(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179436
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】変異型ウイルスタンパク質
(51)【国際特許分類】
C07K 14/145 20060101AFI20231212BHJP
C12N 15/47 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
C07K14/145 ZNA
C12N15/47
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023138247
(22)【出願日】2023-08-28
(62)【分割の表示】P 2020516534の分割
【原出願日】2018-09-24
(31)【優先権主張番号】17306255.5
(32)【優先日】2017-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(71)【出願人】
【識別番号】321004758
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・パリ・サクレー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】アルベルティーニ オーレリー
(72)【発明者】
【氏名】ゴーダン イヴ
(72)【発明者】
【氏名】ロー エレーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ブロ ローラ
(72)【発明者】
【氏名】ニコリック ジョヴァン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】特性の1つが欠損した新しい変異型VSV-Gタンパク質を提供する。
【解決手段】特定のアミノ酸配列を含む単離された非天然タンパク質であって、8、47、209および/または354位のアミノ酸が、前記特定のアミノ酸配列中のその位置に示されたアミノ酸とは異なる任意のアミノ酸によって置換されている、単離された非天然タンパク質を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
VSV Indiana株の細胞外ドメインのアミノ酸配列である、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含む単離された非天然タンパク質であって、
配列番号1の配列中の最初のアミノ酸の位置からナンバリングされる、8、47、209および354位の少なくとも1個のアミノ酸が、配列番号1の前記配列中のその位置に示されたアミノ酸とは異なるアミノ酸によって置換されており、
8位での置換が、Yを除く、配列番号1の前記配列中のその位置に示されたアミノ酸とは異なる任意のアミノ酸によるものであり、且つ
209位での置換が、Hを除く、配列番号1の前記配列中のその位置に示されたアミノ酸とは異なる任意のアミノ酸によるものである、前記単離された非天然タンパク質であるか、
或いは
少なくとも1個のアミノ酸の置換、付加または欠失によって配列番号1に記載の前記タンパク質から誘導される任意の相同タンパク質であって、但し、誘導されるタンパク質が、配列番号1に記載のアミノ酸配列との少なくとも70%の同一性を保持し、且つ前記誘導されるタンパク質が、膜融合を誘導する能力を保持し、且つLDL膜受容体と相互作用する能力を保持し、
配列番号1の前記配列の8、47、209および354位と等価な位置に位置する前記相同タンパク質の少なくとも1個のアミノ酸が、配列番号1の配列中のその位置に示されたアミノ酸とは異なるアミノ酸によって置換されており、
8位と等価な位置に位置するアミノ酸の置換が、Yを除く、配列番号1の配列中のその位置に示されたアミノ酸とは異なる任意のアミノ酸によるものであり、且つ
209位と等価な位置に位置するアミノ酸の置換が、Hを除く、配列番号1の配列中のその位置に示されたアミノ酸とは異なる任意のアミノ酸によるものである、前記相同タンパク質であって、
前記単離された非天然タンパク質が、膜融合を誘導する能力を保持し、且つLDL膜受容体と相互作用することができない、
前記単離された非天然タンパク質または相同タンパク質。
【請求項2】
以下のアミノ酸配列:
- 配列番号15~20;
- 配列番号21~26;
- 配列番号27~32;
- 配列番号33~38;
- 配列番号39~44;
- 配列番号45~50;および
- 配列番号51~56
のうちの1つを含む、請求項1に記載の単離された非天然タンパク質。
【請求項3】
47位または354位、または47位と354位の両方のアミノ酸が、KまたはRを除く任意のアミノ酸、特に、A、G、FまたはQ、好ましくは、AまたはQによって置換されている、請求項1または2に記載の単離された非天然タンパク質。
【請求項4】
8位および/または209位のアミノ酸の、配列番号1の配列中のその位置に示されたアミノ酸、または前記相同タンパク質中の等価な位置に示されたアミノ酸とは異なる任意のアミノ酸による置換をさらに含む、請求項3に記載の単離された非天然タンパク質。
【請求項5】
8位のアミノ酸が、HまたはQまたはYを除く任意のアミノ酸によって置換されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の単離された非天然タンパク質。
【請求項6】
209位のアミノ酸が、YまたはHを除く任意のアミノ酸によって置換されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の単離された非天然タンパク質。
【請求項7】
配列番号57~154のアミノ酸配列の1つを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の単離された非天然タンパク質。
【請求項8】
192~202位、または
240~257位、または
347~353位、または
364~366位、または
376~379位
のアミノ酸の間にペプチドの挿入をさらに含み、
前記ペプチドが、配列番号1に示されるタンパク質とは異なるペプチドに由来する、請求項1~7のいずれか1項に記載の単離された非天然タンパク質。
【請求項9】
1位または351位と352位のアミノ酸の間にペプチドの挿入をさらに含み、前記ペプチドが、配列番号1に示されるタンパク質とは異なるタンパク質に由来する、請求項1~7のいずれか1項に記載の単離された非天然タンパク質。
【請求項10】
前記ペプチドが、細胞受容体のリガンドの少なくとも一部、好ましくは、ナノボディ、例えば、抗HER2ナノボディ、抗MUC18ナノボディまたは抗PD-1ナノボディである、請求項8または9に記載の単離された非天然タンパク質。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の単離された非天然タンパク質をコードする核酸分子。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか1項に記載の単離された非天然タンパク質を発現する組換えウイルス。
【請求項13】
請求項11に記載の核酸分子を含む組換えウイルス。
【請求項14】
請求項1~10のいずれか1項に記載の非天然タンパク質を含有する、もしくは発現する、または請求項11に記載の核酸分子を含有する、または請求項12もしくは13に記載のウイルスによって感染した真核細胞。
【請求項15】
薬物としての使用のための、以下:
請求項1~10のいずれか1項に記載のタンパク質;または
請求項11に記載の核酸分子;
請求項12もしくは13に記載のウイルス;または
請求項14に記載の真核細胞
のうちの少なくとも1つを含む組成物。
【請求項16】
がんを処置するために使用するための、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
脂質膜を、特定の標的、例えば、細胞、特に、がん細胞などの殺傷しようとする細胞に標的化するための、請求項1~10のいずれか1項に記載のタンパク質のin vitroでの使用であって、前記タンパク質は前記脂質膜に固定される、前記使用。
【請求項18】
脂質膜を、特定の標的、例えば、細胞、特に、がん細胞などの殺傷しようとする細胞に標的化するために使用するための請求項1~10のいずれか1項に記載のタンパク質であって、前記脂質膜に固定される、前記タンパク質。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変異型ウイルスタンパク質、特に、腫瘍溶解性ウイルスを起源とする変異型タンパク質に関する。
【背景技術】
【0002】
水疱性口内炎ウイルス(VSV)は、ラブドウイルス科のベシクロウイルス属に属する一本鎖エンベロープRNAウイルスである。それは、昆虫、ウシ、ウマおよびブタに感染し得るアルボウイルスである。哺乳動物では、正常細胞を残しながら腫瘍細胞に感染し、これらを殺傷するその能力は、それを、がんの処置のための有望な腫瘍溶解性ウイルスにする(Barber, 2005;Fernandez et al., 2002;Hastie et al., 2013)。
VSVゲノムは、5つの構造タンパク質をコードし、中でも1回膜貫通型糖タンパク質(G)をコードする。この糖タンパク質は、アミノ末端のシグナルペプチド、約450アミノ酸の細胞外ドメイン、単一のアルファヘリックス膜貫通セグメントおよび小さいウイルス内カルボキシ末端ドメインを有する古典的なI型膜糖タンパク質である。シグナルペプチドは、小胞体の内腔で切断され、天然の糖タンパク質は、細胞外ドメイン、膜貫通ドメインおよびウイルス内ドメインで構成される。
【0003】
Gは、ウイルス感染の初期ステップの間に重要な役割を果たす(Albertini et al., 2012b)。第1に、それは、特定の受容体へのウイルスの結合を担う。結合後、ビリオンは、クラスリン媒介性エンドサイトーシス経路によって細胞に進入する。エンドサイトーシス小胞の酸性環境では、Gは、ウイルスとエンドソーム膜との融合を誘発し、感染のその後のステップのために細胞質ゾル中にゲノムを放出する。融合は、両方とも三量体である融合前コンフォメーションから融合後コンフォメーションへの低pH誘導性の大きな構造変化によって触媒される(Roche et al., 2006;Roche et al., 2007)。
G細胞外ドメインのポリペプチド鎖は、融合ドメイン(FD)、プレクストリン相同ドメイン(PHD)、および三量体化ドメイン(TrD)である3つの異なるドメインに折り畳まれる。構造変化の間も、FD、PHDおよびTrDは、その三次構造を保持する。それにも拘わらず、それらは、低pH誘導性のコンフォメーション変化の間に再び折り畳まれるヒンジセグメント(S1~S5)の二次変化のため、その相対的配向の大きな再配列を受ける(Roche et al., 2006;Roche et al., 2007)。
最近、低密度リポタンパク質受容体(LDL-R)およびこの受容体ファミリーの他のメンバーが、VSV受容体として働くことが示された(Finkelshtein et al., 2013)。
【0004】
LDL-Rは、哺乳動物細胞中でコレステロール恒常性を調節するI型膜貫通タンパク質である(Brown and Goldstein, 1986)。LDL-Rは、血漿循環から、コレステロールを担持するリポタンパク質を除去する。中性pHでLDL-Rによって細胞外で結合したリガンドは、内在化した後、エンドソームの酸性環境に放出され、その後のリソソーム分解をもたらす。次いで、受容体は細胞表面に再循環して戻る。LDL-R細胞外ドメインは、リガンド結合ドメイン、表皮増殖因子(EGF)前駆体相同ドメインおよびO結合オリゴ糖に富むC末端ドメインから構成される。リガンド結合ドメインは、7個のシステインリッチリピート(CR1~CR7、
図1)から作られる。各リピートは、約40個のアミノ酸から作られ、3個のジスルフィド架橋に関与する6個のシステイン残基、およびCa
2+イオンを配位する酸性残基クラスターを含有する。カーゴの細胞内放出は、開いたコンフォメーションから閉じたコンフォメーションへの、LDL-Rの低pH誘導性コンフォメーション変化によって駆動される。
