(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179360
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】電気自動車及び車両用シート
(51)【国際特許分類】
B60L 15/20 20060101AFI20231212BHJP
B60N 2/06 20060101ALI20231212BHJP
B60R 22/48 20060101ALI20231212BHJP
B60N 2/22 20060101ALI20231212BHJP
B60N 2/02 20060101ALI20231212BHJP
B60L 1/00 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
B60L15/20 J
B60N2/06
B60R22/48 102
B60N2/22
B60N2/02
B60L1/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068678
(22)【出願日】2023-04-19
(31)【優先権主張番号】63/349,766
(32)【優先日】2022-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】三好 晃
(72)【発明者】
【氏名】栗本 智行
(72)【発明者】
【氏名】古和 宗高
(72)【発明者】
【氏名】志田 隼人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 大貴
(72)【発明者】
【氏名】小島 琢人
【テーマコード(参考)】
3B087
3D018
5H125
【Fターム(参考)】
3B087BA02
3B087BD02
3B087BD03
3D018PA01
5H125AA01
5H125AC12
5H125BA00
5H125CA01
5H125CA08
5H125CA11
5H125CD00
5H125EE41
5H125EE49
(57)【要約】
【課題】MTモードにおける乗員の快適性、娯楽性を向上できる電気自動車及び車両用シートを提供する。
【解決手段】電気自動車1は、車輪にトルクを伝達する回転機2と、車両用シートS又は車両用ドアDに設けられた車両内装部品と、回転機2を制御する制御部100と、車両内装部品を制御する部品制御部120、ドア部品制御部130と、を備える。電気自動車1は、エンジン並びに前記エンジンに連結される変速機及びクラッチ機構を備えていない。制御部100は、乗員の操作に応じてマニュアルトランスミッションを模擬するように回転機2を制御するマニュアルモードと、マニュアルモードと異なるように回転機2を制御する通常モードと、にモードを切り替えるモード切替部をする。部品制御部120は、モード切替部によってマニュアルモードに切り替えられたとき、車両内装部品を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪にトルクを伝達する回転機と、車両用シート又は車両用ドアに設けられた車両内装部品と、前記回転機を制御する制御部と、前記車両内装部品を制御する部品制御部と、を備え、エンジン並びに前記エンジンに連結される変速機及びクラッチ機構を備えていない電気自動車であって、
前記制御部は、乗員の操作に応じてマニュアルトランスミッションを模擬するように前記回転機を制御するマニュアルモードと、前記マニュアルモードと異なるように前記回転機を制御する通常モードと、にモードを切り替えるモード切替部、を有し、
前記部品制御部は、前記モード切替部によって前記マニュアルモードに切り替えられたとき、前記車両内装部品を制御することを特徴とする電気自動車。
【請求項2】
前記車両内装部品は、前記車両用シートの内部に取り付けられ、前記車両用シートの一部を通常位置よりも着座者側へ突出させるように動作する可動体を有し、
前記部品制御部は、前記モード切替部によって前記マニュアルモードに切り替えられたとき、前記可動体を制御することを特徴とする請求項1に記載の電気自動車。
【請求項3】
前記部品制御部は、前記マニュアルモードにおいて、所定条件が成立したときに、前記可動体の突出量を変化させることを特徴とする請求項2に記載の電気自動車。
【請求項4】
前記車両内装部品は、前記車両用シートに設けられるシートベルト装置であって、
前記シートベルト装置は、前記乗員を拘束するシートベルトと、前記シートベルトを引き出し可能に巻き取るベルトリトラクタと、を有し、
前記部品制御部は、前記モード切替部によって前記マニュアルモードに切り替えられたとき、前記ベルトリトラクタを制御することを特徴とする請求項1に記載の電気自動車。
【請求項5】
前記車両用シートは、シートクッション及びシートバックを備えるシート本体と、前記シート本体を車体フロアに対して前後移動可能に支持するレール装置、又は、前記シートバックを前記シートクッションに対して回動可能に連結するリクライニング装置と、を備え、
前記部品制御部は、前記モード切替部によって前記マニュアルモードに切り替えられたとき、前記レール装置又は前記リクライニング装置を制御することを特徴とする請求項1に記載の電気自動車。
【請求項6】
前記モード切替部は、前記マニュアルモードと、前記通常モードと、自動運転可能な自動運転モードと、に切り替え可能であり、
前記モード切替部によって前記マニュアルモードに切り替えられたときの前記シート本体又は前記シートバックの可動量よりも、前記自動運転モードに切り替えられたときの前記シート本体又は前記シートバックの可動量の方が制限されることを特徴とする請求項5に記載の電気自動車。
【請求項7】
前記制御部は、前記乗員の識別情報を取得する識別情報取得部と、前記乗員の操作に応じて前記モードを設定するモード設定部と、前記モード設定部によって設定された前記モードを前記乗員の前記識別情報と関連付けて記憶する記憶部と、を有し、
前記モード切替部は、前記乗員の前記識別情報に関連付けられた前記モードに基づいて、前記モードを切り替えることを特徴とする請求項1に記載の電気自動車。
【請求項8】
前記記憶部は、前記乗員のマニュアルトランスミッション車の運転を制限する制限情報を、前記乗員の前記識別情報と関連付けて記憶し、
前記モード切替部は、前記記憶部に前記制限情報が記憶されているときに前記マニュアルモードに切り替えること制限することを特徴とする請求項7に記載の電気自動車。
【請求項9】
前記電気自動車は、前記乗員とは異なる同乗者を検出する同乗者検出部、を有し、
前記モード切替部は、前記同乗者検出部によって前記同乗者が検出されたときに前記マニュアルモードに切り替えること制限することを特徴とする請求項1に記載の電気自動車。
【請求項10】
車輪にトルクを伝達する回転機を備え、エンジン及び前記エンジンに連結される変速機及びクラッチ機構を備えていない電気自動車に装備される車両用シートであって、
前記車両用シートは、
シート本体と、
前記シート本体に設けられる車両内装部品と、
前記車両内装部品を制御する部品制御部と、
乗員の操作に応じてマニュアルトランスミッションを模擬するように前記回転機を制御するマニュアルモードと、マニュアルトランスミッションを模擬するように前記回転機の制御を行わない通常モードと、を切り替える切替信号を取得する取得部と、を備え、
前記部品制御部は、前記取得部によって前記切替信号を取得したとき、前記車両内装部品を制御することを特徴とする車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車及び車両用シートに係り、特に、車輪にトルクを伝達する回転機と、車両用シート又は車両用ドアに設けられた車両内装部品と、前記回転機を制御する制御部と、前記車両内装部品を制御する部品制御部と、を備え、エンジン並びに前記エンジンに連結される変速機及びクラッチ機構を備えていない電気自動車及び車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、手動の多段変速機を搭載したマニュアルトランスミッション車(MT車)では、運転者によるクラッチペダル及びシフトレバーの操作に応じてギア比(変速比)が変更される。これに対し、手動の多段変速機が設けられない電気自動車では、変速時の操作が不要であるため、運転者は運転することに面白みを感じにくい。
そこでMT車の手動変速動作を疑似的に再現可能な電気自動車が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2)。
【0003】
特許文献1、特許文献2に記載の電気自動車では、クラッチ機構の操作を模擬するための模擬クラッチペダルと、変速機の操作を模擬するための模擬シフトレバーと、回転機のトルクを制御するトルク制御部を備え、マニュアルモード(MTモード)において、トルク制御部が、模擬クラッチペダル及び模擬シフトレバーの操作に基づいて回転機のトルクを制御することで、運転者にMT車を運転しているような感覚を与えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6787507号公報
【特許文献2】特開2020-156260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、特許文献2に記載の電気自動車では、MTモードにおいて、車両用シート又は車両用ドアに設けられた車両内装部品に変化がないため、運転者がMT車を運転している感覚を認識し難い。
このため、運転者が電気自動車において手動変速動作を疑似的に行う場合、運転者に違和感を与えるおそれや、運転者に十分な楽しみを与えられないおそれがある。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、MTモードにおける乗員の快適性、娯楽性を向上できる電気自動車及び車両用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、本発明の電気自動車によれば、車輪にトルクを伝達する回転機と、車両用シート又は車両用ドアに設けられた車両内装部品と、前記回転機を制御する制御部と、前記車両内装部品を制御する部品制御部と、を備え、エンジン並びに前記エンジンに連結される変速機及びクラッチ機構を備えていない電気自動車であって、前記制御部は、乗員の操作に応じてマニュアルトランスミッションを模擬するように前記回転機を制御するマニュアルモードと、前記マニュアルモードと異なるように前記回転機を制御する通常モードと、にモードを切り替えるモード切替部、を有し、前記部品制御部は、前記モード切替部によって前記マニュアルモードに切り替えられたとき、前記車両内装部品を制御する、ことにより解決される。
