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▶ マニュファクチュアリング システムズ リミテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179459
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】触媒作用の装置および方法
(51)【国際特許分類】
   C25B 11/02 20210101AFI20231212BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20231212BHJP
   C25B 1/23 20210101ALI20231212BHJP
   C25B 3/26 20210101ALI20231212BHJP
   C25B 3/07 20210101ALI20231212BHJP
   C25B 1/27 20210101ALI20231212BHJP
   C25B 1/01 20210101ALI20231212BHJP
   C25B 3/03 20210101ALI20231212BHJP
   C25B 3/23 20210101ALI20231212BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20231212BHJP
   H01M 4/86 20060101ALI20231212BHJP
   H01M 4/88 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
C25B11/02
C25B1/04
C25B1/23
C25B3/26
C25B3/07
C25B1/27
C25B1/01 Z
C25B3/03
C25B3/23
C25B9/00 A
C25B9/00 G
H01M4/86 M
H01M4/88 K
【審査請求】有
【請求項の数】30
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023145632
(22)【出願日】2023-09-07
(62)【分割の表示】P 2020545483の分割
【原出願日】2019-02-28
(31)【優先権主張番号】62/636,814
(32)【優先日】2018-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】520326817
【氏名又は名称】マニュファクチュアリング システムズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホッセイニ,アリ
(72)【発明者】
【氏名】パートリッジ,アシュトン シリル
(72)【発明者】
【氏名】ヘインズ,アンドルー レオ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】所望の生成物結果を得るための電極触媒アレイの選択方法を提供する。
【解決手段】方法は、電極触媒系を導電性溶液に溶解または懸濁された活性剤に曝露することと、電極触媒系に電圧を印加することと、を含む。この電圧は、活性種の多電子酸化または多電子還元を引き起こすのに十分なものであり、電極触媒系は対電極と、電極触媒アレイとを備える。アレイは、支持基板と、支持基板の表面から突出する均一なサイズの表面構造と、を備え、均一なサイズの表面構造は、触媒を含む縁部および/または頂部を有する。均一なサイズの表面構造が、マイクロメートルスケールのものである場合、第1の生成物比が作り出され、均一なサイズの表面構造が、ナノメートルスケールのものである場合、第2の生成物比が作り出され、第1および第2の生成物比が異なり、第2の生成物比が、第1の生成物比を作り出す場合と比較して、高次電子プロセスを必要とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所望の生成物結果に基づいて電極触媒アレイを選択する方法であって、前記方法が、
電極触媒系を導電性溶液に溶解または懸濁した活性剤に曝露することと、
前記電極触媒系に電圧を印加することと、を含み、
前記電圧が、前記活性種の多電子酸化または多電子還元を引き起こすのに十分であり、
前記電極触媒系が、
対電極と、
電極触媒アレイであって、
支持基板と、
前記支持基板の表面から突出する均一なサイズの表面構造と、を備え、
前記均一なサイズの表面構造が、触媒を含む縁部および/または頂部を有する、電極触媒アレイと、を備え、
前記均一なサイズの表面構造が、マイクロメートルスケールのものである場合、第1の生成物比が作り出され、前記均一なサイズの表面構造が、ナノメートルスケールのものである場合、第2の生成物比が作り出され、前記第1および第2の生成物比が異なり、
前記第2の生成物比が、前記第1の生成物比を作り出す場合と比較して、高次電子プロセスを必要とする、方法。
【請求項2】
前記活性種が酸素であり、前記均一なサイズの表面構造がマイクロメートルスケールのものである場合、前記第1の生成物が過酸化水素である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記活性種が酸素であり、前記均一なサイズの表面構造がナノメートルスケールのものである場合、前記第1の生成物が水である、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記支持基板と接合する前記ナノメートルスケールの前記表面構造の幅が、約25nm~約50000nmである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記支持基板と接合する前記ナノメートルスケールの前記表面構造の幅が、約5μm~約500μmである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記表面構造の所定の露出を提供するために、前記表面構造の間に堆積された不動態化層をさらに備える、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記生成物比の調節を容易にするために、前記表面構造の間に堆積された不活性層または不動態化層をさらに備える、請求項4または5に記載の方法。
【請求項8】
前記不活性層または不動態化層が、前記第2の生成物比と前記第1の生成物比との間の生成物の相対比を調節するような厚さになるように堆積される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記不活性層または不動態化層の厚さが大きいほど、または厚さが増加するほど、前記相対比が前記第1の生成物比に近づく、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の生成物比と第2の生成物比との間の相対比が、前記不活性層または不動態化層の相対厚さまたは高さに応じて調節される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記不動態化層の厚さが、前記表面構造の高さの約5%~約95%である、請求項6~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記対電極が、対電極支持基板と、前記対電極支持基板の対電極表面から突出する均一なサイズの対電極表面構造とを備える、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
導電性溶液中の活性種のレドックス反応を触媒する方法であって、前記方法が、
電極触媒系を前記活性種に曝露することと、
前記電極触媒系に電圧を印加することと、を含み、
前記電圧が、前記活性種の多電子酸化または多電子還元を引き起こすのに十分であり、
前記電極触媒系が、
対電極と、
電極触媒アレイであって、
支持基板と、
前記支持基板の表面から突出する均一なサイズの表面構造と、を備え、
前記均一なサイズの表面構造が、触媒を含む縁部および/または頂部を備える、電極触媒アレイと、を備える、方法。
【請求項14】
導電性溶液中の活性種からのガス形成を触媒する方法であって、前記方法が、
電極触媒系を前記活性種に曝露することと、
前記電極触媒系に電圧を印加することと、を含み、
前記電圧が、前記活性種の多電子酸化または多電子還元を引き起こすのに十分であり、
前記電極触媒系が、
対電極と、
電極触媒アレイであって、
支持基板と、
前記支持基板の表面から突出する均一に配置されたサイズの表面構造と、を備え、
前記均一に配置されたサイズの表面構造が、触媒を含む縁部および/または頂部を有する、電極触媒アレイと、を備え、
ガス形成の速度が、前記支持基板の表面から突出する前記均一に配置されたサイズの表面構造のない同じ電極触媒アレイと比較して、少なくとも1.5倍増加する、方法。
【請求項15】
前記ガス形成の速度が、1.5倍~1000倍まで増加される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
導電性溶液中の活性種の電気化学的レドックス反応を触媒する方法であって、前記方法が、
a.電極触媒アレイを提供することであって、前記電極触媒アレイが、
i.支持基板と、
ii.前記支持基板から突出する表面構造であって、電極触媒を含む、表面構造と、
iii.前記電極触媒上の機能表面であって、前記機能表面が、前記表面構造の上部にあり、前記機能表面が、前記導電性溶液中の活性種と接触するように適合されている、機能表面と、を備える、電極触媒アレイを提供することと、
b.前記表面構造を、前記溶液に曝露し、その中に対電極を含むようにすることと、
c.電荷密度(電圧または電流)が機能表面に集中し、前記活性種が前記機能表面との接触に続いて前記レドックス反応を受けるように、前記電極触媒と前記対電極との間に電流または電圧を確立することと、を含む、方法。
【請求項17】
前記表面構造が、均一なサイズであり、かつ実質的に同じ形状を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記表面構造が、前記支持基板と同じ材料である、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記触媒が表面構造の上面に堆積され、前記表面構造とは異なる材料である、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記電極触媒が、上から見たときに、前記アレイの前記表面の約50%未満~約0.000001%未満に堆積される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
導電性溶液中の活性種の電気化学的レドックス反応を触媒する方法であって、前記方法が、
a.電極触媒アレイを提供する工程であって、前記電極触媒アレイが、
i.支持基板と、
ii.前記支持基板から突出する表面構造であって、電極触媒を含む、表面構造と、
iii.前記電極触媒上の機能表面であって、前記機能表面が、前記表面構造の上部にあり、前記機能表面が、前記導電性溶液中の活性種と接触するように適合されている、機能表面と、を備える、電極触媒アレイを提供する工程と、
b.前記表面構造を、前記溶液に曝露し、その中に対電極を含むようにする工程と、
c.電荷密度(電圧または電流)が前記機能表面に集中し、前記活性種が前記機能表面との接触に続いて前記レドックス反応を受けるように、前記電極触媒と前記対電極との間に電流または電圧を確立する工程と、を含み、
前記レドックス反応が、
水からの酸素発生、
陽子からの水素発生、
水への水素酸化、
陽子への水素酸化、
水への酸素還元、
過酸化物への酸素還元、
二酸化炭素から一酸化炭素にする反応、
二酸化炭素からメタノールにする反応、
二酸化炭素からカルボン酸(例えば、ギ酸)にする反応、
二酸化炭素からアルデヒドおよび/またはケトンにする反応、
二酸化炭素からメタン、エタン、プロパン、および/または最大でC21の高次炭素鎖にする反応、
メタノールへのメタン酸化、
窒素からヒドラジンにする反応、
窒素からアンモニアにする反応、
アンモニアを水素と窒素とに分解すること、
メタンからメタノールにする反応、
硝酸塩から窒素にする反応、
硝酸塩からアンモニアにする反応から選択される、方法。
【請求項22】
前記レドックス反応が、中間体が単離されないいくつかの工程を包含する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記表面構造が、前記支持基板と同じ材料である、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
前記電極触媒が、前記表面構造の上面に堆積され、前記表面構造とは異なる材料である、請求項21~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記電極触媒が、上から見たときに、前記アレイの前記表面の約50%未満~約0.000001%未満に堆積される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
導電性溶液中の活性種からのガス形成を触媒する方法であって、
電極触媒系を前記活性種に曝露することと、
前記電極触媒系に電圧を印加することと、を含み、
前記電圧が、前記活性種の多電子酸化または多電子還元を引き起こすのに十分であり、
前記電極触媒系が、
対電極と、
電極触媒アレイであって、
支持基板と、
前記支持基板の表面から突出する均一なサイズの表面構造と、を備え、
前記均一なサイズの表面構造が、触媒を含む縁部および/または頂部を有する、電極触媒アレイと、を備え、
ガス形成の速度が、前記支持基板の表面から突出する前記均一なサイズの表面構造のない同じ電極触媒アレイと比較して、少なくとも1.5倍増加する、方法。
【請求項27】
電極からガスを発生させる方法であって、前記方法が、
電極を活性種を含む導電性溶液に曝露することと、
前記活性種を還元または酸化してガスを生成するのに十分な電圧を前記電極に印加することと、を含み、
前記電極が、
ナノ構造化アレイであって、
支持基板と、
前記支持基板から突出するピラミッド型の表面構造と、を備える、ナノ構造化アレイを備え、
前記ピラミッド型表面構造の各々が、基部、頂部、および前記基部と前記頂部との間の縁部を有し、
前記基部が、前記支持基板と接触しており、
前記基部が、50nm~約4000μmの最長の側面寸法、約1nm~約50nmの頂部、および約50nm~1000nmの隣接する頂部間の距離を有し、
前記縁部および頂部が、触媒を含む、方法。
【請求項28】
前記ガスが、水素、酸素、または水素と酸素の両方である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記ガスが、水素、窒素、または水素と窒素の両方である、請求項27または28に記載の方法。
【請求項30】
前記ガスが、アンモニアである、請求項27~29のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学的レドックス反応を触媒する方法に関する。より具体的には、本発明は、通常は高価な触媒材料に関連するコストを削減することができる表面構造(複数可)を有する電極触媒を使用して電気化学的レドックス反応を触媒する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
不均一触媒作用は、エネルギー貯蔵のためのH2生成、および燃料電池におけるO2還元を含む、様々な重要なレドックス触媒プロセスで使用されている。しかしながら、触媒は、多くの場合高価な材料である。所与の電極触媒反応では、触媒反応を、可逆電極電位(熱力学的電極電位)に可能な限り近い電位で、満足のいく反応速度で発生させることが望ましい。しかしながら、典型的には、触媒プロセスの1つの態様を改善することは他に有害な影響を及ぼし、例えば、反応速度を改善することはしばしばより大きな駆動力を必要とし、結果として熱力学的電位からの大きな偏差をもたらす。
【0003】
触媒プロセスを最適化する場合、触媒材料、使用する溶媒(例えば、水性溶媒、有機溶媒)、溶液特性(例えば、pH、粘度、電解質)、流動的対静的、セル設計、電極材料の形状および配向が含まれる、複数のパラメータが考慮される。主成分は、電極マトリックスの表面上またはバルク内に触媒を含む電極である。あるいは、金属の場合、電極材料は触媒材料であってもよい。
【0004】
触媒を最適化するプロセスは、通常、システム内の速度論的および熱力学的応答への影響に関して上記の各パラメータを最適化することを含み、各変数が必要な速度およびエネルギーに関して触媒効率にどのように影響するかの理解を与える。しかしながら、これまで、電極表面のトポグラフィが触媒効率に及ぼす影響についてはほとんど考慮されていなかった。
【0005】
