IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東海興業株式会社の特許一覧

特開2023-179315ガラスランチャンネル及びガラスランチャンネル組立体
<>
  • 特開-ガラスランチャンネル及びガラスランチャンネル組立体 図1
  • 特開-ガラスランチャンネル及びガラスランチャンネル組立体 図2
  • 特開-ガラスランチャンネル及びガラスランチャンネル組立体 図3
  • 特開-ガラスランチャンネル及びガラスランチャンネル組立体 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179315
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】ガラスランチャンネル及びガラスランチャンネル組立体
(51)【国際特許分類】
   B60J 10/76 20160101AFI20231212BHJP
   B60J 10/16 20160101ALI20231212BHJP
   B60J 10/17 20160101ALI20231212BHJP
   B32B 3/02 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
B60J10/76
B60J10/16
B60J10/17
B32B3/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092570
(22)【出願日】2022-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000219705
【氏名又は名称】東海興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098420
【弁理士】
【氏名又は名称】加古 宗男
(72)【発明者】
【氏名】小林 洋介
【テーマコード(参考)】
3D201
4F100
【Fターム(参考)】
3D201AA12
3D201AA24
3D201BA01
3D201CA19
3D201DA31
3D201DA54
3D201DA64
3D201EA01A
4F100AB01
4F100AB01B
4F100AK01
4F100AK01A
4F100AK03
4F100AK03A
4F100AK75
4F100AK75A
4F100AL09
4F100AL09A
4F100AR00B
4F100AT00B
4F100BA02
4F100BA07
4F100GB31
4F100JB16
4F100JB16A
4F100JK07A
(57)【要約】
【課題】窓板に対するリップ部の摺動性や取付作業時に作業者が手で押し込む部分の摺動性を確保しながらリップ部の根元側の屈曲変形に対する反力の増大を抑制する。
【解決手段】リップ部25,26は、窓板14の昇降時にリップ部25,26が窓板14と摺動して弾性変形するときに屈曲する屈曲点29がリップ部25,26の根元側に位置するように形成されている。リップ部25,26の表面のうち、屈曲点29よりもリップ部25,26の先端側には、リップ部25,26よりも摩擦係数が小さい第1被覆部31が形成され、リップ部25,26の屈曲点29又は屈曲点29よりもリップ部25,26の先端側の位置から意匠部27,28の表面に亘って、リップ部25,26よりも摩擦係数が小さい第2被覆部32が形成されている。第1被覆部31は第2被覆部32よりも硬くなるように形成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドアパネルの窓枠に沿って取り付けられ、窓板の移動を案内するように長尺に形成された弾性ポリマー材料製のガラスランチャンネルであって、
前記ガラスランチャンネルは、
車内側の側壁部及び車外側の側壁部と、
これら両側壁部を一体に連結する底壁部とからなる断面コ字状の本体部と、
それぞれの側壁部の端末から前記本体部の内側に向けて突出する弾性変形可能な車内側のリップ部及び車外側のリップ部と、
それぞれの側壁部の端末から前記本体部の外側に向けて突出する弾性変形可能な車内側の意匠部及び車外側の意匠部と
を有し、
前記車内側及び前記車外側の少なくともいずれか一方のリップ部は、
前記窓板の昇降時に前記リップ部が窓板と摺動して弾性変形するときに屈曲する屈曲点が前記リップ部の根元側に位置するように形成され、
前記リップ部の前記窓板と摺動する表面のうち、前記屈曲点よりも前記リップ部の先端側には、前記リップ部よりも摩擦係数が小さい第1被覆部が形成され、