上記構成により、MTモードにおいて、MT車両の手動変速動作に用いられる部品だけではなく、車両用シートや車両用ドアに設けられた車両内装部品が制御されるため、乗員がより楽しみを得やすくなる。また、MTモードにおいて、MT車を疑似的に再現するように車両用シート又は車両用ドアに設けられた車両内装部品が制御されるため、運転者はMT車の手動変速動作に近い感覚で運転することができる。
したがって、MTモードにおける乗員の快適性、娯楽性を向上できる。
【0008】
このとき、前記車両内装部品は、前記車両用シートの内部に取り付けられ、前記車両用シートの一部を通常位置よりも着座者側へ突出させるように動作する可動体を有し、前記部品制御部は、前記モード切替部によって前記マニュアルモードに切り替えられたとき、前記可動体を制御すると良い。
上記構成により、MTモードにおいて、車両用シートに着座する乗員(着座者)側へ、車両用シートに設けられた可動体が突出するように制御されるため、乗員は可動体によってスポーツ車のような拘束感を感じ易くなる。したがって、MTモードにおける乗員の安全性やフィーリング、娯楽性をより向上できる。
【0009】
このとき、前記部品制御部は、前記マニュアルモードにおいて、所定条件が成立したときに、前記可動体の突出量を変化させると良い。
上記構成により、所定条件(例えば車速の変更や道路状況等)によって、可動体の突出量が変化するため、状況に応じて変化する可動体によって乗員が拘束感を感じ易くなる。したがって、MTモードにおける乗員の安全性やフィーリング、娯楽性をより一層向上できる。
【0010】
このとき、前記車両内装部品は、前記車両用シートに設けられるシートベルト装置であって、前記シートベルト装置は、前記乗員を拘束するシートベルトと、前記シートベルトを引き出し可能に巻き取るベルトリトラクタと、を有し、前記部品制御部は、前記モード切替部によって前記マニュアルモードに切り替えられたとき、前記ベルトリトラクタを制御すると良い。
上記構成により、MTモードにおいて、シートベルトがベルトリトラクタによって車両用シートに着座する乗員を締め付けるように制御されるため、シートベルトによって乗員がスポーツ車のような拘束感を感じ易くなる。したがって、MTモードにおける乗員の安全性やフィーリング、娯楽性をより向上できる。
【0011】
このとき、前記車両用シートは、シートクッション及びシートバックを備えるシート本体と、前記シート本体を車体フロアに対して前後移動可能に支持するレール装置、又は、前記シートバックを前記シートクッションに対して回動可能に連結するリクライニング装置と、を備え、前記部品制御部は、前記モード切替部によって前記マニュアルモードに切り替えられたとき、前記レール装置又は前記リクライニング装置を制御すると良い。
上記構成により、MTモードにおいて、レール装置やリクライニング装置によってシート本体が動作するため、乗員がスポーツ車のような座り心地を感じ易くなる。したがって、MTモードにおける乗員の快適性や娯楽性をより向上できる。
【0012】
このとき、前記モード切替部は、前記マニュアルモードと、前記通常モードと、自動運転可能な自動運転モードと、に切り替え可能であり、前記モード切替部によって前記マニュアルモードに切り替えられたときの前記シート本体又は前記シートバックの可動量よりも、前記自動運転モードに切り替えられたときの前記シート本体又は前記シートバックの可動量の方が制限されると良い。
上記構成により、自動運転モードにおいてシート本体の可動量が制限されるため、乗員がリラックスした姿勢をとることができる。したがって、モードに応じて拘束感や解放感を乗員へ与えることができる。
【0013】
このとき、前記制御部は、前記乗員の識別情報を取得する識別情報取得部と、前記乗員の操作に応じて前記モードを設定するモード設定部と、前記モード設定部によって設定された前記モードを前記乗員の前記識別情報と関連付けて記憶する記憶部と、を有し、前記モード切替部は、前記乗員の前記識別情報に関連付けられた前記モードに基づいて、前記モードを切り替えると良い。
上記構成により、乗員に応じたモードに切り替えることができるため、例えば、毎回モードを入力することなく、好みのモードで運転を開始することができる。また、MT車両の運転が禁止されている乗員(オートマチックトランスミッション車限定免許保有者)や初心者の乗員によるMTモードへの切り替えを制限することができる。
したがって、MTモードにおける乗員の利便性を向上できる。
【0014】
このとき、前記記憶部は、前記乗員のマニュアルトランスミッション車の運転を制限する制限情報を、前記乗員の前記識別情報と関連付けて記憶し、前記モード切替部は、前記記憶部に前記制限情報が記憶されているときに前記マニュアルモードに切り替えること制限すると良い。
上記構成により、乗員のMT車の運転を制限する制限情報によって、MTモードへの切り替えが制限されるため、MT車が運転可能な免許を保持していない乗員が、MTモードで運転してしまうことを抑制できる。
【0015】
このとき、前記電気自動車は、前記乗員とは異なる同乗者を検出する同乗者検出部、を有し、前記モード切替部は、前記同乗者検出部によって前記同乗者が検出されたときに前記マニュアルモードに切り替えること制限すると良い。
上記構成により、同乗者の有無に応じて、MTモードへの切り替えが制限されるため、同乗者が乗車しているときの安全性をより向上できる。
【0016】
また前記課題は、本発明の車両用シートによれば、車輪にトルクを伝達する回転機を備え、エンジン及び前記エンジンに連結される変速機及びクラッチ機構を備えていない電気自動車に装備される車両用シートであって、前記車両用シートは、シート本体と、前記シート本体に設けられる車両内装部品と、前記車両内装部品を制御する部品制御部と、乗員の操作に応じてマニュアルトランスミッションを模擬するように前記回転機を制御するマニュアルモードと、マニュアルトランスミッションを模擬するように前記回転機の制御を行わない通常モードと、を切り替える切替信号を取得する取得部と、を備え、前記部品制御部は、前記取得部によって前記切替信号を取得したとき、前記車両内装部品を制御すること、により解決される。
上記構成により、MTモードにおいて、車両用シートや車両用ドアに設けられた車両内装部品が制御されるため、乗員がより楽しみを得やすくなる。また、MTモードにおいて、MT車両を疑似的に再現するように車両用シート又は車両用ドアに設けられた車両内装部品が制御されるため、運転者がMT車両の手動変速動作に近い感覚で運転することができる。
したがって、MTモードにおける乗員の快適性、娯楽性を向上できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、MTモードにおける乗員の快適性、娯楽性を向上できる。
また、MTモードにおける乗員の安全性やフィーリング、娯楽性をより向上できる。
また、MTモードにおける乗員の安全性やフィーリング、娯楽性をより一層向上できる。
また、MTモードにおける乗員の快適性や娯楽性をより向上できる。
また、モードに応じて拘束感や解放感を乗員へ与えることができる。
また、MTモードにおける乗員の利便性を向上できる。
また、MT車が運転可能な免許を保持していない乗員が、MTモードで運転してしまうことを抑制できる。
また、同乗者が乗車しているときの安全性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施形態の電気自動車の構成を模式的に示す図である。
【
図3】シートバックのサイド部が「通常位置」である状態を説明する図である。
【
図4】シートバックのサイド部が「突出位置」である状態を説明する図である。
【
図6】電気自動車の制御におけるメインフローの流れを示す図である。
【
図7】乗員特定処理に関する制御の流れを示す図である。
【
図8】同乗者検出処理に関する制御の流れを示す図である。
【
図9A】モード決定制御処理の流れを示す図である(その1)。
【
図9B】モード決定制御処理の流れを示す図である(その2)。
【
図9C】モード決定制御処理の流れを示す図である(その3)。
【
図10】モード取得制御処理の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施形態について
図1~
図12を参照して説明する。
以下の説明において、「前後方向」とは、
図1に示すように、車両用シートSの乗員(以下、着座者と呼ぶ場合がある)から見たときの前後方向を意味し、車両の走行方向と一致する方向である。「シート幅方向」とは、車両用シートSの横幅方向であり、車両用シートSの乗員から見たときの左右方向と一致する。また、「上下方向」とは、
図1に示すように、車両の上下方向であり、車両が水平面を走行しているときには鉛直方向と一致する方向である。
【0020】
<電気自動車の全体構成>
本実施形態の電気自動車1は、
図1に示すように、例えば自動運転可能な四輪の電気自動車(EV車)であって、車体Bと、車体Bの内部空間に配置され、乗員が着座する車両用シートSと、車体Bの内部空間と外部空間とを仕切るように配置され、乗員が乗降するための車両用ドアDと、を備える。
なお、以下の実施形態において、電気自動車1の車両は、一例として普通乗用車とするが、ワゴン車、SUV(Sport Utility Vehicle)等、いずれの種類の車両にも適用可能である。また、自動運転可能なEV車に限らず、自動運転可能でないEV車であっても良い。また、四輪の自動運転車に限らず、例えば、三輪(前二輪、後一輪)等の車両であっても良い。
【0021】
電気自動車1は、
図1に示すように、エンジン並びにエンジンに連結される変速機及びクラッチ機構を備えていない電気自動車であって、車輪にトルクを伝達する回転機2と、回転機2に電力を供給する車両駆動用のバッテリ3と、を備える。
また、電気自動車1は、機械的な手動変速機を備えておらず、電力で回転機2を回転させることにより走行するが、変速機の操作を模擬する模擬シフト装置4と、クラッチ機構の操作を模擬するための模擬クラッチ装置5と、を備える。
さらに、電気自動車1は、乗員が操作可能なタッチパネル6と、車体Bの周囲を撮影する車外カメラ7と、車体Bの内部を撮影する車内カメラ8と、車速を検出する車速センサ9と、を備える。
【0022】
電気自動車1は、例えば走行モードとして、乗員の操作に応じて、運転者が運転操作を行う手動運転モードと運転者の運転操作が不要な自動運転モードとに切り替え可能とされている。
さらに、電気自動車1は、手動運転モードとして、乗員の操作に応じてマニュアルトランスミッションを模擬するように回転機2を制御するマニュアルモード(以下、MTモード)と、MTモードと異なるように回転機2を制御する電気自動車1の通常モード(以下、EVモード)と、に切り替え可能とされている。
【0023】
本実施形態では、電気自動車1は、走行モードとして、MTモード、EVモード、自動運転モードに切り替え可能である例を説明する。乗員は、タッチパネル6を用いて走行モードを選択することで、各モードを切り替えることができる。
