(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023017935
(43)【公開日】2023-02-07
(54)【発明の名称】血液ボリュームを見積もる方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/49 20060101AFI20230131BHJP
【FI】
G01N33/49 Z
【審査請求】有
【請求項の数】46
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022178844
(22)【出願日】2022-11-08
(62)【分割の表示】P 2019558341の分割
【原出願日】2018-01-11
(31)【優先権主張番号】62/445,067
(32)【優先日】2017-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519251427
【氏名又は名称】サイファー・メディカル,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100211236
【弁理士】
【氏名又は名称】道下 浩治
(72)【発明者】
【氏名】カルー,クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】リーン,ジエン
(72)【発明者】
【氏名】デュペリア,ハロルド・ティー,ザ・サード
(57)【要約】 (修正有)
【課題】外科手術中に収集される生物学的体液などの体液中の血液ボリュームの概算のための方法、器具及びデバイス。
【解決手段】本方法及び本デバイスは、ポリDADMACなどのRBC凝集剤と、その種類の動物ための概算の血液ヘマトクリット値と、さらには、使用される収集デバイスに対応する計算されるRBC詰込比との使用を含む。さらに、血液インジケータパネル(BIP)が提供され、この血液インジケータパネルが、観察される赤血球沈下ボリュームと、その種類の動物の平均ヘマトクリット値と、収集デバイスのための計算されるRBC詰込比「η」値とから計算される一連のマーキングを備える。さらに、小児科(約200mlから250ml)、成人(約1,000ml~1,500ml)、および獣医学(約500ml~2,500ml)の収集容器が開示され、これが、体液中の血液ボリュームを概算するのに使用されるためのRBC凝集剤を有する。
【選択図】
図18
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者から得られる体液中の血液ボリュームを概算するための視覚的方法であって、
RBC凝集剤を含有する容器の中に、既知のヘマトクリット値を有する被験者からの体液のいくらかのボリュームを受け取るステップと、
RBCの安定した沈降が可能となるのに十分な時間で前記容器の中の沈下RBCのボリュームを視覚的に決定するステップと、
前記体液中の血液のボリュームを決定するステップであって、前記体液中の血液ボリュームの視覚的概算を提供するために、RBCの前記安定した沈降のレベルが、前記容器のRBC詰込比および平均ヘマトクリット値のために較正される、ステップと、
を含む、
視覚的方法。
【請求項2】
前記RBC凝集剤が、約1200mlのボリュームを有する容器の中で約0.3%から約0.75%までの量のポリDADMACである、請求項1に記載の視覚的方法。
【請求項3】
前記被験者が人間である、請求項1に記載の視覚的方法。
【請求項4】
被験者が獣医学の動物である、請求項1に記載の視覚的方法。
【請求項5】
生物学的体液中の血液のボリュームが、式
Vm=Vb×Hct×η
に従って計算されるボリュームVbである、請求項1に記載の視覚的方法。
【請求項6】
少なくとも2つの入口ポートと、RBC凝集剤と、約100ml、約250ml、約500ml、約1000ml、約1,200ml、または約2,000mlのボリューム容量と、を備える、容器。
【請求項7】
前記RBC凝集剤が、約0.3%から約0.75%までの量のポリDADMACであり、前記容器の前記ボリューム容量が約1,200mlである、請求項6に記載の容器。
【請求項8】
一連の較正される血液ボリュームマーキングを備え、前記マーキングが前記容器の容積測定用の液体測定に対応していない、請求項6に記載の容器。
【請求項9】
キャップを備え、前記キャップが吸引管を受けるのに適する少なくとも1つの入口ポートと、前記容器に真空吸引を加えるのに適する第2のポートとを有する、請求項6に記載の容器。
【請求項10】
RBC凝集剤と、一連の較正される血液ボリュームマーキングと、少なくとも2つのポートと、設置用のループ状部分と、約250ml、約500ml、約750ml、約1,200ml、または2,500mlのボリューム容量とを備える、折り畳み式の体液収集容器。
【請求項11】
前記RBC凝集剤がポリDADMACを含む、請求項10に記載の折り畳み式の体液収集容器。
【請求項12】
体液中の血液ボリュームを概算するために使用される血液インジケータパネルであって、前記パネルが、哺乳類の血液を含む液体中の概算の血液ボリュームに対応する一連の較正されるマーキングを備える、血液インジケータパネル。
【請求項13】
前記較正されるマーキングが、RBC凝集剤の存在下での収集デバイス内の沈下RBCのボリューム測定と、体液収集デバイスの所定のRBC詰込比と、対象の動物の平均ヘマトクリット値とから計算される、請求項12に記載の血液インジケータパネル。
【請求項14】
前記RBC凝集剤がポリDADMACを含む、請求項13に記載の血液インジケータパネル。
【請求項15】
前記一連の較正されるマーキングが、前記収集デバイス中の液体のメートル法の容積測定尺度を示さない、請求項13に記載の血液インジケータパネル。
【請求項16】
前記一連の較正されるマーキングが、前記収集デバイス中に収集される成人から得られた体液物質中の血液ボリュームの概算値を提供し、前記血液インジケータパネルが、前記成人からの血液の平均ヘマトクリット値と、約1200mlのボリュームを有する収集デバイスのために決定されるRBC詰込比と、に適合するように較正される、請求項13に記載の血液インジケータパネル。
【請求項17】
前記動物が、馬、人間、または雌牛である、請求項12に記載の血液インジケータパネル。
【請求項18】
1200mlの収集キャニスタの中に配置されるのに適する、約1200mlのボリュームを有するバッグを備える、請求項10に記載の折り畳み式の体液収集容器。
【請求項19】
前記バッグが血液インジケータパネルを備え、前記血液インジケータパネルが、前記バッグ内に含有される液体中の血液ボリュームの視覚的評価を提供するための較正される一連のマーキングを備える、請求項18に記載の折り畳み式の体液収集容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]本出願は、その全体が本明細書に組み込まれる、2017年1月11日に出願される米国仮特許出願第62/445067号の優先権を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
[0002]手術中、血液、生理的食塩水、およびいくつかの事例では小組織が被験者の身体から抜かれ、収集容器の中に収集される。通常、このような抜くプロセスは吸引を伴う。収集キャニスタ内の成分が、多くの事例で、少なくともいくらかのボリュームの血液を含む。しかし、含まれる血液のボリュームは任意の程度の精度で評価することが困難である。被験者の健康にとって失血評価が非常に重要であるが、失血評価は、現在、担当の医療専門家/麻酔専門医により、外科手術中に採用される生理的食塩水ユニット(saline unit)をカウントすることを伴う粗雑な技法のみによって評価されている。手術の最後に、通常、麻酔専門医が全体の手術中に使用された生理的食塩水のボリュームを決定してこの生理的食塩水のボリュームを収集キャニスタの中の収集された混合物質の合計のボリュームから減算することにより、失血の量を見積もることになる。
【0003】
[0003]血液はRBCから構成され、RBCは、手術時に収集される血液/体液の混合物を沈澱させるのに多くの時間を必要とする(3時間から6時間にわたる)。沈下RBCボリュームの読取値も提供するのにも時間がかかることとは別に、沈下RBCボリュームは、血液の必要量を評価するための血液ボリュームの十分な概算値を提供しないことが分かっている。失血を見積もるための現在の技法は課題を伴うものであり、これには、ヒューマンエラー(「使用された」生理的食塩水バッグを数えること、残留生理的食塩水の詳細を明らかにすること)、および従来の血液含有体液の分析に関連する深刻な時間的制約、が含まれる。
【0004】
[0004]外科的事象中の失血を正確に見積もることができないことは、患者にとっての多数の潜在的な深刻な健康問題(health complication)を引き起こすことになり、さらには医療コストも増大させる。例えば、失血が低く見積もられると、被験者に対して必要な輸血を提供することに失敗する可能性がある。さらにこれにより、多くの事例において、被験者が貧血となり、この場合は患者を安定させるために入院を延長することが必要となり、および/またはこれは死亡に繋がる場合もある。失血を過度に見積もる場合は、不必要な輸血および/または不必要な医学的介入が行われる可能性があり、さらには血液ユニットが無駄になる可能性がある。また、このようなことにより、疫病伝播のリスクが増大する可能性もある(例えば、HIV、肝炎)。
【0005】
[0005]医療技術では、失血を正確に見積もるための技法および器具を改善することが依然として必要とされる。体液中の血液ボリュームをより正確に監視および概算するための方法が必要とされている。より正確な血液ボリュームの概算を実現するのに適する体液収集製品も必要とされており、これは、不必要な医療処置およびその結果として行われる介入に付随する医療コストを低減する働きをすることになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
[0006]概して、また全体的な意味として、本発明は、液体中の、また特には外科手術中に収集される液体中の、血液ボリュームをより高い信頼性で正確に概算するための、器具、デバイス、および方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[0007]本開示では、血漿含有体液、生理的食塩水、または任意の他の体液(例えば、尿)から分離される赤血球(RBC:red blood cell)ボリュームの特性評価が、絶対的な分離または完全な分離(absolute or total separation)を意味するのではなく、体液中のRBCの安定した沈降の概算を意味することを理解されたい。RBC沈降は室温で評価されるものであり、重力(遠心分離ではない)による試料液体中のRBC沈下に関連する。
【0008】
[0008]液体中の血液ボリュームを概算するための方法。一態様において、RBC凝集剤を使用して、人間または獣医学の動物などの哺乳類からの失血を測定するための方法が提供される。この方法は、いくつかの実施形態では、RBC凝集剤を中に有する容器の中に液体を提供することを含み、ここでは、液体中に含有される血液中のRBCが沈降することになり、それより、視覚的で実質的に同時的なRBC沈降ボリュームを可能にする。沈下RBCボリュームは液体中の血液ボリュームに等しくないが、RBC沈降ボリュームが液体中の血液ボリュームを概算するのに使用される。この方法は、RBC凝集剤の存在により観察されるRBC沈降ボリュームと、収集デバイスのアスペクト比と、平均ヘマトクリット値とを採用して、液体中の血液ボリュームの視覚的に確認可能な概算を実現する。本デバイスおよび本方法を使用する、血液を含有するかまたは可能性として血液を含有する液体/体液中の血液ボリュームの視覚的に確認可能な概算は、本明細書で説明される技法を使用して、1時間未満で達成され得、また15分~30分の範囲の迅速さで達成され得る。RBC凝集剤の存在によりRBC沈降を実現するために促進される非常に短い時間枠と、その結果としての概算の血液ボリュームの視覚的評価とにより、患者の健康状態が維持されるという、さらには医療従事者の要員が大幅に節約されるという、有利な利点が得られる。
【0009】
[0009]本方法はまた、液体中の血液の存在を検出するのに使用され得、またこの手法で、血液汚染物質の存在のために、材料(食材、水、製薬品など)を試験するのに使用され得る。対象となる材料が本明細書で説明されるRBC凝集剤に接触するように配置され、RBC沈降の存在のために検査される。RBC沈降は材料中の血液の存在を示すものである。
【0010】
[0010]血液インジケータパネル。いくつかの態様では、血液を含有するかまたは血液を含有することが疑わしい体液中の血液ボリュームの概算に相互に関連付けられるように較正される所定の区分を有する血液インジケータパネル(BIP:Blood Indicator Panel)が提供され、さらには、特定の哺乳類(人間/人間ではない動物)からの血液のための専用のBIPを用意するための方法が提供される。所定のBIPに関連付けられる特定の収集デバイスも提示される。
【0011】
[0011]BIPが、RBC凝集剤の存在により、体液中の血液ボリュームの概算を提供するために、任意の従来の体液収集デバイスおよび/または収集バッグと共に使用され得る。BIPが、評価されている血液タイプの見積もりの平均ヘマトクリット値と、さらには、収集される血液含有体液のための決定されたデバイスに充填されたRBCボリュームと、を組み込む計算を採用する。BIPは、具体的には、獣医学(ウマ、ウシ、イヌ、ネコ)、人間、および人間用途(成人、幼児)のために提供される。BIPを参照することは、収集デバイス上での沈下RBCボリュームとの相互参照により、混合体液/混合液体中の血液ボリュームを見積もるための効率的な手法を提供する(個別の計算を実施することを必要としない)。いくつかの実施形態では、BIPが従来の容積測定尺度を用いずに使用され得、液体中の血液ボリュームを確認するための較正された血液ボリュームのマーキングのみを有する。このような事例では、血液のタイプおよびデバイスが、沈下RBCレベルを参照することなく概算される血液ボリューム測定値を提供するように予め較正されている。
【0012】
[0012]体液/液体中のRBC凝集剤およびRBC凝集。一態様では、RBCを凝集させるのに適しており、それにより重力によるRBCの沈降を促進するような、特定の凝集剤が示される。RBC凝集剤が存在しない場合での体液中のRBCが沈下するのに必要となる数時間と比べて、手術中にまたは他の医療手術の事象中に収集される、吸引物または他の手術流出液などの生物学的体液との組み合わせで、RBC凝集剤が、約15分から約30分の範囲内など、混合体液中でのRBCの迅速な沈降を促進する。
【0013】
[0013]本発明の説明で使用される場合の凝集は、血液を含むかまたは可能性として血液を含む体液中での、RBCのクラスターの合着または形成として定義される。したがって、この方法は、本明細書で開示される方法に従って物質中のRBCおよび概算の血液ボリュームを検出するのを実現することにより、血液汚染物質を検出するのに、さらには物質中の血液量を定量化するのに使用され得る。
【0014】
[0014]潜在的に血液を含む体液には、生理的食塩水、手術吸引物、尿、胆汁、他の生物学的廃棄物、唾液、組織標本、消化液、脳脊髄液、リンパ、腹水、羊水、およびこれらの任意の混合物または組み合わせ、が含まれる。この点に関して、実質的には、安定した沈下RBCのレベルを提供することを目的として室温で約30分未満の範囲内でRBCの合着を促進することができる任意の構成成分または化学剤が、本デバイスを提供することを目的とするための、および本発明で使用されるためのRBC凝集剤として有用であるとみなされる。実質的には、負電荷を帯びたRBCに対して正の表面荷電を加えることができる任意の構成成分または化学成分が、本デバイスおよび本方法の一部として、RBC沈降の速度を向上させるのに十分であることに加えて、RBCのより迅速な合着または凝集を促進するのに有用であると考えられる。
【0015】