前記リップ部の前記屈曲点又は前記屈曲点よりも前記リップ部の先端側の位置から前記意匠部の表面に亘って、前記リップ部よりも摩擦係数が小さい第2被覆部が形成され、
前記第1被覆部は前記第2被覆部よりも硬くなるように形成されていることを特徴とするガラスランチャンネル。
【請求項2】
前記第1被覆部のJISK7215に規定されるデュロメータ硬さ(タイプD)は、HDD40以上60以下であり、
前記第2被覆部のJISK7215に規定されるデュロメータ硬さ(タイプA)は、HDA80以上95以下であることを特徴とする請求項1に記載のガラスランチャンネル。
【請求項3】
前記第1被覆部と前記第2被覆部は互いに接するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載のガラスランチャンネル。
【請求項4】
前記第2被覆部の厚さは前記第1被覆部の厚さよりも薄いことを特徴とする請求項1に記載のガラスランチャンネル。
【請求項5】
前記第1被覆部の厚さは、0.1mm以上0.4mm以下であり、
前記第2被覆部の厚さは、0.01mm以上0.1mm未満であることを特徴とする請求項4に記載のガラスランチャンネル。
【請求項6】
車両のドアパネルの窓枠の上辺に沿って取り付けられる上辺部ガラスランチャンネルと、前記窓枠の縦辺部に沿って取り付けられる縦辺部ガラスランチャンネルとを有するガラスランチャンネル組立体であって、前記上辺部ガラスランチャンネル及び前記縦辺部ガラスランチャンネルの少なくともいずれか一方は、請求項1乃至5のいずれかに記載のガラスランチャンネルで構成されていることを特徴とするガラスランチャンネル組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のドアパネルの窓枠に沿って取り付けられるガラスランチャンネル及びガラスランチャンネル組立体に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
ガラスランチャンネルは、車両のドアパネルの窓枠のチャンネル(溝)に取り付けられ、窓板(窓ガラス)が昇降する際に窓板の周縁をガイドして、窓板を閉じたときには窓板とドアパネルとの間をシールする役割を果たす。例えば、特許文献1(特開2000-185558号公報)に記載されたガラスランチャンネルは、弾性ポリマー材料製の断面コ字状の本体部の車内側の側壁部及び車外側の側壁部のそれぞれの端末から前記本体部の内側に向けて突出する弾性変形可能な車内側のリップ部及び車外側のリップ部が形成され、各リップ部のうちの窓板と摺動する表面には、滑りを良くするために滑材入り軟質合成樹脂被覆層が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-185558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、窓板の昇降機構をアーム式からワイヤー式に変更する等の理由によりガラスランチャンネルのリップ部は、窓板に対して摺動しやすいことが望まれており、上記特許文献1のように、リップ部の表面に摺動性の良い被覆層を形成することがある。
【0005】
しかし、摺動性の良い被覆層はリップ部よりも硬いことが多く、リップ部の根元まで被覆層を形成すると、リップ部の根元側の屈曲変形に対する反力が増大して窓板が昇降しづらくなってしまう。リップ部の根元に被覆層を形成しなければ、リップ部の根元側の屈曲変形に対する反力が増大することを防止できるが、ガラスランチャンネルを窓枠に取り付けるときに、作業者がリップ部の根元側を長手方向に沿って滑らせるように押し込むため、ガラスランチャンネルの取付作業性を向上するにはリップ部の根元でも摺動性が必要となる。
【0006】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、窓板に対するリップ部の摺動性や取付作業時に作業者が押し込む部分であるリップ部の根元側の摺動性を確保しながらリップ部の根元側の屈曲変形に対する反力の増大を抑制できるガラスランチャンネル及びガラスランチャンネル組立体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、車両のドアパネルの窓枠に沿って取り付けられ、窓板の移動を案内するように長尺に形成された弾性ポリマー材料製のガラスランチャンネルであって、前記ガラスランチャンネルは、車内側の側壁部及び車外側の側壁部と、これら両側壁部を一体に連結する底壁部とからなる断面コ字状の本体部と、それぞれの側壁部の端末から前記本体部の内側に向けて突出する弾性変形可能な車内側のリップ部及び車外側のリップ部と、それぞれの側壁部の端末から前記本体部