MTモードは、マニュアルトランスミッションを模擬するように模擬シフト装置4及び模擬クラッチ装置5の操作に応じて、電気自動車1のトルク特性が変更される走行モードである。
EVモードは、オートマチックトランスミッション車のように、模擬シフト装置4及び模擬クラッチ装置5の操作によらず、自動的に電気自動車1のトルク特性が変更される走行モードである。
自動運転モードは、各種センサが出力する信号、及び乗員が入力する信号に基づいて、電気自動車1の状況を判断し、判断結果に応じて電気自動車1を自律走行させる走行モードである。
【0024】
回転機2は、
図1に示すように、車体Bにおける前方側に設けられ、例えば三相交流モータである走行モータ2aを有する。走行モータ2aの出力軸は、シャフトを介して前車輪と接続される。走行モータ2aは、後述するECU100から伝達された指示トルクに基づいて、後述するモータECU110によって制御される。
バッテリ3は、
図1に示すように、車体フロアFの下方に配置され、回転機2の駆動に利用する電気エネルギを蓄える。
【0025】
模擬シフト装置4は、シフト位置を選択するための模擬シフトレバー4aと、運転者に振動を付与する振動付与部4bと、シフト位置を検出するシフトレバーセンサ4cと、を有する。
模擬シフトレバー4aは、電気自動車1の運転席の近傍において、運転者が操作可能な位置に設けられ、一般的なマニュアルトランスミッション車(MT車)に設けられるものと同様の形状を有する。
【0026】
模擬シフトレバー4aは、MTモードにおいて、トルク特性の異なる複数の仮想ギア段に対応するシフト位置の中から一つを選択するための操作部である。シフト位置は、例えば、1速,2速,3速,4速,5速の前進用のレンジと、後退用のリバースレンジが設けられている。各仮想ギア段のトルク特性は、MT車のギア段を模擬したトルク特性にプリセットされている。運転者が模擬シフトレバー4aで選択したシフト位置は、シフトレバーセンサ4cで検出され、ECU100に伝達される。
【0027】
振動付与部4bは、運転者に各種情報を通知するために、運転者が感知可能な振動を発生させる。振動付与部4bは、例えば、MTモードに移行した時に、模擬シフトレバー4aが操作可能になる旨を運転者に通知したり、MT車の操作感を運転者に与えるためにトルク特性の変化に応じて振動させたりする。
【0028】
模擬クラッチ装置5は、シフト位置を選択するための模擬クラッチペダル5aと、模擬クラッチペダル5aをMT車の操作感に近づけるための抵抗力付与部5bと、模擬クラッチペダル5aの踏み込み量を検出するためのペダルセンサ5cと、を有する。
模擬クラッチペダル5aは、電気自動車1の運転席の近傍において、踏み込み操作可能な位置に設けられ、一般的なMT車に設けられるものと同様の形状を有する。
【0029】
模擬クラッチペダル5aは、運転者が模擬シフトレバー4aを操作する際に踏み込まれ、MTモードにおける運転感覚を模擬するためのものである。模擬クラッチペダル5aの踏み込み操作量は、ペダルセンサ5cで検出され、ECU100に伝達される。
【0030】
抵抗力付与部5bは、模擬クラッチペダル5aの操作に応じて、模擬クラッチペダル5aを戻す方向の抵抗力を発生させる。抵抗力付与部5bは、例えば、MT車の操作感を運転者に与えるためにトルク特性の変化に応じて抵抗力を付与させる。
【0031】
タッチパネル6は、
図1に示すように、電気自動車1の車体B内の前方側(例えば、インストルメントパネル上)において、乗員が操作可能な位置に設けられる。タッチパネル6は、乗員による操作を入力可能であると共に、乗員へ情報を表示する表示装置としての機能を有する。
タッチパネル6は、例えば、走行モードの設定や選択、MTモードにおける回転機2のトルクの設定、MTモードにおける車両用シートSや車両用ドアDの設定、EVモードにおけるレンジの選択、自動運転モードにおける行き先を設定等の入力操作のために用いられる。タッチパネル6に入力された情報は、ECU100に伝達される。
また、タッチパネル6は、例えば、乗員による設定や選択画面、乗員への情報、車外カメラ7又は車内カメラ8から取得した映像等を表示する。タッチパネル6に表示される内容は、ECU100によって制御される。
【0032】
車外カメラ7は、
図1に示すように、電気自動車1の車体B外(例えば、ルーフ上)において、電気自動車1の周囲を撮影可能な位置に設けられる。電気自動車1は、車外カメラ7により撮影した画像情報を基に、電気自動車1の周囲の状態を判定することができる。
例えば、電気自動車1の周囲を撮影することで、近くを走行している他の車両を検出したり、カーブが連続するような危険度の高い道路かを検出したりすることができる。
車外カメラ7によって撮影された情報は、撮影データとしてECU100に伝達される。
【0033】
車内カメラ8は、
図1に示すように、電気自動車1の車体B内の前方側(例えば、インストルメントパネル上)において、乗員(運転者や同乗者)を撮影可能な位置に設けられる。電気自動車1は、車内カメラ8により撮影した画像情報を基に、乗員の状態を判定することができる。
例えば、運転者の顔を撮影することで、運転者の識別情報(運転者ID)を認識することができる。また、乗員を撮影することで、運転者や同乗者が車両用シートSに着座したことを検出することができる。言い換えると、車内カメラ8は、着座センサ又は同乗者検出センサとしての機能を有する。
車内カメラ8によって撮影された情報は、撮影データとしてECU100に伝達される。
【0034】
車速センサ9は、
図1に示すように、車体B内に設けられ、電気自動車1の走行速度を検知する。電気自動車1は、車速センサ9の検出値に基づいて、走行中か否か、又は高速走行中であるか否かを判定することができる。車速センサ9によって検出された情報は、車速データとしてECU100に伝達される。
【0035】
<車両用シートの構成>
車両用シートSは、
図1、
図2に示すように、車体Bに装備され、シートクッション10、シートバック20、及びヘッドレスト30を備えるシート本体と、シート本体を車体フロアFに対して前後移動可能に支持するレール装置40と、シートバック20をシートクッション10に対して回動可能に連結するリクライニング装置50と、シートバック20の一部を突出させるように動作するシート可動装置60と、シートバック20の内部に取り付けられ、着座者の上体を拘束するためのシートベルト装置70と、乗員に各種情報を通知するシート通知装置80と、を備える。
【0036】
シートクッション10は、
図2に示すように、乗員を下方から支持する着座部であって、骨格となるクッションフレームにパッド材10aを載置して表皮材10bで被覆されて構成されている。
シートバック20は、乗員の背中を後方から支持する背もたれ部であって、骨格となるバックフレーム21にパッド材20aを載置して表皮材20bで被覆されて構成されている。
図3、
図4に示すように、シートバック20は、シート幅方向の中央部分にある中央部20Aと、中央部20Aのシート幅方向の外側にある左右のサイド部20B(サイドボルスター部)と、から構成されている。
【0037】
レール装置40は、
図2に示すように、車体フロアFに対してシート本体を前後移動させる電動式の装置である。レール装置40は、前後方向に延び車体フロアFに固定されるロアレール41と、前後方向に延びシートクッション10に固定されるアッパレール42と、ロアレール41に対してアッパレール42を前後方向に移動させるレール駆動モータ43と、を有する。
乗員がシートクッション10に着座しているとき、乗員が不図示のスイッチを操作すること、又は後述するシートECU120が制御信号を受信することによって、レール駆動モータ43が駆動され、シート本体が車体フロアFに対して前後に移動する。
【0038】
リクライニング装置50は、
図2に示すように、シートクッション10に対してシートバック20を傾ける電動式の装置である。リクライニング装置50は、シート幅方向における左側に取り付けられており、シートバック20を所定の角度に傾ける回動モータ51を有する。
乗員がシートクッション10に着座しているとき、乗員が不図示のスイッチを操作すること、又はシートECU120が制御信号を受信することによって、回動モータ51が駆動され、シートバック20がシートクッション10に対して前後方向に傾けられる。
【0039】
シート可動装置60は、
図2~
図4に示すように、シートバック20のサイド部20Bを突出させるように動作する電動式の装置である。シート可動装置60は、例えばエアセルを有する可動体であって、圧縮空気が封入されることで乗員(着座者)側へ膨出し、通常位置から突出位置へ突出する。そして、シート可動装置60は、封入された圧縮空気が排出されることで収縮し、通常位置へ戻る。
具体的には、シート可動装置60は、着座者を側方から支持するサイドサポート部材であって、シートバック20の下方部分のサイド部20Bにおいてパッド材20aとバックフレーム21の間に配置されている。シート可動装置60は、折り畳まれた状態でバックフレーム21の前面に取り付けられている。
シート可動装置60は、サイド部20Bのパッド材20aを着座者側へ突出させるように動作する。
【0040】
シート可動装置60は、上下方向に長尺な略五角形状を有しており、バックフレーム21に支持されるベース部材61と、ベース部材61よりもシート前方位置に配置され、ベース部材61に対して回動軸62を介して回動可能となるように取り付けられる回動部材63と、ベース部材61及び回動部材63の間に配置され、ベース部材61の前面に支持される複数の袋体64と、シート本体の内部に取り付けられ、袋体64に対し圧縮空気を供給するエア供給部65と、から主に構成されている。
【0041】
ベース部材61は、バックフレーム21の前面に取り付けられ、バックフレーム21の前面に沿ってシート幅方向に突出するように延びている。
回動軸62は、ベース部材61の前面のうち、シート幅方向の内側端部に取り付けられている。
【0042】
回動部材63は、ベース部材61に対してシート前後方向に回動可能に取り付けられており、シート前方に向かって回動することでシートバック20のサイド部20Bをシート前方側へ突出させて、押し出すことができる。回動部材63は、シート前方にやや湾曲した湾曲形状を有するプレート体となっている。そのため、回動部材63とパッド材20aの接触面積が幾分小さくなって、回動部材63の押し出し力がパッド材20aに効率良く伝わることになる。
なお、回動部材63は、シートバック20が通常位置のときには、ベース部材61側に寄らせた位置に配置されている。また、回動部材63は、不図示の付勢バネ(付勢部材)によってベース部材61側に付勢された状態となっていても良い。
【0043】
複数の袋体64は、ベース部材61によって支持されており、圧縮空気が封入されることでシート前方側に膨出し、回動部材63をシート前方に向かって押し出すことができる。すなわち、回動部材63をシート前方に回動させることができる。
【0044】
