(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179322
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】電子装置
(51)【国際特許分類】
H04N 1/04 20060101AFI20231212BHJP
H04N 1/10 20060101ALI20231212BHJP
G03G 21/16 20060101ALI20231212BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20231212BHJP
G03B 27/50 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
H04N1/04 105
H04N1/10
G03G21/16 152
G03G15/00 680
G03B27/50 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092592
(22)【出願日】2022-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003096
【氏名又は名称】弁理士法人第一テクニカル国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近本 忠信
(72)【発明者】
【氏名】大濱 貴志
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 毅
(72)【発明者】
【氏名】塩見 大史
(72)【発明者】
【氏名】星野 元季
【テーマコード(参考)】
2H171
5C072
【Fターム(参考)】
2H171FA05
2H171FA21
2H171GA09
2H171JA13
2H171JA15
2H171MA03
2H171MA11
2H171SA11
2H171SA18
2H171SA19
2H171SA22
2H171SA26
2H171WA13
5C072AA01
5C072BA13
5C072DA25
5C072EA07
5C072LA02
5C072MA01
5C072MA04
(57)【要約】
【課題】フレキシブルフラットケーブルの垂れ下がりによる筐体の底面や他の部材との接触を抑制できる電子装置を提供する。
【解決手段】筐体1と、筐体1の内部を前後方向に移動する読取ユニット8と、筐体1の側壁1cにより保持される被保持部2aと、読取ユニット8に対し電気的に接続される接続部2bと、を備えたフレキシブルフラットケーブル2と、を備え、読取ユニット8は、フレキシブルフラットケーブル2が固定される後側面8aと、前後方向において後側面8aと反対側に位置する前側面8bと、を備え、後側面8aは、底面1aから距離H1に位置する下側部位における前側面8bとの幅W1が、底面1aから距離H1より大きな距離H2に位置する上側部位における前側面8bとの幅W2よりも離れており、フレキシブルフラットケーブル2は、その幅方向が、後側面8aの上側部位と下側部位とを結ぶ略上下方向に沿って固定されている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面を備えた筐体と、
前記筐体の内部を前記底面に沿った第1方向に移動する移動体と、
前記筐体の側壁の保持部により保持される被保持部と、前記移動体に対し電気的に接続される接続部と、を備えたフレキシブルフラットケーブルであって、前記フレキシブルフラットケーブルの幅方向が前記筐体の前記底面に対して交差する第2方向となるように配置される長尺矩形状のフレキシブルフラットケーブルと、
を備え、
前記移動体は、
前記接続部により接続された前記フレキシブルフラットケーブルが固定される、前記第2方向に立設した第1側面と、
当該移動体のうち前記第1方向に沿って前記第1側面と反対側に位置する、前記第2方向に立設した第2側面と、
を備え、
前記第1側面は、
前記底面から第1距離に位置する下側部位における前記第2側面との副走査方向距離が、前記底面から前記第1距離より大きな第2距離に位置する上側部位における前記第2側面との副走査方向距離よりも離れており、
前記フレキシブルフラットケーブルは、
