(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179430
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】耐久性を備えた導電性ポリウレタン組成物および同組成物を塗布する方法
(51)【国際特許分類】
C09D 175/06 20060101AFI20231212BHJP
C09D 5/24 20060101ALI20231212BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20231212BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20231212BHJP
B05D 1/30 20060101ALI20231212BHJP
B05D 5/12 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
C09D175/06
C09D5/24
C09D7/63
B05D7/24 302T
B05D7/24 302V
B05D7/24 303A
B05D7/24 302R
B05D7/24 303E
B05D1/30
B05D5/12 C
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023137301
(22)【出願日】2023-08-25
(62)【分割の表示】P 2020528079の分割
【原出願日】2018-11-16
(31)【優先権主張番号】15/821,554
(32)【優先日】2017-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】511177570
【氏名又は名称】ジーケイエヌ エアロスペース トランスパランシー システムズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】リー、ジーミン
(72)【発明者】
【氏名】サンドリン、スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】モンカー、マーロウ
(57)【要約】
【解決手段】基材の表面をコーティングするのに適したポリウレタン組成物。ポリウレタン組成物は、脂肪族ポリエステルウレタンマトリックスおよびフッ素化イオン性帯電防止用添加剤を含むことができる。脂肪族ポリエステルウレタンマトリックスは、脂肪族ジイソシアネート、ポリエステルジオールおよびポリエステルトリオールを有するポリエステルポリオール、およびスルホン化ポリエステルウレタンポリオールを含むことができる。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面をコーティングするのに適したポリウレタン組成物であって、前記組成物は、
脂肪族ポリエステルウレタンマトリックスおよびフッ素化イオン性帯電防止用添加剤を含み、前記脂肪族ポリエステルウレタンマトリックスは、
脂肪族ジイソシアネートと、
ポリエステルジオールおよびポリエステルトリオールを有するポリエステルポリオールと、
スルホン化ポリエステルウレタンポリオールと、
を含む、組成物。
【請求項2】
前記脂肪族ジイソシアネートが、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)およびイソホロンジイソシアネートからなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリエステルジオールが約830g/モルの平均分子量を有し、ジエチレングリコールで開始されたポリカプロラクトンジオールを含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリエステルトリオールが約540g/モルの平均分子量を有し、トリメチロールプロパンで開始されたポリカプロラクトントリオールを含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリエステルポリオールが、エチレングリコール、1,4-ブタンジオールおよび2-エチル-1,3-ヘキサンジオールからなる群より選択される鎖延長剤をさらに含む、請求項4記載の組成物。
【請求項6】
前記スルホン化ポリエステルウレタンポリオールが、脂肪族ポリエステルウレタン樹脂のアニオン性分散体を含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
前記スルホン化ポリエステルウレタンポリオールが、前記組成物の約5重量%~約10重量%である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記脂肪族ポリエステルウレタンマトリックスが、前記組成物の約85重量%~約98重量%である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記フッ素化イオン性帯電防止用添加剤が、トリ-n-ブチルメチルアンモニウムビス-(トリフルオロメタンスルホニル)イミドおよび第四級アルキルアンモニウムビス-(トリフルオロメタンスルホニル)イミドからなる群より選択されるフッ素化スルホンイミドの第四級アンモニウム塩を含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記フッ素化イオン性帯電防止用添加剤が、前記組成物の約3重量%~約8重量%である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
基材の表面をコーティングするのに適したポリウレタン組成物を調製する方法であって、前記方法は、
ポリエステルジオールおよびポリエステルトリオールをスルホン化ポリエステルウレタン分散体と混合して、均一なスルホン化ポリオール混合物を形成することと、
前記均一なスルホン化ポリオール混合物を、脂肪族ジイソシアネート、フッ素化イオン性帯電防止用添加剤および触媒を含む成分と混合して、ポリウレタンコーティング組成物を形成することと、
を含む方法。
【請求項12】
前記スルホン化ポリエステルウレタン分散体が、約90℃~約105℃で約48時間、ポリエステルジオールおよびポリエステルトリオールと混合される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ポリエステルジオールが約830g/molの平均分子量を有し、ジエチレングリコールで開始されたポリカプロラクトンジオールを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ポリエステルトリオールが約540g/molの平均分子量を有し、トリメチロールプロパンで開始されたポリカプロラクトントリオールを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記スルホン化ポリエステルウレタン分散体が脂肪族ポリエステルウレタン樹脂のアニオン性分散体を含み、かつ前記組成物の約5重量%~約10重量%である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記脂肪族ジイソシアネートがメチレンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記フッ素化イオン性帯電防止用添加剤がトリ-n-ブチルメチルアンモニウムビス-(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを含み、かつ前記組成物の約3重量%~約8重量%である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法はさらに、
前記ポリウレタン組成物で表面をコーティングすることと、
コーティングされた表面を約50℃~約60℃の第1の硬化温度で約12時間硬化させることと、
コーティングされた表面を、約75℃~約85℃の第2の硬化温度で約24時間再硬化させることと、
を含む方法。
【請求項19】
前記コーティングが透明であり、前記基材が透明なアクリルである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記表面が航空機の透明体の外表面である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記第1の硬化温度が約54℃であり、前記第2の硬化温度が約82℃である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法は、前記透明なポリウレタン組成物で表面をコーティングする前に同表面を調製するステップをさらに含み、前記調製するステップは、
ポリシロキサンコーティングで前記表面をコーティングし、ベースコーティングされた表面を形成することと、
3層の酸化インジウムスズ(ITO)/金/ITOフィルムスタックで前記ベースコーティングされた表面をコーティングして、ITOコーティングされた表面を形成することと、
前記ITOコーティングされた表面を0.1%シリケートコーティング溶液でコーティングして、シリケートコーティングされた表面を形成することと、
前記シリケートでコーティングされた表面を約82℃で約1時間加熱することと、
前記シリケートコーティングされた表面を0.1%アミノシランプライマー溶液でコーティングして、アミノシランコーティングされた表面を形成することと、
アミノシランコーティングされた表面を18%ポリウレタン熱硬化性接着剤溶液でコーティングして、ポリウレタン熱硬化性コーティング表面を形成することと、
ポリウレタン熱硬化性コーティング表面を約20℃~約25℃で約16時間硬化させることと、
を含む、方法。
【請求項23】
ラミネートであって、前記ラミネートは、
基材の表面に配置されたコーティングを含み、前記コーティングは、
脂肪族ポリエステルウレタンマトリックスおよびフッ素化イオン性帯電防止用添加剤を含むポリウレタン組成物を含み、前記脂肪族ポリエステルウレタンマトリックスは、
脂肪族ジイソシアネートと、
ポリエステルジオールおよびポリエステルトリオールを有するポリエステルポリオールと、
スルホン化ポリエステルウレタンポリオールと、
を含む、ラミネート。
【請求項24】
前記コーティングが、約75μm~約100μmの厚さを有する、請求項23に記載のラミネート。
【請求項25】
前記コーティングが、約-40℃で約1011オーム/cm以下の電気体積抵抗率を有する、請求項24に記載のラミネート。
【請求項26】
前記コーティングが、約65%~約70%の視感透過率を有する、請求項25に記載のラミネート。
【請求項27】
前記コーティングが約0.90%~約1.40%のヘイズを有する、請求項26に記載のラミネート。
【請求項28】
前記コーティングが、パーフルオロアルキルスルホネートのイオン化可能な金属塩またはコロイド状インジウムスズ酸化物ナノ粒子分散体を含まない、請求項27に記載のラミネート。
【請求項29】
前記コーティングが透明であり、前記基材が透明なアクリルである、請求項27に記載のラミネート。
【請求項30】
前記表面が航空機の透明体の外表面である、請求項29に記載のラミネート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、ポリウレタン組成物およびそのような組成物を組み込んだコーティングされた航空機用透明体に関し、より詳細には、卓越した静電気散逸能力、優れた耐浸食性、および優れた環境耐久性を有する透明なポリウレタン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
現代の軍用航空機に使用される透明体では、多くの場合、外表面に保護用の耐浸食性コーティングまたはフィルムを必要とする。そのような保護用の外層は、金、銀、インジウムスズ酸化物(ITO)のような壊れやすい下層の金属またはセラミックの導電性コーティングへの損傷を防ぐため、またはポリカーボネートなどの環境耐久性が制限されたプラスチック表面を保護するために必要である。透明なポリウレタンコーティングおよびフィルムは、その優れた透明性、優れた耐浸食性、および良好な環境耐久性のため、これらの用途において好ましい。