LDL-R遺伝子ファミリーは、細胞表面上に存在する膜貫通受容体からなり、リポタンパク質のエンドサイトーシスによる取込みに関与し、リガンド結合のためにCa
2+を必要とする。これらの受容体は全て、一般的に、いくつかのCRリピート(最大数十個)、EGF前駆体様リピート、膜貫通領域および少なくとも1個の内在化シグナル配列を含有する細胞内ドメインを有する。それらは、昆虫を含むあらゆる動物に遍在的に見出される。
VSV-Gは、他のウイルスを偽型化するために広く使用されてきたが、VSV-G偽型化レンチウイルス(VSV-G-LV)は、VSVと同じ広い向性を示す。
他方、VSV-G-LVは、LDL-Rの発現レベルが非常に低いため、非刺激T細胞、B細胞、および造血幹細胞への効率的な遺伝子導入を可能にしない(Amirache et al., 2014)。
LDL-R受容体ファミリーメンバーの遍在的分布のため、VSVおよびVSV-G-LVの広い向性は、その治療的使用を制限する。これは、腫瘍細胞を特異的に標的化したい場合の腫瘍治療に特に当てはまる。
【発明の概要】
【0005】
本発明の1つの目的は、この欠点を除去することである。
本発明の1つの目的は、特性の1つが欠損した新しい変異型VSV-Gタンパク質を提供して、このタンパク質を特異的に標的化することである。
本発明の別の目的は、そのようなタンパク質を発現する新しいVSVおよび腫瘍治療におけるその使用を提供することである。
【0006】
本発明は、VSV Indiana株の細胞外ドメインのアミノ酸配列に一致する(である)、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含む、それから本質的になる、またはそれからなる単離された非天然タンパク質であって、
配列番号1の配列中の最初のアミノ酸の位置からナンバリングされる、8、47、209および354位の少なくとも1個のアミノ酸が、配列番号1の前記配列中のその位置に示されたアミノ酸とは異なるアミノ酸によって置換されている、単離された非天然タンパク質、
または少なくとも1個のアミノ酸の置換、付加または欠失によって配列番号1に記載の前記タンパク質から誘導される任意の相同タンパク質であって、但し、誘導されるタンパク質が、配列番号1に記載のアミノ酸配列との少なくとも70%の同一性を保持し、前記誘導されるタンパク質が、膜融合を誘導する能力を保持し、LDL膜受容体と相互作用する能力を保持し、
配列番号1の前記配列の8、47、209および354位と等価な位置に位置する前記相同タンパク質の少なくとも1個のアミノ酸が、配列番号1の配列中のその位置に示されたアミノ酸とは異なるアミノ酸によって置換されている、相同タンパク質であり、
前記単離された非天然タンパク質が、膜融合を誘導する能力を保持し、LDL膜受容体と相互作用することができない、単離された非天然タンパク質または相同タンパク質に関する。
【0007】
好ましい実施形態では、本発明の単離された非天然タンパク質の配列番号1中の8位(配列番号1の配列中の最初のアミノ酸の位置からナンバリングされる)、または本発明の配列番号1に記載の前記タンパク質から誘導される相同タンパク質中の等価な位置のアミノ酸は、Y残基であってはならない。
好ましい実施形態では、本発明の単離された非天然タンパク質の配列番号1中の209位(配列番号1の配列中の最初のアミノ酸の位置からナンバリングされる)、または本発明の配列番号1に記載の前記タンパク質から誘導される相同タンパク質中の等価な位置のアミノ酸は、H残基であってはならない。
【0008】
かくして、換言すれば、本発明は、VSV Indiana株の細胞外ドメインのアミノ酸配列に一致する(である)、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含む単離された非天然タンパク質であって、
配列番号1の配列中の最初のアミノ酸の位置からナンバリングされる、8、47、209および354位の少なくとも1個のアミノ酸が、配列番号1の前記配列中のその位置に示されたアミノ酸とは異なるアミノ酸によって置換され、
8位での置換が、Yを除く、配列番号1の前記配列中のその位置に示されたアミノ酸とは異なる任意のアミノ酸によるものであり、
209位での置換が、Hを除く、配列番号1の前記配列中のその位置に示されたアミノ酸とは異なる任意のアミノ酸によるものである、単離された非天然タンパク質であるか、
または少なくとも1個のアミノ酸の置換、付加または欠失によって配列番号1に記載の前記タンパク質から誘導される任意の相同タンパク質であって、但し、誘導されるタンパク質が、配列番号1に記載のアミノ酸配列との少なくとも70%の同一性を保持し、前記誘導されるタンパク質が、膜融合を誘導する能力を保持し、LDL膜受容体と相互作用する能力を保持し、
配列番号1の前記配列の8、47、209および354位と等価な位置に位置する前記相同タンパク質の少なくとも1個のアミノ酸が、配列番号1の配列中のその位置に示されたアミノ酸とは異なるアミノ酸によって置換され、
8位と等価な位置に位置するアミノ酸の置換が、Yを除く、配列番号1の配列中のその位置に示されたアミノ酸とは異なる任意のアミノ酸によるものであり、
209位と等価な位置に位置するアミノ酸の置換が、Hを除く、配列番号1の配列中のその位置に示されたアミノ酸とは異なる任意のアミノ酸によるものである、相同タンパク質であり、
前記単離された非天然タンパク質が、膜融合を誘導する能力を保持し、LDL膜受容体と相互作用することができない、単離された非天然タンパク質または相同タンパク質に関する。
【0009】
有利には、本発明は、VSV Indiana株の細胞外ドメインのアミノ酸配列に一致する(である)、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含む、それから本質的になる、またはそれからなる単離された非天然タンパク質であって、
配列番号1の配列中の最初のアミノ酸の位置からナンバリングされる、8位、または47位、または209位、または354位、または8位と47位の両方、または8位と209位の両方、または8位と354位の両方、または47位と209位の両方、または47位と354位の両方、または209位と354位の両方、または8位および47位および209位、または8位および47位および354位、または8位および209位および354位、または47位および209位および354位、または8位および47位および209位および354位のアミノ酸が、配列番号1に見出されるアミノ酸とは異なる任意のアミノ酸によって置換されている、単離された非天然タンパク質、
または少なくとも1個のアミノ酸の置換、付加または欠失によって配列番号1に記載の前記タンパク質から誘導される任意の相同タンパク質であって、但し、誘導されるタンパク質が、配列番号1に記載のアミノ酸配列との少なくとも70%の同一性を保持し、前記誘導されるタンパク質が、膜融合を誘導する能力を保持し、LDL膜受容体と相互作用する能力を保持し、
8位、もしくは47位、もしくは209位、もしくは354位、または8位と47位の両方、または8位と209位の両方、または8位と354位の両方、または47位と209位の両方、または47位と354位の両方、または209位と354位の両方、または8位および47位および209位、または8位および47位および354位、または8位および209位および354位、または47位および209位および354位、または8位および47位および209位および354位と等価な位置に位置する前記相同タンパク質のアミノ酸が、配列番号1に見出されるアミノ酸とは異なる任意のアミノ酸によって置換され、
特に、8位のアミノ酸が、Hを除く、好ましくは、Yを除く任意のアミノ酸によって置換され、
47位のアミノ酸が、Kを除く任意のアミノ酸によって置換され、
209位のアミノ酸が、Yを除く、好ましくは、Hを除く任意のアミノ酸によって置換され、
354位のアミノ酸が、Rを除く任意のアミノ酸によって置換され、
ナンバリングが、配列番号1の配列中の最初のアミノ酸の位置から行われる、相同タンパク質であり、
前記単離された非天然タンパク質が、膜融合を誘導する能力を保持し、LDL膜受容体と相互作用することができない、単離された非天然タンパク質または相同タンパク質に関する。
【0010】
有利には、本発明は、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含む、それから本質的になる、またはそれからなる単離された非天然タンパク質、
または少なくとも1個のアミノ酸の置換、付加または欠失によって配列番号1に記載の前記タンパク質から誘導される任意のタンパク質であって、但し、配列番号1に記載の前記タンパク質から誘導される前記タンパク質誘導タンパク質が、上記に示された囲みのアミノ酸を保持し、
8位、もしくは47位、もしくは209位、もしくは354位、または8位と47位の両方、または8位と209位の両方、または8位と354位の両方、または47位と209位の両方、または47位と354位の両方、または209位と354位の両方、または8位および47位および209位、または8位および47位および354位、または8位および209位および354位、または47位および209位および354位、または8位および47位および209位および354位、または配列番号1に記載の前記タンパク質から誘導されるタンパク質中の対応する位置のアミノ酸が、配列番号1に見出されるアミノ酸とは異なる任意のアミノ酸によって置換され、
特に、8位のアミノ酸が、Hを除く、好ましくは、Yを除く任意のアミノ酸によって置換され、
47位のアミノ酸が、Kを除く任意のアミノ酸によって置換され、
209位のアミノ酸が、Yを除く、好ましくは、Hを除く任意のアミノ酸によって置換され、
354位のアミノ酸が、Rを除く任意のアミノ酸によって置換され、
ナンバリングが、配列番号1の配列中の最初のアミノ酸の位置から行われる、任意のタンパク質であり、
前記単離された非天然タンパク質が、膜融合を誘導する能力を保持し、LDL膜受容体と相互作用することができない、単離された非天然タンパク質または任意のタンパク質に関する。
【0011】
有利には、本発明は、VSV Indiana株の細胞外ドメインのアミノ酸配列に一致する(である)、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含む、それから本質的になる、またはそれからなる単離された非天然タンパク質であって、
配列番号1の配列中の最初のアミノ酸の位置からナンバリングされる、47位、もしくは354位、または47位と354位の両方のアミノ酸が、任意のアミノ酸によって、特に、KまたはRを除く任意のアミノ酸によって置換されている、単離された非天然タンパク質、
または少なくとも1個のアミノ酸の置換、付加または欠失によって配列番号1に記載の前記タンパク質から誘導される任意の相同タンパク質であって、但し、誘導されるタンパク質が、配列番号1に記載のアミノ酸配列との少なくとも70%の同一性を保持し、前記誘導されるタンパク質が、膜融合を誘導する能力を保持し、LDL膜受容体と相互作用する能力を保持し、
47位もしくは354位、または47位と354位の両方と等価な位置に位置する、前記相同タンパク質のアミノ酸が、任意のアミノ酸、特に、KまたはRを除く任意のアミノ酸によって置換され、
ナンバリングが、配列番号1の配列中の最初のアミノ酸の位置から行われる、相同タンパク質であり、
前記単離された非天然タンパク質が、膜融合を誘導する能力を保持し、LDL膜受容体と相互作用することができない、単離された非天然タンパク質または相同タンパク質に関する。
【0012】
一実施形態では、前記単離された非天然タンパク質は、配列番号1の配列中の最初のアミノ酸の位置からナンバリングされる、8位、または209位、または8位と209位の両方のアミノ酸の、任意のアミノ酸による置換をさらに含み、
好ましくは、8位のアミノ酸は、HまたはYを除く任意のアミノ酸によって置換され、
好ましくは、209位のアミノ酸は、HまたはYを除く任意のアミノ酸によって置換されている。
【0013】
有利には、本発明は、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含む、それから本質的になる、またはそれからなる単離された非天然タンパク質、