複数の袋体64は、シート前後方向及びシート幅方向において異なる位置に配置され、それぞれ異なる大きさから構成されている。
詳しく述べると、複数の袋体64は、3つのエアセルから構成され、複数の袋体64のうち、最もシート前方側に位置する第1袋体64aが、その他のエアセルよりも容量が最も小さく構成されている。そして、第2袋体64bの容量が最も大きく構成されており、第3袋体64cの容量が中程度となっている。
【0045】
上記構成により、位置及び大きさの異なる複数の袋体64を膨出させることで、シートバック20のサイド部20Bの突出向きや突出量を調整することができる。
また、シートバック20のサイド部20Bの突出向きや突出量を調整することで、シートバック20の表皮材20bにシワやダブつきが生じることを抑制できる。
【0046】
エア供給部65は、シート本体の内部に取り付けられ、袋体64に対し圧縮空気を供給する。エア供給部65は、空気ポンプによって、袋体64に圧縮空気を供給し、袋体64から圧縮空気を排出する。
乗員がシートクッション10に着座しているとき、乗員が不図示のスイッチを操作すること、又は後述するシートECU120が制御信号を受信することによって、エア供給部65が駆動され、袋体64の可動範囲が調整される。
【0047】
シート可動装置60は、シートバック20のサイド部20Bを、
図3に示す「通常位置」から
図4に示す「突出位置」へ移動させるように膨出することができる。
図3に示す「通常位置」において、シート可動装置60は、シート前後方向においてバックフレーム21と表皮材20bの間に配置されている。具体的には、シート可動装置60は、バックフレーム21の前面に取り付けられており、パッド材20aの裏面に配置されている。
【0048】
そして、エア供給部65から圧縮空気の供給を受けることで、折り畳まれた状態の袋体64がシート前方へ膨出展開し、回動部材63をシート前方に向かって押し出すことで、サイド部20Bがシート前方へ移動する。その結果、サイド部20Bが「突出位置」に移動する。
なお、エア供給部65によって袋体64の内部にある圧縮空気が排出されることで、膨らんだ状態の袋体64が収縮し、サイド部20Bがシート後方へ下がる。その結果、シートバック20のサイド部20Bが「突出位置」から「通常位置」に戻る。
【0049】
本実施形態では、シート可動装置60が、シートバック20に取り付けられているが、特に限定されることなく、シートクッション10に取り付けられていても良い。
また、シート可動装置60は、機械的機構(リンク機構やヒンジ機構等)によって動作するように構成されても良い。なお、エア供給部65は、モータ式や油圧式の駆動装置等によって構成されていても良い。
【0050】
シートベルト装置70は、
図2に示すように、着座者の上体を拘束するシートベルト71と、シートバック20の右側上端に設けられ、シートベルト71を案内するためのベルトガイド72と、レール装置40に設けられ、シートベルト71と着脱自在に連結するベルトバックル73と、バックフレーム21に取り付けられ、シートベルト71を引き出し可能に巻き取るベルトリトラクタ74と、から主に構成されている。
【0051】
シートベルト71は、乗員の肩部に沿って上下に延在し、乗員の右肩部をシートバック20に拘束する。
ベルトガイド72は、シートバック20の右側におけるベルトリトラクタ74よりも上方位置に取り付けられ、ベルトリトラクタ74から引き出されたシートベルト71を、左下のベルトバックル73へ向かうように案内する。
ベルトバックル73は、レール装置40の左側の外側面に設けられ、シートベルト71の先端部に取り付けられた不図示のベルトタングプレートと着脱自在に連結する。
【0052】
ベルトリトラクタ74は、シートベルト71の上端を巻き取る巻取装置である。ベルトリトラクタ74は、シートベルト71を巻き取るための巻取モータ74aを有する。
乗員がシートクッション10に着座しているとき、乗員が不図示のスイッチを操作すること、又は後述するシートECU120が制御信号を受信することによって、巻取モータ74aが駆動され、着座者の上体の拘束感が調整される。
【0053】
シート通知装置80は、
図1に示すように、車両用シートSに設けられ、乗員にメッセージ等を通知する装置である。シート通知装置80は、音を出力する音出力装置81と、複数のLED素子からなる発光装置82と、を有する。
【0054】
音出力装置81は、
図2に示すように、ヘッドレスト30に設けられ、ビープ音、アラーム音、音声によるメッセージ、音楽等の音を出力するスピーカである。
音出力装置81は、シートECU120が制御信号を受信することによって、シートクッション10に着座する乗員へ各種情報を通知することができる。
【0055】
発光装置82は、
図2に示すように、シートバック20及びヘッドレスト30に設けられ、車内で発光する照明機器である。
発光装置82は、シートECU120が制御信号を受信することによって、LED素子それぞれの発光、及びそのタイミングが制御されることにより乗員へ各種情報を通知することができる。
【0056】
<車両用ドアの構成>
車両用ドアDは、
図1に示すように、基板となるドアライニング基材にドア表皮材を被覆して構成されている。車両用ドアDは、乗員に各種情報を通知するドア通知装置90を備える。
【0057】
ドア通知装置90は、
図1に示すように、車両用ドアDに設けられ、乗員にメッセージ等を通知する装置である。ドア通知装置90は、音を出力するドア音出力装置91と、複数のLED素子からなるドア発光装置92と、を有する。
【0058】
ドア音出力装置91は、
図1に示すように、車両用ドアDの車内側における中央部に設けられ、ビープ音、アラーム音、音声によるメッセージ、音楽等の音を出力するスピーカである。
ドア音出力装置91は、後述するドアECU130が制御信号を受信することによって、シートクッション10に着座する乗員へ各種情報を通知することができる。
【0059】
ドア発光装置92は、
図1に示すように、車両用ドアDの車内側における上部に設けられ、車内で発光する照明機器である。
ドア発光装置92は、ドアECU130が制御信号を受信することによって、LED素子それぞれの発光、及びそのタイミングが制御されることにより乗員へ各種情報を通知することができる。
【0060】
<電気自動車のハードウェア構成>
電気自動車1は、
図5に示すように、車両の走行を制御するECU100と、ECU100の下位ECUとして、モータECU110と、シートECU120と、ドアECU130と、を備える。
各ECUは、制御回路を有し、主として中央演算装置であるCPU(Central Processing Unit)、記憶装置としてのROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)等から構成されている。
【0061】
CPUは、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPUは、ROMやHDDからプログラムを読み出し、RAMを作業領域としてプログラムを実行する。CPUは、ROMやHDDに記憶されているプログラムに従って、各構成の制御及び各種演算処理を実行する。
【0062】
ROMは、各種プログラム及び各種データを格納する。RAMは、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。
HDDは、SSD(Solid State Drive)であってもよく、オペレーティングシステムを含む各種プログラム及び各種データを格納する。
【0063】
本実施形態のECU100は、回転機2に指示するトルク値を決めるトルク制御を実施する制御回路が組み込まれている。ECU100は、回転機2、バッテリ3、模擬シフト装置4と、模擬クラッチ装置5、タッチパネル6、車外カメラ7、車内カメラ8、車速センサ9と接続している。各構成はバスを介して相互に通信可能に接続されている。
なお、電気自動車1には、これらの他にも様々なアクチュエータや入力装置、出力装置、各種センサが搭載されても良い。
【0064】
電気自動車1がMTモードであるとき、ECU100の後述するトルク制御部101によって、運転者は疑似的な手動変速動作を行うことができる。
ECU100は、マニュアルトランスミッションを模擬する公知の技術が用いられ、回転機2の駆動トルクを制御する。回転機2のトルク制御において、ECU100は、電気自動車1の走行状態が仮想のエンジン及び変速機を搭載したMT車により実現されていると仮定した演算を行う。
モータECU110は、ECU100から伝達された指示トルクに基づいて走行モータ2aを制御する。
【0065】
また、電気自動車1がMTモードであるとき、ECU100は、後述するレバーペダル制御部102によって、運転者に各種情報を通知したり、MT車の操作感を運転者に与えたりすることができる。
さらに、電気自動車1がMTモードであるとき、ECU100は、シートECU120やドアECU130へ各種情報を伝達する。そして、シートECU120やドアECU130は、運転者に各種情報を通知したり、MT車の操作感を運転者に与えたりすることができる。
【0066】
電気自動車1が自動運転モードであるとき、ECU100は、電気自動車1の周辺状況、及び電気自動車1自体の状況を判断して電気自動車1の制御を行う。
自動運転モードであるとき、ECU100は、電気自動車1を自律走行させるために、タッチパネル6の入力情報や、車外カメラ7及び車速センサ9から得られる情報に基づいて、電気自動車1の周辺状況、及び電気自動車1自体の状況を判断する。そして、ECU100は、判断結果に応じてアクセル、ブレーキ及びハンドル操作を制御する自動運転制御処理を行う。
【0067】
本実施形態では、電気自動車1が自動運転モードであるときには、マニュアルトランスミッションを模擬するトルク制御は行われない。しかしこれに限らず、電気自動車1が自動運転モードであるときにも、マニュアルトランスミッションを模擬するトルク制御を行っても良い。
なお、マニュアルトランスミッションを模擬するトルク制御を行う場合には、MTモードであるときよりも、トルク制御量が制限されても良い。
【0068】
<ECUの機能について>
次に、
図5~
図12を参照して、ECU100、シートECU120、及びドアECU130の機能について説明する。各ECUの機能部は、それぞれECUを構成するハードウェア機器(具体的には、MPU及びメモリ)がソフトウェア機器(制御回路)と協働することにより実現されるものである。
【0069】
<ECU>
ECU100は、
図5に示すように、指示トルクを決定するトルク制御部101と、模擬シフト装置4又は模擬クラッチ装置5を制御するレバーペダル制御部102と、乗員を検出する着座検出部103と、乗員の識別情報を取得する識別情報取得部104と、各種プログラム及び各種データを記憶しておく記憶部105と、走行モードを設定するモード設定部106と、MTモードの制限を判定する判定部107と、走行モードを切り替えるモード切替部108と、各種データを送受信する通信部109と、を主な構成要素として備えている。