【0003】
航空機の透明体(transparency)の外表面は、特に高性能の現代の軍用航空機では、静電的帯電にさらされている。この帯電は、飛行中の氷晶や他の粒子との接触によって引き起こされ、結果として、摩擦電気または摩擦効果を介して表面に電荷が移動する。この現象は、産業界では降水帯電(precipitation charging)またはp-静電気帯電(p-static charging)と呼ばれている。
【0004】
航空機の透明体の非導電性の(誘電性の)外表面のp-静電気帯電は、航空機の性能、透明体の耐用年数、および人員の安全に影響を与えるいくつかの深刻な問題を引き起こす可能性がある。飛行中の放電は、誘電破壊による外側コーティング層の損傷を引き起こす可能性、または機器との電子干渉を引き起こす可能性がある。このような電荷の蓄積は、飛行および地上作業員に対して感電の危険をもたらす可能性もある。
【0005】
p-静電気帯電によって引き起こされるこれらの問題を回避するために、航空機の透明体の外層は、表面を横切って機体へと、または層の厚みを通して下層である接地導電層まで電荷を放出できるように十分に導電性であることが必要である。ほとんどの有機ポリマーと同様に、ポリウレタンは一般に電気の伝導体としては不十分である。その結果、ポリウレタンは、静電気散逸特性を必要とする用途において、修飾を行わずには満足に使用することはできない。
【0006】
ポリウレタンを修飾してその電気伝導率を高め、それにより静電荷の蓄積をより良好に散逸させるために、これまでにいくつかの方法が使用されてきた。そのような方法の1つでは、導電性の繊維または粒子がポリウレタンマトリックスに組み込まれている。しかしながら、導電性フィラー材料は不透明であり、修飾された材料の光透過率を大幅に低下させるため、この方法は透明であるポリウレタンでの使用には適していない。
【0007】
ポリウレタンを修飾してそれらの電気伝導率を増加させる別の方法では、ポリアニリンまたはポリチオフェン塩などの導電性ポリマーがポリウレタンマトリックスに組み込まれる。しかしながら、ここでも、導電性ポリマー添加剤が分散相を形成して透明性を低下させるため、この方法は透明なポリウレタンでの使用には適していない。さらに、ポリアニリン、ポリチオフェン、および他の導電性ポリマーは、良好な環境安定性を備えておらず、一般に風化と環境劣化に対する全体的な耐性を低下させる。
【0008】
ポリウレタンを修飾してそれらの電気伝導率を増加させるさらに別の方法では、アミンおよび第四級アンモニウム塩などの親水性添加剤を使用して、ポリウレタンの表面導電率を増加させている。これらの添加剤は、ポリウレタンの表面に移動することで機能し、同表面において水を引き付け、それによって導電性フィルムを作製する。しかしながら、この方法は、ポリウレタンコーティングやラミネートには適していない。その理由は、添加剤が下層である基材と接するポリウレタンの面にも移動し、接着性が失われるためである。さらに、そのような添加剤は、通常の使用条件下ではポリウレタンから浸出する可能性があるため、時間の経過とともにその効果を失う可能性がある。
【0009】
これまでにポリウレタン発泡体にのみ使用可能であった、電気伝導率を高めるためにポリウレタンを修飾するさらに他の方法は、エンハンサーと結合したイオン化可能な金属塩を加えることを必要とする。好ましい塩カチオンは、アルカリまたはアルカリ土類金属イオンであり、好ましいアニオンは、無機酸またはC2-C4カルボン酸の共役塩基である。好ましいエンハンサーは、リン酸エステルおよび脂肪酸の塩またはエステルである。ポリウレタンの電気伝導率を高めるこれらの既知の添加剤はいずれも、透明なポリウレタン、特に現代の軍用航空機の透明体のコーティングとして使用されるポリウレタンでの使用に完全に満足できるものとは見なされていない。
【0010】
一般に、非イオン性添加剤およびポリオール修飾剤は、高レベルで使用した場合にのみ電気伝導率を大幅に向上させることが明らかになってきたが、透明性および機械的強度などの他の重要な特性に悪影響を与える可能性がある。第四級アンモニウム塩およびイオン化可能な金属塩を含むイオン性の添加剤は、一般に電気伝導率を高めるのにより効果的である。この種類の最も効果的な既知の添加剤は、ペルフルオロアルキルスルホン酸のイオン化可能な金属塩である。しかしながら、これらのイオン性添加剤はいずれも、それらが一時的であり、時間とともに透明性を失い、接着性を失い、そして導電性を失うことからコーティングとして使用される透明なポリウレタンでの使用に完全に満足のゆくものとはみなされていない。
【0011】
透明なポリウレタンの電気伝導率を高めるための同透明なポリウレタンの最近の1つの修飾は、サンドリン(Sandlin)他の特許文献1に記載されており、ここでは組成物の透明性および下層である基材への接着性に悪影響を与えることなく電気伝導率を高めるために、0.5~5.0重量パーセントの範囲の規定された添加剤を組み込んだ改善されたポリウレタン組成物が開発されている。既定された添加剤は、パーフルオロアルキルスルホンイミドのイオン化可能な金属塩であり、金属はアルカリ金属であり、好ましいパーフルオロアルキルスルホンイミドはトリフルオロメタンスルホンイミドである。最も好ましい塩は、3M社の商品名Fluorad(商標)HQ115としてのリチウムトリフルオロメタンスルホンイミドである。
【0012】
好ましいポリエーテルウレタン組成物において、1.0~3.0重量パーセントの範囲でFluorad(商標)HQ115を使用すると、組成物の電気伝導率を約2桁向上させることができ、それにより、感電の危険が生じる或いはポリウレタンコーティングが電流の急激な放電によって損傷を受ける地点まで静電荷が蓄積するリスクを低減できる。Fluorad(商標)HQ115で修飾された透明なポリウレタンは、機械的性質において非常に耐久性があり、風雨にさらされる有害な影響に対して優れた耐浸食性を示す。ただし、Fluorad(商標)HQ115で修飾された透明なポリウレタンの電気伝導率は、温度に強く依存する。温度が下がると、導電率と蓄積された表面電荷を放散する能力が大幅に低下する。電気伝導率は、風雨にさらされる有害な影響にも敏感であり、通常の使用条件下では伝導性を失う可能性がある。現代の軍用航空機を現場で操作する場合、-40℃以下といった透明体の表面温度が定期的に起こり得るため、静電放電能力は低温で維持され、かつ風雨にさらされる有害な影響に耐えることができる必要がある。したがって、規定されたリチウムトリフルオロメタンスルホンイミド添加剤であるFluorad(商標)HQ115で修飾された透明なポリウレタン組成物は、これらの要件に関して、現代の軍用航空機に使用される透明体の表面コーティングとして完全に満足のゆくものとしてはみなされていない。
【0013】
航空機の透明体上における静電荷蓄積の問題に対処する最新の開発は、モンカー(Moncur)他の特許文献2に記載されており、ここで、第1の透明なポリウレタン内層、第1の透明なポリウレタン内層上に配置された中間導電層および導電層上に配置された第2の透明なポリウレタン外層を含む多層コーティングシステムが開発されている。中間導電層は、ポリウレタンの内層と外層との間にあり、第1の透明なポリウレタン内層をコロイド状のインジウムスズ酸化物ナノ粒子分散体でコーティングすることによって形成されており、それは、シリケート結合剤で硬化されて、メッシュまたは多孔性ネットワークを形成し、外側のポリウレタン層が、多孔性ネットワークを介して内側のポリウレタン層と相互作用および結合することが可能になる。第1の透明なポリウレタンの内層は比較的厚く、約70%の固形分を含む脂肪族ポリエステルウレタン前駆体溶液を透明な基材に塗布した後に、溶媒を蒸発させて前駆体を熱硬化させることによって形成される。第2の透明なポリウレタン外層は比較的薄く、約45%の固形分を含む脂肪族ポリエステルウレタン前駆体溶液を導電層に塗布した後に、溶媒を蒸発させて前駆体を熱硬化させることによって形成される。両方のポリウレタン前駆体溶液の固形分は、所望の層厚を与えるように調整することができ、使用される特定のポリウレタンの特性に依存するであろう。
【0014】
この多層コーティングシステムは、「ドレイン・アクロス(drain across)」メカニズムを介して航空機の透明体における静電気の蓄積の問題に対処するものであり、これにより、表面の静電気が第2の透明なポリウレタン層を介してから導電性材料層に、次に機体に嵌合される導電性材料層の縁部に排出されることが可能になる。この「ドレイン・アクロス」多層コーティングシステムは、航空機の透明体に蓄積される表面静電気の散逸における効率を実証し、温度変化や風雨にさらされても高いp-静電気散逸性能を維持する。しかしながら、同多層コーティングシステムは、耐浸食性が弱く、激しい降雨浸食試験中に外側のポリウレタン層が損失することが起こる。中間導電性材料層の多孔性ネットワークを介した外側のポリウレタン層と内側のポリウレタン層の間との相互作用が、試験条件に耐えるこれらの2つのポリウレタン層間の十分な結合を提供できないので、降雨浸食試験中に層間剥離が生ずる。したがって、多層コーティングシステムは、耐侵食性の要件に関して現代の軍用航空機に使用される透明体の表面コーティングとして完全に満足のゆくものとして考えることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許第6458875号明細書
【特許文献2】米国特許第9580564号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
すべての動作温度での卓越した静電気散逸能力、優れた耐浸食性および優れた耐環境性(environmental durability)を備えた保護層を透明体に提供するために、現代の軍用航空機の透明体の外表面に適用できる、電気伝導率が向上した透明なポリウレタン組成物が必要であることは容易に理解できる。本発明は、この必要性を満たし、さらなる関連する利点を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、基材の表面をコーティングするのに適したポリウレタン組成物で具現化される。一実施形態において、組成物は、脂肪族ポリエステルウレタンマトリックスおよびフッ素化イオン性帯電防止用添加剤(fluorinated ionic antistatic additive)を含む。脂肪族ポリエステルウレタンマトリックスは、脂肪族ジイソシアネート、ポリエステルジオールおよびポリエステルトリオールを有するポリエステルポリオール、およびスルホン化ポリエステルウレタンポリオールを含む。各特徴または概念は独立しているが、本願において開示されている任意の他の概念の特徴と組み合わせることができる。
【0018】
一実施形態において、脂肪族ジイソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)、およびイソホロンジイソシアネートからなる群より選択される。別の実施形態において、脂肪族ジイソシアネートは、メチレンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)を含む。各特徴または概念は独立しているが、本願において開示されている任意の他の概念の特徴と組み合わせることができる。
【0019】
前述の実施形態のいずれか1つにおいて、ポリエステルジオールは、ポリカプロラクトンジオールを含むことができる。一実施形態において、ポリカプロラクトンジオールは、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、およびネオペンチルグリコールからなる群より選択される化合物で開始される。別の実施形態において、ポリエステルジオールは、約400g/モル~約4,000g/モルの平均分子量を有する。さらなる実施形態において、ポリエステルジオールは、約830g/モルの平均分子量を有し、ジエチレングリコールで開始されたポリカプロラクトンジオールを含む。各特徴または概念は独立しているが、本願において開示されている任意の他の概念の特徴と組み合わせることができる。
