(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179323
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/00 20060101AFI20231212BHJP
G06Q 50/06 20120101ALI20231212BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20231212BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
H02J3/00 170
G06Q50/06
H02J3/38 110
H02J13/00 301A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092593
(22)【出願日】2022-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大井 章弘
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
5L049
【Fターム(参考)】
5G064AC09
5G064DA03
5G066AA03
5G066HB06
5L049CC06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】需要家の負荷の有効電力等と、発電設備の有効電力とを精度良く推定する。
【解決手段】電力系統1の所定区間において、負荷を有する需要家Aと、余剰買取契約対象の発電設備を有する需要家Bと、全量買取契約対象の発電設備を有する需要家Cと、のいずれかを複数含む電力系統の状態を推定する情報処理装置2であって、有効電力及び無効電力を計算する第1計算部と、各需要家が需要家A~Cのいずれに該当するかを示す分類情報と、各需要家の電力量計の測定値とに基づいて、各需要家のうちいずれかの有効電力を計算する第2計算部と、需要家A及び需要家Bの有効電力の第1比率と、需要家B及び需要家Cの発電設備の有効電力の第2比率と、発電設備の力率と、有効電力及び無効電力と、各需要家のうちのいずれかの有効電力に基づいて、所定区間の負荷の有効電力及び無効電力と、所定区間の発電設備の有効電力と、を含む状態を推定する第1推定部を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統の所定区間において、負荷を有する第1需要家と、余剰買取契約対象の発電設備を有する第2需要家と、全量買取契約対象の前記発電設備を有する第3需要家と、のいずれかに分類される需要家を複数含む前記電力系統の状態を推定する情報処理装置であって、
前記電力系統の配電線のセンサからの測定値に基づいて、前記所定区間における有効電力及び無効電力を計算する第1計算部と、
前記複数の需要家のそれぞれが前記第1~第3需要家のいずれに該当するかを示す分類情報と、前記複数の需要家の電力量計の測定値と、に基づいて、前記第1~第3需要家のうち少なくともいずれかの有効電力を計算する第2計算部と、
前記第1及び第2需要家のそれぞれの負荷における有効電力の第1比率と、前記第2及び3需要家のそれぞれの前記発電設備における有効電力の第2比率と、前記発電設備の力率と、前記所定区間における有効電力及び無効電力と、前記第1~第3需要家のうち少なくともいずれかの有効電力と、に基づいて、前記所定区間に含まれる負荷の有効電力及び無効電力と、前記所定区間に含まれる前記発電設備の有効電力と、を含む前記状態を推定する第1推定部と、
を備える、情報処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理装置であって、
前記第2計算部は、前記第1~第3需要家のうち少なくともいずれか2つの有効電力を計算し、
前記第1推定部は、前記第1比率と、前記第2比率と、前記力率と、前記所定区間における有効電力及び無効電力と、前記第1~第3需要家のうち少なくともいずれか2つの有効電力に基づいて、前記状態を推定する、
情報処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の情報処理装置であって、
前記第2計算部は、前記第1~第3需要家の有効電力を計算し、
前記第1推定部は、前記第1比率と、前記第2比率と、前記力率と、前記所定区間における有効電力及び無効電力と、前記第1~第3需要家の有効電力に基づいて、前記状態を推定する、
情報処理装置。
【請求項4】
請求項1に記載の情報処理装置であって、
前記第1推定部は、
前記センサからの測定値に基づいて計算された前記所定区間における有効電力、及び前記状態に基づいて計算された前記所定区間における有効電力の第1の差と、
前記センサからの測定値に基づいて計算された前記所定区間における無効電力、及び前記力率と、前記状態とに基づいて計算された前記所定区間における無効電力の第2の差と、
前記電力量計の測定値に基づいて計算された前記第1~第3需要家のうち少なくともいずれかの需要家の有効電力、及び前記第1比率と、前記第2比率と、前記状態とに基づいて計算された前記少なくともいずれかの需要家の有効電力の第3の差とに基づく第1目的関数を設定し、
前記状態を第1決定変数とした際に前記第1目的関数を最小化することにより、前記状態を推定する、
情報処理装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一に記載の情報処理装置であって、
前記第1比率は、前記負荷の有効電力のうち、前記第1需要家の負荷の有効電力の割合を示す第1の値と、前記第2需要家の負荷の有効電力の割合を示す第2の値であり、
前記第2比率は、前記発電設備の有効電力のうち、前記第2需要家の発電設備の有効電力の割合を示す第3の値と、前記第3需要家の発電設備の有効電力の割合を示す第4の値であり、
前記第1比率と、前記第2比率とを推定する第2推定部を更に備え、
前記第2推定部は、
前記所定区間に含まれる負荷の有効電力、及び前記第1需要家の負荷の有効電力の測定値を前記第1の値で除した値の第4の差と、
前記所定区間に含まれる発電設備の有効電力、及び前記第3需要家の発電設備の有効電力の測定値を前記第4の値で除した値の第5の差とに基づく第2目的関数を設定し、
前記第1比率と、前記第2比率と、前記所定区間に含まれる負荷の有効電力と、前記所定区間に含まれる発電設備の有効電力とを第2決定変数とした際に前記第2目的関数を最小化することにより、前記第1比率と、前記第2比率とを推定する、
情報処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の情報処理装置であって、
前記第2推定部は、
時間依存性を有する、前記第1比率と、前記第2比率とを、前記第2決定変数とする、
情報処理装置。
【請求項7】
情報処理装置が、
電力系統の所定区間において、負荷を有する第1需要家と、余剰買取契約対象の発電設備を有する第2需要家と、全量買取契約対象の前記発電設備を有する第3需要家と、のいずれかに分類される需要家を複数含む前記電力系統の状態を推定する情報処理方法であって、
