(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179478
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】情報処理方法、第1コンピュータ、プログラム、及びシステム
(51)【国際特許分類】
A63B 71/06 20060101AFI20231212BHJP
A63H 11/00 20060101ALI20231212BHJP
A63B 69/00 20060101ALI20231212BHJP
G06Q 50/10 20120101ALI20231212BHJP
【FI】
A63B71/06 T
A63H11/00 Z
A63B71/06 J
A63B69/00 C
G06Q50/10
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023148387
(22)【出願日】2023-09-13
(62)【分割の表示】P 2022171244の分割
【原出願日】2021-12-03
(31)【優先権主張番号】P 2020205321
(32)【優先日】2020-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021086327
(32)【優先日】2021-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100118049
【弁理士】
【氏名又は名称】西谷 浩治
(72)【発明者】
【氏名】矢羽田 洋
(57)【要約】
【課題】ロボットを通じてユーザに対して運動への強い動機付けを与える。
【解決手段】本開示の一態様に係るロボットの制御方法は、ユーザに運動を促すことをロボットに指示する情報を外部コンピュータから受信し、ユーザの現在位置を検知し、ユーザの現在位置を含む所定エリア内までロボットを移動させ、ユーザに運動を促すジェスチャをロボットに実行させ、ユーザの挙動をモニタリングし、モニタリングの結果に基づいてユーザの運動に伴ったロボットの駆動を実行する。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットと通信可能な第1コンピュータにおける情報処理方法であって、
ユーザに運動を促すことを前記ロボットにリクエストするリクエスト情報を、前記第1コンピュータとは異なる第2コンピュータから受信し、前記リクエスト情報は、前記第2コンピュータによって前記ユーザに運動を促すためのメッセージが前記ユーザに提示された後において、前記ユーザの運動量が所定の目標量を満たしていないと判定された場合に、前記第2コンピュータから前記第1コンピュータに送信され、
前記リクエスト情報に基づいて、前記ユーザに運動を促すジェスチャを前記ロボットに実行させる指示情報を、前記ロボットに送信する、
情報処理方法。
【請求項2】
前記ロボットは、前記指示情報に基づいて、
前記ロボットに搭載された少なくとも1つのセンサーを介して、前記ユーザを検知し、
前記ロボットに含まれる少なくとも1つのアクチュエータを制御して、前記ユーザに運動を促すジェスチャを前記ロボットに実行させ、
前記ロボットに搭載された前記少なくとも1つのセンサーまたはマイクを介して、前記ユーザの挙動をモニタリングし、
前記モニタリングの結果に基づいて、前記ロボットに含まれる前記少なくとも1つのアクチュエータを制御して、前記ユーザの運動に伴って前記ロボットを駆動する、
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項3】
前記ロボットは、前記指示情報に基づいて、前記少なくとも1つのセンサーまたは前記マイクを介して、運動をしている前記ユーザの挙動をモニタリングし、
前記ロボットにおいて前記ユーザが運動を終了したと判断された後に、前記ユーザの運動が終了したことを示す終了通知を前記ロボットから受け取る、
請求項2に記載の情報処理方法。
【請求項4】
前記第1コンピュータは、前記ロボットと通信可能なサーバまたは情報通信端末である、
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項5】
前記第2コンピュータは、前記第1コンピュータと通信可能なサーバであり、
前記第2コンピュータは、前記ユーザの情報通信端末を介して、前記メッセージを前記ユーザに提示する、
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項6】
前記第2コンピュータは、前記ユーザの情報通信端末である、
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項7】
ロボットと通信可能なコンピュータと前記コンピュータとは異なる別のコンピュータとを含むシステムにおける、前記コンピュータであって、
プロセッサと、
前記プロセッサに所定の処理を実行させるプログラムが格納されたメモリと、を備え、
前記プロセッサは、前記プログラムに基づいて、
ユーザに運動を促すことを前記ロボットにリクエストするリクエスト情報を、前記別のコンピュータから受信し、前記リクエスト情報は、前記別のコンピュータによって前記ユーザに運動を促すためのメッセージが前記ユーザに提示された後において、前記ユーザの運動量が所定の目標量を満たしていないと判定された場合に、前記別のコンピュータから前記コンピュータに送信され、
前記リクエスト情報に基づいて、前記ユーザに運動を促すジェスチャを前記ロボットに実行させる指示情報を、前記ロボットに送信する、
コンピュータ。
【請求項8】
ロボットと通信可能なコンピュータと前記コンピュータとは異なる別のコンピュータとを含むシステムにおいて、前記コンピュータによって実行されるプログラムであって、
前記コンピュータに搭載されたプロセッサに対して、
ユーザに運動を促すことを前記ロボットにリクエストするリクエスト情報を、前記別のコンピュータから受信する処理と、
前記リクエスト情報に基づいて、前記ユーザに運動を促すジェスチャを前記ロボットに実行させる指示情報を、前記ロボットに送信する処理と、を実行させ、
前記リクエスト情報は、前記別のコンピュータによって前記ユーザに運動を促すためのメッセージが前記ユーザに提示された後において、前記ユーザの運動量が所定の目標量を満たしていないと判定された場合に、前記別のコンピュータから前記コンピュータに送信される、
プログラム。
【請求項9】
ロボットと、当該ロボットと通信可能な第1コンピュータとを含むシステムであって、
前記第1コンピュータは、第1プロセッサと、当該第1プロセッサに第1処理を実行させる第1プログラムが格納された第1メモリと、を備え、
前記ロボットは、少なくとも1つのアクチュエータと、第2プロセッサと、当該第2プロセッサに第2処理を実行させる第2プログラムが格納された第2メモリと、を備え、
前記第1コンピュータは、前記第1プログラムに基づいて、
ユーザに運動を促すことを前記ロボットにリクエストするリクエスト情報を、前記第1コンピュータとは異なる第2コンピュータから受信し、前記リクエスト情報は、前記第2コンピュータによって前記ユーザに運動を促すためのメッセージが前記ユーザに提示された後において、前記ユーザの運動量が所定の目標量を満たしていないと判定された場合に、前記第2コンピュータから前記第1コンピュータに送信され、
前記リクエスト情報に基づいて、前記ユーザに運動を促すジェスチャを前記ロボットに実行させる指示情報を、前記ロボットに送信し、
前記ロボットは、前記第2プログラムに基づいて、
前記指示情報を前記第1コンピュータから受け取り、
前記指示情報に基づいて、前記少なくとも1つのアクチュエータを駆動して、前記ユーザに運動を促すジェスチャを実行する、
システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ロボットの制御方法、ロボット、及び、プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ユーザの体調を配慮する自律型ロボットとして、ユーザの体温を測定し、測定した体温の周期に基づいてユーザの体調を判定する方法、および基礎体温周期が所定のタイミングとなった際にロボットの動作量を変更する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のロボット技術では、人間との関わりにおいて、ロボットの機能のさらなる向上が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係るロボットの制御方法は、前記ロボットの外部にあるコンピュータから、ユーザに運動を促すことを前記ロボットに指示する指示情報を受信し、前記ロボットに搭載された光学センサーを介して、前記ユーザの現在位置を検知し、前記ロボットの少なくとも一対の車輪または脚を制御して、前記ユーザの現在位置を含む所定エリア内まで前記ロボットを移動させ、前記ロボットに含まれる少なくとも1つのアクチュエータを制御して、前記ユーザに運動を促すジェスチャを前記ロボットに実行させ、前記ロボットに搭載された前記光学センサーまたはマイクを介して、前記ユーザの挙動をモニタリングし、前記モニタリングの結果に基づいて、前記ロボットに含まれる前記少なくとも1つのアクチュエータを制御して、前記ユーザの運動に伴って前記ロボットを駆動する。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一態様に係るロボットの制御方法によれば、ロボットを通じて、ユーザに対して運動への強い動機付けを与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の実施の形態に係る情報システムの全体構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】本開示の実施の形態に係る情報システムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】本開示の一形態の形態に係る情報システムの全体構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】非ロボット会社(A社)がロボットと連携する際の処理の一例を示すフローチャートである。
【
図5】ロボットについてのアクセス権の設定情報の一例を示す表である。
【
図6】リクエストされたタスクの実行可否を判断するための緊急度のレベルの一例を示す表である。
【
図7】非ロボット会社がロボットに対してタスクをリクエストする処理の一例を示すフローチャートである。
【
図8】非ロボット会社がロボットに対してタスクをリクエストする処理の一例を示すフローチャートである。
【
図9】B社サーバの処理の一例を示すフローチャートである。
【
図11】本開示の実施の形態に係る情報システム構成の一例を示すブロック図である。
【
図12】本開示の実施の形態に係るロボットの構成の一例を示す図である。
【
図13】本開示の実施の形態に係るロボットが実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図14】本開示の実施の形態に係るロボットが実行する動作の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(本開示に至る経緯)
我々の日常生活はますますデジタル化されてきている。例えば、多くの人が個人専用の情報通信端末であるスマートフォンを持つ。ユーザは、スマートフォンにユーザの健康管理を行うアプリケーション(以下、アプリケーションをアプリと呼ぶ)、家計の管理を支援するアプリ、知人とのリアルタイムなコミュニケーションを支援するソーシャルコミュニケーションアプリ、および世の中のニュースを個人の興味に合わせてキュレーションしてくれるニュースアプリなど様々なアプリをインストールして利用するようになった。
【0009】
一方で、徐々にだが、自律的に種々の動作や作業を行うことができる可動装置(以下、ロボットと呼ぶ)も実用化されてきた。工場において部品の組み立てまたは調整を行うロボット、物流拠点において正確かつ迅速な仕分けを行うロボット、特定のタスクを周囲の状況を鑑みながら遂行するロボットなどである。これらのロボットには、人との共同作業、または人の代替として特定の作業を行ってくれるロボットもある。
【0010】
本開示は、多様な情報処理を行うことができる情報処理装置であるスマートフォンと、多様な動作または物体を扱う作業を行うことができる可動装置であるロボットとが連携動作することによって、健康な、幸福な、快適な、安心な、安全な、愉しい、かつ/または清潔な生活をできるようにユーザを支援するための技術を提案する。
【0011】
ユーザの生体活動情報を収集し、収集した生体活動情報からユーザの運動不足が確認された場合、ユーザのスマートフォンを通じてユーザを運動に誘導するメッセージを提示すれば、ユーザに運動を促すことが可能である。このように、ユーザに対して行動変容を促すメッセージはナッジと呼ばれる。
【0012】
しかしながら、運動習慣のないユーザに対して運動への行動変容を起こさせることは容易ではなく、単にナッジをユーザに提示するだけでは不十分であり、ナッジよりも強い動機付けが必要である。
【0013】
上述の特許文献1は、ロボットが、オーナーの体温からオーナーの月経周期を考慮に入れてオーナーに配慮すべき配慮タイミングを推定し、推定した配慮タイミングにおいてオーナーを見つめるといったオーナーを配慮する動作を行うことにより、普段は自由奔放にふるまっているロボットにオーナーを配慮させる行動をとらせ、それによってオーナーのロボットに対する共感を高める技術を開示する。
【0014】
このように、特許文献1は、オーナーとロボットとの共感を高める技術であるので、ユーザに対して運動への強い動機づけを与えることはできない。
【0015】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであり、ユーザに対して運動への強い動機付けを与えることができる技術を提供することを目的とする。
【0016】
本開示の一態様に係るロボットの制御方法は、前記ロボットの外部にあるコンピュータから、ユーザに運動を促すことを前記ロボットに指示する指示情報を受信し、前記ロボットに搭載された光学センサーを介して、前記ユーザの現在位置を検知し、前記ロボットの少なくとも一対の車輪または脚を制御して、前記ユーザの現在位置を含む所定エリア内まで前記ロボットを移動させ、前記ロボットに含まれる少なくとも1つのアクチュエータを制御して、前記ユーザに運動を促すジェスチャを前記ロボットに実行させ、前記ロボットに搭載された前記光学センサーまたはマイクを介して、前記ユーザの挙動をモニタリングし、前記モニタリングの結果に基づいて、前記ロボットに含まれる前記少なくとも1つのアクチュエータを制御して、前記ユーザの運動に伴って前記ロボットを駆動する。