【0020】
前述の実施形態のいずれか1つにおいて、ポリエステルトリオールは、ポリカプロラクトントリオールを含むことができる。一実施形態において、ポリカプロラクトントリオールは、トリメチロールプロパンで開始される。別の実施形態において、ポリエステルトリオールは、約300g/モル~約3,000g/モルの平均分子量を有する。さらなる実施形態において、ポリエステルトリオールは、約540g/molの平均分子量を有し、トリメチロールプロパンで開始されたポリカプロラクトントリオールを含む。各特徴または概念は独立しているが、本願において開示されている任意の他の概念の特徴と組み合わせることができる。
【0021】
前述の実施形態のいずれか1つにおいて、ポリエステルポリオールは、鎖延長剤をさらに含むことができる。一実施形態において、鎖延長剤は、エチレングリコール、1,4-ブタンジオールおよび2-エチル-1,3-ヘキサンジオールからなる群より選択される。各特徴または概念は独立しているが、本願において開示されている任意の他の概念の特徴と組み合わせることができる。
【0022】
前述の実施形態のいずれか1つにおいて、スルホン化ポリエステルウレタンポリオールは、脂肪族ポリエステルウレタン樹脂のアニオン性分散体を含むことができる。一実施形態において、スルホン化ポリエステルウレタンポリオールは、組成物の約3重量%~約15重量%である。別の実施形態において、スルホン化ポリエステルウレタンポリオールは、組成物の約5重量%~約10重量%である。各特徴または概念は独立しているが、本願において開示されている任意の他の概念の特徴と組み合わせることができる。
【0023】
前述の実施形態のいずれか1つにおいて、脂肪族ポリエステルウレタンマトリックスは、組成物の約85重量%~約98重量%であり得る。一実施形態において、脂肪族ポリエステルウレタンマトリックスは、組成物の約88重量%~約95重量%である。各特徴または概念は独立しているが、本願において開示されている任意の他の概念の特徴と組み合わせることができる。
【0024】
前述の実施形態のいずれか1つにおいて、フッ素化イオン性帯電防止用添加剤は、フッ素化スルホンイミドの第四級アンモニウム塩を含むことができる。一実施形態において、フッ素化スルホンイミドの第四級アンモニウム塩は、トリ-n-ブチルメチルアンモニウムビス-(トリフルオロメタンスルホニル)イミドおよび第四級アルキルアンモニウムビス-(トリフルオロメタンスルホニル)イミドからなる群より選択される。別の実施形態において、フッ素化スルホンイミドの第四級アンモニウム塩は、トリ-n-ブチルメチルアンモニウムビス-(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを含む。さらなる実施形態において、フッ素化イオン性帯電防止用添加剤は、組成物の約1重量%~約10重量%である。追加の実施形態において、フッ素化イオン性帯電防止用添加剤は、組成物の約3重量%~約8重量%である。各特徴または概念は独立しているが、本願において開示されている任意の他の概念の特徴と組み合わせることができる。
【0025】
前述の実施形態のいずれか1つにおいて、組成物は、ジブチルスズジラウレートおよびジブチルスズジアセテートからなる群より選択される触媒をさらに含むことができる。一実施形態において、触媒は、組成物の約0.001重量%~約0.02重量%である。別の実施形態において、触媒は、組成物の約0.003重量%~約0.01重量%である。各特徴または概念は独立しているが、本願において開示されている任意の他の概念の特徴と組み合わせることができる。
【0026】
前述の実施形態のいずれか1つにおいて、組成物は、安定剤のパッケージをさらに含むことができる。一実施形態において、安定剤のパッケージは、UV吸収剤、光安定剤、および熱安定剤の1つまたは複数を含む。別の実施形態において、安定剤のパッケージは、UV吸収剤、光安定剤、および熱安定剤を含む。さらなる実施形態において、UV吸収剤は、ヒドロキシフェニル-トリアジン、ヒドロキシフェニル-ベンゾトリアゾール、およびヒドロキシフェニル-ベンゾフェノンからなる群より選択される。追加の実施形態において、光安定剤はヒンダードアミン光安定剤を含む。さらに別の実施形態において、熱安定剤は、立体障害型フェノール系酸化防止剤を含む。一実施形態において、熱安定剤は、ペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)を含む。別の実施形態において、安定剤のパッケージは、組成物の約0.5重量%~約4重量%である。さらなる実施形態において、安定剤のパッケージは、組成物の約1重量%~約3重量%である。各特徴または概念は独立しているが、本願において開示されている任意の他の概念の特徴と組み合わせることができる。
【0027】
前述の実施形態のいずれか1つにおいて、組成物は、第1の界面活性剤をさらに含むことができる。一実施形態において、第1の界面活性剤は、ポリアルキレンオキシド修飾ヘプタメチルトリシロキサンを含む。別の実施形態において、第1の界面活性剤は、組成物の約0.05重量%~約1重量%である。さらなる実施形態において、第1の界面活性剤は、組成物の約0.1重量%~約0.5重量%である。各特徴または概念は独立しているが、本願において開示されている任意の他の概念の特徴と組み合わせることができる。
【0028】
第1の界面活性剤を含む前述の実施形態のいずれか1つにおいて、組成物は、第2の界面活性剤をさらに含むことができる。一実施形態において、第2の界面活性剤は、ポリエーテル修飾された(polyether-modified)ポリジメチルシロキサンまたはポリエステル修飾された(polyester-modified)ヒドロキシ官能性ポリジメチルシロキサンを含む。別の実施形態において、第2の界面活性剤は、ポリエステル修飾されたヒドロキシ官能性ポリジメチルシロキサンを含む。さらなる実施形態において、第2の界面活性剤は、組成物の約0.05重量%~約1重量%である。追加の実施形態において、第2の界面活性剤は、組成物の約0.1重量%~約0.5重量%である。各特徴または概念は独立しているが、本願において開示されている任意の他の概念の特徴と組み合わせることができる。
【0029】
前述の実施形態のいずれか1つにおいて、組成物は、非プロトン性溶媒をさらに含むことができる。一実施形態において、非プロトン性溶媒は、n-ペンチルプロピオネート、エチル3-エトキシプロピオネート、2-ブトキシエチルアセテート、ジ-イソブチルケトンおよびメチルイソブチルケトンからなる群より選択される。各特徴または概念は独立しているが、本願において開示されている任意の他の概念の特徴と組み合わせることができる。
【0030】
本発明はまた、基材の表面をコーティングするのに適したポリウレタン組成物を調製する方法において具現化される。一実施形態において、同方法は、ポリエステルジオールおよびポリエステルトリオールをスルホン化ポリエステルウレタン分散体と混合して、均一なスルホン化ポリオール混合物を形成することと、均一なスルホン化ポリオール混合物を、脂肪族ジイソシアネート、フッ素化イオン性帯電防止用添加剤および触媒を含む成分と混合して、ポリウレタンコーティング組成物を形成することと、を含む。各特徴または概念は独立しているが、本願において開示されている任意の他の概念の特徴と組み合わせることができる。
【0031】
一実施形態において、スルホン化ポリエステルウレタン分散体は、約90℃~約105℃で約48時間、ポリエステルジオールおよびポリエステルトリオールと混合される。別の実施形態において、ポリエステルジオールは、約830g/モルの平均分子量を有し、ジエチレングリコールで開始されたポリカプロラクトンジオールを含む。さらなる実施形態において、ポリエステルトリオールは、約540g/molの平均分子量を有し、トリメチロールプロパンで開始されたポリカプロラクトントリオールを含む。追加の実施形態において、スルホン化ポリエステルウレタン分散体は、脂肪族ポリエステルウレタン樹脂のアニオン性分散体を含む。さらに別の実施形態において、スルホン化ポリエステルウレタン分散体は、組成物の約5重量%~約10重量%である。各特徴または概念は独立しているが、本願において開示されている任意の他の概念の特徴と組み合わせることができる。
【0032】
一実施形態において、脂肪族ジイソシアネートは、メチレンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)を含む。別の実施形態において、フッ素化イオン性帯電防止用添加剤は、トリ-n-ブチルメチルアンモニウムビス-(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを含む。さらなる実施形態において、フッ素化イオン性帯電防止用添加剤は、組成物の約3重量%~約8重量%である。
【0033】
一実施形態において、触媒はジブチルスズジラウレートを含む。別の実施形態において、触媒は、組成物の約0.003重量%~約0.01重量%である。各特徴または概念は独立しているが、本願において開示されている任意の他の概念の特徴と組み合わせることができる。
【0034】
一実施形態において、成分は、非プロトン性溶媒、安定剤のパッケージ、第1の界面活性剤、および第2の界面活性剤をさらに含む。別の実施形態において、非プロトン性溶媒は、n-ペンチルプロピオネートを含む。さらなる実施形態において、安定剤のパッケージは、UV吸収剤、光安定剤、熱安定剤を含む。追加の実施形態において、UV吸収剤は、ヒドロキシフェニル-トリアジン、ヒドロキシフェニル-ベンゾトリアゾールおよびヒドロキシフェニル-ベンゾフェノンからなる群より選択される。さらに別の実施形態において、光安定剤はヒンダードアミン光安定剤を含む。一実施形態において、熱安定剤は、立体障害型フェノール系酸化防止剤を含む。別の実施形態において、安定剤のパッケージは、組成物の約1重量%~約3重量%である。さらなる実施形態において、ポリウレタン組成物は、約70%の固形分を含む。各特徴または概念は独立しているが、本願において開示されている任意の他の概念の特徴と組み合わせることができる。
【0035】
本発明はまた、基材の表面にコーティングを塗布する方法において具現化される。一実施形態において、方法は、ポリウレタン組成物に関する前述の実施形態のいずれか1つのポリウレタン組成物で表面をコーティングすることを含む。一実施形態において、方法は、約50℃~約60℃の第1の硬化温度で約12時間、コーティングされた表面を硬化することと、約75℃~約85℃の第2の硬化温度で約24時間、コーティングされた表面を再硬化することと、さらに含む。各特徴または概念は独立しているが、本願において開示されている任意の他の概念の特徴と組み合わせることができる。
【0036】
本発明は、基材の表面にコーティングを塗布する別の方法で具現化される。一実施形態において、方法は、ポリウレタン組成物を調製する方法に関する前述の実施形態のいずれか1つの方法によって調製されたポリウレタン組成物で表面をコーティングすることを含む。一実施形態において、方法は、約50℃~約60℃の第1の硬化温度で約12時間、コーティングされた表面を硬化することと、約75℃~約85℃の第2の硬化温度で約24時間、コーティングされた表面を再硬化することと、をさらに含む。各特徴または概念は独立しているが、本願において開示されている任意の他の概念の特徴と組み合わせることができる。
【0037】
基材の表面にコーティングを塗布する方法に関する前述の実施形態のいずれか1つにおいて、基材はアクリルであり得る。一実施形態において、基材は透明である。別の実施形態において、第1の硬化温度は約54℃である。さらなる実施形態において、第2の硬化温度は約82℃である。各特徴または概念は独立しているが、本願において開示されている任意の他の概念の特徴と組み合わせることができる。