前記電力系統の配電線のセンサからの測定値に基づいて、前記所定区間における有効電力及び無効電力を計算するステップと、
前記複数の需要家のそれぞれが前記第1~第3需要家のいずれに該当するかを示す分類情報と、前記複数の需要家の電力量計の測定値と、に基づいて、前記第1~第3需要家のうち少なくともいずれかの有効電力を計算するステップと、
前記第1及び第2需要家のそれぞれの負荷における有効電力の第1比率と、前記第2及び第3需要家のそれぞれの前記発電設備における有効電力の第2比率と、前記発電設備の力率と、前記所定区間における有効電力及び無効電力と、前記第1~第3需要家のうち少なくともいずれかの有効電力と、に基づいて、前記所定区間に含まれる負荷の有効電力及び無効電力と、前記所定区間に含まれる前記発電設備の有効電力と、を含む前記状態を推定するステップと、
を含む処理を実行する、情報処理方法。
【請求項8】
電力系統の所定区間において、負荷を有する第1需要家と、余剰買取契約対象の発電設備を有する第2需要家と、全量買取契約対象の前記発電設備を有する第3需要家と、のいずれかに分類される需要家を複数含む前記電力系統の状態を推定する情報処理プログラムであって、
コンピュータに、
前記電力系統の配電線のセンサからの測定値に基づいて、前記所定区間における有効電力及び無効電力を計算する第1計算部と、
前記複数の需要家のそれぞれが前記第1~第3需要家のいずれに該当するかを示す分類情報と、前記複数の需要家の電力量計の測定値と、に基づいて、前記第1~第3需要家のうち少なくともいずれかの有効電力を計算する第2計算部と、
前記第1及び第2需要家のそれぞれの負荷における有効電力の第1比率と、前記第2及び第3需要家のそれぞれの前記発電設備における有効電力の第2比率と、前記発電設備の力率と、前記所定区間における有効電力及び無効電力と、前記第1~第3需要家のうち少なくともいずれかの有効電力と、に基づいて、前記所定区間に含まれる負荷の有効電力及び無効電力と、前記所定区間に含まれる前記発電設備の有効電力と、を含む前記状態を推定する第1推定部と、
を実現させる、情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力系統において、例えば太陽光発電設備が存在する場合、配電線上に設けられたセンサの測定値は、需要家の負荷の有効電力と、太陽光発電設備の有効電力とが合算された値となる。そのため、センサの測定値からは、需要家の負荷の見かけ上の有効電力のみが把握される。
【0003】
しかしながら、電力系統の適切な運用計画や設備計画の観点から、需要家の負荷の有効電力等と、太陽光発電設備の有効電力とを個別に推定することが必要である。そこで、これらを個別に推定するための技術が知られている。
【0004】
例えば、特許文献1には、センサ内蔵自動開閉器の測定値と、日射量計の測定値とを用いて、需要家の負荷の有効電力等と、太陽光発電設備の有効電力とを推定する技術が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、配電線の送り出し点付近に設置されたセンサと、需要家のスマートメータの測定値とに基づいて、需要家の負荷の有効電力等と、太陽光発電設備の有効電力とを推定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012―044740号
【特許文献2】特開2016―039652号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された技術においては、日射量計の導入や保守のための多大なコストが生じる。
【0008】
また、特許文献2に開示された技術は、全量買取契約対象である太陽光発電設備が存在することを前提とするため、このような発電設備が存在しない場合には適用することができない。
【0009】
本発明はこれらのような課題を鑑みてなされたものであり、需要家の負荷の有効電力等と、太陽光発電設備の有効電力とを精度良く推定することが可能な情報処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための一の発明は、電力系統の所定区間において、負荷を有する第1需要家と、余剰買取契約対象の発電設備を有する第2需要家と、全量買取契約対象の前記発電設備を有する第3需要家と、のいずれかに分類される需要家を複数含む前記電力系統の状態を推定する情報処理装置であって、前記電力系統の配電線のセンサからの測定値に基づいて、前記所定区間における有効電力及び無効電力を計算する第1計算部と、前記複数の需要家のそれぞれが前記第1~第3需要家のいずれに該当するかを示す分類情報と、前記複数の需要家の電力量計の測定値と、に基づいて、前記第1~第3需要家のうち少なくともいずれかの有効電力を計算する第2計算部と、前記第1及び第2需要家のそれぞれの負荷における有効電力の第1比率と、前記第2及び3需要家のそれぞれの前記発電設備における有効電力の第2比率と、前記発電設備の力率と、前記所定区間における有効電力及び無効電力と、前記第1~第3需要家のうち少なくともいずれかの有効電力と、に基づいて、前記所定区間に含まれる負荷の有効電力及び無効電力と、前記所定区間に含まれる前記発電設備の有効電力と、を含む前記状態を推定する第1推定部と、を備える、情報処理装置である。本発明の他の特徴については、本明細書の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、需要家の負荷の有効電力等と、発電設備の有効電力とを精度良く推定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態の電力系統の一例と情報処理装置2を示す図である。
【
図2】実施形態の情報処理装置2の機能ブロックを説明する図である。
【
図3】比率を出力するまでの処理の流れを説明するフローチャートである。
【
図4】実施形態の情報処理装置2が扱うデータの流れを説明する図である。
【
図5】推定された状態xを出力するまでの処理の流れを説明するフローチャートである。
【
図6】実施形態の情報処理装置2が扱うデータの流れを説明する図である。
【
図7】最初の時間ステップの状態xを推定する処理の流れを説明するフローチャートである。
【
図8】時間ステップごとの状態xを推定する処理の流れを説明するフローチャートである。
【
図9】需要家の種別ごとの電力量計の測定値の合算の一例を示す図である。
【
図10】推定された需要家の負荷の有効電力と、発電設備の有効電力と、これらの合算値の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
==実施形態==
<<電力系統1>>
図1は、後述する情報処理装置2が状態推定を行う電力系統1の一例を示す図である。電力系統1は、配電変電所10と、配電線11と、配電線11の所定の位置に設置されたセンサ付開閉器SW1及びSW2と、センサ付開閉器SW1,SW2の間の配電線11の所定のノードNj(j=1~n)における負荷に設置された電力量計SMj(j=1~n)とを含む。
【0014】
[配電変電所10]
