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特開2023-179383アミロイドβによるリン酸化タウタンパク質の増加抑制用の組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179383
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】アミロイドβによるリン酸化タウタンパク質の増加抑制用の組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/10 20160101AFI20231212BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20231212BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20231212BHJP
   A61K 31/4172 20060101ALI20231212BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231212BHJP
   A61K 36/07 20060101ALI20231212BHJP
   A23L 31/00 20160101ALI20231212BHJP
【FI】
A23L33/10
A23L33/105
A61P25/28
A61K31/4172
A61P43/00 111
A61K36/07
A23L31/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092260
(22)【出願日】2023-06-05
(31)【優先権主張番号】P 2022091965
(32)【優先日】2022-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】319002016
【氏名又は名称】株式会社エル・エスコーポレーション
(71)【出願人】
【識別番号】501410115
【氏名又は名称】学校法人高崎健康福祉大学
(74)【代理人】
【識別番号】100157428
【弁理士】
【氏名又は名称】大池 聞平
(72)【発明者】
【氏名】松本 聡
(72)【発明者】
【氏名】中道 範隆
(72)【発明者】
【氏名】柴垣 郁弥
【テーマコード(参考)】
4B018
4C086
4C088
【Fターム(参考)】
4B018LB01
4B018LB02
4B018LB03
4B018LB05
4B018LB06
4B018LB07
4B018LB08
4B018LB09
4B018MD18
4B018MD82
4B018ME14
4B018MF01
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC38
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA16
4C086ZC01
4C086ZC41
4C088AA02
4C088MA52
4C088NA14
4C088ZA16
4C088ZC01
4C088ZC41
(57)【要約】
【課題】アミロイドβによるタウタンパク質の過リン化抑制に有用な組成物を提供する。
【解決手段】組成物に、アミロイドβによるリン酸化タウタンパク質の増加抑制の機能を有するエルゴチオネインを、有効成分として含有させる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エルゴチオネインを有効成分として含有する、アミロイドβによるリン酸化タウタンパク質の増加抑制用の組成物。
【請求項2】
アミロイドβによるタウタンパク質の増加も抑制する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
アミロイドβによる過リン酸化タウタンパク質に起因する疾患に対する、治療又は予防に用いられる、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記疾患が、アルツハイマー病である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
エルゴチオネインをタモギタケ抽出物として含有する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項6】
食品組成物である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項7】