[0015]血液含有体液中に存在するRBCはRBC凝集剤の存在により互いに結合され、このようにしてより重い粒子を形成し、これらの重い粒子が、中に試料/材料を収集しているところの容器/ボトル/管/折り畳み式バッグまたは他のベッセル内で沈下する。RBCが沈下すると、沈下RBCのボリュームが記録され、哺乳類(動物/人間)の所定のヘマトクリット値と、収集ベッセルに関連付けられる計算されたRBC詰込比と、共に採用されて、液体中のまたは混合された収集標本中の概算の血液ボリュームの実時間の推定値を提供する。
【0016】
[0016]いくつかの実施形態では、凝集剤はポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(ポリDADMAC)である。実質的には、好適には約15分の範囲内で、物質がRBCの互いに対しての凝集作用(aggregation)を促進することできさらにはRBCの凝集時間を短縮することができさらには安定した沈降のレベルを形成することができる限りにおいて、任意の物質または化学物質が本発明の実施におけるRBC凝集剤として使用され得る。RBC凝集剤の量は、約60分未満の範囲内で、体液中に存在するRBCの安定した沈降を促進するのに十分であるべきである。いくつかの実施形態では、RBC凝集剤の量は、遠心分離なしで、室温において、約5分内、約10分内、約15分内、約20分内、約25分内、または約30分内で、あるいは約5分から約20分の時間範囲内で、体液中のRBCの安定した沈降を促進するのに十分である量であるべきである。RBC凝集剤の量は、血液を含む液体などの、液体中のRBCの表面にカチオン電荷を加えるのに十分でなければならない。
【0017】
[0017]RBC凝集剤として使用されるための分子および物質には、高分子RBC凝集剤および非高分子RBC凝集剤が含まれる。高分子RBC凝集剤の場合、RBC凝集剤が、
少なくとも、約100,000Da、約200,000Da、300,000Da、または400,000Daの分子量、またはこれらの混合物を有さなければならず、相対的に正電荷を有さなければならない。例えば、高分子RBC凝集剤には、PEI、PAM、ポリ(aciylamide-co-acrylate)、またはRBCの表面に正電荷を加えることができる任意の他の相対的に高い分子量(約1,400,000Da以上)の正電荷を帯びたポリマー、が含まれてよい。非高分子RBC凝集剤には、HClまたは他の酸性分子などの、酸が含まれてよい。
【0018】
[0018]他の適切な高分子量のカチオンポリマーRBC凝集剤が、1つまたは複数のカチオンモノマーのビニル付加重合、および1つまたは複数のカチオンモノマーと1つまたは複数のカチオンモノマーとの共重合などの、重合によって調製され得る。カチオンモノマーRBC凝集剤はカチオンモノマーを使用して形成され得るが、カチオン帯電性ポリマーを製造するのに特定の非イオンのビニル付加ポリマーを反応させることも可能である。この種類のポリマーには、マンニッヒ誘導体を製造するためのジメチルアミンおよびホルムアルデヒドに対してのポリアクリルアミドの反応を介して調製されるようなポリマーが含まれる。
【0019】
[0019]RBC凝集剤は、油中水型乳剤として、または水の中で分散した状態として、水溶液中で固体形態として使用され得る。RBC凝集剤として採用され得る代表的なカチオンポリマーには、メタクリル酸ジメチルアミノエチル(DMAEM);ジメチルアミノエチルアクリラート(DMAEA);アクリル酸ジエチルアミノエチル(DEAEA);メタクリル酸ジエチルアミノエチル(DEAEM)、を有する(メタ)アクリルアミドのコポリマーまたはターポリマー、あるいは硫酸ジメチル、塩化メチル、または塩化ベンジルを用いて作られる、それらの四級アンモニウムの形態、が含まれる。代替的実施形態では、RBC凝集剤が、ジメチルアミノエチルアクリレート塩化メチル第四塩-アクリルアミドコポリマー、アクリル酸ナトリウム-アクリルアミドコポリマー、および加水分解ポリアクリルアミドポリマーを含むことができる。
【0020】
[0020]RBCが、収集デバイス内で、またはRBC凝集剤を有する、収集デバイスの寸法に従うように設計される折り畳み式バッグの中で、沈下した後、沈下RBCボリュームが、血液ボリューム概算値を提供するように較正されている、収集デバイスおよび/または折り畳み式バッグ上の段階的なマーキングを使用して見積もられ得る。詰込比ηが決定され得る。詰込比ηは、遠心分離後のRBCボリュームに対しての沈下RBCボリュームを使用して計算される。詰込比が決定されると、失血ボリューム(Vb)などの合計の血液ボリューム、または収集デバイスの中の収集体液中の合計の血液量が、沈下RBCボリューム(Vm)、被験者のヘマトクリット値(Hct)(または、複数の同様の被験者から決定される平均HCT)、および詰込比ηを用いて、以下の式に従って、見積もられ得る:
Vb=Vm/(Hct×η) 1)
【0021】
[0021]通常、凝集剤がない場合、RBC沈降速度または赤血球沈降速度(ESR:erythrocyte sedimentation rate)が比較的低いか、または肉眼では検出不可能である(
図18を参照)。凝集剤の存在なしで遠心分離なしで室温で収集容器内でRBCが沈下するのには数時間または数日かかる可能性がある。任意の特定の作用メカニズムに限定することを意図しないが、これは、少なくとも部分的に、RBC間に自然に存在する静電反発力を原因とする可能性がある。これはRBCが自然に負電荷を帯びているからである。RBC凝集剤のポリDADMACなどの、RBC凝集剤が存在する場合、RBC沈下速度が大幅に向上する。RBC凝集剤が存在する場合、RBC沈降が約20分未満で起こり、安定したRBC沈降ボリュームを形成し、これが肉眼で容易に視認可能である。RBC沈降ボリュームの観察可能な変化が毎分約0.5%未満である場
合、RBC沈降ボリュームが本方法の目的のためには十分に安定であるとみなされる。
【0022】
[0022]キャニスタ、収集バッグ、および容器。収集に適するおよび失血の視覚的な見積もりに適する、キャニスタ、収集バッグ、および容器を含めた、収集デバイスが提供される。収集デバイスは、円形、正方形、八角形、円筒形、円錐形、または実質的に任意の構成、の形態をとることができる。収集デバイスは十分に透明であるべきであるか、または収集デバイス内の沈降RBCなどの物質のレベルの視覚的な検出を少なくとも可能にする程度で不透明であるべきである。収集デバイスが、ハードプラスチックまたはガラス、またはプラスチック材料などの、固体材料または可撓性材料のデバイスであってよい。収集デバイスが、デバイス自体のボリュームと、RBC凝集を促進するのに適するRBC凝集剤の量とに関連付けられる一連の容積測定区分を有することができる。RBC凝集剤はまた、遠心分離なしで、室温で、凝集剤に関連付けられるRBCの30分未満、もしくは、約5分未満、約10分未満、約15分未満、またはさらには約20分未満の範囲内での沈下を可能にするのに十分な分子量を有するものとして説明され得る。RBC凝集剤は一定の乾燥重量の凝集剤として収集デバイス内に設けられよいか、キャリア溶液中の一定量の凝集剤として収集デバイス内に設けられてよいか、または収集デバイス上のプレコーティングとして設けられてよい(少なくとも1つの表面に、表面全体に、部分的な領域に、またはデバイスの内側に沿うストリップとして、一様にコーティングされる、などである)。これらの説明は例として提供されるものであり、本デバイスおよび本方法の使用および実施のために構想され得るような潜在的な実施形態を限定することを意図されない。
【0023】
[0023]以下のリストが、提示されている、処理されたおよび/または凝集剤を含有する収集容器の例示の説明を提供する。
【0024】
[0024]1,200mlの容器(例えば、キャニスタ構成を有する)、5mlおよび/または10mlの段階的なマーキング、1つまたは複数の入口ポート、ならびに1つまたは複数の出口ポート(第1の入口ポートのところで管を通してレセプタクルの中に体液を引き入れるために吸引力を加えるのに適する管に取り付けられるのに適する)。
【0025】
[0025]500mlの容器(例えば、キャニスタ構成を有する)、1mlおよび/または5mlの段階的なマーキング、1つまたは複数の入口ポート、ならびに1つまたは複数の出口ポート(第1の入口ポートのところで管を通してレセプタクルの中に生体液を引き入れることを目的として吸引力を加えるのに適する管に取り付けられるのに適する)。
【0026】
[0026]100ml、250ml、または500mlの容器(キャニスタ構成または円錐構成を有する)、1mlおよび/または5mlの段階的なマーキング、1つまたは複数の入口ポート、1つまたは複数の出口ポート。ここでは、少なくとも1つの入口ポートが、吸引力を適用して体液または他の物質を容器の中に引き入れるための管を取り付けるのに適する。これらのデバイスは、特には、小児科での使用またはより小規模の外科手術(洞手術)に適用可能である。
【0027】
[0027]500mlの折り畳み式エンベロープ(1mlおよび/または5mlの段階的なマーキングと、1つまたは2つの入口ポート(再密閉可能)と、第1の入口ポートのところで管を通してレセプタクルの中に体液を引き入れるための吸引力を加えるのに適する管を取り付けるのに適する1つまたは複数の出口ポートと、を有する)。
【0028】
[0028]100ml、200ml、250ml、300ml、400ml、500ml、1,200ml、および2,500mlのボリュームの折り畳み式エンベロープ(任意選択で、5mlおよび/または10mlの段階的なマーキングを有する)、1つまたは2つの入口ポート(再密閉可能)、ならびに1つまたは複数の出口ポート(第1の入口ポート
のところで管を通してレセプタクルの中に体液を引き入れることを目的として、バッグを真空デバイスに接続するための管を取り付けるのに適する)(
図13)。折り畳み式バッグは、生理的食塩水バッグ容器の場合と同様に、プラスチック材料から用意されるべきであり、ポリDADMACなどの適切な量の凝集剤を含有することになる。また、折り畳み式バッグは、ivポールなどの取付具にバッグを吊り下げるのを容易にするための一方の端部のところに位置するハンドルまたは他のループ状部分(
図13、♯10)をさらに有することになる。さらに、BIPがバッグに含まれてよいかまたはバッグに対してのアタッチメントとして配置されてもよく、BIPが、収集体液中に含有される血液のボリュームの概算の測定値を視覚的に確認可能にするのを実現することになる。バッグが、生理的食塩水バッグおよび供給バッグの場合に一般的であるように、従来の容積測定マーキングをさらに有することができる。
【0029】
[0029]100ml、250ml、および500mlの円錐収集レセプタクル(任意選択で、1ml、5ml、および/または10mlの段階的なマーキングを有する)、RBC凝集剤、1つまたは2つの入口ポート(再密閉可能)、ならびに1つまたは複数の出口ポート(第1の入口ポートのところで管を通してレセプタクルの中に体液を引き入れることを目的として吸引力を加えるのに適する管を取り付けるのに適する)。これらのより小さい収集デバイスは、より少量(約500ml未満)の血液ボリュームの監視ためのという特定の用途を有し、より高い精度を達成する。これらのより小さいデバイス、および/または円錐レセプタクルのサイズに特有の較正される血液ボリュームマーキングを有する、より小さいデバイスの中に嵌合されるように設計される折り畳み式バッグが、特には、新生児、小児科、および他の深刻な外科的状況で有用である。
【0030】
[0030]体液中の血液ボリュームおよび失血を見積もる方法。別の態様では、液体中の血液ボリュームを見積もる方法が提供される。特定の実施形態では、この方法が、外科手術中に収集される体液からの、患者からの血液ボリュームロスを見積もるのに使用される。
【0031】
[0031]この方法が、収集デバイス内での重力によるRBC沈降を可能にするのに十分な時間において、相対的な正電荷をRBCの表面に加えるのに適する、RBC凝集剤を有する収集デバイスの中にいくらかのボリュームの液体を収集することを含む。十分な時間後の沈降RBCのボリュームが、体液中の動物/人間の血液のタイプの見積もられるヘマトクリット値と共に、上記式1を使用して収集液体中の概算血液ボリューム値を計算することを目的として、特定の収集デバイスのために決定される計算されるRBC詰込比と共に使用される。別法として、本発明の一部として、血液インジケータパネル(BIP)と称される較正マーキングパネル内でこれらの計算が行われ、血液インジケータパネルが血液収集デバイス内に含まれ得る。したがって、凝集剤を含有する収集デバイス内で収集される体液中のRBCが沈降するとき、迅速で視覚的な血液ボリューム評価が実現され得る。いくつかの実施形態では、BIPが、50ml、100ml、200ml、400ml、および600mlの見積もられる血液ボリュームに合致する較正マーカーと、従来の1200mlのキャニスタなどで一般的であるように、従来的な容積測定のマーキング(例えば、5ml毎、10ml毎)を有する体液収集デバイス内でBIPに位置合わせするための容積測定アライメントマーキングとを有することになる。
【0032】
[0032]血液ボリューム評価システム。体液収集キャニスタならびに/あるいはエンベロープおよび管類システム。本発明はさらに、血液ボリューム区分を用いて較正される、適切な量のRBC凝集剤を有する上記のレセプタクルのうちの任意の1つまたは複数のレセプタクルと、ある領域からレセプタクル上の第1のポートの中へと体液を吸引するのに適する第1の長さの管類と、レセプタクルの中に真空を加えるための、吸引力の供給源およびレセプタクルの第2のポートに接続されるのに適する第2の長さの管類と、を有することになるキットを提供する。このシステムがキットとして提供され得、インストラクショナルインサート(instructional insert)をさらに有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】[0033]200ulの3倍希釈のSuperfloc C-591のストック溶液と混合した50mlの20%、40%、および65%のウシ血液を示す図である。1-収集キャニスタ、2-沈下RBCのレベル(重力による)、3-沈下RBCのレベル(重力による)、4-沈下RBCのレベル(重力による)、6-キャニスタ内の合計の体液レベル、7-キャニスタ内の合計のレベル、10-凝集剤。
【
図2】[0034]多様な赤血球沈降速度を有する多様なアスペクト比を有する容器を示す図である。1-目盛り付きの円錐管、2-円錐管上の0.5mlの間隔を有する目盛り、3-沈降RBCのレベル(重力)、4-100mlの収集キャニスタ、5-キャニスタ内の合計の体液レベル、6-沈降RBCのレベル(重力)、10-凝集剤
【
図3A】[0035]経時的な沈下ボリューム変化(生理的食塩水中の30%血液)、30%の血液濃度を有する血液/生理的食塩水の混合物試料の場合のRBC沈降ボリュームの経時的な変化を示すグラフである。
【
図3B】経時的な沈下ボリューム変化(生理的食塩水中の40%血液)。40%の血液濃度を有する血液/生理的食塩水の混合物試料の場合の赤血球沈降ボリュームの経時的な変化を示すグラフである。
【
図3C】経時的な沈下ボリューム変化(生理的食塩水中の65%血液)。65%の血液濃度を有する血液/生理的食塩水の混合物試料の場合のRBC沈降ボリュームの経時的な変化を示すグラフである。
【
図3D】経時的な平均のRBC沈降ボリュームを測定するための実験のセットアップを示す図である。1-ガラスの目盛り付きのシリンダ、2-沈降RBC(重力)、2-合計の体液レベル。
【
図4】[0036]左側から右側へと、それぞれ、53.33%、40%、および26.7%まで生理的食塩水で希釈されたときの10mlの80%血液中のRBCの沈降を示す図である。すべての濃度が等しい充填RBCボリュームまで沈下した。1-凝集剤を有する1200mlの収集キャニスタ、2-沈下RBCレベル、3-キャニスタ内の合計の体液。
【