【0038】
基材の表面にコーティングを適用する方法に関する前述の実施形態のいずれか1つにおいて、方法は、透明なポリウレタン組成物でコーティングする前に表面を調製するステップをさらに含むことができる。一実施形態において、調製するステップは、表面をポリシロキサンコーティングでコーティングして、ベースコーティングされた表面を形成することと、ベースコーティングされた表面を3層の酸化インジウムスズ(ITO)/金/ITOフィルムスタックでコーティングして、ITOコーティング表面を形成することと、ITOコーティング表面を0.1%のシリケートコーティング溶液でコーティングして、シリケートコーティング表面を形成することと、シリケートコーティング表面を約82℃で約1時間加熱することと、シリケートコーティング表面を0.1%アミノシランプライマー溶液でコーティングしてアミノシランコーティング表面を形成することと、アミノシランコーティング表面を18%ポリウレタン熱硬化性接着剤溶液でコーティングしてポリウレタン熱硬化性コーティング表面を形成することと、ポリウレタン熱硬化性コーティング表面を約20℃~約25℃にて約16時間硬化させることと、を含む。各特徴または概念は独立しているが、本願において開示されている任意の他の概念の特徴と組み合わせることができる。
【0039】
基材の表面にコーティングを塗布する方法に関する前述の実施形態のいずれかにおいて、18%ポリウレタン熱硬化性接着剤溶液は、シクロヘキサノンおよび3-エトキシプロピオネートからなる群より選択される溶媒を含むことができる。各特徴または概念は独立しているが、本願において開示されている任意の他の概念の特徴と組み合わせることができる。
【0040】
本発明はまた、表面を有する基材と、表面上に配置されたポリウレタン組成物のコーティングと、を含むラミネートで具現化される。一実施形態において、ポリウレタン組成物は、前述のポリウレタン組成物のいずれか1つであり得る。別の実施形態において、コーティングは、基材の表面にコーティングを塗布する前述の方法のいずれか1つによって表面に塗布することができる。各特徴または概念は独立しているが、本願において開示されている任意の他の概念の特徴と組み合わせることができる。
【0041】
一実施形態において、コーティングは、約75μm~約100μmの厚さを有する。別の実施形態において、コーティングは、約-40℃で約1011オーム/cm以下の電気体積抵抗率(electrical volume resistivity)を有する。さらなる実施形態において、コーティングは、約65%~約70%の視感透過率を有する。追加の実施形態において、コーティングは約0.90%~約1.40%のヘイズ(haze)を有する。さらに別の実施形態において、コーティングは、パーフルオロアルキルスルホネートのイオン化可能な金属塩を含まない。一実施形態において、コーティングは、コロイド状インジウムスズ酸化物ナノ粒子分散体を含まない。別の実施形態において、基材はアクリルである。さらなる実施形態において、基材は透明である。さらなる実施形態において、コーティングは透明である。追加の実施形態において、表面は航空機の透明体の外表面である。各特徴または概念は独立しているが、本願において開示されている任意の他の概念の特徴と組み合わせることができる。
【0042】
本発明の他の特徴および利点は、例として本発明の原理を示す好ましい実施形態の以下の説明から明らかになるべきである。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明は、実質的に向上した電気伝導率を有する透明なポリウレタン組成物に関する。一実施形態において、透明なポリウレタン組成物は、(1)透明なポリウレタン組成物の本体として約85~約98重量パーセントの範囲の、スルホン酸塩官能基を含有する熱硬化性脂肪族ポリエステルウレタンマトリックスを含む。このウレタンポリマーは、脂肪族ジイソシアネート、ポリエステルジオール、必要に応じてポリエステルトリオール、および主鎖にスルホン酸塩官能基を含むポリエステルウレタンジオールおよびトリオール混合物と、(2)電気伝導率の向上のために約1~約10重量パーセントの範囲にて疎水性フッ素化イオン性帯電防止用添加剤トリ-n-ブチルメチルアンモニウムビス-(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(3M社から商品名FC-4400として入手可能)と、(3)熱硬化性ポリウレタン組成物を硬化させるための約10~約200ppmの範囲の触媒と、(4)環境耐久性の向上のために、約0.5~約4重量パーセントの範囲にて、UV吸収剤、光安定剤、および熱安定剤を含む安定剤のパッケージと、(5)フロー/レベリング制御およびコーティング表面化粧の向上のための任意選択の表面活性剤(surface active agents)または界面活性剤(surfactants)と、(6)組成物の担体としての任意選択の非プロトン性溶媒と、を反応させることにより形成される。
【0044】
熱硬化性脂肪族ポリエステルウレタンマトリックス
脂肪族イソシアネート、ポリエステルポリオール(トリオール/ジオールの混合物)およびスルホン酸塩含有ウレタンポリエステルポリオールから形成される熱硬化性脂肪族ポリエステルウレタンマトリックス(matrix)は、透明なポリウレタン組成物の本体として提供される。脂肪族ポリエステルウレタンは、耐薬品性、耐摩耗性、耐候性に優れているので好まれている。本発明に適した代表的な液体モノマー脂肪族または脂環式ジイソシアネートには、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)およびイソホロンジイソシアネートが含まれる。本発明に対して好ましいジイソシアネートは、コベストロ(Covestro)社からDesmodur(登録商標)Wとして入手可能なメチレンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)である。本発明に適した代表的なポリエステルトリオールには、パーストープスペシャルティケミカルズ(Perstorp Specialty Chemicals)社から入手可能な約300~約3000の範囲の平均分子量(g/mol)を有する、ポリカプロラクトンベースのCapa(登録商標)3031、Capa(登録商標)3041、Capa(登録商標)3050、Capa(登録商標)3091、Capa(登録商標)3121、Capa(登録商標)3201、およびCapa(登録商標)3301が含まれる。本発明に対して好ましいポリエステルトリオールは、約540の平均分子量(g/mol)を有するCapa(登録商標)3050である。本発明に適した代表的なポリエステルジオールには、パーストープスペシャルティケミカルズ社から入手可能な約400~約4000の範囲の平均分子量(g/mol)を有する、ポリカプロラクトンベースのCapa(登録商標)2043、Capa(登録商標)2054、Capa(登録商標)2085、Capa(登録商標)2100、Capa(登録商標)2125、Capa(登録商標)2205、Capa(登録商標)2304、およびCapa(登録商標)2402が含まれる。本発明のための好ましいポリエステルジオールは、約830の平均分子量(g/mol)を有するCapa(登録商標)2085である。性能を調整するために、必要に応じて、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール(BDO)、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール(EHD)などの鎖延長剤をポリオールに追加することができる。スルホン酸塩官能基を含むポリウレタンマトリックスは、組成物中の固形分の総重量に基づいて、典型的には約85%~約98%の範囲、より典型的には約88%~約95%の範囲の重量%で使用される。一実施形態において、スルホン酸塩官能基を含むポリウレタンマトリックスは、組成物の、約85重量%、約86重量%、約87重量%、約88重量%、約89重量%、約90重量%、約91重量%、約92重量%、約93重量%、約94重量%、約95重量%、約96重量%、約97重量%、または約98重量%、である。別の実施形態において、ポリウレタンマトリックスは、前述の値のいずれか2つによって定義される範囲にある。
【0045】
疎水性フッ素化イオン帯電防止用添加剤
電気伝導率を高めるために、疎水性フッ素化イオン性帯電防止用添加剤がポリウレタン組成物に配合されている。帯電防止用添加剤を適切に選択することで、組成物は高い電気伝導率を発揮し、コーティングされた透明体のp-静電気散逸要件を満たすことができる。過去において、第四級アンモニウムカチオンの塩またはフッ素化スルホンイミドアニオンの塩は、特許文献1に記載されている例のように、限られた成功にて、ポリウレタンの電気伝導率を高める帯電防止用添加剤として使用されていた。電気伝導率を高めるためにポリウレタン組成物に帯電防止用添加剤としてフッ素化スルホンイミドアニオンと組み合わせて第四級アンモニウムカチオンの単一の化合物を使用する利点は、これまでには検討されていなかった。疎水性のフッ素化イオン性帯電防止用添加剤FC-4400およびFC-5000は、第四級アンモニウムカチオンとフッ素化スルホンイミドアニオンの両方を含む塩である。第四級アンモニウムカチオンとフッ素化スルホンイミドアニオンを単一の化合物として組み合わせることにより、FC-4400またはFC-5000は、電気伝導率を向上させるのにより効率的になる。さらに、疎水性フッ素化イオン性帯電防止用添加剤FC-4400またはFC-5000は、ポリウレタン組成物の他の成分と完全に適合性があるため、組成物の他の性能を損なうことなく、幅広い重量パーセントで装填できる。FC-4400は、式(n-C4H9)3(CH3)N+-N(SO2CF3)2を有するトリ-n-ブチルメチルアンモニウムビス-(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのフッ素化スルホンイミドアニオンを有する第四級アンモニウムカチオンのイオン性液体帯電防止塩である。FC-5000は、式R4N+-N(SO2CF3)2の第四級アンモニウムに単一の第一級アルコール基を有するフッ化スルホンイミドアニオンを含む第四級アンモニウムカチオンのイオン性液体帯電防止塩である。本発明のための好ましい疎水性フッ素化イオン性帯電防止用添加剤は、FC-4400である。疎水性フッ素化イオン性帯電防止用添加剤は、組成物中の固体の総重量に基づいて、典型的には約1%~約10%の範囲、より典型的には約3%~約8%の範囲で使用される。一実施形態において、疎水性フッ素化イオン性帯電防止用添加剤は、組成物の、約1重量%、約2重量%、約3重量%、約4重量%、約5重量%、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、または約10重量%である。別の実施形態において、疎水性フッ素化イオン性帯電防止用添加剤は、前述の値のいずれか2つによって定義される範囲にある。
【0046】
スルホン化ポリエステルウレタンポリオール
