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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179401
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】金属イオン電池用電気活性材料
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/00 20170101AFI20231212BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20231212BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20231212BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20231212BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20231212BHJP
   C01B 33/02 20060101ALN20231212BHJP
【FI】
C01B32/00
H01M4/38 Z
H01M4/36 A
H01M4/587
H01M4/36 E
H01M4/134
C01B33/02 D
C01B33/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】52
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023122409
(22)【出願日】2023-07-27
(62)【分割の表示】P 2022553630の分割
【原出願日】2021-08-03
(31)【優先権主張番号】2012062.2
(32)【優先日】2020-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】17/024,383
(32)【優先日】2020-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】2104452.4
(32)【優先日】2021-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】509040226
【氏名又は名称】ネグゼオン・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Nexeon Ltd
【住所又は居所原語表記】136 Eastern Avenue, Milton Park, Abingdon, Oxfordshire OX14 4SB, United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】メイソン,チャールズ エー.
(72)【発明者】
【氏名】テイラー,リチャード
(72)【発明者】
【氏名】フレンド,クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ウィッタム,ジョシュア
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン,マルクス
(57)【要約】      (修正有)
【課題】再充電可能な金属イオン電池におけるアノード活性材料としての使用に適した、高い電気化学的容量を有する粒子材料を提供する。
【解決手段】複数の複合粒子からなる粒子状電気活性材料を提供する。前記複合粒子は、(a)0.5から1.5cm3/gの全体積を有するミクロポアおよびメソポアを含む多孔質炭素骨格と、(b)ミクロポアおよびメソポアの体積に対して、規定量の多孔質炭素骨格の少なくともミクロポア内に配置されたシリコンと、を有する。シリコンの少なくとも20質量%は、熱重量分析により表面シリコンとして特徴付けられる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の複合粒子からなる粒子材料であって、
前記複合粒子は、
(a)ミクロポアおよびメソポアを含む多孔質炭素骨格であって、
前記ミクロポアおよびメソポアは、ガス吸着法により測定される全ポア体積P1cm3/gを有し、ここで、P1は、0.5から1.5の値を有する数を表し、
PD90ポア直径は、少なくとも3nm、12nm未満であり、
P1に基づくミクロポア体積割合は、0.43から0.85である、多孔質炭素骨格と、
(b)前記多孔質炭素骨格のポア内に配置された複数のナノスケールの元素シリコンドメインと、
を有し、
前記粒子材料は、25から65質量%のシリコンを含み、
前記シリコンの少なくとも20質量%は、熱重量分析(TGA)法により測定される表面シリコンである、粒子材料。
【請求項2】
P1は、少なくとも0.55、少なくとも0.6、少なくとも0.65、少なくとも0.7、または少なくとも0.75の値を有する、請求項1に記載の粒子材料。
【請求項3】
P1は、1.4以下、1.3以下、1.2以下、1.1以下、1以下、または0.95以下の値を有する、請求項1または2に記載の粒子材料。
【請求項4】
前記多孔質炭素骨格のPD90ポア直径は、10nm以下、8nm以下、または6nm以下である、請求項1乃至3のいずれか一つに記載の粒子材料。
【請求項5】
前記多孔質炭素骨格のPD90ポア直径は、少なくとも3.2nm、少なくとも3.5nm、少なくとも3.8nm、または少なくとも4nmである、請求項1乃至4のいずれか一つに記載の粒子材料。
【請求項6】
前記多孔質炭素骨格のPD75ポア直径は、10nm以下、8nm以下、6nm以下、または4nm以下である、請求項1乃至5のいずれか一つに記載の粒子材料。
【請求項7】
前記多孔質炭素骨格のPD50ポア直径は、2nm以下、1.9nm以下、1.8nm以下、1.7nm以下、または1.6nm以下である、請求項1乃至6のいずれか一つに記載の粒子材料。
【請求項8】
前記多孔質炭素骨格のPD50ポア直径は、少なくとも1nm、少なくとも1.1nm、または少なくとも1.2nmである、請求項1乃至7のいずれか一つに記載の粒子材料。
【請求項9】
前記多孔質炭素骨格のPD30ポア直径は、1.6nm以下、1.5nm以下、1.4nm以下、1.3nm以下、1.2nm以下、1.1nm以下、または1nm以下である、請求項1乃至8のいずれか一つに記載の粒子材料。
【請求項10】
前記多孔質炭素骨格のPD30ポア直径は、少なくとも0.6nm、または少なくとも0.7nmである、請求項1乃至9のいずれか一つに記載の粒子材料。
【請求項11】
前記多孔質炭素骨格の前記ミクロポア体積割合は、前記ミクロポアおよびメソポアの全体積を基準にして、少なくとも0.45、少なくとも0.48、少なくとも0.5、少なくとも0.52、少なくとも0.54、少なくとも0.56、少なくとも0.58、または少なくとも0.6である、請求項1乃至10のいずれか一つに記載の粒子材料。
【請求項12】
前記多孔質炭素骨格の前記ミクロポア体積割合は、前記ミクロポアおよびメソポアの全体積を基準にして、0.8以下、0.79以下、0.78以下、0.76以下、0.74以下、0.72以下、または0.7以下である、請求項1乃至11のいずれか一つに記載の粒子材料。
【請求項13】
前記多孔質炭素骨格内のミクロポアの全容積は、少なくとも0.36cm3/g、少なくとも0.38cm3/g、少なくとも0.40cm3/g、または少なくとも0.42cm3/gである、請求項1乃至12のいずれか一つに記載の粒子材料。
【請求項14】
5nm以下のポアサイズを有するポアの体積割合は、少なくとも0.8、少なくとも0.82、少なくとも0.84、少なくとも0.86、少なくとも0.88、または少なくとも0.9である、請求項1乃至13のいずれか一つに記載の粒子材料。
【請求項15】
10nm以下のポア直径を有するポアの体積割合は、少なくとも0.9、少なくとも0.92、少なくとも0.94、または少なくとも0.96である、請求項1乃至14のいずれか一つに記載の粒子材料。
【請求項16】
20nm以下のポアサイズを有するポアの体積割合は、少なくとも0.94、少なくとも0.96、または少なくとも0.98である、請求項1乃至15のいずれか一つに記載の粒子材料。
【請求項17】
前記多孔質炭素骨格は、二峰性または多峰性のポアサイズ分布を有する、請求項1乃至16のいずれか一つに記載の粒子材料。
【請求項18】
50nm超から100nmの範囲の直径を有するポアの全容積は、P2cm3/gとして定められ、
ここで、P2は、0.2×P1以下、0.1×P1以下、0.05×P1以下、0.02×P1以下、0.01×P1以下、または0.005×P1以下である、請求項1乃至17のいずれか一つに記載の粒子材料。
【請求項19】
前記多孔質炭素骨格は、1200から3000m2/gのBET表面積を有する、請求項1乃至18のいずれか一つに記載の粒子材料。
【請求項20】
少なくとも26重量%、少なくとも28重量%、少なくとも30重量%、少なくとも32重量%のシリコン、少なくとも34重量%のシリコン、少なくとも36重量%のシリコン、少なくとも38重量%のシリコン、少なくとも40重量%のシリコン、少なくとも42重量%のシリコン、または少なくとも44重量%のシリコンを含む、請求項1乃至19のいずれか一つに記載の粒子材料。
【請求項21】
60重量%以下のシリコン、58重量%以下のシリコン、56重量%以下のシリコン、54重量%以下のシリコン、52重量%以下のシリコン、または50重量%以下のシリコンを含む、請求項1乃至20のいずれか一つに記載の粒子材料。
【請求項22】
前記多孔質炭素骨格は、蒸気活性化多孔質炭素骨格である、請求項1乃至21のいずれか一つに記載の粒子材料。
【請求項23】
前記多孔質炭素骨格は、少なくとも80質量%の炭素、少なくとも90質量%の炭素、少なくとも95質量%の炭素、少なくとも98質量%の炭素、または少なくとも99質量%の炭素を含む、請求項1乃至22のいずれか一つに記載の粒子材料。
【請求項24】
前記多孔質炭素骨格に対するシリコンの重量比は、少なくとも0.50×P1、少なくとも0.55×P1、少なくとも0.6×P1、少なくとも0.65×P1、少なくとも0.7×P1、少なくとも0.75×P1、少なくとも0.8×P1、少なくとも0.85×P1、少なくとも0.9×P1、少なくとも0.95×P1、または少なくとも1×P1である、請求項1乃至23のいずれか一つに記載の粒子材料。
【請求項25】
前記多孔質炭素骨格に対するシリコンの重量比は、1.9×P1以下、1.85×P1以下、1.8×P1以下、1.75×P1以下、1.7×P1以下、1.65×P1以下、1.6×P1以下、1.55×P1以下、または1.5×P1以下である、請求項1乃至24のいずれか一つに記載の粒子材料。
【請求項26】
前記シリコンの少なくとも22重量%、少なくとも25重量%、少なくとも30重量%、少なくとも35重量%、少なくとも40重量%、または少なくとも45重量%は、熱重量分析(TGA)により測定される表面シリコンである、請求項1乃至25のいずれか一つに記載の粒子材料。
【請求項27】
前記シリコンの10重量%以下、前記シリコンの8重量%以下、前記シリコンの6重量%以下、5重量%以下、4重量%以下、3重量%以下、2重量%以下、または1.5重量%以下は、熱重量分析(TGA)により測定される粗大バルクシリコンである、請求項1乃至26のいずれか一つに記載の粒子材料。
【請求項28】
前記ミクロポアおよび/またはメソポアの少なくとも一部は、前記シリコンにより完全に封止されたボイド空間を有する、請求項1乃至27のいずれか一つに記載の粒子材料。
【請求項29】
前記複合粒子は、1から30μmの範囲のD50粒子直径を有する、請求項1乃至28のいずれか一つに記載の粒子材料。
【請求項30】
前記複合粒子は、少なくとも0.5μm、少なくとも0.8μm、少なくとも1μm、少なくとも1.5μm、または少なくとも2μmのD10粒子直径を有する、請求項1乃至29のいずれか一つに記載の粒子材料。
【請求項31】
前記複合粒子は、50μm以下、40μm以下、30μm以下、25μm以下、20μm以下、または15μm以下のD90粒子直径を有する、請求項1乃至30のいずれか一つに記載の粒子材料。
【請求項32】
前記複合粒子は、100m2/g以下、80m2/g以下、60m2/g以下、50m2/g以下、40m2/g以下、30m2/g以下、25m2/g以下、20m2/g以下、15m2/g以下、または10m2/g以下のBET表面積を有する、請求項1乃至31のいずれか一つに記載の粒子材料。
【請求項33】
前記複合粒子は、少なくとも0.1m2/g、少なくとも1m2/g、少なくとも2m2/g、または少なくとも5m2/gのBET表面積を有する、請求項1乃至32のいずれか一つに記載の粒子材料。
【請求項34】
窒素ガス吸着法により測定されるシリコンの存在下において、前記複合粒子のミクロポアおよびメソポアの体積は、0.15×P1以下、0.10×P1以下、0.05×P1以下、または0.02×P1以下である、請求項1乃至33のいずれか一つに記載の粒子材料。
【請求項35】
前記複合粒子は、多孔質炭素骨格の前記ポア構造に対するシリコン含有前駆体の化学気相浸透(CVI)により得られる、請求項1乃至34のいずれか一つに記載の粒子材料。
【請求項36】
請求項1乃至35のいずれか一つに記載の粒子材料と、少なくとも1つの他の成分とを含む、組成物。
【請求項37】
少なくとも1つの追加の粒子状電気活性材料を有する、請求項36に記載の組成物。
【請求項38】
前記少なくとも1つの追加の粒子状電気活性材料を20から70重量%、25から65重量%、または30から60重量%を含む、請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
当該組成物の全乾燥重量を基準にして、請求項1から35のいずれか一つに記載の粒子材料を15から60重量%、20から50重量%、または30から50重量%を含む、請求項37または38に記載の組成物。
【請求項40】
前記少なくとも1つの追加の粒子状電気活性材料は、グラファイト、硬質炭素、シリコン、スズ、ゲルマニウム、アルミニウム、および鉛から選択される、請求項37乃至39のいずれか一つに記載の組成物。
【請求項41】
当該組成物は、追加の粒子状電気活性材料を実質的に含まない、請求項36に記載の組成物。
【請求項42】
当該組成物の全乾燥重量を基準として、請求項1乃至35のいずれか一つに記載の粒子材料を、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、または少なくとも90重量%を含む、請求項41に記載の組成物。
