(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179364
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】音響システム及び車両
(51)【国際特許分類】
B60N 2/90 20180101AFI20231212BHJP
B60N 2/879 20180101ALI20231212BHJP
A47C 7/72 20060101ALI20231212BHJP
A47C 7/38 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
B60N2/90
B60N2/879
A47C7/72
A47C7/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071002
(22)【出願日】2023-04-24
(31)【優先権主張番号】63/349,766
(32)【優先日】2022-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】三好 晃
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
【Fターム(参考)】
3B084DD05
3B084JA01
3B084JA03
3B084JA06
3B084JA09
3B084JC01
3B084JD02
3B087DE09
3B087DE10
(57)【要約】
【課題】乗員の状態に応じて適した音声を発する音響システム及び車両を提供する。
【解決手段】音響システム100は、少なくとも一つのスピーカ40を備えた乗物用の内装部材Mと、乗員H又は内装部材Mの状態を検出する状態検出部60と、スピーカ40及び状態検出部60と接続し、スピーカ40を制御する制御部70と、を備え、制御部70は、状態検出部60から受信した情報に基づいて乗員H又は内装部材Mの状態を判定する状態判定部72と、スピーカ40から音声が発せられる際、判定された乗員H又は内装部材Mの状態に基づいて、スピーカ40から発せられる音声の音量、テンポ及び方向のうち少なくとも一つを制御する音響制御部82と、を有する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つのスピーカを備えた乗物用の内装部材と、
乗員又は前記内装部材の状態を検出する状態検出部と、
前記スピーカ及び前記状態検出部と接続し、前記スピーカを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記状態検出部から受信した情報に基づいて前記乗員又は前記内装部材の状態を判定する状態判定部と、
前記スピーカから音声が発せられる際、判定された前記乗員又は前記内装部材の状態に基づいて、前記スピーカから発せられる前記音声の音量、テンポ及び方向のうち少なくとも一つを制御する音響制御部と、を有することを特徴とする音響システム。
【請求項2】
前記状態検出部は、前記乗員の生体情報を取得することが可能であり、
前記状態判定部は、前記乗員の生体情報に基づき、前記乗員の状態を判定し、
前記音響制御部は、前記乗員の状態に基づいて、前記スピーカから発せられる前記音声を制御することを特徴とする請求項1に記載の音響システム。
【請求項3】
前記状態判定部は、前記乗員の生体情報に基づき、前記乗員の覚醒度を判定し、
前記音響制御部は、判定された前記乗員の覚醒度に基づいて、前記スピーカから発せられる前記音声を制御することを特徴とする請求項2に記載の音響システム。
【請求項4】
前記音響制御部は、前記乗員の覚醒度が下がった場合に、前記スピーカから発せられる前記音声の音量を大きくするか又は前記音声のテンポを速くすることを特徴とする請求項3に記載の音響システム。
【請求項5】
前記内装部材は、前記乗員が着座する乗物用シートであり、
前記乗物用シートは、シート幅方向に離間して配置される少なくとも二つの前記スピーカを有し、
前記状態判定部は、前記状態検出部から受信した情報に基づいて前記乗員の姿勢又は前記乗物用シートの位置を判定し、
前記音響制御部は、判定された前記乗員の姿勢又は前記乗物用シートの位置に基づいて前記スピーカから発せられる前記音声を制御することを特徴とする請求項1に記載の音響システム。
【請求項6】
前記乗物用シートは、シート上下方向を回転軸として回転可能であり、
前記状態判定部は、前記乗物用シートの回転角度を判定し、
前記音響制御部は、判定された前記回転角度に基づいて、前記スピーカから発せられる前記音声を制御することを特徴とする請求項5に記載の音響システム。
【請求項7】
前記乗物用の内装部材は、前後方向に並べて配置される複数列の乗物用シートであって、
前記状態判定部は、前記乗物用シートに前記乗員が着座しているか否かを判定し、
前記音響制御部は、前記乗員の着座状態に応じて、前記スピーカから発せられる前記音声を制御することを特徴とする請求項5に記載の音響システム。
【請求項8】
前記状態判定部は、前記乗員の頭部の位置を判定し、
前記音響制御部は、判定された前記乗員の頭部の位置に基づいて、前記スピーカから発せられる前記音声を制御することを特徴とする請求項5に記載の音響システム。
【請求項9】
前記内装部材は、前記乗員が着座する乗物用シートであり、
前記乗物用シートは、前記スピーカと隣り合う位置に、振動を抑制するダンパを有することを特徴とする請求項1に記載の音響システム。
【請求項10】
前記乗物用シートは、前記乗員の頭部を支持するヘッドレストを有し、
前記乗物用シートは、前記ヘッドレスト内に、シート幅方向に離間して配置される少なくとも二つの前記スピーカを有し、
前記ヘッドレストは、骨格となるヘッドレストピラーを有し、
前記ダンパは、二つの前記スピーカに挟まれた位置において、前記ヘッドレストピラーに取り付けられていることを特徴とする請求項9に記載の音響システム。
【請求項11】
請求項1に記載の音響システムを備えることを特徴とする車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響システム及び車両に係り、特に、スピーカを搭載した内装部材を有する音響システム及び車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗物室内の各位置、例えば車両用ドア又は乗物用シートに音響装置としてスピーカを設けたものがある。特許文献1には、ヘッドレスト内にスピーカ及びノイズキャンセル用のマイクを備える乗物用シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のヘッドレストには、スピーカ及びマイクが設けられているものの、乗員の状態とは何ら関係なく音声が出力されている。そのため、乗員の姿勢によっては、スピーカから発せられた音声に違和感がある場合があった。そのため、乗員の状態に応じて、適した音声を発生すること、例えば音を感じやすくしたり、違和感を抑制したりすることが望まれていた。
【0005】
本発明は、上記の課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、乗員の状態に応じて適した音声を発する音響システム及び車両を提供することにある。
また、上記の目的とは別に、乗物用シートが受ける荷重、特に、乗員から受ける荷重に対して、音響装置の保護を行うという目的もある。
また、更に別の目的として、ハーネスやコネクタの取り付け作業性を向上させること、ヘッドレストの大型化を抑制すること、ヘッドレストの振動を抑制することも挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、本発明の音響システムによれば、少なくとも一つのスピーカを備えた乗物用の内装部材と、乗員又は前記内装部材の状態を検出する状態検出部と、前記スピーカ及び前記状態検出部と接続し、前記スピーカを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記状態検出部から受信した情報に基づいて前記乗員又は前記内装部材の状態を判定する状態判定部と、前記スピーカから音声が発せられる際、判定された前記乗員又は前記内装部材の状態に基づいて、前記スピーカから発せられる前記音声の音量、テンポ及び方向のうち少なくとも一つを制御する音響制御部と、を有することにより解決される。
【0007】
音声制御部が、乗員又は内装部材の状態に基づいて、スピーカから発せられる音声の音量、テンポ及び方向のうち少なくとも一つを制御するため、乗員に適した音を発生する音響システムを提供することができる。
【0008】
また、上記の音響システムにおいて、前記状態検出部は、前記乗員の生体情報を取得することが可能であり、前記状態判定部は、前記乗員の生体情報に基づき、前記乗員の状態を判定し、前記音響制御部は、前記乗員の状態に基づいて、前記スピーカから発せられる前記音声を制御するとよい。
音響制御部が乗員の生体情報に基づいて音声を制御することで、スピーカから乗員により適した音声を発せられることが可能となる。
【0009】