スルホン酸イオン官能基を主鎖に組み込んだポリエステルウレタンポリオールは、疎水性フッ素化イオン性帯電防止用添加剤FC-4400またはFC-5000添加剤と相互作用するために使用される。スルホン化ポリエステルウレタンポリオールは、主鎖に複数のスルホン酸イオン官能基を、鎖末端にヒドロキシル官能基を有している。スルホン化ポリエステルウレタンポリオールは、鎖末端のヒドロキシル官能基を介してポリウレタンマトリックスに硬化できるが、主鎖のスルホン酸イオン官能基は、イオン相互作用を介して疎水性フッ素化イオン性帯電防止用添加剤のイオン基と結合し、安定した架橋ネットワークを形成し、同ネットワークにおいて、疎水性フッ素化イオン性帯電防止用添加剤はポリウレタンマトリックスに均一に分散している。スルホン化ポリエステルウレタンポリオールと疎水性フッ素化イオン性帯電防止用添加剤との間の相乗的相互作用は、ポリウレタン組成物の電気伝導率を実質的に増強する。その間、安定した架橋ネットワークの形成により、疎水性フッ素化イオン性帯電防止用添加剤が失われることが回避され、結果として、透明なポリウレタンが風雨にさらされる有害な影響に耐えて、高い電気伝導率を維持できる。スルホン化ポリエステルウレタンポリオールは、非スルホン化ポリオールをスルホン化ポリエステルウレタンと反応させることにより調製される。本発明に適した代表的なスルホン化ポリエステルウレタンには、バイエルマテリアルサイエンス(Bayer Material Science)(現在コベストロ)社から入手可能な、Bayhydrol(登録商標)140AQ、Bayhydrol(登録商標)UH240、Baybond(登録商標)PU402AおよびImpranil(登録商標)DL1554が含まれる。本発明に対して好ましいスルホン化ポリエステルウレタンポリオールは、Bayhydrol(登録商標)140AQであり、これは、スルホン化脂肪族アニオン性ポリエステルウレタン樹脂の40%固形分の水分散液である。これらの材料は水性分散液として入手可能であり、非スルホン化ポリオールと反応させて水を除去し、スルホン化ポリオールを生成する。スルホン化ポリエステルウレタンは、組成物中の固形分の総重量に基づいて、典型的には約3重量%~約15重量%の範囲、より典型的には5重量%~10重量%の範囲で使用される。一実施形態において、スルホン化ポリエステルウレタンは、組成物の、約3重量%、約4重量%、約5重量%、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、約13重量%、約14重量%、または約15重量%である。別の実施形態において、スルホン化ポリエステルウレタンは、前述の値のいずれか2つによって定義される範囲にある。
【0047】
ポリウレタン組成物を硬化させるための触媒
熱硬化性ポリウレタン組成物を硬化させるために触媒が使用される。触媒はポリウレタンのネットワーク形成を加速する。本発明に適した代表的な触媒には、シグマ-アルドリッチ社(Sigma-Aldrich)社から入手可能なジブチルスズジラウレートおよびジブチルスズジアセテート、ならびにシェファードケミカル社(Shepherd Chemical Company)から入手可能なビスマスおよび亜鉛化合物が含まれる。触媒は、組成物中の固形分の総重量に基づいて、典型的には約10ppm~約200ppmの範囲、より典型的には約30ppm~約100ppmの範囲で使用される。一実施形態において、触媒は、組成物の重量に基づいて、約10ppm、約20ppm、30ppm、40ppm、50ppm、60ppm、70ppm、80ppm、90ppm、100ppm、110ppm、120ppm、130ppm、140ppm、150ppm、160ppm、170ppm、180ppm、190ppm、または200ppm。別の実施形態において、触媒は、前述の値のいずれか2つによって定義される範囲にある。
【0048】
安定化剤のパッケージ
UV吸収剤、光安定剤、および熱安定剤を含む安定剤のパッケージは、環境耐久性向上のために組成物中に配合される。安定剤のパッケージは、光と風雨の有害な影響に対する効果的な安定化を提供する。
【0049】
UV吸収剤は、典型的には、ヒドロキシフェニル-トリアジン、ヒドロキシフェニル-ベンゾトリアゾールまたはヒドロキシフェニル-ベンゾフェノンクラスの化合物である。UV吸収剤は、ポリウレタン組成物に有害であるUV光を競合的に吸収する。本発明に適した代表的なUV吸収剤には、BASF社から入手可能な、ヒドロキシフェニル-トリアジンクラスのTinuvin(登録商標)400、Tinuvin(登録商標)405、Tinuvin(登録商標)460、Tinuvin(登録商標)477およびTinuvin(登録商標)479、ならびにヒドロキシフェニルベンゾトリアゾールクラスのTinuvin(登録商標)928、Tinuvin(登録商標)1130、Tinuvin(登録商標)328、Tinuvin(登録商標)99-2、およびTinuvin(登録商標)384-2が含まれる。本発明に対して好ましいUV吸収剤は、UV-BおよびUV-A範囲において極めて高い減光係数(extinction coefficient)を有するTinuvin(登録商標)479である。高い減光係数により、UV吸収剤の含有量を減らした組成物の配合が可能になる。
【0050】
光安定剤は、通常、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)である。これは、フリーラジカルをトラップすることができ、自動酸化サイクルでラジカルスカベンジャーとして機能し、高分子材料の光酸化分解を抑制する。本発明に適した代表的な光安定剤には、BASF社から入手可能な、Tinuvin(登録商標)123、Tinuvin(登録商標)144、Tinuvin(登録商標)152、Tinuvin(登録商標)292、またはTinuvin(登録商標)5100が含まれる。本発明に対して好ましい光安定剤は、反応性一級ヒドロキシルを有するTinuvin(登録商標)152であり、これにより、Tinuvin(登録商標)152をポリウレタンネットワークに硬化させて、適合性および移動に対する耐性を改善することができる。
【0051】
熱安定剤は、典型的には、組成物を熱酸化分解から保護する、立体障害型フェノール系酸化防止剤である。本発明に適した代表的な熱安定剤には、BASF社から入手可能な、IRGANOX(登録商標)1010、IRGANOX(登録商標)1076、IRGANOX(登録商標)1135、またはIRGANOX(登録商標)245が含まれる。この組成物への適用のための熱安定剤の標準的な選択基準は、低色(Low color)、良好な適合性、抽出に対する高い耐性、および低い揮発性であり、IRGANOX(登録商標)1010が好ましいものである。
【0052】
安定化剤のパッケージとして組み合わせて使用すると、同安定化剤の保護効果が向上する。Tinuvin(登録商標)479/Tinuvin(登録商標)152/IRGANOX(登録商標)1010を組み合わせた安定剤のパッケージは、光や風雨の有害な影響に対して最も効果的な安定性を提供する。安定剤のパッケージは、組成物中の固形分の総重量に基づいて、典型的には約0.5%~約4%の範囲、より典型的には約1%~約3%重量%の範囲で使用される。一実施形態において、安定剤のパッケージは、組成物の約0.5重量%、約1重量%、約1.5重量%、約2重量%、約2.5重量%、約3重量%、約3.5重量%、または約4重量%である。別の実施形態において、安定剤のパッケージは、前述の値のいずれか2つによって定義される範囲にある。
【0053】
界面活性剤
コーティングの湿潤作用または拡散作用を制御する表面活性剤または界面活性剤は、コーティング表面に満足のいくフローおよびレベリング特性(flow-and-leveling properties)を提供し、破裂およびクレーターなどのコーティングの欠陥を排除し、表面の滑りを増加させることは、組成物において有利に使用される。本発明に適する代表的な界面活性剤は、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ(Momentive Performance Materials)社から入手可能な、シリコーンベースのフロー/レベリング剤Silwet(登録商標)L-77、L-7200、L-7600、L-7604、L-7605およびL-7657、並びにビックケミー(BYK Chemie)社から入手可能な、シリコーンベースの表面添加剤BYK-300、BYK-306、BYK-313、BYK-333、BYK-370およびBYK-378が含まれる。Silwet(登録商標)シリコーン界面活性剤は、優れた濡れ性、広がりおよびレベリング特性を有する修飾トリシロキサンである。本発明には、非常に低分子量のトリシロキサンとポリエーテル基を組み合わせる強力なSilwet(登録商標)L-77が好ましい。BYKシリコーン表面添加剤は、表面のすべりを増加させるための修飾(modified)ポリジメチルシロキサンである。本発明には、ポリエステル修飾ヒドロキシル官能性ポリジメチルシロキサンである反応性BYK-370が好ましい。BYK-370は、その主要なOH基を介してポリウレタンネットワークに架橋することができ、表面の滑りを永久的に増加させることができる。Silwet(登録商標)L-77とBYK-370を相乗的に使用することで、広がり/フロー/レベリングと永続的な表面滑りの強化との優れた組み合わせが実現する。各界面活性剤は、組成物中の固体の総重量に基づいて、典型的には約0.05%~約1%の範囲、より典型的には約0.1%~約0.5%の重量パーセントの範囲で使用される。一実施形態において、各界面活性剤は、組成物の、約0.05重量%、約0.1重量%、約0.15重量%、約0.2重量%、約0.25重量%、約0.3重量%、約0.35重量%、約0.4重量%、約0.45重量%、約0.5重量%、約0.55重量%、約0.6重量%、約0.65重量%、約0.7重量%、約0.75重量%、約0.8重量%、約0.85重量%、約0.9重量%、約0.95重量%、または約1.0重量%である。別の実施形態において、各界面活性剤は、前述の値のいずれか2つによって定義される範囲内にある。
【0054】
任意選択の溶媒
任意選択的に、組成物を混合するために、かつ組成物キャリアとして使用するために、非プロトン性溶媒が使用できる。本発明に適した代表的な非プロトン性溶媒には、n-ペンチルプロピオネート(nPP)、エチル3-エトキシプロピオネート(EEP)、2-ブトキシエチルアセテート(BEA)、ジ-イソブチルケトン(DIBK)およびメチルイソブチルケトン(MIBK)が含まれる。任意の非プロトン性溶媒の重量パーセントは、組成物が航空機の透明体の外表面にフローコートされるときに必要とされるコーティングの厚さに応じて変えることができる。
【0055】
最先端のポリウレタンに対する性能の概要(Highlights)
本発明のポリウレタン組成物は、外表面導電性コーティングを含む現代の軍用航空機に使用される透明体の外表面上に便利にフローコートでき(flow coated)、すべての動作温度での卓越した静電気散逸能力、優れた耐浸食性および優れた耐環境性を有する保護層を透明体に提供する。表1は、本発明のポリウレタン組成物ならびに特許文献1および特許文献2に記載されているような最先端のシステムの電気伝導率および耐雨食性(rain erosion resistance)の性能を要約したものである。QUV曝露なしのサンプルおよび5週間のQUV曝露後のサンプルについて、約-6℃、約-28℃、および約-40℃で測定された電気体積抵抗率が示される。QUV曝露なしのサンプルおよび約5週間のQUV曝露後のサンプルについて、約927km/時で約10分、約30分、および約60分後の耐雨食性の結果が示されている。加速QUV装置は、UVB-313EL蛍光灯を使用して、約50℃/約7時間のUV曝露と約50℃/約5時間の凝縮(UVオフ、高湿度)のサイクルで動作させた。電気的体積抵抗率>1014は、サンプルの抵抗率が測定不能であるか、または、p-静電気散逸試験中にサンプルが絶縁破壊を起こしたことを意味する。「合格(Pass)」とは、試験後のコーティング損失が10%未満であることを意味する。「不合格(Fail)」とは、試験後のコーティング損失が10%を超えることを意味する。両方のサンプルには、実施例に記載されているように導電性の金スタックコーティングが施されている。
【0056】
【0057】