【請求項43】
バインダを含む、請求項36乃至42のいずれか一つに記載の組成物。
【請求項44】
当該組成物の全乾燥重量を基準にして、前記バインダを、0.5から20重量%、1から15重量%、2から10重量%、または5から10重量%を含む、請求項43に記載の組成物。
【請求項45】
1または2以上の導電性添加剤を含む、請求項36乃至44のいずれか一つに記載の組成物。
【請求項46】
当該組成物の全乾燥重量を基準にして、前記1または2以上の導電性添加剤を、0.5から20重量%、1から15重量%、2から10重量%、または5から10重量%を含む、請求項45に記載の組成物。
【請求項47】
集電体と電気的に接触する、請求項1乃至35のいずれか一つに記載の粒子材料を有する、電極。
【請求項48】
前記粒子材料は、請求項36乃至46のいずれか一つに記載の組成物の形態である、請求項47に記載の電極。
【請求項49】
再充電可能な金属イオン電池であって、
(i)請求項47または48に記載の電極を有するアノードと、
(ii)金属イオンを放出し再吸収することができるカソード活性材料を含むカソードと、
(iii)前記アノードと前記カソードの間の電解質と、
を有する、金属イオン電池。
【請求項50】
複合粒子を調製する方法であって、
(a)ミクロポアおよび/またはメソポアを含む複数の多孔質炭素粒子を提供するステップであって、
(i)前記ミクロポアおよびメソポアは、ガス吸着法により測定される全ポア体積P1cm3/gを有し、ここで、P1は、0.5から1.5の値を有する数を表し、
(ii)PD90ポア直径は、少なくとも3nm、12nm未満であり、
(iii)P1に基づくミクロポア体積割合は、0.43から0.85である、ステップと、
(b)400から700℃の温度で、0.5から20vol%のシリコン前駆体ガスを含むガスに前記複数の多孔質炭素粒子を接触させ、前記多孔質炭素粒子のポアにシリコンを堆積させるステップと、
を有する、方法。
【請求項51】
複合粒子を調製する方法であって、
(a)ミクロポアおよび/またはメソポアを含む複数の多孔質炭素粒子を提供するステップであって、
(i)前記ミクロポアおよびメソポアは、ガス吸着法により測定される全ポア体積P1cm3/gを有し、ここで、P1は、0.5から1.5の値を有する数を表し、
(ii)PD90ポア直径は、少なくとも3nm、12nm未満であり、
(iii)P1に基づくミクロポア体積割合は、0.43から0.85である、ステップと、
(b)400から700℃の温度で、前記複数の多孔質炭素粒子を、シリコン前駆体ガスを含むガスと接触させ、前記多孔質炭素粒子のポアにシリコンを堆積させるステップであって、前記シリコン前駆体ガスの分圧は、0.5から20kPaである、ステップと、
を有する、方法。
【請求項52】
前記複合粒子は、請求項1乃至35のいずれか一つに記載のものである、請求項50または51に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般に、再充電可能な金属イオン電池の電極での使用に適した電気活性材料に関し、より詳細には、再充電可能な金属イオン電池におけるアノード活性材料としての使用に適した、高い電気化学的容量を有する粒子材料に関する。
【背景技術】
【0002】
再充電可能な金属イオン電池は、携帯電話およびノートパソコンのような携帯電子機器に広く使用されており、電気自動車またはハイブリッド自動車における応用が増大している。再充電可能な金属イオン電池は、一般に、電気活性材料の層を備えた金属集電体の形態のアノードを有する。ここでは、電池の充電および放電の間、金属イオンを挿入および放出することができる材料として定められる。「カソード」および「アノード」と言う用語は、電池が負荷にわたって配置された際に、アノードが負極となるという意味で使用される。金属イオン電池が充電されると、金属イオンは、金属イオン含有カソード層から、電解質を介してアノードに輸送され、アノード材料に挿入される。「電池」という用語は、単一のアノードおよび単一のカソードを含むデバイス、ならびに複数のアノードおよび/または複数のカソードを含むデバイスの両方を表すように使用される。
【0003】
再充電可能な金属イオン電池の重量容量および/または体積容量を改善することに関心がある。今日まで、市販のリチウムイオン電池は、主に、アノード活性材料としてグラファイトを使用することに限定されてきた。グラファイトアノードが充電された際に、リチウムは、グラファイト層の間にインターカレーションされ、経験式LixC6を有する材料が形成される(ここで、xは0より大きく、1以下である)。その結果、グラファイトは、リチウムイオン電池において、372mAh/gの最大理論容量を有するが、実際の容量は、幾分低くなる(約340から360mAh/g)。シリコン、スズおよびゲルマニウムのような他の材料は、グラファイトよりも有意に高い容量で、リチウムをインターカレーションすることができるが、多数の充電/放電サイクルにわたって十分な容量を維持することは難しいため、商業的には広く使用されていない。
【0004】
特に、シリコンは、極めて高いリチウムの容量のため、高い重量容量および体積容量を有する再充電可能な金属イオン電池の製造用のグラファイトに代わる有望な代替材として同定されている(例えば、Adv.Mater.1998,10,No.10におけるWinter,M.らの「再充電可能なリチウム電池の挿入電極材料」を参照)。室温では、シリコンは、約3,600 mAh/g(Li15Si4ベース)のリチウムイオン電池における理論的最大比容量を有する。しかし、リチウムがバルクシリコンにインターカレーションされると、シリコンが最大容量までリチウム化された際に、シリコン材料の体積は、元の体積の400%まで大きく増加する。繰り返される充放電サイクルにより、シリコン材料には大きな機械的応力が生じ、その結果、シリコンアノード材料が破損され、剥離される。脱リチウム化時のシリコン粒子の体積収縮の結果、アノード材料と集電体との間の電気的接触が喪失する。さらなる問題は、シリコン表面上に形成される固体電解質界面(SEI)層が、シリコンの膨張および収縮に適応する上で、十分な機械的許容度を有しないことである。その結果、新たに露出したシリコン表面により、さらなる電解質分解が生じ、SEI層の厚さの増加、およびリチウムの不可逆的消費が生じる。これらの不具合機構は、全体として、一連の充放電サイクルにわたって、許容できない電気化学的容量の損失につながる。
【0005】
シリコン含有アノードを充電する際に観測される体積変化に関連する問題を克服するため、多くのアプローチが提案されてきた。シリコン膜およびシリコンナノ粒子のような、断面が約150nm以下の微細シリコン構造は、ミクロンサイズのシリコン粒子と比較して、充放電時の体積変化に対する耐性が高いことが報告されている。しかしながら、これらのいずれも、その未改質形態での商業規模の用途には適しておらず、ナノスケール粒子は、調製および取扱いが難しく、シリコン膜は、十分なバルク容量を提供しない。
【0006】
国際公開第第2007/083155号には、高いアスペクト比を有するシリコン粒子、すなわち、粒子の最小寸法に対する最大寸法の比が高いシリコン粒子により、改善された容量保持が得られることが開示されている。そのような粒子の小さな断面は、充放電時の体積変化による、材料に対する構造応力を低減する。しかしながら、そのような粒子は、製造が難しく、コストがかかり、壊れやすくなる。また、大きな表面積では、SEIが過剰に形成されることとなり、第1の充放電サイクルにおいて、過剰な容量ロスが生じ得る。
【0007】
また、一般的な知見において、シリコンのような電気活性材料は、活性炭材料のような多孔質キャリア材料の孔内に成膜され得ることが知られている。これらの複合材料は、ナノ粒子の取扱いの困難さを回避しつつ、ナノスケールシリコン粒子の有益な充放電特性の一部を提供する。Guoら(Journal of Materials Chemistry A,2013,pp.14075-14079)には、シリコン-炭素複合材料が開示され、多孔質炭素基板により、導電性骨格が提供され、シリコンナノ粒子は、均一な分布を有する基板のポア構造内に堆積される。複合材料は、複数回の充電サイクルにわたって改善された容量保持を有するが、mAh/g単位の複合材料の初期容量は、シリコンナノ粒子の場合、より低下することが示されている。
【0008】
JP 2003100284号には、少数の大きな孔から分岐した小さな孔を有する、炭素ベースの足場を有する活性材料が開示されている。電気的に活性な材料(例えば、シリコン)は、大きな孔と小さな孔の両方の壁、および炭素ベースの足場の外表面上に、無秩序に配置される。
【0009】
シリコンサブ酸化物材料(例えば、0<x<2のSiOx)は、活性材料として主にグラファイトを含む「ハイブリッド」電極に使用される。しかしながら、第1の充電サイクル中のリチウム化時のSiOxの膨張、および比較的高い不可逆的なリチウム損失のため、SiOxの最大充填量は、通常、電極中の全電気活性材料の約10重量%である。従って、酸化ケイ素と同等のリチウム化容量を有し、第1の充電サイクルの間の膨張を抑制し、容量損失を低減する、高い容量の電極材料に対してニーズがある。
【0010】
電極材料の望ましい膨張特性は、他の重要な特性と共に得られる必要がある。特に、商業的に実現可能な代替電極材料は、多数の充放電サイクルにわたる高い容量保持と共に、高いリチウム化容量の利点を提供する必要がある。また、任意の新しい電気活性材料は、従来の電極製造プロセスにおいて、既知の材料と容易に置換できることが重要である。これらのプロセスは、通常、電極層を高密度化し、電池設計内での空間利用を改善するため、電極材料を集電体にカレンダ化することに依存する。多孔質材料は、電極製造中に破損しやすく、その結果、電気化学的特性が損なわれる。従って、新たな電気化学物質には、電気化学的貯蔵容量の増加および可逆的な容量保持と共に、十分な構造的強度を有することが特に必要となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者らは、シリコンおよび多孔質炭素を含む複合材料の特性は、多孔質炭素骨格のポア構造、シリコンの量、および多孔質炭素骨格全体にわたって分布する方法に依存することを見出した。さらに、これらの複合材料の特性は、シリコンの位置、その特徴的な長さスケール、および表面機能に依存することが確認された。
【0012】
一般的な用語では、材料の表面の原子は、材料のバルク中の原子とは異なる結合相互作用の組を有することが知られており、この差は、通常、材料の表面エネルギーの観点から説明される。化学気相含浸法(CVI)によって成膜されたシリコンの場合、表面でのシリコン原子の自由価は、通常、ヒドリド基を搬送する。このヒドリド終端されたシリコン表面が空気に接近しやすい場合、これは、酸素と反応して自然酸化物表面を形成する。しかし、空気に接近できない表面は、ヒドリド-末終端化形態のままとなる。
【0013】
自然酸化物層のないヒドリド終端化表面シリコンの比率が高い複合材料では、電気活性材料として改善された特性が提供されることがわかった。このヒドリド終端化表面シリコンの量は、熱重量分析(TGA)を用いて定量できる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の態様では、本発明により、
複数の複合粒子からなる粒子材料であって、
前記複合粒子は、
(a)ミクロポアおよびメソポアを含む多孔質炭素骨格であって、
前記ミクロポアおよびメソポアは、ガス吸着法により測定される全ポア体積P1cm3/gを有し、ここで、P1は、0.5から1.5の値を有する数を表し、
PD90ポア直径は、少なくとも3nm、12nm未満であり、
P1に基づくミクロポア体積割合は、0.43から0.85である、多孔質炭素骨格と、
(b)前記多孔質炭素骨格のポア内に配置された複数のナノスケールの元素シリコンドメインと、
を有し、
前記粒子材料は、25から65質量%のシリコンを含み、
前記シリコンの少なくとも20質量%は、熱重量分析(TGA)法により測定される表面シリコンである、粒子材料が提供される。
【0015】
このユニークな粒子構造の結果として、複合粒子は、既存のSiOx技術を改善する電気化学的特性を有する。特に、本発明の粒子材料は、これまでに得られているものに比べて、電気化学的容量が大きく、全体の膨張が低く、可逆的な容量保持が同程度であり、これにより、高容量の電気活性材料の高い充填が可能となる。
【0016】
本発明の複合粒子は、複数の元素状ナノスケールシリコンドメインが多孔質炭素骨格のポアネットワーク内に配置された構造を有する。本願で使用される「ナノスケールシリコンドメイン」という用語は、最大寸法を有する元素シリコンのナノスケール本体を表し、これは、多孔質炭素骨格のミクロポアおよび/またはメソポア内のシリコンの配置によって定められる。
【0017】
マイクロポーラス炭素骨格では、数ナノメートル以下の寸法を有する小さなドメインの形態で、電気活性材料がマイクロポアネットワーク内に配置されるという利点が提供される。これらの微細な電気活性構造は、大きな電気活性構造に比べて、弾性変形に対する低い抵抗性を有し、破壊抵抗が高いため、過度な構造的応力を発生させずに、リチウム化および脱リチウム化することができる。従って、多孔質炭素骨格のマイクロポロシティでは、電気活性材料自体が十分な弾力性を有し、大きな容量損失を伴わずに、複数の充放電サイクルにわたって繰り返される容積変化に確実に耐えることができる。
【0018】
本発明の粒子材料は、TGA分析によって定量される、未酸化表面シリコンの含有量が高いことを特徴とする。この分析法は、空気中、高温でシリコンが酸化されて二酸化ケイ素(SiO2)になると、重量増加が観測されるという原理に基づく。Siが酸化される機構は、温度に依存する。シリコンナノ構造の表面におけるシリコン原子は、シリコンナノ構造のバルク中のシリコン原子よりも低い温度で酸化される(参考文献:Bardetら、Phys.Chem.Chem.Phys.(2016)、18,18201)。TGA分析では、空気中、高温でシリコンが酸化され二酸化ケイ素(SiO2)になる際に観測される重量増加に基づいて、表面シリコンの相対量を定量化することができる。重量増加を温度に対してプロットすることにより、サンプル中のバルクと表面のシリコンを区別し、定量化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】高レベルの表面シリコンおよび低レベルのバルク粗大シリコンを含む、本発明による粒子材料のTGAトレースを示した図である。