また、上記の音響システムにおいて、前記状態判定部は、前記乗員の生体情報に基づき、前記乗員の覚醒度を判定し、前記音響制御部は、判定された前記乗員の覚醒度に基づいて、前記スピーカから発せられる前記音声を制御するとよい。
音響制御部が、乗員の覚醒度に基づき、スピーカから発せられる音声を制御するため、覚醒度に基づくより適切な音声を発することが可能になる。
【0010】
また、上記の音響システムにおいて、前記音響制御部は、前記乗員の覚醒度が下がった場合に、前記スピーカから発せられる前記音声の音量を大きくするか又は前記音声のテンポを速くするとよい。
乗員の覚醒度が下がった場合に、音響制御部がスピーカから発せられる音声の音量を大きくするか又は音声のテンポを速くすることで、例えば乗員の覚醒度を上げることができる。
【0011】
また、上記の音響システムにおいて、前記内装部材は、前記乗員が着座する乗物用シートであり、前記乗物用シートは、シート幅方向に離間して配置される少なくとも二つの前記スピーカを有し、前記状態判定部は、前記状態検出部から受信した情報に基づいて前記乗員の姿勢又は前記乗物用シートの位置を判定し、前記音響制御部は、判定された前記乗員の姿勢又は前記乗物用シートの位置に基づいて前記スピーカから発せられる前記音声を制御するとよい。
前記音響制御部が、乗員の姿勢又は乗物用シートの位置に基づいて音声を制御することで、より乗員に適した音声を発することができる。
【0012】
また、上記の音響システムにおいて、前記乗物用シートは、シート上下方向を回転軸として回転可能であり、前記状態判定部は、前記乗物用シートの回転角度を判定し、前記音響制御部は、判定された前記回転角度に基づいて、前記スピーカから発せられる前記音声を制御するとよい。
音響制御部が乗物用シートの回転角度に基づいて音声を制御することで、乗員により適した音声を発することができる。
【0013】
また、上記の音響システムにおいて、前記乗物用の内装部材は、前後方向に並べて配置される複数列の乗物用シートであって、前記状態判定部は、前記乗物用シートごとに前記乗員が着座しているか否かを判定し、前記音響制御部は、前記乗員の着座状態に応じて、前記スピーカから発せられる前記音声を制御するとよい。
音響制御部が、乗員の着座状態に応じて音声を制御することで、複数列の乗物用シートにおいて、着座する乗員に適した音声を発することができる。
【0014】
また、上記の音響システムにおいて、前記状態判定部は、前記乗員の頭部の位置を判定し、前記音響制御部は、判定された前記乗員の頭部の位置に基づいて、前記スピーカから発せられる前記音声を制御するとよい。
音響制御部が、乗員の頭部の位置に基づいて音声を制御することで、乗員により適した音声を発することができる。
【0015】
また、上記の音響システムにおいて、前記内装部材は、前記乗員が着座する乗物用シートであり、前記乗物用シートは、前記スピーカと隣り合う位置に、振動を抑制するダンパを有するとよい。
スピーカと隣り合う位置にダンパを設けることで、例えばスピーカが発した音による内装部材の振動を抑制することができる。
【0016】
また、上記の音響システムにおいて、前記乗物用シートは、前記乗員の頭部を支持するヘッドレストを有し、前記乗物用シートは、前記ヘッドレスト内に、シート幅方向に離間して配置される少なくとも二つの前記スピーカを有し、前記ヘッドレストは、骨格となるヘッドレストピラーを有し、前記ダンパは、二つの前記スピーカに挟まれた位置において、前記ヘッドレストピラーに取り付けられているとよい。
ダンパが、二つのスピーカに挟まれた位置においてヘッドレストピラーに取り付けられていることで、スピーカによるヘッドレストの振動を抑制することができる。
【0017】
また、前記課題は、上記の音響システムを備える車両により解決される。
【発明の効果】
【0018】
本発明の音響システムによれば、音響制御部が、乗員又は内装部材の状態に基づいて、スピーカから発せられる音声の音量、テンポ及び方向のうち少なくとも一つを制御するため、乗員に適した音を発生する音響システムを提供することができる。
また、音響制御部が乗員の生体情報に基づいて音声を制御することで、スピーカから乗員により適した音声を発せられることが可能となる。
また、音響制御部が、乗員の覚醒度に基づき、スピーカから発せられる音声を制御することで、覚醒度に基づくより適切な音声を発せられる。
また、乗員の覚醒度が下がった場合に、音響制御部がスピーカから発せられる音声の音量を大きくするか又は音声のテンポを速くすることで、例えば乗員の覚醒度を上げることができる。
また、前記音響制御部が、乗員の姿勢又は乗物用シートの位置に基づいて音声を制御することで、乗員により適した音声を発することができる。
また、音響制御部が乗物用シートの回転角度に基づいて音声を制御することで、乗員により適した音声を発することができる。
また、音響制御部が、乗員の着座状態に応じて音声を制御することで、複数列の乗物用シートにおいて、着座する乗員に適した音声を発することができる。
また、音響制御部が、乗員の頭部の位置に基づいて音声を制御することで、乗員により適した音声を発することができる。
また、スピーカと隣り合う位置にダンパを設けることで、例えばスピーカが発した音声による内装部材の振動を抑制することができる。
また、ダンパが、二つのスピーカに挟まれた位置においてヘッドレストピラーに取り付けられていることで、例えばスピーカによるヘッドレストの振動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施形態に係る音響システムを備えた車両及び車室内を示す図である。
【
図2】内装部材であるドア及び乗物用シートを示す斜視図である。
【
図3A】乗物用シートのスピーカの作動を示す説明図である。
【
図3B】乗物用シートの別例を示す図で、複数のスピーカを利用して音の向きを変更することを説明するための説明図であり、シートバックを前方から見た図である。
【
図3C】乗物用シートの別例を示す図で、複数のスピーカを利用して音の向きを変更することを説明するための説明図であり、シートバックを上方から見た図である。
【
図4】乗物用シートのフレームを示す斜視図である。
【
図5】音響システムを制御するECUのハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図6】音響システムの機能構成を示すブロック図である。
【
図7】音響システムの作動を説明するフローチャートである。
【
図8】ミッドシートの向きが変更された車室内を示す図である。
【
図9】ダンパを有するヘッドレストフレームの分解斜視図である。
【
図10】ダンパを有するヘッドレストフレームを示す図で、前面カバーが外された状態を示す図である。
【
図11】
図10のB-B線に沿った断面図であり、ダンパとコネクタを支持する連結部材との位置関係を説明するための説明図である。
【
図12A】ヘッドレストフレームの別例を示す図である。
【
図12B】ヘッドレストフレームの別例を示す図である。
【
図12C】ヘッドレストフレームの別例を示す図である。
【
図13】ダンパの位置を説明するための説明図であり、乗物用シートを正面から見た模式図である。
【
図14】ダンパの位置を説明するための説明図であり、乗物用シートを側方から見た模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態に係る音響システム100及び音響システム100を搭載する車両Vの構成について図面を参照しながら説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
また、以下の説明中、音響システム100で用いられる内装部品を構成する構成部品の材質、形状及び大きさに関する内容は、あくまでも具体例の一つに過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0021】
なお、以下では、音響システム100を備えた車両Vとして、自動運転可能な自動車を挙げ、その構成例について説明することとする。
また、以下の説明中、「前後方向」とは、車両Vの前後方向であり、車両走行時の進行方向と一致する方向である。また、「幅方向」とは、車両Vの横幅方向であり、「上下方向」とは、車両Vの上下方向であり、車両Vが水平面を走行しているときには鉛直方向と一致する方向である。
また、以下の説明において、「シート幅方向」、「シート高さ方向」のように各種方向に「シート」を付して記載する場合には、車両Vに搭載された乗物用シートSに対する方向を示し、「車両内側」、「車両外側」のように「車両」を付して記載する場合には、車両Vに対する方向を示すものとする。
【0022】
<車両V>
車両Vは、
図1に示すように複数列の乗物用シートSを有する自動車である。車両Vは、前側に配置されるフロントシートS1と、フロントシートS1の後方に配置されるミッドシートS2と、最後方に配置されるリアシートS3と、を備える。リアシートS3は、左右に配置されるシートがつながっており一体として構成されてるが独立したシートとして構成されてもよい。
なお、フロントシートS1、ミッドシートS2、リアシートS3は、基本的に同じ構成を有しており、以下の説明において、特に区別する必要が無い場合は、乗物用シートSと称する。
【0023】
