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特開2023-179366最適化されたシート形状を持つバルブ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179366
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】最適化されたシート形状を持つバルブ
(51)【国際特許分類】
   F16K 1/42 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
F16K1/42 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023077209
(22)【出願日】2023-05-09
(31)【優先権主張番号】10 2022 114 296.5
(32)【優先日】2022-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】506194368
【氏名又は名称】ビュルケルト ヴェルケ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Buerkert Werke GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Christian-Buerkert-Strasse 13-17, D-74653 Ingelfingen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】ベツォルト,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】シュトラスヴィーマー,ラルフ
【テーマコード(参考)】
3H052
【Fターム(参考)】
3H052AA01
3H052BA22
3H052CB01
3H052CB19
(57)【要約】      (修正有)
【課題】シール力を比較的低く抑えつつ、同時に信頼性の高いシールを保証するバルブを提供する。
【解決手段】最適化されたシート形状を有するバルブ、特にソレノイドバルブに関する。バルブは、シール要素と、公称直径NDを有する流路開口28を取り囲むバルブシート26とを備え、バルブシートは、シール要素に面する側に、閉じた円周方向の丸み部34を有する。丸み部は、流路開口の中心軸を通って延びる断面において、シート半径Rを有し、流路開口を画定する壁内側面38からシート半径の半径中心36までの距離bは、シート半径よりも小さい。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シール要素(30)と、公称直径(ND)を有する流路開口(28)を取り囲むバルブシート(26)とを備え、前記バルブシート(26)は、前記シール要素(30)に面する側に、閉じた周方向の丸み部(34)を有し、前記丸み部は、前記流路開口(28)の中心軸を通って延びる断面において、シート半径(R)を有する、バルブにおいて、
前記流路開口を画定する壁内側面から前記シート半径(R)の半径中心(36)までの距離(b)は前記シート半径(R)よりも小さいことを特徴とするバルブ。
【請求項2】
前記シート半径(R)に対する前記距離(b)の比が、0.375から最大0.75までの範囲にある、請求項1に記載のバルブ。
【請求項3】
前記シート半径(R)が、移行領域(42)において前記流路開口(28)の壁内側面(38)に合流する、請求項1に記載のバルブ。
【請求項4】
前記移行領域(42)がエッジ(44)または面取りを有する、請求項3に記載のバルブ。
【請求項5】
前記移行領域(42)が、前記シート半径(R)よりも小さい移行半径(r)を有する移行丸み部(46)を備える、請求項3に記載のバルブ。
【請求項6】
前記移行半径(r)は、前記距離(b)より小さく、前記壁内側面(38)に接線方向に合流してもよく、好ましくは0.1mmの値を有する、請求項5に記載のバルブ。
【請求項7】
前記移行領域(42)が、前記流路開口(28)の方向に増大する連続的な曲率を有する、請求項3に記載のバルブ。
【請求項8】
前記連続的な曲率は、前記流路開口(28)の壁内側面(38)に接線方向に合流する、請求項7に記載のバルブ。
【請求項9】
前記バルブシート(26)が、バルブ(10)の開状態において前記シール要素(30)に最も近い点を画定する環状シールライン(40)を画定し、前記シールライン(40)は、前記公称直径(ND)と前記シート半径(R)の2倍との合計よりも小さい直径を有する、請求項1に記載のバルブ。
【請求項10】
前記シート半径(R)と前記公称直径(ND)との比が、0.05から最大0.5までの範囲内の値を有する、請求項1に記載のバルブ。
