。合流横引き管44は、2本の横引き管42から導入された排水を横方向に排出する横引き管である。なお、合流横引き管44と横合流継手部材48とが一体的に構成されていてもよい。
【0036】
2本の横引き管42の合計断面積は、排水導入管24の断面積未満であることが好ましい。また、合流横引き管44の断面積は、2本の横引き管42の合計断面積未満であることが好ましい。合流横引き管44及び横引き管42は、排水導入管24からの排水量を考慮して、必要に応じて管内を排水が満流で流れるようにその断面積が設定されている。
【0037】
図1及び図2に示すように、竪管46の上流側には合流横引き管44が接続されている。竪管46は、排水立て管22に沿って、上下方向(鉛直方向)に配設され、横引き管42にサイホン力を発生させる。竪管46の他端は、合流部継手26に接続されている。合流部継手26は、竪管46からの排水を排水立て管22へ合流させる継手部材である。
【0038】
合流横引き管44及び竪管46は、合流部継手26までは他の排水管と途中で合流することなく、連続した1本の経路で構成されており、排水立て管22へ排水を導く。なお、合流横引き管44と竪管46との接続部は、連続したベント管として図示されているが、このベント管部分には、エルボ等の継手部材を配置してもよい。継手部材を配置する場合、当該継手部材には、適宜点検口などを設けることができる。
【0039】
図2に示されるように、一時貯留槽30には、通気管50が接続されている。通気管50の一端は、一時貯留槽30において突出部30Bが形成されている側壁の上部に接続され、横引き管42と略平行に延出されている。通気管50の他端は、合流部継手26と接続されている。通気管50の一時貯留槽30に近い部分には、給気管66の他端側の接続口67Bが接続されている。給気管66は、合流部継手26を介して排水立て管22と接続されている。通気管50により、一時貯留槽30内が大気圧となるように一時貯留槽30内へ空気が出入りする。また、通気管50から給気管66を介して、横引き管42へ空気が供給される。
【0040】
(中子部材)
給気接続部61内には、中子部材70が配置されている。図7に示すように、中子部材70は、略円柱状とされ、本体部72、及び係止部74を有している。係止部74は、環状とされ、中子部材70の上端部を構成し、給気接続部61の点検開口61Bを形成する内周壁に係止されている。中子部材70は、点検開口61Bから給気接続部61内の連通流路61Aへ、抜き出し可能とされている。
【0041】
本体部72は、係止部74から下方へ延び、連通流路61Aに配置されている。本体部72の側面には、給気路の一例としての給気入口空間72A及び給気流路空間72Bが形成されている。図4に示されるように、給気入口空間72Aは、側方(排水が流れる方向と直交する水平方向)から見て給気接続部61が重なる位置に、本体部72が凹状となるように切り欠かれて形成されていてもよい。給気流路空間72Bは、上方から見て、給気入口空間72Aから90°回転した横引き管42側に、本体部72が凹状となるように、中心よりも横引き管42側が半円状に切り欠かれて形成されている。給気入口空間72Aは、上下方向(Z方向)において、接続開口61Cに対応する高さ部分に形成され、給気流路空間72Bは、上下方向(Z方向)において、給気入口空間72Aの上端と同じ位置から下端に渡って形成され、給気入口空間72Aと連通されていてもよい。
【0042】
本体部72の給気入口空間72A及び給気流路空間72Bが形成されていない側面は、給気接続部61の内壁に沿った形状とされている。図5に示すように、本体部72の単流路部62と複流路部64に面する部分は、分岐継手60の単一流路63の上流側(上端部)から下流側(分岐流路65の上端部)へ向かうように斜め下方向へ曲面76が形成されている。すなわち、本体部72の流出部に面する部分は、単流路部62の断面積を上流側から下流側に向かって高さ方向に小さくするように形成されている。なお、この曲面76は、鉛直方向上方から鉛直方向下方に向かうにつれて接線と水平方向となす角度が小さくなる円弧曲面とされていてもよい。
【0043】
また、図5に示すように、曲面76は、単流路部62の上流側に向かって凸となり、鉛直方向上方から鉛直方向下方に向かうにつれて曲面76の接線と水平方向となす角度が小さくなる。言い換えれば、曲面76は、中子部材70を側方から視た場合に輪郭が曲線となるように形成されている。