配電変電所10は、送電線(不図示)から供給される電圧を変圧し、6.6kVの電圧を配電線11へと出力する。
【0015】
[配電線11]
配電線11は、配電変電所10を起点(送り出しノード)とし、配電変電所10に放射状に接続されている。
図1では、一の配電線11のみが示されている。
【0016】
[ノード]
ノードは、配電線11上に設けられている。本実施形態では、ノードは柱上変圧器(不図示)単位で管理されている集約単位である。配電変電所10が配電線11へ出力した電力は、ノードを介して需要家に供給される。なお、
図1では、n個のノードN1~ノードNnが設けられている。
【0017】
[センサ付開閉器SW]
センサ付開閉器SW1,2のそれぞれは、設置点の少なくとも電圧、電流及び力率といった測定値を、定周期で測定可能なセンサを有する開閉器である。なお、センサ付き開閉器SW1と、センサ付き開閉器SW2とは同様であるため、以下、センサ付き開閉器SW1について説明する。本実施形態では、センサ付開閉器SW1が測定値を測定する周期は1分であるとする。
【0018】
また、本実施形態では、センサ付開閉器SW1は、1暦日においては、0:00から23:59まで、1分の測定周期で測定値を測定する。
【0019】
なお、必ずしもセンサ付開閉器SW1の測定周期は1分でなくてもよいし、全てのセンサ付開閉器SWの測定周期が同じではなくてもよい。
【0020】
センサ付開閉器SW1によって測定された測定値は、測定値DB220(後述)に蓄積される。
【0021】
[需要家の分類]
需要家はそれぞれ、電力会社との電力買取契約の有無又は契約の内容に応じて、以下に説明する需要家A、需要家B及び需要家Cのいずれかに分類される。つまり、電力系統1は、需要家A需要家B及び需要家Cのいずれかに分類される需要家を複数含むことになる
【0022】
需要家A(「第1需要家」に相当)は、電力会社と電力の買取契約を締結していない需要家である。
【0023】
需要家Aは、電力を消費する負荷を有しているが、発電設備を有していない。負荷は、配電線11から供給される電力を消費する。つまり、需要家Aは、配電線11から供給される電力を買電する。
【0024】
例えば、ノード1には、電力を消費する負荷を有する需要家Aの設備として、集合住宅が接続されている。配電変電所10が配電線11へ出力した電力は、ノード1を介して集合住宅に供給される。
【0025】
需要家B(「第2需要家」に相当)は、電力会社と所謂余剰買取契約を締結している需要家である。
【0026】
需要家Bは、電力を消費する負荷と、余剰買取契約対象の発電設備とを有している。負荷は、配電線11から供給される電力と、自己の発電設備が発電した電力の少なくとも一部とを消費する。発電設備としては、本実施形態では太陽光発電設備である。ただし、発電設備は太陽光発電設備に限られず、例えば、風力発電設備等でであってもよい
【0027】
つまり、需要家Bは、配電線11から供給される電力を買電し、発電設備が発電した電力の少なくとも一部を消費する。更に、需要家Bは、発電設備が発電した電力のうち消費した電力を除く電力(余剰電力)を売電する。
【0028】
例えば、ノード2には、電力を消費する負荷と、発電設備とを有する需要家Bの設備として、太陽光発電設備が設置された一般住宅が接続されている。配電変電所10が配電線11へ出力した電力は、ノード2を介して一般住宅の負荷に供給される。更に、太陽光発電設備が発電した電力の少なくとも一部は、一般住宅の負荷に供給される。
【0029】
需要家C(「第3需要家」に相当)は、電力会社と所謂全量買取契約を締結している需要家である。
【0030】
需要家Cは、全量買取契約対象の発電設備を有している。需要家Cは、自己の発電設備が発電した電力の全量を売電する。
【0031】
例えば、ノード3には、発電設備を有する需要家Cの設備として、工場に設置された太陽光発電設備が接続されている。この需要家Cは、工場に設置された太陽光発電設備が発電した電力の全量を売電する。
【0032】
なお、この例では、工場は生産設備等の負荷を有するが、このような負荷は上述の需要家Aに分類される。つまり、この例では、配電変電所10が配電線11へ出力した電力は、ノード3を介して工場の負荷に供給される。
【0033】
以下の説明では、電力系統1に含まれる需要家のうち、需要家Aに分類される全ての需要家をまとめて、単に「需要家A」と称する。需要家B及び需要家Cについても同様とする。
【0034】
[電力量計SM]
電力量計SMは、電力系統1に含まれる需要家のそれぞれに設置される。電力量計SMとしては、所謂スマートメータを用いることができる。
【0035】
需要家A(電力買取契約を締結しておらず、負荷のみを有する需要家)については、電力を消費する負荷に対して1台の電力量計SMが設置される。需要家Aに設置された電力量計SMは、負荷の使用電力量を、定周期で測定する。
【0036】
また、需要家B(余剰買取契約を締結しており、負荷及び発電設備を有する需要家)については、電力を消費する負荷と、発電設備とに対して一台の電力量計SMが設置される。需要家Bに設置された電力量計SMは、負荷の使用電力量と、自己の発電設備が発電した電力量との総計である電力量を、定周期で測定する。つまり、需要家Bに設置された電力量計SMの測定値は、負荷の使用電力量と、自己の発電設備が発電した電力量とが混在したものである。
【0037】
また、需要家C(全量買取契約を締結しており、発電設備のみを有する需要家)については、発電設備に対して1台の電力量計SMが設置される。需要家Cに設置された電力量計SMは、自己の発電設備が発電した電力量を、定周期で測定する。
【0038】
本実施形態では、全ての電力量計SMの測定周期は30分であるとする。なお、電力量計SMが測定した測定値を、測定周期で除した量は、測定周期の期間における平均の有効電力である。
【0039】
電力量計SMは、1暦日においては、0:00から23:30まで、30分の測定周期で測定値を測定する。
【0040】
なお、必ずしも電力量計SMの測定周期は30分でなくてもよいいし、全ての電力量計SMの測定周期が同じではなくてもよい。
【0041】
電力量計SMによって測定された測定値は、測定値DB221(後述)に蓄積される。
【0042】
<<情報処理装置2>>
情報処理装置2は、電力系統1の対象区間(「所定区間」に相当)において、電力系統1の状態を推定する装置である。なお、本実施形態において、対象区間は、
図1に示す電力系統1のセンサ付開閉器SW1及びセンサ付開閉器SW2の間の区間であるとして説明する。
【0043】
また、センサ付開閉器SW1及びSW2の測定値のうち、情報処理装置2が扱う測定値は、センサ付開閉器SW1(配電変電所10側)の測定値のみである。
【0044】
以下、情報処理装置2のハードウェア構成及び情報処理装置2の機能ブロックの順に説明する。
【0045】
<情報処理装置2のハードウェア構成>
図2は、本発明の一実施形態である情報処理装置2のハードウェア構成を説明する図である。情報処理装置2は、CPU(Central Processing Unit)200と、メモリ201と、通信装置202と、記憶装置203と、入力装置204と、出力装置205と、記録媒体読取装置206とを有するコンピュータである。