本発明の目的は、導電性溶液中の活性種の電気化学的レドックス反応を触媒する方法を提供することである。本発明の目的は、導電性溶液中の活性種の電気化学的レドックス反応を触媒するコストを下げることである。あるいは、本発明の目的は、少なくとも有用な選択を公衆に提供することである。
【発明の概要】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、導電性溶液中の活性種の電気化学的レドックス反応を触媒する方法が提供され、本方法は、
a.電極触媒アレイを提供する工程であって、電極触媒アレイが、
i.支持基板と、
ii.前記支持基板から突出する表面構造であって、電極触媒を含む、表面構造と、
iii.電極触媒上の機能表面であって、機能表面が、表面構造の上部にあり、機能表面が、導電性溶液中の活性種と接触するように適合されている、機能表面と、を備える、電極触媒アレイを提供する工程と、
b.表面構造を、溶液に曝露し、その中に対電極を含むようにする工程と、
c.電荷密度(電圧または電流)が機能表面に集中し、活性種が前記機能表面との接触に続いてレドックス反応を受けるように、電極触媒と対電極との間に電流または電圧を確立する工程と、を含む。
いくつかの実施形態では、レドックス反応は、以下の1つ以上から選択される:水からの水素発生、
水からの酸素発生、
水からの水素発生、
陽子からの水素発生、
水への水素酸化、
陽子への水素酸化、
過酸化水素への水素酸化、
水への酸素還元、
過酸化物への酸素還元、
二酸化炭素から一酸化炭素にする反応、
二酸化炭素からメタノールにする反応、
二酸化炭素からカルボン酸(例えば、ギ酸)にする反応、
二酸化炭素からアルデヒドおよび/またはケトンにする反応、
二酸化炭素からメタン、エタン、プロパン、および/または最大でC21の高次炭素鎖にする反応、
メタノールへのメタン酸化、
窒素からヒドラジンにする反応、
窒素からアンモニアにする反応、
アンモニアを水素と窒素とに分解すること、
メタンからメタノールにする反応、
硝酸塩から窒素にする反応、
硝酸塩からアンモニアにする反応。
【0007】
いくつかの実施形態では、レドックス反応は、レドックス反応の組み合わせである。例えば、水から水素と酸素とが発生し、その後酸素が還元されて水に戻り、水から水素が発生し、その後水素が窒素と結合してアンモニアになる。
【0008】
いくつかの実施形態では、レドックス反応が、中間体が単離されないことが好ましい、いくつかの工程を包含する。例えば、二酸化炭素から一酸化炭素へ、その後一酸化炭素からメタノールへと移行するが、一酸化炭素は単離されない。
【0009】
いくつかの実施形態では、レドックス反応は、2以上の電子プロセスである。いくつかの実施形態では、レドックス反応は、2電子プロセスである。いくつかの実施形態では、2電子プロセスは、以下から選択される:
水からの水素発生
陽子からの水素発生
過酸化水素への水素酸化
過酸化物への酸素還元
二酸化炭素から一酸化炭素にする反応、
二酸化炭素からギ酸にする反応
メタンからメタノールにする反応。
【0010】
いくつかの実施形態では、レドックス反応は、4以上の電子プロセスである。いくつかの実施形態では、レドックス反応は、4電子プロセスである。いくつかの実施形態では、4電子プロセスは、以下から選択される:
水からの酸素発生
水への酸素還元
窒素からヒドラジンにする反応
二酸化炭素からホルムアルデヒドにする反応、
水への水素酸化。
【0011】
いくつかの実施形態では、レドックス反応は、6以上の電子プロセスである。いくつかの実施形態では、6電子プロセスは、以下から選択される:
二酸化炭素からメタノールにする反応、
窒素からアンモニアにする反応、
アンモニアを水素と窒素とに分解すること。
【0012】
いくつかの実施形態では、レドックス反応は、8電子以上のプロセスである。いくつかの実施形態では、8電子以上のプロセスは、以下から選択される:
二酸化炭素からメタン、エタン、プロパン、および/または最大でC21の高次炭素鎖にする反応、二酸化炭素から酢酸にする反応、
二酸化炭素からケトンにする反応、
硝酸塩から窒素にする反応、
硝酸塩からアンモニアにする反応。
【0013】
別の態様では、導電性溶液中の活性種の電気化学的レドックス反応を触媒する方法が提供され、本方法は、
a.電極触媒アレイを提供する工程であって、電極触媒アレイが、
i.支持基板と、
ii.前記支持基板から突出する表面構造であって、電極触媒を含む、表面構造と、
iii.電極触媒上の機能表面であって、機能表面が、表面構造の上部にあり、機能表面が、導電性溶液中の活性種と接触するように適合されている、機能表面と、を備える、電極触媒アレイを提供する工程と、
b.表面構造を、溶液に曝露し、その中に対電極を含むようにする工程と、
c.電荷密度(電圧または電流)が機能表面に集中し、活性種が機能表面との接触に続いてレドックス反応を受けるように、電極触媒と対電極との間に電流または電圧を確立する工程と、を含み、
活性種は酸素であり、酸素は水に還元される。
【0014】
別の態様では、導電性溶液中の活性種の電気化学的レドックス反応を触媒する方法が提供され、本方法は、
a.電極触媒アレイを提供する工程であって、電極触媒アレイが、
i.支持基板と、
ii.前記支持基板から突出する表面構造であって、電極触媒を含む、表面構造と、
iii.電極触媒上の機能表面であって、機能表面が、表面構造の上部にあり、機能表面が、導電性溶液中の活性種と接触するように適合されている、機能表面と、を備える、電極触媒アレイを提供する工程と、
b.表面構造を、溶液に曝露し、その中に対電極を含むようにする工程と、
c.電荷密度(電圧または電流)が機能表面に集中し、活性種が機能表面との接触に続いてレドックス反応を受けるように、電極触媒と対電極との間に電流または電圧を確立することと、を含み、
活性種は水または陽子であり、水または陽子は水素に還元される。
【0015】
別の態様では、導電性溶液中の活性種の電気化学的レドックス反応を触媒する方法が提供され、本方法は、
a.電極触媒アレイを提供する工程であって、電極触媒アレイが、
i.支持基板と、
ii.前記支持基板から突出する表面構造であって、電極触媒を含む、表面構造と、
iii.電極触媒上の機能表面であって、機能表面が、表面構造の上部にあり、機能表面が、導電性溶液中の活性種と接触するように適合されている、機能表面と、を備える、電極触媒アレイを提供する工程と、
b.表面構造を、溶液に曝露し、その中に対電極を含むようにする工程と、
c.電荷密度(電圧または電流)が機能表面に集中し、活性種が機能表面との接触に続いてレドックス反応を受けるように、電極触媒と対電極との間に電流または電圧を確立する工程と、を含み、
活性種は窒素であり、窒素はアンモニアに還元される。
別の態様では、導電性溶液中の活性種の電気化学的レドックス反応を触媒する方法が提供され、本方法は、
a.電極触媒アレイを提供する工程であって、電極触媒アレイが、
i.支持基板と、
ii.前記支持基板から突出する表面構造であって、電極触媒を含む、表面構造と、
iii.電極触媒上の機能表面であって、機能表面が、表面構造の上部にあり、機能表面が、導電性溶液中の活性種と接触するように適合されている、機能表面と、を備える、電極触媒アレイを提供する工程と、
b.表面構造を、溶液に曝露し、その中に対電極を含むようにする工程と、
c.電荷密度(電圧または電流)が機能表面に集中し、活性種が機能表面との接触に続いてレドックス反応を受けるように、電極触媒と対電極との間に電流または電圧を確立する工程と、を含み、
活性種は二酸化炭素であり、二酸化炭素はメタノールに還元される。
【0016】
別の態様では、導電性溶液中の活性種のレドックス反応を触媒する方法が提供され、本方法は、
電極触媒系を活性種に曝露することと、
電極触媒系に電圧を印加することであって、
ここで、
活性種の多電子酸化または多電子還元を引き起こすのに十分である、電圧を印加することと、を含み、
電極触媒系が、
対電極と、
電極触媒アレイであって、
支持基板と、
支持基板の表面から突出する均一なサイズの表面構造と、を備え、
均一なサイズの表面構造が、触媒を含む縁部および頂部(apices)を有する、電極触媒アレイと、を備える。
【0017】
いくつかの実施形態では、縁部および/または頂部は、表面積の約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、約10%未満、約1%、約0.01%未満、約0.001%未満、約0.0001%未満、約0.00001%未満、約0.000001%未満を構成する。いくつかの実施形態では、縁部および/または頂部は、上から見た場合、触媒の表面積の約0.0000001%または約0.000001%~約50%を構成する。いくつかの実施形態では、縁部 頂部は、上から見た場合、触媒の約0.0001%~約50%の表面積を構成する。いくつかの実施形態では、縁部 頂部は、上から見た場合、触媒の約0.1%~約50%の表面積を構成する。本明細書の実施形態のいずれにおいても、均一なサイズの表面構造は、均一な幾何学形状であってもよい。
【0018】
表面構造に関して、実質的に均一なサイズおよび/または幾何学形状の複数の表面構造があってもよく、複数の表面構造は、該構造の1つ以上の縁部および/または頂部および/または先端部および/または頂部(apexes)に触媒または触媒材料を含んでもよい。
【0019】
いくつかの実施形態では、活性種の多電子酸化または多電子還元は、2電子プロセス、4電子プロセス、6電子プロセス、8電子プロセス、10電子プロセス、または12電子プロセスを含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、活性種の多電子酸化または多電子還元は、以下を含む2電子プロセスを含み、すなわち、水または陽子からの水素発生、水または陽子への水素酸化、過酸化水素への水素酸化、過酸化水素への酸素還元、二酸化炭素から一酸化炭素への変換、または窒素(N2)のヒドラジンへの、もしくはメタンからメタノールへの還元。
【0021】
いくつかの実施形態では、活性種の多電子酸化または多電子還元は、二酸化炭素から一酸化炭素への変換を含む2電子プロセスを含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、活性種の多電子酸化または多電子還元は、水からの酸素発生、水への酸素還元、アルデヒドへの二酸化炭素還元、またはギ酸への二酸化炭素還元を含む4電子プロセスを含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、活性種の多電子酸化または多電子還元は、アルデヒドへの二酸化炭素還元、またはカルボン酸への二酸化炭素還元を含む4電子プロセスを含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、活性種の多電子酸化または多電子還元は、アルコールへの二酸化炭素還元、アンモニアへの窒素(N2)還元、またはアンモニアからの水素および窒素の生成を含む6電子プロセスを含む。いくつかの実施形態では、アルコールはメタノールである。
【0025】
いくつかの実施形態では、活性種の多電子酸化または多電子還元は、二酸化炭素の式CnH2n+2(ここでは、nは2~21である)のアルカンへの還元を含む(2n+6)電子プロセスを含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、活性種の多電子酸化または多電子還元は、硝酸アニオンからアンモニアへの8電子プロセスを含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、活性種の多電子酸化または多電子還元は、エタンの酸化を含む10電子プロセスを含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、活性種の多電子酸化または多電子還元は、硝酸アニオンの窒素への変換を含む11電子プロセスを含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、活性種の多電子酸化または多電子還元は、プロパンの酸化を含む12電子プロセスを含む。
【0030】
別の態様では、導電性溶液中の活性種からのガス形成を触媒する方法が提供される。このような方法は、電極触媒系を活性種に曝露することと、電極触媒系に電圧を印加することと、を含む。この方法では、電圧は、活性種の多電子酸化または多電子還元を引き起こすのに十分なものである。さらに、電極触媒系は、対電極と電極触媒アレイとを備え、電極触媒アレイは、支持基板と、支持基板の表面から突出する均一のサイズの表面構造とを含み、均一なサイズの表面構造は、触媒を含む縁部および/または頂部を有し、ガス形成の速度は、支持基板の表面から突出する均一なサイズの表面構造のない同じ電極触媒アレイと比較して、少なくとも1.5倍増加する。本明細書の実施形態のいずれにおいても、均一なサイズの表面構造は、均一な幾何学形状であってもよい。
【0031】
表面構造に関して、実質的に均一なサイズおよび/または幾何学形状の複数の表面構造があってもよく、複数の表面構造は、該構造の1つ以上の縁部および/または頂部および/または先端部および/または頂部に触媒または触媒材料を含んでもよい。
【0032】
別の実施形態では、ガス形成の速度は、最大1000倍まで増加する。別の実施形態では、ガス形成の速度は、1.5~1000倍、別の実施形態では10~1000倍、別の実施形態では20~500倍、別の実施形態では50~500倍、別の実施形態では、50~300倍まで増加する。
【0033】
別の態様では、所望の生成物結果に基づいて、電極触媒アレイの選択を可能にする方法が提供される。この方法は、電極触媒系を導電性溶液に溶解または懸濁された活性剤に曝露することと、電極触媒系に電圧を印加することと、を含む。方法では、電圧は、活性種の多電子酸化または多電子還元を引き起こすのに十分なものであり、電極触媒系は対電極と、電極触媒アレイとを含む。電極触媒アレイは、支持基板と、支持基板の表面から突出する均一なサイズの表面構造と、を備え、均一なサイズの表面構造は、触媒を含む縁部および/または頂部を有する。均一なサイズの表面構造が、マイクロメートルスケールのものである場合、第1の生成物が生成されるが、均一なサイズの表面構造が、ナノメートルスケールのものである場合、第2の生成物が生成され、第1および第2の生成物は異なる。第2の生成物の生成は、第1の生成物の生成と比較して、高次電子プロセスを必要とする。換言すれば、第2の生成物の生成は、第1の生成物よりも多くの電子を必要とする。本明細書の実施形態のいずれにおいても、均一なサイズの表面構造は、均一な幾何学形状であってもよい。
【0034】
表面構造に関して、実質的に均一なサイズおよび/または幾何学形状の複数の表面構造があってもよく、複数の表面構造は、該構造の1つ以上の縁部および/または頂部および/または先端部および/または頂部に触媒または触媒材料を含んでもよい。
【0035】
別の態様では、所望の生成物結果に基づいて電極触媒アレイの選択を可能にする方法が提供され、この方法は、電極触媒系を導電性溶液に溶解または懸濁された活性剤に曝露することと、
電極触媒系に電圧を印加することと、を含み、
ここで、
活性種の多電子酸化または多電子還元を引き起こすのに十分である、電圧を印加することと、を含み、
電極触媒系が、
対電極と、
電極触媒アレイであって、
支持基板と、
支持基板の表面から突出する均一なサイズの表面構造と、を備え、
均一なサイズの表面構造が、触媒を含む縁部および/または頂部を有する、電極触媒アレイと、を備え、
均一なサイズの表面構造が、マイクロメートルスケールのものである場合、第1の生成物比が作り出され、前記均一なサイズの表面構造が、ナノメートルスケールのものである場合、第2の生成物比が作り出され、第1および第2の生成物比が異なり、
第2の生成物比が、前記第1の生成物比を作り出す場合と比較して、高次電子プロセスを必要とする。
【0036】
いくつかの実施形態では、活性種は酸素であり、第1の生成物は過酸化水素(2電子プロセス)(すなわち、100~0の過酸化水素の水に対する生成物比)であり得、第2の生成物は水(4電子プロセス)(すなわち、0~100の過酸化水素の水に対する生成物比)であり得る。
【0037】
いくつかの実施形態では、支持基板と接合するナノメートルスケールの表面構造の幅は、約25nm~約50000nmである。
いくつかの実施形態では、支持基板と接合するマイクロメートルスケールの表面構造の幅は、約5μm~約500μmである。
【0038】
いくつかの実施形態では、不活性層または不動態化層を表面構造の間に堆積させて、生成物比の調整を容易にすることができる。
【0039】
いくつかの実施形態では、不活性層または不動態化層もしくは実質的により活性の低い層を堆積させて、第2の生成物比と第1の生成物比との間の生成物の相対比を調整する厚さにしてもよい。
【0040】
いくつかの実施形態では、不活性層または不動態化層の厚さが大きいほど、または厚さが増加するほど、相対比が第1の生成物比に近づく。
【0041】