【0017】
この方法では、ロボットはユーザの近くにやって来て、ユーザに運動を促す身振りを実行する。そのため、ロボットは、文字や音声で運動を促すメッセージを提示するだけの場合に比べて、ユーザに運動への働きかけをより積極的に行うことができる。その結果、ユーザに対して運動への強い動機付けを与えることができる。
【0018】
なお、本開示における「アクチュエータ」は、車輪または脚を動かすためのアクチュエータであってもよいし、ロボットの身体動作として他の部位を動かすためのアクチュエータであってもよい。
【0019】
例えば、前記ユーザの運動に伴う前記ロボットの駆動は、前記ユーザの挙動が、前記ロボットの前記ジェスチャに対する肯定的な応答、または、前記運動を行う意志の表明を含んでいる場合に、実行されてもよい。
【0020】
例えば、前記ユーザの運動は、前記ユーザが歩行または走行によって移動することを含んでいてもよく、前記ユーザの運動に伴う前記ロボットの駆動は、前記少なくとも一対の車輪または脚を制御して、移動する前記ユーザに同伴して前記ロボットを移動させることを含んでもよい。
【0021】
これにより、ユーザに伴走可能なロボットがユーザに歩行または走行を促すことができる。そのため、ユーザは、ロボットの運動を促す動作から、例えば「一緒に散歩しよう」といった勧誘のメッセージを見いだすことができる。その結果、ロボットを介して、ユーザに対して運動への強い動機付けを与えることができる。
【0022】
例えば、前記ユーザの運動に伴う前記ロボットの駆動は、前記少なくとも一対の車輪または脚を制御して、前記ユーザを前記所定エリアから離れる方向に先導しながら前記ユーザの移動の開始を促すことを、さらに含んでもよい。
【0023】
これにより、ユーザを運動に誘い出す動作が実現でき、ユーザに運動を促す動作の後、スムーズに運動開始に移行することができる。
【0024】
例えば、前記ユーザに運動を促すジェスチャは、前記ロボットが前記ユーザに散歩したい意志を伝えるジェスチャであってもよい。
【0025】
これにより、ユーザ自身の中に散歩をする動機が薄い場合でも、ユーザに対して「散歩をしたいロボットに付き合う」という利他的な動機を与えることで、ユーザの運動に対する動機付けを誘発することができる。
【0026】
例えば、前記ユーザの挙動のモニタリングは、前記光学センサーを介して、前記ユーザの姿勢の変化を検知することを含んでいてもよい。
【0027】
例えば、前記ユーザの挙動のモニタリングは、前記マイクを介して、前記ユーザが発話した音声情報を取得し、当該音声情報に対して音声認識を実行すること含んでいてもよい。
【0028】
例えば、前記ユーザに運動を促すジェスチャは、当該ジェスチャに対する前記ユーザの応答を検知するまで、反復的に実行されてもよい。
【0029】
例えば、前記ロボットの前記所定エリア内への移動を開始する前に、前記ロボットに搭載されているバッテリーの残量を検知し、前記バッテリーの残量が、前記ロボットの駆動に要する電力量よりも多い場合に、前記ロボットの移動を開始させてもよい。
【0030】
例えば、上記制御方法は、さらに、前記光学センサーまたは前記マイクを介して、運動をしている前記ユーザの挙動をモニタリングしてもよく、前記ユーザが運動を終了したと判断した後に、前記ユーザの運動が終了したことを示す終了通知を前記コンピュータに送信してもよい。
【0031】
例えば、上記制御方法は、さらに、前記コンピュータが前記ロボットへの指示を遂行させるために必要となる緊急度を示す必要緊急度情報を、前記コンピュータに送信してもよく、前記指示情報は、前記ユーザに運動を促すべき緊急度が前記必要となる緊急度を満たしている場合に、前記コンピュータから前記ロボットに送信されてもよい。
【0032】
例えば、前記コンピュータは、前記ロボットとネットワークを介して通信可能なサーバまたは情報通信端末であってもよい。
【0033】
本開示の一態様に係るロボットは、本体と、前記少なくとも一対の脚または車輪と、前記少なくとも1つのアクチュエータと、前記光学センサーおよび前記マイクの少なくとも一方と、プロセッサと、上記の制御方法を前記プロセッサに実行させるためのプログラムが格納されたメモリと、を備える。
【0034】
本開示の一態様に係るプログラムは、上記の制御方法を前記ロボットに搭載されたプロセッサに実行させる。
【0035】
なお、本開示は、ここで用いられるロボット制御方法及び情報提供方法に含まれる特徴的な各構成をコンピュータに実行させるプログラム、或いはこのプログラムによって動作するシステムとして実現することもできる。また、このようなコンピュータプログラムを、CD-ROM等のコンピュータ読取可能な非一時的な記録媒体あるいはインターネット等の通信ネットワークを介して流通させることができるのは、言うまでもない。
【0036】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本開示の一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、構成要素、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定するものではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また全ての実施の形態において、各々の内容を組み合わせることもできる。
【0037】
(実施の形態)
我々の社会は、今後もさらにインターネットが普及し、各種センサーが身近になることが予想される。これにより、我々の社会は、個人の内部状態及び活動等に関する情報から建造物及び交通網等を含む街全体の情報までもが、デジタル化されてコンピューターシステムで利用できる状態になっていくと予想される。デジタル化された個人に関するデータ(個人情報)は、通信ネットワークを介してビッグデータとして情報銀行などのクラウドサーバに安全に管理され、個人や社会のために様々な用途に利用されていく。
【0038】
このような高度情報化社会は、日本ではSociety5.0と呼ばれる。高度情報化社会は、個人を取り囲む物質世界である現実空間(フィジカル空間)とコンピュータ同士が連携してフィジカル空間に関する各種処理がなされる仮想空間(サイバー空間)とを高度に融合させた情報基盤(サイバーフィジカルシステム)により、経済発展と社会的課題の解決とが期待される社会である。
【0039】
そうした高度情報化社会では、個人が行う日常の様々なシーンでのコミュニケーション(情報の取得、提供、およびその表現方法を含む)や行動を分析し、蓄積した個人情報を含むビッグデータを分析することで、そのシーンに応じた、その個人にとって最適と思われるコミュニケーションの方法にて、その個人に必要な情報またはサービスを提供することが可能になる。
【0040】
以降では、そのようなサイバーフィジカルシステムが稼働する高度情報化社会を前提として、個人であるユーザに寄り添った日常生活の支援をテーマとして、ユーザの健康および幸福を高める具体的な様態について説明していく。
【0041】
図1は、本開示の実施の形態に係る情報システムの全体構成の一例を示すブロック図である。
図1は、上半分はサイバー空間、下半分はフィジカル空間を示している。左側は非ロボット提供会社であるA社関連のリソースが並んでおり、サイバー空間にはA社サーバ101、フィジカル空間にはスマートフォン100の上で動作するA社アプリがある。A社サーバ101はA社アプリとペアとなって動作する。右側はロボット提供会社であるB社関連のリソースが並んでおり、サイバー空間にはB社サーバ111、フィジカル空間には可動装置であるロボット110と、スマートフォン100の上で動作するB社アプリとがある。B社サーバ111はロボット110かつ/またはB社アプリとペアになって動作する。フィジカル空間の真ん中にはスマートフォン100にインストールされたA社アプリ、B社アプリ、さらにロボット110を扱うユーザがいる。スマートフォン100、ロボット110、A社サーバ101、およびB社サーバ111はインターネットのような広域通信網により相互通信が可能なように接続されている。
【0042】
この図に示すようにA社およびB社はそれぞれのアプリおよびロボットを通じて、ユーザとの接点を持っている。A社が持つのはスマートフォン100上のアプリを介した接点だけであり、これは今日、多く見られる顧客接点の一形態である。一方で、この図のB社が持つのはスマートフォン100上のアプリを介した接点だけでなく、ロボット110を介した接点もある。自律的な可動装置であるロボット110を介してユーザ(一般消費者)と接点を持つ会社は、一部の玩具メーカーを除くとまだ例がなく、これから出現してくるものと期待される。
【0043】
なお、ここではロボット110の一例として犬型ロボットのイラストを用いているが、ロボット110はこれ以外の人間を含む生物に基づく形態でも、無機質で非生物的な形態であってもよい。フィジカル空間において自律的な運動能力(姿勢変更能力、および移動能力など)、かつ/または、作用能力(ボタンを押すおよび物を持ち上げるなど他の物体を動かす能力)がある限りは、その形態は限られない。
【0044】
本開示の実施の形態である情報システムは、夫々の顧客接点であるアプリ、ロボット110、さらにはロボット110に操作される家電および住宅設備などがこれまで以上に高度に連携して、他が保有する情報および能力を活用しながら、自らのサービスの品質の上げ幅を広げ、ユーザへより高い価値提供を行う情報システムであるとも言える。ロボットが持つ認知能力および運動能力は日々進化を続けており、このような万能なロボットが実現すれば、そのロボットが保有する固有の能力に他社がアクセスできる仕組みを構築しておくべきである。そうすることが、ユーザにとっても、サービスを提供する非ロボット会社にとっても、ロボットを提供するロボット会社にとっても、多種多様な価値の連携を生む土台になると思われる。
【0045】
図2は、本開示の実施の形態に係る情報システムの構成の一例を示すブロック図である。スマートフォン100は、通信部100a、演算部100b、センサー100c、メモリ100d、操作部100e、および映像音声出力部100fを含む。センサー110cは、映像情報、音声情報、かつ/または周辺環境情報を取得するデバイスである。センサー110cは、例えば、イメージセンサーおよびマイクを含む。
【0046】
映像音声出力部100fは、映像および音声を出力するデバイスである。映像音声出力部100fは、例えば、ディスプレイおよびスピーカーを含む。操作部100eは、ユーザからのボタン押下やタッチ操作などを受け付けるデバイスである。操作部100eは、例えばタッチパネルおよびボタンを含む。演算部100bは、スマートフォン100の中で行われる音声認識、音声合成、情報検索、および情報描画などの情報処理を行うデバイスである。演算部100bは、例えば中央演算処理装置である。メモリ100dは、演算部100bが処理するデータを保持する。メモリ100dは、例えば、フラッシュメモリなどの半導体メモリである。通信部100aは、ネットワーク上の他のコンピュータと情報通信を行う通信回路である。A社アプリも、B社アプリもインストールされると、スマートフォン100のメモリ100dにプログラムと必要なデータとが記録され、演算部100bによってそのプログラムが実行される。
【0047】
A社サーバ101は、スマートフォン100にインストールされたA社アプリと協調動作する。A社サーバ101は、通信部101a、演算部101b、およびメモリ101cを含む。通信部101aは、ネットワーク上の他のコンピュータと情報通信を行うための通信回路である。メモリ101cは、A社アプリおよびユーザに関する情報を記録する。
メモリ101cは、例えばハードディスクドライブおよびソリッドステートドライブなどの大容量記憶装置である。演算部101bは、外部とやり取りするデータの処理を行う。
演算部101bは、例えば中央演算処理装置などのプロセッサである。
【0048】
B社サーバ111は、スマートフォン100にインストールされたB社アプリと協調動作する。B社サーバ111は、通信部111a、演算部111b、およびメモリ111cを含む。通信部111aは、ネットワーク上の他のコンピュータと情報通信を行うための通信回路である。メモリ111cは、B社アプリ、ロボット110、およびユーザに関する情報を記録する。メモリ111cは、例えばハードディスクドライブおよびソリッドステートドライブなどの大容量記憶装置である。演算部111bは、外部とやり取りするデータの処理を行う。演算部111bは、例えば中央演算処理装置などのプロセッサである。
【0049】
ロボット110は、通信部110a、演算部110b、センサー110c、メモリ110d、可動部110e、および音声出力部110fを含む。センサー110cは、映像情報、音声情報、かつ/または周辺環境情報を取得するデバイスである。センサー110cは、例えばイメージセンサーおよびマイクを含む。音声出力部110fは、例えばスピーカーであり、音声を出力する。ロボット110は、ユーザからのボタン押下やタッチ操作などを受け付ける操作部(図示せず)を含んでもよい。可動部110eは、演算部110bの制御の下、ロボット110の姿勢を制御し、ロボット自体の移動および他物体への力学的作用を行うデバイスである。可動部110eは、例えばモータなどのアクチュエータである。演算部110bは、ロボット110の中で行われる各種演算処理を行う。演算部110bは、例えば、中央演算処理装置などのプロセッサである。メモリ110dは、演算部110bが処理するデータを保持する。メモリ110dは、例えばフラッシュメモリなどの半導体メモリである。通信部110aは、ネットワーク上の他のコンピュータと情報通信を行うための通信回路である。
【0050】
なお、A社サーバ101、スマートフォン100、ロボット110、およびB社サーバ111は広域通信網で相互通信できるよう接続されているとしたが、低遅延通信、強固なセキュリティ、またはローカルでのペアリングが要求される場合などには、専用通信網または近距離無線通信などにより接続されても良い。
【0051】
(健康管理におけるロボットの能力提供)
ここからは、ユーザの健康管理を身近にあるロボット110を用いて、より効果的に実施する一実施の形態について説明していく。
【0052】