図5A】[0037]ivポール(6)上にある凝集剤およびキャップ(15)を有する収集キャニスタ(8)を備える手術室を示す図である。キャップ(15)が、吸引ポート(2)と、入口ポート(4)と、真空ポート(11)とを有する。入口ポート(4)が必要に応じて収集キャニスタに生理的食塩水または他の希釈剤を加えるのに使用され得る。収集キャニスタ(8)が血液インジケータパネル(BIP)(5)を有することができる。吸引ポート(2)が管(1)を受け、管(1)が、患者(7)の外科手術中に手術野から生物学的体液を吸引するのに使用される。
【
図5B】収集キャニスタ(8)が、吸引ポート(2)と、入口ポート(4)と、真空ポート(11)とを有するキャップ(15)を有する図である。患者から吸引された体液が真空ポート(11)を通して収集キャニスタへと引かれる吸引力を介して、収集キャニスタ(8)の中へと抜かれることになる。
【
図6】[0038]キャリア溶液の凝集剤材料の超音波噴霧化(3、4、5)による容器の内壁に対して粒子状懸濁液(4)が塗布され得るときの凝集剤を示す図である。任意の従来の超音波噴霧化デバイス(2)およびシリンジポンプが、例えばポリDADMACなどの凝集剤を用いて、1200mlのキャニスタなどの収集デバイスをコーティングするのに使用され得る。
【
図7A】[0039]超音波噴霧化デバイス(3)を使用しての、1200mlのキャニスタなどの収集容器(1)の表面(2)上へのポリDADMACコーティング(凝集剤粒子(10))の塗布を示す図である。
【
図7B】表面上へのポリDADMACコーティングの2つのバッチを用いて処理される1200mlのキャニスタ(1)を示す図である(凝集剤粒子、10)。
【
図8】[0040]キャップ(1)を有する凝集剤(10)で処理されるキャニスタを示す図であって、キャップ(1)が、いくらかのボリュームの血液混合物を有する容器に対して一定の長さの管類(4)によりキャニスタを接続する第1の入口ポート(4)と、キャニスタの中に吸引力を発生させることを目的として一定の長さの管類を通してキャニスタを真空源に接続する第2の真空ポート(5)とを有する。
【
図9A】[0041]20%の血液/生理的食塩水の混合物の実験の場合における20分の時間にわたってのRBC沈下ボリュームの変化を示すグラフである。合計の血液/生理的食塩水混合物のボリュームは、200mlである。血液ボリューム(沈下していないRBCボリューム)の概算を実現するためにBIPの一部としてマーカーが作られている。
【
図9B】20%の血液/生理的食塩水の混合物の実験の場合における20分の時間にわたってのRBC沈下ボリュームの変化を示すグラフである。合計の血液/生理的食塩水混合物のボリュームは、400mlである。血液ボリューム(沈下していないRBCボリューム)の概算を実現するためにBIPの一部としてマーカーが作られている。
【
図9C】20%の血液/生理的食塩水の混合物の実験の場合における20分の時間にわたってのRBC沈下ボリュームの変化を示すグラフである。合計の血液/生理的食塩水混合物のボリュームは、800mlである。血液ボリューム(沈下していないRBCボリューム)の概算を実現するためにBIPの一部としてマーカーが作られている。
【
図9D】20%の血液/生理的食塩水の混合物の実験の場合における20分の時間にわたってのRBC沈下ボリュームの変化を示すグラフである。合計の血液/生理的食塩水混合物のボリュームは、1200mlである。血液ボリューム(沈下していないRBCボリューム)の概算を実現するためにBIPの一部としてマーカーが作られている。
【
図10A】[0042]40%の血液/生理的食塩水の場合における20分の時間にわたってRBC沈下ボリュームの変化を示すグラフである。合計の血液/生理的食塩水混合物のボリュームは、200mlである。
【
図10B】40%の血液/生理的食塩水の場合における20分の時間にわたってRBC沈下ボリュームの変化を示すグラフである。合計の血液/生理的食塩水混合物のボリュームは、400mlである。
【
図10C】40%の血液/生理的食塩水の場合における20分の時間にわたってRBC沈下ボリュームの変化を示すグラフである。合計の血液/生理的食塩水混合物のボリュームは、800mlである。
【
図10D】40%の血液/生理的食塩水の場合における20分の時間にわたってRBC沈下ボリュームの変化を示すグラフである。合計の血液/生理的食塩水混合物のボリュームは、1200mlである。(注釈:各チャートのボリューム測定値が、凝集剤を用いて処理される1200mlのキャニスタのために用意されるマーカーから得られる。血液ボリュームの概算値を表すために血液インジケータパネル(BIP)の一部としてマーカーが提供される。マーカーが、約20ml程度で変化する可能性がある、血液ボリューム(沈下していないRBCボリューム)の概算値を提供すると見積もられる。)
【
図11A】[0043]ポリDADMAC(凝集剤粒子、10)でコーティングされる1200mlのキャニスタ(1)の中の20%のウシ血液/生理的食塩水の混合物の場合において10分~15分で観察されるRBCの安定した沈下を示す図である。キャニスタ上の容積測定区分に従って、キャニスタ内の沈下RBCボリュームが、約110mlのボリュームレベル(2)と、950mlの合計のボリューム(3)とにおいて観察された。
【
図11B】ポリDADMAC(凝集剤粒子、10)でコーティングされる1200mlのキャニスタ(1)の中の40%のウシ血液/生理的食塩水の混合物の場合における約15分~20分後のRBCの安定した沈下を示す図である。キャニスタの従来の容積測定区分に従って、キャニスタ内の沈下RBCボリュームが、約240mlのボリュームレベル(2)と、約1150mlの合計のボリューム(3)とにおいて観察された。
【
図12】[0044]凝集剤で処理される3つのキャニスタ(左側から右側へ、I、II、およびIIIが付される)が、血液インジケータパネル(4)を有するように用意されている。示されるように、血液インジケータパネル(4)が分離されるインジケータパネルとして提示され、キャニスタ上の従来の容積測定マーキングに並ぶように設けられ得る。血液インジケータパネルが、血液ボリュームの概算値を提供する一連の較正されるマーキングを有する。各キャニスタ内で検査される血液/生理的食塩水の混合物が、50%の血液(I)、30%の血液(II)、および20%(III)である。キャニスタ12IIIのBIP(垂直方向の白色棒を参照されたい)が、凝集剤(凝集剤粒子、12)の存在時の約50mlの沈下RBCレベルを示しており、これが約116mlの較正BIP読取値に対応する。
【
図13】[0045]BIP(20)と、入口ポート(3)と、容器上に配置されることになる真空ポート(4)と、生理的食塩水または他の希釈剤を加えるのを可能にするための第2の入口ポート(15)とを有する、凝集剤を有する折り畳み式のプラスチックバッグの血液レセプタクルを示す図である。バッグが、静脈ポールまたは他の取付具の上にバッグを配置するのを可能にするように適合されるフック(10)をさらに有するべきである。
【
図14】[0046]BIP(5)と、RBC凝集剤(4)と、入口ポート(2)と、真空ポート(6)と、第2の入口ポート(3)とを有する、凝集剤(臨界ボリューム、小児用途)を有する円錐収集デバイスを示す図である。
【
図15】[0047]BIPを示す図である。1200mlの収集容器と共に使用されるのに適する典型的なBIPが、少なくとも以下の較正される概算の血液ボリューム:50ml、50ml、100ml、200ml、400ml、および600ml、のためのマーカーを有することができる。BIPが、最大約50%未満の血液を含有する収集体液中の血液ボリュームの正確な概算値を提供することになる。BIP(20)が、較正される一連の血液ボリュームマーキング、6(50ml)、7(100ml)、8(200ml)、9(400ml)、および10(600ml)を有する。BIPが容積測定の沈下RBCボリューム基準ツール(1)と並ぶように示されており、この基準ツール(1)が、15(約25ml)、4(約50ml)、3(約125ml)、および2(約250ml)である、収集デバイスの従来の容積測定の測定値を有する。沈下RBCのボリュームは、収集体液中の血液のボリュームの直接的な測定値(BIP上に示される)を提供するものではない。代わりに、沈下RBCレベルは基準点であり、この基準点から概算の血液ボリュームが視覚的に確認され得る。
【
図16A】[0048]コントロールの(熱処理されない凝集剤でコーティングされるキャニスタ)、および実験の(熱処理される凝集剤でコーティングされる)キャニスタでの、RBC沈降の速度のチャートデータ。1000mlの20%の血液の生理的食塩水混合物を使用して試験を実施した。熱処理されたキャニスタが、キャニスタの中に導入される20%および40%の血液/生理的食塩水の混合物の両方において、3分間、凝集剤含有キャニスタに接触させて、RBCを凝集させる能力を維持した。
【
図16B】コントロールの(熱処理されない凝集剤でコーティングされるキャニスタ)、および実験の(熱処理される凝集剤でコーティングされる)キャニスタでの、RBC沈降の速度のチャートデータ。500mlの40%の血液の生理的食塩水混合物を使用して試験を実施した。熱処理されたキャニスタが、キャニスタの中に導入される20%および40%の血液/生理的食塩水の混合物の両方において、6分間、凝集剤含有キャニスタに接触させて、RBCを凝集させる能力を維持した。
【
図17A】[0049]高温の時間経過した凝集剤でコーティングされたキャニスタ(高温処理されていない凝集剤のキャニスタ(パネルII(20%の血液))と比較されるパネルI(20%の血液))での、ウシ血液からのRBCの沈下を示す図である。
【
図17B】高温の時間経過した凝集剤でコーティングされたキャニスタ(高温処理されていない凝集剤のキャニスタ(パネルII(40%の血液))と比較されるパネルI(40%の血液))での、ウシ血液からのRBCの沈下を示す図である。
【
図18】[0050]ウマ血液の調査を示す図である。凝集剤を有するかまたは凝集剤を有さない100mlの容器の中でのRBC沈降の比較(容器上の治療単位の(course)容積測定マーキングを使用する視検から概算される容積測定読取値。凝集剤を有する100mlの容器のRBC沈降。凝集剤を用いる10%の血液(w/F);凝集剤を用いる20%の血液(w/F);凝集剤を用いる30%の血液(w/F);凝集剤を用いる40%の血液(w/F);凝集剤を用いる50%の血液(w/F);凝集剤を用いる65%の血液(w/F)。試験時間(0分から25分)にわたって室温で検査した、凝集剤を用いない10%の血液(w/o F);凝集剤を用いない20%の血液(w/o F);凝集剤を用いない30%の血液(w/o F);凝集剤を用いない40%の血液(w/o F)(図示せず);凝集剤を用いない50%の血液(w/o F)(図示せず);凝集剤を用いない65%の血液(w/o F)、の混合物では、RBCの視覚的に検出可能な沈降が観察されなかった)。
【
図19】[0051]ウマの新鮮な血液の調査を示す図である。凝集剤でコーティングされた1200mlのキャニスタの中での61.6%の血液/生理的食塩水の混合物からのRBC沈降。約400mlの新鮮なウマ血液を250mlの生理的食塩水と組み合わせた。RBC沈降のボリュームを記録した。RBCが1分以内で沈澱し始めた(500mlのRBC沈降ボリューム)。15分までにRBCが約300mlのボリュームまで沈下し、観察期間の終了時までこの沈降ボリュームで安定した状態を維持した。
【発明を実施するための形態】
【0034】
[0052]特に明記しない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語が、本開示の関連する当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書で説明される方法および器具に類似するかまたはそれらと等価である任意の方法および器具が本テクノロジの実施または試験で使用され得るが、本明細書では好適な方法および器具が説明される。
【0035】
[0053]本明細書で使用される場合の「凝集剤」という用語は、室温での体液中のRBCの合着を促進することができ、さらには遠心分離なしで室温で30分未満で沈下RBCマスを形成することができる、カチオン電荷を有する分子を意味することを意図される。
【0036】
[0054]文脈が単一の要素のみが存在することを明確に必要としない限りにおいては、不定冠詞「a」または「an」により要素に言及することは2つ以上の要素の存在の可能性を排除しない。したがって、不定冠詞「a」または「an」は通常は「少なくとも1つ」を意味する。
【0037】
[0055]本明細書で使用される場合の「患者」または「被験者」は、癌または他の悪性腫瘍の徴候またはそのような危険を有する個人を意味する。患者は人間または人間ではない動物であってよく、例えば、馬、犬、雌牛、豚、または他の動物などの、動物を含んでよい。同様に、患者または被験者には、成人または若年者(例えば、子供)を含めた人間の患者が含まれてよい。さらに、患者または被験者は、好適には哺乳類(例えば、人間、または人間でない動物)である、任意の生物を意味してよく、その生物から、血液ボリュームを決定することが所望され、および/または血液ボリュームの、本明細書で企図される配合物の投与により決定および/または監視を行うことが所望される。
【0038】
[0056]本明細書で使用される場合の「約」は、記載される濃度、長さ、分子量、pH、配列同一性、時間枠、温度、またはボリュームなど、の値の統計的に意味のある範囲内にあることを意味する。このような値または範囲は、通常、所与の値または範囲の、20%の範囲内、より一般的には10%の範囲内、さらに一般的には5%の範囲内にあるような、指標の範囲内にあってよい。「約」によって包含される許容される変化は調査下の特定のシステムに依存することになり、当業者には容易に認識され得る。
【0039】
[0057]以下の実施例は本発明の好適な実施形態の実証のために提示されるものである。
【0040】
実施例1-RBC凝集剤
[0058]本実施例は、血液を含有するかまたは血液を含有することが疑わしい流体中のRBC凝集剤として使用され得る物質を提示する。表1の以下の化学物質がRBC凝集剤として提供され得る。
【表1】
【0041】
実験室試験及びダウンセレクション
[0059]表1に列記される確認されるすべての化学物質を試験して適性に関して評価した。Innovative Research(ミシガン州、ノバイ)から購入されるウシ全血を使用して、RBC凝集剤として上記の各化学物質の適性を決定した。全血は、抗凝血物質としてクエン酸ナトリウムを含有する。生理的食塩水を用いて全血を希釈して以下の血液濃度を提供した:20%、30%、40%、50%、65%、および80%。これらを本調査で検査した。
【0042】
[0060]ゼラチンがRBC凝集作用を誘発したが、沈降を引き起こさなかった。最終的に、ゼラチンが全体の血液/生理的食塩水の混合物試料をゲル構造へと変質させた。血漿および生理的食塩水からRBCを分離しないと、ゼラチンはこの用途には適さない。
【0043】
[0061]デキストラン80+CaCl2も、血漿および生理的食塩水からRBCを分離することなく、血液/生理的食塩水の混合物試料をゲルへと変質させた。
【0044】
[0062]1.8%の高濃度酸の6N HCLを加えることにより血液/生理的食塩水の混合物試料の酸処理を実施した。試料のpHが約4.5まで変化した。この酸処理がRBCの凝集作用および沈降を引き起こした。しかし、比較的多量の強酸を使用することはこの用途においてコスト効率的ではなく、また、強酸はプロセスにおいて取り扱うことが困難である。したがって、酸処理はESRを向上させるために使用され得る。
【0045】
[0063]正電荷を帯びたポリマーであるPEIは、血漿および生理的食塩水からのRBC沈降を引き起こした。PEIは酸性条件下(つまり、pH<7.0)で溶解されなければならない。言い換えると、血液を含有する生物学的体液中でのRBC沈降を促進するためにPEIが使用され得る前に、中性pHにおいて血液/生理的食塩水の混合物試料が、pHを下げるために最初に酸を加えられることを必要とする。PEIおよびポリDADMACの相対的有効性を比較した。PEIによって誘発されるESR(赤血球沈降)はポリDADMACのESRより低いことが分かった。PEIは、血液を含有する生物学的物質(体液)でのRBCのための許容される凝集剤である。
【0046】