また、車両Vは、運転者によって操作されるステアリングホイールSWと、インストルメントパネルIPとを備えている。インストルメントパネルIPには操作パネルが設けられており、車両Vの乗員Hは、車室内に流れる音楽やシートの位置等を操作パネルに入力して変更することが可能となっている。
【0024】
各乗物用シートSの左右外側には、それぞれ、車体に対して開閉可能な車両用ドアDRが設けられており、各乗物用シートSに着座する乗員Hは、左右外側の車両用ドアDRを開くことで、車両Vに乗り降りすることができる。車両用ドアDRは本発明の内装部材Mに相当する。
【0025】
<音響システム100の構成>
次に、本発明の一実施形態に係る音響システム100の構成について説明する。
図2は、本実施形態に係る音響システム100を備えた車両Vの内装部材Mを示す斜視図である。
図2には、内装部材Mとして、車両Vの前方且つ右側にあるフロントシートS1と、その右外側に位置する車両用ドアDRが示されている。
図3Aは、フロントシートS1を含む乗物用シートSを示す正面図であり、上段は乗物用シートSの両側部が変形する前の状態、下段は両側部が変形した後の状態を示す図である。
図3B及び
図3Cは、乗物用シートSの別例を示す図である。
図4はフロントシートS1を含む乗物用シートSのフレームを示す斜視図である。なお、
図2中フロントシートS1の一部については、図示の都合上、表皮Tを外してパッドPが露出した構成にて図示している。
【0026】
<乗物用シートS>
フロントシートS1を含む乗物用シートSの構成について説明する。乗物用シートSは、着座する乗員Hの背部を支持するシートバック1と、乗員Hの大腿部及び臀部を支持するシートクッション2と、シートバック1の上方端部に設けられ、乗員Hの頭部を支持するヘッドレスト3とを備えている。また、乗物用シートSは、乗員Hの脚部を支持するオットマン4を備えている。以下では、シートバック1、シートクッション2、ヘッドレスト3及びオットマン4を纏めてシート本体Shと称する場合がある。
【0027】
<スピーカ40>
乗物用シートSには、音声を発する音声発生装置であるスピーカ40が複数個設けられている。スピーカ40のそれぞれは、ケーブルにより車内に設けられたECU70(制御部)と接続されており、ECU70の指示により音楽や警告音等を発することができる。
シートバック1には、
図2に示すように、上方端部及び下方端部それぞれの左右に、バック用スピーカ41が配置されている。シートクッション2には、前方端部及び後方端部それぞれの左右にクッション用スピーカ42が配置されている。ヘッドレスト3には、左右の両端部それぞれにヘッドレスト用スピーカ43が配置されている。オットマン4には、左右の両端部それぞれにオットマン用スピーカ44が配置されている。
また、内装部材Mである車両用ドアDRの下側にもドア用スピーカ45が配置されている。
バック用スピーカ41、クッション用スピーカ42、ヘッドレスト用スピーカ43、オットマン用スピーカ44、ドア用スピーカ45のそれぞれは音声を発する機能としては同様の構成を有する。なお、以下の説明において、特に配置された位置を区別して説明する必要が無い場合はスピーカ40と称する場合がある。
【0028】
乗物用シートSのシートバック1の側部(左側部1a、右側部1b)は前後方向に可動に構成されている。具体的には、
図3Aの下段に示すように、上下方向に延びる軸線を中心に左側部1a及び右側部1bを前後方向に回転させることで、シートバック1の左側部1a及び右側部1bに設けられたバック用スピーカ41の向きを変更することが可能となっている。バック用スピーカ41に向きを変更することで、バック用スピーカ41から発せられる音声の方向を変更することができる。シートバック1の左側部1a及び右側部1bの回動は、後述するシートバック可動部15が回動することにより実行される。シートバック可動部15は、ECU70の音響制御部82により制御されており、ECU70の指示により回動するように構成されている。
【0029】
ヘッドレスト3に配置されるヘッドレスト用スピーカ43も可動に構成されている。ヘッドレスト用スピーカ43は、それ自体が回動することで向きを変更することが可能となっている。ヘッドレスト用スピーカ43は上下方向の軸線を中心に回動可能となっているが、左右方向の軸線を中心に回動して、上下方向に向きを変更するように構成されてもよい。
ヘッドレスト用スピーカ43を回動させるヘッドレスト可動部33は、ECU70の音響制御部82により制御されており、ECU70の指示により回動するように構成されている。
【0030】
また、シートクッション2の両側部(左側部2a、右側部2b)及びオットマン4の両側部(左側部4a、右側部4b)も可動に構成されている。具体的には、
図3Aの下段に示すように、前後方向に延びる軸線を中心に、シートクッション2の左側部2a及び右側部2bを上下方向に回動させることで、シートクッション2の左側部2a及び右側部2bに設けられたクッション用スピーカ42の向きを変更することが可能となっている。
オットマン4についても、オットマン4が延びる方向の軸線を中心に両側部(左側部4a、右側部4b)を回動させることで、オットマン4の両側部に設けられたオットマン用スピーカ44の向きを変更し、オットマン用スピーカ44から発せられる音声の方向を変更することができる。
【0031】
シートクッション2の両側部の回動は、後述するシートクッション可動部25が作動することにより実行される。オットマン4の両側部の回動は、後述するオットマン可動部36が作動すること実行される。シートクッション可動部25及びオットマン可動部36は、ECU70の音響制御部82により制御されており、ECU70の指示により回動するように構成されている。
なお、本実施形態では、シートバック1、シートクッション2、ヘッドレスト3、オットマン4のそれぞれにスピーカ40が設けられているが、これは一例であり、全てにおいてスピーカ40が設けられなくてもよい。例えばシートバック1の上端及びヘッドレスト3の左右にのみスピーカ40が設けられてもよく、シートクッション2及びオットマン4にスピーカ40が設けられなくても構わない。また、シートクッション2及びオットマン4に、側部を回動させるためのシートクッション可動部25及びオットマン可動部36が設けられなくてもよい。
【0032】
また、音声の方向の変更は、スピーカ40が設けられた乗物用シートSの側部を回動させて行うことに限定されない。例えば、
図3B及び
図3Cに示す乗物用シートS’のように、シートバック1’の左右の肩部それぞれに配置するスピーカ40を、シート内側に配置される第1スピーカ411と、シート外側に配置される第2スピーカ412とから構成して変更してもよい。この場合、音声を発する向きが互いに異なるように、第1スピーカ411と第2スピーカ412とを配置する。具体的には第1スピーカ411を、その音声を発する方向が乗物用シートS’の内側に向くように配置し、第2スピーカ412を、その音声を発する方向が乗物用シートSの外側に向くように配置する。異なる向きに配置されたスピーカ40を近接して配置することで、音声を発生する際、使用するスピーカ40を切り替えることにより、音声の方向を変更することが可能となる。
【0033】
なお、第1スピーカ411及び第2スピーカ412自体をシートバック1’に対して可動に構成し、音声の方向を変更可能にしてよい。また、
図3Aに示す乗物用シートSと同様に、シートバック1’の左側部1a、右側部1bをシートバック可動部15により回転させ、音声の方向を変更してもよい。なお、上記のスピーカ40の構成は、シートバック1’だけでなく、シートクッション2、ヘッドレスト3又はオットマン4に適用してもよい。
【0034】
<状態検出部60>
乗物用シートSに着座する乗員Hの状態を検出するために、乗物用シートSには複数の状態検出部60が設けられている。より詳細に述べると、乗物用シートSには、状態検出部60として、複数の着座検出部61、脳波検出部62及び覚醒度検出部63が設けられている。
【0035】
<着座検出部61>
着座検出部61は、例えば圧力センサから構成され、乗員Hからの荷重を検知することで、乗員Hの着座状態を検出する。着座検出部61は、例えば
図2において点線の矩形で示す位置に配置されている。具体的に述べると、シートバック1の着座面において、上下方向、左右方向に複数個並べて配置されている。また、着座検出部61は、シートクッション2の着座面において、前後方向、左右方向に複数個並べて配置されている。また、ヘッドレスト3において、着座検出部61が乗員Hの頭部と接触する接触面において、左右方向に並んで配置されている。オットマン4の着座面においても左右方向に並んで配置されている。なお、着座検出部61の配置は、これに限定されず、より多くの着座検出部61が並べて配置されてもよい。また、着座検出部61は静電容量センサから構成されてもよい。
【0036】
<脳波検出部62>
脳波検出部62は、乗員Hの脳波を検出する脳波センサから構成されている。乗員Hの頭部から発せられる脳波を測定することで、乗員Hの感情又は体調等を検出することができる。脳波検出部62が脳波を測定することで、例えば乗員Hが楽しい気分であることを検出することができる。
脳波検出部62は、
