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特開2023-179429キレート化AAZTAコンジュゲートおよびその錯体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179429
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】キレート化AAZTAコンジュゲートおよびその錯体
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/64 20060101AFI20231212BHJP
   A61K 51/08 20060101ALI20231212BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20231212BHJP
   A61P 5/00 20060101ALI20231212BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231212BHJP
   A61K 38/08 20190101ALI20231212BHJP
   A61K 33/24 20190101ALI20231212BHJP
   A61K 33/244 20190101ALI20231212BHJP
   A61K 33/245 20190101ALI20231212BHJP
   A61K 33/34 20060101ALI20231212BHJP
   A61K 33/38 20060101ALI20231212BHJP
   A61K 31/551 20060101ALN20231212BHJP
【FI】
C07K7/64 ZNA
A61K51/08 200
A61P25/00
A61P5/00
A61P35/00
A61K51/08 100
A61K38/08
A61K33/24
A61K33/244
A61K33/245
A61K33/34
A61K33/38
A61K31/551
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023137271
(22)【出願日】2023-08-25
(62)【分割の表示】P 2021525675の分割
【原出願日】2019-11-12
(31)【優先権主張番号】18205796.8
(32)【優先日】2018-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】504448162
【氏名又は名称】ブラッコ・イメージング・ソシエタ・ペル・アチオニ
【氏名又は名称原語表記】BRACCO IMAGING S.P.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】バラニャイ,ジョルト
(72)【発明者】
【氏名】ギアーニ,シモーナ
(72)【発明者】
【氏名】マイオッキ,アレッサンドロ
(72)【発明者】
【氏名】ハワラ,イヴァン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】SSTR発現に関連する病状を診断および治療するための新規のコンジュゲートおよびその金属錯体を提供する。
【解決手段】キレート剤6-アミノ-6-メチルペルヒドロ-1,4-ジアゼピン四酢酸と[Tyr3]オクトレオテート/D-フェニルアラニル-L-システイニル-L-チロシル-D-トリプトフィル-L-リシル-L-スレオニル-L-システイニル-L-スレオニン環状ジスルフィド(SSTRアゴニスト)との新規なコンジュゲート、およびその金属または放射性同位元素との錯体とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
で示されるキレート化合物またはその薬学的に許容し得る塩。
【請求項2】
請求項1に記載のキレート化合物またはその薬学的に許容される塩と、金属イオンとを含んでなる金属錯体。
【請求項3】
金属イオンが、43Sc、44Sc、44mSc、47Sc、51Cr、52Fe、52Mn、52mMn、55Co、58Co、60Cu、61Cu、62Cu、64Cu、67Cu、67Ga、68Ga、72As、86Y、88Y、90Y、97Ru、99mTc、103Ru、105Rh、109Pd、111In、111Ag、112Ag、117mSn、140La、141Ce、142Pr、149Pm、149Tb、152Tb、155Tb、153Sm、159Gd、161Tb、165Dy、166Dy、166Ho、167Tm、168Yb、175Yb、177Lu、186Re、188Re、199 Au、203Pb、212Pb、205Bi、206Bi、210Bi、211Bi、212Bi、213Biおよび214Biから選択される金属原子のイオンである、請求項2に記載の金属錯体。
【請求項4】
金属イオンが、43Sc、44mSc、44Sc、52Fe、52Mn、52mMn、60Cu、61Cu、62Cu、64Cu、67Ga、68Ga、72As、86Y、99mTc、111In、152Tb、155Tb、199Auおよび203Pbから選択される金属原子のイオンである、請求項2に記載の金属錯体。
【請求項5】
金属イオンが、47Sc、67Cu、88Y、90Y、97Ru、103Ru、105Rh、109Pd、111Ag、112Ag、117mSn、140La、149Pm、149Tb、153Sm、161Tb、165Dy、166Dy、166Ho、167Tm、168Yb、175Yb、177Lu、186Re、188Re、199Au、205Bi、206Bi、210Bi、211Bi、212Bi、212Pb、213Biおよび214Biから選択される金属原子のイオンである、請求項2に記載の金属錯体。
【請求項6】
金属イオンが、44Sc、47Sc、68Ga、177Lu、212Pbまたは213Biのイオンである、請求項3に記載の金属錯体。
【請求項7】
生理学的に許容される塩が、イオン形態の少なくとも1つのカルボン酸基を有する式Iの化合物と、無機または有機カチオンとを含んでなる、請求項1~6のいずれかに記載の化合物。
【請求項8】
生理学的に許容される塩が、イオン形態の少なくとも1つのアミノ基を有する式Iの化合物と、無機または有機アニオンとを含んでなる、請求項1~6のいずれかに記載の化合物。
【請求項9】
好ましくはin vivo診断(PET/SPECT)のための、画像診断薬として使用するための請求項4に記載の金属錯体。
【請求項10】
神経内分泌腫瘍の検出に使用するための請求項4に記載の金属錯体。
【請求項11】
好ましくはセラノスティックまたは放射線療法のための、治療薬として使用するための請求項5に記載の金属錯体。
【請求項12】
神経内分泌腫瘍の治療に使用するための請求項5に記載の金属錯体。
【請求項13】
薬学的に許容される添加剤と組み合わせて、請求項1に記載のキレート化合物を含む医薬組成物。
【請求項14】
薬学的に許容される添加剤と組み合わせて、請求項2~12のいずれかに記載の金属錯体を含む医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、核医学(NM)の分野に関する。特に、本発明は、キレート剤6-アミノ-6-メチルペルヒドロ-1,4-ジアゼピン四酢酸と[Tyr3]オクトレオテート/D-フェニルアラニル-L-システイニル-L-チロシル-D-トリプトフィル-L-リシル-L-スレオニル-L-システイニル-L-スレオニン環状ジスルフィド(SSTRアゴニスト)との新規なコンジュゲート、およびその金属または放射性同位元素との錯体に関する。本発明はさらに、そのようなリガンドおよび錯体の調製、ならびに診断薬または治療薬としてのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
放射性医薬品は、診断および/または治療のために主要な臨床分野で使用される放射性同位元素を含むユニークな医薬製剤である。生物学的用途の場合、金属放射性核種は、安全な投与のためにキレート剤(リガンド)に配位させることが一般的行われている。さらに、放射性金属ベースの放射性医薬品を構築するために通常使用されるリガンドは、選択した標的に対する親和性と選択性を示す、標的に特異的な活性を得るために、標的ベクター(ペプチド、ヌクレオチド、抗体、ナノ粒子など)に共有結合(結合)できる反応性官能基を備えた二官能性キレート剤(BFC)である。このようにして、患者に注入するとキレート剤が放射性金属イオンにしっかりと結合し、標的分子は放射性医薬品から放射性金属を失うことなく同位体を送達でき、イメージングまたは治療のために生体内で部位特異的な放射線源を効果的に提供する(Price, Chem. Soc. Rev., 2014, 43, 260)。放射性金属の使用は、比較的半減期の短い18Fまたは11Cを分子骨格内に導入するために必要な長い(多段階の)合成と比較して、診断プローブを調製するための迅速な一段階の錯体化に役立つ。キレート剤は、開鎖/非環式のもの(EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、DTPA(ジエチレンジアミン四酢酸))およびそれらの誘導体)と、大環状のもの(NOTA(2-[4,7-ビス(カルボキシメチル)-1,4,7-トリアゾナン-1-イル]酢酸)、DOTA((1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸))およびそれらの誘導体)とに分類される。現在用いられているキレート剤の中で、DOTAは放射性金属化学の主力リガンドの1つであり、68Ga、111In、177Lu、86/90Y、225Ac、および44/47Scを含む多くの同位体の、現時点での「ゴールドスタンダード」の1つである。DOTAは広く使用されており、核医薬品用の2つの異なる製品であるNETSPOT(登録商標)(Ga-68 DOTATATE)とLUTATHERA(登録商標)(Lu-177 DOTATATE)が既にFDAによって承認され、Advanced Accelerator Applications USA INC(現在 Novartis Company)により販売されている。