図2】低レベルの表面シリコンおよび高レベルのバルク粗大シリコンを含む粒子材料のTGAトレースを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1および2に示すように、非酸化表面シリコンの量の決定は、これらの材料の特徴的なTGAトレースから得られる。最大約300℃の初期質量損失(図1図2において、(a)から(b)への質量減少として示されている)に続いて、約400℃で質量の顕著な増加が始まり、550℃と650℃の間でピークとなることが観測される(図1図2において、(b)から(c)への質量増加として示されている)。次に、多孔質炭素骨格がCO2ガスに酸化されると、質量減少が観測され((c)からの質量減少)、その後、約800℃以上になると、再びシリコンからSiO2への連続変換に対応する質量増加が観測され、シリコンの酸化が完了するにつれて、1000℃を超える漸近値に向かって増加する((d)から(e)の質量増加)。重量増加が生じる温度は、シリコンの構造に関係し、表面シリコンは低温で酸化され、バルクシリコンは高温で酸化される。従って、シリコンドメインが粗いほど、より高い温度でより多くの酸化が観測される。
【0021】
空気に曝されたシリコン表面に既に形成されている自然酸化物は、TGA分析に影響を及ぼさない。既に酸化されているシリコンは、TGA分析において質量増加を生じないためである。従って、シリコン表面が空気と反応して自然酸化物が形成されるほど、TGAにより、あまり表面シリコンが観測されなくなる。従って、疑義を避けるため、「表面シリコン」の計算は、材料が空気または他の表面不動態化剤により不動態化された後の、TGA分析の開始時に未酸化のシリコンのみを考慮する(すなわち、粒子材料は、TGA分析の前には、いかなる特別な不活性条件下にも保持されない)。
【0022】
ここで定義する「表面シリコン」は、TGAトレースにおいて、150℃から500℃の間の最小値から、550℃から650℃の間の温度範囲で測定された最大値までの、初期の質量増加から算出される。TGAは、空気中10℃/minの温度上昇率で実施される。この質量増加は、表面シリコンの酸化に起因すると仮定され、従って、シリコンの全量に対する表面シリコンの割合は、以下の式により決定される:

Y=1.875×[(Mmax-Mmin)/Mf]×100%

ここで、Yは、サンプル中の全シリコンに対する表面シリコンの百分率であり、Mmaxは、550℃から650℃の間の温度範囲において測定されたサンプルの最大質量であり(図1および図2における質量(c))、Mminは、150℃超500℃未満のサンプルの最小質量であり(図1および図2における質量(b))、Mfは、1400℃での酸化終了時のサンプルの質量である(図1および図2における質量(e))。完全性のため、1.875は、O2に対するSiO2のモル質量比であることが理解される(すなわち、酸素の添加による質量増加に対する、形成されたSiO2の質量比)。通常、TGA分析は、10mg±2mgのサンプルサイズを用いて実施される。
【0023】
前述のTGA法により測定された表面シリコンが、材料中のシリコンの総量の少なくとも20重量%である場合、複数回の充放電サイクルにわたる可逆的な容量保持がかなり改善されることが分かった。好ましくは、シリコンの少なくとも22重量%、少なくとも25重量%、少なくとも30重量%、または少なくとも35重量%、または少なくとも40重量%、または少なくとも45重量%が、熱重量分析(TGA)によって定められた表面シリコンである。
【0024】
必要な場合、TGAにより決定される表面シリコンの量は、粒子状材料中のシリコンの全量の最大80重量%、最大75重量%、最大70重量%、最大65重量%、最大60重量%、または最大55重量%である。例えば、TGAにより決定される表面シリコンの量は、粒子状材料中のシリコンの全量の20から80重量%、22から75重量%、25から70重量%、30から65重量%、35から60重量%、または40から55重量%であってもよい。TGAにより定められる表面シリコンの量は、粒子状材料中のシリコンの全量の20から55重量%、22から60重量%、25から65重量%、30から70重量%、35から75重量%、または40から80重量%の範囲であってもよい。さらに好ましい範囲は、前述の範囲のいずれかの上限および下限を組み合わせることにより、定められてもよい。
【0025】
空気中での不動態化後も、粒子材料において、相応の割合のヒドリド終端化表面シリコンが測定可能であるという事実は、複合粒子が空気に接近できない内部シリコン表面を有することを示している。これは、多孔質炭素骨格の内部細孔空間は、キャップされる前に、まずシリコンで囲まれ、内部ボイド空間が形成され、ヒドリド終端化シリコン表面が閉じた内部ボイド空間内に配向されることを示唆するものである。これは、シリコンドメインが、ポア自体よりもはるかに小さな特徴的な長さのスケールを有することを示す。
【0026】
内部ボイドは、電解質に接近できないため、シリコン表面は、SEI形成から保護され、これにより、最初の充電サイクルの間の不可逆なリチウム損失が最小限に抑制される。また、その後の充放電サイクルにおける電気活性材料の追加の露出が実質的に防止され、SEI形成は、容量損失につながる大きな不具合メカニズムとはならなくなる。同時に、このシリコンは、リチウム化中に静水圧的に拘束され、リチウム化により生じる膨張の間、ボイドの利用が可能となる。
【0027】
多孔質炭素骨格は、ミクロポアおよびメソポアを含む3次元的に相互接続されたオープンポアネットワークを有する。多孔質炭素骨格は、必要な場合、さらに、少堆積のマクロポアを有してもよい。従来のIUPAC用語法に従い、「マイクロポア」と言う用語は、直径が2nm未満のポアを表すために使用され、「メソポア」という用語は、直径が2から50nmのポアを表すために使用され、「マクロポア」という用語は、直径が50nmを超えるポアを表すために使用される。
【0028】
本発明に要求される高レベルの表面シリコンは、多孔質炭素骨格のポア構造が前述のような特定の範囲内で制御される際にのみ、得られることが認められている。多孔質炭素骨格内のミクロポア、メソポアおよびマクロポアの容積を表し、多孔質炭素骨格内の容積の分布を表し、分離された多孔質炭素骨格の内部ポア体積を表す(すなわち、ポア体積の一部または全部を占める電気活性材料または他の材料がない場合)。
【0029】
ミクロポアおよびメソポアの全容積(すなわち、0から50nmの範囲の直径を有するポアの全ポア体積)は、P1cm3/gで表され、ここで、P1は、0.5から1.5の値を有する無次元数を表す。疑義を避けるため、多孔質炭素骨格のポア体積を参照する場合、(反対の示唆がない限り)単独での、すなわち多孔質炭素骨格のポアを占有する任意の電気活性材料(または他の材料)の不存在下で測定された、多孔質炭素骨格のポア体積に関する。
【0030】
P1の値は、好ましくは、少なくとも0.55、少なくとも0.6、少なくとも0.65、少なくとも0.7、または少なくとも0.75である。より高いポロシティの骨格が有意である。なぜなら、電極製造中の圧縮応力下、またはシリコンのリチウム化による膨張応力下での破損に対する多孔質炭素骨格の抵抗を維持したまま、より多くの量のシリコンをポア構造内に収容できるためである。しかしながら、P1があまりに高い場合、本発明の特徴である表面シリコンの上昇レベルを達成することができなくなる。従って、P1は、好ましくは1.5以下、1.4以下、1.3以下、1.2以下、1.1以下、1以下、または0.95以下である。
【0031】
例えば、P1は、0.55から1.4の範囲、0.6から1.4の範囲、0.6から1.3の範囲、0.65から1.3の範囲、0.65から1.3の範囲、0.65から1.2の範囲、0.7から1.2の範囲、0.7から1.1の範囲、0.7から1の範囲、0.75から0.95の範囲であってもよい。
【0032】
ISO15901-2およびISO15901-3に記載の標準化方法に従い、急冷固体密度関数理論(QSDFT)を用いて、相対圧力がp/p0=10-6まで低下した77Kでの窒素ガス吸着法を用いて、ミクロポアおよびメソポアの全容積、ならびにミクロポアおよびメソポアのポアサイズ分布が定められる。窒素ガス吸着法は、固体のポアにガスを凝縮させることにより、材料のポロシティとポア径分布を特徴づける技術である。圧力が増加すると、ガスは、最初に最も小さな直径のポアで凝縮し、すべてのポアが液体で満たされる飽和点に達するまで圧力が増加する。次に、窒素ガス圧力を漸減され、液体がシステムから蒸発される。吸着および脱着の等温線の解析と、それらの間のヒステリシスにより、ポア体積およびポアサイズ分布を定めることができる。窒素ガス吸着法によるポア体積およびポアサイズ分布の測定に適した機器には、米国マイクロメリティクスインスツルメント社から入手可能なTriStarIIおよびTriStar IIPlusポロシティ分析装置、およびクアンタクロムインスツルメンツ社から入手可能なAutosorbIQポロシティ分析装置が含まれる。
【0033】
窒素ガス吸着法は、最大50nmの直径を有するポアのポア体積およびポアサイズ分布の測定には有効であるが、直径がもっと大きなポアの場合、信頼性が劣る。従って、本発明の目的のため、窒素吸着法は、最大50nmの直径を有するポアについてのみ、ポア体積およびポアサイズ分布を測定するために使用される。前述のようにP1の値は、直径が最大50nmのポアのみ(すなわち、ミクロポアおよびメソポアのみ)を考慮することにより決定される。
【0034】
一般用語「PDnポア直径」は、ミクロポアおよびメソポアの全体積に基づいた、体積に基づくn百分率ポア直径を表す。例えば、用語「PD90ポア直径」は、P1で表される、全ミクロポアおよびメソポア体積の90%以下が得られるポア直径を表す。
【0035】
前述のように、多孔質炭素骨格のPD90ポア直径は、少なくとも3nmであり、12nm未満である。PD90値が低すぎると、ミクロポアにシリコンを成膜させることが難しくなり、代わりに多孔質炭素骨格の外表面にシリコンが成膜されることが認められている。しかし、PD90値が高すぎると、粗いシリコンの過剰な成膜、および/または過剰な自然酸化物の形成により、表面シリコンの量が低くなる。
【0036】
多孔質炭素骨格のPD90ポア直径は、好ましくは10nm以下、8nm以下、6nm以下である。好ましくは、多孔質炭素骨格のPD90ポア直径は、少なくとも3.2nm、少なくとも3.5nm、少なくとも3.8nm、または少なくとも4nmである。例えば、多孔質炭素骨格のPD90ポア直径は、好ましくは、3.5から10nm、3.8から8nm、または4から6nmの範囲である。
【0037】
多孔質炭素骨格のPD75ポア直径は、好ましくは、10nm以下、8nm以下、6nm以下、または4nm以下である。多孔質炭素骨格のPD75ポア直径は、少なくとも1nmであることが好ましい。
【0038】
多孔質炭素骨格のPD50ポア直径は、好ましくは、2nm以下、1.9nm以下、1.8nm以下、1.7nm以下、または1.6nm以下である。好ましくは、多孔質炭素骨格のPD50ポア直径は、少なくとも1nm、少なくとも1.1nm、または少なくとも1.2nmである。例えば、多孔質炭素骨格のPD50ポア直径は、好ましくは、1から2nm、1から1.9nm、1.1から1.8nm、1.1から1.7nm、1.2から1.6nmの範囲である。
【0039】
多孔質炭素骨格のPD30ポア直径は、好ましくは、1.6nm以下、1.5nm以下、1.4nm以下、1.3nm以下、1.2nm以下、1.1nm以下、または1nm以下である。好ましくは、多孔質炭素骨格のPD30ポア直径は、少なくとも0.6nm、または少なくとも0.7nmである。
【0040】
PD30ポア直径に対するPD90ポア直径の比は、好ましくは14以下、12以下、10以下、または8以下である。
【0041】
PD10ポア直径に対するPD90ポア直径の比は、好ましくは11以下、10以下、9以下、8以下、7以下である。
【0042】
ミクロポア体積分率は、P1で表されたミクロポアおよびメソポアの全体積の分率として表されるミクロポアの体積を表す。別の言い方をすれば、ミクロポアの体積分率は、直径が最大50nmのポアの総体積に対する、直径が2nm以下のポアの体積分率である。前述のように、多孔質骨格のミクロポア体積分率は、複合粒子中の必要とされる高レベルの表面シリコン含有量を得るため、0.43から0.85の範囲内で選定される。
【0043】
好ましくは、ミクロポアの体積分率は、ミクロポアおよびメソポアの総体積に基づき、少なくとも0.45、少なくとも0.48、少なくとも0.5、少なくとも0.51、少なくとも0.52、少なくとも0.54、少なくとも0.56、少なくとも0.58、または少なくとも0.6である。好ましくは、ミクロポア体積分率は、ミクロポアおよびメソポアの全容積に基づき、0.8以下、0.79以下、0.78以下、0.76以下、0.74以下、0.72以下、または0.7以下である。
【0044】
ミクロポア体積分率は、必要な場合、ミクロポアおよびメソポアの全容積に基づき、0.45から0.85、0.5から0.8、0.45から0.78、0.48から0.8、0.48から0.78、0.48から0.76、0.5から0.8、0.5から0.78、0.5から0.76、0.5から0.74、0.5から0.72、0.5から0.7、0.51から0.76、0.52から0.74、0.53から0.74、0.54から0.72、0.6から0.8未満、0.6から0.79、0.6から0.78、0.6から0.76、0.6から0.74、0.6から0.72、0.6から0.72、または0.6から0.7であってもよい。
【0045】
(77Kでの窒素ガス吸着法を用いて決定される)多孔質炭素骨格内のミクロポアの全容積は、好ましくは、少なくとも0.36cm3/g、少なくとも0.38cm3/g、少なくとも0.40cm3/g、少なくとも0.42cm3/gである。ミクロポア内に配置されたシリコンは、より小さな長さのスケールを有するため、より高い全ミクロポア体積により、表面シリコンのより高い割合が多孔質炭素骨格内に収容されるようになり、従って、複合材料粒子のより高い重量容量および体積容量が可能となる。
【0046】