【0044】
中子部材70が連通流路61Aに配置された状態において、給気接続部61内部の排水の流れ方向における上流側(図5の左側)には、本体部72が配置されている。したがって、連通流路61Aの下部の空気が流れる部分である給気流路空間72Bの断面積は、点検開口61Bの開口面積よりも小さくなる。なお、本実施形態において、連通流路61Aの下端の断面積は、給気流路空間72Bの単一流路63への開口面積であり開口Sとなる。
【0045】
また、中子部材70の下端76Eは、図5及び図6に示すように、単一流路63の上端における鉛直方向上方から単一流路63の高さ寸法の50%よりも下方とされていてもよい。言い換えれば、単流路部62を排水が流れる場合に、中子部材70の下端76Eは、排水に浸かる形状とされていてもよい。
【0046】
また、一時貯留槽30側から視て中子部材70の下端は、複流路部64と重なる部分を複流路部64の内径78に沿って切り欠かれている。言い換えれば、一時貯留槽30側から視て中子部材70の下端は、複流路部64と重ならない形状とされていてもよい。
【0047】
接続開口61Cには、給気管66の一端側の接続口67Aが接続されている。給気管66の他端側の接続口67Bは、通気管50に接続されている。
【0048】
<作用及び効果>
次に、本実施形態の配管構造20の作用、効果を説明する。
【0049】
実施形態の配管構造20は、水廻り器具12から排出された排水を貯留する一時貯留槽30と、一時貯留槽30から排出された排水を単流路部62から複流路部64へ分岐させる分岐継手60と、分岐継手60の下流側に接続され、分岐継手60で分岐された分岐流路65の各々から一時貯留槽30に貯留された排水を横方向に排出する横引き管42と、横引き管42からの排水を流下させることにより横引き管42にサイホン力を発生させる竪管46と、点検開口61Bを有し、分岐継手60の上方にあり、単流路部62と複流路部64に跨って下端が接続され、横引き管42へ空気を供給する給気接続部61と、点検開口61Bから抜き出し可能に給気接続部61内に配置されて給気入口空間72A及び給気流路空間72Bを構成し、給気接続部61の下部で給気入口空間72A及び給気流路空間72Bの断面積を点検開口61Bの断面積よりも小さくし、分岐継手60に面する部分は、単流路部62の断面積を上流側から下流側に向かって高さ方向に小さくし、単流路部62と複流路部64に面する部分における一時貯留槽30側の少なくとも一部には一時貯留槽30側に凸となる曲面76が形成され、鉛直方向上方から鉛直方向下方に向かうにつれて曲面76の接線と水平方向となす角度が小さくなる中子部材70と、を備える。
【0050】
この配管構造20では、給気入口空間72A及び給気流路空間72Bを構成すると共に給気接続部61の下部の流路断面積を小さくする中子部材70が給気接続部61内に配置されている。また、中子部材70の一時貯留槽30側の少なくとも一部には、鉛直方向上方から鉛直方向下方に向かうにつれて、水平方向となす角度が小さくなる曲面76が形成されている。これにより、一時貯留槽30から流出する排水の排水量を確保しつつ、一時貯留槽30から流出する排水に含まれる空気の巻き込みによる排水時の騒音を低減することができる。
【0051】
実施形態の配管構造20は、中子部材70の曲面76は、鉛直方向上方から鉛直方向下方に向かうにつれて接線と水平方向となす角度が小さくなる円弧曲面とされている。
【0052】
この配管構造20では、中子部材70に形成された曲面76は、円弧状に形成された円弧曲面とされており、一時貯留槽30から流出した排水が流れる流路の抵抗は、曲面76が円弧状とされていない場合と比べて小さくなる。これにより、一時貯留槽30から流出する排水に含まれる空気の巻き込みによる排水時の騒音をより低減することができる。
【0053】
実施形態の配管構造20は、中子部材70の下端は、単流路部62の上端における鉛直方向上方から単流路部62の高さ寸法の50%よりも下方にある。
【0054】
この配管構造20では、中子部材70の下端が単流路部62の流路の鉛直方向上方から流路の高さ寸法の50%よりも下方にあるため、単流路部62を流れる排水の流速を低減しつつ、一時貯留槽30に貯留される排水の水位が下がり過ぎない。このため、一時貯留槽30から流出される排水に含まれる空気の量が低減される。これにより、一時貯留槽30から流出する排水に含まれる空気の巻き込みによる排水時の騒音をより低減することができる。