特許文献1に記載されているように、リチウムトリフルオロメタンスルホンイミド添加剤であるFluorad(商標)HQ115で修飾された透明なポリウレタンは、電気伝導率を高め、したがって静電気放電能力を改善するが、改善された静電気放電能力は低温では維持されず、風雨にさらされる有害な影響に耐えることができない。一方、特許文献2に記載されている「ドレイン・アクロス」多層コーティングシステムは、航空機の透明体に蓄積する表面静電荷の散逸効率を実証し、温度変化や風雨にさらされることに関係なく高いp-静電気散逸性能を維持するが、激しい雨食試験時に、耐浸食性が弱く、外側のポリウレタン層が失われる。これらの従来技術のシステムはいずれも、現代の軍用航空機に使用される透明体の表面コーティングとして完全に満足できるものとは考えられていない。
【0058】
主鎖にスルホン酸塩官能性を組み合わせ、疎水性フッ素化イオン性帯電防止用添加剤であるトリ-n-ブチルメチルアンモニウムビス-(トリフルオロメタンスルホニル)イミドFC-4400を添加剤として組み込んだ実施形態のポリウレタン組成物は、実質的に向上した電気伝導率を示し、したがってあらゆる動作温度で航空機の透明体の表面コーティングとして高いp-静電気散逸能力を維持することができる。疎水性フッ素化イオン性帯電防止用添加剤FC-4400とスルホン化ポリエステルウレタンマトリックスとの間の相乗的相互作用が、この実質的な電気伝導率の向上に関与していると考えられている。疎水性フッ素化イオン性帯電防止用添加剤FC-4400は、スルホン酸官能基と強く相互作用すると考えられており、その結果、風雨にさらされる有害な影響の後に、高い導電性とp-静電気散逸能力を維持することができる。
【0059】
ポリウレタン組成物を調製する方法
本発明はまた、基材の表面をコーティングするのに適したポリウレタン組成物を調製する方法において具現化される。一実施形態において、この方法は、ポリエステルジオールおよびポリエステルトリオールをスルホン化ポリエステルウレタン分散体と混合して、均一なスルホン化ポリオール混合物を形成することと、均一なスルホン化ポリオール混合物を、脂肪族ジイソシアネート、フッ素化イオン性帯電防止用添加剤、および触媒を含む成分と混合して、ポリウレタンコーティング組成物を形成することと、を含む。
【0060】
一実施形態において、スルホン化ポリエステルウレタン分散体は、約90℃~約105℃で約48時間、ポリエステルジオールおよびポリエステルトリオールと混合される。別の実施形態において、ポリエステルジオールは、約830g/モルの平均分子量を有し、ジエチレングリコールで開始されたポリカプロラクトンジオールを含む。さらなる実施形態において、ポリエステルトリオールは、約540g/molの平均分子量を有し、トリメチロールプロパンで開始されたポリカプロラクトントリオールを含む。追加の実施形態において、スルホン化ポリエステルウレタン分散体は、脂肪族ポリエステルウレタン樹脂のアニオン性分散体を含む。さらに別の実施形態において、スルホン化ポリエステルウレタン分散体は、組成物の約5重量%~約10重量%である。
【0061】
一実施形態において、脂肪族ジイソシアネートは、メチレンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)を含む。別の実施形態において、フッ素化イオン性帯電防止用添加剤は、トリ-n-ブチルメチルアンモニウムビス-(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを含む。さらなる実施形態において、フッ素化イオン性帯電防止用添加剤は、組成物の約3重量%~約8重量%である。
【0062】
一実施形態において、触媒はジブチルスズジラウレートを含む。別の実施形態において、触媒は、組成物の約0.003重量%~約0.01重量%である。
一実施形態において、成分は、非プロトン性溶媒、安定剤のパッケージ、第1の界面活性剤、および第2の界面活性剤をさらに含む。別の実施形態において、非プロトン性溶媒は、n-ペンチルプロピオネートを含む。さらなる実施形態において、安定剤のパッケージは、UV吸収剤、光安定剤および熱安定剤を含む。追加の実施形態において、UV吸収剤は、ヒドロキシフェニル-トリアジン、ヒドロキシフェニル-ベンゾトリアゾールおよびヒドロキシフェニル-ベンゾフェノンからなる群より選択される。さらに別の実施形態において、光安定剤はヒンダードアミン光安定剤を含む。一実施形態において、熱安定剤は、立体障害型フェノール系酸化防止剤を含む。別の実施形態において、安定剤のパッケージは、組成物の約1重量%~約3重量%である。さらなる実施形態において、ポリウレタン組成物は、約70%の固形分を含む。
【0063】
コーティングを塗布する方法
本発明はまた、基材の表面にコーティングを塗布する方法において具現化される。一実施形態において、この方法は、上記の新規なポリウレタン組成物のいずれか1つで表面をコーティングすることを含む。この方法はさらに、コーティングされた表面を約50℃~約60℃の第1の硬化温度で約12時間硬化させ、コーティングされた表面を約75℃~約85℃の第2の硬化温度で約24時間再硬化させることを含む。
【0064】
本発明は、基材の表面にコーティングを塗布する別の方法で具現化される。一実施形態において、同方法は、ポリウレタン組成物を調製するための、上記の方法のいずれか1つによって調製されたポリウレタン組成物で表面をコーティングすることを含む。この方法はさらに、コーティングされた表面を約50℃~約60℃の第1の硬化温度で約12時間硬化させ、コーティングされた表面を約75℃~約85℃の第2の硬化温度で約24時間再硬化させることを含む。
【0065】
基材の表面にコーティングを塗布するこれらの方法のいずれかに対して、基材はアクリルであり得る。一実施形態において、基材は透明である。別の実施形態において、第1の硬化温度は約54℃である。さらなる実施形態において、第2の硬化温度は約82℃である。
【0066】
基材の表面にコーティングを塗布するこれらの方法のいずれかについて、同方法は、透明なポリウレタン組成物で表面をコーティングする前に表面を調製するステップをさらに含むことができる。一実施形態において、調製するステップは、表面をポリシロキサンコーティングでコーティングして、ベースコーティングされた表面を形成することと、ベースコーティングされた表面を3層の酸化インジウムスズ(ITO)/金/ITOフィルムスタックでコーティングして、ITOコーティング表面を形成することと、ITOコーティング表面を0.1%のシリケートコーティング溶液でコーティングして、シリケートコーティング表面を形成することと、シリケートコーティング表面を約82℃で約1時間加熱することと、シリケートコーティング表面を0.1%アミノシランプライマー溶液でコーティングしてアミノシランコーティング表面を形成することと、アミノシランコーティング表面を18%ポリウレタン熱硬化性接着剤溶液でコーティングしてポリウレタン熱硬化性コーティング表面を形成することと、ポリウレタン熱硬化性コーティング表面を約20℃~約25℃にて約16時間硬化させることと、を含む。
【0067】
コーティングを基材の表面に塗布するこれらの方法のいずれかについて、18%ポリウレタン熱硬化性接着剤溶液は、シクロヘキサノンおよび3-エトキシプロピオネートからなる群より選択される溶媒を含むことができる。
【0068】
ラミネート
本発明はまた、表面を有する基材と、表面上に配置されたポリウレタン組成物のコーティングと、を含むラミネートで具現化される。一実施形態において、ポリウレタン組成物は、上記した新規なポリウレタン組成物のいずれか1つであり得る。別の実施形態において、コーティングは、基材の表面にコーティングを塗布するための上述の方法のいずれか1つによって表面に塗布することができる。
【0069】
一実施形態において、コーティングは、約75μm~約100μmの厚さを有する。別の実施形態において、コーティングは、約-40℃で約1011オーム/cm以下の電気体積抵抗率を有する。さらなる実施形態において、コーティングは、約65%~約70%の視感透過率を有する。追加の実施形態において、コーティングは約0.90%~約1.40%のヘイズを有する。さらに別の実施形態において、コーティングは、パーフルオロアルキルスルホネートのイオン化可能な金属塩を含まない。一実施形態において、コーティングは、コロイド状インジウムスズ酸化物ナノ粒子分散体を含まない。別の実施形態において、基材はアクリルである。さらなる実施形態において、基材は透明である。さらなる実施形態において、コーティングは透明である。追加の実施形態において、表面は航空機の透明体の外表面である。
【0070】
前述の説明から、本発明は航空機の透明体の表面コーティングとして適切なポリウレタン組成物を提供することが理解されるべきである。ポリウレタン組成物のコーティングは、温度変化や風雨にさらされることに関係なく高いp-静電気散逸性能を維持できるため、感電の危険が発生したり、電流の急速な放電によってポリウレタンコーティングが損傷したりする点まで静電気が蓄積するリスクを回避することができる。本発明の透明なポリウレタンはまた、非常に耐久性があり、風雨にさらされた後での優れた耐浸食性および機械的特性の保持を示す。
【0071】
特定の方法、デバイス、および材料が説明されているが、説明されたものと同様または同等の任意の方法および材料が、本発明の実施または試験において使用され得る。別段の定義がない限り、本願で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0072】
本願において使用されているように、「a」および「an」などの単数の単語は、要素を「1つ(one)」に限定する明確な意図が示されていない限り、「1つ以上」を意味する。「約」という用語は、それが変更する±2%の値を意味する。
【0073】
本出願で使用される場合、「疎水性」という用語は、水に対する親和性を欠くことを意味しており、水接触角が少なくとも約80度である場合、表面は疎水性と見なされる。
本願で使用される場合、「透明(transparent)」という用語は、ASTMD1003規格を使用して約255μm~約510μmの厚さを有するポリウレタンのフィルムで測定した場合、少なくとも約85%の光透過率を有することを意味する。
【0074】
さらに詳述することなく、当業者は、上記した説明を使用して、本発明を最大限に作成および使用することができると考えられる。本実施形態の他の目的、特徴、および利点は、以下の特定の実施例から明らかになるであろう。特定の実施例は、特定の実施形態を示しているが、例示としてのみ提供されている。したがって、本発明はまた、この詳細な説明から当業者に明らかになり得る本発明の精神および範囲内のそれらの様々な変更および修正を含む。以下の実施例は例示のみであり、いかなる方法でも本開示を限定するものではない。
【実施例0075】
航空機グレード(MIL-PRF-25690に準拠)の寸法が38.1cm×81.28cmの延伸アクリルシートを、特許文献1に記載されている手順を使用して調製し、以下の実施例において透明なポリウレタン組成物を評価するための基材として使用した。調製の手順は次のように要約できる。アクリルシートは、最初にベースコーティングとして従来のポリシロキサンハードコート剤でコーティングした。次に、ベースコーティングされたアクリルシートを、スパッタリングプロセスを使用して、3層のインジウムスズ酸化物(ITO)/金/ITO薄膜スタックでコーティングし、約15オーム/平方のシート抵抗とした。次に、0.1%シリケートコーティング溶液をITO表面コーティングの上にフローコートし、約1時間風乾させてから、エアオーブンで約82℃で約1時間加熱する。次に、0.1%アミノシランプライマー溶液をシリケートコーティングの上にフローコートし、約1時間風乾する。シクロヘキサノン、3-エトキシプロピオネート(EEP)、またはメチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)とポリテトラメチレンオキシドポリオールに基づく湿気硬化性芳香族ポリエーテルウレタンから調製されたその他の適切な溶媒の18%ポリウレタン熱硬化性接着剤溶液を、プライマー処理された(primed)ITOコーティングの上にフローコートし、室温で一晩硬化させる。