【請求項11】
前記公称直径(ND)は、0.5mmから6mmまでの範囲の値を有する、請求項1に記載のバルブ。
【請求項12】
ハウジング(12)を備え、
前記バルブシート(26)は、ハウジング部分の構成要素であり、好ましくは前記ハウジング部分に一体的に接続されている、請求項1に記載のバルブ。
【請求項13】
前記ハウジング部分は流体チャンバ(14)を画定する、請求項12に記載のバルブ。
【請求項14】
前記バルブシート(26)が、前記ハウジング部分から突出するスリーブ状部分(24)の自由端である、請求項12に記載のバルブ。
【請求項15】
前記シール要素(30)は、少なくとも前記バルブシート(26)との接触領域においてエラストマーで作られている、請求項1に記載のバルブ。
【請求項16】
開状態において、前記シール要素(30)は、前記バルブシート(26)に面する平坦な表面(32)を有する、請求項1~15のいずれかに記載のバルブ。
【請求項17】
全閉状態において、シール要素(30)がバルブシート半径(R)の領域のみでバルブシート(26)と接触する、請求項1に記載のバルブ。
【請求項18】
前記シート半径(R)が、半径方向外側に向かって、特に接線方向に、円錐セクション(48)に合流し、前記円錐セクション(48)の円錐角度(α)は好ましくは80°から最大110°までの範囲にある、請求項1に記載のバルブ。
【請求項19】
前記シート半径(R)が半径方向外側に向かって接線方向に前記円錐セクション(48)に合流する、請求項18に記載のバルブ。
【請求項20】
前記シート半径(R)の半径中心(36)までの距離(b)が測定される壁内側面(38)の領域が、前記公称直径(ND)を有する、請求項1に記載のバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、最適化されたシートの形状を有するバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なバルブ、例えばソレノイドバルブおよび/または比例バルブは、一般に、流体の流れ、例えば液体または気体の流れを制御するように設計されている。これらは通常、バルブシート(弁座)に押し付けられて流路開口を閉じるシール要素を備える。
【0003】
バルブシートが、流路開口を取り囲み所定のシート半径Rを有する隆起部からなる、バルブが知られている。シート半径は、流路開口の中心軸が位置する断面における横断面で規定される。通常、このシート半径は、流路開口の壁内側面に接線方向に合流する(つながる)。
【0004】
シール要素と隆起部との間の接触により、流路開口を取り囲むシールラインが形成され、そこでシールが行われる。フラットなシール要素に関しては、シールラインはシール要素とシート半径との最初の接触である。
【0005】
用途に応じて、必要な流量、ひいては流路開口やバルブシート(弁座)のサイズも異なる。バルブに必要なシール力、つまりアクチュエータに必要な切換力は、バルブシートの公称直径と媒体圧力とによって決まる。
【0006】
電力、設置スペース、熱などの制限要因により、バルブ内のシール力を最小限に抑えることが望ましい。これはバルブの耐用年数にもプラスの影響を与える。たとえば、シール力を低下させて操作すると、摩耗現象、例えば、バルブシートとの繰り返し接触による、大部分が弾性のシール要素のパンチアウト効果など、が発生するのは、ずっと後になってからである。
【0007】
しかし、従来のバルブでは、単純な幾何学的設計のため、シール力を低減できる可能性は大幅に制限されていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、シール力を比較的低く抑えつつ、同時に信頼性の高いシールを保証するバルブを作成することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、この目的は、シール要素と、公称直径NDを有する流路開口を取り囲むバルブシートとを備えるバルブ、特にソレノイドバルブによって達成される。バルブシートは、シール要素に面する側に、閉じた円周方向の丸み部(circumferential rounding)を有する。この丸み部は、流路開口の中心軸を通って延びる断面においてシート半径Rを有する、本発明によれば、通過開口を規定する壁内側面からシート半径Rの半径中心esまでの距離bは、シート半径Rよりも小さい。
【0010】
シート半径Rの半径中心esのこの特別な配置により、シールラインは流路開口の中心線の方向にシフトされる。その結果、シールラインで囲まれたシール領域及びシール要素とバルブシートとの接触領域も減少し、確実なシールのために加えるべき力の低減につながる。
【0011】