または少なくとも1個のアミノ酸の置換、付加または欠失によって配列番号1に記載の前記タンパク質から誘導される任意のタンパク質であって、但し、配列番号1に記載の前記タンパク質から誘導される前記タンパク質誘導タンパク質が、上記に示された囲みのアミノ酸を保持し、
47位、もしくは354位、または47位と354位の両方、または配列番号1に記載の前記タンパク質から誘導されるタンパク質中の対応する位置のアミノ酸が、任意のアミノ酸によって、特に、KまたはRを除く任意のアミノ酸によって置換され、
ナンバリングが、配列番号1の配列中の最初のアミノ酸の位置から行われる、任意のタンパク質であり、
前記単離された非天然タンパク質が、膜融合を誘導する能力を保持し、LDL膜受容体と相互作用することができない、単離された非天然タンパク質または任意のタンパク質に関する。
【0014】
一実施形態では、前記単離された非天然タンパク質は、配列番号1の配列中の最初のアミノ酸の位置からナンバリングされる、8位、または209位、または8位と209位の両方のアミノ酸の、配列番号1の配列中のその位置または前記相同タンパク質中の等価な位置に示されたアミノ酸とは異なる任意のアミノ酸による置換をさらに含み、
好ましくは、8位のアミノ酸は、HまたはYを除く任意のアミノ酸によって置換され、
好ましくは、209位のアミノ酸は、HまたはYを除く任意のアミノ酸によって置換されている。
本発明は、8、47、209もしくは354位の少なくとも1個のアミノ酸残基、または2個もしくは3個もしくは4個のアミノ酸の組合せの置換が、VSV Gタンパク質がその受容体(LDL膜受容体)と相互作用するが、特に、低いpHで、膜融合を誘導するその特性を保持する能力に影響するという本発明者らによって為された予想外の観察に基づくものである。
【0015】
本発明は、VSVのIndiana株の天然形態に対応し、シグナルペプチドを欠く、配列番号1のアミノ酸配列を含有するタンパク質を包含する。本発明はまた、VSV株に由来する任意のGタンパク質も包含するが、但し、前記タンパク質は、配列番号1中の囲みで表されるアミノ酸を保持する。
VSV株に由来するGタンパク質は、配列番号1において矢印で表されるアミノ酸ではない少なくとも1個のアミノ酸の付加、置換または挿入によって異なっていてもよい。
【0016】
アミノ酸のナンバリングに関して、このナンバリングは、本発明では、配列番号1に記載のVSV G IndianaのGタンパク質の天然形態のアミノ酸のナンバリングに従来基づくものである。当業者は、配列アラインメントアルゴリズムおよびプログラム(例えば、ClustalW)を知っており、様々なGタンパク質の配列を容易に比較し、配列番号1中で得られるナンバリングと比較した所定のGタンパク質の正確な位置を再計算することができる。明確にするために、8、47、209および354位のアミノ酸は、上記の配列番号1中において太字で示される。
本発明は、配列番号1のアミノ酸配列を含有するタンパク質を包含する。本発明はまた、VSV株に由来する任意の相同Gタンパク質も包含するが、但し、前記タンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列との少なくとも70%の同一性を保持する。
【0017】
「少なくとも70%の同一性」とは、本発明では、配列番号1の配列との70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%および100%の同一性を意味する。
同一性のパーセンテージに関して、それは、相同タンパク質の配列中の同じアミノ酸と整列する、配列番号1のアミノ酸残基のパーセンテージによって定義される。配列アラインメントは、専用のアルゴリズムおよびプログラム(例えば、ClustalWなど)を使用して実行される。
【0018】
したがって、本発明によるタンパク質は、以下のアミノ酸配列から誘導されてもよい:
- 63位、または370位、またはその両方のアミノ酸が、KまたはRを除く任意のアミノ酸によって置換された、Indiana株に由来する完全長VSV Gタンパク質である、配列番号2、
- 47位、または354位、またはその両方のアミノ酸が、KまたはRを除く任意のアミノ酸によって置換された、Marraba株に由来するVSV Gタンパク質の細胞外ドメインである、配列番号3、
- 63位、または370位、またはその両方のアミノ酸が、KまたはRを除く任意のアミノ酸によって置換された、Marraba株に由来する完全長VSV Gタンパク質である、配列番号4、
- 47位、または358位、またはその両方のアミノ酸が、KまたはRを除く任意のアミノ酸によって置換された、New Jersey株に由来するVSV Gタンパク質の細胞外ドメインである、配列番号5、
- 63位、または374位、またはその両方のアミノ酸が、KまたはRを除く任意のアミノ酸によって置換された、New Jersey株に由来する完全長VSV Gタンパク質である、配列番号6、
- 47位、または358位、またはその両方のアミノ酸が、KまたはRを除く任意のアミノ酸によって置換された、Carajas株に由来するVSV Gタンパク質の細胞外ドメインである、配列番号7、
- 63位、または374位、またはその両方のアミノ酸が、KまたはRを除く任意のアミノ酸によって置換された、Carajas株に由来する完全長VSV Gタンパク質である、配列番号8、
- 47位、または354位、またはその両方のアミノ酸が、KまたはRを除く任意のアミノ酸によって置換された、Alagoa株に由来するVSV Gタンパク質の細胞外ドメインである、配列番号9、
- 64位、または371位、またはその両方のアミノ酸が、KまたはRを除く任意のアミノ酸によって置換された、Alagoa株に由来する完全長VSV Gタンパク質である、配列番号10、
- 47位、または354位、またはその両方のアミノ酸が、KまたはRを除く任意のアミノ酸によって置換された、Cocal株に由来するVSV Gタンパク質の細胞外ドメインである、配列番号11、
- 64位、または371位、またはその両方のアミノ酸が、KまたはRを除く任意のアミノ酸によって置換された、Cocal株に由来する完全長VSV Gタンパク質である、配列番号12、
- 47位、または354位、またはその両方のアミノ酸が、KまたはRを除く任意のアミノ酸によって置換された、Morreton株に由来するVSV Gタンパク質の細胞外ドメインである、配列番号13、および
- 64位、または371位、またはその両方のアミノ酸が、KまたはRを除く任意のアミノ酸によって置換された、Morreton株に由来する完全長VSV Gタンパク質である、配列番号14。
【0019】
Gタンパク質の結晶学的特性評価によって、本発明者らは、K47およびR354残基が、LDLに由来する受容体との相互作用にとって非常に重要であることを示した。一方または両方の残基が、異なる物理的および化学的特性を有する別のアミノ酸残基によって置換された場合、得られるGタンパク質は、細胞受容体と相互作用するその能力を失う。対照的に、同じ得られるタンパク質は、適切なpH条件では、その融合特性を保持する。
【0020】
本発明では、タンパク質は、単離されており、これは、そのタンパク質がその天然の状況から単離されていることを意味する。タンパク質は、非天然であり、これは、このタンパク質を取得する唯一の方法が、人工の、当業界で周知の技術的方法を使用することによって、研究室において、置換を実行することであることを意味する。
【0021】
より有利には、本発明は、以前に開示された単離された非天然タンパク質であって、以下のアミノ酸配列の1つを含む、またはそれから本質的になる、またはそれからなる前記タンパク質に関する:
- 配列番号15~20;
- 配列番号21~26;
- 配列番号27~32;
- 配列番号33~38;
- 配列番号39~44;
- 配列番号45~50;および
- 配列番号51~56
(ここで、47位、または354位、または47位と354位の両方、または配列番号1に記載の前記タンパク質から誘導されるタンパク質中の対応する位置のアミノ酸は、KまたはRを除く任意のアミノ酸である)。換言すれば、本発明では、アミノ酸Xaaは、RまたはKを除く任意のアミノ酸に相当する。
配列番号15は、47位にKまたはRを除く任意のアミノ酸による置換を有する、Indiana株に由来するVSV Gタンパク質の細胞外ドメインに対応する。
配列番号16は、354位にKまたはRを除く任意のアミノ酸による置換を有する、Indiana株に由来するVSV Gタンパク質の細胞外ドメインに対応する。
配列番号17は、47位および354位にKまたはRを除く任意のアミノ酸による置換を有する、Indiana株に由来するVSV Gタンパク質の細胞外ドメインに対応する。
配列番号18は、63位にKまたはRを除く任意のアミノ酸による置換を有する、Indiana株に由来する完全長VSV Gタンパク質に対応する。
配列番号19は、370位にKまたはRを除く任意のアミノ酸による置換を有する、Indiana株に由来する完全長VSV Gタンパク質に対応する。
配列番号20は、63位および370位にKまたはRを除く任意のアミノ酸による置換を有する、Indiana株に由来する完全長VSV Gタンパク質に対応する。
配列番号21は、47位にKまたはRを除く任意のアミノ酸による置換を有する、Marraba株に由来するVSV Gタンパク質の細胞外ドメインに対応する。
配列番号22は、354位にKまたはRを除く任意のアミノ酸による置換を有する、Marraba株に由来するVSV Gタンパク質の細胞外ドメインに対応する。
配列番号23は、47位および354位にKまたはRを除く任意のアミノ酸による置換を有する、Marraba株に由来するVSV Gタンパク質の細胞外ドメインに対応する。
【0022】
配列番号24は、63位にKまたはRを除く任意のアミノ酸による置換を有する、Marraba株に由来する完全長VSV Gタンパク質に対応する。
配列番号25は、370位にKまたはRを除く任意のアミノ酸による置換を有する、Marraba株に由来する完全長VSV Gタンパク質に対応する。
配列番号26は、63位および370位にKまたはRを除く任意のアミノ酸による置換を有する、Marraba株に由来する完全長VSV Gタンパク質に対応する。
配列番号27は、47位にKまたはRを除く任意のアミノ酸による置換を有する、New Jersey株に由来するVSV Gタンパク質の細胞外ドメインに対応する。
配列番号28は、358位にKまたはRを除く任意のアミノ酸による置換を有する、New Jersey株に由来するVSV Gタンパク質の細胞外ドメインに対応する。
配列番号29は、47位および358位にKまたはRを除く任意のアミノ酸による置換を有する、New Jersey株に由来するVSV Gタンパク質の細胞外ドメインに対応する。
配列番号30は、63位にKまたはRを除く任意のアミノ酸による置換を有する、New Jersey株に由来する完全長VSV Gタンパク質に対応する。
配列番号31は、374位にKまたはRを除く任意のアミノ酸による置換を有する、New Jersey株に由来する完全長VSV Gタンパク質に対応する。
配列番号32は、63位および374位にKまたはRを除く任意のアミノ酸による置換を有する、New Jersey株に由来する完全長VSV Gタンパク質に対応する。
配列番号33は、47位にKまたはRを除く任意のアミノ酸による置換を有する、Carajas株に由来するVSV Gタンパク質の細胞外ドメインに対応する。
配列番号34は、358位にKまたはRを除く任意のアミノ酸による置換を有する、Carajas株に由来するVSV Gタンパク質の細胞外ドメインに対応する。
配列番号35は、47位および358位にKまたはRを除く任意のアミノ酸による置換を有する、Carajas株に由来するVSV Gタンパク質の細胞外ドメインに対応する。
配列番号36は、68位にKまたはRを除く任意のアミノ酸による置換を有する、Carajas株に由来する完全長VSV Gタンパク質に対応する。
配列番号37は、379位にKまたはRを除く任意のアミノ酸による置換を有する、Carajas株に由来する完全長VSV Gタンパク質に対応する。
配列番号38は、68位および379位にKまたはRを除く任意のアミノ酸による置換を有する、Carajas株に由来する完全長VSV Gタンパク質に対応する。
配列番号39は、47位にKまたはRを除く任意のアミノ酸による置換を有する、Alagoa株に由来するVSV Gタンパク質の細胞外ドメインに対応する。