【0055】
実施形態の配管構造20は、中子部材70の下端のうち、一時貯留槽30側から視て、複流路部64と重なる範囲が切り欠かれている。
【0056】
この配管構造20では、中子部材70の下端が一時貯留槽30側から視て、複流路部64と重なる範囲を切り欠かれているため、中子部材70に当たった排水が横引き管42に流れやすい。このため、排水の流れが給気接続部61の内部で乱れることが低減される。これにより、一時貯留槽30から流出する排水に含まれる空気の巻き込みによる排水時の騒音をより低減することができる。
【0057】
実施形態の配管構造20は、一時貯留槽30に接続され、一時貯留槽30へ空気を供給する通気管50と、給気接続部61と通気管50とを接続する給気管66と、をさらに備える。
【0058】
この配管構造20では、一時貯留槽30に接続された通気管50と給気接続部61とが接続されているので、一時貯留槽30の水位が高い場合に一時貯留槽30からの排水を、給気接続部61を介して横引き管42へ流出させることができる。
【0059】
実施形態の配管構造20は、中子部材70のうち、給気管66の延びる方向から視て、給気管66と重なる範囲が切り欠かれている。
【0060】
この配管構造20では、中子部材70には、給気管66と重なる範囲が給気管66の延びる方向から視て切り欠かれているため、給気管66から給気接続部61に空気が流入しやすい。このため、排水の流れが給気接続部61の内部で乱れることが低減される。これにより、一時貯留槽30から流出する排水に含まれる空気の巻き込みによる排水時の騒音をより低減することができる。
【0061】
(実施例)
続いて、本実施形態に係る中子部材70と、比較例の中子部材170とを比較した結果を図8及び図9を適宜参照しながら示す。
【0062】
(比較例の中子部材)
まず、実施例の中子部材70に対して、比較例の中子部材170について、説明する。なお、比較例の中子部材170において、実施形態の配管構造20及び実施形態の配管構造20が有する中子部材70と同等の構成については、それぞれ同一の符号を用い、詳細な説明を省略する。
【0063】
図8は、図4に対応する、比較例の中子部材170を示す図である。比較例の中子部材170は、実施形態の中子部材70における曲面76が、平坦面176とされている点で異なる。図8に示すように、比較例の中子部材170の平坦面176は、鉛直方向上方から鉛直方向下方に向かうにつれて平坦面176の接線と水平方向となす角度が小さくならない。言い換えれば、平坦面176は、中子部材70を側方から視た場合に輪郭が直線となるように形成されている。また、中子部材170の下端176Eの位置は、第一実施形態の中子部材70の下端76Eと同等の位置とされている。すなわち、第一実施形態の中子部材70と同様に、単流路部62を排水が流れる場合に、中子部材70の下端76Eは、排水に浸かる形状とされている。
【0064】
比較例の中子部材170の、その他の部分の形状は、実施例の中子部材70と同等とされている。
【0065】
図9は、実施例の中子部材70と比較例の中子部材170とによる、サイホン力起動時の騒音の比較結果である。なお、図中の「実施例」とは、上述の実施形態に係る中子部材70としている。
【0066】
図9に示すように、サイホン力が起動した直後、すなわち一時貯留槽30の水位が高い時期(図中「高水位」の時期)では、実施例及び比較例の両方とも騒音が大きい。また、一時貯留槽30から排水が流出し、一時貯留槽30の水位が中程度の時期(図中「中水位」の時期)では、実施例及び比較例の両方とも、一時貯留槽30の水位が高い時期よりも騒音が低減している。
【0067】
ここで、一時貯留槽30の水位が低下した時期(図中「低水位」の時期)では、比較例では再び騒音が増加していることに対し、実施例では、騒音の増加が抑えられている。言い換えれば、実施例は、比較例と比べて、聴感及び音圧の平均値が小さくなっている。
【0068】
なお、このように、実施例では、一時貯留槽30の水位が低下した時期の騒音の増加が抑えられた理由については、以下のように推測される。
【0069】
まず、一時貯留槽30の水位が低下した時期では、一時貯留槽30中の空気が排水に巻き込まれながら、一時貯留槽30から分岐継手60に流れる。