[0064]PAMは負電荷または正電荷のいずれかを帯びていてよいポリマーである。負電荷を帯びたポリマーは負電荷を帯びたRBCの凝集および沈下を誘発しない。正電荷を帯びたPAMはこの用途のために使用されると予期され得る。
【0047】
[0065]ミョウバンは正電荷を帯びた分子である。ミョウバンは低速のESRを促進したが、その速度および量は大幅に低い。凝集剤の相対分子量は適切な凝集剤としての使用のために考察された。その理由は、凝集剤の相対分子量が重力によるRBCの沈下を促進するからである。PEIおよびポリDADMACを用いた研究で、このようなポリマーのより高い分子量が、より迅速なRBC沈降を引き起こすことが分かった。
【0048】
[0066]ポリDADMACは別の1つの正電荷を帯びたポリマーである。また、ポリDADMACは中性pHで水溶性である。血液/生理的食塩水の混合物試料の存在時のポリDADMACはRBC沈降を迅速に引き起こす能力を有する。沈降を引き起こすためにポリDADMACの重量は少量のみ必要である。血液を含有する生物学的混合物中の血液の量に比例して必要となるポリDADMACのフラクションを決定するための定量調査を以下に説明する。また、これらの調査は、過度の量のポリDADMACがRBC沈降を妨害または停止さえする可能性があることを示した。これはRBCが正電荷を帯びたポリDADMACによってコーティングされるかまたは囲まれることが理由である可能性があり、これはコーティングされるRBCが負電荷ではなく正電荷により互いに反発してそれにより凝集作用および沈降を妨害および/または防止するからである。
【0049】
[0067]低コストで高分子量(少なくとも100KDa、200KDa、300KDa、または約400KDa)の正電荷を帯びたポリDADMACが、RBC沈降を迅速に誘発するための好適なコスト効率の高い凝集剤として確認された。他の高分子の正電荷を帯びたポリマー凝集剤(例えば、PEI、PAMなど)も本方法の実施および容器ベッセルの形成に有用である。RBC沈降を実現するための方法の一部として酸処理も有用であることも予期される。
【0050】
実施例2-失血の見積もり
[0068]本実施例は、体液中に含有されるRBCのための効果的な凝集剤としてのポリDADMACの材料と、血液、および生理的食塩水を含めた他の液体、を含有する体液中の合計の血液ボリュームを見積もるためのこの凝集剤の使用と、を実証する。
【0051】
[0069]高分子量(少なくとも、100KDa、200KDа、300KDа、または400KDа)の研究グレードのポリDADMACを、産業グレードポリDADMACと共
に、Sigma-Aldrichから入手した(カタログ番号409022または409030)。産業グレードの製品は「Superfloc C-591」の製品名でKemira Chemicalから市販されおり、20%の濃度のポリDADMACを含有する。この物質が水処理で使用される。研究グレードの製品と産業グレードの製品との間で有効性を比較するための調査を実施した。この調査により、Superfloc C-591が研究グレードの製品と同様のRBC沈降の結果をもたらすことが分かった。産業グレードの製品のコストは研究グレードの製品のコストより低い。C-591の純度はばらつきがあり、それによりRBC凝集にいくらかの違いが出た。研究グレードおよび産業グレードのポリDADMACの使用では、20wt.%である水のストック溶液を水を用いて6.67wt.%の希釈標準溶液まで希釈して、溶液の粘性を低下させ、取り扱いの容易さを向上させた。1200mlの収集キャニスタのための凝集剤の乾燥重量は、ポリDADMACで600mgであった。
【0052】
[0070]RBC沈降を促進するのに必要である凝集剤の量。Superfloc C-591(製造業者から入手される(粘性液、H2O中で20wt.%))をRBC凝集剤をとして使用して、ウシ血液と生理的食塩水の混合物を試験した。より迅速なRBC沈降速度を促進するために必要な凝集剤の量を検査した。混合物中のRBCの許容される迅速性(15分以内)を実現するために、約0.4%(v/v%)のみのSuperfloc C-591の希釈標準溶液を全体の血液/生理的食塩水の混合物のボリュームに加えることが必要であることが分かった。例えば、1リットルの血液/生理的食塩水の混合物試料では、混合物中の血液濃度に関係なく、4mlのみのSuperfloc C-591の希釈標準溶液が必要である。これは、1.2リットルのキャニスタのための約320mgのポリDADMACの凝集剤へと換算される。
【0053】
[0071]
図1は、それぞれ、20%、40%、および65%の血液濃度(図の左側から右側)を有する3つの50mlボリュームの血液/生理的食塩水の混合物試料を示す。等しい量の200μl(つまり、50mlの0.4%)のSuperfloc C-591の希釈標準溶液を加えて、これらのすべての血液濃度での赤血球沈降を誘発した。しかし、以下で考察するように、特定の混合物での血液の濃度に応じて沈降速度が異なることが分かった。
【0054】
[0072]また、試験により、より低いまたはより高い濃度のSuperfloc C-591の希釈標準溶液が使用され得ることが分かった。例えば、0.3%(v/v%)程度の低さおよび0.6%(v/v%)の程度の高さの濃度も有効であることが分かったが、正確な上限および下限は決定していない。6%(v/v%)の濃度のSuperfloc
C-591の希釈標準得溶液を、20%の血液濃度を有する血液/生理的食塩水の混合物試料に加えることで、最小限の沈下を誘発することが分かったが、これは沈降のための上限とはなり得ない。
【0055】
[0073]血液容器(レセプタクルまたはキャニスタ)のアスペクト比。実験中、RBC沈降速度が、部分的に、容器のアスペクト比D:Hによって決定されることが分かった。ここでは、例えば
図2に示されるように、Dが容器の直径であり、Hが容器の高さである。アスペクト比D:Hは容器の形状に依存する。D:Hが大きいときに沈降速度が高い。その理由は、Dが大きいと、凝集RBCが重力により沈下するための領域またはスペースが大きくなるからである。したがって、異なる血液収集容器(または、キャニスタ)が使用される場合、沈降速度が異なることになる。
【0056】
[0074]実験中に分かった別のことは、血液/生理的食塩水の混合物試料を加える前にSuperfloc C-591を容器の中に配置する場合に、さらには既に容器を血液/生理的食塩水の混合物試料で充填した後でSuperfloc C-591を容器に加え
る場合に、Superfloc C-591凝集剤が沈降RBCを凝集させることである。
【0057】
[0075]沈降速度および血液濃度。本調査により、また、血液/生理的食塩水の混合物中の血液濃度がRBC沈降速度に影響を与えることが示された。ここでは、高い濃度を含有する試料に対して低い血液濃度を有する試料では沈降速度が高い。
図3A、3B、および3Cが、例えば、それぞれ、30%、40%、および65%の血液/生理的食塩水の混合物試料中のRBCの沈降速度を示す。
【0058】
[0076]沈降速度の違いを判断するためにこれらの研究において目盛り付きのガラスシリンダ(
図3D)を使用した。この実験では、30%、40%、および65%の血液濃度を有する3つの60mlの血液/生理的食塩水の混合物試料を使用した。最初に、Superfloc C-591の希釈標準溶液の240μL(つまり、60mlの0.4%)の液滴をガラスシリンダに加えた。次いで、60mlの血液/生理的食塩水の混合物試料をガラスシリンダに加えた。ガラスシリンダ内の体液層の明瞭な差異によりRBCの分離を視覚的に観察した。ここでは、沈下RBCがシリンダの底部に向かうようなより不透明な体液層であり、血漿/生理的食塩水層が沈下RBC層の上方にあるより明瞭な体液層である。シリンダの段階的なマーキングを参照することによりシリンダ内の沈下RBCボリュームを記録し、これを毎分記録した。
【0059】
[0077]時間0において視覚的分離が開始されていないために、時間0において沈下RBCボリュームを60mlに設定した。時間0の後、RBCが血漿/生理的食塩水層から沈下し始め、初期では高い沈降速度で容器の底部に向かって沈下するが、沈降速度は経時的に低下する。この点に関して、血漿/生理的食塩水層から分離されたRBCの量が増大するにつれて、血漿および生理的食塩水から分離することになるRBCが減ることになる。最終的に、RBC沈降速度が非常に低くなり、RBCボリューム変化速度が毎分0.5%未満になる。この時点で、沈下RBCのボリュームが安定したとみなされる。言い換えると、沈下RBCのボリューム変化が毎分0.5%未満の場合に安定した沈降が達成される。Vmとして示される「充填RBCボリューム」は、RBC沈降を安定したとみなす場合の容器の底部のところのRBC層のボリュームである。
【0060】
[0078]
図3Aが、凝集剤と混合したほぼ直後に30%の血液濃度を有する血液/生理的食塩水の試料混合物がRBC沈降を開始したことを示している。沈降の大部分が1分以内に完了した。試料を凝集剤と混合した約10分後に安定したRBC沈降が達成された。安定した充填RBCボリュームV
mが約9.5mlであった。40%の血液濃度を有する血液/生理的食塩水の混合物試料の場合、沈降速度がわずかに低かった(
図3B)。大部分のRBCの沈降のほとんどが、30%の血液濃度の試料の場合に観察された1分ではなく、2分で起こった。40%濃度の試料場合の安定した沈降は約15分で達成され、V
mは約14mlであった。65%血液濃度の試料の場合、沈降はより低速であった(
図3C)。安定した沈降を観察するまでに60分以上かかった。血液/生理的食塩水の混合物中の血液ボリュームを判断するための方法は、50%以下の血液を含有する液体において最適で一貫性があった。迅速な沈降とは、室温で凝集剤を加えてから15分以内で生理的食塩水/血液の混合物中のRBCの安定した沈降を達成することを特徴とする(沈下中に混合物をかき混ぜない)。
【0061】
[0079]体液中の血液濃度を約50%未満で維持するのを保証するために、血液(最適なRBC分離のため)、追加の生理的食塩水、または他の血液希釈剤が加えられ得る。高濃度の血液を有する血液/生理的食塩水の混合物でも依然として迅速な沈降を達成することができることが分かった。沈降速度の低下が見られる場合に沈降は再開することができる1つの手法として、追加のボリュームの生理的食塩水を加えて血液をさらに希釈すること
ができる。
図4に示されるように、3つのボトルの中に、80%血液濃度(クエン酸ナトリウムの抗凝血物質を含有するウシ血液)を有する3つの10mlの血液/生理的食塩水の混合物試料を用意した。すべての試料を、30μL(10mlの約0.3%)のSuperfloc C-591希釈標準溶液(約2mgの乾燥重量のSuperfloc C-591)と混合した。試料の希釈前には沈降が観察されなかった。血液濃度を希釈するために、各ボトルに生理的食塩水を加えた。
図4の左側から右側へ、5ml、10ml、および20mlの生理的食塩水を加えて、試料を、53、3%、40%、および26.7%の血液濃度までそれぞれ希釈した。容器をわずかにかき混ぜて加えた生理的食塩水を試料と混合した。希釈時、RBCが沈降し始めた。
【0062】
[0080]26.7%血液濃度の混合物および40%血液濃度の混合物が約10分で安定した沈降を達成した。53.3%血液濃度の混合物が約16分で安定した沈降を達成した。
図4に示されるように、存在する生理的食塩水の量が異なっていても、すべての3つの試料の最終的な充填RBCボリュームV
m(つまり、容器の底部のところのより暗い底部層)が等しい。この結果は、最初の10mlの80%血液濃度の混合物が等しい量の8mlの血液ボリュームを含有することを理由として、達成された。この調査から以下のことが示された:1)RBC沈降速度の向上させるのを補助することを目的として血液/生理的食塩水の混合物を希釈するためにさらなる生理的食塩水が加えられ得ること、および2)容器の底部に凝集したRBCのボリューム(つまり、充填RBCボリューム)が血液/生理的食塩水の混合物中の生理的食塩水の量の影響を受けないことを理由として合計の血液ボリュームがRBCの沈降を介して見積もられ得ること。
【0063】
[0081]上記で考察される他の凝集剤または他の化学処理を用いて、最適な凝集剤濃度および血液/生理的食塩水比を決定するために、上で概説した試験プロトコルを使用するさらなる試験を行うことができることに留意されたい。
【0064】
[0082]再現性。40%血液濃度(クエン酸ナトリウムの抗凝血物質を含有するウシ血液)の混合物(
図10A)を使用してRBC沈降の調査を3回繰り返した。
図10Aのプロット中の線の多様なポイントで標準偏差誤差バーが示されている。この実験の再現性は非常に良好であり、特に沈降が安定に近づくときの線上のポイントのところでの再現性が良好であった。線上のポイントでのより長い標準偏差誤差バーによって示されるように初期状態では比較的大きいばらつきが生じるが、これらのばらつきは、これらのポイントのところで沈下RBC層の迅速なボリューム変化により生じる視覚的読み取り誤差による可能性が高い。沈降が安定に近づくとデータのばらつきが非常に小さくなる。言い換えると、沈降が安定しているとき、充填RBCボリュームV
mのばらつきが小さい。
【0065】
[0083]合計の血液ボリュームの見積もり。合計の血液ボリュームの見積もりの実現可能性を実証するために、沈降RBCボリュームV
mに基づく血液/生理的食塩水の混合物中の合計の血液ボリュームを見積もるためのアルゴリズムを開発した。実際のRBCボリュームがV
cとして示され(遠心分離によって決定される)、合計の血液ボリュームがV
bとして示され、患者のヘマトクリット値がHctとして示される場合、以下の関係が得られる。
【数1】
【0066】
[0084]Hctは手術前に測定される患者データから入手可能であり、Vmは上述の方法に基づいて測定可能であることから、VmとVcとの間の詰込比(η)の値が経験的に事前に決定される場合(詰込比ηを決定するための方法を実証する方法および実施例が本明
細書で提示されている)、合計の血液ボリュームVbが見積もられ得る。
【0067】
[0085]詰込比ηの値は血液タイプごとに異なっていてよい(例えば、人間対人間ではない動物)。また、詰込比の値は、血液を収集するのに使用される容器のサイズおよび形状(アスペクト比)によって変化する可能性があることから容器固有である可能性がある。この点に関して、リコール試験(recall test)が、容器の形状の影響を受けるESR(赤血球沈降速度)を示している。したがって、等しい血液タイプおよび血液測定のための等しい容器形状が使用される場合、詰込比ηは等しい値を維持する。
【0068】
[0086]詰込比ηは、既知のヘマトクリット値と、血液/生理的食塩水の混合物中の既知の血液ボリュームとを使用することによって経験的に決定される。好適には、詰込比ηの値は、多様な既知の血液濃度を有する複数の血液/生理的食塩水の混合物からの平均の詰込比の値を得ることによって決定されることになる。この点に関して、同じ種の動物(ウシ、ウマ、人間)からの血液と、所定のサイズおよび形状を有する容器とを用いて調査を行うことにより、本明細書で説明される凝集剤の存在により、多様な既知の血液/生理的食塩水の濃度の混合物を検査して、適切な詰込比ηが計算され得る。検査される異なる血液/生理的食塩水の混合物の数が増大すると、得られる平均の詰込比の値の統計的信頼性が上がることになる。上で考察したように、収集体液の血液濃度は、いくつかの実施形態では、約50%以下の血液である。加えて、一般的であるような数の被験者(動物/人間)のから得られる複数のヘマトクリット値から平均のヘマトクリット値が決定され得る。ヘマトクリット値は、当業者には既知であるような伝統的な毛細管遠心分離の方法(capillary centrifugation method)を使用して計算され得る。特定の収集事象中の血液ボリュームが既知である場合、人間のグループまたは馬のグループなどの、1つグループの動物の平均のヘマトクリット値が、本明細書で説明される式および方法で使用され得る値Vcを提供することになる。
【0069】