の外側に向けて突出する弾性変形可能な車内側の意匠部及び車外側の意匠部とを有し、前記車内側及び前記車外側の少なくともいずれか一方のリップ部は、前記窓板の昇降時に前記リップ部が窓板と摺動して弾性変形するときに屈曲する屈曲点が前記リップ部の根元側に位置するように形成され、前記リップ部の前記窓板と摺動する表面のうち、前記屈曲点よりも前記リップ部の先端側には、前記リップ部よりも摩擦係数が小さい第1被覆部が形成され、前記リップ部の前記屈曲点又は前記屈曲点よりも前記リップ部の先端側の位置から前記意匠部の表面に亘って、前記リップ部よりも摩擦係数が小さい第2被覆部が形成され、前記第1被覆部は前記第2被覆部よりも硬くなるように形成されていることを特徴とするものである。
【0008】
この構成では、窓板と摺動するリップ部の表面には、リップ部よりも摩擦係数が小さい第1被覆部が形成されているため、窓板の昇降動作に必要な摺動性を確保できる。しかも、リップ部の表面に形成された第1被覆部は意匠部の表面に形成された第2被覆部よりも硬いため更に摺動性が高く、窓板に対する摺動性を更に向上できる。更に、リップ部の屈曲点又は屈曲点よりもリップ部の先端側の位置から意匠部の表面に亘って、リップ部よりも摩擦係数が小さい第2被覆部が形成されているため、作業者がガラスランチャンネルを窓枠に押し込んで取り付けるときに手を長手方向に沿って滑らせるように押し込む部分であるリップ部の根元側から意匠部の表面に亘る部分を第2被覆部よって滑りやすくすることができ、ガラスランチャンネルの取付作業性を向上できる。しかも、第2被覆部よりも硬い第1被覆部はリップ部の根元側の屈曲点よりもリップ部の先端側に形成され、リップ部の根元側の屈曲点は硬い第1被覆部で覆われていないため、リップ部の根元側の屈曲変形が妨げられず、リップ部の根元側の屈曲変形に対する反力の増大を抑制することができる。
【0009】
請求項2のように、リップ部の被覆部である第1被覆部のJISK7215に規定されるデュロメータ硬さ(タイプD)は、HDD40以上60以下にすることが望ましい。この範囲内の第1被覆部の硬さであれば、窓板に対するリップ部の所定の摺動性を確保しながらリップ部の柔軟性の低下を防止できる。
【0010】
また、意匠部の被覆部である第2被覆部のJISK7215に規定されるデュロメータ硬さ(タイプA)は、HDA80以上95以下にすることが望ましい。この範囲内の第2被覆部の硬さであれば、ガラスランチャンネルの取付作業時に意匠部の必要な摺動性を確保しながらリップ部が屈曲点で屈曲しにくくなることを抑制できる。
【0011】
請求項3のように、第1被覆部と第2被覆部は互いに接するように形成されていることが望ましい。これにより、リップ部から意匠部に亘って第1被覆部と第2被覆部が隙間なく連続して形成されるため、リップ部から意匠部に亘って連続して摺動性を確保することができる。
【0012】
請求項4のように、第2被覆部の厚さは第1被覆部の厚さよりも薄くすることが望ましい。これにより、第2被覆部が形成された意匠部の曲げ変形を妨げることがないだけではなく、リップ部の屈曲点が第2被覆部で覆われていたとしてもリップ部の根元側の屈曲変形を妨げることがない。
【0013】
請求項5のように、第1被覆部の厚さは、0.1mm以上0.4mm以下にすることが望ましい。第1被覆部の厚さを0.1mm以上にすることで、窓板の昇降動作の繰り返しにより第1被覆部が磨耗したとしてもリップ部の表面に第1被覆部を残しておくことができ、常に窓板に対してリップ部を摺動しやすくしておくことができる。また、第1被覆部の厚さを0.4mm以下にすることで、第1被覆部によりリップ部自体が弾性変形しにくくなることを防止できる。
【0014】
また、第2被覆部の厚さは、0.01mm以上0.1mm未満にすることが望ましい。ガラスランチャンネルを車両のドアパネルの窓枠に取り付ける際に作業者が手をガラスランチャンネルのリップ部の根元側やそれに隣接する意匠部の表面を長手方向に沿って滑らせるように押し込むときに、リップ部の根元側やそれに隣接する意匠部の表面が滑りやすく作業性が良い。また、第2被覆部の厚さを0.1mm未満とすることで、リップ部の屈曲点が第2被覆部で覆われていたとしてもリップ部が屈曲点で屈曲変形しにくくなることを防止できる。
【0015】