いくつかの実施形態では、第1の生成物比と第2の生成物比の相対比は、不活性層または不動態化層の相対厚さまたは高さに従って(表面構造の量が少ない、または表面構造の量が多いなどの表面構造の露出を調整することによって)調整されてもよい。
【0042】
不活性または不動態化層の厚さに関しては、厚さは、支持表面上の表面構造の高さを基準にして作られる。
【0043】
不活性または不動態化層の厚さの上記の調節は、機能表面または触媒の製造に適用することができる。
【0044】
いくつかの実施形態では、不活性または不動態化層の厚さは、表面構造の高さの約5%および約95%であってもよい。
【0045】
いくつかの実施形態では、不活性層または不動態化層の厚さは、表面構造の高さの少なくとも99%であってもよい。
【0046】
いくつかの実施形態では、不活性層または不動態化層の厚さは、表面構造の頂部または先端部または頂部(複数)のナノメートルスケールサイズを露出させるように、表面構造の高さに比例することができる。
【0047】
例えば、活性種が酸素である方法のいくつかの実施形態では、第1の生成物は過酸化水素(2電子プロセス)であり得、第2の生成物は水(4電子プロセス)であり得る。
【0048】
活性種がCO2である方法の他の実施形態では、第1の生成物はCOであり得、第2の生成物はギ酸であり得、第3の生成物はメタノールであり得る。活性種が硝酸塩である方法の他の実施形態では、第1の生成物はアンモニアであり得、第2の生成物は窒素であり得る。活性種が窒素である方法の他の実施形態では、第1の生成物はヒドラジンであり得、第2の生成物はアンモニアであり得る。
【0049】
別の態様では、所望の生成物結果に基づいて、電極触媒アレイを選択するための方法が提供される。この方法は、電極触媒系を導電性溶液に溶解または懸濁された活性剤に曝露することと、電極触媒系に電圧を印加することと、レドックス生成物を回収することと、を含む。この方法では、電圧は、活性種の多電子酸化または多電子還元を引き起こすのに十分なものである。またこの方法では、電極触媒系は、対電極と、電極触媒アレイとを含み、アレイは、支持基板と、支持基板の表面から突出する均一なサイズの表面構造と、を含み、均一なサイズの表面構造は、触媒を含む縁部および/または頂部を有する。また、この方法では、回収されるレドックス生成物を変更するために、均一なサイズの表面構造の寸法が選択される。
【0050】
いくつかのこのような実施形態では、活性剤は酸素であり、均一なサイズの表面構造はマイクロメートルスケールのものであり、レドックス生成物は過酸化水素である。他のこのような実施形態では、活性剤は酸素であり、均一なサイズの表面構造はナノメートルスケールのものであり、レドックス生成物は水である。
【0051】
別の態様では、電極からガスを発生させる方法が提供される。この方法は、電極を活性種を含む導電性溶液に曝露することと、活性種を還元または酸化してガスを生成するのに十分な電圧を電極に印加することと、を含む。この方法では、電極はナノ構造アレイを含み、これは今度は支持基板と、支持基板から突出するピラミッド型の表面構造と、を含む。アレイでは、ピラミッド型の表面構造のそれぞれは、基部、頂部、および基部と頂部の間の縁部を有し、基部は、支持基板と接触しており、基部は、50nm~約4000nmの最長の側面寸法を有し、頂部は、約1nm~約50nmであり、隣接する頂部間の距離は約50nm~1000nmであり、縁部および頂部は、触媒を含む。
【0052】
いくつかの実施形態では、方法は、電極と、対電極とを含む電解質系をさらに含む。いくつかの実施形態では、頂部は、ガス発生が頂部で開始されるように構成される。このような実施形態のいずれにおいても、ガスは、水素、酸素、または水素と酸素の両方であってもよい。実施形態のいずれにおいても、ガスは、水素、窒素、または水素と窒素の両方であってもよい。実施形態のいずれにおいても、ガスはアンモニアであってもよい。
【0053】
いくつかの実施形態では、ナノ構造アレイのピラミッド型表面構造は、形状および高さが実質的に同じである。
【0054】
別の態様では、
支持基板と、
支持基板の表面から突出する均一なサイズの表面構造と、を備える電極触媒アレイが提供され、
均一に配置されたサイズの表面構造が、縁部および頂部と、
表面構造の少なくとも一部に堆積した白金およびカーボンと、を備える。
【0055】
別の態様では、本明細書に記載の上記の態様、または本明細書に記載の以下の実施形態のいずれか1つ以上は、より低い経済的コストおよび/または活性、および/または低減量のいずれかへの触媒の置換を容易にすることができる。
【0056】
ここで、置換された触媒は、それが取って替わるか、または置き換わる触媒よりも反応性および/または量が少ない。
【0057】
誤解を避けるために、以下の実施形態は、上記のすべての態様を参照する。
【0058】
いくつかの実施形態では、表面構造の断面積は、支持基板の上面に直交する軸に沿って減少する。
【0059】
いくつかの実施形態では、表面構造の上部は、凸状の上面を有する。
【0060】
いくつかの実施形態では、表面構造は、支持基板の上面に直交する平面に沿った三角形、凸状、半円形、または乳頭状の断面を有する。
【0061】
いくつかの実施形態では、表面構造の上部は、頂部で約90°以下の角度を有する。いくつかの実施形態では、表面構造は鋭い先端部または隆起部である。
【0062】
いくつかの実施形態では、表面構造は、ピラミッド型、円錐型、隆起部、山型、スパイク型、円筒型、四角形五面体、フラットトップ五面体、五角形、六角形、またはこれらの組み合わせである。このような構造のいずれも、縁部、頂部、隆起部、または2つ以上のこのような特徴部の任意の組み合わせを有することができる。
【0063】
いくつかの実施形態では、表面構造は、支持基板の上面に平行な平面に沿って実質的に三角形、実質的に円形または実質的に正方形の断面を有する。
【0064】
いくつかの実施形態では、表面構造は、支持基板上に均一に配置される。あるいは、表面構造は、支持基板上にランダムに配置される。
【0065】
いくつかの実施形態では、表面構造は実質的に均一なサイズである。均一なサイズおよび/または幾何学的形状は、実質的に均質な生成物を生成する各構造において実質的に同じ電流および/または電圧などであるがこれらに限定されない、実質的に均質な結果を提供し得ると考えられる。例示的な実施形態では、表面構造および触媒は、実質的に所定の一次生成物または優先生成物の生成を提供するように調整されてもよい。あるいは、表面構造および触媒を調整して、1つ以上の所定の生成物、例えば、優先または一次生成物、および二次生成物(これも優先であり得る)の生成を提供することができる。同様に、表面構造および触媒を調整して、非優先的な生成物の生成を最小限に抑えてもよい。
【0066】
表面構造に関して、実質的に均一なサイズおよび/または幾何学形状の複数の表面構造があってもよく、複数の表面構造は、該構造の1つ以上の縁部および/または頂部および/または先端部および/または頂部に触媒または触媒材料を含んでもよい。
【0067】
いくつかの実施形態では、表面構造は、少なくとも1つの対称線を有する。いくつかの実施形態では、表面構造は、少なくとも2つの対称線を有する。
【0068】
いくつかの実施形態では、表面構造(複数可)は、以下のうちの1つ以上である:
i.支持基板の表面から同じまたは異なるもしくは違った高さのもの、
ii.他の表面構造(複数可)に対して形状の同じまたは異なるもしくは違った幾何学的形状のもの、
iii.規則的または不規則な幾何学的形状のもの、
iv.等間隔または不等間隔のもの、
v.同じまたは異なるもしくは違った密度のもの、
vi.i~vのいずれか1つの複数の表面構造(複数可)を備える複数の該表面構造(複数)の集団。
【0069】
いくつかの実施形態では、表面構造(複数可)は、機能表面として作用する多数の頂部もしくは先端部を提供するために、または本明細書に記載されるような活性種の還元もしくは酸化のために必要なサイズおよび密度のその上に形成された機能表面を有するために、所定の間隔または密度のものであるように提供される。
【0070】
いくつかの実施形態では、表面構造(複数可)は、機能表面として作用する多数の均一のサイズの頂部および/もしくは先端部を提供するために、または本明細書に記載されるような活性種の還元もしくは酸化のために必要なサイズおよび密度のその上に形成された機能表面を有するために、所定の均一の間隔または密度のものであるように提供される。本明細書の実施形態のいずれにおいても、均一なサイズの表面構造は、均一な幾何学形状であってもよい。
【0071】
表面構造に関して、実質的に均一なサイズおよび/または幾何学形状の複数の表面構造があってもよく、複数の表面構造は、該構造の1つ以上の縁部および/または頂部および/または先端部および/または頂部に触媒または触媒材料を含んでもよい。
【0072】
いくつかの実施形態では、表面構造(複数可)は、遠位端部分を備え、該遠位端部分は、該表面構造(複数可)が延びる表面から最も離間配置されており、該遠位端部分は、機能表面として作用するか、またはその上に形成された機能表面を有するために、鋭い、またはピーク、またはスパイクまたは頂点または先端または隆起形状のものである。
【0073】
いくつかの実施形態では、表面構造(複数可)は、支持基板表面上に提供される、表面構造のアレイまたは複数のアレイとして提供される。
【0074】
いくつかの実施形態では、アレイまたは各アレイは、幾何学的に配置された均一なパターンである。
【0075】
いくつかの実施形態では、アレイまたは各アレイは、表面構造(複数可)の集団の連続的に配列されたパターンである。
【0076】
いくつかの実施形態では、アレイまたは各アレイは、連続成形機の成形工具、熱エンボス加工、リソグラフィ、射出成形、鍛造、電鋳、リソグラフィ、または他の成形技術によって別個に提供される。
【0077】
いくつかの実施形態では、表面構造が支持基板と接合する場所での表面構造の幅は、約20nm~約5000μmである。いくつかの実施形態では、約40nm~約4000μm、約55nm~約3000μm、約75nm~約2500μm、約100nm~約4000μm、約250nm~約3500μm、約20nm~約3500μm、約2nm~約4000μm、約20nm~約2500μm、約20nm~約4000μm、約20nm~約3000μm、約20nm~約2000μmである。いくつかの実施形態では、約5nm~約750μm、約5nm~約500μm、約5nm~約100μmである。
【0078】
いくつかの実施形態では、表面構造が支持基板と接合する場所でのマイクロメートルスケールの表面構造の幅は、約5μm~約500μmである。いくつかの実施形態では、マイクロメートルスケールの表面構造の幅は、約50μmである。
【0079】
いくつかの実施形態では、表面構造が支持基板に接合する場所でのマイクロメートルスケールの表面構造の長さは、約5μm~約500μmである。いくつかの実施形態では、マイクロメートルスケールの表面構造の長さは、約50μmである。
【0080】
いくつかの実施形態では、表面構造が支持基板と接合する場所でのナノメートルスケールの表面構造の幅は、約25nm~約5000nmである。いくつかの実施形態では、マイクロメートルスケールの表面構造の幅は、約250nmである。
【0081】
いくつかの実施形態では、表面構造が支持基板に接合する場所でのナノメートルスケールの表面構造の長さは、約25nm~約5000nmである。いくつかの実施形態では、マイクロメートルスケールの表面構造の長さは約250nmである。
【0082】
いくつかの実施形態では、表面構造の高さ(すなわち、支持基板からの突出部の高さ)は、約20nm~約5000μmである。いくつかの実施形態では、約40nm~約4000μm、約55nm~約3000μm、約75nm~約2500μm、約100nm~約4000μm、約250nm~約3500μm、約20nm~約3500μm、約2nm~約4000μm、約20nm~約2500μm、約20nm~約4000μm、約20nm~約3000μm、約20nm~約2000μmである。いくつかの実施形態では、約5nm~約750μm、約5nm~約500μm、約5nm~約100μmである。
【0083】
いくつかの実施形態では、表面構造が支持基板に接合する場所でのマイクロメートルスケールの表面構造の高さは、約5μm~約500μmである。いくつかの実施形態では、マイクロメートルスケールでの表面構造の高さは、約50μmである。
【0084】
いくつかの実施形態では、マイクロメートルスケールの表面構造は、平方センチメートルあたり約180,000~約1,800個の頂部または先端部を提供して、機能表面を提供するか、またはその上に形成される機能表面を有するような密度で提供される。いくつかの実施形態では、マイクロメートルスケールの表面構造は、平方センチメートルあたり約18,000個の頂部または先端部を提供して、機能表面を提供するか、またはその上に形成される機能表面を有するような密度で提供される。
【0085】
いくつかの実施形態では、表面構造が支持基板と接合する場所でのナノメートルスケールの表面構造の高さは、約25nm~約5000nmである。いくつかの実施形態では、ナノメートルスケールの表面構造の高さは約250nmである。
【0086】
いくつかの実施形態では、ナノメートルスケールの表面構造は、平方センチメートルあたり約160,000,000~約16,000,000,000個の頂部または先端部を提供して、機能表面を提供するか、またはその上に形成される機能表面を有するような密度で提供される。いくつかの実施形態では、ナノメートルスケールの表面構造は、平方センチメートルあたり約1,600,000,000個の頂部または先端部を提供して、機能表面を提供するか、またはその上に形成される機能表面を有するような密度で提供される。
【0087】
いくつかの実施形態では、機能表面は、表面構造の頂部またはその周囲にある。
【0088】
いくつかの実施形態では、機能表面は、表面構造の頂部またはその周囲にあり、表面構造は、頂部に向かって先細りであり、かつ/または支持基板の上面に平行な平面に沿って実質的に三角形の断面を有する。
【0089】
いくつかの実施形態では、機能表面は、表面構造の頂部またはその周囲にあり、各表面構造の頂部の幅は、約1nm~約5000μmである。いくつかの実施形態では、約10nm~約10μm、または約20nm~約2μm、または約30nm~約1μmである。いくつかの実施形態では、約1nm~約1000nm、または約1nm~約500nm、または約1nm~約100nm、または約1nm~約50nmである。各表面構造の頂部の幅は、それが支持基板を接合する場所よりも小さい。
【0090】
いくつかの実施形態では、機能表面は、表面構造の頂部またはその周囲にあり、表面構造の頂部は、約5nm~約1000μm、約10nm~約1000μm、約25nm~約1000μm、約5nm~約750μm、約5nm~約500μm、約5nm~約100μmの頂部間の長さで、互いに分離されている。いくつかの実施形態では、頂部間の長さは、約5nm~約2000nm、約5nm~約1000nm、約5nm~約500nmである。
【0091】
いくつかの実施形態では、支持基板は、金属、複合材料、ポリマー、シリコンまたはガラスを含む。
【0092】
いくつかの実施形態では、支持基板は、単層または多層を含む。いくつかの実施形態では、支持基板は非導電性、例えば非導電性ポリマー、ガラスおよび/またはシリカである。いくつかの実施形態では、支持基板は導電性である。いくつかの実施形態では、導電性材料は、ドープされたSi、半導体、金属、導電性ポリマー、炭素負荷ポリマーまたは複合材料である。いくつかの実施形態では、金属は、Ni、Cu、Al、Pt、Au、Ag、Mg、およびMnを含む遷移金属である。
【0093】
いくつかの実施形態では、表面構造は支持基板と一体である。いくつかの実施形態では、表面構造は、支持基板と一体的に形成される。いくつかの実施形態では、表面構造は、支持基板と同じ材料である。いくつかの実施形態では、表面構造および支持基板は金属を含む。いくつかの実施形態では、支持基板および表面構造は、複合材料、ポリマー、シリカまたはガラスを含む。
【0094】
いくつかの実施形態では、支持基板および表面構造は第1の材料を含み、均一なサイズの表面構造はその上にコーティングされた層をさらに含む。
【0095】
いくつかの実施形態では、支持基板は、約50μm~5mmの厚さを有する。いくつかの実施形態では、支持基板は、約1mm~2mm、約85μm~約2mm、約85μm~約1mm、約1mm~約4mm、約1mm~約3mm、約85μm~約2mmの厚さを有する。
【0096】
いくつかの実施形態では、電極触媒は、支持基板の上面に堆積される。いくつかの実施形態では、電極触媒は、表面構造の上面に堆積される。いくつかの実施形態では、電極触媒は、表面構造の先端部に堆積される。いくつかの実施形態では、電極触媒は、表面構造および/または支持基板とは異なる材料である。
【0097】