さまざまな二官能性中間体が市販で入手しやすい等、興味深い利点にもかかわらず、特にDOTA錯体の形成速度が非常に遅く、また反応条件が極端なため、その使用は温度許容可能なターゲティング部分に制限される。DOTAの大きな制約が世界中の多くの施設が新しいキレート剤の開発を刺激しており、現在、放射性医薬品の分野で高度に研究されている分野の1つである。当分野における技術水準の分析から明らかになった別の欠点は、現在の放射性標識の方法に関連している。温度に感受性の生物学的に活性な部分(例えば、ペプチド、ミニ抗体、抗体など)の放射性標識は、例えば、2段階のプロセスで実施することができる。第1のステップは、高温での放射性金属による二官能性キレートの標識であり、第2のステップは、より低い温度(例えば、周囲温度/室温)での生物学的活性部分と放射性錯体のコンジュゲーションとそれに続く精製である。この2段階のプロセスは、放射能のさらなる喪失を引き起こす可能性がある。これらの困難を克服するため、主に68Ga用として、「キットタイプ」の標識試薬を製造するための、別のキレート剤が提案されており(例えば、DATA-TOC(例えばNock et al. Dalton Trans. 2017, 46(42), 14584-14590を参照);またはTHP-TATE(例えば、Ma et al. EJNMMI Research, 2015, 5:52を参照);またはNODAGA-TATE(例えば、Velikyan, Bioconjugate Chem. 2008, 19, 2, 569-573を参照);THP-PSMA(例えば、Young, J Nucl Med., 2017, 58(8): 1270-1277を参照))、これらは、室温および生理学的条件に近い状態で、好ましくは1ステップのプロセスで、他の放射性金属ベースの放射線診断/放射線治療剤の調製に使用することができる。
【0003】
AAZTA(6-アミノ-6-メチルペルヒドロ-1,4-ジアゼピン四酢酸)は次式を有する。
【化1】
【0004】
AAZTAおよびAAZTA誘導体は、例えば、国際特許出願WO2003/008390、WO2006/136564、WO2006/002873、WO2013/135750、およびWO2008/071679(BRACCO Imaging SpA)に開示されている。二官能性AAZTA誘導体は多くの論文で開示されている(例えば、Nagy et al, Angew. Chem. Int. Ed., 2017;Sinnes et al, J Nucl Med, 2017;Sinnes et al, J Nucl Med , 2016;Pfister et al., EJNMMI Res., 2015, 5(1):74;Wu Z. et al., Nuclear Medicine and Biology, 43, 6, 2016, 360-371)。
【0005】
AAZTA、DTPA、DOTA、HP-DOA3(2-[4,7-ビス(カルボキシルラトメチル)-10-(2-ヒドロキシプロピル)-1,4,7、10-テトラザシクロドデカ-1-イル]アセテート)等のいくつかのキレート剤とのGdおよび68Gaの新規なキレートの合成は、有望なMRIおよびPET腫瘍イメージングプローブとしてコンフォメーションが最適化されたRGD配列とのコンジュゲーションとして、Manzoniらによって研究された(Manzoni et al. ChemMedChem, 7, 2012, 1084-1093)。
【0006】
([Tyr3]オクトレオテート/D-フェニルアラニル-L-システイニル-L-チロシル-D-トリプトフィル-L-リシル-L-スレオニル-L-システイニル-L-スレオニン環状ジスルフィド(TATE)は、次式で示されるペプチドであり、ソマトスタチン受容体(SSTR)-アゴニストとして知られている。
【化2】
【0007】
SSTRは、胃腸膵臓神経内分泌腫瘍(GEP-NET)、CNS、乳癌、肺癌、リンパ管の癌などの多くの悪性腫瘍において高い密度で見られ、腎臓癌、甲状腺髄様癌、前立腺癌、結腸癌では低い密度で見られる。神経内分泌腫瘍(NET)におけるSSTRアゴニストの役割は十分に解明されており、いくつかのNETにおいて大量のSSTR過剰発現がみられる。SSTRは立証済みのNET標的/バイオマーカーである(Kwekkeboom et al, Endocrine-Related Cancer, 2010, 17 R53-R73)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
出願人は、AAZTAリガンドと分子ベクターTATEを含む、ペプチドがコンジュゲートした新規のAAZTA誘導体を見出した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
出願人によって観察されたように、新規のプローブAAZTA-TATEの金属錯体は、対応するDOTA-TATEの金属錯体に関して予想外に改善されたin vivo特性を有する。
【0010】
出願人はさらに、AAZTAとTATEを含む本発明のバイオコンジュゲートで調製された金属錯体が、意外にも高い速度論的不活性を有することを観察した。特に、本発明のバイオコンジュゲートリガンドは、対応するAAZTAの非バイオコンジュゲート錯体と比べて、予想外に安定である。
【0011】
この新規のコンジュゲートおよびその金属錯体は、特にSSTR発現に関連する病状を診断および治療するための新しいツールとして適している。
【0012】
発明の要旨
本発明の一態様は、式(I):
【化3】
を有する化合物またはその薬学的に許容し得る塩に関する。
【0013】
本発明はさらに、式(I)のキレート化合物またはその薬学的に許容される塩と、金属イオンとを含む金属錯体に関する。
【0014】
式(I)の化合物は、以下から選択される金属原子のイオンと錯体を形成することができる:43Sc、44Sc、44mSc、47Sc、51Cr、52Fe、52Mn、52mMn、55Co、58Co、60Cu、61Cu、62Cu、64Cu、67Cu、67Ga、68Ga、72As、86Y、88Y、90Y、97Ru、99mTc、103Ru、105Rh、109Pd、111In、111Ag、112Ag、117mSn、140La、141Ce、142Pr、149Pm、149Tb、152Tb、155Tb、153Sm、159Gd、161Tb、165Dy、166Dy、166Ho、167Tm、168Yb、175Yb、177Lu、186Re、188Re、199Au、203Pb、212Pb、205Bi、206Bi、210Bi、211Bi、212Bi、213Biおよび214Bi。
【0015】
金属イオンは、好ましくは、44Sc、47Sc、68Ga、177Lu、212Pbまたは213Biのイオンから選択される。
【0016】
本発明のさらなる態様は、特に神経内分泌腫瘍の診断または治療のための、画像診断薬(例えば、PET/SPECTイメージング)または治療薬(例えば、アルファ/ベータ/オージェ)としての本化合物の使用に関する。
【0017】
本発明はさらに、式(I)の化合物の合成およびその後の選択された金属イオンとの錯体化を含む、式(I)の化合物の調製方法に関する。一般に、金属イオンが放射性核種である場合、この錯体化は「放射性標識」であるとすることもできる。
【0018】
別の態様によれば、本発明は、特に68Gaまたは44Scで放射性標識された場合、式(I)の化合物を含むPET/SPECTイメージングに適した放射性医薬組成物、または、好ましくは式(I)の化合物が213Bi、47Sc、177Lu、212Pbで放射性標識されている場合、治療目的に適した放射性医薬組成物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の詳細な説明
第1の態様では、本発明は、式(I):
【化4】
を有する新規化合物、またはその薬学的に許容し得る塩に関する。
【0020】
以下、上記の式(I)の化合物を「AAZTA-TATE」とする。
【0021】
AAZTA-TATEの調製は、以下の工程を含む、アミド化学を使用して実行することができる(たとえば、実施例の詳細な説明に従って):
A.オクタペプチド(TATE)の固相ペプチド合成(Petersen, J. Control. Release, 160, 2012, 254-263);
B.6-[ビス[2-(1,1-ジメチルエトキシ)-2-オキソエチル]アミノ]-6-(5-カルボキシペンチル)テトラヒドロ-1H-1,4-ジアゼピン-1,4(5H)-二酢酸α、α’-ビス(1,1-ジメチルエチル)エステル((tBu)4-AAZTA-C4-COOH)によるN末端アシル化;
C.固体支持体からの切断と脱保護;
D.最終化合物の分取HPLCによる精製。
【0022】
あるいは、AAZTA-TATEは、チオアミド、エステル、チオエステル、エーテル、チオエーテル、尿素、チオ尿素、トリアゾールなどの官能基を使用することにより、当業者に容易に利用可能な他の化学経路を使用することによって調製することができる。
【0023】
式(I)の化合物は、金属錯体の形成に適している。例えば、原子番号20~31、39、42、43、44、49、57~83の金属元素、または43Sc、44Sc、44mSc、47Sc、51Cr、52Fe、52Mn、52mMn、55Co、58Co、60Cu、61Cu、62Cu、64Cu、67Cu、67Ga、68Ga、72As、86Y、88Y、90Y、97Ru、99mTc、103Ru、105Rh、109Pd、111In、 111Ag、112Ag、117mSn、140La、141Ce、142Pr、149Pm、149Tb、152Tb、155Tb、153Sm、159Gd、161Tb、165Dy、166Dy、166Ho、167Tm、168Yb、175Yb、 177Lu、186Re、188Re、199 Au、203Pb、212Pb、205Bi、206Bi、210Bi、211Bi、212Bi、213Biおよび214Biから選択されるそれぞれの放射性同位元素からなる群から選択される金属原子のイオン(略して「金属イオン」)と金属錯体を形成することができる。