[0087]上述したように、詰込比ηの値は、好適には、所定の収集容器の中にある1つグループの血液/生理的食塩水の混合物試料から計算される平均の詰込比の値である。RBC凝集剤の存在によって促進されて、実際のRBCボリュームVcおよび沈下RBCボリューム(通常は重力によるもの、室温)Vmが複数の個別の試料に対して決定されることになり、平均の詰込比の値が決定されることになる。実際のRBCボリュームVcを決定するために、混合物試料に加えられる血液のヘマトクリット値が、その試料に加えられた血液ボリュームに掛け合わされる。
【0070】
[0088]次いで、充填RBCボリュームVmが、上述したように、容器上の従来の容積測定の段階的なマーキングを使用して各混合物試料に対して決定され得る。つまり、凝集剤が存在することで、RBC沈降のボリュームを読み取ることによりVmが決定され得る。本方法の一部として、等しいタイプおよび等しい量(全体の体液混合ボリューム中の濃度)のRBC凝集剤が収集容器に加えられるべきである。表2に示されるように、凝集剤であるポリDADMACの濃度が変化させられる場合でも、詰込比ηが比較的一定を維持した。したがって、凝集剤濃度の範囲(全体の液体ボリューム中の凝集剤の、約0.3%、0.4%、および0.75%の凝集剤の範囲)が、詰込比に有意に影響を与えることなく、RBC沈降を誘発するのに使用され得る。加えて、表2中のデータは、凝集剤濃度が比較的一定を維持する場合に詰込比が液体混合物(血液/生理的食塩水)中の血液ボリュームの量の影響を比較的受けないことを実証する。
【0071】
[0089]各混合物試料の、実際のRBCボリュームVcおよび沈下した充填RBCボリュームVmを用いて、各試料(つまり、各々の多様な血液濃度の混合物)における詰込比ηの値が決定され得る。この場合、平均の詰込比の値が計算され得る。例えば、ウシ血液の場合、計算した平均の詰込比が1.61であった(表2を参照)。
【0072】
[0090]詰込比の値の経験的決定を実証するために、商業的供給メーカーから購入したウシ血液の詰込比の値ηを決定した。これらの血液物質はクエン酸ナトリウムを含有する(抗凝血物質として)。ボリューム(ml)のための目盛りを付けられたプラスチックキャニスタを使用した。これが
図4に示されている。結果が以下の表2に示される。実験前に、複数のウシ血液試料からウシ血液の平均ヘマトクリット値Hctを計算して、37.3%の平均値を有すると判断した。この平均Hctを以下の表で使用し、試料中の血液ボリュームの本発明の概算で使用した。個別のHct値を決定するために伝統的な毛細管遠心分離の方法を使用した。
【0073】
【0074】
[0092]これらの実験から結果として得られた詰込比の値は比較的小さいばらつきを示した。これらの実験では、上記のチャート内のすべての血液/生理的食塩水の混合物試料の血液濃度が50%未満である。その理由は、生理的食塩水を加えることにより、より多量の血液を有する混合物を希釈して50%未満の血液を有する混合物を提供することができるからである。Hctが37.3%であり、平均詰込比ηの値が1.61に等しいことが判明した後、血液/生理的食塩水の混合物の全体の血液ボリュームが以下の式(式1から得られる)を使用して見積もられ得る。
【数2】
【0075】
[0093]上記の式の1.67という数字は1/37.3%(平均Hct)×1.61(表2からの平均η値)の計算値である。
【0076】
[0094]以下の表は、上記の式および本明細書で説明される技法を使用して決定される血液ボリュームの計算を介して決定される試料中の血液の概算ボリューム(ml)と比較される、各試料中に存在することが既知である実際の血液の間の比較を提示する。これらの結果が、RBC凝集剤(例えば、ポリDADMACなどの高分子凝集剤)の存在時における、哺乳動物血液(例えば、ウシ血液)を含有する液体試料中の血液ボリュームの概算値を提供するのに、本明細書で提供される式および技法が使用され得ることを実証している。加えて、これらのデータは、収集された混合された血液/生理的食塩水の液体試料中に存在する概算の血液ボリュームが、液体中の実際の血液ボリュームと密接な相互関係を有することを示す。
【表3】
【0077】
[0095]表2に記載される20%血液は、1000mlの体液混合物ごとにおいて、200mlウシ血液と800ml生理的食塩水とから構成される。
【0078】
実施例3-体液収集キャニスタ
[0096]本実施例が、RBC凝集剤を有する特定の体液収集容器の用意を実証する。
【0079】
[0097]血液含有液体収集容器。以下の実施例で使用される体液収集容器は
図7Bに示される1200ml吸引キャニスタである。このキャニスタ(1)に対してポリDADMACである凝集剤を塗布した。この凝集剤はキャニスタの底部および壁に分散凝集剤粒子(2)の薄層として現れる。
凝集剤-ポリDADMAC。ポリDADMACの供給源としてKemiraの「Superfloc C-591」を使用した。この製品の純度品質は一定していなかった。したがって、Sigma Aldrichバージョンの高分子量(200~350KDa)の20%ポリDADMAC(Sigmaカタログ♯409022)を使用した。結果により、SigmaバージョンのポリDADMACが試験結果を大幅に向上させることが示された。しかし、実質的には、本発明の実施においてさらには本明細書で説明される凝集剤を含有する処理される体液収集容器の作成において、任意の数の多様な供給源の凝集剤が使用され得ることが見込まれる。
【0080】
実施例4-血液含有混合物の血液ボリューム概算のための、1200ml収集キャニスタのための凝集剤としてのポリDADMACの最適化
[0098]手術室内で、未知のボリュームの血液を含めることになるいくらかのボリュームの体液を収集するために生物学的体液廃棄物収集キャニスタが使用され得る。1200mlのキャニスタボリューム中の血液のボリュームは10mlから1200mlの範囲で変化してよい。また、収集体液中の血液ボリュームは、動物の具体的な種と、性別と、患者の重量とに応じて、またさらには実施される特定の医療手術に応じて、変化する可能性がある。しかし、一般的な成人の人間の外科手術中の収集キャニスタ中の収集体液中の血液ボリュームは、一般的には、約20%から約50%の血液を含有する。標準的な病院の手術設備で使用される血液ボリューム決定のための従来の技法は、ほとんどの時間において少なくとも50%~75%で不正確であるような血液ボリュームの概算的な見積もりしか提供せず、外科手術を完了して数時間後にしか利用可能とならない。
【0081】
[0099]多くの事例において、外科手術中に吸引される体液中の血液量は50%以下である。体液が50%を超える血液を含有するような事例では、本方法および本デバイスが、RBC凝集剤であるポリDADMACの存在による体液中のRBCの沈降を促進することを目的として、血液濃度を低下させるために、体液に生理的食塩水または他の希釈剤を加えることにより、血液ボリュームを正確に決定するのに使用され得る。
【0082】
[0100]本実施例は、血液ボリュームの比較的正確な見積もりを達成するのに使用され得るポリDADMACなどのRBC凝集剤の比較的一定の量が約50%以下の血液濃度を含有する体液である、ことを実証する。これが、RBC凝集剤を含有する較正されたキャニスタの中の沈下RBCのボリュームを視覚的に読み取ることによって達成される。この場合、混合物の血液ボリュームを決定するための計算において、沈下RBCのこのボリュームが使用される。混合物中の血液ボリュームを正確に概算するのには沈下RBCボリュームの値のみでは不十分である。
【0083】
[0101]3つの異なる血液/生理的食塩水の混合物において40%の血液のテストを試験した。試験した40%血液/生理的食塩水のボリュームは、200ml、800ml、および1200mlであった。Sigma-AldrichのポリDADMAC(水中の20wt.%)の水溶液を生理的食塩水を用いて希釈して、水中で6.67wt.%のポリDADMACの希釈標準溶液を提供した。この調査における凝集剤の概算の量を提供するためにこの希釈標準溶液を使用した。
【0084】
[0102]表4が、検査される40%血液/生理的食塩水の混合物の各々のボリュームにおいて最適な量の凝集剤を提示する。最適な量の凝集剤は、混合物からの最も高い速度の赤血球沈降を実現するのに必要である凝集剤の量として示されている。検査した各々の混合物ボリュームのRBCがキャニスタ内での視覚的に認識可能なレベルの沈降を達成した。ここでは、室温で血液/生理的食塩水の混合物を凝集剤と組み合わせてから約15分後に、比較的明瞭な体液が、沈下RBCの視覚的に識別可能なメニスカスの上方に観察された。混合物中に提供された凝集剤の量に応じて沈降速度が変化することが観察された。
【0085】
[0103]表4から、約0.75mlから約1.5mlの凝集剤希釈標準溶液(flocculant working solution)(約50mgから約100mgの乾燥重量のポリDADMAC)の平均値が、100mlのボリュームの血液/生理的食塩水の混合物中での迅速なRBC沈降を促進するのに最適であった。約1200mlのボリュームを有するより大きい1,200mlキャニスタの場合、最大1,200mlのボリュームの血液/生理的食塩水の混合物では、約9mlのポリDADMACの凝集剤希釈標準溶液(つまり、約600mgの乾燥重量のポリDADMAC)がキャニスタの底部またはキャニスタの壁に設けられることになり、それにより迅速なRBC沈降を促進する。以下の調査では、100ml(つまり、0.75%v/v)の血液/生理的食塩水の混合物ごとに、約0.75mlから約1.5mlの凝集剤希釈標準溶液を使用した。この濃度値は、産業グレードの凝集剤のSuperflock C-591バージョンのポリDADMACを使用する場合の本明細書で説明した調査で使用される0.4%および0.6%よりわずかに高い。
【0086】
[0104]示される0.75%v/vのポリDADMAC濃度に基づいて、最大1,200ml血液含有体液を収集することができる1,200mlのキャニスタでは、約9mlのポリDADMACの希釈標準溶液(つまり、約600mgの乾燥重量のポリDADMAC)を必要とすることになる。
【表4】
【0087】
[0105]表4は、40%血液/生理的食塩水の混合物の多様なボリュームのためのRBCの沈降を達成するのに最適である凝集剤の量を実証する。示されるように、9mlのRBC凝集剤であるポリDADMAC(約600mgの乾燥重量)が、1200ml血液生理的食塩水混合物のボリュームでの最適なRBC沈降を実現した。
【0088】
実施例5-凝集剤で処理されたキャニスタを用意する方法
[0106]本実施例が、具体的には血液含有体液の、体液収集容器の中におよび/またはその上に凝集剤を設けて分布させることができる種々の方法を説明する。特定の高分子凝集剤であるポリDADMACが本実施例では使用されるが、本明細書で説明される方法およびデバイスを提供するための本発明の実施において多くの他の高分子凝集剤または非高分子凝集剤が使用されてもよい。
【0089】
[0107]キャニスタ壁上の垂直方向の帯状コーティング。1,200キャニスタに、600mgの凝集剤を含有する9mlの物質をコーティングした。キャニスタの中にある2.54cm(1”)の幅の垂直方向の帯の形態でキャニスタをコーティングした。このようにして、血液/生理的食塩水の混合物によって浸漬される凝集剤のみが溶解されるかまたは混合物の中へと解放され、それによりRBC沈降を引き起こす。言い換えると、ポリDADMACコーティングの垂直方向の帯が、血液/生理的食塩水の混合物の量に比例する、制御される形の凝集剤の解放を実現することができる。
【0090】
[0108]垂直方向の帯状コーティングを塗布するのに2つの方法を使用した。1つの方法は、キャニスタ壁に直接に2.54cm(1”)の帯を提供するためにブラシを使用することである。もう1つの方法は、2.54cm(1”)の幅のクリアーテープ上に凝集剤コーティングを塗布して、そのクリアーテープをキャニスタ壁に付着させることである。キャニスタが疎水性表面を有することから、凝集剤溶液を壁上に留まらせておくことが困難である可能性がある。疎水性のキャニスタ壁を親水性へと変化させるためのオゾン処理が開発された。この技法を使用して凝集剤の付着性を向上させた。
【0091】
[0109]垂直方向の凝集剤の帯をコーティングした後で、商業的供給メーカーから購入したウシ血液を用いてキャニスタを試験した。凝集剤の帯を有するキャニスタがRBC沈降を促進した。しかし、沈降速度はある程度低いものであった。RBCがキャニスタの底部のところまで沈下するのに20分以上かかった。一般に、RBC沈降速度は高い方が望ましい。任意の理論または具体的な作動機構のみに限定することを意図しないが、より低い速度は、少なくとも部分的に、凝集剤コーティングが溶解して血液/生理的食塩水のボリューム全体に広がるのに要する時間に関連する可能性がある。単一の帯のコーティングから凝集剤が血液/生理的食塩水の混合物の全体へと広がるのにはより時間を要する。キャニスタ全体に分布されるより薄いコーティングは、凝集剤の溶解および分布を加速すると予期される。
【0092】
[0110]超音波噴霧化テクノロジを使用するキャニスタ全体への一様なコーティング。血液収集キャニスタの内部に対してコーティングを行うのに超音波ベースの方法を使用した。超音波噴霧化コーティングは、それ自体はスプレーコーティングとは異なり、常圧で低速(通常、毎秒7.62cm~12.7cm程度(毎秒3~5インチ程度))のコーディングである。圧電変換器が電気入力を振動の形態の機械的エネルギーへと変換する。高周波音の振動が液体をファインミストスプレーへと噴霧化する(
図6)。圧力を受けない低速のスプレーがオーバースプレーの量を大幅に低減する。その理由は、液滴が基板から跳ね返るのではなく基板上に定着する傾向を有するからである。ミストスプレーパターンが正確に制御および成形され得る。これらの種類の特別なスプレー成形設備を使用することにより、0.178cm(0.070インチ)もの幅の小ささから、0.3m~0.61m(1~2フィート)のもの幅の大きさまでの、スプレーパターンを生成することができる。このプロセスで使用される噴霧化デバイスは60kHzの超音波ノズルを有する。
【0093】
[0111]
図7が超音波噴霧器を使用するキャニスタの手動コーティングプロセスを示す。噴霧器の先端部がキャニスタ壁に沿って移動し、キャニスタの底部から始まってキャニスタの頂部まで段階的に上方に移動する。ミスティスプレーによってコーティングされる領域が透明な壁から曇った表面へと変化し、それにより、キャニスタ壁の全体を覆うことになるように、および視覚的な観察に基づいてコーティングを可能な限り一様にするように、手動コーティングプロセスを案内する。将来的には、一様なコーティングを行うための自動のコーティングプロセスが開発され得る。
【0094】
[0112]多様な濃度のポリDADMACを使用し、乾燥プロセスを加速するためにメタノールおよびエタノールなどの高度に気化したアルコール(high vaporized alcohol)をスプレー溶液に組み込むことにより、複数のパラメータを試験した。ポリDADMAC希釈標準溶液(DI水(脱イオン水)の中に用意した)が、超音波噴霧化デバイスを使用して強度設定「10」で凝集剤を堆積させるために最適なミスティスプレーを提供した(
図7A)。シリンジポンプの設定は60ml/hであった。1,200mlのキャニスタ壁の全体を覆うのに約4.5mlの凝集剤コーティング液が必要であった。したがって、9mlの凝集剤溶液をキャニスタ上に塗布するために、2つのバッチの凝集剤コーティングが必要であった。9mlのボリュームの凝集剤溶液は約600mgのポリDADMACを含有する。
【0095】
[0113]オーブンの内部で数時間かけて、または室温で24時間かけて、各コーティングの間でキャニスタを完全に乾燥することが可能であった。
図7Bが、キャニスタの壁全体に2つのバッチのコーティングを塗布されたキャニスタを示す。より強力な超音波噴霧化デバイスを使用するとコーティング液の濃度を上げることが可能である。この方式では、上述した凝集材料濃度を提供する場合、9mlのボリュームではなく4.5mlの溶液中に含有されるすべてのポリDADMACを供給する場合には、単一のバッチのコーティングを使用することができる。
【0096】
[0114]以下のプロトコルが凝集剤で処理(コーティング)されるキャニスタを用意するための手動ステップを提供する。
