IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日光ケミカルズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-毛髪用化粧料 図1
  • 特開-毛髪用化粧料 図2
  • 特開-毛髪用化粧料 図3
  • 特開-毛髪用化粧料 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179392
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】毛髪用化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20231212BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20231212BHJP
   A61Q 5/12 20060101ALI20231212BHJP
   A61Q 5/06 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
A61K8/73
A61Q5/00
A61Q5/12
A61Q5/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093561
(22)【出願日】2023-06-06
(31)【優先権主張番号】P 2022092308
(32)【優先日】2022-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000226437
【氏名又は名称】日光ケミカルズ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】野村 沙恵佳
(72)【発明者】
【氏名】木村 和之
(72)【発明者】
【氏名】高山 俊輔
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB052
4C083AC072
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC152
4C083AC302
4C083AC422
4C083AC442
4C083AC482
4C083AC522
4C083AC532
4C083AC582
4C083AC692
4C083AC902
4C083AD092
4C083AD152
4C083AD172
4C083AD211
4C083AD212
4C083AD262
4C083AD352
4C083BB53
4C083CC31
4C083CC32
4C083CC33
4C083DD08
4C083DD31
4C083DD41
4C083EE25
4C083EE28
4C083EE29
(57)【要約】
【課題】本発明は、ヘアスタイルを保持する効果を有しつつ、ダメージを受けたことで荒れてしまった毛髪表面を整えることが可能な毛髪用化粧料を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明者はフルクタンを含有する毛髪用化粧料により、ヘアスタイルを保持しつつ、ダメージにより荒れてしまった毛髪の表面を整えることを見出し、さらにフルクタンと親水性ポリマーを併用することを見出し、毛髪用化粧料を提供する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクロースにフルクトースが重合したフルクタンをキューティクル損傷防止および/または改善剤として配合することを特徴とする毛髪用化粧料。
【請求項2】
請求項1に記載のフルクタンが主にβ(2→6)結合からなることを特徴とする毛髪用化粧料。
【請求項3】
請求項1または2に記載のフルクタンと親水性ポリマーを併用することを特徴とする毛髪用化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルクタンを配合する毛髪用化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、親水性ポリマーは化粧品の増粘剤、皮膜形成剤、保護コロイド剤、保湿剤などとして使用されており、化粧品の機能性を決める重要な成分の一つである。 近年、環境負荷低減などの社会課題により、バイオポリマーを化粧品原料として利用する機会が増えている。
【0003】