【0070】
ここで、比較例の中子部材170では、単流路部62と面している部分が平坦面176であるため、平坦面176に当たる一時貯留槽30から流出する空気を含んだ排水の流れが乱されることによって、騒音が発生する。
【0071】
一方、実施例の中子部材70では、単流路部62と面している部分が曲面76であるため、曲面76に当たる一時貯留槽30から流出する空気を含んだ排水の流れが乱されにくく、騒音の増加が抑えられる。
【0072】
(変形例)
なお、上述の説明において、中子部材70における曲面76は、分岐継手60に面する部分の全体が円弧状に形成されていたが、これに限られない。例えば、中子部材70における分岐継手60に面する部分のうち、少なくとも一部が、分岐継手60側に凸となる曲面76が形成され、鉛直方向上方から鉛直方向下方に向かうにつれて曲面76の接線と水平方向となす角度が小さくなればよい。この場合においても、一時貯留槽30から流出する排水の排水量を確保しつつ、一時貯留槽30から流出する排水に含まれる空気の巻き込みによる排水時の騒音を低減することができる。
【0073】
また、上述の説明において、中子部材70における曲面76は、鉛直方向上方から鉛直方向下方に向かうにつれて接線と水平方向となす角度が小さくなる円弧曲面とされていたが、これに限られない。曲面76の形状は、円弧曲面の他にも、指数的、対数的等、中子部材70が用いられる配管構造20の形状等に合わせて適宜設計されてもよい。
【0074】
また、上述の説明において、中子部材70の下端76Eは、単流路部62の上端における鉛直方向上方から単流路部62の高さ寸法の50%よりも下方にあるとされていたが、これに限られない。中子部材70の下端76Eは、単流路部62を流れる排水の量や、単流路部62の形状等によって適宜設計されてもよい。
【0075】
また、上述の説明において、中子部材70の下端は、一時貯留槽30側から視て、横引き管42と重なる範囲が切り欠かれているとされていたが、これに限られない。中子部材70の下端の形状は、単流路部62を流れる排水の量や、単流路部62の形状等によって適宜設計されてもよい。
【0076】
また、上述の説明において、配管構造20は、一時貯留槽30に接続され、一時貯留槽30へ空気を供給する通気管50と、給気部と通気管50とを接続する給気管66とを有していたが、これに限られない。例えば、一時貯留槽30へ空気を供給する通気管50と、給気部と通気管50とを接続する給気管66を有しない構成とされていてもよい。
【0077】
また、上述の説明において、中子部材70は、給気管66の延びる方向から視て、給気管66と重なる範囲が切り欠かれていたが、これに限られない。中子部材70は、給気管66を流れる空気の量や、給気入口空間72A及び給気流路空間72Bの形状等によって適宜設計されてもよい。
【0078】
また、上述の説明において、中子部材70は、給気管66の延びる方向から視て、給気管66と重なる範囲が切り欠かれていたが、これに限られない。中子部材70は、給気管66を流れる空気の量や、給気入口空間72A及び給気流路空間72Bの形状等によって適宜設計されてもよい。
【0079】
(その他の実施形態)
上記の実施形態では、分岐継手60として、単一流路63Aと分岐流路65が平行に配置された形状のものを例に説明したが、分岐継手として、Y字状の分岐継手や、ト字状(直流流路とその直流流路から斜めに分岐する形状)の分岐継手を用いてもよい。
【0080】
以上、添付図面を参照しながら本開示の実施形態を説明したが、本開示の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は応用例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0081】
12 水廻り器具、 20 配管構造、 30 一時貯留槽
42 横引き管、 46 竪管、 50 通気管、 60 分岐継手(流出部)
61 給気接続部(給気部)、 61A 連通流路、 61B 点検開口(開口部)
62 単流路部(単一流路)、 64 複流路部(複数流路)、 66 給気管(給気部)、70 中子部材、72A 給気入口空間(給気路)、 72B 給気流路空間(給気路)、 76 曲面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9