配列番号40は、354位にKまたはRを除く任意のアミノ酸による置換を有する、Alagoa株に由来するVSV Gタンパク質の細胞外ドメインに対応する。
配列番号41は、47位および354位にKまたはRを除く任意のアミノ酸による置換を有する、Alagoa株に由来するVSV Gタンパク質の細胞外ドメインに対応する。
配列番号42は、64位にKまたはRを除く任意のアミノ酸による置換を有する、Alagoa株に由来する完全長VSV Gタンパク質に対応する。
配列番号43は、371位にKまたはRを除く任意のアミノ酸による置換を有する、Alagoa株に由来する完全長VSV Gタンパク質に対応する。
配列番号44は、64位および371位にKまたはRを除く任意のアミノ酸による置換を有する、Alagoa株に由来する完全長VSV Gタンパク質に対応する。
配列番号45は、47位にKまたはRを除く任意のアミノ酸による置換を有する、Cocal株に由来するVSV Gタンパク質の細胞外ドメインに対応する。
配列番号46は、354位にKまたはRを除く任意のアミノ酸による置換を有する、Cocal株に由来するVSV Gタンパク質の細胞外ドメインに対応する。
配列番号47は、47位および354位にKまたはRを除く任意のアミノ酸による置換を有する、Cocal株に由来するVSV Gタンパク質の細胞外ドメインに対応する。
配列番号48は、64位にKまたはRを除く任意のアミノ酸による置換を有する、Cocal株に由来する完全長VSV Gタンパク質に対応する。
配列番号49は、371位にKまたはRを除く任意のアミノ酸による置換を有する、Cocal株に由来する完全長VSV Gタンパク質に対応する。
配列番号50は、64位および371位にKまたはRを除く任意のアミノ酸による置換を有する、Cocal株に由来する完全長VSV Gタンパク質に対応する。
配列番号51は、47位にKまたはRを除く任意のアミノ酸による置換を有する、Morreton株に由来するVSV Gタンパク質の細胞外ドメインに対応する。
配列番号52は、354位にKまたはRを除く任意のアミノ酸による置換を有する、Morreton株に由来するVSV Gタンパク質の細胞外ドメインに対応する。
配列番号53は、47位および354位にKまたはRを除く任意のアミノ酸による置換を有する、Morreton株に由来するVSV Gタンパク質の細胞外ドメインに対応する。
配列番号54は、64位にKまたはRを除く任意のアミノ酸による置換を有する、Morreton株に由来する完全長VSV Gタンパク質に対応する。
配列番号55は、371位にKまたはRを除く任意のアミノ酸による置換を有する、Morreton株に由来する完全長VSV Gタンパク質に対応する。
配列番号56は、64位および371位にKまたはRを除く任意のアミノ酸による置換を有する、Morreton株に由来する完全長VSV Gタンパク質に対応する。
換言すれば、本発明は、有利には、以下の配列番号15~56の配列(ここで、Xaaは、RまたはKを除く任意のアミノ酸に相当する)の1つを含む、またはそれからなる単離された非天然タンパク質に関する。
有利には、本発明は、47位、または354位、または47位と354位の両方のアミノ酸が、A、G、FまたはQ、好ましくは、AまたはQによって置換された、上記で定義された単離された非天然タンパク質に関する。
換言すれば、本発明は、有利には、以下の配列:配列番号15~56(ここで、Xaaは、RまたはKを除く任意のアミノ酸に相当する)の1つを含む、またはそれからなる単離された非天然タンパク質に関する。
【0023】
有利には、本発明は、以下の配列番号155~322の配列の1つを含む、それから本質的になる、またはそれからなる単離されたタンパク質に関する。換言すれば、本発明は、有利には、以下の配列番号155、配列番号156、配列番号157、配列番号158、配列番号159、配列番号160、配列番号161、配列番号162、配列番号163、配列番号164、配列番号165、配列番号166、配列番号167、配列番号168、配列番号169、配列番号170、配列番号171、配列番号172、配列番号173、配列番号174、配列番号175、配列番号176、配列番号177、配列番号178、配列番号179、配列番号180、配列番号181、配列番号182、配列番号183、配列番号184、配列番号185、配列番号186、配列番号187、配列番号188、配列番号189、配列番号190、配列番号191、配列番号192、配列番号193、配列番号194、配列番号195、配列番号196、配列番号197、配列番号198、配列番号199、配列番号200、配列番号201、配列番号202、配列番号179、配列番号180、配列番号181、配列番号182、配列番号183、配列番号184、配列番号185、配列番号186、配列番号187、配列番号188、配列番号189、配列番号190、配列番号191、配列番号192、配列番号193、配列番号194、配列番号195、配列番号196、配列番号197、配列番号198、配列番号199、配列番号200、配列番号201、配列番号202、配列番号203、配列番号204、配列番号205、配列番号206、配列番号207、配列番号208、配列番号209、配列番号210、配列番号211、配列番号212、配列番号213、配列番号214、配列番号215、配列番号216、配列番号217、配列番号218、配列番号219、配列番号220、配列番号221、配列番号222、配列番号223、配列番号224、配列番号225、配列番号226、配列番号227、配列番号228、配列番号229、配列番号230、配列番号231、配列番号232、配列番号233、配列番号234、配列番号235、配列番号236、配列番号237、配列番号238、配列番号239、配列番号240、配列番号241、配列番号242、配列番号243、配列番号244、配列番号245、配列番号246、配列番号247、配列番号248、配列番号249、配列番号250、配列番号251、配列番号252、配列番号253、配列番号254、配列番号255、配列番号256、配列番号257、配列番号258、配列番号259、配列番号260、配列番号261、配列番号262、配列番号263、配列番号264、配列番号265、配列番号266、配列番号267、配列番号268、配列番号269、配列番号270、配列番号271、配列番号272、配列番号273、配列番号274、配列番号275、配列番号276、配列番号277、配列番号278、配列番号279、配列番号280、配列番号281、配列番号282、配列番号283、配列番号284、配列番号285、配列番号286、配列番号287、配列番号288、配列番号289、配列番号290、配列番号291、配列番号292、配列番号293、配列番号294、配列番号295、配列番号296、配列番号297、配列番号298、配列番号299、配列番号300、配列番号301、配列番号302、配列番号303、配列番号304、配列番号305、配列番号306、配列番号307、配列番号308、配列番号309、配列番号310、配列番号311、配列番号312、配列番号313、配列番号314、配列番号315、配列番号316、配列番号317、配列番号318、配列番号319、配列番号320、配列番号321および配列番号322の配列1つを含む、それから本質的になる、またはそれからなる上記で定義された単離されたタンパク質に関する。
【0024】
より有利には、本発明は、配列番号1の8位または配列番号1に記載された前記タンパク質から誘導されるタンパク質中の対応する位置のアミノ酸が、HまたはQまたはYを除く任意のアミノ酸によって置換された、上記で定義された単離された非天然タンパク質に関する。
【0025】
より有利には、本発明は、配列番号1の209位または配列番号1に記載された前記タンパク質から誘導されるタンパク質中の対応する位置のアミノ酸が、YまたはHを除く任意のアミノ酸によって置換された、上記で定義された単離された非天然タンパク質に関する。
より有利には、本発明は、前記タンパク質が、以下のアミノ酸配列:配列番号57~154の1つを含む、またはそれから本質的になる、またはそれからなる、上記で定義された単離された非天然タンパク質に関する。
【0026】
配列番号57~154は、47位、または354位、または47位と354位の両方、または配列番号1に記載の前記タンパク質から誘導されるタンパク質中の対応する位置のアミノ酸が、KまたはRを除く任意のアミノ酸によって置換されているタンパク質であって、
- 配列番号1の8位または配列番号1に記載の前記タンパク質から誘導されるタンパク質中の対応する位置のアミノ酸が、HまたはQを除く、または好ましくは、Yを除く任意のアミノ酸によって置換されている、
- 配列番号1の209位または配列番号1に記載の前記タンパク質から誘導されるタンパク質中の対応する位置のアミノ酸が、YまたはHを除く任意のアミノ酸によって置換されている、または
- 配列番号1の8位または配列番号1に記載の前記タンパク質から誘導されるタンパク質中の対応する位置のアミノ酸が、HまたはQを除く、または好ましくは、Yを除く任意のアミノ酸によって置換され、配列番号1の209位または配列番号1に記載の前記タンパク質から誘導されるタンパク質中の対応する位置のアミノ酸が、YまたはHを除く任意のアミノ酸によって置換されている、タンパク質である。
【0027】
より有利には、本発明は、
192~202位、または
240~257位、または
347~353位、または
364~366位、または
376~379位
のアミノ酸の間にペプチドの挿入をさらに含み、前記ペプチドが、配列番号1に記載のタンパク質とは異なるタンパク質を起源とする、上記で定義された単離された非天然タンパク質に関する。本発明者らは、上記領域内での、VSVのGタンパク質とは異なるタンパク質を起源とするペプチドの挿入が、本発明によるタンパク質の融合特性を変化させないことを同定した。
【0028】
本発明では、「アミノ酸192位~202位、240位~257位、347位~353位、364位~366位、または376~379位の間」の挿入は、ペプチドが、
- 2つの連続するアミノ酸の間、例えば、アミノ酸192位~193位の間、193および194、194および195、195および196、196および197、197および198、198および199、199および200、200および201、201および202、240および241、241および242、242および243、243および244、244および245、245および246、246および247、247および248、248および249、249および250、250および251、251および252、252および253、253および254、254および255、255および256、256および257、347および348、348および349、349および350、350および351、351および352、352および353、364および365、365および366、376および377、377および378、および378および379
- または1または複数のアミノ酸の欠失のため、2つの連続しない番号のアミノ酸の間に挿入されることを意味する;例えば、193位のアミノ酸が挿入されたペプチド(など)によって欠失または置換されたため、ペプチドを192位と194位のアミノ酸の間に挿入することができる。
上記説明があれば、当業者は、本発明によって包含される挿入の位置を決定することができる。
【0029】
より有利には、本発明は、351位と352位のアミノ酸の間にペプチドの挿入をさらに含み、前記ペプチドが、配列番号1に記載のタンパク質とは異なるタンパク質を起源とする、上記で定義された単離された非天然タンパク質に関する。有利には、本発明は、1位(換言すれば、N末端、すなわち、1位のアミノ酸の上流)にペプチドの挿入をさらに含み、前記ペプチドが、配列番号1に記載のタンパク質とは異なるタンパク質を起源とする、上記で定義された単離された非天然タンパク質に関する。本発明では、1位でのペプチドの挿入は、上記で定義された非天然タンパク質のN末端での前記ペプチドの挿入を意味する。かくして、この実施形態では、上記で定義された前記非天然タンパク質の配列の最初のアミノ酸残基は、保存(維持)される。換言すれば、上記で定義された前記非天然タンパク質の配列の1位の前記最初のアミノ酸残基は、欠失していない。代替的な実施形態では、本発明は、1位のアミノ酸残基の代わりにペプチドの挿入をさらに含み、前記ペプチドが、配列番号1に記載のタンパク質とは異なるタンパク質を起源とする、上記で定義された単離された非天然タンパク質に関する。かくして、この代替的な実施形態では、上記で定義された前記非天然タンパク質の配列の最初のアミノ酸残基は、欠失しており、前記ペプチドの配列と置き換えられている(すなわち、置換されている)。