医薬組成物である、請求項1又は2に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エルゴチオネインを有効成分とする組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エルゴチオネインは、希少なアミノ酸誘導体の一種であり、強力な抗酸化作用を有する天然物質である。特許文献1には、L-エルゴチオネインを有効成分として含有する、認知機能改善用食品組成物が記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、哺乳動物の中枢系細胞を損傷から保護する方法として、治療上有効な量のL-エルゴチオネインを哺乳動物に投与する工程を包含する方法が記載されている。特許文献2に記載の方法は、中枢系細胞の損傷が神経変性疾患から生じるものであることや、その神経変性疾患が、アルツハイマー病、多発性硬化症、ダウン症候群、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病、外傷性脳損傷、急性脊髄損傷および慢性脊髄損傷、黄斑変性、HIV/AIDS、視神経障害および網膜症からなる群から選択されるものであることが記載されている。また、特許文献2には、アルツハイマー病に関して、「Aβ誘導性酸化的細胞死の防止に対するL-エルゴチオネオインの正の効果を示す結果が、示される。」とも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-180364号公報
【特許文献2】特表2005-521707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、アルツハイマー病に関する最近の研究で、アミロイドβ(以下、「Aβ」と言う。)の凝集体であるAβオリゴマーが、Aβの凝集・蓄積による老人班の形成、過リン酸化タウタンパク質(異常にリン酸化されたタウタンパク質)による神経原線維変化(Neurofibrillary tangle:NFT)、シナプス障害、ミトコンドリア障害、及び、酸化ストレスを誘発して、脳の神経細胞障害を引き起こし、病気の引き金として働くことが明らかになってきた。そのため、Aβによる過リン酸化タウタンパク質の抑制や、タウタンパク質の過リン酸化(通常状態よりもリン酸化タウタンパク質が増えること)の抑制などが、アルツハイマー病の根本的な治療や予防に繋がると考えられている。また、Aβに起因する他の疾患の治療や予防にも繋がると考えられている。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、Aβによるタウタンパク質の過リン化抑制に有用な組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者は、エルゴチオネインについて鋭意研究を行った結果、エルゴチオネインが、Aβによるタウタンパク質のリン酸化(以下、「リン酸化タウ」と言う場合がある。)の増加、及び、タウタンパク質の増加の各々に対して抑制機能があることを見出した。この知見に基づく本発明は、エルゴチオネインを有効成分として含有する、アミロイドβによるリン酸化タウタンパク質の増加抑制用の組成物である。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、アミロイドβによるタウタンパク質の増加も抑制する。
【0009】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、アミロイドβによる過リン酸化タウタンパク質に起因する疾患に対する、治療又は予防に用いられる。
【0010】
第4の発明は、第3の発明において、疾患が、アルツハイマー病である。
【0011】
第5の発明は、第1又は第2の発明において、エルゴチオネインをタモギタケ抽出物として含有する。
【0012】
第6の発明は、第1又は第2の発明において、食品組成物である。
【0013】
第7の発明は、第1又は第2の発明において、医薬組成物である。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、Aβによるリン酸化タウの増加抑制機能を有するエルゴチオネインを組成物に有効成分として含有させている。そのため、Aβによるタウタンパク質の過リン化抑制に有用な組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、実施例におけるSH-SY5Y細胞の培養及び分化誘導などのスケジュールを表す図である。
図2図2は、CCK-8アッセイによる細胞生存率及びLDHアッセイによる細胞毒性の評価結果を表すグラフである。
図3図3は、コリン作動性神経マーカー及びドパミン作動性神経マーカーに対する発現量を表すグラフである。
図4図4は、第1実験におけるウエスタン・ブロッティングの解析結果として得られる、各標的タンパク質由来バンドの画像である。
図5図5は、図4と同じ実験におけるウエスタン・ブロッティングの解析結果を表すグラフである。