図2においてハッチングがかかった矩形で示すように、ヘッドレスト3の着座面において左右方向に二個並べて配置されている。脳波検出部62の配置はこれに限定されず、より多くの脳波検出部62が並べて配置されてよい。
【0037】
<覚醒度検出部63>
覚醒度検出部63は、例えば乗員の心拍数、脈波、呼吸数等の生体情報を検出する生体センサ(圧力センサ)から構成されている。覚醒度検出部63により、心拍数や脈波、呼吸数等の生体情報を測定することで、乗員Hの体調や覚醒度を検出する。覚醒度検出部63には、汗の量を測定する水分検知センサや臭気を測定する臭気センサが含まれてもよい。
覚醒度検出部63は、例えば
図2において、点線の円形で示すように、シートバック1の着座面において左右方向に複数個並べて配置されている。覚醒度検出部63の配置はこれに限定されず、より多くの覚醒度検出部63が設けられてもよい。また、覚醒度検出部63は、ヘッドレスト3及びシートクッション2に配置されてもよい。
【0038】
状態検出部60として、乗員Hを撮影可能な位置、例えば天井やインストルメントパネルに車内カメラ64又は赤外線カメラ65が設けられてもよい。車内カメラ64で撮影した画像を基に乗員Hの姿勢を判定する。また、赤外線カメラ65により乗員Hの体温を測定することで、乗員Hの体調を判定する。
また、状態検出部60として、車両用ドアDRの開閉状態を検出するドアセンサ66が設けられてもよい。
【0039】
<シートフレームF>
乗物用シートSの骨格を形成するシートフレームFの基本的な構成について、
図4を用いて説明する。乗物用シートSの中には、
図4に示すように、シートフレームFが設けられている。シートフレームFは、シートバック1の骨格を形成するシートバックフレーム10と、シートクッション2の骨格を形成するシートクッションフレーム20と、ヘッドレスト3の骨格を形成するヘッドレストピラー30と、から構成される。また、シートフレームFは、シートクッションフレーム20の前方端部に、オットマン4の骨格を形成するオットマンフレーム35を備えている。また、ヘッドレストピラー30には、ヘッドレスト用スピーカ43及びヘッドレスト用ダンパ53を収容するヘッドレストフレーム31が設けられている。
【0040】
乗物用シートSは、シートフレームFに、ウレタンフォーム等からなるパッドPが載置し、パッドPに布地又は皮革などからなる表皮Tを被せることで形成される。
【0041】
シートバックフレーム10は、
図4に示すように、全体として方形枠状に形成されており、左右に配置される一対のバックサイドフレーム11,11と、アッパーフレーム12と、ロアフレーム13とを備える。
【0042】
一対のバックサイドフレーム11,11は、上述したようにシートバックフレーム10の左右に配置され、基本的に左右対称の構成とされた部材である。一対のバックサイドフレーム11,11は、シート上下方向に延出して設けられている。一対のバックサイドフレーム11,11それぞれのシート前後方向の幅が、シート上方側からシート下方に向かうに従って拡幅するように形成されている。シート前方側の周縁部とシート後方側の周縁部がシート前方側に凸となるように曲線状に形成されている。
【0043】
アッパーフレーム12は、一対のバックサイドフレーム11,11の間に配置され、一対のバックサイドフレーム11,11の上端を連結している。また、ロアフレーム13が、一対のバックサイドフレーム11,11の下端を連結している。
アッパーフレーム12には、ヘッドレスト3のヘッドレストピラー30が挿通される一対のヘッドレストホルダ14が設けられている。
【0044】
また、一対のバックサイドフレーム11,11のそれぞれには、シートバック1の側部(左側部1a、右側部1b)を回動させるシートバック可動部15,15が設けられている。シートバック可動部15,15のそれぞれには、シートバック1の座面の向きを左右に変更することが可能なアクチュエータ15aが取り付けられている。シートバック可動部15,15を作動させることで、シートバック1の左側部1a及び右側部1bを、乗員に近付く方向である前方、又は、乗員から離れる方向である後方に座面を回動させて動かすことができる。
【0045】
アクチュエータ15aは、ECU70により制御されており、ECU70の指示により上下方向を軸線として、シートバック1の側部を回動させる。回動させることにより、乗物用シートの快適性を向上させるほか、シートバック1の側部に設けられたバック用スピーカ41の向きを、任意の角度で変更することができる。
【0046】
シートクッションフレーム20には、
図4に示すように、平面視で矩形枠状を成すシートクッションフレーム20が設けられている。シートクッションフレーム20は、シート幅方向の両端にシート前後方向に沿って延びる一対のクッションサイドフレーム21,21を有する。また、一対のクッションサイドフレーム21,21の前端部同士をシート幅方向に連結するパンフレーム22及び前方連結フレーム23を有し、一対のクッションサイドフレーム21,21の後端部同士をシート幅方向に連結する後方連結フレーム24を有する。また、図示しないがSバネが、前方連結フレーム23及び後方連結フレーム24を架け渡して設けられている。
【0047】
また、一対のクッションサイドフレーム21,21のそれぞれには、シートクッション2の側部(左側部2a、右側部2b)を回動させるシートクッション可動部25,25が設けられている。シートクッション可動部25,25のそれぞれには、シートクッション側部の座面の向きを上下に変更することが可能なアクチュエータ25aが取り付けられている。アクチュエータ25aは、ECU70により制御されており、ECU70の指示により前後方向を軸線として、シートクッション2の側部を回動させることができる。シートクッション2の側部を回動させることにより、乗物用シートSの快適性を向上させるほか、シートクッション2の側部に設けられた、クッション用スピーカ42の向きを変更することができる。
【0048】
オットマンフレーム35の左右にも、オットマン4の左右側部(左側部4a、右側部4b)を回動させるオットマン可動部36が設けられている。オットマン可動部36は、アクチュエータ36aにより前後方向に回動する。より正確に述べると、オットマン可動部36は、オットマン4が延びる方向を軸線とし、その延びる方向に対する垂直方向に回動する。アクチュエータ36aは、ECU70により制御可能となっており、ECU70の指示によりオットマン4の側部を回動させることができ、それにより、オットマン4の側部に設けられたオットマン用スピーカ44の向きを変更することができる。
【0049】
<リクライニング装置6>
シートバック1は、その下端部がシートクッション2の後端部と連結されており、連結部分にリクライニング装置6が設けられている。リクライニング装置6を用いることで、シートクッション2に対するシートバック1の後傾角度を調整可能に回動させることができる。
リクライニング装置6には、乗物用シートSの状態を検出する状態検出部60の一例として角度センサ6aが設けられている。この角度センサ6aにより、乗物用シートSにおいて、シートバック1のリクライニング角度(後傾角度)を検出することができる。
【0050】
<スライド装置7>
乗物用シートSには、シート本体Shを車両Vの前後方向にスライド移動させるスライド装置7が設けられている。スライド装置7には、シート本体Shの状態を検知する状態検出部60として、位置センサ7aが設けられており、位置センサ7aがシート本体Shの位置を測定することで、車両前後方向におけるシート本体Shの位置を検出することが可能となっている。
【0051】
<シート回転装置8>
また、乗物用シートSには、シート本体Shを、上下方向を回転軸として左右に回転させるシート回転装置8が設けられている。シート回転装置8には、シート本体Shの状態を検知する状態検出部60として回転角度センサ8aが設けられており、回転角度センサ8aが、シート本体Shの回転角度を測定することで、乗物用シートSの向きを検出することが可能となっている。
【0052】
<音響システム100のハードウェア構成>
車両Vには、制御部であるECU(Electronic Control Unit)70が設けられており、音響システム100はECU70により制御される。ECU70は、
図1に示すように、例えばインストルメントパネルIP内に設けられる。ECU70はフロアや乗物用シートS内に設けられてもよい。
なお、ECU70には、音響制御用の制御回路が組み込まれている。そして、ECU70は、音響制御用の制御回路を通じて、スピーカ40や乗物用シートSが備える各駆動装置(リクライニング装置6等)を作動させることが可能となっている。
【0053】
ECU70は、
図5に示すように、主として中央演算装置であるCPU71(Central Processing Unit)、記憶装置としてのROM72(Read Only Memory)、RAM73(Random Access Memory)、HDD74(Hard Disk Drive)等から構成されている。ECU70は他の装置からの情報や信号を受信したり、操作するための信号を送信したりするための通信インタフェース75を備える。また、各構成はバスを介して相互に通信可能に接続されている。