【0046】
[CPU200]
CPU200は、メモリ201や記憶装置203に記憶された情報処理プログラムを実行することにより、情報処理装置2が有する様々な機能を実現する。
【0047】
[メモリ201]
メモリ201は、例えばRAM(Random-Access Memory)等であり、様々なプログラムやデータ等の一時的な記憶領域として用いられる。
【0048】
[通信装置202]
通信装置202は、ネットワーク4を介して、他のコンピュータと各種プログラムやデータの受け渡しを行う。
【0049】
[記憶装置203]
記憶装置203は、CPU200によって、実行または処理される各種データを格納する非一時的な(例えば不揮発性の)記憶装置である。記憶装置203には、測定値DB220、測定値DB221、計算値DB222、計算値DB223、推定値DB224及び推定値DB225といったデータベースが格納されている(これらのデータベースに格納されているデータの詳細は後述する)。
【0050】
[入力装置204]
入力装置204は、ユーザによるコマンドやデータの入力を受け付ける装置であり、キーボード、タッチパネルディスプレイ上でのタッチ位置を検出するタッチセンサなどの入力インタフェースを含む。
【0051】
[出力装置205]
出力装置205は、例えばディスプレイやプリンタなどの装置である。
【0052】
[記録媒体読取装置206]
記録媒体読取装置206は、SDカードやDVD、CDROM等の記録媒体3に記録された情報処理プログラム等の様々なデータを読み取り、記憶装置203に格納する。
【0053】
<情報処理装置2の機能ブロック>
情報処理装置2の機能ブロックを説明する。なお、ここでは概要を説明し、情報処理装置2が実行する詳細な処理については、後述するフローチャートを用いて詳細に説明する。
【0054】
図2は、情報処理装置2の機能ブロックを示す図である。情報処理装置2は、取得部210と、取得部211と、計算部212,213と、推定部214,215と、出力部216とを含む。
【0055】
[取得部210]
取得部210は、記憶装置203の測定値DB220を参照し、センサ付開閉器SW1の所定期間Tの測定値を取得する。なお、ここでの所定期間Tとは、負荷における有効電力の比率及び発電設備における有効電力の比率(詳細は後述)を推定するための過去の期間TAと、電力系統1の状態推定の対象となる期間(以下、「対象期間TB」と称する)とを含む。これらの期間の詳細は後述する。
【0056】
[取得部211]
取得部211は、記憶装置203の測定値DB221を参照し、電力量計SMの所定期間の測定値を取得する。なお、ここでの所定期間Tとは、上述の取得部210についての所定期間Tと同様であり、詳細は後述する。
【0057】
[計算部212]
計算部212(「第1計算部」に相当)は、取得部210が取得した、電力系統1の配電線11のセンサ付開閉器SW1からの測定値に基づいて、対象区間における有効電力P及び無効電力Qを計算する。なお、ここで計算された有効電力Pは、電力系統1に含まれる需要家の負荷の有効電力と、発電設備の有効電力とが混在した値となる。
【0058】
【0059】
ここで、分類情報とは、電力系統に含まれる複数の需要家のそれぞれが需要家A~Cのいずれに該当するかを示す情報である。
【0060】
【0061】
[推定部214]
推定部214(「第2推定部)に相当)は、負荷における有効電力の比率R1(「第1比率」に相当)を推定する。負荷における有効電力の比率R1とは、需要家A(電力買取契約を締結しておらず、負荷のみを有する需要家)及び需要家B(余剰買取契約を締結しており、負荷及び発電設備を有する需要家)のそれぞれの負荷における有効電力の比率である。
【0062】
推定部214は、更に、発電設備における有効電力の比率R2(「第2比率」に相当)を推定する。発電設備における有効電力の比率R2とは、需要家B(余剰買取契約を締結しており、負荷及び発電設備を有する需要家)及び需要家C(全量買取契約を締結しており、発電設備のみを有する需要家)のそれぞれの発電設備における有効電力の比率である。
【0063】
なお、以下の説明では、負荷における有効電力の比率R1と、発電設備における有効電力の比率R2とを総称して、「比率R」と称する場合がある。
【0064】
[推定部215]
推定部215(「第1推定部に相当」)は、対象区間における電力系統1の状態xを推定する。ここで、状態xとは、対象区間に含まれる負荷の有効電力PL及び無効電力QLと、対象区間に含まれる発電設備の有効電力PPVと、を含む。なお、ここでの有効電力PL及び無効電力QLと、発電設備の有効電力PPVとは、対象区間に含まれる全ての需要家についての合算値である。
【0065】
推定部215は、計算部213によって計算された負荷における有効電力の比率R1と、発電設備における有効電力の比率R2と、発電設備の力率と、需要家A~Cの有効電力と、に基づいて、対象区間における状態xを推定する。
【0066】
[出力部216]
出力部216は、推定部214によって推定された比率Rを出力する。出力部216は、更に、推定部215によって推定された電力系統1の対象区間における状態xを出力する。
【0067】
<<比率Rを出力するまでの処理>>
図3及び
図4を用いて、情報処理装置2が比率Rを出力するまでの処理の流れについて説明する。
図3は、情報処理装置2が比率Rを出力するまでの処理の流れを説明するフローチャートである。
図4は、情報処理装置2が扱うデータの流れを説明する図である。
図3の処理は、ステップS11~ステップS15を含む。
【0068】
先ず、
図3のステップS11において、取得部211は、
図4に示すように、測定値DB221から、過去の所定期間における電力量計SMの測定値を取得する。ここで、取得部211は、対象区間に含まれる全ての需要家の電力量計SMの測定値を取得する。
【0069】
次いで、ステップS12において、計算部213は、ステップS11において取得部211が取得した電力量計SMの測定値を用いて、需要家A~Cのそれぞれについて、電力量計SMの測定値の合算値を計算する(
図3のS12)。
【0070】
ここで、計算部213は、過去の所定期間の各時間ステップに測定された全ての電力量計SMの測定値を用いて、需要家A~Cのそれぞれについて、電力量計SMの測定値の合算値を計算する。
【0071】
次いで、ステップS13において、計算部213は、需要家A~Cのそれぞれの有効電力を計算する(
図3のS13)。
【0072】
ここで、計算部213は、ステップS12において計算された需要家A~Cのそれぞれについての合算値を、電力量計SMの測定周期(30分)で除することにより、需要家A~Cのそれぞれの有効電力を計算する。このようにして計算された有効電力は、測定周期の期間における平均の有効電力である。
【0073】
計算部213が計算した有効電力は、
図4に示す計算値DB223に蓄積される。
【0074】
次いで、ステップS14において、推定部214は、負荷における有効電力の比率R1と、発電設備における有効電力の比率R2を推定する(
図3のS14)。
【0075】