【0097】
[0115]コーティングの用意
1.1パート(part)の20wt.%ポリDADMAC(Sigmaカタログ♯409022)を2パートのDI水と混合することによりポリDADMAC希釈標準溶液を用意する。
2.60mlのシリンジにポリDADMAC希釈標準溶液を充填する。
3.超音波噴霧化デバイスを「10」の強度設定に設定する。
4.シリンジポンプの速度を60ml/hrに設定し、4.5mlのボリュームを供給
する。
【0098】
[0116]手動コーティングプロセス
1.超音波噴霧化デバイスをオンにし、キャニスタの底部から超音波ノズルの移動を開始し、キャニスタの壁および底部にミスティスプレーを塗布する。
2.螺旋経路に沿ってキャニスタの底部から頂部まで超音波ノズルを段階的に移動させ、壁上のすべての場所がポリDADMACで必ずコーティングされるようにする。ポリDADMACミストでコーティングした領域が以下の写真で見ると霧状の外見を示す。
3.通常、キャニスタ全体に対して1回のコーティングを行うのに4.5mlの希釈ポリDADMACで十分である。
4.コーティングされたキャニスタを室温で一晩乾燥させる。
5.コーティングの第1の層の乾燥後、上述した手法と同様の手法で第2の層をキャニスタに適用する。2つの層のコーティングの後、合計で9mlの希釈ポリDADMACがキャニスタ上に塗布されることになる。
6.再びキャニスタを一晩乾燥させる。キャニスタを使用する準備が整う。
【0099】
実施例6-ポリDADMACでコーティングされた1200mlキャニスタの詰込比(η)の見積もり
[0117]1,200mlのボリュームを有し、手術室で採用される生物学的廃棄物キャニスタの寸法を有するキャニスタを使用して、ポリDADMACでコーティングされた1200mlのキャニスタを用意した。
図5では、手術室設備の中に典型的な構成のこのようなキャニスタが提供される。最初に、このコーティングされたキャニスタに関連付けられる詰込比ηを決定した。
【0100】
[0118]本調査では商業的供給メーカーから購入したウシ血液を使用した。この血液を冷蔵しておき、試験時に23℃まで温めた。さらに、凝固を防止するためにウシ血液にクエン酸ナトリウムを含有させた。
【0101】
[0119]凝集剤で処理したキャニスタにウシ血液および生理的食塩水を加え、血液/生理的食塩水の所定の比を達成した。定常操作中に血液を含有する液体を収集キャニスタの中に提供するプロセスをシミュレートするために、以下の技法に従って、例えば600mlのボリュームの血液/生理的食塩水の混合物(40%血液)を、凝集剤で処理されたキャニスタに供給した。240mlの血液を有するようにキャニスタAを用意し、360mlの生理的食塩水を含有するようにキャニスタBを用意した。吸引プローブとして血清用ピペットを使用した。管類を介して吸引プローブをキャニスタ上の入口ポート(患者ポート)に接続した。さらに、キャニスタ上の第2のポートを使用してキャニスタを真空ラインに接続し、キャニスタの中に真空を加えるのに真空ラインを使用した。真空下で、血液を有する容器または生理的食塩水を有する容器の中にピペットを配置して、二者択一的に、それぞれの体液を凝集剤含有キャニスタ(ポリDADMAC)の中へと吸引した(
図8)。このようにして、キャニスタの中に合計で600mlの体液ボリュームの40%血液を提供した。
【0102】
[0120]すべての血液および生理的食塩水を第3のキャニスタの中に吸引した後、凝集剤の存在下で血漿および生理的食塩水から離れるRBCの分離/沈下を評価するために混合物を監視した。RBC沈下ボリュームの線を、20分間、毎分記録した。
【0103】
[0121]多様なボリュームの40%血液/生理的食塩水の混合物溶液(200ml、400ml、800ml、および1200ml)を使用して調査を行った。各調査を3回繰り返した。
図10A~10Dが、40%血液混合物を用いて20分間のRBC沈下ボリュームの変化を示す。200ml、400ml、800ml、および1200mlのボリュー
ムの20%血液/生理的食塩水混合物溶液を用いて、やはり調査を3回実施した(
図9A~9D)。キャニスタ内に収集された体液の多様なボリュームおよび多様な血液濃度混合物で有効となるような平均詰込比ηを得ることを目的として、20%および40%の2つの血液濃度、そして、これらの血液濃度の200mlから1200mlのボリュームの4つを検査した。
【0104】
[0122]20%の血液混合物(20%血液/80%生理的食塩水)の場合、凝集剤で処理されたキャニスタ内でRBCが非常に迅速に沈下した。室温において、10分から15分の範囲内で30ml(V
m)のRBCの視覚的に観察可能な沈下に達した(
図11A)。20%および40%血液調製品の4つのすべての異なる全体の混合物ボリュームの、3回繰り返した実験からの平均V
mおよび計算されたV
ic(測定したウシ血液のヘマトクリット値(35.4%)、および本調査で使用される未知の血液ボリュームに基づく)が、表5に列記される。
【0105】
[0123]これらの実験は、室温においてポリDADMACコーティングが血液/生理的食塩水の混合物からの15分の範囲内のRBCの迅速な沈降を促進したことを実証した。凝集剤が存在しない場合の、室温でのこれらの血液/生理的食塩水の混合物の中でのRBCの沈降は3~6時間を要することになる。
【0106】
[0124]詰込比ηの見積もり。上記の実験からのデータを使用して、沈下RBCボリューム(V
m)と実際のRBCボリューム(V
c)との間の詰込比η(式1を参照)が経験的に決定され得る。表5が、1.20の平均値を有する1200mlのMedi-Vacのキャニスタの場合の経験的に決定される詰込比を示す。この詰込比が、200mlから1200mlの広範囲のボリュームさらには広範囲の血液濃度を包含することから、詰込比のばらつきが比較的大きく、13%を超える。また、詰込比のこれらのばらつきは血液ボリュームロスの見積もりのばらつきに影響を与える。個別の血液混合物の各々に対して以下の詰込比ηの値を計算した。次いで、平均値ηを計算した
【表5】
【0107】
[0125]この調査では、使用したウシ血液の平均ヘマトクリット値が35.4%であり、得られた平均詰込比ηが1.2であった。式1のところの式を使用して、凝集剤含有キャニスタの中に収集された体液中の血液のボリュームを見積もるための以下の式を作った。
【数3】
【0108】
[0126]各々の血液混合物1~8の失血の見積もりが以下の表6に提示され、試料中の既知の血液量と比較される。
【表6】
【0109】
[0127]上記の表で実証されるように、本式を使用して計算される失血の量は、体液中
の実際の血液量と相互に関連付けられるものであった。したがって、本方法および本デバイスは、外科的設備(surgical setting)における内科医/医療専門家のための血液ボリュームロスのための同時的(contemporaneous)な視覚的インジケータツールを提供するものであること実証しており、これは従来のアプローチ(生理的食塩水バッグを使用する評価、および/または患者の体液の収集の全体からの手術後における見積もり)より正確である。
【0110】
[0128]電気的手順、温度手順、または他の器具操作手順を一切必要とすることなく、凝集剤の存在下での目盛り付きのキャニスタ内での沈下RBCの観察されるボリューム(ml)に基づいて、上記の式を使用して血液インジケータパネルを案出した。これは収集体液中の全体の血液ボリュームの概算のための直接的な視覚的ツールを提供する。
【0111】
実施例7-生物学的体液レセプタクル中の血液ボリューム評価のための血液ボリュームインジケータパネルの作成
[0129]レセプタクル(凝集剤含有キャニスタなど)の中の沈下RBCの視検を介して使用者が血液ボリュームを容易に見積もることができるようにするために、較正されたマーキングを有する血液ボリュームインジケータパネルが体液収集レセプタクルために提供される。これは、収集レセプタクル中での凝集剤の存在下で沈下RBCのレベルから、収集体液中の全体の血液ボリュームの概算を示すものである。これらの収集レセプタクルは従来の容積測定尺度を含んでも含まなくてもよいと考えられる。
【0112】
[0130]本レセプタクル(キャニスタなど)血液ボリュームインジケータパネルのための段階的なマーキングを作るために、以下の式を使用する:
Vm=Vb×Hct×η 2)
【0113】
[0131]式2は、同程度の年齢、同じ性別の、同じ種からの複数の動物/人間から計算される平均Hctを採用する。例えば、人間の成人男性の場合、平均Hctは約45%である。
【0114】
[0132]この調査では、以下の式を使用して大型の哺乳類のための血液インジケータパネルを作った。
【0115】
[0133]式3
Vm=0.43×Vb
【0116】
[0134]この式は、ウシ血液について計算する場合(表5)、35.4%のウシ血液の平均Hctと、平均詰込比η=1.20とを使用する。
【0117】
[0135]血液ボリュームインジケータパネル上に50mlの見積もり用血液ボリュームマークが設けられ、これは、式3を使用すると、約21.5mlの視覚的に認識可能な沈下RBCボリュームに対応する(表7を参照)。100mlの見積もり用血液ボリューム較正マークが血液ボリュームインジケータパネル上に生成され得、これが、レセプタクルの43.02ml沈下RBCボリュームの線に対応する、などである。
【0118】
[0136]血液ボリュームインジケータパネルの段階的なマーキングが視覚的に認識可能な一連のマーキングを提供し、これが、キャニスタ中の材料のボリュームの測定に関連しないが、キャニスタの中の収集された体液中の血液ボリュームの概算に関連する。典型的な血液インジケータパネル(BIP)の図が
図15に提供される(左側のパネル6を参照されたい。50ml、100ml、200ml、400ml、600mlの較正マーキング)。標準的な容積測定マーキング(
図16を参照。右側のパネル1)を有する従来の収集ベッセル上に血液インジケータパネルを有することで、数学的計算の実施あるいは収集材料または沈降材料の他の操作を必要とすることなく、収集体液中の血液ボリュームの直接的な視角的見積もりを実現することになる。示されるように、BPIの較正されたマーキングで示される血液ボリュームが体液中の沈下RBCの従来のボリュームに一致しない。代わりに、沈下RBCのボリュームが、血液ボリュームの概算値を提供することを目的として、ヘマトクリット値および所定のアスペクト比と共に計算の一部として、使用される。凝集剤が存在しない場合、液体中の血液ボリュームが約3~6時間未満の範囲内での概算を行うことが不可能となる。その理由は、とりわけ、3~6時間ではRBCの十分な沈下がまだ開始されていないからである。加えて、凝集剤が存在する場合、迅速なRBC沈降のみを促進するが、液体中の血液量を迅速には概算しない。本結果で実証されるように、液体中の沈下RBCのボリュームは、既知の血液量を含有する試験体液中に含有されていることが分かっている実際の血液量の約50%未満であった。凝集剤の存在下での沈下RBCのボリュームは、液体中の概算の血液ボリュームを提供するためには、血液の平均ヘマトクリット値および詰込比に対応するようにさらに修正される必要がある。
【0119】
[0137]BIPパネルは平均ヘマトクリット値(Hct)の導出に基づいて作られ、例えば、人間、ウシ、ウマなどの平均Hctに基づいて作られる。性別、種、年齢などを理由とした、個別のHctの差などの、個別の患者/動物のHctの差を修正することを目的として、BIP上に示される概算の血液ボリューム値が、有意に高いかまたは有意に低い個別のヘマトクリット値を修正するファクタによって調整され得る。例えば、患者からの測定されるHct値が低い場合、例えば、人間の成人男性の典型的なHctの80%である場合、その患者のために観察されるパネル上の血液ボリュームインジケータ値が80%で割られ、レセプタクル中の見積もりの血液ボリュームのより近い概算値を提供する。より具体的には、パネル上の血液ボリュームインジケータ値がインジケータパネル上の段階的なマーキングに従って50mlである場合、この患者から収集される生物学的物質中の実際の血液ボリュームが計算されて62.5mlとなり、ここでは、患者のHctが典型的なHct値の80%である。同様に、患者の測定されるHct値が高い場合、例えば典型的な成人男性のヘマトクリット値の110%である場合、血液ボリュームインジケータ
パネル上の血液ボリュームインジケータが110%で割られ、それにより、より低い血液ボリュームを得る。例えば、血液ボリュームインジケータパネル上の血液ボリュームインジケータ値が100mlである場合、その患者の実際の血液ボリュームロスが計算されて90.9mlとなり、それにより平均Hctより高い(例えば、10%高い)患者のための修正を行う。
図8が、血液ボリュームインジケータパネルを有する1200mlのキャニスタを示す。
【0120】
[0138]収集キャニスタ上に配置されているときの特定の血液インジケータパネルが
図12に示される。このBIPは、ウシ血液を使用する20%血液/生理的食塩水の混合物または40%血液/生理的食塩水の混合物のボリュームの血液ボリューム見積もりを実現するために作られたものである。また、この血液インジケータパネルは、液体試料中の人間の血液のボリュームを評価するのに有用となり得る。これは、ウシおよび人間が共に哺乳類であり、ウシおよび人間からの血液が、平均ヘマトクリット値の類似性を含めた、多くの特性を共通して有することが理由である。
【表7】
【0121】
[0139]この調査は、RBC凝集剤であるポリDADMACでコーティングされた生物学的体液収集キャニスタ(1200ml)を使用するBIPのプロトタイプをうまく開発した。このサイズのキャニスタは成人および小児の人間の患者のために手術室で使用される。ウシ血液を使用したこのプロトタイプの評価は、この例示のRBC凝集剤の存在下でのRBCの迅速な沈降と、20分以内の安定したRBC沈降の達成とを示すものであった。特別な設計のBIP上の較正マーキングをこの収集キャニスタのために設計した。これらの較正マーキングは、収集した哺乳類の液体中の全体の血液ボリュームの視覚的見積もりを実現するのに使用され得る。患者の測定されたヘマトクリット値が、較正BIPマーキングを作るのに使用された典型的なヘマトクリット値とは異なる場合、較正血液ボリュームが、百分率の血液ヘマトクリット値を個別の血液ボリュームの量に対応させるように、修正され得る。
【0122】
[0140]以下で、成人男性および成人女性のための平均ヘマトクリット値を提示する:通常のHct値:男性-42~52%(平均Hct、47);女性-37~47%(平均Hct、42)。
【0123】
実施例8-凝集剤を有する100mlキャニスタの作成
[0141]約50mgの凝集剤を含有するための100mlのキャニスタを用意した。この
実施例では、使用されたRBC凝集剤がポリDADMACであった。凝集剤を、本明細書で説明したポリDADMAC希釈標準溶液のあるボリュームとして提供した。
【0124】
[0142]典型的な手術室の設定では、少量のボリュームの血液含有体液および他の物質(組織、尿、非血液体液、など)が手術野から吸引されることになる。これらの体液が吸引されることで、患者から未確定の血液が失われることになる。これらの少量の、場合によっては臨界ボリュームの、収集体液中の失血の見積もりに対応するために、本発明によれば、より小さい容器が用意され得る。したがって、ポリDADMACなどのRBC凝集剤を含有するこれらの100mlのレセプタクルが提供される。この100mlのレセプタクルは少量の収集体液中に血液ボリュームを決定するのに特に有用である。これらのデバイスは、例えば、小児用途(幼児)、さらには臨界ボリュームが低いような体液収集手順で、使用され得る。
【0125】
[0143]この100ml収集デバイスのアスペクト比を計算したら0.96であった。実施例9で説明される調査ではRBC凝集剤を有する小型の100ml容器を使用した。
【0126】
実施例9-新鮮な血液のロスの見積もり