図6図6は、第2実験においてAβの添加量が高濃度の場合のCytotoxicityアッセイによる細胞毒性の評価結果を表すグラフである。
図7図7は、第2実験においてAβの添加量が高濃度の場合のウエスタン・ブロッティングの解析結果として得られる、各標的タンパク質由来バンドの画像である。
図8図8は、図7と同じ実験におけるウエスタン・ブロッティングの解析結果を表すグラフである。
図9図9は、第2実験においてAβの添加量が低濃度の場合のCytotoxicityアッセイによる細胞毒性の評価結果を表すグラフである。
図10図10は、第2実験においてAβの添加量が低濃度の場合のウエスタン・ブロッティングの解析結果として得られる、各標的タンパク質由来バンドの画像である。
図11図11は、図10と同じ実験におけるウエスタン・ブロッティングの解析結果を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の一例であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0017】
[組成物について]
本実施形態は、エルゴチオネイン(例えばL-エルゴチオネイン)を有効成分として含有する、Aβによるリン酸化タウの増加抑制用の組成物(以下、「本組成物」と言う場合がある。)である。そのため、本組成物(食品組成物又は医薬組成物)は、タウタンパク質の過リン酸化(通常状態よりもリン酸化タウが増えること)を抑制すると共に、過リン酸化タンパク質(過剰にリン酸化されたタウタンパク質)の抑制を期待できるものである。また、本組成物は、Aβによるタウタンパク質の増加も抑制する。そのため、本組成物は、タウタンパク質の凝集阻害・抑制も期待できるものである。本組成物は、Aβによる過リン酸化タウタンパク質により生じる神経原線維変化の抑制(タウオパチーの治療又は予防)に用いることができる。本組成物は、Aβによる過リン酸化タウタンパク質に起因する疾患に対する、治療又は予防に用いることができる。
【0018】
このような疾患としては、例えばアルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)、レビー小体型認知症、神経原線維型老年認知症、石灰沈着を伴うびまん性神経原線維変化病、嗜銀顆粒病、進行性核上性麻痺、皮質基底核変性症、ピック病(ピック球を伴うピック病)、FTDP-17(タウ遺伝子異常を伴うFTDP-17)、ALS・パーキンソン症候群・認知症複合、家族性認知症(BRI蓄積症)、エコノモ脳炎後遺症(脳炎後パーキンソン症候群)、亜急性硬化性脳炎、拳闘家(ボクサー)脳症、筋緊張性ジストロフィーなどが挙げられる。
【0019】
本組成物は、ヒトに加え、ウシ、ウマ等の家畜動物、イヌ、ネコ等のペット動物、又は、マウス、モルモット等の実験動物にも適用することができる。
【0020】
本組成物は、治療的用途(医療用途)又は非治療用途(非医療用途)の何れにも用いることができる。具体的には、医薬品、医薬部外品、化粧品及び飲食品等に分類されるか否かによらず、Aβによるタウタンパク質の過リン酸化、この過リン酸化により生じる神経原線維変化、又は、神経原線維変化によって引き起こされる疾患の治療又は予防を明示的又は暗示的に訴求する組成物として用いることができる。
【0021】
本組成物は、その形態に応じた適当な方法で摂取することができる。摂取方法は、組成物中に含まれる有効成分が循環血中に移行できるのであれば特に限定はない。例えば、経口可能な製剤、或いは注射剤、外用剤、坐剤若しくは経皮吸収剤等の非経口用製剤などの形態とすることができるが、これらに限定されない。なお、本明細書において「摂取」とは、摂取、服用、又は飲用等の全態様を含むものとして用いられる。
【0022】
本組成物は、固体状、液体状、粉末状、顆粒状、ペースト状、ムース状、ゲル状、ゼリー状、又は、タブレット状などの形態(剤形)にすることができるし、袋、容器又はカプセル等に包まれた形態にすることもできる。また、本組成物におけるL-エルゴチオネインの含有量は、L-エルゴチオネインの摂取量(成人1人1日当たりの摂取量)が例えば1mg~30mgとなるように規格することができる。
【0023】
本組成物は、その形態などに応じて、L-エルゴチオネインに加えて、任意の添加剤や成分を含有することができる。これらの添加剤及び/又は成分の例としては、ビタミンE、ビタミンC等のビタミン類、ミネラル類、栄養成分、香料などの生理活性成分の他、製剤化において配合される賦形剤、結合剤、乳化剤、緊張化剤(等張化剤)、緩衝剤、溶解補助剤、防腐剤、安定化剤、抗酸化剤、着色剤、凝固剤、又はコーティング剤等を用いることができる。但し、これらに限定されない。
【0024】