図3は、本開示の一形態の形態に係る情報システムの全体構成の一例を示すブロック図である。この形態においては、非ロボット会社のA社はユーザが契約している健康保険の会社とする。保険会社であるA社は、ユーザの健康増進を図るためにスマートフォン100にA社が提供するヘルスケアアプリをインストールさせ、ユーザに日々利用させる。A社ヘルスケアアプリは、ユーザの生体活動情報(心拍、脈拍、血圧、体温、体水分量、呼吸、発汗量、活動量(消費カロリー)、摂取量(摂取カロリー)、歩数、姿勢、および運動種別など)をウェアラブルセンサーなどによって日々継続して収集し、その生体活動情報をスマートフォン100のメモリ100dに記録すると同時に、A社サーバ101へ定期的にアップロードする(図中「(a)生体活動情報」)。
【0053】
このようにして収集されたユーザの生体活動情報は、ユーザの個人情報としてA社サーバ101にて厳密に管理される。A社サーバ101は定期的にユーザの生体活動情報に基づきユーザの健康リスクを分析する(図中「(b)健康リスク分析」)。さらに、A社サーバ101はユーザの運動量が不足していると判断された場合には、運動を推奨するためにナッジ(nudge)をユーザに送る。例えば、A社アプリを介して「運動しましょう」と望ましい行動をとるよう行動変容を起こすメッセージを表示させる(図中「(c)運動の推奨」)。しかしながら、往々にしてこの手のアプローチによる行動変容は十分な動機を与えることに失敗し易く、ユーザの運動不足を解消できないことが多い(図中「(d)運動せず」)。
【0054】
これまでの情報化社会(Society4.0社会とも呼ばれる)で提供される従来のサービスは、ここに説明した(a)から(d)までのループについては実現できている。
従来のサービスは、サイバー空間とフィジカル空間とが連携してユーザに持続的な接点を持って、健康増進を進めることは可能である。しかしながら、従来のサービスは、A社のサービスの中だけでその生体活動情報およびサービスが閉じており、A社以外との連携は無い。従来のサービスは、いわばサイロ状態となっている。A社がスマートフォン100に表示するメッセージの表現を多少変えても、なかなか行動変容を起こせないユーザも多いと思われる。したがって、従来のサービスは、広くユーザの健康を改善するサービスに成り得るには不十分である。本実施の形態においては、自律的運動能力を備えるユーザに身近なロボットを用いて、A社アプリが保有しないがロボットならば保有する自律的運動能力を用いて、ユーザの健康をより良く改善するサービスを構想し、そのサービスの実現の形態について説明していく。それでは
図3の続きの説明を行う。
【0055】
A社サーバ101(第2サーバの一例)が運動を推奨するようにナッジを送った後も、定期的にアップロードされる生体活動情報により、ユーザが十分な運動を行っていないとA社サーバ101が判断する場合、A社サーバ101は事前に連携設定をしているB社サーバ111(第1サーバの一例)に対して、ユーザに運動(例えば散歩)を働きかけるタスクをロボット110にリクエストするリクエスト情報を送信する(図中「(e)運動(散歩)を要望」)。すなわち、リクエスト情報は、B社サーバ111においてユーザに対して運動することを働きかける必要があると判定された後に送信される。サーバ間の事前の連携設定については後述する。
【0056】
リクエスト情報を受信したB社サーバ111は、A社サーバ101がリクエストしたタスクに対するアクセス権を持つことを確認すると、リクエストを実行、保留、又は却下することを決定する。そして、B社サーバ111は、リクエストを実行すると決定した場合、そのユーザが保有するロボット110に対して、ユーザを運動(散歩)に誘導する指示情報を出力する(図中「(f)運動(散歩)を誘導指示」)。この指示情報は、具体的にどのように振る舞い何をユーザに要求するのかを、ユーザに理解できる形式でロボット110が提示するための指示を含む。例えば、ロボット110が受信する運動を誘導する指示情報には、犬型ロボットであれば「散歩に行こう」とユーザに直接的に呼び掛ける、または散歩時に用いるリードをロボット110が持ってきてユーザに散歩に行くことをせがむ(自らが散歩に行きたいという意志を示す)、などの指示が含まれる。これらの具体的な指示の内容は、B社サーバ111からロボット110に送られた運動を誘導するための指示情報に含まれ、ロボット110により実行される(図中「(g)運動(散歩)を誘導」)。
【0057】
このように犬型ロボットに一緒に運動(散歩)することを誘われたユーザは、スマートフォン100を介して受け取った運動に関するナッジよりも強い動機付けを得る。その結果、ユーザはやっと運動(散歩)する(図中「(h)運動(散歩)する」)。ここでのロボット110の運動への誘導方法には様々なバリエーションが考えられ、上記はその一例に過ぎない。例えば、ユーザが保有するロボット110が一緒に散歩をするには小さすぎる、または散歩をすると考えにくい生物(例えば、カエル)を模写してあった場合には、そのカエル型ロボットに「近くの川が見たい」などと言わせて、そこまでの道順をユーザの手の上に乗ったまま誘導する誘導方法が採用できる。
【0058】
ロボット110は、指示情報により要求されたタスクが終わると、ユーザが運動(散歩)をしたことを示す情報、およびその走行距離または歩行速度の情報を含む実施運動量情報をB社サーバ111へ通知する。実施運動量情報を受信したB社サーバ111はA社サーバ101に、「(e)運動(散歩)の要望」に対する最終結果として、実施運動量情報(例えば、歩行距離)を通知する(図中「(i)運動量(歩行距離)を通知」)。
【0059】
A社サーバ101は実施運動量情報を記録し(図中「(j)運動量(歩行距離)を記録」)、実施運動量情報に基づき、ユーザの運動を称賛し、ユーザの運動に対するモチベーションを高めるために「5000歩、達成」などの、ユーザの運動を評価する評価メッセージをA社アプリを通じてユーザに提示する(図中「(k)運動の評価」)。
【0060】
なお、A社アプリまたはA社サーバ101は、図中「(k)運動の評価」のような評価メッセージを、B社サーバ111から得た実施運動量情報に基づかずに、ユーザにフィードバックしてもよい。例えば、A社サーバ101は、ユーザが装着する歩数センサーから生体活動情報「図中(a)生体活動情報」を得ることにより、スマートフォン100の画面に評価メッセージを表示すればよい。
【0061】
ユーザの運動量を増やすような行動変容を起こすことは、A社が持つ顧客接点であるスマートフォン100上の映像情報および音声情報などのメッセージだけでは難しい面があった。A社がB社の提供する犬型ロボットを介して、散歩をせがむこと、さらにはその犬型ロボットが一緒に散歩することで、運動(散歩)に対するユーザの心理的障壁を低くし、ユーザの運動量を増加させることができる。またこれにより、ユーザはより良く健康維持ができると期待できる。
【0062】
このようにロボット110がユーザに行動変容を求める場合には、ロボット110があたかも1つの生命体であるかのように自らの意志または要望(散歩に行きたい)をユーザに伝えることで、ユーザはその生命体(ロボット)が要望している事をやらせてあげようと思うことがある。これはユーザが持つ健康を維持したいという利己的欲求だけに基づいてユーザに行動変容を求めるのではなく、1つの意志を持つ生命体であるロボットの要望を叶えるという利他的欲求にも基づいてユーザに行動変容を求めているからである。
ここで開示したユーザの健康維持のサービスは、これまでA社が単独で実施できる利己的欲求によるアプローチだけでなく、B社のロボット110と連携することにより初めて実現可能となる利他的欲求を合わせたアプローチである。
【0063】
この情報システムは、夫々の顧客接点であるアプリまたはロボット110がより高度に連携して、他が保有する情報および能力を活用しながら、自らのサービスの品質を上げ、ユーザへより高い価値提供を行う情報システムであるとも言える。ロボットが持つ認知能力および運動能力は日々進化を続けており、このような万能なロボットが実現すれば、そのロボットが保有する固有の能力に他社がアクセスできる仕組みを構築しておくべきである。そうすることが、ユーザにとっても、サービスを提供する非ロボット会社(A社)にとっても、ロボット110を提供するロボット会社(B社)にとっても、多種多様な価値の連携を生む土台になる。
【0064】
図4は、非ロボット会社(A社)がロボット110と連携する際の処理の一例を示すフローチャートである。
図3で説明したようなA社アプリまたはA社サーバ101が、B社が運用するロボット110が持つ情報および能力にアクセスするには、事前にそのアクセス権を適切に設定しておく必要がある。
図4はそのアクセス権を予め設定しておくための処理の一例を示している。
【0065】
ユーザはスマートフォン100にインストールされたB社アプリを使って、B社アプリがA社アプリとの連携するように設定する。具体的には、B社アプリは、ユーザの入力に基づいて、ユーザの利用するA社アプリの固有IDを取得する(ステップS1)。B社アプリは、取得したA社アプリの固有IDをB社アプリの固有IDと共に、B社サーバ111に登録するための登録依頼を送信する(ステップS2)。登録依頼を受信したB社サーバ111は、A社アプリとB社アプリとのペア情報を登録する。この登録処理では、同時にロボット110のどの固有能力に対してどこまでの利用権利をA社に許諾するかを示すアクセス権の登録も行われる(ステップS3)。アクセス権の詳細については
図5を用いて後述する。ロボット110のロボットIDとB社アプリの固有IDとを含むペア情報は予めB社サーバ111に登録されている。この登録は、例えばユーザがB社アプリの初期設定画面において、ロボット110の固有IDを入力することによって行われる。
【0066】
A社アプリの登録を受け取ったB社サーバ111は、A社サーバ101に対してA社アプリが許可されるアクセス権の設定情報を通知する(ステップS4)。具体的には、B社サーバ111は、A社アプリの固有IDとB社アプリの固有IDとのペア情報に加えて、そのアクセス権の設定情報をA社サーバ101に通知する。
【0067】
A社サーバ101は、A社アプリの固有IDとB社アプリの固有IDとのペア情報、およびそのアクセス権の設定情報をメモリ101cに登録する(ステップS5)。これらの情報は、A社アプリまたはA社サーバ101がB社の提供するロボット110に対してその固有能力を利用する際に、対象のロボット110を特定すると共に、その固有能力の利用が可能か否かを判定するために用いられる。
【0068】
ここでは、A社アプリまたはA社サーバ101に対して、B社が提供するロボット110へのアクセス権を正しく設定できれば良く、上記はその一例に過ぎない。上記とは異なる登録方法が用いられてもよい。
【0069】
図5は、ロボット110についてのアクセス権の設定情報の一例を示す表である。A社はB社のロボット110に対して様々なタスクをリクエストできる。さらに、ロボット110は、様々なセンサー110cおよび運動能力(可動部110e)を具備しており、それらに対するA社からのアクセス権は、B社サーバ111だけでなく、利用する側であるA社サーバ101にも登録される。以下、アクセス権の種類とその許可レベルとについて、説明する。このアクセス権の設定は、
図4のステップS3においてユーザにより行われる。
【0070】
アクセス権の種類は「タスク」、「センサー」、および「運動能力」に分類される。「タスク」はさらに「運動の勧誘」および「会話」に分類される。「センサー」はさらに「カメラ映像」、「測距センサー」、「赤外線センサー」、「マイク音声」、「触覚センサー」、「気温・湿度・気圧センサー」、および「位置センサー」に分類される。「運動能力」はさらに「表情変更能力」、「発声能力」、「姿勢変更能力」、および「移動能力」に分類される。
【0071】
「タスク」に属する「運動の勧誘」は、ロボット110に対して、ユーザに運動を働きかけるタスクについて、非ロボット会社(A社)がとの範囲までリクエストできるかを表すアクセス権である。ここで言う運動は、例えば、散歩、ジョギング、スクワット、腕立て伏せ、スイミング、およびヨガなどであり、特に種類は問わない。ここでは、説明の都合上、リクエストできる場合にはアクセス権があるとし、リクエストできない場合にはアクセス権がないと表現する。「運動の勧誘」へのアクセス権は以下の通り、アクセス権のない「0」から、制約なくアクセス権がある「2」まで段階的に設定される。例えば、このアクセス権の許可レベルが「1」である非ロボット会社(A社)からの「運動の勧誘」タスクのリクエストに対して、ロボット運用会社(B社)は、所定運動負荷以下の軽い運動に対するリクエストのみ許可し、許可した範囲内でロボット110かつ/またはB社サーバ111を制御する。
【0072】
0:不許可
1:軽い運動のみ許可
2:すべて許可
同じく「タスク」に属する「会話」は、ロボット110を介してユーザと会話をすることを非ロボット会社(A社)がどの範囲までリクエストすることができるかを表すアクセス権である。「会話」へのアクセス権は以下の通り、アクセス権のない「0」か、アクセス権がある「1」の2択で設定することができる。例えば、この許可レベルが「1」である非ロボット会社(A社)からの「会話」タスクのリクエストに対しては、ロボット運用会社(B社)はアクセス権があるとして許可する。ロボット運用会社(B社)は、ロボットに具備されたマイク(センサー110cの「マイク音声」)とスピーカー(運動能力の「発声能力」)とを非ロボット会社(A社)に対して利用可能に設定する。これにより、非ロボット会社(A社)は、ユーザとロボット110とが会話ができるよう、ロボット110かつ/またはB社サーバ111を制御する。したがって、「会話」タスクへのアクセス権がある場合には、センサー110cの「マイク音声」および運動能力の「発声能力」に対してもアクセス権があるように連動して、設定される。
【0073】
0:不許可
1:許可
タスクは上記の説明のように、非ロボット会社からロボット会社が何らかのタスクをロボット110で実行するリクエストを受けた際に、そのリクエストを実行するかを判定するために用いられる。そのため、
図5のアクセス権の設定情報は非ロボット会社ごとに設定される。
【0074】
尚、本開示においては、ロボット110が、非ロボット会社からのリクエストに基づき、ユーザかつ/またはリアル空間の対象物体(例えば、テレビのリモコン、照明のスイッチ、または扉のノブ)に対して何らかの働きかけまたは作用を行う一連の自律的な動作をタスクと呼ぶこととする。
【0075】
