(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179324
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】射出成形金型
(51)【国際特許分類】
B29C 45/44 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
B29C45/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092595
(22)【出願日】2022-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】大久保 勇
(72)【発明者】
【氏名】三沢 勇貴
【テーマコード(参考)】
4F202
【Fターム(参考)】
4F202AM32
4F202CA11
4F202CB01
4F202CK18
4F202CK54
4F202CK73
(57)【要約】
【課題】
樹脂の収縮に金型部品を追従させることで、メクレなどの変形を発生させずに、高品質な成形品の成形を可能にする射出成形金型を提供する。
【解決手段】
固定側金型と可動側金型から構成され、樹脂を射出成形する射出成形金型であって、前記固定側金型の固定側入子1と、前記可動側金型の可動側入子2およびスライドコア3とで成形部を形成し、前記スライドコア3を樹脂収縮に追従して移動可能に構成する。スライドコアホルダーを二分割とし、型開き時に、二分割としたスライドコアホルダー4,5の間に設置したコイルスプリング7の力によりスライドコア3を持ち上げ、成形品8の樹脂収縮に追従させることにより、成形品のメクレ等の変形を防止する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定側金型と可動側金型から構成され、樹脂を射出成形する射出成形金型であって、
前記固定側金型の固定側入子と、前記可動側金型の可動側入子およびスライドコアとで成形部を形成し、
前記スライドコアを樹脂収縮に追従して移動可能に構成した射出成形金型。
【請求項2】
請求項1に記載の射出成形金型において、
前記スライドコアは、型閉め時には固定され、型開き時に樹脂収縮方向へ移動する射出成形金型。
【請求項3】
請求項1に記載の射出成形金型において、
前記スライドコアの外側に二分割したスライドコアホルダーを備え、
第1のスライドコアホルダーを前記スライドコアと結合し、第2のスライドコアホルダーを可動側金型に固定し、前記第1のスライドコアホルダーと前記第2のスライドコアホルダーの間にコイルスプリングを設置し、前記コイルスプリングにより前記スライドコアを成形品の樹脂収縮に追従させる射出成形金型。
【請求項4】
請求項3に記載の射出成形金型において、
前記第1のスライドコアホルダーにショルダーボルトを挿通して、第2のスライドコアホルダーに対して移動可能に第1のスライドコアホルダーを固定し、前記ショルダーボルトに前記コイルスプリングを挿入し、前記コイルスプリングにより前記第1のスライドコアホルダーを樹脂収縮方向に押圧した射出成形金型。
【請求項5】
請求項4に記載の射出成形金型において、
前記ショルダーボルトの頭部により、前記第1のスライドコアホルダーの移動が規制される射出成形金型。
【請求項6】
請求項4に記載の射出成形金型において、
型閉め時には、前記固定側金型により前記スライドコアおよび第1のスライドコアホルダーが押圧され、型開き時には前記固定側金型による押圧が解除され、前記スライドコアが樹脂収縮に追従する射出成形金型。
【請求項7】
請求項1に記載の射出成形金型において、
前記成形品は、側面に穴部または凹部を有するものである射出成形金型。
【請求項8】
固定側金型と可動側金型から構成され、樹脂を射出成形する射出成形金型であって、
前記固定側金型の固定側入子と、前記可動側金型の可動側入子およびスライドコアとで成形部を形成し、
前記スライドコアの外側に二分割したスライドコアホルダーを備え、
第1のスライドコアホルダーを前記スライドコアと結合し、第2のスライドコアホルダーを可動側金型に固定し、前記第1のスライドコアホルダーと前記第2のスライドコアホルダーの間にコイルスプリングを設置し、前記コイルスプリングにより前記スライドコアを成形品の樹脂収縮方向に追従させる射出成形金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離型の際に発生するメクレなどの変形を抑えることが可能な射出成形金型に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形金型を用いる樹脂成形においては、高温の溶融樹脂を金型内に流し込み、冷却して樹脂を固化させる。この際に、樹脂が収縮し金型に食付きが生じ、この時抵抗が大きいと離型の際にメクレなどの変形が生じる。これを防ぐため、製品が離型しやすいように抜き勾配を設けるが、製品が比較的大きくなると、その分、樹脂の収縮量も増え、抜き勾配だけでは離型抵抗の緩和に至らずに、メクレ等の製品変形となってしまう。