【0070】
(トルク制御部101)
トルク制御部101は、電気自動車1の走行モードや模擬シフトレバー4a及び模擬クラッチペダル5a、不図示のアクセルペダルの操作情報、タッチパネル6による入力情報、車速センサ9で検出された車速等、によって指示トルクを決定する。決定された指示トルクは、通信部109によって、モータECU110に伝達される。
【0071】
(レバーペダル制御部102)
レバーペダル制御部102は、MTモードへ移行した時に、模擬シフト装置4の振動付与部4b、及び模擬クラッチ装置5の抵抗力付与部5bを制御する。
詳しく述べると、レバーペダル制御部102は、MTモードへ切り替える切替信号が入力されたときに、振動付与部4bを制御し、模擬シフトレバー4aに振動を与えることで、模擬シフトレバー4aが操作可能になる旨を運転者に通知する。
また、レバーペダル制御部102は、MTモードにおいてトルク特性が変化する信号が入力されたときに、振動付与部4bを制御し、設定された指示トルクに基づいて、模擬シフトレバー4aを振動させる。
さらに、レバーペダル制御部102は、MTモードにおいてトルク特性が変化する信号が入力されたときに、抵抗力付与部5bを制御し、設定された指示トルクに基づいて模擬クラッチペダル5aに抵抗力を付与する。
【0072】
なお、模擬クラッチペダル5aに抵抗力は乗員によって設定できるようにしても良い。例えば、拘束感が強いのが好みの乗員は、袋体64の突出量を大きく設定することで、より拘束感を高めることができる。
また、模擬シフト装置4に、模擬シフトレバー4aに抵抗力を付与する抵抗力付与部が設けられるように構成しても良い。
このように、MTモードにおいて、模擬シフトレバー4aや模擬クラッチペダル5aの操作感が変更されるため、MT車の操作感の再現性をより高めることができる。
【0073】
(着座検出部103)
着座検出部103は、乗員(運転者や同乗者)が着座していることを車内カメラ8が検出したときに、乗員が着座していることを検出する。なお、着座検出部103は、車内カメラ8によって着座を検出する方法に限らず、例えば、シートクッション10又はシートバック20の着座面に配置された複数の圧力センサで着座したことを検出しても良い。
言い換えると、着座検出部103は、乗員(運転者)を検出する運転者検出部、及び、運転者とは異なる同乗者を検出する同乗者検出部として機能する。
【0074】
(識別情報取得部104)
識別情報取得部104は、運転席に着座した乗員(運転者)の識別情報を取得する。ここで、識別情報とは、着座者を特定(個人認証)するための情報であり、例えば、運転者のID情報、運転者の顔画像や指紋画像を示す画像情報、運転者の声紋情報等が該当する。
識別情報取得部104は、着座検出部103によって、運転者が着座したことを検出したとき、車内カメラ8によって運転者の顔画像を取得する。車内カメラ8によって運転者の顔画像を撮影することで、比較的容易に運転者の識別情報を取得することが可能となる。
また、識別情報取得部104は、運転席に着座した運転者の識別情報を取得するだけではなく、同乗者の識別情報を取得しても良い。
【0075】
識別情報取得部104は、着座検出部103によって、乗員が着座したことを検出したとき、車内カメラ8によって乗員の顔画像を取得し、記憶部105の後述するモード管理テーブルに乗員の識別情報が登録されている場合には、当該識別情報(ID)を読み出す。記憶部105のモード管理テーブルに乗員の識別情報が登録されていない場合には、新規の識別情報(新規ID)を発行し、乗員の顔画像の情報に紐づけてモード管理テーブルに記憶する。
【0076】
なお、識別情報の取得方法については上記の方法に限定されるものではなく、識別情報取得部104は、乗員が所持しているスマートフォンと通信することで識別情報を取得しても良い。この場合、スマートフォンを所持している者が車両用シートSに着座すると、通信部109が乗員のスマートフォンと通信することで乗員の識別情報を自動的に取得しても良い。
また、乗員がタッチパネル6を通じて識別情報を入力し、入力操作の内容に関するデータを受信することで識別情報を取得しても良い。あるいは、車内に設置されたマイクにより乗員の音声を録音することで識別情報を取得しても良い。
【0077】
(記憶部105)
記憶部105は、電気自動車1を制御するための各種の制御プログラム、シフト特性の情報、レバーペダル制御部102の制御情報等が記憶されている。
また、記憶部105は、着座検出部103によって同乗者が着座していることを検出したときに、乗員が着座していることを示す同乗者情報を記憶する。さらに、記憶部105は、識別情報取得部104が取得した乗員の識別情報を管理するモード管理テーブルを記憶している。
【0078】
モード管理テーブルは、乗員毎に設定された走行モードを管理するためのデータである。詳しく述べると、モード管理テーブルは、識別情報取得部104が取得した乗員の識別情報と、識別情報によって特定される乗員が設定した初期走行モードとの対応関係を規定している。
一例を挙げて説明すると、識別情報「aaaa」の運転者が、初期走行モードをMTモードに設定している場合に、識別情報「aaaa」の運転者が着座したことを検出すると、自動的にMTモードが適用される。
【0079】
モード管理テーブルには、乗員の識別情報に関連して、免許にかかる情報、例えば、MT車を運転可能であるかの情報や、オートマチックトランスミッション車限定免許保有者である情報、運転免許を保有していない者である情報が記憶される。乗員がMT車を運転可能でない場合又は制限する場合には、MT車の運転を制限する制限情報が記憶される。
免許にかかる情報は、例えば、乗員のタッチパネル6による入力操作によって記憶される。なお、車内カメラ8によって運転者の運転免許証を撮影することで、運転者がMT車を運転可能であるかの情報等を取得するようにしても良い。
【0080】
(モード設定部106)
モード設定部106は、着座検出部103が運転者を検出したとき、運転者の識別情報に紐づけて、初期走行モードをMTモード、EVモード、自動運転モードのいずれかのモードに設定するものである。
本実施形態では、モード設定部106は、識別情報取得部104が取得した乗員の識別情報が記憶部105に記憶されていないとき、乗員の識別情報の記憶と共に初期走行モードを設定するように構成されている。言い換えると、電気自動車1を初めて運転する場合に、初期走行モードを設定し、当該電気自動車1を次回以降運転するときには、自動的に好みのモードが適用される。そのため、乗員は、毎回モードを入力することなく、好みのモードで運転を開始することができる。
なお、ECU100は、乗員(識別情報)毎に初期走行モードを設定せずに、初期設定を通常モード(EVモード)とし、乗員の操作に応じて、走行モードをMTモード又は自動運転モードへ切り替えるようにしても良い。
【0081】
モード設定部106は、識別情報取得部104が取得した乗員の識別情報が記憶部105に記憶されていないときに、初期走行モードの設定を受け付ける。また、モード設定部106は、モード管理テーブルに乗員の識別情報が登録されている場合において乗員が初期走行モードの設定を変更するときに、初期走行モードの設定を受け付ける。
乗員は、タッチパネル6の入力操作によって、初期走行モードをMTモード、EVモード、自動運転モードのいずれかのモードに初期設定することができる。
【0082】
(判定部107)
判定部107は、乗員がMTモードへ切り替えることが制限されていないかを判定するものである。
MT車を運転可能な免許を保有していない運転者は、初期走行モードをMTモードに設定すること、及び走行モードの切り替え時にMTモードへの切り替えが制限される。
また、電気自動車1に運転者以外の乗員(同乗者)がいる場合には、MTモードへの切り替えが制限される。
【0083】
詳しく述べると、モード切替部108によって走行モードを設定するとき、判定部107は、記憶部105のモード管理テーブルに、識別情報取得部104の取得した運転者の識別情報に関連して、MT車を運転不可である情報(例えば、オートマチックトランスミッション車限定免許保有者である情報、運転免許を保有していない者である情報)が記憶されていないかを判定する。
そして、運転者の識別情報に関連して、MT車を運転不可である情報が記憶されている場合には、走行モードをMTモードへ切り替えることができない旨を乗員へ通知し、EVモード又は自動運転モードへ切り替えるように通知する。
【0084】
また、判定部107は、モード切替部108によって走行モードを設定するとき、記憶部105に同乗者情報が記憶されていないかを判定する。
そして、同乗者情報が記憶されている場合には、走行モードをMTモードへ切り替えることができない旨を乗員へ通知し、EVモード又は自動運転モードへ切り替えるように通知する。
【0085】
なお、本実施形態では、乗員が走行モードの切り替え時に、MTモードへ切り替えることが制限されている場合には、MTモードへ切り替えるボタンをタッチパネル6に表示しないことで、MTモードの切り替えが制限されている。しかしこれに限らず、MTモードへ切り替えるボタンをタッチパネル6に表示し、タッチしてもMTモードが切り替わらないようにしても良い。
【0086】
(モード切替部108)
モード切替部108は、着座検出部103が検出した運転者の識別情報に応じた初期走行モードを記憶部105から読み出して、初期走行モードをMTモード、EVモード、自動運転モードのいずれかのモードに切り替えるものである。また、モード切替部108は、運転者からのタッチパネル6の入力操作によって、走行モードをMTモード、EVモード、自動運転モードのいずれかのモードに切り替える。ここで、タッチパネル6は、モードを切り替える切替操作部として機能する。
なお、タッチパネル6の入力操作に限らず、モードを切り替えるためのモード切替ボタンを設けて、モード切替ボタンの押圧操作に応じてモードが切り替わっても良い。あるいは、車内に設置されたマイクによる音声入力に応じてモードが切り替わっても良い。
【0087】
モード切替部108は、初期走行モードがMTモードであり、制限情報及び同乗者情報から判定した判定部107の結果からMTモード制限中では無く、他モードへの切り替えがない場合に、MTモードへ切り替える。
また、初期走行モードがEVモードであり、他モードへの切り替えがない場合には、EVモードへ切り替える。初期走行モードが自動運転モードであり、他モードへの切り替えがない場合には、自動運転モードへ切り替える。
なお、EVモード、自動運転モードにおいて、MTモードへの切り替え操作が有ったとき、制限情報及び同乗者情報から判定した判定部107の結果からMTモード制限中では無い場合に、MTモードへ切り替える。
【0088】
このように、モード切替部108は、MTモードと、EVモードと、自動運転モードにモードを切り替え可能である。