「カメラ映像」は、ロボット(110)が具備するイメージセンサー(例えば、RGBイメージセンサー)へのアクセス権である。これは、ロボットの目と外見上認知される個所に具備されているイメージセンサーであってもよい。「カメラ映像」へのアクセス権は、以下の通り、アクセス権のない「0」から制約なくアクセス権が付与される「3」まで段階的に設定することができる。例えば、この許可レベルが「2」である非ロボット会社(A社)からのアクセス要求に対しては、ロボット運用会社(B社)は低品質動画映像を返すようにロボット(110)かつ/またはB社サーバ111を制御する。
【0076】
0:不許可
1:静止画のみ許可
2:低品質動画まで許可
3:すべて許可
「測距センサー」は、ロボット110が具備する対象物までの距離が測定できるセンサー110c(例えば、TOFセンサー、LiDARなど)へのアクセス権である。「測距センサー」へのアクセス権は、以下の通り、アクセス権のない「0」か、アクセス権がある「1」の2択で設定することができる。例えば、この許可レベルが「1」である非ロボット会社(A社)からのアクセス要求に対しては、ロボット運用会社(B社)は測距センサーが取得したデータ(例えば、デプスイメージ)を返すようにロボット110かつ/またはB社サーバ111を制御する。
【0077】
0:不許可
1:許可
「赤外線センサー」は、ロボット110が具備する赤外線が測定できるセンサーへのアクセス権である。赤外線センサーは、近赤外線領域においては暗闇での被写体認識、遠赤外線領域においては被写体温度分布の測定などに使われる。「赤外線センサー」へのアクセス権は、以下の通り、アクセス権のない「0」か、アクセス権がある「1」の2択で設定することができる。例えば、この許可レベルが「1」である非ロボット会社(A社)からのアクセス要求に対しては、ロボット運用会社(B社)は、赤外線センサーが取得したデータ(例えば、サーモグラフィー映像)を返すようにロボット110かつ/またはB社サーバ111を制御する。
【0078】
0:不許可
1:許可
「マイク音声」は、ロボット110が具備するマイクへのアクセス権である。「マイク音声」へのアクセス権は、以下の通り、アクセス権のない「0」か、アクセス権がある「1」の2択で設定することができる。例えば、この許可レベルが「1」である非ロボット会社(A社)からのアクセス要求に対しては、ロボット運用会社(B社)はマイクが取得した音声データを返すようにロボット110かつ/またはB社サーバ111を制御する。
【0079】
0:不許可
1:許可
「触覚センサー」は、ロボット110が具備するロボット表面での触覚感覚が測定できるセンサー(例えば、MEMSシリコン毛デバイスセンサー)へのアクセス権である。「触覚センサー」へのアクセス権は以下の通り、アクセス権のない「0」か、制約なくアクセス権が付与される「2」まで段階的に設定することができる。例えば、この許可レベルが「1」である非ロボット会社(A社)からのアクセス要求に対しては、ロボット運用会社(B社)は触覚センサーが取得したデータ(例えば、圧力分布映像)の内、ロボットの一部分(例えば、頭部)のデータのみを返すようにロボット110かつ/またはB社サーバ111を制御する。
【0080】
0:不許可
1:一部分のみ許可
2:すべて許可
「気温・湿度・気圧センサー」は、ロボット110が具備する気温センサー、湿度センサー、および気圧センサーへのアクセス権である。「気温・湿度・気圧センサー」へのアクセス権は、以下の通り、アクセス権のない「0」か、アクセス権がある「1」の2択で設定することができる。例えば、この許可レベルが「1」である非ロボット会社(A社)からのアクセス要求に対しては、ロボット運用会社(B社)は気温・湿度・気圧センサーが取得した夫々のデータを返すようにロボット110かつ/またはB社サーバ111を制御する。
【0081】
0:不許可
1:許可
「位置センサー」は、ロボット110が具備するロボットの現在位置を測定するセンサーへのアクセス権である。「位置センサー」へのアクセス権は以下の通り、アクセス権のない「0」か、アクセス権がある「1」の2択で設定することができる。例えば、この許可レベルが「1」である非ロボット会社(A社)からのアクセス要求に対しては、ロボット運用会社(B社)は位置センサーが取得したロボットの現在位置情報を示すデータを返すようにロボット110かつ/またはB社サーバ111を制御する。
【0082】
0:不許可
1:許可
ここまでがロボット110に具備されたセンサー110cへのアクセス権に対する説明である。続いて、ロボットが具備する運動能力へのアクセス権について説明する。
【0083】
「表情変更能力」は、ロボット110が具備する顔の外見的特徴を変更する能力へのアクセス権である。これは、ロボット110に、外見上、顔と認識できる部分がある場合に、その顔を構成するパーツを動かす能力、またはパーツの色を変更する能力であってもよい。「表情変更能力」へのアクセス権は、以下の通り、アクセス権のない「0」か、アクセス権がある「1」の2択で設定することができる。例えば、この許可レベルが「1」である非ロボット会社(A社)からのアクセス要求に対しては、ロボット運用会社(B社)は顔表情の変更要求に応じて顔表情を変更するようにロボット110かつ/またはB社サーバ111を制御する。
【0084】
0:不許可
1:許可
「発声能力」は、ロボット110が具備する音声出力能力へのアクセス権である。これは、ロボット110に、外見上、口と認識できる部分がある場合に、その口を構成するパーツを動かす能力、またはその口の周辺部から音声を出力する能力であってもよい。「発声能力」へのアクセス権は、以下の通り、アクセス権のない「0」か、アクセス権がある「1」の2択で設定することができる。例えば、この許可レベルが「1」である非ロボット会社(A社)からのアクセス要求に対しては、ロボット運用会社(B社)は発声するべき音声情報に応じて口の周辺部から音声を出力するようにロボット110かつ/またはB社サーバ111を制御する。
【0085】
0:不許可
1:許可
「姿勢変更能力」は、ロボット110が具備する姿勢を変更する能力へのアクセス権である。これは、ロボット110の可動部110eにある複数の関節機構部の角度を変更する能力であってもよい。ただし、ロボット110自体の位置を変える能力ではない。「姿勢変更能力」へのアクセス権は、以下の通り、アクセス権のない「0」から制約なくアクセス権が付与される「2」まで段階的に設定することができる。例えば、この許可レベルが「1」である非ロボット会社(A社)からのアクセス要求に対しては、ロボット運用会社(B社)は頭部のみを要求に応じて動かすようにロボット110かつ/またはB社サーバ111を制御する。
【0086】
0:不許可
1:頭部のみ許可
2:すべて許可
「移動能力」は、ロボット110が具備する移動する能力へのアクセス権である。これは、ロボット110の可動部110eにある複数の関節機構部の角度を変更する能力であってもよい。ただし、「移動能力」は、ロボット110自体の位置を変える能力である。
「移動能力」へのアクセス権は、以下の通り、アクセス権のない「0」から制約なくアクセス権が付与される「4」まで段階的に設定することができる。例えば、この許可レベルが「1」である非ロボット会社(A社)からのアクセス要求に対しては、ロボット運用会社(B社)は、ユーザ宅の中でユーザが許可したエリアのみを低速で移動することを許可するようにロボット110かつ/またはB社サーバ111を制御する。例えば、この許可レベルが「3」である非ロボット会社(A社)からのアクセス要求に対しては、ロボット運用会社(B社)はユーザが許可した宅内、宅外のエリアのみを高速で移動することを許可するようにロボット110かつ/またはB社サーバ111を制御する。ここでユーザが許可したエリアは、ユーザがあらかじめ設定しておく条件の1つである。例えば、ユーザのプライバシーを侵害してしまう恐れのあるエリア(例えばお風呂場)にはロボットが近寄れないよう予め設定しておくことができる。
【0087】
0:不許可
1:許可済み宅内のみ、低速での移動を許可
2:許可済み宅内/宅外まで、低速での移動を許可
3:許可済み宅内/宅外まで、高速での移動を許可
4:すべて許可
図6は、リクエストされたタスクの実行可否を判断するための緊急度のレベルの一例を示す表である。
図3の説明でA社サーバ101がB社サーバ111に対して運動を要請するリクエスト情報を送信し(「(e)運動(散歩)を要望」)、これに伴いB社サーバ111がロボット110に対して運動を要請する指示情報を送信する(「(f)運動(散歩)を誘導指示」)シーンがある。このシーンにおいて送信されるリクエスト情報は緊急度情報を含む。緊急度情報は、ユーザが運動する緊急性の程度(緊急度)を示す情報である。リクエスト情報を受信するB社サーバ111は、必要緊急度情報を管理している。必要緊急度情報は、リクエストされたタスクをロボット110が実行するために必要となる緊急性の程度(必要緊急度)を示す情報である。
【0088】
必要緊急度は、ユーザが何か特定の作業に集中している時など、他社(例えばA社)からロボット110を介して要求されたユーザへの緊急度の低いリクエストを無効化、またはその働きかけが適当なタイミングになるまでリクエストの実行を保留させるために用いられる。必要緊急度情報は、B社サーバ111またはロボット110により保有され、B社サーバ111またはロボット110により使用される情報である。他社(例えばA社)がロボット110に対して要求するリクエスト情報に含まれる緊急度情報が示す緊急度も、必要緊急度情報と同じ基準で必要緊急度が設定されている。必要緊急度は、
図6に示すように高、中、低というように段階的に設定されてもよい。
【0089】
「高」:必要緊急度が「高」の場合、生命、健康、危険、または財産の損失リスクに関するような緊急性の高い情報をユーザに通知するリクエストが処理される。そうでなければ、リクエストは保留または却下される。
【0090】
「中」:必要緊急度が「中」の場合、必要緊急度が「高」に分類されるリクエストに加えて、日常生活における重要な情報をユーザに通知するリクエストが実行される。そうでなければ、リクエストは保留または却下される。日常生活における重要な情報は、例えば次のスケジュールをユーザに通知するための情報および重大な損失リスクがある状態(例えばガスコンロつけっ放し)をユーザに通知するための情報を含む。
【0091】
「低」:必要緊急度が「低」の場合、すべてのリクエストが実行される。
【0092】
このように、必要緊急度が高く設定されると、他社サーバ(A社サーバ101)からB社サーバ111が受け取ったリクエストの内、ユーザにとって重要で緊急性のあるリクエストだけが即座に処理される。それ以外のリクエストは保留または却下される。ユーザにとって重要で緊急性のあるリクエスト情報に含まれる緊急度情報は、発信元の他社(A社)によって上記必要緊急度の定義に従い、付与される。
【0093】
より具体的には、他社サーバ(例えばA社サーバ101)が送信したリクエスト情報に含まれる緊急度情報(高、中、または低)が、B社(例えばB社サーバ111)に設定されている必要緊急度情報(高、中、または低)以上であれば、そのリクエスト情報が示すリクエストは即座に処理される。そうでなければ、そのリクエストは即座に実行されず、適切なタイミングまで保留または却下される。
【0094】
以上、
図3に示した健康管理におけるロボット110の能力提供のシナリオを実現するために、A社およびB社間の連携設定と、A社のロボット能力へのアクセス権と、リクエストの緊急度について説明した。ここからは、これらを用いてこのシナリオを実現する処理全体の流れを説明していく。
【0095】
図7は、非ロボット会社がロボット110に対してタスクをリクエストする処理の一例を示すフローチャートである。特に、
図7は、リクエストが即座に実施されるケースを示している。
【0096】
図3でも説明したようにスマートフォン100にインストールされた保険会社A社のアプリケーション(A社アプリ)は、ユーザの生体活動情報を継続的に検出し、検出した生体活動情報をスマートフォン100内のメモリに蓄積する(ステップS11)。さらに、A社アプリは、蓄積した生体活動情報を定期的にA社サーバ101へアップロードする(ステップS12)。生体活動情報を受信したA社サーバ101は、ユーザとA社との保健契約に基づき、ユーザに運動を推奨するメッセージ(ナッジ)の送信の必要性を判定する(ステップS13)。ナッジの送信の必要性があると判定した場合、A社サーバ101は、ナッジを送信する(ステップS14)。逆に、運動を推奨するメッセージの送信の必要性がないと判断した場合、A社サーバ101は、A社アプリからアップロードされるユーザの生体活動情報を蓄積する処理を継続する。
【0097】
ステップS15において、スマートフォン100は、運動を推奨するメッセージを表示する。これにより、運動を推奨するメッセージがユーザに提示される。
【0098】
ステップS16において、A社アプリかつ/またはA社サーバ101は、運動を推奨するメッセージを表示した後においても、ユーザの生体活動情報を継続的に検出し、検出した生体活動情報に基づいてユーザの運動量を算出し、算出したユーザの運動量を評価する。
【0099】
A社サーバ101は、ユーザとA社との保健契約に基づき、ユーザに対して運動を推奨するさらに強い働きかけの必要性を判定する。ここで、A社アプリかつ/またはA社サーバ101は、ステップS16で算出したユーザの運動量が目標運動量未満である状態が所定回数以上観測された場合、ナッジによりユーザの運動量が改善されなかったので、さらに強い働きかけ必要性があると判定する。ここでは、強い働きかけの必要性があると判定されたものとする。逆に、さらに強い働きかけの必要性がないと判定された場合、A社サーバ101は、A社アプリからアップロードされたユーザの生体活動情報を蓄積する処理を継続する。ここで、A社アプリかつ/またはA社サーバ101は、例えばステップS16で算出したユーザの運動量が目標運動量未満である状態が所定回数以上観測されなかった場合、さらに強い働きかけの必要性はないと判定する。
【0100】
ステップS17において、さらに強い働きかけの必要があると判定したA社サーバ101は、B社サーバ111に、ユーザに運動を働きかけるタスクをロボット110にリクエストするリクエスト情報を送信する。
【0101】
リクエスト情報は、ユーザのA社アプリの固有ID、リクエストの緊急度を示す緊急度情報、リクエストを実行するまでの保留期間を示す保留期間情報、およびリクエストの内容を含む。リクエストの内容は例えばロボット110にリクエストするタスクを示す。リクエスト情報を受信したB社サーバ111は、リクエスト情報に含まれるユーザのA社アプリの固有IDから、A社アプリの固有IDに対応するB社アプリの固有IDを特定することができる。B社サーバ111は、B社アプリの固有IDに対応するロボット110のロボットIDを管理しているので、A社からリクエストされたタスクを実行するべきロボット110を一意に特定することができる。