【0054】
ECU70は、通信インタフェース75を介して、リクライニング装置6の角度センサ6a、スライド装置7の位置センサ7a、シート回転装置8の回転角度センサ8a、着座検出部61、脳波検出部62,覚醒度検出部63、車内カメラ64及び赤外線カメラ65と接続している。また、ECU70は、シートバック可動部15、シートクッション可動部25、ヘッドレスト可動部33及びオットマン可動部36と接続している。より詳しく述べると、ECU70は、シートバック可動部15のアクチュエータ15a、シートクッション可動部25のアクチュエータ25a、ヘッドレスト可動部33のアクチュエータ33a及びオットマン可動部36のアクチュエータ36aと、ケーブルやハーネスを介して接続している。また、ECU70は、シートバック1等に設けられるスピーカ40と個別に接続しており、ECU70の指示により、それぞれのスピーカ40に対して所定の音量で音楽や警告音等を発することができる。
【0055】
<音響システム100の機能構成>
音響システム100の機能構成について
図6を用いて説明する。乗物用シートSにスピーカ40等を備えた車両Vは、上述した状態検出部60やスピーカ40等を利用して、各種の機能を実現している。音響システム100は、記憶部80、状態判定部81及び音響制御部82を有する。
【0056】
記憶部80は、各種装置を制御するための設定ファイルをテーブルデータとして記憶している。例えば、記憶部80は、状態検出部60から受信した情報を基にしたスピーカ40の制御方法を、設定ファイルとして記憶している。後述する音響制御部82は、記憶部80に記憶された設定ファイルを読み込み、状態判定部81により判定された乗物用シートS又は乗員Hの状態に基づいて、スピーカ40や乗物用シートSに設けられた各種可動部を作動させる。
【0057】
状態判定部81は、状態検出部60から受信した情報を基に、車両Vに搭載される内装部材Mの状態や、乗物用シートSに着座する乗員Hの状態を判定する。
状態判定部81は、例えば、内装部材Mが車両用ドアDRである場合、車両用ドアDRに設けられたドアセンサ66から受信した信号を基に車両用ドアDRの開閉状態を判定する。
また、内装部材Mが乗物用シートSである場合、状態判定部81は、リクライニング装置6に設けられた角度センサ6aにより検出されたシートバック1の後傾角度の情報を受信し、乗物用シートSが通常の着座姿勢であるか、シートバック1が後方に傾斜したリラックスモード状態であるかを判定する。
スライド装置7の位置センサ7aや、シート回転装置8の回転角度センサ8aにより検出された位置や回転角度の情報に基づき、車室内における乗物用シートSの位置や向きを判定してもよい。
【0058】
また、状態判定部81は、乗物用シートSに設けられた着座検出部61、脳波検出部62、覚醒度検出部63により、乗物用シートSに着座する乗員Hの状態を判定する。
【0059】
<乗員Hの着座位置又は着座姿勢に基づいた作動>
状態判定部81は、例えば、状態検出部60である着座検出部61から受信した信号を基に、乗員Hが乗物用シートSに着座しているか否かを判定する。また、着座していると判定した場合、乗物用シートSに設けられた複数の着座検出部61から受信した信号に基に、乗員Hの着座位置や着座姿勢を判定する。例えば、各乗物用シートSにおいて、最も大きい圧力を測定した着座検出部61の位置から、乗員Hの着座姿勢が偏っているか否かを判定する。例えば、右側に配置される着座検出部61の測定値が大きい場合、状態判定部81は、乗員Hが右側に偏って着座していると判定する。
乗員Hの着座位置又は着座姿勢は、車内カメラ64により乗員Hを撮影した映像から判定してもよい。
【0060】
状態判定部81は、状態検出部60である脳波検出部62から受信した脳波の信号に基づき、乗員Hの気分を判定してもよい。例えば、乗員Hが楽しい気分であるか、又は、悲しい気分であるか等を判定する。
また、状態判定部81は、状態検出部60である覚醒度検出部63から受信した覚醒度に関する情報に基づき、乗員Hの体調や覚醒度を判定する。例えば、乗員の心拍数、脈波、呼吸から、乗物酔いであるか否かを判定する。また、乗員Hの覚醒度が高いか低いかを判定する。
【0061】
なお、覚醒度とは、例えば乗員が熟睡状態にある場合を零とし、覚醒するにつれて上昇する数値として定義されている。覚醒度は、例えば覚醒度検出部63として、心拍センサが用いられている場合、乗員Hの乗車時の心拍数と、測定時の心拍数を比較し、乗員Hの覚醒状態を判定する。また、覚醒度検出部63として、呼吸センサが用いられている場合、乗員Hの乗車時の呼吸数と、測定時の呼吸数を比較して、覚醒状態を判定する。覚醒度は、脳波センサにより測定した脳波や、着座検出部により判定した姿勢により覚醒状態を判定してもよい。
【0062】
また、乗員Hの状態を判定する場合、状態検出部60として車内に設けられた車内カメラ64又は赤外線カメラ65により撮影した映像を基に、乗員Hの姿勢、体調、覚醒度を判定してもよい。
【0063】
音響制御部82は、スピーカ40から音声が発生られる際、状態判定部81により判定された、乗員H又は内装部材(乗物用シートS、車両用ドアDR)等の状態に基づいて、スピーカ40から発せられる音声の音量、テンポ及び方向のうち少なくとも一つを制御する。なお、「音声のテンポ」とは、例えばスピーカ40から流れる楽曲の演奏速度、拍の速さのことを意味している。
【0064】
音響制御部82は、状態判定部81が、乗員Hの着座位置又は着座姿勢が左右方向の一方(例えば右側)に偏っていると判定した場合、乗物用シートSの左右両側に設けたスピーカ40のうち他方側(例えば左側)から発する音を大きくする。このように制御することで、乗員Hの着座位置又は着座姿勢に適した音の発生が可能となり、乗員Hが感じる違和感を抑制することができる。
【0065】
音響制御部82は、乗員Hの頭部、特に耳の位置に基づき、スピーカ40から発する音声を制御してもよい。例えば、音響制御部82は、スピーカ40の向きを変えることにより、音の方向が頭部に向くように変更する。
音響制御部82は、シートバック1に設けられたバック用スピーカ41の向きを変える場合、シートバック可動部15を作動させる。
シートクッション2に設けられたクッション用スピーカ42の向きを変える場合、シートクッション可動部25を作動させる。ヘッドレスト3に設けられたヘッドレスト用スピーカ43の向きを変える場合、ヘッドレスト可動部33を作動させる。
オットマン4に設けられたオットマン用スピーカ44の向きを変更する場合は、オットマン可動部36を作動させる。
スピーカ40の向きを変更する場合、ヘッドレスト用スピーカ43のように、スピーカ40自体を傾けるように動かしてもよい。また、シートバック1、シートクッション2及びオットマン4に設けられたスピーカ40のように、土手部や側部の傾きを変更してもよい。
【0066】
音響制御部82は、覚醒度検出部63により、乗員Hの体調が悪いと判定されたとき、スピーカ40から発せられる音を小さくする。また、スピーカ40から警告音や音楽が発せられているときは、途中であっても、その音を小さくする。
また、車両Vに複数の乗物用シートSが設けられている場合、体調が悪いと判定された乗員Hが着座している乗物用シートSのスピーカ40から発せられる音を小さくしてもよい。
【0067】
また、脳波検出部62により測定された脳波により、乗員Hが楽しい気分であると判定された場合、より気分を盛り上げるためスピーカ40から発せられている音の音量を大きくしたり、よりテンポの速い音楽に変更したりしてもよい。
【0068】
乗員Hが運転者以外である場合、乗員Hの覚醒度が低いと判定されとき、音響制御部82は、スピーカ40から発せられる音を小さくし、乗員Hの覚醒度を低くしてもよい。
車両Vに複数の乗物用シートSが設けられている場合、覚醒度が低下している乗員Hが着座する乗物用シートSのスピーカ40から発せられる音声の音量を下げたり、テンポがスローな曲に変更したりしてもよい。
【0069】
乗員Hが運転者である場合、覚醒度が低いと判定されたとき、音響制御部82は、スピーカ40から発せられる音の音量を大きくしたり、テンポが速い曲に変更したりするとよい。運転者へ与える刺激を大きくし、覚醒度を高くする。
刺激発生装置として、スピーカ40とは別に、振動発生装置又は光発生装置を設けてもよい。振動発生装置はスピーカ40と一体化して設けてもよい。また、光発生装置も、スピーカ40と一体化してもよい。振動発生装置又は光発生装置をスピーカ40と一体化することにより、乗物用シートS内にコンパクトに収納することができる。
【0070】
乗物用シートSに振動装置が設けられている場合、又は、周囲に照明等の光発発生装置がある場合、覚醒度が低いと判定された場合、振動や光を付与して、運転者に対して覚醒度が低いことを通知したり警告したりしてもよい。
【0071】
<乗員Hが運転者の場合の覚醒度対応>
覚醒度の判定については、所定の閾値を定め、音響制御部82により作動させる音量を定めてもよい。
例えば、運転者の覚醒度が、第1の閾値よりも低い第1覚醒度状態のときは、運転者に付与する刺激(音量又は振動等)を通常よりも大きくする(第1の刺激発生状態とする)。すなわち、音響制御部82により、スピーカ40から発する音の音量を通常より大きくしたり、振動発生装置により与える振動を通常より大きくしたりする。