いくつかの実施形態は、電極触媒は、上から見たときに、表面の約50%未満~約0.000001%未満に堆積される。いくつかの実施形態では、電極触媒は、表面積の約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、約10%未満、約1%、約0.01%未満、約0.001%未満、約0.0001%未満、約0.00001%未満、約0.000001%未満に堆積される。いくつかの実施形態では、電極触媒は、上から見たときに、触媒の約0.0000001%または約0.000001%~約50%の表面積に堆積される。可能な最小の表面積は、支持構造上の単一の原子であることは明らかであろう。
【0098】
いくつかの実施形態では、電極触媒は、上から見たときに、表面の約50%未満~約0.0001%未満に堆積される。いくつかの実施形態では、電極触媒は、上から見たときに、表面の約50%未満~約0.1%未満に堆積される。いくつかの実施形態では、電極触媒は、上から見たときに、アレイの表面の約30%~約0.0001%未満に堆積される。
【0099】
いくつかの実施形態では、電極触媒は、実質的に一定の厚さの層を備える。いくつかの実施形態では、電極触媒の厚さは、約1nm~5μmである。いくつかの実施形態では、約20nm~500nm、または約50nm~100nm、約50nm~500nm、約50nm~300nm、約1nm~約3μm、3nm~約5μm、約2nm~約4μmである。いくつかの実施形態では、電極触媒の厚さは、0nm超であるが、約1nm未満である。
【0100】
いくつかの実施形態では、2つ以上の表面構造の上面の電極触媒は、アレイ内で電気的に接続されている。
【0101】
あるいは、電極触媒は、表面構造(複数可)と一体である。いくつかの実施形態では、電極触媒は、支持構造と一体的に形成される。いくつかの実施形態では、電極触媒は、表面構造(複数可)と同じ材料である。
【0102】
いくつかの実施形態では、電極触媒は、触媒効果を生じる材料を含む。いくつかの実施形態では、電極触媒は導電性材料を含む。導電性材料には、炭素(すなわち、グラファイト、グラフェン、炭素繊維、カーボンナノチューブ、フラーレン)、導電性ポリマー(すなわち、ポリピロリドン(PPy))、ポリアセチレン、金属、合金、有機金属錯体、または他のこのような導電性材料が挙げられ得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、電極触媒は、銅、遷移金属、合金、有機金属錯体、遷移金属を含む有機金属錯体、酸化または還元することができる有機材料を含む。いくつかの実施形態では、遷移金属は、Ti、V、Cr、Fe、Co、Cu、Zn、Ga、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Ro、Pd、Ag、Cd、In、Sb、Sn、Cs、Ba、La、Ce、PR、Nd、W、Os、Ir、Au、Pb、Bi、Ra、U、Pt、Au、およびNiから選択される。いくつかの実施形態では、電極触媒はニッケルを含む。いくつかの実施形態では、有機金属錯体および/または遷移金属を含む有機金属錯体は、遷移金属を有する、フェロセン、ポルフィリン、フェナントロリン、ポルフィリンイミダゾール、トリスピリジルアミン、および/またはトリアゾール(すでに、遷移金属とポルフィリンを含むフェロセンは、遷移金属を任意に含んでもよい)から選択される。
【0103】
いくつかの実施形態では、導電性溶液は、水および/または有機溶媒を含む。いくつかの実施形態では、有機溶媒は、アルコール(例えば、エタノール)、エーテル、アセトニトリル、酢酸エチル、アセトンおよび/またはDMSOから選択される。
【0104】
いくつかの実施形態では、導電性溶液は電解質を含む。いくつかの実施形態では、電解質は、緩衝液(複数可)、塩(例えば、NaCl)、または酸および塩基溶液(例えば、H2SO4、HNO3、NaOH)から選択される。いくつかの実施形態では、溶液は、アルカリ金属塩化物イオンおよび銅2+イオンを含む緩衝液を含む。
【0105】
いくつかの実施形態では、活性種は、気体または液体の状態である。いくつかの実施形態では、活性種は、導電性溶液を通過するガスである。いくつかの実施形態では、ガスは、水素、酸素、窒素、メタン、一酸化炭素および/または二酸化炭素もしくは空気、またはそれらの任意の2つ以上の混合物から選択される。いくつかの実施形態では、活性種は液体である。いくつかの実施形態では、液体は、水、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、アンモニア、液体短鎖炭化水素(例えば、最長C21)である。活性種が水である場合、導電性溶液は、好ましくは電解質または有機溶媒を含む水でもある。有機溶媒は、溶解性を助けるために、または酸化もしくは還元プロセスに関与するために添加されてもよい。
【0106】
対電極は、電荷平衡化レドックス(酸化または還元、アノードまたはカソード)プロセスを実行し、作用電極で発生するレドックス(酸化または還元、アノードまたはカソード)プロセスを補完する。
【0107】
いくつかの実施形態では、好ましくは、電荷平衡レドックス(酸化または還元のいずれか)プロセスを実行し、作用電極で生じるレドックス(酸化または還元のいずれか)プロセスを補完する対電極は、不活性導電性材料、導電性材料、金属、Pt、金、炭素、グラファイト、グラフェン、炭素繊維、カーボンナノチューブ、フラーレン、導電性ポリマーPPy、PA、PAセチレン、または作用電極と同じ材料からなる群から選択される材料から形成される。対電極は、この本文書内で定義されているように、布、平面の、有孔シート、繊維、メッシュ、または3Dアレイを含む、様々な形、形状、およびサイズのものであり得る。この文書で記載されているように、3D構造は、作用電極で行われるものと同様の方法で、対電極の触媒作用を含むレドックス特性を強化することが期待されている。
【0108】
いくつかの実施形態では、対電極構造は、平面構造またはアレイ構造である。例えば、ピラミッドのアレイ、円錐のアレイ、ピラミッド型、円錐型、または隆起型である。いくつかの実施形態では、対電極は、本明細書に記載されているような表面構造を備える。いくつかの実施形態では、対電極の形状は、表面構造の形状を反映する。いくつかの実施形態では、対電極は、電極触媒アレイとは相反する方法で表面構造を備える。いくつかの実施形態では、対電極は、サイズ、形状、またはパターンが電極触媒アレイとは異なる表面構造を備える。
【0109】
いくつかの実施形態では、対電極は、(a)表面構造に対して固定された向きであるか、または(b)電極アレイに取り付けられているか、または(c)アレイの表面構造(複数可)間の距離の差を最小にする向きで保持されているか、または(d)アレイの上面の上にあるか、または(e)作用電極の先端部を反映する一連の先端部などの、3D作用電極上の電荷密度(電圧または電流)の配置を促進するように構成された3D表面の特徴部含む。
【0110】
いくつかの実施形態では、対電極は、表面構造に対して平行である。
【0111】
対電極での反応は、任意の酸化還元プロセスであり得る。例えば、表面構造での還元を補完するためのアルコール、水、または他の成分の酸化であり、または逆もまた同様である。
【0112】
いくつかの実施形態では、対電極は、不活性導電材料、導電材料、金属、Pt、Au、炭素、グラファイト、グラフェン、炭素繊維、カーボンナノチューブ、フラーレン、導電性ポリマーPPy、PA、PAセチレン、または電極触媒アレイと同じ材料からなる群から選択される材料から形成される。いくつかの実施形態では、対電極は、この文書内で定義されているように、布、平面の有孔シート、繊維、メッシュ、または3Dアレイである。この文書で記載されているように、3D構造は、作用電極で行われるものと同様の方法で、対電極の触媒作用を含むレドックス特性を強化することが期待されている。
【0113】
いくつかの実施形態では、対電極と電極触媒との間に確立される電位差は、約-2V~+2Vである。いくつかの実施形態では、約-1V~+1Vである。いくつかの実施形態では、電位差は約-200mV~-1Vである。好ましくは、電位差は、酸化については、約0mV~1.8Vである。
【0114】
いくつかの実施形態では、電極触媒と対電極との間に確立される電流は実質的に一定である。
【0115】
いくつかの実施形態では、電極触媒と対電極との間に確立される電流は、活性化電位と不活性化電位との間でパルス化される。いくつかの実施形態では、電極触媒と対電極との間に確立される電流は、この範囲内の活性化電位と不活性化電位との間でパルス化される。
【0116】
一実施形態では、溶液は参照電極をさらに備える。
【0117】
いくつかの実施形態では、電極触媒アレイは、結合層を含み、結合層は、電極表面の非機能表面よりも著しく増加した密度で機能表面に存在するか、または、電極触媒アレイの非機能表面上に、表面構造上の機能表面上の位置よりも著しく増加した密度で存在する。
【0118】
いくつかの実施形態では、結合層は自己組織化単分子層(SAM)を含む。いくつかの実施形態では、SAMは、電極触媒の上面に存在する。いくつかの実施形態では、SAMは、支持基板の上面に存在する。いくつかの実施形態では、SAMは、表面構造またはその一部がその上に露出した機能表面とともに突出するように、表面構造の周りに存在する。
いくつかの実施形態では、SAMは、アルカン、アルケン、アルキンまたは芳香族であり得るC6~C24の炭素鎖を含む長鎖分子を含む。いくつかの実施形態では、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19、C20、C21、C22、C23、またはC24もしくはこれらの混合物である。
【0119】
いくつかの実施形態では、SAMは、C10以下の炭素鎖を含む短鎖分子を含む。いくつかの実施形態では、C1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10、もしくはこれらの混合物である。
【0120】
いくつかの実施形態では、SAMは、アルカン、アルケン、アルキンまたは芳香族であり得る長鎖(上記のC10~C24)および短鎖(上記のC1~C10)分子を含む混合SAMである。いくつかの実施形態では、混合SAMは、(上記のように)C6~C24の炭素鎖を含む長鎖分子と(上記のように)C1~C5の短鎖分子と、を含む。
【0121】
いくつかの実施形態では、長鎖SAMは、アジド、アミン、カルボン酸塩、アルデヒド、ケトン、エステルまたはカルボン酸またはこれらの混合物からなる群から選択される分子を含む。このような分子は、SAMの骨格鎖内に存在している。いくつかの実施形態では、短鎖SAMは、アルカン、アジド、アミン、ヒドロキシル、カルボン酸塩、またはカルボン酸もしくはこれらの混合物からなる群から選択される分子を含む。このような分子は、SAMの骨格鎖内に存在している。
【0122】
一実施形態では、SAMは、C6を超えるカルボン酸分子を含む長鎖分子と、ヒドロキシル分子を含む短鎖分子との混合物を含む。上記の実施形態では、SAM長鎖分子は、好ましくは、C6~C24分子から選択される。
【0123】
いくつかの実施形態では、SAMは、電極触媒アレイ上に存在するが、上で定義されたような表面構造(機能表面を含む)の上部には存在しない。
【0124】
いくつかの実施形態では、SAMは、C5以下の炭素鎖を含む短鎖分子を含み、表面構造(複数可)の上部は、(a)SAMを含まないか、または(b)SAMが、電極触媒層と対電極との間に電流を確立することにより除去されるように適合されているかのいずれかである。
【0125】
いくつかの実施形態では、SAMは、C6~C24の炭素鎖を有する長鎖SAMを含み、表面構造(複数可)の上部は、(a)SAMを含まないか、または(b)電極触媒層と対電極との間に電流を確立することにより除去されるように適合されているSAMを含むかのいずれかである。
【0126】
一実施形態では、電極アレイは、表面構造の上部および下部にSAM結合層を含み、活性種と機能表面との接触は、電荷密度(電圧または電流)が集中している表面構造の上部からのSAM結合層の選択的な除去をもたらす。この実施形態では、本方法は、機能表面における電極触媒層の現在露出している部分上にさらなる結合層を選択的に堆積する工程をさらに含む。
【0127】
いくつかの実施形態では、SAMは、末端がメチルであるアルカンチオール、アジド、チオール、アルデヒド、シアノ、ジアゾニウム、アミン、アルコール、シラン、ホスホン酸およびカルボン酸からなる群から選択される。
【0128】
特定の実施形態では、SAMは以下を含む:
直鎖およびアミドとエステル結合で構成される鎖の両方を含む、R-(芳香族)n-SH、アルカン、アルケン、アルキンまたは芳香族、
R-(CH2)n-SH、R-(CH2)n-NH2、または
R-(CH2)n-Si(OR’)3であり、
式中、R=アルキル、カルボン酸、アミン、アルデヒド、アルコール、アジド、キノンまたはテトラジンであり、
R’=Me、MeOH、Cl、(ハロゲン化物)、Et、EtOHであり、
式中、n=1~50である。
【0129】
いくつかの実施形態では、導電性溶液は、結合層に結合することができる溶質反応物を含む。いくつかの実施形態では、SAMは、溶質反応物と反応する官能基を含む。いくつかの実施形態では、官能基は末端官能基である。いくつかの実施形態では、SAMは官能基で官能化される。いくつかの実施形態では、官能基は、アジド、カルボン酸、アミン、アルコール、エステル、ケトン、シアノおよびアルデヒドからなる群から選択される。
【0130】
いくつかの実施形態では、第1の態様の工程a)で提供される電極アレイは、支持基板上に堆積され、表面構造の下部を覆い、かつ上部が露出された不動態化層を備える。
【0131】
いくつかの実施形態では、電流または電圧を印加して電荷密度(電圧または電流)を集中させる工程は、表面構造の上部の機能表面上の不動態化層の除去をもたらす。
【0132】
いくつかの実施形態では、不動態化層は、対電極と電極表面との間に還元電位または酸化電位を印加することによって除去される。いくつかの実施形態では、電位は、銀/塩化銀参照電極に対して-2V~+2Vであり、いくつかの実施形態では、-200mV~-1Vであり、いくつかの実施形態では、-400mVである。
【0133】
いくつかの実施形態では、不動態化層は、電極表面に結合する官能基を含む。一実施形態では、不動態化層は、本明細書で記載および定義されるような結合層を含む。一実施形態では、不動態化層はSAMを含む。いくつかの実施形態では、SAMは、硫黄原子によって電極表面に連結している。いくつかの実施形態では、電極表面は金である。いくつかの実施形態では、SAMは、官能基、例えば、アルキル鎖をさらに含み、いくつかの実施形態では、官能基上のアミンに連結されたカルボン酸をさらに含む。
【0134】
先端部の間の不動態化層は、スピンコーティング、塗装、スプレーコーティングによって堆積されるフォトレジストであり得る。この層が乾燥または架橋すると、不動態化層になり、電流を集中させるのに役立つ。理想的には、この層はラッカーまたはSU8などのUV架橋フォトレジストである。いくつかの実施形態では、不動態化層、または保護層は、表面の非活性位置、例えば、縁部、隆起部、および/または頂部以外の位置、またはこのような領域のすぐ隣にある触媒材料を含むことができる。
【0135】
いくつかの実施形態では、結合層は、機能表面、表面構造、不動態化層、または支持基板のうちの少なくとも1つの上に存在する。
【0136】
いくつかの実施形態では、この方法は燃料電池で実行される。
【0137】
本発明が関係する当業者には、添付の特許請求の範囲において定義される本発明の範囲から逸脱することなく、構造の多くの変更および本発明の広く異なる実施形態および用途が示唆されるであろう。本明細書の開示および説明は、単に例示的なものであり、いかなる意味でも限定することを意図するものではない。
【0138】
本発明のさらなる態様は、そのすべての新規な態様において考慮されるべきであり、本発明の実際の適用の少なくとも1つの例を提供する以下の説明を読み取れば、当業者に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0139】
本発明の実施形態を、ここで、添付の図面を参照して、例としてのみ説明する。
図1】三角形の断面を有する本発明による電極アレイの断面図を示す。
図2a】3Dピラミッド型電極表面からのSAMの急速な電気化学的脱着を示す。
図2b】平面電極表面からのSAMのより遅い電気化学的脱着を示す。
図2c】3Dおよび平面電極表面におけるSAMの電気化学的脱着の速度論的トレ ースを示す。
図3】表面構造の群の頂部でのPt堆積を例示するSEM画像を示す。
図4a】表面構造の群の頂部でのPt堆積を例示するSEM画像を示す。
図4b】表面構造の群の頂部でのPt堆積を例示するSEM画像を示す。