[0144]本実施例は、哺乳類の新鮮な血液を含有する体液(抗凝血物質を有さない)中の失血を見積もるのに使用されための方法およびデバイスの有用性を実証するために提供される。この実施例では、体液中に存在する非血液物質が生理的食塩水であった。本実施例は、新鮮な冷蔵されていない哺乳類の血液のボリュームを使用して失血を見積もるための技法を検査するものである。また、血液はクエン酸カルシウムを含有せず、また任意の他の抗凝血物質も含有しない。本調査では、新鮮な血液標本を成馬から得た。したがって、本デバイスおよび本方法は、人間および獣医学の動物(馬、犬、猫、雌牛、雄牛、羊、豚など)を含めた、哺乳類での失血の概算で特に有用である。
【0127】
[0145]この実施例では、既知の臨床病理を有さずまた任意の既知の薬物療法を受けていない生きている成馬(約12歳、544kg(1,200ポンド)の重量)から血液を収集した。この動物は歩行困難な脚部の治療を受けており、痛みに対処するために神経遮断を施されていた。クエン酸ナトリウム(上の実施例で使用される)などの抗凝血物質を含有する商業的供給メーカーからの収集血液とは異なり、本調査で使用される馬からの収集血液には抗凝血物質または他の薬剤が存在しなかった。
【0128】
[0146]本調査では、合計で100mlのボリューム容量を有する合計で12個のキャニスタを使用した。キャニスタの側部に沿って、50mlの増分および100mlの増分の区分を用いてキャニスタに目盛りを付けた。100mlキャニスタのアスペクト比、D:H(直径対高さ)を計算したら約0.96であった。比較のための、1200mlキャニスタのアスペクト比は約0.61である。通常、収集デバイスのアスペクト比が増大すると、収集液体中の任意の血液中に含有されるRBCが収集デバイス内でより迅速に沈澱する。したがって、100ml収集デバイスのRBC沈降の速度は、RBC凝集剤の存在下での同様の条件下において、1200mlキャニスタのRBCの沈降速度より高速であると予測された。
【0129】
[0147]100mlの乾燥したキャニスタに、研究グレード(Sigmaカタログ♯409022)のポリDADMACである50mgのRBC凝集剤が入れられた(実施例7を参照)。PEIおよびPAMなどを含めた、他のRBC凝集剤さらには産業グレードのバージョンのこれらの凝集剤も、本方法および本デバイスで有用であると予期され得る。
【0130】
[0148]次いで、表8に示される量の新鮮なウマ血液および生理的食塩水を各々のキャニスタに加えて、20分間、RBC沈降ボリュームを毎分記録した。
【表8】
【0131】
[0149]成馬から血液を抜き取り、一定のボリュームの新鮮な体温の血液を上記に示した量の各々のキャニスタに加えた。各々のキャニスタの蓋を定位置に配置し、中身を混合し、生理的食塩水と、血液と、凝集剤との適切な混合物を確実に得た。各キャニスタは室温で平穏な状態で静置したままとし、観察した。RBCの沈降が観察された時間を1分の間隔で最大30分記録した。
図18が多様な混合物のRBC沈降速度を示す。凝集剤の存在しない血液混合物では実質的に視覚的に検出可能なRBC沈降が観察されなかった。対照的に、凝集剤を含有するすべての血液混合物では室温で5分以内で迅速なRBC沈降が観察された。
【0132】
[0150]表9が種々の大型の動物のヘマトクリット値を提示する。本開示で説明される適切にカスタマイズされる血液インジケータパネルおよび血液ボリューム概算方法を提供するために、平均赤血球ヘモグロビン量(MCH:mean corpuscular hemoglobil)、平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC:mean corpuscular hemoglobin concentration)、平均赤血球容積(MCV:mean corpuscular volume)、および血中血球容積(PCV:packed cell volume)の値を採用することができる。
【表9】
【表10】
【表11】
【0133】
実施例10-凝集剤の存在下での新鮮なウマ血液(抗凝血物質を有さない)を有するキャニスタを使用する体液中の血液ボリュームの見積もり
[0151]成馬(12歳、約544kg(約1,200ポンド))から新鮮な血液を抜き取る形で本実施例を実施した。この馬の血液は抗凝血物質を一切含まない。馬の血液のヘマトクリット値は32%から53%の間である。抜き取った直後で馬の血液を使用し、ポリDADMAC(600mg)である凝集剤の存在下で生理的食塩水を組み合わせるときには体温のままであった(約101°F、38.3℃)。
【0134】
[0152]凝集剤として約9mlsのポリDADMAC希釈標準溶液のスプレー塗布によってコーティングした1,200mlキャニスタを使用した。ここでは、凝集剤として全体として約600mgの乾燥重量のポリDADMACを用いて1,200mlキャニスタを一様にコーティングした。キャニスタの壁に沿って凝集剤が一様に分布されることから、解放されることになる凝集剤の量は、処理されるキャニスタの中に提供される体液の量に比例することになる。
【0135】
[0153]以下の沈下RBCのボリュームを経時的に記録した。
【0136】
[0154]400mlのボリュームの新鮮な馬の血液(冷蔵されない、体温、抗凝血物質を有さない)を、処理されたキャニスタの中に配置した。既知のボリュームの250mlの生理的食塩水をキャニスタに加えた。キャニスタの中の体液の合計のボリュームは650mlであった。これが61.5%の血液溶液を提供した。混合の直後に、沈下RBCのボリュームVm(重力のみで、遠心分離なし)を最大30分間記録した。
【0137】
[0155]平穏な状態で30分沈下させた後で、キャニスタを手動で撹拌し、再び室温に静置した。室温でのRBCの沈下の徴候(evidence)を見るために、撹拌血液含有キャニスタを再び観察した。
【表12】
【0138】
[0156]30分間の観察後、キャニスタが手動で振られ、静置させられる。RBCの再沈降が起こり、30分間、毎分観察した。沈下RBCレベルの観察の結果は表14に示されるようなものとなった。
【表13】
【0139】
[0157]この調査から、新鮮全血(whole fresh blood)を含有する溶液中のRBCの沈下ボリュームは、室温で最大30~40分、比較的安定した状態を維持することが実証される。撹拌すると、新鮮な血液試料中のRBCが再び沈下し、認識可能なRBC沈降容積測定線Vmを非常に迅速に提供した(16~19分に対して3~4分、約250mlから30mlの沈下RBCボリューム)ようであった。体液中に存在する新鮮な血液の実際の既知のボリュームは400mlであった。
【0140】
[0158]その種類の動物の平均ヘマトクリット値(42.5%、馬の平均Hct)と、Vm(観察可能な沈下RBCボリューム(ml))と、沈下RBCボリューム(Vm)およびHctの情報のウマ血液試料の複数回の評価を用いる実験を介して馬の血液に対して決定される新しい詰込比値(n)と、を使用する式により、血液ボリュームの全体の概算値を計算することができ、視覚的な血液インジケータパネルが作られ得、馬などの大型の動物と共に使用されるための収集キャニスタの垂直方向軸に沿って設けられ得る。この視覚的な血液インジケータパネルが、馬の血液を含有する生物学的体液中の血液ボリュームの迅速に視覚的に認識可能な概算値を提供することになる。処理されたキャニスタまたは他のレセプタクルのための血液インジケータパネルの開発の成果は、ウマ血液のボリュームロスの視覚的インジケータを提供するのに使用され得、特には、現在利用可能であるものと比較してより正確にウマの失血を評価するのに使用され得る。ここでは、一般的な所定の程度以上の実験的最適化のトライアル・アンド・エラーなしで、獣医学の当業者によって提供される情報および結果を採用してウマ血液インジケータパネルを開発することができる。
実施例11-失血の見積もりを使用のための、人間の小児への応用
[0159]本実施例は、小児科患者の失血の効率的な測定のためのキャニスタおよび方法を提供するために提示されるものである。本実施例で使用される場合の小児科患者は、最大32kg(70ポンド)から36kg(80ポンド)の体重を有する最高12歳の個人として定義される。
【0141】
[0160]人間の全体の血液ボリューム(TBV:total blood volume)は身体の体重に関連する。子供のTBVは約75~80ml/kgであり、新生児期はより高い(最初の1か月の終了時までに85ml/kgから105ml/kgのピーク値まで上昇し、その後の数か月で次第に低下する)。したがって、3.5kgの2週間の新生児のTBVは約350mlであり、対して10kgの15か月の幼児のTBVは約800mlである。
【0142】
[0161]小児科患者の全体の血液ボリュームは大幅に少ないことから、小児科患者から収集されるより少量の血液ボリュームから失血を正確に見積もるように設計される血液収集・失血見積もりシステムおよびデバイスを提供することが特に重要である。したがって、本発明のこの特別に設計される小児科用の失血見積もりデバイスは、本明細書で説明される凝集剤を有する容器と、約500mlなどといったように(または、幼児または新生児の場合には約250ml)1000ml未満の全ボリューム容量を有するキャニスタ区分と、を用いて制作される。
【0143】
[0162]小児科患者の血液ボリュームの多量の急激なロスは循環を危険な状態にする可能性があることから、特に小児科患者のTBV(約10ml/kg)の約12%の失血ボリュームを検出するのを可能にするように失血を注意深く監視しなければならない(この子供が安定状態にあり、手術の開始時に正常な血中ヘモグロビン(Hb)レベルを有するものとする)。
【0144】
[0163]例えば、適切な小児科用失血収集デバイスは、いくつかの実施形態では、250mlsの容量を有する。キャニスタが、好適には、一般的な小児失血ボリュームのための適切なアスペクト比D:Hを提供する。デバイスのD(直径)は、通常、5.08cm(2インチ)から7.62cm(3インチ)の間であり、約5.08cm(2インチ)から約7.62cm(3インチ)のH(高さ)を有する。これらの小さい寸法では、収集される失血ボリュームが、適度に迅速ではあるが監視可能であるRBCの沈降速度を実現し、それにより、小児科患者に輸血を行うことが望ましいようなボリュームに失血量が達したことを担当の内科医に警告を出す。キャニスタの中に収集された血液において15分以内にRBC沈降を実現するような沈降速度を達成することが好適である。
【0145】
[0164]いくつかの実施形態では、250mlキャニスタが円錐形状を有する(
図14)。凝集剤が外科的介入事象のときに容器に提供されるか、または前処理としてキャニスタに提供され得る(スプレーコーティングなどによる)。
【0146】
[0165]250mlの収集デバイスに加えられることになる凝集剤の量は、約50mgから約150mgであるか、約125mgであるか、あるいは溶液の全ボリュームの少なくとも0.3%、0.4%、または0.75%を達成するのに十分な量である。
【0147】
[0166]説明のために、12%以上の失血が起こる場合の計算には、小児グループの患者の以下の平均の全血液ボリュームを使用することができる。また、小児科患者のクラス/グループ(未熟新生児、満期新生児、幼児)のための平均ヘマトクリット値を計算することができ、キャニスタの1つの軸に並べられるように、これらの患者グループのための平均ヘマトクリット値のマーキングが設けられ、それにより、この手術を受けている患者のために得られたヘマトクリット値を参照するためのおよびそれと比較するための、担当する内科医または麻酔医ために用意された視覚的基準を提供する。
・未熟新生児 95ml/kg
・満期新生児 85ml/kg
・幼児 80ml/kg
【0148】
[0167]特定の重量範囲および/または年齢の人間の子供のための、あるいは成人男性または成人女性のための平均ヘマトクリット値と、Vm(観察可能な沈下RBCボリューム(ml))と、人間の血液のため決定される詰込比(n)と、を使用する式により、全体
の血液ボリュームの概算値を計算することができる。沈下RBCボリューム(Vm)およびHctの情報の人間の血液試料の複数回の評価を用いて、収集キャニスタの垂直方向軸に沿って配置されることになる視覚的血液ボリュームインジケータパネルを人間のために用意することができ、特には小児科の人間モデルのために用意することができる。この視覚的な血液ボリュームインジケータパネルが、人間の血液を含有する生物学的体液中に含有される約250ml未満のボリュームの血液ボリュームの迅速に視覚的に認識可能な概算値を提供することになる。液体中の人間の血液ボリューム評価のための、および特には少量の人間の失血の評価のための、血液インジケータパネルを有する垂直方向のキャニスタまたは他のレセプタクルの開発は、一般的な所定の程度以上のトライアル・アンド・エラーなしで、本明細書で提供される教示を前提として、当業者によって発展され得る。
【0149】
実施例12-失血収集のための折り畳み式の処理された容器
[0168]本実施例は、生物学的体液ロスを収集するのに使用され得る、および失血を見積もるのに使用され得る、折り畳み式プラスチック状の容器(バッグ)を提示する。このような折り畳み式デバイスは特には戦場の状況において特に有用であると考えられるか、または医療設備のためのスペースが限られているような任意の他の状況において特に有用であると考えられる。
【0150】
[0169]このプラスチックバッグの容器は、本明細書で説明されるRBC沈降および失血の見積もり機能を実現するのに適するような、一定量のRBC凝集剤を有することになると考えられる。いくつかの態様では、バッグが、箱、キャニスタ、または他の構造などの、支持用容器内に配置され得る。バッグが、容積測定尺度(ミリメートルなど)に対応する、バッグの垂直方向軸に沿う複数のマーキングをさらに有することができる。
【0151】
[0170]いくつかの態様では、約300ミリグラムから約4,700ミリグラムの間のポリDADMACなどの凝集剤を含有する約1,000mlのボリューム容量を有するクリアーなプラスチックバッグが、バッグの中に配置されることになる。バッグが、いくつかの実施形態では、50ml、100ml、200ml、250ml、400ml、500ml、600ml、750ml、および1リットルのマーカーの較正される区分を有することになる。バッグが接着ストリップなどの形態のBIPをさらに有することができ、BIPがバッグ上に配置され得、収集バッグ/容器の中の沈下RBCレベルに基づいて液体中の概算の血液ボリュームの視覚的に認識可能なインジケータを提供するのに使用され得る。この実施形態の例示の描写が
図13に提示される。RBC凝集剤と、
図11Aに示されるキャニスタなどの、1200ml収集キャニスタのための設計される人間の血液のための較正されるBIPとを有するインサートバッグが、さらに提供される。このような実施形態では、キャニスタ自体にRBC凝集剤を用いて処理する必要はなく、代わりに、インサートバッグがRBC凝集剤を含有することになる。インサートバッグが、やはり任意選択で、人間の血液のための較正されるBIPをさらに有することができる。
【0152】
実施例13-失血収集キット
[0171]血液ボリュームインジケータパネルを有する凝集剤含有キャニスタ(1.2ml、500ml、250ml、10ml)が、一定の長さの吸引用管類と、キャニスタおよび/または折り畳み式エンベロープの中の生理的食塩水を加えるのに適する第2の長さの管類とを備えるキットとして一体に提供され得る。
【0153】
[0172]インストラクショナルインサートがエンドユーザのためのキットとして提供され得る。
【0154】
実施例14-高温エージングの安定性試験
[0173]この実施例はRBC凝集剤であるポリDADMACの安定性を実証するものであ
り、ポリDADMACでコーティングされたキャニスタを高温に露出した後に、血液含有体液中のRBCの合着(凝集)を実現するための活動を維持した。
【0155】
[0174]この調査では、血液の成分を含有することになる外科手術中に収集される生物学的液体物質などの物質を収集するためのキャニスタ上のコーティングとして提供されるポリDADMACを凝集剤として使用した。コーティングしたキャニスタを55℃で6週間インキュベートとした(室温での1年間の貯蔵期間に相当する)。次いで、コーティングしたキャニスタを、高温エージングの後、高温エージング試験を行っていないコーティングしたキャニスタと機能試験において比較した。