ここで、負荷における有効電力の比率R1とは、対象区間に含まれる負荷の有効電力のうち、需要家A(電力買取契約を締結しておらず、負荷のみを有する需要家)の負荷の有効電力の割合を示す値であるαL(「第1の値」に相当)と、需要家B(余剰買取契約を締結しており、負荷及び発電設備を有する需要家)の負荷の有効電力の割合を示す値であるαL_PV(「第2の値」に相当)である。
【0076】
また、発電設備における有効電力の比率R2とは、対象区間に含まれる発電設備の有効電力のうち、需要家B(余剰買取契約を締結しており、負荷及び発電設備を有する需要家)の発電設備の有効電力の割合を示す値であるβL_PV(「第3の値」に相当)と、需要家C(全量買取契約を締結しており、発電設備のみを有する需要家)の発電設備の有効電力の割合を示す値であるβPV(「第4の値」に相当)である。
【0077】
これらの値の間には、以下の数1~数4の関係が成り立つ。
【数1】
【数2】
【数3】
【数4】
【0078】
このステップS15において、推定部214は、所定の目的関数(「第2目的関数」に相当)を設定し、目的関数を最小化することにより、比率Rを推定する。
【0079】
目的関数の詳細な説明の前に、以下の数5~数7を用いて、目的関数に用いる変数について説明する。
【数5】
【数6】
【数7】
【0080】
【0081】
数5の右辺において、αLは、需要家Aの負荷の有効電力の割合を示す値であり、未知量である。また、本実施形態では、αLはスカラー量であると仮定する。
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
数6の右辺において、βPVは、需要家Cの発電設備の有効電力の割合を示す値であり、未知量である。また、本実施形態では、βPVはスカラー量であると仮定する。
【0086】
【0087】
【0088】
本実施形態で用いる目的関数と、目的関数の最小化条件を以下の数8に示す。
【数8】
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
また、このとき、推定部214は、以下の数9及び数10に示す拘束条件を課して、目的関数を最小化する。
【数9】
【数10】
【0094】
【0095】
次いで、ステップS15において、出力部216は、ステップS14において推定部214が推定した比率R(α
L、α
L_PV、β
L_PV及びβ
PV)を、
図4に示す推定値DB224に出力する。
【0096】
以上で、比率Rを出力するまでの処理が終了する。以上の処理によって出力された比率Rは、次に説明する状態xを推定する処理において用いられる。
【0097】
<<推定した状態xを出力するまでの処理>>
情報処理装置2が、推定した状態xを出力するまでの処理について説明する。以下では、状態推定の対象となる期間(対象期間)を、状態推定の対象となる日の0:00から23:59までとして説明する。
【0098】
情報処理装置2は、対象期間を有限の時間ステップに区切り、時間ステップごとの状態xを推定することにより、対象期間の状態の時系列x(t)を推定する。
【0099】
前述のように、センサ付開閉器SW1は、1暦日の0:00から、1分の間隔で測定値を測定する。以下の説明における時間ステップは、センサ付開閉器SW1が測定値を測定する時間とする。
【0100】
つまり、最初の時間ステップは、推定対象日の0:00である。2回目の時間ステップは、その1分後の0:01である。最後の時間ステップは、1440回目の時間ステップであり、同日の23:59である。
【0101】
図5及び
図6を用いて、情報処理装置2が、推定した状態xを出力するまでの処理の流れについて説明する。
図5は、情報処理装置2が、推定した状態xを出力するまでの処理の流れを説明するフローチャートである。
図6は、情報処理装置2が扱うデータの流れを説明する図である。この処理は、ステップS21~ステップS25を含む。
【0102】
先ず、
図5のステップS21において、取得部210は、測定値DB220から、対象期間におけるセンサ付開閉器SW1の測定値を取得する。
【0103】
本実施形態において、センサ付開閉器SW1の測定値とは、センサ付開閉器SW1の設置点における電圧、電流及び力率である。
【0104】
つまり、取得部210は、推定対象日の、0:00から23:59まで1分間隔で測定された、電圧、電流及び力率を取得する。
【0105】
次いで、ステップS22において、取得部211は、測定値DB221から、対象期間における電力量計SMの測定値を取得する。ここで、取得部211は、対象区間に含まれる全ての需要家の電力量計SMの測定値を取得する。
【0106】
つまり、取得部211は、推定対象日の、0:00から23:30まで30分間隔で測定された、全ての需要家の電力量計SMの測定値を取得する。
【0107】
次いで、ステップS23は、対象期間における最初の時間ステップ(つまり、0:00)の状態x(0)を推定する処理である。なお、最初の時間ステップにおいては、センサ付開閉器SW1及び電力量計SMは共に、測定値を測定している。
【0108】
図7は、ステップS23の詳細を説明するフローチャートである。ステップS23は、ステップS231~ステップS234を含む。
【0109】
先ず、
図7のステップS231において、計算部212は、ステップS21において取得部210が取得したセンサ付開閉器SW1の測定値に基づいて、対象区間における有効電力及び無効電力を計算する(
図6のS231)。
【0110】
ここで、計算部212は、最初の時間ステップ(つまり、0:00)に測定された電圧、電流及び力率に基づいて、最初の時間ステップにおける有効電力及び無効電力を計算する。
【0111】
計算部212が計算した有効電力P(t)及び無効電力Q(t)は、
図6に示す計算値DB222に蓄積される。
【0112】
次いで、ステップS232において、計算部213は、ステップS22において取得部211が取得した電力量計SMの測定値を用いて、需要家A~Cのそれぞれについて、電力量計SMの測定値の合算値を計算する(
図6のS232)。
【0113】
ここで、計算部213は、最初の時間ステップ(つまり、0:00)に測定された全ての電力量計SMの測定値を用いて、需要家A~Cのそれぞれについて、電力量計SMの測定値の合算値を計算する。
【0114】
次いで、ステップS233において、計算部213は、需要家A~Cのそれぞれの有効電力を計算する(
図6のS233)。
【0115】
ここで、計算部213は、ステップS232において計算された需要家A~Cのそれぞれについての合算値を、電力量計SMの測定周期(30分)で除することにより、需要家A~Cのそれぞれの有効電力を計算する。このようにして計算された有効電力は、測定周期の期間における平均の有効電力である。
【0116】
計算部213が計算した平均の有効電力は、
図6に示す計算値DB223に蓄積される。
【0117】
次いで、ステップS234において、推定部215は、対象期間における最初の時間ステップの状態x(0)を推定する(
図6のS234)。
【0118】