メソポア範囲内の任意のポア体積は、実質的にメソポアのより小さな範囲内にあることが好ましい。従って、ポアサイズが5nm以下のポアの割合体積は、ミクロポアおよびメソポアの全体積に基づき、少なくとも0.8、少なくとも0.82、少なくとも0.84、少なくとも0.86、少なくとも0.88、または少なくとも0.9であることが好ましい。好ましくは、ポアサイズが10nm以下であるポアの割合体積は、好ましくは、ミクロポアおよびメソポアの全体積に基づき、少なくとも0.9、少なくとも0.92、少なくとも0.94、または少なくとも0.96である。好ましくは、ポアサイズが20nm以下であるポアの割合体積は、ミクロポアおよびメソポアの全体積に基づき、好ましくは少なくとも0.94、少なくとも0.96、または少なくとも0.98である。
【0047】
より大きなメソポア範囲における直径を有するポアの割合は、電解質がシリコンドメインにアクセスすることを容易にする点で有意である。従って、10から50nmの範囲の直径を有するポア(すなわち、より大きなメソポア)は、必要な場合、多孔質炭素骨格の全ミクロポアおよびメソポア体積の2%以下、4%以下、または6%以下を構成してもよい。
【0048】
多孔質炭素骨格のポアサイズ分布は、好ましくは、二峰性または多峰性である。「ポアサイズ分布」という用語は、多孔質炭素骨格の累積総内部ポア体積に対するポアサイズの分布に関する。二峰性または多峰性のポアサイズ分布が好ましい。ミクロポアとより大きな直径のポアの間の接近した近接性により、多孔質ネットワークを介したシリコンまでの効率的なイオン輸送の利点が提供されるからである。従って、粒子材料は、高いイオン拡散率を有し、従って、改善された速度特性を有する。
【0049】
利用可能な分析技術の限界を考慮すると、単一の技術を用いて、ミクロポア、メソポアおよびマクロポアの全範囲にわたるポア体積およびポアサイズ分布を測定することは不可能である。多孔質炭素骨格がマクロポアを含む場合、50nmより大きく100nmまでの範囲のポアの体積は、P2cm3/gの値で定められ、水銀ポア測定によって測定される。前述のように、P2の値は、単独で測定した際の、すなわち、シリコンまたは多孔質炭素骨格の孔を占有する他の材料が存在しない場合の、多孔質炭素骨格のポア体積に関連する。
【0050】
疑義を避けるため、P2の値は、50nm超から最大100nmまでの直径を有するポアのみ、すなわち直径が100nmまでのマクロポアの体積のみが考慮される。50nm以下のポアサイズで水銀ポロシメトリーにより測定されたポア体積は、P2の値を定める目的では無視される(前述のように、窒素吸着法は、メソポアおよびミクロポアを特徴付けるために使用される)。100nmを超える水銀ポロシメトリーによって測定されるポア体積は、本発明の目的のため、粒子間のポロシティであると仮定され、P2の値を定める際に考慮されない。
【0051】
水銀ポロシメトリーは、水銀中に浸漬された材料のサンプルに変化するレベルの圧力を加えることにより、材料のポロシティおよびポア直径分布を特徴付ける技術である。サンプルのポアに水銀を侵入させるのに必要な圧力は、ポアのサイズに反比例する。報告されている水銀ポロシメトリーにより得られる値は、ASTM UOP578-11に従って得られ、表面張力γは、480mN/mであり、接触角φは、室温での水銀で140°である。水銀の密度は、室温で13.5462g/cm3とされる。米国Micromerics Instrument社から市販されている自動水銀ポロシメータのAutoPoreIVシリーズのような、多くの高精度水銀ポロシメータが市販されている。水銀ポロシメトリーの完全なレビューについては、P.A.WebbおよびC.Orrの“Analytical Methods in Fine Particle Technology,”1997,Micromeritics Instrument社,ISBN0-9656783-0が参照される。
【0052】
マクロポアの体積(従ってP2の値)は、ミクロポアおよびメソポアの体積(従ってP1の値)と比較して小さいことが好ましい。マクロポアのごく一部は、電解質がポアネットワークにアクセスすることを容易にするために使用され得るが、本発明の利点は、実質的には、ミクロポアおよびより小さなメソポアにシリコンを収容することによって得られる。
【0053】
従って、本発明では、多孔質炭素骨格中のマクロポアの総体積は、水銀ポロシメトリーにより測定した場合、P2cm3/gであり、ここで、P2は、好ましくは、最大0.2×P1、最大0.1×P1、最大0.05×P1、最大0.02×P1、最大0.01×P1、または最大0.005×P1の値を有する。
【0054】
ガス吸着法および水銀ポロシメトリーのような侵入技術は、多孔質炭素骨格の外側から、窒素または水銀が接近可能なポアのポア体積を定める際にのみ有効であることが理解される。本願で規定されるポロシティ値(P1およびP2)は、オープンポアの容積を表し、すなわち、多孔質炭素骨格の外側から流体にアクセス可能なポアを表すことが理解される。窒素吸着法または水銀ポロシメトリー測定では同定できない完全に閉じたポアは、ポロシティの値を特定する際に、考慮されない。同様に、窒素吸着法による検出限界を下回るほど小さなポア内に配置された任意のポア体積は、P1の値を決定する際に考慮されない。
【0055】
多孔質炭素骨格は、好ましくは、1200から3000m2/gのBET表面積を有する。好ましくは、多孔質炭素骨格は、少なくとも1500m2/g、または少なくとも1700m2/gのBET表面積を有する。好ましくは、多孔質炭素骨格は、2500m2/g以下、または2000m2/g以下のBET表面積を有する。「BET表面積」という用語は、ISO9277に従ったブルナウアーエメットテラー理論を用いて、固体表面上の気体分子の物理吸着の測定から計算された単位質量当たりの表面積を表すことが考慮される。
【0056】
多孔質炭素骨格は、結晶性炭素または非晶質炭素、または非晶質炭素と結晶性炭素の混合物を含んでもよい。多孔質炭素骨格は、硬質炭素骨格または軟質炭素骨格のいずれであってもよく、有機材料、樹脂およびポリマーを含む炭素含有材料の熱分解を含む公知のプロセスにより、好適に得られてもよい。多孔質炭素材料は、他のプロセス、例えば、炭化物含有前駆体から得られてもよい。ポロシティの高い炭素材料は市販されており、一般に活性炭と呼ばれる。
【0057】
多孔質炭素骨格は、好ましくは少なくとも90質量%の炭素、好ましくは少なくとも95質量%の炭素、より好ましくは少なくとも98質量%の炭素、または少なくとも99質量%の炭素を含む元素組成物を有する。多孔質炭素骨格は、必要に応じて、酸素、窒素、硫黄および水素のような他の元素を少量含んでもよい。多孔質炭素骨格の元素組成は、シリコンの非存在下で行われる従来の元素分析技術により定められてもよい。
【0058】
本願で使用される「硬質炭素」という用語は、炭素原子が主としてナノスケールの多芳香族ドメイン中のsp2混成状態(三方晶結合)に認められる無秩序な炭素マトリックスを表す。多芳香族ドメインは、化学結合、例えばC-O-C結合で架橋される。
【0059】
多芳香族ドメイン間の化学的架橋により、硬質炭素は、高温ではグラファイトに変換されない。硬質炭素は、ラマンスペクトルにおける大きなG-バンド(~1600cm-1)から明らかなように、グラファイト的な性質を有する。しかし、ラマンスペクトルにおける顕著なD-バンド(~1350cm-1)から明らかなように、炭素は、完全には黒鉛化していない。
【0060】
また、本願で使用される、「軟質炭素」という用語は、炭素原子が主として、5から200nmの範囲の寸法を有する多芳香族ドメインにおけるsp2混成状態(三方晶結合)に見出される、不規則炭素マトリックスを表す。硬質炭素とは対照的に、軟質炭素の多芳香族ドメインは、分子間力により結合されてはいるが、化学結合による架橋はされていない。これは、これらが高温でグラファイト化することを意味する。多孔質炭素骨格は、好ましくは、XPSで測定した際に、少なくとも50%のsp2混成炭素を含む。例えば、多孔質炭素骨格は、50%から98%のsp2混成炭素、55%から95%のsp2混成炭素、60%から90%のsp2混成炭素、または70%から85%のsp2炭素炭素を好適に有してもよい。
【0061】
各種異なる材料を使用して、好適な多孔質炭素骨格を調製してもよい。使用され得る有機材料の例には、リグノセルロース材料(ココナッツ殻、もみ殻、木材など)を含む植物バイオマス、および石炭のような化石炭素源が含まれる。熱分解時に多孔質炭素骨格を形成する樹脂およびポリマー材料の例には、フェノール樹脂、ノボラック樹脂、ピッチ、メラミン、ポリアクリレート、ポリスチレン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ならびにアクリレート、スチレン、α-オレフィン、ビニルピロリドンおよび他のエチレン不飽和モノマーのモノマー単位を有する各種コポリマーが含まれる。出発材料および熱分解プロセスの条件に応じて、各種異なる硬質炭素材料が当該技術分野で利用可能である。
【0062】
多孔質炭素骨格は、化学的または気体的活性化プロセスを経由して、メソポアおよびミクロポアの容積を高めてもよい。好適な活性化プロセスは、600から1000℃の範囲の温度で、酸素、蒸気、CO、CO2およびKOHの1または2以上と、熱分解炭素とを接触させるステップを有する。好ましくは、多孔質炭素骨格は、蒸気活性化多孔質炭素骨格である。
【0063】
またメソポアは、熱分解または活性化後の熱的または化学的手段によって除去され得る、MgOおよび他のコロイド状またはポリマー状テンプレートのような、抽出可能なポア形成体を用いて、既知のテンプレートプロセスにより、得ることができる。
【0064】
複合粒子の元素組成は、元素分析によって決定することができる。元素分析は、複合粒子中のシリコンと炭素の両方の重量%を決定するために使用される。また、必要な場合、水素、窒素および酸素の量が、元素分析によって決定されてもよい。好ましくは、元素分析は、多孔質炭素骨格単体における炭素(および必要な場合、水素、窒素および酸素)の重量%を決定するために使用される。多孔質炭素骨格中の炭素の重量%を決定するだけでは、多孔質炭素骨格がその分子骨格内に少量のヘテロ原子を含む可能性が考慮される。両方の測定を一緒に行うことにより、高い信頼性で、全多孔質炭素骨格に対するシリコンの重量%を決定することができる。
【0065】
シリコン含有量は、好ましくはICP-OES(誘導結合プラズマ発光分光分析)によって測定される。ThermoFisher Scientific社から入手可能なICP-OES分析装置のiCAP(登録商標)7000シリーズのような、多くのICP-OES機器が市販されている。複合粒子の炭素含有量および多孔質炭素骨格単独の炭素含有量(ならびに必要な場合、水素、窒素および酸素の含有量)は、燃焼および赤外(IR)吸収技術により定められることが好ましい。炭素、水素、窒素、および酸素の含有量を定めるのに適した機器は、LECO社から入手可能なTruSpec(登録商標)マイクロ元素分析器である。
【0066】
本発明の粒子材料は、元素分析により定められた、25から65質量%のシリコン、好ましくは30から65質量%のシリコンを含む。好ましくは、本発明の粒子材料は、少なくとも26重量%、少なくとも28重量%、少なくとも30重量%、少なくとも32重量%、少なくとも34重量%、少なくとも36重量%、少なくとも38重量%、少なくとも40重量%、少なくとも42重量%、または少なくとも44重量%シリコンを含有する。本発明の粒子材料は、60重量%以下、58重量%以下、56重量%以下以下、54重量%以下、52重量%以下、または50重量%以下のシリコンを含む。
【0067】
例えば、本発明の粒子材料は、26から65重量%、28から65重量%、30から65重量%、32から60重量%、34から60重量%、36から60重量%、38から58重量%、40から58重量%、42から56重量%、または44から54重量%のシリコンを含んでもよい。
【0068】
商業的使用のため、粒子材料が十分な堆積容量を有することを確実にするため、最小量のシリコンが必要となる。しかしながら、過剰量のシリコンは、大きなポアおよび/または多孔質炭素骨格の表面にシリコンが堆積し、表面シリコンの含有量が低くなる結果となり、電気活性材料としての特性が低下する。
【0069】
本発明の複合粒子中のシリコンの量は、(ミクロポアおよびメソポアに基づき)多孔質炭素骨格の内部ポア体積の少なくとも約20%、および最大約78%が、シリコン(非充電状態)によって占められるように選択される。一般に、多孔質炭素骨格のミクロポア割合が高いほど、表面シリコンの百分率を低下させずに、使用されるシリコンの量を多くできる。
【0070】
好ましくは、シリコンは、多孔質炭素骨格の内部ポア体積の約20%から約78%、例えば、多孔質炭素骨格の内部ポア体積の約23%から75%、約26%から72%、約28%から70%、約30%から70%、約35%から68%、約40%から65%、または約45%から60%を占める。これらの好ましい範囲内では、多孔質炭素骨格のポア体積は、充填および放電の間のシリコンの膨張に適応するのに有効であるが、粒子材料の体積容量に寄与しない過剰なポア体積が回避される。しかしながら、シリコンの量は、不十分な金属イオン拡散速度、またはリチウム化に対する機械的な抵抗が生じる不十分な膨張体積により、効果的なリチウム化を妨げるほどは高くない。
【0071】
多孔質炭素骨格中のシリコンの量は、多孔質炭素骨格に対するシリコンの重量比が、[0.50×P1から1.9×P1]:1の範囲である必要性から、利用可能なポア体積と相関させることができる。この関係は、シリコンの密度、および多孔質炭素骨格のポア体積を考慮し、ポア体積が約20%から78%占有されると推定される際のシリコンの重量比が定められる。好ましくは、多孔質炭素骨格に対するシリコンの重量比は、[0.7×P1から1.8×P1]:1の範囲であり、これは、ポア体積が約30%から78%占有されていることを示す。
【0072】
好ましくは、多孔質炭素骨格に対するシリコンの重量比は、少なくとも0.50×P1、少なくとも0.55×P1、少なくとも0.6×P1、少なくとも0.65×P1、少なくとも0.7×P1、少なくとも0.75×P1、少なくとも0.8×P1、少なくとも0.85×P1、少なくとも0.9×P1、少なくとも0.95×P1、または少なくとも1×P1である。好ましくは、多孔質炭素骨格に対するシリコンの重量比は、1.85×P1以下、1.8×P1以下、1.75×P1以下、1.7×P1以下、1.65×P1以下、1.6×P1以下、1.55×P1以下、または1.5×P1以下である。
【0073】