図5a】平面電極触媒での純粋な2電子プロセスから、絶縁層がある場合とない場 合のマイクロピラミッド型構造の電極触媒での部分的2電子および部分的4電子プロ セスへの、ナノピラミッド型構造の電極触媒での純粋な4電子プロセスへのO2還元 反応の機構の体系的な変化を示す。
図5b図5aの例で使用されている様々な金電極を図5bに表示する。
図6】バックグラウンドCVに電流がないこと(上部の線)と、CO2の導入によ る触媒電流の増加(下部の線)を示す。
図7a】平面および3Dピラミッド型の電極表面上の有機金属触媒(フェロセン) のCVを示す。
図7b図7aのCVに対応するターフェルプロットを示す。
図8】平面および3Dピラミッド型金電極による酸素還元CVを示す。
図9】様々なPt被覆金電極についての1600rpmにおける線形掃引ボルタン メトリープロットを示す。
図10】平面およびナノピラミッドに堆積した30%Pt/Cによる酸素還元を示 す。
図11】硝酸塩から窒素への還元における三次元性の効果を示す。
図12】ピラミッド型電極表面(a:上のプロット)および平面電極表面(b:下 のプロット)にそれぞれ固定化されたフェロセンのスキャン速度依存性を示す。
図13】フェロセンの酸化と還元の両方についてのピーク電位対走査速度を示す。
図14】Pt被覆ピラミッド型表面の回転数ペンダントを示す。
図15】ピラミッド型および平面表面の両方についてのKoutecky-Lev ichプロットを示す。
図16】3D電極アレイを作製するための段階的なプロセスを示す。
図17a】シリコンマスターのSEM画像を示す。
図17b】シリコンマスターから生成されたニッケルマスターのSEM画像を示す 。
図17c】エンボス加工された金被覆アレイのSEMを示す。
図18】A)平面対50μmのピラミッド、およびB)平面対250nmのピラミ ッドについての同一条件下での水素ガスの生成を示す。ピラミッドの各々のSEM画 像を、下のC(50μmのピラミッド)およびD(250nmのピラミッド)に示す 。
図19】アルゴン(上部の線)とアルゴン+窒素(下部の線)の両方でバブリング されたPBS緩衝液のCVを示す。
図20】CO2の還元を示す。A)はアルゴンについてのCV(上部の線)および アルゴン+CO2についてのCV(下部の線)を示し、B)およびC))は、ヘッド スペース内の生成物の分析を示し、COおよびギ酸の出現を確認している。
図21】平面、Pt-ピラミッド(50μm)およびPt-ナノピラミッド(25 0nm)での酸素の還元を示す。
図22】サイクリックボルタンメトリーを使用した、Pt被覆ナノピラミッド表面 による長時間のO2還元を示す。
図23】クロノアンペロメトリーを使用した、Pt被覆ナノピラミッド表面による 長時間のO2還元を示す。
図24】A)5パルスおよびB)10パルスを使用した、ピラミッドの頂部でのP t触媒の制御された堆積を示す。
図25】表2で言及されている構造を示す。
図26】表2で言及されている構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0140】
定義
「結合する(attach)」または「結合する(bind)」とは、共有結合、静電結合、または種が何らかの方法で支持体に結合している他の結合モードを意味する。結合は直接的であっても、または他の種を介したものであってもよい。
【0141】
「先細りの」とは、広い表面構造から狭い表面構造に移動することを意味する。
【0142】
「堆積された」とは、表面上に形成されたことを意味し、任意の形態の形成、層化、または生成を意味する。一実施形態では、堆積は、スパッタリング、電子ビームまたは熱蒸発によって達成される。好ましくは、堆積された層は、それが堆積される層に対してある程度の接着力を有する。この接着は、共有的、静電的であり得るか、またはファンデルワールス力を含む場合がある。
【0143】
電極触媒に関して「実質的に一定の厚さ」は、電極触媒が、支持基板または結合層のその被覆の範囲にわたって大幅に変化しないことを意味する。センサーの機能に実質的に影響を及ぼさない層の厚さの意図しない変動は、実質的に一定の厚さという用語によって組み込まれることが意図されている。
【0144】
「備える(comprise)」、「備えている(comprising)」などは、文脈上明白に他の意味に解釈すべき場合を除いて、排他的または網羅的な意味ではなく、包括的意味で、すなわち「含むが、それに限定されるものではない」と解釈されるべきである。
【0145】
本明細書で言及される「表面構造」および「機能表面」という用語は、単数または複数の構造/表面を指すことが意図されている。
【0146】
表面構造の「幅」は、支持基板の上面に実質的に平行な平面に沿って断面が取られる表面構造の断面積にわたる最大距離によって測定される。幅が言及されている場合、平行平面が発生する表面構造上の点も記述される(例えば、支持基板と表面構造との間の接合部において)。
【0147】
「触媒」は、化学反応の速度を増加させる種を指す。
【0148】
活性種に関して「電気化学的に修飾された」とは、活性種が還元または酸化、すなわち電子の獲得または喪失を受けることを意味する。
【0149】
「溶質反応物」は、触媒活性種により触媒される反応に関与する、溶液中に見られる反応物を意味する。溶質反応物は、好ましくは別の導電性溶液(すなわち、活性種を含む導電性溶液とは異なる)中にあるか、または同じ溶液中にあってもよく、活性種と反応すると、センサーよって検出される標的分子と結合/反応するように働く。
【0150】
「結合層」は、電極アレイの表面に結合した分子の層を含む。結合層は、架橋ポリマー、フォトレジストまたは自己組織化単分子層(SAM)から形成されてもよい。好ましくは、架橋ポリマーは、SU-8などのエポキシベースのネガティブフォトレジストである。結合層は、当業者に既知である手段によって、例えば、スピンコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、ワイピングまたは塗装によって、電極アレイの表面上に堆積させることができる。代替の実施形態では、結合層は、好ましくは本明細書に記載の方法に従って、結合層(すなわち、活性種)への前駆体の電気化学的修飾によって電極アレイの表面に結合される。
【0151】
電流または電圧に関して「集中する」とは、電荷密度(電圧または電流)が、表面上の別の位置と比較して、表面上の集中した位置でより強いことを意味する。表面上の電荷密度(電圧または電流)は、当業者に既知である方法に従って測定することができる。しかしながら、一実施形態では、電荷密度(電圧または電流)は、モデリングによって測定され、次いで、フルオロフォアの直接結合、または表面への白金堆積に向けられる。
【0152】
「対電極」は、電極層から溶液を通る電流の流れを促進する任意の導電性の実在物であり得る。一実施形態では、対電極は、溶液内に保持されたワイヤーまたは他の形態の電極構造を備える。好ましくは、対電極は、金属、Pt、金、ニッケル、銅、鉄、炭素、グラファイト、グラフェン、炭素繊維、カーボンナノチューブ、フラーレン、導電性ポリマーPPy、PA、ポリセチレン、ステンレス鋼からなる群から選択される材料から形成される。対電極は、固体層または適切な支持体、例えばポリマー、ガラス、金属上に堆積された導電層から作製され得る。対電極は、ベアメタル(Au、Pt、ステンレス鋼、銅)またはAuもしくはPtメッキされた基板(金属、ポリマー、またはガラス)であってもよく、3D作用電極上の電荷密度(電圧または電流)の配置を促進するようなに構成されている。例えば、これは作用電極の先端部を反映する一連の先端部であってもよい。
【0153】
「活性化すること(activating)」または「活性化する(activate)」とは、活性種を不活性型から反応型に変換することを意味する。したがって、「電気化学的活性化」とは、電極に電流を印加することによって活性種を酸化または還元することにより、活性種を反応型に変換することを意味する。
「活性化電位」とは、カップリング/結合/修飾反応を開始するために必要な電圧(+2V~-2Vの典型的な範囲での酸化または還元)を意味する。通常、クリックの還元活性化電位は-500mV~-100 mVである。
【0154】
「不活性化電位」とは、カップリング/結合/修飾反応を停止するために必要な電圧を意味する。
【0155】
「活性種」とは、電気化学的修飾を受ける可能性のある溶液中に存在する実在物を意味する。一実施形態では、活性種は、触媒または触媒前駆体である。別の実施形態では、活性種は、結合層の成分である。別の実施形態では、活性種は、機能表面に結合することができる荷電粒子である。別の実施形態では、活性種は、溶液中の標的分析物を検出することができる結合剤である。
【0156】
「酸化」とは、電子の損失を伴う化学反応を意味する。したがって、「酸化的」とは、化学反応における電子の損失を促進することを意味する。
【0157】
「還元」とは、電子の獲得を伴う化学反応を意味する。したがって、「還元的」とは、化学反応における電子の獲得を促進することを意味する。
【0158】
「パルス」または「パルシング」とは、電圧または電流を活性化電位から不活性化電位に調節することを意味する。パルシングは、規則的または断続的であってもよい。
【0159】
「自己組織化単分子層(SAM)」は、官能基で終わる尾基に連結された頭基を含む分子集合体を意味する。
【0160】
機能表面からの実在物の除去に関する「選択的除去」とは、電流が集中していないアレイ上の別の表面と比較して除去が強化されることを意味する。例えば、SAMの除去は、他の表面と比較すると、より速い速度で発生するか、または実在物のより高い濃度が除去される。この表現は、除去が完了したこと、または除去が他の表面で発生の程度が低いことを意味するものではない。
【0161】
機能表面上の実在物の堆積に関する「選択的堆積」とは、電流が集中していないアレイ上の別の表面と比較すると、堆積が強化されることを意味する。例えば、SAMの堆積は、他の表面と比較して、より速い速度で発生するか、または実在物のより高い濃度が堆積される。この表現は、他の表面での堆積の程度が低いという可能性を排除するものではない。
【0162】
「および/または」は、「および」もしくは「または」、またはその双方を意味する。
【0163】
名詞に続く「(s)」は、名詞の複数形および/または単数形を意味する。
本明細書に開示された数値範囲(例えば、1~10)の言及はまた、その範囲内のすべての有理数(例えば、1、1.1、2、3、3.9、4、5、6、6.5、7、8、9、および10)への言及およびその範囲内の任意の範囲の有理数(例えば、2~8、1.5~5.5、および3.1~4.7)への言及をも包含することが意図される。
【0164】
説明
本発明者らは、本発明の方法が通常は高価な触媒材料に関連するコストの削減を可能にする方法であることを見出した。コストの削減は、以下のうちの1つ以上によって実現される。
1.触媒材料の活性を高めること、
2.必要な触媒材料の量を減らすこと、
3.有効性を損なうことなく、よりコストの低い、より活性の低い触媒に置き換えることができること、
4.反応を起こすのに必要なエネルギーを下げること
5.交換電流密度を増加させること
6.反応物と触媒との間の物質移動速度を高めること
7.触媒からの生成物(複数可)の物質移動速度を高めること
【0165】
本発明者らは、電極の表面を修飾して表面構造のアレイを有する電極触媒を形成することにより、電流または電圧が導電性溶液に曝された電極触媒を通過するとき、電荷密度(電圧または電流)が表面構造の上部(または先端部)に向かって集中することができることを見出した。これにより、電極触媒作用を受けている反応の劇的な改善をもたらすことができる。本発明者らが、速度論的向上、すなわち、触媒作用の速度の劇的な増加および熱力学的向上(例えば、100倍を超えて増加する水からの水素の生成)、すなわち、同様な平らな電極触媒を超えてレドックス触媒反応を駆動するのに必要なエネルギーの劇的な減少を観察しただけではなく、予期せぬことに、本発明者らは反応機構の変化も観察した。例えば、水性アルカリ媒体中での電気化学的酸素還元は、純粋な過酸化物(H2O2)を生成するのが一般的である。しかしながら、本発明の方法を使用すると、驚くべきことに、水が生成された。可能な還元経路は次のとおりである:
O2+2e-+2H+→H2O2 0.7V
O2+4e-+4H+→2H2O 1.2V
【0166】
本発明の方法は、驚くべきことに、より効率的な4電子プロセスを促進する(実施例3を参照)。これは、エネルギー損失の低減、および/または速度決定工程としてのO2還元に関する問題の克服をもたらす。これは、例えば燃料電池で使用される場合に特に有利であり得、これが電池性能の向上をもたらすことができるためである。
【0167】
この4電子経路は、ナノ表面構造を使用する場合にほぼ例外なく見られるように思えたが、特にマイクロ表面構造を使用する場合にも見られた。
【0168】
この方法を適用することができるさらなるレドックス反応としては、
水からの水素発生、
水からの酸素発生、
水素酸化、
二酸化炭素から一酸化炭素にする反応、
二酸化炭素からメタノールにする反応、
二酸化炭素からカルボン酸(例えば、ギ酸)にする反応、
二酸化炭素からアルデヒドおよび/またはケトンにする反応、
二酸化炭素からメタン、エタン、プロパン、および/または最大でC21の高次炭素鎖にする反応、
メタノールへのメタン酸化、
窒素からアンモニアにする反応、
アンモニアを水素と窒素とに分解すること、が挙げられるが、これらに限定されない。
【0169】
本発明の方法の用途には、(限定されないが)電極、電池、燃料電池および/または水素製造が挙げられる。
【0170】
標準電極には、触媒が表面に固定化された導電性固体支持体が含まれ、導電性固体支持体の例には、次のものが挙げられるが、これらに限定されない:
・金属被覆ポリマー、ガラスまたはシリコン
・カーボンメッシュ
・炭素質材料(繊維、バルカン、パウダー、ガラス質、端面、基底面、フラーレン、ナノチューブ、グラフェン)
・有孔および無孔の金属シート
・ITOまたはFTO被覆シート(ポリマー、ガラス、シリコン)
・導電性ポリマー
【0171】
発明者らは、触媒作用が因子の組み合わせに依存していると考えている:
1.触媒作用部位へのおよび触媒作用部位からの反応物および生成物の拡散
2.電子の供給:
a.触媒作用部位への電子の供給を必要とする酸化プロセス
b.触媒作用の部位からの電子の除去を必要とする還元プロセス
3.触媒作用の部位での電圧が、触媒プロセスを実行するのに十分な大きさであること
4.反応物と触媒間との間の容易な電子移動、
5.変換のための活性化エネルギーを下げること
6.使用されている触媒材料。
【0172】
三次元性は、制御可能な方法で上記を達成するためのプラットフォームを提供し、3D構造の頂部に直接堆積するか、または先端部を取り巻くマトリックスに懸濁する化のいずれかの既存の触媒の性能を向上させる。これにより、以前はアクセスできなかった多電子移動変換(酸化的または還元的)へのアクセスが可能になり、同じ触媒を使用して単一の出発物質からより広範囲の生成物を制御可能に製造することができる。
【0173】
当業者には明らかなように、本発明の説明が活性種および対電極の両方を含む溶液に言及する場合、これは、その中に対電極位置を有する溶液を指す。
【0174】
理論に縛られることを望むものではないが、本発明者らは、観察された速度論的および熱力学的速度の増加、先端部の上部での電極触媒の反応性の劇的な増加、および/または代替の反応経路が、おそらく以下の機構のうちの1つ以上に起因すると考えている:
1.高密度電圧と電流分布との組み合わせにより、無駄な電圧が少なくなり(すなわち、頂部の電圧が効果的に高くなることで、抵抗が低くなる)、反応性の高い電子が生成されること。
2.ホットエレクトロンがプラズモン効果を介して生成され、電子注入がより簡単になること。
3.より高い電圧、より高い電流密度、より低い抵抗、および触媒種の過給状態を作り出す触媒種のより迅速な拡散の複合効果。
4.電位場、濃度勾配、温度、およびpHなどの定数に影響を与える電磁効果と上記との組み合わせ。
5.有効先端部サイズまたは粒径が小さいほど増加する量子効果が、ホットエレクトロン環境内で達成され、先端部環境によって引き起こされること。その結果、ホットエレクトロンの電流密度が増加し、反応が促進される。この量子効果は、先端部の寸法が小さくなるとほど増加する。
6.上記の環境と小さな表面有効面積との迅速な拡散が、基板の結合モードを変更し、反応性の向上をもたらすこと。
7.上記の組み合わせによる「無駄なエネルギー」の削減によるIR降下の軽減、したがって反応のエネルギーコストの削減。
8.上記の効果の組み合わせによって引き起こされる環境による溶液抵抗の減少。
9.基板の結合の向きを改善する量子効果
10.基板の結合モードの変化による量子効果であって、電流と電位密度とが異なるため、より小さい表面積において基板(例えば、H+)が高くなること。
11.触媒プロセスの活性化エネルギーを減らすこと
12.触媒の状態密度を変えること