【0030】
有利には、本発明者らは、配列番号1の1位(換言すれば、N末端)での、またはアミノ酸351位と352位の間、または配列番号2~14中の対応する位置での挿入、および47位、または354位またはその両方、または配列番号2~14中の対応する位置での変異が、変異型タンパク質の融合特性を改変しないことを同定した。
したがって、本発明者らは、その受容体と相互作用するのを可能にするVSV Gタンパク質中、これらの2個のアミノ酸の間に、膜タンパク質を特異的に認識するタグペプチド、発光物質、ナノボディまたは任意のペプチドを挿入することを提唱する。
換言すれば、特に有利には、本発明者らは、したがって、2個の上記アミノ酸の間に、目的の細胞の特異的標的化を可能にする任意のペプチドが挿入された、変異型VSV Gタンパク質を提供することを提唱する。
より有利には、本発明は、前記ペプチドが細胞受容体のリガンドの少なくとも一部である、上記で定義された単離された非天然タンパク質に関する。
ペプチドまたはナノボディが挿入された、本発明による変異型タンパク質を用いて、目的の細胞、特に、腫瘍細胞を特異的に標的化し、したがって、ウイルスの腫瘍溶解特性を使用することによって、この決定された細胞を特異的に殺傷するVSVを産生することができるようになる。
【0031】
実際、この場合、本発明によるGタンパク質は、その天然の受容体(LDL-R)と相互作用しないが、配列番号1の351位および352位、または配列番号2~14中の対応する位置のアミノ酸の間に挿入されたペプチドにとっての標的である受容体を認識するであろう。本発明によるタンパク質はその融合特性を保持するため、タンパク質はウイルス進入を可能にし、したがって、ウイルスは標的細胞を殺傷することができる。
例えば、挿入されるペプチドは、抗HER2ナノボディ、抗MUC18ナノボディまたは抗PD-1ナノボディであってもよい。
本発明はまた、上記で定義された単離された非天然タンパク質をコードする核酸分子に関する。
換言すれば、本発明は、上記で定義された、配列番号15~322に記載の任意のタンパク質をコードする核酸分子に関する。
別の態様では、本発明は、上記で定義された単離された非天然タンパク質を発現する組換えウイルスに関する。有利なウイルスは、本発明による変異型タンパク質に対応するGタンパク質を除く、野生型形態の全てのウイルスタンパク質を発現するVSVである。
有利には、本発明は、上記で定義された核酸分子を含む組換えウイルスに関する。
本発明はまた、上記で定義された単離された非天然タンパク質を含有もしくは発現する、または上記で定義された核酸分子を含有する真核細胞に関する。有利には、本発明は、上記で定義されたウイルスが感染した真核細胞に関する。
【0032】
本発明はまた、以下:
上記で定義されたタンパク質;または
上記で定義された核酸分子;
上記で定義されたウイルス;または
上記で定義された真核細胞
の少なくとも1つを含む組成物に関する。
特に、本発明は、以下の配列:配列番号15~322の1つを含む、またはそれからなるGタンパク質をコードするウイルスを含む組成物に関する。
【0033】
本発明はまた、薬物としての使用のための、以下:
上記で定義されたタンパク質;または
上記で定義された核酸分子;
上記で定義されたウイルス;または
上記で定義された真核細胞
の少なくとも1つを含む組成物に関する。
特に、本発明は、薬物としての使用のための、以下の配列番号15~322の配列の1つを含む、またはそれからなるGタンパク質をコードするウイルスを含む組成物に関する。
有利には、本発明は、がんを処置するために使用するための、上記で定義された組成物に関する。
上記の通り、本発明による変異型タンパク質を発現するウイルスを使用して、決定された細胞を特異的に標的化し、したがって、それらを特異的に殺傷することができる。
本発明は、表面、有利には、脂質膜を、特定の標的、例えば、細胞、特に、がん細胞などの殺傷しようとする細胞に標的化するための、前記表面、有利には、脂質膜中に固定された、上記で定義されたタンパク質のin vitroでの使用に関する。
【0034】
本発明では、膜を標的目的地に特異的に向かわせるためにそのような膜に固定される本発明によるタンパク質をin vitroで使用することが提唱される。例えば、本発明による変異型タンパク質を、リポソーム、小胞、エキソソームの膜中に、カプセル、ナノ粒子上などに固定して、本発明によるタンパク質が、このリポソーム、小胞、カプセルまたはナノ粒子を、特定の標的、例えば、細胞、特に、がん細胞などの殺傷しようとする細胞に特異的に標的化することができるようにすることができる。
この使用は、本発明によるタンパク質が薬物の特異的標的化を可能にする、薬物送達標的化目的で特に有利である。
薬物は、治療分子、タンパク質、および核酸であってもよい。
本発明は、表面、有利には、脂質膜を、特定の標的、例えば、細胞、特に、がん細胞などの殺傷しようとする細胞に標的化するための使用のための、前記表面、有利には、脂質膜中に固定された、上記で定義されたタンパク質に関する。
【0035】
本発明では、膜を標的目的地に特異的に向かわせるための使用のためのそのような膜に固定される本発明によるタンパク質が提唱される。例えば、本発明による変異タンパク質を、リポソーム、小胞、エキソソームの膜中に、カプセル、ナノ粒子上などに固定して、本発明によるタンパク質が、このリポソーム、小胞、カプセルまたはナノ粒子を、特定の標的、例えば、細胞、特に、がん細胞などの殺傷しようとする細胞に特異的に標的化することができるようにすることができる。
この使用は、本発明によるタンパク質が薬物を特定の標的、例えば、細胞、特に、がん細胞などの殺傷しようとする細胞に特異的に標的化させる、薬物送達標的化目的で特に有利である。
かくして、本発明は、薬物送達系としての使用のための本発明による変異型タンパク質であって、リポソーム、もしくは小胞、もしくはエキソソームの膜中に、またはカプセル上、もしくはナノ粒子上に固定される、変異型タンパク質に関する。
薬物は、治療分子、タンパク質、および核酸であってもよい。
本発明は、以下の図面および実施例からより良好に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】
図1は、7個のCRモジュール(1~7)、3個のEGFリピート(a、bおよびc)、表皮増殖因子前駆体様ドメインの7枚羽根βプロペラドメイン(β)(B.)、およびO結合オリゴ糖を含有するC末端ドメイン(C.)を示す、LDL-Rのモジュール構造の略図である。SP=シグナルペプチド;X=膜貫通ドメイン。A.:CRドメインおよびD.:細胞外ドメイン。
【
図2】
図2は、pH8での、GSH磁気ビーズに結合した7個のGST-CRドメイン(1~7)と、Gthとの相互作用実験のSDS PAGE分析の結果を表す。C.は対照を表す。タンパク質の移動位置を、矢印:A.:Gth、B.:CRx-GSTおよびD.:GSTで示す。
【
図3】
図3は、
図6および
図7に提示される実験を例示する。感染の4時間後、BSR細胞を、VSV核タンパク質に対する抗体(抗VSV N抗体)で標識して、感染(緑色蛍光)および表面展示された糖タンパク質によるCRドメイン認識を探査するためのGST-CRATTO550(赤色蛍光)を可視化した。
【
図4】
図4A~4Iは、蛍光GST-CR1ATTO550、GST-CR2ATTO550およびGST-CR3ATTO550を使用した、VSVに感染したBSR細胞の表面でのGの標識化の写真である。感染の4時間後、細胞を、4℃で30分間、適切なGST-CRATTO550と共にインキュベートした後、固定および透過処理し、次いで、抗VSV N抗体を使用して免疫標識化して、感染を可視化した。DAPIを使用して、核を染色した。スケールバーは20μmである。
図4Aは、抗VSV N抗体を使用した細胞の標識化を表す。
図4Bは、蛍光GST-CR1ATTO550を使用した細胞の標識化を表す。
図4Cは、
図6Aおよび
図6Bにおける蛍光の重ね合わせを表す。
図4Dは、抗VSV N抗体を使用した細胞の標識化を表す。
図4Eは、蛍光GST-CR2ATTO550を使用した細胞の標識化を表す。
図4Fは、
図6Dおよび
図6Eにおける蛍光の重ね合わせを表す。
図4Gは、抗VSV N抗体を使用した細胞の標識化を表す。
図4Hは、蛍光GST-CR3ATTO550を使用した細胞の標識化を表す。
図4Iは、
図6Gおよび
図6Hにおける蛍光の重ね合わせを表す。
【
図5】
図5は、20℃でのGthとCR1、GthとCR2、GthとCR3の間のそれぞれの等温滴定熱量測定(ITC)分析の代表的なプロットを表す。結合パラメーターを、一部位結合モデルを用いた曲線適合分析によって決定した。パネル中に示された値は、提示される曲線に対応するものである。本文中に記載されるKd値は、3回の独立実験の平均±標準誤差である。B-C 可溶性形態のCRドメインによるVSV感染の阻害。上のx軸:時間(分);上のY軸:μcal/秒;下のx軸:モル比および下のy軸:注入物質のkcal/モル。左パネル:CR1、中央パネル:CR2および右パネル:CR3。
【
図6】
図6A~6Fは、示された濃度のGST-CR1、GST-CR2、GST-CR3(A~C)、CR1、CR2、またはCR3一価ドメイン(D~F)と共に予めインキュベートしたVSV-eGFPに感染したBSR細胞の写真を表す。細胞を、感染の4時間後に固定した。感染細胞のみが、eGFPを発現している。CR1もGST-CR1構築物も、感染から細胞を保護しない。DAPIを使用して、核を染色した。スケールバーは100μmである。
【
図7】
図7は、リボン表示でのGthCR2結晶構造の三次元表示である。
【
図8】
図8は、リボン表示でのGthCR3結晶構造の三次元表示である。両複合体において、CRドメインは、Gの同じ空洞に営巣している。それぞれのCRのNおよびC末端を示す。Gthの三量体化ドメイン(TrD)、プレクストリン相同ドメイン(PHD)および融合ドメイン(FD)を表示する。
【
図9】
図9は、LDL-R CR2とCR3の配列アラインメントである。保存された残基は灰色の囲みで、類似する残基は囲みで示される。Ca
2+イオンの結合に関与する酸性残基は、I、II、III、およびIVで示される。Gとの極性接触に関与するCR残基は、それぞれのCR配列上で灰色の記号で標識される(CR2については明灰色およびCR3については黒色;接触が側鎖を介して確立される場合はドットおよび接触が主鎖を介して確立される場合は三角)。CRモジュールから突出し、Gとの疎水性相互作用を確立する芳香族残基は、矢印で示される。
【
図10】
図10Aは、CR2の酸性パッチ上へのG塩基性残基のドッキングを示す、Gth-CR接触面上の拡大図に対応する。G残基H8、K47、Y209およびR354が、相互作用に関与する。それぞれのCRドメイン上の残基標識は、接触が主鎖を介して確立される場合は斜体で示される;推定結合は、明灰色の破線として示される。
図10Bは、CR3の酸性パッチ上へのG塩基性残基のドッキングを示す、Gth-CR接触面上の拡大図に対応する。G残基H8、K47、Y209およびR354が、相互作用に関与する。それぞれのCRドメイン上の残基標識は、接触が主鎖を介して確立される場合は斜体で示される;推定結合は、明灰色の破線として示される。
【
図11】
図11A~Nは、HEK293T細胞の表面でのWTおよび変異型糖タンパク質の発現ならびに蛍光GST-CR2(A~DおよびI~K)およびGST-CR3(E~HおよびL~M)の結合のフローサイトメトリー分析を表す。トランスフェクションの24時間後、WTおよび変異型Gの細胞表面発現を、4℃で1時間、生細胞に直接対する抗Gモノクローナル抗体8G5F11を使用して評価した。次いで、細胞を、抗マウスAlexa fluor 488および示されたGST-CRATTO550染料と同時にインキュベートした。GST-CRドメインに依然として結合することができるG構築物をトランスフェクトされた細胞は、ATTO550染料に起因する赤色蛍光を示した。それぞれのプロット中に、ATTO550陽性細胞のパーセンテージが示される。