【0024】
好ましくは、前記金属イオンは、放射性金属原子のイオンである。本明細書および特許請求の範囲において、放射性金属原子という表現は、金属元素の放射性形態を示し、放射性金属、放射性核種、放射性金属核種および放射性同位体という表現と交換可能に使用される。
【0025】
本発明のさらなる態様は、特に神経内分泌腫瘍の診断または治療のための、画像診断薬(例えば、PET/SPECTイメージング)または治療薬(例えば、アルファ/ベータ/オージェ)としての式Iの化合物の金属錯体の使用に関する。
【0026】
特に、本発明の特定の金属錯体は、好ましくはin vivo診断(例えば、PET/SPECT)用途のために、画像診断薬として使用することができる。
【0027】
in vivo診断用途に適した金属原子の例は、43Sc、44mSc、44Sc、52Fe、52Mn、52mMn、60Cu、61Cu、62Cu、64Cu、67Ga、68Ga、72As、86Y、99mTc、111In、152Tb、155Tb、199Auおよび203Pbからなる群から選択される。
【0028】
好ましい実施形態では、in vivo診断用途のための前記金属錯体は、神経内分泌腫瘍の検出に使用される。
【0029】
本発明の特定の金属錯体は、治療薬として、好ましくはセラノスティクスまたは放射線治療(例えば、ベータ/アルファ)の用途に使用することができる。
【0030】
治療用途に適した金属原子の例は、47Sc、67Cu、88Y、90Y、97Ru、103Ru、105Rh、109Pd、111Ag、112Ag、117mSn、140La、149Pm、149Tb、153Sm、161Tb、165Dy、166Dy、166Ho、167Tm、168Yb、175Yb、177Lu、186Re、188Re、199Au、205Bi、206Bi、210Bi、211Bi、212Bi、212Pb、213Biおよび214Biからなる群から選択される。
【0031】
好ましい実施形態では、治療用途のための前記金属錯体は、神経内分泌腫瘍の治療に使用される。
【0032】
本発明の特定の実施形態では、式(I)の化合物は、遷移金属およびポスト遷移金属(68Gaなど)の群から選択される金属イオンと金属錯体を形成する。同様の金属イオンは、51Cr、52Fe、52Mn、52mMn、55Co、58Co、60Cu、61Cu、62Cu、64Cu、67Cu、67Ga、103Ru、105Rh、109Pd、111In、186Re、188Re、203Pb、212Pb、205Bi、206Bi、210Bi、211Bi、212Bi、213Biおよび214Biの核種に由来するイオンである。好ましくは、式(I)の化合物の錯体の金属イオンは、Ga、CoおよびCuからなる群から選択される金属原子のイオンである。
【0033】
他の実施形態では、式(I)の化合物は、44Scなどの希土類金属の群から選択される金属原子のイオンと金属錯体を形成する。同様の金属イオンは、43Sc、44mSc、47Sc、86Y、88Y、90Y、140La、141Ce、142Pr、149Pm、149Tb、152Tb、155Tb、153Sm、159Gd、161Tb、165Dy、166Dy、166Ho、167Tm、168Yb、175Yb、177Luの核種に由来するイオンである。好ましくは、式(I)の化合物の錯体の金属イオンは、Sc、Y、La、Ce、Tb、Sm、Gd、Dy、Ho、Tm、YbおよびLuからなる群から選択される金属原子のイオンである。
【0034】
さらなる実施形態において、式(I)の化合物は、213Biなどの軟金属の群から選択される金属イオンと金属錯体を形成する。同様の金属イオンは、103Ru、105Rh、109Pd、186Re、188Re、203Pb、212Pb、205Bi、206Bi、210Bi、211Bi、212Biおよび214Biの核種に由来するイオンである。好ましくは、式(I)の化合物の錯体の金属イオンは、BiまたはPbのイオンである。
【0035】
特に好ましい実施形態では、式(I)の化合物は、44Sc、47Sc、68Ga、177Lu、212Pbまたは213Biから選択される金属イオンと錯体を形成する。
【0036】
式(I)の化合物は、室温で「コールド」または「ホット」金属で正常に標識でき、5分で90%を超える収率が得られる。本明細書では、特に別段の定めがない限り、「コールド」または「ホット」金属という表現は、それぞれ、非放射性および放射性の金属イオンを指す。
【0037】
有利なことに、AAZTAに結合したペプチドTATEの存在は、標識プロセスに悪影響を及ぼさない。標識は、例えば、様々なモル濃度およびpHのNaOAc、NHOAcまたはHEPES緩衝液を含む様々な緩衝媒体中で実施することができる。反応温度は、室温(20℃)~95℃、好ましくは20℃~50℃の任意の温度である。反応時間は、1~60分、好ましくは5~15分の任意の時間である。
【0038】
標識化合物は、ヒト血漿およびDTPA溶液中で数時間安定である。例えば、68GaAAZTA-TATEは、DTPA溶液中、pH4および7.4で2時間安定であり(放射化学的純度(RCP)98%以上)、44ScAAZTA-TATEは両pHで24時間まで安定である(RCP 95%以上)。
【0039】
有利なことに、比較的少量のリガンドを使用することにより、式(I)の化合物で高い定量的放射化学的収率(RCY)を達成することができる。完全な放射性キレーションのためのリガンドの量がより少ないければ、比放射能が高いトレーサーになる。これにより、腫瘍の取込みが増加し、優れたイメージング(腫瘍部位における受容体密度のより正確な定量化に加えて、非常に低い受容体密度を発現する腫瘍を特定することも可能)と治療がもたらされる。
【0040】
式(I)の化合物の錯体はさらに、in vitroの実施例に詳細に示されているように、DOTA-TATEとのそれぞれの錯体と比較して、顕著に増強された細胞内在化を示す。
【0041】
意外にも、実施例に詳細に示されているように、出願人は、AAZTA-TATEの金属錯体が、同じ金属とのDOTA-TATEの錯体と比較して、予想外に改善されたin vivo特性を示すことを見出した。例えば、AAZTA-TATEの金属錯体は、DOTA-TATEの金属錯体と比較して、より優れたin vivo蓄積とより優れたin vivoイメージングを示した。
【0042】
さらに、実施例に詳細に示されているように、出願人は、AAZTA-TATEの錯体が、親錯体よりも予想外に高い速度論的不活性を示すことを見出した。
【0043】
本明細書では、リガンドがバイオコンジュゲートAAZTA-TATEであり、金属イオンがMである式(I)の化合物の金属錯体があるとすると、「親錯体」という表現は、リガンドが標的分子TATEとコンジュゲートしていないAAZTAであって金属イオンがMである錯体である、対応する非標的化金属錯体を示す。
【0044】
解離半減期の値の比較(t1/2=ln2/k、kは錯体の解離を特徴付ける疑似一次速度定数)は、AAZTA-TATE錯体の速度論的不活性が対応する非標的AAZTA金属錯体よりも高いことを示す。
【0045】
したがって、本発明の実施形態は、AAZTAの対応する非標的金属錯体に対して少なくとも2倍高い速度論的不活性を特徴とする式(I)の化合物の金属錯体に関する。
【0046】
本発明の好ましい実施形態は、AAZTAの対応する非標的金属錯体に対して少なくとも4倍、好ましくは5倍以上高い速度論的不活性を特徴とする式(I)の化合物の金属錯体に関する。
【0047】
一般に、高い速度論的不活性は、in vivoでの解離速度が低いことを示し、フリーの金属イオンやフリーのリガンドなどの解離反応の生成物に関連するリスクが低くなる。
【0048】
いくつかの実施形態において、本発明のAAZTA-TATEの金属錯体は、驚くべきことに、AAZTAの対応する親錯体に対して、より高い条件付き安定度定数(conditional stability constant)(pH=7.4、[Na]=0.15M、25℃)を示し、一般に、AAZTAの対応する錯体よりも少なくとも2倍高い。
【0049】
たとえば、錯体Ga(AAZTA-TATE)およびBi(AAZTA-TATE)は、AAZTAのそれぞれの親錯体と比較して、熱力学的特性の関連する増加を示す。
【0050】
AAZTA-TATEとの放射性医薬金属錯体は、リガンドを含むバイアルを含む放射性標識用キットを使用して調製できる(例えば、凍結乾燥形態で、場合により適切な添加剤または賦形剤と組み合わせて)。放射性核種は、放射性核種発生器(例えば、放射性核種およびそれぞれの親放射性金属核種が吸着されるクロマトグラフィーカラムの形態で)から、溶出溶媒を用いてリガンドを含むバイアルに直接溶出することができる。バイアルは、単回投与バイアルか、またはその内容物が異なる注射器に分割される複数回投与バイアルであってよい。
【0051】
さらなる実施形態において、本発明は、式Iのキレート化合物またはその薬学的に許容し得る塩を、薬学的に許容し得る添加剤と組み合わせて含有する医薬組成物に関する。
【0052】
別の態様では、本発明は、有効量の式(I)の化合物の金属錯体またはその薬学的に許容し得る塩を含み、場合により1つ以上の薬学的に許容し得る添加剤を含む放射性医薬組成物に関する。
【0053】
投薬量、剤形、投与様式、薬学的に許容される添加剤(例えば、担体、希釈剤、アジュバント)に関する詳細は、当技術分野で知られている(例えば、Monograph from World Health Organisation: Document QAS/08.262/FINAL, “RADIOPHARMACEUTICALS Final text for addition to The International Pharmacopoeia”, November 2008を参照)。
【0054】
好ましい態様では、式(I)の金属錯体の放射性医薬組成物は、静脈内投与などの従来の非経口モードによって投与することができる。例えば、本発明の医薬組成物は、非経口投与のための、場合により緩衝化された、等張滅菌水溶液中で適切に処方される。さらに、放射化学的安定剤として、アスコルビン酸、ゲンチシン酸、サリチル酸等の一重項酸素/ラジカルスカベンジャーなどを、最終製品の放射線分解を防ぐために使用することができる。