【0102】
さらに、リクエスト情報は、ユーザに必要とされる目標運動量を含む。目標運動量は、例えば1日あたり5000歩または1日あたりの消費カロリー150Kcalなどである。この例では、目標運動量は1日あたり5000歩であり、現時点でのユーザの1日あたりの運動量は2000歩である。A社サーバ101は、1日あたり5000歩の散歩をユーザに促すために、B社サーバ111に対してリクエスト情報を送信する。また、このリクエスト情報に含まれる緊急度情報が示す緊急度は「低」である。
【0103】
ステップS18において、リクエスト情報を受信したB社サーバ111は、リクエストに対する応答可否を判定する。B社サーバ111は、このリクエスト情報を受信する前に必要緊急度情報が示す必要緊急度を「低」に設定している(ステップS10)。そこで、B社サーバ111は、受信したリクエスト情報に含まれる緊急度情報が示す緊急度と、事前設定している必要緊急度情報が示す必要緊急度とを比較して、リクエスト情報への応答可否を判定する。ここでは、リクエスト情報に含まれる緊急度情報が示す緊急度が「低」であり、必要緊急度情報が示す必要緊急度が「低」であり、緊急度情報が示す緊急度が必要緊急度情報が示す必要緊急度以上であるため、B社サーバ111は、このリクエスト情報が示すリクエストを即座に実行すると判定する。そのため、B社サーバ111は、リクエストの応答することを示す応答可情報をA社サーバ101に送信する(ステップS19)。リクエスト情報および必要緊急度情報は第1情報の一例である。
【0104】
応答可情報を送信したB社サーバ111は、ユーザに目標運動量以上の運動をユーザに促す誘導動作を指示する指示情報をロボット110に送信する(ステップS20)。この誘導動作は、上述したようにロボット110がユーザに「散歩に行こう」と呼び掛ける、かつ/またはリードを持ってきて散歩に行きたいとせがむ、というような動作である。この誘導動作は、ロボット110の容姿および運動能力に応じて様々な形態が採用される。
【0105】
指示情報は有効期限を示す有効期限情報を含んでいてもよい。有効期限は例えば10分間である。ロボット110が指示情報に基づき有効期限の間、ユーザを散歩に誘い続けてもユーザがそれに応じない場合、ロボット110は誘導動作を自動的に中止しても良い。
さらに、このようにユーザの行動変容に失敗した場合、さらに一定時間が経過した後またはユーザがリラックスしている時に、ロボット110は、再び誘導動作をしても良い。また、この場合における誘導動作の有効期限は、失敗した前回の有効期限よりも短くても良い。有効期限を短く設定するようにしているのは、失敗した誘導動作を同様に繰り返すと、ユーザとロボットとの関係が悪化するリスクがあるためである。
【0106】
B社サーバ111から指示情報を受信したロボット110は、指示情報に従ってユーザを運動(1日あたり5000歩の散歩)に連れ出す誘導動作を行う(ステップS21)。
この例では、ロボット110は、犬型ロボットであるので、「ワン、ワン」と鳴きながら尻尾を振る誘導動作を行う。この誘導動作によりユーザに散歩を連想させることができる。その他、ロボット110は、ユーザが理解可能な言語で「散歩に行こう」または「散歩に行きたい」などと話しかける誘導動作、かつ/または、散歩に使うリードを持ってきて散歩に行きたいという意志を示す誘導動作を有効期限の間繰り返してもよい。
【0107】
A社サーバ101がロボット110のセンサー110cまたは運動能力に対するアクセス権を持ち、運動能力への直接的なアクセスを求めている場合、A社サーバ101は、ロボット110の周辺状況を分析し、分析結果に基づいてロボット110の表情、発声、姿勢、および移動を制御するコマンドをB社サーバ111を介して、または直接、ロボット110に送信してもよい。これにより、A社サーバ101は、ロボット110を直接的に制御することができる。
【0108】
ユーザは、これらロボット110からの誘導動作を受けて散歩をする決心をして、ロボットと一緒に運動(散歩)をする(ステップS22)。ロボット110は、5000歩の散歩を指示するB社サーバ111からの指示情報に従い、散歩の歩数が5000歩となるように、散歩するコースをユーザに提案する、かつ/または、自ら散歩を先導しても良い。
【0109】
小さいまたは歩行する機能がないというようにロボット110がユーザと一緒に歩く能力を有していない場合には、ロボット110は散歩の歩数が5000歩となるように、散歩するコースをユーザに提示しても良い。この場合、目標運動量を達成するようにロボット110は、ユーザに働きかける誘導動作を行っても良い。例えば、ロボット110は、「近くに出来たスーパーマーケットに寄ってみよう」、または「今夜は丘の上に登ると流れ星が見られるかも知れない」などの発話をしてもよい。これにより、散歩の歩数(運動量)が調整される。
【0110】
このようにして、無事に運動(散歩)を行ったユーザが帰宅したことをカメラ画像や位置センサーなどによって検知すると、ロボット110はユーザとの運動(散歩)が終わったことを示す終了通知と、その運動の実施運動量を示す実施運動量情報とをB社サーバ111に送信する(ステップS23)。実施運動量情報は、例えば、歩数、散歩コース、および散歩のペースなどを示す情報を含む。
【0111】
B社サーバ111は、A社サーバ101に対して、リクエストの終了通知と、実施運動量情報とを送信する(ステップS24)。終了通知と実施運動量情報とを受信したA社サーバ101は、リクエストした運動が実施されたことを示す情報と、実施運動量情報とを実施履歴としてメモリ101cに記録する(ステップS25)。
【0112】
A社サーバ101は、実施運動量情報の示す実施運動量が目標運動量情報が示す目標運動量以上であると判定した場合、ユーザが目標運動量を達成したことを示す評価メッセージを、スマートフォン100に送信する(ステップS26)。評価メッセージを受信したスマートフォン100は、A社アプリを通じて目標運動量が達成されたことを示す評価メッセージを表示する(ステップS27)。これにより、ユーザは一定の達成感を得ることができ、運動(散歩)への抵抗感が減る。なお、A社サーバ101は実施運動量が目標運動量未満の場合、そのことを示す評価メッセージをスマートフォン100に送信してもよい。
【0113】
ここでは、運動に誘導するリクエストが即座に実施される場合を説明したが、ユーザが仕事の会議中などで直ちにロボット110からの働きかけに応じることができないケースもある。
【0114】
図8は、非ロボット会社がロボット110に対してタスクをリクエストする処理の一例を示すフローチャートである。特に、
図8は、リクエストが即座に実施されないケースを示す。
図7との違いは、B社サーバ111がリクエスト情報を受信した時の必要緊急度情報にある。
図7では必要緊急度情報が示す必要緊急度が「低」であり、どのようなリクエストもロボット110により即座に実施される状況であった。一方、
図8では必要緊急度情報が示す必要緊急度が「中」であり、リクエスト情報に含まれる緊急度情報が示す緊急度が「中」または「高」でない限り、リクエストは即座に実施されない。この場合、リクエストは、適切なタイミングまで保留される、または却下される。
図8は、適切なタイミングまでリクエストが保留されるケースを例示する。
【0115】
A社がA社アプリおよびA社サーバ101を用いてユーザの生体活動情報を継続的に検出して、運動(散歩で5000歩相当)を行うよう緊急度が「低」のリクエスト情報をB社サーバ111に送信するまでの処理は、
図7と同じであるため説明を省略する。異なる点は、このリクエスト情報が送信される処理(ステップS17)の前にある。
【0116】
ステップS801において、ロボット110は、ロボット110とのコミュニケーションをとらない意図を含むユーザからの発言またはユーザの状況を判断する。ステップS802において、ロボット110は、前記発現又は前記状況の判断結果、に基づいて、必要緊急度を「中」(所定のレベルの一例)に更新する。
【0117】
例えば、ユーザがロボット110に対して「静かにしておいて」または「話しかけないで」といったロボット110とのコミュニケーションを取らない意図の発言をした場合、ロボット110は必要緊急度を「低」から「中」に変更すればよい。或いは、ロボット110は、センサー110cのセンシングデータからユーザが会話中または車の運転中であることを認識した場合、必要緊急度を「低」から「中」に変更すればよい。必要緊急度を「中」に変更したロボット110は、必要緊急度を「中」に更新する更新依頼をB社サーバ111に送信する。この更新依頼を受信したB社サーバ111は、必要緊急度を「低」から「中」に更新する(ステップS802)。
【0118】
A社サーバ101からリクエスト情報を受信したB社サーバ111は、リクエスト情報に含まれる緊急度と必要緊急度とに基づき、応答可否を判定する(ステップS18)。ここでは、緊急度「低」が必要緊急度「中」よりも低いため、B社サーバ111は、リクエストを即座に実行できないと判定する。即座に実行できないと判定したB社サーバ111は、A社サーバ101に対して、リクエストが保留されたことを示す保留情報を送信する(ステップS803)。
【0119】
以後、ロボット110は、必要緊急度を変更の要否を判定する処理を、ユーザの発言およびセンサー110cからのセンシングデータに基づいて継続的に行う(ステップS804)。ユーザが明示的に必要緊急度を下げる発言をした場合、ユーザが緊急性のない話題を含む発言をした場合、またはユーザが緊急性の低い行動をとっていると判定した場合、ロボット110は必要緊急度を「低」に設定すればよい。緊急性の低い行動は、例えば、テレビを見る、スマートフォンを操作するなどの行動である。
【0120】
必要緊急度を「中」から「低」へ更新した場合、ロボット110は、B社サーバ111に対して、必要緊急度を「低」へ更新するようための更新依頼を送信する(ステップS805)。
【0121】
更新依頼を受信したB社サーバ111は、必要緊急度を「中」から「低」へ更新する。
次に、B社サーバ111は、保留中のリクエストの応答可否を再判定する(ステップS806)。ここで、ステップS803でA社サーバ101から送信されたリクエスト情報に含まれる緊急度情報が示す緊急度が「低」であり、現在の必要緊急度情報が示す必要緊急度が「低」であり、緊急度が必要緊急度以上であるため、B社サーバ111はA社サーバ101に対して、応答可情報を送信する(ステップS807)。
【0122】
ここから先の処理は、
図7と同じであるため説明を省略する。
【0123】
図7、
図8にて説明したように、B社サーバ111の仕組みを纏めると下記のようになる。B社サーバ111は、A社(A社アプリ)が保有しないセンサー110cまたはロボット110の運動能力が必要なリクエストを、ユーザの身近にあるB社のロボット110に実行させる。B社サーバ111は、ユーザ毎にA社とB社との連携設定を行う。B社サーバ111は、ユーザの事前入力に基づいて、B社のロボット110が有する各能力をどのレベルまでA社に利用させるかを規定するアクセス権の設定情報を事前登録する。B社サーバ111は、ユーザがロボット110に構うことができない状況にある場合、緊急度の低いリクエストを保留または却下する。B社サーバ111は、保留したリクエストを、ユーザからの要請またはユーザの状況変化に応じて適切なタイミングに再度実行する。
【0124】
図9は、B社サーバ111の処理の一例を示すフローチャートである。
図9の処理において、B社サーバ111は、非ロボット会社(A社)がリクエストしたタスクを実施するために必要なアクセス権を有しているか、ユーザに対してリクエストされたタスクを即座に実行するべき緊急性があるか、および実行が保留されたリクエストが保留期間を超過していないかを判定し、判定結果に基づいて非ロボット会社(A社)のリクエストに応答する。具体的には以下の通りである。
【0125】
ステップS101において、B社サーバ111は、A社サーバ101からユーザに運動を働きかけるタスクをロボット110にリクエストするリクエスト情報を受信する。
【0126】
ステップS102において、B社サーバ111は、リクエストされたタスクに対するA社のアクセス権を確認する。まず、B社サーバ111は、リクエスト情報に含まれるA社アプリの固有IDが、B社アプリの固有IDと対応付けられたペア情報がメモリ111cに事前登録されているか否かを判定する。そして、B社サーバ111は、事前登録されていると判定した場合、B社サーバ111は、リクエスト情報がリクエストするタスクのアクセス権をA社が保有しているか否かを
図5に示すアクセス権の設定情報に基づいて確認する。ここでは、
図5の示す「運動の勧誘」タスクについてのA社のアクセス権の許可レベルが「1」または「2」に設定されているため、リクエストされたタスクについてA社はアクセス権を有すると判定される。なお、「運動の勧誘」タスクについてのA社のアクセス権の許可レベルが「0」の場合、リクエストされたタスクについてA社はアクセス権を有していないと判定される。
【0127】
A社がアクセス権を有していないと判定された場合(ステップS103でNO)、B社サーバ111は、リクエストされたタスクを実行するためのアクセス権がないことを示すメッセージをA社サーバ101に送信し(ステップS104)、処理を終了する。
【0128】
一方、A社がアクセス権を有していると判定された場合(ステップS103でYES)、B社サーバ111は、ステップS101で受信したリクエスト情報に含まれる緊急度情報が示す緊急度と、現在設定されている該当するユーザの必要緊急度とを比較して、当該リクエスト情報が示すリクエストを即座に実行するか否かを判定する(ステップS105)。
【0129】
緊急度が必要緊急度未満の場合(ステップS105でNO)、B社サーバ111は、リクエスト情報を受信してからの経過時間が保留期間内であるか否かを判定する(ステップS109)。
【0130】
保留期間は、タスクの実行が保留されたリクエストをいつまで保留するかを示す時間情報である。B社サーバ111は、リクエスト情報を受信してからの経過時間が保留期間を超えると(ステップS109でNO)、そのリクエスト情報が示すリクエストを却下する(ステップS111)。リクエストを却下したB社サーバ111は、リクエストを行ったA社サーバ101に対して保留期間を超えたためリクエストが却下された旨のメッセージを送信し、処理を終了する。
【0131】