図11Aは、蛍光GST-CR2のWT糖タンパク質との結合の実験を表す。
図11Bは、蛍光GST-CR2の糖タンパク質H8A変異体との結合の実験を表す。
図11Cは、蛍光GST-CR2の糖タンパク質Y209A変異体との結合の実験を表す。
図11Dは、蛍光GST-CR2の糖タンパク質K47A変異体との結合の実験を表す。
図11Eは、蛍光GST-CR3のWT糖タンパク質との結合の実験を表す。
図11Fは、蛍光GST-CR3の糖タンパク質H8A変異体との結合の実験を表す。
図11Gは、蛍光GST-CR3の糖タンパク質Y209A変異体との結合の実験を表す。
図11Hは、蛍光GST-CR3の糖タンパク質K47A変異体との結合の実験を表す。
図11Iは、蛍光GST-CR2の糖タンパク質K47Q変異体との結合の実験を表す。
図11Jは、蛍光GST-CR2の糖タンパク質R354A変異体との結合の実験を表す。
図11Kは、蛍光GST-CR2の糖タンパク質R354Q変異体との結合の実験を表す。
図11Lは、蛍光GST-CR3の糖タンパク質K47Q変異体との結合の実験を表す。
図11Mは、蛍光GST-CR3の糖タンパク質R354A変異体との結合の実験を表す。
図11Nは、蛍光GST-CR3の糖タンパク質R354Q変異体との結合の実験を表す。
【
図12】
図12は、細胞-細胞融合アッセイの略図である。BSR細胞に、VSV G(WTまたは変異型G)およびP-GFP(細胞質マーカー)を発現するプラスミドを同時トランスフェクトする。トランスフェクションの24時間後、細胞を10分間にわたって、示されたpHに調整された培地に曝露した後、pH7.4のDMEMによって置き換える。次いで、固定前に、細胞を37℃で1時間保持する。融合時に、P-GFPは合胞体中に拡散する。
【
図13】
図13A~13Xは、
図20に記載される実験の結果に対応する写真である。
図13Aは、pH5.0で空のベクターを用いた実験の結果を表す。
図13Bは、pH5.5で空のベクターを用いた実験の結果を表す。
図13Cは、pH6.0で空のベクターを用いた実験の結果を表す。
図13Dは、pH6.5で空のベクターを用いた実験の結果を表す。
図13Eは、pH7.0で空のベクターを用いた実験の結果を表す。
図13Fは、pH7.5で空のベクターを用いた実験の結果を表す。
図13Gは、pH5.0でK47A変異体を発現するベクターを用いた実験の結果を表す。
図13Hは、pH5.5でGK47A変異体を発現するベクターを用いた実験の結果を表す。
図13Iは、pH6.0でK47A変異体を発現するベクターを用いた実験の結果を表す。
図13Jは、pH6.5でK47A変異体を発現するベクターを用いた実験の結果を表す。
図13Kは、pH7.0でK47A変異体を発現するベクターを用いた実験の結果を表す。
図13Lは、pH7.5でK47A変異体を発現するベクターを用いた実験の結果を表す。
図13Mは、pH5.0でR354A変異体を発現するベクターを用いた実験の結果を表す。
図13Nは、pH5.5でR354A変異体を発現するベクターを用いた実験の結果を表す。
図13Oは、pH6.0でR354A変異体を発現するベクターを用いた実験の結果を表す。
図13Pは、pH6.5でR354A変異体を発現するベクターを用いた実験の結果を表す。
図13Qは、pH7.0でR354A変異体を発現するベクターを用いた実験の結果を表す。
図13Rは、pH7.5でR354A変異体を発現するベクターを用いた実験の結果を表す。
図13Mは、pH5.0でWT Gタンパク質を発現するベクターを用いた実験の結果を表す。
図13Nは、pH5.5でWT Gタンパク質を発現するベクターを用いた実験の結果を表す。
図13Oは、pH6.0でWT Gタンパク質を発現するベクターを用いた実験の結果を表す。
図13Pは、pH6.5でWT Gタンパク質を発現するベクターを用いた実験の結果を表す。
図13Qは、pH7.0でWT Gタンパク質を発現するベクターを用いた実験の結果を表す。
図13Rは、pH7.5でWT Gタンパク質を発現するベクターを用いた実験の結果を表す。
【
図14】
図14は、野生型HAP-1細胞(A)、LDL-RKO HAP-1細胞(B)およびHEK293T(C)中でのLDL-R発現の分析を表す。粗細胞抽出物上でイムノブロットを実施し、抗LDL-R抗体(EP1553Y-1.)を用いて示した。チューブリン(tub)も、ローディング対照としてイムノブロットした(2.)。
【
図15】
図15は、VSV-eGFP感染に対するLDL-R欠損HAP-1細胞の感受性に対するRAPタンパク質の効果を示すヒストグラムである。VSV-eGFPを使用して、RAPの存在下(灰色の柱)または非存在下(黒色の柱)でのHAP-1(A)およびHAP-1 LDL-RKO(B)細胞を感染させた。フローサイトメーターを使用して、eGFPを発現する細胞の数を計数することによって、感染性を決定した。データは、3組実施した実験に関する平均および標準誤差を記載する。対応のないStudentのt検定を使用して、p値を決定した(
*p<0.01;
***非有意)。
【
図16】
図16は、VSV G変異体を用いて偽型化したVSVΔG-GFPウイルスの生成の略図である。変異型Gをその表面上に発現するトランスフェクトしたHEK-293T細胞に、VSV G野生型を用いて偽型化したVSVΔG-GFPを感染させた。感染の16時間後、変異型VSV Gを用いて偽型化したVSVΔG-GFPビリオンを、上清から収獲した。
【
図17】
図17は、VSVΔG-GFPウイルス粒子中への野生型および変異型Gの組込みを表す。野生型VSV Gを用いて偽型化したVSVΔG-GFPを使用して、示された変異体をトランスフェクトしたHEK-293T細胞に感染させた(MOI 1)。感染の16時間後、ウイルス上清を収集し、濃縮し、ウェスタンブロットによって分析した(抗VSV G抗体および抗VSV M抗体を使用する)。
【
図18】
図18は、WTおよび変異型糖タンパク質を用いて偽型化したVSVΔG-GFPの感染性を示すヒストグラムを表す。WT VSV Gを用いて偽型化したVSVΔG-GFPを使用して、示された変異型糖タンパク質を予めトランスフェクトしたHEK-293T細胞に感染させた(MOI 1)。WTまたは変異型糖タンパク質によって偽型化したVSVΔG-GFPウイルスを使用して、6時間、HEK-293T、BSR、CHOおよびS2細胞に感染させた;感染細胞のパーセンテージを、フローサイトメトリーによってGFPを発現する細胞を計数することによって決定した。データは、3つの独立実験に関する平均および標準誤差を記載する。それぞれのバーの上に、力価の減少係数(1に対して正規化されたWT Gによって偽型化したVSVΔG-GFPと比較した)を示す。
【
図19】
図19は、N末端(成熟タンパク質の1位)へのmCherryタンパク質の挿入によって、およびアミノ酸351位と352位の間へのmCherryタンパク質の挿入によって改変されたVSV糖タンパク質をコードするpCAGGSプラスミドをトランスフェクトされたHEK293T細胞の写真である。赤色蛍光は、両方の事例において細胞表面に存在し、タンパク質が正確に折り畳まれ、ゴルジ装置を通って輸送されたことを示している。これは、G上のこれらの2つの位置が任意のペプチドを挿入するのに潜在的に興味深いということを示唆する。
【実施例0037】
(実施例1)
<VSV糖タンパク質による低密度リポタンパク質受容体認識の構造的基礎>
本発明者らは、VSV GがLDL-Rの2つの異なるCR(システインリッチ)ドメイン(CR2およびCR3)に独立に結合することができることを同定したが、これらのドメインと複合体を形成するVSV Gの結晶構造を報告する。その構造は、G上のCR2およびCR3の結合部位が同一であることを示す。本発明者らは、LDL-R遺伝子がノックアウトされたHAP-1細胞が、VSV感染に依然として罹りやすいことを示し、VSV Gが進入のためにLDL-R以外の受容体を使用することができることを確認する。しかしながら、LDL-R CRドメインとの相互作用にとって重要である塩基性残基の変異は、哺乳動物ならびに昆虫細胞中でのVSVの感染性を無効化する。これは、哺乳動物および昆虫細胞中のVSVの受容体だけが、LDL-Rファミリーのメンバーであること、ならびにVSV GがそのCRドメインと相互作用するように特異的に進化したということを示している。
【0038】
<LDL-R CR2およびCR3ドメインは、VSV Gに結合し、ウイルス感染性を中和する>
本発明者らは、大腸菌中でグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)との融合物中のそれぞれのLDL-R CRドメインを個別に発現させた。それぞれの融合タンパク質を、グルタチオンでコーティングした磁気ビーズと共にpH8でインキュベートした後、Gの細胞外ドメインの可溶性形態を添加した(ウイルス粒子のサーモリシン制限タンパク質溶解によって生成された、VSV Gth、アミノ酸(AA)残基1~422(
図2))。4℃で20分のインキュベーション後、ビーズを洗浄し、結合したタンパク質をSDS/PAGE、次いで、クマシーブルー染色によって分析した。これにより、CR2およびCR3ドメインだけが、pH8でVSV Gに直接結合することができることが示された(
図2)。さらに、ATTO550で蛍光標識されたGST-CR2およびGST-CR3(GST-CR1ではない)(
図3および
図4)は、感染細胞の表面に発現されたVSV Gを特異的に認識した。本発明者らはまた、等温滴定熱量測定(ITC)を使用して、溶液中でのGthに対するCR1、CR2およびCR3の結合パラメーターを調査した(
図5)。ここで再度、GとCR1との相互作用は検出されなかった。他方、CR2とCR3の両方について、発熱性であると考えられる結合反応は、1:1の化学量論を示し、類似するKdを示す(CR3については4.3±1μMおよびCR2については7.3±1.5μM)。
さらに、組換え可溶性CR2およびCR3ドメインは、単独で、またはGSTとの融合物中で、感染前のウイルス接種物と共にインキュベートした場合、ウイルス感染性を中和することもできる。
<LDL-R CRドメインと複合体を形成したVSV G細胞外ドメインの結晶構造>
本発明者らは、CR2またはCR3のいずれかと複合体を形成したGthを結晶化させた。G上のCRドメインの結合部位は、両方の結晶形態において同じである(
図7および
図8)。
【0039】
Gの2個の塩基性残基(TrDに由来するH8およびPHDに由来するK47)は、CRドメインの八面体型カルシウムケージに属する2個の酸性残基(CR2上のD69およびD73;CR3標識されたIおよびII上のD108およびD112-
図9)に向いている。Y209およびR354と一緒に、それらは相互作用にとって重要であると考えられる(
図10AおよびB)。
【0040】
<K47およびR354は、LDL-R CRドメイン結合にとって必要とされるGの重要残基である>
LDL-R CRドメイン結合へのそれらの寄与を調査するために、本発明者らは、Gの残基H8、K47、Y209およびR354をアラニンまたはグルタミンに変異させた。HEK293T細胞に、野生型または変異型VSV G糖タンパク質(WT、H8A、K47A、K47Q、Y209A、R354AおよびR354Q)をコードするプラスミドをトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、細胞をG細胞外ドメインに対するMAbと共にインキュベートした。次いで、緑色蛍光抗IgG二次抗体およびATTO550で蛍光標識されたGST-CR融合タンパク質を、同時に添加した。免疫蛍光標識により、WTおよび全てのG変異体が細胞表面に効率的に輸送されることが示された(
図11)。H8AおよびY209A変異体は、WT GとしてGST-CRドメインに結合するが、他の変異体はその結合能力に影響される(
図11)。K47Q、R354AおよびR354Q変異体は、GST-CR2にも、GST-CR3にも結合しない。最後に、K47A変異体とCR3との間に相互作用は検出されないが、この変異体とCR2との間には残留結合活性が観察される(