また、モード設定部106によって初期走行モードが設定されるため、モード切替部108は、乗員の識別情報に関連付けられたモードに基づいて、モードを自動的に切り替え可能である。
さらに、モード切替部108は、着座検出部103によって同乗者が検出されたときには、タッチパネル6のMTモードへの切り替え操作を受け付けず、同乗者が検出されなかったときには、タッチパネル6の操作を受け付ける。
【0089】
(通信部109)
通信部109は、車載ネットワークを通じてECU100と、回転機2(モータECU110)と、バッテリ3と、模擬シフト装置4と、模擬クラッチ装置5と、タッチパネル6と、車外カメラ7と、車内カメラ8と、車速センサ9と、車両用シートS(シートECU120)と、車両用ドアD(ドアECU130)との間で、データの送受信を実行するものである。
【0090】
例えば、通信部109は、各種センサやタッチパネル6等と通信し、各種センサが出力する信号、及び乗員が入力する信号を受信する。
また、通信部109は、トルク制御部101、レバーペダル制御部102の情報に基づき、回転機2、模擬シフト装置4、模擬クラッチ装置5に制御信号を送信する。
さらに、通信部109は、トルク制御部101や、モード切替部108、判定部107の情報に基づき、車両用シートSに設けられたレール装置40、リクライニング装置50、シート可動装置60、シートベルト装置70、シート通知装置80、車両用ドアDに設けられたにドア通知装置90、に制御信号を送信する。
【0091】
<シートECU>
シートECU120は、走行モードに応じて車両用シートSに設けられた車両内装部品を制御するものである。シートECU120は、
図5に示すように、ECU100からの制御信号を取得する取得部121と、車両用シートSに設けられたレール装置40、リクライニング装置50、シート可動装置60、シートベルト装置70、シート通知装置80を制御する部品制御部122と、を主な構成要素として備えている。
【0092】
(取得部121)
取得部121は、車載ネットワークを通じてECU100から、レール装置40のレール駆動モータ43、リクライニング装置50の回動モータ51、シート可動装置60のエア供給部65、シートベルト装置70の巻取モータ74a、シート通知装置80の音出力装置81及び発光装置82、を制御するための制御信号を取得するためのものである。
【0093】
(部品制御部122)
部品制御部122は、モード切替部108によってMTモードに切り替えられたとき、車両用シートSに設けられた車両内装部品を制御する。詳しく述べると、部品制御部122は、取得部121によってECU100から制御信号を取得したとき、制御パターンに基づいて、レール駆動モータ43、回動モータ51、エア供給部65、巻取モータ74a、音出力装置81、発光装置82等の車両用内装部品を制御する。
さらに詳しく述べると、部品制御部122は、モード切替部108によってMTモードにおいて、所定条件が成立したとき、車両内装部品の可動量を制御する。所定条件とは、MTモードにおいてトルク特性が変化する信号が入力されたときや、MTモードを開始する信号が入力されたとき、乗員の操作によって可動量を変化させる信号が入力されたとき、等が挙げられる。
【0094】
ここで、制御パターンとは、車両内装部品の可動量(シート本体の前後移動量、シートバック20の回動量、袋体64の突出量、シートベルト71の巻取量)、音出力装置81の音出力パターン、及び発光装置82の発光パターン等の制御パラメータを規定する情報である。制御パターンは、シートECU120の不揮発性メモリに記憶された制御パターンテーブルに格納されている。
【0095】
なお、部品制御部122は、モード切替部108によってEVモードや自動運転モードに切り替えられたときにも、車両用シートSに設けられた車両内装部品を制御しても良い。このとき、モードに応じて、参照する制御パターンも切り替えられると良い。言い換えると、モード切替部108によってMTモードに切り替えられたときの車両内装部品の可動量(例えば、シート本体の前後移動量、シートバック20の回動量、袋体64の突出量、シートベルト71の巻取量)よりも、EVモード又は自動運転モードに切り替えられたときの車両内装部品の可動量の方が制限される。
例えば、EVモードでは、MTモードのときに参照される制御パターンよりも、車両内装部品の可動量が小さい制御パターンとしても良い。さらに、自動運転モードのときは、MTモードのときに参照される制御パターンよりも、車両内装部品の可動量がかなり小さい制御パターンとしても良く、車両内装部品の制御を禁止しても良い。
このように、EVモードや自動運転モードにおいて、車両用シートSに設けられた車両内装部品の可動量が制限されるため、MTモードと比較して乗員がリラックスした姿勢をとることができる。したがって、モードに応じて拘束感や解放感を乗員へ与えることができる。
【0096】
さらに、部品制御部122は、バッテリ3の状態に基づいて、車両内装部品の制御を制限しても良い。詳しく述べると、部品制御部122は、バッテリ残量が所定値以下のとき、車両内装部品の制御が禁止される。
例えば、バッテリ残量が所定値以下のとき、バッテリ残量が十分にあるときに参照される制御パターンよりも、シート本体の前後移動量、シートバック20の回動量、袋体64の突出量、シートベルト71の巻取量が小さい制御パターンとされる。さらに、バッテリ残量が所定値以下であって充電が必要な状態であるときには、車両内装部品の制御が禁止される。
なお、バッテリ残量だけではなく、バッテリ3が異常であることを検出したときにも、車両内装部品の制御を制限するようにしても良い。
【0097】
このように、電気自動車1は、バッテリ3の状態に基づいて、車両内装部品の制御を制限することで、電力を過度に消費してしまうことを抑制できる。
なお、電気自動車1は、バッテリ3の状態に基づいて、車両内装部品の制御だけではなく、トルク制御部101によるトルク制御や、レバーペダル制御部102による模擬シフト装置4又は模擬クラッチ装置5の制御を制限しても良い。
【0098】
部品制御部122によるレール装置40の制御について、具体的に説明する。部品制御部122は、取得部121によって、MTモードへ切り替える切替信号が取得されたときに、制御パターンに基づいて、レール駆動モータ43を制御し、シート本体を車体フロアFに対して後方へ移動させる。
このように、MTモードへ切り替わると、シート本体が車体フロアFに対して移動するため、スポーツ車のような座り心地を乗員に与えることができる。また、MTモードに移行したことを、乗員に報知できる。
【0099】
また、部品制御部122は、MTモードにおいてトルク特性が変化する信号が入力されたときに、レール駆動モータ43を制御し、設定された指示トルクに基づいて、シート本体を車体フロアFに対して移動させる。このように、MTモードに切り替えられたとき、シート本体が車体フロアFに対してトルクに基づいて移動するため、MT車を運転しているような感覚を乗員に与えることができる。
【0100】
部品制御部122によるリクライニング装置50の制御について、具体的に説明する。部品制御部122は、取得部121によって、MTモードへ切り替える切替信号が取得されたときに、制御パターンに基づいて、回動モータ51を制御し、シートバック20をシートクッション10に対して後方へ傾ける。
このように、MTモードへ切り替わると、シートバック20がシートクッション10に対して移動するため、スポーツ車のような座り心地を乗員に与えることができる。また、MTモードに移行したことを、乗員に報知できる。
【0101】
また、部品制御部122は、MTモードにおいてトルク特性が変化する信号が入力されたときに、回動モータ51を制御し、設定された指示トルクに基づいて、シート本体を車体フロアFに対して移動させる。このように、MTモードに切り替えられたとき、シートバック20がシートクッション10に対してトルクに基づいて移動するため、MT車を運転しているような感覚を乗員に与えることができる。
【0102】
部品制御部122によるシート可動装置60の制御について、具体的に説明する。部品制御部122は、取得部121によって、MTモードへ切り替える切替信号が取得されたときに、制御パターンに基づいて、エア供給部65を制御し、袋体64の可動範囲(可動量)を調整する。
詳しく述べると、MTモードへ切り替える切替信号が取得されたときに、折り畳まれた状態の袋体64が、エア供給部65から圧縮空気の供給を受けることで、シート前方へ膨出展開する。
なお、部品制御部122は、運転席に設けられたシート可動装置60だけではなく、運転席以外の車両用シートSのシート可動装置60を制御しても良い。
【0103】
このように、MTモードへ切り替わると、袋体64がシート前方へ膨出展開するため、スポーツ車のような座り心地を乗員に与えることができる。また、ホールド感を高めて安全性を向上することができる。また、MTモードに移行したことを乗員に報知できる。
【0104】
また、部品制御部122は、MTモードにおいてトルク特性が変化する信号が入力されたときに、エア供給部65を制御し、設定された指示トルクに基づいて、袋体64の可動範囲(突出量)を調整する。
詳しく述べると、部品制御部122は、車速センサ9によって検出された車体Bの速度や、道路状況(例えばカーナビから得た地図情報や、車外カメラ7から検出した画像から判断した情報)に応じて、袋体64の突出量を変化させても良い。
さらに詳しく述べると、部品制御部122は、速度が一定のしきい値(例えば、60km、80km、100km等)に到達するたびに、袋体64の突出量を大きくして締め付けを強くするように制御する。また、部品制御部122は、連続したカーブが近づいてきたら袋体64の突出量を大きくして締め付けを強くするように制御する。
【0105】
また、部品制御部122は、選択されている模擬シフトレバー4aのシフト位置に応じて、袋体64の突出量を変化させるように制御しても良い。例えば、1速だと突出量は小さいが、5速だと突出量が大きくすることが挙げられる。
さらに、袋体64の突出量は乗員によって設定できるようにしても良い。例えば、拘束感が強いのが好みの乗員は、袋体64の突出量を大きく設定することで、より拘束感を高めることができる。
【0106】
このように、MTモードに切り替えられたとき、袋体64の突出量がトルクに基づいて
調整されるため、MT車を運転しているような感覚を乗員に与えることができる。
【0107】
なお、部品制御部122は、袋体64を可動させるかどうかを、タッチパネル6のモニタや音声によって乗員に確認し、乗員が許可を出したときだけエア供給部65を制御するようにしても良い。
また、部品制御部122は、タッチパネル6や車両用シートS、車両用ドアDに設けられたスイッチなどによって、袋体64の可動を禁止するようにしても良い。
このように、部品制御部122は、乗員の好みに対応して、シート可動装置60を制御することができる。