これにより、必要緊急度が「低」に更新された瞬間に、大量に蓄積された緊急度が「低」のリクエストが一斉に実行されることが防止される。さらに、受信されてからから長時間経過したような、現時点では実施する意味のないリクエストの実行が防止される。このようなリクエストの却下は、ロボット110によるユーザへの働きかけの効果を維持するためにも必要である。
【0132】
一方、リクエスト情報を受信してからの経過時間が保留期間内の場合(ステップS109でYES)、B社サーバ111は、ロボット110を介してユーザの状態データを取得し、取得した状態データに基づいて現在の必要緊急度をロボット110を介して再評価する(ステップS110)。もしくは、ロボット110がユーザの状態データを取得し、取得した状態データに基づいて現在の必要緊急度を自ら設定し、B社サーバ111に通知するようにしてもよい。ステップS110の処理が終了すると、処理はステップS105に戻る。これにより、ステップS105、S109、S110に示すループ処理が実行される。このループ処理により、ユーザに働きかけを行うのに必要となる必要緊急度以上の緊急度を持つリクエストのみが随時、実行され、そうでないリクエストは保留期間の間、実行が保留され続ける。状態データは、ロボット110において検知したユーザの状態に関わり動的に変化するデータである。具体的には、後述の
図9に示すようにロボット110のセンサー110cによるセンシングデータに基づいて設定される必要緊急度情報を含む。
【0133】
A社サーバ101からのリクエストに含まれる緊急度情報が示す緊急度がB社サーバ111またはロボット110にて管理されている必要緊急度以上である場合(ステップS105でYES)、処理はステップS106に進む。
【0134】
ステップS106において、B社サーバ111は、ユーザが運動を働きかけてよい状態になったので、ロボット110に対して、A社サーバ101からリクエストされたタスクの実行を指示する指示情報を送信する。指示情報を受信したロボット110は指示情報にしたがってタスクを実行する。これにより、ロボット110は、ユーザを散歩に連れ出す誘導動作を行う。この誘導動作によって散歩を決心したユーザはロボット110と一緒に散歩する。散歩からの帰宅したロボット110は、タスクの実行結果を散歩の終了を告げる終了通知と、散歩における実施運動量情報とをB社サーバ111に送信する。これにより、B社サーバ111は、終了通知と実施運動量情報とを受信する(ステップS107)。
【0135】
ステップS108において、B社サーバ111は、受信した終了通知と実施運動量情報とをA社サーバ101に送信する。
【0136】
なお、A社サーバ101が、ロボット110に対する、センサー110c、運動能力である表情変更能力、発声能力、姿勢変更能力、かつ/または移動能力のアクセス権を有している場合、A社サーバが、B社サーバ111を介して、ロボット110の周辺状況に応じて、直接的にロボット110の顔表情、音声発話、姿勢、かつ/または移動を制御してもよい。この場合も、B社サーバ111からタスクの実行が指示されたロボット110は、タスクの実行結果をB社サーバ111に送信すればよい。つまり、A社サーバ101はロボット110を遠隔制御しているとはいえ、ロボット110を直接的に制御しているのは、B社サーバ111であり、ロボット110とB社サーバ111との関係は、上述した態様と同じである。
【0137】
A社サーバ101によるロボット110の遠隔制御は、「5G」や「Beyond 5G」などと呼ばれる高速かつ低遅延の無線通信インフラが整うことで、今後の実現が期待される。タスクの実行結果を受け取ったB社サーバ111は、その実行結果を、タスクのリクエスト元であるA社サーバ101に送信して処理を終える。
【0138】
図10は、必要緊急度の設定例を示す表である。この図は、朝8時から夜8時までのユーザの状態の遷移を示している。以下の説明では、必要緊急度は、ロボット110が設定するものとして説明するが、これは一例であり、B社サーバ111が設定してもよい。この場合、B社サーバ111は、ロボット110を介して取得したセンシングデータに基づいて必要緊急度を設定すればよい。
【0139】
ロボット110は、ユーザの状態を継続的にしてセンシングして、センシング結果からユーザの状態を随時検出し、検出結果に基づき必要緊急度を適宜更新する。
【0140】
8:00-10:00の時間帯において、ユーザは他人と対面で会話している。ロボット110はカメラおよびマイクなどのセンサー110cを用いて、ユーザが他人と会話していると判定する。人の行動および状態を静止画、動画、または音声から判定または説明するニューラルネットワークが開発されている。そのため、ロボット110は、このようなニューラルネットワークによる画像認識技術または音声認識技術を用いてユーザの状態を検出すればよい。ロボット110は、ユーザの状態が会話中であると判定した後、必要緊急度を「中」に設定する。これにより、「中」以上の緊急度を持つリクエストでなければ、リクエストは実行されなくなる。そして、ロボット110は設定された必要緊急度をB社サーバ111と共有する。
【0141】
さらに、この判定においては、ロボット110はカメラから取得したユーザの表情およびジェスチャー、かつ/またはマイクから取得した音声情報に含まれる会話内容および音声トーンなどからユーザの感情分析を行っても良い。ここで、感情分析の結果は、例えば「ポジティブ」、「ニュートラル」、および「ネガティブ」のように分類される。感情分析の結果が「ポジティブ」または「ニュートラル」である会話の場合、タスクを実行するためのロボット110の会話への割り込みは、ユーザにより許容される可能性が高い。この場合、ロボット110は上記で設定した必要緊急度を下げてもよい。また、感情分析の結果が「ネガティブ」である会話の場合、会話への割り込みがユーザにより許容されない可能性が高いので、ロボット110は上記で設定した必要緊急度を維持または上げても良い。必要緊急度が変更した場合には、ロボット110は変更した必要緊急度をB社サーバ111と共有する。
【0142】
このようにユーザの状態判定に、ユーザの感情分析を加味することで、ユーザにとってより適切なタイミングで、ロボット110はタスクを処理することができる。
【0143】
ここでは、感情分析の結果は3つに分類されていたが、本開示はこれに限定されない。
感情分析の結果は、「喜怒哀楽」のようにより多く分類されてもよいし、「ポジティブ」および「ネガティブ」の2種類のようにより少なく分類されてもよい。また、ロボット110は、ユーザのストレス度合いを推定し、推定したストレス度合いの数値範囲に応じて必要緊急度を調整してもよい。
【0144】
10:00-12:00の時間帯において、ユーザはコンピュータに向かって作業(仕事)をしている。ロボット110はカメラ、マイクなどセンサー110cを用いて、ユーザがコンピュータを操作していることを検出する。ロボット110はユーザがコンピュータで作業中であると判定した後、必要緊急度を「中」に維持する。この場合、「中」以上の緊急度を持つリクエストでなければ、リクエストは実行されない。そして、ロボット110は設定された必要緊急度をB社サーバ111と共有する。
【0145】
12:00-13:00の時間帯において、ユーザは椅子に座って食事をしている。ロボット110はカメラ、マイクなどのセンサー110cを用いて、ユーザが食事中であることを検出する。ロボット110はユーザが食事中であると判定した後、必要緊急度を一番低い「低」に設定する。そして、ロボット110は設定された必要緊急度をB社サーバ111と共有する。
【0146】
13:00-15:00の時間帯において、ユーザは電話もしくは会議をしている。ロボット110はカメラ、マイクなどのセンサー110cを用いて、ユーザが携帯電話を介して会話している(電話中)、またはコンピュータを介して会話している(会議中)ことを検出する。ロボット110はユーザが電話中または会議中であると判定した後、必要緊急度を「中」に設定する。この場合、「中」以上の緊急度を持つリクエストでなければ、リクエストは実行されない。そして、ロボット110は設定された必要緊急度をB社サーバ111と共有する。
【0147】
15:00-16:00の時間帯において、ユーザは運動をしている。ロボット110はカメラ、マイクなどのセンサー110cを用いて、ユーザが運動していることを検出する。ロボット110はユーザが運動中であると判定した後、必要緊急度を「中」に維持する。
【0148】
さらに、この判定においては、ロボットはカメラから取得した画像に基づいてユーザの皮膚の色彩の周期的変化を計測してもよいし、スマートウォッチなどを用いてユーザの心拍数を計測してもよい。ここで計測された心拍数が所定値よりも低い場合、タスクを実行するためのロボット110による運動への割り込みがユーザに許容される可能性が高い。
この場合、ロボット110は必要緊急度を下げてもよい。一方、心拍数が所定値より高い場合、タスクを実行するためのロボット110による運動への割り込みがユーザに許容されない可能性が高い。そのため、ロボット110は必要緊急度を維持してもよいし、必要緊急度を上げてもよい。必要緊急度が変更された場合、ロボット110は変更された必要緊急度をB社サーバ111と共有する。
【0149】
このようにユーザの状態が運動中であると判定された場合に、ユーザの心拍数を加味することで、ユーザにとってより適切なタイミングで、ロボット110はタスクを処理することができる。
【0150】
16:00-20:00の時間帯において、ユーザは寝転がってリラックスしている。
ロボット110はカメラ、マイクなどのセンサー110cを用いて、ユーザがリラックス状態であることを検出する。ロボット110はユーザがリラックス状態であると判定した後、必要緊急度を一番低い「低」に設定する。そして、ロボット110は設定された必要緊急度をB社サーバ111と共有する。
【0151】
このように、ユーザの状態は時々刻々と変化する。ロボット110はセンサー110cを活用してユーザの状態をセンシングし、ユーザの状態を随時判定する。さらにその判定結果をもとに必要緊急度を更新する。ロボット110は、必要緊急度を更新した場合、更新した必要緊急度をB社サーバ111に通知し、最新の必要緊急度をB社サーバ111と共有する。このように、必要緊急度は、ユーザの状態に応じて随時変化するのである。
【0152】
このように本実施の形態によれば、A社サーバ101は、ユーザに対して運動することを働きかける必要があると判断したときに、B社サーバ111が管理するロボット110を通じて、ユーザに運動することを働きかけることができる。その結果、A社サーバ101は、自身がロボット110を管理していないにも関わらず、ロボット110に対してユーザが運動することを働きかける動作を行わせることができる。そのため、ユーザのスマートフォン100の映像音声出力部100fに運動することを促すメッセージが表示されるに過ぎない場合に比して、運動することについてのより強い動機付けをユーザに対して与えることができる。
【0153】
なお、本実施の形態は以下の変形例が採用できる。
【0154】
(1)
図8のステップS801において、ロボット110は、ユーザに対して「今、話かけてもいい?」または「ちょっといい?」などとユーザの現在の必要緊急度を確かめる質問を話しかけ、ユーザに答えさせるようにしても良い。ロボット110は、所定のタイミングまたは未だ実施されていないリクエストの件数および/またはそれらの緊急度が所定の条件を満たした場合などに、ユーザに対して直接的に上記のような質問をする。この質問により、ロボット110は、ユーザの回答内容から必要緊急度を設定するための情報を取得するようにしても良い。この方法の場合、ロボット110は、ユーザに直接、必要緊急度を確認することができるため、ユーザの認識通りの必要緊急度情報をロボット110が設定および更新することができる。
【0155】
ここで、ユーザが上記質問に対して「いいよ」などの肯定的な返事をした場合は、ロボット110は、必要緊急度を「低」など低いレベルに設定するようにしても良い。また、「後にして欲しい」または返事が得られない場合には、今はユーザへの働きかけを行うのに良いタイミングではないとして、ロボット110は、必要緊急度を「中」または「高」などの高いレベルに設定しても良い。
【0156】
(2)スマートフォン100は情報端末の一例であり、本開示において、情報端末はスマートフォン100に限定されない。情報端末は、タブレット型コンピュータであってもよく、携帯可能な情報端末が採用できる。
【0157】
(ロボットの構成および制御方法)以下では、上記で説明された実施の形態に関連して、特に、ロボットの構成および制御方法について説明する。
【0158】
なお、以下の説明では、これまでの説明と重複する内容については適宜省略される。ただし、以下で説明されるロボットの構成および制御方法は、これまでに説明された内容を前提とした形態のみに限定されるものではない。
【0159】
図11は、本開示の実施の形態に係る情報システムの構成の一例を示すブロック図である。この図は、
図2に示されるブロック図に対して、ロボット110Rの構成のみが異なる。以下では、ロボット110Rの構成について説明する。
【0160】
ロボット110Rは、通信部110a、演算部110b、センサー110c、メモリ110d、可動部110e、映像音声出力部110g、および照明部110hを含む。ロボット110Rは、音声出力部110fの代わりに映像音声出力部110gを備える点、並びに、照明部110hをさらに備える点において、
図2に示されるロボット110と異なる。
【0161】
映像音声出力部110gは、映像および/または音声を出力するデバイスであり、例えば、ディスプレイとスピーカーと含む。
【0162】
照明部110hは、発光ダイオード(LED)やレーザダイオード(LD)などの光源を含む。照明部110hは、さらに、光源から出射された光の照射方向を制御するために、レンズやミラーなどの光学素子を含んでもよく、照射方向を変更するために、アクチュエータをさらに含んでいてもよい。
【0163】
ロボット110Rは、ロボット110について既に説明された種々の制御内容を実行することができる。別の言い方をすれば、本開示におけるロボット110に関する説明は、適宜、ロボット110Rに関する説明として読み替えることができる。
【0164】
図12は、本開示の実施の形態に係るロボット110Rの外観を例示的に示す模式図である。
図12は、(a)上面図、(b)正面図、(c)側面図、(d)背面図、(e)下面図からなる。
図12に示されるロボット110Rは、4本脚で自律移動するロボットである。
【0165】
ロボット110Rは、本体110iと、一対の前脚110ea、110ebと、一対の後脚110ec、110edとを備える。前脚110ea、110eb、および、後脚110ec、110edは、