13.平衡プロセスのギブス自由エネルギーを変更すること
14.反応のエンタルピーを増加させ、それにより反応を実行しやすくすること
a.エントロピー効果
b.より高次
15.先端部での高電流密度および/または高温。
【0175】
明らかなように、支持基板から突出している表面構造は、アレイ上に三次元(3D)構造を作り出す。
【0176】
一実施形態では、表面構造(複数可)は、支持基板と一体である。これは、表面構造(複数可)が支持基板と同じ材料で形成され、かつそこから突出していることを意味する。この実施形態では、支持基板の上面は、規則的またはランダムな構成で配置された表面構造のアレイを備えることができる。この実施形態では、電極触媒は、表面構造(およびそれが露出している支持基板)の上面に形成/堆積されてもよく、または電極触媒は、表面構造および/または支持基板と同じ材料であってもよい。一体化された表面構造を有する支持基板は、既知の方法、例えば、熱エンボス加工、CFT加工、射出成形、鍛造、電鋳、リソグラフィ、および他の同様の技術によって形成されてもよい。
【0177】
代替の実施形態では、表面構造は、支持基板とは異なる材料から形成され、支持基板上に堆積または付着される。この実施形態では、表面構造は、電極触媒と一体であり得る。これは、表面構造が電極触媒の一部であり、かつ電極触媒と同じ材料から形成されていることを意味する。
【0178】
あるいは、電極触媒は、表面構造上に堆積または他の方法で形成されてもよく、該表面構造は、支持基板上に堆積され、一体化するか、ないしは別の方法で形成される。様々な材料から形成された表面構造(複数可)を有する支持基板は、既知の方法、例えば、熱エンボス加工、CFT加工、フォトレジストのレーザー加工、鍛造またはリソグラフィ技術、ならびに炭素質材料の成長または蒸着などの堆積技術によって形成されてもよい。
【0179】
電極触媒は、表面構造上に堆積させるか、ないしは別の方法で形成することができることが特に好ましい。本発明者らは、これは、使用する触媒が少なくて済むため、費用効果が高いことを見出した。触媒は、多くの場合、白金および/または金などの高価な材料である。少量の触媒を使用できることは、非常に有益である。本発明者らは、少量の触媒を使用しても、はるかに多くの触媒を使用する平面電極と同じ性能またはそれよりもさらに優れた性能を依然としてもたらすことを見出した。
【0180】
本発明はまた、あるいは代わりに、活性であるが通常はより高価な触媒を、標準条件下では活性がより低いより安価な触媒で置き換える、置換を可能にする。例えば、コストが考慮される場合、触媒は、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、または金の代わりに、銅、チタン、またはニッケルであってもよい。表面構造から活性剤への電子移動の効率が向上すると、ニッケルなどの低コストの触媒を使用して、白金などのより高価な触媒を置き換えることができると考えられている。さらに、表面構造の先端部、頂部、隆起部、および/または縁部に集中している触媒の量、そうでなければ他の構造的特徴部の上に、または構造間の谷に位置し得る外来の触媒の量が最小化され、これもまた、より高価な触媒材料が使用されている場合でも、コスト削減をもたらす。様々な触媒のコストおよび活性を表1に示す。
【表1】
【0181】
いくつかの実施形態では、表面構造の断面積は、支持基板の上面に直交する軸に沿って減少する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの表面構造の上部は、凸状の上面を有する。より好ましい形態では、表面構造は、支持基板の上面に直交する平面に沿った三角形、凸状、半円形、または乳頭状の断面を有する。
【0182】
表面構造の上部は、頂部で約90°以下の角度を有することが好ましく、例えば、表面構造は、1点に向かう。角度が鋭いほど、すなわちポイントが鋭いほど、電極触媒への影響は大きいと考えられている。いくつかの実施形態では、表面構造は、ピラミッド型、円錐形、隆起部、またはこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、表面構造は、支持基板の上面に平行な平面に沿って実質的に三角形、実質的に円形または実質的に正方形の断面を有する。
【0183】
好ましい実施形態では、表面構造は、支持基板上に均一に配置されるが、これは必要に応じて変更することができる。これにより、より予測可能な挙動および結果が得られるため、均一性が好ましい。また、触媒の量は先端部の上部の限られた領域に制限される。これにより、触媒の活性が一定になり、生成物の純度が高くなる。
【0184】
いくつかの実施形態では、機能表面を、限定されないが、電気めっき、電鋳、電着、スパッタリング、電子ビーム、蒸着、熱蒸着、プラズマ蒸着のうちの1つ以上に露出することによって、機能表面(縁部、頂部、先端部、頂部、および/または表面構造の他の表面など)に触媒を制御可能に堆積させることができる。
【0185】
いくつかの実施形態では、制御された堆積は、以下の堆積パラメータの1つ以上を変化させることによって実行され得るが、これらに限定されない:電圧、電流、時間(堆積技術に曝される機能表面の滞留時間、例えば、電気めっき液中に浸した時間)、パルス繰り返し数(電着パルス繰り返し数など)、および不動態化層(不動態化層を使用して表面構造の部分的な表面を露出するなど、これは、例えば、電着の電流密度を変更することができる)。本明細書に記載される任意の製造技術は、例えば、リソグラフィマスキング、SAMのような触媒の堆積を制御するために使用され得ることが理解されるであろう。
【0186】
表面構造は、実質的に均一なサイズであることが好ましい。本発明者らが示したように、表面構造のサイズは、触媒およびレドックス反応生成物の活性に影響を与える。表面構造のサイズが均一であることは、より予測可能かつ再現可能な生成物が得られるため好ましい。表面構造のサイズは、目的の生成物または生成物比に基づいて選択することができる。生成された生成物はまた、実質的に均質であり得る。
【0187】
例示的な実施形態では、表面構造および触媒は、実質的に所定の一次生成物または優先生成物の生成を提供するように調整されてもよい。あるいは、表面構造および触媒を調整して、1つ以上の所定の生成物、例えば、優先または一次生成物、および二次生成物(これも優先であり得る)の生成を提供することができる。同様に、表面構造および触媒を調整して、非優先的な生成物の生成を最小限に抑えてもよい。
【0188】
表面構造は、好ましくは少なくとも1つの対称線を有し、より好ましくは、表面構造は少なくとも2つの対称線を有する。これは、導電性溶液が表面構造の先端部を取り囲むことを可能にするために好ましい。
【0189】
表面構造が支持基板に接合する表面構造の幅は、いくつかの実施形態では、約20nm~約5000μmであり、いくつかの実施形態では、約40nm~約4000μm、約55nm~約3000μm、約75nm~約2500μm、約100nm~約4000μm、約250nm~約3500μm、約20nm~約3500μm、約2nm~約4000μm、約20nm~約2500μm、約20nm~約4000μm、約20nm~約3000μm、約20nm~約2000μmである。いくつかの実施形態では、約5nm~約750μm、約5nm~約500μm、約5nm~約100μmである。特に好ましい表面はナノ構造であるが、所望の生成物に応じて、マイクロ構造も有益である。
【0190】
機能表面は、好ましくは表面構造の頂部またはその周囲にある。表面構造の全体は電極触媒材料で作製され得るが、頂部または先端部が、レドックス反応に触媒効果の大部分を提供している機能表面であると考えられる。好ましくは、触媒の電気化学的活性化は、活性化が電極触媒層上の別の表面位置で起こるよりも、機能表面で実質的に速い速度で起こる。
【0191】
いくつかの実施形態では、機能表面は、表面構造の頂部またはその周囲にあり、表面構造は、頂部に向かって先細りであり、かつ/または支持基板の上面に平行な平面に沿って実質的に三角形の断面を有する。機能表面は、いくつかの実施形態では、表面構造の頂部またはその周囲にあり、各表面構造の頂部の幅は、約1nm~約5000μmであり、いくつかの実施形態では、約10nm~約10μm、または約20nm~約2μm、または約30nm~約1μmである。いくつかの実施形態では、約1nm~約1000nm、または約1nm~約500nm、または約1nm~約100nm、または約1nm~約50nmである。各表面構造の頂部の幅は、それが支持基板を接合する場所よりも小さい。
【0192】
いくつかの実施形態では、表面構造の頂部は、約5nm~約1000μm、約10nm~約1000μm、約25nm~約1000μm、約5nm~約750μm、約5nm~約500μm、約5nm~約100μmの頂部間の長さで、互いに分離されている。いくつかの実施形態では、頂部間の長さは、約5nm~約2000nm、約5nm~約1000nm、約5nm~約500nmである。
【0193】
本明細書の実施形態のいずれかの表面構造(複数可)は、相対表面積を効果的に増加させ、かつ/または同等の寸法の平面上で滑らかな領域と比較して、頂部または先端部のアレイを提供する任意の好適な表面特徴部を包含すると理解されるべきである。表面構造のアレイの基本部分のサイズ、形状、密度、均一性、配置および比率は、例示された実施形態とは異なってもよい。
【0194】
一実施形態では、表面構造は、均一な形状および/または幾何学的形状、密度および/またはサイズを備えることができる。表面構造は、触媒される特定の溶液、または必要に応じて、所望の頂部もしくは先端部の形状、サイズ、密度または均一性に対して頂部もしくは先端部の数またはサイズを提供するなど、所定の特性に従って、形作られ、サイズ調整され、および/または特定の密度で提供されてもよい。
【0195】
代替の実施形態では、表面構造は、不均一なサイズ、形状および/または密度で提供されてもよい。例えば、表面構造は、均一な突起部の高さおよび形状ではあるが、間隔または密度が変化する突起部を備えてもよい。あるいは、表面構造は、高さが変化するが、均一な形状および間隔または密度を備えてもよい。機能表面として機能する頂部または先端部、または頂部(複数)または先端部の配列を提供することにより、あるいはそれらの上に形成された機能表面を有することにより、特定の反応または触媒作用を促進するために、表面構造の形状、サイズ、および/または密度の任意のバリエーションを提供することができることが理解されよう。
【0196】
表面構造の形状の例は、実質的に円錐形、円筒形、またはピラミッド型の尖った形、スパイク形、正方形、五面体、フラットトップ五面体、五角形、または六角形であり得る。好ましい実施形態では、触媒作用のための機能表面として作用するか、またはそれを受容するのに適した頂部または先端部を作り出す任意の形状を使用することができる。
【0197】
好ましい実施形態では、表面構造の均一なアレイは、実質的に均一な生成物または溶液からの触媒作用の結果を有利に提供することができる。これは、各表面構造の均一な隆起部、頂部、および/または先端部のサイズと形状とに起因する可能性があり、各表面構造の頂部または先端部全体に均一な電流密度を提供することができる。
【0198】
代替の実施形態では、表面構造の不均一なアレイは、複数の生成物を生成する能力または溶液からの触媒作用の結果を有利に提供することができる。これは、このような不均一なアレイの様々な形状の表面構造の種々のサイズの頂部または先端部に起因し、頂部または先端部において種々の電流密度をもたらす可能性がある。例えば、表面構造の第1の群はサイズが均一であり、第1の群とはサイズが異なる第2の群も第2の群内でサイズが均一である。
【0199】
図1は、電極触媒アレイ400が,支持基板410、表面構造415および機能表面420を備える本発明の実施形態を示す。機能表面は、電極触媒(例えば、Pt、Au、Ni)から形成され、これは、電極触媒と対電極との間の電流または電圧による電気化学的修飾を介して活性化される。
【0200】
アレイは、任意に、表面構造の頂部に触媒を含み、表面構造間の谷部に助触媒を含む。
【0201】
いくつかの実施形態では、活性種は、機能表面との接触後に電気化学的に修飾され、平面電極と比べての電気化学修飾の熱力学的効率および速度論的効率が、対応する平面電極と比較して改善される。
【0202】
いくつかの実施形態では、電極触媒アレイは、システムの一部を構成する。このシステムには、適切な配線、シール、電極、および試料が機能表面に接触して活性種の電気化学的修飾が行われることを可能にする溶液が含まれている。このシステムは、導電性溶液を機能表面上に保持するための容器、経路(例えば、電極スタック構成の中またはそのための)、または他の容器を備えることが好ましい。アレイシステムはまた、好ましくは、レドックス反応中に導電性溶液と接触するように構成された参照電極および対電極をさらに備える。好ましくは、参照電極および/または対電極は静止しており、機能表面から一定の距離にある。適切なシステムおよび構成は、当業者に既知であろう。
【0203】
当業者には、電極触媒アレイ(「作用電極」)が、酸化反応が行われているアノードとして、または還元反応が行われているカソードとして機能できることは明らかであろう。「作用電極」という用語は、対象の反応が起こっている電極を説明するために、当該技術分野においてしばしば使用される。ただし、対電極がレドックス電荷のバランスを取るために必要とされる。例えば、作用電極で酸化が行われている場合、対電極で還元が行われることになる。
【0204】
いくつかの実施形態では、対電極を使用して、有用なレドックス反応を実行することもできる。このような場合、対電極は、平面構造またはアレイ構造であり得る。いくつかの実施形態では、対電極は、電極触媒アレイに関連して説明されているような、支持基板および表面構造を備える。電極触媒に関連して本明細書に記載されている表面構造のすべての特徴は、対電極に適用することができる。対電極の表面構造は、電極触媒と同じサイズおよび/または幾何学形状であり得るか、または電極触媒とは異なるサイズおよび/または幾何学形状であり得る。
【0205】
あるいは、本発明の任意の実施形態の対電極は、実質的に不活性な導電性材料を備える。この場合、不活性という用語は、電極触媒から対電極への電流の確立および通過後に、対電極の質量および状態が実質的に変化しないことを意味する。したがって、「不活性な」対電極は、溶液の成分に対して実質的に非反応性である。好ましくは、対電極は、金属、Pt、金、ニッケル、銅、鉄、炭素、グラファイト、グラフェン、炭素繊維、カーボンナノチューブ、フラーレン、導電性ポリマーPPy、PA、ポリセチレン、ステンレス鋼からなる群から選択される材料から形成される。対電極は、固体層または適切な支持体、例えばポリマー、ガラス、金属上に堆積された導電層から作製され得る。対電極は、固体層または適切な支持体、例えばポリマー、ガラス、金属上に堆積された導電層から作製され得る。好ましくは、対電極は、ベアメタル(Au、Pt、ステンレス鋼、および/または銅など)、またはAuまたはPtメッキ基板(金属、ポリマー、および/またはガラスなど)である。好ましくは、本発明の任意の実施形態の対電極は、表面構造に対して固定された向きにある。
【0206】
好ましくは、本発明の任意の実施形態の対電極は、電極アレイに取り付けられる。
【0207】
好ましくは、対電極は、アレイの表面構造のそれぞれの間の距離の差を最小にする向きに保持される。好ましくは、対電極の向きは、アレイの上面の上にある。これらの実施形態では、対電極から各表面構造の頂部までの距離は、実質的に等距離である。これにより、対電極の配置に起因する検出ノイズが最小限に抑えられる。
【0208】
したがって、対電極は、(a)表面構造に対して固定された向きにあり、(b)電極アレイに取り付けられており、(c)各表面構造間の距離の差を最小にする向きに保持されているか、または(d)アレイの上面の上にあることが好ましい。
【0209】
一実施形態では、溶液は参照電極をさらに備える。参照電極は、例えば堆積プロセス中に、電流が流れている間の電圧の測定および制御を支援する。参照電極の特性および配置は、当業者に既知であろう。
【0210】
好ましくは、電極アレイは、溶液と接触している参照電極をさらに備える。好ましくは、参照電極は、Ag/AgClから形成された電極を備える。その他のオプションとしては、標準水素電極(SHE)、規定水素電極(NHE)、逆水素電極(RHE)、ダイナミック水素電極(DHE)、標準カロメル電極(SCE)、銅-硫酸銅(II)電極(CSE)、水銀-硫酸水銀電極、Pt、ステンレス鋼、Auが挙げられるであろう。
【0211】
好ましくは、電極触媒で測定された電極触媒と対電極との間に確立される電流は、酸化または還元電流である。これにより、各表面構造の機能表面と接触した後の活性種の電気化学的修飾が容易になる。
【0212】