【0055】
この範囲において、そして別段の定めがない限り、「有効量」という用語は、意図された診断または治療目的を満たすのに十分な、本発明の式(I)の錯体またはその医薬組成物の任意の量を指す。キレート剤または錯体のモル量は、一般に、診断および/または治療用途ではナノモルのオーダーである(例えば、診断用としては1~500nmol、典型的には5~50nmol、ベータ治療用としては50~250nmol)。一般に、診断用途の場合、2~10mCi/患者(Ci=キュリー=37ギガベクレル(GBq))の放射線量で十分であり、アルファ治療の場合は0.2~100mCi/患者で十分であるが、ベータ治療の場合はより高い線量が必要である(例えば100~300mCi/患者)。
【0056】
リガンド(すなわちAAZTA-TATE)とその金属錯体はいずれも塩の形態で存在し得、特にカルボン酸基とアミノ基(pHに応じて)は、生理学的に適合性のある塩基または酸の好ましいカチオンまたはアニオンで塩にすることができる。
【0057】
したがって、本発明は、薬学的に許容される塩の形態の、式(I)のキレート化合物およびその金属錯体にも関する。
【0058】
本明細書で使用される「薬学的に許容される塩」という用語は、式Iの化合物のカルボキシル基またはアミノ基の少なくとも1つが、イオンの形態(すなわち、-COO-または-NH 、=NH 、≡NH)で存在し、対応する対イオンと相互作用している、本発明の化合物を指す。
【0059】
好ましい薬学的に許容される塩は、金属イオンのキレーションに関与しないAAZTAリガンドのフリーのカルボン酸基が、対応するカチオンによって塩の形態にあるものである。前記フリーのカルボン酸基の実際の数は、例えば、錯体化した金属イオンの配位数および/または化合物を含む溶液のpHに依存し得る。
【0060】
あるいは、またはさらに、前記「薬学的に許容される塩」は、TATEのアミン基が対応するアニオンにより塩の形態にある、本発明の化合物の誘導体を含み得る。
【0061】
本発明の錯体またはリガンドの塩を調製するために使用することができる適切なカチオンは、無機および有機ベースのいずれかに由来する無機または有機カチオンであり得る。無機ベースのカチオンの例としては、例えば、アルカリまたはカリウム、ナトリウム、カルシウムまたはマグネシウムなどのアルカリ土類金属のイオンが挙げられる。有機ベースのカチオンの例としては、例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、モルホリン、グルカミン、N-メチルグルカミン、N,N-ジメチルグルカミンなどの第一級、第二級および第三級アミンのカチオンが挙げられる。
【0062】
同様に、本発明の錯体またはリガンドの塩を調製するために使用することができる適切なアニオンは、無機酸および有機酸のいずれかに由来する無機または有機アニオンのいずれかであり得る。無機酸のアニオンの例としては、ハロ酸のイオン、例えば、塩化物、臭化物またはヨウ化物イオン、ならびに硫酸塩またはリン酸塩などの他の適切なイオンが挙げられる。有機酸のアニオンの例としては、例えば、酢酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩またはシュウ酸塩などの塩基性物質の塩を調製するための、製薬分野において常套的に用いられるものが挙げられる。
【0063】
アミノ酸のカチオンおよび/またはアニオンの例としては、例えば、グリシン、リジン、アルギニン、オルニチン、またはアスパラギン酸およびグルタミン酸のものが挙げられる。
【0064】
このように、それ自体としてまたは生理学的に許容される塩の形態として、そのキレート錯体を包含する式(I)の化合物の調製は、本発明のさらなる目的である。
【0065】
本発明の金属錯体は、特に神経内分泌腫瘍の同定または治療のために、PETまたはSPECTイメージング法における画像診断薬として、または標的治療薬(アルファ/ベータ/オージェ)として有利に使用することができる。
【0066】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するのに役立つであろう。
【実施例0067】
実施例1:AAZTA-TATEの合成
9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)アミノ酸およびH-Thr-(tBu)-OHがプリロードされたWangレジンは、IRIS Biotech(Marktredwiz、ドイツ)およびNovabiochem(ダルムシュタット、ドイツ)から購入した。O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU)、2,4,6-コリジンはSigma Aldrich(ダルムシュタット、ドイツ)から購入した。溶媒はすべてVWR International(Radnor、USA)から購入し、精製することなく使用した。6-[ビス[2-(1,1-ジメチルエトキシ)-2-オキソエチル]アミノ]-6-(5-カルボキシペンチル)テトラヒドロ-1H-1,4-ジアゼピン-1,4(5H)-二酢酸α、α’-ビス(1,1-ジメチルエチル)エステル(AAZTA-C4-COOHテトラtert-ブチルエステル)は、Manzoni et al., ChemMedChem, 7, 2012, 1084-1093(サポート情報)に記載されているように合成した。
【0068】
固定化された線状オクタペプチドHD-Phe-Cys(Acm)-Tyr(tBu)-D-Trp(Boc)-Lys(Boc)-Thr(tBu)-Cys(Acm)-Thr(tBu)-Wangレジンは、標準のFmocプロトコルによって、H-Thr(tBu)-OH(115mg、0.87 mmol/g)がプリロードされたWangレジン上で自動的に合成した。Fmoc基の切断は、DMF中の20%ピペリジンによって達成した。線状ペプチドを合成後、樹脂をSPPSマニュアルリアクターに移し、DMF(2mL)中のTl(CF3COO)3(109mg、0.20mmol、2当量)を室温にて75分間かけて添加することにより、樹脂上でのジスルフィド形成を行った。樹脂をDMFで十分に洗浄し、N末端を6-[ビス[2-(1,1-ジメチルエトキシ)-2-オキソエチル]アミノ]-6-(5-カルボキシペンチル)テトラヒドロ-1H-1,4-ジアゼピン-1,4(5H)-二酢酸α、α’-ビス(1,1-ジメチルエチル)エステル((tBu)4-AAZTA-C4-COOH)を3.1、2、および2当量(それぞれ、0.31、0.20および0.2mmol;211、134および134mg)で、HATU(0.31、0.2および0.2ミリモル)および塩基としてのコリジン(6.8、4および4当量)の存在下でトリプルカップリング)でアシル化した。第1のカップリングは、38rpmで室温にて一晩実施した。第2および第3のカップリングは、室温にて、38rpmで3時間実施した。各カップリング後、樹脂をDMFで十分洗浄した。ペプチドは、TFA/H2O/TIS(95:2.5:2.5)を室温で一晩添加することにより、固体支持体から切断した。最終の精製は、Atlantis prepD(登録商標)C18OBD 5μm(19×100mm)カラムを使用した分取HPLCで行った。溶離液:(A)HO中の0.1%TFA、(B)CHCN中の0.1%TFA。グラジェントプロファイル:25%のBで8.65分間のアイソクラティック、2.84分間でBの25%から45%への直線グラジェント、1.01分間で45%から100%への直線グラジェント。流速;20mL/分。AAZTA-TATEは均質なピークとして分離した。溶媒を真空留去し、生成物を水から凍結乾燥して、白色の固体(21mg、収率14%)を得た。生成物の純度は、上記と同じグラジェントプロファイルと溶媒混合物を使用し、Atlantis DC18 5μm(4.6×150mm)カラムを使用した分析HPLCでモニターした。流速:1mL/分および230nmでのUV検出。純度99%。ESI-MS(m/z):計算値:C67H91N13O21S2(M+2H)740.33実測値:740.39。
【0069】
実施例2:放射性標識実験
放射性標識実験の一般的条件
反応の放射化学的収率(RCY)を決定するため、適切な放射性HPLC法を開発した。実験は、均一な加熱を容易にするために各キャビティに数滴の水を入れて、加熱ブロック(MyBlock、Sigma Aldrich)内の閉じた1.5mLエッペンドルフチューブ内で95℃(特定の放射性標識を低温で実行しない限り)で実行した。68Gaは、ITG 68Ge/68Gaジェネレーターから0.05M塩酸で溶出される。溶出液は1mLのフラクションに集める。最大活性を有する画分(それぞれ100~120MBq)を、さらに精製することなく標識に使用した。44Scは、120~170mgの天然カルシウム標的(Sigma Aldrich 441872、99.99%)に16MeV Ge PETtrace 800サイクロトロンで30μAのビーム電流を30~60分間照射することによって得た。照射した標的物質を3Mの超純度の塩酸に溶解し、70mgのDGAレジン(Triskem DN-B25-S)、次にDOWEX(Sigma-Aldrich)レジンで以下のプロトコルに従い精製した。樹脂を1mLの使い捨てSPEシリンジに充填し、2mLの、3M HCl、1M HNO、0.1M HClおよび3M HClで洗浄した。標的溶液をレジンに押し込み、続いて4mLの3M HClで押してカルシウムを除去した。微量の鉄とニッケルを除去するため、樹脂を3mLの3M HClと3mLの1M HNOで洗浄し、3mLの0.1M HClで溶出した。10~30mgのDOWEX樹脂を1mLの3M HClおよび5mLのHOで洗浄した。DGAからの溶出液の最初の250~300μLを廃棄し、次の2.7mLをDOWEXレジンで濃縮し、1mLのHOで洗浄し、8×30μL 1M pH=4NHOAcバッファーで溶出した。最大活性の画分を標識実験に使用する。活性濃度は1~3GBq/mLの範囲であった。得られた溶液の標識効率をAAZTA-TATEで試験した。