図11に示される可動部110eの一例であり、脚の関節がアクチュエータによって駆動される。なお、
図12の(a)上面図、(b)正面図、(d)背面図、(e)下面図では、脚110ea、110eb、110ec、110edの一部または全部の描画が省略されている。
【0166】
ロボット110Rは、本体110iの正面付近に設けられた照明ユニット110haと、背面付近に設けられた照明ユニット110hbとを備える。照明ユニット110haは、例えば、水平角θ1、かつ、仰俯角φ1の照射範囲で、ロボットの前方を十分な光量で照らすことができる。照明ユニット110hbは、例えば、水平角θ2、かつ、仰俯角φ2の照射範囲で、ロボットの後方を十分な光量で照らすことができる。照明ユニット110ha、110hbは、
図11に示される照明部110hの一例である。
【0167】
ロボット110Rは、本体110iの正面に設けられたディスプレイ110gaと、背面に設けられたディスプレイ110gbと、側面に設けられたディスプレイ110gcと、上面に設けられたディスプレイ110gdとを備える。ディスプレイ110ga、110gb、110gc、110gdは、ロボット110Rが文字メッセージや映像情報の表示を介してユーザやロボット110Rの周辺にいる人とコミュニケーションをとるために設けられており、例えば、ユーザの状態やロボットの状態を表示する。ロボット110Rは、本体110iの正面に設けられたスピーカー110geと、背面に設けられたスピーカー110gfとを備える。スピーカー110ge、110gfは、ロボット110Rが音声メッセージや音楽の出力を介してユーザやロボット110Rの周辺にいる人とコミュニケーションをとるために設けられており、例えば、ユーザの状態やロボットの状態を通知する。
【0168】
ディスプレイ110ga、110gb、110gc、110gd、および、スピーカー110ge、110gfは、
図11に示される映像音声出力部110gの一例である。
【0169】
ロボット110Rは、本体110iの正面に、RGBカメラ110ca、測距センサー110cb、及び、赤外線カメラ110ccを備え、本体110iの背面に、RGBカメラ110cd、測距センサー110ce、及び、赤外線カメラ110cfを備える。RGBカメラ110ca、110cdは、空間の認識や物体の識別を可能にする。測距センサー110cb、110ceは、危険物などの物体の形状や、路面の凹凸などの周辺環境の形状の検知を可能にする。赤外線カメラ110cc、110cfは、低照度の環境下で人物の検知を可能にする。これらを組み合わせることで、ロボット110Rは、周辺状況を精度よく正確にセンシングすることができる。RGBカメラ110ca、110cd、測距センサー110cb、110ce、および、赤外線カメラ110cc、110cfは、
図11に示されるセンサー110cの一例である。
【0170】
ロボット110Rは、本体110iの正面付近に設けられたマイク110cg、110chと、背面付近に設けられたマイク110ci、110cjとを備える。マイク110cg、110ch、110ci、110cjを4カ所に設けることにより、音源の位置を特定できる。マイク110cg、110ch、110ci、110cjは、
図11に示されるセンサー110cの一例である。
【0171】
なお、本開示の実施の形態に係るロボットは、
図11または
図12に示されるロボット110Rに限定されず、可動部を有し、かつ、自律移動が可能なロボットであればよい。
例えば、ロボットは、脚の代わりに車輪を有していてもよい。例えば、ロボットは、脚の関節以外に、機械的に可動する部位を備えていてもよい。
【0172】
図13は、本開示の実施の形態に係るロボットが実行する処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートは、ロボット110Rが、サーバからユーザAに運動を誘導するタスクを受けて(S201)、ユーザAを運動に誘導して(S202~S210)、ユーザAの運動に伴って所定のアクションを実行し(S211)、サーバに結果を報告する(S213、S214)、という一連の動作ステップを説明している。
【0173】
タスクを受けるステップ(S201)は、例えば、
図7または
図8におけるステップS20に対応する。運動に誘導するステップ(S202~S210)は、例えば、
図7または
図8におけるステップS21に対応する。運動に伴うアクションを実行するステップ(S211)は、例えば、
図7または
図8におけるステップS22に対応する。サーバに結果を報告するステップ(S213、S214)は、例えば、
図7または8におけるステップS23に対応する。あるいは、
図13に示される一連の動作ステップ(S201~S214)は、例えば、
図9に示されるB社サーバ111のフローチャートのステップS106とステップS107との間において、ロボット110R側で実行される。
【0174】
以下、
図13を参照しながら、各ステップの動作について説明する。
【0175】
ステップS201において、ロボット110RがB社サーバ111からタスクを受信したか否かを判定する。タスクの受信は、例えば、ロボット110Rの通信部110aがB社サーバ111からの指示情報を受信し、演算部110bが指示情報に含まれるタスクの内容を受け取ることによって、実行される。ここでは、例示的に、タスクが、ユーザAに対して散歩をするように誘導するタスクであるものとして説明する。このタスクは、例えば、B社サーバ111が、A社サーバ101から受け取ったリクエストを、コンピューターシステムが処理可能な1単位に落とし込んだものであってもよい。ロボット110Rがタスクを受信した場合(ステップS201でYES)、次のステップS202に進む。反対に、ロボット110Rがタスクを受信していない場合、タスクを受信するまで待機する(ステップS201でNO)。
【0176】
ステップS202において、ロボット110Rは、タスクの対象となるユーザAを自身の周囲に検知できたか否かを判定する。例えば、RGBカメラ110ca、110cd、および/または、赤外線カメラ110cc、110cfが周囲を撮影し、演算部110bが撮影された画像の中にユーザAが映っているか否かを画像認識によって判定する。ユーザAを検知した場合(ステップS202でYES)、次のステップS203に進む。ユーザAを検知していない場合(ステップS202でNO)、ステップS214に進む。この場合、ステップS214では、ロボット110Rはロボット110Rの周囲にユーザAを検知できないためにタスクの実施が不可能であることをB社サーバ111に送信する。
【0177】
次に、ステップS203において、ロボット110Rは、ロボット110Rに搭載されたバッテリー(図示せず)の残量が、タスクを実行するのに十分な量あるか否かを判定する。例えば、タスクに必要な電力量の情報は、ロボット110Rの演算部110bがタスクの内容に基づいて見積もってもよい。あるいは、その情報は、ステップ201で受信された指示情報の中に予め含まれていてもよい。演算部110bは、バッテリーに内蔵されているバッテリー管理ICからバッテリーの残量の情報を取得し、バッテリーの残量が、タスクに必要な消費電力量を上回っているかを判定する。バッテリーの残量が十分にある場合(ステップS203でYES)、次のステップS205に進む。バッテリーの残量が不足している場合(ステップS203でNO)、バッテリーの残量がタスクに必要な電力量を超えるまでバッテリーの充電を行い(ステップS204)、ステップS202に戻る。
【0178】
なお、ステップS203は、例えば、ステップS201からステップS202までの間において実行されてもよいし、後述するステップS205からステップS206までの間において実行されてもよい。あるいは、ステップS203は省略されてもよい。
【0179】
ステップS205において、ロボット110Rは、ユーザAの位置をセンサー110cを用いて検知する。例えば、RGBカメラ110ca、110cd、および/または、赤外線カメラ110cc、110cfを用いてユーザAを撮影するとともに、測距センサー110cb、110ceを用いてロボット110RからユーザAまでの距離を測る。これにより、三次元空間におけるユーザAの位置を検知することができる。あるいは、ユーザAが身に着けているウェアラブルデバイス(図示なし)と通信することで、ユーザAの位置を取得するようにしてもよい。ウェアラブルデバイスが発する無線信号をロボット110Rの通信部110aが受信した電波強度により判定してもよいし、ウェアラブルデバイスが衛星測位システムなどを介して取得した現在位置情報をロボット110Rに送信または応答するようにしてもよい。
【0180】
なお、ステップS205は、例えば、ステップS202のユーザAの検知と併せて実行されてもよい。
【0181】
ステップS206において、ロボット110Rは、ユーザAの近傍のエリア(すなわち近傍エリア)へ移動する。近傍エリアは、ユーザの現在位置を含む所定のエリアである。
近傍エリアは、例えば、ユーザAの現在位置から所定の距離以内の領域に設定されてもよいし、ユーザAが映っている画像から推定されるユーザAの視野内の領域に設定されてもよい。ロボット110Rは、可動部110e、例えば、4本の脚110ea、110eb、110ec、110edを駆動して、自律的にユーザAの近傍エリアへ移動する。
【0182】
ステップS207において、ロボット110Rは、ユーザAに対して運動を促すためのジェスチャを実行する。そのようなジェスチャは、例えば、ロボット110Rが散歩したい意志をユーザAに伝えるためのジェスチャであってもよい。ジェスチャの例としては、ハーネスやリードなどの散歩に必要な道具を近傍エリア内に運んでくる動作や、前脚110ea、110ebでユーザAの身体に触れる動作や、本体110iを前傾させて後脚110ec、110edを伸ばす動作や、近傍エリア内で走り回る動作が挙げられる。これらの動作は、脚110ea、110eb、110ec、110edを駆動するアクチュエータ、および/または、ロボット110Rの外形や姿勢を変更させる他のアクチュエータを制御することによって実現される。ステップS207において、ロボット110Rは、ジェスチャに加えて、または、ジェスチャに代えて、映像音声出力部110gを用いて、ユーザAに対して運動を促すためのメッセージを提示してもよい。
【0183】
なお、ステップS207は、例えば、ステップS206の移動動作と並行して実行されてもよい。
【0184】
ステップS208において、ロボット110Rは、ユーザAの応答を検知したか否かを判定する。例えば、ロボット110Rは、RGBカメラ110ca、110cd、および/または、赤外線カメラ110cc、110cfを用いてユーザAの姿勢の変化を演算部110bにてモニタリングし、(i)ユーザAの姿勢の変化の大きさが所定の閾値を超えた場合、(ii)ユーザAの姿勢が特定の意思表示を示すポーズ(例えば親指を立てる)であると判定した場合、(iii)ユーザAの顔表情に基づき感情推定の確からしさが所定の閾値を超えた場合、(iv)ユーザAの姿勢の時間的変化が特定の意思表示を示すジェスチャー(例えば、首を縦または横に振る)であると判定した場合、のうちの少なくとも1つが満たされた場合に、ユーザAの応答を検知したと判定する。あるいは、ロボット110Rは、マイク110cg、110ch、110ci、110cjを用いてユーザAが発話した音声をモニタリングして、ユーザAの発話音声の音量が所定の閾値を超えた場合に、ユーザAの応答を検知したと判定する。それぞれの閾値は、例えば、ユーザAが明確な意思表示を行ったと見なせるレベルに設定される。ユーザAの応答が検知された場合(ステップS208でYES)、次のステップS210に進む。
【0185】
ユーザAの応答が検知されなかった場合(ステップS208でNO)、ステップS209において、ジェスチャを実行してから所定時間が経過したか否かを判定する。所定時間が経過していない場合(ステップS209でNO)、ステップS205(もしくはステップS207)に戻る。これにより、ロボット110Rは、ユーザAからの応答を検知するまで、ユーザAに運動を促す動作を、所定時間、反復的に実行する。このとき、ユーザAに運動を促すためのジェスチャの大きさを、時間経過または反復回数に応じて、段階的に大きくしてもよいし、映像音声出力部110gによって提示されるメッセージの表現を、時間経過または反復回数に応じて、段階的に強めてもよい。
【0186】
ユーザAの応答が検知されなかった場合(ステップS208でNO)であって、所定時間が経過している場合(ステップS209でYES)、ステップS214に進む。この場合、ステップS214では、ユーザAからの応答を検知できないためにタスクの実施が未達成であることをB社サーバ111に送信する。
【0187】
ステップS210において、ユーザAの応答が、ロボット110Rのジェスチャに対する肯定的な返答、または、ロボット110Rから促された運動を行う意志の表明を含んでいるか否かを判定する。例えば、ステップS208で検知されたユーザAの応答が、ユーザAの身体動作である場合、ロボット110Rは、人間の動作パターンとそれが指し示す意味とを対応付けたデータベースを参照して、ユーザAの身体動作が、肯定的な返答または運動への意志の表明を含んでいるかを判定してもよい。例えば、ステップS208で検知されたユーザAの応答がユーザAの発話である場合、ロボット110Rは、音声認識AI(図示せず)を用いて、ユーザAの発話内容が、肯定的な返答または運動への意志の表明を含んでいるかを判定してもよい。ユーザAの応答が、肯定的な返答または運動への意志の表明を含んでいる場合(ステップS210でYES)、次のステップS211に進む。ユーザAの応答がそれらを含んでいない場合や、否定的な返答を含んでいる場合(ステップS210でNO)、ステップS214に進む。この場合、ステップS214では、ユーザAから肯定的な返答が得られなかったために、タスクの実施が未達成であることをB社サーバ111に送信する。
【0188】