その幅方向が、前記第1側面の前記上側部位と前記下側部位とを結ぶ略上下方向に沿って固定されている、電子装置。
【請求項2】
前記第1側面は、
前記上側部位から前記下側部位まで略上下方向に沿って連続して傾斜している、請求項1記載の電子装置。
【請求項3】
前記移動体の上部に位置し前記筐体により支持される水平面をさらに備え、
前記筐体は、
前記保持部が設けられた側面に、前記フレキシブルフラットケーブルの上側への移動を規制する規制部を有する、請求項1記載の電子装置。
【請求項4】
前記規制部は、
前記保持部が設けられた前記側面から突出する突出方向に配置され、当該突出方向において前記底面からの距離が大きくなる漸増部を有する、請求項3記載の電子装置。
【請求項5】
前記規制部は、
前記保持部が設けられた前記側面の上部に前記副走査方向に沿って連続的に設けられ、
前記保持部から第3距離に位置する第1部位における前記底面からの上下方向距離が、前記保持部から前記第3距離より大きな第4距離に位置する第2部位における前記底面からの上下方向距離よりも、近くなるように構成されている、請求項3又は請求項4記載の電子装置。
【請求項6】
前記水平面としてガラス面を有し、前記移動体に読取センサが備えられる読取装置である、
請求項3又は請求項4記載の電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体に接続されるフレキシブルフラットケーブルを備えた電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載のように、画像読取装置において、移動する画像読取ユニットの副走査方向の端面に凸設されるケーブル保持部にてフレキシブルフラットケーブルの一端が保持され、フレキシブルフラットケーブルの他端は筐体の側壁に固定される構成が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
画像読取ユニットが副走査方向に移動する際に、筐体の側壁に固定されたケーブル他端から画像読取ユニットのケーブル保持部までの延設区間の張力が小さくなり、フレキシブルフラットケーブルの湾曲した部分が自重で垂れ下がって筐体の底面や他の部材と接触するおそれがある。特許文献1においては、ケーブル保持部が、ケーブル下端部の保持位置から筐体側壁までの距離を、ケーブル上端部の保持位置から筐体までの距離よりも長くなるように、フレキシブルフラットケーブルを傾斜して保持することで、上記垂れ下がりが抑制される。
【0005】
しかしながら、筐体内部や移動体側のレイアウト上の制約等により上記構成が実現困難な場合もあるため、上記特許文献1とは異なる別の手法による、フレキシブルフラットケーブルの垂れ下がりによる筐体の底面や他の部材との接触を抑制することが望まれていた。
【0006】
本発明の目的は、移動体のうちフレキシブルフラットケーブルが固定される側面自体の形状の工夫によって、フレキシブルフラットケーブルの垂れ下がりによる筐体の底面や他の部材との接触を抑制できる、電子装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本願発明の電子装置は、底面を備えた筐体と、前記筐体の内部を前記底面に沿った第1方向に移動する移動体と、前記筐体の側壁の保持部により保持される被保持部と、前記移動体に対し電気的に接続される接続部と、を備えたフレキシブルフラットケーブルであって、前記フレキシブルフラットケーブルの幅方向が前記筐体の前記底面に対して交差する第2方向となるように配置される長尺矩形状のフレキシブルフラットケーブルと、を備え、前記移動体は、前記接続部により接続された前記フレキシブルフラットケーブルが固定される、前記第2方向に立設した第1側面と、当該移動体のうち前記第1方向に沿って前記第1側面と反対側に位置する、前記第2方向に立設した第2側面と、を備え、前記第1側面は、前記底面から第1距離に位置する下側部位における前記第2側面との副走査方向距離が、前記底面から前記第1距離より大きな第2距離に位置する上側部位における前記第2側面との副走査方向距離よりも離れており、前記フレキシブルフラットケーブルは、その幅方向が、前記第1側面の前記上側部位と前記下側部位とを結ぶ略上下方向に沿って固定されている。
【0008】