したがって、シート半径Rの半径中心は、従来のバルブのように流路開口の壁内側面へのシート半径のキンクフリーで接線方向の移行が得られるようには配置されていない。丸み部はもはや単一のシート半径Rを持つのではなく、流路開口の壁内側面への移行領域を形成する。
【0012】
その結果、設定されるシール力、またはシールが閉じているときにシール要素とバルブシートとの間に作用する表面圧力を、シール面からある程度切り離すことができる。したがって、力の分布、したがってシール要素またはバルブシートにかかる機械的負荷も、シート半径Rとは独立して影響を受ける可能性がある。
【0013】
特に、本発明によるバルブの使用は、食品分野および温水用途で考えられる。なぜなら、ここではシール材料の選択が限られており、バルブの摩耗が増大しやすい極端な条件が作業環境に蔓延しているからである。これは、従来のバルブと比較して必要なシール力が軽減されることが、バルブのコンポーネントにかかる機械的負荷も軽減するためであり、これにより、バルブの耐用年数にプラスの影響を与えるためである。
【0014】
好ましい実施形態では、シート半径Rに対する距離bの比は、0.375から最大0.75の範囲内であってもよい。この範囲では、より低いシール力で効果的なシールを達成できることが広範なテストで示されている。同時に、このように設計されたバルブは、流路開口の高さから壁内側面への移行部でのエッジ形成が比較的少量しかないため、耐用年数が長くなる。
【0015】
一般に、この移行部に移行領域を設けることができ、そこにおいてシート半径Rが流路開口の壁内側面へとつながる。
【0016】
たとえば、移行領域にはエッジや面取りが含まれる場合がある。このような幾何学的設計は、例えば穴あけ工具を用いて流路開口を導入することによって、特に製造が容易である。
【0017】
あるいは、移行領域は、シート半径Rよりも小さい移行半径rを有する移行丸み部を有してもよい。特に、移行半径rは、距離bよりも小さく、流路の壁内側面へと接線方向につながってもよい。したがって、繰り返し接触するとシール要素に損傷を与える可能性のある段部やエッジは回避される。
【0018】
例えば、移行半径rは、0.05mmと0.15mmとの間、好ましくは0.1mmであってもよい。この範囲の値は、十分な丸みを提供する。同時に、シートカウンターシンクなどの従来の工具を使用した生産も可能である。
【0019】
代替的または追加的に、移行領域は、流路開口の方向に増大する連続的な曲率を有してもよく、それは、特に、流路開口の壁内側面に接線方向に合流する、つまり、流路開口の壁内側面へと接線方向につながる。これにより、特にスムーズな移行が実現され、バルブの耐用年数にプラスの影響を与える。
【0020】
好ましい実施形態では、バルブシートは、バルブの開状態においてシール要素に最も近い点に対応する環状シールラインを画定する。シールラインの直径は、公称直径NDとシート半径Rの2倍との合計よりも小さい。このような円形バルブは製造が容易で、特に堅牢であり、シール力の望ましい低減につながる。しかしながら、他のバルブ形状、例えば、対応するシールラインで囲まれた楕円形または正方形の流路開口を有するバルブ形状ももちろん可能である。
【0021】
特に、円形バルブデザインについては、シールラインは、シール面積 A=π*(ND/2+R)を囲むようにすることができる。これには、π*(ND/2)<A<π*(ND/2+R)が適用される。ここで、πは循環数(circular number)である。したがって、シール面積Aは、流路開口の断面よりも大きいが、シート半径Rが流路開口の壁内側面に接線方向に合流する従来のバルブよりも小さい。したがって、すでに上で説明したように、従来のバルブと比較してシール力の低減が達成される。
【0022】
本発明の一態様は、公称直径NDに対するシート半径Rの比が0.05から最大0.5の範囲内の値を有することを規定する。このような幾何学的設計を有するバルブでは、特に低いシール力で信頼性の高いシールを達成できることが示されている。
【0023】
特に、公称直径NDは、0.5mmと6mmの間の値を有することができる。この範囲では、シール要素とバルブシートとの間の接触面が非常に小さいため、達成可能な寿命の増加が特に大きくなる。これは、小さい接触面は、印加されたバルブを閉じる力が低くてもシール要素とバルブシートとの間の表面圧力が高くなるという効果を有し、それが亀裂の形成やバルブの摩耗を促進する可能性があるためである。シール力の低減により、これらの影響が打ち消される。
【0024】
本発明のさらなる態様では、前記バルブはハウジングを備え、前記バルブシートは、ハウジング部分の構成要素であり、かつ/または、ハウジング部分に一体的に接続されている。これにより、バルブの製造が簡単になる。例えば、バルブハウジングをバルブシートとともに単一のプロセスステップで射出成形することが考えられる。さらに、バルブは、ハウジングへのバルブシートの統合(一体化)により、特に堅牢である。