フルクタンはスクロースにフルクトースがβ(2→1)結合やβ(2→6)結合で重合した多糖の総称である。そのうち主に植物が合成するβ(2→1)結合型はイヌリンと呼ばれ、主に微生物が合成するβ(2→6)結合型はレバンと言われている(非特許文献1)。糖類の重合体という特性から、レバンは増粘作用(特許文献1)や保湿作用(特許文献2)、美白作用(特許文献3)、ヒアルロン酸産生(特許文献4)、フィルム形成剤(特許文献5)などに有用であることが報告されている。このように、皮膚に対する効果については多く報告があるものの、毛髪への作用については保湿剤・感触向上剤(特許文献6、7)として使用されるに留まっている。また、本出願人はレバンを含有することを特徴とするフィルム形成剤により、皮膚表面上にフィルムを形成する化粧料を出願している(特願2021-175829)。
【0004】
毛髪を綺麗に保つことへの関心は男女問わず多く、近年では髪の外観を綺麗に見せるために化学処理により毛髪の色を変化させるカラーリングや毛髪の形状を変化させるパーマ、ストレートパーマ、縮毛矯正、ヘアアレンジ器具(ドライヤー、ヘアアイロンなど)によるスタイリングなどのヘアアレンジ処理が広く行われている。そのため、ヘアスタイリング時にはセット性の向上やヘアスタイルの持続性を目的にヘアスタイリング剤を使用することが一般的となっている。一方で、これら処理は毛髪にダメージを与え、毛髪表面のキューティクルが荒れる等の損傷に繋がるため、ヘアコンディショニング効果をもつヘアスタイリング剤を求める消費者が増えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-275440号公報
【特許文献2】特開2018-203628号公報
【特許文献3】特開2006―052146号公報
【特許文献4】特開2019―006725号公報
【特許文献5】特願2021-175839号公報
【特許文献6】特開2021-050193号公報
【特許文献7】特開2021―024807号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Rastall R.A. Annu Rev Food Sci Technol 1巻 p305-339(2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ヘアスタイルを保持させつつ、ダメージを受けたことで荒れてしまった毛髪表面を整えることが可能な毛髪用化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、フルクタンをキューティクル損傷防止および/または改善剤として配合することでヘアスタイルを保持させ、なおかつ毛髪表面を整えることを見出し、さらに親水性ポリマーをフルクタンと併用することによりカール保持力や毛髪のコンディショニング効果を高めることを見出し、本発明を達成するに至った。
【発明の効果】
【0009】
本発明のフルクタンを含有する毛髪用化粧料により、ヘアスタイルを保持する効果を有し、キューティクル損傷防止および/または改善剤として配合することでダメージを受けたことで荒れてしまった毛髪表面を整えることができる毛髪用化粧料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、比較品及び本発明品1~3を塗布したカール保持力試験の結果を示す。
図2図2は、比較品及び本発明品1を処理した毛髪表面状態の写真である。
図3図3は、比較品及び本発明品1、4~6を塗布したカール保持力試験の結果を示す。
図4図4は、比較品および本発明品7~10を塗布した毛髪の官能評価の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の毛髪用化粧料は、フルクタンを含有するものである。本発明のフルクタンは、イヌリンまたはレバンであり、枯草菌を利用して合成されるが特に菌種に限定するものではなく、Bacillus polymyx,Aerobacter levanicum,Streptococcus sp,Pseudomonas sp,Corynebacterium laevaniformans,Zymomonas mobilisなどであってもよい。さらに合成に利用する生物種においても限定するものではなく、遺伝子改変した植物などであってもよい。
【0012】
本発明におけるフルクタンは、特に限定されるものではないが、毛髪用化粧料中の配合量としては、0.001~20.0質量%であり、好ましくは、0.001~15.0質量%であり、より好ましくは0.001~10.0質量%である。0.001質量%未満ではキューティクル損傷防止および/または改善効果が十分に発揮されない場合があり、また、20質量%を超えるとューティクル損傷防止および/または改善効果が十分に発揮されない場合がある。