本願発明においては、移動体のうちフレキシブルフラットケーブルが固定される第1側面は、上側部位では第2側面との距離が小さくかつ下側部位では第2側面との距離が大きくなるような形状にて構成されている。フレキシブルフラットケーブルの幅方向は、上記第1側面の略上下方向に沿って固定されている。そのため、接続部から被保持部までの延設区間においてケーブルを持ち上げる向きの力を発生させ、自重によりフレキシブルフラットケーブルが垂れ下がることを抑制できる。その結果、フレキシブルフラットケーブルが筐体の底面と接触する恐れを低減することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、フレキシブルフラットケーブルの垂れ下がりによる筐体の底面や他の部材との接触を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る複合機の全体構成の一例を表す模式図である。
【
図2】スキャンユニットの内部構造の一例を表す側断面図、及び、回動カバーを開いた状態でスキャンユニットを上方から見た平面図である。
【
図3】読取ユニットが動作開始位置に位置する状態における読取ユニットとフレキシブルフラットケーブルの構成の一例を表す、右斜め上方向から見た斜視図、及び、左斜め上方向から見た斜視図である。
【
図4】読取ユニットが動作終了位置に位置する状態における読取ユニットとフレキシブルフラットケーブルの構成の一例を表す、右斜め上方向から見た斜視図、及び、左斜め上方向から見た斜視図である。
【
図5】
図3のV-V断面による断面構成の一例を表す断面図である。
【
図7】フレキシブルフラットケーブルの上側への移動を規制する規制部を設けた変形例において、読取ユニットが動作開始位置に位置する状態における読取ユニットとフレキシブルフラットケーブルの構成の一例を表す左斜め上方向から見た斜視図、及び、読取ユニットが動作終了位置に位置する状態における読取ユニットとフレキシブルフラットケーブルの構成の一例を表す左斜め上方向から見た斜視図である。
【
図8】
図7(b)のVIII-VIII断面による規制部の左右方向の断面構造の一例を表す断面図である。
【
図9】
図7(a)のIX-IX断面による規制部の前後方向の断面構造の一例を表す断面図である。
【
図10】規制部に傾斜を設けない変形例において、
図7(b)のVIII-VIII断面に相当する規制部の左右方向の断面構造の一例を表す断面図である。
【
図11】規制部に傾斜を設けない変形例において、
図7(a)のIX-IX断面に相当する規制部の前後方向の断面構造の一例を表す断面図である。
【
図12】読取ユニットの側面を段付構造とする変形例において、
図5の領域Aに相当する領域を拡大した部分拡大図である。
【
図13】規制部を断続的に設ける変形例において、読取ユニットが動作開始位置に位置する状態における読取ユニットとフレキシブルフラットケーブルの構成の一例を表す左斜め上方向から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。
【0012】
<複合機の全体構成>
実施形態に係る複合機100の全体構成を
図1に示す。
図1において、複合機100は、装置本体102を備えている。装置本体102は、供給ユニット103と、搬送ユニット104と、印刷ユニット105と、排出ユニット108と、スキャンユニット110と、を備えている。本実施形態では、説明の便宜上、排出ユニット108のある側を複合機100の前側、搬送ユニット104のある側を複合機100の後側、供給ユニット103のある側を複合機100の下側、スキャンユニット110のある側を複合機100の上側とする。
【0013】
<供給ユニット>
供給ユニット103は、装置本体102の下部に着脱可能に装着される複数の給紙トレイ130を備えている。給紙トレイ130内には、印刷対象となる記録用紙Sが収容される。記録用紙Sとして、例えばA4サイズの用紙、若しくは、A3サイズの用紙を用いることができる。給紙トレイ130としては、A4サイズに対応した種類と、A3サイズに対応した種類と、を含む複数種類が用いられる。各種類の給紙トレイ130が装置本体102の下部に着脱可能である。
【0014】