複合粒子は、元素分析により測定される、低い全酸素含有量を有することが好ましい。酸素は、例えば、多孔質炭素骨格の一部として、または露出されたシリコン表面上の酸化物層として、複合粒子中に存在してもよい。好ましくは、複合粒子の全酸素含有量は、15重量%未満、より好ましくは12重量%未満、より好ましくは10重量%未満、より好ましくは5重量%未満、例えば4重量%未満、3重量%未満、2重量%未満、1重量%未満、または0.5重量%未満である。好ましくは、シリコンおよび炭素は共に、複合粒子の少なくとも90質量%、より好ましくは、複合粒子の少なくとも95質量%を構成する。
【0074】
シリコンは、必要な場合、少量の1または2以上のドーパントを含んでもよい。好適なドーパントには、ホウ素およびリン、他のn型もしくはp型のドーパント、窒素、またはゲルマニウムが含まれる。好ましくは、ドーパントは、シリコンとドーパントの全量を基準として、2重量%以下の全量で存在する。
【0075】
表面シリコン含有量に加えて、本発明の粒子材料は、好ましくは、TGAによって測定される、粗大バルクシリコンの低い含有量を有する。粗大バルクシリコンとは、TGAにより測定される800℃超で酸化を受けるシリコンとして定められ、TGAは、空気中、10℃/分の温度上昇率で実施される。図1および図2において、これは、(d)から(e)に質量が増加するように示されている。従って、粗大バルクシリコンの含有量は、次式に従って定められる:

Z=1.875×[(Mf-M800)/Mf]×100%

ここでZは、800℃での未酸化シリコンの百分率であり、M800は、800℃でのサンプルの質量(図1および図2における質量(d))であり、Mfは、1400℃での酸化終了時の灰質量(図1および図2における質量(e))である。本分析では、800℃を超える任意の質量増加は、シリコンのSiO2への酸化に相当し、酸化完了時の全質量は、SiO2であることが仮定される。
【0076】
好ましくは、シリコンの10重量%以下、8重量%以下、6重量%以下、5重量%以下、4重量%以下、3重量%以下、2重量%以下、または1.5重量%以下が、TGAにより測定された粗大バルクシリコンである。
【0077】
好ましくは、シリコンの少なくとも30wt%(例えば、シリコンの30から75wt%、30から70wt%、または30から65wt%)が表面シリコンであり、シリコンの10wt%以下が粗大バルクシリコンである。両者はTGAにより測定される。より好ましくは、シリコンの少なくとも35wt%(例えば、シリコンの35から70wt%、35から65wt%、または35から60wt%)が表面シリコンであり、シリコンの8wt%以下が粗大バルクシリコンであり、両者はTGAにより測定される。より好ましくは、シリコンの少なくとも40wt%(例えば、シリコンの40から65wt%、40から60wt%、または40から55wt%)が表面シリコンであり、シリコンの5質量%以下が粗大バルクシリコンであり、両者はTGAにより測定される。より好ましくは、シリコンの少なくとも45wt%が表面シリコンであり、シリコンの2重量%以下が粗大バルクシリコンであり、両者はTGAにより測定される。
【0078】
好ましくは、複合粒子中(すなわち、シリコンの存在下)のミクロポアおよびメソポアの全体積は、窒素ガス吸着法により測定されると、最大0.15×P1、最大0.10×P1まで、最大0.05×P1、または最大0.02×P1である。
【0079】
好ましくは、窒素ガス吸着法によって測定される、複合粒子中のミクロポアおよびメソポアの全体積は、0.2cm3/g未満、好ましくは0.15cm3/g未満、0.1cm3/g未満、0.08cm3/g未満、0.06cm3/g未満、0.04cm3/g未満、0.02cm3/g未満、0.015cm3/g未満、0.012cm3/g未満、0.010cm3/g未満、または0.008cm3/g未満である。
【0080】
「粒子直径」という用語は、等価球形直径(esd)、すなわち、所与の粒子と同じ体積を有する球の直径を表し、ここで、粒子体積(容積)は、任意の粒子内ポアの体積を含むことが理解される。「D50」および「D50粒子直径」という用語は、容積ベースの中央粒子直径、すなわち、粒子集団の50体積%未満が認められる直径を表す。「D10」および「D10粒子直径」という用語は、10%体積基準の中央粒子直径、すなわち、粒子集団の10体積%未満が認められる直径を表す。「D90」および「D90粒子直径」という用語は、90%体積基準の中央粒子直径、すなわち、粒子集団の90体積%未満が認められる直径を表す。
【0081】
粒子直径分布を定義するために使用される「Dn」という用語は、前述のように、ポア直径分布を定義するために使用される「PDn」という用語とは区別される。
【0082】
粒子直径および粒子サイズ分布は、ISO13320:2009に従った通常のレーザー回折技術により測定することができる。特に記載がない限り、本願に規定され記録された粒子サイズ分布測定値は、従来のMalvern社製のMalvern Mastersizer(商標)3000粒子サイズ分析器により測定される。Malvern Mastersizer(商標)3000粒子サイズ分析器は、水溶液中に懸濁された対象の粒子を含む透明セルに、ヘリウム-ネオンガスレーザービームを照射することにより動作する。粒子に衝突する光線は、粒子サイズに反比例する角度を介して散乱され、光検出器アレイは、いくつかの所定の角度で光の強度を測定し、異なる角度で測定された強度は、粒子サイズ分布を定める標準的な理論原理を用いて、コンピュータにより処理される。レーザー回折値は、界面活性剤SPANTM -40(モノパルミチン酸ソルビタン)を5vol%添加した2-プロパノール中の粒子の湿式分散液を用いて得られる。粒子屈折率は、多孔質炭素骨格粒子で2.68、複合粒子で3.50とされ、分散剤指数は、1.378とされる。粒子サイズ分布は、ミー散乱モデルを用いて計算される。
【0083】
複合粒子は、1から30μmの範囲のD50粒子直径を有してもよい。必要な場合、D50粒子直径は、少なくとも1μm、少なくとも2μm、少なくとも3μm、少なくとも4μm、または少なくとも5μmであってもよい。必要な場合、D50粒子直径は、20μm以下、18μm以下、16μm以下、14μm以下、12μm以下、10μm以下、または8μm以下であってもよい。
【0084】
例えば、複合粒子は、1から20μm、1から18μm、1から16μm、2から16μm、2から14μm、2から12μm、2から10μm、または2から8μmの範囲のD50粒子直径を有してもよい。これらのサイズ範囲内の粒子であって、前述のポロシティおよびポア直径分布を有する粒子は、金属イオン電池用のアノードでの使用に理想的に適する。スラリー中でのそれらの分散性、それらの構造的ロバスト性、繰り返し充放電サイクルにわたるそれらの容量保持、および従来の20から50μmの範囲における均一厚さの緻密電極層を形成する上でのそれらの好適性のためである。
【0085】
複合粒子のD10粒子直径は、好ましくは、少なくとも0.5μm、少なくとも0.8μm、または少なくとも1μmである。D10粒子直径を0.5μm以上に維持することにより、サブミクロンサイズの粒子の望ましくない凝集の可能性が低減され、その結果、粒子材料の分散性が改善され、容量保持が改善される。
【0086】
複合粒子のD90粒子直径は、好ましくは50μm以下、40μm以下、30μm以下、25μm以下、20μm以下、または15μm以下である。極めて大きな粒子の存在は電極活性層における粒子の不均一な形成パッキングをもたらし、従って、緻密な電極層、特に、20から50μmの範囲の厚さを有する電極層の形成を阻害する。従って、D90粒子直径は、最大40μmであることが好ましく、さらに小さいことがより好ましい。
【0087】
複合粒子は、狭小のサイズ分布スパンを有することが好ましい。例えば、粒子サイズ分布スパン((D90-D10)/D50として定義される)は、好ましくは5以下、より好ましくは4以下、より好ましくは3以下、より好ましくは2以下、最も好ましくは1.5以下である。狭小サイズ分布スパンを維持することにより、緻密な電極層への粒子の効率的な充填が、より容易に達成可能となる。
【0088】
複合粒子は、正のゆがみ(skew)を有することが好ましく、例えば、体積ベースの分布は、右側においてより長い尾部を有し、非対称であってもよい。体積ベースの粒子サイズ分布における正のゆがみは、以下の理由で有意である。全ての粒子が同じサイズである場合よりも自然充填率が高いため、より緻密な電極が提供され、これにより、カレンダ加工、または他の物理的高密度化プロセスの必要性が低減されるからである。D50複合粒子直径は、粒子直径分布の体積ベースの平均値(D[4.3])より小さいことが好ましい。(Malvern Mastersizer(商標)3000分析器で測定される)複合粒子サイズ分布のゆがみは、5以下、または3以下であることが好ましい。
【0089】
複合粒子は、少なくとも0.5、または少なくとも0.55の平均球形度(本願で規定される)を有してもよい。好ましくは、平均球形度は、少なくとも0.65、少なくとも0.7、少なくとも0.75、または少なくとも0.8である。
【0090】
走査型電子顕微鏡(SEM)、または、デジタルカメラを用いて粒子により投影された影を記録する動的画像解析により、ミクロンスケール粒子の高精度な二次元投影図を得ることができる。「球形度」という用語は、円の面積に対する、粒子投影(そのような撮像技術から得られる)の面積の比として理解され、粒子投影および円は、同一の円周を有する。従って、個々の粒子について、球形度Sは、以下のように定められる:
【0091】
【数1】
ここで、Amは、粒子投影の測定面積であり、Cmは、粒子投影の測定円周である。粒子集団の平均球形度Savは、以下のように定められる:
【0092】
【数2】
ここで、nは、集団中の粒子の数を表す。粒子集団の平均球形度は、好ましくは、少なくとも50個の粒子の2次元投影から計算される。
【0093】
本発明の複合粒子は、好ましくは、200m2/g以下のBET表面積を有する。好ましくは、複合粒子のBET表面積は、150m2/g以下、100m2/g以下、80m2/g以下、60m2/g以下、50m2/g以下、40m2/g以下、30m2/g以下、25m2/g以下、20m2/g以下、15m2/g以下、または10m2/g以下である。
【0094】
一般に、低いBET表面積は、本発明の粒子材料を含むアノードの最初の充放電サイクル中の複合粒子の表面における固体電解質界面層(SEI)の形成が最小源に抑制されるため、好ましい。しかしながら、過度に低いBET表面積は、周囲の電解質における金属イオンに対し、電気活性材料のバルクがアクセスできなくなるため、許容できない低い充電速度および容量限界をもたらす。例えば、BET表面積は、好ましくは、少なくとも0.1m2/g、少なくとも1m2/g、少なくとも2m2/g、または少なくとも5m2/gである。例えば、BET表面積は、1m2/gから25m2/gの範囲であってもよく、より好ましくは2から15m2/gの範囲であってもよい。
【0095】
本発明の粒子材料は、通常、第1のリチウム化時に、900から2300mAh/gの比電荷容量を有する。本発明の粒子材料は、第1のリチウム化時に、少なくとも1200mAh/g、または少なくとも1400mAh/gの比電荷容量を有することが好ましい。
【0096】
本発明の粒子材料は、必要な場合、不動態化剤で処理されたシリコン表面を有してもよい。以下にさらに詳細に記載されるように、不動態化剤は、表面酸化物の形成を阻害または防止するような方法で、電気活性材料の表面を改質可能な化合物として定義される。
【0097】
本発明の複合粒子は、必要な場合、粒子の外表面を少なくとも部分的にまたは完全に被覆するコーティングを含んでもよい。コーティングは、好ましくはリチウムイオン透過性コーティングである。「リチウムイオン透過性」という用語は、複合材料粒子の外側からナノスケールの電気活性材料ドメインへのリチウムイオンの輸送を可能にするイオン伝導性材料を表す。好ましくは、リチウムイオン透過性コーティングは、液体電解質の溶媒のような液体に対して不透過性である。リチウムイオン透過性フィラー材料は、<0.1V Li/Li基準で電気化学的に安定であることが好ましい。
【0098】
必要な場合、コーティングは、導電性炭素コーティングを含んでもよい。好適な電性炭素コーティングは、化学気相成膜(CVD)法により得られてもよい。CVDは、当該技術分野において良く知られた方法であり、粒子材料の表面における揮発性炭素含有ガス(例えば、エチレン)の熱分解を含む。あるいは、炭素コーティングは、炭素含有化合物の溶液を粒子材料の表面上に堆積させ、その後熱分解することにより、形成されてもよい。導電性炭素コーティングは、十分な透過性を有し、過度の抵抗を与えずに、複合材料粒子の内部に、リチウムがアクセスすることが可能となり、複合材料粒子の速度特性の低下は、生じない。例えば、炭素コーティングの厚さは、好適には、2から30nmの範囲であってもよい。必要な場合、炭素コーティングは、多孔質であってもよく、および/または複合粒子の表面の一部のみを被覆してもよい。
【0099】
あるいは、コーティングは、リチウムイオン透過性固体電解質を含んでもよい。好適なリチウム透過性固体電解質の例には、ガーネット型固体電解質(Li7La3Zr2O12およびLi6.5La3Ti0.5Zr1.5O12のような「LLZO」電解質を含む);ペロブスカイト型固体電解質(Li0.33La0.57TiO3のような「LLTO」電解質を含む);LISICON型固体電解質、NaSICON型固体電解質(Li1.3Al0.3Ti1.7(PO43等);リチウムリン酸窒化物(LiPON)固体電解質;Li3N型固体電解質;リン酸リチウム(Li3PO4)固体電解質、チタン酸リチウム(Li4Ti5O12)固体電解質、タンタル酸リチウム(LiTaO3)固体電解質;硫化物型固体電解質;アルギロダイト型固体電解質;およびアンチペロブスカイト型固体電解質が含まれる。これらの電解質タイプの変異型(例えば、ドーパントを含む)、および組み合わせも含まれる。
【0100】
コーティングは、任意の表面欠陥を平滑化し、任意の残りの表面ミクロポアを充填することにより、粒子材料のBET表面積をさらに減少させ、これにより、第1サイクルのロスをさらに減少させるという利点を有する。炭素コーティングのような電気伝導性コーティングの使用は、特に有意である。これが複合粒子の表面の伝導性を改善し、リチウムイオン電池における電気活性材料として使用された際の粒子材料の速度特性を改善し、および/または電極組成物における導電性添加剤の必要性を低減し、さらに安定なSEI層の形成用の改善された表面を形成し、その結果、サイクル時の容量保持が改善されるからである。複合粒子がコーティングを含む場合、粒子のシリコン含有量は、コーティングを含む粒子の重量に基づき、重量%で定められる。