【0108】
部品制御部122によるシートベルト装置70の制御について、具体的に説明する。部品制御部122は、取得部121によって、MTモードへ切り替える切替信号が取得されたときに、制御パターンに基づいて、巻取モータ74aを制御し、シートベルト71の巻取量が大きくして乗員を締め付ける。
このように、MTモードへ切り替わると、着座者の上体の拘束感を調整するため、スポーツ車のような座り心地を乗員に与えることができる。また、MTモードに移行したことを、乗員に報知できる。
【0109】
また、部品制御部122は、MTモードにおいてトルク特性が変化する信号が入力されたときに、巻取モータ74aを制御し、設定された指示トルクに基づいて、着座者の上体の拘束感を調整する。このように、MTモードに切り替えられたとき、着座者の上体の拘束感を調整されるため、MT車を運転しているような感覚を乗員に与えることができる。
【0110】
部品制御部122によるシート通知装置80の制御について、具体的に説明する。部品制御部122は、取得部121によって、MTモードへ切り替える切替信号が取得されたときに、制御パターンに基づいて、音出力装置81及び発光装置82を制御し、MTモードへ移行したことを乗員へ通知する。
このように、MTモードへ切り替わると、音声や発光によって乗員へ現在のモードを通知するため、モードを切り替えたことを適切に乗員に報知できる。
【0111】
また、部品制御部122は、MTモードにおいてトルク特性が変化する信号が入力されたときに、音出力装置81及び発光装置82を制御する。部品制御部122は、制御パターンに基づいて、音出力装置81からエンジン音を模したサウンドを出力する。出力するサウンドは指示トルクや、模擬シフトレバー4aの操作等に応じて大きさや音程が変化する。また、部品制御部122は、発光装置82のLEDを青色から赤色へ変化させたり、点滅させたりする。
このように、MT車の操作感の再現性をより高めることができる。
【0112】
<ドアECU>
ドアECU130は、
図5に示すように、ECU100からの制御信号を取得するドア取得部131と、車両用ドアDに設けられたにドア通知装置90を制御するドア部品制御部132と、を主な構成要素として備えている。
【0113】
(ドア取得部131)
ドア取得部131は、車載ネットワークを通じてECU100から、ドア通知装置90のドア音出力装置91及びドア発光装置92、を制御するための制御信号を取得するためのものである。
【0114】
(ドア部品制御部132)
ドア部品制御部132は、モード切替部108によってMTモードに切り替えられたとき、車両用ドアDに設けられた車両内装部品を制御する。詳しく述べると、ドア部品制御部132は、ドア取得部131によってECU100から制御信号を取得したとき、制御パターンに基づいて、ドア音出力装置91、ドア発光装置92等の車両用内装部品を制御する。
【0115】
ドア部品制御部132によるドア通知装置90の制御について、具体的に説明する。ドア部品制御部132は、ドア取得部131によって、MTモードへ切り替える切替信号が取得されたときに、制御パターンに基づいて、ドア音出力装置91及びドア発光装置92を制御し、MTモードへ切り替えることを乗員へ通知する。
このように、MTモードへ切り替わると、音声や発光によって乗員へ現在のモードを通知するため、モードを切り替えたことを適切に乗員に報知できる。
【0116】
また、ドア部品制御部132は、MTモードにおいてトルク特性が変化する信号が入力されたときに、制御パターンに基づいて、ドア音出力装置91及びドア発光装置92を制御する。部品制御部122は、音出力装置81からエンジン音を模したサウンドを出力する。出力するサウンドは指示トルクや、模擬シフトレバー4aの操作等に応じて大きさや音程が変化する。また、部品制御部122は、発光装置82のLEDを青色から赤色へ変化させたり、点滅させたりする。
このように、MT車の操作感の再現性をより高めることができる。
【0117】
<モード切り替え処理について>
次に、ECU100によって実行されるモード切り替え処理の流れについて説明する。モード切り替え処理は、
図6に示すように乗員が運転席に着座したときに、電気自動車1の走行モードを切り替えるために実行される。具体的には、ECU100は、乗員が運転席に着座したことを検出する(ステップS1)と、乗員特定処理(ステップS2)と、同乗者検出処理(ステップS3)と、モード決定処理(ステップS4)と、を実行する。
【0118】
図7を用いて、乗員が運転席に着座したときにECU100によって実行される乗員特定処理(ステップS2)について説明する。
ECU100は、乗員が運転席に着座したことを検出すると、運転席に着座した乗員を車内カメラ8によって顔画像を撮影し、運転者の識別情報を取得する(ステップS20)。そして、記憶部105のモード管理テーブルに運転者の識別情報が登録されているか否かを判定する(ステップS21)。登録されていないと判定された場合(ステップS21:No)、ECU100は、新規の識別情報(新規ID)を発行する(ステップS22)。このとき、ECU100は、運転免許についての情報を入力するように運転者へ促す。新規IDが発行されると、乗員による初期走行モードの設定を受け付ける(ステップS23)。そして、乗員によって設定された初期走行モードを決定する(ステップS24)。そして、ECU100は、モード管理テーブルに、運転者の識別情報と、決定された初期走行モードと、MT車の運転を制限する制限情報と、を紐づけて記憶する(ステップS25)。
【0119】
一方、記憶部105のモード管理テーブルに運転者の識別情報が登録されていると判定された場合(ステップS21:Yes)、ECU100は、当該識別情報(ID)を読み出す(ステップS26)。このとき、運転免許についての情報に変更がある場合は制限情報を更新するように運転者へ促す。
そして、運転者が初期走行モードの設定を変更するか否かを判定する(ステップS27)。変更すると判定された場合(ステップS27:Yes)、ステップS23へ移行する。一方、変更しないと判定された場合(ステップS27:No)、ステップS24へ移行する。
【0120】
図8を用いて、乗員特定処理(ステップS2)の後に、ECU100によって実行される同乗者検出処理(ステップS3)について説明する。
ECU100は、車内カメラ8によって車内を撮影し、運転席以外に着座した乗員がいるかを確認する(ステップS30)。そして、車内カメラ8によって同乗者が検出されたか否かを判定する(ステップS31)。同乗者が検出されないと判定された場合(ステップS31:No)、ECU100は、同乗者検出処理を終了する。
一方、同乗者が検出されないと判定された場合(ステップS31:Yes)、ECU100は、記憶部105に同乗者情報を記憶し(ステップS32)、同乗者検出処理を終了する。
【0121】
図9A~
図9Cを用いて、同乗者検出処理(ステップS3)の後に、ECU100によって実行されるモード決定処理(ステップS4)について説明する。なお、モード決定処理で決定されたモードは、通信部109によって、シートECU120及びドアECU130へ送信される。
【0122】
ECU100は、識別情報取得部104が検出した運転者の識別情報を取得する(ステップS40)。そして、ECU100は、運転者の識別情報に応じた初期走行モードを記憶部105のモード管理テーブルから取得する(ステップS41)。そして、ECU100は、初期走行モードがMTモードであるか否か判定する(ステップS42)。
【0123】
図9Aに示すように、初期走行モードがMTモードであると判定された場合(ステップS42:Yes)、ECU100は、制限情報の有無を判定する(ステップS43)。制限情報が無いと判定された場合(ステップS43:Yes)、ECU100は、同乗者情報の有無を判定する(ステップS44)。同乗者情報が無いと判定された場合(ステップS44:Yes)、ECU100は、MTモードへ切り替えることを決定するか乗員へ確認する(ステップS45)。具体的には、ECU100は、タッチパネル6にMTモードへ切り替えることを表示し、他モードへ切り替える場合には、所定時間以内にタッチパネル6(切替操作部)によって切り替え操作するように表示する。そして、ECU100は、他モードへ切り替える操作の有無を判定する(ステップS46)。他モードへ切り替える操作が無いと判定された場合(ステップS46:Yes)、ECU100は、MTモードへ切り替えることを決定し(ステップS47)、モード決定処理を終了する。
【0124】
一方、制限情報が有ると判定された場合(ステップS43:No)、及び、同乗者情報が有ると判定された場合(ステップS44:No)、ECU100は、MTモードへ切り替えることが制限中であることを表示する(ステップS48)。具体的には、ECU100は、タッチパネル6にMTモードへ切り替えることを表示し、他モードへ切り替えるために、タッチパネル6(切替操作部)によって切り替え操作するように表示する。そして、ECU100は、切り替えるモードを判定する(ステップS49)。EVモードへ切り替える場合(ステップS49:EVモード)、ECU100は、EVモードへ切り替えることを決定し(ステップS50)、モード決定処理を終了する。自動運転モードへ切り替える場合(ステップS49:自動運転モード)、ECU100は、自動運転モードへ切り替えることを決定し(ステップS51)、モード決定処理を終了する。
【0125】
また、
図9Aに示すように、初期走行モードがMTモードでないと判定された場合(ステップS42:No)、初期走行モードがEVモードであるか判定する(ステップS52)。
初期走行モードがEVモードであると判定された場合(ステップS52:Yes)、
図9Bに示すように、ECU100は、EVモードへ切り替えることを決定するか乗員へ確認する(ステップS53)。具体的には、ECU100は、タッチパネル6にEVモードへ切り替えるすることを表示し、他モードへ切り替える場合には、所定時間以内にタッチパネル6(切替操作部)によって切り替え操作するように表示する。そして、ECU100は、他モードへ切り替える操作の有無を判定する(ステップS54)。他モードへ切り替える操作が無いと判定された場合(ステップS54:Yes)、ECU100は、EVモードへ切り替えることを決定し(ステップS55)、モード決定処理を終了する。
【0126】
他モードへ切り替える操作が有ると判定された場合(ステップS54:No)、ECU100は、MTモードへ切り替える操作の有無を判定する(ステップS56)。MTモードへ切り替える操作が無いと判定された場合(ステップS56:No)、ECU100は、自動運転モードへ切り替えることを決定し(ステップS57)、モード決定処理を終了する。MTモードへ切り替える操作が有ると判定された場合(ステップS56:Yes)、ECU100は、
図9AのステップS43へ移行する。