装置本体102の下部には、各給紙トレイ130に対応して、給紙ローラ132が設けられている。給紙ローラ132は、給紙トレイ130内の後側で記録用紙Sの上面に接触するように設けられる。複合機100の内部においては、給紙ローラ132から搬送ユニット104及び印刷ユニット105を介して排出ユニット108へ至る搬送経路Lが形成されている。給紙ローラ132は、給紙トレイ130内の記録用紙Sを1枚ずつ取り出し、搬送経路Lに沿って搬送ユニット104及び印刷ユニット105へ向けて搬送する。
【0015】
<搬送ユニット>
搬送ユニット104は、供給ユニット103から供給される記録用紙Sを保持して印刷ユニット105に搬送する。搬送ユニット104は、図示しないモータによって駆動される搬送ローラ133,134を備えている。給紙ローラ132により搬送された記録用紙Sは、搬送ローラ133,134により搬送経路Lに沿って印刷ユニット105へ向けて搬送される。
【0016】
<印刷ユニット>
印刷ユニット105は、搬送ユニット104により搬送された記録用紙Sに対し、周知の電子写真方式、若しくはインクジェット方式、若しくは熱転写方式、等によって画像を形成して印刷を行う。印刷ユニット105から搬送された記録用紙Sは、搬送ローラ137により搬送経路Lに沿って排出ローラ181へ向けて搬送される。
【0017】
<排出ユニット>
排出ユニット108は、印刷ユニット105から搬送された記録用紙Sを、複合機100の外部へ排出する。排出ユニット108は、排出ローラ181と、排出口183と、排出トレイ184とを備えている。排出ローラ181は、印刷ユニット105から搬送された記録用紙Sを排出口183を介して排出トレイ184に排出する。
【0018】
<スキャンユニット>
スキャンユニット110は、装置本体102の上方に設けられたフラットベッド111と、フラットベッド111の上方に回動可能に設けられた回動カバー4と、を備えている。スキャンユニット110が電子装置の一例であり、読取装置の一例でもある。
【0019】
スキャンユニット110の詳細構成の一例を
図2に示す。
図2に示すように、フラットベッド111は、筐体1と、ヒンジ3と、回動カバー4と、ガラス板7と、読取ユニット8と、ガイドレール9と、を備えている。
【0020】
筐体1は例えば中空の箱体形状の構造物であり、底面1a及び上面1bを備えている。上面1bには矩形の開口が形成されており、当該開口に矩形のガラス板7が設けられている。ガラス板7は読取ユニット8の上部に位置し、筐体1により支持される。ガラス板7の下側のガラス面7aが水平面の一例である。
【0021】
ガラス板7の下には、ガイドレール9に沿って移動可能な読取ユニット8が設けられている。読取ユニット8は、ガラス板7の左右方向の全体にわたって延設されており、例えばCIS(Contact Image Sensor)等で構成された読取センサを備えている。読取ユニット8は、ガラス板7の下方で筐体1の内部を底面1aに沿った前後方向に移動することにより、原稿Pの下面全体を光学的にスキャンする。読取ユニット8が一括してスキャンできる1ライン分の方向、すなわち左右方向が主走査方向である。読取ユニット8が移動する前後方向が副走査方向である。読取ユニット8が移動体の一例であり、前後方向及び副走査方向が第1方向の一例である。
【0022】
回動カバー4は、フラットベッド111の上面の前側に配置されたヒンジ3を介して回動可能に設けられている。回動カバー4がヒンジ3を中心に回動することで、スキャンユニット110に対する開閉動作が可能となっている。回動カバー4が開いた状態で原稿Pがガラス板7上に載置され、回動カバー4が閉じた状態で読取ユニット8が原稿Pの下面をスキャンする。
【0023】
<読取ユニットとフレキシブルフラットケーブル>
図3~
図6に、読取ユニット8とフレキシブルフラットケーブルの構成の一例を示す。なお、
図3~
図6では、フラットベッド111の筐体1の内部構成を図示するために、筐体1の上面1b及びガラス板7の図示を省略している。
【0024】
図3(a)及び
図3(b)は、読取ユニット8が動作範囲の最も前側である動作開始位置に位置する状態を示し、
図4(a)及び
図4(b)は、読取ユニット8が動作範囲の最も後側である動作終了位置に位置する状態を示す。読取ユニット8の動作範囲は、予め設定されたスキャン対象である原稿Pの大きさに対応するように設定されている。