【0025】
一般に、前記ハウジング部分は流体チャンバの境界を定めることができる。特に、前記バルブシートは、ハウジング部分から突出するスリーブ状部分の自由端であってもよい。この設計は実施するのが技術的に簡単で、シール要素のバルブシートへのアクセスが良好である。
【0026】
好ましい構成では、シール要素は、少なくともバルブシートとの接触領域においてエラストマーからなる。その機械的変形能力により、閉弁状態においてバルブシートとシール要素との間に、信頼性の高いシール機能を確保するのに十分な大きさの接触面が形成される。エラストマーは、多くの流体に対して十分な安定性も備えている。
【0027】
確実なシールを確保するために、シール要素は、開状態でバルブシートに面する平坦な表面を有するようにすることもできる。バルブが閉じているとき、シート半径Rはその中に押し付けられるかその中に形成されて、シール機能のために十分に大きな接触面が形成されるようにすることができる。
【0028】
完全に閉じた状態では、シール要素はバルブシート半径Rの領域のみでバルブシートに接触すると考えられる。さらなる接触点、特にバルブシートまたは移行領域におけるエッジまたは面取り部に対する接触点を回避することにより、バルブの長寿命が保証される。
【0029】
さらに、シート半径Rが半径方向外側に向かって円錐部分に合流するようにしてもよく、その円錐角度は好ましくは80°から最大110°の範囲にある。これにより、流体がバルブを通過する際の流体の流れの乱流を防ぐか、少なくとも減らすことができる。
【0030】
一般に、シート半径Rの半径中心までの距離が距離bである壁内側面の領域は、公称直径NDを有することができる。
【0031】
この場合、公称直径NDは、円筒形の流路開口の最小開口直径であると理解される。シール要素から見ると、これは通常、バルブが閉じているときにシールラインが形成される平面よりもかなり下にある。
【0032】
本発明のさらなる特徴および利点は、以下の説明および参照される添付の図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】リフティングアーマチュアソレノイドバルブとして設計された、本発明によるバルブの概略断面図を示す。
図2図1のバルブのハウジングおよび流体チャンバの概略上面図を示す。
図3図2のハウジングの概略断面図を示す。
図4】従来のバルブシートの概略断面図を示す。
図5】第1の実施形態における本発明によるバルブのバルブシートの概略断面図を示す。
図6】第2の変形実施形態における本発明によるバルブのバルブシートの概略断面図を示す。
図7】シート半径Rにわたってバルブによってシールできる最大流体圧力を示す図である。
図8】様々なバルブ形状について、従来のバルブと比較して、本発明によるバルブによって達成できるシール面の減少率を、公称直径NDの関数として示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、本発明によるバルブ10の概略断面図を示す。例示的な実施形態では、それは例えばリフティングアーマチュアソレノイドバルブである。バルブ10は、流体チャンバ14をその中に封入した、入口16および出口18を有するハウジング12と、ソレノイドコイル20によって変位可能で図1では開位置にあるアーマチュア22とを備える。
【0035】
ハウジング12は、プラスチック、特にガラス繊維強化プラスチックで作られた射出成形部品であり得る。あるいは、金属ハウジングも考えられる。
【0036】
流体チャンバ14を備えたハウジング領域は、図2の平面図および図3の断面図にさらに詳細に示されている。
【0037】
ハウジング12の一部は、底部から上方に流体チャンバ14内へと突出するスリーブ状部分24を形成する。バルブシート26は、アーマチュア22に面するスリーブ状部分24の自由端に配置される。この実施形態では、ハウジング12、スリーブ状部分24、およびバルブシート26は、単一の一体部品を形成する。
【0038】
図示の実施形態では、バルブシート26は入口16の流路開口28を取り囲んでいる。もちろん、これは限定的に理解されるべきではない。バルブシート26が出口18を取り囲む変形実施形態も考えられる。換言すれば、バルブ10は、シート下流入およびシート上流入に適している。
【0039】
アーマチュア22は、流路開口28とは反対側の流体室14の一側に配置される。ゴムなどのエラストマー材料で作製され得るシール要素30が、アーマチュア22のヘッドに取り付けられている。
【0040】
例示的な実施形態では、バルブシート26に面するシール要素30の側面は平坦面32である。
【0041】