【0101】
本発明による好ましい粒子材料は、P1が0.65から1.2の範囲であり、ミクロポア体積割合が0.5から0.7の範囲であり、粒子材料が38から58質量%のシリコンを含み、熱重量分析(TGA)によって測定されるシリコンの少なくとも30質量%(例えば、シリコンの30から75質量%、30から70質量%、または30から65質量%)が、表面シリコンであるものである。TGAによって測定されるシリコンの10重量%以下が、粗大バルクシリコンであることが好ましい。また、好適にまたは必要に応じて、本願に開示された任意の特徴が本実施形態に適用されてもよい。
【0102】
本発明によるより好ましい粒子材料は、P1が0.7から1.1の範囲であり、ミクロポア体積割合が0.48から0.76の範囲であり、粒子状材料が40から58質量%のシリコンを含み、熱重量分析(TGA)によって測定されるシリコンの少なくとも35質量%(例えば、シリコンの35から70質量%、35から65質量%、または35から60質量%)が表面シリコンであるものである。TGAによって測定されるシリコンの8質量%以下が、粗大バルクシリコンであることが好ましい。また、好適にまたは必要に応じて、本願に開示された任意の特徴が本実施形態に適用されてもよい。
【0103】
本発明によるより好ましい粒子状材料は、P1が0.75から1.1の範囲であり、ミクロポア体積割合が0.5から0.74の範囲であり、粒子材料が42から56重量%のシリコンを含み、熱重量分析(TGA)によって測定されるシリコンの少なくとも40重量%(例えば、シリコンの40から65重量%、40から60重量%、または40から55重量%)が表面シリコンであるものである。TGAによって測定されるシリコンの5質量%以下が、粗大バルクシリコンであることが好ましい。また、好適にまたは必要に応じて、本願に開示された任意の特徴が本実施形態に適用されてもよい。
【0104】
本発明によるより好ましい粒子状材料は、P1が0.8から1の範囲であり、ミクロポア体積割合が0.52から0.72の範囲であり、粒子材料が44から54重量%のシリコンを含み、熱重量分析(TGA)によって測定されるシリコンの少なくとも45重量%(例えば、シリコンの45から65重量%、45から60重量%、または45から55重量%)が表面シリコンであるものである。TGAによって測定されるシリコンの2質量%以下が、粗大バルクシリコンであることが好ましい。また、好適にまたは必要に応じて、本願に開示された任意の特徴が本実施形態に適用されてもよい。
【0105】
本発明の複合粒子は、多孔質炭素骨格のポア構造内へのシリコン含有前駆体の化学気相浸透(CVI)により、好適に調製される。CVIは、気体状シリコン含有前駆体が表面上で熱分解され、表面に元素シリコンが形成され、気体状副生成物が形成されるプロセスを表す。
【0106】
本発明の第2の態様では、シリコン含有複合粒子を調製する方法であって、
(a)ミクロポアおよび/またはメソポアを含む複数の多孔質炭素粒子を提供するステップであって、
(i)ミクロポアおよびメソポアは、ガス吸着法により測定される全ポア体積P1cm3/gを有し、ここで、P1は、0.5から1.5の値を表し、
(ii)PD90のポア直径は、少なくとも3nm以下、12nm未満であり、
(iii)P1に基づくミクロポア体積割合は、0.43から0.85である、ステップと、
(b)400から700℃の温度で、前記複数の多孔質炭素粒子を、0.5から20vol%のシリコン前駆体ガスを含むガスと接触させ、前記多孔質炭素粒子のポアにシリコンを堆積させるステップと、
を有する、方法が提供される。
【0107】
本発明の第3の態様では、シリコン含有複合粒子を調製する方法であって、
(a)ミクロポアおよび/またはメソポアを含む複数の多孔質炭素粒子を提供するステップであって、
(i)ミクロポアおよびメソポアは、ガス吸着法により測定される全ポア体積P1cm3/gを有し、ここで、P1は、0.5から1.5の値を表し、
(ii)PD90のポア直径は、少なくとも3nm以下、12nm未満であり、
(iii)P1に基づくミクロポア体積割合は、0.43から0.85である、ステップと、
(b)400から700℃の温度で、前記複数の多孔質炭素粒子を、シリコン前駆体ガスを含むガスと接触させ、前記多孔質炭素粒子のポアにシリコンを堆積させるステップであって、前記シリコン前駆体ガスの分圧は、0.5から20kPaである、ステップと、
を有する、方法が提供される。
【0108】
本発明の第2の態様および第3の態様のプロセスは、本発明の第1の態様の粒子材料を調製するために使用されてもよい。以下の好ましい特徴は、特に記載のない限り、第2の態様および第3の態様の両方に適用される。
【0109】
好適な気体状シリコン含有前駆体には、シラン(SiH4)、シラン誘導体(例えば、ジシラン、トリシランおよびテトラシラン)、およびトリクロロシラン(SiHCl3)が含まれる。
【0110】
必要な場合、シリコン含有前駆体は、塩素フリーである。塩素フリーとは、シリコン含有前駆体が1重量%未満、好ましくは0.1重量%未満、好ましくは0.01重量%未満の塩素含有化合物を含有することを意味する。
【0111】
シリコン含有前駆体は、純粋な形態で、またはより一般的には、窒素またはアルゴンのような不活性キャリアガスとの希釈混合物として使用され得る。
【0112】
ステップ(b)は、101.3kPa(すなわち、1気圧)以下の全圧のシリコン前駆体の低分圧で、好適に実施される。残りの分圧は、水素、窒素またはアルゴンのような不活性パッドガスを用いて、大気圧まで高められる。
【0113】
本発明の第2の態様では、シリコン含有前駆体は、シリコン前駆体ガスおよび不活性キャリアガスの全体積を基準にして、0.5から20vol%、例えば1から15vol%、1から10vol%、1から5vol%、好ましくは少なくとも3vol%の範囲の量で使用される。
【0114】
本発明の第3の態様では、シリコン前駆体ガスの分圧は、0.5から20kPa、1から15kPa、1から10kPa、または1から5kPaである。本願で使用されるシリコン前駆体ガスの分圧は、全圧にシリコン前駆体ガスの体積割合を乗じたものとして定められる(すなわち、理想ガス挙動が仮定される)。純粋なシリコン前駆体ガスが使用される場合、シリコン前駆体ガスの分圧は、全圧と等しくなる。あるいは、全圧は、シリコン前駆体ガスの分圧と、窒素またはアルゴンのような不活性パッドガスの分圧との合計であってもよい。
【0115】
工程(b)では、400から700℃の範囲の温度、好ましくは425から550℃、または425から500℃が使用される。必要な場合、多孔質炭素粒子は、400℃未満の初期温度でシリコン前駆体ガスと接触され、その後、反応温度は、400から700℃の範囲に上昇される。
【0116】
工程(b)は、必要な場合、多孔質炭素粒子の撹拌または流動を用いて実施され、これは、プロセスが大規模に実施される場合、特に好ましい。適当な反応器種には、回転キルン、または流動床反応器(噴流床反応器を含む)が含まれる。
【0117】
表面シリコンの含有量が高い本発明の粒子材料を得るため、CVIプロセスを注意深く制御して、多孔質炭素骨格のポア構造へのシリコン前駆体ガスの拡散速度に比べて、シリコン堆積速度を確実に低くする必要がある。また、425から500℃の好適温度範囲での動作、および低濃度のシリコン前駆体ガスの使用により、シリコン堆積の速度を制御することができ、シリコン前駆体の浸透速度に比べて、シリコンの堆積速度を低くすることができる。
また、CVI反応器内の条件は、可能な限り均一である必要がある。多孔質炭素粒子の撹拌または流動により、シリコン前駆体ガスが確実に粒子に均一に浸透することが可能となり、また、反応器内の温度を粒子床全体にわたって確実に均一にすることができる。
【0118】
好ましくは、工程(b)は、大気圧以下の圧力で行われる。例えば、ステップ(b)は、100kPa未満、90kPa未満、80kPa未満、70kPa未満、または60kPa未満の絶対圧力で行うことができる。好ましくは、工程(b)は、少なくとも5kPa、少なくとも10kPa、少なくとも15kPa、少なくとも20kPa、少なくとも25kPa、または少なくとも30kPaの絶対圧力で実施される。例えば、工程bは、好ましくは、10から90kPa、20から80kPa、20から70kPa、または30から60kPaの範囲の絶対圧力で実施される。
【0119】
ステップ(b)を大気圧以下の絶対圧力で実施した場合、粒子材料生成物の表面シリコン含有量が有意に改善される結果となる。
【0120】
20%を超える表面シリコンを含む粒子材料生成物を形成する工程(b)における好適な操作条件は、10から90kPaの絶対圧で、0.5から20vol%のシリコン前駆体ガス(好ましくはシラン)を含むガスを使用することを含む。より好ましくは、2から15vol%のシリコン前駆体を含むガスが、20から80kPaの絶対圧力で使用される。より好ましくは、5から10vol%のシリコン前駆体を含むガスが、30から60kPaの絶対圧力で使用される。添付の実施例を参照すると、これらの好適条件内での操作では、少なくとも30%または少なくとも40%の極めて高い表面ケイ素含有量を有する粒子材料が信頼性良く提供される。本願に記載の制御されたCVI条件の使用と共に、多孔質炭素粒子を慎重に選択することにより、表面シリコンの含有量が極めて高く、粗大バルクシリコンの含有量が低い粒子材料を得ることができ、これは、超微細シリコンナノ構造の形態で、シリコンの高い割合が存在することを示す。そのような材料は、当該技術分野ではこれまでに報告されていない。
【0121】
CVIにより堆積された電気活性材料の表面は、大気中の酸素に曝されると、酸素と反応し、自然酸化物層を形成する。シリコンの場合、シリコン表面が酸素に曝されると、速やかにアモルファスの二酸化ケイ素膜が形成される。自然酸化物層の形成は、発熱反応であり、従って、製造または貯蔵中の粒子材料の過熱または燃焼を防止するため注意深いプロセス制御が必要である。自然酸化物層の存在は、不可逆的な容量損失およびサイクル寿命の減少と関連し、従って、リチウムイオン電池における電気活性材料の特性に有害であり得る。従って、本発明の方法は、必要な場合、堆積シリコンの露出表面を不動態化剤と接触させる、追加のステップ(c)を有してもよく、この場合、シリコンは、不動態化剤と接触する前に酸素に曝されない。
【0122】
不動態化剤は、表面酸化物の形成を阻害または防止するような方法で、電気活性材料の表面を改質することが可能な化合物として定義される。
【0123】
好適な不動態化剤には、アルケン、アルキン、またはカルボニル官能基、より好ましくは終端化アルケン、終端化アルキン、またはアルデヒド基を含む化合物が含まれる。
【0124】
好適な不動態化剤は、以下の式の1または2以上の化合物を含む:

(i)R-CH=CH-R;
(ii)R-C≡C-R;
(iii)O=CH-R;

ここでRは、H、または1から20個の炭素原子、好ましくは2から10個の炭素原子を有する非置換のもしくは置換された脂肪族もしくは芳香族のヒドロカルビル基を表し、あるいは式(i)における2つのR基は、3から8個の炭素原子を含む非置換のもしくは置換されたヒドロカルビル環構造を形成する。
【0125】
特に好ましい不動態化剤は、以下の式の1または2以上の化合物を含む:

(i)CH2=CH-R;
(ii)HC≡C-R;

ここで、Rは、前述の通りである。好ましくは、Rは非置換である。
【0126】
好適な化合物の例には、エチレン、プロピレン、1-ブテン、ブタジエン、1-ペンテン、1,4-ペンタジエン、1-ヘキセン、1-オクテン、スチレン、ジビニルベンゼン、アセチレン、フェニルアセチレン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、およびビシクロ[2.2.2]オクト-2-エンが含まれる。異なる不動態化剤の混合物も、使用され得る。好ましい不動態化剤は、エチレンである。
【0127】
不動態化剤のアルケン、アルキン、またはカルボニル基は、電気活性材料の表面においてM-H基と挿入反応を行い(Mは電気活性材料の原子を表す)、空気による酸化に対して抵抗性のある共有結合性不動態化表面を形成すると考えられる。シリコンが電気活性材料である場合、シリコン表面と不動態化剤との間の不動態化反応は、以下に概略的に示すように、ヒドロシリル化の一形態として理解され得る:
【0128】
【化1】

他の好適な不動態化剤には、酸素、窒素、硫黄またはリンと結合された活性水素原子を含む化合物が含まれる。例えば、不動態化剤は、アルコール、アミン、チオール、またはホスフィンであってもよい。電気活性材料の表面における-XH基とヒドリド基との反応は、H2の除去、およびXと電気活性材料表面との間の直接結合の形成をもたらすと理解される。
【0129】
このカテゴリーにおける好適な不動態化剤には、以下の式の化合物が含まれる:

(iv)HX-R

ここで、Xは、O、S、NR、またはPRを表し、各Rは、独立に、前述の通りである。また、式(iv)における2つのR基は、3から8個の炭素原子を含む、非置換のまたは置換されたヒドロカルビル環構造を形成してもよい。好ましくは、Xは、OまたはNHを表し、Rは、必要な場合、2から10個の炭素原子を有する、置換された脂肪族または芳香族基を表す。また、ピロリジン、ピロール、イミダゾール、ピペラジン、インドール、またはプリンの場合のように、4から10員の脂肪族または芳香族環構造にアミン基が組み込まれてもよい。
【0130】
不動態化剤が炭素含有化合物である場合、工程(c)における電気活性材料と不動態化剤との接触は、不動態化剤の熱分解温度よりも高い温度、または低い温度で実施されてもよい。不動態化剤の熱分解温度よりも低い温度で、電気活性材料が不動態化剤と接触されると、不動態化層のみがシリコン表面に形成される。不動態化剤の熱分解温度よりも高い温度で、電気活性材料が不動態化剤と接触されると、シリコン表面の不動態化は、熱分解炭素コーティングの形成と共に生じる。
【0131】
ステップ(c)における電気活性材料と不動態化剤との接触は、25から700℃の範囲の温度、および100kPaから50MPaの範囲の圧力で実施されてもよい。例えば、ステップ(c)は、本願に記載のステップ(b)に対する好適な温度および圧力範囲内で好適に実施されてもよい。
【0132】