請求項6のように、車両のドアパネルの窓枠の上辺に沿って取り付けられる上辺部ガラスランチャンネルと、前記窓枠の縦辺部に沿って取り付けられる縦辺部ガラスランチャンネルとを有するガラスランチャンネル組立体に前記構成のガラスランチャンネルを適用する場合は、前記上辺部ガラスランチャンネル及び前記縦辺部ガラスランチャンネルの両方に前記構成のガラスランチャンネルを適用しても良いし、前記上辺部ガラスランチャンネルのみ又は前記縦辺部ガラスランチャンネルのみに前記構成のガラスランチャンネルを適用しても良い。尚、縦辺部ガラスランチャンネルに前記構成のガラスランチャンネルを適用すれば、窓板が昇降する際に摺動する頻度が高いリップ部に第1被覆部が形成されるため、窓板の昇降時の摺動性が高く、本発明を適用する効果が大きい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は車両のフロント側のドアの側面図である。
図2図2図1のII-II線に沿って示す窓板が開いた状態のガラスランチャンネルの断面図である。
図3図3図1のII-II線に沿って示す窓板が閉じた状態のガラスランチャンネルの断面図である。
図4図4は車内側リップ部の根元側周辺の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態を車両のフロント側のドアに適用して具体化した一実施例を説明する。
【0018】
まず、図1に基づいてフロント側のドア11の概略構成を説明する。
ドア11の上半部分には、窓枠12が一体的に設けられ、この窓枠12には、弾性ポリマー材料製の長尺なガラスランチャンネル組立体13が窓枠12に沿って窓板14(窓ガラス)の昇降移動を案内するように取り付けられている。
【0019】
このガラスランチャンネル組立体13は、主に窓枠12の上辺部12aに装着される上辺部ガラスランチャンネル15と、窓枠12の前側の縦辺部12bに装着される前側縦辺部ガラスランチャンネル16と、窓枠12の後側の縦辺部12cに装着される後側縦辺部ガラスランチャンネル17と、上辺部ガラスランチャンネル15と前側縦辺部ガラスランチャンネル16とを接続して窓枠12の前側コーナー部12dに装着される前側型成形コーナー部18と、上辺部ガラスランチャンネル15と後側縦辺部ガラスランチャンネル17とを接続して窓枠12の後側コーナー部12eに装着される後側型成形コーナー部19とから構成されている。
【0020】
このガラスランチャンネル組立体13の上辺部及び前後の縦辺部の各ガラスランチャンネル15~17は、それぞれ、弾性ポリマー材料により一定横断面形状に押出成形されて形成されている。前後の型成形コーナー部18,19は、それぞれ、隣接するガラスランチャンネルの端末同士間に、弾性ポリマー材料を用いた射出成形(インサート射出成形)を行うことにより端末同士を接続するように形成されている。
【0021】
このガラスランチャンネル組立体13を形成する弾性ポリマー材料としては、加硫済みの弾性ゴム[典型的にはエチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)を主体とする材料]やオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)等がある。また、前後の型成形コーナー部18,19を形成する弾性ポリマー材料は、射出成形された際に隣接するガラスランチャンネルの端末と接続されるように、隣接するガラスランチャンネルと相溶性を有して化学的に接合するものであることが好ましい。
【0022】
次に、後側縦辺部ガラスランチャンネル17の構成を図2乃至図4を用いて説明する。尚、前側縦辺部ガラスランチャンネル16も後側縦辺部ガラスランチャンネル17と同じ構成であり、前後の向きが反対になるだけであるので、前側縦辺部ガラスランチャンネル16の各部分についての説明は省略する。
【0023】
図2に示すように、縦辺部ガラスランチャンネル16,17は、車内側の側壁部21及び車外側の側壁部22と、これら両側壁部21,22を一体に連結する底壁部23とからなる断面コ字状の本体部24と、それぞれの側壁部21,22の端末から本体部24の内側に向けて突出する弾性変形可能な車内側のリップ部25及び車外側のリップ部26と、それぞれの側壁部21,22の端末から本体部24の外側に向けて突出する弾性変形可能な車内側の意匠部27及び車外側の意匠部28とを有する。
【0024】
車内側及び車外側のリップ部25,26は、窓板14の昇降時にリップ部25,26が窓板14と摺動して弾性変形するときに屈曲する屈曲点29がリップ部25,26の根元側に位置するように形成されている。本実施例では、リップ部25,26の厚さが根元付近で他の部分よりも薄くなっており、その根元付近の最も薄い部分の中心が屈曲点29となっている。図3に示すように、窓板14が上昇して後側縦辺部ガラスランチャンネル17の本体部24内に窓板14が侵入したときに、リップ部25,26は屈曲点29で屈曲して弾性変形する。
【0025】