【0013】
本発明における親水性ポリマーとしては、例えば、キサンタンガム、セルロースおよびセルロース誘導体、デンプンおよびデンプン誘導体、キトサン、プルラン、ゼラチン、コラーゲン、アルギン酸、ペクチン、カンテン、アガロース、カラギーナン、天然ガムおよびこれらのコポリマーを挙げることができ、中でも、キサンタンガム、セルロースおよびセルロース誘導体が好ましく、セルロース誘導体がより好ましい。本発明において、これらを1種または2種以上用いることができる。
【0014】
本発明における親水性ポリマーの毛髪用化粧料中の配合量としては、0.001~20.0質量%であり、好ましくは、0.001~15.0質量%であり、より好ましくは0.001~10.0質量%である。
【0015】
本発明にかかわるフルクタンの使用用途は、特に限定されるものではないが、例えば、ヘアクリーム、ヘアミルク、ヘアリキッド、ヘアローション、ヘアトニック、ヘアコンディショナー、ヘアリンス、ヘアトリートメント、ヘアシャンプー、ヘアムース、セットジェル、ポマード、チック、セットローションなどの毛髪用化粧料が挙げられる。
【実施例0016】
実施例1.カール保持力試験
1、 実験方法
健常人毛(ビューラックス社製) の毛束を20℃、40%湿度で一定になった恒温恒湿条件下に一晩静置させた。その後、市販のヘアアイロンを用いてカール毛束を作製し、表1に示す毛髪用化粧料をそれぞれ塗布した。軽く馴染ませた後、各毛束を吊るし、設置直後、1時間後、2時間後、3時間後、4時間後、5時間後、6時間後、8時間後、24時間後の毛束の長さを記録した。下記の式に従って、カールを作製する前の毛束の長さ(L0)、設置直後の毛束の長さ(L1)、一定時間経過後に記録した毛束の長さ(Ln)よりカール保持力を算出した。
カール保持力 [%]:(L0―Ln)/(L0―L1)×100
【0017】
【表1】
【0018】
2、 結果
結果を図1に示した。本発明品をカール毛束に塗布する事でカール保持力が向上する事が確認された。さらに、その効果は24時間経過後も発揮している事が確認された。
【0019】
実施例2.毛髪表面観察
1、 実験方法
健常人毛(ビューラックス社製) の毛束を過酸化水素水とアンモニア水溶液を用いてブリーチ処理を行い、損傷毛髪の毛束を作製した。作製した損傷毛髪毛束に表1に示す各毛髪用化粧料を塗布し、全体を馴染ませた後、自然乾燥させた。処理して得られた毛髪毛束の表面を走査電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製、Miniscope TM4000 Plus)を用いて観察した。
【0020】
2、結果
観察した結果を図2に示す。比較品はキューティクルが毛羽立ち、毛髪表面が荒れている。一方で本発明品を塗布した毛髪は、表面が滑らかで整っており、キューティクルの損傷改善効果が顕著であることが確認された。
【0021】
実施例3.カール保持力試験
1、実験方法
健常人毛(ビューラックス社製)の毛束に、表2に示す毛髪化粧料を塗布した後、直径17mmのカールロッドを用いて毛束を巻いて、室温にて12時間乾燥した。毛束をカールロッドから外した後、30℃、90%湿度で一定になった恒温恒湿条件下に静置させた。その直後、1時間後、2時間後、4時間後、6時間後、8時間後、24時間後の毛束の長さを記録した。下記の式に従って、カールを作製する前の毛束の長さ(L0)、設置直後の毛束の長さ(L1)、一定時間経過後に記録した毛束の長さ(Ln)よりカール保持力を算出した。
カール保持力 [%]:(L0―Ln)/(L0―L1)×100
【0022】
【表2】
【0023】
2、結果
結果を図3に示した。レバンとセルロースガムを併用した発明品6をカール毛束に塗布する事でレバン、セルロースガム単独よりもカール保持力が向上する事が確認された。さらに、その効果はPVPやPVP/VAと同等であることを示した。
【0024】
実施例4.毛髪の使用感評価
1、実験方法
ブリーチ処理を2回施した健常人毛(ビューラックス社製)の毛束に、表3に示す毛髪化粧料を塗布した後、12時間室温にて乾燥した。その後、一般パネル30名により、シェッフェの一対比較(中屋の変法)を用いた、毛髪の滑り性、固さ、及び保水性に関する官能評価を実施した。
【0025】
【表3】
【0026】
2、結果
結果を図4に示した。レバンとセルロースガムを併用することにより、滑り性及び保水性は、PVPやPVP/VAの感触に類似する事が確認された。毛髪の固さは、PVP及びPVP/VAと比べて、柔らかさを維持していることが示された。