図3(a)及び
図3(b)並びに
図4(a)及び
図4(b)に示すように、読取ユニット8と筐体1の間にはフレキシブルフラットケーブル2が設けられている。フレキシブルフラットケーブル2は、伸ばした状態においてケーブルの厚み方向から見た形状が長尺矩形状である、柔軟な素材のケーブルである。フレキシブルフラットケーブル2は、例えば一定間隔に並べられた複数の導体を厚み方向からプラスチックフィルムテープで挟み、テープ接合面を熱溶着または接着剤により熱融着することで形成されている。フレキシブルフラットケーブル2は、読取ユニット8の読取センサと複合機100の制御部(図示省略)とを電気的に接続する。
【0025】
フレキシブルフラットケーブル2は、一方側の端部に被保持部2aを備え、他方側の端部に接続部2bを備えている。被保持部2aは、筐体1の右側の側壁1cに設けられたコネクタ11に接続されることで保持され、制御部に電気的に接続される。コネクタ11が保持部の一例である。接続部2bは、読取ユニット8の後側面8aに設けられたコネクタ8cに接続されることで保持され、読取ユニット8に対し電気的に接続される。被保持部2aは、コネクタ11を介して側壁1cに固定されている。接続部2bは、コネクタ8cを介して読取ユニット8の後側面8aに固定されている。被保持部2aと接続部2bは、略同じ高さ位置となるように配置されている。フレキシブルフラットケーブル2は、幅方向が筐体1の底面1aに対して交差する方向、例えば上下方向となるように配置されている。上下方向が第2方向の一例である。
【0026】
フレキシブルフラットケーブル2は、被保持部2aと接続部2bとの間の延設区間に、延設部2cと、折り返し部2dと、延設部2eと、湾曲部2fと、延設部2gと、を有している。延設部2cは、側壁1cに接触しつつ側壁1cに沿って前後方向に延設されている。延設部2cの長さは、読取ユニット8の前後方向の移動により変動する。
図3(a)及び
図3(b)に示すように、読取ユニット8が動作開始位置に位置する場合には、延設部2cの長さは最も短くなる。
図4(a)及び
図4(b)に示すように、読取ユニット8が動作終了位置に位置する場合には、延設部2cの長さは最も長くなる。延設部2cの前側端部が被保持部2aである。
【0027】
折り返し部2dは、略U字状に湾曲した形状であり、延設部2cと延設部2eとを折り返すように接続する。延設部2eは前後方向に略沿って延設されている。延設部2eの長さは、読取ユニット8の前後方向の移動により変動する。
図3(a)及び
図3(b)に示すように、読取ユニット8が動作開始位置に位置する場合には、延設部2eの長さは最も長くなる。
図4(a)及び
図4(b)に示すように、読取ユニット8が動作終了位置に位置する場合には、延設部2eの長さは最も短くなる。湾曲部2fは、略L字状に湾曲した形状であり、延設部2eと延設部2gとを屈曲するように接続する。延設部2gは、読取ユニット8の後側面8aに接触しつつ後側面8aに沿って左右方向に延設されている。延設部2gの左側端部が接続部2bである。
【0028】
図5に、
図3のV-V断面による断面構成の一例を示し、
図6に、
図5の領域Aを拡大した構成を示す。
図5及び
図6に示すように、読取ユニット8は、後側面8aと、前側面8bと、を備えている。後側面8aは、読取ユニット8の後側において略上下方向に立設した側面であり、接続部2bにより接続されたフレキシブルフラットケーブル2が固定される。前側面8bは、読取ユニット8の前側において上下方向に立設した側面であり、読取ユニット8のうち前後方向において後側面8aと反対側に位置する。後側面8aが第1側面の一例であり、前側面8bが第2側面の一例である。
【0029】
図6に示すように、後側面8aは、筐体1の底面1aから距離H1に位置する下側部位8a1における前側面8bとの前後方向距離W1が、底面1aから距離H1より大きな距離H2に位置する上側部位8a2における前側面8bとの前後方向距離W2よりも離れている。本実施形態では、上記形状の一例として、後側面8aは上側部位8a2から下側部位8a1まで略上下方向に沿って連続して傾斜した平面、すなわち上下方向に対して角度θだけ傾斜した傾斜面として構成されている。なお、傾斜面は平面に限らず、曲面や円弧面等でもよい。フレキシブルフラットケーブル2の接続部2bは、その幅方向が、後側面8aの上側部位8a2と下側部位8a1とを結ぶ略上下方向、すなわち上下方向に対して角度θだけ傾斜した方向に沿って固定されている。これにより、