【0003】
特許文献1には、製品が離型しやすいように抜き勾配を設けた金型の一例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、射出成形においては、樹脂の収縮による金型への食付きが発生し、離型の際、成形品にメクレなどの変形が生じることがある。
【0006】
本発明の目的は、樹脂の収縮に金型部品を追従させることで、メクレなどの変形を発生させずに、高品質な成形品の成形を可能にする射出成形金型を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための、本発明の「射出成形金型」の一例を挙げるならば、固定側金型と可動側金型から構成され、樹脂を射出成形する射出成形金型であって、前記固定側金型の固定側入子と、前記可動側金型の可動側入子およびスライドコアとで成形部を形成し、前記スライドコアを樹脂収縮に追従して移動可能に構成する。前記スライドコアは、型閉め時には固定され、型開き時に樹脂収縮方向へ移動することで、樹脂の収縮による食付き抵抗を緩和し、メクレなどの変形を防止する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、樹脂の収縮に金型部品を追従させることで、メクレなどの変形を発生させずに、高品質な成形品の成形を可能にする射出成形金型を提供することができる。
【0009】
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施例の、型閉め状態の金型構造断面図である。
【
図2】本発明の実施例の、型開き途中状態の金型構造断面図である。
【
図3】本発明の実施例の、型開き終了状態の金型構造断面図である。
【
図4】
図1の型閉め状態の、スライドブロック付近の拡大図である。
【
図5】
図2の型開き途中状態の、スライドブロック付近の拡大図である。
【
図7】従来の、型閉め状態の金型構造断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施例の説明に先立って、本発明の前提となる射出成形金型を説明する。
【0012】
図6に、射出成形金型を用いて成形する成形品の一例を示す。成形品8は、箱状であり、一側面に穴部または凹部80を有している。
【0013】
図7に、
図6に示される成形品を成形する従来の射出成形金型の概略断面図を示す。図は、金型の型閉め状態を示している。
【0014】
射出成形金型は、固定側100と、固定側に対して移動する可動側200とで構成されている。金型本体固定側100の構成部品としては、射出成形装置の固定側に連結される固定側取付板11を備えている。固定側取付板11には固定側型板12が取り付けられ、また、固定側型板12を組み合わせた中に、射出成形装置の射出ノズルから射出された溶融樹脂を、金型内の成形部まで導く部品であるスプルーブシュ19を備えている。そして、固定側型板12には、金型本体可動側200に組み付けられたスライドブロック17を型閉め時に押し出すロッキングブロック14や、型開き時にスライドブロック17を金型外側へ移動させるアンギュラピン13が取り付けられている。
【0015】
金型本体可動側200の構成部品としては、射出成形装置の可動側に連結される可動側取付板15や、これに取り付けられる可動側型板16を備えている。そして、可動側型板16には、可動側200の移動につれてスライドするスライドブロック17を備えている。図において、符号18はアンギュラピン13を通すアンギュラピン挿入孔を示す。
【0016】
固定側型板12の固定側入子1と、可動側型板16の可動側入子2と、スライドブロック17のスライドコア3とで成形部を形成し、型閉め状態でスプルーブシュ19から高温の溶融樹脂を流し込み、冷却して固化することで、成形品8を成形する。この際に、樹脂が収縮し金型に食い付きが生じ、特に穴部または凹部80において離形の際にメクレなどの変形が生じる。
【0017】
本発明は、この課題を解決し、樹脂の収縮に金型部品を追従させることで、メクレなどの変形を発生させずに、高品質な成形品の提供を可能にするものである。
【0018】
以下に、本発明の実施例について、図面を用いて説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。本発明の思想ないし主旨から逸脱しない範囲で、その具体的構成を変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。
【実施例0019】
図1は、本発明の実施例の、型閉め状態の金型構造断面図を示す。また、
図2は、可動側200を少し下方に移動させた、型開き途中状態の金型構造断面図を示す。また、
図3は、さらに可動側200を下方に移動させた、型開き終了状態の金型構造断面図を示す。