【0027】
以下に、本発明品の毛髪用化粧料例を示す。配合量は質量%である。実施例5~8は、いずれも実施例1~4に記載の方法で効果を確認し、優れたカール保持力とキューティクルの損傷防止および/または改善効果が認められた。
【0028】
実施例5.ヘアスタイリングミスト
(処方)
A相 プロパンジオール 5.00
フェノキシエタノール 0.50
クエン酸 0.01
クエン酸ナトリウム 0.05
水 残量
B相 レバン 1.00
水 10.00
C相 エタノール 3.00
合計 100.00
(調製方法)A相を80℃下で加温し、均一溶解させ、35℃以下まで冷却する。B相を均一になるまで撹拌する。A相にB相及びC相を添加し、均一になるまで撹拌する。
(結果)調製後、カール毛束及び損傷毛髪に塗布したところ、優れたカール保持力とキューティクルを整える様子が確認された。
【0029】
実施例6.セットジェル
(処方)
A相 カルボマー 0.60
BG 3.00
EDTA-2Na 0.10
水 残量
B相 TEA 0.60
水 2.35
Uvinul MS40 0.05
C相 レバン 10.00
水 14.00
D相 メチルパラベン 0.10
エタノール 10.00
合計 100.00
(使用原料)Uvinul MS40:オキシベンゾンー4、BASF社製
(調製方法)A、B、C、D相をそれぞれ均一になるまで撹拌する。A相を撹拌しているところにB、C、D相の順に添加し、均一になるまで混合する。
(結果)調製後、カール毛束及び損傷毛髪に塗布したところ、優れたカール保持力とキューティクルを整える様子が確認された。
【0030】
実施例7.ヘアトリートメントミルク
(処方)
A相 セタノール 2.00
ミリスチルアルコール 0.40
NIKKOL CA-2450 2.80
NIKKOL SS-10V 0.50
NIKKOL セラキルアルコールV 0.50
グリセリン 2.00
BG 3.00
KF-995 3.00
XF49-B7082 8.00
B相 フェノキシエタノール 0.40
水 残量
C相 レバン 0.03
CEKOL(登録商標) 150 0.01
水 10.00
合計 100.00
(使用原料)
NIKKOL CA-2450:ステアルトリモニウムクロリド、エタノール、水、日光ケミカルズ社製
NIKKOL SS-10V:ステアリン酸ソルビタン、日光ケミカルズ社製
NIKKOL セラキルアルコールV:オレイルグリセリル、日光ケミカルズ社製
KF-995:シクロペンタシロキサン、信越化学工業社製
XF49-B7082:ジメチコン、シクロペンタシロキサン、Momentive Performance Materials社製
CEKOL(登録商標) 150:セルロースガム、CP Kelco社製
(調製方法)A、B相を80℃下で加温し、均一溶解させる。A相を撹拌しているところにB相を添加し、均一になるまで混合する。撹拌しながら冷却し、35℃になったところでC相を添加し、均一になるまで混合する。
(結果)調製後、カール毛束及び損傷毛髪に塗布したところ、優れたカール保持力とキューティクルを整える様子が確認された。
【0031】
実施例8.ヘアクリーム
(処方)
A相 グリセリン 5.00
フェノキシエタノール 0.40
クエン酸 0.05
アルギニン 0.75
水 残量
B相 NIKKOL ピュアフォスα 1.50
セタノール 5.00
KF-995 30.00
C相 レバン 0.75
CEKOL(登録商標) 150 0.05
ケルトロール 0.20
水 10.00
D相 香料 0.50
合計 100.00
(使用原料)
NIKKOL ピュアフォス α:リン酸セチル、日光ケミカルズ社製
KF-995:シクロペンタシロキサン、信越化学工業社製
CEKOL(登録商標) 150:セルロースガム、CP Kelco社製
ケルトロール:キサンタンガム、CP Kelco社製
(調製方法)A、B相を80℃下で加温し、均一溶解させる。A相にB相を添加し、均一になるまで撹拌する。撹拌しながら冷却し、35℃になったところでC相及びD相を添加し、均一になるまで混合する。
(結果)調製後、カール毛束及び損傷毛髪に塗布したところ、優れたカール保持力とキューティクルを整える様子が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明のフルクタンを含有する毛髪用化粧料により、ヘアスタイルを保持する効果を有しつつ、ダメージにより荒れてしまった毛髪表面を整える、すなわち、キューティクル損傷防止および/または改善効果のある毛髪用化粧料の提供が可能となる。
図1
図2
図3
図4