また、運転者の覚醒度が、第1の閾値より低い第2の閾値よりも低い第2覚醒度状態のときは、運転者に付与する刺激(音量又は振動等)を第1覚醒度状態のときよりも大きくするとよい。すなわち、スピーカ40又は振動装置を第2の刺激発生状態とする。
また、振動発生装置から振動を発生させたり、光発生装置から光を発したりすることで、通知レベル又は警告レベルが第1覚醒度状態よりも大きくなるように設定してもよい。
【0072】
また、運転者の覚醒度が、通常よりも低い状態が、所定時間以上、例えば20秒以上継続したときは、通常よりも、運転者に付与する刺激(音量や振動等)を大きくする。すなわち、スピーカ40又は振動装置を第1の刺激発生状態、又は、第2の刺激発生状態にする。
【0073】
なお、運転者に、音や振動等を付与した後、すなわち、第1の刺激発生状態後、又は、第2の刺激発生状態の後においても、運転者の覚醒度が通常よりも低い場合(第1覚醒度状態、又は、第2覚醒度状態)が、所定時間以上(例えば、15秒間以上)継続したときは、通常よりも、運転者に付与する刺激(音や振動等)を通常よりも大きくするとよい。
【0074】
なお、第1の刺激発生状態又は第2の刺激発生状態の代わりに、若しくは、第1の刺激発生状態又は第2の刺激発生状態に追加して、ECU70は車両Vの走行状態を制限してもよい。例えば、車両Vを、近隣の駐車場又は休憩スペースに案内してもよい。案内は音声で行ってもよい。車両Vが自動運転可能な乗物である場合は、自動運転モードに切り替わり、車両Vを駐車場又は休憩スペースに移動させてもよい。ECU70は、車両Vの走行速度を下げたり、車両Vの走行を禁止したりしてもよい。
【0075】
<運転席以外の覚醒度対応>
乗員Hが運転席以外(助手席又は後席)である場合、乗員Hの覚醒度に基づいて、運転席以外に設けられたスピーカ40から発する音声を、音響制御部82により制御する。すなわち、運転席以外に着座した乗員Hへの違和感を抑制するように音響制御部82によりスピーカ40を作動させる。
例えば、音響制御部82は、運転席以外の乗員Hの覚醒度が、第1の閾値よりも低い、すなわち、少し眠気があることを検出したとき、覚醒度を下げるように、運転席以外に設けられた少なくとも1つのスピーカ40から発する音を小さくする。また、音響制御部82は、スピーカ40から曲が流れている場合、よりスローなテンポの曲に変更する。
【0076】
乗員Hが着座している乗物用シートSが助手席である場合、助手席に設けられた少なくとも1つのスピーカ40、好ましくは助手席に設けられた全てのスピーカ40から発する音声を小さくするか、よりテンポがスローな曲に変更する。このとき、助手席以外の後部座席に設けられた少なくとも1つのスピーカ40、好ましくは、全てのスピーカ40から発する音声を小さくしてもよい。また、後部座席のスピーカ40から流れる曲をよりスローなテンポの曲にしてもよい。
【0077】
後部座席(ミッドシートS2又はリアシートS3)に着座した乗員Hの覚醒度が、第1の閾値よりも低い、すなわち、後部座席に着座する乗員Hに少し眠気があることを検出したとき、後部座席に設けられた少なくとも1つのスピーカ40の音量を小さくするか、好ましくは後部座席の全てのスピーカ40の音量を小さくする。このとき、流れている曲をよりスローなテンポの曲に変更してもよい。この場合、音響制御部82は、後部座席以外、好ましくは助手席に設けられた少なくとも1つのスピーカ40から、好ましくは助手席の全てのスピーカ40から発する音声を小さくするとよい。また、このとき、音響制御部82は、スピーカ40から流れる曲をよりスローなテンポの曲に変更してもよい。
【0078】
<ミッドシートS2が回転している場合>
図1に示すように、ミッドシートS2が前方を向いている場合、ヘッドレスト用スピーカ43及びバック用スピーカ41から発せられる音声は、
図1の矢印A1方向に向けられており、音声が広がる範囲R1は、ミッドシートS2に着座する乗員Hの周囲となる。
一方、
図8に示すように、乗員Hが着座するミッドシートS2が回転して、後ろ向き(
図8の矢印A2方向)になった場合、ミッドシートS2のバック用スピーカ41及びヘッドレスト用スピーカ43の位置が、前方に着座する運転者に近付くようになる。そのため、運転席後方のミッドシートS2に設けたバック用スピーカ41又はヘッドレスト用スピーカ43から発せられる音声が、運転者に違和感を与えるおそれがある。
【0079】
そのため、ミッドシートS2に設けたスピーカ40の位置が、通常時(シートを回転させていないとき)よりも、運転席に近付いたとき、例えば、ミッドシートS2を90度又は180度回転させたときは、ミッドシートS2のスピーカ40(バック用スピーカ41又はヘッドレスト用スピーカ43)から発せられる音を、音響制御部82により制御して運転者に違和感を与えないようにするとよい。
【0080】
具体的には、状態検出部60である回転角度センサ8aから、ミッドシートS2の回転角度を取得した場合、状態判定部81は、ミッドシートS2の向きを判定する。回転角度が180度であり、運転席側のフロントシートS1の着座検出部61により運転席に運転者が着座している状態であると判定した場合、運転者に違和感を与えることを抑制するために、音響制御部82は、ミッドシートS2のスピーカ40を制御し音量を下げるようにする。
図8に示すように、音の広がる範囲R1が範囲R2のように狭くなり、運転者側に音が届き辛いようなり、それにより運転者への違和感を抑制できる。
また、音響制御部82は、ミッドシートS2に設けられたヘッドレスト用スピーカ43の向き(矢印A2方向)を、よりシート内側に向くように変更してもよい。また、運転者の違和感を抑制するため、運転席のヘッドレスト用スピーカ43の音量を大きくしてもよい。
【0081】
状態判定部81により、乗員Hが仕事中又は学習中であることが判定された場合、音響制御部82は、警告音又は音楽の音量を一時的に大きくしてもよい。乗員Hの覚醒度が、一定値以上に上がり眠気が無くなっていると判定した場合に、スピーカ40から発せられる音をより小さい音量にするか、又は、音声の発生を停止する。
乗員Hが仕事中又は学習中であることの判定は、例えば、車両Vに設けられた仕事中又は学習中であること示すスイッチが作動しているか否かで行ってもよい。また、車両Vに設けられたテーブル(不図示)が使用中であったり、読書灯(不図示)が利用されたりすることから判定してもよい。
【0082】
状態判定部81により、乗物用シートSがリラックスモード状態であると判定された場合、音響制御部82は、乗物用シートSに設けられた少なくとも1つのスピーカ40から発せられる音声の音量を制限するか、音声の発生を禁止してもよい。
【0083】
リラックスモード状態とは、乗物用シートSのシートバック1が、リクライニング装置6により、通常の運転姿勢よりも後方に傾斜した状態であることをいう。
例えば、リクライニング装置6の角度センサ6aにより後傾角度が45度以上であった場合、状態判定部81は、乗物用シートSがリラックスモード状態であると判定する。
乗物用シートSがリラックスモード状態である場合、音響制御部82は、リラックスモード状態の乗物用シートSに設けられたスピーカ40の音量を下げるか、又は、音声の発生を停止する。リラックスモード状態の乗物用シートSが運転席である場合は、この処理を行わないようにしてもよい。
【0084】
車両Vが自動運転可能である場合、状態判定部81は、車両Vが手動運転状態か自動運転状態かを判定し、音響制御部82は、その判定結果に基づいて、乗物用シートSに設けられたスピーカ40を制御してもよい。
音響制御部82は、車両Vが自動運転状態のとき、手動運転状態のときよりも、スピーカ40の音量を大きくしたり、振動発生装置から発せられる振動を大きくしたりするとよい。光発生装置が設けられている場合は、光の強さを大きくするとよい。
【0085】
また、自動運転状態から手動運転状態に戻るときの案内音や、振動又は光による通知は、自動運転状態が継続している場合の案内音や通知よりも大きくするとよい。また、全ての席でこの処理を実行するのではなく、運転席のみで案内音や通知を大きくしてもよい。
【0086】
着座した乗員Hの聴力特性(例えば、高周波の認識力や年齢等)が予め記憶部80に登録されている場合、音響制御部82は、着座する乗員Hの聴力特性に基づいて、スピーカ40から発せられる音声を、乗員Hが聞き取りやすい音声に変更してもよい。
【0087】
また、状態判定部81が、車内に設けられたマイク67により、車内で乗員H同士が会話中であること、又は、乗員Hが車内で電話中であることを検出した場合、音響制御部82は、スピーカ40から発せられる音声を制御してもよい。例えば、スピーカ40から発せられる音声が所定の音量以下になるように制限するか、音声の発生を禁止する。
例えば、マイク67により車内において乗員H同士の会話を検出し、状態判定部81が会話していると判定したとき、音響制御部82は、会話している乗員Hが着座する乗物用シートSのスピーカ40の音量を小さくする。また、状態判定部81が、乗員Hが電話中であると判定したとき、音響制御部82は、スピーカ40から音声が発生することを禁止する。なお、マイク67は、