【0076】
表2は、以下の実施例1~7に記載されているポリウレタン組成物の電気体積抵抗率の結果をまとめたものである。1014を超える電気的体積抵抗率は、サンプルの抵抗率が測定不能であるか、p-静電気散逸試験中にサンプルが絶縁破壊を起こすことを意味する。
【0077】
【0078】
実施例1
特許文献1に記載されているような電気伝導率向上のためのリチウムトリフルオロメタンスルホンイミド添加剤Fluorad(登録商標)HQ115を含む脂肪族ポリエステルウレタン組成物は、表3に示す処方のように、Bayhydrol(登録商標)140AQで修飾されている。Bayhydrol(登録商標)140AQは、スルホン酸イオン官能基が主鎖に組み込まれ、ヒドロキシル官能基が鎖末端にあるスルホン化ポリエステルウレタンポリオールの固形分40%の水分散液である。最初に約93℃~約104℃で約48時間混合することにより、Bayhydrol(登録商標)140AQを他のポリオールと反応させ、水分を除去して均一なスルホン化ポリオール混合物を形成する。次に、スルホン化ポリオール混合物を、n-ペンチルプロピオネート溶媒中、約50ppmのジブチルスズジラウレート触媒を用いて、イソシアネートおよび他の成分とともに配合し、固形分70%の透明なポリウレタン前駆体混合物を形成する。得られたポリウレタン前駆体混合物を、調製されたアクリル基材上にフローコートし、続いて約54℃で約12時間、次に約82℃で約24時間硬化し、厚さ約75~100μmの透明なポリウレタントップコートを形成する。コーティングされたアクリルのサンプルは、加速QUVに5週間曝露した。加速QUV装置を、UVB-313EL蛍光灯を使用して、約50℃で約7時間のUV曝露と約50℃で約5時間の凝縮(UVオフ、高湿度)のサイクルで動作する。QUV曝露なしのサンプルおよび5週間QUV曝露後のサンプルの電気体積抵抗率を、ASTM D-257に記載されている方法を使用して、約-6℃、約-28℃および約-40℃で測定した。電気体積抵抗率の結果を上記した表2に示す。結果は、特許文献1に記載されているように、Bayhydrol(登録商標)140AQからのスルホン化ポリエステルウレタンポリオールを組成物に組み込むと、Bayhydrol(登録商標)140AQなしの組成物と比較して電気伝導率を向上できることを示している。この伝導率の向上は、Fluorad(商標)HQ115とBayhydrol(登録商標)140AQとの相加効果であり、これら2つの成分間に強力な相乗的相互作用はない。この伝導率の向上は、ポリウレタンに低温で十分なp-静電気散逸能力を提供することも、風雨にさらされる有害な影響を許容することもできない。別個の実験から、組成物中の親水性添加剤Fluorad(商標)HQ115の濃度を増加させると、電気伝導率への影響が制限され、組成物にヘイズが誘導されることも観察される。
【0079】
【0080】
実施例2
親水性リチウムトリフルオロメタンスルホンイミド添加剤Fluorad(商標)HQ115を疎水性フッ素化イオン性帯電防止用添加剤トリ-n-ブチルメチルアンモニウムビス-(トリフルオロメタンスルホニル)イミドFC-4400に代えたことを除いて、特許文献1に記載のものと同等の脂肪族ポリエステルウレタン組成物を、表4に示すように、n-ペンチルプロピオネート溶媒中約50ppmのジブチルスズジラウレート触媒を使用して配合し、固形分70%の透明なポリウレタン前駆体を形成する。得られたポリウレタン前駆体混合物を、調製したアクリル基材上にフローコートし、続いて約54℃で約12時間、次に約82℃で約24時間硬化し、厚さ約75~100μmの透明なポリウレタントップコートを形成した。コーティングされたアクリルのサンプルを、加速QUVに5週間曝露した。QUV曝露の手順は、実施例1に記載されている。QUV曝露なしのサンプルおよび5週間QUV曝露後のサンプルの電気体積抵抗率を、ASTM D-257に記載されている方法を使用して、約-6℃、約-28℃、および約-40℃で測定した。電気体積抵抗率の結果を上記したように表2に示す。結果は、疎水性フッ素化イオン性帯電防止用添加剤FC-4400が、親水性添加剤Fluorad(商標)HQ115よりも組成物の導電率の向上に効果的であることを示しているが、この導電率の向上では、ポリウレタンに低温にて十分なp-静電気散逸能力を提供することはできないし、風雨にさらされる有害な影響を許容することはできない。
【0081】
【0082】
実施例3
疎水性フッ素化イオン性帯電防止用添加剤トリ-n-ブチルメチルアンモニウムビス-(トリフルオロメタンスルホニル)イミドFC-4400およびスルホン化ポリエステルウレタンポリオールBayhydrol(登録商標)140AQを含む脂肪族ポリエステルウレタン組成物を、表5に示す処方のように調製する。最初に約93℃~約104℃で約48時間混合することにより、スルホン化ポリエステルウレタン分散体Bayhydrol(登録商標)140AQを他のポリオールと反応させ、水分を除去し、均一なスルホン化ポリオール混合物を形成する。次に、スルホン化ポリオール混合物を、n-ペンチルプロピオネート溶媒中で約50ppmのジブチルスズジラウレート触媒を用いて、イソシアネートおよび他の成分とともに配合し、固形分70%の透明なポリウレタン前駆体を形成する。得られたポリウレタン前駆体を、調製されたアクリル基材上にフローコートし、続いて約54℃で約12時間、次に約82℃で約24時間硬化し、厚さ約75~100μmの透明な導電性トップコートを形成する。コーティングされたアクリルのサンプルを、加速QUVに約5週間曝露する。QUV曝露の手順は、実施例1に記載されている。QUV曝露なしのサンプルおよび5週間QUV曝露後のサンプルの電気体積抵抗率を、ASTM D-257に記載されている方法を使用して、約-6℃、約-28℃および約-40℃で測定した。電気体積抵抗率の結果を上記したように表2に示す。結果は、組成物に疎水性フッ素化イオン性帯電防止用添加剤FC-4400をスルホン化ポリエステルウレタンポリオールBayhydrol(登録商標)140AQとともに組み込むと、供給業者である3Mが提供するFC-4400技術データシートよりも有意に高い電気伝導率を実質的に向上できることを示している。疎水性フッ素化イオン性帯電防止用添加剤FC-4400とスルホン化ポリエステルウレタンマトリックスとの間の相乗的な相互作用が、この実質的な電気伝導率の向上に関与していると考えられる。電気伝導率の向上により、温度変化や風雨にさらされる(weathering exposure)有害な影響に耐えることが可能となり、温度変化や風雨にさらされることに関係なくポリウレタンの高いp-静電気散逸性能を維持する。
【0083】
【0084】
実施例4
疎水性フッ素化イオン性帯電防止用添加剤FC-4400の含有量を増加させた透明な脂肪族ポリエステルウレタン組成物を、疎水性フッ素化イオン性帯電防止用添加剤FC-4400とBayhydrol(登録商標)140AQからのスルホン化ポリエステルウレタンポリオールとの間の相乗的な相互作用をさらに調査するために、表6に示す処方のように調製した。最初に約93℃~約104℃で約48時間混合することにより、スルホン化ポリエステルウレタン分散体Bayhydrol(登録商標)140AQを他のポリオールと反応させ、水分を除去し、均一なスルホン化ポリオール混合物を形成する。次に、スルホン化ポリオール混合物を、n-ペンチルプロピオネート溶媒中で約50ppmのジブチルスズジラウレート触媒を用いて、イソシアネートおよび他の成分とともに配合し、固形分70%の透明なポリウレタン前駆体を形成する。得られたポリウレタン前駆体を、調製されたアクリル基材上にフローコートし、続いて約54℃で約12時間、次に約82℃で約24時間硬化し、厚さ約75~100μmの透明な導電性トップコートを形成する。コーティングされたアクリルのサンプルを、加速QUVに約5週間曝露する。QUV曝露の手順は、実施例1に記載されている。QUV曝露なしのサンプルおよび5週間QUV曝露後のサンプルの電気体積抵抗率を、ASTM D-257に記載されている方法を使用して、約-6℃、約-28℃および約-40℃で測定した。電気体積抵抗率の結果を上記の表2に示す。結果は、疎水性フッ素化イオン性帯電防止用添加剤FC-4400の含有量を増やすと、組成物の全体的な電気伝導率がさらに向上することを示している。電気伝導率の向上により、温度変化や風雨にさらされる有害な影響に耐えることが可能となり、温度変化や風雨にさらされることに関係なくポリウレタンの高いp-静電気散逸性能を維持する。
【0085】
【0086】
実施例5
鎖延長剤1,4-ブタンジオール(BDO)が組成物から除去されることを除いて、実施例3に記載されるものに匹敵する脂肪族ポリエステルウレタン組成物を、表7に示す処方のように調製した。最初に約93℃~約104℃で約48時間混合することにより、スルホン化ポリエステルウレタン分散体Bayhydrol(登録商標)140AQを他のポリオールと反応させ、水分を除去し、均一なスルホン化ポリオール混合物を形成する。次に、スルホン化ポリオール混合物を、n-ペンチルプロピオネート溶媒中で約50ppmのジブチルスズジラウレート触媒を用いて、イソシアネートおよび他の成分とともに配合し、固形分70%の透明なポリウレタン前駆体を形成する。得られたポリウレタン前駆体を、調製されたアクリル基材上にフローコートし、続いて約54℃で約12時間、次に約82℃で約24時間硬化し、厚さ約75~100μmの透明な導電性トップコートを形成する。コーティングされたアクリルのサンプルを、加速QUVに約5週間曝露する。QUV曝露の手順は、実施例1に記載されている。QUV曝露なしのサンプルおよび5週間QUV曝露後のサンプルの電気体積抵抗率を、ASTM D-257に記載されている方法を使用して、約-6℃、約-28℃および約-40℃で測定した。電気体積抵抗率の結果を上記の表2に示す。結果は、組成物から鎖延長剤1,4-ブタンジオールを除去することが電気伝導率にプラスの影響を与えることを示している。電気伝導率の向上により、温度変化や風雨にさらされる有害な影響に耐えることが可能となり、温度変化や風雨にさらされることに関係なくポリウレタンの高いp-静電気散逸性能を維持する。
【0087】
【0088】
加速QUVでの曝露
透明なポリウレタンでコーティングされたアクリルのサンプルを、光透過率、ヘイズ率、接着率、および全体的な外観について、最大5週間、加速QUV曝露を用いて試験した。加速QUV装置を、UVB-313EL蛍光灯を使用して、約50℃/約7時間のUV曝露と約50℃/約5時間の凝縮(UVオフ、高湿度)のサイクルで動作させた。試験サンプルをQUV装置から毎週取り出して、光透過率(%)、ヘイズ率(%)、接着率(%)、および全体的な外観をチェックした。光透過率(%)とヘイズ率(%)は、ASTM
D-1003に従って測定した。接着率(%)は、ASTM D-3359に従って測定した。実施例5のサンプルの試験結果を表8に示す。結果は、ポリウレタンがQUV曝露時に光透過率、ヘイズ率(%)、接着率(%)および全体的な外観の劣化を実質的に示さず、光と風雨の有害な影響に対して優れた環境耐久性を示している。
【0089】
【0090】
雨食(Rain Erosion)
QUV曝露なし、および5週間のQUV曝露後、の透明なポリウレタンでコーティングしたアクリルのサンプルを、耐雨食性について試験した。4つのサンプルは、UV曝露ありまたはUV曝露なしで、コーティングされたアクリルから調製した。コーティングしたアクリルは、最初に、約2.54cm×約2.54cm×約0.635cmの寸法にカットし、上端全体にステップマシン加工し(step machined)、試験ホルダに装着するために、厚さ約0.238cm、幅約0.476cmの、残りのサンプル表面と同じ高さの灰色のエラストマー材料を充填した。雨食試験のパラメータは、約30度の衝突角度(impact angle)、約2.54cm/時の降雨および約927km/時の試験速度であった。サンプル対は、ゼロリフト求心アーム(zero lift centripetal arm)の端で試験した。雨滴の平均サイズは約2.0mmであった。試験サンプルは、トップコートの層間剥離または損傷について、試験前、曝露後約10分、曝露後約30分、および曝露後約60分に検査した。実施例5のサンプルの試験結果を表9に示す。結果は、ポリウレタントップコートがQUV曝露の有無にかかわらず優れた耐浸食性を呈することを示している。