【0070】
Radio HPLC条件
使用機器:Waters Acquity IクラスUPLC液体クロマトグラフィー(BSM、FTN、CM、PDAモジュール、20μL MXフローセルを備えたBerthold LB513放射能検出器)。ピーク面積は、各測定シリーズの最初の注入時間を使用して減衰補正(decay correct)される。RCP%値は、補正した面積値から計算される。
HPLC条件:
カラム:Kinetex XBC18 3.6μm、4.6×50mm
UV波長:210;254nm
カラム温度:30℃
68Gaラベリング用の溶離液:
A:0.1%ギ酸
B:ACN:HO(9:1)
44Scラベリング用の溶離液:
A:0.01Mシュウ酸、pH3
B:ACN:HO(9:1)
【表1】
【0071】
68Gaおよび44Scを使用したAAZTA-TATEの最適な標識条件を決定するために、標識実験を実施した。カラムの活性損失をチェックするために、すべてのサンプルをカラムありとカラムなしで測定した。ギ酸を溶離液として使用した場合、注入された活性を回収し、ガンマカウンターで測定して回収率を決定した。ピーク面積の値は、最初の注入の時間に合わせて減衰補正する。放射化学的純度の値は、補正された値から計算する。
【0072】
標識
予備実験において、AAZTA-TATEは、酢酸アンモニウムおよびHEPESバッファー中、pH=4およびpH7、95℃にて、44Scで5分間標識した。pH=4のHEPESバッファーは、0.3μMペプチドでの定量的標識で最良の結果をもたらした。室温では、AAZTA-TATEを5分で90%を超える収率で標識することができた。68Ga標識の場合、室温では、より高いペプチド濃度(1μM)とより長い反応時間(15~30分)を必要としたが;同濃度の前駆体を使用した場合、95℃で5分後には定量的収率に達することができる。これらの結果に基づいて、95℃でpH=4のHEPESバッファーを、in vitroおよびin vivo実験での調製目的で選択した。
【0073】
AAZTA-TATEとDOTA-TATEの両方で最も高い比放射能と定量的RCP%を得ることを目的として、in vivo実験用の44Scによる標識を実施した。したがって、44Sc-AAZTA-TATE標識の場合で得られた比放射能は、通常85~110GBq/μmolの範囲で変化したが、DOTA-TATEの場合、比放射能は8~20GBq/μmolの範囲で変化した。結果は、DOTA-TATEの代わりにAAZTA-TATEを使用することで達成できるラベリング性能の優位性を示している。
【0074】
品質管理
スカンジウム標識は、シュウ酸塩-アセトニトリルグラジェントを使用したKinetexカラムのHPLCで、活性低下の兆候なくモニターされた。予備実験では、保持力の低い幅広いピークとして溶出されるガリウムとAAZTAのシュウ酸塩との混合錯体の形成が観察された。Ga3+は固体表面に吸着されるため、生成物溶液または反応混合物サンプルのフリーの68Ga3+含有量は、キレート剤の存在なしでは定量できない。DTPA溶液(0.01M)を添加すると、活性損失が減少することが分かった。HPLC溶出物を回収し、ガンマカウンターで測定することにより、本方法をチェックした。
【0075】
標識化合物の安定性
標識化合物の安定性をヒト血漿およびDTPA溶液中で測定した。68GaAAZTA-TATEは、DTPA溶液中、pH4および7.4で2時間安定であった(RCP98%)。44ScAAZTA-TATEは、両方のpHで24時間で約95%の放射化学的純度に達した。
【0076】
各時点でキレート剤から放出される放射性金属の量を決定するために、さらに血漿安定性実験を実施した。標識化合物は、68Gaの場合は2時間、44Scの場合は24時間、ヒト血漿を含む密閉シリンジ内で37℃にてインキュベートした。フリーのGa3+は血漿タンパク質に吸着され、HPLC分析の前にサンプルから除去する必要があり、68Ga3+の損失を引き起こす。血漿沈殿物の洗浄は効果的ではなかったため、溶液中のGa3+を安定化するために、タンパク質沈殿の前に血漿サンプルにDTPAを添加した。各時点で、50μLのサンプルを採取し、50μLの10mM pH=4 DTPA溶液と混合し、37℃で10分間静置した。サンプルを25μLの冷50%エタノールと混合した。75μLの冷アセトニトリルを加え、サンプルを9000RPMで10分間遠心分離した。上清から50μLのサンプルを採取し、HPLCに注入した。
【0077】
両方の放射性標識化合物の血漿安定性をTable 2に示す。
【表2】

結果は、68GaAAZTA-TATEが高いRCP%(2時間の血漿インキュベーション後で約95%)を示したことを示している。一方、44ScAAZTA-TATEの場合、結果は、24時間のインキュベーション後のRCP%が約96%であることを示している。
結論として、結果は、本発明の化合物が、放射性標識後の高い定量的RCPを特徴とし、血漿中で長時間安定であることを示している。
【0078】
実施例3:in vitro細胞実験
セルカルチャー
AR42J((ATCC(登録商標)CRL-1492TM)ソマトスタチン受容体ポジティブラット膵外分泌腫瘍)およびヒトA2780(受容体ネガティブヒト卵巣癌)細胞株は、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)から購入した。LNCaP細胞は、10%ウシ胎児血清(FBS、GIBCO Life Technologies)および1%抗生物質および抗真菌物質溶液(Sigma-Aldrich)を添加したRPMI-1640培地(GIBCO Life Technologies)で培養した。A2780細胞は、10%FBSおよび1%抗生物質および抗真菌物質溶液を添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、GIBCO Life Technologies)で培養した。すべての細胞株は5%CO、37℃で培養した。in vitro実験では、細胞を85%コンフルエンスで使用し、細胞の生存率は、トリパンブルー排除試験での評価では常に95%より高かった。
【0079】
細胞取込み実験
AR42JおよびA2780細胞をトリプシン処理して遠心分離し、DMEMに再懸濁し、1×10mL-1の細胞濃度で試験管に分注した。試験管を0.37MBqの68Gaまたは44Sc標識DOTAまたはAAZTA-TATEの存在下で37℃にて15、30、60および90分間インキュベートした。インキュベーション後、時間サンプルを氷冷PBSで3回洗浄し、68Ga感受性エネルギーウィンドウ内で1分間、校正済みガンマカウンター(Perkin Elmer Wizardガンマカウンター)を使用して放射能を測定した。崩壊補正された放射性トレーサーの取込みは、カウント/(分(10細胞))(cpm)として表した。取込みは、細胞に添加された放射性トレーサーの総放射能のパーセンテージとして表した(%ID/10細胞)。各実験を3回行ない、表示されたデータは少なくとも3回の独立した実験の平均(±SD)を表している。
【0080】
in vitro飽和結合実験
in vitro飽和結合実験のために、メラニン性AR42J細胞を使用した。細胞を24ウェルプレート(ウェルあたり5×10)で24時間培養した。細胞培養培地(DMEM)中異なる濃度の44Sc-または68Ga-AAZTA-TATEを各ウェルに200μLの容量で添加した。30、90分のインキュベーション時間(37℃のCOインキュベーター内)後、培地を除去し、細胞をPBSで2回洗浄した後、グリシン(0.2M)で2回洗浄し、NaOH(1M)で37℃にて10分間溶解した。
【0081】
リガンド-受容体相互作用を測定するために、2つの異なるin vitro細胞実験(内在化と飽和結合)を実施した。
【0082】
3a. 44 Sc-AAZTA-TATEと 44 Sc-DOTA-TATEの細胞取込み実験
内在化実験は、受容体を介した放射性リガンドの細胞への取込みを測定する。この目的のために、AR42JおよびA2780細胞をトリプシン処理して遠心分離し、DMEMに再懸濁し、1×10mL-1の細胞濃度で試験管に分注した。チューブを0.37MBqの44Sc標識DOTA-またはAAZTA-TATEの存在下で37℃にて15、30、60および90分間インキュベートした。インキュベーション後、サンプルを氷冷PBSで3回洗浄し、放射能を、較正されたガンマカウンター(Perkin Elmer Wizardガンマカウンター)で測定した。崩壊補正された放射性トレーサーの取込みは、カウント/(分(10細胞))(cpm)として表した。取込みは、細胞に添加された放射性トレーサーの総放射能のパーセンテージとして表した(%ID/10細胞)。各実験を3回行ない、表示されたデータは少なくとも3回の独立した実験の平均(±SD)を表している。結果は、AR42Jとコントロール細胞株A2780での分析されたトレーサー(細胞に添加された放射性トレーサーの総放射能のパーセンテージとして表される、44Sc-AAZTA-TATEまたは44Sc-DOTA-TATE、%ID/106細胞)の取込みの比率として報告される。
【0083】
Table 3に示された結果は、44Sc-DOTA-TATEと比較して、錯体44Sc-AAZTA-TATEの顕著に増強された内在化を示した。
【表3】
【0084】
3b.in vitro飽和結合実験
in vitro飽和結合実験は、放射性リガンド濃度の増大により平衡状態での放射性標識リガンドの特異的な受容体媒介取込みを測定する。
in vitro飽和結合実験ではメラニン性AR42J細胞を使用した。細胞を24ウェルプレート(ウェルあたり5×10)で24時間培養した。セルカルチャー培地(DMEM)中異なる濃度の44Sc-AAZTA-TATEおよび44Sc-DOTA-TATEを各ウェルに200μLの容量で添加した。30、90分のインキュベーション時間(37℃のCOインキュベーター内)後、培地を除去し、細胞をPBSで2回洗浄した後、グリシン(0.2M)で2回洗浄し、NaOH(1M)で37℃にて10分間溶解した。