バルブ10の閉鎖時、ソレノイドコイル20は、シーリング要素30がバルブシート26に到達するまで、アーマチュア22を流路開口28の方向に変位させる。ソレノイドコイル20によってアーマチュア22に力が加えられる。これにより、シール要素30がバルブシート26に押し付けられ、流路開口28を液密に閉鎖する。
【0042】
したがって、この力により、バルブシート26の上部領域がシール要素30の表面32に押し付けられる。その結果、機械的応力が閉状態で作用し、これが、特に開閉プロセスを繰り返す連続運転中において、シール要素30の摩耗へと至る可能性がある。
【0043】
摩耗を可能な限り低く抑えるために、バルブ10は、比較的低い閉鎖力での動作を可能にする特殊なバルブシート形状を有する。
【0044】
特殊なバルブシート幾何学的形状と従来技術から知られているバルブシート26との違いを以下に説明する。
【0045】
図4は従来のバルブシート26を示しているが、これは本発明の主題ではない。それは、公称直径NDを有する円形の流路開口28を取り囲み、シール要素30に面する側に、シート半径Rのみを有する円周丸み部34を有する。シート半径は、いわば、閉じた態様で、バルブシート26を取り巻いており、その形状を画定する。流路開口28の壁内側面38からの半径中心36すなわち半径中心線までの距離bとシート半径Rは同じ値を有し、シート半径Rは流路開口28の円筒壁内側面38に接線方向に合流する。
【0046】
流量に関連する表面ANDは、式AND=π*(ND/2)を使用してこのシート形状に対して計算できる。この式において、πは循環数である。
【0047】
対照的に、シール面Aに対応する、シール力に関連する表面はより大きい。バルブ10が閉じているとき、シール要素30は円周丸み部34の領域でバルブシート26に接触するからである。示されている例では、それは、式A=π*(ND/2+R)を使用して計算される。適用されるシール力はシール面Aに正比例する。
【0048】
比較として、図5は、図1から図3の本発明によるバルブ10のバルブシート26を示す。
【0049】
これは、公称直径NDを有する円形の円筒状流路開口28を囲み、シール要素30に面する側に、閉じた円周方向の連続的に等しい丸み部34を有する。
【0050】
流路開口28の中心軸を通過する各断面において、丸み部34は同一のシート半径Rを有する。丸み部34はバルブシート26に環状シールライン40を画定する。この環状シールライン40は、バルブ10が開いた状態においてシール要素30に最も近い点に対応する。
【0051】
流路開口28を画定する円筒壁内側面38からシート半径Rの半径中心36つまり中心線までの距離bは、ここではシート半径Rよりも小さい。シート半径の半径中心36までの距離bが測定される壁内側面38の領域は、公称直径NDを有する。
【0052】
したがって、シールライン40の直径は、公称直径NDとシート半径Rの2倍との合計よりも小さい。
【0053】
示されている例では、シール力関連面、つまりシール面Aは、式A=π*(ND/2+b)を使用して計算される。ここで、b<Rである。同じ公称直径NDに対して、これは、上述した従来のバルブシート26のシール面Aよりも小さい。
【0054】
したがって、シールのためにシール要素30に加えられる力も小さくなる。その力が加えられると、バルブ10が開閉するときにシール要素30にかかる機械的負荷も減少し、これが本発明によるバルブ10の耐用年数の延長につながる。
【0055】
図5に示されるバルブ10では、シート半径Rは、従来のバルブ10のようには、流路開口28の内壁38に接線方向に合流していない。ここで、移行領域42はエッジ44を有する。しかし、エッジは、流路開口28内へとオフセットしてシールライン40から遠く離れているのが好ましい。弁が完全に閉じられた状態で、エッジ44とシール要素30との間に接触が存在しないようにするためである。
【0056】
したがって、シール要素30はバルブシート半径Rの領域のみでバルブシート26に接触する。したがって、摩耗の加速につながる可能性がある敏感なエラストマーのエッジ接触がないことが保証される。
【0057】
図6は、本発明によるバルブ10のバルブシート26の第2の変形実施形態を示す。これは、本質的な特徴において図5の実施形態に対応するので、以下では相違点のみを説明する。同一の要素および機能的に同一の要素には、同じ参照番号が付けられている。
【0058】
また、図6に示すバルブシート26の場合も、流路開口28の壁内側面38から半径中心36、すなわち丸み部34の中心線までの距離bは、シート半径Rよりも小さい。
【0059】
しかしながら、移行領域42は周縁すなわち周方向のエッジ44を有さず、移行半径rを有する移行丸み部46を有する。移行半径rは、シート半径Rより少なくとも10倍小さい。
【0060】
示されている例では、rは0.1mmである。これにより、特別なツールを使用せずに技術的に簡単な製造が可能になる。