食品組成物(飲料組成物を含む)の場合は、固形、半固形又は液体などの食品とすることができ、例えば、菓子(クッキー、ゼリーなど)、パン類、魚肉加工品、畜肉加工品、麺類、スープ類、ソース類、惣菜等、飲料(乳飲料、乳酸菌飲料、清涼飲料、野菜飲料、粉末飲料、スポーツ飲料、栄養飲料など)として提供することができる。また、食品組成物は、健康食品、機能性食品、栄養補助食品、サプリメント、特定保健用食品、病者用食品・病者用組み合わせ食品又は高齢者用食品などとして提供することができる。また、本組成物は、上述したように、医薬品又は医薬部外品として提供することもできる。
【0025】
なお、本発明の一態様は、Aβによるリン酸化タウの増加を抑制するための、L-エルゴチオネインの使用である。この使用には、Aβによるタウタンパク質の過リン酸化抑制の観点から、Aβによるタウタンパク質の過リン酸化に起因する疾患の治療又は予防のための使用も含まれる。また、本発明の一態様は、Aβによるタウタンパク質の増加を抑制するための、L-エルゴチオネインの使用でもある。この使用には、タウタンパク質の凝集阻害・抑制の観点から、タウタンパク質の凝集に起因する疾患の治療又は予防のための使用も含まれる。これらの使用は、ヒト又は非ヒト動物における使用であり、治療的使用であっても非治療的使用であってもよい。ここで、「非治療的」とは、医療行為、即ち、治療による人体への処理行為を含まない概念である。
【0026】
また、本発明の別の一態様は、(i)L-エルゴチオネインを使用する、Aβによるリン酸化タウの増加を抑制する方法、又は、(ii)Aβによるリン酸化タウの増加抑制を必要とする対象に、L-エルゴチオネインを投与する方法である。これら方法には、Aβによるタウタンパク質の過リン酸化抑制の観点から、Aβによるタウタンパク質の過リン酸化に起因する疾患の治療又は予防する方法も含まれる。また、本発明の別の一態様は、(i)L-エルゴチオネインを使用する、Aβによるタウタンパク質の増加を抑制する方法、又は、(ii)Aβによるタウタンパク質の増加抑制を必要とする対象に、L-エルゴチオネインを投与する方法でもある。これら方法は、Aβによるタウタンパク質の過リン酸化抑制の観点から、Aβによるタタウタンパク質の凝集に起因する疾患の治療又は予防する方法も含まれる。
【0027】
ここで、L-エルゴチオネインは、結晶状態において下記式(1)の化学構造を有するアミノ酸の一種である。
【化1】
【0028】
L-エルゴチオネインは、溶液中において、チオール構造との互変異性体となることが知られており、熱や酸に対して安定である。また、L-エルゴチオネインは、アスコルビン酸と同様に抗酸化物質であり、生体内で合成できず外部から摂取する必要がある。本組成物に含有させるL-エルゴチオネインは、食品用途や医薬品用途での消化性、安全性、味覚等の観点から、L-エルゴチオネインを含むキノコ類や酒粕などからの抽出物を用いることが好ましい。但し、化学合成による市販品のL-エルゴチオネインを用いてもよいし、微生物を用いた発酵法によって製造されたものを用いてもよい。
【0029】
L-エルゴチオネインを抽出するキノコ類としては、タモギタケ(学名:Pleurotus cornucopiae var.citrinopileatus)、エノキタケ属(Flammulina)に属するエノキタケ(Flammulina velutipes)等、オオイチョウタケ属(Leucopaxillus)に属するオオイチョウタケ(Leucopaxillus giganteus)等、キコブタケ属(Phellinus)に属するメシマコブ(Phellinus linteus)等、キシメジ属(Tricholoma)に属するサウーバ(Tricholoma sp.)等、ササクレヒトヨタケ属(Coprinus)に属するササクレヒトヨタケ(Coprinus comatus)等、サンゴハリタケ属(Hericiaceae)に属するヤマブシタケ(Hericium erinaceum)等、シメジ属(Lyophyllum)に属するホンシメジ(Lyophyllum shimeji)等、ハタケシメジ(Lyophyllum decastes)等、ショウゲンジ属(Rozites)に属するショウゲンジ(Rozites caperata)等、スギタケ属(Pholiota)に属するナメコ(Pholiota nameko)等、ヒラタケ属(Pleurotus)に属するウスヒラタケ(Pleurotus pulmonarius)、ヒラタケ(Pleurotus ostreatus)、エリンギ(Pleurotus eryngii)等、ブナハリタケ属(Mycoleptodonoides)に属するブナハリタケ(Mycoleptodonoides aitchisonii)等、フミツキタケ属(Agrocybe)に属するヤナギマツタケ(Agrocybe cylindracea)等、及び、マイタケ属(Grifola)に属するアンニンコウ(Grifola gargal)等からなる群から少なくとも1種以上を選択することができる。特に、抽出物を長期間に亘って使用した場合の低副作用や安全性の観点から、タモギタケ、エノキタケ、オオイチョウタケ、ササクレヒトヨタケ、ヤマブシタケ、ホンシメジ、ナメコ、ヒラタケ、エリンギ、及び、ブナハリタケが好ましく、これらの中でも、タモギタケは、国内での採取が容易でもある。