【0091】
【0092】
実施例6
連鎖延長剤1,4-ブタンジオール(BDO)を含まない透明な脂肪族ポリエステルウレタン組成物を、組成物中の疎水性フッ素化イオン性帯電防止用添加剤FC-4400の含有量を増加させて、表10に示す処方のように調製した。最初に約93℃~約104℃で約48時間混合することにより、スルホン化ポリエステルウレタン分散体Bayhydrol 140 AQを他のポリオールと反応させ、水分を除去し、均一なスルホン化ポリオール混合物を形成する。次に、スルホン化ポリオール混合物を、n-ペンチルプロピオネート溶媒中、約50ppmのジブチルスズジラウレート触媒を用いて、イソシアネートおよび他の成分とともに配合し、固形分70%の透明なポリウレタン前駆体混合物を形成する。得られたポリウレタン前駆体混合物を、調製されたアクリル基材上にフローコートし、続いて約54℃で約12時間、次に約82℃で約24時間硬化し、厚さ約75~100μmの透明なポリウレタントップコートを形成する。コーティングされたアクリルのサンプルを、加速QUVに5週間曝露した。QUV曝露の手順は、実施例1に記載されている。QUV曝露なしのサンプルおよび5週間QUV曝露後のサンプルの電気体積抵抗率を、ASTM D-257に記載されている方法を使用して、約-6℃、約-28℃、および約-40℃で測定した。電気体積抵抗率の結果を上記したように表2に示す。結果は、組成物中の疎水性フッ素化イオン性帯電防止用添加剤FC-4400の含有量を増やすと、電気伝導率にプラスの効果があることを示している。電気伝導率の向上により、温度変化や風雨にさらされる有害な影響に耐えることが可能となり、温度変化や風雨にさらされることに関係なくポリウレタンの高いp-静電気散逸性能を維持する。
【0093】
【0094】
実施例7
FC-4400およびBayhydrol 140 AQの含有量が高い透明な脂肪族ポリエステルウレタン組成物を、疎水性フッ素化イオン性帯電防止用添加剤FC-4400およびBayhydrol(登録商標)140AQからのスルホン化ポリエステルウレタンポリオール間の相乗作用をさらに調査するために、表11に示す処方のように調製した。最初に約93℃~約104℃で約48時間混合することにより、スルホン化ポリエステルウレタン分散体Bayhydrol(登録商標)140AQを他のポリオールと反応させ、水分を除去し、均一なスルホン化ポリオール混合物を形成する。次に、スルホン化ポリオール混合物を、n-ペンチルプロピオネート溶媒中で約50ppmのジブチルスズジラウレート触媒を用いて、イソシアネートおよび他の成分とともに配合し、固形分70%の透明なポリウレタン前駆体を形成する。得られたポリウレタン前駆体を、調製されたアクリル基材上にフローコートし、続いて約54℃で約12時間、次に約82℃で約24時間硬化し、厚さ約75~100μmの透明な導電性トップコートを形成する。コーティングされたアクリルのサンプルを、加速QUVに約5週間曝露する。QUV曝露の手順は、実施例1に記載されている。QUV曝露なしのサンプルおよび5週間QUV曝露後のサンプルの電気体積抵抗率を、ASTM D-257に記載されている方法を使用して、約-6℃、約-28℃および約-40℃で測定した。電気体積抵抗率の結果を上記の表2に示す。結果は、組成物中の疎水性フッ素化イオン性帯電防止用添加剤FC-4400およびスルホン化ポリエステルウレタン分散体Bayhydrol 140 AQの含有量を最大にすると、電気伝導率にプラスの効果があることを示している。電気伝導率の向上により、温度変化や風雨にさらされる有害な影響に耐えることが可能となり、温度変化や風雨にさらされることに関係なくポリウレタンの高いp-静電気散逸性能を維持する。
【0095】
【0096】
現在好ましい実施形態のみを参照して本発明を詳細に説明した。当業者は、本発明から逸脱することなく、様々な修正を行うことができることを理解するであろう。したがって、本発明は、以下の特許請求の範囲によってのみ定義される。
現在好ましい実施形態のみを参照して本発明を詳細に説明した。当業者は、本発明から逸脱することなく、様々な修正を行うことができることを理解するであろう。したがって、本発明は、以下の特許請求の範囲によってのみ定義される。
以下に、上記実施形態から把握できる技術思想を付記として記載する。
[付記1]
基材の表面をコーティングするのに適したポリウレタン組成物であって、前記組成物は、
脂肪族ポリエステルウレタンマトリックスおよびフッ素化イオン性帯電防止用添加剤を含み、前記脂肪族ポリエステルウレタンマトリックスは、
脂肪族ジイソシアネートと、
ポリエステルジオールおよびポリエステルトリオールを有するポリエステルポリオールと、
スルホン化ポリエステルウレタンポリオールと、
を含む、組成物。
[付記2]
前記脂肪族ジイソシアネートが、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)およびイソホロンジイソシアネートからなる群より選択される、付記1に記載の組成物。
[付記3]
前記ポリエステルジオールが約830g/モルの平均分子量を有し、ジエチレングリコールで開始されたポリカプロラクトンジオールを含む、付記2に記載の組成物。
[付記4]
前記ポリエステルトリオールが約540g/モルの平均分子量を有し、トリメチロールプロパンで開始されたポリカプロラクトントリオールを含む、付記3に記載の組成物。
[付記5]
前記ポリエステルポリオールが、エチレングリコール、1,4-ブタンジオールおよび2-エチル-1,3-ヘキサンジオールからなる群より選択される鎖延長剤をさらに含む、付記4記載の組成物。
[付記6]
前記スルホン化ポリエステルウレタンポリオールが、脂肪族ポリエステルウレタン樹脂のアニオン性分散体を含む、付記4に記載の組成物。
[付記7]
前記スルホン化ポリエステルウレタンポリオールが、前記組成物の約5重量%~約10重量%である、付記6に記載の組成物。
[付記8]
前記脂肪族ポリエステルウレタンマトリックスが、前記組成物の約85重量%~約98重量%である、付記7に記載の組成物。
[付記9]
前記フッ素化イオン性帯電防止用添加剤が、トリ-n-ブチルメチルアンモニウムビス-(トリフルオロメタンスルホニル)イミドおよび第四級アルキルアンモニウムビス-(トリフルオロメタンスルホニル)イミドからなる群より選択されるフッ素化スルホンイミドの第四級アンモニウム塩を含む、付記8に記載の組成物。
[付記10]
前記フッ素化イオン性帯電防止用添加剤が、前記組成物の約3重量%~約8重量%である、付記9に記載の組成物。
[付記11]
基材の表面をコーティングするのに適したポリウレタン組成物を調製する方法であって、前記方法は、
ポリエステルジオールおよびポリエステルトリオールをスルホン化ポリエステルウレタン分散体と混合して、均一なスルホン化ポリオール混合物を形成することと、
前記均一なスルホン化ポリオール混合物を、脂肪族ジイソシアネート、フッ素化イオン性帯電防止用添加剤および触媒を含む成分と混合して、ポリウレタンコーティング組成物を形成することと、
を含む方法。
[付記12]
前記スルホン化ポリエステルウレタン分散体が、約90℃~約105℃で約48時間、ポリエステルジオールおよびポリエステルトリオールと混合される、付記11に記載の方法。
[付記13]
前記ポリエステルジオールが約830g/molの平均分子量を有し、ジエチレングリコールで開始されたポリカプロラクトンジオールを含む、付記12に記載の方法。
[付記14]
前記ポリエステルトリオールが約540g/molの平均分子量を有し、トリメチロールプロパンで開始されたポリカプロラクトントリオールを含む、付記13に記載の方法。
[付記15]
前記スルホン化ポリエステルウレタン分散体が脂肪族ポリエステルウレタン樹脂のアニオン性分散体を含み、かつ前記組成物の約5重量%~約10重量%である、付記14に記載の方法。
[付記16]
前記脂肪族ジイソシアネートがメチレンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)を含む、付記15に記載の方法。
[付記17]
前記フッ素化イオン性帯電防止用添加剤がトリ-n-ブチルメチルアンモニウムビス-(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを含み、かつ前記組成物の約3重量%~約8重量%である、付記16に記載の方法。
[付記18]
付記17に記載の方法はさらに、
前記ポリウレタン組成物で表面をコーティングすることと、
コーティングされた表面を約50℃~約60℃の第1の硬化温度で約12時間硬化させることと、
コーティングされた表面を、約75℃~約85℃の第2の硬化温度で約24時間再硬化させることと、
を含む方法。
[付記19]
前記コーティングが透明であり、前記基材が透明なアクリルである、付記18に記載の方法。
[付記20]
前記表面が航空機の透明体の外表面である、付記19に記載の方法。
[付記21]
前記第1の硬化温度が約54℃であり、前記第2の硬化温度が約82℃である、付記20に記載の方法。
[付記22]
付記21に記載の方法は、前記透明なポリウレタン組成物で表面をコーティングする前に同表面を調製するステップをさらに含み、前記調製するステップは、
ポリシロキサンコーティングで前記表面をコーティングし、ベースコーティングされた表面を形成することと、
3層の酸化インジウムスズ(ITO)/金/ITOフィルムスタックで前記ベースコーティングされた表面をコーティングして、ITOコーティングされた表面を形成することと、
前記ITOコーティングされた表面を0.1%シリケートコーティング溶液でコーティングして、シリケートコーティングされた表面を形成することと、
前記シリケートでコーティングされた表面を約82℃で約1時間加熱することと、
前記シリケートコーティングされた表面を0.1%アミノシランプライマー溶液でコーティングして、アミノシランコーティングされた表面を形成することと、
アミノシランコーティングされた表面を18%ポリウレタン熱硬化性接着剤溶液でコーティングして、ポリウレタン熱硬化性コーティング表面を形成することと、
ポリウレタン熱硬化性コーティング表面を約20℃~約25℃で約16時間硬化させることと、
を含む、方法。
[付記23]
ラミネートであって、前記ラミネートは、
基材の表面に配置されたコーティングを含み、前記コーティングは、
脂肪族ポリエステルウレタンマトリックスおよびフッ素化イオン性帯電防止用添加剤を含むポリウレタン組成物を含み、前記脂肪族ポリエステルウレタンマトリックスは、
脂肪族ジイソシアネートと、
ポリエステルジオールおよびポリエステルトリオールを有するポリエステルポリオールと、
スルホン化ポリエステルウレタンポリオールと、
を含む、ラミネート。
[付記24]
前記コーティングが、約75μm~約100μmの厚さを有する、付記23に記載のラミネート。
[付記25]
前記コーティングが、約-40℃で約10
11
オーム/cm以下の電気体積抵抗率を有する、付記24に記載のラミネート。
[付記26]
前記コーティングが、約65%~約70%の視感透過率を有する、付記25に記載のラミネート。
[付記27]
前記コーティングが約0.90%~約1.40%のヘイズを有する、付記26に記載のラミネート。
[付記28]
前記コーティングが、パーフルオロアルキルスルホネートのイオン化可能な金属塩またはコロイド状インジウムスズ酸化物ナノ粒子分散体を含まない、付記27に記載のラミネート。
[付記29]
前記コーティングが透明であり、前記基材が透明なアクリルである、付記27に記載のラミネート。
[付記30]
前記表面が航空機の透明体の外表面である、付記29に記載のラミネート。