【0156】
[0175]物質:
1)コントロールグループ-600mgのポリDADMAC(
図1)でコーティングした(室温(≒22℃)で一晩で乾燥させた)4つのキャニスタ(Cardinal Health)。
2)実験グループ-600mgのポリDADMAC(
図1)でコーティングした(室温(≒22℃)で一晩で乾燥させた)4つのキャニスタ(Cardinal Health)。次いで、キャニスタを、55℃に設定した対流式オーブンで6週間インキュベートした。
3)ウシの全血(Innovative Research Lot#24301)を冷蔵庫で保管し、実験前に室温まで温めた。
4)室温の等張食生理的食塩水(Thermo Scientific,Lot#994448)。
【0157】
[0176]方法
1)実験ロットおよびコントロールロットからそれぞれ、4つのキャニスタを無作為に選択した。
2)商業的供給メーカーから購入したウシの全血(クエン酸ナトリウムを含有する)を室温で等張食生理的食塩水と混合して、それぞれ、20%および40%v/vの濃度の血液を得た。20%血液混合物が合計1000mlのボリュームを有し、40%血液混合物が合計500mlのボリュームを有した。
3)キャニスタに対して1回で2つの試験を行った:1つの実験キャニスタ 対 1つのコントロールキャニスタ。混合された血液および生理的食塩水の溶液を真空吸引を介してキャニスタの中に導入した。
4)キャニスタ上の既存の区分に従って、赤血球ボリュームの沈下を20分間、毎分記録した。
5)20分後、2つのグループを比較する画像が得られた。
6)データを、比較のために、RBC沈下ボリューム対時間の関数としてチャート化した。
【0158】
[0177]結果:
図16Aおよび
図16Bが、血液・生理的食塩水混合物をコントロールキャニスタおよび実験キャニスタ(熱処理した)の中に導入した後のRBCの沈下を比較した。20%血液と生理的食塩水との1000mlの混合物(
図16A)および40%血液と生理的食塩水との500mlの混合物(
図16B)を使用して試験を実施した。両方とも200mlのウシ血液を含有する。各試験を1回繰り返した。データが、20%血液試験でのRBC沈下のボリューム変化曲線が密に重なり合うことを示している。コントロールキャニスタおよび実験キャニスタの中に混合物を導入して約15分後、すべてのRBCボリューム沈下が約125mlで安定化した。40%血液試験では、1つの実験でボリューム沈下に遅延が生じたが、15分後にすべてのボリューム沈下が約125mlで安定した。
図17がコントロールキャニスタおよび実験キャニスタの両方での沈下RBCの絵を示している。
図17A(パネルIおよびII)ならびに
図17B(パネルIおよびII)が、コントロールキャニスタおよび実験キャニスタ(熱処理した)に血液および生理的食塩水の混合物を導入した後のRBCの沈下を比較する。20%ウシ血液と生理的食塩水との1000mlの混合物(
図17A)および40%血液と生理的食塩水との500mlの混合物(
図17B)を使用して試験を実施した。両方の体液が200mlのウシ血液を含有することが既知であった。各試験を1回繰り返した。
【0159】
[0178]データが、20%血液試験でのRBC沈下のボリューム変化曲線が密に重なり合うことを示している。コントロールキャニスタ(
図17A)および実験キャニスタ(
図17B)の中に混合物を導入して約15分後、すべてのRBCボリューム沈下レベルが約125mlで安定化した。
【0160】
[0179]40%血液試験では、1つの実験でボリューム沈下に遅延が生じたが、15分後に約125mlの容積測定マークのところで沈下RBCのボリュームが安定化した。
図17Aおよび17Bが、コントロールキャニスタ(17A)および実験キャニスタ(17B)の沈下RBCボリュームを示す。
【0161】
[0180]この調査は、コントロールキャニスタと、熱処理後の実験キャニスタとの間での機能に認識可能な違いがないことを実証した。55℃での6週間のエージング試験後のポリDADMACでコーティングされているキャニスタは、ポリDADMACの機能的劣化や、液体中のRBCの凝集促進のための有効性の低下を示していない。凝集剤でコーティングされるキャニスタ(ポリDADMACでコーティングされるキャニスタ)は、室温で保管される体液中の血液ボリュームの見積もりを実現するための凝集活動の損失なしで少なくとも1年の貯蔵期間を有すると予測される。
【0162】
[0181]上に記載される実施例は、対象の生体分子に対して行われ得る選択される修正のための予測のための方法の実施形態を如何にして作って使用するかの完全な開示および説明を、当業者に与えるために提供されるものであり、本発明者によって本開示の範囲としてみなされている範囲のみに限定することを意図されない。本開示を実行するための上述の形態の修正形態は当業者によって使用され得、以下の特許請求の範囲の範囲内にあることを意図される。
【0163】
[0182]本開示が特定の方法またはシステムのみに限定されず、もちろん変化し得ることを理解されたい。また、本明細書で使用される用語が特定の実施形態のみを説明することを目的としており、限定的であることを意図されないことも理解されたい。
【0164】
[0183]本開示の複数の実施形態を説明してきた。しかし、本開示の精神および範囲から逸脱することなく種々の修正形態が作ら得ることを理解されたい。したがって、他の実施形態も以下の特許請求の範囲の範囲内にある。
【手続補正書】
【提出日】2022-11-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
体液中の血液ボリュームを概算するための方法であって、
容器の中に、体液のいくらかのボリュームを受け取るステップと、
沈下RBCのボリューム(Vm)を提供するために、RBCの安定した沈降が可能となるのに十分な時間の後に、前記体液から沈下RBCのボリュームを決定するステップと、
前記体液中の血液のボリュームを決定するステップであって、前記体液中の血液ボリューム(Vb)の概算を提供するために、ヘマトクリット値(Hct)と前記容器の詰込比(η)の積で較正される、前記沈下RBCのボリューム(Vm)から、前記体液中の前記血液のボリューム(Vb)が決定される、ステップと、
を含む、
方法。
【請求項2】
RBC凝集剤が、前記容器に加えられている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記RBC凝集剤が、前記容器内の320mgまたは600mgの量のポリDADMACである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記体液が人間からのものである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記体液が獣医学の動物からのものである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記体液中の血液のボリュームが、式
Vb=Vm/Hct×η
に従って計算されるボリュームVbである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
RBCの安定した沈降が可能となるのに十分な前記時間は、5分、10分、15分、20分、25分、または30分である、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
RBCの安定した沈降が可能となるのに十分な前記時間は20分である、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記体液は、血液、生理的食塩水、手術吸引物、尿、胆汁、唾液、消化液、または羊水を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記体液中の沈下RBCのボリュームの変化速度が毎分0.5%未満の場合に、RBCの安定した沈降が可能となるのに十分な前記時間が終了する、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
前記RBC凝集剤が、ポリDADMACである、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
RBCの安定な沈降が、遠心分離を行わずに室温で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
一連の較正される血液ボリュームマーキングを備え、各マーキングが体液中の血液のボリューム(Vb)を提供し、各血液ボリュームマーキングが、血液ヘマトクリット値(Hct)と前記容器の詰込比(η)の積で較正される、前記容器内の前記体液からの沈下赤血球(RBC)のボリューム(Vm)から計算される、容器。
【請求項14】
RBC凝集剤を備える、請求項13に記載の容器。
【請求項15】
前記RBC凝集剤が、前記容器内の320mgまたは600mgの量のポリDADMACを備える、請求項14に記載の容器。
【請求項16】
前記一連の較正される血液ボリュームマーキングが、前記容器の容積測定用のマーキングと並んでいる、請求項13に記載の容器。
【請求項17】
キャップを備え、前記キャップが吸引管を受けるのに適する少なくとも1つの入口ポートと、前記容器に真空吸引を加えるのに適する第2のポートとを有する、請求項13に記載の容器。
【請求項18】
少なくとも2つのポートと、設置用のループ状部分と、一連の較正される血液ボリュームマーキングと、を備える折り畳み式の体液収集容器であって、各マーキングが前記容器内の体液の血液のボリューム(Vb)を提供し、前記血液のボリュームは、血液ヘマトクリット値(Hct)と詰込比(η)の積で較正される、前記容器内の沈下赤血球(RBC)のボリューム(Vm)から計算される、折り畳み式の体液収集容器。
【請求項19】
RBC凝集剤を備え、前記RBC凝集剤がポリDADMACを含む、請求項18に記載の折り畳み式の体液収集容器。
【請求項20】
前記RBC凝集剤が、前記容器内の320mgまたは600mgの量のポリDADMACである、請求項19に記載の折り畳み式の体液収集容器。
【請求項21】
容器内の体液中の血液ボリュームを概算するために使用される血液インジケータパネルであって、前記パネルが、前記体液中の概算の血液ボリュームに対応する一連の較正されるマーキングを備え、各マーキングが、血液ヘマトクリット値(Hct)と前記容器の詰込比(η)の積で較正される、前記体液内の沈下RBCのボリューム(Vm)から計算される、概算の血液のボリューム(Vb)を提供する、血液インジケータパネル。
【請求項22】
前記較正されるマーキングのそれぞれが、RBC凝集剤の存在下での前記容器内の沈下RBCのボリューム測定と、前記容器の所定のRBC詰込比と、血液ヘマトクリット値とから計算される、請求項21に記載の血液インジケータパネル。
【請求項23】
前記RBC凝集剤がポリDADMACを含む、請求項22に記載の血液インジケータパネル。
【請求項24】
前記一連の較正されるマーキングが、液体の容積のマーキングに平行に整列される、請求項22に記載の血液インジケータパネル。
【請求項25】
前記一連の較正されるマーキングが、成人から得られた体液物質中の血液ボリュームの概算値を提供し、前記ヘマトクリット値が、前記成人からの血液のヘマトクリット値であり、前記詰込比は、1200mlのボリュームを有する容器のためのものである、請求項22に記載の血液インジケータパネル。
【請求項26】
前記動物が、馬、人間、または雌牛である、請求項22に記載の血液インジケータパネル。
【請求項27】
1200mlのボリュームを有するバッグ又はエンベロープを備え、前記バッグ又はエンベロープは、支持用容器内に配置されるのに適する、請求項18に記載の折り畳み式の体液収集容器。
【請求項28】
前記バッグ又はエンベロープは、尿を含んでいる体液の血液のボリュームの評価を提供する、請求項27に記載の折り畳み式の体液収集容器。
【請求項29】
体液中の血液を測定するための方法であって、
赤血球(RBC)凝集剤を備える容器に体液を受け取るステップと、
沈下RBCのボリューム(Vm)を提供するために、RBCの安定した沈降が可能となるのに十分な時間の後に、前記容器の中の沈下RBCのボリュームを決定するステップと、
前記体液中の血液のボリュームを決定するステップであって、ヘマトクリット値(Hct)と詰込比(η)の積で較正される、前記容器の中の前記沈下RBCのボリューム(Vm)から、前記体液中の前記血液のボリューム(Vb)が決定される、ステップと、
を含む、
方法。
【請求項30】
前記RBC凝集剤が、ポリDADMACを備える、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記RBC凝集剤が、前記容器内の320mgまたは600mgの量のポリDADMACである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
RBCの安定した沈降が可能となるのに十分な前記時間は、5分、10分、15分、20分、25分、または30分である、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
RBCの安定した沈降が可能となるのに十分な前記時間は20分である、請求項29に記載の方法。
【請求項34】
前記体液中の沈下RBCのボリュームの変化速度が毎分0.5%未満の場合に、RBCの安定した沈降が可能となるのに十分な前記時間が終了する、請求項29に記載の方法。
【請求項35】
前記RBC凝集剤の量が、前記容器内の体液に対して0.3体積%から0.75体積%である、請求項14に記載の容器。
【請求項36】
容器であって、
前記容器内の体液の血液のボリュームに対応する、較正された血液のボリューム(Vb)の第1の一連のマーカーと、
前記容器内の前記体液の沈降赤血球のボリュームに対応する、較正された沈降赤血球(RBC)ボリューム(Vm)の第2の一連のマーカーであって、前記第2の一連のマーカーは、前記第1の一連のマーカーと並んでいる、第2の一連のマーカーと、を備え、
ヘマトクリット値(Hct)と前記容器の詰込比(η)の積で較正される前記沈下RBCのボリューム(Vm)から、血液のボリューム(Vb)が提供される、
容器。
【請求項37】
RBC凝集剤を備える、請求項36に記載の容器。
【請求項38】
前記RBC凝集剤が、ポリDADMACを備える、請求項37に記載の容器。
【請求項39】
前記ポリDADMACが、320mgまたは600mgの量のポリDADMACを備える、請求項38に記載の容器。
【請求項40】
前記RBC凝集剤が、固体形態、溶液、油中水型乳剤、または水の中では分散した状態である、請求項37に記載の容器。
【請求項41】
前記RBC凝集剤が、キャリア溶液中にあるか、またはコーティングである、請求項37に記載の容器。
【請求項42】
体液中の血液ボリュームを概算するための方法であって、
請求項36の前記容器内に、体液のいくらかのボリュームを受け取り、RBC凝集剤を提供する、ステップと、
RBCの安定した沈降が可能となるのに十分な時間の後に、前記容器の中の沈下RBCのボリューム(Vm)を決定するステップと、
前記体液中の血液のボリュームを決定するステップであって、血液ヘマトクリット値(Hct)と前記容器の詰込比(η)の積で較正される、前記沈下RBCのボリューム(Vm)から、前記体液中の前記血液のボリューム(Vb)が決定される、ステップと、
を含む、
方法。
【請求項43】
前記RBC凝集剤が、ポリDADMACを含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記RBC凝集剤は、固体形態、溶液、油中水型乳剤、または水の中で分散した状態で、前記容器内に提供される、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記容器が前記体液を受け取る前に、または前記容器が前記体液を受け取った後に、前記RBC凝集剤が前記容器内に提供される、請求項42に記載の方法。
【請求項46】
前記RBC凝集剤が、ポリDADMACを含み、前記ポリDADMACが320mgまたは600mgの量で提供される、請求項45に記載の方法。
【外国語明細書】