図11)。
【0041】
本発明者らはまた、K47AおよびR354A変異体の融合特性をチェックした。このために、BSR細胞に、野生型または変異型VSV G糖タンパク質(WT、K47AおよびR354A)をコードするpCAGGSプラスミドをトランスフェクトした。変異型Gタンパク質を発現する細胞は、WT Gのものと類似する融合表現型を有する(
図13)。これは、変異型糖タンパク質が正確に折り畳まれることを確認し、G融合活性と受容体認識を切り離すことができることを証明する。
<他のLDL-RファミリーメンバーはVSVの代替的な受容体である>
LDL-R遺伝子がノックアウトされたHAP-1細胞(HAP-1 LDL-RKO)(
図14)は、WT HAP-1細胞と同程度にVSV感染に罹りやすい(
図15)。これは、LDL-R以外のVSV受容体がHAP-1細胞の表面に存在することを証明する。
【0042】
VSV受容体としての他のLDL-Rファミリーメンバーの役割を評価するために、本発明者らは、LDL-R自体を除く全てのLDL-Rファミリーメンバーへのリガンド結合を遮断する全てのLDL-Rファミリーメンバーの共通リガンドである、受容体関連タンパク質(RAP)の特性を利用した(Finkelshtein et al., 2013)。RAPは、WT HAP-1細胞ではなく、HAP-1 LDL-RKOにおいてVSV感染を有意に阻害する(
図15)。これらの結果は、VSVが代替的な受容体として他のLDL-Rファミリーメンバーを使用することができることを示唆する以前のデータ(Finkelshtein et al., 2013)と一致している。
【0043】
<CRドメイン結合部位に影響されたG変異体はG遺伝子を欠く組換えVSVをレスキューすることができない>
次いで、本発明者らは、上記の変異型糖タンパク質がウイルス感染を持続させることができるかどうかを検査した。本発明者らは、Gエンベロープ遺伝子が緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子によって置き換えられ、VSV G糖タンパク質を用いて偽型化された組換えVSV(VSVΔG-GFP)を使用した。この偽型化された組換え体を使用して、WTまたは変異型糖タンパク質をコードするプラスミドによってトランスフェクトされた、またはトランスフェクトされていないHEK細胞を感染させた(Ferlin et al., 2014)。8時間後、感染細胞上清を収集した(
図16)。上清中に存在する粒子のエンベロープへの変異型糖タンパク質組込みを、ウェスタンブロットによって検証し(
図17)、偽型化された粒子の感染性を、感染後(p.i.)4時間でフローサイトメトリーによりGFPを発現する細胞を計数することによって、異なる細胞株(哺乳動物HEK、BSR、CHOおよびショウジョウバエS2細胞)中で分析した(
図18)。K47A、K47Q、R354AおよびR354Q変異体は、VSVΔG-GFPの感染性をレスキューしなかった。WT Gと比較して、感染性は1/10~1/120に低下した(
図18)。この低下は、2種のハムスター細胞株よりもHEKおよびS2細胞株において、より重要であった。哺乳動物細胞株では、H8AおよびY209A変異体は、VSVΔG-GFPの感染性をレスキューすることができるが、WTのものよりも低レベルである。S2細胞株では、それらの感染性は、有意に低下する(H8A変異体については1/15およびY209A変異体については約1/6に)(
図18)。
【0044】
変異体の融合活性は影響されないため、変異型糖タンパク質を担持する偽型の感染性の喪失は、細胞受容体を認識することができないことに安全に起因し得る。これらの結果は、LDL-R CRドメインに結合することができないK47A、K47Q、R354AおよびR354Q変異体が、他のVSV受容体に結合するその能力も著しく損傷していることを示す。
【0045】
<考察>
LDL-Rは、VSVおよびVSV-Gによって偽型化されたレンチウイルスの主要な進入口であることが証明されている(Finkelshtein et al., 2013)。ここで、本発明者らは、VSV-Gが類似する親和性でLDL-Rの2個のCRドメインに結合することができることを証明する。この相互作用の生物学的関連性は、VSV感染を阻害するCR2とCR3の両方の能力によって証明された。CR2およびCR3と複合体を形成したVSV Gの結晶構造は、それらが両方とも、その融合前コンフォメーションにおいて糖タンパク質の表面で同じ部位を占有すること、および同じG残基がCRドメインの正確な固定を確保することを示す。この結合部位は、Gがその融合後コンフォメーションにある場合、離れて分割され、Gが低いpHでCRドメインに結合することができない理由を説明する。これは、エンドソーム内腔でのGとLDL-Rとの相互作用を破壊し、適切な融合部位へのビリオンの輸送を支持し得る。
【0046】
VSV GによるCRドメイン認識は、カルシウムを配位する酸性残基に向かう塩基性残基K47およびR354を含む。この結合様式は、LDL-RファミリーメンバーのCRドメインによる内因性リガンド認識について観察されるものと非常に類似しており、実際、K47またはR354のいずれかがアラニンまたはグルタミンで置き換えられた変異型糖タンパク質は、CRドメインに結合することができない。これらの重要残基がベシクロウイルス間で保存されていないことは注目に値する。したがって、ウイルス受容体としてのLDL-Rの使用を、その属の他のメンバーに一般化することはできない。実際、本発明者らは、VSV残基47および354に対応する位置に塩基性残基を有しないCHAV Gは、CRドメインに結合しないことを示した。
【0047】
本発明者らの機能分析は、HAP-1 LDL-RKOはHAP-1細胞と同程度に効率的に感染させることができるため、LDL-RがVSVの唯一の受容体ではないことを確認する。しかしながら、CRドメインに結合することができない変異型糖タンパク質は、哺乳動物細胞においても、昆虫細胞においても、VSVΔG-GFP感染性を回復させることができない。この結果の最も倹約的な解釈は、HEK細胞中でのVSVの唯一の受容体がLDL-Rファミリーのメンバーであるということである。相互作用の分子的基礎は、これらの全ての受容体について同じであり、そのCRドメインに結合するGの能力を含む。これは、LDL-Rファミリーの他のメンバーのアンタゴニストであるRAPタンパク質の存在下で観察される感染性の低下と一致する。全体として、本研究は、VSV Gが、LDL-RファミリーのメンバーのCRドメインと相互作用するように特異的に進化したことを証明する。この受容体ファミリーの遍在性(無脊椎動物間にも広がっている)は、VSVの広向性を説明する。
【0048】
GによるCRドメイン認識の分子的基礎の特性評価と一緒に、VSVの受容体がLDL-Rファミリーの全メンバーであるという証明は、向性が改変された組換えVSVを開発する道を開く。実際、(i)天然受容体の向性を除去する点変異および(ii)腫瘍細胞を特異的に標的化するタンパク質ドメインまたはペプチドの挿入を有する糖タンパク質(Ammayappan et al., 2013)は、完全に再標的化された腫瘍溶解性VSVの設計を可能にするはずである。そのようなウイルスは、正常な細胞を残しながら、がん性細胞を除去することができるはずである。
【0049】
<細胞およびウイルス>
BHK-21(ベビーハムスター腎臓細胞;ATCC CCL-10)のクローンであるBSRおよびHEK-293T(サルウイルス40 T抗原を発現するヒト胚性腎臓細胞;ATCC-CRL-3216)細胞を、10%ウシ胎仔血清(FCS)を添加したDulbecco改変Eagle培地(DMEM)中で増殖させた。Horizon Discoveryから購入した、HAP-1 wtおよびHAP-1 LDL-R欠損細胞(HAP-1 LDL-RKO)を、10%FCSを添加したIscove改変Dulbecco培地(IMDM)中で増殖させた。CHO(チャイニーズハムスター卵巣から誘導された細胞株)細胞を、2mMグルタミンおよび10%FCSを添加したHam F12培地中で増殖させた。全ての哺乳動物細胞株を、5%CO2を含む加湿インキュベータ中、37℃で維持した。ショウジョウバエS2細胞を、28℃で、10%FCSを添加したSchneider培地中で増殖させた。
野生型VSV(Mudd-Summer株、Indiana血清型)、VSVΔG-GCHAV(Rose et al., 2000)およびVSV-eGFPを、BSR細胞中で増殖させた。
VSVΔG-GFPは、Gタンパク質のコード領域が改変型のGFP遺伝子で置き換えられ、VSV Gタンパク質を用いて偽型化されたVSVゲノム(Indiana血清型)の完全長cDNAクローンから誘導された組換えVSVである(Ferlin et al., 2014)。VSVΔG-GFPを、pCAGGS-VSVGを予めトランスフェクトしたHEK-293T細胞上で増殖させた。
【0050】
<プラスミドおよびクローニング>
pCAGGSプラスミド中で、クローニングされたVSV G遺伝子(Indiana Mudd-Summer株)から出発して点変異を創出した。簡単に述べると、所望の変異を含有するフォワードおよびリバースプライマーを、G遺伝子にフランキングするプライマーの1つと別々に組み合わせて、2つのPCR産物を生成した。これらの2つのG遺伝子断片は、変異を含有する領域において重複し、これをGibsonアセンブリ反応キット(New England Biolabs)を使用してpCAGGS線状化ベクター中で集合させた。
<タンパク質の発現、精製および標識化>
VSV Gthを、ウイルス粒子の限定的タンパク質溶解によって取得し、以前に記載されたように(Albertini et al., 2012a)精製した。
【0051】
ヒトLDL-R(NM_000527、GenBank)の7個のCRドメインをコードするDNA配列を合成し(MWG biotech)、pGEX-6P1細菌発現ベクター(Invitrogen)中にサブクローニングした。それぞれのタンパク質構築物は、そのN末端にGSTタグおよびpreScissionプロテアーゼ切断部位を含有する。それぞれのCRドメインを、(Harper and Speicher, 2011)から誘導された以下のプロトコールを使用して精製した。CR構築物で形質転換されたC41細菌を、ODが0.6AUに達するまでLB-アンピシリン培地中、37℃で培養した。次いで、37℃で5時間、1mM IPTGを用いてタンパク質発現を誘導した。細胞を、溶解緩衝液(500mM NaCl、20mM Tris-HCl pH8、2mM CaCl2、2%w/vサルコシルおよび1mM DTT)中で超音波処理した。明澄化された上清を、0.2%Triton X100の存在下で2時間、グルタチオンアガロースビーズ(Thermo Fisher Scientific)と共にインキュベートした。次いで、インキュベーション後、ビーズを、平衡化緩衝液(200mM NaCl、50mM Tris HCl pH8、2mM CaCl2、1mM PMSF)を用いて十分に洗浄した。次いで、GST-CR構築物を、20mM GSHを添加した同じ緩衝液を用いて溶出させた。それぞれのGST-CRの精製を、Superdex 200カラム(Ge Healthcare)を使用するゲル濾過ステップを用いて達成した。CRドメインを単離するために、精製されたGST-CRを、preScissionプロテアーゼと共にインキュベートし、ゲル濾過カラムSuperdex 75(Ge Healthcare)上に注入した。次いで、純粋なCRドメインを含有する画分をプールし、1mMに濃縮し、使用まで-80℃で保存した。
1ミリグラムの精製されたGST-CR2(またはGST-CR3)を、製造業者の指示書を使用して蛍光染料ATTO550 NHSエステル(Sigma Aldrich)で標識した。次いで、標識されたタンパク質を、50μMの濃度に希釈し、使用まで-80℃で保存した。標識比は、1分子あたり約2個の染料であると見積もられた。
【0052】
<GとCRドメインとの結合の特性評価>