【0030】
なお、L-エルゴチオネインの形態は特に限定されず、例えばそれらは塩の形態であってもよい。L-エルゴチオネインの塩としては、薬理学的に許容される塩又は飲食品に許容される塩であれば特に限定されず、酸性塩及び塩基性塩のいずれであってもよい。酸性塩として、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸塩;酢酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、シュウ酸塩、乳酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、プロピオン酸塩等の有機酸塩等が挙げられる。塩基性塩として、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩等が挙げられる。
【0031】
[本組成物の製造方法について]
本組成物の製造方法(以下、「本製造方法」と言う場合がある。)について説明する。
【0032】
本製造方法では、L-エルゴチオネインの原料としてタモギタケを用いる。本製造方法に用いるタモギタケは、天然に自生しているものでもよいし、人工栽培されたものでもよい。また、生のタモギタケを用いてもよいし、採取したタモギタケを加工したものを用いてもよい。タモギタケを加工したものとしては、乾燥させたもの、又は、乾燥後に粉末にしたものなどを用いることができる。なお、L-エルゴチオネインの原料として、タモギタケ以外のキノコ類を用いてもよい。
【0033】
本製造方法は、タモギタケの水系溶媒抽出物(例えばタモギタケエキス)を製造する抽出物製造工程を行う。タモギタケの水系溶媒抽出物は、水系溶媒によってタモギタケから抽出された成分を含有する液体状(タモギタケ濃縮液)、半固体状、若しくは固体状の物質、又は、これらの物質から選択される1又は2以上の物質の混合物である。
【0034】
抽出物製造工程では、例えば定法に従いタモギタケの水系溶媒抽出物を製造することができる。例えば、水系溶媒にタモギタケを投入し、粉砕・攪拌しながら加熱した後に、濾過などにより固液分離して液体成分を回収することにより、タモギタケの水系溶媒抽出物を製造することができる。なお、抽出物製造工程において、上述の液体成分を回収した後に、さらに限外濾過又は超音波処理などを行ってもよい。この場合、このような限外濾過物(濾液および濾物)又は超音波処理物が、本工程で最終的に得られるタモギタケの水系溶媒抽出物となる。
【0035】
また、水系溶媒は、極性溶媒に溶質を加えずにそのまま用いてもよいし、極性溶媒に予め溶質を混合又は溶解させたものを用いてもよい。溶質を混合又は溶解させた水系溶媒としては、例えば、水にクエン酸を混合または溶解させたクエン酸水溶液、水に重曹を混合または溶解させた重曹水溶液、食塩を酢酸に混合または溶解させた食塩酢酸溶液などを用いることができる。また、水系溶媒の性質は、酸性、中性又は塩基性の何れでもよい。また、水系溶媒の温度は、その機能が損なわれない限り特に限定されず、低温、常温又は高温の何れであってもよく、好適な水系溶媒として熱水を用いることができる。抽出物製造工程における熱水の温度は、例えば90℃に設定することができる。
【0036】
本製造方法について、本組成物がフリーズドライされた組成物、又はスプレードライされた組成物である場合に、抽出物製造工程後に、タモギタケの水系溶媒抽出物から、L-エルゴチオネインの乾燥物(例えば粉末)を製造する乾燥工程を行う。
【0037】
なお、抽出物製造工程又は乾燥工程の際には、必要とする純度や形状などに応じて、粉砕、精製、濃縮、乾燥、滅菌などを行ってもよい。粉砕方法としては、例えば、ロール式粉砕機などにより押しつぶす方法、フードプロセッサーなどにより切断する方法、ボールミル粉砕機などにより磨り潰す方法、ハンマー式粉砕機などにより打撃を与えて粉砕する方法などを利用することができる。精製方法としては、例えば、濾過法、蒸留法、再結晶法、再沈殿法、各種のクロマトグラフィーを用いた方法などを利用することができる。濃縮方法としては、例えば、煮沸濃縮法、エバポレーターなどによる真空濃縮(減圧濃縮)法、凍結濃縮法、逆浸透膜などを用いた膜濃縮法などを利用することができる。滅菌方法としては、例えば、オートクレーブを用いた方法、高周波法、フィルター濾過法などを利用することができる。
【実施例0038】