このステップS234において、推定部215は、所定の目的関数(「第1目的関数」に相当)を設定し、目的関数を最小化することにより、最初の時間ステップの状態x(0)を推定する。
【0119】
目的関数の詳細な説明の前に、下記の数11~数15を用いて、推定部215が目的関数を設定する際に用いる変数について説明する。
【0120】
先ず、数11は、センサ付開閉器SW1の測定値に基づいて計算された有効電力及び無効電力と、電力量計SMの測定値に基づいて計算された需要家の有効電力とを示している。
【数11】
【0121】
【0122】
【0123】
次いで、数12は、対象区間の状態と、センサ付開閉器SW1及び電力量計SMの測定値との関係を示す式である。
【数12】
【0124】
【0125】
数12において、右辺の行列Aは、数14に示すように、ステップS15(
図4)で計算された比率R(α
L、α
L_PV、β
L_PV及びβ
PV)と、発電設備の力率角θ
PVによって定められる行列である。力率角θ
PVは、発電設備が力率を一定として運転されていることから、既知量である。従って、行列Aは既知である。
【0126】
比率R(α
L、α
L_PV、β
L_PV及びβ
PV)は、
図6に示す推定値DB224から取得される。
【0127】
【0128】
【0129】
本実施形態で用いる目的関数(「第1目的関数」に相当)と、目的関数の最小化条件を以下の数16に、最小化条件を数17に示す。
【数16】
【数17】
【0130】
【0131】
【0132】
【0133】
【0134】
【0135】
本実施形態の目的関数は、上述の差(数13の各成分)に基づく関数である。
【0136】
推定部215は、数16に示す目的関数を設定し、状態x(t)(数15)を決定変数(「第1決定変数」に相当)とした際に目的関数を最小化することにより、状態x(t)を推定する(数17)。
【0137】
ステップS234においては、推定部215は、時間ステップtが0の場合の数16に示す目的関数を最小化することにより、最初の時間ステップにおける状態x(0)を推定する。
【0138】
推定部215が推定した状態x(0)は、
図6に示す推定値DB225に蓄積される。
【0139】
次いで、
図5に戻り、ステップS24は、時間ステップごとの状態x(t)を推定する処理である。情報処理装置2は、ステップS24の処理を2回目の時間ステップから最後の時間ステップまで繰り返すことにより、状態x(t)の時系列を推定する。
【0140】
図8は、ステップS24の詳細を説明するフローチャートである。以下の説明では、t-1回目の時間ステップまでの状態xの推定が完了しており、t回目の時間ステップの状態x(t)を推定する場合を説明する。
【0141】
ステップS24は、ステップS241~ステップS246を含む。
【0142】
先ず、ステップS241において、計算部212は、センサ付開閉器SW1の測定値を更新する。つまり、計算部212は、以下の計算で扱う測定値の対象を、t回目の時間ステップにおけるセンサ付開閉器SW1の測定値に更新する。
【0143】
次いで、ステップS242において、計算部212は、ステップS241において計算部212が更新したセンサ付開閉器SW1の測定値に基づいて、対象区間における有効電力及び無効電力を計算する。
【0144】
ここで、計算部212は、t回目の時間ステップに測定された電圧、電流及び力率に基づいて、t回目の時間ステップにおける有効電力及び無効電力を計算する。
【0145】
次いで、ステップS243において、計算部213は、t回目の時間ステップにおいて、電力量計SMの測定値の更新が有るか否かを判定する。
【0146】
前述のように、電力量計SMの測定周期は30分である。そのため、例えば、0:00(最初の時間ステップ)の次に電力量計SMの測定値が更新される時刻は、0:30(31回目の時間ステップ)である。
【0147】
ステップS243において、計算部213が電力量計SMの測定値が更新されたと判断した場合(S243:Y)、計算部213は、以下の計算で扱う測定値の対象を、t回目の時間ステップにおける電力量計SMの測定値に更新し、ステップS244に進む。
【0148】
次いで、ステップS244において、計算部213は、ステップS243において更新した電力量計SMの測定値を用いて、需要家A~Cのそれぞれについて、電力量計SMの測定値の合算値を計算する。
【0149】
ここで、計算部213は、t回目の時間ステップに測定された全ての電力量計SMの測定値を用いて、需要家A~Cのそれぞれについて、電力量計SMの測定値の合算値を計算する。
【0150】
次いで、ステップS245において、計算部213は、需要家A~Cのそれぞれの有効電力を計算する。
【0151】
ここで、計算部213は、ステップS235において計算された需要家A~Cのそれぞれについての合算値を、電力量計SMの測定周期(30分)で除することにより、需要家A~Cのそれぞれの有効電力を計算する。このようにして計算された有効電力は、測定周期の期間における平均の有効電力である。
【0152】
図9は、計算部213が計算した需要家A~Cの各時間ステップの有効電力の一例である。
【0153】
ステップS243において、計算部213が電力量計SMの測定値が更新されていないと判断した場合(S243:N)、計算部213は、以下の計算で扱う測定値の対象を、t-1回目の時間ステップにおける電力量計SMの測定値のまま維持し、ステップS236に進む。
【0154】
ステップS246において、推定部215は、時間ステップごとの状態x(t)を推定する。以下では、推定部215がt回目の時間ステップの状態x(t)を推定する処理について説明する。
【0155】
t回目の時間ステップの状態x(t)は、以下の数18~数20により推定することができる。
【数18】
【数19】
【数20】
【0156】
数18において、左辺は、対象区間の状態x(t)であり、各成分は数14に示されている。
【0157】
また、数18において、右辺第1項及び第2項の状態x(t-1)は、既に推定されたt-1回目の時間ステップの状態である。
【0158】
右辺第2項の行列Kは、ゲイン行列であり、数19に具体的に示されている。数19のWは、状態xの共分散行列であり、数19においてはt-1回目の時間ステップにおける共分散行列が用いられている。
【0159】
共分散行列Wは、数19により、時間ステップごとに更新される。数19により、t-1回目の時間ステップにおける共分散行列W(t-1)に基づいて、t回目の時間ステップにおける共分散行列W(t)を更新することができる。
【0160】
また、数18において、右辺第2項の行列Aは、数14に示された行列であり、既知の行列である。
【0161】
推定部215は、ステップS236の処理を繰り返すことにより、対象区間の状態x(t)(需要家の負荷の有効電力PL及び無効電力QLと、発電設備の有効電力PPV)を推定する。
【0162】
図10は、推定された需要家の負荷の有効電力P
Lと、発電設備の有効電力P
PVと、これらの合算値を示す図である。ここでの合算値とは、数9及び数10により、
図9に示した需要家A~Cの有効電力の合算値に等しい。
【0163】