【0020】
図7と同様に、射出成形金型は、固定側100と、固定側に対して移動する可動側200とで構成されている。金型本体固定側100の構成部品としては、射出成形装置の固定側に連結される固定側取付板11を備えている。固定側取付板11には固定側型板12が取り付けられ、また、固定側型板12を組み合わせた中に、射出成形装置の射出ノズルから射出された溶融樹脂を、金型内の成形部まで導く部品であるスプルーブシュ19を備えている。そして、固定側型板12には、金型本体可動側200に組み付けられたスライドブロック17を型閉め時に中央側に向かって押し出すロッキングブロック14や、型開き時にスライドブロック17を金型外側へ移動させるアンギュラピン13が取り付けられている。
【0021】
金型本体可動側200の構成部品としては、射出成形装置の可動側に連結される可動側取付板15、可動側取付板15に取り付けられる可動側型板16、成形部を突き出すエジェクタピン(図示せず)を備えている。そして、可動側型板16には、可動側200の移動につれて左右にスライドするスライドブロック17を備えている。図において、符号18はアンギュラピン13を通すアンギュラピン挿入孔を示す。
【0022】
図1~3に示す金型の動作の概略を説明する。
図3の型開き状態において、可動側200を固定側100に向けて上方に移動させると、
図2に示されるように、アンギュラピン13に案内されてスライドブロック17が中央に向けてスライドする。そして、ロッキングブロック5の傾斜面と、スライドコア4の傾斜面とが接触し、ロッキングブロック14の傾斜面によりスライドブロック17が中央方向に押圧される。そして、可動側型板16に取り付けられた可動側入子2と、その両側のスライドコア3と、固定側型板12の固定側入子1とで成形部を形成する。
図1に示す型閉め状態で、スプルーブッシュ19から溶融樹脂を金型内の成形部に導入し、固化させる。
溶融樹脂が固化した後、
図2から
図3に示すように、可動側200を固定側100から離す方向に下方に移動させる。アンギュラピン13に案内されてスライドブロック17が移動し、スライドコア3が開く。そして、可動側200にある成型品8を、押し出して取り出す。
【0023】
次に、本実施例の樹脂成形金型の特徴構成を説明する。
図4に、
図1の型閉め状態の、右側のスライドブロック17付近の拡大図を示す。また、
図5に、
図2の型開き途中状態の、右側のスライドブロック17付近の拡大図を示す。
【0024】
固定側型板12の固定側入子1と、可動側型板16に取り付けられた可動側入子2と、スライドブロック17のスライドコア3とで、成形品8を成形する成形部(型枠)を形成する。スライドコア3の外側には、上下に2分割されたスライドコアホルダーa(第1のスライドコアホルダー)4とスライドコアホルダーb(第2のスライドコアホルダー)5を有している。そして、スライドコア3は、スライドコアホルダーa4とボルト(図示せず)で連結されている。上方に位置するスライドコアホルダーa4は、スライドコアホルダーb5と、隙間9分だけ移動可能にショルダーボルト6で連結されている。ショルダーボルト6にはコイルスプリング7が挿入されており、スライドコアホルダーa4をスライドコアホルダーb5から離す方向に上方に押している。ショルダーボルト6の頭部はストッパーとして働き、スライドコアホルダーa4の上方の位置を規制している。すなわち、ショルダーボルト6とコイルスプリング7により、スライドコアホルダーa4をスライドコアホルダーb5から隙間9分だけ、離すように働く。
【0025】
図4に示される溶融樹脂を金型へ流し込む型閉め時には、固定側部品にてスライドコア3およびスライドコアホルダーa4が上方から押圧されているため、コイルスプリング7はたわみ、スライドコアホルダーa4とスライドコアホルダーb5は合わさった状態となっている。この状態で成形部に溶融樹脂を流し込む。溶融樹脂が固化した後の型開き時には、
図5に示すように、スライドコア3およびスライドコアホルダーa4が固定側部品の押さえから解放される。そして、スライドコア3およびボルトで結合されたスライドコアホルダーa4がコイルスプリング7の力で、スライドコアホルダーa4とショルダーボルト6との隙間9分持ち上がった状態となる。溶融樹脂が冷却されて固化すると、図に示すように、上方に樹脂収縮方向の力が働いている。スライドコア3が持ち上がることで成形品8の収縮に追従するかたちとなり、樹脂の食付きによる離型抵抗が緩和され、メクレなどの変形を防止することができる。特に、樹脂収縮方向と交差する方向の穴部や凹部80におけるメクレなどの変形を防止することができる。
【0026】
本実施例の射出成形金型によれば、成形部(型枠)を形成するスライドコア3を樹脂収縮に追従して移動可能とし、型開き時に樹脂の収縮に金型部品であるスライドコア3を追従させることで、メクレなどの変形を発生させずに、高品質な成形品の提供を可能にすることができる。