放射性リガンドの濃度に対して特異的結合をプロットする飽和曲線を作成した。両リガンドは良好な内在化を示し、特に錯体44Sc-AAZTA-TATEの飽和曲線では、結合種がより高い量でプラトーに達する(Table 4aおよびTable 4b)。
【表4】
【0085】
実施例4:in vivoイメージングの結果
AR42Jでのin vivo取込み(PET/MRIイメージング)
in vivo実験は、腫瘍細胞(腫瘍体積125±10mm3)を皮下注射した12±1日後に実施した。in vivoイメージング実験は、AR42J膵臓腫瘍を有する雄のCB17 SCIDマウス(n=5)に44Sc-または68Ga-AAZTA-TATE(注射した放射能の範囲:14~22MBq)または44Sc-DOTA-TATE(注射した放射能の範囲:17~22MBq)を外側尾静脈から静脈内注射した。44Sc-AAZTA-TATEを注入する前に、過剰量のAAZTA-TATEを注入してブロッキング実験を行った(n=3)。in vivo速度論的スキャン(0~90分)、次いで2.5時間目に20分間の静的スキャンを実行した。イメージング実験中、専用の小動物麻酔装置を使用して、マウスを3~1.5%のイソフルラン(Forane)で麻酔した。臓器および組織の解剖学的局在を決定するために、前臨床nanoScanPET/MRIシステム(Mediso Ltd.、ハンガリー)を使用して、全身のT1強調MRIスキャンを実行した(3D GRE EXT multi-FOV;TR/TE 15/2 ms;フェーズ:100;FOV 55 mm;NEX:2)。PETボリュームは、three-dimensional Ordered Subsets Expectation Maximization(3DOSEM)アルゴリズム(Tera-Tomo、Mediso Ltd.、ハンガリー)を使用して再構築した。PETおよびMRI画像は、nanoScan PET/MRI装置の取得ソフトウェア(Nucline)によって自動的に同時記録した。再構成された画像は、InterViewTM FUSION(Mediso Ltd.、ハンガリー)画像分析ソフトウェアを使用して分析した。楕円体の3次元関心領域(VOI)は、目視検査によって組織または臓器の放射能のエッジの周りを手動で描画した。放射性トレーサーの取込みは、標準化された取込値(SUV)で表した。SUVは次のように計算した:SUV=[VOI放射能(Bq/ml)]/[注入した放射能(Bq)/動物の体重(g)](密度を1g/mLと仮定)。
【0086】
注射後2.5時間での癌を有する動物(n=5/群、n=3/ブロッキング実験)を使用したin vivo PET-MRI取込み実験のSUV平均値をTable 5に示す。
【表5】

44ScAAZTA-TATEのin vivoの結果は、腫瘍組織に対する本化合物の高い取込みを示している。実際に、SUVの平均値(2.74±0.95)は、44ScDOTA-TATEの平均値(1.01±0.47)と比較して顕著に高い。さらに、AAZTA-TATEのブロッキング実験は、腫瘍取込みおよびsst受容体発現腫瘍における44Sc AAZTA-TATEの蓄積が、非常に特異的であることを示した。
結論として、結果は、本発明の化合物が、対応するDOTAの化合物よりも、腫瘍組織でのより高い取込みによって特徴付けられることを示した。また、ブロッキング実験では、本発明の化合物の腫瘍取込みが非常に特異的であることが確認された。
【0087】
実施例5:化合物Ga-AAZTA-TATEの安定性および速度論的不活性の評価
5a.Ga-AAZTA-TATE錯体の平衡実験
Ga-AAZTA-TATE錯体の熱力学的特性を、条件付き安定度定数(logKcond=logKtherm/(1+α)、ここで、α=K [H]+K [H+...+K ...K [HおよびK 、K 、...K は、0.15M NaCl溶液中のpH=7.0でのフリーのリガンドのプロトン化定数である)によって特徴付けた。Ga(AAZTA)錯体の平衡特性に基づいて、Ga(AAZTA)OH種は生理学的条件で優勢である(式(1)、Baranyai, Eur. J. Inorg. Chem., 2013, 147-162)。Ga(AAZTA)OH種の条件付き安定度定数は、(logKcond=logKtherm/([OH-](1+α))で示される。類似性に従い、Ga(AAZTA-TATE)OH錯体も生理学的条件で優勢であると推測できる。
【数1】
(式中、L=AAZTA、AAZTA-TATE)
Ga(AAZTA-TATE)OH錯体の条件付き安定度定数は、Chang, J. Chinese. Chem. Soc. 1999, 46, 519-528に記載されているように、0.15MのNaCl溶液中pH=7.0および25℃で、Ga3+に対するAAZTA-TATEとAAZTAの競合反応を調べるキャピラリーゾーン電気泳動(Hewlett-Packard HP3Dキャピラリー電気泳動システム)によって決定した。これらの実験では、Ga3+とAAZTA-TATEの濃度を25.0μMとし、AAZTAの濃度を25.0~150.0μMの間で変えた(6×1mLサンプル)。濃NaOHまたはHClを段階的に加えることにより、pHを7.0に調整した。平衡に達するために、サンプルを50℃で3日間、次に25℃で2週間保持した(平衡に達するのに必要な時間はキャピラリー電気泳動で決定した)。Ga(AAZTA-TATE)OH錯体の量は減少し、フリーの[AAZTA-TATE]は、Ga3+-イオンに対するAAZTA-TATEとAAZTAの競合反応に従って、[HxAAZTA]の増加とともに増加する(式(2))。
【数2】
(式中、x=1および2)。AAZTAの総濃度([AAZTA]tot=[HxAAZTA]+[Ga(AAZTA)OH])を考慮して、キャピラリーゾーン電気泳動実験のデータからKGaTATE値を0.49(6)と計算した。[Ga(AAZTA)OH]の安定度定数(logKthermGa(AAZTA)OH=16.57、0.15M NaCl、25℃、Baranyai, Eur. J. Inorg. Chem., 2013, 147-162)を考慮することにより、AAZTAリガンドのプロトン化定数(logK =9.98、logK =6.52、logK3 H=3.76、logK H=2.21、0.15M NaCl、25℃、Baranyai, Eur. J. Inorg. Chem., 2013, 147-162)、Ga(AAZTA)OHの条件付き安定度定数は、0.15M NaCl溶液中、pH=7.0および25℃でlogKcond Ga(AAZTA)OH=20.1であることがわかった。KGaTATE平衡定数(KGaTATE=0.49)とGa(AAZTA)OHの条件付き安定度定数(logKcond Ga(AAZTA)OH=20.1)を考慮することにより、Ga(AAZTA-TATE)OH錯体の条件付き安定度定数(logKcond Ga(AAZTA-TATE)OH=logKcond Ga(AAZTA)OH-logKGaTATE)は、logKcond Ga(AAZTA-TATE)OH=20.5であることが分かった。これらのエビデンスに基づくと、Ga(AAZTA-TATE)OH錯体の条件付き安定度定数は、Ga(AAZTA)OH錯体の条件付き安定度定数よりも約0.4logK単位高くなっている。
【0088】
5b.Ga(AAZTA-TATE)OH錯体とヒト血清トランスフェリンとのトランスキレーション反応の速度論的実験
Ga(AAZTA-TATE)OHとヒト血清アポトランスフェリン(sTf、Sigma)のリガンド交換反応は、246nmおよびpH=7.4にて、1.0cmセルを用いるAgilent 8453 UV-Vis分光光度計を使用し、Baranyai, Eur. J. Inorg. Chem., 2013, 147-162に開示されている疑似一次速度論的条件([Ga(AAZTA-TATE)OH]=50μM、[Trf]=8および16μM)を保証するため、Ga(AAZTA-TATE)OH過剰の存在下でのGa-トランスフェリン錯体の形成により、分光光度法(式(3))により実験した。ヒト血清トランスフェリン溶液の濃度は、モル吸光係数ε280=91200cm-1M-1(Takahashi, J. Biochem. 1989, 106, 858-863)を使用して280nmでの吸光度から決定した。温度は25℃に維持し、サンプルのイオン強度と炭酸水素塩濃度(NaClの場合は0.15M、NaHCO¥3の場合0.025M)を一定に保った。
【数3】

[Ga(AAZTA-TATE)OH]=50μMおよび[sTf]=8および16μMで得られたGa(AAZTA-TATE)OHとsTf間のトランスキレーション反応の速度は、それぞれ7.86×10-11および8.17×10-11mol/dm-3s-1である。。これらの速度論的データは、[sTf]がGa(AAZTA-TATE)OHの解離速度に実質的に影響を及ぼさないことを明確に示している。反応速度(d[Ga(sTf)]/dt=kd[Ga(AAZTA-TATE)]t=7.86×10-11および8.17×10-11mol/dm-3s-1)を考慮して、Ga(AAZTA-TATE)OHとsTfの間のトランスキレーション反応を特徴付けるkd疑似一次速度定数を計算した。Table 6に、Ga(AAZTA-TATE)OHとsTfの間のトランスキレーション反応のkd疑似一次速度定数と半減期の値(t1/2=ln2/kd)を示し、Ga(AAZTA)OH]とsTfの間のリガンド交換反応と比較した。
【表6】

Ga(AAZTA-TATE)OHとsTf間のトランスキレート反応のkdの平均値は1.60×10-6s-1であり、生理学的条件(pH=7.4、0.025M NaHCO¥3、0.15M NaCl)付近でのGa(AAZTA)OHとsTf間のトランスキレート反応の平均値(8.0×10-6s-1)よりも約5.4小さいことが分かった。このkd値を考慮すれば、Ga(AAZTA-TATE)OHとsTf間のトランスキレーション反応の半減期(t1/2=ln2/kd)は、Ga(AAZTA)OHとsTfのリガンド交換反応で得られたt1/2値の半減期よりも約5.4倍長い。