【0061】
図6に示すように、移行半径rは、公称直径NDを有する流路開口28の円筒壁内側面38へと接線方向に延びており、その結果、滑らかな移行が行われる。したがって、周縁44または面取りを有するバルブの実施形態よりも、シール要素30が損傷する危険性が低い。
【0062】
さらなるバルブシート幾何学的形状、特に、移行領域42が流路開口28の方向に増大する連続的な曲率を有し、最終的に流路開口28の壁内側面38に接線方向に合流するようなバルブシート幾何学的形状も当然考えられる。
【0063】
図5および図6に示されるバルブシート26はまた、シート半径Rが接線方向に半径方向外側面に合流する円錐部分48を有する。ここでの円錐角αは、80°から最大110°の範囲にある。この例示的な実施形態では、これにより、流体がバルブ10を通過する際の流体の流れの乱流が回避され、層流が達成される。
【0064】
例えば、図4、5および6に示されるバルブシート26はそれぞれ、4mmの公称直径NDおよび0.3mmのシート半径Rを有し得る。したがって、流れ関連表面ANDは、3つのバルブシート形状のそれぞれで、12.57mmになる。
【0065】
図4における従来のバルブシート26については、上記の式により、16.62mmのシール力関連面Aが達成される。
【0066】
これとは対照的に、図4および図5の最適化されたバルブシート26のシール力関連面Aは、同じ公称直径NDおよびシート半径Rおよび0.2mmの距離bに対して、わずか15.2mmである。したがって、従来のバルブシート26と比較して、シール力関連面Aは約9%小さい。
【0067】
公称直径NDが1.6mmのバルブシート26について、その他の点では同一のパラメータを用いて同様に検討すると、流れ関連面ANDが2.01mm、従来のバルブシート26のシール力関連面Aが3.8mm、最適化されたバルブシート26のシール力関連面Aが3.14mmであった。本発明に従って最適化されたバルブ10のシール力関連面A、したがって加えられるシール力も、ここでは従来のバルブ10のそれより17%低い。
【0068】
したがって、本発明による上述のバルブ10によって達成できるシール力の低減は、公称直径NDに依存する。
【0069】
さらに、達成可能なシール力の低減は、図7に示すように、シート半径Rにも依存する。この図は、X軸52上のシート半径Rに対して、バルブ10によってシールできる最大流体圧力をY軸50にプロットしたグラフである。図示の例では、Y軸50の値の範囲は0~20バールであり、X軸52の値の範囲は0mm~0.5mmである。
【0070】
シート半径Rが小さいほど、バルブ10が達成できるシール可能な圧力は高くなる。しかしながら、実際には、可能な最小のシート半径Rは、シール要素30の負荷容量によって制限される。バルブの閉状態では、シート半径Rが非常に小さいと、バルブシート26とシール要素30との間の接触面が小さくなる。これにより、局所的な表面圧力が高くなり、バルブ10の寿命に悪影響を与える可能性がある。
【0071】
図8は、達成可能なシール力の低減が、特に公称直径NDと距離bとの比にも依存する可能性があることを示している。
【0072】
この図では、従来のバルブ10と比較して達成可能な相対的なシール力の減少が、X軸52上の公称直径NDに対してY軸50上にプロットされている。図示の例では、Y軸50上の値の範囲は、0~50%(Y軸の上端)であり、X軸52の値の範囲は0mm~5mmである。
【0073】
図7の第1のグラフ54は、b=0.15およびb/ND=0.375のバルブ10についての達成可能なシール力の低減を示し、第2のグラフ56は、b=0.15およびb/ND=0.5のバルブ10についての達成可能なシール力の減少を示し、第3のグラフ58は、b=0.15およびb/ND=0.75のバルブ10についてのものであり、第4のグラフ60は、b=0.3およびb/ND=0.75のバルブ10についてのものである。
【0074】
比b/NDが小さいほど、所定の公称直径NDについて加えられるシール力は低くなる。しかしながら、比b/NDを任意に小さく選択することはできない。そうしないと、シール要素30に対する機械的負荷が再び増大するからである。
【0075】
示されたように、比b/NDが0.75~0.375であるバルブ10は、加えられるシール力が特に低く、耐用年数が長い。したがって、この値の範囲は、本発明によるバルブ10にとって有利である。
【0076】
同じ理由で、0.5mm~6mmの公称直径ND、0.2mm~0.4mmのシート半径R、および0.05から最大0.5までの範囲の公称直径ND対シート半径Rの比も好ましい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【外国語明細書】