図5に示すように、フレキシブルフラットケーブル2の延設部2eは、後側に向けて接続部2bの高さ位置から徐々に高くなるように延設され、折り返し部2dにおいて最も高い位置となる。同様に、フレキシブルフラットケーブル2の延設部2cは、後側に向けて被保持部2aの高さ位置から徐々に高くなるように延設され、折り返し部2dにおいて最も高い位置となる。その結果、フレキシブルフラットケーブル2は、接続部2bから被保持部2aまでの延設区間において、接続部2bや被保持部2aと略同じ高さ位置を略水平方向に延設されるのではなく、接続部2bや被保持部2aの高さ位置よりも高い位置に持ち上げられるような上向き傾斜で延設される。前後方向距離W1,W2が副走査方向距離の一例であり、距離H1が第1距離の一例であり、距離H2が第2距離の一例である。
【0030】
角度θは、例えばフレキシブルフラットケーブル2のうち延設部2c部分の最長長さと、筐体1の底面1aからガラス面7aまでの高さ等に基づいて、読取ユニット8が動作開始位置から動作終了位置まで移動する際に折り返し部2dがガラス面7aに接触しないように、適宜の値に設定されている。
【0031】
<実施形態の効果>
本実施形態においては、読取ユニット8のうちフレキシブルフラットケーブル2が固定される後側面8aは、上側部位8a2では前側面8bとの距離が小さくかつ下側部位8a1では前側面8bとの距離が大きくなるような形状にて構成されている。フレキシブルフラットケーブル2の幅方向は、上記後側面8aの略上下方向に沿って固定されている。そのため、接続部2bから被保持部2aまでの延設区間においてケーブルを持ち上げる向きの力を発生させ、自重によりフレキシブルフラットケーブル2が垂れ下がることを抑制できる。その結果、フレキシブルフラットケーブル2が筐体1の底面1aと接触する恐れを低減することができる。また、フレキシブルフラットケーブル2の接続部2bから被保持部2aまでの延設区間を、接続部2bや被保持部2aの高さ位置よりも高い位置に持ち上げるような上向き傾斜で延設することができるので、フレキシブルフラットケーブル2に垂れ下がりが生じたとしても、筐体1の底面1aや他の部材との接触を抑制できる。その結果、摩耗によって生じた異物により読取ユニット8の読取精度が低下することを防止できる。また、フレキシブルフラットケーブル2が底面1a等と接触することによる異音や、動作抵抗の発生等を防止できる。
【0032】
また、本実施形態では特に、後側面8aを下り勾配の斜面として構成し、その斜面に、フレキシブルフラットケーブル2が固定される。本実施形態によれば、フレキシブルフラットケーブル2のうち接続部2bから被保持部2aまでの延設区間を持ち上げる力を確実に生じさせることができ、かつ、後側面8aにおいてケーブルを固定する位置が上下方向に多少ずれたとしても、ケーブルを確実に持ち上げることができる。
【0033】
<変形例>
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。以下、そのような変形例を、順を追って説明する。
【0034】
(1)フレキシブルフラットケーブルの上側への移動を規制する規制部を設ける場合
読取ユニット8の後側面8aを傾斜面とすることで、フレキシブルフラットケーブル2の接続部2bから被保持部2aまでの延設区間を持ち上げるような上向き傾斜で延設することができる。この際、フレキシブルフラットケーブル2の上記延設区間が持ち上がりすぎると、上方のガラス面7aに接触するおそれがある。そこで、フレキシブルフラットケーブル2の上側への移動を規制してもよい。
【0035】
図7(a)及び
図7(b)に、本変形例における規制部の構成の一例を示す。
図7(a)は読取ユニット8が動作開始位置に位置する状態を示し、
図7(b)は読取ユニット8が動作終了位置に位置する状態を示す。
図7(a)及び
図7(b)に示すように、本変形例に係る筐体1Aは、コネクタ11が設けられた側壁1cの内側の側面1dに、フレキシブルフラットケーブル2の上側への移動を規制する規制部12を有する。規制部12は、側壁1cの上端部から左側に向けて突出した庇状の部材であり、フレキシブルフラットケーブル2のうち、側壁1cに沿って延設される延設部2cの上側への移動を規制する。