好ましくは、電流は、対電極と電極表面との間の還元電位または酸化電位を含む。好ましくは、電位は、銀/塩化銀参照電極に対して、約-2V~+2V、約-200mV~-1V、または約-400mVである。
【0213】
好ましくは、本発明の任意の実施形態の電流は、活性化電位と不活性化電位との間でパルス化される。このパルシングにより、機能表面で起こる反応を局所化することができる。パルシングはまた、各表面構造の頂部に付着している活性種の量を最大化し、各表面構造の頂部から溶液への活性種の拡散を最小化する。パルシングの周波数およびそのデューティサイクルは、機能表面の局在化の範囲を画定する。規則的なオン/オフサイクリングが、活性種の非活性化をもたらし、したがって、活性化された活性種が機能表面からアレイ上の他の位置に広がることが最小限に抑えられる。
【0214】
電流が印加される前には、感覚剤は不活性のままであり、溶液内に存在する活性種は感覚剤に結合できない。活性化電位を印加すると、機能表面の電荷密度(電圧または電流)が増加し、したがって、機能表面に拡散するすべての活性種が活性化される。
【0215】
したがって、本発明の任意の実施形態の電流は、活性化電位と不活性化電位との間でパルス化される。
【0216】
上記および下記に引用されているすべての出願、特許および刊行物の開示全体は、もしあれば、参照により本明細書に組み込まれる。
【0217】
本明細書における任意の先行技術への言及は、その先行技術が世界のあらゆる国における努力傾注分野における共通の一般知識の一部を形成することの承認または任意の形態の暗示ではなく、かつそのように解釈されるべきではない。
【0218】
本発明はまた、本出願の明細書で言及または示される部品、要素および特徴からなり、個々にまたは集合的に、該部品、要素または特徴のいずれか、または2つ以上のすべての組み合わせであると広義に言うことができる。
【0219】
前述の説明は、完全体またはその既知の同等物を有する構成要素を参照してきたが、それらの完全体は、個別に述べられているかのように本明細書に組み込まれる。
【0220】
本明細書に記載された現在好ましい実施形態に対する様々な変更および修正は、当業者には明らかであろうことに留意されたい。このような変更および修正は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、また付随する利点を損なうことなく行うことができる。したがって、このような変更および修正は、本発明の範囲内に含まれることが意図されている。
【実施例0221】
材料
PBSパレット、K3FeCN6、K4FeCN6、K2PtCl4およびチオールは、Sigma Aldrichから購入し、そのまま使用した。
【0222】
これらの実験で使用された電極は、金でコーティングされたポリカーボネートであった。電極アレイは、一連のピラミッドがエンボス加工されたポリカーボネートから作製されていた。
マイクロピラミッド型構造は、70μmの先端間(頂部間)間隔および50μm×50μmの基部を有していた。先端部のサイズは1~5ミクロンである。マイクロピラミッドの高さは、約35ミクロンである。
【0223】
ナノピラミッドは、ニッケルスタンパーとして購入し、基部で250nm、先端で約3nm~10nmの一連の先端部で構成されていた。先端部間の間隔(表面構造の頂部から次の表面構造の頂部まで)は約250nmであって、先端部のサイズは3nm~10nmであった。ナノピラミッドの高さは、約250nmである。
【0224】
電気化学的研究
電気化学的研究は、対電極として白金を使用した3電極セットアップを介して、Pine E-chemバイポテンショスタットステーションを使用して行った。この研究で提示されたすべての電気化学ポテンシャルは、漏れのないAg/AgClミニチュア参照電極(eDAQ)を使用して測定および報告される。電気化学セルは、試料に押し付けられた円筒形の穴のテフロンコーン(内径4mm)によって閉じ込められていた。すべての測定は、空気を排除することなく室温で行った。
【0225】
自己組織化単分子膜(SAM)の形成
堆積溶液を、エタノールに所望の量のアルカンチオールを溶解することによって作製した。総チオール濃度を、0.1~1mMに維持した。新たに準備した金基板を、堆積溶液に24時間浸漬させた。チオール単層膜上のいかなる光子酸化も排除するために、光が存在しない状態で堆積を行った。次に、基板をエタノールおよび脱イオン水でリンスして過剰な吸着物を除去し、N2で乾燥して残留溶媒を除去した。
【0226】
実施例1-先端部でのSAMの除去
目的:表面構造を有する電極アレイの電荷密度(電圧または電流)分布を使用して、表面構造の頂部から自己組織化単分子膜を選択的に除去できることを実証することである。
【0227】
方法:SAM被覆電極を、PBS溶液に浸漬させた。脱着を、還元電位(0、2.5秒、5秒、10秒、20秒、40秒、80秒、160秒、320秒、640秒、および900秒の累積持続時間に対して-1.1v)を適用することにより、クロノアンペロメトリーによって実行し、脱着速度を、20mV/秒でK3FeCN6のサイクリックボルタンメトリーを使用して監視した。
【0228】
結果:電極アレイ上の金被覆表面構造は、最大酸化ピークが約20~30分後に見られる平面電極(図2b)に比べて、約10秒後に最大酸化ピークが発生して(図2a)、より速い脱着プロファイルを裏付けた。
【0229】
結論:三次元表面の微分電荷密度(電圧または電流)分布により、平面表面と比較して、表面構造の先端部からのSAMの脱着が大幅に速くなった(図2c)。これは、表面構造の頂部またはその付近の電荷密度(電圧または電流)の集中に起因して発生したこれは、電極触媒の機能表面を修飾するか、または先端部のみ、すなわち電極触媒の機能表面を露出させる機会を提供する。
【0230】
実施例1b-SU8不動態化層
目的:電極アレイの電荷密度(電圧または電流)の分布が、先端部間の谷部にフォトレジストコーティングを適用することで増加できることを実証することである。
【0231】
方法:金被覆電極には、2000~5000rpmでSU8を表面にスピンコーティングし、UVへの曝露によって架橋した。これは、10μm~30μmの範囲の不動態化層の厚さを提供するためのものである。
【0232】
結果:電流集中の結果として、白金が一連のナノ粒子として形成された露出した先端部に電気化学的に還元された(図3を参照)。
【0233】
結論:微分電荷密度(電圧または電流)は、不動態化層によって亢進され、触媒活性を高めることができるフィルムの代わりに、ナノ粒子の形成を誘導した。
【0234】
実施例2:先端部でのPtの官能化
目的:表面構造を有する電極アレイの微分電荷密度(電圧または電流)分布を使用して、構造の頂部において金属を選択的に堆積させることができることを実証することである。
【0235】
方法:金電極触媒層を有する表面構造を、O2プラズマを用いた反応性イオンエッチング(RIE)を使用して洗浄し(2分)、PBS中の塩化白金(IV)溶液(1mM)に浸漬した。Ptメソ粒子の成長を、次のように方形波電位を使用して実行し、還元電位(-500mV)を印加して、表面上のPt(II)をPt(0)に15秒間還元し、その後、酸化電位(300mV)を印加してプロセスを停止させた。このサイクルは、堆積されたPtの所望の量が得られるまで続けられた。
【0236】
結果:図4aおよび4b(不動態化層なし)および図3(SU8不動態化層あり)に示すように、Ptの堆積は主に表面構造の頂部またはその付近で発生した。
【0237】
結論:表面構造の頂部またはその付近での電荷密度(電圧または電流)の分布が高いため、Ptは他の表面よりも高い密度で堆積される。これは、電極触媒の機能表面を修飾する機会を提供する。
【0238】
実施例3:遷移金属によるナノスケールの触媒作用および機構の変化
目的:電極触媒の三次元性が、副産物の生成による電子の「漏れ」を最小化することにより、反応の機構およびその生成物への変換効率を変化させることを実証することである。これは触媒効率を低下させ、反応性の損傷を与える副産物の生成につながる可能性がある。
【0239】
方法:4電極システム(Pt、H2O2コレクター作用電極2、およびO2還元触媒作用電極1としてのAu電極)を、対電極としてのPtおよび参照電極としてのAg/AgClとともに使用し、平面、マイクロピラミッド型およびナノピラミッド型構造化表面によって、酸素還元反応中に生成された過酸化水素のレベルを測定した。コレクター(Pt)の高さを、Pt作用電極をAu電極の表面に到達するまで降下させることによって較正した。このベースラインから、200μmの距離に上昇させた。Pt電極をH2O2酸化に十分な酸化電位に保持しながら、金電極でサイクリックボルタモグラムを実行した。次に、O2還元の効率を、Auに対するPt電流の比率として評価した。
【0240】
結果:様々な金電極(図5bに示すような):平面、マイクロピラミッド、ピラミッドの先端部の間の不活性層によって分離されたマイクロピラミッド(図ではピラミッドラッカーと称される))およびpH13でのナノピラミッドについての結果が、図5aに示されている。典型的には、これらの条件下では、金はアルカリ媒体での電気化学的O2還元において純粋なH2O 2(過酸化水素)を生成することが知られている。したがって、過酸化水素は、このタイプの反応の想定された生成物であろう。三次元性、特にナノ構造、比較的程度は低いがマイクロ構造を導入することが、2電子還元(100%H2O2)から4電極還元(100%H2O)を行うことによって、予期せぬことに機構の挙動を変化させる。これは、過酸化水素の回収率を測定したときにのみ明らかになった。
【0241】
上記の例(図5および5aに示す)は、3D構造のサイズおよび/または形状を変化させると、触媒プロセスからの様々な生成物、例えば、O2から過酸化物または水への生成につながる可能性があることを示している。これは、N2からNH3へ、NO3からN2へ、CO2からHCOOHへなど、以下に挙げるすべての例にも適用できる。
【0242】
選択される先端部のサイズは、所望の生成物に応じる。特徴部のサイズが小さいほど、最終生成物への変換がより効率的になり、特に複数の生成物が考えられる場合は、高エネルギー生成物の濃度が高くなる。
【0243】
構造(機能表面)の頂部および/または先端部および/または縁部は、電極触媒の活性を決定する上で最も重要な要素の1つであると考えられる。頂部のセクションおよび/または先端部のサイズを使用して、所望のレドックス生成物を選択することができると考えられる。一般論として、頂部、もしくは頂部(複数)(または縁部)および/または先端部の角度がより鋭い、またはより小さい、またはより鋭角なほど、電流および電圧の集束が大きくなり、触媒のターンオーバーが高くなる。
【0244】
結論:電極触媒の表面トポグラフィは、反応機構に劇的な変化をもたらす。
【0245】
実施例4:CO2の電極触媒還元
目的:CO2の還元によるナノスケール電極触媒の多様性を実証することである。
【0246】
方法:ナノ構造のAu表面を作用電極、Ptを対電極、Ag/AgClを参照電極として、3電極システムを使用した。溶液を、最初にArガスでパージすることにより脱気し、バックグラウンド測定を、サイクリックボルタンメトリーで行った。次に、激しいバブリングによってCO2を導入し、サイクリックボルタンメトリーによってCO2還元活性を測定した。
【0247】
結果:結果を図6に示す。図6では、CO2が導入されると、かなりの電流が観測され、COおよびメタノールの形成をもたらした。
【0248】
結論:ここで使用した電極触媒は、CO2還元の能力を実証した
【0249】
実施例5:PtによるO2の電極触媒還元
目的:機構的に効率的な電極触媒の三次元性が、プロセスのエネルギーコスト(熱力学的)を削減し、その速度論的効率を高めながら、触媒活性を高めることを実証することである。
【0250】
方法:Pt触媒(30nm)を、平面、マイクロピラミッドおよびナノピラミッドの表面にスパッタリングした。3電極システムを、Ptワイヤーを対電極として、Ag/AgClを参照電極として使用して、各表面のO2還元活性を測定した。サイクリックボルタモグラムは、Pt被覆電極w上で実行した。次に、開始電位(熱力学的利得の測定)および最大電流(速度論の測定)によって、O2還元の効率を評価した。
【0251】
結果:様々なPt被覆電極の結果を、図21に示す。本発明者らは、平面<マイクロピラミッド<<ナノピラミッド型表面の順で、開始電位の有意なシフトを観測した。この傾向(平面<マイクロピラミッド<<ナノピラミッド)は、生成された相対電流でも観測された。
【0252】
結論:電極触媒の表面トポグラフィにより、エネルギーコストと触媒反応速度の両方において、不均一触媒の劇的な向上がもたらされる。
【0253】
実施例6:アスコルビン酸のpH依存性、ターフェル(Tafel)、濃度依存性
目的:様々な条件下での電位シフトの一般性を示すことである。
【0254】
方法:ピラミッド型構造のAu表面を作用電極として、Ptを対電極として、Ag/AgClを参照電極として、3電極システムを使用した。フェロセンは、微分電流分布電気化学表面修飾を使用して、平面電極とピラミッド型電極の両方に固定化された。実験は、平面とピラミッドの両方のフェロセンの表面被覆率が同等になるように実行した(図7a)。1(図7aおよびb)および100mMアスコルビン酸ナトリウムの電気化学的変換は、1~14のpH範囲で行った。
【0255】
結果:フェロセンは、SAM修飾金電極に組み込まれると、アスコルビン酸塩の酸化を促進することが知られている。アスコルビン酸の酸化は、単一の生成物を得る2電子2陽子酸化プロセスであることが知られている。その結果、その酸化プロセスでは、予想されるpHシフトがある。フェロセンをN3-C11SH/C10SHに取り付けると、電流が上昇し、ピークに達し、そして減少し、拡散が制限されたプロセスを示す。酸化プロセスを開始するために必要な電圧の大幅な減少を使用した場合の水素生成および酸素還元と同様に、触媒性能の向上が観察された(図8a)。この触媒作用の向上は、すべてのpH単位で観察される。
【0256】
ターフェルプロットは、熱力学的コストと交換電流密度の両方の減少を明確に示した(図7b)。
【0257】
結論:3D形状は、同じ材料であっても、先端部の活性を基部から電気化学的に区別する。触媒は、活性化エネルギーを低減することにより変換のエネルギーコストを削減することで改善され、異なる環境で反応が発生する速度を改善する。
【0258】
実施例7:Au電極によるO2還元
方法:ピラミッド型構造のAu表面を作用電極として、Ptを対電極として、Ag/AgClを参照電極として、3電極システムを使用した。サイクリックボルタンメトリーを、O2飽和過塩素酸中で金電極上で実行した。
【0259】
結果:pH1における平面およびマイクロピラミッドについての結果を図8に示す。このpHでは、Auは4つの電子と4つの陽子によってO2を水に還元することが知られている。三次元性を導入することにより、開始電位を劇的に低減し、2つのピークが頂部の低過電圧で1つ観測され、続いて平面領域の高過電位で1つ観測される。
【0260】
結論:電極触媒の表面トポグラフィにより、エネルギーコストと触媒反応速度の両方において、不均一触媒の劇的な向上がもたらされる(図8)。
【0261】
実施例8:定常状態下の触媒の質量活性
目的:触媒の質量活性に対する三次元性の影響を研究することである。
【0262】
方法:3電極システムをピラミッド型構造とともに使用した。実施例2のように、Ptをピラミッド型マイクロ構造に電着し、回転ディスク電極に使用する5mmインサートに平面のAu電極を配置した。サイクリックボルタモグラムを、O2飽和過塩素酸中で1600rpmで実行した。
【0263】
結果:静的表面の場合と同様に、1600rpmでのO2の還元でも同様の熱力学的シフトが観察された(図9)。
【0264】
結論:回転により、O2の電極への物質輸送が向上され、三次元表面によって生成される強化を最小限に抑える。したがって、回転ディスク電極実験により、拡散効果の影響を受けずに、平面表面と3D表面の両方の質量活動を直接比較することができた。
【0265】
実施例8:三次元性を有するPt/Cの触媒活性
目的:現在の最新式技術のPt/Cの三次元性の電極触媒による強化を研究することである。
【0266】
方法:以前に報告された手順から10%Pt/Cインクを調製した。10μLのインクを、平面表面およびナノピラミッド表面にドロップキャストした。次いで、O2還元活性を、O2飽和NaOH溶液中で行った。結果:Pt/Cの触媒活性の大幅な向上が、平面表面と比較して三次元プラットフォーム(図10)で観察された。
【0267】
結論:三次元性を使用して、既存の材料の触媒性能を向上させることができる。
【0268】
実施例9:硝酸塩の窒素への変換
目的:3D触媒表面を硝酸塩の還元に適用することである。
【0269】
方法:ナノピラミッド型構造化Au表面を作用電極として、Ptを対電極として、Ag/AgClを参照としてPBSバッファーで3電極システムを使用した。CVは、6mmolの硝酸ナトリウムを添加して、または添加せずに実行した。