本実施例では、SH-SY5Y細胞(ヒトの骨髄由来の神経芽細胞腫)にAβを曝露した時に十分な細胞毒性が得られる培養条件(in vitro 実験系の培養条件)において、Aβと共にL-エルゴチオネインを添加して、ウエスタン・ブロッティングにより、リン酸化タウの発現量及びタウタンパク質の発現量をそれぞれ評価した。なお、添加するL-エルゴチオネインは、Kemprotec Limited製のものを用いた。
【0039】
[培地条件について]
<細胞毒性が得られる培養条件の確認>
図1に示すスケジュールにて、SH-SY5Y細胞の培養及び分化誘導を行い、CCK-8アッセイ(Cell Counting Kit-8)及びLDH(Lactate Dehydrogenase)アッセイにより細胞生存率及び細胞毒性を評価することにより、十分な細胞毒性が得られる培養条件であるか否か確認を行った。
【0040】
具体的に、まず96wellプレートにSH-SY5Y細胞を播種し、10%FBS(ウシ胎児血清)入りのDMEM/Ham's F-12培地(増殖培地)にてSH-SY5Y細胞を3日間増殖させた。次に、10%FBS及び10μmol/dm3レチノイン酸入りのDMEM/Ham's F-12培地(第1分化培地)に変更して、3日後に1%FBS入りのDMEM/Ham's F-12培地(第2分化培地)にさらに変更して、SH-SY5Y細胞を神経細胞様に分化させた。なお、DMEM/Ham's F-12は、ナカライテスク株式会社製のものを使用した。
【0041】
そして、分化誘導5日後(細胞播種から8日後)に、Aβを培地中に添加し、添加の3日後に、CCK-8アッセイ及びLDHアッセイにより細胞生存率及び細胞毒性を評価した。評価結果を図2に示す。なお、Aβとしては、Aβ25-35を添加した。
【0042】
図2に示すように、CCK-8アッセイでは、Aβを添加せずにSH-SY5Y細胞の培養及び分化誘導を行ったControl群と比較して、Aβの添加量が10μmol/dm3、20μmol/dm3、50μmol/dm3の何れの場合も、P値は0.01未満となり、有意な細胞数の低下が確認された。またAβの添加量が増えるほど、細胞数は低下した。すなわち、濃度依存的に細胞数は低下した。他方、LDHアッセイでは、Control群と比較して、Aβの添加量が10μmol/dm3、20μmol/dm3、50μmol/dm3の何れの場合も、有意なLDH放出量の増加が確認された。P値は、10μmol/dm3の場合に0.05未満となり、20μmol/dm3、50μmol/dm3の場合に0.01未満となった。またAβの添加量が増えるほど、LDH放出量は増加した。すなわち、濃度依存的にLDH放出量は増加した。この実験の培養条件が、細胞毒性が濃度依存的に得られる条件であることが確認された。次の実験において、この培養条件を「対象条件」と言う。
【0043】
<コリン作動性神経に分化させる培養条件の確認>
アルツハイマー病では、コリン作動性神経の脱落が特徴的なことから、コリン作動性神経に分化させたSH-SY5Y細胞を実験に用いることが好ましいとされている。ここで、SH-SY5Y細胞は、培養条件によりコリン作動性神経又はドパミン作動性神経に分化する。上記対象条件を含む3つの培養条件(表1の培養条件)の各々で培養したSH-SY5Y細胞のRNAについて、コリン作動性神経マーカー(ChAT;コリンアセチルトランスフェラーゼ)とドパミン作動性神経マーカー(TH;チロシンヒドロキシラーゼ)のそれぞれの発現を検討した。検討結果を図3に示す。なお、表1の各培養条件の実験では、増殖培地、第1分化培地(比較条件及び対象条件)、第2分化培地(対象条件)の順番(図1の順番)で培地を変更して、SH-SY5Y細胞の培養を行った。
【0044】
【表1】
【0045】
図3では、THのmRNA発現は、未分化条件と比較して、比較条件の場合に有意に増加したが、対象条件ではほとんど変化が見られなかった。一方、ChATのmRNA発現は、未分化条件及び比較条件と比較して、対象条件で有意に増加した。対象条件が、SH-SY5Y細胞をコリン作動性神経に分化させる培養条件であることが確認された。
【0046】
[エルゴチオネインを添加した試料の解析]
<第1実験>
Aβ添加(Aβ曝露)により有意な細胞生存率の低下等が確認された上記の培養条件(対象条件)において、Aβの添加量を50μmol/dm3として、L-エルゴチオネインの添加量が0.5m mol/dm3、1m mol/dm3、2m mol/dm3、5m mol/dm3の4ケースについて、リン酸化タウの発現量及びタウタンパク質の発現量を評価した。
【0047】