【0036】
図8に、
図7(b)のVIII-VIII断面による規制部12の左右方向の断面構造の一例を示す。
図8に示すように、規制部12は、側壁1cの側面1dの上端部から左側に向けて突出するように設けられ、当該突出方向において底面1aからの距離H3が大きくなる漸増部12aを有する。本実施形態では、上記形状の一例として、漸増部12aは左右方向に沿った水平方向に対して傾斜した平面として構成されている。なお、漸増部12aを傾斜した曲面、円弧面、又は段付構造等としてもよい。
【0037】
図9に、
図7(a)のIX-IX断面による規制部12の前後方向の断面構造の一例を示す。
図9に示すように、規制部12は、コネクタ11が設けられた側壁1cの内側の側面1dの上部に前後方向に沿って連続的に設けられている。規制部12は、コネクタ11から距離D1に位置する第1部位12bにおける底面1aからの上下方向距離H4が、コネクタ11から距離D1より大きな距離D2に位置する第2部位12cにおける底面1aからの上下方向距離H5よりも、近くなるように構成されている。本実施形態では、上記形状の一例として、規制部12の下面は前後方向に沿った水平方向に対して傾斜した平面として構成されている。なお、規制部12の下面を傾斜した曲面、円弧面、又は段付構造等としてもよい。距離D1が第3距離の一例であり、距離D2が第4距離の一例である。
【0038】
以上説明した変形例によれば、筐体1Aの側壁1cの側面1dに設けた規制部12によって、フレキシブルフラットケーブル2の延設部2cの上側への移動が規制される。これにより、仮に規制部12を設けない場合にはフレキシブルフラットケーブル2のうち延設部2c、折り返し部2d、延設部2e、湾曲部2f、延設部2gが上下方向に可動な範囲となるのに対し、規制部12を設けた場合には折り返し部2d、延設部2e、湾曲部2f、延設部2gが上下方向に可動な範囲となり、上下可動範囲を少なくすることができる。その結果、フレキシブルフラットケーブル2とガラス面7aとの接触を抑制できる。
【0039】
また、読取ユニット8が前後方向に移動すると、それに伴ってフレキシブルフラットケーブルの接続部2bから被保持部2aまでの延設区間の湾曲形状も変化する。そのため、フレキシブルフラットケーブル2のうち、規制部12により規制される部分である延設部2cの長さも変化する。言い換えれば、読取ユニット8が前後方向に沿って往復移動すると、それに応じてケーブルが規制部12をかすめるようにしてその規制部12の規制範囲内から出たり戻ったりを繰り返すことになる。本変形例においては、規制部12が漸増部12aを有することにより、フレキシブルフラットケーブル2が規制部12に対し上記のような挙動を行う際、上記規制範囲内への出没をスムーズに行わせることができるため、ケーブルへの負荷を軽減できる。
【0040】
また、前述のように、フレキシブルフラットケーブル2は、接続部2bから被保持部2aまでの延設区間が持ち上げられるような上向き傾斜で延設されることになる。本変形例ではこれに対応し、規制部12において、コネクタ11に近い第1部位12bでの底面1aからの距離H4が、コネクタ11から遠い第2部位12cにおける底面1aからの距離H5よりも小さくなっている。言い換えれば、コネクタ11から遠くなるほど、ケーブルを規制する規制位置が高くなっている。これにより、
図9に示すように、フレキシブルフラットケーブル2のうち、規制部12により規制される部分である延設部2cを規制部12の傾斜に沿って後側に向けて上向き傾斜で延設することができる。そのため、フレキシブルフラットケーブル2が規制部12に対し前述のような挙動を行う際、上記規制範囲内への出没をさらにスムーズに行わせることができる。
【0041】
(2)規制部に傾斜を設けない場合
上記変形例(1)では、規制部12の下面を左右方向及び前後方向に傾斜させた場合について説明したが、規制部12の下面に必ずしも傾斜を設けなくともよい。例えば
図10に示すように、規制部12を突出方向において底面1aからの距離H3が略一定となる形状としてもよい。
図10は前述の
図8に対応している。また