精製されたGST-CRドメインを、4℃で20分間、撹拌下でGSH(Eurogentec)でコーティングされた磁気ビーズと共にインキュベートした。次いで、スラリーを、適切なpHの平衡化緩衝液(200mM NaCl、2mM CaCl2、50mM Tris-HCl pH8または50mM MES-NaOH pH6)で洗浄した。精製されたGthまたはウイルス粒子を、この同じ緩衝液中で20分間予備インキュベートし、GST-CR構築物に結合した磁気ビーズまたはGSTのみに添加した。穏やかな撹拌下、20分間インキュベートした後、スラリーを、適切なpH(8または6のいずれか)の平衡化緩衝液で2回洗浄した。ビーズを、ゲル充填緩衝液中に再懸濁し、SDS PAGE上で直接分析した。
【0053】
<G(WTまたは変異体)を発現する細胞へのCRドメインの結合>
顕微鏡観察のために、BSR細胞を4時間感染させた後、4℃で30分間、GST-CR2ATTO550またはGST-CR3ATTO550と共にインキュベートした。細胞を、4%パラホルムアルデヒドで固定した後、0.5%Triton X-100を用いて透過処理した。核タンパク質を、マウス抗VSV Nモノクローナル抗体を使用することによって検出した。ヤギ抗マウスAlexa fluor 488(Invitrogen)を、二次抗体として使用した。Leica SP8共焦点顕微鏡(63倍油浸対物レンズ)を使用して、画像を捕捉した。
【0054】
フローサイトメトリー実験のために、HEK-293T細胞に、ポリエチレンイミン(PEI、Sigma-Aldrich)を使用して、WTまたは変異型GをコードするpCAGGSプラスミドをトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、細胞を収集し、G細胞外ドメインを認識するマウス抗Gモノクローナル抗体(8G5F11、KeraFast)と共にインキュベートした。次いで、ヤギ抗マウスAlexa fluor 488抗体およびGST-CR2ATTO550(またはGST-CR3ATTO550)を、細胞に同時に添加した。細胞の蛍光を、BD Accuri C6フローサイトメーターを使用して決定した。
【0055】
<偽型>
80%集密度のHEK-293T細胞を、PEIを使用して、WTまたは変異型VSV GをコードするpCAGGSによってトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、細胞に、1のMOIでVSVΔG-GFPを感染させた。感染の2時間後、細胞を洗浄して、接種物から残留ウイルスを除去した。偽型化されたウイルス粒子を含有する細胞上清を、感染の16時間後に収集した。偽型化されたウイルスの感染力価を、感染の4時間後にBD Accuri C6フローサイトメーターを使用してGFPを発現する細胞を計数することによって、非トランスフェクト細胞上で決定した。偽型化された粒子中へのWTおよび変異型Gの組込みを、上清濃縮後に抗VSV G抗体および抗VSV M抗体を使用するSDS PAGEおよびウェスタンブロット分析によって評価した。
【0056】
<HAP-1細胞の感染>
HAP-1細胞を、70%集密度で播種し、15分間、50nMのRAPと共にインキュベートしたか、またはインキュベートしなかった。次いで、細胞を、1のMOIでVSV-eGFPに感染させた。RAPを、全ての感染時間に維持した。感染細胞(GFP陽性)のパーセンテージを、感染の4時間後にBD Accuri C6フローサイトメーターを使用して決定した。
【0057】
<ITC>
ITC実験を、150mM NaCl、20mM Tris-HCl pH8.0および2mM CaCl2から構成される緩衝液中、MicroCal iTC200装置(GE Healthcare)を使用して293Kで実施した。50μMの濃度のGthを、600μMの濃度でのCRドメインの連続注入によって滴定した。滴定シーケンスは、最初に1μLの注入、次いで、注入間に180または240秒の間隔を空けて、それぞれ2μLの注入を19回含んでいた。OriginLabソフトウェア(GE Healthcare)を使用して、生データを分析した。結合パラメーターを、一部位結合モデルを用いた曲線適合分析から抽出した。
【0058】
<細胞-細胞融合アッセイ>
細胞-細胞融合アッセイを、以前に記載されたように実施した(Ferlin et al., 2014)。簡単に述べると、70%集密度でガラスカバースリップ上に塗布されたBSR細胞に、WT Gまたは変異型GをコードするpCAGGSプラスミド、およびGFPに融合された狂犬病ウイルスのホスホタンパク質をコードするP-GFPプラスミドを同時トランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、細胞を、37℃で10分間、様々なpH(5.0~7.5)の融合緩衝液(DMEM-10mM MES)と共にインキュベートした。次いで、細胞を1回洗浄し、37℃で1時間、pH7.4のDMEM-10mM HEPES-NaOH、1%BSAと共にインキュベートした。細胞を、1×PBS中の4%パラホルムアルデヒドで15分間固定した。細胞核をDAPIで染色し、合胞体形成を、10倍レンズを備えたZeiss Axiovert 200蛍光顕微鏡を用いて分析した。
<文献>
Albertini, A.A.V., Baquero, E., Ferlin, A., and Gaudin, Y. (2012b). Molecular and Cellular Aspects of Rhabdovirus Entry. Viruses 4, 117-139.
Amirache, F., Levy, C., Costa, C., Mangeot, P.E., Torbett, B.E., Wang, C.X., Negre, D., Cosset, F.L., and Verhoeyen, E. (2014). Mystery solved: VSV-G-LVs do not allow efficient gene transfer into unstimulated T cells, B cells, and HSCs because they lack the LDL receptor. Blood 123, 1422-1424.
Ammayappan, A., Peng, K.W., and Russell, S.J. (2013). Characteristics of oncolytic vesicular stomatitis virus displaying tumor-targeting ligands. J Virol 87, 13543-13555.
Barber, G.N. (2005). VSV-tumor selective replication and protein translation. Oncogene 24, 7710-7719.
Ferlin, A., Raux, H., Baquero, E., Lepault, J., and Gaudin, Y. (2014). Characterization of pH-sensitive molecular switches that trigger the structural transition of vesicular stomatitis virus glycoprotein from the postfusion state toward the prefusion state. J Virol 88, 13396-13409.
Finkelshtein, D., Werman, A., Novick, D., Barak, S., and Rubinstein, M. (2013). LDL receptor and its family members serve as the cellular receptors for vesicular stomatitis virus. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 110, 7306-7311.
Roche, S., Bressanelli, S., Rey, F.A., and Gaudin, Y. (2006). Crystal structure of the low-pH form of the vesicular stomatitis virus glycoprotein G. Science 313, 187-191.
Roche, S., Rey, F.A., Gaudin, Y., and Bressanelli, S. (2007). Structure of the prefusion form of the vesicular stomatitis virus glycoprotein g. Science 315, 843-848.
【0059】
(実施例2)
<改変型Gをコードするプラスミドの調製>
様々な位置にmCherryが挿入された所望のコードG配列を含有するpCAGGSプラスミドの構築物を、Gibsonアセンブリ反応を使用して生成した。空のベクターpCAGGSを、EcoRI制限酵素を使用して線状化した。次いで、重複部分を有する3つのPCR産物を生成した。生成物Iは、挿入部位の前のGの断片である;それは、1位にmCherryを挿入するためのプライマーIaおよびIb1ならびに351位にmCherryを挿入するためのプライマーIaおよびIb351を使用して、VSV G遺伝子上でPCRを実行して生成される。生成物IIは、mCherry遺伝子である(1位にmCherryを挿入するためのプライマーIIa1およびIIb1ならびに351位にmCherryを挿入するためのプライマーIIa351およびIIb351を使用する)。生成物IIIは、挿入部位の後のGの断片である;それは、1位にmCherryを挿入するためのプライマーIIIa1およびIIIbならびに351位にmCherryを挿入するためのプライマーIIIa351およびIIIbを使用して生成される。
【0060】
プライマー配列を、Eurofins Genomicsによって合成した:
Ia:TCTCATCATTTTGGCAAAGATGAAGTGCCTTTTGTACTTAG(配列番号332)
Ib1:TTGCTCACCATGCAATTCACCCCAATGAATAAAAAG(配列番号333)
Ib351:GCTCACCATAGTTCCACTGATCATTCCGACC(配列番号334)
IIa1:CATTGGGGTGAATTGCATGGTGAGCAAGGGC(配列番号335)
IIa351:AATGATCAGTGGAACTATGGTGAGCAAGGGC(配列番号336)
IIb1:AAAIIb1CTATGGTGAACTTCTTGTACAGCTCGTCC(配列番号337)
IIb351:GTTCCCTTTCTGTGGTCTTGTACAGCTCGTCC(配列番号338)
IIIa1:GAGCTGTACAAGAAGTTCACCATAGTTTTTCCACACA(配列番号339)
IIIa351:CTGTACAAGACCACAGAAAGGGAACTGT(配列番号340)
IIIb:CCGCCCGGGAGCTCGTTACTTTCCAAGTCGGTTC(配列番号341)
アガロースゲル上でそれぞれの断片を精製した後、3つの断片+精製消化されたpCAGGSベクターを等モル濃度で合わせ、Gibsonアセンブリ反応によって集合させる。次いで、DNAを細菌中に形質転換し、制限消化および/または配列決定によって同定した後、正確なプラスミド産物を増幅した。
【0061】
(実施例3)
<改変型VSV糖タンパク質の一過的発現>
トランスフェクションプロトコールは、形質導入しようとする細胞の種類に依存することになる。HEK細胞については、本発明者らは、ポリエチレンイミン(PEI)トランスフェクションプロトコールを使用する。BHKについては、本発明者らは、リン酸カルシウムトランスフェクションプロトコールまたはPEIを使用する。
【0062】
カバースリップ上で増殖させた細胞に、VSV改変型糖タンパク質をコードするpCAGGSプラスミドをトランスフェクトした。トランスフェクションの20時間後、細胞を、PBS中の4%パラホルムアルデヒドで固定した。洗浄(PBSで3回)後、カバースライドに、immu-mount DAPI(thermofisher)をマウントし、Zeiss顕微鏡を用いて検査した。赤色蛍光は、両方の事例において細胞表面に存在し、タンパク質がゴルジ装置を通って正確に折り畳まれたことを示している(
図19)。
本発明は、上記の実施形態に限定されない。