具体的に、図1に示すスケジュールにてSH-SY5Y細胞を培養及び分化誘導しつつ、Aβ添加の2時間前に、L-エルゴチオネインを添加し、Aβ添加の24時間後に細胞を回収した。そして、回収物を試料として、ウエスタン・ブロッティングを行った。ここで、ウエスタン・ブロッティングについて、まずポリアクリルアミド電気泳動(SDS-PAGE)を行った。次に、ポリアクリルアミド電気泳動で分離されたタンパク質を疎水性膜(メンブレン)に転写した。次に、ブロッキングを行った後に、転写後の疎水性膜に対し、標的タンパク質(リン酸化タウ、タウタンパク質、及び、βアクチン)に対する一次抗体を反応させた。そして、疎水性膜の洗浄を行った後に、一次抗体に特異的に結合する二次抗体(HRP標識二次抗体)を反応させ、化学発光により疎水性膜に転写された標的タンパク質を検出した。そして、疎水性膜におけるバンド(標的タンパク質由来バンド)の画像解析を行うことにより、バンドの強度から、標的タンパク質の発現量を取得した。
【0048】
図4に、ウエスタン・ブロッティングの解析結果として、各標的タンパク質由来バンドの画像を示す。また、図5(a)にβアクチンの発現量に対するリン酸化タウの発現量を示し、図5(b)にβアクチンの発現量に対するタウタンパク質の発現量を示す。
【0049】
まずリン酸化タウの増加抑制の効果について、図4及び図5(a)によれば、Aβを添加したケース(Aβが「+」のケース)で比較すると、L-エルゴチオネインの添加量がゼロの場合(ERGO=0)に比べて、L-エルゴチオネインを添加した4ケースは、何れもリン酸化タウの増加の抑制が確認された。特にL-エルゴチオネインの添加量が増えるに従って、リン酸化タウの増加の抑制度合いが大きくなった。L-エルゴチオネインの添加量が5m mol/dm3の場合は、Aβを添加しないケース(Aβが「-」のケース)とリン酸化タウの発現量は同程度であった。
【0050】
次にタウタンパク質の増加抑制の効果について、図4及び図5(b)によれば、Aβを添加したケース(Aβが「+」のケース)で比較すると、L-エルゴチオネインの添加量が2m mol/dm3及び5m mol/dm3のケースで、タウタンパク質の増加の抑制が確認された。この2ケースでは、L-エルゴチオネインの添加量が多い5m mol/dm3の方が、タウタンパク質の増加の抑制度合いが大きくなった。
【0051】
<第2実験>
第1実験と同じ培養条件(対象条件)において、Aβの添加量が高濃度の場合と低濃度の場合について、L-エルゴチオネインによる細胞毒性の抑制効果、及び、リン酸化タウの発現量及びタウタンパク質の発現量を評価した。なお、Aβとしては、第1実験と同様にAβ25-35を添加した。
【0052】
まずAβの添加量が高濃度の場合について説明を行う。図1に示すスケジュールにてSH-SY5Y細胞を培養及び分化誘導しつつ、分化誘導5日後(細胞播種から8日後)に、50μmol/dm3のAβを培地中に添加し、添加の3日後に、Cytotoxicityアッセイにより細胞毒性を検討した。なお、Aβ添加の2時間前に、1m mol/dm3、2m mol/dm3、5m mol/dm3の3ケースでL-エルゴチオネインの添加を行った。検討結果を図6に示す。
【0053】
図6に示すように、Aβを添加せずにSH-SY5Y細胞の培養及び分化誘導を行ったControl群と比較して、50μmol/dm3のAβの添加により有意な細胞毒性が検出された。そして、Aβを添加したケース(Aβが「+」のケース)で比較すると、L-エルゴチオネインの添加量がゼロの場合(ERGO=0)に比べて、2m mol/dm3以上のL-エルゴチオネインを添加したケースにおいて、Aβによる細胞毒性が有意に抑制された。
【0054】
また、分化誘導5日後に、50μmol/dm3のAβを培地中に添加し、Aβ添加の24時間後に細胞を回収した。そして、回収物を試料として、ウエスタン・ブロッティングを行った。なお、Aβ添加の2時間前に、0.5m mol/dm3、1m mol/dm3、2m mol/dm3、5m mol/dm3の4ケースにてL-エルゴチオネインを添加した。図7に、ウエスタン・ブロッティングの解析結果として、各標的タンパク質由来バンドの画像を示す。また、図8(a)にβアクチンの発現量に対するリン酸化タウの発現量を示し、図8(b)にβアクチンの発現量に対するタウタンパク質の発現量を示す。
【0055】
まずリン酸化タウの増加抑制の効果について、図7及び図8(a)によれば、Control群(Aβが「-」でERGO=0)と比較して、50μmol/dm3のAβの添加により有意にリン酸化タウの発現量が増加し、その発現量の増大は、L-エルゴチオネインにより濃度依存的に抑制された。また、5m mol/dm3のL-エルゴチオネインを添加したケース(ERGO=5)は、L-エルゴチオネインの添加量がゼロの場合(Aβが「+」でERGO=0)と比較して有意な抑制が見られた。
【0056】
次にタウタンパク質の増加抑制の効果について、図7及び図8(b)によれば、Control群と比較して、50μmol/dm3のAβの添加によりタウタンパク質の発現量が増加し、その発現量の増大は、L-エルゴチオネインにより濃度依存的に抑制された。
【0057】