ステップS211において、ロボット110Rは、ユーザAの運動に応じたアクションを実行する。ユーザAが散歩またはランニングをする場合には、ロボット110RはユーザAに同伴して歩行または走行する。例えば、ロボット110Rは、ユーザA及びその周囲、並びに、自身の周囲の状況を、RGBカメラ110ca、110cd、測距センサー110cb、110ce、および、赤外線カメラ110cc、110cf、並びに、マイク110cg、110ch、110ci、110cjを用いてセンシングしながら、脚110ea、110eb、110ec、110edのアクチュエータを駆動して、ユーザAに同伴して移動を行う。ステップS211におけるロボット110Rのアクションは、ロボット110Rの身体動作に限られず、例えば、映像音声出力部110gを用いて画像や音声によるメッセージを提示する動作を含んでもよい。また、ステップS211における所定のアクションは、運動中のユーザAに対するアクションだけでなく、運動を開始しようとするユーザAに対するアクションを含んでいてもよい。例えば、ロボット110Rは、ユーザAの近傍のエリアから離れる方向に移動することによって、ユーザAを先導し、これによって、ユーザAの散歩を開始させてもよい。なお、ステップS211において、ロボット110Rは、予め決められたタスク内容に従って所定のアクションを実行してもよいし、B社サーバ111やスマートフォン100などの外部のコンピュータと相互に通信をしながら、アクションを実行してもよい。後者の場合、例えば、ユーザAの運動中に、ユーザAの状態を示す状態データを、定期的または不定期に外部コンピュータに送信し、それに基づいて決定されたアクションプランを受信する。
【0189】
ステップS212において、ロボット110Rは、ユーザAが運動を終了したか否かを判定する。例えば、例えば、ロボット110Rは、RGBカメラ110ca、110cd、および/または、赤外線カメラ110cc、110cfを用いてユーザAの身体の動きをモニタリングして、ユーザAの身体の動きが所定の閾値を下回った状態が所定期間継続した場合に、ユーザAが運動を終了したと判定してもよい。あるいは、ロボット110Rは、マイク110cg、110ch、110ci、110cjを用いてユーザAが発話する音声をモニタリングして、ロボット110RがユーザAから運動の終了を伝える意思表示を受け取った場合に、ユーザAが運動を終了したと判定してもよい。ユーザAが運動を終了したと判定した場合(ステップS212でYES)、次のステップS213に進む。
ユーザAが運動を継続していると判定した場合(ステップS212でNO)、ステップS211に戻って、ユーザAの運動に応じたアクションを実行する。
【0190】
ステップS213において、ロボット110Rは、タスクの実施を終了したことを示す終了通知をB社サーバ111に送信する。終了通知は、ユーザAが実施した運動における運動量の情報を含んでいてもよい。
【0191】
以上により、ロボット110Rは、ユーザAに対する運動の誘導から、ユーザAの運動終了の報告までの一連の処理が完了する。
【0192】
図14は、本開示の実施の形態に係るロボットが実行する動作の一例を示す。
図14には、シーンIからシーンVIまでが描かれている。
【0193】
例えば、シーンIは
図13におけるステップS201に対応し、シーンIIは
図13におけるステップS206に対応し、シーンIIIおよびIVは、
図13におけるステップS207~S209に対応し、シーンVは
図13におけるステップS208及びS210に対応し、シーンVIは
図13におけるステップS211に対応する。
【0194】
シーンIは、運動不足のユーザAと、ユーザAとは異なるユーザBと、ユーザAが利用しているロボット110RとがユーザAの自宅内にいるシーンを表している。このとき、ロボット110Rは、室内を見渡しやすい位置、または、ユーザAにより指定された位置に待機している。この例では、ロボット110Rが待機している位置は、ユーザAとその周辺を含む近傍エリア(図中の点線)の外側にあるとする。
【0195】
シーンIにおいて、ロボット110Rの演算部110bは、ユーザAに対する運動リクエストをB社サーバ111から受信している。この運動リクエストは、例えば、A社サーバ101が送信し、B社サーバ111によって転送されたものであってもよいし、A社サーバ101が送信した運動リクエストに基づいて、B社サーバ111が新たに生成したものであってもよい。
【0196】
あるいは、運動リクエストはロボット110Rと通信可能な外部のコンピュータから発せられてもよい。例えば、B社サーバ111を介さずにA社サーバ101からロボット110Rに送信されてもよいし、ユーザAのスマートフォンにインストールされているA社のアプリまたはB社のアプリからロボット110Rに送信されてもよい。あるいは、運動リクエストは、ロボット110Rの演算部110bで実行中のプログラムがセンサー110cを用いてユーザAの状態をセンシングした結果に基づき、発行したものであってもよい。
【0197】
シーンIIは、ロボット110Rが、ユーザAの位置をセンシングし、その結果に基づいてユーザAの近傍のエリア内へと自律的に移動するシーンを表している。ロボット110Rは、例えば、移動する前に、ユーザAが従事している活動を特定して、特定された活動内容に基づいて必要緊急度を判定してもよい。
【0198】
シーンIIIは、ロボット110Rが、近傍エリア内でユーザAを散歩に誘う動作を行っているシーンである。ロボット110Rは、受信した運動リクエストに応じて、スピーカー110ge、110gfを用いてユーザAに散歩を促す音声を出力したり、可動部110eを駆動してユーザAを散歩に誘う身振りを行ったりする。この例では、ロボット110Rは、二足歩行をしながら、ユーザAの方を向く身振りをしながら、「散歩に行こう!」と音声を使って呼び掛けている。なお、ロボット110Rは、近傍エリア内に入った後に運動に誘導する動作を行ってもよいし、運動に勧誘する動作を行いながら近傍エリア内に入ってもよい。
【0199】
この例では、ロボット110Rは、あたかも自身が運動したい願望を持っているかのように振る舞う動作を示している。これにより、ユーザAの利他的行動への欲求を刺激することができる。利他的行動への欲求とは、例えば、ロボット110Rを1つの個体として認識して、それが抱く願望を叶えてあげたいと思う気持ちが挙げられる。ただし、ロボット110Rが行う動作は、これに限定されない。例えば、ロボット110Rは、ユーザAに関する情報をユーザAに伝えることにより、ユーザAの自己実現欲求を刺激してもよい。例えば、健康な身体で元気に生活し続けたいというユーザAの気持ちを刺激するために、ユーザAの運動不足の状況やその健康上のデメリットを伝える動作を行ってもよい。そのような動作の例として、ロボット110Rが四足歩行でユーザAに静かに近づき、「今日のあなたの歩数はまだ1000歩です。散歩した方がいいですよ。」といった声がけと同時に、その場で足踏みをするようなジェスチャを行うことが挙げられる。
【0200】
シーンIVは、運動を誘導し始めてから所定時間以内内にユーザAから明確な応答が検知できない場合に、運動をより積極的に誘い続けているシーンである。この例では、ロボット110RはユーザAの周囲を動き回りながら、「行きたい!」という音声を繰り返し出力することによって、散歩に行きたい旨をユーザAに伝え続けている。
【0201】
シーンVは、ユーザAが肯定的または否定的な応答をして、ロボットがその応答を検知したシーンである。この例では、ユーザAは立ち上がり、ロボット110Rに対して「じゃー、行こうか」と散歩に行く意思を伝える回答をしている。ロボット110Rは、ユーザAの姿勢の変化、移動、並びに、口頭やジェスチャによる意思表示をセンサー110cで検知する。例えば、ロボット110Rは、RGBカメラ110caで撮影された顔や全身の画像からユーザAを認識し、ユーザAの姿勢(または骨格)の変化を検出することによって、ユーザAの身体動作を認識して、ユーザAの応答が肯定的であるか否かを判定する。あるいは、ロボット110Rは、例えば、マイク110cgで拾った音声情報から、ユーザAの応答が肯定的であるか否かを判定する。
【0202】
シーンVIは、ユーザAとロボット110Rとが家を出て散歩を始めたシーンである。
ロボット110Rは運動リクエストに従ってユーザAを運動させる。ロボット110Rは、ユーザAの運動状態や、運動結果を運動リクエストの発信元に対して報告する。
【0203】
なお、ここではユーザAの運動の例として、散歩を上げているが、本開示はこれに限定されない。ロボット110Rは、ジョギング、スイミング、ゴルフ、テニスなどにユーザAを連れ出してもよいし、自宅内にあるルームランナー、フィットネスバイク、ダンベルなどの運動器具を用いた運動をユーザAに行わせてもよい。例えば、ロボット110Rが、ユーザAの運動歴や運動器具の有無、その時の天候などに応じて、ユーザAに促すべき運動を選択して提案してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0204】
本開示によれば、他社機器が保有するセンサーや運動能力を要求または直接的に制御することが安全に実現できる。これにより、これまでのサイバー空間だけの情報流通から、サイバー空間とフィジカル空間とを融合して、誰しもがソフトウェアを通じて、サイバー空間からフィジカル空間において何らかの実空間への作用を行うことが可能となり、多種多様な産業的利用の基盤技術として期待ができる。
【符号の説明】
【0205】
100 スマートフォン
100a 通信部
100b 演算部
100c センサー
100d メモリ
100e 操作部
100f 映像音声出力部
101 A社サーバ
101a 通信部
101b 演算部
101c メモリ
110,110R ロボット
110a 通信部
110b 演算部
110c センサー
110ca,110cd RGBカメラ
110cb,110ce 測距センサー
110cc,110cf 赤外線カメラ
110cg,110ch,110ci,110cj マイク
110d メモリ
110e 可動部
110ea,110eb,110ec,110ed 脚
110f 音声出力部
110g 映像音声出力部
110ga,110gb,110gc,110gd ディスプレイ
110ge,110gf スピーカー
110h 照明部
110ha,110hb 照明ユニット
110i 本体
111 B社サーバ
111a 通信部
111b 演算部
111c メモリ
【手続補正書】
【提出日】2023-11-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットと通信可能な第1コンピュータと、前記第1コンピュータとは異なる第2コンピュータとを含むシステムにおいて、前記第1コンピュータによって実行される情報処理方法であって、
ユーザに運動を促すことを前記ロボットにリクエストするリクエスト情報を、前記第2コンピュータから受信し、前記リクエスト情報は、前記第2コンピュータによって前記ユーザに運動を促すためのメッセージが前記ユーザに提示された後において、前記ユーザの運動量が所定の目標量を満たしていないと判定された場合に、前記第2コンピュータから前記第1コンピュータに送信され、
前記リクエスト情報に基づいて、前記ユーザに運動を促すジェスチャを前記ロボットに実行させる指示情報を、前記ロボットに送信する、
情報処理方法。
【請求項2】
前記第1コンピュータは、前記ロボットと通信可能なサーバまたは情報通信端末である、
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項3】
前記第2コンピュータは、前記第1コンピュータと通信可能なサーバであり、
前記第2コンピュータは、前記ユーザの情報通信端末を介して、前記メッセージを前記ユーザに提示する、
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項4】
前記第2コンピュータは、前記ユーザの情報通信端末である、
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項5】
ロボットと通信可能な第1コンピュータと前記第1コンピュータとは異なる第2コンピュータとを含むシステムにおける、前記第1コンピュータであって、
プロセッサと、
前記プロセッサに所定の処理を実行させるプログラムが格納されたメモリと、を備え、
前記プロセッサは、前記プログラムに基づいて、
ユーザに運動を促すことを前記ロボットにリクエストするリクエスト情報を、前記第2コンピュータから受信し、前記リクエスト情報は、前記第2コンピュータによって前記ユーザに運動を促すためのメッセージが前記ユーザに提示された後において、前記ユーザの運動量が所定の目標量を満たしていないと判定された場合に、前記第2コンピュータから前記第1コンピュータに送信され、
前記リクエスト情報に基づいて、前記ユーザに運動を促すジェスチャを前記ロボットに実行させる指示情報を、前記ロボットに送信する、
第1コンピュータ。
【請求項6】
ロボットと通信可能な第1コンピュータと前記第1コンピュータとは異なる第2コンピュータとを含むシステムにおいて、前記第1コンピュータによって実行されるプログラムであって、
前記第1コンピュータに搭載されたプロセッサに対して、
ユーザに運動を促すことを前記ロボットにリクエストするリクエスト情報を、前記第2コンピュータから受信する処理と、
前記リクエスト情報に基づいて、前記ユーザに運動を促すジェスチャを前記ロボットに実行させる指示情報を、前記ロボットに送信する処理と、を実行させ、
前記リクエスト情報は、前記第2コンピュータによって前記ユーザに運動を促すためのメッセージが前記ユーザに提示された後において、前記ユーザの運動量が所定の目標量を満たしていないと判定された場合に、前記第2コンピュータから前記第1コンピュータに送信される、
プログラム。
【請求項7】
ロボットと、当該ロボットと通信可能な第1コンピュータと、前記第1コンピュータとは異なる第2コンピュータとを含むシステムであって、
前記第1コンピュータは、第1プロセッサと、当該第1プロセッサに第1処理を実行させる第1プログラムが格納された第1メモリと、を備え、
前記ロボットは、少なくとも1つのアクチュエータと、第2プロセッサと、当該第2プロセッサに第2処理を実行させる第2プログラムが格納された第2メモリと、を備え、
前記第1コンピュータは、前記第1プログラムに基づいて、
ユーザに運動を促すことを前記ロボットにリクエストするリクエスト情報を、前記第2コンピュータから受信し、前記リクエスト情報は、前記第2コンピュータによって前記ユーザに運動を促すためのメッセージが前記ユーザに提示された後において、前記ユーザの運動量が所定の目標量を満たしていないと判定された場合に、前記第2コンピュータから前記第1コンピュータに送信され、
前記リクエスト情報に基づいて、前記ユーザに運動を促すジェスチャを前記ロボットに実行させる指示情報を、前記ロボットに送信し、
前記ロボットは、前記第2プログラムに基づいて、
前記指示情報を前記第1コンピュータから受け取り、
前記指示情報に基づいて、前記少なくとも1つのアクチュエータを駆動して、前記ユーザに運動を促すジェスチャを実行する、
システム。