【0270】
結果:溶液に硝酸ナトリウムを添加すると、Ag/AgClと比較して、CVに約-0.85mVのピークが見られた(図11)。電圧を-0.8mVに保つと、無臭のガスが放出され、これは窒素に相当すると考えられた。
【0271】
結論:CVは、硝酸塩の還元に対応するピークを明確に示している。放出されるガスの正確な識別はまだ得られていないが、無臭であるという事実は、アンモニアの生成を排除し、窒素の生成を支持している。
【0272】
実施例10:単分子層を介したフェロセンへの電子移動の速度論の向上
目的:平面表面に対して三次元表面に固定化されたフェロセンSAMへの電子移動の速度論(KET)の向上を実証することである。
【0273】
方法:1-デカンチオールおよび11の炭素鎖を有するアジド末端単分子層の等モルから構成された混合自己組織化単分子層(SAM)を、平面表面およびピラミッド型の金のスパッタ表面に形成した。クロノアンペロメトリーを介してフェロセンを表面に付着させるために、3電極システムを、Ptワイヤーを対電極として、Ag/AgClを参照電極して使用した。異なる走査速度のサイクリックボルタモグラムを電極上で実行して、平面およびピラミッド型表面の電子移動機構を評価した。
【0274】
結果:中性pHでのピラミッド(a)と平面(b)の表面についての結果を図12に示す。本発明者らは、走査速度の関数としての酸化および還元ピーク電位間のピーク間分割の差が小さいことによって実証されるように、ピラミッド型表面を使用することで、より速い電子移動を観測した(図13)。これらの結果は、電子が化学種と微細構造電極表面との間をジャンプするためのより容易な動きを実証しているが、平面表面は、実験全体を通して緩慢な速度を呈した。
【0275】
結論:電極の表面トポグラフィは、必要なエネルギーコストを削減することにより、電子移動速度論の劇的な向上をもたらす。
【0276】
実施例11:回転ディスク電極(RDE)実験を通したPtによるO2の電極触媒還元
目的:(RDE)を使用することで、三次元性が速度論的向上を生み出し、かつ定常状態の質量輸送条件を維持することを実証することである。
【0277】
方法:平面電極とピラミッド電極(5mmディスク)の両方を、実施例5のように調製し、ここでは、Pt触媒をスパッタリングした。3電極システムは、Ptワイヤーを対電極として、Ag/AgClを参照電極として使用し、400、900、1600、2500、3600、および4900rpmの回転速度でサイクリックボルタンメトリーを実行することにより、各表面のO2還元活性を測定した(図14)。次に、O2還元の効率を、開始電位、最大電流、およびKoutecky-Levich方程式によって評価した(図15)。
【0278】
結果:Pt被覆マイクロピラミッド電極についての結果を図15に示す。発明者らは、システム内の物質移動の減少による両方の表面の高電流を伴って、回転速度が増加するにつれて、開始電位の有意なシフトを観測した。Koutecky-Levich方程式は、ピラミッド型電極が呈するより高い電子移動を伴う同様の勾配を示している。
【0279】
結論:電極触媒の表面トポグラフィにより、三次元ピラミッド型電極を使用して、エネルギーコストと触媒反応速度論の両方において、不均一触媒の劇的な向上がもたらされる。
【0280】
実施例12:金被覆3Dポリカーボネートアレイの代表的な製造(図16
逆ピラミッド型アレイを、以前に報告された異方性湿式エッチング方法論1の改良によってシリコン(Si)ウエハに製造した。この報告では、逆ピラミッド型アレイ微細構造は、窒化シリコン(Si3N4)を用いて三段階で製造し(図16):フォトリソグラフィを使用してピラミッド型の基部(50μm×50μm)と間隔(75μmの先端部間)を画定し、バッファードフッ化水素酸を使用してSi3N4層を等方性エッチングした後、KOH溶液を用いて、Siの異方性エッチングを行った。アルカリ性エッチング液(30%KOH)を使用した異方性エッチングにより、54.7°で逆ピラミッド型微細構造のアレイの形成をもたらす。この角度は結晶面の向きに依存し、材料ごとに異なる。大面積で制御されたエッチング速度を得るのは困難であり、複雑な湿式エッチングパラメータのために再現性が低かったことが留意される。
【0281】
Si3N4(4~7Ω・cmの抵抗率)で被覆した研磨されたSi [100]ウェハを、イソプロパノールで洗浄した。次いで、AZ nLOF2070ネガティブフォトレジストを3000rpmでウェハ上にスピンコートして、6.5μmの厚さを得た。次いで、レジストをホットプレート上で110℃で60秒間焼き上げた。室温に冷却した後、基板をマスクアライナー(モデル)に移し、正方形のアレイのパターン化されたマスクを通してUV光(180mJ/cm2)に露光して、逆アレイのサイズと間隔を画定した。次いで、基板を110℃で60秒間再焼き上げした。室温に冷却した後、フォトレジストを、AZ326 MIFに60秒間露光して現像させ、次いで、表面を脱イオン水ですすぎ、窒素気流下で乾燥させた。次いで、リソグラフィプロセスの完全性を、140℃で5分間追加硬化した後に、光学顕微鏡を使用して検査した。
【0282】
オーバーエッチングを最小限に抑えるために、バッファードフッ化水素溶液を8時間使用してフォトレジストパターンをSi3N4層にエッチングした。次いで、ウェハを大量の脱イオン水ですすいだ。水出、残留フォトレジストをアセトンで除去し、脱イオン水で洗浄し、窒素気流下で乾燥させた。次に、逆ピラミッド型アレイの微細構造を、異方性エッチングによりSi3N4マスクを通してエッチングした。これは、ウェハを30%KOH水溶液と16%イソプロパノールとの混合液に70℃で75分間、300rpmで一定に攪拌しながら浸漬することで達成された。これらの条件下で、Si基板を、約60ミクロン/時間でエッチングした。次いで、ウェハを大量の脱イオン水ですすぎ、窒素気流下で乾燥させてから、走査型電子顕微鏡(SEM)で検査した(図17a)。
【0283】
逆ピラミッド型アレイを備えたNiスタンパーを、以前に報告された方法論を使用して、Siマスターから2つの逐次的電鋳によって調製した。最初の反転を、逆ピラミッド型アレイのSiマスター上にNiの薄層(100nm)をスパッタリングすることによって行った(3ミリトールのアルゴン雰囲気、200Wで180秒間)。次いで、Ni被覆基材を、塩化ニッケルを含有するスルファミン酸ニッケル溶液に直ちに浸漬させた。次いで、直流(DC)2.7Aを、Ni被覆Siカソード(0.015 cm2)とNiアノードの間に55℃で12時間通電した。電鋳中に、カソード(Ni被覆Siマスター)を60rpmで回転させて、均一かつ連続的な電着を確保した。Niピラミッド型アレイの厚さが約350μmに達したら、電源をオフに切り替え、電鋳されたNiをSiマスターから分離させて、大量の水ですすぎ、窒素流下で乾燥させた。次いで、Niピラミッド型アレイをSEMで検査し、上記の電鋳プロセスを繰り返すことにより、2回目のNi間の反転を行い、逆ピラミッド型アレイNiスタンパーを得た(図17b)。
【0284】
逆ピラミッド型アレイNiスタンパーを、熱エンボス加工機(YPL-NIL-SI402カスタマイズモデル、Wu Xi Imprint Nano Tech.Ltd.)を使用してポリカーボネートに型打ちした。PCのシート(厚さ0.5mm)をNiスタンパーの上部に置き、2つの研磨されたステンレス板の間に挟み、ヒーターをスタックのNi側に向けてエンボス加工チャンバに入れた。インプリントを、真空(1.5×102Pa)下、220℃で1.5MPa/cm2の圧力で15分間行った。次いで、基板を室温に冷却し、エンボス加工されたポリカーボネートを分離し、光学顕微鏡で検査した。次に、ポリカーボネート基板をすぐに、直流マグネトロンスパッタリング(Torus Sputtering Machine,KurtJ.Lesker)を使用して、200Wの3ミリトールアルゴン雰囲気下で180秒間回転させながら金でコーティングし、均一な堆積を確保して、約60nmの厚さを得た(図17c)。
【0285】
実施例13:平面電極および3D電極上のPt粒子による水素発生
目的:三次元性が、先端部の頂部に位置する触媒の触媒性能の向上を作り出すことを実証することである。
【0286】
方法:Ag/AgClに対比して、PBSバッファー中のK2(PtCl4)(6ミリモル)を、-0.4Vでのクロノアンペロメトリーを使用して、平面電極および3D SAM被覆電極の両方に電気化学的に堆積させた。
【0287】
結果:この方法では、Ptが粒子として平面電極と3D電極の両方に堆積された(表2を参照)。平面電極上には、粒子は電極表面全体に比較的均等に分散されていたが、3D電極では、Pt粒子は頂部と隆起部の上部にのみに配置されていた。表2は、Pt被覆電極についてのパラメータ、および水素を生成するための水の還元で得られる電流密度を詳説している。
【0288】
結論:これらの結果は、先端部の上部に位置するPt粒子が、頂部に位置するものの結果よりも100倍以上活性が高いことを示している。白金面積あたりの電流密度の大きな違いは、構造上の白金分子の活性が、平面電極における同じ白金分子の活性の130倍であることを示している。電流密度は、触媒の活性と水素生成の生成率とに等しいと見なすことができる。
【0289】
表2のデータは、ミクロンサイズのピラミッドに関するものであり、ナノサイズのピラミッドはターンオーバーが大幅に大きくなる。
【表2】
【0290】
実施例14:窒素のアンモニアへの変換
目的:3D触媒表面を窒素の還元に適用することである。
【0291】
方法:ナノピラミッド型構造化Au表面を作用電極として、Ptを対電極として、Ag/AgClを参照としてPBSバッファーで3電極システムを使用した。CVは、窒素を溶液に添加して、または添加せずに実行した。
【0292】
結果:図19に示すように、窒素ガスの添加時に、CVに明確でありながら可逆的な偏向が見られた。これは、UV-Visスペクトルの420nmにピークが現れることで確認されたように、アンモニアの生成に対応すると考えられた。
【0293】
結論:CVは、窒素の還元に対応するピークを明確に示している。すべての生成物の正確な同一性はまだ完全には確認されていないが、UV-Visにピークが現れることでアンモニアの生成を支持している。
【0294】
実施例15:平面電極と3D電極での水素ガスの発生
目的:三次元性が、平面電極よりも多くのガスが生成され、構造が細かいほど生成量が多くなることを実証することである。また、3D構造は3D電極の表面から効率的かつ常にクリアされる気泡を生成し、特徴部が小さいほど気泡は小さくなる。
【0295】
方法:Ag/AgClに対比して、PBSバッファー中のK2(PtCl4)(6mml)を、-0.4Vでのクロノアンペロメトリーを使用して、平面電極および3D SAM被覆電極の両方に電気化学的に堆積させた。電極を、図18に示すセルにセットアップして、平面電極に対して比較するために、50μmと250nmの両方のピラミッドの水素生成を可能にした。
【0296】
結果:このセットアップでは、バブリングの速度と泡の相対的なサイズを調べることもでき、3D表面が先端部から水素を効果的に除去し、製造に干渉しないことを確認した。
【0297】
結論:これらの結果は、3D表面が水素ガス生成の主要な制限の1つを克服し、表面から水素を効率的に除去することを示した。
【0298】
実施例16:CO2からCOおよびギ酸への変換
目的:3D触媒表面を、CO2の還元に適用することである。
【0299】
方法:ナノピラミッド型構造化Au表面を作用電極として、Ptを対電極として、Ag/AgClを参照としてPBSバッファーで3電極システムを使用した。CVは、アルゴン中のCO2を溶液に添加して、または添加せずに実行した。
【0300】
結果:図20Aに示すように、CO2ガスの添加時に、CVに明確でありながら可逆的な偏向が見られた。ヘッドスペース分析により、これがCOの生成とUV-VisでのCO-ミオグロビン複合体の出現(図20B)、およびUVスペクトルでの320nmのピークの出現(図20C)によるギ酸に対応していることが確認された。
【0301】
結論:CVは、窒素の還元に対応するピークを明確に示している。すべての生成物の正確な同一性はまだ完全には確認されていないが、UV-Visにピークが現れることでアンモニアの生成を支持している。
【0302】
実施例17:レドックスサイクリングによるPt被覆ナノピラミッドアレイの安定性
目的:サイクリックボルタンメトリーを使用して、長時間継続する触媒条件下でのPt被覆ナノピラミッドアレイの安定性を実証することである。
【0303】
方法:Pt触媒(30nm)をナノピラミッド型の表面にスパッタリングした。3電極システムを、Ptワイヤーを対電極として、Ag/AgClを参照電極として使用した。表面を200mVから-300mVまで連続的に10mV/秒で500サイクル循環させ、pH13の溶液中でO2を還元した。
【0304】
結果:図22は、最大O2還元電流が-300 mVで一定であるため、Pt活性の測定可能な低下を示さなかった。
【0305】
結論:長時間のサイクリックボルタンメトリーでは、表面に劣化の兆候を示さなかった。触媒が劣化している場合、基部のNi基板に向かう触媒電流の減少を観測するであろう。
【0306】
実施例18:定電流によるPt被覆ナノピラミッドアレイの安定性
目的:クロノアンペロメトリーを使用して、長時間継続する触媒条件下でのPt被覆ナノピラミッドアレイ電極の安定性を実証することである。
【0307】
方法:Pt触媒(30nm)をナノピラミッド型の表面にスパッタリングした。3電極システムを、Ptワイヤーを対電極として、Ag/AgClを参照電極として使用した。還元電位ー150mVを、2.5日間にわたって印加し、pH13の溶液中のO2を連続的に還元した。
【0308】
結果:図23は、最大O2還元電流が-5 mAで一定であるため、Pt活性の測定可能な低下を示さなかった。
【0309】
結論:長時間の触媒プロセスでは、表面に劣化の兆候を示さなかった。
【0310】
実施例19:触媒の堆積の制御
目的:3D構造により、触媒の量を制御された方法で先端部に堆積できることを実証することである。
【0311】
方法:金層を有する表面構造を、O2プラズマを用いた反応性イオンエッチング(RIE)を使用して洗浄し(2分)、PBS中の塩化白金(IV)溶液(1mM)に浸漬した。Ptメソ粒子の成長を、次のように方形波電位を使用して実行し、還元電位(-500mV)を印加して、表面上のPt(II)をPt(0)に15秒間還元し、その後、酸化電位(300mV)を印加してプロセスを停止させた。このサイクルは、堆積されたPtの所望の量が得られるまで続けられた。
【0312】
結果:図24に示すように(5パルス(図24A)および10パルス(図24B)について図24)、Ptの堆積は主に表面構造の頂部またはその付近で発生した。図に示されているように、堆積されたPtの量は、先端部およびその周辺のパルス数に比例して明らかに増加する。
【0313】
結論:触媒の量を正確に配置および制御する能力は、表面に堆積する必要のある触媒材料を最小限に抑えるために、したがって触媒システムの製造コストを最小限に抑えるために重要である。
【0314】
理論に縛られることを望まないが、本発明は、以下の非限定的な概念のうちの1つ以上に基づくと考えられる。
交換電流密度
平衡状態での電気化学反応速度を表す重要な速度論的パラメータであり、電気化学反応がどれだけ迅速に発生できるかを決定する。電気化学反応の交換電流密度は、反応と電気化学反応が発生する電極表面とに依存するため、真の電極面積と反応物濃度とに関連する。
3D表面は、平面電極よりも高い交換電流密度を有する。
電子移動係数
電極反応における還元速度に影響を与える静電ポテンシャルエネルギーの割合として定義される。
3D表面は、平面表面よりも高い電子移動係数を有する。
活性化エネルギー
活性化を低下させると、所定の触媒プロセスのエネルギーコストが低下するため、熱力学的コストを減少させる
3D表面は、平面表面よりも低い過電位を有する。
【0315】
結論として、結果は、
・先端部の寸法が小さいほど、追加の触媒コーティングがある場合とない場合の両方で先端部における効果が大きいことを示している。
・先端部のサイズは、一連の炭素、酸素、および窒素含有種の触媒分離と再結合との両方のためのマイクロ流体設定内の適用に理想的なものにする。MF環境が反応速度および変換の全体的な効率を向上させることが期待される。
・マイクロ流体と非マイクロ流体の両方の設定を使用して、一連の触媒プロセスを設定することができる。
図1
図2a
図2b
図2c
図3
図4a
図4b
図5a
図5b
図6
図7a
図7b
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17a
図17b
図17c
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26