リップ部25,26の窓板14と摺動する表面のうち、屈曲点29よりもリップ部25,26の先端側には、リップ部25,26よりも摩擦係数が小さい第1被覆部31が形成されている。
【0026】
更に、リップ部25,26の屈曲点29又は該屈曲点29よりもリップ部25,26の先端側の位置から意匠部27,28の表面に亘って、リップ部25,26よりも摩擦係数が小さい第2被覆部32が形成されている。
【0027】
本実施例では、ASTM D-1894の試験方法により測定した第1被覆部31の動摩擦係数はμ1=0.2以下であり、第2被覆部32の動摩擦係数はμ2=0.4以下である。
【0028】
リップ部25,26の被覆部である第1被覆部31は、意匠部27,28の被覆部である第2被覆部32よりも硬くなるように形成されている。
【0029】
具体的には、リップ部25,26の被覆部である第1被覆部31のJISK7215に規定されるデュロメータ硬さ(タイプD)は、HDD40以上60以下にしている。
【0030】
意匠部27,28の被覆部である第2被覆部32のJISK7215に規定されるデュロメータ硬さ(タイプA)は、HDA80以上95以下にしている。
【0031】
更に、意匠部27,28の被覆部である第2被覆部32の厚さはリップ部25,26の被覆部である第1被覆部の厚さよりも薄くしている。例えば、第1被覆部31の厚さは、0.1mm以上0.4mm以下にし、第2被覆部32の厚さは、0.01mm以上0.1mm未満にしている。
【0032】
第1被覆部31と第2被覆部32は、両者間に隙間なく互いに接するように形成されている。図4に示すように、第1被覆部31と第2被覆部32との境界は、屈曲点29からリップ部25,26側に所定距離A(例えば0.5mm)離れた位置に設定されている。このようにすれば、製造上のばらつきにより第1被覆部31と第2被覆部32との境界の位置がずれたとしても、屈曲点29が第1被覆部31で覆われることがなく、リップ部25,26の弾性変形を妨げることがない。
【0033】
縦辺部ガラスランチャンネル16,17を断面コ字状の窓枠12に取り付けるときに、作業者は軍手をはめた手で縦辺部ガラスランチャンネル16,17のリップ部25,26の根元側やそれに隣接する意匠部27,28の表面を長手方向に滑らせるようにして窓枠12の溝内に押し込む。従って、作業者が縦辺部ガラスランチャンネル16,17を窓枠12に押し込んで取り付けるときに作業者が押し込む部分であるリップ部25,26の根元側から意匠部27,28の表面に亘る部分を第2被覆部32により滑りやすくすれば良い。この場合、意匠部27,28の表面全体に第2被覆部32を形成しても良いが、意匠部27,28の表面であっても取付作業時に作業者が手を滑らせない意匠部27,28の先端側には第2被覆部32を形成しなくても良い。
【0034】
本実施例では、図4に示すように、車内側の意匠部27の表面については、取付作業時に作業者が手を滑らせる部分(第1被覆部31の境界から意匠部27,28側に所定距離B離れた位置までの領域)に第2被覆部32を形成している。一方、図2及び図3に示すように、車外側の意匠部28の表面については、取付作業時に作業者が車外側から手を滑らせる部分が車内側の意匠部27よりも多くなることを考慮して、意匠部28の先端側まで第2被覆部32を形成している。
【0035】
上辺部ガラスランチャンネル15も縦辺部ガラスランチャンネル16,17と同じ構成としても良いし、異なる構成としても良い。上辺部ガラスランチャンネル15は、縦辺部ガラスランチャンネル16,17と比較して窓板14が昇降する際に窓板14にリップ部が摺動する頻度が少ないため、必ずしも縦辺部ガラスランチャンネル16,17と同じ構成にしなくても良いが、上辺部ガラスランチャンネル15のリップ部のうち、窓板14と摺動する表面や、意匠部の表面のうち、少なくとも取付作業時に作業者が手を滑らせる部分には滑りを良くするために、リップ部よりも摩擦係数が小さい被覆部を形成することが望ましい。
【0036】
以上説明した本実施例によれば、窓板14と摺動するリップ部25,26の表面には、リップ部25,26よりも摩擦係数が小さい第1被覆部31が形成されているため、窓板14の昇降動作に必要な摺動性を確保できる。しかも、リップ部25,26の表面に形成された第1被覆部31は意匠部27,28の表面に形成された第2被覆部32よりも硬いため更に摺動性が高く、窓板14に対する摺動性を更に向上できる。
【0037】