図10に示すようにヘッドレスト3の内部に設けられる。
【0088】
<音響システム100の作動>
図7に示すフローチャートを用いて、音響システム100の作動について説明する。なお、この車両Vのスピーカ40の処理は、ECU70が有するCPU71がROM72又はHDD74からプログラムを読み出して、プログラムをRAM73に展開することにより実行される。
【0089】
音響システム100では、ステップS101において、ECU70の状態検出部60が、乗員Hの状態を示す情報、及び、車両Vの内装部材Mの状態を示す情報を検出する(情報検出工程)。例えば、状態検出部60である着座検出部61は乗員Hから受ける圧力を測定する。また、リクライニング装置6の角度センサ6a又はシート回転装置8の回転角度センサ8aから乗物用シートSの状態を測定する。測定された情報は記憶部80に記憶される。
【0090】
ECU70の状態判定部81が、ステップS102において、状態検出部60から受信した情報に基づき、乗員Hの状態及び内装部材Mの状態を判定する。例えば、乗物用シートSの右側に配置された着座検出部61の方が左側にある着座検出部61より多くの圧力を受けていた場合、状態判定部81は、乗員Hの姿勢が右側に偏っていると判定する。また、シート回転装置8の回転角度センサ8aにより乗物用シートSの回転角度が180度であると検出されている場合、状態判定部81は、乗物用シートSが後ろ向きであると判定する。
【0091】
次に、ECU70は、ステップS103において、スピーカ40から音声が発せられるか否かを判定する(音声発生工程)。
スピーカ40から音声が発せられる場合又は発せられている場合(ステップS103でYes)、ステップS104の処理に移行する。スピーカ40から音声を発せられない場合(ステップS103でNo)、処理を終了し、引き続き状態検出部60により、乗員Hの状態及び内装部材Mの状態を測定する。
【0092】
スピーカ40から音声が発せられる場合又は発せられている場合、ステップS104において、ECU70の音響制御部82は、乗員Hの状態又は内装部材Mの状態に基づいて、スピーカ40から発せられる又は発せられている音声の音量、テンポ及び方向のうち少なくとも1つを制御する(音響制御工程)。
【0093】
例えば、乗員Hの姿勢が右側に偏っている場合、音響制御部82は、左側にあるスピーカ40の音量を、右側にあるスピーカ40の音量より大きくする。これにより、例えば乗員Hが感じる音の違和感を抑制することができる。
【0094】
また、
図8に示すように運転席側のフロントシートS1の後方にあるミッドシートS2が180度回転している場合、フロントシートS1のヘッドレスト用スピーカ43及びバック用スピーカ41と、ミッドシートS2のヘッドレスト用スピーカ43及びバック用スピーカ41とが近づく。そのため、音響制御部82は、ミッドシートS2のヘッドレスト用スピーカ43及びシートバック1のバック用スピーカ41により発せられる音声の音量を小さくすることで、運転者及びミッドシートS2に着座する乗員Hが感じる音の違和感を抑制することができる。
【0095】
<ダンパ50>
次に、振動低減部材であるダンパ50(ヘッドレスト用ダンパ53)を有するヘッドレスト3の構成について説明する。
図9から
図11は、ダンパ50を有するヘッドレスト3の内部構造を示す図で、
図9はヘッドレストフレーム31の分解斜視図、
図10は、ヘッドレストフレーム31の前方カバー31aを取り外した状態を示す図である。
図11は、
図10のB-B線に沿った断面図であり、ダンパ50とコネクタ31dを支持する連結部材31cとの位置関係を説明するための説明図である。
【0096】
ヘッドレストフレーム31は、ヘッドレスト3を支持するヘッドレストピラー30と、ヘッドレストピラー30を覆う前方カバー31a及び後方カバー31bとから構成されている。また、ヘッドレストピラー30には、ダンパ50であるヘッドレスト用ダンパ53が取り付けられている。ヘッドレストピラー30の左右には、ヘッドレスト用スピーカ43とマイク67が設けられている。ヘッドレスト用スピーカ43は、ヘッドレスト可動部33により回動可能に取り付けられている。ヘッドレスト可動部33は、連結部材31cにより連結されている。なお、図示しないがヘッドレストフレーム31は表皮Tにより覆われている。
【0097】
また、左右に配置されるヘッドレスト用スピーカ43及びマイク67の取付部材(ヘッドレスト可動部33)を連結する連結部材31cには、ハーネス及びコネクタ31dが取り付けられている。
図11に示すように、連結部材31cとヘッドレスト用ダンパ53との間に、ハーネス及びコネクタ31dが配置されるようにするとよい。連結部材31cとヘッドレスト用ダンパ53との間にハーネス及びコネクタ31dを配置することで、前方及び後方からの荷重に対してハーネス及びコネクタ31dを保護することが可能となる。
また、
図11に示すように、ヘッドレスト用ダンパ53と対向する位置に後方に凹む凹部31eを設け、凹部31eにハーネス及びコネクタ31dを取り付けるとよい。凹部31eを設けることで、ハーネス及びコネクタ31dを配置する空間の確保が容易になる。
【0098】
また、脳波検出部62が、連結部材31cに取り付けられている。連結部材31cには、脳波検出部62だけでなく、他の生体検出センサ、脈波、覚醒度センサが設けられてもよい。各種センサのハーネスは、スピーカ40やマイク67のハーネスに沿わせて配置する。例えば、ヘッドレスト用スピーカ43やマイク67のハーネスと同様に、ヘッドレストピラー30の内部を通して配置するとよい。
脳波検出部62は、正面(乗員側)から見てヘッドレストピラー30及びヘッドレスト用ダンパ53を避けた位置で、ヘッドレストピラー30及びヘッドレスト用ダンパ53の前方にある前方カバー31aに近付くように配置するのがよい。このように配置することで、ヘッドレスト用スピーカ43からの影響が抑制され、検出精度を向上させることができる。
また、ヘッドレスト用ダンパ53をハーネス及びコネクタ31dの前方に配置することで、ハーネス及びコネクタ31dを前方からの荷重に対して保護することが可能になる。
【0099】
ヘッドレストピラー30は、
図10に示すように前方から見て逆U字形に折り曲げて形成されている。より詳細に述べると、ヘッドレストピラー30は、左右方向に延びるアッパー部30aと、アッパー部30aの左右両端部から下方に延びる上側ピラー部30bと、上側ピラー部30bの下端から後方に一旦曲がってから下方に向けて延びる下側ピラー部30cとから構成されている。
【0100】
ヘッドレストフレーム31の後方カバー31bは、前方に延びるカバー固定部32がヘッドレストピラー30を保持することで、ヘッドレストピラー30に固定されている。より詳しく述べると、カバー固定部32は、後方カバー31bの上側に設けられる上部固定部32aと下側に設けられる二つの下部固定部32bとから構成されている。上部固定部32aはヘッドレストピラー30のアッパー部30aを保持し、下部固定部32bはヘッドレストピラー30の下側ピラー部30cを保持している。
【0101】
ヘッドレスト用ダンパ53は、ヘッドレストピラー30に取り付けられている。ヘッドレスト用ダンパ53をヘッドレスト3の内部に設けることにより、ヘッドレスト3に伝達された振動がヘッドレスト用ダンパ53に伝達され、ヘッドレスト用ダンパ53が共振することでヘッドレスト3の振動を抑えることが可能となる。
【0102】
ヘッドレスト用ダンパ53は、重錘57と、重錘57を被覆する弾性部材58と、重錘57と弾性部材58とを収納する本体ケース55と、本体ケース55をヘッドレストピラー30に取り付けるダンパ取付部56と、を備えている。
図11に示すように、重錘57は、弾性部材58を介して、本体ケース55内において振動可能に弾性支持されている。
【0103】
重錘57は、金属製(例えば鋳鉄製)であって、本実施形態では四角柱形状に形成されている。重錘57を弾性支持する弾性部材58は、シート状に形成された矩形部材からなり、重錘57を前後左右及び上下で挟み込むことにより、重錘57を保持している。弾性部材58は、所望の肉厚に形成されたウレタンフォーム材又はゴム材で構成されている。
【0104】
<ダンパ取付部56>
本体ケース55は、前後方向に二分割されており、前側に配置される収納部55aと後側に配置される蓋部55bとから構成されている。収納部55aと蓋部55bは、それぞれ合成樹脂で形成されている。また、本体ケース55にはヘッドレストピラー30と接続するダンパ取付部56が設けられている。
【0105】
より詳しく述べると、本体ケース55の収納部55aの両側部に側部取付部56bが設けられ、収納部55aの上端部に、二つの上部取付部56aが設けられている。ダンパ取付部56の先端に設けられたカール状の保持部がヘッドレストピラー30を保持することで、ヘッドレスト用ダンパ53をヘッドレストピラー30に固定することができる。
【0106】
図9及び