続いて、Aβの添加量が低濃度の場合について説明を行う。図1に示すスケジュールにてSH-SY5Y細胞を培養及び分化誘導しつつ、分化誘導5日後(細胞播種から8日後)に、5μmol/dm3のAβを培地中に添加し、添加の24時間後に、Cytotoxicityアッセイにより細胞毒性を評価した。なお、Aβ添加の2時間前に、0.1m mol/dm3、0.2m mol/dm3、0.5m mol/dm3、1m mol/dm3の4ケースにてL-エルゴチオネインを添加した。また、Aβの曝露時間を24時間に決めるにあたって、Aβの曝露時間を24時間とした場合に、1~10μmol/dm3のAβに対し濃度依存的に細胞毒性が検出されることを確認している。
【0058】
図9に示すように、Aβを添加せずにSH-SY5Y細胞の培養及び分化誘導を行ったControl群と比較して、5μmol/dm3のAβの添加により有意な細胞毒性が検出された。そして、Aβを添加したケース(Aβが「+」のケース)で比較すると、L-エルゴチオネインの添加量がゼロの場合(ERGO=0)に比べて、0.5m mol/dm3以上のL-エルゴチオネインを添加したケースにおいて、Aβによる細胞毒性が有意に抑制された。
【0059】
また、分化誘導5日後に、5μmol/dm3のAβを培地中に添加し、Aβ添加の2時間後に細胞を回収した。そして、回収物を試料として、ウエスタン・ブロッティングを行った。なお、Aβ添加の2時間前に、0.5m mol/dm3のL-エルゴチオネインを添加した。図10に、ウエスタン・ブロッティングの解析結果として、各標的タンパク質由来バンドの画像を示す。また、図11(a)にβアクチンの発現量に対するリン酸化タウの発現量(抗リン酸化Tau(phospho S396)抗体を使用)を示し、図11(b)にβアクチンの発現量に対するリン酸化タウの発現量(抗リン酸化Tau(phospho S404)抗体を使用)を示し、図11(c)にβアクチンの発現量に対するタウタンパク質の発現量を示す。
【0060】
なお、Aβの曝露時間を2時間に決めるにあたって、Aβの曝露時間が2時間、8時間、24時間の3ケースについてウエスタン・ブロッティングを行い、Aβの曝露時間が2時間のケースで、Control群と比較して、リン酸化タウの発現量の増大が認められることを確認している。8時間、24時間の各ケースでは、Control群と比較して、リン酸化タウの発現量の増大が認められなかった。
【0061】
まずリン酸化タウの増加抑制の効果について、図10及び図11(a)-(b)によれば、ERGOを添加しないケース(ERGOが「-」のケース)で比較すると、Control群(Aβが「-」のケース)と比較して、5μmol/dm3のAβの添加したケース(Aβが「+」のケース)ではリン酸化タウの発現量が増加した。そして、Aβを添加したケース(Aβが「+」のケース)で比較すると、L-エルゴチオネインの添加量がゼロの場合(ERGOが「-」のケース)に比べて、0.5m mol/dm3のL-エルゴチオネインを添加したケース(ERGOが「+」のケース)では、リン酸化タウの発現量の増大が抑制された。
【0062】
同様に、図10及び図11(c)によれば、ERGOを添加しないケース(ERGOが「-」のケース)で比較すると、Control群(Aβが「-」のケース)と比較して、5μmol/dm3のAβの添加したケース(Aβが「+」のケース)ではタウタンパク質の発現量が増加した。そして、Aβを添加したケース(Aβが「+」のケース)で比較すると、L-エルゴチオネインの添加量がゼロの場合(ERGOが「-」のケース)に比べて、0.5m mol/dm3のL-エルゴチオネインを添加したケース(ERGOが「+」のケース)では、タウタンパク質の発現量の増大が抑制された。
【0063】
第1実験及び第2実験によれば、L-エルゴチオネインは、Aβによるリン酸化タウの増加、及び、Aβによるタウタンパク質の増加の何れも抑制することが確認された。特に、Aβによるリン酸化タウの増加抑制の効果は有意差が確認された(図8(a))。またAβによる細胞毒性抑制の効果についても有意差が確認された(図6図9)。
【0064】
なお、本実施例にて使用したAβ25-35は、脳などの神経細胞内に存在するAβ1-42のうち毒性を有するアミノ酸の部分配列であり、Aβ1-42と同様の変性をもたらす(毒性を有する)ことが知られている。そのため、L-エルゴチオネインは、Aβ25-35によるリン酸化タウの増加抑制及びタウタンパク質の増加抑制だけでなく、Aβ1-42によるリン酸化タウの増加抑制及びタウタンパク質の増加抑制の効果もあると言える。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、エルゴチオネインを有効成分とする組成物等に適用可能である。
図1
図2
図3
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図11