【0089】
実施例6:Sc(AAZTA-TATE)の安定性と速度論的不活性の評価
6a.平衡実験
Sc(AAZTA-TATE)錯体の熱力学的特性は、条件付き安定度定数(logKcond=logKtherm/(1+α)、α=K [H]+K [H+...+K ...K [HおよびK 、K 、...K は、0.15M NaCl溶液中のpH=7.0でのフリーのリガンドのプロトン化定数である)によって特徴づけた。Sc(AAZTA-TATE)錯体のlogKcond値を決定するために、Sc3+に対するAAZTA-TATEとNTAの競合反応を、反応で形成したSc(NTA)錯体(δSc=59.9ppm)の積分を用いて45Sc NMR分光法(9.4TでのBruker Avance III 400分光計)で追跡することにより調べた(式(4)、H3NTA=ニトリロ三酢酸、pH=7.4、25℃、0.15M NaCl)。
【数4】

Sc(AAZTA-TATE)の平衡特性評価では、Sc3+とAAZTA-TATEの濃度が203.3μMと206.2μMで、NTAの濃度を0.0から20.06mMの間で変えた7つのサンプルを調製した(事前に調製した0.15M NaCl中のSc(NTA)2錯体の溶液にAAZTA-TATEを添加することにより、1mLのサンプルを7つ調製した)。濃NaOHまたはHCl溶液を段階的に加えることにより、pHを7.4に調整した。平衡に達するために、サンプルを25℃で8週間保持した(平衡に達するのに要した時間を45Sc NMR分光法により測定した)。
【0090】
Sc(AAZTA-TATE)の平衡特性をSc(AAZTA)の平衡特性と比較するため、Sc(AAZTA)の条件付き安定度定数は、Sc3+に対するAAZTAとNTAの競合反応を、反応で形成したSc(NTA)2錯体(δSc=59.9ppm)の積分を用いることにより45Sc NMR分光法で追跡することによって決定した(式(5)、pH=7.4、25℃、0.15M NaCl)。
【数5】

Sc(AAZTA)の平衡特性評価では、Sc3+とAAZTAの濃度が203.3μMと207.1μMで、NTAの濃度を0.0から20.06mMの間で変えた7つのサンプルを調製した(事前に調製した0.15M NaCl中のSc(NTA)2錯体の溶液にAAZTAを添加することにより、2mLのサンプルを7つ調製した)。濃NaOHまたはHCl溶液を段階的に加えることにより、pHを7.4に調整した。平衡に達するために、サンプルを25℃で8週間保持した(平衡に達するのに要した時間を45Sc NMR分光法により測定した)。平衡計算については、NTAリガンドのプロトン化定数(NTA:logK =9.13(1)、logK =2.63(2)、logK3 H=1.64(3);25℃、0.15M NaCl)およびSc(NTA)およびSc(NTA)2錯体の安定定数(logKSc(NTA)=14.12(3)、logβSc(NTA)2=24.08(2)、25℃、0.15M NaCl)を、pH-電位差測定および45Sc NMR分光法により、文献に記載されているように決定した(Nagy、Angew Chem Int Ed Engl 2017、56、2118-2122)。
【0091】
Sc(NTA)2錯体の量は、Sc3+-イオンに対するAAZTA-TATEおよびAAZTAと、NTAとの競合反応に従って[NTA]の増加とともに増加する(式(4)および(5))。Sc3+-イオンに対するAAZTA-TATEおよびAAZTAとNTAとの競合反応(式(4)および(5))は、KScTATEおよびKScAA平衡定数によって特徴付けることができ、これは次式で表すことができる。
【数6】
【数7】
【0092】
NTA([NTA]tot=[HxNTA]+2[Sc(NTA)2])、Sc3+イオン([Sc3+tot=[Sc(NTA)2]+[Sc(AAZTA-TATE)])およびAAZTA-TATE([AAZTA-TATE]tot=[Sc(AAZTA-TATE)]+[HxAAZTA-TATE])の総濃度を考慮して、KScTATE(式(6))の値を、Sc3+-AAZTA-TATE-NTAシステムの45Sc NMRスペクトルにおけるSc(NTA)2錯体の積分値から計算した(KScTATE=3.42(9))。我々の実験条件で優勢であるSc(NTA)2の安定度定数(logβc(NTA)2=24.08、0.15M NaCl、25℃)、NTAリガンドのプロトン化定数(logK1 H=9.13(1)、logK2 H=2.63(2)、logK3 H=1.64(3);25℃、0.15M NaCl)から、Sc(NTA)2の条件付き安定度定数は、0.15M NaCl溶液中pH=7.4および25℃でlogKcond Sc(NTA)2=20.63であることが分かった。KScTATE平衡定数(KScTATE=3.42)とSc(NTA)2の条件付き安定度定数(logKcond Sc(NTA)2=20.63)から、Sc(AAZTA-TATE)錯体の条件付き安定度定数(logKcond Sc(AAZTA-TATE=logKScTATE+logKcond Sc(NTA)2)は、0.15M NaCl溶液中pH=7.4および25℃でlogKcond Sc(AAZTA-TATE)=21.2であると分かった。
【0093】
NTA([NTA]tot=[HxNTA]+2[Sc(NTA)2])、Sc3+イオン([Sc3+]tot=[Sc(NTA)2]+[Sc(AAZTA)])およびAAZTA([AAZTA]tot=[Sc(AAZTA)]+[HxAAZTA])の総濃度を考慮して、KScAA(式(7))の値を、Sc3+-AAZTA-NTAシステムの45Sc NMRスペクトルにおけるSc(NTA)2錯体の積分値から計算した(KScAA=70.3(5))。KScAA平衡定数(KScAA=70.3)とSc(NTA)2の条件付き安定度定数(logKcond Sc(NTA)2=20.63)から、Sc(AAZTA)錯体の条件付き安定度定数(logKcond Sc(AAZTA)=logKScAA+logKcond Sc(NTA)2)は、0.15M NaCl溶液中pH=7.4および25℃でlogKcond Sc(AAZTA)=22.5であると分かった。これらのエビデンスに基づき、Sc(AAZTA-TATE)錯体の条件付き安定度定数は、0.15M NaCl溶液中pH=7.4および25℃でのSc(AAZTA)錯体の条件付き安定度定数よりも約1logK単位低い。
【0094】
6b.Sc(AAZTA-TATE)とNTAリガンド(NTA=ニトリロ三酢酸)との間のトランスキレーション反応の速度論的実験
Sc(AAZTA-TATE)とNTA(Sigma)のリガンド交換反応は、pH=5.5および25℃にて45Sc NMR分光法により実験した。Sc(AAZTA-TATE)のトランスキレーションを、上記のように反応中に形成したSc(NTA)2錯体(式(8))の積分を追跡することによってモニターした。
【数8】
【0095】
速度論的実験では、疑似一次速度論的条件を保証するため、2500倍および5000倍過剰のNTAリガンドの存在下でSc(AAZTA-TATE)の濃度が0.2mMである2つのサンプル(2×0.8mLサンプル)を調製した。濃NaOHまたはHClを段階的に加えることにより、pHを5.5に調整した。高濃度のNTAが存在するため、pH値を一定に保つためのバッファーは使用しなかった。Sc(AAZTA-TATE)-NTA反応系の45Sc NMRスペクトルでは、式(8)に記載されるSc(AAZTA-TATE)とNTAのトランスキレーション反応によるSc(NTA)2錯体の積分の増大がもたらされる。疑似一次速度定数(k)は、積分(Sc(NTA)2)-時間データセットを式(9)にフィッティングすることにより計算した。
【数9】
[式中、A、A、Aは、それぞれ、時間t、反応の開始時、終了時での積分値である]
【0096】
類似性に基づいて、Sc(AAZTA-TATE)のトランキレーション反応のメカニズムは、親のSc(AAZTA)錯体のメカニズムと非常に類似していると推測できる(Nagy, Angew Chem Int Ed Engl 2017, 56, 2118-2122)。Sc(AAZTA-TATE)のトランスキレーション反応は、律速段階の、HがアシストするSc(AAZTA-TATE)錯体の解離が起こり、フリーのSc3+と、交換されるNTAリガンド間の高速反応がその後に続く。[Sc(AAZTA-TATE)]=0.2mM、[NTA]=0.5および1.0M、pH=5.50および5.35で得られた、Sc(AAZTA-TATE)とNTAの間のトランスキレーション反応を特徴付ける疑似一次速度定数(k)は、それぞれ、(1.7±0.2)×10-7 s-1、(1.8±0.3)×10-7 s-1である。これらの速度論的データは、[NTA]がSc(AAZTA-TATE)の解離速度に実質的に影響を及ぼさないことを明確に示している。
pH=5.50と5.35で得られたSc(AAZTA)とSc(AAZTA-TATE)の解離半減期(t1/2=ln2/k)(Sc(AAZTA):t1/2=469および600時間(Nagy, Angew Chem Int Ed Engl 2017, 56, 2118-2122);Sc(AAZTA-TATE):t1/2=1100および1050時間、25℃)の比較は、Sc(AAZTA-TATE)の速度論的不活性がSc(AAZTA)よりも約2倍高いことを示している。
【0097】
実施例7:化合物Bi-AAZTA-TATEの安定性および速度論的不活性の評価
7a.平衡実験