図10に示すヘッドレスト用ダンパ53では、二つの上部取付部56aが本体ケース55の上面からヘッドレストピラー30のアッパー部30aまで延び、アッパー部30aを保持している。上部取付部56aは、ヘッドレストフレーム31の後方カバー31bを固定する上部固定部32aを避けるように取り付けられている。言い換えれば、上部固定部32aはアッパー部30aの中央を保持し、ヘッドレスト用ダンパ53の二つの上部取付部56aは、後方カバー31bの上部固定部32aを挟み込むようにアッパー部30aを保持している。なお、上部取付部56aと、上部固定部32aとの間には隙間Gがあるとよい。上部取付部56aと、上部固定部32aとの間に隙間Gがあることで取付作業性が向上する。
【0107】
また、側部取付部56bが、本体ケース55の側面からヘッドレストピラー30の上側ピラー部30bまで延び、上側ピラー部30bを保持するように設けられている。
上部取付部56a及び側部取付部56bの先端はカール状に形成されており、ヘッドレストピラー30を嵌め込むことにより、ヘッドレスト用ダンパ53を取り付けることができる。
【0108】
ヘッドレスト用ダンパ53を、ヘッドレスト用スピーカ43を左右に備えるヘッドレスト3の内部に取り付けることで、ヘッドレスト3の振動が低減される。それにより、ヘッドレスト用スピーカ43の音響特性が向上し、乗員Hが感じる音の違和感を抑制することができる。
また、ヘッドレスト用ダンパ53は、側面視でヘッドレスト用スピーカ43及びマイク67と重なる位置に配置するとよい(
図14参照)。このように配置することで、ヘッドレスト3の前後方向の大型化を抑制することができる。
【0109】
なお、
図9及び
図10に示すヘッドレスト用ダンパ53では、後方カバー31bの上部固定部32aを挟み込み、二つの上部取付部56aがアッパー部30aを保持しているが、これは一例であり、別の構成であってもよい。
【0110】
例えば、
図12Aに示すヘッドレストフレーム31Aのように、後方カバー31bを固定する上部固定部321aと、ヘッドレスト用ダンパ531を取り付ける上部取付部561aが互い違いになるように配置してもよい。言い換えれば、上部固定部321aと上部取付部561aを左右方向にずらして配置し、互いに干渉しないように取り付けてもよい。このように配置することで、ダンパ取付部56と上部固定部321aの取付が安定する。また、上部取付部561aと上部固定部321aとの間に隙間Gがあると、取付作業性が向上する。
【0111】
また、
図12Bに示すヘッドレストフレーム31Bのように、ヘッドレスト用ダンパ532から延びる一つの上部取付部562aがアッパー部30aの中央を保持し、後方カバー312bから延びる二つの上部固定部322aが上部取付部562aを避け、ヘッドレストピラー30のアッパー部30aを保持してもよい。
【0112】
また、
図12Cに示すヘッドレストフレーム31Cのように、ヘッドレスト用ダンパ533から延びる二つの上部取付部563aが、ヘッドレストピラー30の屈曲部30dを保持するように取り付けられてもよい。上部取付部563aが屈曲部30dを保持することで、上部取付部563aの位置規制が可能になり、ダンパ取付部56の数を減らすことができる。例えば、
図11に示すヘッドレスト用ダンパ53に設けられていた側部取付部56bの一方又は両方を省略することができ、ダンパ取付部56の小型化が可能になる。
【0113】
振動低減部材であるヘッドレスト用ダンパ53の重錘57又はそれを収納する本体ケース55は、ヘッドレストピラー30の他に、連結部材31cに取り付けてもよい。また、ヘッドレストピラー30と連結部材31c両方に取り付けてもよい。
また、本体ケース55の蓋部55bを連結部材31cと一体に形成してもよい。ヘッドレスト用ダンパ53の本体ケース55及び連結部材31cは樹脂製がよく、樹脂製とすることで金属製である場合よりも軽量化することができる。
【0114】
本実施形態の乗物用シートSにおいて、振動抑制部材であるダンパ50は、ヘッドレスト3内に配置されているが、ダンパ50が配置される場所は、ヘッドレスト3の内部に限定されない。
図13及び
図14を用いて、乗物用シートSに配置されるダンパ50の他の例について説明する。
【0115】
ダンパ50は、
図13に示すバック用ダンパ51のように、シートバック1の内部に配置されてもよい。好ましくは、ダンパ50は、シートバック1の上部又は下部において、シート幅方向に離間して左右に配置された1組のバック用スピーカ41の間に配置されるのがよい。
シートバック1の上部に設けられたバック用ダンパ51は、アッパーフレーム12又はパッドPに取り付けられる。
シートバック1の下部に設けられたバック用ダンパ51は、ロアフレーム13又はシートバック1のパッドPに取り付けられる。
【0116】
バック用ダンパ51は、
図14に示すように、バック用スピーカ41よりも後方に配置されるのがよい。バック用ダンパ51を左右一組のバック用スピーカ41の近傍に配置することで、振動を低減させる効果が向上し、乗員Hへの違和感が抑制される。
【0117】
ダンパ50は、
図13に示すクッション用ダンパ52のように、シートクッション2の内部に配置されてもよい。好ましくは、シートクッション2の前部又は後部において、シート幅方向に離間して左右に配置された1組のクッション用スピーカ42の間に配置されるのがよい。
シートクッション2の前部に設けられたクッション用ダンパ52は、パンフレーム22、前方連結フレーム23又はパッドPに取り付けられる。また、シートクッション2の後部に設けられたクッション用ダンパ52は、後方連結フレーム24又はパッドPに取り付けられる。
また、クッション用ダンパ52は、
図14に示すように、クッション用スピーカ42よりも下方に配置されるのがよい。左右一組のクッション用スピーカ42の間において、クッション用スピーカ42の近傍に配置することで振動を低減させる効果が向上し、乗員Hへの違和感が抑制される。
【0118】
ダンパ50は、
図13に示すオットマン用ダンパ54のように、オットマン4の内部に配置されてもよい。好ましくは、オットマン4において、シート幅方向に離間して左右に配置されたオットマン用スピーカ44の間に配置されるのがよい。オットマン用ダンパ54は、オットマン4のオットマンフレーム35又はパッドPに取り付けられる。
オットマン4に取り付けられるオットマン用ダンパ54は、側面視で、オットマン用スピーカ44と重なる位置に配置するとよい。このように配置することで、オットマン収納時における前後方向の大型化を抑制できる。
【0119】
なお、乗物用シートSに振動特性を検出する振動検出部を設け、振動検出部の検出結果に基づいて、所定の振動、例えば着座者への違和感が大きい振動を低減させたいときだけダンパ50を作動させるようにしてもよい。
【0120】
以上、本発明の実施形態について図を用いて説明した。本実施形態の音響システム100は、車両に搭載されているが、本発明は、自動車・鉄道など車輪を有する地上走行用乗物に搭載される音響システム100に限定されるものではなく、例えば、地上以外を移動する航空機や船舶などに搭載される音響システム100にも適用され得る。
【符号の説明】
【0121】
V 車両
S、S’ 乗物用シート(内装部材)
S1 フロントシート(内装部材)
S2 ミッドシート(内装部材)
S3 リアシート(内装部材)
Sh シート本体
DR 車両用ドア(内装部材)
F シートフレーム
SW ステアリングホイール
IP インストルメントパネル
R1、R2 範囲
M 内装部材
G 隙間
100 音響システム
1、1’ シートバック
2 シートクッション
3 ヘッドレスト
4 オットマン
6 リクライニング装置
6a 角度センサ
7 スライド装置
7a 位置センサ
8 シート回転装置
8a 回転角度センサ
10 シートバックフレーム
11 バックサイドフレーム
12 アッパーフレーム
13 ロアフレーム
14 ヘッドレストホルダ
15 シートバック可動部
15a アクチュエータ
20 シートクッションフレーム
21 クッションサイドフレーム
22 パンフレーム
23 前方連結フレーム
24 後方連結フレーム
25 シートクッション可動部
25a アクチュエータ
30 ヘッドレストピラー
30a アッパー部
30b 上側ピラー部
30c 下側ピラー部
30d 屈曲部
31 ヘッドレストフレーム
31a 前方カバー
31b 後方カバー
31c 連結部材
31d コネクタ
31e 凹部
32 カバー固定部
32a、321a、322a 上部固定部
32b 下部固定部
33 ヘッドレスト可動部
35 オットマンフレーム
36 オットマン可動部
36a アクチュエータ
40 スピーカ
41 バック用スピーカ
42 クッション用スピーカ
43 ヘッドレスト用スピーカ
44 オットマン用スピーカ
45 ドア用スピーカ
50 ダンパ
51 バック用ダンパ
52 クッション用ダンパ
53 ヘッドレスト用ダンパ
54 オットマン用ダンパ
55 本体ケース
55a 収納部
55b 蓋部
56 ダンパ取付部
56a、561a、562a 上部取付部
56b 側部取付部
57 重錘
60 状態検出部
61 着座検出部
62 脳波検出部
63 覚醒度検出部
64 車内カメラ
65 赤外線カメラ
66 ドアセンサ
67 マイク
70 ECU
71 CPU
72 ROM
73 RAM
74 HDD
75 通信インタフェース
80 記憶部
81 状態判定部
82 音響制御部