別の適当な不動態化剤は、アンモニアである。従って、ステップ(c)は、200から700℃、好ましくは400から700℃の範囲の温度で、堆積電気活性材料の表面を、アンモニアと接触させるステップを含んでもよい。例えば、不動態化剤がアンモニアである場合、工程(c)は、工程(b)における電気活性材料の堆積に使用されるのと同じ温度で実施されてもよい。次に、必要な場合、500から1,000℃の範囲まで温度が上昇され、結晶質の窒化物表面(例えば、一般式のSiNxの窒化ケイ素表面、ここでx≦4/3)が形成される。従って、アンモニアによる不動態化では、電気活性材料の酸化を抑制する代替手段が提供される。サブ化学量論の窒化ケイ素は、導電性であるため、この工程は、導電性ネットワークの形成につながり、電気活性材料のより速い充放電が可能となる。
【0133】
ステップ(c)における不動態化は、必要な場合、ステップ(b)と同じ反応器において、例えば、シリコン前駆体ガスの反応器への流れを停止させ、不動態化剤ガスの反応器への流れを開始することによって、実施されてもよい。必要な場合、反応器は、工程(c)の前に不活性ガスでフラッシュされてもよい。
【0134】
本発明の方法は、必要な場合、工程(b)からの、または不動態化工程が実施される場合、工程(c)からの、複合粒子の表面上に導電性炭素コーティングを形成する、追加の工程(d)を有してもよい。工程(d)は、熱分解炭素前駆体の熱分解温度よりも高い温度で、電気活性材料を熱分解炭素前駆体と接触させるステップを好適に含む。
【0135】
ステップ(d)の好適な条件は、国際公開第2021/048556号に詳細に記載されている。
【0136】
固定床反応器法(実験スケール)の例として、ステンレス鋼板上に、1.8gの粒状多孔質炭素骨格を、全長に沿って1mmの一定の厚さで設置した。次に、レトルト炉のホットゾーンに配置されたガス入口および出口ラインを有する外径60mmのステンレス鋼管内に、この板を配置した。室温で窒素ガスを用いて30分間、炉管をパージした後、サンプル温度を450~500℃に上昇させた。炉管内で少なくとも90秒のガス滞留時間が確保されるように、窒素ガスの流速を調節し、30分間、その速度を維持した。次に、窒素から、窒素中に1.25 vol%の濃度のモノシランを含む混合ガスに、ガス供給を切り替える。モノシランの投与は、反応器圧力を101.3kPa(1気圧)に維持した状態で、5時間にわたって実施される。投与終了後、ガス流速を一定に維持したまま、窒素を用いてシランを炉からパージする。必要な場合、次に、材料を不動態化ガスに接触させることにより、表面不動態化工程が実施される。その後、炉は、数時間かけて室温まで冷却される。次に、ガス流を窒素から、圧縮空気供給源からの空気に切り替えることにより、2時間かけて雰囲気を徐々に空気に切り替える。
【0137】
流動床反応器法(生産スケール)の例として、0.95cm(3/8インチ)のステンレス鋼のガス入口、全長520mm、外径60mm(O.D.)の管状区画、および外径100mmのステンレス鋼膨張ヘッドを有するように作製された流動床反応器に、50gの粒状多孔質炭素骨格を配置した。反応器をフレームから吊り下げ、ホットゾーンが円錐区画から、円筒区画の全長の3/4(長さ約380mm)までになるように、垂直配向管炉を配置した。不活性ガスとして窒素を用い、1から2.5L/minの傾斜ガス流速での冷流圧降下試験により、最小流動化速度を定めた。いったん最小流動化速度が決定されると、不活性ガス流速は、最小流動化速度以上の値で、一定に維持された。一定の不活性ガス流量下で所望の反応温度まで、炉を上昇させた。目標温度435から500℃で安定化した後、純窒素から、窒素中に1.25vol%のモノシランを含むガスに、流動化ガスを切り替えた。上部と下部の間の圧力降下と、炉の温度差を測定することにより、反応の進行をモニターした。ランを通してガス流速を調整し、連続的な流動化と一致する圧力降下を維持し、床の上部と底部の間で40℃未満の最低温度差を維持した。12時間後、流動化を維持したまま、流動化ガスを純粋な窒素に切り替え、このパージを30分間続けた。必要な場合、材料を不動態化ガスと接触させることにより、表面不動態化工程が実施される。その後、炉は、数時間かけて周囲温度まで低下れる。周囲温度に達した後、炉内雰囲気は、数時間かけて徐々に空気に切り替えられた。
【0138】
減圧流動床反応器法(生産スケール)の例として、全長1100mm、外径(O.D.)89mmの管状反応器区画へのジェット速度0.5から2m/sの水平ガス噴射用に設計された複数ノズルと、O.D.457mmのステンレス鋼製膨張ヘッドとを有するように製作された流動床反応器に、250gの粒子状多孔質炭素骨格を配置した。反応器は、フレームから吊り下げられ、ホットゾーンが円錐区画から円筒区画の全長(全長約380mm)にわたって延在するように、垂直配向管炉が配置される。反応器容器は、5から140Hzの周波数で振動される。多孔質炭素粒子は、不活性ガスとして10sL/分(標準リットル/分)の窒素を用いて、38kPa(絶対圧)の圧力で流動化される。炉は、一定の不活性ガス流速下で450℃の温度まで上昇される。次に、ガス流は、2sL/分のモノシラン(SiH4)と9sL/分の窒素との混合物に、ゆっくりと切り替えられる。流出ガス中の水素の体積%を経時的に測定することにより、シリコンの堆積速度がモニターされる。いったん、約200gのシリコン(約45重量% Si)が堆積されると、約250gのシリコン(約49.5から51.5重量%Si)が堆積されるまで、0.5sL/minのモノシラン(SiH4)と9sL/minの窒素の混合物にガス流量が切り替えられる。次に、約30分間流動化を維持しながら、流動化ガスは、純粋な窒素に切り替えられ、反応器がパージされる。必要な場合、次に、材料を不動態化ガスと接触させることにより、表面不動態化工程が実施される。次に、数時間かけて炉が周囲温度まで冷却される。周囲温度に達すると、炉の雰囲気は、数時間かけて徐々に空気に切り替えられる。
【0139】
本発明の第4の態様では、本発明の第1の態様による粒子材料と、少なくとも1つの他の成分とを含む組成物が提供される。特に、本発明の第1の態様による粒子材料と、以下から選定された少なくとも1つの他の成分とを有する組成物が提供される:(i)バインダ、(ii)導電性添加剤、および(iii)追加の粒子状電気活性材料。本発明の第4の態様の組成物は、電極組成物として有益であり、従って、電極の活性層を形成するために使用されてもよい。
【0140】
本発明の第4の態様の組成物を調製するために使用される微粒子材料は、本発明の第1の態様に関して、好適にまたは任意で記載された任意の特徴を有してもよい。
【0141】
組成物は、本発明の第1の態様による粒子材料と、少なくとも1つの追加の粒子状電気活性材料とを含む、ハイブリッド電極組成物であってもよい。追加の粒子状電気活性材料の例には、グラファイト、硬質炭素、シリコン、スズ、ゲルマニウム、アルミニウム、および鉛が含まれる。少なくとも1つの追加の粒子状電気活性材料は、好ましくは、グラファイトおよび硬質炭素から選択され、最も好ましくは、少なくとも1つの追加の粒子状電気活性材料は、グラファイトである。
【0142】
ハイブリッド電極組成物の場合、組成物は、組成物の全乾燥重量を基準にして、本発明の第1の態様による粒子材料の3から60重量%、3から50重量%、5から50重量%、10から50重量%、または15から50重量%を含むことが好ましい。
【0143】
少なくとも1つの追加の粒子状電気活性材料は、少なくとも1つの追加の粒子状電気活性材料の20から95重量%、25から90重量%、または30から750重量%の量で好適に存在する。
【0144】
少なくとも1つの追加の粒子状電気活性材料は、10から50μm、好ましくは10から40μm、より好ましくは10から30μm、最も好ましくは10から25μm、例えば15から25μmの範囲のD50粒子直径を有することが好ましい。
【0145】
少なくとも1つの追加の粒子状電気活性材料のD10粒子直径は、好ましくは少なくとも5μm、より好ましくは少なくとも6μm、より好ましくは少なくとも7μm、より好ましくは少なくとも8μm、より好ましくは少なくとも9μm、さらにより好ましくは少なくとも10μmである。
【0146】
少なくとも1つの追加の粒子状電気活性材料のD90粒子直径は、好ましくは最大100μm、より好ましくは最大80μm、より好ましくは最大60μm、より好ましくは最大50μm、最も好ましくは最大40μmである。
【0147】
少なくとも1つの追加の粒子状電気活性材料は、好ましくは、炭素含有粒子、グラファイト粒子、および/または硬質炭素粒子から選択され、グラファイトおよび硬質炭素粒子は、10から50μmの範囲のD50粒子直径を有する。さらにより好ましくは、少なくとも1つの追加の粒子状電気活性材料は、グラファイト粒子から選択され、グラファイト粒子は、10から50μmの範囲のD50粒子直径を有する。
【0148】
また、組成物は、実質的に追加の粒子状電気活性材料を含まない非ハイブリッド(または「高充填」)電極組成物であってもよい。本文脈において、「追加の粒子状電気活性材料を実質的に含まない」という用語は、組成物が、該組成物の全乾燥重量に基づき、任意の追加の電気活性材料(すなわち、電池の充放電の間に金属イオンを挿入および放出することができる追加材料)の15重量%未満、好ましくは10重量%未満、好ましくは5重量%未満、好ましくは2重量%未満、より好ましくは1重量%未満、より好ましくは0.5重量%未満を含むことを意味すると解される必要がある。
【0149】
このタイプの「高充填」電極組成物は、組成物の全乾燥重量を基準にして、本発明の第1の態様による粒子材料の少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、または少なくとも90重量%を含むことが好ましい。
【0150】
組成物は、必要な場合、バインダを含んでもよい。バインダは、集電体に組成物を接着し、組成物の完全性を維持するように機能する。本発明に使用可能なバインダの例には、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリル酸(PAA)およびそのアルカリ金属塩、変性ポリアクリル酸(mPAA)およびそのアルカリ金属塩、カルボキシメチルセルロース(CMC)、変性カルボキシメチルセルロース(mCMC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(Na-CMC)、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸塩およびそのアルカリ金属塩、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ならびにポリイミドが含まれる。組成物は、バインダの混合物を含んでもよい。好ましくは、バインダは、ポリアクリル酸(PAA)およびそのアルカリ金属塩、変性ポリアクリル酸(mPAA)およびそのアルカリ金属塩、SBRならびにCMCから選択されたポリマーを含む。
【0151】
バインダは、組成物の全乾燥重量を基準にして、0.5から20重量%、好ましくは1から15重量%、好ましくは2から10重量%、最も好ましくは5から10重量%の量で好適に存在されてもよい。
【0152】
バインダは、必要な場合、架橋促進剤、カップリング剤および/または接着促進剤のような、バインダの特性を修飾する1または2以上の添加剤と組み合わせて存在してもよい。
【0153】
組成物は、必要な場合、1または2以上の導電性添加剤を含んでもよい。好ましい導電性添加剤は、組成物の電気活性成分間、および組成物の電気活性成分と集電体との間の導電性を改善するように導入された、非電気活性材料である。導電性添加剤は、カーボンブラック、カーボンファイバ、カーボンナノチューブ、グラフェン、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、金属繊維、金属粉末、および導電性金属酸化物から好適に選択されてもよい。好ましい導電性添加剤は、カーボンブラックおよびカーボンナノチューブを含む。
【0154】
組成物の全乾燥重量を基準にして、0.5から20重量%、好ましくは1から15重量%、好ましくは2から10重量%、最も好ましくは5から10重量%の総量で、1種以上の導電性添加剤が好適に存在してもよい。
【0155】
第5の態様では、本発明により、集電体と電気的に接触する、本発明の第1の態様に関して定められた粒子材料を含む電極が提供される。本発明の第5の態様の電極を調製する際に使用される粒子材料は、本発明の第1の態様に関して好適にまたは任意に説明された、任意の特徴を有してもよい。
【0156】
本願で使用される「集電体」と言う用語は、組成物中の電気活性粒子に、またはこれから電流を搬送することができる任意の導電性基板を表す。集電体として用いることができる材料の例には、銅、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケル、チタン、および焼結炭素が含まれる。銅は、好ましい材料である。集電体は、通常、3から500μmの厚さを有する箔またはメッシュの形態である。本発明の粒子材料は、好ましくは10μmから1mm、例えば20から500μm、または50から200μmの範囲の厚さで、集電体の一方または両方の表面に適用されてもよい。
【0157】
電極は、集電体と電気的に接触する、本発明の第4の態様に関して定められた組成物を含むことが好ましい。組成物は、本発明の第4の態様に関する、好適なまたは任意の記載された特徴を有してもよい。
【0158】
本発明の第5の態様の電極は、本発明の粒子材料(必要な場合、本発明の組成物の形態)を溶媒、および任意の1または2以上の粘度改質添加剤と組み合わせることにより、好適に製造され、スラリーが形成されてもよい。次に、スラリーが集電体の表面にキャスとされ、溶媒が除去され、これにより、集電体の表面に電極層が形成される。適宜、任意のバインダを硬化する熱処理および/または電極層のカレンダ化のような、別のステップが実施されてもよい。電極層は、好適には、20μmから2mm、好ましくは20μmから1mm、好ましくは20μmから500μm、好ましくは20μmから200μm、好ましくは20μmから100μm、好ましくは20μmから50μmの厚さを有する。
【0159】
あるいは、スラリーは、例えば、スラリーを好適な成形テンプレート上に成形し、溶媒を除去し、その後成形テンプレートを除去することにより、本発明の粒子材料を含む自立式薄膜またはマットに形成されてもよい。得られた薄膜またはマットは、凝集した自立塊の形態であり、その後、従来の方法により集電体に結合されてもよい。