図11に示すように、規制部12は、第1部位12bにおける上下方向距離H4と第2部位12cにおける上下方向距離H5とが略同じとなるように構成されてもよい。
図11は前述の
図9に対応している。なお、左右方向の傾斜及び前後方向の傾斜のうち、両方を設けない構造としてもよいし、いずれか一方のみを設けない構造としてもよい。
【0042】
本変形例によっても、規制部12によりフレキシブルフラットケーブル2の延設部2cの上側への移動を規制できるので、フレキシブルフラットケーブル2とガラス面7aとの接触を抑制できる。
【0043】
(3)読取ユニットの側面を段付構造とする場合
上記実施形態では、読取ユニット8の後側面8aが連続した傾斜面である場合について説明したが、後側面8aの形状は連続した傾斜面に限られない。例えば
図12に示すように、後側面8aを上下方向に階段状に構成された段付構造とすることで、下側部位8a1における前後方向距離W1が上側部位8a2における前後方向距離W2よりも離れている構造を実現してもよい。
図12は前述の
図6に対応している。本変形例によっても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0044】
(4)規制部を断続的に設ける場合
上記変形例(1)では、規制部12が前後方向に沿って連続的に設けられた場合を一例として説明したが、規制部12の形状は上記に限られない。例えば
図13に示すように、例えば複数の規制部12を前後方向に沿って飛び石的に断続的に設けてもよい。
図13は前述の
図7(a)に対応している。本変形例によれば、上記変形例(1)と同様の効果を得ることができると共に、規制部12が少なくなった分だけ筐体1Aの重量を軽減することができる。
【0045】
(5)その他
以上では、本発明を複合機100のスキャンユニット110に適用した場合を一例として説明したが、本発明の適用対象は上記に限られない。例えば、インクジェットプリンタに適用してもよい。この場合、インクジェットプリンタのキャリッジにおいてフレキシブルフラットケーブルが接続される側面を本発明の構造とすればよい。その他、フレキシブルフラットケーブルが移動体に接続される構造を備えたものであれば、本発明は様々な電子機器に対して適用可能である。
【0046】
なお、以上の説明において、「垂直」「平行」「平面」等の記載がある場合には、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「垂直」「平行」「平面」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に垂直」「実質的に平行」「実質的に平面」という意味である。
【0047】
また、以上の説明において、外観上の寸法や大きさが「同一」「等しい」「異なる」等の記載がある場合は、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「同一」「等しい」「異なる」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に同一」「実質的に等しい」「実質的に異なる」という意味である。
【0048】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0049】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0050】
1 筐体
1A 筐体
1a 底面
1c 側壁
1d 側面
2 フレキシブルフラットケーブル
2a 被保持部
2b 接続部
7 ガラス板
7a ガラス面(水平面の一例)
8 読取ユニット(移動体の一例)
8a 後側面(第1側面の一例)
8a1 下側部位
8a2 上側部位
8b 前側面(第2側面の一例)
8c コネクタ
11 コネクタ(保持部の一例)
12 規制部
12a 漸増部
12b 第1部位
12c 第2部位
110 スキャンユニット(電子装置、読取装置の一例)
D1 距離(第3距離の一例)
D2 距離(第4距離の一例)
H1 距離(第1距離の一例)
H2 距離(第2距離の一例)
H3 距離
H4 上下方向距離
H5 上下方向距離
W1 前後方向距離(副走査方向距離の一例)
W2 前後方向距離(副走査方向距離の一例)