前述のように、本実施形態では、発電設備が太陽光発電設備である態様を示している。そのため、
図10からわかるように、発電設備の有効電力P
PV(つまり、太陽光発電設備が発電した電力)は、日中の時間帯が大きく、正午(12:00)付近で極大となる。また、夜間の時間帯は小さく、5:00以前及び18:00以降は殆ど発電しない。
【0164】
次いで、ステップS25において、出力部216は、ステップS24において推定部214が推定した状態x(t)を(需要家の負荷の有効電力PL及び発電設備の有効電力PPV)、推定値DB225に出力する。以上で、推定した状態x(t)を出力するまでの処理が終了する。
【0165】
以上のような処理によれば、低コストで、需要家の電力買取契約の形態に依らずに、需要家の負荷の有効電力等と、発電設備の有効電力とを推定することが可能となる。
【0166】
==変形例1==
実施形態においては、電力系統1に需要家A~Cのそれぞれの電力量計SMの測定値が得られる態様を示した。しかし、このような場合に限らず、需要家A~Cのうちいずれか一の需要家の電力量計SMの測定値が得られない場合であっても、対象区間の状態x(t)を推定することができる。
【0167】
本先ず、一例として、需要家A及びBの電力量計SMの測定値が得られ、需要家Cの電力量計SMの測定値が得られない場合を説明する。
【0168】
この場合、実施形態で用いた数11、数13及び数14に代えて、それぞれ以下の数21、数22及び数23を用いればよい。
【数21】
【数22】
【数23】
【0169】
数21は、数11の右辺の3行目を省いたものに相当する。また、数22は、数13の右辺の3行目を省いたものに相当する。また、数23は、数14の右辺の3行目を省いたものに相当する。
【0170】
以上、需要家Cの電力量計SMの測定値が得られない場合について説明したが、需要家A又は需要家Bの電力量計SMの測定値が得られない場合についても拡張することができる。
【0171】
需要家Aの電力量計SMの測定値が得られない場合、実施形態で用いた数11、数13及び数14に代えて、それぞれの1行目を省いたものを用いればよい。
【0172】
需要家Bの電力量計SMの測定値が得られない場合、実施形態で用いた数11、数13及び数14に代えて、それぞれの2行目を省いたものを用いればよい。
【0173】
つまり、本変形例においては、計算部213は、需要家A~Cのうち少なくともいずれか2つの有効電力を計算する。
【0174】
そして、推定部215は、比率R1(αL及びαL_PV)と、比率R2(βL_PV及びβPV)と、力率と、対象区間における有効電力及び無効電力と、需要家A~Cのうち少なくともいずれか2つの有効電力に基づいて、状態x(t)を推定する。
【0175】
==変形例2==
更に、需要家A~Cのうち、いずれか2つの需要家の電力量計SMの測定値が得られない場合(つまり、いずれか1つの需要家の電力量計SMの測定値のみが得られる場合)であっても、対象区間の状態x(t)を推定することができる。
【0176】
需要家Aの電力量計SMの測定値のみが得られる場合、実施形態で用いた数11、数13及び数14に代えて、それぞれの2行目及び3行目を省いたものを用いればよい。
【0177】
需要家Bの電力量計SMの測定値のみが得られる場合、実施形態で用いた数11、数13及び数14に代えて、それぞれの1行目及び3行目を省いたものを用いればよい。
【0178】
需要家Cの電力量計SMの測定値のみが得られる場合、実施形態で用いた数11、数13及び数14に代えて、それぞれの1行目及び2行目を省いたものを用いればよい。
【0179】
つまり、本変形例において、計算部213は、需要家A~Cのうち少なくともいずれかの有効電力を計算する。
【0180】
そして、推定部215は、比率R1(αL及びαL_PV)と、比率R2(βL_PV及びβPV)と、力率と、対象区間における有効電力及び無効電力と、需要家A~Cのうち少なくともいずれかの有効電力に基づいて、対象区間の状態x(t)を推定することができる。
【0181】
==変形例3==
実施形態においては、負荷における有効電力の比率R1(αL及びαL_PV)は一定値であり、時々刻々変化しないと仮定する態様を示した。
【0182】
しかしながら、実際には、負荷における有効電力の比率R1(αL及びαL_PV)が時々刻々変化し、αL及びαL_PVを一定値と仮定すると十分な精度で状態x(t)を推定することが困難となる場合がある。
【0183】
そのような場合、需要家Aと、需要家Bとを区別せずに取り扱うこととしてもよい。具体的には、実施形態で用いた数11、数13及び数14に代えて、それぞれ以下の数24、数25及び数26を用いればよい。
【数24】
【数25】
【数26】
【0184】
数24は、数11の1行目に2行目を加算し、2行目を省いたものに相当する。数25は、数13の1行目に2行目を加算し、2行目を省いたものに相当する。数26は、数14の1行目に2行目を加算し、2行目を省いたものに相当する。また、数26の2つ目の等式において数1の関係を用いている。
【0185】
これによって、数26の2つ目の等式からわかるように、αL及びαL_PVが消去されるため、これらの時間依存性を考慮する必要がない。
【0186】
つまり、本変形例において、計算部213は、需要家A及び需要家Bの有効電力を合算した有効電力と、需要家Cの有効電力とを計算する。
【0187】
そして、推定部215は、比率R2(βL_PV及びβPV)と、力率と、対象区間における有効電力及び無効電力と、需要家A及び需要家Bの有効電力を合算した有効電力と、需要家Cの有効電力とに基づいて、対象区間の状態x(t)を推定することができる。
【0188】
これによって、αL及びαL_PVが時々刻々変化することが想定される場合であっても、精度良く状態x(t)を推定することができる。
【0189】
==変形例4==
実施形態においては、発電設備における有効電力の比率R2(βL_PV及びβPV)は一定値であり、時々刻々変化しないと仮定する態様を示した。
【0190】
しかしながら、実際には、発電設備における有効電力の比率R2(βL_PV及びβPV)が時々刻々変化し、βL_PV及びβPVを一定値と仮定すると十分な精度で状態x(t)を推定することが困難となる場合がある。
【0191】
そのような場合、需要家Bと、需要家Cとを区別せずに取り扱うこととしてもよい。具体的には、実施形態で用いた数11、数13及び数14に代えて、それぞれ以下の数27、数28及び数29を用いればよい。
【数27】
【数28】
【数29】
【0192】
数27は、数11の2行目に3行目を加算し、3行目を省いたものに相当する。数25は、数13の2行目に3行目を加算し、3行目を省いたものに相当する。数26は、数14の2行目に3行目を加算し、3行目を省いたものに相当する。また、数26の2つ目の等式において数3の関係を用いている。
【0193】
ここで、数26の2つ目の等式からわかるように、βL_PV及びβPVが消去されるため、これらの時間依存性を考慮する必要がない。
【0194】
つまり、本変形例において、計算部213は、需要家Aの有効電力と、需要家B及びCの有効電力を合算した有効電力とを計算する。