【0160】
本発明の第5の態様の電極は、金属イオン電池のアノードとして使用されてもよい。従って、第6の態様では、本発明により、前述の電極を有するアノードと、金属イオンを放出し再吸収することができるカソード活性材料を含むカソードと、アノードとカソードとの間の電解質とを含む、再充電可能な金属イオン電池が提供される。
【0161】
金属イオンは、好ましくはリチウムイオンである。より好ましくは、本発明の再充電可能な金属イオン電池は、リチウムイオン電池であり、カソード活性材料は、リチウムイオンを放出し、受容することができる。
【0162】
カソード活性材料は、金属酸化物系の複合材料であることが好ましい。好適なカソード活性材料の例には、LiCoO2、LiCo0.99Al0.01O2、LiNiO2、LiMnO2、LiCo0.5Ni0.5O2、LiCo0.7Ni0.3O2、LiCo0.8Ni0.2O2、LiCo0.82Ni0.18O2、LiCo0.8Ni0.15Al0.05O2、LiNi0.4Co0.3Mn0.3O2、およびLiNi0.33Co0.33Mn0.34O2が含まれる。カソード集電体は、一般に、3から500μmの厚さである。カソード集電体として用いることができる材料の例には、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケル、チタン、および焼結炭素が含まれる。
【0163】
電解質には、金属塩、例えばリチウム塩を含む、非水電解質が好適であり、これに限られるものではないが、非水電解質溶液、固体電解質、および無機固体電解質を有してもよい。使用できる非水電解質溶液の例には、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ガンマブチロラクトン、1,2-ジメトキシエタン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3-ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ニトロメタン、ギ酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、スルホラン、メチルスルホラン、および1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンのような、非プロトン性有機溶媒が含まれる。
【0164】
有機固体電解質の例には、ポリエチレン誘導体ポリエチレンオキシド誘導体、ポリプロピレンオキシド誘導体、リン酸エステルポリマー、ポリエステルスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリビニリジンフルオリド、およびイオン解離基を含むポリマーが含まれる。
【0165】
無機固体電解質の例には、Li5NI2、Li3N、LiI、LiSiO4、Li2SiS3、Li4SiO4、LiOHおよびLi3PO4のような、リチウム塩の窒化物、ハロゲン化物および硫化物が含まれる。
【0166】
リチウム塩は、選択された溶媒または溶媒の混合物に好適に溶解する。好適なリチウム塩の例には、LiCl、LiBr、LiI、LiClO4、LiBF4、LiBC4O8、LiPF6、LiCF3SO3、LiAsF6、LiSbF6、LiAlCl4、CH3SO3LiおよびCF3SO3Liが含まれる。
【0167】
電解質が非水有機溶液である場合、金属イオン電池には、アノードとカソードの間に介在するセパレータが提供されることが好ましい。セパレータは、通常、高いイオン透過性および高い機械的強度を有する絶縁材料で形成される。セパレータは、通常、0.01から100μmの間のポア直径、および5から300μmの間の厚さを有する。好適な電極セパレータの例には、ミクロポーラスポリエチレン膜が含まれる。
【0168】
セパレータは、ポリマー電解質材料で置換されてもよく、そのような場合、ポリマー電解質材料は、複合アノード層と複合カソード層の両方内に存在する。ポリマー電解質材料は、固体ポリマー電解質またはゲル型ポリマー電解質であり得る。
【0169】
(例)
以下の実施例で使用される多孔質炭素骨格C1からC13は、表1に示す特徴を有する。
【0170】
【表1】

(例1:静止炉内での粒子材料の調製)
表1に記載した特性を有する粒子状多孔質骨格1.8gをステンレス鋼板上に、その全長に沿って1mmの一定の厚さで配置することにより、シリコン-炭素複合粒子を調製した。次に、レトルト炉のホットゾーンに配置されたガス入口および出口ラインを有する外径60mmのステンレス鋼チューブ内に、板を配置した。室温で窒素ガスにより炉管を30分間パージした後、サンプル温度を450から475℃の間に上昇させた。窒素ガスの流速は、炉管内で少なくとも90秒のガス滞留時間が確保されるように調整され、30分間、その速度に維持した。次に、窒素から、窒素中に1.25vol%の濃度で含まれるモノシランの混合ガスに、ガス供給が切り替えられる。モノシランの投与は、反応器圧力を101.3kPa(1気圧)に維持した状態で、最大5時間の期間にわたって実施される。投与終了後、ガス流量は一定に維持したまま、窒素を用いてシランが炉からパージされる。炉は、窒素下で30分間パージされ、その後、数時間かけて室温に冷却される。次に、窒素から、圧縮空気供給源からの空気にガス流を切り替えることにより、雰囲気が2時間にわたって徐々に空気に切り替えられる。
【0171】
(例2:表面シリコン含有量の決定)
実施例1の方法を用いて、表1に記載された炭素の各々を用いて、各量の堆積シリコン(20から60wt%の間で変化する)を有する複合粒子の一連のサンプルを作製した。表面シリコンは、各サンプルのTGA曲線から計算した。表2には、各炭素で作製されたサンプルのグループに対する、表面シリコンの平均値、最大値および最小値を示す。炭素C1、C10、およびC13を用いると、極めて少量のまたは無視できる量の表面シリコンが得られる一方、炭素C3、C4、C5、C7、C8、およびC9を含む全てのサンプルでは、良好なレベルの表面シリコンが一貫して得られることが分かる。他の炭素では、各種レベルの表面シリコンが得られた。
【0172】
【表2】

(例3:流動床反応器における粒子材料の調製)
大気圧で作動される内径83mmのステンレス鋼円筒容器を含む垂直気泡流動床反応器において、シリコン‐炭素複合粒子を調製した。表1に示した特性を有する炭素骨格粒子の粉末250gを反応器に配置する。反応器に低流速で不活性ガス(窒素)を注入し、酸素を除去する。次に、430から500℃の間の反応温度に反応器が加熱され、窒素で希釈した4体積%のモノシランガスが、シリコンの目標質量が堆積されるのに十分な長さの間、炭素骨格粒子を流動化するのに十分な流速で、反応器の底部に供給される。反応器は、窒素下で30分間パージした後、数時間かけて室温まで冷却される。次に、窒素から、圧縮空気供給源からの空気にガス流を切り替えることにより、2時間かけて雰囲気が徐々に空気に切り替えられる。
【0173】
実施例3の方法を用いて、表3の粒子材料S1、S2、およびS4からS8が調製された。
【0174】
(実施例4:低圧での流動床反応器における粒子材料の調製)
内径83mmのステンレス鋼円筒容器を含む垂直気泡流動床反応器において、シリコン‐炭素複合粒子を調製した。表1に示す特性を有する炭素骨格粒子の粉末250gを反応器に配置する。多孔質炭素粒子は、38kPa(絶対圧)の圧力で、不活性ガスとして10 sL/分(標準リットル/分)の窒素を用いて流動化される。炉は、一定の不活性ガス流速下、450℃の温度に上昇される。次に、ガス流は、2 sL/分のモノシラン(SiH4)と9 sL/分の窒素の混合ガスにゆっくりと切り替えられる。シリコンの堆積速度は、流出ガス中の水素の体積%を経時的に測定することにより、モニターされる。いったん約200gのシリコン(約45重量%Si)が堆積されると、約250gのシリコン(約49.5から51.5重量%Si)が堆積されるまで、ガス流速は、0.5 sL/minのモノシラン(SiH4)と9 sL/minの窒素の混合ガスに切り替えられる。次に、約30分間にわたり流動化を維持したまま、流動化ガスが純粋な窒素10sL/分に切り替えられ、反応器がパージされる。次に、流動化ガスは、2 sL/分のエチレン(C2H4)と9 sL/分の窒素との混合ガスに切り替えられ、シリコン表面が不動態化される。次に、流動化ガスが4 sL/分の純窒素に切り替えられる。次に、炉は、数時間かけて周囲温度まで冷却される。周囲温度に達すると、炉の雰囲気は、数時間かけて徐々に空気に切り替えられる。
【0175】
実施例4の方法を用いて、表3の粒子材料S9からS11が調製された。
【0176】
(例5:カーボンコーティング)
実施例3の方法を用いて作製した複合粒子の塊を、回転炉チューブに装填されたステンレス鋼管に入れ封止した。0.2L/分の窒素で30分間、反応器空間をパージした。窒素流下において、炉の温度を675℃に加熱した。スチレンの測定量をドレッセルボトルに入れ、ウオーターバス中で75℃に加熱した。炉温が安定してから10分後、ドレッセルボトルを2L/分の窒素でバブリングすることにより、90分間、反応器管にスチレンを流入した。次に、反応器を窒素でパージし、窒素下で周囲温度まで冷却した。その結果、炭素被覆材料が得られた。
【0177】
実施例3の方法により、表3の粒子材料S3を調製し、その後実施例4の方法を用いて炭素をコーティングした。
【0178】
(例6:表面シリコンと粗大バルクシリコンの計算)
実施例の複合材料の表面シリコンおよび粗大バルクシリコンを計算するため、以下の手順を使用した。被験サンプル10mg(±2mg)を70μLのるつぼに入れた。100mL/分のArパージガス、N2パッドガス、および空気反応ガスを含む、Mettler Toledo TGA/DSC 3+装置に、サンプルを装填した。TGA炉室を、10℃/分の速度で25℃から1400℃に加熱した。1秒間隔でデータを収集した。図1は、表3からの材料S1のサンプルのTGAプロットであり、図2は、表3からの材料S7のサンプルのプロットである。550から650℃の温度範囲において測定された最大質量(mg)(ラベルc)、最終灰質量(ラベルe)、揮発ロス後の500℃未満の最小質量(ラベルb)、および800℃での質量(ラベルd)を求めることにより、粗大バルクシリコンおよび表面シリコンの値を抽出した。前述の式を用いて、表面シリコン(Y)およびバルク粗大シリコン(Z)の値が計算される。
【0179】
【表3】

比較例サンプルS7およびS8は、FBR反応において注意深く制御された条件の重要性を示している。比較例サンプルS7において、流動化ガスの供給の中断は、反応器床における粒子の脱流動化、および反応器内の過剰温度ゾーンの形成を引き起こし、その結果、シリコン浸透の減少、および多孔質炭素骨格の表面へのシリコン堆積の増加が生じた(粗大シリコン測定値の増大により示される)。比較例S8では、400℃未満で反応が部分的に実施されるように、FBR反応の温度が変化した。理論に拘束されるものではないが、ミクロポアへのシリコンの堆積は、400℃を超える温度、特に425℃を超える温度では、速度論的に有意であるが、より低い温度では、多孔質炭素骨格の外表面でのシリコンの堆積が増加するものと考えられる。
【0180】
サンプルS9からS11は、大気圧以下の圧力でステップ(b)が実施される効果を表す。サンプルS1からS6では、大気圧CVIプロセスにおける調製後に、22重量%から40重量%の表面シリコンが含まれるが、38kPaで調製されたサンプルS9からS11は、約50重量%の表面シリコンを含む。
【0181】
(実施例7:試験セルの調製)
表3のSi-C複合材料を用いて負極コーティング(アノード)を調製し、フルコインセルの試験を実施した。電極を作製するため、CMCバインダにおけるカーボンブラックの分散物をThinky(商標)ミキサーで混合した。Si-C複合材料を混合物に添加し、Thinky(商標)ミキサーで30分間混合した。次に、CMC:SBR比が1:1となるように、SBRバインダを添加して、Si-C複合材料:CMC/SBR:カーボンブラックの重量比が70%:16%:14%のスラリーを調製した。Thinky(商標)ミキサー中でスラリーをさらに30分間混合した後、厚さ10μmの銅基板(集電体)上にコーティングし、50℃で10分間乾燥させ、その後さらに110℃で12時間乾燥させ、コーティング密度が0.7±0.5g/cm3の負極を形成した。
【0182】
多孔質ポリエチレンセパレータと、ニッケルマンガンコバルト(NMC532)正極と、負極から切り出された半径0.8cmの円形負極を用いて、フルコインセルを作製した。正極と負極は、バランス組を形成するように設計され、負極に対する正極の容量比は、0.9であった。次に、フルオロエチレンカーボネート、エチレンカーボネート、および3重量%のビニレンカーボネートを含有するエチルメチルカーボネートの溶液中に1MのLiPF6を含む電解質をセルに添加し、シールした。
【0183】
コインセルは、以下のようにサイクルされた:C/25の速度で定電流を印加し、アノードをリチウム化した。カットオフ電圧は、4.3Vであった。カットオフに達した際に、C/100のカットオフ電流に達するまで、4.3Vの定電圧が印加される。次に、リチウム化状態でセルが10分間静置された。次に、カットオフ電圧2.75V、C/25の定電流で、アノードが脱リチウム化される。その後、セルが10分間静置された。この初期サイクルの後、C/2の定電流が印加され、4.3Vのカットオフ電圧でアノードがリチウム化され、その後5分の休止時間、C/40のカットオフ電流で4.3Vの定電圧が印加された。次に、アノードがC/2の定電流、2.75Vのカットオフで脱リチウム化された。次に、その後、これが所望のサイクル数だけ繰り返された。100サイクル(CR100)および500サイクル(CR500)における容量保持が計算され、第1リチウム化容量、第1脱リチウム化容量、および第1サイクルロス(FCL)と共に、これを表4に示した。
【0184】
各サイクルの充電(リチウム化)容量および放電(脱リチウム化)容量は、シリコン-炭素複合材料の単位質量当たりで計算され、容量保持値は、第2サイクルにおける放電容量の百分率として、各放電容量に対して計算される。最初のサイクルロス(FCL)は、(1-(1回目の脱リチウム化容量/1回目のリチウム化容量))×100%である。表4の値は、各材料における3つのコインセルにわたって平均化されている。
【0185】
【表4】
図1
図2
【外国語明細書】