【0127】
また、
図9Aに示すように、初期走行モードがEVモードでないと判定された場合(ステップS52:No)、
図9Cに示すように、ECU100は、自動運転モードへ切り替えることを決定するか乗員へ確認する(ステップS58)。具体的には、ECU100は、タッチパネル6に自動運転モードへ切り替えるすることを表示し、他モードへ切り替える場合には、所定時間以内にタッチパネル6(切替操作部)によって切り替え操作するように表示する。そして、ECU100は、他モードへ切り替える操作の有無を判定する(ステップS59)。他モードへ切り替える操作が無いと判定された場合(ステップS59:Yes)、ECU100は、自動運転モードへ切り替えることを決定し(ステップS60)、モード決定処理を終了する。
【0128】
他モードへ切り替える操作が有ると判定された場合(ステップS59:No)、ECU100は、MTモードへ切り替える操作の有無を判定する(ステップS61)。MTモードへ切り替える操作が無いと判定された場合(ステップS61:No)、ECU100は、EVモードへ切り替えることを決定し(ステップS62)、モード決定処理を終了する。MTモードへ切り替える操作が有ると判定された場合(ステップS61:Yes)、ECU100は、
図9AのステップS43へ移行する。
【0129】
<モード取得フローについて>
次に、
図10を用いて、シートECU120によって実行されるモード取得処理の流れについて説明する。モード取得処理は、現在の走行モードが、MTモード、EVモード、自動運転モードのいずれかであるかを取得するために実行される。
なお、ドアECU130についても同様の処理が実行されるが、シートECU120と同様の処理であるため説明を省略する。
【0130】
シートECU120は、ECU100からモード切替信号を受信すると、決定されたモードが、MTモード、EVモード、自動運転モードのいずれかであるかを取得する(ステップS70)。そして、シートECU120は取得したモードがMTモード、EVモード、自動運転モードのいずれかであるかを判定する(ステップS71)。
取得したモードがMTモードであると判定された場合(ステップS71:MTモード)、
図11に示す部品制御フローを実行する(ステップS72)。
【0131】
<部品制御フローについて>
次に、シートECU120によって実行される部品制御処理の流れについて説明する。部品制御処理は、
図11に示すように、切り替えられたモードを通知するため、及び、モードに応じて車両用内装部品を制御するために実行される。
なお、ドアECU130についても同様の処理が実行されるが、シートECU120と同様の処理であるため説明を省略する。
【0132】
シートECU120は、モード取得処理後に、取得されたモードがMTモードであることを乗員へ通知する(ステップS80)。具体的には、シートECU120は、レール駆動モータ43を制御し、シート本体を車体フロアFに対して後方へ移動させる。また、シートECU120は、回動モータ51を制御し、シートバック20をシートクッション10に対して後方へ傾ける。さらに、シートECU120は、エア供給部65を制御し、折り畳まれた状態の袋体64をシート前方へ膨出展開する。また、シートECU120は、巻取モータ74aを制御し、シートベルト71の巻取量を大きくして乗員を締め付ける。また、シートECU120は、音出力装置81及び発光装置82を制御し、MTモードへ移行したことを乗員へ通知する。
【0133】
このように、MTモードへ切り替わると、車両用シートS及び車両用シートSの一部を移動させ、スポーツ車のような座り心地を乗員に与えることができる。また、音声や発光によって通知するため、MTモードへ切り替わったことを乗員へ適切に報知できる。
【0134】
シートECU120は、取得したモードがMTモードであること通知した後、バッテリ残量を確認する(ステップS81)。そして、バッテリ残量が所定値以上であるかを判定する(ステップS82)。バッテリ残量が所定値以上であると判定された場合(ステップS82:Yes)、シートECU120は、車両用シートSに設けられた車両内装部品の制御を実行する。具体的には、シートECU120は、可動装置制御(ステップS83)、リクライニング装置制御(ステップS84)、レール装置制御(ステップS85)、ベルト装置制御(ステップS86)、音及び光制御(ステップS87)を実行する。ステップS77が終了するとステップS72へ戻り、車両内装部品の制御処理が繰り返し実行される。
なお、車両内装部品の制御については、
図12に示す可動装置制御を代表して説明する。リクライニング装置制御処理、レール装置制御処理、ベルト装置制御処理、音及び光制御処理については、可動装置制御処理と同様の流れのため、説明は省略する。また、ステップS83~ステップS87における車両内装部品の制御処理は、この順に限らない。
【0135】
一方、バッテリ残量が所定値以上でないと判定された場合(ステップS82:No)、シートECU120は、バッテリ残量が低下していることを乗員へ通知する(ステップS88)。具体的には、シートECU120は、ECU100を介して、バッテリ残量が低下しているため車両内装部品を制御できないことをタッチパネル6に表示する。併せて、シートECU120は、充電を促すことをタッチパネル6に表示しても良い。また、バッテリ残量が低下していることを乗員へ通知する手段は、タッチパネル6へ表示することに限らず、音声によって通知するようにしても良い。
【0136】
なお、本実施形態では、シートECU120は、ECU100を介して、バッテリ残量が低下しているため車両内装部品を制御できないことをタッチパネル6に表示しているが、これに限らず、シートECU120がタッチパネル6の表示を制御しても良い。
また、本実施形態では、シートECU120が、バッテリ残量を確認し、バッテリ残量が所定値以上であるかを判定するように構成している。しかしこれに限らず、ECU100がバッテリ残量の確認、及びバッテリ残量が所定値以上であるかの判定をするように構成しても良い。
【0137】
<可動装置制御フローについて>
次に、シートECU120によって実行される可動装置処理の流れについて説明する。可動装置処理は、
図12に示すように、シート可動装置60を制御するために実行される。
【0138】
シートECU120は、MTモードにおける制御パターンによって設定された袋体64の可動量を取得する(ステップS90)。なお、袋体64の可動量は、乗員が設定するように構成しても良い。続いて、シートECU120は、ECU100において設定された指示トルクを取得する(ステップS91)。そして、シートECU120は、車速センサ9によって検出された車速をECU100から取得する(ステップS92)。さらに、シートECU120は、車外カメラ7やカーナビによって検出された道路状況をECU100から取得する(ステップS93)。そして、シートECU120は、制御パターンによる設定値、取得された指示トルク、車体Bの速度、及び道路状況に応じて、エア供給部65を制御し、膨張展開された袋体64の可動量を調整し(ステップS94)、可動装置処理を終了する。
【0139】
なお、
図10において、取得したモードがEVモードであると判定された場合(ステップS71:EVモード)、
図11に示すMTモードにおける部品制御処理と同様に、車両内装部品の制御を実行する(ステップS73)。上述したように、シートECU120は、EVモードにおいて、MTモードのときに参照される制御パターンよりも、車両内装部品の駆動量が小さい制御パターンに基づいて、車両内装部品の制御を行う。
また、取得したモードが自動運転モードであると判定された場合(ステップS71:自動運転モード)、
図11に示す部品制御フローのうち、モード通知のみを実行する(ステップS74)。本実施形態では、自動運転モードのときは、車両内装部品の制御を行わないが、MTモード又はEVモードと同様に、車両内装部品の制御を行っても良い。
【0140】
上記構成により、シートECU120及びドアECU130は、モード切替部108によってMTモードに切り替えられたとき、車両用シートS及び車両用ドアDに設けられた車両内装部品を制御することができる。詳しく述べると、シートECU120及びドアECU130は、MTモードに切り替えられてMTモードが開始したとき(MTモードへ切り替える切替信号が取得されたとき)、及び、MTモードにおいて指示トルクが変化した時(MTモードにおいてトルク特性が変化する信号が入力されたとき)に、レール装置40、リクライニング装置50、シート可動装置60、シートベルト装置70、シート通知装置80、ドア通知装置90等の車両内装部品を制御することで、MTモードにおける乗員の快適性、娯楽性を向上できる。
【0141】
上記実施形態では、具体例として自動車に用いられる車両用シートについて説明したが、特に限定されることなく、二輪車用の二輪シート、電車やバス等の車両用シート、飛行機や船等の乗り物用シートのほか、作業用の事務イス、車イス、ショッピングカートの子供用イス等の種々のシートに対して利用することができる。
【0142】
本実施形態では、主として本発明に係る車両用シートに関して説明した。
ただし、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0143】
S 車両用シート
D 車両用ドア
B 車体
F 車体フロア
P 電源
1 電気自動車
2 回転機
2a 走行モータ
3 バッテリ
4 模擬シフト装置
4a 模擬シフトレバー
4b 振動付与部
4c シフトレバーセンサ
5 模擬クラッチ装置
5a 模擬クラッチペダル
5b 抵抗力付与部
5c ペダルセンサ
6 タッチパネル
7 車外カメラ
8 車内カメラ
9 車速センサ
10 シートクッション
10a パッド材
10b 表皮材
20 シートバック
20A 中央部
20B サイド部
20a パッド材
20b 表皮材
21 バックフレーム
30 ヘッドレスト
40 レール装置
41 ロアレール
42 アッパレール
43 レール駆動モータ
50 リクライニング装置
51 回動モータ
60 シート可動装置
61 ベース部材
62 回動軸
63 回動部材
64 袋体
64a 第1袋体
64b 第2袋体
64c 第3袋体
65 エア供給部
70 シートベルト装置
71 シートベルト
72 ベルトガイド
73 ベルトバックル
74 ベルトリトラクタ
74a 巻取モータ
80 シート通知装置
81 音出力装置
82 発光装置
90 ドア通知装置
91 ドア音出力装置
92 ドア発光装置
100 ECU
101 トルク制御部
102 レバーペダル制御部
103 着座検出部
104 識別情報取得部
105 記憶部
106 モード設定部
107 判定部
108 モード切替部
109 通信部
110 モータECU
120 シートECU
121 取得部
122 部品制御部
130 ドアECU
131 ドア取得部
132 ドア部品制御部