更に、リップ部25,26の屈曲点29又は屈曲点29よりもリップ部25,26の先端側の位置から意匠部27,28の表面に亘って、リップ部25,26よりも摩擦係数が小さい第2被覆部32が形成されているため、作業者が縦辺部ガラスランチャンネル16,17を窓枠12に取り付けるときに作業者が手で長手方向に沿って滑らせるように押し込む部分であるリップ部25,26の根元側から意匠部27,28の表面に亘る部分を滑りやすくすることができ、縦辺部ガラスランチャンネル16,17の取付作業性を向上できる。
【0038】
しかも、第2被覆部32よりも硬い第1被覆部31はリップ部25,26の根元側の屈曲点29よりもリップ部25,26の先端側に形成され、リップ部25,26の根元側の屈曲点29は硬い第1被覆部31で覆われていないため、リップ部25,26の根元側の屈曲変形が妨げられず、リップ部25,26の根元側の屈曲変形に対する反力の増大を抑制することができる。
【0039】
更に、本実施例では、リップ部25,26の被覆部である第1被覆部31のJISK7215に規定されるデュロメータ硬さ(タイプD)はHDD40以上にしているため、窓板14に対して第1被覆部31により所定の摺動性を得ることができる。また、第1被覆部31のデュロメータ硬さをHDD60以下にしているため、第1被覆部31によるリップ部25,26の柔軟性の低下を防止できる。
【0040】
また、意匠部27,28の被覆部である第2被覆部32のJISK7215に規定されるデュロメータ硬さ(タイプA)はHDA80以上にしているため、縦辺部ガラスランチャンネル16,17の取付作業時に意匠部27,28の必要な摺動性を確保できる。また、第2被覆部32のデュロメータ硬さをHDA95以下にしているため、リップ部25,26の根元側の屈曲点29が第2被覆部32で覆われていたとしても、第2被覆部32によりリップ部25,26が屈曲点29で屈曲変形しにくくなることを抑制できる。
【0041】
また、本実施例では、第1被覆部31と第2被覆部32が互いに接するように形成され、リップ部25,26から意匠部27,28に亘って第1被覆部31と第2被覆部32が隙間なく連続して形成されているため、リップ部25,26から意匠部27,28に亘って連続して摺動性を確保できる利点がある。但し、本発明は、第1被覆部31と第2被覆部32とが接していなくて両者間に隙間がある構成としても良く、この場合でも本発明の所期の目的を達成できる。
【0042】
しかも、第2被覆部32の厚さを第1被覆部31の厚さよりも薄くしているため、第2被覆部32が形成された意匠部27,28の曲げ変形を妨げることがないだけではなく、リップ部25,26の屈曲点29が第2被覆部32で覆われていたとしてもリップ部25,26の根元側の屈曲変形を妨げることがない。
【0043】
本実施例では、リップ部25,26の被覆部である第1被覆部31の厚さを0.1mm以上にしているため、窓板14の昇降動作の繰り返しにより第1被覆部31が磨耗したとしても、リップ部25,26の表面に第1被覆部31を残しておくことができ、常に窓板14に対してリップ部25,26を摺動しやすくしておくことができる。また、第1被覆部31の厚さを0.4mm以下にしているため、第1被覆部31によりリップ部自体が弾性変形しにくくなることを防止できる。
【0044】
また、意匠部27,28の被覆部である第2被覆部32の厚さを0.01mm以上にしているため、縦辺部ガラスランチャンネル16,17の取付作業時に意匠部27,28の必要な摺動性を確保できる。また、第2被覆部32の厚さを0.1mm未満としているため、リップ部25,26の屈曲点29が第2被覆部32で覆われていたとしてもリップ部25,26が屈曲点29で屈曲しにくくなることを防止できる。
【0045】
尚、本発明は上記実施例の構成に限定されず、例えば、リップ部25,26や意匠部27,28の断面形状を変更したり、本体部24の断面形状を変更したり、車内側のリップ部25(意匠部27)と車外側のリップ部26(意匠部28)のいずれか一方には第1被覆部31(第2被覆部32)を形成しない構成としても良い。
【0046】
その他、本発明は、フロントドアのガラスランチャンネルに限定されず、リアドア等の他のドアのガラスランチャンネルに適用して実施しても良い等、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。
【符号の説明】
【0047】
11…ドア、12…窓枠、13…ガラスランチャンネル組立体、14…窓板、15…上辺部ガラスランチャンネル、16…前側縦辺部ガラスランチャンネル、17…後側縦辺部ガラスランチャンネル、21…車内側の側壁部、22…車外側の側壁部、23…底壁部、24…本体部、25…車内側のリップ部、26…車外側のリップ部、27…車内側の意匠部、28…車外側の意匠部、29…屈曲点、31…第1被覆部、32…第2被覆部
図1
図2
図3
図4