【0195】
そして、推定部215は、比率R1(αL及びαL_PV)と、力率と、対象区間における有効電力及び無効電力と、需要家A及び需要家Bの有効電力を合算した有効電力と、需要家Aの有効電力と、需要家B及びCの有効電力を合算した有効電力とに基づいて、状態x(t)を推定することができる。
【0196】
これによって、βL_PV及びβPVが時々刻々変化することが想定される場合であっても、精度良く対象区間の状態x(t)を推定することができる。
【0197】
==変形例5==
実施形態においては、負荷における有効電力の比率R1(αL及びαL_PV)と、発電設備における有効電力の比率R2(βL_PV及びβPV)とは、それぞれ一定値であり、時々刻々変化しないと仮定する態様を示した。
【0198】
しかしながら、実際には、αL、αL_PV、βL_PV及びβPVが時々刻々変化し、これらを一定値と仮定すると十分な精度で状態x(t)を推定することが困難となる場合がある。
【0199】
そのような場合、αL、αL_PV、βL_PV及びβPVに時間依存性を付与することとしてもよい。具体的には、推定部214は、実施形態で用いた数8の目的関数の最小化において、時間依存性を有する、αL、αL_PV、βL_PV及びβPVを、決定変数とすればよい。
【0200】
これによって、αL、αL_PV、βL_PV及びβPVが時々刻と変化することが想定される場合であっても、精度良く状態x(t)を推定することができる。
【0201】
==まとめ==
実施形態の情報処理装置2は、電力系統1の所定区間において、負荷を有する需要家Aと、余剰買取契約対象の発電設備を有する需要家Bと、全量買取契約対象の発電設備を有する需要家Cと、のいずれかに分類される需要家を複数含む電力系統1の状態xを推定する情報処理装置2であって、電力系統1の配電線11のセンサ付開閉器SW1からの測定値に基づいて、所定区間における有効電力及び無効電力を計算する計算部212と、複数の需要家のそれぞれが需要家A~Cのいずれに該当するかを示す分類情報と、複数の需要家の電力量計SMの測定値と、に基づいて、需要家A~Cのうち少なくともいずれかの有効電力を計算する計算部213と、需要家A~Cのそれぞれの負荷における有効電力の比率R1と、需要家B及びCのそれぞれの発電設備における有効電力の比率R2と、発電設備の力率と、所定区間における有効電力及び無効電力と、需要家A~Cのうち少なくともいずれかの有効電力と、に基づいて、所定区間に含まれる負荷の有効電力及び無効電力と、所定区間に含まれる発電設備の有効電力と、を含む状態xを推定する推定部215と、を備える。
【0202】
このような構成によれば、日射量計等の設備を要せずに、センサ付開閉器SW1の測定値と、電力量計SMの測定値とを用いて、状態xを推定することができる。従って、このような構成によれば、低コストで、需要家の電力買取契約の形態に依らずに、需要家の負荷の有効電力等と、太陽光発電設備の有効電力とを推定することが可能となる。
【0203】
また、情報処理装置2において、計算部213は、需要家A~Cのうち少なくともいずれか2つの有効電力を計算し、推定部215は、比率R1と、比率R2と、力率と、所定区間における有効電力及び無効電力と、需要家A~Cのうち少なくともいずれか2つの有効電力に基づいて、状態xを推定してもよい。このような構成によれば、状態xを推定するのに用いる情報の量が増えるため、精度良く状態xを推定することができる。
【0204】
また、情報処理装置2において、計算部213は、需要家A~Cの有効電力を計算し、推定部215は、比率R1と、比率R2と、力率と、所定区間における有効電力及び無効電力と、需要家A~Cの有効電力に基づいて、状態xを推定してもよい。このような構成によれば、状態xを推定するのに用いる情報の量が更に増えるため、更に精度良く状態xを推定することができる。
【0205】
また、情報処理装置2において、推定部215は、センサ付開閉器SW1からの測定値に基づいて計算された所定区間における有効電力、及び状態xに基づいて計算された所定区間における有効電力の第1の差と、センサ付開閉器SW1からの測定値に基づいて計算された所定区間における無効電力、及び力率と、状態xとに基づいて計算された所定区間における無効電力の第2の差と、電力量計SMの測定値に基づいて計算された需要家A~Cのうち少なくともいずれかの需要家の有効電力、及び比率R1と、比率R2と、状態xとに基づいて計算された少なくともいずれかの需要家の有効電力の差とに基づく目的関数を設定し、状態xを決定変数とした際に目的関数を最小化することにより、状態xを推定する。このような構成によれば、更に精度良く状態xを推定することができる。
【0206】
また、情報処理装置2において、比率R1は、負荷の有効電力のうち、需要家Aの負荷の有効電力の割合を示す値αLと、需要家Bの負荷の有効電力の割合を示す値αL_PVであり、比率R2は、発電設備の有効電力のうち、需要家Bの発電設備の有効電力の割合を示す値βL_PVと、需要家Cの発電設備の有効電力の割合を示す値βPVであり、比率R1と、比率R2とを推定する推定部214を更に備え、推定部214は、所定区間に含まれる負荷の有効電力、及び需要家Aの負荷の有効電力の測定値を値αLで除した値の差と、所定区間に含まれる発電設備の有効電力、及び需要家Cの発電設備の有効電力の測定値を値βPVで除した値の差とに基づく目的関数を設定し、比率R1と、比率R2と、所定区間に含まれる負荷の有効電力と、所定区間に含まれる発電設備の有効電力とを決定変数とした際に目的関数を最小化することにより、比率R1と、比率R2とを推定する。このような構成によれば、比率R1と比率R2との精度が向上するため、更に精度良く状態xを推定することができる。
【0207】
また、情報処理装置2において、推定部214は、時間依存性を有する、比率R1と、比率R2とを、第2決定変数とする。このような構成によれば、時刻に応じた比率R1と比率R2とを用いることができるため、更に精度良く状態xを推定することができる。
【0208】
また、本実施形態の方法によれば、日射量計等の設備を要せずに、センサ付開閉器SW1の測定値と、電力量計SMの測定値とを用いて、状態xを推定することができる。従って、このような構成によれば、低コストで、需要家の電力買取契約の形態に依らずに、需要家の負荷の有効電力等と、発電設備の有効電力とを推定することが可能となる。
【0209】
また、本実施形態の情報処理装置2に用いられるプログラムによれば、日射量計等の設備を要せずに、センサ付開閉器SW1の測定値と、電力量計SMの測定値とを用いて、状態xを推定することができる。従って、このような構成によれば、低コストで、需要家の電力買取契約の形態に依らずに、需要家の負荷の有効電力等と、発電設備の有効電力とを推定することが可能となる。
【符号の説明】
【0210】
1:電力系統
10:配電変電所
11:配電線
2:情報処理装置
200:CPU
201:メモリ
202:通信装置
203:記憶装置
204:入力装置
205:出力装置
206:記録媒体読取装置
210:取得部
211:取得部
212:計算部
213:計算部
214:推定部
215:推定部
216:出力部