Bi(AAZTA)の安定度定数は、Bi3+に対するAAZTAとNTAの競合反応(式(10))を、210~350nmの波長範囲でUV分光光度法で追跡することにより決定した。Bi3+とNTAの濃度は30.2μMと10mMとし、AAZTAの濃度は0.15MのNaClO4溶液中0~50μMの間で変えた(予め調製したBi(NTA)2錯体にAAZTAを添加した6×2mLのサンプル)。濃NaOHまたはHClOを段階的に添加することにより、pHを7.4に調整した。平衡に達するために、サンプルを50℃で1週間、25℃で2週間保持した(平衡に達するのに必要な時間は分光光度法で測定した)。分光光度測定は、PerkinElmer Lambda 365 UV-Vis分光光度計を使用し、25℃で1.0cmセルを使用して行った。平衡計算に関して、AAZTAおよびNTAリガンドのプロトン化定数(AAZTA:logK =10.29、logK2 =6.51、logK3 H=3.86、logK H=1.94、logK5 H=1.00;NTA:logK =9.22、logK2 =2.98、logK3 H=1.06;25℃、0.15M NaClO4)およびBi(NTA)およびBi(NTA)2錯体の安定度定数(logKBi(NTA)=16.97、logβBi(NTA)2=26.21、25℃、0.15M NaClO4)は文献に記載されているように決定されている(Baranyai, Eur. J. Inorg. Chem., 2013, 147-162, KARADAKOV, Talanta, 1970, 17, 883-887)。平衡定数は、プログラムPSEQUAD(L. Zekany and I. Nagypal in PSEQUAD, Vol.(Ed. D. Leggett), Springer US, 1985, pp. 291-353)を使用して計算した。
【数10】

Bi3+-NTA-AAZTAシステムのUV分光光度法による実験から計算されたBi(AAZTA)の熱力学的安定度定数は、0.15M NaClO4中25℃でlogKBi(AAZTA)=26.45(6)である。AAZTAリガンドのプロトン化定数(logK1 H=10.29、logK2 H=6.51、logK3 H=3.86、logK4 H=1.94、logK5 H=1.00、0.15M NaClO4中25℃)およびBi(AAZTA)の安定度定数(logKBi(AAZTA)=26.45、0.15M NaClO4中25℃)から、Bi(AAZTA)の条件付き安定度定数は、0.15M NaClO4中pH=7.4、25℃で、logKcond Bi(AAZTA)=logKBi(AAZTA)/(1+α)=23.5と計算された(α=K1 H[H]+K1 HK2 H[H]2+...+K1 HK2 H...Kn H[H]n および K1 H、K2 H、... Kn Hは、0.15M NaClO4溶液中のpH=7.4でのフリーのリガンドのプロトン化定数である)。
【0098】
さらに、Bi(AAZTA-TATE)錯体の熱力学的特性を、条件付き安定度定数(logKcond=logKtherm/(1+αH))によって特徴づけた。Bi(AAZTA-TATE)錯体のlogKcond値を決定するために、Bi3+に対するAAZTA-TATEとNTAの競合反応(式(11))を、Chang, J. Chinese. Chem. Soc. 1999, 46, 519-528(H3NTA=ニトリロ三酢酸)に開示されるように、pH=7.4の0.15M NaClO4溶液中でのキャピラリーゾーン電気泳動(Hewlett-Packard HP3D キャピラリー電気泳動システム)によって実施した。Bi(AAZTA-C4-TATE)の平衡特性評価では、Bi3+とNTAの濃度は30.2μMと15.0mMとし、AAZTA-C4-TATEの濃度は0.15MのNaClO4溶液中で0.0~50.4μMの間で変えた(予め調製したBi(NTA)2錯体にAAZTA-C4-TATEを添加した5×1mLのサンプル)。濃NaOHまたはHClOを段階的に添加することにより、pHを7.4に調整した。平衡に達するために、サンプルを50℃で1週間、25℃で2週間保持した(平衡に達するのに必要な時間はキャピラリー電気泳動で測定した)。
【数11】
【0099】
Bi3+-イオンに対するAAZTA-TATEとNTAの競合反応(式(11))に従ってAAZTA-TATEの量が増大することにより、Bi(AAZTA-TATE)錯体の量が増加する。NTA([NTA]tot=[HxNTA]+2[Bi(NTA)2])、Bi3+イオン([Bi3+]tot=[Bi(NTA)2]+[Bi(AAZTA-TATE)])およびAAZTA-TATE([AAZTA-TATE]tot=[Bi(AAZTA-TATE)]+[HxAAZTA-TATE])の総濃度から、KBiTATE値は51であることが分かった(9)。Bi(NTA)2の安定度定数とNTAリガンドのプロトン化定数(logK1 H=9.22、logK2 H=2.98、logK3 H=1.06;25℃、0.15M NaClO4)から、Bi(NTA)2の条件付き安定度定数は、0.15M NaClO4溶液中、pH=7.4、25℃でlogKcond Bi(NTA)2=22.5であることが分かった。KBiTATE平衡定数(KGaTATE=51)とBi(NTA)2の条件付き安定度定数(logKcond Bi(NTA)2=22.5)から、Bi(AAZTA-TATE)錯体の条件付き安定度定数(logKcond Bi(AAZTA-TATE)=logKBiTATE+logKcond Bi(NTA)2)は、0.15M NaClO4中、pH=7.4、25℃でlogKcond Bi(AAZTA-TATE)=24.3であることが分かった。
これらのエビデンスに基づき、Bi(AAZTA-TATE)錯体の条件付き安定度定数は、0.15M NaCl4溶液中pH=7.4および25℃でのBi(AAZTA)錯体の条件付き安定度定数よりも約0.8logK単位高い。
【0100】
7b.Bi(AAZTA-TATE)とAAZTAリガンド、およびBi(AAZTA)とDTPAリガンド間のトランスキレーション反応の速度論的実験
Bi(AAZTA)の速度論的特性は、0.15M NaClO4溶液中、25℃、278nmでのUV分光光度法を使用して、Bi(AAZTA)とDTPAの間のトランスキレーション反応を追跡することによって決定した(Bi(DTPA)の安定度定数は、0.6M NaClO4中25℃でlogKBi(DTPA)=29.3である。V. Kornev, A. Troubachev, Russ. J. Inorg. Chem, 1987, 32, 1419)。これらの実験において、Bi(AAZTA)の濃度は0.1mMであり、DTPAを10倍および20倍過剰で適用して疑似一次条件を確実にした。濃NaOHまたはHClOを段階的に添加することにより、pHを8.5、9.0、9.5、10.0、10.5および11.0に調整した。pH値を一定に保つため、0.01M N-メチル-ピペラジン(pH>10)バッファーを使用した。pH>10ではOH-が高濃度で存在するため、一定のpHを維持するためのバッファーは使用しなかった。疑似一次速度定数(k)は、Bi(AAZTA)-DTPA系についての吸光度-時間データセットを式(9)にフィッティングすることにより計算した。Bi(AAZTA)錯体の解離速度(k)は、[DTPA]と無関係であり、pHの上昇とともに増大する。pHの上昇に伴う([OH-]の増加に伴う)k値の増大は、律速段階のOH-がアシストするBi(AAZTA)錯体の解離(その後、フリーのBi3+と、交換されるDTPAリガンド間の高速反応が続く)の観点から解釈できる。Bi(AAZTA)の解離反応を特徴づけるk速度定数と半減期(t1/2=ln2/k)は、k=1.67×10-6 s-1、t1/2=115時間(pH=9.0、25℃、0.15M NaClO4中)である。
【0101】
Bi(AAZTA-TATE)錯体の速度論的不活性を調べるために、Bi(AAZTA-TATE)錯体とAAZTAの間のトランスキレーション反応(式(12))の実験を、キャピラリーゾーン電気泳動(Hewlett-Packard HP3D キャピラリー電気泳動システム)により、疑似一次反応速度条件を保証するため20倍および40倍のAAZTA過剰の存在下、0.15M NaClO4中pH=9.0、25℃にて実施した。
【数12】
【0102】
速度論的実験では、疑似一次速度論的条件を保証するため、20倍および40倍過剰のAAZTAリガンドの存在下、Bi(AAZTA-TATE)の濃度が50.1μMである2つのサンプル(0.15M NaClO4溶液中の2×1mLサンプル)を調製した。濃NaOHまたはHClOを段階的に加えることにより、pHを=9.0に調整した。pH値を一定に保つため、0.01M N-メチル-ピペラジン(NMP)バッファーを使用した。サンプルは25℃に維持した。Bi(AAZTA-TATE)-AAZTA反応系の電気泳動図では、Bi(AAZTA-TATE)錯体の面積が時間の関数として減少し、これは、式(12)のBi(AAZTA-TATE)錯体とAAZTAリガンドのトランスキレーション反応を示している。疑似一次速度定数(k)は、Bi(AAZTA-TATE)錯体-時間データセットの面積を式(9)にフィッティングすることによって計算した。1.0および2.0mM AAZTAの存在下で得られた、Bi(AAZTA-TATE)とAAZTA間のトランスキレーション反応を特徴付ける疑似一次速度定数(k)は、それぞれ、(1.7±0.1)×10-7 s-1および(2.0±0.2)×10-7 s-1である。これらの速度論的データは、[AAZTA]がBi(AAZTA-TATE)の解離速度に実質的に影響を及ぼさないことを明確に示している。律速段階は、OH-がアシストするBi(AAZTA-TATE)錯体の解離であり、フリーのBi3+と、交換されるAAZTAリガンドとの間の高速反応がその後に続くと考えられる。
【0103】
pH=9.0で得られた、Bi(AAZTA)とBi(AAZTA-TATE)の解離半減期(t1/2=ln2/k)(Bi(AAZTA):t1/2=115時間;Bi(AAZTA-TATE):t1/2=118時間、0.15M NaClO4中、pH=9.0、25℃)の比較は、Bi(AAZTA-TATE)の速度論的不活性が、生理学的条件の付近で、Bi(AAZTA)よりも約10倍高いことを示している。
【手続補正書】
【提出日】2023-09-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
で示されるキレート化合物またはその薬学的に許容し得る塩。
【外国語明細書】